JP2019207106A - 配糖体の分析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】夾雑成分が多い生物試料や未同定の配糖体を含有する生物試料であっても、簡便に含有される配糖体を一斉に分析してスクリーニングする方法および定量する方法を提供する。【解決手段】生物試料より調製された配糖体を含む調製物から、配糖体の糖構造を認識してグリコシド結合を加水分解する酵素で処理した分析用試料と酵素で処理しない分析用試料を準備して、それぞれをLC−MS/MSまたはCE−MS/MSにより分析した結果を比較して、酵素処理により消失または強度(高さまたは面積)が減少しているピークを配糖体由来であると決定する、配糖体のスクリーニング方法および定量方法を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、生体試料に含有される配糖体をスクリーニングする方法および定量する方法に関する。
配糖体とは、およそ生物界に広く存在し、様々な有機化合物(非糖)に対して糖が結合したものの総称である。糖が結合する非糖の有機化合物(以下、「アグリコン」という)には多種多様な化合物が存在し、タンパク質、ペプチド、脂質、糖質、ポリフェノールなどが含まれる。
例えば、植物中の配糖体には生理学的な調節機能があり、多種多様なものが存在するが、その多くは未だ同定されていない。
特に、たばこ植物中の配糖体は生理学的機能を有するのに加え、喫煙時の香喫味成分としての機能も有する。たばこ植物中に含まれる配糖体としては、スコポレチン7−グルコシド(スコポレチン)、クェルセチン3−β−D−グルコシド(イソクェルセチン)などのグルコシド;ナリンゲニン7−ラムノグルコシド(ナリンギン)、クェルセチン3−ラムノグルコシド(ルチン)などのラムノグルコシド(ルチノシド);リシチンβ−ソホロシド、クェルセチン3−β−D−ソホロシドなどのソホロシドなどが同定されている(非特許文献1)が、未だ同定されていないものも多数存在する。一方、今後、分析方法の進歩により配糖体成分の同定が進めば、生理学的機能の解明に大いに資することが期待される。
配糖体の分析法としては、古くは、酸加水分解によるアグリコンの遊離回収とその後の化学的手法による検出が行われてきたが、強酸や加熱等の条件が厳しく、配糖体成分が分解してしまうといった問題、酸の中和等の処理が必要になり、精製・回収時に配糖体成分が失われるといった問題が存在していた。
ガスクロマトグラフ(GC)を紫外分光検出器(UV検出器)や質量分析計(MS)と組み合わせて配糖体を分析することも行われてきた。しかし、GCで高温に曝されることにより配糖体成分が分解してしまうといった問題が存在する。そのため、事前に試料に含有される配糖体の糖を加水分解で遊離除去し、生じたアグリコンを分析対象としてガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)により分析する方法が提案されている。例えば、たばこ葉中の配糖体を酵素(β−グルコシダーゼ)あるいは酸で加水分解し、生じたアグリコンをGC−MSで分析する方法がある(非特許文献2および3)。しかし、酵素による加水分解では反応効率、酸による加水分解ではアグリコンの分解などの不確定要素が存在するため、定量性に問題があり、GCで高温に曝されることによるアグリコンの化学構造の変換などの問題も考慮しなければならない。
一方で、液体クロマトグラフ(LC)をUV検出器やMSと組み合わせて検出することも行われてきた。この方法は、GCを用いる方法と比較して配糖体成分の分解が起こりにくいという利点はあるものの、配糖体成分と夾雑成分の分離効率が低いといった問題が存在し、多成分の配糖体が含有される試料や夾雑成分が多い試料では十分に配糖体のピークが分離せず、分析が困難である。そのため、MSを2台直列に結合させて分離能を向上させたタンデム質量分析計(MS/MS)とLCを結合した液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC−MS/MS)により分析する方法が提案されている。例えば、たばこ葉中の配糖体を、LC−MS/MSによる分析する方法(非特許文献4)、未知または既知物質のマススペクトルのフラグメントパターンによって、混合物中の小さな分子化合物の同定および構造決定を行うため、LC−MS/MSにより分析する方法(特許文献1)、油ヤシ中のオイル含量の推定のため、葉や中果皮中のフラボノイドの配糖体を含む糖の誘導体をLC−MSおよびLC−MS/MSにより分析する方法(特許文献2および3)、心臓病患者の死亡危険率を算出するため、ヒト尿中のスフィンゴ糖脂質をLC−MS/MSにより分析する方法(特許文献4)、複雑な試料に含有されるインタクトな糖ペプチドを同定するため、LC−MS/MSにより分析する方法(特許文献5)などがある。しかし、検出されたピークが配糖体由来であることを確認するためには、配糖体の標準品の質量スペクトルまたは既存のデータベース中の配糖体の質量スペクトルとの比較が必要であり、試料に含有される夾雑成分が多い場合や検出されたピークが標準品のない未同定の配糖体に由来する場合には、検出されたピークが配糖体由来であるとの確認が困難である。
LC−MS/MSで検出されたピークが配糖体由来であるとの確認までしている例として、ぶどうの粗抽出試料に含まれる配糖体をLC−MS/MSにより分析して、データベースを用いて構造解析するとともに、酵素で加水分解して遊離したアグリコンをGC−MSで分析して、そのピークのシグナル強度とLC−MSによる分析における対応する配糖体のピークのシグナル強度の相関により、構造解析した対象が配糖体であることを確認したという報告(非特許文献5)もあるが、データベースによる解析およびGC−MSによる分析が必要であるなど、簡便に試料中の配糖体を一斉分析して、未同定の配糖体を含む全体的な配糖体の組成を調べることはできていない。
米国特許出願公開第2015/0148242号明細書 国際公開第2015/034345号 国際公開第2015/034344号 国際公開第2014/012043号 国際公開第2013/177121号
葉たばこ成分一覧 1986年、日本たばこ産業株式会社 小田原試験場 Anal. Methods, 2014, vol.6, p.7006-7014 J. Chromatogr. A, 2002, vol.947, p.267-275 J. Sep. Sci., 2007, vol.30, p.289-296 J. Mass Spectrom., 2014, vol.49, p.1214-1222
