二次電池
本発明の二次電池は、水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータを用いたものである。本発明の二次電池は、ニッケル亜鉛二次電池、酸化銀亜鉛二次電池、酸化マンガン亜鉛二次電池、亜鉛空気二次電池、及びその他各種のアルカリ亜鉛二次電池、並びにリチウム空気二次電池等、水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータを適用可能な各種二次電池であることができる。特に、ニッケル亜鉛二次電池及び亜鉛空気二次電池が好ましい。したがって、以下の一般的説明において、ニッケル亜鉛二次電池に関する図1、3及び5並びに亜鉛空気二次電池に関する図2、4及び6に言及することがあるが、本発明の二次電池はニッケル亜鉛二次電池及び亜鉛空気二次電池に限定されるべきではなく、水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータを採用可能な上述の各種二次電池を概念的に包含するものである。
本発明による二次電池は、多孔質基材、正極、負極、正極内部集電体、負極内部集電体、水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータ、及びアルカリ電解液を備えてなる。多孔質基材は柱状の形状(例えば円柱状又は角柱状)を有し、互いに対向する第一端面及び第二端面並びにこれらの端面の外周縁を連結する外周面を備える。多孔質基材は、第一端面から第二端面に向かって且つ/又は第二端面から第一端面に向かって互いに平行に設けられた複数のセル孔を備えてなる。正極及び負極は、複数のセル孔内に孔毎又は孔列毎に交互に配設される。正極内部集電体は、正極内に挿入され、第一端面又は外周面に延在する。一方、負極内部集電体は、負極内に挿入され、第二端面、外周面又は第一端面に延在する。水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータは、セル孔の内壁面に形成され、正極及び/又は負極を多孔質基材と隔離する。そして、正極及び/又は負極並びに多孔質基材はアルカリ電解液で含浸される。このように、所定の方向に互いに平行に設けられた複数のセル孔を備えた柱状の多孔質基材を用い、そのセル孔の内壁面に水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータを形成した上で正極及び/又は負極を配設することで、正負極間をセパレータで確実に隔離しながら、複数の単位電池がスペース効率良く組み込まれた二次電池を構成することができる。特に、かかる電池構造は、高強度の確保、反応面積の増大による高出力化、及び集電のし易さといった点で極めて有利である。すなわち、柱状の多孔質基材は塊ないしバルクとしての一体性を有しうるため高強度を確保しやすい。このため、多孔質基材にはセル孔を数多く設けて電極及び内部集電体を幾多にも配設することができ、それにより反応面積を飛躍的に増大することができる。その上、セル孔を所望の規則性を持って形成することで、多孔質部材の両端面(すなわち第一端面及び第二端面)やその他の外周面にまで所望の電極に対応した内部集電材を延在させやすく、それらの延在部分には外部集電体も配設しやすい。すなわち集電もしやすい構成となる。
正極及び負極は複数のセル孔内に孔毎又は孔列毎に交互に配設される。正極は二次電池の種類に応じて適宜選択すればよく、空気極であってもよい。負極も二次電池の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば各種亜鉛二次電池の場合、亜鉛、亜鉛合金及び/又は亜鉛化合物を含みうる。この場合、正極が水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含んでなり、それにより二次電池がニッケル亜鉛二次電池として構成されるのが好ましい。あるいは、正極が空気極であり、正極内部集電体及び所望により正極外部集電体が通気性を有し、それにより二次電池が亜鉛空気二次電池として構成されるのも好ましい。アルカリ電解液で含浸される正極及び/又は負極並びに多孔質基材は容器(好ましくは樹脂製容器)に収容されうる。なお、正極及びアルカリ電解液は必ずしも分離している必要はなく、正極とアルカリ電解液が混合された正極合材として構成されてもよいし、正極が空気極の場合にはそもそも正極側に電解液は不要である。また、負極及びアルカリ電解液は必ずしも分離している必要はなく、負極とアルカリ電解液が混合された負極合材として構成されてもよい。
正極内部集電体は、正極内に挿入され、第一端面又は外周面に延在する。負極内部集電体は、負極内に挿入され、第二端面、外周面又は第一端面に延在する。すなわち、正極内部集電体と負極内部集電体は、互いに異なる面(例えば第一端面と第二端面)又は互いに異なる位置(例えば外周面の互いに異なる側)に延在してもよいし、互いに短絡しないかぎりにおいて同じ側の端面(例えば第一端面)に延在していてもよい。もっとも、正極内部集電体と負極内部集電体が互いに異なる面ないし位置に延在しているのが、集電しやすく、また、外部集電体を配設するためのスペースを確保しやすい点で好ましい。
多孔質基材は、柱状(例えば円柱状又は角柱状)の形状を有し、互いに対向する第一端面及び第二端面並びにこれらの端面の外周縁を連結する外周面を備える。すなわち、多孔質基材の外表面は第一端面、第二端面及び外周面で主に構成されているといえる。多孔質基材には、第一端面から第二端面に向かって且つ/又は第二端面から第一端面に向かって互いに平行に設けられた複数のセル孔を備えてなる。セル孔は貫通孔であっても非貫通孔であってもよい。また、貫通孔の一端が封止部材(例えばセラミックスや樹脂)で封止されて結果的に非貫通孔とされてもよく、この場合の孔については以下の説明では非貫通孔として扱うものとする。貫通孔である場合、第一端面から第二端面に向かって互いに平行に設けられた形成される複数のセル孔は、第二端面から第一端面に向かって互いに平行に設けられた複数のセル孔と同じものを指すことになる。非貫通孔である場合、第一端面から第二端面に向かって互いに平行に設けられた複数のセル孔と、第二端面から第一端面に向かって互いに平行に設けられた複数のセル孔との両方を備えてなるのが、第一端面側に開放された非貫通孔と第二端面側に開放された非貫通孔とをそれぞれ正極と負極に割り当て、正極集電体と負極集電体を互いに対向する側に延出可能となる点で好ましい。もっとも、複数のセル孔を、第一端面から第二端面に向かって互いに平行に設けられた複数の非貫通孔のみで構成してもよいし、第二端面から第一端面に向かって互いに平行に設けられた複数の非貫通孔のみで構成してもよいが、これらの場合には全ての非貫通孔が同じ側に開放されることになる結果、正極集電体と負極集電体が同じ側に延出することになる。いずれにせよ、前述したとおり、柱状の多孔質基材は塊ないしバルクとしての一体性を有しうるため、高強度の確保、反応面積の増大による高出力化、及び集電のし易さといった点で極めて有利な二次電池構造を実現可能とする。多孔質基材は透水性を有し、それ故アルカリ電解液がセパレータに到達可能であることはいうまでもないが、多孔質基材があることでセパレータ上により安定に水酸化物イオンを保持することも可能となる。また、多孔質基材により強度を付与できるため、セパレータを薄くして低抵抗化を図ることもできる。そして、多孔質基材のセル孔の内壁面には水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータとして無機固体電解質体(好ましくはLDH)の緻密膜ないし緻密層を形成することができる。
本発明の好ましい態様によれば、セル孔が非貫通孔であり、多孔質基材が複数の非貫通孔を規則的に備えたハニカム状であることができる。本態様によるニッケル亜鉛二次電池の一例が図1に模式的に示される。図1にニッケル亜鉛二次電池10は円柱状の多孔質基材12を有しており、この多孔質基材12は、第一端面12aから第二端面12bに向かって互いに平行に設けられた複数の非貫通孔12dと、第二端面12bから第一端面12aに向かって互いに平行に設けられた複数の非貫通孔12eとを有する。正極14及び負極16は複数の非貫通孔12d,12e内に孔毎に交互に配設される。これらの複数の非貫通孔12d,12eが規則的に形成されることで多孔質基材12がハニカム状とされてなる。水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータ18は全ての非貫通孔12d,12eの内壁面に形成されてもよいが、図1に示されるように正極14が収容される非貫通孔12dの内壁面にのみ形成されてもよいし、負極16が収容される非貫通孔12eの内壁面にのみ形成されてもよい。いずれにせよ、このようなハニカム構成においては、多孔質基材12の第一端面12aから第二端面12bに向かって形成された非貫通孔12dに正極14及び正極内部集電体15aが収容され、且つ、第二端面12bから第一端面12aに向かって形成された非貫通孔12eに負極16及び負極内部集電体17aが収容され、それにより正極内部集電体15aと負極内部集電体17aが互いに反対の端面12a,12bに延在してなるのが好ましい。このように正極14と負極16が互いに異なる側に開口された非貫通孔12d,12eに収容されることで正負極間の短絡を確実に防止しながら、正極14及び負極16を幾多にも設けて反応面積を顕著に増大して高出力化を実現することができる。また、正極内部集電体15aと負極内部集電体17aが互いに反対の端面12a,12bに延在するため、集電もしやすい。この点、複数の正極内部集電体15aの端部と接続される正極外部集電体15bを第一端面12aに設け、複数の負極内部集電体16aの端部と接続される負極外部集電体16bを第二端面12bに設けるのが集電能力を更に高められる点でより好ましい。また、正極外部集電体15b及び負極外部集電体16bはそれぞれ第一端面12a及び第二端面12bに対応した形状に形成され、それにより第一端面12a及び第二端面12bがそれぞれ正極外部集電体15b及び負極外部集電体16bで塞がれるのが特に好ましい。
上記ハニカム構造の二次電池は図1に示されるニッケル亜鉛二次電池10に限定されるものではなく、他の種類の亜鉛二次電池に適用可能である。例えば亜鉛空気二次電池の場合には正極に空気が到達できるように正極集電体が通気性を有するように構成するのが好ましい。かかるハニカム構造の亜鉛空気二次電池の一例が図2に示される。図2に示されるハニカム構造の亜鉛空気二次電池20は、円柱状の多孔質基材22、負極26、負極内部集電体27a及び負極外部集電体27bについては図1に示される円柱状の多孔質基材12、負極16、負極内部集電体17a及び負極外部集電体17bと同様に構成されうるが、正極としての空気極24、正極内部集電体25a及び正極外部集電体25bは図1に示されるものとは異なり、空気極24に外部から空気が供給されうるように構成されることが望まれる。水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータ28は全ての非貫通孔22d,22eの内壁面に形成されてもよいし、図2に示されるように空気極24が収容される非貫通孔22dの内壁面にのみ形成されてもよい。いずれにしても、図2に示されるように、正極内部集電体25aは中空形状や発泡構造等の通気性を有する構造として外部からの空気が流入可能とされてなるのが好ましい。この場合、正極内部集電体25aと連結される正極外部集電体25bには正極内部集電体25aの中空形状や発泡構造等の通気性構造と連通する通気口25cが形成されるのが望ましい。かかる構成によれば十分な集電機能を確保しながら空気極24への空気の供給を効率的に行うことができる。また、正極外部集電体25b及び負極外部集電体26bは、正極外部集電体25bに通気口25cが形成される点を除いて、それぞれ第一端面22a及び第二端面22bに対応した形状に形成され、それにより第一端面22aの非貫通孔22d以外の部分と第二端面22bがそれぞれ正極外部集電体25b及び負極外部集電体26bで塞がれるのが特に好ましい。
本発明の別の好ましい態様によれば、セル孔が貫通孔であり、多孔質基材が複数の貫通孔を規則的に備えたモノリス状であることができる。本態様によるニッケル亜鉛二次電池の一例が図3に模式的に示される。図3に示されるニッケル亜鉛二次電池30は角柱状の多孔質基材32を有しており、この多孔質基材32は、第一端面32aから第二端面32bに向かって(又は第二端面32bから第一端面32aに向かって)互いに平行に設けられた複数の貫通孔32dを有する。正極34及び負極36は複数の貫通孔32d内に孔毎に交互に配設される。これらの複数の非貫通孔32dが規則的に形成されることで多孔質基材32がモノリス状とされてなる。水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータ38は全ての貫通孔32dの内壁面に形成されてもよいが、図3に示されるように正極34が収容される貫通孔32dの内壁面にのみ形成されてもよいし、負極36が収容される貫通孔32dの内壁面にのみ形成されてもよい。いずれにせよ、かかるモノリス構成においては、正極34内に挿入される正極内部集電体35aが、多孔質基材32に形成されたスリット32eを介して外周面32cに延在し、負極36内に挿入される負極内部集電体37aが、多孔質基材32に形成された別のスリット32fを介して外周面32cに延在するのが好ましい。このように正極34と負極36が互いに異なる貫通孔32dに収容されることで正負極間の短絡を確実に防止しながら、正極34及び負極36を幾多にも設けて反応面積を顕著に増大して高出力化を実現することができる。また、正極内部集電体35aと負極内部集電体37aが互いに異なるスリット32e,32fを介して外周面32cに延在するため、集電もしやすい。この点、複数の正極内部集電体35aの端部と接続される正極外部集電体35bを外周面32cに設け、複数の負極内部集電体37aの端部と接続される負極外部集電体37bを外周面32cの正極外部集電体35bの存在しない領域に設けるのが、集電能力を更に高められる点でより好ましい。例えば、正極外部集電体35bが外周面32cの特定の側に設けられ、負極外部集電体37bが外周面32cの正極外部集電体35bと反対側に設けられるのが十分な面積の外部集電体を配置しやすい点で特に好ましい。
