JP2004162384A - 金属製構造物の補修方法 - Google Patents

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博義 中川
Masatoshi Yamashita
昌利 山下
Masatoshi Minato
雅俊 湊
Yoshiyuki Kumegawa
佳之 粂川
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Nihon Parkerizing Co Ltd
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Abstract

【課題】防錆塗装による塗膜とモルタルとの間の接着性不良や、モルタル表面の大きなクラックの発生を抑制し得る、防錆性と耐久性とを兼ね備えた金属製構造物の補修方法を提供すること。
【解決手段】劣化箇所Xにおける残存付着物12’ないし劣化物14を除去して金属製構造体表面10’を露出させる表面除去工程と、露出した金属製構造体表面10’に、防錆塗装18を施す塗装工程と、防錆塗装18された箇所に、珪砂20を付着させる珪砂付着工程と、少なくとも珪砂20が付着した箇所に、モルタル22を薄膜状に付着させる薄付けモルタル施工工程と、網、布および不織布からなる群より選ばれる少なくとも1種の面材24を貼り付ける面材貼付工程と、面材24が貼り付けられた箇所に、仕上げのモルタル26を付着させる仕上げモルタル施工工程と、からなり、上記各工程の操作をこの順で行うことを特徴とする金属製構造物の補修方法である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄、ステンレス等の金属材料からなる金属製構造体を躯体とし、必要に応じてその表面に、防錆塗装やモルタル表面仕上げが為されてなる金属製構造物、特に屋外に設置されている金属製構造物の補修方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平7−62893号公報
【非特許文献1】
日本パーカライジング株式会社発行,日本パーカライジング技報 第6号,1993年12月,“鉄筋コンクリート構造物「パルダイン」補修システム”,二階堂 賢、小嶋 弘樹,p.62〜73
【非特許文献2】
日本パーカライジング株式会社発行,日本パーカライジング技報 第9号,1996年12月,“桃介橋の補修,復元工事の参画”,高橋 和則、二階堂 賢、市川 猛太郎,p.52〜64
【非特許文献3】
株式会社アサノ発行,“アサノリフレッシュシステム AR−RC工法、AR防錆工法 技術資料”,2001年
【0003】
従来から、マンションやビルディング等高層建築物の非常階段、プレハブ住宅の外階段、横断歩橋道、デッキ、橋梁の壁材、各種フェンス等、特に屋外に設置される構造物に、鉄、ステンレス等の金属材料からなる金属製構造体を躯体とする金属製構造物が用いられている。かかる金属製構造物は、金属製構造体を裸のまま使用する場合もあるが、一般的にその表面に、防錆塗膜が形成される場合が多く、さらに必要に応じてモルタル表面仕上げが為されてなることもある。階段などの金属製構造物においては、踏面等一部のみにモルタル表面仕上げが為されているものもある(なお、これらの金属製構造物についても、本発明の適用対象とする。)。かかる金属製構造物は、金属製構造体由来の高強度を特徴としながら、工業生産が容易で均質であり、低コストであることから多用されている。
【0004】
しかし、このような金属製構造物は、屋外環境で使用される場合が多く、また、外力(例えば、靴による蹴り、搬送物の接触・落下等)の作用により、劣化箇所が生じやすい。劣化は、経時により表面防錆塗装面の塗膜欠陥や、金属製構造体自身に錆が生じることで進行する。表面にモルタル施工が為されている場合には、モルタル表面に亀裂・崩落を生じたり、金属製構造体からモルタル表面が剥がれたりすることにより進行する。
【0005】
従来、かかる金属製構造物の補修方法としては、まず劣化箇所における残存付着物(残存しているモルタル表面、防錆塗膜およびゴミ等)ないし劣化物(錆、腐食ないし変質した金属表面部分)を除去し、穴あき部分がある場合等必要があれば金属製構造体における欠陥部を修復した後、防錆塗装を行い、モルタル施工する方法が一般的であった(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
金属構造体の補修において防錆塗装に使用する塗料は、一般的な溶剤型塗料であり、溶剤が多く含まれているので、後工程のモルタル施工までの時間管理が難しかった。その理由としては、溶剤が十分に蒸発し塗膜が硬化乾燥するまでの時間が温度、湿度、風等の施工場所の気候条件によって大きく左右されるためである。塗膜が完全に硬化乾燥した後でモルタルを施工すると、塗膜が撥水性であるため、モルタルとの層間で接着性が悪くなる。また、塗膜中の溶剤の蒸発が不完全な状態でモルタルを施工すると、残存溶剤がモルタルの水と相性が悪いため、層間の接着性が悪くなる傾向があった。さらに、旧塗膜が残っている箇所では防錆塗料の種類によっては旧塗膜のリフティング現象が生じることがあった。特に、下塗り用エポキシ樹脂系の溶剤型塗料を補修用に使用するとリフティング現象が顕著に見られた。
【0007】
また、最終工程のモルタル施工においては、施工後、大きなクラックが発生しやすいという問題点があった。
【0008】
その他の補修方法としては、劣化箇所における付着物ないし劣化物を除去し、穴あき部分がある等必要があれば金属製構造体における欠陥部を修復した後に、エポキシモルタル(エポキシ樹脂+珪砂)を施工する方法も提案されている。この方法でも防錆性能は優れているが、施工面が脆く、大きなクラックが発生し易いという問題点があった。