本発明が解決しようとする課題は、夾雑成分が多い生物試料や未同定の配糖体を含有する生物試料であっても、簡便に含有される配糖体を一斉に分析してスクリーニングする方法および定量する方法を提供することである。
本発明者は、かかる課題を解決するために鋭意研究を進めたところ、生物試料より調製された配糖体を含む調製物から、配糖体の糖構造を認識してグリコシド結合を加水分解する酵素で処理した分析用試料と酵素で処理しない分析用試料を準備して、それぞれをLC−MS/MSにより分析した結果を比較して、酵素処理により消失または強度(高さまたは面積)が減少しているピークを配糖体由来であると決定することにより、夾雑成分が多い生物試料や未同定の配糖体を含有する生物試料であっても、簡便に含有される配糖体を一斉に分析できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、夾雑成分が多い生物試料や未同定の配糖体を含有する生物試料であっても、簡便に含有される配糖体を一斉に分析してスクリーニングする方法および定量する方法に関する。
本発明の1つの側面において、以下の[1]〜[9]の配糖体のスクリーニング方法、および[10]〜[20]の配糖体の定量方法が提供される。
[1]生物試料に含有される配糖体をスクリーニングする方法であって、
(1)(1−i)生物試料より調製された配糖体を含む調製物から、配糖体の糖構造を認識してグリコシド結合を加水分解する酵素で処理した分析用試料1を準備すること、および
(1−ii)生物試料より調製された配糖体を含む調製物から、酵素で処理しない分析用試料2を準備すること、
(2)分析用試料1および2を液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC−MS/MS)またはキャピラリー電気泳動タンデム質量分析計(CE−MS/MS)により分析すること、ならびに
(3)分析結果において、分析用試料2と比較して分析用試料1で消失または強度(高さまたは面積)が減少しているピークを配糖体由来であると決定すること、
の工程を含む、前記方法。
[2]生物試料が植物に由来する試料である、[1]に記載の方法。
[3]配糖体がグルコシド、ルチノシド、アラビノシド、ガラクトシド、マンノシド、アピオシド、キシロシド、およびフコシドから選択される、[1]または[2]に記載の方法。
[4]酵素が配糖体中の糖と非糖部の間のグリコシド結合、または糖と糖の間のグリコシド結合を加水分解する機能を有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]酵素がグルコシダーゼ、ラムノシダーゼ、キシロシダーゼ、アラビノシダーゼ、ガラクトシダーゼ、マンノシダーゼ、アピオシル-グルコシダーゼ、およびフコシダーゼから選択される1つまたは複数である、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]酵素がβ−グルコシダーゼである、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]タンデム質量分析計が三連四重極質量分析計である、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]分析がコンスタントニュートラルロススキャンによって行われる、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]コンスタントニュートラルロススキャンにおけるニュートラルロス質量の設定が162uである、[8]に記載の方法。
[10]生物試料に含有される配糖体を定量する方法であって、
(1)(1−i)生物試料より調製された配糖体を含む調製物から、配糖体の糖構造を認識してグリコシド結合を加水分解する酵素で処理した分析用試料1を準備すること、および
(1−ii)生物試料より調製された配糖体を含む調製物から、酵素で処理しない分析用試料2を準備すること、
(2)分析用試料2のみ、または分析用試料1および2の両方に内部標準物質を添加すること、
(3)分析用試料1および2をLC−MS/MSまたはCE−MS/MSにより分析すること、
(4)分析結果において、分析用試料2と比較して分析用試料1で消失または強度(高さまたは面積)が減少しているピークを配糖体由来であると決定すること、ならびに
(5)分析用試料2の分析結果において、配糖体に由来すると決定されたピークと内部標準物質ピークの強度(高さまたは面積)比を算出すること、
の工程を含む、前記方法。
[11]生物試料が植物に由来する試料である、[10]に記載の方法。
[12]配糖体がグルコシド、ルチノシド、アラビノシド、ガラクトシド、マンノシド、アピオシド、キシロシド、およびフコシドから選択される、[10]または[11]に記載の方法。
[13]酵素が配糖体中の糖と非糖部の間のグリコシド結合、または糖と糖の間のグリコシド結合を加水分解する機能を有する、[10]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]酵素がグルコシダーゼ、ラムノシダーゼ、キシロシダーゼ、アラビノシダーゼ、ガラクトシダーゼ、マンノシダーゼ、アピオシル-グルコシダーゼ、およびフコシダーゼから選択される1つまたは複数である、[10]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15]酵素がβ−グルコシダーゼである、[10]〜[14]のいずれかに記載の方法。
[16]タンデム質量分析計が三連四重極質量分析計である、[10]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[17]分析がコンスタントニュートラルロススキャンによって行われる、[10]〜[16]のいずれかに記載の方法。
[18]コンスタントニュートラルロススキャンにおけるニュートラルロス質量の設定が162uである、[17]に記載の方法。
[19]分析が選択反応モニタリング(SRM)によって行われる、[10]〜[16]に記載の方法。