上記モノリス構造の二次電池は図3に示されるニッケル亜鉛二次電池30に限定されるものではなく、他の種類の亜鉛二次電池に適用可能である。例えば亜鉛空気二次電池の場合には正極に空気が到達できるように正極集電体が通気性を有するように構成するのが好ましい。かかるモノリス構造の亜鉛空気二次電池の一例が図4に示される。図4に示されるモノリス構造の亜鉛空気二次電池40は、角柱状の多孔質基材42、負極46、負極内部集電体47a及び負極外部集電体47bについては図3に示される角柱状の多孔質基材32、負極36、負極内部集電体37a及び負極外部集電体37bと同様に構成されうるが、正極としての空気極44、正極内部集電体45a及び正極外部集電体45bは図3に示されるものとは異なり、空気極44に外部から空気が供給されうるように構成されることが望まれる。水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータ48は全ての貫通孔42dの内壁面に形成されてもよいし、図4に示されるように空気極44が収容される貫通孔42dの内壁面にのみ形成されてもよい。いずれにしても、図4に示されるように、正極内部集電体45aは中空形状や発泡構造等の通気性を有する構造として外部からの空気が流入可能とされてなるのが好ましい。この場合、正極内部集電体45aと連結される正極外部集電体45bには正極内部集電体45aの中空形状や発泡構造等の通気性構造と連通する通気口45cが形成されるのが望ましい。かかる構成によれば十分な集電機能を確保しながら空気極44への空気の供給を効率的に行うことができる。
図3及び図4に示されるモノリス構造の二次電池30,40はそれぞれ角柱状の多孔質基材32,42を用いるものであるが、円柱状の多孔質基材を採用してもよいのはいうまでもない。図5及び6に円柱状の多孔質基材を用いたモノリス構造のニッケル亜鉛二次電池50及び亜鉛空気二次電池60の例をそれぞれ示す。図5に示されるモノリス構造のニッケル亜鉛二次電池50は、正極54、負極56、正極内部集電体55a、負極内部集電体57a及びセラミックスセパレータ58については図3に示される正極34、負極36、正極内部集電体35a、負極内部集電体37a及びセラミックスセパレータ38と同様に構成されうるが、多孔質基材52が円柱状に構成され、それに伴い正極外部集電体55b及び負極外部集電体57bが円柱状多孔質基材52の外周面に沿った曲面状に形成される。図6に示されるモノリス構造の亜鉛空気二次電池60は、空気極64、負極66、正極内部集電体65a、負極内部集電体67a及びセラミックスセパレータ68については図4に示される空気極44、負極46、正極内部集電体45a、負極内部集電体47a及びセラミックスセパレータ48と同様に構成されうるが、多孔質基材62が円柱状に構成され、それに伴い正極外部集電体65b及び負極外部集電体67bが円柱状多孔質基材62の外周面に沿った曲面状に形成される。
上述したいずれの態様においても、水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータは、セル孔の内壁面に形成され、正極及び/又は負極を多孔質基材と隔離するように設けられる、典型的には膜状ないし層状の部材である。セラミックスセパレータは少なくとも一方の側がアルカリ電解液と接触することで、正極側と負極側との間で必要な水酸化物イオンの効率的な移動を可能として正極及び負極における充放電反応を実現することができる。前述のとおり、このようなセラミックスセパレータを用いて亜鉛ニッケル電池、亜鉛空気二次電池等の二次電池を構成した場合、亜鉛デンドライトによる短絡や(特に金属空気二次電池の場合に問題となる)二酸化炭素の混入を防止できる。そして、この効果を最大限に発揮させるためには、水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータで正極側区画と負極側区画に確実に仕切ることが望まれる。この点、本発明の構成によれば、水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータが多孔質基材のセル孔の内壁面に形成されることで、正極と多孔質基材との間及び/又は負極と多孔質基材との間を水酸化物イオン伝導性を確保しながら確実に隔離することができる、すなわち二次電池内における正極側区画と負極側区画を水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータで確実に仕切ることができる。
水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータは、透水性(より望ましくは透水性及び通気性)を有しない程に緻密化された膜状又は層状の形態であるのが好ましい。すなわち、セパレータないし無機固体電解質体が透水性及び通気性を有しないということは、セパレータないし無機固体電解質体が水及び気体を通さない程の高度な緻密性を有することを意味し、透水性や通気性を有する多孔性フィルムやその他の多孔質材料ではないことを意味する。このため、亜鉛二次電池の場合には、充電時に生成する亜鉛デンドライトによるセパレータの貫通を物理的に阻止して正負極間の短絡を防止するのに極めて効果的な構成となる。また、金属空気二次電池の場合には、空気中の二酸化炭素の侵入を阻止して電解液中での(二酸化炭素に起因する)アルカリ炭酸塩の析出を防止するのに極めて効果的な構成となる。いずれにしても、セラミックスセパレータは水酸化物イオン伝導性を有するため、正極側と負極側との間で必要な水酸化物イオンの効率的な移動を可能として正極及び負極における充放電反応を実現することができる。
セラミックスセパレータは水酸化物イオン伝導性を有する無機固体電解質体からなるのが好ましい。セパレータとして水酸化物イオン伝導性の無機固体電解質体を用いることで、正負極間の電解液を隔離するとともに水酸化物イオン伝導性を確保する。無機固体電解質体は透水性及び通気性を有しない程にまで緻密化されていることが望まれる。例えば、無機固体電解質体は、アルキメデス法で算出して、90%以上の相対密度を有するのが好ましく、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上であるが、亜鉛デンドライトの貫通を防止する程度に緻密で硬いものであればこれに限定されない。このような緻密で硬い無機固体電解質体は水熱処理を経て製造することが可能である。したがって、水熱処理を経ていない単なる圧粉体は、緻密でなく、溶液中で脆いことから本発明の無機固体電解質体として好ましくない。もっとも、水熱処理を経たものでなくても、緻密で硬い無機固体電解質体が得られるかぎりにおいて、あらゆる製法が採用可能である。
セラミックスセパレータないし無機固体電解質体は、水酸化物イオン伝導性を有する無機固体電解質を含んで構成される粒子群と、これら粒子群の緻密化や硬化を助ける補助成分との複合体であってもよい。あるいは、セパレータは、基材としての開気孔性の多孔質体と、この多孔質体の孔を埋めるように孔中に析出及び成長させた無機固体電解質(例えば層状複水酸化物)との複合体であってもよい。この多孔質体を構成する物質の例としては、アルミナ、ジルコニア等のセラミックスや、発泡樹脂又は繊維状物質からなる多孔性シート等の絶縁性の物質が挙げられる。
無機固体電解質体は、一般式:M2+ 1−xM3+ x(OH)2An− x/n・mH2O(式中、M2+は2価の陽イオンであり、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数であり、xは0.1〜0.4であり、mは0以上である)の基本組成を有する層状複水酸化物(LDH)を含んでなるのが好ましく、より好ましくはそのようなLDHからなる。上記一般式において、M2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg2+、Ca2+及びZn2+が挙げられ、より好ましくはMg2+である。M3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl3+又はCr3+が挙げられ、より好ましくはAl3+である。An−は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH−及びCO3 2−が挙げられる。したがって、上記一般式において、M2+がMg2+を含み、M3+がAl3+を含み、An−がOH−及び/又はCO3 2−を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは0.1〜0.4であるが、好ましくは0.2〜0.35である。mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数ないし整数である。また、上記一般式においてM3+の一部または全部を4価またはそれ以上の価数の陽イオンで置き換えてもよく、その場合は、上記一般式における陰イオンAn−の係数x/nは適宜変更されてよい。
無機固体電解質体は水熱処理によって緻密化されたものであるのが好ましい。水熱処理は、層状複水酸化物、とりわけMg−Al型層状複水酸化物の一体緻密化に極めて有効である。水熱処理による緻密化は、例えば、特許文献1(国際公開第2013/118561号)に記載されるように、耐圧容器に純水と板状の圧粉体を入れ、120〜250℃、好ましくは180〜250℃の温度、2〜24時間、好ましくは3〜10時間で行うことができる。もっとも、水熱処理を用いたより好ましい製造方法については後述するものとする。
無機固体電解質体は、膜状又は層状のいずれかの形態であるのが好ましく、この場合、膜状又は層状の無機固体電解質体が多孔質基材上又はその中に形成されたものであるのが好ましい。特に、厚さが薄い膜状又は層状の形態であると亜鉛デンドライトの貫通を阻止するための必要最低限の堅さを確保しながらセパレータの抵抗を有意に低減できるとの利点がある。膜状又は層状の形態の場合には、厚さが100μm以下であるのが好ましく、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは25μm以下、最も好ましくは5μm以下である。このように薄いことでセパレータの低抵抗化を実現できる。厚さの下限値は用途に応じて異なるため特に限定されないが、セパレータ膜ないし層として望まれるある程度の堅さを確保するためには厚さ1μm以上であるのが好ましく、より好ましくは2μm以上である。
正極及び/又は負極並びに多孔質基材はアルカリ電解液で含浸されるのが好ましい。電解液は、二次電池に採用可能ないかなるアルカリ電解液であってもよいが、アルカリ金属水酸化物水溶液であるのが好ましい。アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等が挙げられるが、水酸化カリウムがより好ましい。亜鉛二次電池の場合、亜鉛合金の自己溶解を抑制するために、電解液中に酸化亜鉛、水酸化亜鉛等の亜鉛化合物を添加してもよい。前述のとおり、アルカリ電解液は正極及び/又は負極と混合させて正極合材及び/又は負極合材の形態で存在させてもよい。また、電解液の漏洩を防止するために電解液をゲル化してもよい。ゲル化剤としては電解液の溶媒を吸収して膨潤するようなポリマーを用いるのが望ましく、ポリエチレンオキサイド,ポリビニルアルコール,ポリアクリルアミドなどのポリマーやデンプンが用いられる。
セパレータが層状複水酸化物(LDH)を含む場合、電解液にはAlを含む化合物が溶解されてなるのが好ましい。水酸化カリウム水溶液等のアルカリ金属水酸化物水溶液にLDHを接触させた場合、LDHの典型的な構成元素であるAlが水溶液中に溶出して緻密膜の劣化を招くことがあるが、Alを含む化合物を電解液に添加しておくことでそのようなAlの溶出及びそれによる緻密膜の劣化を防止することができる。このAlは、何らかの形態で電解液に溶解されていればよく、典型的には、金属イオン、水酸化物及び/又はヒドロキシ錯体の形態で電解液に溶解されうる。例えば、Alが溶解される形態としては、Al3+、Al(OH)2+、Al(OH)2 +、Al(OH)3 0、Al(OH)4 −、Al(OH)5 2−等が挙げられる。Alを含む金属化合物の好ましい例としては、水酸化アルミニウム、γアルミナ、αアルミナ、ベーマイト、ダイアスポア、ハイドロタルサイト、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは水酸化アルミニウム及び/又はγアルミナであり、最も好ましくは水酸化アルミニウムである。Alを含む化合物は電解液におけるAl濃度が0.001mol/L以上となるように添加するのが好ましく、より好ましくは0.01mol/L以上、さらに好ましくは0.1mol/L以上、特に好ましくは1.0mol/L以上、最も好ましくは2.0mol/L以上、3.0mol/L超、又は3.3mol/L以上である。電解液におけるAlの濃度の上限値は特に限定されず、Al化合物の飽和溶解度に達していてもよいが、例えば20mol/L以下又は10mol/L以下である。
