JP3518367B2 - 13Cr系ステンレス厚鋼板の製造方法 - Google Patents
13Cr系ステンレス厚鋼板の製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、湿潤炭酸ガスを含
んだ原油や天然ガスまたはその他の流体を輸送する溶接
管の素材として用いられる13Cr系ステンレス厚鋼板
の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、エネルギー事情の悪化にともな
い、炭酸ガスや硫化水素のような腐食性ガスを多く含む
油井や天然ガス井が開発されるようになってきた。 【0003】湿潤炭酸ガスのみを含む環境(極微量の硫
化水素を含む場合もある)では、耐食性と材料コストの
観点から13Cr系ステンレス鋼管が広く用いられてい
る。 【0004】油井管としては、AISI規格の420鋼
に代表される高C(0.2%)−13Cr系ステンレス
鋼が一般的であり、ラインパイプ用では、溶接施工が必
要な観点から、AISI規格の410鋼に代表される低
C(0.1%)−13Cr系ステンレス鋼が使用されて
きた。 【0005】また、最近では、さらに極低C(0.03
%)で、Niを含有する改良13Cr系ステンレス鋼が
開発されている。 【0006】これらのマルテンサイト系ステンレス鋼か
らなる鋼管は、一般に、熱間継目無製管法で製造される
ことが多い。しかし、継目無鋼管は高い信頼性を評価さ
れているものの、いくつかの問題点があり、特に外径が
16インチ(426mm)以上の大径管の製造が困難と
いう問題がある。 【0007】これらの大径管は、一般に、溶接製管法に
よって製造される。そこで、最近、13Cr系ステンレ
ス溶接鋼管の製造方法がいくつか提案されている。 【0008】例えば、特開平4−191319号公報
(特公平7−5972号公報)には、低Cの13Cr系
ステンレス鋼からなるラインパイプの電縫溶接法による
製造方法が提案されている。また、特開平8−2068
61号公報には、レーザー溶接法を用いた13Cr系ス
テンレス鋼からなるラインパイプの製造方法が提案され
ている。 【0009】ただし、電縫溶接法やレーザ溶接法、また
はTIG溶接法では、マルテンサイト系ステンレス鋼の
熱延鋼帯を素材に用いて製管するので、一般的に肉厚が
10mm以下の薄肉管しか製造できない。 【0010】さらに、継目無鋼管は、素材の鋼片(ビレ
ット)を1250℃程度の高温に加熱した後に穿孔、延
伸圧延するので、機械的性質および耐食性の観点から、
製管後の焼入れ焼戻し処理が必須である。また、上記の
薄肉溶接管においても、製管溶接後に焼入れ焼戻し処理
を施すのが望ましい。 【0011】言うまでもなく、このような焼入れ焼戻し
処理法は、強度調整が比較的容易であるという長所があ
る。しかし、製造工程が増えることになり、また、熱処
理時に生成した酸化スケールを除去する必要が生じるこ
となど、生産性の低下ひいては製造コストが嵩むという
問題が生じる。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】最近では、特に、天然
ガスの輸送効率を上げるために、このような13Cr系
ステンレス鋼ラインパイプの大径、厚肉化が要望されて
いる。大径化によって輸送量を増やし、厚肉化によって
操業圧力を高めることができるので、さらにガスの輸送
効率を上げることができる。 【0013】本発明の目的は、湿潤炭酸ガスを含んだ原
油や天然ガスまたはその他の流体を輸送する溶接管の素
材として用いられ、製管溶接のままで製品として使用で
きる13Cr系ステンレス厚鋼板の製造方法を提供する
ことにある。 【0014】なお、ここでいう厚鋼板とは、肉厚がおお
よそ1/2インチ(12.7mm)以上のものを意味す
る。 【0015】 【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記の
13Cr系ステンレス厚鋼板の製造方法にある。 【0016】重量%で、C:0.03%以下、Si:1
%以下、Mn:2%以下、Cr:9〜13%、Ni:1
〜7%、Ti:0.5%以下、Al:0.1%以下、お
よびCu:0.3〜2%とMo:0.5〜3%のいずれ
か一方又は両方の成分を含み、残部はFeおよび不可避
不純物の鋼からなる鋼片の熱間圧延を800℃以上で終
了した後、800〜600℃の温度域を10℃/s以上
の平均冷却速度で冷却する一方、600℃未満の温度域
を空冷以下の冷却速度で冷却する13Cr系ステンレス
厚鋼板の製造方法。 【0017】上記のような厚鋼板を素材とする溶接管
は、一般的に、厚鋼板をCプレス、Uプレス、Oプレス
で管状に成形し、サブマージアーク溶接法によってシー
ム製管溶接される。この時、サブマージアーク溶接法に
よるシーム部の溶接は、内外両面ともに1層溶接される
のが一般的であるが、多層溶接されることもある。 【0018】なお、管状への成形法にはロールベンダー
が、また溶接法にはレーザ溶接法やTIG溶接法が用い
られる場合もある。 【0019】上記のような工程を経て製造されるいわゆ
るUO管は、一般的に、外径が20〜24インチ(50
8〜609.6mm)以上であり、このような大径厚肉
管の管全体を一気に焼入れ焼戻し処理することは設備的