[20]SRMにおいてモニターされる配糖体由来のプリカーサーイオン/プロダクトイオンのトランジションのm/z値が、481/319、471/309、455/293、453/291、427/265、359/197、355/193、351/189、341/179、325/163、321/159、319/157、495/333、465/303、415/253、373/211、371/209、493/331、449/287、411/249、399/237、397/235、385/223、および381/219(各m/z値を中心とする前後0.2uの範囲を含む)から選択される一つ以上である、[19]に記載の方法。
本発明の配糖体のスクリーニング方法および定量方法によれば、夾雑成分が多い生物試料や未同定の配糖体を含有する生物試料であっても、簡便に含有される配糖体を一斉に分析することが可能となる。また、生物試料につき分析用試料の準備を一度行うだけでスクリーニングと定量を行うことも可能となる。
分析用試料1および分析用試料2の、ニュートラルロス質量設定値が162uのコンスタントニュートラルロススキャンでのLC−MS/MSによる分析結果を示すクロマトグラムである。破線は分析用試料1のクロマトグラムを、実線は分析用試料2のクロマトグラムである。 分析用試料1および分析用試料2の、ニュートラルロス質量設定値が162uのコンスタントニュートラルロススキャンでのLC−MS/MSによる分析結果から作成した、m/z373のプリカーサーイオンの抽出イオンクロマトグラムである。 分析用試料1および分析用試料2の、ニュートラルロス質量設定値が162uのコンスタントニュートラルロススキャンでのLC−MS/MSによる分析結果から作成した、m/z437のプリカーサーイオンの抽出イオンクロマトグラムである。 比較用試料の、146、162、204、308、および324の各ニュートラルロス質量設定値でのLC−MS/MSによる分析結果を示すクロマトグラムである。 分析用試料2の、選択反応モニタリングでのLC−MS/MSによる分析結果を示すクロマトグラムである。
以下、非限定的に本発明の態様を説明する。
本発明の生物試料に含有される配糖体のスクリーニング方法は、以下の工程:
(1)(1−i)生物試料より調製された配糖体を含む調製物から、配糖体の糖構造を認識してグリコシド結合を加水分解する酵素で処理した分析用試料1を準備すること、および
(1−ii)生物試料より調製された配糖体を含む調製物から、酵素で処理しない分析用試料2を準備すること、
(2)分析用試料1および2を液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC−MS/MS)またはキャピラリー電気泳動タンデム質量分析計(CE−MS/MS)により分析すること、ならびに
(3)分析結果において、分析用試料2と比較して分析用試料1で消失または強度(高さまたは面積)が減少しているピークを配糖体由来であると決定すること、
を含んでいる。
また、本発明の生物試料に含有される配糖体の定量方法は、以下の工程:
(1)(1−i)生物試料より調製された配糖体を含む調製物から、配糖体の糖構造を認識してグリコシド結合を加水分解する酵素で処理した分析用試料1を準備すること、および
(1−ii)生物試料より調製された配糖体を含む調製物から、酵素で処理しない分析用試料2を準備すること、
(2)分析用試料2のみ、または分析用試料1および2の両方に内部標準物質を添加すること、
(3)分析用試料1および2をLC−MS/MSまたはCE−MS/MSにより分析すること、
(4)分析結果において、分析用試料2と比較して分析用試料1で消失または強度(高さまたは面積)が減少しているピークを配糖体由来であると決定すること、ならびに
(5)分析用試料2の分析結果において、配糖体に由来すると決定されたピークと内部標準物質ピークの強度(高さまたは面積)比を算出すること、
を含んでおり、スクリーニングと定量を連続して行うことができる。 本明細書で「グリコシド結合」とは、糖と非糖の有機化合物、または糖と糖とが脱水縮合して形成される共有結合を指す。
本明細書で「配糖体」とは、糖と非糖の有機化合物がグリコシド結合により結合した化合物を総称するものとして用いられる。非糖の有機化合物に結合している糖は単糖であってもよいし、二糖、または三糖以上の多糖であってもよい。また、アミノ糖、酸性糖などの電荷を持つ糖を含んでいてもよい。
本明細書で「アグリコン」とは、配糖体を構成する前の非糖の有機化合物を指す。非糖の有機化合物は特に限定されない。例えば、タンパク質、ペプチド、脂質、糖質、ポリフェノール、アルコール、アルカロイド、テルペノイドなどが挙げられる。
本明細書で配糖体の「スクリーニング」とは、生物試料に含有される配糖体をLC−MS/MSにより分析し、得られるクロマトグラム上のピークを配糖体由来のものとそうでないものとに分類することを指す。
本明細書で配糖体の「定量」とは、単一の生物試料に含有される複数の配糖体間または複数の生物試料に含有される対応する配糖体間での比較による、定量値の推定または相対定量を意味する。比較には、配糖体のスクリーニングにより配糖体由来のものと決定されたピークの強度(高さまたは面積)の値を用いるが、試料注入時の量の誤差を減らすために添加した内部標準物質のピークの強度(高さまたは面積)との比の値を算出して用いてもよい。本発明の定量方法は、単一の生物試料に含有される複数の配糖体の量を比較して含有される配糖体の組成を調べること、複数の生物試料に含有される配糖体の量を比較して含有される配糖体の組成の変化を調べることなどに用いることができる。
本発明で用いることのできる生物試料は特に限定されない。
「生物」は、特に限定されず、動物、植物、微生物のいずれでもよい。「動物」は、特に限定されず、脊椎動物、無脊椎動物のいずれでもよい。脊椎動物は、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類のいずれでもよい。
動物由来の「生物試料」は、例えば、動物の器官(例えば、内臓器官(例えば、胃、肺、心臓、肝臓、腸、すい臓、脾臓など)など)、動物の組織(筋肉などの筋組織、骨、軟骨、腱、真皮、皮下組織などの結合組織、中枢神経系、末梢神経系などの神経組織など)、動物の体液(血液、尿、母乳、リンパ液、脳脊髄液、膵液、胆汁など)などを用いることができる。
「植物」の種類は特に限定されるものではない。コケ植物、シダ植物、裸子植物、被子植物(双子葉植物および単子葉植物)のいずれでもよく、好ましくは被子植物であり、より好ましくは双子葉植物である。さらに好ましくは、ナス科植物であり、最も好ましくは、タバコ属植物である。
植物由来の「生物試料」は、例えば、植物の種、胚、葉、茎、花、根などより選択される。