多孔質基材、正極、負極、正極内部集電体、負極内部集電体、水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータ、及びアルカリ電解液は容器に収容されるのが好ましい。特に、本発明の二次電池においては柱状の多孔質基材は正極、負極、正極内部集電体、負極内部集電体、水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータ、及びアルカリ電解液を内部に備えているため、多孔質基材がそのまま容器に収容される構成とすればよい。これによりアルカリ電解液を確実に二次電池内に保持することができる。ただし、正極が空気極である場合には空気極に外部の空気が供給されうるように空気極用開口部を備えることが望まれるのはいうまでもない。また、正極外部集電体及び/又は負極外部集電体が容器の一部を構成してもよい。いずれにしても、少なくとも多孔質基材、正極(ただし空気極の場合を除く)、正極内部集電体(ただし空気極用の場合を除く)、負極、負極内部集電体、水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータ、及びアルカリ電解液は容器(或いは容器と外部集電体との複合部材)によって確実に密閉されるのが好ましい。したがって、容器は液密性及び気密性を有する構造を有するのが好ましい。容器は好ましくは樹脂製容器であり、樹脂製容器を構成する樹脂は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物に対する耐性を有する樹脂であるのが好ましく、より好ましくはポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、変性ポリフェニレンエーテルであり、さらに好ましくはABS樹脂もしくは変性ポリフェニレンエーテルである。容器にはセラミックスセパレータ及び/又は多孔質部材が市販の接着剤を用いて又は熱融着により固定されるのが好ましい。
ニッケル亜鉛二次電池
本発明の好ましい態様によれば、ニッケル亜鉛二次電池が提供される。そこで、水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータを多孔質基材とともに用いたニッケル亜鉛二次電池の基本構成について以下に説明する。なお、以下の説明は、説明の便宜のため、本発明のような複数のセル孔を有する形態ではなく、より簡素な単位電池に基づいて行うものとするが、以下に開示される基本構成は技術的整合性を損なわない範囲内で本発明の二次電池にも同様に当てはまるものである。図7に、ニッケル亜鉛二次電池の一例を模式的に示す。図7に示されるニッケル亜鉛二次電池は充電が行われる前の初期状態を示しており、放電末状態に相当する。もっとも、本態様のニッケル亜鉛二次電池は満充電状態で構成されてもよいのはいうまでもない。図7に示されるように、本態様によるニッケル亜鉛二次電池110は、正極112、正極電解液114、負極116、負極電解液118、及びセラミックスセパレータ120を容器122内に備えてなる。正極112は、水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含んでなる。正極電解液114はアルカリ金属水酸化物を含んでなるアルカリ電解液であり、正極112が浸漬される。負極116は亜鉛及び/又は酸化亜鉛を含んでなる。負極電解液118はアルカリ金属水酸化物を含んでなるアルカリ電解液であり、負極116が浸漬される。容器122は、正極112、正極電解液114、負極116、及び負極電解液118を収容する。正極112及び正極電解液114は必ずしも分離している必要はなく、正極112と正極電解液114が混合された正極合材として構成されてもよい。同様に、負極116及び負極電解液118は必ずしも分離している必要はなく、負極116と負極電解液118が混合された負極合材として構成されてもよい。所望により、正極集電体113が正極112に接触して設けられる。また、所望により、負極集電体117が負極116に接触して設けられる。
セパレータ120は、容器122内に、正極112及び正極電解液114を収容する正極室124と、負極116及び負極電解液118を収容する負極室126とを区画するように設けられる。セパレータ120は水酸化物イオン伝導性を有するが透水性を有しない。すなわち、セパレータ120が透水性を有しないということは、セパレータ120が水を通さない程の高度な緻密性を有することを意味し、透水性を有する多孔性フィルムやその他の多孔質材料ではないことを意味する。このため、充電時に生成する亜鉛デンドライトによるセパレータの貫通を物理的に阻止して正負極間の短絡を防止するのに極めて効果的な構成となっている。もっとも、図7に示されるようにセパレータ120に多孔質基材128が付設されてよいのはいうまでもない。いずれにしても、セパレータ120は水酸化物イオン伝導性を有するため、正極電解液114と負極電解液118との間で必要な水酸化物イオンの効率的な移動を可能として正極室124及び負極室126における充放電反応を実現することができる。正極室124及び負極室126における充電時における反応は以下に示されるとおりであり、放電反応はその逆となる。
‐ 正極: Ni(OH)2+OH−→NiOOH+H2O+e−
‐ 負極: ZnO+H2O+2e−→Zn+2OH−
ただし、上記負極反応は以下の2つの反応で構成されるものである。
‐ ZnOの溶解反応: ZnO+H2O+2OH−→Zn(OH)4 2−
‐ Znの析出反応: Zn(OH)4 2−+2e−→Zn+4OH−
ニッケル亜鉛二次電池110は、正極室124に充放電時の正極反応に伴う水分量の増減を許容する容積の正極側余剰空間125を有し、かつ、負極室126に充放電時の負極反応に伴う水分量の減増を許容する容積の負極側余剰空間127を有するのが好ましい。これにより正極室124及び負極室126における水分量の増減に伴う不具合(例えば、液漏れ、容器内圧の変化に伴う容器の変形等)を効果的に防止して、ニッケル亜鉛二次電池の信頼性を更に向上することができる。すなわち、上記反応式から分かるように、充電時には正極室124で水が増加する一方、負極室126で水が減少する。一方、放電時には正極室124で水が減少する一方、負極室126で水が増加する。この点、従来の殆どのセパレータは、透水性を有するものであるため、セパレータを介して水が自由に行き来できる。しかしながら、本態様に用いるセパレータ120は透水性を有しないという緻密性の高い構造を有するため、セパレータ120を介して水が自由に行き来できず、充放電に伴い正極室124内及び/又は負極室126内において電解液量が一方的に増大して液漏れ等の不具合を引き起こしうる。そこで、正極室124に充放電時の正極反応に伴う水分量の増減を許容する容積の正極側余剰空間125を有することで、図8に示されるように、充電時において正極電解液114の増加に対処可能なバッファとして機能させることができる。すなわち、図8に示されるように、満充電後においても正極側余剰空間125がバッファとして機能することで、増量した正極電解液114を溢れ出させることなく確実に正極室124内に保持することができる。同様に、負極室126に充放電時の負極反応に伴う水分量の減増を許容する容積の負極側余剰空間127を有することで、放電時に負極電解液118の増加に対処可能なバッファとして機能させることができる。
正極室124及び負極室126における水分の増減量は、前述した反応式に基づいて算出することができる。前述した反応式から分かるように、充電時における正極112でのH2Oの生成量は、負極116におけるH2Oの消費量の2倍に相当する。したがって、正極側余剰空間125の容積を負極側余剰空間127よりも大きくしてもよい。いずれにしても、正極側余剰空間125の容積は、正極室124において見込まれる水分増加量のみならず、正極室124に予め存在している空気等のガスや過充電時に正極112より発生しうる酸素ガスをも適切な内圧で収容できるように若干ないしある程度余裕を持たせた容積とするのが好ましい。この点、負極側余剰空間127は、図7のように正極側余剰空間125と同程度の容積とすれば十分であるとはいえるが、放電末状態で電池を構成する際には充電に伴う水の減少量を超える余剰空間を設けておくことが望まれる。いずれにしても、負極側余剰空間127は正極室124内の半分程度の量しか水の増減がないため正極側余剰空間125よりも小さくしてもよい。
ニッケル亜鉛二次電池110が放電末状態で構築される場合には、正極側余剰空間125が、充電時の正極反応に伴い増加することが見込まれる水分量を超える容積を有し、正極側余剰空間125には正極電解液114が予め充填されておらず、かつ、負極側余剰空間127が、充電時の負極反応に伴い減少することが見込まれる水分量を超える容積を有し、負極側余剰空間127には減少することが見込まれる量の負極電解液118が予め充填されているのが好ましい。一方、ニッケル亜鉛二次電池110が満充電状態で構築される場合には、正極側余剰空間125が、放電時の正極反応に伴い減少することが見込まれる水分量を超える容積を有し、正極側余剰空間125には減少することが見込まれる量の正極電解液114が予め充填されており、かつ、負極側余剰空間127が、放電時の負極反応に伴い増加することが見込まれる水分量を超える容積を有し、負極側余剰空間127には負極電解液118が予め充填されていないのが好ましい。
正極側余剰空間125には正極112が充填されておらず且つ/又は負極側余剰空間127には負極116が充填されていないのが好ましく、正極側余剰空間125及び負極側余剰空間127に正極112及び負極116がそれぞれ充填されていないのがより好ましい。これらの余剰空間においては充放電時に水分量の減少による電解液の枯渇が起こりうる。すなわち、これらの余剰空間に正極112や負極116が充填されていても充放電反応に十分に関与させることができないため、非効率となる。したがって、正極側余剰空間125及び負極側余剰空間127に正極112及び負極116をそれぞれ充填させないことで、正極112及び負極116を無駄無くより効率的且つ安定的に電池反応に関与させることができる。
セパレータ120は水酸化物イオン伝導性を有するが透水性を有しない部材であり、典型的には板状、膜状又は層状の形態である。セパレータ120は、容器122内に設けられ、正極112及び正極電解液114を収容する正極室124と、負極116及び負極電解液118を収容する負極室126とを区画する。また、前述のとおり、正極112とセパレータ120の間及び/又は負極116とセパレータ120の間に不織布等の吸水性樹脂又は保液性樹脂製の第2のセパレータ(樹脂セパレータ)を配置して、電解液が減少した場合であっても電解液を正極及び/又は負極の反応部分に電解液を保持可能とする構成としてもよい。吸水性樹脂又は保液性樹脂の好ましい例としては、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
正極112は水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含んでなる。例えば、ニッケル亜鉛二次電池を図7に示されるような放電末状態で構成する場合には正極112として水酸化ニッケルを用いればよく、図8に示されるような満充電状態で構成する場合には正極112としてオキシ水酸化ニッケルを用いればよい。水酸化ニッケル及びオキシ水酸化ニッケル(以下、水酸化ニッケル等という)は、ニッケル亜鉛二次電池に一般的に用いられている正極活物質であり、典型的には粒子形態である。水酸化ニッケル等には、その結晶格子中にニッケル以外の異種元素が固溶されていてもよく、それにより高温下での充電効率の向上が図れる。このような異種元素の例としては、亜鉛及びコバルトが挙げられる。また、水酸化ニッケル等はコバルト系成分と混合されたものであってもよく、そのようなコバルト系成分の例としては、金属コバルトやコバルト酸化物(例えば一酸化コバルト)の粒状物が挙げられる。さらに、水酸化ニッケル等の粒子(異種元素が固溶されていてよい)の表面をコバルト化合物で被覆してもよく、そのようなコバルト化合物の例としては、一酸化コバルト、2価のα型水酸化コバルト、2価のβ型水酸化コバルト、2価を超える高次コバルトの化合物、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
正極112は、水酸化ニッケル系化合物及びそれに固溶されうる異種元素以外にも、追加元素をさらに含んでいてもよい。そのような追加元素の例としては、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルピウム(Er)、ツリウム(Tm)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)および水銀(Hg)、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。追加元素の含有形態は特に限定されず、金属単体又は金属化合物(例えば、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物及び炭酸化物)の形態で含まれていてよい。追加元素を含む金属単体又は金属化合物を添加する場合、その添加量は、水酸化ニッケル系化合物100重量部に対し、好ましくは0.5〜20重量部であり、より好ましくは2〜5重量部である。
正極112は電解液等をさらに含むことにより正極合材として構成されてもよい。正極合剤は、水酸化ニッケル系化合物粒子、電解液、並びに所望により炭素粒子等の導電材やバインダー等を含んでなることができる。
正極112に接触して正極集電体113が設けられるのが好ましい。正極集電体113は図7に示されるように容器122を貫通してその外側にまで延在して正極端子をそれ自体で構成してもよいし、別途設けられた正極端子に容器122内又は外で接続される構成としてもよい。正極集電体113の好ましい例としては、発泡ニッケル板等のニッケル製多孔質基板が挙げられる。この場合、例えば、ニッケル製多孔質基板上に水酸化ニッケル等の電極活物質を含むペーストを均一に塗布して乾燥させることにより正極112/正極集電体113からなる正極板を好ましく作製することができる。その際、乾燥後の正極板(すなわち正極112/正極集電体113)にプレス処理を施して、電極活物質の脱落防止や電極密度の向上を図ることも好ましい。
負極116は亜鉛及び/又は酸化亜鉛を含んでなる。亜鉛は、負極に適した電気化学的活性を有するものであれば、亜鉛金属、亜鉛化合物及び亜鉛合金のいずれの形態で含まれていてもよい。負極材料の好ましい例としては、酸化亜鉛、亜鉛金属、亜鉛酸カルシウム等が挙げられるが、亜鉛金属及び酸化亜鉛の混合物がより好ましい。負極116はゲル状に構成してもよいし、電解液と混合して負極合材としてもよい。例えば、負極活物質に電解液及び増粘剤を添加することにより容易にゲル化した負極を得ることができる。増粘剤の例としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、CMC、アルギン酸等が挙げられるが、ポリアクリル酸が強アルカリに対する耐薬品性に優れているため好ましい。
