JP2017011073A - 圧粉磁心、及び圧粉磁心の製造方法 - Google Patents

圧粉磁心、及び圧粉磁心の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】軟磁性粒子がFe−Si系合金からなり、高密度で低保磁力な圧粉磁心とその製造方法を提供する。【解決手段】複数の軟磁性粒子と、前記軟磁性粒子の各々の表面を覆う絶縁被覆と、を備える圧粉磁心であって、前記軟磁性粒子は、Siを3質量%以上10質量%以下、Pを0.4質量%以上1.8質量%以下含有し、残部がFe及び不可避不純物からなるFe−Si−P系合金粒子であり、前記絶縁被覆は、Feの酸化物と、Siの酸化物と、Pの酸化物と、を含む酸化物材であり、相対密度が93%以上である圧粉磁心。【選択図】図1

Description

本発明は、リアクトルやインダクタといった回路部品に備える磁心などに利用される圧粉磁心、及び圧粉磁心の製造方法に関するものである。特に、軟磁性粒子がFe−Si−P系合金からなり、高密度で低保磁力な圧粉磁心に関する。
スイッチング電源やDC/DCコンバータなどのエネルギーを変換する回路に備える部品として、巻線を巻回してなるコイルと、このコイルが配置され、閉磁路を形成する磁心とを備える磁気部品がある。上記磁心として、軟磁性材料からなる粉末を用いて製造される圧粉磁心がある。圧粉磁心は、代表的には、軟磁性粒子の表面に絶縁層を有する被覆軟磁性粒子の粉末を所定の形状に加圧成形して成形体とし、その成形体に熱処理を施すことで製造される。
軟磁性材料のうち、特に、センダストに代表されるFe−Si−Al系合金やFe−Si系合金といった鉄基合金は、例えば、純鉄に比較して鉄損を低減し易い。従って、上記鉄基合金から構成される圧粉磁心は、より低損失な磁心を構築できる(例えば、特許文献1)。
特開2012−107330号公報
しかし、上述の鉄基合金は、添加元素の固溶体硬化によって純鉄に比較して非常に硬く塑性変形性に劣る。そのため、鉄基合金粒子は、上述の加圧成形によって、実質的に塑性変形しない。よって、圧粉磁心を構成する個々の鉄基合金粒子間に空隙が多くなり、圧粉磁心の密度の低下を招き、磁気特性が低下する。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的の一つは、軟磁性粒子がFe−Si−P系合金からなり、高密度で低保磁力な圧粉磁心を提供することにある。また、本発明の別の目的は、軟磁性粒子がFe−Si−P系合金からなり、高密度で低保磁力な圧粉磁心を効率的に得られる圧粉磁心の製造方法を提供することにある。
本発明の一態様に係る圧粉磁心は、複数の軟磁性粒子と、前記軟磁性粒子の各々の表面を覆う絶縁被覆と、を備える。前記軟磁性粒子は、Siを3質量%以上10質量%以下、Pを0.4質量%以上1.8質量%以下含有し、残部がFe及び不可避不純物からなるFe−Si−P系合金粒子であり、前記絶縁被覆は、Feの酸化物と、Siの酸化物と、Pの酸化物と、を含む酸化物材であり、相対密度が93%以上である。
本発明の一態様に係る圧粉磁心の製造方法は、準備工程と、成形工程と、焼結工程と、を備える。準備工程は、原料粉末として、Siの含有量が2質量%以下であるFe−Si系合金からなる低Si粉末と、Siの含有量が9質量%以上であるFe−Si系合金からなる高Si粉末と、Pの含有量が15質量%以上36質量%以下であるFe−P系合金粉末と、Siの酸化物を含む酸化物粉末と、が混合された混合粉末を準備する。成形工程は、前記混合粉末を加圧圧縮して成形体とする。焼結工程は、前記成形体を1000℃以上1300℃以下の温度にて焼結する。前記焼結工程は、一次焼結工程と、二次焼結工程と、を備える。一次焼結工程は、実質的に酸素を含まない雰囲気中で焼結を行い、前記低Si粉末及び前記高Si粉末を、Siの含有量が3質量%以上10質量%以下、Pの含有量が0.4質量%以上1.8質量%以下であるFe−Si−P系合金からなる複数の軟磁性粒子とする。二次焼結工程は、前記一次焼結工程の後、酸素を含む雰囲気中で焼結を行い、前記軟磁性粒子の各々の周囲を、Feの酸化物と、Siの酸化物と、Pの酸化物と、を含む酸化物材で覆う。
上記圧粉磁心は、軟磁性粒子がFe−Si−P系合金からなり、高密度で低保磁力である。
上記圧粉磁心の製造方法は、軟磁性粒子がFe−Si−P系合金からなり、高密度で低保磁力な圧粉磁心を生産性よく製造することができる。
実施形態に係る圧粉磁心を製造する状態を模式的に説明する説明図である。
[本発明の実施形態の説明]
Fe−Si系合金では、Siの含有量が6.5質量%近傍であると、保磁力が最も小さくなることが知られている。低保磁力な圧粉磁心を製造するにあたり、例えば、Fe−6.5質量%Si合金からなる合金粉末を用いて焼結することが考えられる。しかし、Fe−Si系合金では、Siの含有量が高いほど、高硬度となって塑性変形性に劣るため、高密度の圧粉磁心を得ることが困難である。そこで、Siの含有量が6.5質量%近傍であるFe−Si系合金(以下、Fe−6.5Si系合金と呼ぶことがある)からなる圧粉磁心を製造するにあたり、原料粉末として、Siの含有量が2質量%以下であるFe−Si系合金からなる低Si粉末を用いることで塑性変形性を向上させることを検討した。このとき、Fe−6.5Si系合金からなる合金粒子と、この合金粒子の表面を覆う絶縁被覆と、を有する被覆軟磁性粒子からなる圧粉磁心を得るために、原料粉末として、低Si粉末と、Siの含有量が高いFe−Si系合金からなる高Si粉末と、絶縁被覆となる酸化物粉末と、を混合した混合粉末を用いることを考えた。この混合粉末を加圧圧縮⇒焼結することで、低Si粉末と高Si粉末の各構成元素が相互拡散してFe−6.5Si系合金粒子からなる粉末となり、焼結によって液相となった酸化物粉末が各Fe−6.5Si系合金粒子の表面を覆うことで絶縁被覆となると考えられるからである。