に極めて難しく、仮に行う場合には設備費が嵩んで極め
て高コストになる。したがって、製管溶接したままで使
用できるような素材の厚鋼板が必要になる。 【0020】また、厚鋼板自体も、肉厚がおおよそ1/
2インチ(12.7mm)以上、幅がおおよそ63イン
チ以上、長さがおおよそ25〜26m程度と長尺であ
る。したがって、厚鋼板においても、圧延後の焼入れ処
理はもちろん、焼戻し処理も困難であるので、このよう
な圧延後の熱処理なしで製管溶接に供することができる
厚鋼板が必要になる。 【0021】一方、圧延後の熱処理を省略する場合、圧
延ままで機械的性質および耐食性を満足することはもち
ろん、厚鋼板での水素割れを避けねばならない。しか
し、本発明で対象とする13Cr系ステンレス鋼は、一
般にX80(単位はksiで、56kgf/mm2 )以
上の高強度のマルテンサイト組織であり、厚鋼板の水素
割れ感受性が高い。 【0022】なお、電縫製管法やレーザ製管法に供する
熱延鋼帯では、巻取り後の冷却速度が1℃/s以下と極
めて遅く、室温に冷えるまでの間に水素が抜けてしまう
ので、水素割れの心配はない。 【0023】このように、水素割れは、厚鋼板に特有の
問題である。13Cr系ステンレス鋼の厚鋼板で、圧延
のままで機械的性質および耐食性を満足させ、かつ、厚
鋼板での水素割れを防止する方法は、これまで知られて
いなかった。 【0024】厚鋼板の水素割れを引き起こす水素は、溶
解原料に含有または付着していた水分が熱分解して発生
したものである。溶鋼に固溶した水素が、スラブやビレ
ットでポロシティーなどにガスとしてトラップされ、加
熱圧延工程でポロシティーが圧着する際に、再度鋼中に
固溶して製品まで残留したものである。 【0025】したがって、スラブあるいはビレットの段
階で、脱水素すればその問題は生じないわけであるが、
極めて厚肉の鋼片では、その肉厚中心部の脱水素を完了
するのに従来から知られている方法では数時間〜数日を
要するので、非効率的である。 【0026】そこで、本発明者らは、厚鋼板に発生する
水素割れ挙動を解明すべく、組織的な検討と以下に述べ
る実験を行い、次のことを知見した。 【0027】焼入れ焼戻しのような熱処理を施さない厚
鋼板における水素割れは、板厚中心部に発生し、主とし
て圧延面に平行に伝播している。その形態は、旧オース
テナイト粒界の破壊であり、破面には、粗大な炭化物が
析出していることが確認された。これらの水素割れが発
生した鋼板の健全部から腐食試験片を採取し、微量(1
00ppm:0.03atmに相当)のH2S を含む環
境で硫化物応力割れ(以下、SSCと称す)試験を実施
すると、やはり、板厚中心部に同様の割れ形態を呈する
ことが確認された。 【0028】厚鋼板で板厚中心部に水素割れが発生する
のは、その部分の残留水素濃度が最も高いからであり、
残留水素濃度を下げるためにはスラブで脱水素しなけれ
ばならない。 【0029】これに対して、本発明者らは、他の水素割
れ防止対策として、割れが圧延面に平行に伸びた旧オー
ステナイト粒界に沿って割れていることから旧オーステ
ナイト粒を扁平粒にしなければよいこと、および粒界に
析出した炭化物の周囲に水素ガスが溜まって割れたと考
えられることから炭化物の粒界への析出を抑制すればよ
いと考えた。 【0030】そこで、旧オーステナイト粒は、仕上温度
が低いほど扁平になるので、仕上温度の及ぼす影響と、
粗大な炭化物の粒界析出には高温での滞留時間が影響し
ているので、炭化物の析出に及ぼす圧延後に施す水冷の
影響について調査した。その結果、次のことがわかっ
た。 【0031】800℃未満で圧延を終了すると、粒の扁
平化が著しく、その場合には、圧延後、600℃までの
温度域を10℃/s以上の平均冷却速度で冷却しても、
粒界にわずかに析出した炭化物によって水素割れが発生
し、耐SSC性が劣化する。 【0032】また、800℃以上で圧延を終了しても、
その後に600℃未満まで10℃/s以上の平均冷却速
度で冷却すると、粒界への粗大な炭化物析出が抑制され
て耐SSC性は良好であるが、高温域での脱水素が不足
し、水素割れが発生する。 【0033】これに対し、800℃以上で圧延を終了す
ると、粒の扁平化が大幅に抑制される。また、この圧延
終了後、800〜600℃の温度域を10℃/s以上の
平均冷却速度で冷却し、次いで600℃未満の温度域を
空冷以下の冷却速度で冷却すると、粒界への粗大な炭化
物の析出が大幅に抑制されるとともに、高温域での脱水
素が促進され、水素割れの発生がなく、良好な耐SSC
性が確保される。 【0034】すなわち、圧延前の素材(スラブ)の段階
で、長時間の脱水素処理を施すのではなく、800℃以
上で熱間圧延を終了し、800〜600℃の温度域を1
0℃/s以上の平均冷却速度で冷却した後、600℃未
満の温度域を空冷以下の冷却速度で冷却するという短時
間の処理によって脱水素が行われ、水素割れが発生せ
ず、良好な耐SSC性を備えた厚鋼板が得られ、これを
素材とする溶接鋼管は、製管溶接のままで製品として用
いても何らの問題もないことを知見した。 【0035】 【発明の実施の形態】以下、本発明の方法について詳細
に説明する。なお、以下において、「%」は特に断らな