本発明で分析される配糖体は、例えば、グルコシド、ルチノシド、アラビノシド、ガラクトシド、マンノシド、アピオシド、キシロシド、フコシド、好ましくはグルコシド、ルチノシド、キシロシド、より好ましくはグルコシド、ルチノシドを挙げることができる。
本発明において用いる酵素は、配糖体の糖構造を認識してグリコシド結合を加水分解する酵素である限り特に限定されない。好ましくは、配糖体中の糖と非糖部の間のグリコシド結合、または糖と糖の間のグリコシド結合を加水分解する機能を有する酵素である。例えば、国際生化学・分子生物学連合(International Union of Biochemistry and Molecular Biology;IUBMB)の酵素番号(EC番号、Enzyme Commission number)でEC3.2.1の区分に分類される酵素、あるいはグルコシダーゼ、ラムノシダーゼ、キシロシダーゼ、アラビノシダーゼ、ガラクトシダーゼ、マンノシダーゼ、アピオシル−グルコシダーゼ、フコシダーゼ、好ましくはグルコシダーゼ、ラムノシダーゼ、キシロシダーゼ、より好ましくはグルコシダーゼ、さらに好ましくはβ−グルコシダーゼを挙げることができる。
「液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC−MS/MS)」は、液体クロマトグラフ(LC)にタンデム質量分析計(MS/MS)を結合した装置であり、液体クロマトグラフィーの方法で分離した化合物をMS/MSで分析することができる。本発明で用いるLC−MS/MSは、LCおよびMS/MS以外の部分を含むものであってもよい。
「液体クロマトグラフィー」は、液体の移動相をポンプなどによって加圧してカラムを通過させ、試料中の化合物をカラムの固定相および移動相との相互作用の差を利用して分離する方法である。利用する相互作用の種類により、分配クロマトグラフィー(順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、親水性相互作用クロマトグラフィーなど)、吸着クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(ゲルろ過クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィーなど)、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの分離モードが存在する。
本発明で用いる液体クロマトグラフィーの分離モードは特に限定されないが、好ましくは分配クロマトグラフィー、より好ましくは逆相クロマトグラフィーの分離モードを用いることができる。
「キャピラリー電気泳動タンデム質量分析計(CE−MS/MS)」は、キャピラリー電気泳動装置(CE)にタンデム質量分析計(MS/MS)を結合した装置であり、キャピラリー電気泳動の方法で分離した化合物をMS/MSで分析することができる。本発明で用いるCE−MS/MSは、CEおよびMS/MS以外の部分を含むものであってもよい。
「キャピラリー電気泳動」は、泳動液または泳動液を含む支持体(ゲルなど)を充填したキャピラリー内に試料を狭いゾーンとして導入した後、キャピラリーの両端に電圧を加えてキャピラリー内に均一な電位勾配を作成し、電荷および分子サイズによって決まる電気泳動移動度の差を利用して試料中のイオン性化合物を分離するキャピラリーゾーン電気泳動;キャピラリー内に先行イオンを含む泳動液と後続イオンとを含む泳動液を充填し、その境界面に試料を導入した後キャピラリーの両端に電圧を加えて、試料中のイオン性化合物を先行イオンと後続イオンとの間でその移動度の順に電位勾配一定のゾーンを形成させながら等速移動させて、イオン性化合物を分離するキャピラリー等速電気泳動;泳動液または泳動液を含む支持体を充填したキャピラリー内にpH勾配を作成し、これに試料を導入して電圧を加えて、試料中の両性イオン性化合物をその等電点まで移動させて濃縮されたバンドを形成させるキャピラリー等電点電気泳動;キャピラリーに機能性イオンを添加した泳動液を充填し、試料を導入して電圧を加えて、試料中の化合物を等速移動する機能性イオンと相互作用させ、その作用の度合いに応じて化合物を分離するキャピラリー動電クロマトグラフィー(ミセル動電クロマトグラフィーなど);液体クロマトグラフィー用のキャピラリーカラムを用いて電圧を加えて、カラムの固定相との相互作用の大きさの違い、および電場下における溶液内での電気泳動速度の違いにより試料中の化合物を分離するキャピラリー電気クロマトグラフィーなどの分離モードが存在する。
本発明で用いるキャピラリー電気泳動の分離モードは特に限定されない。
「タンデム質量分析計(MS/MS)」は、質量分析計を2台直列に結合した装置である。イオン源でイオン化されたイオン群から、1台目の質量分析計(MS1)で分離して選択したプリカーサーイオン(前駆イオン)を、不活性ガスと衝突させることによる衝突誘起解離(CID)、電子を照射することによる電子捕獲解離(ECD)、イオン同士で反応させることによる電子移動解離(ETD)などの方法によりフラグメント化した後、得られるプロダクトイオン群を2台目の質量分析計で測定する。本発明で用いるタンデム質量分析計は、特に限定されず、例えば、三連四重極質量分析計(QqQ)、四重極−飛行時間型質量分析計(QqTOF)、四重極イオントラップ質量分析計(QIT)など、好ましくはQqQ、QqTOFなど、より好ましくはQqQ、QqTOF、さらに好ましくはQqQを用いることができる。
本発明において、イオン源におけるイオン化法は、例えばエレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、大気圧光イオン化(APPI)または、APCIとAPPIの組合せなどの方法を用いることができる。
本発明において、CIDのための不活性ガスは、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンなどを用いることができる。
MS/MSの測定法としては、定性のための測定法および定量のための測定法がある。本発明において、配糖体のスクリーニングには定性のための測定法を用い、配糖体の定量には定量のための測定法を用いる。
一般に、定性のための測定法には、主に以下の3つがある。なお、これらの測定法は定量のためにも用いることができる。
(1)MS1で選択したプリカーサーイオン(前駆イオン)をCIDによって開裂して生成したプロダクトイオンを測定するプロダクトイオンスキャン。プリカーサーイオンの構造解析に有効である。