ここで、Fe−Si系合金の状態図から、酸化物粉末が液相となる焼結温度(1200℃近傍)では、Siの含有量が2質量%以下であるFe−Si系合金はγ相であることが知られている。γ相はFeの自己拡散が非常に遅いため、上述したような低Si粉末と高Si粉末との間で各構成元素の相互拡散が生じ難く、焼結が進み難い。そのため、上記混合粉末を加圧圧縮⇒焼結しても、Fe−6.5Si系合金からなる合金粒子と、この合金粒子の表面を覆う絶縁被覆と、を有する被覆軟磁性粒子からなる圧粉磁心を製造することが困難であることがわかった。そこで、本発明者らが鋭意研究した結果、上記混合粉末にPを含有したFe−P系合金粉末をさらに混合し、この混合粉末を加圧圧縮⇒焼結することで、Pが固溶されたFe−6.5Si系合金からなる合金粒子と、この合金粒子の表面を覆う絶縁被覆と、を有する被覆軟磁性粒子を含む圧粉磁心が得られる、ことを見出した。以下、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)実施形態に係る圧粉磁心は、複数の軟磁性粒子と、前記軟磁性粒子の各々の表面を覆う絶縁被覆と、を備える。前記軟磁性粒子は、Siを3質量%以上10質量%以下、Pを0.4質量%以上1.8質量%以下含有し、残部がFe及び不可避不純物からなるFe−Si−P系合金粒子であり、前記絶縁被覆は、Feの酸化物と、Siの酸化物と、Pの酸化物と、を含む酸化物材であり、相対密度が93%以上である。
上記構成によれば、軟磁性粒子がSiを3質量%以上10質量%以下含有するFe−Si−P系合金粒子であるにもかかわらず、相対密度が93%以上と高密度である。よって、上記圧粉磁心は、低保磁力である。
(2)上記圧粉磁心の一例として、前記酸化物材の含有量は、0.5質量%以上2.0質量%以下である形態が挙げられる。
酸化物材の含有量が0.5質量%以上であることで、各軟磁性粒子の表面に絶縁被覆が均一に配され易い。均一な絶縁被覆の存在により、圧粉磁心の渦電流損を低減できる。一方、酸化物材の含有量が2.0質量%以下であることで、圧粉磁心における絶縁被覆量が適量となり、軟磁性粒子の量を十分とできるため、高密度の圧粉磁心を得易い。
(3)上記圧粉磁心の一例として、前記圧粉磁心の任意の断面において、前記軟磁性粒子の過半数が単結晶である形態が挙げられる。
軟磁性粒子が単結晶であるということは、磁化反転を阻害する結晶粒界が存在しないため保磁力を低減できる。
(4)上記圧粉磁心の一例として、前記軟磁性粒子が単結晶である場合、前記軟磁性粒子の単結晶の平均結晶粒径は、40μm以上300μm以下である形態が挙げられる。
軟磁性粒子の単結晶の平均結晶粒径が40μm以上であることで、保磁力を低減できる。一方、軟磁性粒子の単結晶の平均結晶粒径が300μm以下であることで、渦電流損失の増大を低減し易い。
(5)実施形態に係る圧粉磁心の製造方法は、準備工程と、成形工程と、焼結工程と、を備える。準備工程は、原料粉末として、Siの含有量が2質量%以下であるFe−Si系合金からなる低Si粉末と、Siの含有量が9質量%以上であるFe−Si系合金からなる高Si粉末と、Pの含有量が15質量%以上36質量%以下であるFe−P系合金粉末と、Siの酸化物を含む酸化物粉末と、が混合された混合粉末を準備する。成形工程は、前記混合粉末を加圧圧縮して成形体とする。焼結工程は、前記成形体を1000℃以上1300℃以下の温度にて焼結する。前記焼結工程は、一次焼結工程と、二次焼結工程と、を備える。一次焼結工程は、実質的に酸素を含まない雰囲気中で焼結を行い、前記低Si粉末及び前記高Si粉末を、Siの含有量が3質量%以上10質量%以下、Pの含有量が0.4質量%以上1.8質量%以下であるFe−Si−P系合金からなる複数の軟磁性粒子とする。二次焼結工程は、前記一次焼結工程の後、酸素を含む雰囲気中で焼結を行い、前記軟磁性粒子の各々の周囲を、Feの酸化物と、Siの酸化物と、Pの酸化物と、を含む酸化物材で覆う。
上記構成によれば、原料粉末に塑性変形性に優れる低Si粉末を混合することで、圧縮成形時の塑性変形性に優れ、良好な成形性を有することができ、高密度な圧粉磁心を製造することができる。よって、成形用バインダなどを不要とできる。主に一次焼結工程において、低Si粉末と高Si粉末の各構成元素が相互拡散することで、圧粉磁心を構成する軟磁性粒子を、Siの含有量が3質量%以上10質量%以下であるFe−Si−P系合金とでき、低保磁力な圧粉磁心を製造することができる。また、主に二次焼結工程において、原料粉末に由来する酸化物材で各軟磁性粒子の周囲を覆うことができるため、原料粉末の段階で各粉末粒子の表面への絶縁被覆の形成を考慮する必要がなく、絶縁被覆を形成する工程を省略することができる。以上より、上記構成によれば、高密度で低保磁力な圧粉磁心を生産性よく製造することができる。
焼結工程において、1000℃以上1300℃以下の温度にて焼結を行うことで、次の現象が生じていると考えられる。まず、一次焼結工程において、実質的に酸素を含まない雰囲気で焼結を行うことで、Fe−P系合金粉末が液相状態となり、この液相状態のFe−P系合金が低Si粉末及び高Si粉末の各粒子の結晶粒界に侵入する。このとき、低Si粉末と高Si粉末との間でFe,Siが相互拡散し、かつ液相状態のFe−P系合金から溶解したPが低Si粉末及び高Si粉末に固溶されることで、Siの含有量が3質量%以上10質量%以下、Pの含有量が0.4質量%以上1・8質量%以下であるFe−Si−P系合金からなる複数の軟磁性粒子が生成される。原料粉末にFe−P系合金粉末が混合されていることで、Fe−Si系合金がγ相(Feの自己拡散が非常に遅い)であっても、Feの自己拡散係数を向上でき、低Si粉末と高Si粉末との間でFe,Siが相互拡散を容易に行え、焼結が進む。液相状態のFe−P系合金は、各軟磁性粒子の結晶粒界に侵入するため、各軟磁性粒子の表面を覆い、各軟磁性粒子同士を絶縁する絶縁被覆となる。液相状態のFe−P系合金が各軟磁性粒子の結晶粒界に侵入することで、各軟磁性粒子は互いに近づく方向に移動し、各軟磁性粒子間の空隙が狭められる。