亜鉛合金として、無汞化亜鉛合金として知られている水銀及び鉛を含まない亜鉛合金を用いることができる。例えば、インジウムを0.01〜0.06質量%、ビスマスを0.005〜0.02質量%、アルミニウムを0.0035〜0.015質量%を含む亜鉛合金が水素ガス発生の抑制効果があるので好ましい。とりわけ、インジウムやビスマスは放電性能を向上させる点で有利である。亜鉛合金の負極への使用は、アルカリ性電解液中での自己溶解速度を遅くすることで、水素ガス発生を抑制して安全性を向上できる。
負極材料の形状は特に限定されないが、粉末状とすることが好ましく、それにより表面積が増大して大電流放電に対応可能となる。好ましい負極材料の平均粒径は、亜鉛合金の場合、90〜210μmの範囲であり、この範囲内であると表面積が大きいことから大電流放電への対応に適するとともに、電解液及びゲル化剤と均一に混合しやすく、電池組み立て時の取り扱い性も良い。
負極116に接触して負極集電体117が設けられるのが好ましい。負極集電体117は図7に示されるように容器122を貫通してその外側にまで延在して負極端子をそれ自体で構成してもよいし、別途設けられた負極端子に容器122内又は外で接続される構成としてもよい。負極集電体117の好ましい例としては、銅パンチングメタルが挙げられる。この場合、例えば、銅パンチングメタル上に、酸化亜鉛粉末及び/又は亜鉛粉末、並びに所望によりバインダー(例えばポリテトラフルオロエチレン粒子)を含んでなる混合物を塗布して負極116/負極集電体117からなる負極板を好ましく作製することができる。その際、乾燥後の負極板(すなわち負極116/負極集電体117)にプレス処理を施して、電極活物質の脱落防止や電極密度の向上を図ることも好ましい。
亜鉛空気二次電池
本発明の別の好ましい態様によれば、亜鉛空気二次電池が提供される。本発明の好ましい態様によれば、亜鉛空気二次電池が提供される。そこで、水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータを多孔質基材とともに用いた亜鉛空気二次電池の基本構成について以下に説明する。なお、以下の説明は、説明の便宜のため、本発明のような複数のセル孔を有する形態ではなく、より簡素な単位電池に基づいて行うものとするが、以下に開示される基本構成は技術的整合性を損なわない範囲内で本発明の二次電池にも同様に当てはまるものである。図9A及び9Bに、亜鉛空気二次電池の一例を模式的に示す。図9A及び9Bに示されるように、本態様による亜鉛空気二次電池130は、空気極132、負極134、アルカリ電解液136、セラミックスセパレータ140、容器146、及び所望により第三電極138を備えてなる。空気極132は正極として機能する。負極134は亜鉛、亜鉛合金及び/又は亜鉛化合物を含んでなる。電解液136は、負極134が浸漬される水系電解液である。容器146は、開口部146aを有し、負極134、電解液136及び第三電極138を収容する。セパレータ140は開口部146aを電解液136と接触可能に塞いで容器146と負極側密閉空間を形成し、それにより空気極132と電解液136を水酸化物イオン伝導可能に隔離する。所望により、正極集電体142が空気極132に接触して設けられてよい。また、所望により、負極集電体144が負極134に接触して設けられてよく、その場合、負極集電体144も容器146内に収容されうる。
セパレータ140は、前述したとおり、水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しない部材であるのが好ましく、典型的には板状、膜状又は層状の形態である。セパレータ140が開口部146aを電解液136と接触可能に塞いで容器146と負極側密閉空間を形成することで、空気極132と電解液136を水酸化物イオン伝導可能に隔離する。セパレータ140の片面又は両面、好ましくは片面(電解液側)に多孔質基材148を設けてもよい。また、負極134とセパレータ140の間に不織布等の吸水性樹脂又は保液性樹脂製の保水部材を配置して、電解液136が減少した場合であっても電解液136を負極134及びセパレータ140に常時接触可能に保持する構成としてもよい。この保水部材は前述した第三電極138用の保水部材を兼ねたものであってもよいし、セパレータ140用の保水部材を別途用いてもよい。保水部材として市販の電池用セパレータも使用可能である。吸水性樹脂又は保液性樹脂の好ましい例としては、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
空気極132は、亜鉛空気電池等の金属空気電池に使用される公知の空気極であってよく特に限定されない。空気極132は、空気極触媒、電子伝導性材料、及び所望により水酸化物イオン伝導性材料を含んでなるのが典型的である。もっとも、電子伝導性材料としても機能する空気極触媒を用いる場合には、空気極132は、そのような電子伝導性材料兼空気極触媒、及び所望により水酸化物イオン伝導性材料を含んでなるものであってもよい。
空気極触媒は、金属空気電池における正極として機能するものであれば特に限定されず、酸素を正極活物質として利用可能な種々の空気極触媒が使用可能である。空気極触媒の好ましい例としては、黒鉛等の酸化還元触媒機能を有するカーボン系材料、白金、ニッケル等の酸化還元触媒機能を有する金属、ペロブスカイト型酸化物、二酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、スピネル酸化物等の酸化還元触媒機能を有する無機酸化物が挙げられる。空気極触媒の形状は特に限定されないが、粒子形状であるのが好ましい。空気極132における空気極触媒の含有量は特に限定されないが、空気極132の合計量に対して、5〜70体積%が好ましく、より好ましくは5〜60体積%、さらに好ましくは5〜50体積%である。
電子伝導性材料は、導電性を有し、空気極触媒とセパレータ140(又は該当する場合には後述する中間層)との間で電子伝導を可能とするものであれば特に限定されない。電子伝導性材料の好ましい例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、鱗片状黒鉛のような天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等のグラファイト類、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉末類、ポリフェニレン誘導体等の有機電子伝導性材料、及びこれらの任意の混合物が挙げられる。電子伝導性材料の形状は、粒子形状であってもよいし、その他の形状であってもよいが、空気極132において厚さ方向に連続した相(即ち電子伝導相)をもたらす形態で用いられるのが好ましい。例えば、電子伝導性材料は、多孔質材料であってもよい。また、電子伝導性材料は空気極触媒との混合物ないし複合体の形態(例えば白金担持カーボン)であってもよく、前述したように電子伝導性材料としても機能する空気極触媒(例えば遷移金属を含有するペロブスカイト型化合物)であってもよい。空気極132における電子伝導性材料の含有量は特に限定されないが、空気極132の合計量に対して、10〜80体積%が好ましく、より好ましくは15〜80体積%、さらに好ましくは20〜80体積%である。
空気極132は、水酸化物イオン伝導性材料を任意成分としてさらに含んでいてもよい。特にセパレータ140が緻密質セラミックスである水酸化物イオン伝導性無機固体電解質からなる場合、そのようなセパレータ140上に(所望により水酸化物イオン伝導性を有する中間層を介在させて)、従来から使用される空気極触媒及び電子伝導性材料のみならず、水酸化物イオン伝導性材料をも含有させた空気極132を形成することで、緻密質セラミックス製のセパレータ140による所望の特性を確保しながら、金属空気電池において空気極の反応抵抗を低減することが可能となる。すなわち、空気極触媒及び電子伝導性材料のみならず、水酸化物イオン伝導性材料をも空気極132中に含有させることで、電子伝導相(電子伝導性材料)と、気相(空気)とからなる三相界面がセパレータ140(又は該当する場合には中間層)と空気極132の界面のみならず空気極132中にも存在することになり、電池反応に寄与する水酸化物イオンの授受がより広い表面積で効果的に行われることになる結果、金属空気電池において空気極の反応抵抗が低減されるものと考えられる。水酸化物イオン伝導性材料は、水酸化物イオンを透過可能な材料であれば特に限定されず、無機材料及び有機材料を問わず、各種の材質及び形態の材料が使用可能であり、前述した基本組成の層状複水酸化物であってもよい。水酸化物イオン伝導性材料は、粒子形態に限らず、空気極触媒及び電子伝導性材料を部分的に又は概ね全体的に被覆するような塗布膜の形態であってもよい。もっとも、この塗布膜の形態においても、イオン伝導性材料は緻密質ではなく、開気孔を有しており、空気極132の外側表面からセパレータ140(又は該当する場合には中間層)との界面に向かって、O2やH2Oが気孔中を拡散できるように構成されるのが望ましい。空気極132における水酸化物イオン伝導性材料の含有量は特に限定されないが、空気極132の合計量に対して、0〜95体積%が好ましく、より好ましくは5〜85体積%、さらに好ましくは10〜80体積%である。
空気極132の形成はあらゆる手法で行われてよく、特に限定されない。例えば、空気極触媒、電子伝導性材料、及び所望により水酸化物イオン伝導性材料をエタノール等の溶媒を用いて湿式混合して乾燥及び解砕した後、バインダーと混合してフィブリル化し、得られたフィブリル状混合物を集電体に圧着して空気極132を形成し、この空気極132/集電体の積層シートの空気極132側をセパレータ140(又は該当する場合には中間層)に圧着してもよい。あるいは、空気極触媒、電子伝導性材料、及び所望により水酸化物イオン伝導性材料をエタノール等の溶媒と共に湿式混合してスラリー化し、このスラリーを中間層に塗布して乾燥させて空気極132を形成してもよい。したがって、空気極132はバインダーを含んでいてもよい。バインダーは、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であってよく特に限定されない。
空気極132は5〜200μmの厚さを有する層状の形態であるのが好ましく、より好ましくは5〜100μmであり、さらに好ましくは5〜50μm、特に好ましくは5〜30μmである。例えば、水酸化物イオン伝導性材料を含む場合、上記範囲内の厚さであると、ガス拡散抵抗の増大を抑えながら三相界面の面積を比較的大きく確保することができ、空気極の反応抵抗の低減をより好ましく実現することができる。
空気極132のセパレータ140と反対側に、通気性を有する正極集電体142が設けられるのが好ましい。この場合、正極集電体142は空気極132に空気が供給されるように通気性を有するのが好ましい。正極集電体142の好ましい例としては、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属板若しくは金属メッシュ、カーボンペーパー、カーボンクロス、及び電子伝導性酸化物等が挙げられ、耐食性及び通気性の点でステンレス金網が特に好ましい。
セパレータ140及び空気極132の間には中間層が設けられてもよい。中間層はセパレータ140と空気極132の密着性を向上し、かつ、水酸化物イオン伝導性を有するものであれば特に限定されず、有機材料及び無機材料を問わず、公知各種の組成及び構成の層であることができる。中間層は高分子材料及び/又はセラミックス材料を含んでなるのが好ましく、この場合、中間層に含まれる高分子材料及びセラミックス材料の少なくともいずれか一方が水酸化物イオン伝導性を有していればよい。中間層は複数設けられてもよく、これら複数の中間層は互いに同種の及び/又は異なる層であってよい。すなわち、中間層は単層構成であってもよいし、2層以上の構成であってもよい。中間層は1〜200μmの厚さを有するのが好ましく、より好ましくは1〜100μmであり、さらに好ましくは1〜50μm、特に好ましくは1〜30μmである。このような厚さであると、セパレータ140と空気極132の密着性を向上しやすく、亜鉛空気二次電池において電池抵抗(特に空気極及びセパレータ間の界面抵抗)をより効果的に低減することができる。
負極134は、負極活物質として機能する亜鉛、亜鉛合金及び/又は亜鉛化合物を含んでなる。負極134は、粒子状、板状、ゲル状等のいかなる形状又は形態であってもよいが、粒子状またはゲル状とするのが反応速度の点で好ましい。粒子状の負極としては、30〜350μmの粒径のものを好ましく用いることができる。ゲル状の負極としては、100〜300μmの粒径の無汞化亜鉛合金粉、アルカリ電解液及び増粘剤(ゲル化剤)を混合攪拌してゲル状に形成したものを好ましく用いることができる。亜鉛合金は、マグネシウム、アルミニウム、リチウム、ビスマス、インジウム、鉛等の汞化又は無汞化の合金であることができ、負極活物質として所望の性能を確保できる限り、その含有量は特に限定されない。好ましい亜鉛合金は、無水銀かつ鉛無添加の無汞化亜鉛合金であり、アルミニウム、ビスマス、インジウム又はこれらの組合せを含むものがより好ましい。さらに好ましくは、ビスマスを50〜1000ppm、インジウムを100〜1000ppmで、アルミニウム及び/又はカルシウムを10〜100ppm含む無汞化亜鉛合金であり、特に好ましくはビスマスを100〜500ppm、インジウムを300〜700ppm、アルミニウム及び/又はカルシウムを20〜50ppm含む。好ましい亜鉛化合物の例としては酸化亜鉛が挙げられる。