【0009】
一方、劣化箇所における残存付着物ないし劣化物の除去方法としては、特に塗膜や錆等を除去する場合は、一般に電動工具、ケレン棒、皮スキ等を使用して行われている。この方法では、劣化塗膜箇所の除去が不十分となり、次工程の防錆塗装に使用する塗料として樹脂に対する溶解力の強い溶剤を含んだものを使用すると、劣化塗膜の部分がリフティング現象(旧塗膜で密着力の弱い個所は下地の間からメクレ上がる現象)を生じ易くなっていた。また、金属表面を傷付け易く、部分的に鋭角的な凹凸表面になり、その個所を塗装しても鋭角な凸部では塗膜が薄くなり、防錆性能も悪くなっていた。さらに、大きな面積やコーナー部、錆の激しい箇所の除去効率が悪かった。そして、かかる方法で除去した後の表面には、塗膜の除去粉、錆部、一部金属部を研磨した時の金属粉等が残っているので、通常は洗い用シンナーを含ませたウエスにより拭き上げる等、除去後の清浄をする必要があった。
また、金属構造体の補修において防錆塗装に使用する塗料は、既述の如く一般的な溶剤型塗料であり、その乾燥塗膜厚は1回塗りでは30〜40μmが限度で、防錆性能を確保するには複数回塗布する必要があった。
【0010】
したがって、本発明は、上述したような問題点、即ち、防錆塗装による塗膜とモルタルとの間の接着性不良や、モルタル表面の大きなクラックの発生を抑制し得る、防錆性と耐久性とを兼ね備えた金属製構造物の補修方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、劣化箇所における残存付着物ないし劣化物の除去に際して、劣化塗膜や錆の除去が十分で、金属製構造体の表面を傷付けることなく、大面積あるいは複雑な箇所や、錆の激しい箇所でも除去効率が高く、除去作業の後の清浄作業をも省略し得る、簡便な金属製構造物の補修方法を提供することを他の目的とする。
そして、防錆塗装においても1回塗りで十分な防錆性能を確保し得る、簡便な金属製構造物の補修方法を提供することをさらに他の目的とする。
【0012】
【問題点を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するための手段について鋭意検討し、以下に記す各工程からなる補修方法を行えば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明金属製構造物の補修方法は、金属製構造体を躯体とする金属製構造物について、経時により劣化箇所を生じた際の補修方法であって、少なくとも、
前記劣化箇所における残存付着物ないし劣化物を除去して金属製構造体表面を露出させる表面除去工程と、
前記露出した金属製構造体表面に、防錆塗装を施す塗装工程と、
前記金属製構造体表面の少なくとも防錆塗装された箇所に、珪砂を付着させる珪砂付着工程と、
前記金属製構造体表面の珪砂が付着した箇所に、モルタルを薄膜状に付着させるモルタルライニング材施工工程と、
網、布および不織布からなる群より選ばれる少なくとも1種の面材を、前記金属製構造体表面のモルタルが付着した箇所に貼り付ける面材貼付工程と、
前記金属製構造体表面の面材が貼り付けられた箇所に、仕上げのモルタルを付着させる仕上げモルタル施工工程と、
からなり、上記各工程の操作をこの順で行うことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、珪砂付着工程において、前記金属製構造体表面の防錆塗装された箇所に、珪砂を付着させているため、後のモルタルライニング材施工工程で付着させたモルタル(モルタルライニング材)との接着性が極めて良好なものとなる。また、本発明では、モルタルライニング材施工工程によるモルタルライニング材と、仕上げモルタル施工工程による仕上げのモルタル(仕上げモルタル)との間に、面材貼付工程による面材が介在しているため、当該面材がモルタルの硬化収縮を拘束し、接着強度を高め、かつ、大きなクラックが発生することを抑制することができる。
【0015】
前記劣化部分に、前記金属製構造体に穴あき部分がある等大きな欠陥がある場合には、本発明においては、前記表面除去工程と前記塗装工程との間に、前記金属製構造体の欠陥を修復する修復工程が行われることが望ましい。
本発明において、前記表面除去工程としては、加温高圧水と接触させることにより、前記劣化箇所における残存付着物ないし劣化物を除去する工程であることが好ましい。前記表面除去工程をこのような処理を施す工程とすることにより、劣化塗膜や錆の除去が十分で、金属製構造体の表面を傷付けることなく、大面積あるいは複雑な箇所や、錆の激しい箇所でも除去効率が高く、除去作業の後の清浄作業をも省略し得る、簡便な金属製構造物の補修方法を提供することができる。このとき、前記加温高圧水の温度が50℃以上であり、かつその圧力が5MPa〜12MPaの範囲であることが好ましい。
【0016】
本発明においては、前記塗装工程における防錆塗装が、エポキシ樹脂系塗料を塗布することによって行われることが好ましい。エポキシ樹脂系塗料により形成される防錆塗膜は、防錆性が良好であり、補修された金属製構造物全体の防錆性能を高めることができる。
【0017】
このとき用いる前記エポキシ樹脂系塗料としては、溶剤量20質量%以下で、1液硬化型もしくは2液硬化型の、エポキシ樹脂塗料もしくはエポキシ変性樹脂塗料、ないしその混合物であることが好ましい。このような組成のエポキシ樹脂系塗料を防錆塗装に供することで、1回塗りでも十分な防錆性能を確保し得る塗膜が形成され、簡便に、補修された金属製構造物全体の防錆性能を十分に確保することができる。
前記エポキシ樹脂系塗料としては、錆転換機能を有することが望ましい。錆転換機能を有するエポキシ樹脂系塗料を用いることで、より一層防錆性能を高めることができる。