次に、二次焼結工程において、酸素を含む雰囲気中で焼結を行うことで、Siの酸化物が液相状態となり、かつ液相状態のFe−P系合金が酸化され、Siの酸化物と、Feの酸化物と、Pの酸化物とを含む酸化物材による絶縁被覆が生成される。その後、酸化物材が液相から固相に転移するにあたり、各軟磁性粒子は再配列され、各軟磁性粒子間の空隙がさらに縮小することで、高密度の圧粉磁心を製造することができる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態の詳細を、以下に説明する。まず、圧粉磁心の製造方法を説明し、その後に圧粉磁心を説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、後述する試験例について原料粉末の混合割合、成形体の成形圧力、成形体の焼結温度・時間などを適宜変更することができる。
<圧粉磁心の製造方法>
実施形態の圧粉磁心の製造方法は、以下の準備工程、成形工程、焼結工程を備える。以下、図1に基づいて、各工程を順に説明する。
〔準備工程〕
図1の上段左図に示すように、原料粉末として、Siの含有量が少ないFe−Si系合金からなる低Si粉末21と、Siの含有量が多いFe−Si系合金からなる高Si粉末22と、Fe−P系合金粉末23と、酸化物粉末24と、を混合した混合粉末2を準備する。
・低Si粉末及び高Si粉末
低Si粉末(低Si軟磁性粒子)21におけるSiの含有量は、2質量%以下である。Siの含有量は、6.5質量%近傍であると低保磁力に寄与するものの、Siの含有量が多いほど高硬度となり塑性変形性の低下を招く。よって、Siの含有量が2質量%以下であることで、後述する成形工程において塑性変形性に優れ、良好な成形性を有することができる。Siの含有量は、1質量%以下が好ましく、Siを実質的に含有しない純鉄がより好ましい。純鉄は、鉄合金と比較して安価であり、経済性にも優れる。
Fe−Si系合金は、900℃〜1400℃程度の領域において、Siの含有量によってα相とγ相との間で相変態する領域が存在する。γ相はFeの自己拡散が非常に遅い領域であり、後述する焼結工程において、低Si粉末と高Si粉末との間で各構成元素の相互拡散が生じ難く、焼結が進み難い領域である。ここで言う低Si粉末は、一次焼結工程の焼結温度(後述する焼結工程において説明する)において、Siの含有量がγ相の領域に位置するFe−Si系合金からなる。このγ相の領域は、代表的にはFe−P系合金粉末23及び酸化物粉末24が液相となる焼結温度では、Siの含有量が約2質量%以下である。
高Si粉末(高Si軟磁性粒子)22におけるSiの含有量は、9質量%以上である。Siの含有量が9質量%以上であることで、後述する焼結工程において高Si粉末22から低Si粉末21にSiが十分に拡散して、Siの含有量が3質量%以上10質量%以下であるFe−Si−P系合金からなる圧粉磁心を製造し易い。Siの含有量は、多いほど焼結時に拡散するSi量が多くなって、Siの含有量が6.5質量%近傍であるFe−Si−P系合金を得易く、12質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。
低Si粉末21及び高Si粉末22は、代表的には、上述の範囲でSiを含有し、残部がFe及び不可避不純物というFe−Siの二相合金からなるものが挙げられる。
低Si粉末21及び高Si粉末22の各配合量(質量)は、低Si粉末:高Si粉末=2:1〜15:1が好ましく、3:1〜10:1がより好ましい。低Si粉末21及び高Si粉末22の各配合量は、後述するFe−P系合金粉末23及び酸化物粉末24の含有量と併せて、圧粉磁心を構成する軟磁性粒子10(Fe−Si−P系合金)中のSiの含有量が所望の値(3質量%以上10質量%以下から選択される値)となるように、各粉末のSiの含有量に応じて選択すればよい。また、高密度な圧粉磁心を得ることを考慮すると、低Si粉末21の含有量が高Si粉末22の含有量よりも多い方が好ましい。
低Si粉末21及び高Si粉末22の各粒子の大きさは、適宜選択することができる。成形性及び焼結性を考慮するといずれも、平均粒径は150μm以下が好ましい。特に、高Si粉末22は、低Si粉末21に比較して高硬度であり、成形性に劣ることから、低Si粉末21よりも小さい方が好ましい。具体的には、高Si粉末(各高Si軟磁性粒子)22の平均粒径は、45μm以下であると、原料粉末(混合粉末2)が成形性に優れて好ましく、さらに30μm以下、20μm以下が好ましい。但し、高Si粉末22が小さ過ぎると、取り扱い難く、作業性に劣ることから、高Si粉末(各高Si軟磁性粒子)22の平均粒径は、1μm以上が好ましく、さらに3μm以上、特に5μm以上であるとハンドリング性に優れてより好ましい。
低Si粉末(低Si軟磁性粒子)21の平均粒径は、45μm以上であると、原料粉末(混合粉末2)が成形性に優れて好ましく、さらに50μm以上、70μm以上が好ましい。低Si粉末(低Si軟磁性粒子)21の平均粒径は、150μm以下であると、後述する焼結工程において、低Si合金からなる各粒子の内部にまでSiが十分に拡散できて焼結性に優れる。さらに、低Si粉末(低Si軟磁性粒子)21の平均粒径は、125μm以下、特に100μm以下であると、短時間でもSiを十分に拡散できて焼結性をさらに高め易い。また、低Si粉末(低Si軟磁性粒子)21の平均粒径は、高Si粉末(各高Si軟磁性粒子)22の平均粒径の3倍以上、さらに5倍以上であると、低Si粉末が十分に大きく、成形性に優れる。