負極134に接触して負極集電体144が設けられるのが好ましい。負極集電体144は図9A及び9Bに示されるように容器146を貫通してその外側にまで延在して負極端子をそれ自体で構成してもよいし、別途設けられた負極端子に容器146内又は外で接続される構成としてもよい。負極集電体の好ましい例としては、ステンレス鋼、銅(例えば銅パンチングメタル)、ニッケル等の金属板若しくは金属メッシュ、カーボンペーパー、及び酸化物導電体等が挙げられる。例えば、銅パンチングメタル上に、酸化亜鉛粉末及び/又は亜鉛粉末、並びに所望によりバインダー(例えばポリテトラフルオロエチレン粒子)を含んでなる混合物を塗布して負極134/負極集電体144からなる負極板を好ましく作製することができる。その際、乾燥後の負極板(すなわち負極134/負極集電体144)にプレス処理を施して、電極活物質の脱落防止や電極密度の向上を図ることも好ましい。
所望により、第三電極138が、電解液136と接触するが負極134と接触しないように設けられてもよく、この場合、外部回路を経て空気極132と接続される。かかる構成とすることで、負極134から副反応により発生しうる水素ガスを第三電極138に接触させて以下の反応:
第三電極: H2+2OH−→2H2O+2e−
正極放電: O2+2H2O+4e−→4OH−
により水に戻すことができる。別の表現をすれば、負極134で発生した水素ガスが第三電極138で吸収され自己放電をすることになる。これにより、水素ガスの発生による負極側密閉空間における内圧の上昇及びそれに伴う不具合を抑制又は回避できるとともに、(放電反応に伴い上記反応式に従い減少することになる)水を発生させて負極側密閉空間内での水不足を抑制又は回避することができる。すなわち、負極から発生した水素ガスを負極側密閉空間内で水に戻して再利用することができる。その結果、亜鉛デンドライトによる短絡及び二酸化炭素の混入の両方を防止するのに極めて効果的な構成を有しながら、水素ガス発生の問題にも対処可能な、信頼性の高い亜鉛空気二次電池を提供することができる。
第三電極138は、外部回路を経て空気極132と接続されることで、上述したような反応により水素ガス(H2)を水(H2O)に変換可能な電極であれば特に限定されないが、空気極132よりも酸素過電圧が大きいことが望まれる。また、第三電極138は通常の充放電反応に関与しないことも望まれる。第三電極138は、白金及び/又は炭素材料を含んでなるのが好ましく、より好ましくは炭素材料を含んでなる。炭素材料の好ましい例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、活性炭、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。第三電極138の形状は特に限定されないが、比表面積が大きくなるような形状(例えばメッシュ状や粒子状)とするのが好ましい。第三電極138(好ましくは比表面積の大きい形状の第三電極)は集電体上に塗工及び/又は配置されるのがより好ましい。第三電極138用の集電体はいかなる形状であってもよいが、好ましい例としては、線材(例えばワイヤ)、パンチングメタル、メッシュ、発泡金属、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。第三電極138用集電体の材質としては第三電極138の材質と同様の材質であってもよいし、金属(例えばニッケル)、合金又はその他の導電性材料であってもよい。
第三電極138は電解液136と接触するが、通常の充放電反応と直接関係の無い場所に配置されることが望ましい。この場合、負極側密閉空間内に第三電極138と接触可能に不織布等の吸水性樹脂又は保液性樹脂製の保水部材を配置して、電解液が減少した場合であっても電解液136を第三電極138と常時接触可能に保持する構成とするのが好ましい。保水部材として市販の電池用セパレータも使用可能である。吸水性樹脂又は保液性樹脂の好ましい例としては、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。第三電極138は、必ずしも多量の電解液136で含浸されている必要はなく、少量ないし微量の電解液136で湿っている程度でも所望の機能を発揮することができるので、その程度の保水性能を保水部材が有していればよい。
多孔質基材付きLDHセパレータ
本発明の二次電池において、多孔質基材のセル孔の内壁面には水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータが形成される。すなわち、本発明の二次電池においては、多孔質基材付きセラミックスセパレータを備えているといえる。したがって、以下の説明は、説明の便宜のため、本発明のような複数のセル孔を有する多孔質基材ではなく、より簡素な板状の多孔質基材を用いたセラミックスセパレータに基づいて行うものとするが、以下に開示される基本構成は技術的整合性を損なわない範囲内で本発明の二次電池にも同様に当てはまるものである。
前述のとおり、本発明の二次電池に好ましく用いられる多孔質基材付きセパレータは、水酸化物イオン伝導性を有する無機固体電解質体からなるセパレータと、セパレータの少なくとも一方の面に設けられる多孔質基材とを備えたものである。無機固体電解質体は透水性を有しない程に緻密化された膜状又は層状の形態である。特に好ましい多孔質基材付きセパレータは、多孔質基材と、この多孔質基材上及び/又は多孔質基材中に形成されるセパレータ層とを備えてなり、セパレータ層が前述したような層状複水酸化物(LDH)を含んでなるものである。セパレータ層は透水性及び通気性を有しないのが好ましい。すなわち、多孔質材料は孔の存在により透水性及び通気性を有しうるが、セパレータ層は透水性及び通気性を有しない程にまでLDHで緻密化されているのが好ましい。セパレータ層は多孔質基材上に形成されるのが好ましい。例えば、図10に示されるように、多孔質基材128上にセパレータ層120がLDH緻密膜として形成されるのが好ましい。この場合、多孔質基材128の性質上、図10に示されるように多孔質基材128の表面及びその近傍の孔内にもLDHが形成されてよいのはいうまでもない。あるいは、図11に示されるように、多孔質基材128中(例えば多孔質基材128の表面及びその近傍の孔内)にLDHが緻密に形成され、それにより多孔質基材128の少なくとも一部がセパレータ層120’を構成するものであってもよい。この点、図11に示される態様は図10に示される態様のセパレータ層120における膜相当部分を除去した構成となっているが、これに限定されず、多孔質基材128の表面と平行にセパレータ層が存在していればよい。いずれにしても、セパレータ層は透水性及び通気性を有しない程にまでLDHで緻密化されているため、水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しない(すなわち基本的に水酸化物イオンのみを通す)という特有の機能を有することができる。
多孔質基材は、その上及び/又は中にLDH含有セパレータ層を形成できるものが好ましく、その材質や多孔構造は特に限定されない。多孔質基材上及び/又は中にLDH含有セパレータ層を形成するのが典型的ではあるが、無孔質基材上にLDH含有セパレータ層を成膜し、その後公知の種々の手法により無孔質基材を多孔化してもよい。いずれにしても、多孔質基材は透水性を有する多孔構造を有するのが、電池用セパレータとして電池に組み込まれた場合に電解液をセパレータ層に到達可能に構成できる点で好ましい。
多孔質基材は、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成されるのが好ましい。多孔質基材は、セラミックス材料で構成されるのがより好ましい。この場合、セラミックス材料の好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びそれらの任意の組合せであり、特に好ましくはアルミナ及びジルコニアであり、最も好ましくはアルミナである。これらの多孔質セラミックスを用いると緻密性に優れたLDH含有セパレータ層を形成しやすい。金属材料の好ましい例としては、アルミニウム及び亜鉛が挙げられる。高分子材料の好ましい例としては、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。上述した各種の好ましい材料から電池の電解液に対する耐性として耐アルカリ性に優れたものを適宜選択するのが更に好ましい。
多孔質基材は0.001〜1.5μmの平均気孔径を有するのが好ましく、より好ましくは0.001〜1.25μm、さらに好ましくは0.001〜1.0μm、特に好ましくは0.001〜0.75μm、最も好ましくは0.001〜0.5μmである。これらの範囲内とすることで多孔質基材に所望の透水性を確保しながら、透水性を有しない程に緻密なLDH含有セパレータ層を形成することができる。本発明において、平均気孔径の測定は多孔質基材の表面の電子顕微鏡(SEM)画像をもとに気孔の最長距離を測長することにより行うことができる。この測定に用いる電子顕微鏡(SEM)画像の倍率は20000倍であり、得られた全ての気孔径をサイズ順に並べて、その平均値から上位15点及び下位15点、合わせて1視野あたり30点で2視野分の平均値を算出して、平均気孔径を得ることができる。測長には、SEMのソフトウェアの測長機能や画像解析ソフト(例えば、Photoshop、Adobe社製)等を用いることができる。
多孔質基材の表面は、10〜60%の気孔率を有するのが好ましく、より好ましくは15〜55%、さらに好ましくは20〜50%である。これらの範囲内とすることで多孔質基材に所望の透水性を確保しながら、透水性を有しない程に緻密なLDH含有セパレータ層を形成することができる。ここで、多孔質基材の表面の気孔率を採用しているのは、以下に述べる画像処理を用いた気孔率の測定がしやすいことによるものであり、多孔質基材の表面の気孔率は多孔質基材内部の気孔率を概ね表しているといえるからである。すなわち、多孔質基材の表面が緻密であれば多孔質基材の内部もまた同様に緻密であるといえる。本発明において、多孔質基材の表面の気孔率は画像処理を用いた手法により以下のようにして測定することができる。すなわち、1)多孔質基材の表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とする。なお、この画像処理による気孔率の測定は多孔質基材表面の6μm×6μmの領域について行われるのが好ましく、より客観的な指標とするためには、任意に選択された3箇所の領域について得られた気孔率の平均値を採用するのがより好ましい。
セパレータ層は、多孔質基材上及び/又は多孔質基材中、好ましくは多孔質基材上に形成される。例えば、図10に示されるようにセパレータ層120が多孔質基材128上に形成される場合には、セパレータ層120はLDH緻密膜の形態であり、このLDH緻密膜は典型的にはLDHからなる。また、図11に示されるようにセパレータ層120’が多孔質基材128中に形成される場合には、多孔質基材128中(典型的には多孔質基材128の表面及びその近傍の孔内)にLDHが緻密に形成されることから、セパレータ層120’は典型的には多孔質基材128の少なくとも一部及びLDHからなる。図11に示されるセパレータ層120’は、図10に示されるセパレータ層120における膜相当部分を研磨、切削等の公知の手法により除去することにより得ることができる。
セパレータ層は透水性及び通気性を有しないのが好ましい。例えば、セパレータ層はその片面を25℃で1週間水と接触させても水を透過させず、また、その片面に0.5atmの内外差圧でヘリウムガスを加圧してもヘリウムガスを透過させない。すなわち、セパレータ層は透水性及び通気性を有しない程にまでLDHで緻密化されているのが好ましい。もっとも、局所的且つ/又は偶発的に透水性を有する欠陥が機能膜に存在する場合には、当該欠陥を適当な補修剤(例えばエポキシ樹脂等)で埋めて補修することで水不透性及び気体不透過性を確保してもよく、そのような補修剤は必ずしも水酸化物イオン伝導性を有する必要はない。いずれにしても、セパレータ層(典型的にはLDH緻密膜)の表面が20%以下の気孔率を有するのが好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは7%以下である。セパレータ層の表面の気孔率が低ければ低いほど、セパレータ層(典型的にはLDH緻密膜)の緻密性が高いことを意味し、好ましいといえる。ここで、セパレータ層の表面の気孔率を採用しているのは、以下に述べる画像処理を用いた気孔率の測定がしやすいことによるものであり、セパレータ層の表面の気孔率はセパレータ層内部の気孔率を概ね表しているといえるからである。すなわち、セパレータ層の表面が緻密であればセパレータ層の内部もまた同様に緻密であるといえる。本発明において、セパレータ層の表面の気孔率は画像処理を用いた手法により以下のようにして測定することができる。すなわち、1)セパレータ層の表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]
→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とする。なお、この画像処理による気孔率の測定はセパレータ層表面の6μm×6μmの領域について行われるのが好ましく、より客観的な指標とするためには、任意に選択された3箇所の領域について得られた気孔率の平均値を採用するのがより好ましい。
層状複水酸化物は複数の板状粒子(すなわちLDH板状粒子)の集合体で構成され、当該複数の板状粒子がそれらの板面が多孔質基材の表面(基材面)と略垂直に又は斜めに交差するような向きに配向してなるのが好ましい。この態様は、図10に示されるように、多孔質基材128上にセパレータ層120がLDH緻密膜として形成される場合に特に好ましく実現可能な態様であるが、図11に示されるように、多孔質基材128中(典型的には多孔質基材128の表面及びその近傍の孔内)にLDHが緻密に形成され、それにより多孔質基材128の少なくとも一部がセパレータ層120’を構成する場合においても実現可能である。