い限り「重量%」を意味する。 【0036】《素材鋼の化学組成》 C:C含有量が0.03%を超えると、Cr炭化物の析
出による耐炭酸ガス腐食性の劣化が起こるだけでなく、
水素割れの起点となる炭化物が粒界に析出しやすくな
る。また、溶接部の硬度上昇を招いて耐SSC性が劣化
する。したがって、C含有量の上限は0.03%と定め
た。望ましい上限は0.02%である。 【0037】なお、Cは耐食性の確保と溶接部の硬度上
昇を抑制する観点からは低ければ低いほど好ましく、工
業的に可能な0.005%程度にまで低くしてもよいの
で、その下限値を定める必要はない。 【0038】Si:Siは鋼の脱酸のために添加する元
素であるが、その含有量が1%を超えると鋼の清浄性と
靱性が低下する。このため、Si含有量の上限は1%と
定めた。望ましい上限は0.5%である。 【0039】なお、十分な脱酸効果を得るためには、そ
の含有量を0.05%以上とするのが好ましいが、他の
元素(後述のAl)によって十分な脱酸がなされる場
合、Siは必ずしも含有させなくてもよい。 【0040】Mn:Mnは本発明が対象とするC含有量
0.03%以下の低C−13Cr系ステンレス鋼におい
て安定なマルテンサイト相を得るのに有効であるが、そ
の含有量が2%を超えると耐食性が悪化する。このた
め、Mn含有量の上限は2%と定めた。望ましい上限は
1%である。 【0041】なお、Mnは耐食性の観点からは低ければ
低いほど好ましいので、その下限値は特に定める必要は
ない。しかし、その含有量を過剰に低くしすぎると、マ
ルテンサイト相を得るのに高価なNi含有量を高める必
要が生じてコスト上昇を招くので、0.3〜0.5%程
度以上含有させるのが好ましい。 【0042】Cr:Cr含有量が9%未満では、母材部
を含めてその鋼表面に充分な耐食性能を有する耐食性皮
膜が形成されないために、ラインパイプ用鋼管として炭
酸ガスや硫化水素を含む環境中で使用した場合、必要な
耐食性が確保できない。逆に、Cr含有量が13%を超
えると、耐食性に及ぼす効果が飽和するばかりか、オー
ステナイト相を安定化させ、引いてはマルテンサイト相
を生成させやすくする元素である高価なNiなどの合金
元素の添加量を増やす必要があり、素材コストの上昇を
招いて経済性が損なわれる。このため、Cr含有量は9
〜13%と定めた。望ましい範囲は10〜13%であ
る。 【0043】Ni:Ni含有量が1%未満では、マルテ
ンサイト相を安定かつ容易に確保するのが困難になるだ
けでなく、特にラインパイプ用鋼管として微量の硫化水
素を含む環境中で使用した場合、耐食性能を有する耐食
性皮膜が生成形成されないために、必要な耐食性が確保
できなくなる。逆に、Ni含有量が7%を超えると、組
織の安定性と耐食性に及ぼす効果が飽和するばかりか、
素材コストの上昇を招いて経済性が損なわれる。したが
って、Ni含有量は1〜7%と定めた。望ましい範囲は
2〜7%である。 【0044】Al:Alは鋼の脱酸のために添加する元
素であるが、0.1%を超えて含有させると清浄性と靱
性が低下する。このため、Al含有量の上限は0.1%
と定めた。望ましい上限は0.06%である。 【0045】なお、十分な脱酸効果を得るためには、そ
の含有量を0.01%以上とするのが好ましいが、他の
元素(前述のSi)によって十分な脱酸がなされる場
合、Alは必ずしも含有させなくてもよい。 【0046】Ti:TiはCを固定し、粗大な炭化物の
粒界析出を抑制する作用を有するが、0.5%を超えて
含有させるとその効果が飽和するばかりか、熱間加工性
と靱性が劣化する。したがって、Ti含有量の上限は
0.5%と定めた。望ましい上限は0.2%である。 【0047】なお、Ti含有量の下限値は特に定めない
が、Cのほぼ全量をTiCとして固定するためにはC含
有量の4倍以上を含有させるのが好ましい。 【0048】Cu、Mo:これらの元素は、耐食性、特
に耐局部腐食性と耐SSC性を高める効果がある。この
ため、CuとMoのいずれか一方又は両方の元素を添加
する。それぞれ、Cuについては0.3%以上、Moに
ついては0.5%以上でその効果が顕著になる。しか
し、2%超のCu添加はその効果が飽和するばかりか熱
間加工性と溶接性の劣化を招く。また、3%超のMo添
加はその効果が飽和するばかりか、上記のCrと同様
に、フェライト相の安定化元素であるので、オーステナ
イト相を安定化させ、引いてはマルテンサイト相を生成
させやすくする元素である高価なNiなどの合金元素の
含有量を増やす必要があり、素材コストの上昇を招く。
したがって、CuとMoの含有量は、それぞれ0.3〜
2%、0.5〜3%とする。 【0049】P、S、N、O(酸素):これらの元素
は、いずれも鋼中に含まれる不可避不純物であり、その
含有量は低ければ低いほど好ましい。 【0050】《製造方法》 素材鋼片の加熱:圧延に供される素材鋼片の温度は、次
に述べる圧延が可能な温度であればよい。 【0051】仕上圧延温度:800℃を下回ると、未再
結晶温度域であるため、粒が著しく扁平化して、水素割
れ感受性が高くなり、極低CでTi添加の鋼でも水素割
れが発生するのを防止できない。望ましい仕上圧延温度
の下限は900℃である。このような高温仕上で、L方
向(圧延方向)とC方向(圧延方向と直交する方向)の
機械的性質に異方性のない、溶接管用の素材として好適