【0018】
前記モルタルライニング材施工工程および/または仕上げモルタル施工工程において、施工に供するフレッシュモルタルとしては、少なくとも、ポルトランドセメント、高炉セメントおよびフライアッシュセメントからなる群より選ばれる少なくとも1種のセメントと、骨材と、混和剤と、合成繊維、天然繊維およびエマルジョン系樹脂成分からなる群より選ばれる1種または2種以上の充填剤と、水と、からなるフレッシュモルタルであることが望ましい。かかる組成のフレッシュモルタルを各モルタル施工において用いることにより、断面復旧に必要な充填性と、成形性に優れた性状と、必要強度とを十分に確保することができる。
【0019】
本発明において、前記面材付着工程において使用される面材としては、天然繊維、合成繊維、混紡繊維からなる群より選ばれる1種または2種以上の材料からなるものが選択される。
【0020】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の金属製構造物の補修方法による工程を示す。なお、下記工程で、[ ]で括られているものは本発明において必須の工程、( )で括られているものは任意の工程、< >で括られているものはその前の工程に含まれる“状態の変化”を表す。なお、図1は、本発明の金属製構造物の補修方法による工程ごとの状態を示す、補修対象となる劣化箇所の模式断面図である。また、下記工程末の括弧書きの英小文字は、図1の各工程に対応するものである。図1において、10は金属製構造体を、12は当初の防錆塗膜を表す。
【0021】
<劣化状態(a)>→[表面除去工程(b)]→(修復工程(c))→[塗装工程(d)]→<硬化乾燥>→[珪砂付着工程(e)]→<乾燥>→[モルタルライニング材施工工程(f)]→<未硬化>→[面材貼付工程(g)]→[仕上げモルタル施工工程(h)]→<硬化>→(仕上げ処理)
以下、各工程ごとに詳細に説明する。
【0022】
[表面除去工程]
本発明において必須の工程である表面除去工程は、前記劣化箇所における残存付着物ないし劣化物を除去して金属製構造体表面を露出させる工程である。本工程においては、図1(a)に示す状態である劣化箇所Xを有する金属製構造物から、塗膜欠陥(残存付着物)12’および錆(劣化物)14を除去して、図1(b)に示すように、金属製構造体10の表面10’を露出させる。
【0023】
劣化箇所においては、表面防錆塗装面の塗膜欠陥や、金属製構造体自身に錆が生じている。表面にモルタル施工が為されている場合には、そのモルタル表面にヒビが入ったり、脱落していたり、さらには穴が開いたりしているが、本工程においては、当該劣化箇所における金属製構造体以外のものを基本的に全て除去することを目的とする。したがって、表面にモルタルが残存している場合には当該モルタルを含め、その下地の防錆塗膜(塗膜自体が劣化している箇所は勿論のこと、その下の金属製構造体が劣化している箇所を含む)、さらに各種ゴミ等の残存付着物を除去する。また、金属製構造体が劣化した場合の錆や腐食ないし変質した金属表面部分等の劣化物についても除去する。
【0024】
表面除去工程における除去操作としては、特に制限されず、例えば、電動工具(グラインダー、サンダー等)、ケレン棒、皮スキ、サンドペーパー、バフ等を使用して行う従来公知の方法でも構わないが、これらの方法によると除去不十分となったり、金属表面を傷付け易かったり、大面積やコーナー部、錆の激しい箇所等において手間が掛かったり等の懸念がある。また、これら通常の方法により物理的に除去した場合、除去後の塗膜の除去粉、錆部、一部金属部を研磨した時の金属粉等が残っているので、除去後の清浄をする必要がある。
【0025】
以上の点を考慮すると、表面除去工程における除去操作、特に劣化塗膜や錆を除去する操作としては、加温高圧水と接触させる方法によることが好ましい。当該方法により、前記劣化箇所における残存付着物ないし劣化物を除去することとすれば、劣化塗膜や錆の除去が十分で、金属製構造体の表面を必要以上に傷付けることなく、大面積あるいは複雑な箇所や、錆の激しい箇所でも除去効率が高く、水により各種粉体等が一緒に洗い流されるため、除去作業の後の清浄作業をも省略することができ、施工の効率が向上するというメリットがある。特に、加温高圧水を接触させる(つまりは、加温された水を高圧で吹き付ける)ことにより、劣化状態の塗膜や密着の弱い塗膜は容易に剥離され、また、対象箇所の塗膜が加温され軟化する。このため特に劣化状態の激しい塗膜や密着の弱い塗膜箇所が高圧水で容易に剥離すると考えられる。
【0026】
なお、加温高圧水のみでは十分に除去ができない場合には、従来公知の上記物理的な除去操作と組み合わせることが好ましい。上記物理的な除去操作のみで全ての除去作業を行おうとすると、既述の通り、金属表面を傷付け易かったり、大面積やコーナー部、錆の激しい箇所等において手間が掛かったり等の懸念があるが、ある程度までの除去作業を上記物理的な除去操作で行い、仕上げに加温高圧水を用いれば、これら懸念が払拭されるとともに、頑固な付着物をも十分に除去することができる。
【0027】
前記加温高圧水の温度としては、50℃以上であることが好ましく、除去効率を考慮すると60℃以上であることがより好ましい。一方、該温度の上限としては、高い方が除去効率は向上するものの、作業の安全性を考慮すると90℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。
【0028】
一方、前記加温高圧水の圧力としては、5MPa以上であることが好ましく、除去効率を考慮すると6MPa以上であることがより好ましい。一方、該圧力の上限としては、高い方が除去効率は向上するものの、作業の安全性を考慮すると12MPa以下であることが好ましく、9MPa以下であることがより好ましい。