すなわち、LDH結晶は図12に示されるような層状構造を持った板状粒子の形態を有することが知られているが、上記略垂直又は斜めの配向は、LDH含有セパレータ層(例えばLDH緻密膜)にとって極めて有利な特性である。というのも、配向されたLDH含有セパレータ層(例えば配向LDH緻密膜)には、LDH板状粒子が配向する方向(即ちLDHの層と平行方向)の水酸化物イオン伝導度が、これと垂直方向の伝導度よりも格段に高いという伝導度異方性があるためである。実際、本出願人は、LDHの配向バルク体において、配向方向における伝導度(S/cm)が配向方向と垂直な方向の伝導度(S/cm)と比べて1桁高いとの知見を得ている。すなわち、本態様のLDH含有セパレータ層における上記略垂直又は斜めの配向は、LDH配向体が持ちうる伝導度異方性を層厚方向(すなわちセパレータ層又は多孔質基材の表面に対して垂直方向)に最大限または有意に引き出すものであり、その結果、層厚方向への伝導度を最大限又は有意に高めることができる。その上、LDH含有セパレータ層は層形態を有するため、バルク形態のLDHよりも低抵抗を実現することができる。このような配向性を備えたLDH含有セパレータ層は、層厚方向に水酸化物イオンを伝導させやすくなる。その上、緻密化されているため、層厚方向への高い伝導度及び緻密性が望まれるセパレータに極めて適する。
特に好ましくは、LDH含有セパレータ層(典型的にはLDH緻密膜)においてLDH板状粒子が略垂直方向に高度に配向してなる。この高度な配向は、セパレータ層の表面をX線回折法により測定した場合に、(003)面のピークが実質的に検出されないか又は
(012)面のピークよりも小さく検出されることで確認可能なものである(但し、(012)面に起因するピークと同位置に回折ピークが観察される多孔質基材を用いた場合には、LDH板状粒子に起因する(012)面のピークを特定できないことから、この限りでない)。この特徴的なピーク特性は、セパレータ層を構成するLDH板状粒子がセパレータ層に対して略垂直方向(すなわち垂直方向又はそれに類する斜め方向、好ましくは垂直方向)に配向していることを示す。すなわち、(003)面のピークは無配向のLDH粉末をX線回折した場合に観察される最も強いピークとして知られているが、配向LDH含有セパレータ層にあっては、LDH板状粒子がセパレータ層に対して略垂直方向に配向していることで(003)面のピークが実質的に検出されないか又は(012)面のピークよりも小さく検出される。これは、(003)面が属するc軸方向(00l)面(lは3及び6である)がLDH板状粒子の層状構造と平行な面であるため、このLDH板状粒子がセパレータ層に対して略垂直方向に配向しているとLDH層状構造も略垂直方向を向くこととなる結果、セパレータ層表面をX線回折法により測定した場合に(00l)面(lは3及び6である)のピークが現れないか又は現れにくくなるからである。特に(003)面のピークは、それが存在する場合、(006)面のピークよりも強く出る傾向があるから、(006)面のピークよりも略垂直方向の配向の有無を評価しやすいといえる。したがって、配向LDH含有セパレータ層は、(003)面のピークが実質的に検出されないか又は(012)面のピークよりも小さく検出されるのが、垂直方向への高度な配向を示唆することから好ましいといえる。
セパレータ層は100μm以下の厚さを有するのが好ましく、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは25μm以下、最も好ましくは5μm以下である。このように薄いことでセパレータの低抵抗化を実現できる。セパレータ層が多孔質基材上にLDH緻密膜として形成されるのが好ましく、この場合、セパレータ層の厚さはLDH緻密膜の厚さに相当する。また、セパレータ層が多孔質基材中に形成される場合には、セパレータ層の厚さは多孔質基材の少なくとも一部及びLDHからなる複合層の厚さに相当し、セパレータ層が多孔質基材上及び中にまたがって形成される場合にはLDH緻密膜と上記複合層の合計厚さに相当する。いずれにしても、上記のような厚さであると、電池用途等への実用化に適した所望の低抵抗を実現することができる。LDH配向膜の厚さの下限値は用途に応じて異なるため特に限定されないが、セパレータ等の機能膜として望まれるある程度の堅さを確保するためには厚さ1μm以上であるのが好ましく、より好ましくは2μm以上である。
上述した多孔質基材付きLDHセパレータは、(a)多孔質基材を用意し、(b)所望により、この多孔質基材に、LDHの結晶成長の起点を与えうる起点物質を均一に付着させ、(c)多孔質基材に水熱処理を施してLDH膜を形成させることにより、好ましく製造することができる。
(a)多孔質基材の用意
多孔質基材は、前述したとおりであり、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成されるのが好ましい。多孔質基材は、セラミックス材料で構成されるのがより好ましい。この場合、セラミックス材料の好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びそれらの任意の組合せであり、特に好ましくはアルミナ、ジルコニア(例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ))、及びその組合せである。これらの多孔質セラミックスを用いるとLDH膜の緻密性を向上しやすい傾向がある。セラミックス材料製の多孔質基材を用いる場合、超音波洗浄、イオン交換水での洗浄等を多孔質基材に施すのが好ましい。
上述のとおり、多孔質基材は、セラミックス材料で構成されるのがより好ましい。セラミックス材料製の多孔質基材は、市販品であってもよいし、公知の手法に従って作製したものであってもよく、特に限定されない。例えば、セラミックス粉末(例えばジルコニア粉末、ベーマイト粉末、チタニア粉末等)、メチルセルロース、及びイオン交換水を所望の配合比で混練し、得られた混練物を押出成形に付し、得られた成形体を70〜200℃で10〜40時間乾燥した後、900〜1300℃で1〜5時間焼成することによりセラミックス材料製の多孔質基材を作製することができる。メチルセルロースの配合割合はセラミックス粉末100重量部に対して、1〜20重量部とするのが好ましい。また、イオン交換水の配合割合はセラミックス粉末100重量部に対して、10〜100重量部とするのが好ましい。
(b)起点物質の付着
所望により、多孔質基材に、LDHの結晶成長の起点を与えうる起点物質を均一に付着させてもよい。このように起点物質を多孔質基材の表面に均一に付着させた後に、後続の工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。このような起点の好ましい例としては、LDHの層間に入りうる陰イオンを与える化学種、LDHの構成要素となりうる陽イオンを与える化学種、又はLDHが挙げられる。
(i)陰イオンを与える化学種
LDHの結晶成長の起点は、LDHの層間に入りうる陰イオンを与える化学種であることができる。このような陰イオンの例としては、CO3 2−、OH−、SO3 −、SO3 2−、SO4 2−、NO3 −、Cl−、Br−、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。したがって、このような起点を与えうる起点物質を、起点物質の種類に応じた適切な手法で均一に多孔質基材の表面に付着させればよい。表面に陰イオンを与える化学種が付与されることで、Mg2+、Al3+等の金属陽イオンが多孔質基材の表面に吸着してLDHの核が生成しうる。このため、後続の工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。
本発明の好ましい態様によれば、起点物質の付着を、多孔質基材の表面にポリマーを付着させた後、このポリマーに陰イオンを与える化学種を導入することにより行うことができる。この態様においては、陰イオンはSO3 −、SO3 2−及び/又はSO4 2−であるのが好ましく、このような陰イオンを与える化学種のポリマーへの導入がスルホン化処理により行われるのが好ましい。使用可能なポリマーはアニオン化(特にスルホン化)可能なポリマーであり、そのようなポリマーの例として、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。特に、芳香族系ポリマーがアニオン化(特にスルホン化)しやすい点で好ましく、そのような芳香族系ポリマーの例としては、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。最も好ましいポリマーはポリスチレンである。多孔質基材へのポリマーの付着は、ポリマーを溶解させた溶液(以下、ポリマー溶液という)を多孔質基材の表面(好ましくは多孔質基材の板状概形の最表面を構成する粒子)に塗布することにより行われるのが好ましい。ポリマー溶液は、例えば、ポリマー固形物(例えばポリスチレン基板)を有機溶媒(例えばキシレン溶液)に溶解することにより容易に作製することができる。ポリマー溶液は多孔質基材の内部にまで浸透させないようにするのが、均一な塗布を実現しやすい点で好ましい。この点、ポリマー溶液の付着ないし塗布はスピンコートにより行うのが極めて均一に塗布できる点で好ましい。スピンコートの条件は特に限定されないが、例えば1000〜10000rpmの回転数で、滴下と乾燥を含めて60〜300秒間程度行えばよい。一方、スルホン化処理は、ポリマーを付着させた多孔質基材を、硫酸
(例えば濃硫酸)、発煙硫酸、クロロスルホン酸、無水硫酸等のスルホン化可能な酸に浸漬すればよく、他のスルホン化技術を用いてもよい。スルホン化可能な酸への浸漬は室温又は高温(例えば50〜150℃)で行えばよく、浸漬時間は特に限定されないが、例えば1〜14日間である。
本発明の別の好ましい態様によれば、起点物質の付着を、陰イオンを与える化学種を親水基として含む界面活性剤で多孔質基材の表面を処理することにより行うことができる。この場合、陰イオンがSO3 −、SO3 2−及び/又はSO4 2−であるのが好ましい。そのような界面活性剤の典型的な例として、陰イオン界面活性剤が挙げられる。陰イオン界面活性剤の好ましい例としては、スルホン酸型陰イオン界面活性剤、硫酸エステル型陰イオン界面活性剤、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。スルホン酸型陰イオン界面活性剤の例としては、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンスルホコハク酸アルキル2Na、ポリスチレンスルホン酸Na、ジオクチルスルホコハク酸Na、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンが挙げられる。硫酸エステル型陰イオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルNaが挙げられる。多孔質基材の界面活性剤での処理は、多孔質基材の表面に界面活性剤を付着させることができる手法であれば特に限定されず、界面活性剤を含む溶液を多孔質基材に塗布する、又は界面活性剤を含む溶液に多孔質基材を浸漬することにより行えばよい。界面活性剤を含む溶液への多孔質基材の浸漬は、溶液を撹拌しながら室温又は高温(例えば40〜80℃)で行えばよく、浸漬時間は特に限定されないが、例えば1〜7日間である。
(ii)陽イオンを与える化学種
LDHの結晶成長の起点は、層状複水酸化物の構成要素となりうる陽イオンを与える化学種であることができる。このような陽イオンの好ましい例としては、Al3+が挙げられる。この場合、起点物質が、アルミニウムの酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物及びヒドロキシ錯体からなる群から選択される少なくとも1種のアルミニウム化合物であるのが好ましい。したがって、このような起点を与えうる起点物質を起点物質の種類に応じた適切な手法で均一に多孔質部材の表面に付着させればよい。表面に陽イオンを与える化学種が付与されることで、LDHの層間に入りうる陰イオンが多孔質基材の表面に吸着してLDHの核が生成しうる。このため、後続の工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。
本発明の好ましい態様によれば、起点物質の付着を、多孔質部材にアルミニウム化合物を含むゾルを塗布することにより行うことができる。この場合、好ましいアルミニウム化合物の例として、ベーマイト(AlOOH)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、及び非晶質アルミナが挙げられるが、ベーマイトが最も好ましい。アルミニウム化合物を含むゾルの塗布はスピンコートにより行うのが極めて均一に塗布できる点で好ましい。スピンコートの条件は特に限定されないが、例えば1000〜10000rpmの回転数で、滴下と乾燥を含めて60〜300秒間程度行えばよい。
本発明の別の好ましい態様によれば、起点物質の付着を、少なくともアルミニウムを含む水溶液中で、多孔質基材に水熱処理を施して多孔質基材の表面にアルミニウム化合物を形成させることにより行うことができる。多孔質基材の表面に形成させるアルミニウム化合物は好ましくはAl(OH)3である。特に、多孔質基材(特にセラミックス製多孔質基材)上のLDH膜は成長初期段階で結晶質及び/又は非晶質Al(OH)3が生成する傾向があり、これを核としてLDHが成長しうる。そこで、このAl(OH)3を予め水熱処理により多孔質基材の表面に均一に付着させた後に、同じく水熱処理を伴う工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。本態様においては、工程(b)及び後続の工程(c)を同一の密閉容器内で連続的に行ってもよいし、工程(b)及び後続の工程(c)をこの順で別々に行ってもよい。
工程(b)及び工程(c)を同一の密閉容器内で連続的に行う場合には、後述する工程
(c)で用いる原料水溶液(すなわちLDHの構成元素を含む水溶液)をそのまま工程(b)に用いることができる。この場合であっても、工程(b)における水熱処理を密閉容器(好ましくはオートクレーブ)中、酸性ないし中性のpH域(好ましくはpH5.5〜7.0)にて50〜70℃という比較的低温域で行うことにより、LDHではなく、Al