(2)CIDによって、ある特定のプロダクトイオンを開裂・生成するプリカーサーイオンを測定するプリカーサーイオンスキャン。CIDにおいて、プリカーサーイオンから、化合物が持つ特定の官能基に特徴的なフラグメントイオンが生じる場合や、化合物が持つ構造由来の特定のフラグメントイオンが生じる場合などに有効である。
(3)CIDによって、ある特定の電荷的に中性の分子を失ったプリカーサーイオンを測定するコンスタントニュートラルロススキャン。試料に含有される化合物のプリカーサーイオンからCIDにおいて特定の部分構造や官能基由来の共通の質量が脱離する場合などに有効である。本明細書において、失われた中性分子の分子量を「ニュートラルロス質量」と称する。
これらの測定法により、「プロダクトイオンスペクトル」、「プリカーサーイオンスペクトル」、「コンスタントニュートラルロススペクトル」などの多様なMS/MSスペクトルを得ることができる。
本発明において、配糖体のスクリーニングに用いる定性のための測定法は特に限定されず、プロダクトイオンスキャン、コンスタントニュートラルロススキャン、プリカーサーイオンスキャンを用いることができ、好ましくはコンスタントニュートラルロススキャン、プリカーサーイオンスキャン、より好ましくはコンスタントニュートラルロススキャンを用いることができる。
また、本発明において、コンスタントニュートラルロススキャンにおけるニュートラルロス質量の設定は、例えば146u、162u、204u、308u、324u、好ましくは162u、146uとすることができる。146uでは、例えば、ラムノシドなどのデオキシ糖の配糖体が、162uでは、例えば、グルコシドやガラクトシドなどの単糖の配糖体が、204uでは、例えば、アセチルグルコシドなどのアシル化糖の配糖体が、308uでは、例えば、ルチノシドなどの配糖体が、324uでは、カフェオイルグルコシドなどのアシル化糖の配糖体が検出される。
定量のための測定法には、上記の測定法の他、測定対象化合物の選択性の向上を目的とした選択反応モニタリング(SRM)がある。
SRMでは、MS1を目的のプリカーサーイオンのm/zに固定してプリカーサーイオンを選択し、さらにMS2を、フラグメント化により得られる特徴的なプロダクトイオンのm/zに固定してプロダクトイオンを選択して測定する方法である。目的の化合物のプリカーサーイオンから生じるプロダクトイオンによる定量法であり、夾雑成分のイオンとの分離をMS/MSで行うためノイズが小さくなり、精度のよい高感度な分析が可能となる。
生物試料の一般的な準備
以下に、本発明の配糖体のスクリーニング方法および定量方法を行う前の一般的な準備について、例を挙げて非限定的に説明する。
(i)生物試料の破砕
配糖体の分析の対象物を破砕して細かくしておく事は、配糖体の抽出効率を向上させる上で有効である。分析対象物によって、試料の破砕方法が異なる。以下に手順を例示するが、これに限定されるものではない。
含水率が低い試料(たとえば乾燥した植物の葉など)は、市販の粉砕機(ミル)を用いて簡便に破砕することができる。含水率が高い試料(例えば、生体組織、生きている植物の葉や培養細胞など)は、溶液中でホモジナイザーを用いて粉砕する方法、または凍結してミルなどにより試料を破砕する方法を用いることができる。また、含水率が高い試料は、凍結乾燥を行った後に、ミルを用いて簡便に破砕することができる。
(ii)生物試料の含水率測定
生物試料の乾物重量を基準に、複数の生物試料間で含有される配糖体の組成を比較する場合、および含有される配糖体成分量を比較する場合、生物試料の含水率を並行して測定しておくのが好ましい。以下に手順を例示するが、これに限定されるものではなく、また、本測定を行うかは任意である。
例えば、生物試料を80〜100℃に設定したオーブン内で5分〜3時間乾燥させた後に冷却させ、乾燥前後での重量減少分を元の生物試料の水分量として含水率を算出することができる。あるいは、例えば、生物試料を凍結乾燥(10Pa以下の圧力、12〜72時間)させた後、乾燥前後での重量減少分を元の生物試料の水分量として含水率を算出することができる。
配糖体を含む調製物からの分析用試料の準備
以下に、本発明の配糖体のスクリーニング方法および定量方法における、生物試料より調製された配糖体を含む調製物からの分析用試料の準備について、例を挙げて非限定的に説明する。「生物試料より調製された配糖体を含む調製物」は、生物試料からの抽出などの操作によって調製したものであってもよいし、市販品などの既に調製済のものであってもよい。調製物の態様は特に限定されず、例えば、溶液、粉末、ペースト、油状液体などを用いることができる。
(i)配糖体を含む調製物の生物試料からの調製
既に調製されている配糖体を含む調製物を用いるのでない場合には、生物試料より配糖体を含む調製物を調製する必要がある。以下に手順を例示するが、これに限定されるものではない。
例えば、葉たばこ試料などの農産物試料であれば、メタノール、含水エタノールなどの有機溶媒を加え、100〜300rpmで30分〜1時間振盪抽出し、超音波処理をしながら30分〜1時間抽出する。抽出液を3,000〜20,000×gで2〜15分間遠心し、上清液をろ過する。その後、ろ液から有機溶媒を留去する。有機溶媒を留去した後の乾固物に対して、酢酸緩衝液、マッキルベイン緩衝液(McIlvaine buffer)などの緩衝液(例えば、pH3.5〜7.5、好ましくはpH4.5〜6.5、より好ましくはpH5.6)を加え、超音波処理をしながら再溶解させる。定容時の濃度目安として、抽出に用いた葉たばこ試料の乾燥重量0.05〜0.10g相当の溶解物を1mLに溶解させた状態が挙げられる。再溶解した溶液をろ過滅菌して、配糖体を含む調製物をろ液として調製する。
(ii)配糖体を含む調製物の酵素処理
「生物試料より調製した配糖体を含む調製物」を、緩衝液などに溶解させ、グリコシド結合を加水分解する酵素で処理する。以下に手順を例示するが、これに限定されるものではない。
配糖体を含むろ液などの調製物を2つの容器に分注し、一方に酵素(溶液など)を添加する。もう一方は再溶解に用いた緩衝液を添加する。容器を密閉し、例えば20〜60℃で1〜100時間、好ましくは40℃で24〜60時間、より好ましくは40℃で48時間インキュベートする。インキュベート後、反応液を限外ろ過(排除限界:1〜10kDa、好ましくは3〜10kDa、最も好ましくは10kDa)して酵素を除去する。
このように、「生物試料より調製された配糖体を含む調製物」をさらに、配糖体の糖構造を認識してグリコシド結合を加水分解する酵素で処理して準備したものを、「分析用試料1」とする。