な厚鋼板を製造することができる。 【0052】800〜600℃の平均冷却速度:圧延終
了後、800〜600℃の温度域を10℃/s以上の平
均冷却速度で冷却する必要がある。これは、前述したよ
うに、800〜600℃の温度域を10℃/s未満の平
均冷却速度で冷却したのでは、水素割れの起点となって
割れの伝播を加速する粗大な炭化物が粒界に析出するの
を抑制できなくなるためである。望ましい平均冷却速度
の下限は15℃/sである。 【0053】なお、平均冷却速度は、速ければ速いほど
よい。このため、その上限は特に定める必要はない。ま
た、冷却の方法は、気水(ミスト)冷却またはシャワー
水冷とすればよい。 【0054】600℃未満の冷却速度:600℃未満の
温度域まで上記10℃/s以上の平均冷却速度で冷却す
ると、高温域での脱水素が不十分となり、たとえ粗大な
炭化物が粒界に析出するのを抑制できたとしても、水素
割れが発生するようになる。このため、600℃未満の
温度域の冷却速度は空冷以下の遅い速度と定めた。 【0055】なお、空冷よりも遅い冷却速度は、例えば
圧延後の鋼板が冷えきらない間に2枚重ねにする方法に
より実現可能であり、この方法が最も簡単である。 【0056】 【実施例】表1に示す化学組成を有する11種類の鋼を
溶製し、厚さ300mm、幅2300mmの素材鋼片
(スラブ)を準備し、その肉厚方向の中央部から厚さ1
50mm、幅120mm、長さ100mmの圧延用素材
を切り出した。 【0057】 【表1】 【0058】各圧延用素材は、表2に示す種々の条件で
熱間圧延するとともに冷却し、厚さ25.4mmの厚鋼
板を得た。 【0059】 【表2】 【0060】そして、製造後、室温に48時間放置した
後の各厚鋼板から、一辺が100mmの正方形の全厚
(ただし、表面スケールは研削で除去)の試験片を採取
し、超音波探傷によるCスキャン法にて水素割れの発生
の有無を調べた。評価は、割れが検出されなかったもの
を合格(○)、一部でも割れが検出されたものを不合格
(×)とした。 【0061】また、室温に48時間放置した後の各厚鋼
板のC方向(圧延方向と直交する方向)から、厚さ2m
m、幅10mm、長さ75mmのノッチ無しの応力腐食
試験片を採取した。得られた応力腐食試験片は、図1に
示す4点曲げ付与治具にセットし、素材厚鋼板の降伏応
力の100%の応力を付加した後、液温25℃の下記
またはの腐食環境下に336時間浸漬して耐SSC性
を調べた。評価は、SSCが発生しなかったものを合格
(○)、SSCが発生したものを不合格(×)とした。 【0062】腐食環境: 0.003atmH2S−30atmCO2−5%Na
Cl水溶液、 0.03atmH2S−30atmCO2−5%NaC
l水溶液。 【0063】なお、腐食環境下を上記のとの2通り
でおこなったのは、Cuまたは/およびMoを添加した
鋼と添加しなかった鋼では耐SSC性が異なるためであ
る。これらの調査結果を、表2に併せて示した。 【0064】表2に示す結果からわかるように、本発明
の方法にしたがって製造された厚鋼板(試番16、1
7、20および24〜28)は、いずれも水素割れは発
生しておらず、耐SSC性も良好であった。 【0065】これに対し、鋼の化学組成、仕上げ温度、
800〜600℃間の平均冷却速度、平均冷却速度10
℃/s以上での冷却の停止温度および600℃未満の冷
却速度のいずれかが本発明で規定する範囲から外れる方
法で製造された比較例の厚鋼板(試番12〜15、1
8、19および21〜23)は、いずれも水素割れが発
生し、平均冷却速度10℃/s以上での冷却の停止温度
が600℃未満のものを除いて耐SSC性も不芳であっ
た。 【0066】具体的に説明すると、試番15および19
は、800〜600℃間の平均冷却速度が10℃/s未
満であるために、水素割れが発生し、耐SSC性も不芳
であった。 【0067】 【0068】試番12と13は、C含有量が高すぎるた
めに、水素割れが発生し、耐SSC性も不芳であった。
試番22と23は、Tiが添加されていないために、水
素割れが発生し、耐SSC性も不芳であった。 【0069】 【0070】 【発明の効果】本発明の方法によれば、湿潤炭酸ガスを
含む原油や天然ガスまたはその他の流体を輸送するライ
ンパイプの素材として好適な、耐食性に優れる13Cr
系ステンレス厚鋼板を安価に製造することができる。ま
た、この厚鋼板を素材にしてラインパイプ用の溶接鋼管
を製造する場合には、溶接製管のままで必要な特性を有
しているので、焼入れ焼戻し処理を施さずにそのまま製
品として出荷できる。
んだ原油や天然ガスまたはその他の流体を輸送する溶接
管の素材として用いられる13Cr系ステンレス厚鋼板
の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、エネルギー事情の悪化にともな
い、炭酸ガスや硫化水素のような腐食性ガスを多く含む
油井や天然ガス井が開発されるようになってきた。 【0003】湿潤炭酸ガスのみを含む環境(極微量の硫
化水素を含む場合もある)では、耐食性と材料コストの
観点から13Cr系ステンレス鋼管が広く用いられてい
る。 【0004】油井管としては、AISI規格の420鋼
に代表される高C(0.2%)−13Cr系ステンレス