低Si粉末21及び高Si粉末22は、公知のFe−Si系合金粉末の製造方法、例えば、アトマイズ法などを利用して製造できる。上述のSiの含有量や平均粒径を満たす市販の粉末を利用してもよい。
・Fe−P系合金粉末
Fe−P系合金粉末(Fe−P系合金粒子)23は、代表的には、Pを15質量%以上36質量%以下含有し、残部がFe及び不可避不純物というFe−Pの二相合金からなるものが挙げられる。Fe−P系合金粉末は、後述する焼結工程において液相状態となり、この液相状態のFe−P系合金に由来してFe−Si−P系合金粒子(軟磁性粒子)の周囲を覆う絶縁被覆を生成する。また、Fe−P系合金粉末は、後述する焼結工程において生じる低Si粉末21と高Si粉末22の各構成元素の相互拡散の促進を促す役割を行う。
Pの含有量が15質量%以上であることで、低Si粉末は焼結温度近傍でα相となるため、Feの自己拡散係数を向上できる。よって、後述する焼結工程において低Si粉末21と高Si粉末22の各構成元素の相互拡散を容易に行うことができ、焼結を促進することができる。具体的には、Pの含有量が15質量%以上であることで、Feの自己拡散係数をγ相における自己拡散係数の100倍程度まで向上することができ、α相における自己拡散係数と同等とできる。一方、Pの含有量が36質量%以下であることで、Pによる保磁力への影響も実質的に出ない。Pの含有量は、20質量%以上33質量%以下が好ましく、25質量%以上30質量%以下がより好ましい。
Fe−P系合金粉末(Fe−P系合金粒子)23の平均粒径は、45μm以下であると、原料粉末(混合粉末2)が成形性に優れて好ましく、さらに30μm以下、20μm以下が好ましい。ただし、Fe−P系合金粉末23が小さ過ぎると、取り扱い難く、作業性に劣ることから、Fe−P系合金粉末(Fe−P系合金粒子)23の平均粒径は、1μm以上が好ましく、さらに3μm以上、特に5μm以上であるとハンドリング性に優れてより好ましい。
Fe−P系合金粉末23の配合量は、混合粉末2中に1質量%以上7質量%以下が好ましい。Fe−P系合金粉末23の混合粉末2中の含有量が1質量%以上であることで、一次焼結後にFe−Si−P系合金粒子(軟磁性粒子)の周囲に均一的にFe−P系の粒界層を形成することができる。一方、Fe−P系合金粉末23の混合粉末2中の含有量が7質量%以下であることで、低Si粉末21及び高Si粉末22の含有量を適量とでき、圧粉磁心におけるFe−Si−P系合金粒子(軟磁性粒子)の含有量を十分に確保できる。
Fe−P系合金粉末23は、所望の大きさの市販のFe−P系合金粉末を用いてもよいし、市販の粉末を粉砕して所望の大きさのものをふるいなどで選別してもよい。
・酸化物粉末
酸化物粉末(酸化物粒子)24は、絶縁性を有する適宜な酸化物が利用でき、Siの酸化物を含む。酸化物粉末24は、後述する焼結工程において液相状態となり、この液相状態の酸化物に由来して、上述した液相状態のFe−P系合金と共にFe−Si−P系合金粒子(軟磁性粒子)の周囲を覆う絶縁被覆を生成する。酸化物粉末24は、(1)Fe−Si系合金やFe−Si−P系合金に固溶しない、もしくは固溶しても磁気特性に影響を及ぼさないもの、(2)Fe−Si系合金やFe−Si−P系合金に対して接触角が小さく(濡れ性が良く)、軟磁性粒子の結晶粒界へ液相侵入し易いもの、を含有することが挙げられる。
酸化物粉末(酸化物粒子)24の大きさは、平均粒径が1μm以上40μm以下であることが挙げられる。酸化物粉末(酸化物粒子)24の平均粒径が1μm以上であることで、低Si粉末21及び高Si粉末22の周囲に均一的に配され易く、さらに原料粉末(混合粉末2)として取り扱い易い。一方、酸化物粉末(酸化物粒子)24の平均粒径が40μm以下であることで、酸化物に由来して生成される絶縁被覆の厚さのばらつきを抑制し易く、磁気特性の低下を招き難い。酸化物粉末(酸化物粒子)24の平均粒径は、5μm以上30μm以下が好ましく、10μm以上30μm以下がより好ましい。
酸化物粉末24の配合量は、混合粉末2中に0.5質量%以上2.0質量%以下が好ましい。酸化物粉末24の混合粉末2中の含有量が0.5質量%以上であることで、低Si粉末21及び高Si粉末22の周囲に均一的に配され易く、Fe−Si−P系合金粒子(軟磁性粒子)の周囲を均一的に絶縁被覆で被覆することができる。一方、酸化物粉末24の混合粉末2中の含有量が2.0質量%以下であることで、低Si粉末21及び高Si粉末22の含有量を適量とでき、圧粉磁心におけるFe−Si−P系合金粒子(軟磁性粒子)の含有量を十分に確保できる。酸化物粉末24の混合粉末2中の含有量は、さらに1質量%以上1.5質量%以下であることが挙げられる。
酸化物粉末24の配合量は、混合粉末2中に2.0質量%超10質量%以下とすることもできる。酸化物粉末24の混合粉末2中の含有量が2.0質量%超であることで、酸化物に由来して生成される絶縁被覆の含有量を多くでき、低透磁率の圧粉磁心とできる。一方、酸化物粉末24の混合粉末2中の含有量が10質量%以下であることで、低Si粉末21及び高Si粉末22の含有量を適量とでき、圧粉磁心における軟磁性粒子の含有量を十分に確保することができる。
酸化物粉末24は、Caの酸化物を含むことができる。Caは、Fe−Si系合金やFe−Si−P系合金に固溶しないため磁気特性を低下させ難い。また、Caの酸化物を添加した酸化物粉末24は、液相状態で表面張力が小さくなるため、結晶粒界間に侵入し易い点で好ましい。他に、酸化物粉末24は、Alを含むこともできる。AlはFe−Si系合金やFe−Si−P系合金に固溶するものの、固溶によって磁気特性の低下を招き難い。
酸化物粉末24は、所望の大きさの市販の酸化物粉末を用いてもよいし、市販の粉末を粉砕して所望の大きさのものをふるいなどで選別してもよい。
・原料粉末に含まれるその他のもの