【0029】
表面除去工程を以上の加温高圧水の接触による操作によって行った場合には、次工程に進む前に必要に応じて、表面の水分を除去するべく乾燥操作が施される。当該乾燥操作は、放置(風乾)、風を当てる、熱風や熱線を当てる等の方法が挙げられる。
【0030】
なお、表面にモルタルが残存している場合に、当該モルタルを除去するには、金槌・木槌やスクレーパーや、場合によってはバール等により破砕して容易に除去可能とした上で、手や箒その他公知の手段により除去すればよい。その後、上述の除去手段を施すことにより、表面除去工程の操作が終了する。
【0031】
(修復工程)
本発明において必要に応じて行われる修復工程は、前記金属製構造体の欠陥を修復する工程である。該修復工程は、前記劣化部分に、前記金属製構造体に穴あき部分がある等大きな欠陥がある場合に行われる。当該工程を行うか否かは、表面除去工程により露出した金属製構造体の表面状態を見て判断すればよい。
【0032】
修復方法としては、パテを使用して、これを穴に埋め込む方法や、または新しい金属板で補強溶接する方法等従来から行われている方法を採用することができる。しかし、パテを使用する方法では、経時による劣化の問題がある。また金属板で補強溶接する方法では、溶接部周囲のスパッタや溶接焼け部の手直し作業が必要となる問題点がある。
【0033】
したがって、本発明においては、従来の躯体(金属製構造体)を生かす方法、すなわち、新しい金属板を、接着剤を用いて貼り付けて修復し補強する方法が好ましい。このとき、大きな穴開き部には、その周辺の健全部分まで及ぶように、前記金属板で覆い、貼り付けることが好ましい。
【0034】
好ましい態様により修復工程を行った後の状態を、図1(c)に示す。このように、大きな穴開き部周辺の健全部分まで及ぶように、金属板16で覆い貼り付けられる。金属製構造体10の表面10’を露出させる。
【0035】
使用する接着剤としては、特に制限は無いが、次工程で使用する防錆処理剤(例えば、後述するエポキシ樹脂系の防錆塗料で接着機能を兼ね備えたもの)またはエポキシ樹脂系の接着剤が好ましい。また、前記金属板の材質としては、特に制限は無いが、大きな電位差の金属同士を接触させると、一方の腐食が進行しやすくなるため、金属製構造体と電位差の小さな材料を選択することが好ましく、同一の材料を用いることがより好ましい。
本工程の処理により省資源化、および品質の向上を図ることができる。
【0036】
[塗装工程]
本発明において必須の工程である塗装工程は、前記露出した金属製構造体表面に、防錆塗装を施す工程である。このとき、修復工程により修復された表面(図1(c)においては、金属板16の表面)が露出している場合には、当該箇所を含めて防錆塗装を施す。図1(d)に、本工程により防錆塗装が施された後の状態を示す。図1(d)に示されるように、露出した金属製構造体表面および金属板16を覆うように、防錆塗膜18が形成される。
【0037】
防錆塗装に際して使用可能な塗料としては、特に制限されるものではなく、従来から公知の各種防錆塗料を問題なく用いることができる。なかでもエポキシ樹脂系塗料は、これにより形成される防錆塗膜の防錆性が良好であり、補修された金属製構造物全体の防錆性能を高めることができる点で好ましい。
【0038】
このとき用いる前記エポキシ樹脂系塗料としては、溶剤量20質量%以下で、1液硬化型もしくは2液硬化型の、エポキシ樹脂塗料もしくはエポキシ変性樹脂塗料、ないしその混合物であることが好ましい。このような組成のエポキシ樹脂系塗料を防錆塗装に供することで、1回塗りでも十分な膜厚を確保することができ(硬化膜厚として70μm〜150μm程度とすることが可能)、防錆性能を確保し得る。即ち、簡便に、補修された金属製構造物全体の防錆性能を十分に確保することができる。また、母材(金属製構造体)との密着性が良好であり防錆性に優れている。さらに、劣化塗膜が残っている箇所でもリフティング現象が生じ難いという特徴もある。即ち、従来の防錆塗装の問題点であった、環境対策(溶剤の削減)、防錆塗装の品質の向上と安定化および生産性の向上という課題が解決されることになる。
【0039】
前記エポキシ樹脂系塗料としては、錆転換機能を有することが望ましい。錆転換機能を有するエポキシ樹脂系塗料を用いることで、より一層防錆性能を高めることができる。ここで錆転換機能とは、2〜3種ケレン程度の処理で、例えば、鉄素地に残った錆をマグネタイトに転換して安定化させ、これにより腐食因子の浸透を防止する。
【0040】
なお、「ケレン」とは、既述の表面除去工程で、表面防錆塗装面の塗膜欠陥や金属製構造体自身に錆が生じている場合に、これらを除去する程度を示す指標であり、例えば、(株)産業技術サービスセンター発行,「表面処理対策Q&A1000」,1998年5月や、(社)日本道路協会編,「鋼道路橋塗装便覧」等に、その基準が明示されている。
【0041】
使用可能なエポキシ樹脂塗料もしくはエポキシ変性樹脂塗料としては、上市されている一般的な物でも、本発明の実施のために新たに調製したものであっても構わない。具体的なこれら塗料としては、エポニックスAL(大日本塗料(株)製)、ハイポン20エース(日本ペイント(株)製)、エスコ(関西ペイント(株)製)等が上市されており、また錆転換機能を有するものとして、エポガード200(クスノキ化学(株)製)、サビロック(サビロック(株)製)、トリック#1000(日本パーカライジング(株)製)、トリック#1100(日本パーカライジング(株)製)等が上市されており、いずれも本発明において問題なく用いることができる。
【0042】
