JP3720764B2 - 培養人工骨または培養人工関節、および培養人工骨または培養人工関節の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い骨再生能力を有する培養人工骨または培養人工関節、および該培養人工骨または培養人工関節の製造方法に関する。本発明の培養人工骨を生体内に移植すれば、確実且つ短期間に骨を再生させることが可能であり、また本発明の培養人工関節を生体内に移植すれば、より早期に骨との接合が実現できる。
【0002】
【従来の技術】
近年、骨髄細胞を培養して、骨再生のための培養人工骨をつくる研究が行われている。一般に培養人工骨は、図1に示されるようにしてつくられる。すなわち、まず骨髄細胞を採取し、それをT−75flaskで10日間初期培養する。初期培養後、細胞をトリプシン処理により剥し、その細胞をリン酸カルシウム多孔体ブロックに接着させる。接着させた細胞とリン酸カルシウム多孔体ブロックをCO2インキュベータ内で1時間培養する。その後、活性化成長因子デキサメサゾン(Dexamethasone)を添加して2週間培養し、培養人工骨を得る。
【0003】
このような培養人工骨は、従来のセラミックス人工骨では骨欠損の修復適応が困難であった骨欠損の大きい症例や比較的血流の悪い部分への適応が考えられており、また培養人工関節では、より早期に骨との接合が可能と考えられている。しかし、このような骨髄培養技術では、セラミックス表面(界面)や人工関節接合部に骨を形成するには不充分であり、より確実に骨を形成できる培養方法および培養人工骨または培養人工関節が求められている。
【0004】
このような背景から、骨欠損の重症度が高い症例に対しては、より骨形成能の高い移植用材料、すなわち高い骨誘導活性を有する移植用材料が望まれている。これを背景として、リン酸カルシウム系のセラミックス材料を担体として骨髄細胞を培養した、細胞組込み型人工骨の研究や、より早期に骨結合する培養人工関節の研究が行われている。
【0005】
吉川らは、ヒト培養骨髄細胞を多孔質ハイドロキシアパタイト(HAP)に播種し、骨形成培地で3週間培養後、これをヌードマウス腹腔内に移植し、2ヶ月後に摘出、組織学的、生化学的定量的に評価し、有意な骨形成を確認し報告している(日整会誌73(3), S672)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明において、多孔体に骨髄細胞が組み込まれた培養人工骨または培養人工関節を作製するにあたり、以下のような問題点を見出した。
【0007】
まず、骨髄細胞が組み込まれた培養人工骨または培養人工関節において、骨髄細胞は、多孔体の中心部まで侵入させて増殖させることが必要であるが、使用する多孔体のサイズが大きくなると、骨髄細胞が中心部に入っていくのが困難となる。また、細胞が多孔体の中心部まで侵入しても、血管が中心部まで行き渡らないと、酸素分圧が低下して骨芽細胞として機能しない問題がある。
【0008】
また、骨髄細胞の培養において、デキサメサゾンなどを含む培地で培養すると、骨様組織が形成され、その骨基質には骨形成誘導タンパク(BMP)活性があることが報告されている(Bone formation in vitro by stromal cells obtained from marrow of young adult rats, Cell Tissue Res., 254, 317-330 (1988))。しかし、デキサメサゾンだけで骨を再生させるのは充分ではない。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、高い骨再生能力を有し、確実且つ短期間に骨再生が可能な培養人工骨または培養人工関節を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明では、担体となる多孔体の構造、および骨髄細胞の培養条件について検討を重ね、以下の発明を完成させるに至った。
【0011】
▲1▼本発明の培養人工骨または培養人工関節は、気孔の連通孔の少なくとも一つが直径20μm以上である多孔体に、培養骨組織が組み込まれていることを特徴とする。
【0012】
▲2▼本発明の培養人工骨または培養人工関節は、多孔体に、間葉系の幹細胞が女性ホルモン様物質の作用により骨組織化されて組み込まれていることを特徴とする。
【0013】
▲3▼本発明の培養人工骨または培養人工関節は、多孔体に、間葉系の幹細胞が重層培養により骨組織化されて組み込まれていることを特徴とする。
【0014】
上記▲1▼〜▲3▼の特徴の幾つかを併せもっている培養人工骨または培養人工関節が、本発明の範囲に包含されることはいうまでもなく、このような培養人工骨または培養人工関節において、本発明の効果はより顕著なものとなる。