原料粉末(混合粉末2)には、潤滑剤を含有させることができる。この場合、(1)成形性を向上でき、寸法精度に優れる成形体が得られる、(2)成形時の摩擦を低減できるため、金型から成形体を抜き出し易く、表面性状に優れる成形体が得られる、といった利点を有する。潤滑剤は、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドといった有機物、窒化硼素やグラファイトなどの無機物などが挙げられる。潤滑剤の含有量は、原料粉末に用いる低Si粉末及び高Si粉末の合計量(潤滑剤を含まないSi粉末のみの量)に対して0.1質量%以上1.0質量%以下であると、上記利点を十分に得られる上に、原料における合金の割合の低下を防止できる。
〔成形工程〕
準備した混合粉末2を加圧圧縮して成形体を成形する。成形体は、混合粉末2を所望の形状の金型の成形空間に充填して成形する。金型は、圧粉磁心の製造に利用される一般的なものが利用できる。代表的な金型は、貫通孔が設けられた筒状のダイと、この貫通孔に挿入配置されて原料粉末を加圧圧縮する上パンチ及び下パンチとを備えるものが挙げられる。ダイの貫通孔の内周面と、この貫通孔の一方の開口部に挿入した下パンチとで形成される成形空間に、上述の混合粉末2を充填した後、上記貫通孔の他方の開口部に挿入した上パンチと、上記下パンチとで原料粉末を所定の圧力で加圧・圧縮して成形体を形成し、ダイから成形体を抜き出す。この金型を用いた場合、ダイの輪郭形状、及び上パンチ・下パンチの端面形状に応じた柱状の成形体が得られる。上述の筒状のダイ内に挿通配置されるコアロッドを備える金型を用いると、コアロッドの形状に応じた貫通孔や溝を有する成形体を形成できる。コアロッドは、上パンチ及び下パンチの少なくとも一方に挿通配置する。
成形圧力は、例えば、5ton/cm(≒490MPa)以上15ton/cm(≒1470MPa)以下が挙げられる。5ton/cm以上とすることで、高硬度な高Si粉末を含む混合粉末2であっても十分に圧縮でき、15ton/cm以下とすることで、金型寿命が過度に短くならない。この加圧・圧縮は、常温下で行うことが好ましい。
上述した条件で加圧圧縮すると、図1の上段右図に示すように、低Si粉末21(複数の低Si軟磁性粒子)が塑性変形し、成形性に優れた成形体3とできる。
〔焼結工程〕
上記成形体3を1000℃以上1300℃以下の温度にて焼結を行い、圧粉磁心を成形する。焼結温度が上記範囲であることで、Fe−P系合金粉末23及び酸化物粉末24が液相となり、この液相を介して低Si粉末21と高Si粉末22との間でFe,Siが相互拡散できる。焼結温度が1000℃以上であることで、低Si粉末21と高Si粉末22との間でFe,Siが相互拡散し易く、Fe−Si系合金中のSiの含有量が所望の値(3質量%以上10質量%以下から選択された値)となる圧粉磁心が得られる。また、Fe−P系合金粉末23及び酸化物粉末24が液相となって各軟磁性粒子間に液相侵入することができ、各軟磁性粒子間を適切に絶縁する絶縁被覆となる。一方、焼結温度が1300℃以下であることで、融点(液相点)が低い高Si合金が焼結する前に溶出することを抑制できる。焼結温度は、より好ましくは1100℃以上1275℃以下、特に好ましくは1150℃以上1250℃以下が挙げられる。保持時間は5分以上、好ましくは30分以上が挙げられる。
本実施形態の圧粉磁心の製造方法では、上述した焼結温度と保持時間内において、一次焼結工程⇒二次焼結工程を行う。以下、図1の下段図に基づいて、一次焼結工程及び二次焼結工程を行うことで生じるメカニズムについて詳しく説明する。
≪一次焼結工程≫
一次焼結工程は、実質的に酸素を含まない雰囲気中で焼結を行う。ここで言う実質的に酸素を含まない雰囲気とは、酸素分圧が1×10−5atm(1Pa)未満のことである。一次焼結を行うと、まず、図1の下段左図に示すように、Fe−P系合金粉末23が液相(液相介在部材44)となると共に、低Si粉末21と高Si粉末との間でFe,Siが相互拡散し、両Si粉末はSiを3質量%以上10質量%以下含有する多結晶軟磁性粒子40からなる粉末となる。このとき、液相介在部材44に含有されるPが低Si粉末に固溶することによって低Si粉末はα相となり、低Si粉末21と高Si粉末22との間で各構成元素の相互拡散が促進され、焼結が進む。上記固溶により、多結晶軟磁性粒子40は、Pを0.4質量%以上1.8質量%以下含有する。
次に、多結晶軟磁性粒子40の結晶粒界に液相介在部材44が侵入する。そうすると、図1の下段中図に示すように、多結晶軟磁性粒子40は、結晶粒界に侵入した液相介在部材44によって分断され、複数の単結晶の軟磁性粒子10となる。液相介在部材44が結晶粒界に侵入していく過程では、多結晶軟磁性粒子40,40間、各軟磁性粒子10,10間、多結晶軟磁性粒子40と軟磁性粒子10との間で、Fe,Siが相互拡散し、各粒子10,40と液相介在部材44との間でFe,Pが相互溶解しながらさらに液相焼結が進む。液相介在部材44は、多結晶軟磁性粒子40の結晶粒界に侵入することで、各軟磁性粒子10の全表面を覆うことになり、各軟磁性粒子10同士を絶縁する絶縁被覆となる。液相焼結が進むと、分断された各軟磁性粒子10は互いに近づく方向に移動し、各軟磁性粒子10間の空隙が狭められる。
一次焼結では、実質的に酸素を含まない雰囲気中とすることで、低Si粉末21と高Si粉末22との間で各構成元素の相互拡散を容易に行え、焼結を進ませることができる。一次焼結時の雰囲気に酸素が含まれると、Feの酸化物が生成され、Feの拡散が行われなくなるためである。
≪二次焼結工程≫
二次焼結工程は、一次焼結の後、酸素を含む雰囲気中で焼結を行う。そうすると、酸化物粉末24が液相となり、かつ液相介在部材44が酸化され、Siの酸化物と、Feの酸化物と、Pの酸化物とを含む酸化物材による絶縁被覆が生成される。二次焼結の雰囲気は、酸素分圧を1×10−2atm(1013Pa)超とすることが挙げられ、さらに1×10−1atm(101Pa)以上、特に大気雰囲気が好ましい。