防錆塗料を塗布する具体的な手法としては、特に制限されず、一般的に現場作業で行われる、スプレーガンによる塗布、ハケ塗りによる塗布、ロールによる塗布等が上げられる。塗布対象となる金属製構造物の劣化箇所を含む部位あるいは全体が、現場から取り外し・移動可能であるならば、これら部位あるいは全体を防錆塗料に浸漬させて塗布する浸漬塗布法を採用しても構わない。
【0043】
塗布された塗膜は、速乾性のものでない限り湿潤状態であり、一般的には、硬化乾燥が行われる。ただし、後述する[珪砂付着工程]による操作の後に、乾燥硬化を施すのが一般的である。乾燥硬化せずに珪砂付着工程に進んだ場合、粉末状の珪砂を用いて、これを付着させることができる。
【0044】
硬化乾燥は、用いた防錆塗料の種類により方法が異なるが、常温硬化型の塗料においては、所定時間そのまま放置(風乾)すればよいし、硬化乾燥時間を短縮するためには、強制的に風を当てればよい。熱硬化型の場合には、熱風や熱線を当てる等により熱を加えればよいし、紫外線硬化型であれば、紫外線を照射すればよい。
【0045】
なお、前記表面除去工程ないし修復工程において露出した金属製構造体の表面に対して、一次防錆を付与するため、および、本塗装工程で施される防錆塗膜との塗膜密着性を向上させるため、本塗装工程に先立ち(場合によっては、さらに修復工程に先立ち)、従来公知の表面処理を施すことも好ましい。当該表面処理は、その目的に応じて適宜最適なものを選択すればよく、具体的な表面処理液としては、例えば、リン酸鉄系化成液、リン酸亜鉛系化成液、リン酸マンガン系化成液、リン酸カルシウム系化成液、クロメート系化成液、塗布型樹脂クロメート液等を挙げることができる。
【0046】
[珪砂付着工程]
本発明において必須の工程である珪砂付着工程は、前記金属製構造体表面の少なくとも防錆塗装された箇所に、珪砂を付着させる工程である。前記金属製構造体表面の防錆塗装された箇所に珪砂を付着させることにより、防錆塗膜表面にアンカーパターンが付与され、後のモルタルライニング材施工工程で付着させるモルタル(モルタルライニング材)との接着面積が増加するので、接着性の向上と安定化を付与することができる。
【0047】
本工程において、珪砂を付着させる箇所は、上記[塗装工程]により防錆塗装された箇所、すなわち当初の劣化箇所が少なくとも対象となるが、より広い面に珪砂を付着させることが望ましく、さらに金属製構造物全面に珪砂を付着させることがより望ましい。図1(e)に、本工程により珪砂が付着された後の状態を示す(本図においては、金属製構造物全面に珪砂を付着させた態様で示している。)。図1(e)に示されるように、金属製構造物全面に、珪砂20が付着している。
【0048】
用いる珪砂としては、特に制限されず、一般的なものを用いればよいが、コンクリートに使用されている骨材で、細骨材(3号珪砂から8号珪砂)が好ましく、土木学会コンクリート示方書あるいは日本建築学会JASS5に記載されている細骨材がより好ましい。
【0049】
珪砂を付着させる方法としては、防錆塗装を施した後の塗膜が半硬化状態(塗膜表面を指で軽く押した場合に、塗料がやや指に付いてくる程度)になったところで、その表面全体に直接、乾燥している上記珪砂そのものを散布することで行う。
【0050】
珪砂の付着量としては、防錆塗膜の表面全体が、付着させた珪砂で隠れる程度以上とすることが好ましい。半硬化状態の塗膜に、乾燥している上記珪砂そのものを散布した場合には、塗膜に接着していない余分な珪砂は、塗膜が硬化した後にほうきやハケ等を使って取り除くことができるため、多量に珪砂を散布してしまっても構わない。勿論、その場合に廃棄物が増えることになるので、あまりに過剰に散布することは好ましくない。
【0051】
[塗装工程]で乾燥硬化せずに珪砂付着工程に進み、粉末状の珪砂を付着させた場合には、この段階で、塗膜の硬化乾燥を行う。硬化乾燥方法は、[塗装工程]の項で説明した通りである。
【0052】
[モルタルライニング材施工工程]
本発明において必須の工程であるモルタルライニング材施工工程は、前記金属製構造体表面の珪砂が付着した箇所に、モルタルを薄膜状に付着させる工程である。モルタル施工する箇所は、上記[珪砂付着工程]で珪砂が付着した箇所は勿論であるが、それ以外の箇所に施工しても構わない。ただし、珪砂付着による本発明の効果を得るためには、珪砂が付着した箇所にモルタル施工する必要があり、その意味で、既述の如く、より広い面に珪砂を付着させることが望ましく、さらに金属製構造物全面に珪砂を付着させることがより望ましい。図1(f)に、本工程によりモルタルを薄膜状に付着させ、モルタルライニング材層22が形成された状態を示す。
【0053】
モルタル施工において用いるフレッシュモルタルとしては、一般的に使用されている各種フレッシュモルタルを問題なく使用することができる。このとき、特にプレミックスモルタル製品(モルタルを構成する組成成分を、予め、混合して製品化したもの)を使用して、フレッシュモルタルを調製することが好ましい。その理由は、プレミックスモルタル製品は設備の揃った工場で一定の品質管理の元で製造されるので、これを用い、施工条件を守れば一定の安定した品質が得られるためである。
【0054】
用いるフレッシュモルタルとしては、少なくとも、ポルトランドセメント、高炉セメントおよびフライアッシュセメントからなる群より選ばれる少なくとも1種のセメントと、砂等の骨材と、混和剤と、合成繊維、天然繊維およびエマルジョン系樹脂成分からなる群より選ばれる1種または2種以上の充填剤と、水と、からなるものが好ましい。
【0055】
これら各構成成分(セメント、骨材、混和剤および充填剤)の具体的な材料としては、従来公知のものがそれぞれ問題なく使用でき、所望とする特性に応じて最適なものをそれぞれ適宜選択すればよい。上記組成のプレミックスモルタル製品としては、例えば、日本パーカライジング(株)製のパルダインC1000等が挙げられる。