それに対し、「生物試料より調製された配糖体を含む調製物」に対して、酵素処理を行わないで準備したものを「分析用試料2」とする。
上記に例示した方法によって準備した分析用試料をLC−MS/MSによって分析するが、分析前に分析用試料に内部標準物質を添加してもよい。内部標準物質としては、標準品が入手でき、生体試料に含有される配糖体とピークが重ならない適当な配糖体などを用いる。例えば、n−ドデシル−β−D−グルコピラノシド、エチルバニリンβ−D−グルコピラノシド、フロリジンなど、好ましくは、n−ドデシル−β−D−グルコピラノシドを内部標準物質として用いることができる。
本発明では、LC−MS/MSによる分析結果のクロマトグラムにおいて分析用試料1と分析用試料2を比較して、分析用試料1で消失または強度(高さまたは面積)が減少しているピークを配糖体由来であると決定する。これは、配糖体の糖構造を認識してグリコシド結合を加水分解する酵素で処理することにより、分析用試料1に含まれるある配糖体は、その全てまたは一部が、例えば糖とアグリコンに分解され、酵素処理を行っていない分析用試料2の分析結果のクロマトグラムで存在する該配糖体のピークが、分析用試料1の分析結果のクロマトグラムでは、消失またはピークの強度(高さまたは面積)が減少するという原理に基づく。消失しているピークおよびピークの強度(高さまたは面積)が、例えば50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上減少しているピークを配糖体由来のピークであると決定する。
また、本発明では、配糖体由来のピークであると決定されたあるピークについて、ピークの強度(高さまたは面積)の値、またはピークの強度(高さまたは面積)の値の内部標準物質のピークの強度(高さまたは面積)の値との比を用いて、該ピークが由来する配糖体の生物試料中における存在量を、他の生物試料との相対比較や該生物試料中の他の配糖体由来のピークとの相対比較することなどにより、推定することができる。
以下、本発明の具体的態様を実施例として説明する。
実施例1.葉たばこ試料の分析用試料の準備
葉たばこ試料1(1.0g、日本酸黄色種)を100℃に設定したロータリーオーブン(Tsukasa Co.,Ltd.、日本、東京)内にて1時間乾燥した。乾燥後、検体はデシケーターの中で室温まで冷却した。乾燥前後での重量変化分を水分量とした。
ミル(メリタジャパン株式会社)を用いて粉砕した乾燥葉たばこ試料1(0.5g)をそれぞれ50mL遠心チューブに秤量し、20mLのメタノール(和光純薬工業株式会社、日本)を加えて200rpmで30分間振盪抽出した。さらに、超音波(Branson Ultrasonic Co.、米国)処理をしながら30分間抽出した。抽出液を3,000rpmで10分間遠心し、上清液約15mLを孔径0.2μmのPVDFメンブレン(GEヘルスケア、英国)を用いてろ過した。ろ液を10mLナスフラスコに採取し、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した。乾固物を50mM酢酸緩衝液(pH5.6)5mLに懸濁して再溶解させた。再溶解させた溶液を、孔径0.2μmの滅菌済メンブレン(Whatmann(登録商標))を用いてろ過滅菌して、配糖体を含むろ液を調製した。ろ液を2つのバイアル瓶に2mLずつ分注し、一方に1000U/mLのβ-グルコシダーゼ(オリエンタル酵母工業株式会社)溶液を100μL添加した。もう一方には50mM酢酸緩衝液(pH5.6)を100μL添加した。各容器を密閉し、40℃で48時間インキュベートした。インキュベート後、10kDa限外ろ過膜(Amicon Ultra遠心式限外ろ過チューブ、メルクジャパン)を用いて溶液をろ過し、これらのろ液を分析用試料1(β-グルコシダーゼ溶液を添加)および分析用試料2(50mM酢酸緩衝液(pH5.6)を添加)とした。また、内部標準物質として、n−ドデシル−β−D−グルコピラノシド(シグマ・アルドリッチジャパン)を終濃度20μg/mLで分析用試料1および2に添加した。
実施例2.LC−MS/MSによる配糖体のスクリーニング
分析用試料1および2を、以下の条件でLC−MS/MSによりそれぞれ分析した。
装置
Agilent 6410 トリプル四重極LC/MS
クロマトグラフィー条件
カラム:YMC-Pack Pro C18(株式会社ワイエムシィ(YMC Co.,Ltd.))、内径2.0mm×長さ150mm、粒子径3μm
注入量(injection volume):5μL
流速(flow rate):0.15mL/分
分析時間(run time):60分
溶離方法:グラジエント溶離(gradient elution)
溶離液A:1%ギ酸、溶離液B:アセトニトリル
グラジエント条件:15%B(0〜5分)、15〜45%B(5〜15分)、45〜90%B(15〜45分)、90%B(45〜60分)
再平衡化(re−equilibrium)時間:20分
カラム温度:40℃
イオン源パラメーター
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化(ESI)
ネブライザーガス:窒素
ネブライザーガス温度:350℃
ネブライザーガス流量:11L/分
ネブライザー圧力:35psi
キャピラリー電圧:4000V
質量分析計パラメーター
イオン極性:正
フラグメンター電圧:100V
衝突ガス(collision gas):窒素
衝突エネルギー(collision energy):20V
測定モード:スキャン
MSスキャン範囲:m/z250〜500
スキャン時間:500ms
スキャン方法:コンスタントニュートラルロススキャン
ニュートラルロス質量設定値(neutral loss off−set):162u
分析用試料1および2について、得られた結果のクロマトグラムを図1に示す。図1中の破線は分析用試料1から得られたクロマトグラムであり、実線は分析用試料2から得られたクロマトグラムである。分析用試料1から得られたクロマトグラムには、分析用試料2から得られたクロマトグラムと比較して検出強度が低下しているピークが存在する。下記の比較例1で明らかであるように、LC−MS/MSによるコンスタントニュートラルロススキャン(ニュートラルロス質量設定値:162u)での分析のみで得られたクロマトグラム中のピークは、プリカーサーイオンから糖質構造がニュートラルロスにより脱離することによって生じたという確証がないため、配糖体由来のピークであると決定されることはできない。しかし、本実施例の結果において、分析用試料1で、分析用試料2と比較してピークが消失またはピーク強度(ピーク高さまたはピーク面積)が減少したピークは、配糖体由来のピークであり、配糖体中のグリコシド結合が加水分解により切断されたためにそのような挙動を示したと考えられる。