その後、酸化物材が液相から固相に転移するにあたり、各軟磁性粒子10は再配列され、各軟磁性粒子10間の空隙がさらに縮小する。この液相の酸化物材が各軟磁性粒子10間を絶縁する絶縁被覆14となり、図1の下段右図に示すように、複数の軟磁性粒子10と、各軟磁性粒子10間を絶縁する絶縁被覆14とを備える圧粉磁心1を得ることができる。各軟磁性粒子10は、上述したように、Siを3質量%以上10質量%以下、Pを0.4質量%以上1.8質量%以下含有するFe−Si−P系合金粒子である。
上述した一次焼結と二次焼結とは、一次焼結の後に連続して二次焼結を行うことが挙げられる。つまり、一次焼結工程の後に常温に冷却することなく、二次焼結工程を行う。この場合、例えば一次焼結と二次焼結とで焼結温度を同じとすることができ、効率的に液相焼結を行うことができる。他に、一次焼結工程の後に常温に冷却し、常温から再加熱して二次焼結工程を行ってもよいし、一次焼結工程と二次焼結工程とで焼結温度を異ならせてもよい。
<圧粉磁心>
上述した圧粉磁心の製造方法によって得られる圧粉磁心は、複数の軟磁性粒子と、各軟磁性粒子の表面を覆う絶縁被覆とを備える。各軟磁性粒子は、Siを3質量%以上10質量%以下、Pを0.4質量%以上1.8質量%以下含有し、残部がFe及び不可避不純物からなるFe−Si−P系合金粒子である。絶縁被覆は、Feの酸化物と、Siの酸化物と、Pの酸化物とを含む酸化物材である。
軟磁性粒子は、Siの含有量が6.5質量%近傍であると、保磁力が最も小さくなる。軟磁性粒子のSiの含有量は、4質量%以上9質量%以下が好ましく、さらに5質量%以上8質量%以下、特に6質量%以上7質量%以下が好ましい。また、軟磁性粒子のPの含有量は、0.6質量%以上1.5質量%以下が好ましく、さらに0.8質量%以上1.2質量%以下が好ましい。
軟磁性粒子は、圧粉磁心の任意の断面において、過半数が単結晶であることが挙げられる。上述した圧粉磁心の製造方法では、焼結工程において、液相となったFe−P系合金粉末及び酸化物粉末を多結晶軟磁性粒子の結晶粒界に侵入させることで絶縁被覆を形成しているため、圧粉磁心中の軟磁性粒子の過半数は単結晶となる。より好ましくは軟磁性粒子の80%以上、さらには実質的に全ての軟磁性粒子が単結晶であることが挙げられる。軟磁性粒子の状態は、圧粉磁心の任意の断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で観察することで確認したり、測定したりすることができる。例えば、圧粉磁心の任意の断面において、200μm×300μmの視野を5個以上取得して、各視野における単結晶である軟磁性粒子の割合の平均を単結晶粒子の比率とすることが挙げられる。
上述した圧粉磁心の製造方法では、焼結工程において高温の熱処理を行うため、低Si粉末と高Si粉末の各構成元素が相互拡散するにあたり、各粒子は粒成長し易く、原料粉末の各粒子の大きさよりも大きくなる傾向にある。その後、液相のFe−P系合金粉末及び酸化物粉末が多結晶軟磁性粒子の結晶粒界に侵入し、多結晶軟磁性粒子を分断することで、複数の単結晶の軟磁性粒子となる。この粒成長と分断によって生じる単結晶の軟磁性粒子の平均結晶粒径は、40μm以上300μm以下が挙げられる。特に、単結晶の軟磁性粒子の平均結晶粒径が75μm以上であると、磁化反転が容易となり、保磁力の低下に寄与し易い。単結晶の軟磁性粒子の平均結晶粒径は、例えば、50μm以上200μm以下や100μm以上150μm以下が挙げられる。
絶縁被覆を構成する酸化物材の含有量は、0.5質量%以上2.0質量%以下であることが挙げられる。酸化物材の含有量が0.5質量%以上であることで、各軟磁性粒子間を十分に絶縁することができる。一方、酸化物材の含有量が2.0質量%以下であることで、圧粉磁心における軟磁性粒子の量を十分に確保することができる。酸化物材の含有量は、0.7質量%以上1.8質量%以下が好ましく、1.0質量%以上1.5質量%以下がより好ましい。
絶縁被覆を構成する酸化物材の含有量は、2.0質量%超10質量%以下とすることもできる。酸化物材の含有量が2.0質量%超であることで、酸化物材の含有量を多くでき、低透磁率の圧粉磁心とできる。一方、10質量%以下であることで、圧粉磁心における軟磁性粉末の量を十分に確保することができる。
本実施形態の圧粉磁心は、(1)原料粉末に塑性変形性に優れる低Si粉末を混合することによる塑性変形性の向上、(2)液相焼結によって絶縁被覆を形成することによる各軟磁性粒子間の空隙の縮小、によって、高密度である。圧粉磁心の相対密度は93%以上である。この圧粉磁心の相対密度は、原料粉末における低Si粉末の混合割合や、焼結温度・保持時間などによって、例えば95%以上、さらには97%以上であることが挙げられる。本実施形態の圧粉磁心は、高密度であり、低保磁力である。
また、本実施形態の圧粉磁心は、液相焼結によって絶縁被覆を形成しており、各軟磁性粒子が液相を経た酸化物材によって結合されているため、高強度である。
<試験例>
Fe−Si系合金粉末を含む混合粉末を加圧圧縮⇒焼結して、複数の軟磁性粒子と、軟磁性粒子の各々の表面を覆う絶縁被覆と、を備える圧粉磁心(試料No.1〜12)を作製し、得られた各圧粉磁心の相対密度と保磁力を調べた。
・試料No.1〜試料No.12