(OH)3の核形成を促すことができる。また、Al(OH)3の核形成後、核形成温度での保持又は昇温により、尿素の加水分解が進むことで原料水溶液のpHが上昇していくため、LDHの成長に適したpH域(好ましくはpH7.0超)で工程(c)にスムーズに移行することができる。
一方、工程(b)及び工程(c)をこの順で別々に行う場合には、工程(b)と工程(c)とで異なる原料水溶液を用いるのが好ましい。例えば、工程(b)では、Al源を主として含む(好ましくは他の金属元素を含まない)原料水溶液を用いてAl(OH)3の核形成を行うのが好ましい。この場合、工程(b)における水熱処理を工程(c)とは別の密閉容器(好ましくはオートクレーブ)中、50〜120℃で行えばよい。Al源を主として含む原料水溶液の好ましい例としては、硝酸アルミニウムと尿素を含み、マグネシウム化合物(例えば硝酸マグネシウム)を含まない水溶液が挙げられる。Mgを含まない原料水溶液を用いることでLDHの析出を回避してAl(OH)3の核形成を促すことができる。
本発明の更に別の好ましい態様によれば、起点物質の付着を、多孔質基材の表面にアルミニウムを蒸着した後に、水溶液中で、該アルミニウムを水熱処理によりアルミニウム化合物に変換することにより行うことができる。このアルミニウム化合物は好ましくはAl
(OH)3である。特に、Al(OH)3に変換することで、これを核としてLDHの成長を促進させることができる。そこで、このAl(OH)3を水熱処理により多孔質基材の表面に均一に形成させた後に、同じく水熱処理を伴う工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。アルミニウムの蒸着は物理蒸着及び化学蒸着のいずれであってもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。また、アルミニウムの変換のための水熱処理に用いる水溶液は、既に蒸着により与えられているAlと反応してAl(OH)3を生成可能な組成であればよく、特に限定されない。
(iii)起点としてのLDH
結晶成長の起点は、LDHであることができる。この場合、LDHの核を起点としてLDHの成長を促すことができる。そこで、このLDHの核を多孔質基材の表面に均一に付着させた後に、後続の工程(c)を行うことで、多孔質基材の表面に、高度に緻密化されたLDH膜をムラなく均一に形成することができる。
本発明の好ましい態様によれば、起点物質の付着を、LDHを含むゾルを多孔質部材の表面に塗布することにより行うことができる。LDHを含むゾルは、LDHを水等の溶媒に分散させて作製したものであってよく、特に限定されない。この場合、塗布はスピンコートにより行われるのが好ましい。スピンコートにより行うのが極めて均一に塗布できる点で好ましい。スピンコートの条件は特に限定されないが、例えば1000〜10000rpmの回転数で、滴下と乾燥を含めて60〜300秒間程度行えばよい。
本発明の別の好ましい態様によれば、起点物質の付着を、多孔質基材の表面にアルミニウムを蒸着した後に、アルミニウム以外のLDHの構成元素を含む水溶液中で、(蒸着された)アルミニウムを水熱処理によりLDHに変換することにより行うことができる。アルミニウムの蒸着は物理蒸着及び化学蒸着のいずれであってもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。また、アルミニウムの変換のための水熱処理に用いる原料水溶液は、既に蒸着により与えられているAl以外の成分を含む水溶液を用いて行えばよい。そのような原料水溶液の好ましい例として、Mg源を主として含む原料水溶液が挙げられ、より好ましくは、硝酸マグネシウムと尿素を含み、アルミニウム化合物(硝酸アルミニウム)を含まない水溶液が挙げられる。Mg源を含むことで、既に蒸着により与えられているAlとともにLDHの核を形成することができる。
(c)水熱処理
LDHの構成元素を含む原料水溶液中で、多孔質基材(所望により起点物質が付着されうる)に水熱処理を施して、LDH膜を多孔質基材の表面に形成させる。好ましい原料水溶液は、マグネシウムイオン(Mg2+)及びアルミニウムイオン(Al3+)を所定の合計濃度で含み、かつ、尿素を含んでなる。尿素が存在することで尿素の加水分解を利用してアンモニアが溶液中に発生することによりpH値が上昇し(例えばpH7.0超、好ましくは7.0を超え8.5以下)、共存する金属イオンが水酸化物を形成することによりLDHを得ることができる。また、加水分解に二酸化炭素の発生を伴うため、陰イオンが炭酸イオン型のLDHを得ることができる。原料水溶液に含まれるマグネシウムイオン及びアルミニウムイオンの合計濃度(Mg2++Al3+)は0.20〜0.40mol/Lが好ましく、より好ましくは0.22〜0.38mol/Lであり、さらに好ましくは0.24〜0.36mol/L、特に好ましくは0.26〜0.34mol/Lである。このような範囲内の濃度であると核生成と結晶成長をバランスよく進行させることができ、配向性のみならず緻密性にも優れたLDH膜を得ることが可能となる。すなわち、マグネシウムイオン及びアルミニウムイオンの合計濃度が低いと核生成に比べて結晶成長が支配的となり、粒子数が減少して粒子サイズが増大する一方、この合計濃度が高いと結晶成長に比べて核生成が支配的となり、粒子数が増大して粒子サイズが減少するものと考えられる。
好ましくは、原料水溶液に硝酸マグネシウム及び硝酸アルミニウムが溶解されており、それにより原料水溶液がマグネシウムイオン及びアルミニウムイオンに加えて硝酸イオンを含んでなる。そして、この場合、原料水溶液における、尿素の硝酸イオン(NO3 −)に対するモル比(尿素/NO3 −)が、2〜6が好ましく、より好ましくは4〜5である。
多孔質基材は原料水溶液に所望の向きで(例えば水平又は垂直に)浸漬させればよい。多孔質基材を水平に保持する場合は、吊るす、浮かせる、容器の底に接するように多孔質基材を配置すればよく、例えば、容器の底から原料水溶液中に浮かせた状態で多孔質基材を固定としてもよい。多孔質基材を垂直に保持する場合は、容器の底に多孔質基材を垂直に設置できるような冶具を置けばよい。いずれにしても、多孔質基材にLDHを略垂直方向又はそれに近い方向(すなわちLDH板状粒子がそれらの板面が多孔質基材の表面(基材面)と略垂直に又は斜めに交差するような向きに)に成長させる構成ないし配置とするのが好ましい。
原料水溶液中で、多孔質基材に水熱処理を施して、LDH膜を多孔質基材の表面に形成させる。この水熱処理は密閉容器(好ましくはオートクレーブ)の中、60〜150℃で行われるのが好ましく、より好ましくは65〜120℃であり、さらに好ましくは65〜100℃であり、特に好ましくは70〜90℃である。水熱処理の上限温度は多孔質基材
(例えば高分子基材)が熱で変形しない程度の温度を選択すればよい。水熱処理時の昇温速度は特に限定されず、例えば10〜200℃/hであってよいが、好ましくは100〜200℃/hである、より好ましくは100〜150℃/hである。水熱処理の時間はLDH膜の目的とする密度と厚さに応じて適宜決定すればよい。
水熱処理後、密閉容器から多孔質基材を取り出し、イオン交換水で洗浄するのが好ましい。
上記のようにして製造されたLDH膜は、LDH板状粒子が高度に緻密化したものであり、しかも伝導に有利な略垂直方向に配向したものである。すなわち、LDH膜は、典型的には、高度な緻密性に起因して透水性(望ましくは透水性及び通気性)を有しない。また、LDH膜を構成するLDHが複数の板状粒子の集合体で構成され、該複数の板状粒子がそれらの板面が多孔質基材の表面と略垂直に又は斜めに交差するような向きに配向してなるのが典型的である。したがって、十分なガスタイト性を有する緻密性を有するLDH膜を亜鉛空気電池等の電池に用いた場合、発電性能の向上が見込めると共に、従来適用できなかった電解液を用いる亜鉛空気電池の二次電池化の大きな障壁となっている亜鉛デンドライト進展阻止及び二酸化炭素侵入防止用セパレータ等への新たな適用が期待される。また、同様に亜鉛デンドライト進展が実用化の大きな障壁となっているニッケル亜鉛電池にも適用が期待される。
ところで、上記製造方法により得られるLDH膜は多孔質基材の両面に形成されうる。このため、LDH膜をセパレータとして好適に使用可能な形態とするためには、成膜後に多孔質基材の片面のLDH膜を機械的に削るか、あるいは成膜時に片面にはLDH膜が成膜できないような措置を講ずるのが望ましい。
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。なお、以下の例は、以下に示される例は本発明による構造の多孔質基材及び電池を製造した例ではないが、多孔質基材上LDH緻密膜を実際に形成できること、及びそれをセパレータとして用いて電池を作製できることを示す参考例である。
例1(参考):多孔質基材付きLDHセパレータの作製及び評価
(1)多孔質基材の作製
ベーマイト(サソール社製、DISPAL 18N4−80)、メチルセルロース、及びイオン交換水を、(ベーマイト):(メチルセルロース):(イオン交換水)の質量比が10:1:5となるように秤量した後、混練した。得られた混練物を、ハンドプレスを用いた押出成形に付し、5cm×8cmを十分に超える大きさで且つ厚さ0.5cmの板状に成形した。得られた成形体を80℃で12時間乾燥した後、1150℃で3時間焼成して、アルミナ製多孔質基材を得た。こうして得られた多孔質基材を5cm×8cmの大きさに切断加工した。
得られた多孔質基材について、画像処理を用いた手法により、多孔質基材表面の気孔率を測定したところ、24.6%であった。この気孔率の測定は、1)表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察して多孔質基材表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とすることにより行った。この気孔率の測定は多孔質基材表面の6μm×6μmの領域について行われた。なお、図13に多孔質基材表面のSEM画像を示す。
また、多孔質基材の平均気孔径を測定したところ約0.1μmであった。本発明において、平均気孔径の測定は多孔質基材の表面の電子顕微鏡(SEM)画像をもとに気孔の最長距離を測長することにより行った。この測定に用いた電子顕微鏡(SEM)画像の倍率は20000倍であり、得られた全ての気孔径をサイズ順に並べて、その平均値から上位15点及び下位15点、合わせて1視野あたり30点で2視野分の平均値を算出して、平均気孔径を得た。測長には、SEMのソフトウェアの測長機能を用いた。
(2)多孔質基材の洗浄
得られた多孔質基材をアセトン中で5分間超音波洗浄し、エタノール中で2分間超音波洗浄、その後、イオン交換水中で1分間超音波洗浄した。
(3)原料水溶液の作製
原料として、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO3)2・6H2O、関東化学株式会社製)、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO3)3・9H2O、関東化学株式会社製)、及び尿素((NH2)2CO、シグマアルドリッチ製)を用意した。カチオン比(Mg2+/Al3+)が2となり且つ全金属イオンモル濃度(Mg2++Al3+)が0.320mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を600mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO3 −=4の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
(4)水熱処理による成膜
テフロン(登録商標)製密閉容器(内容量800ml、外側がステンレス製ジャケット)に上記(3)で作製した原料水溶液と上記(2)で洗浄した多孔質基材を共に封入した。このとき、基材はテフロン(登録商標)製密閉容器の底から浮かせて固定し、基材両面に溶液が接するように水平に設置した。その後、水熱温度70℃で168時間(7日間)水熱処理を施すことにより基材表面に層状複水酸化物配向膜(セパレータ層)の形成を行った。所定時間の経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄し、70℃で10時間乾燥させて、層状複水酸化物(以下、LDHという)の緻密膜(以下、膜試料という)を基材上に得た。得られた膜試料の厚さは約1.5μmであった。こうして、層状複水酸化物含有複合材料試料(以下、複合材料試料という)を得た。なお、LDH膜は多孔質基材の両面に形成されていたが、セパレータとして形態を複合材料に付与するため、多孔質基材の片面のLDH膜を機械的に削り取った。
(5)各種評価
(5a)膜試料の同定
X線回折装置(リガク社製、RINT TTR III)にて、電圧:50kV、電流値:300mA、測定範囲:10〜70°の測定条件で、膜試料の結晶相を測定したところ、図14に示されるXRDプロファイルが得られた。得られたXRDプロファイルについて、JCPDSカードNO.35−0964に記載される層状複水酸化物(ハイドロタルサイト類化合物)の回折ピークを用いて同定した。その結果、膜試料は層状複水酸化物(LDH、ハイドロタルサイト類化合物)であることが確認された。なお、図14に示されるXRDプロファイルにおいては、膜試料が形成されている多孔質基材を構成するアルミナに起因するピーク(図中で○印が付されたピーク)も併せて観察されている。
(5b)微構造の観察
膜試料の表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察した。得られた膜試料の表面微構造のSEM画像(二次電子像)を図15に示す。
また、複合材料試料の断面をCP研磨によって研磨して研磨断面を形成し、この研磨断面の微構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察した。こうして得られた複合材料試料の研磨断面微構造のSEM画像を図16に示す。