【0056】
なお、上記組成において用いる合成繊維および天然繊維としては、長短いずれのものを用いても構わない。長繊維を用いれば高強度を得やすいが、施工性が低下し、短繊維を用いればその逆となる。また、長短両繊維を混合して用いても構わない。当該繊維の長さとしては、一般的には、5mm〜20mmの範囲から選択される。
【0057】
これら各構成成分の混合割合(水セメント比を含む)としては、特に限定されず、所望とする特性に応じて公知の知見で選択すればよい。
また、上記各構成成分の他に、公知の混和材や添加剤を混合することもできる。
【0058】
モルタル施工は、常法と同様にして行われる。ただし、当該工程で形成されるモルタル層は、薄膜であることが要求され、前記金属製構造体表面の珪砂が付着した箇所全面を覆う程度の厚さから、最終的なモルタル層の厚さ(当該[モルタルライニング材施工工程]でのモルタル層と後述する[仕上げモルタル施工工程]でのモルタル層との合計厚さ)の半分程度(MAX6割程度)の厚さまでの間で、適宜選択すればよい。具体的な厚さとしては、4〜20mm程度の範囲から選択され、好ましくは5〜10mm程度の範囲である。
【0059】
モルタルライニング材施工工程において、モルタル施工後のモルタルは、一般に半乾燥される。完全には乾燥させない(未硬化)ことで、次工程の[面材貼付工程]による面材を挟んで、その次工程の[仕上げモルタル施工工程]の仕上げモルタルと一体化し、強固なモルタル層を形成することができる。なお、「未硬化」とは、フレッシュモルタルの性質で、セメントの水和反応による硬化の過程における始発から終結までの間を指す用語である。
【0060】
[面材貼付工程]
本発明において必須の第5の工程である面材貼付工程は、網、布および不織布からなる群より選ばれる少なくとも1種の面材を、前記金属製構造体表面のモルタルが付着した箇所に貼り付ける工程である。当該工程を経ることで、最終的な補修部位におけるモルタル層が、上記[モルタルライニング材施工工程]によるモルタルライニング材と、後述する[仕上げモルタル施工工程]による仕上げモルタルとの間に、本面材貼付工程による面材が介在している状態となるため、当該面材がモルタルの硬化収縮を拘束し、接着強度を高め、かつ、大きなクラックが発生することを抑制するものとなる。図1(g)に、本工程により面材24が貼り付けられた状態を示す。
【0061】
用いる面材としては、モルタル施工で一般的に用いられるラス網は勿論のこと、その他各種網、布および不織布を用いることができる。具体的に使用可能な面材としては、特に制限はないが、モルタルの収縮クラック発生等の効果をより確実ならしめる観点から好ましくは、網としてモルネット(材質:クラレビニロン、日本スタッコ(株)製)等が挙げられ、布として寒冷紗等が挙げられ、不織布としてベースネット(材質:ポリプロピレン、日本スタッコ(株)製)等が挙げられる。
【0062】
[仕上げモルタル施工工程]
本発明において必須の工程である仕上げモルタル施工工程は、前記金属製構造体表面の面材が貼り付けられた箇所に、仕上げのモルタルを付着させる工程である。図1(h)に、本工程によりモルタルを薄膜状に付着させ、仕上げモルタル層26が形成された状態を示す。
【0063】
使用可能な、ないし、好ましいフレッシュモルタル(組成成分、組成割合等を含む。)は、モルタルライニング材施工工程で説明したものと同一であり、施工に際し、両工程で同一の材料を用いても異なる材料を用いても構わないが、最終的に両者をできるだけ一体化してより高強度とするためには、また、施工性の観点からも、両工程で同一の材料を用いることが好ましい。
【0064】
モルタル施工は、常法と同様にして行われる。ただし、当該工程で形成されるモルタル層は、仕上げであることから、最終的なモルタル層の厚さ(前記[モルタルライニング材施工工程]でのモルタル層と本[仕上げモルタル施工工程]でのモルタル層との合計厚さ)が、所望の厚さとなるように調整することが好ましい。最終的なモルタル層の具体的な厚さとしては、一般的には4〜20mm程度の範囲から選択され、好ましくは5〜10mm程度の範囲である。
【0065】
仕上げモルタル施工工程において、モルタル施工後のモルタルは、硬化するまで静置(養生)される。セメントの反応を促進させるために、防水シート等を被せて養生したり、蒸気養生したりしてもよい。所定の時間静置しておくことで、モルタルが十分に硬化する。効果までに必要な時間は、温度(季節)や使用したフレッシュモルタルの組成等の各種条件により異なり一概には言えないが、一般的には3日〜1週間である。
【0066】
このように、モルタル施工が為されることで、補修箇所の遮音効果の確保、滑り防止、防水対策、構造物本体の長寿命等が確保できる。したがって、本発明の金属製構造物の補修方法を実施することにより、環境対策(溶剤の削減、省資源)、品質の向上と安定化および生産性の向上が実現できる。
【0067】
(仕上げ処理)
以上の各工程の操作を順次行うことで、本発明の金属製構造物の補修方法が実施され、上記[仕上げモルタル施工工程]により終了するが、より緻密なモルタル表面外観を得たい場合や、モルタル厚みをより確保したい場合には、さらに仕上げ処理としてのモルタル施工を施しても構わない。このモルタル施工は、さらに複数回行っても構わない。
【0068】
また、モルタル施工だけでは、所望とする防水機能や物性が得られない場合や意匠性を付与したい場合には、仕上げモルタル施工工程の後に、仕上げ処理として塗装仕上げすることが好ましい。塗装方法、塗装に供する塗料等に制限は無く、従来公知の全てのものを問題なく採用することができる。