原料粉末として、Siの含有量が異なる2種類のFe−Si系合金からなるSi粉末と、Fe−P系合金粉末と、酸化物粉末とを準備した。Si粉末は、一方がSiを実質的に含有しない純鉄粉(Fe:99.7質量%以上、残部:不可避不純物)の低Si粉末であり、他方がSiを18質量%含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる高Si粉末(Fe−18Si合金粉末)である。純鉄粉は、後述する一次焼結温度においてPが固溶するため一次焼結温度にてα相になる。低Si粉末の平均粒径は75μm、高Si粉末の平均粒径は10μmである。Fe−P系合金粉末は、Pを表1に示す所定量含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる合金粉末であり、平均粒径は10μmである。酸化物粉末は、Siの酸化物:SiO粉末であり、平均粒径は30μmである。この試験例において平均粒径は、市販の測定装置により測定した50%粒径(累積質量)である。原料粉末の配合量(質量)は、表1に示す。この原料の配合量によって生成される軟磁性粒子の組成も併せて表1に示す。
Figure 2017011073
上記原料粉末に潤滑剤を添加し、V型混合機により十分に混合して、混合粉末を作製した。潤滑剤は、エチレンビスステアリン酸アミドとし、その含有量は、低Si粉末、高Si粉末、Fe−P系合金粉末、及び酸化物粉末の合計量に対して0.6質量%とした。
上記混合粉末を金型の成形空間に給粉し、成形圧力を8ton/cm(≒784MPa)として加圧・圧縮し、リング状の成形体(外径:34mm×内径:20mm×厚さ:5mm)を作製した。この成形体は、良好に成形することができた。
得られた成形体を、実質的に酸素を含まない真空雰囲気中(酸素分圧:1×10−3Pa)、600℃×1時間の熱処理を施して潤滑剤を除去した後、1200℃×1時間の熱処理(一次焼結)を施した。さらに、一次焼結に連続して、大気雰囲気中、1250℃×1時間の熱処理(二次焼結)を施し、圧粉磁心を作製した。
・試料No.111
原料粉末として、Siの含有量が異なる2種類のFe−Si系合金からなるSi粉末と、酸化物粉末とを準備した。Si粉末は、試料No.1と同様の低Si粉末及び高Si粉末とした。酸化物粉末は、Feの酸化物:FeOと、Siの酸化物:SiOとを、FeO:SiO=2:1の割合(質量)で混合した粉末である。酸化物粉末の平均粒径は30μmである。原料粉末の配合量(質量)は、低Si粉末:高Si粉末:酸化物粉末=63:36:1とした。つまり、試料No.111では、原料粉末にFe−P系合金粉末を含有していない。
上記原料粉末に試料No.1と同様の潤滑剤を添加して混合粉末を作製した。そして、試料No.1と同様に、リング状の成形体(外径:34mm×内径:20mm×厚さ:5mm)を作製した。
得られた成形体を大気雰囲気中、600℃×1時間の熱処理を施して、潤滑剤を除去した後、1250℃×1時間の熱処理(焼結)を施し、圧粉磁心を作製した。
・試料No.112
従来の方法(軟磁性粉末の準備→各軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を形成→被覆軟磁性粉末を加圧・圧縮→焼結)で圧粉磁心を作製した。まず、原料粉末として、Siの含有量が6.5質量%であるFe−6.5Si合金の軟磁性粉末を準備し、各軟磁性粒子の表面にシリコーンの絶縁被覆を形成して被覆軟磁性粉末を作製した。絶縁被覆の被覆条件は、特許文献1と同様とした。被覆軟磁性粉末に成形用樹脂を添加して造粒粉とし、この造粒粉を8ton/cm(≒784MPa)の成形圧力で加圧・圧縮し、リング状の成形体(外径:34mm×内径:20mm×厚さ:5mm)を作製した。この成形体を窒素雰囲気中、775℃×1時間の熱処理を施し、圧粉磁心とした。
試料No.1〜12,111,112の圧粉磁心について、相対密度を測定した。相対密度は、(見掛密度/真密度)×100で表される密度比のことである。見掛密度は、アルキメデス法を利用して求めた。真密度は、圧粉磁心の成分分析を行い、その構成成分(ここでは、合金粒子・酸化物)の合成密度を用いた。成分分析は、公知の方法(エネルギー分散X線分光法や誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法など)を利用する。その結果を表2に示す。
また、試料No.1〜12,111,112の圧粉磁心について、保磁力を測定した。保磁力(Oe)は、各試料のリング状の圧粉磁心に同一の巻線を配置して測定部材を作製し、BHトレーサ(理研電子株式会社製DCBHトレーサ)を用いて測定した。その結果を表2に示す。
Figure 2017011073
表2に示すように、原料粉末として純鉄粉(低Si粉末)及び高Si粉末、Pを15質量%36質量%以下含有するFe−P系合金粉末、酸化物粉末を含有した混合粉末に、加圧圧縮⇒二段階の焼結(一次焼結及び二次焼結)を行い、Fe−Si−P系合金粒子(軟磁性粒子)の粉末で構成された圧粉磁心を作製した試料No.2〜7,10,11は、高密度であり、保磁力が非常に低いことが分かった。試料No.2〜7,10,11では、(1)原料粉末に塑性変形性に優れる純鉄粉(低Si粉末)を混合したことで塑性変形性が向上した、(2)二段階の焼結によって絶縁被覆を形成したことで各軟磁性粒子間の空隙が縮小した、という理由により、高密度となったと考えらえる。また、試料No.2〜7,10,11では、適量のPを含有するFe−P系合金粉末を混合したことによって、Feの自己拡散係数を向上でき、焼結工程において低Si粉末と高Si粉末の各構成元素の相互拡散を容易に行うことができ、焼結を促進することができたと考えられる。さらに、試料No.2〜7,10,11では、二段階焼結によって、純鉄粉及び高Si粉末をSiの含有量が6.5質量%近傍であるFe−Si系合金からなる軟磁性粒子粉末とすることができ、かつ液相となったFe−P系合金粉末及び酸化物粉末によって各軟磁性粒子の周囲に絶縁被覆を生成することができ、低保磁力の圧粉磁心が得られたと考えられる。