鋼が一般的であり、ラインパイプ用では、溶接施工が必
要な観点から、AISI規格の410鋼に代表される低
C(0.1%)−13Cr系ステンレス鋼が使用されて
きた。 【0005】また、最近では、さらに極低C(0.03
%)で、Niを含有する改良13Cr系ステンレス鋼が
開発されている。 【0006】これらのマルテンサイト系ステンレス鋼か
らなる鋼管は、一般に、熱間継目無製管法で製造される
ことが多い。しかし、継目無鋼管は高い信頼性を評価さ
れているものの、いくつかの問題点があり、特に外径が
16インチ(426mm)以上の大径管の製造が困難と
いう問題がある。 【0007】これらの大径管は、一般に、溶接製管法に
よって製造される。そこで、最近、13Cr系ステンレ
ス溶接鋼管の製造方法がいくつか提案されている。 【0008】例えば、特開平4−191319号公報
(特公平7−5972号公報)には、低Cの13Cr系
ステンレス鋼からなるラインパイプの電縫溶接法による
製造方法が提案されている。また、特開平8−2068
61号公報には、レーザー溶接法を用いた13Cr系ス
テンレス鋼からなるラインパイプの製造方法が提案され
ている。 【0009】ただし、電縫溶接法やレーザ溶接法、また
はTIG溶接法では、マルテンサイト系ステンレス鋼の
熱延鋼帯を素材に用いて製管するので、一般的に肉厚が
10mm以下の薄肉管しか製造できない。 【0010】さらに、継目無鋼管は、素材の鋼片(ビレ
ット)を1250℃程度の高温に加熱した後に穿孔、延
伸圧延するので、機械的性質および耐食性の観点から、
製管後の焼入れ焼戻し処理が必須である。また、上記の
薄肉溶接管においても、製管溶接後に焼入れ焼戻し処理
を施すのが望ましい。 【0011】言うまでもなく、このような焼入れ焼戻し
処理法は、強度調整が比較的容易であるという長所があ
る。しかし、製造工程が増えることになり、また、熱処
理時に生成した酸化スケールを除去する必要が生じるこ
となど、生産性の低下ひいては製造コストが嵩むという
問題が生じる。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】最近では、特に、天然
ガスの輸送効率を上げるために、このような13Cr系
ステンレス鋼ラインパイプの大径、厚肉化が要望されて
いる。大径化によって輸送量を増やし、厚肉化によって
操業圧力を高めることができるので、さらにガスの輸送
効率を上げることができる。 【0013】本発明の目的は、湿潤炭酸ガスを含んだ原
油や天然ガスまたはその他の流体を輸送する溶接管の素
材として用いられ、製管溶接のままで製品として使用で
きる13Cr系ステンレス厚鋼板の製造方法を提供する
ことにある。 【0014】なお、ここでいう厚鋼板とは、肉厚がおお
よそ1/2インチ(12.7mm)以上のものを意味す
る。 【0015】 【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記の
13Cr系ステンレス厚鋼板の製造方法にある。 【0016】重量%で、C:0.03%以下、Si:1
%以下、Mn:2%以下、Cr:9〜13%、Ni:1
〜7%、Ti:0.5%以下、Al:0.1%以下、お
よびCu:0.3〜2%とMo:0.5〜3%のいずれ
か一方又は両方の成分を含み、残部はFeおよび不可避
不純物の鋼からなる鋼片の熱間圧延を800℃以上で終
了した後、800〜600℃の温度域を10℃/s以上
の平均冷却速度で冷却する一方、600℃未満の温度域
を空冷以下の冷却速度で冷却する13Cr系ステンレス
厚鋼板の製造方法。 【0017】上記のような厚鋼板を素材とする溶接管
は、一般的に、厚鋼板をCプレス、Uプレス、Oプレス
で管状に成形し、サブマージアーク溶接法によってシー
ム製管溶接される。この時、サブマージアーク溶接法に
よるシーム部の溶接は、内外両面ともに1層溶接される
のが一般的であるが、多層溶接されることもある。 【0018】なお、管状への成形法にはロールベンダー
が、また溶接法にはレーザ溶接法やTIG溶接法が用い
られる場合もある。 【0019】上記のような工程を経て製造されるいわゆ
るUO管は、一般的に、外径が20〜24インチ(50
8〜609.6mm)以上であり、このような大径厚肉
管の管全体を一気に焼入れ焼戻し処理することは設備的
に極めて難しく、仮に行う場合には設備費が嵩んで極め
て高コストになる。したがって、製管溶接したままで使
用できるような素材の厚鋼板が必要になる。 【0020】また、厚鋼板自体も、肉厚がおおよそ1/
2インチ(12.7mm)以上、幅がおおよそ63イン
チ以上、長さがおおよそ25〜26m程度と長尺であ
る。したがって、厚鋼板においても、圧延後の焼入れ処
理はもちろん、焼戻し処理も困難であるので、このよう
な圧延後の熱処理なしで製管溶接に供することができる
厚鋼板が必要になる。 【0021】一方、圧延後の熱処理を省略する場合、圧
延ままで機械的性質および耐食性を満足することはもち
ろん、厚鋼板での水素割れを避けねばならない。しか
し、本発明で対象とする13Cr系ステンレス鋼は、一
般にX80(単位はksiで、56kgf/mm2 )以
上の高強度のマルテンサイト組織であり、厚鋼板の水素
割れ感受性が高い。 【0022】なお、電縫製管法やレーザ製管法に供する