このことより、コンスタントニュートラルロススキャン(ニュートラルロス質量設定値:162u)により得られたクロマトグラム中のピークの内、配糖体由来のピークを決定することができた。例えば、本実施例でコンスタントニュートラルロススキャンにより検出されたm/z373のプリカーサーイオンのピークは、図2に示すように、抽出イオンクロマトグラム(EIC)上において分析用試料1では消失していたことから、配糖体由来のピークであると決定された。一方、m/z473のプリカーサーイオンのピークは、図3に示すように、分析用試料1と分析用試料2で差がなかったことから、配糖体由来のピークではないと決定された。
比較例1.ニュートラルロス質量設定値の検討
実施例1の分析用試料2と同様の手順で比較用試料を準備し、以下の条件でLC−MS/MSによりそれぞれ分析した。
装置
実施例2に同じ
クロマトグラフィー条件
実施例2に同じ
イオン源パラメーター
実施例2に同じ
質量分析計パラメーター
イオン極性:正
フラグメンター電圧:100V
衝突ガス(collision gas):窒素
衝突エネルギー(collision energy):20V
測定モード:スキャン
MSスキャン範囲:m/z250〜750(ニュートラルロス質量設定:146u、162u、204u)、m/z320〜820(ニュートラルロス質量設定308u)、m/z400〜900(ニュートラルロス質量設定324u)
スキャン時間:500ms
スキャン方法:コンスタントニュートラルロススキャン
ニュートラルロス質量設定値(neutral loss off−set):146u、162u、204u(MSスキャン範囲:m/z250〜750)、308u(MSスキャン範囲:m/z320〜820)、324u(MSスキャン範囲:m/z400〜900)
比較用試料について、得られた結果のクロマトグラムを図4に示す。ニュートラルロス質量設定値が162uの場合に最も多数のピークが検出された。ニュートラルロス質量設定値が162uの場合に検出される配糖体としてはグルコシドなどが考えられる。
また、溶出時間が15分付近および17〜18分付近の、ニュートラルロス設定値が146u、162u、および308uに共通して現れたピークは、以下のように推定されるニュートラルロスの様式(例、ルチン)を示す、ルチノシドに由来するピークであることが示唆された。
しかし、ニュートラルロス設定値が162uの場合に現われた多数のピークの大半は特定の化合物への帰属が困難であり、糖質構造がニュートラルロスにより脱離しているとの確証もないため、配糖体由来のピークであると決定することができなかった。
実施例3.LC−MS/MSによる配糖体の定量
実施例1の分析用試料2(葉たばこ試料1を用いて準備した)を、配糖体由来であると決定されたピークについて、以下の条件でのLC−MS/MSの選択反応モニタリング(SRM)により分析した。また、葉たばこ試料2(日本産黄色種)を用いて、分析用試料2と同様に準備した分析用試料3を、同条件でLC−MS/MSにより分析した。
装置
実施例1に同じ
クロマトグラフィー条件
実施例1に同じ
イオン源パラメーター
実施例1に同じ
質量分析計パラメーター
イオン極性:正
フラグメンター電圧:100V
衝突ガス:窒素
測定モード:選択反応モニタリング(SRM)
SRMにおいてモニターされるプリカーサーイオンおよびプロダクトイオンの組み合わせ(SRMトランジション)は、以下の表1のとおりに設定した。
分析用試料2について、得られた結果のクロマトグラムを図5に示す。SRMを用いることにより、未同定のものも含むたばこ乾燥葉試料中の各配糖体を精度良く分析することが可能であり、さらに各配糖体由来のピークと内部標準物質のn−ドデシル−β−D−グルコピラノシドのピーク(m/z371のプリカーサーイオンおよびm/z371のプロダクトイオンのトランジション)とのピーク面積比を算出し、分析試料3について算出された値と比較することにより、乾燥葉たばこ試料1および2の間で各配糖体を相対的に定量することが可能であった。乾燥葉たばこ試料1および2で得られた各配糖体由来のピークの面積値および内部標準物質のピークとの面積比を、表2および表3にそれぞれ示す。
これらの結果より、乾燥葉たばこ試料1および2に含有される各配糖体の量の比較および配糖体組成の比較が可能であった。
本発明により、夾雑成分が多い生物試料や未同定の配糖体を含有する生物試料であっても、簡便に含有される配糖体を一斉に分析することが可能なスクリーニング方法および定量方法を提供することができる。また、生物試料につき分析用試料の準備を一度行うだけで、含有される配糖体のスクリーニングと定量の両方を行うことが可能な方法を提供することができる。

Claims (20)

  1. 生物試料に含有される配糖体をスクリーニングする方法であって、
    (1)(1−i)生物試料より調製された配糖体を含む調製物から、配糖体の糖構造を認識してグリコシド結合を加水分解する酵素で処理した分析用試料1を準備すること、および
    (1−ii)生物試料より調製された配糖体を含む調製物から、酵素で処理しない分析用試料2を準備すること、
    (2)分析用試料1および2を液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC−MS/MS)またはキャピラリー電気泳動タンデム質量分析計(CE−MS/MS)により分析すること、ならびに
    (3)分析結果において、分析用試料2と比較して分析用試料1で消失または強度(高さまたは面積)が減少しているピークを配糖体由来であると決定すること、
    の工程を含む、前記方法。
  2. 生物試料が植物に由来する試料である、請求項1に記載の方法。
  3. 配糖体がグルコシド、ルチノシド、アラビノシド、ガラクトシド、マンノシド、アピオシド、キシロシド、およびフコシドから選択される、請求項1または2に記載の方法。