原料粉末として純鉄粉(低Si粉末)を混合し、かつ焼結によって絶縁被覆を形成したが、Fe−P系合金粉末を含まない試料No.111の圧粉磁心は、相対密度が86%程度と低く、保磁力も2.1Oeと試料No.2〜7,10,11に比較して高かった。また、Fe−P系合金粉末を含んだとしても、その含有量が少ない試料No.1の圧粉磁心も、相対密度が86%程度と低く、保磁力も2.1Oeと試料No.2〜7に比較して高かった。これは、焼結温度が1200℃近傍では、純鉄粉はγ相であるということに起因すると考えられる。γ相はFeの自己拡散が非常に遅いため、純鉄粉と高Si粉末との間で各構成元素の相互拡散が生じ難く、焼結が進み難い。そのため、試料No.111,1では、純鉄粉を混合した混合粉末を加圧圧縮⇒焼結しても、Fe−P系合金粉末を含まない又はその含有量が少ないことで、焼結が進まないために各軟磁性粒子の空隙を縮小することができないためと考えられる。
Fe−P系合金粉末の含有量が多い試料No.8,9の圧粉磁心は、保磁力が試料No.2〜7,10,11に比較して高かった。これは、Pによる保磁力への影響が大きくなったためと考えられる。Fe−P系合金粉末の含有量が多い場合でも、そのFe−P系合金粉末におけるPの含有量が適量である試料No.8は、高密度であった。これは、PによってFeの自己拡散係数が向上され、純鉄粉と高Si粉末との間で各構成元素の相互拡散が促進されることで、相対密度が向上されたためと考えられる。一方、試料No.2〜7,10,11では、原料粉末として適量のFe−P系合金粉末を混合しているため、Pが低Si粉末へ固溶しγ相からα相へと変態することで、Feの自己拡散係数が向上され、純鉄粉と高Si粉末との間で各構成元素の相互拡散が促進されたと考えられる。
Fe−P系合金粉末を適量混合したとしても、Fe−P系合金粉末におけるPの含有量が多い試料No.12の圧粉磁心は、相対密度が85%程度と低く、保磁力も2.1Oeと試料No.2〜7,10,11に比較して高かった。これは、Fe−P系合金粉末におけるPの含有量が多過ぎるため、Pによる保磁力への影響が大きくなったからと考えられる。また、試料No.12の圧粉磁心は、Fe−P系合金粉末におけるPの含有量が多いことで、FePという安定な化合物が形成され、PがFeに拡散され難くなり、相対密度が低くなったと考えられる。
従来の方法で得られた試料No.112の圧粉磁心は、相対密度が85%程度と低く、保磁力も2.1Oeと試料No.2〜7,10,11に比較して高かった。これは、原料粉末として、Siの含有量が6.5質量%であるFe−6.5Si合金の軟磁性粉末を用いているため塑性変形性に劣り、成形時に相対密度が向上されなかったからと考えられる。
試料No.2〜7,10,11の圧粉磁心について、断面を観察した。圧粉磁心の断面を鏡面研磨してSEMで観察すると、コントラストの違いにより各単結晶の識別が可能である。その結果、試料No.2〜7,10,11の圧粉磁心は、軟磁性粒子の過半数が単結晶であることが確認できた。また、試料No.2〜7,10,11の圧粉磁心の断面のSEM反射電子像において、任意に選定した10個の単結晶粒子について、各単結晶粒子の面積を測定し、この面積と同面積の円の直径を各単結晶粒子の粒径とし、単結晶粒子の平均結晶粒径を求めた。その結果、単結晶粒子の平均結晶粒径は122μmであった。さらに、エネルギー分散X線分光法によって、各軟磁性粒子は均一的な組成のFe−6.5質量%Si合金であること、及び各軟磁性粒子の表面にFeO−SiO−Pからなる絶縁被覆が形成されていることが確認できた。
本発明の圧粉磁心は、低保磁力が望まれる用途の磁性部材に利用することができる。また、本発明の圧粉磁心の製造方法は、各種インダクタに用いられる圧粉磁心を得るのに好適に利用可能である。
1 圧粉磁心 2 混合粉末 3 成形体
10 軟磁性粒子(単結晶軟磁性粒子) 14 絶縁被覆
21 低Si軟磁性粒子(低Si粉末)
22 高Si軟磁性粒子(高Si粉末)
23 Fe−P系合金粒子(Fe−P系合金粉末)
24 酸化物粒子(酸化物粉末)
40 多結晶軟磁性粒子 44 液相介在部材

Claims (5)

  1. 複数の軟磁性粒子と、前記軟磁性粒子の各々の表面を覆う絶縁被覆と、を備える圧粉磁心であって、
    前記軟磁性粒子は、Siを3質量%以上10質量%以下、Pを0.4質量%以上1.8質量%以下含有し、残部がFe及び不可避不純物からなるFe−Si−P系合金粒子であり、
    前記絶縁被覆は、Feの酸化物と、Siの酸化物と、Pの酸化物と、を含む酸化物材であり、
    相対密度が93%以上である圧粉磁心。
  2. 前記酸化物材の含有量は、0.5質量%以上2.0質量%以下である請求項1に記載の圧粉磁心。
  3. 前記圧粉磁心の任意の断面において、前記軟磁性粒子の過半数が単結晶である請求項1又は請求項2に記載の圧粉磁心。
  4. 前記軟磁性粒子の単結晶の平均結晶粒径は、40μm以上300μm以下である請求項3に記載の圧粉磁心。
  5. 原料粉末として、Siの含有量が2質量%以下であるFe−Si系合金からなる低Si粉末と、Siの含有量が9質量%以上であるFe−Si系合金からなる高Si粉末と、Pの含有量が15質量%以上36質量%以下であるFe−P系合金粉末と、Siの酸化物を含む酸化物粉末と、が混合された混合粉末を準備する準備工程と、
    前記混合粉末を加圧圧縮して成形体とする成形工程と、
    前記成形体を1000℃以上1300℃以下の温度にて焼結する焼結工程と、を備え、
    前記焼結工程は、
    実質的に酸素を含まない雰囲気中で焼結を行い、前記低Si粉末及び前記高Si粉末を、Siの含有量が3質量%以上10質量%以下、Pの含有量が0.4質量%以上1.8質量%以下であるFe−Si−P系合金からなる複数の軟磁性粒子とする一次焼結工程と、
    前記一次焼結工程の後、酸素を含む雰囲気中で焼結を行い、前記軟磁性粒子の各々の周囲を、Feの酸化物と、Siの酸化物と、Pの酸化物と、を含む酸化物材で覆う二次焼結工程と、を備える圧粉磁心の製造方法。
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