熱延鋼帯では、巻取り後の冷却速度が1℃/s以下と極
めて遅く、室温に冷えるまでの間に水素が抜けてしまう
ので、水素割れの心配はない。 【0023】このように、水素割れは、厚鋼板に特有の
問題である。13Cr系ステンレス鋼の厚鋼板で、圧延
のままで機械的性質および耐食性を満足させ、かつ、厚
鋼板での水素割れを防止する方法は、これまで知られて
いなかった。 【0024】厚鋼板の水素割れを引き起こす水素は、溶
解原料に含有または付着していた水分が熱分解して発生
したものである。溶鋼に固溶した水素が、スラブやビレ
ットでポロシティーなどにガスとしてトラップされ、加
熱圧延工程でポロシティーが圧着する際に、再度鋼中に
固溶して製品まで残留したものである。 【0025】したがって、スラブあるいはビレットの段
階で、脱水素すればその問題は生じないわけであるが、
極めて厚肉の鋼片では、その肉厚中心部の脱水素を完了
するのに従来から知られている方法では数時間〜数日を
要するので、非効率的である。 【0026】そこで、本発明者らは、厚鋼板に発生する
水素割れ挙動を解明すべく、組織的な検討と以下に述べ
る実験を行い、次のことを知見した。 【0027】焼入れ焼戻しのような熱処理を施さない厚
鋼板における水素割れは、板厚中心部に発生し、主とし
て圧延面に平行に伝播している。その形態は、旧オース
テナイト粒界の破壊であり、破面には、粗大な炭化物が
析出していることが確認された。これらの水素割れが発
生した鋼板の健全部から腐食試験片を採取し、微量(1
00ppm:0.03atmに相当)のH2S を含む環
境で硫化物応力割れ(以下、SSCと称す)試験を実施
すると、やはり、板厚中心部に同様の割れ形態を呈する
ことが確認された。 【0028】厚鋼板で板厚中心部に水素割れが発生する
のは、その部分の残留水素濃度が最も高いからであり、
残留水素濃度を下げるためにはスラブで脱水素しなけれ
ばならない。 【0029】これに対して、本発明者らは、他の水素割
れ防止対策として、割れが圧延面に平行に伸びた旧オー
ステナイト粒界に沿って割れていることから旧オーステ
ナイト粒を扁平粒にしなければよいこと、および粒界に
析出した炭化物の周囲に水素ガスが溜まって割れたと考
えられることから炭化物の粒界への析出を抑制すればよ
いと考えた。 【0030】そこで、旧オーステナイト粒は、仕上温度
が低いほど扁平になるので、仕上温度の及ぼす影響と、
粗大な炭化物の粒界析出には高温での滞留時間が影響し
ているので、炭化物の析出に及ぼす圧延後に施す水冷の
影響について調査した。その結果、次のことがわかっ
た。 【0031】800℃未満で圧延を終了すると、粒の扁
平化が著しく、その場合には、圧延後、600℃までの
温度域を10℃/s以上の平均冷却速度で冷却しても、
粒界にわずかに析出した炭化物によって水素割れが発生
し、耐SSC性が劣化する。 【0032】また、800℃以上で圧延を終了しても、
その後に600℃未満まで10℃/s以上の平均冷却速
度で冷却すると、粒界への粗大な炭化物析出が抑制され
て耐SSC性は良好であるが、高温域での脱水素が不足
し、水素割れが発生する。 【0033】これに対し、800℃以上で圧延を終了す
ると、粒の扁平化が大幅に抑制される。また、この圧延
終了後、800〜600℃の温度域を10℃/s以上の
平均冷却速度で冷却し、次いで600℃未満の温度域を
空冷以下の冷却速度で冷却すると、粒界への粗大な炭化
物の析出が大幅に抑制されるとともに、高温域での脱水
素が促進され、水素割れの発生がなく、良好な耐SSC
性が確保される。 【0034】すなわち、圧延前の素材(スラブ)の段階
で、長時間の脱水素処理を施すのではなく、800℃以
上で熱間圧延を終了し、800〜600℃の温度域を1
0℃/s以上の平均冷却速度で冷却した後、600℃未
満の温度域を空冷以下の冷却速度で冷却するという短時
間の処理によって脱水素が行われ、水素割れが発生せ
ず、良好な耐SSC性を備えた厚鋼板が得られ、これを
素材とする溶接鋼管は、製管溶接のままで製品として用
いても何らの問題もないことを知見した。 【0035】 【発明の実施の形態】以下、本発明の方法について詳細
に説明する。なお、以下において、「%」は特に断らな
い限り「重量%」を意味する。 【0036】《素材鋼の化学組成》 C:C含有量が0.03%を超えると、Cr炭化物の析
出による耐炭酸ガス腐食性の劣化が起こるだけでなく、
水素割れの起点となる炭化物が粒界に析出しやすくな
る。また、溶接部の硬度上昇を招いて耐SSC性が劣化
する。したがって、C含有量の上限は0.03%と定め
た。望ましい上限は0.02%である。 【0037】なお、Cは耐食性の確保と溶接部の硬度上
昇を抑制する観点からは低ければ低いほど好ましく、工
業的に可能な0.005%程度にまで低くしてもよいの
で、その下限値を定める必要はない。 【0038】Si:Siは鋼の脱酸のために添加する元
素であるが、その含有量が1%を超えると鋼の清浄性と
靱性が低下する。このため、Si含有量の上限は1%と
定めた。望ましい上限は0.5%である。 【0039】なお、十分な脱酸効果を得るためには、そ
の含有量を0.05%以上とするのが好ましいが、他の
元素(後述のAl)によって十分な脱酸がなされる場