【0069】
−補修対象となる金属製構造物−
以上説明した本発明の金属製構造物の補修方法において、補修対象となる金属製構造物は、金属材料からなる金属製構造体を躯体とする金属製構造物であるが、該金属の材質としては、一般的には鉄、ステンレス等の他、これら金属を含む合金、これら金属および合金の表面に各種メッキが施されたメッキ板等が挙げられる。本発明においては、特に制限は無い。
【0070】
本発明の金属製構造物の補修方法により、金属製構造体表面に防錆塗装層およびモルタル層(面材を含む)が形成された状態となるが、補修対象となる金属製構造物においては、特にこのような構成である必要は無く、広く金属製構造体を躯体とする金属製構造物について、本発明を適用し得る。すなわち、金属製構造体が裸のままの状態である金属製構造物の他、表面に防錆塗装が施された物、全面あるいは一部の面にモルタル施工が施された物等について、劣化箇所を生じた際に、本発明を適用することができる。具体的には、マンションやビルディング等高層建築物の非常階段、プレハブ住宅の外階段、横断歩橋道、デッキ、橋梁の壁材、各種フェンス等に適用することができる。
また、以上説明したように優れた効果があるので、本発明は、金属製の部位に限らず、鉄筋コンクリート部や一般コンクリート部の補修、また屋上防水にも転用することができる。
【0071】
【実施例】
本発明の金属製構造物の補修方法を、実物件に施工した実施例および比較例を挙げて、さらに具体的に説明する。
[実施例1および比較例1]
屋外で約17年間使用されて、水切りの悪い場所にはMax20cmφ程度の十数箇所の穴開きがあり、当該箇所には別途鋼板を貼り付けた状態の鋼製階段で、▲1▼階段部(デッキプレート、サイズ50×180×0.3cm)および▲2▼踊り場(デッキプレート、サイズ100×120×0.3cm)を補修対象として、実施例1および比較例1の補修操作を行った。各操作の詳細は、下記表1に示す通りである。
【0072】
【表1】
Figure 2004162384
【0073】
以上のような各補修作業を行い、1年間屋外で使用した後の外観状況を下記表2に示す。表2に示すように、本発明の金属製構造物の補修方法による実施例1では、いずれの箇所においてもモルタル表面にクラックが発生していないのに対し、従来の方法である比較例1では、モルタル表面にクラックが発生してしまった。
【0074】
【表2】
Figure 2004162384
【0075】
[実施例2〜9および比較例2〜9]
屋外で10年間使用されて、全体に錆が発生し、かつ、塗膜劣化が生じており、一部に穴開き腐食も見られる状態の鋼製階段で、▲1▼階段部(デッキプレート、サイズ50×180×0.3cm)および▲2▼踊り場(デッキプレート、サイズ100×120×0.3cm)を補修対象として、実施例2および比較例2の補修操作を行った。各操作の詳細は、下記表3に示す通りである。
【0076】
【表3】
Figure 2004162384
【0077】
実施例2〜9では、下記表4に示す通り、表面除去工程における加温高圧洗浄の条件を変えて、各補修作業を行った。また、比較例2〜9では、下記表5に示す通り、表面除去工程における劣化部除去の程度、溶剤拭きの有無、放置時間をそれぞれ振って、各補修作業を行った。これら各実施例および比較例は、同一の補修対象の中で、同程度の腐食状況の場所を選び、それぞれ行った。
【0078】
【表4】
Figure 2004162384
【0079】
【表5】
Figure 2004162384
【0080】
なお、上記表5における劣化箇所除去の程度は、サンダー掛けに際して、時間をかけて十分かつ丹念に、しかも金属製構造体(母材)表面に傷付けないように行ったものを○、時間を短縮し、若干の劣化塗膜や錆が残存している状態で終了したものを△、大雑把に作業をし、劣化塗膜や錆が目立って残存している状態で終了したものを×と、それぞれ表記した。
上記各実施例および比較例において、以下の評価を行った。結果は下記表6にまとめて示す。
【0081】
(1:劣化箇所除去の程度)
劣化塗膜や浮き錆の除去状況と金属製構造体(母材)表面への傷付き状態を目視により判定した。評価基準は以下の通りである。なお、各比較例では、サンダー掛けの程度を調節して、意図的に各結果となるようにしている。
◯:劣化塗膜や浮き錆がほとんど残っておらず、金属製構造体(母材)表面の傷付き程度も少ない。
△:劣化塗膜や浮き錆が若干残っている、または、金属製構造体(母材)表面に傷付きがやや見られる。
×:劣化塗膜や錆が目立って残存している、または、金属製構造体(母材)表面に傷付きが目立つ。
【0082】
(2:清浄状態)
表面除去工程終了後の金属性構造物の補修対象箇所について、異物(特に密着の弱い劣化塗膜や粉と浮き錆、金属の研磨粉、油膜等)の付着状況を目視により観察して評価した。評価基準は以下の通りである。
◯:異物の付着がほとんど見られず良好
△:異物の付着が若干見られるが、全体としては少ない。
×:異物の付着が目立ち不良。
【0083】
(3:防錆塗装の塗膜厚)
防錆塗装の塗膜厚は、膜厚計(kett膜厚計LZ−200W、ケット(株))を使用して5箇所測定し、その平均値を5μm単位で表示した。
【0084】
(4:モルタル部の接着強度)
仕上げモルタル施工工程の硬化で、そのままの状態で28日間気乾養生し、その後モルタル部の接着強度試験を行った。接着強度は、建研式接着力試験器(型式LPT−400、山本打重機(株)製)を使用して各任意の3箇所で測定し、その平均値を求めた。得られた値から、以下の評価基準で評価した。
◯:1.0MPa以上
△:0.5MPa以上1.0MPa未満
×:0.5MPa未満
【0085】
【表6】
Figure 2004162384