(5c)気孔率の測定
膜試料について、画像処理を用いた手法により、膜の表面の気孔率を測定した。この気孔率の測定は、1)表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察して膜の表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とすることにより行った。この気孔率の測定は配向膜表面の6μm×6μmの領域について行われた。その結果、膜の表面の気孔率は19.0%であった。また、この膜表面の気孔率を用いて、膜表面から見たときの密度D(以下、表面膜密度という)をD=100%−(膜表面の気孔率)により算出したところ、81.0%であった。
また、膜試料について、研磨断面の気孔率についても測定した。この研磨断面の気孔率についても測定は、上記(5b)に示される手順に従い膜の厚み方向における断面研磨面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得したこと以外は、上述の膜表面の気孔率と同様にして行った。この気孔率の測定は配向膜断面の膜部分について行われた。こうして膜試料の断面研磨面から算出した気孔率は平均で3.5%(3箇所の断面研磨面の平均値)であり、多孔質基材上でありながら非常に高密度な膜が形成されていることが確認された。
(5d)緻密性判定試験I
膜試料が透水性を有しない程の緻密性を有することを確認すべく、緻密性判定試験を以下のとおり行った。まず、図17Aに示されるように、上記(1)において得られた複合材料試料220(1cm×1cm平方に切り出されたもの)の膜試料側に、中央に0.5cm×0.5cm平方の開口部222aを備えたシリコンゴム222を接着し、得られた積層物を2つのアクリル製容器224,226で挟んで接着した。シリコンゴム222側に配置されるアクリル製容器224は底が抜けており、それによりシリコンゴム222はその開口部222aが開放された状態でアクリル製容器224と接着される。一方、複合材料試料220の多孔質基材側に配置されるアクリル製容器226は底を有しており、その容器226内にはイオン交換水228が入っている。すなわち、組み立て後に上下逆さにすることで、複合材料試料220の多孔質基材側にイオン交換水228が接するように各構成部材が配置されてなる。これらの構成部材等を組み立て後、総重量を測定した。なお、容器226には閉栓された通気穴(図示せず)が形成されており、上下逆さにした後に開栓されることはいうまでもない。図17Bに示されるように組み立て体を上下逆さに配置して25℃で1週間保持した後、総重量を再度測定した。このとき、アクリル製容器224の内側側面に水滴が付着している場合には、その水滴を拭き取った。そして、試験前後の総重量の差を算出することにより緻密度を判定した。その結果、25℃で1週間保持した後においても、イオン交換水の重量に変化は見られなかった。このことから、膜試料(すなわち機能膜)は透水性を有しない程に高い緻密性を有することが確認された。
(5e)緻密性判定試験II
膜試料が通気性を有しない程の緻密性を有することを確認すべく、緻密性判定試験を以下のとおり行った。まず、図18A及び18Bに示されるように、蓋の無いアクリル容器230と、このアクリル容器230の蓋として機能しうる形状及びサイズのアルミナ治具232とを用意した。アクリル容器230にはその中にガスを供給するためのガス供給口230aが形成されている。また、アルミナ治具232には直径5mmの開口部232aが形成されており、この開口部232aの外周に沿って膜試料載置用の窪み232bが形成されてなる。アルミナ治具232の窪み232bにエポキシ接着剤234を塗布し、この窪み232bに複合材料試料236の膜試料236b側を載置してアルミナ治具232に気密かつ液密に接着させた。そして、複合材料試料236が接合されたアルミナ治具232を、アクリル容器230の開放部を完全に塞ぐようにシリコーン接着剤238を用いて気密かつ液密にアクリル容器230の上端に接着させて、測定用密閉容器240を得た。この測定用密閉容器240を水槽242に入れ、アクリル容器230のガス供給口230aを圧力計244及び流量計246に接続して、ヘリウムガスをアクリル容器230内に供給可能に構成した。水槽242に水243を入れて測定用密閉容器240を完全に水没させた。このとき、測定用密閉容器240の内部は気密性及び液密性が十分に確保されており、複合材料試料236の膜試料236b側が測定用密閉容器240の内部空間に露出する一方、複合材料試料236の多孔質基材236a側が水槽242内の水に接触している。この状態で、アクリル容器230内にガス供給口230aを介してヘリウムガスを測定用密閉容器240内に導入した。圧力計244及び流量計246を制御して膜試料236b内外の差圧が0.5atmとなる(すなわちヘリウムガスに接する側に加わる圧力が反対側に加わる水圧よりも0.5atm高くなる)ようにして、複合材料試料236から水中にヘリウムガスの泡が発生するか否かを観察した。その結果、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった。よって、膜試料236bは通気性を有しない程に高い緻密性を有することが確認された。
例2(参考):ニッケル亜鉛二次電池の作製及び評価
(1)多孔質基材付きセパレータの用意
例1と同様の手順により、多孔質基材付きセパレータとして、アルミナ基材上ハイドロタルサイト膜(サイズ:5cm×8cm)を用意した。
(2)正極板の作製
亜鉛及びコバルトを固溶体となるように添加した水酸化ニッケル粒子を用意した。この水酸化ニッケル粒子を水酸化コバルトで被覆して正極活物質を得た。得られた正極活物質と、カルボキシメチルセルロースの2%水溶液とを混合してペーストを調製した。正極活物質の多孔度が50%となるように、多孔度が約95%のニッケル金属多孔質基板からなる集電体に上記得られたペーストを均一に塗布して乾燥し、活物質部分が5cm×5cmの領域にわたって塗工された正極板を得た。このとき、4Ah相当の水酸化ニッケル粒子が活物質中に含まれるように塗工量を調整した。
(3)負極板の作製
銅パンチングメタルからなる集電体上に、酸化亜鉛粉末80重量部、亜鉛粉末20重量部及びポリテトラフルオロエチレン粒子3重量部からなる混合物を塗布して、多孔度約50%で、活物質部分が5cm×5cmの領域にわたって塗工された負極板を得た。このとき、正極板容量の4Ah相当の酸化亜鉛粉末が活物質中に含まれるように塗工量を調整した。
(4)電池の組み立て
上記得られた正極板、負極板、及び多孔質基材付きセパレータを用いて、図7に示されるようなニッケル亜鉛二次電池を以下のような手順で組み立てた。
まず、ケース上蓋が外されたABS樹脂製の直方体ケース本体を用意した。このケース本体の中央付近に多孔質基材付きセパレータ(アルミナ基材上ハイドロタルサイト膜)を挿入し、その3辺を市販の接着剤を用いてケース本体の内壁に固定した。正極板及び負極板を正極室及び負極室にそれぞれ挿入した。このとき、正極集電体及び負極集電体がケース本体内壁に接するような向きで正極板及び負極板を配置した。正極室に、正極活物質塗工部分が十分に隠れる量の6mol/LのKOH水溶液を電解液として注液した。正極室の液面高さはケース底より約5.2cmであった。一方、負極室には、負極活物質塗工部分が十分に隠れるだけでなく、充電時に減少することが見込まれる水分量を考慮した過剰量の6mol/LのKOH水溶液を電解液として注液した。負極室における液面高さはケース底より約6.5cmであった。正極集電体及び負極集電体の端子部をそれぞれケース上部の外部端子と接続した。ケース上蓋を熱融着でケース本体に固定して、電池ケース容器を密閉化した。こうしてニッケル亜鉛二次電池を得た。なお、この電池においては、セパレータのサイズが幅5cm×高さ8cmであり、かつ、正極板及び負極板の活物質塗工部分のサイズが幅5cm×高さ5cmであるため、正極室及び負極室の上部3cm相当の空間が正極側余剰空間及び負極側余剰空間といえる。
(5)評価
作製したニッケル亜鉛二次電池に対して、設計容量4Ahの0.1C相当の0.4mAの電流で10時間定電流充電を実施した。充電後、ケースの変形や電解液の漏れは観察されなかった。充電後の電解液量を観察したところ、正極室の電解液の液面高さはケース底より約7.5cm、負極室の電解液の液面高さはケース底より約5.2cmであった。充電により、正極室電解液が増加し、負極室電解液が減少したものの、負極活物質塗工部分には十分な電解液があり、充放電を通して、塗工した正極活物質及び負極活物質が、十分な充放電反応を起こす電解液をケース内に保持できていた。
例3(参考):亜鉛空気二次電池の作製
(1)多孔質基材付きセパレータの用意
例1と同様の手順により、多孔質基材付きセパレータ(以下、単にセパレータという)として、アルミナ基材上ハイドロタルサイト膜を用意した。
(2)空気極層の作製
空気極触媒としてのα−MnO2粒子を次のようにして作製した。まず、Mn(SO4)・5H2O及びKMnO4を5:13のモル比で脱イオン水に溶かして混合した。得られた混合液をテフロン(登録商標)が内貼りされたステンレス製密閉容器に入れ、140℃で水熱合成を2時間行う。水熱合成により得られた沈殿物をろ過し、蒸留水で洗浄した後、80℃で6時間乾燥した。こうしてα−MnO2の粉末を得た。
水酸化物イオン伝導性材料としての層状複水酸化物粒子(以下、LDH粒子という)を次のようにして作製した。まず、Ni(NO3)2・6H2O及びFe(NO3)3・9H2Oを脱イオン水にNi:Fe=3:1のモル比になるように溶かして混合した。得られた混合液を70℃で0.3MのNa2CO3溶液に撹拌しながら滴下した。この際、2MのNaOH溶液を加えながら混合液のpHを10に調整して、70℃で24時間保持する。混合液中に生成した沈殿物をろ過し、蒸留水で洗浄後、80℃で乾燥してLDHの粉末を得た。
先に得られたα−MnO2粒子及びLDH粒子、並びに電子伝導性材料としてのカーボンブラック(Cabot社製、品番VXC72)を所定の配合比となるように秤量して、エタノール溶媒の共存下で湿式混合した。得られた混合物を70℃で乾燥した後、解砕する。得られた解砕粉をバインダー(PTFE、エレクトロケム社製、品番EC−TEF−500ML)及び水と混合してフィブリル化した。このとき、水の添加量は空気極に対して1質量%とした。こうして得られたフィブリル状混合物を厚さ50μmとなるように集電体(カーボンクロス(エレクトロケム社製、品番EC−CC1−060T))にシート状に圧着して空気極層/集電体の積層シートを得た。こうして得られた空気極層は、電子伝導相(カーボンブラック)を20体積%、触媒層(α−MnO2粒子)を5体積%、水酸化物イオン伝導相(LDH粒子)を70体積%及びバインダー相(PTFE)を5体積%含むものであった。
(3)セパレータ付き空気極の作製
アニオン交換膜(アストム社、ネオセプタAHA)を1MのNaOH水溶液に一晩浸漬させた。このアニオン交換膜をセパレータのハイドロタルサイト膜上に中間層として積層して、セパレータ/中間層積層体を得る。中間層の厚さは30μmである。得られたセパレータ/中間層積層体に、先に作製した空気極層/集電体の積層シートを、空気極層側が中間層と接するように圧着して、セパレータ付き空気極試料を得る。
(4)負極板の作製
銅パンチングメタルからなる集電体上に、酸化亜鉛粉末80重量部、亜鉛粉末20重量部及びポリテトラフルオロエチレン粒子3重量部からなる混合物を塗布して、多孔度約50%で活物質部分が塗工された負極板を得る。
(5)第三電極の作製
ニッケルメッシュからなる集電体上に白金ペーストを塗布して、第三電極を得る。
(6)電池の組み立て
上記得られたセパレータ付き空気極、負極板、及び第三電極を用いて、図9Aに示されるような横型構造の亜鉛空気二次電池を以下のような手順で作製する。まず、ABS樹脂製で直方体形状を有する蓋の無い容器(以下、樹脂容器という)を用意する。この樹脂容器の底に負極板を、負極活物質が塗工された側が上を向くように載置する。このとき、負極集電体が樹脂容器の底部に接しており、負極集電体の端部が樹脂容器側面に貫通して設けられる外部端子と接続する。次に、樹脂容器内壁の負極板の上面よりも高い位置に(すなわち負極板と接触せず充放電反応に関与しない位置)に第三電極を設け、不織布セパレータを第三電極と接触するように配置する。樹脂容器の開口部をセパレータ付き空気極で空気極側が外側になるように塞ぎ、その際、開口部の外周部分に市販の接着剤を塗工して気密性及び液密性を与えるように封止して接着する。樹脂容器の上端近傍に設けられた小さな注入口を介して樹脂容器内に6mol/LのKOH水溶液を電解液として注入する。こうして、セパレータが電解液と接触するとともに、不織布セパレータの保液性により電解液の増減に関わらず電解液が第三電極に常時接触可能な状態とされる。このとき、注入する電解液の量は、放電末状態で電池を作製すべく、樹脂容器内で負極活物質塗工部分が十分に隠れるだけでなく、充電時に減少することが見込まれる水分量を考慮した過剰量とする。したがって、樹脂容器は上記過剰量の電解液を収容できるように設計されている。最後に、樹脂容器の注入口を封止する。こうして樹脂容器及びセパレータで区画された内部空間は気密且つ液密に密閉されている。最後に第三電極と空気極の集電層とを外部回路を介して接続する。こうして亜鉛空気二次電池を得る。
かかる構成によれば、セパレータが水及び気体を通さない程の高度な緻密性を有するため、充電時に生成する亜鉛デンドライトによるセパレータの貫通を物理的に阻止して正負極間の短絡を防止し、かつ、空気中の二酸化炭素の侵入を阻止して電解液中での(二酸化炭素に起因する)アルカリ炭酸塩の析出を防止することができる。その上、負極134から副反応により発生しうる水素ガスを第三電極138に接触させて前述した反応を経て水に戻すことができる。すなわち、亜鉛デンドライトによる短絡及び二酸化炭素の混入の両方を防止するのに好適な構成を有しながら、水素ガス発生の問題にも対処可能な、信頼性の高い亜鉛空気二次電池が提供される。