合、Siは必ずしも含有させなくてもよい。 【0040】Mn:Mnは本発明が対象とするC含有量
0.03%以下の低C−13Cr系ステンレス鋼におい
て安定なマルテンサイト相を得るのに有効であるが、そ
の含有量が2%を超えると耐食性が悪化する。このた
め、Mn含有量の上限は2%と定めた。望ましい上限は
1%である。 【0041】なお、Mnは耐食性の観点からは低ければ
低いほど好ましいので、その下限値は特に定める必要は
ない。しかし、その含有量を過剰に低くしすぎると、マ
ルテンサイト相を得るのに高価なNi含有量を高める必
要が生じてコスト上昇を招くので、0.3〜0.5%程
度以上含有させるのが好ましい。 【0042】Cr:Cr含有量が9%未満では、母材部
を含めてその鋼表面に充分な耐食性能を有する耐食性皮
膜が形成されないために、ラインパイプ用鋼管として炭
酸ガスや硫化水素を含む環境中で使用した場合、必要な
耐食性が確保できない。逆に、Cr含有量が13%を超
えると、耐食性に及ぼす効果が飽和するばかりか、オー
ステナイト相を安定化させ、引いてはマルテンサイト相
を生成させやすくする元素である高価なNiなどの合金
元素の添加量を増やす必要があり、素材コストの上昇を
招いて経済性が損なわれる。このため、Cr含有量は9
〜13%と定めた。望ましい範囲は10〜13%であ
る。 【0043】Ni:Ni含有量が1%未満では、マルテ
ンサイト相を安定かつ容易に確保するのが困難になるだ
けでなく、特にラインパイプ用鋼管として微量の硫化水
素を含む環境中で使用した場合、耐食性能を有する耐食
性皮膜が生成形成されないために、必要な耐食性が確保
できなくなる。逆に、Ni含有量が7%を超えると、組
織の安定性と耐食性に及ぼす効果が飽和するばかりか、
素材コストの上昇を招いて経済性が損なわれる。したが
って、Ni含有量は1〜7%と定めた。望ましい範囲は
2〜7%である。 【0044】Al:Alは鋼の脱酸のために添加する元
素であるが、0.1%を超えて含有させると清浄性と靱
性が低下する。このため、Al含有量の上限は0.1%
と定めた。望ましい上限は0.06%である。 【0045】なお、十分な脱酸効果を得るためには、そ
の含有量を0.01%以上とするのが好ましいが、他の
元素(前述のSi)によって十分な脱酸がなされる場
合、Alは必ずしも含有させなくてもよい。 【0046】Ti:TiはCを固定し、粗大な炭化物の
粒界析出を抑制する作用を有するが、0.5%を超えて
含有させるとその効果が飽和するばかりか、熱間加工性
と靱性が劣化する。したがって、Ti含有量の上限は
0.5%と定めた。望ましい上限は0.2%である。 【0047】なお、Ti含有量の下限値は特に定めない
が、Cのほぼ全量をTiCとして固定するためにはC含
有量の4倍以上を含有させるのが好ましい。 【0048】Cu、Mo:これらの元素は、耐食性、特
に耐局部腐食性と耐SSC性を高める効果がある。この
ため、CuとMoのいずれか一方又は両方の元素を添加
する。それぞれ、Cuについては0.3%以上、Moに
ついては0.5%以上でその効果が顕著になる。しか
し、2%超のCu添加はその効果が飽和するばかりか熱
間加工性と溶接性の劣化を招く。また、3%超のMo添
加はその効果が飽和するばかりか、上記のCrと同様
に、フェライト相の安定化元素であるので、オーステナ
イト相を安定化させ、引いてはマルテンサイト相を生成
させやすくする元素である高価なNiなどの合金元素の
含有量を増やす必要があり、素材コストの上昇を招く。
したがって、CuとMoの含有量は、それぞれ0.3〜
2%、0.5〜3%とする。 【0049】P、S、N、O(酸素):これらの元素
は、いずれも鋼中に含まれる不可避不純物であり、その
含有量は低ければ低いほど好ましい。 【0050】《製造方法》 素材鋼片の加熱:圧延に供される素材鋼片の温度は、次
に述べる圧延が可能な温度であればよい。 【0051】仕上圧延温度:800℃を下回ると、未再
結晶温度域であるため、粒が著しく扁平化して、水素割
れ感受性が高くなり、極低CでTi添加の鋼でも水素割
れが発生するのを防止できない。望ましい仕上圧延温度
の下限は900℃である。このような高温仕上で、L方
向(圧延方向)とC方向(圧延方向と直交する方向)の
機械的性質に異方性のない、溶接管用の素材として好適
な厚鋼板を製造することができる。 【0052】800〜600℃の平均冷却速度:圧延終
了後、800〜600℃の温度域を10℃/s以上の平
均冷却速度で冷却する必要がある。これは、前述したよ
うに、800〜600℃の温度域を10℃/s未満の平
均冷却速度で冷却したのでは、水素割れの起点となって
割れの伝播を加速する粗大な炭化物が粒界に析出するの
を抑制できなくなるためである。望ましい平均冷却速度
の下限は15℃/sである。 【0053】なお、平均冷却速度は、速ければ速いほど
よい。このため、その上限は特に定める必要はない。ま
た、冷却の方法は、気水(ミスト)冷却またはシャワー
水冷とすればよい。 【0054】600℃未満の冷却速度:600℃未満の
温度域まで上記10℃/s以上の平均冷却速度で冷却す
ると、高温域での脱水素が不十分となり、たとえ粗大な
炭化物が粒界に析出するのを抑制できたとしても、水素
割れが発生するようになる。このため、600℃未満の