【0086】
表6に示すように、本発明の金属製構造物の補修方法による実施例2〜9では、劣化箇所における劣化塗膜や浮き錆が、簡単な操作で良好に除去され、かつ、異物の付着が見られず、最終的なモルタル部の接着強度についても十分であった。これに対し、従来の方法である比較例2〜9では、劣化箇所における劣化塗膜や浮き錆を除去するのに手間が掛かり、異物も残りやすく、仮にこれらについて良好であっても、最終的なモルタル部の接着強度が不十分であった。
【0087】
【発明の効果】
本発明の金属製構造物の補修方法によれば、防錆塗装による塗膜とモルタルとの間の接着性不良や、モルタル表面に発生し易い乾燥収縮からの大きなクラックの発生を抑制し得る、防錆性と耐久性とを兼ね備えた金属製構造物の補修方法を提供することができ、品質の向上と工期の短縮を図ることが可能である。また、モルタル仕上げを行っているため、遮音性、耐滑り防止、耐候性、表面の固さ等が確保できる。
【0088】
また、前記表面除去工程に、加温高圧水を利用することにより、劣化箇所における残存付着物ないし劣化物の除去に際して、劣化塗膜や錆の除去が十分で、金属製構造体の表面を傷付けることなく、大面積あるいは複雑な箇所や、錆の激しい箇所でも除去効率が高く、除去作業の後の清浄作業をも省略し得る、簡便な金属製構造物の補修方法を提供することができる。
【0089】
さらに、防錆塗料を一般溶剤型防錆塗料から溶剤量20%以下のエポキシ樹脂系塗料にグレードアップすることにより、環境対策(溶剤の低減)、および品質の向上と性能の安定化が得られ、防錆塗装においても1回塗りで十分な防錆性能を確保し得る、簡便な金属製構造物の補修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属製構造物の補修方法による工程ごとの状態を示す、補修対象となる劣化箇所の模式断面図である。
【符号の説明】
10 金属製構造体
12 当初の防錆塗膜
14 錆(劣化物)
16 金属板
18 防錆塗膜
20 珪砂
22 モルタルライニング材層
24 面材
26 仕上げモルタル層

Claims (9)

  1. 金属製構造体を躯体とする金属製構造物について、経時により劣化箇所を生じた際の補修方法であって、少なくとも、
    前記劣化箇所における残存付着物ないし劣化物を除去して金属製構造体表面を露出させる表面除去工程と、
    前記露出した金属製構造体表面に、防錆塗装を施す塗装工程と、
    前記金属製構造体表面の少なくとも防錆塗装された箇所に、珪砂を付着させる珪砂付着工程と、
    前記金属製構造体表面の少なくとも珪砂が付着した箇所に、モルタルを薄膜状に付着させるモルタルライニング材施工工程と、
    網、布および不織布からなる群より選ばれる少なくとも1種の面材を、前記金属製構造体表面のモルタルが付着した箇所に貼り付ける面材貼付工程と、
    前記金属製構造体表面の面材が貼り付けられた箇所に、仕上げのモルタルを付着させる仕上げモルタル施工工程と、
    からなり、上記各工程の操作をこの順で行うことを特徴とする金属製構造物の補修方法。
  2. 前記表面除去工程と前記塗装工程との間に、前記金属製構造体の欠陥を修復する修復工程が行われることを特徴とする請求項1に記載の金属製構造物の補修方法。
  3. 前記表面除去工程が、加温高圧水と接触させることにより、前記劣化箇所における残存付着物ないし劣化物を除去する工程であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属製構造物の補修方法。
  4. 前記加温高圧水の温度が50℃以上であり、かつその圧力が5MPa〜12MPaの範囲であることを特徴とする請求項3に記載の金属製構造物の補修方法。
  5. 前記塗装工程における防錆塗装が、エポキシ樹脂系塗料を塗布することによって行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の金属製構造物の補修方法。
  6. 前記エポキシ樹脂系塗料が、溶剤量20質量%以下で、1液硬化型もしくは2液硬化型の、エポキシ樹脂塗料もしくはエポキシ変性樹脂塗料、ないしその混合物であることを特徴とする請求項5に記載の金属製構造物の補修方法。
  7. 前記エポキシ樹脂系塗料が、錆転換機能を有することを特徴とする請求項5または6に記載の金属製構造物の補修方法。
  8. 前記モルタルライニング材施工工程および/または仕上げモルタル施工工程において、施工に供するフレッシュモルタルが、少なくとも、ポルトランドセメント、高炉セメントおよびフライアッシュセメントからなる群より選ばれる少なくとも1種のセメントと、骨材と、混和剤と、合成繊維、天然繊維およびエマルジョン系樹脂成分からなる群より選ばれる1種または2種以上の充填剤と、水と、からなるフレッシュモルタルであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の金属製構造物の補修方法。
  9. 前記面材付着工程において使用される面材が、天然繊維、合成繊維、混紡繊維からなる群より選ばれる1種または2種以上の材料からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の金属製構造物の補修方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013249668A (ja) * 2012-06-01 2013-12-12 Kikusui Chemical Industries Co Ltd 金属製雨樋の改修方法

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