  4. 酵素が配糖体中の糖と非糖部の間のグリコシド結合、または糖と糖の間のグリコシド結合を加水分解する機能を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 酵素がグルコシダーゼ、ラムノシダーゼ、キシロシダーゼ、アラビノシダーゼ、ガラクトシダーゼ、マンノシダーゼ、アピオシル-グルコシダーゼ、およびフコシダーゼから選択される1つまたは複数である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 酵素がβ−グルコシダーゼである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. タンデム質量分析計が三連四重極質量分析計である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 分析がコンスタントニュートラルロススキャンによって行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. コンスタントニュートラルロススキャンにおけるニュートラルロス質量の設定が162uである、請求項8に記載の方法。
  10. 生物試料に含有される配糖体を定量する方法であって、
    (1)(1−i)生物試料より調製された配糖体を含む調製物から、配糖体の糖構造を認識してグリコシド結合を加水分解する酵素で処理した分析用試料1を準備すること、および
    (1−ii)生物試料より調製された配糖体を含む調製物から、酵素で処理しない分析用試料2を準備すること、
    (2)分析用試料2のみ、または分析用試料1および2の両方に内部標準物質を添加すること、
    (3)分析用試料1および2をLC−MS/MSまたはCE−MS/MSにより分析すること、
    (4)分析結果において、分析用試料2と比較して分析用試料1で消失または強度(高さまたは面積)が減少しているピークを配糖体由来であると決定すること、ならびに
    (5)分析用試料2の分析結果において、配糖体に由来すると決定されたピークと内部標準物質ピークの強度(高さまたは面積)比を算出すること、
    の工程を含む、前記方法。
  11. 生物試料が植物に由来する試料である、請求項10に記載の方法。
  12. 配糖体がグルコシド、ルチノシド、アラビノシド、ガラクトシド、マンノシド、アピオシド、キシロシド、およびフコシドから選択される、請求項10または11に記載の方法。
  13. 酵素が配糖体中の糖と非糖部の間のグリコシド結合、または糖と糖の間のグリコシド結合を加水分解する機能を有する、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 酵素がグルコシダーゼ、ラムノシダーゼ、キシロシダーゼ、アラビノシダーゼ、ガラクトシダーゼ、マンノシダーゼ、アピオシル-グルコシダーゼ、およびフコシダーゼから選択される1つまたは複数である、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 酵素がβ−グルコシダーゼである、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. タンデム質量分析計が三連四重極質量分析計である、請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 分析がコンスタントニュートラルロススキャンによって行われる、請求項10〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. コンスタントニュートラルロススキャンにおけるニュートラルロス質量の設定が162uである、請求項17に記載の方法。
  19. 分析が選択反応モニタリング(SRM)によって行われる、請求項10〜16に記載の方法。
  20. SRMにおいてモニターされる配糖体由来のプリカーサーイオン/プロダクトイオンのトランジションのm/z値が、481/319、471/309、455/293、453/291、427/265、359/197、355/193、351/189、341/179、325/163、321/159、319/157、495/333、465/303、415/253、373/211、371/209、493/331、449/287、411/249、399/237、397/235、385/223、および381/219(各m/z値を中心とする前後0.2uの範囲を含む)から選択される一つ以上である、請求項19に記載の方法。
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Abad‐García et al. Practical guidelines for characterization of O‐diglycosyl flavonoid isomers by triple quadrupole MS and their applications for identification of some fruit juices flavonoids
Carbone et al. Analysis of flavonoids from Cyclanthera pedata fruits by liquid chromatography/electrospray mass spectrometry
Singh et al. Rapid ultra‐high‐performance liquid chromatography/quadrupole time‐of‐flight tandem mass spectrometry and selected reaction monitoring strategy for the identification and quantification of minor spinacetin derivatives in spinach
Christou et al. Combined use of β‐cyclodextrin and ionic liquid as electrolyte additives in EKC for separation and determination of carob's phenolics—A study of the synergistic effect
Carrasco‐Pancorbo et al. Capillary electrophoresis‐electrospray ionization‐mass spectrometry method to determine the phenolic fraction of extra‐virgin olive oil