温度域の冷却速度は空冷以下の遅い速度と定めた。 【0055】なお、空冷よりも遅い冷却速度は、例えば
圧延後の鋼板が冷えきらない間に2枚重ねにする方法に
より実現可能であり、この方法が最も簡単である。 【0056】 【実施例】表1に示す化学組成を有する11種類の鋼を
溶製し、厚さ300mm、幅2300mmの素材鋼片
(スラブ)を準備し、その肉厚方向の中央部から厚さ1
50mm、幅120mm、長さ100mmの圧延用素材
を切り出した。 【0057】 【表1】 【0058】各圧延用素材は、表2に示す種々の条件で
熱間圧延するとともに冷却し、厚さ25.4mmの厚鋼
板を得た。 【0059】 【表2】 【0060】そして、製造後、室温に48時間放置した
後の各厚鋼板から、一辺が100mmの正方形の全厚
(ただし、表面スケールは研削で除去)の試験片を採取
し、超音波探傷によるCスキャン法にて水素割れの発生
の有無を調べた。評価は、割れが検出されなかったもの
を合格(○)、一部でも割れが検出されたものを不合格
(×)とした。 【0061】また、室温に48時間放置した後の各厚鋼
板のC方向(圧延方向と直交する方向)から、厚さ2m
m、幅10mm、長さ75mmのノッチ無しの応力腐食
試験片を採取した。得られた応力腐食試験片は、図1に
示す4点曲げ付与治具にセットし、素材厚鋼板の降伏応
力の100%の応力を付加した後、液温25℃の下記
またはの腐食環境下に336時間浸漬して耐SSC性
を調べた。評価は、SSCが発生しなかったものを合格
(○)、SSCが発生したものを不合格(×)とした。 【0062】腐食環境: 0.003atmH2S−30atmCO2−5%Na
Cl水溶液、 0.03atmH2S−30atmCO2−5%NaC
l水溶液。 【0063】なお、腐食環境下を上記のとの2通り
でおこなったのは、Cuまたは/およびMoを添加した
鋼と添加しなかった鋼では耐SSC性が異なるためであ
る。これらの調査結果を、表2に併せて示した。 【0064】表2に示す結果からわかるように、本発明
の方法にしたがって製造された厚鋼板(試番16、1
7、20および24〜28)は、いずれも水素割れは発
生しておらず、耐SSC性も良好であった。 【0065】これに対し、鋼の化学組成、仕上げ温度、
800〜600℃間の平均冷却速度、平均冷却速度10
℃/s以上での冷却の停止温度および600℃未満の冷
却速度のいずれかが本発明で規定する範囲から外れる方
法で製造された比較例の厚鋼板(試番12〜15、1
8、19および21〜23)は、いずれも水素割れが発
生し、平均冷却速度10℃/s以上での冷却の停止温度
が600℃未満のものを除いて耐SSC性も不芳であっ
た。 【0066】具体的に説明すると、試番15および19
は、800〜600℃間の平均冷却速度が10℃/s未
満であるために、水素割れが発生し、耐SSC性も不芳
であった。 【0067】 【0068】試番12と13は、C含有量が高すぎるた
めに、水素割れが発生し、耐SSC性も不芳であった。
試番22と23は、Tiが添加されていないために、水
素割れが発生し、耐SSC性も不芳であった。 【0069】 【0070】 【発明の効果】本発明の方法によれば、湿潤炭酸ガスを
含む原油や天然ガスまたはその他の流体を輸送するライ
ンパイプの素材として好適な、耐食性に優れる13Cr
系ステンレス厚鋼板を安価に製造することができる。ま
た、この厚鋼板を素材にしてラインパイプ用の溶接鋼管
を製造する場合には、溶接製管のままで必要な特性を有
しているので、焼入れ焼戻し処理を施さずにそのまま製
品として出荷できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】応力腐食割れ試験片の4点曲げ付与治具に対す
るセット状態を示す図である。
るセット状態を示す図である。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C21D 8/00 - 8/10
C21D 9/573
C22C 38/00 - 38/60
B21B 1/00 - 3/02
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】重量%で、C:0.03%以下、Si:1
%以下、Mn:2%以下、Cr:9〜13%、Ni:1
〜7%、Ti:0.5%以下、Al:0.1%以下、お
よびCu:0.3〜2%とMo:0.5〜3%のいずれ
か一方又は両方の成分を含み、残部はFeおよび不可避
不純物の鋼からなる鋼片の熱間圧延を800℃以上で終
了した後、800〜600℃の温度域を10℃/s以上
の平均冷却速度で冷却し、600℃未満の温度域を空冷
以下の冷却速度で冷却することを特徴とする13Cr系
ステンレス厚鋼板の製造方法。
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|---|---|---|---|
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Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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