【0015】
▲4▼本発明の培養人工骨または培養人工関節の製造方法は、間葉系の幹細胞を、多孔体上で、女性ホルモン様物質の存在下で培養する工程を含むことを特徴とする。
【0016】
▲5▼本発明の培養人工骨または培養人工関節の製造方法は、間葉系の幹細胞を、多孔体上で培養する第一の工程と、
前記培養後の間葉系の幹細胞が付着している多孔体上に、間葉系の幹細胞を重層させて培養する第二の工程とを含み、
該第二の工程が少なくとも1回以上繰り返されることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の培養人工骨および培養人工関節を詳細に説明する。
【0018】
なお、本明細書全体にわたって、細胞を組み込んでいない人工骨(例えばセラミックス人工骨等)と区別する意味において、細胞を多孔体に組み込んで培養した本発明のような人工骨を「培養人工骨」と称する。同様に、細胞を組み込んでいない人工関節(例えば金属で構成される人工関節等)と区別する意味において、細胞を多孔体に組み込んで培養した本発明のような人工関節を「培養人工関節」と称する。
【0019】
▲1▼本発明の培養人工骨および培養人工関節は、気孔の連通孔の少なくとも一つが直径20μm以上である多孔体に、培養骨組織が組み込まれていることを特徴とする。
【0020】
まず、培養骨組織を形成するための材料となる細胞は、間葉系の幹細胞であって骨組織に分化可能な細胞であれば特に限定されず、例えば、間葉系の幹細胞であって骨組織に分化可能な細胞を含む骨髄細胞や、末梢血の幹細胞を使用することができる。これら骨組織に分化可能な細胞は、生体から採取することにより入手することができる。例えば、骨髄細胞は、変形性腰椎症患者より手術中全身麻酔下で腸骨より骨髄液を採取することにより入手することができる。
【0021】
以下、間葉系の幹細胞として骨髄細胞を使用した場合を例に説明するが、本発明が、骨髄細胞を使用することに限定されないことはいうまでもない。
【0022】
本発明において多孔体とは、生体適合性を有する多孔性のセラミックスや、コラーゲン、ポリ乳酸、また多孔性のメタル等であり、多数の気孔を有するものであれば、これらに特に限定されない。多孔体は、骨髄細胞が増殖して培養骨組織を形成するための足場として機能し得る。
【0023】
多孔体として、一般に、アパタイトやβ−リン酸三カルシウム(β−TCP)などのリン酸カルシウム系セラミックス、コラーゲン、ポリ乳酸等を使用することができる。また、リン酸カルシウム系セラミックスとコラーゲンを組合せたり、リン酸カルシウム系セラミックスとポリ乳酸を組合せたりしてもよい。β−リン酸三カルシウム、コラーゲン、ポリ乳酸は生分解性で、生体に吸収される特徴を有し、アパタイトはその強度が強いという特徴を有する。当業者であれば、培養人工骨を移植する部位等に応じて、適切な種類の多孔体を適宜選んで使用することができる。
【0024】
本発明において多孔体は、骨髄細胞が通過可能なサイズの多数の気孔を有し、多くの気孔は、互いに連通している。2つの気孔が連通している様子を図2に示す。気孔と気孔が連通した際の接続部分を連通孔という(図2参照)。なお、図2には2つの気孔のみを示すが、実際の多孔体は、無数の気孔を有し、この無数の気孔が連続し連なっている。ここでいう「気孔」が、セラミックスの焼成により必然的に生じる0.1〜1μm程度の気孔を指すものではないことは、文脈上、明らかである。
【0025】
連通孔は、任意の形状を有していてよいが、気孔同士を連通させた際、円形になることが多い。連通孔の直径は、少なくとも骨髄細胞が通過可能なサイズであることが好ましく、20μm以上であることが好ましい。より好ましくは、連通孔の直径は、20μm以上、500μm以下である。なお、連通孔が正円でないとき、直径は、最大径を意味する。
【0026】
本発明において使用する多孔体は、気孔の連通孔の少なくとも一つが直径20μm以上であればよいが、好ましくは、多孔体に存在する全ての連通孔のうち40%以上の連通孔が直径20μm以上であり、より好ましくは80%以上の連通孔が直径20μm以上である。また、本発明において多孔体は、任意の気孔率を有するものを使用することができ、好ましくは約30〜90%の間の任意の気孔率を有するものを使用することができる。
【0027】
気孔の連通孔の少なくとも一つが直径20μm以上である多孔体は、公知の手法により作製することができる。例えば、リン酸カルシウム系セラミックスは、リン酸カルシウム微粉末に、適切な解こう剤(例えばポリアクリル酸アンモニウム塩)と起泡剤(例えばポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)を添加して発泡スラリーを調製し、これを乾燥、焼成することにより作製することができる(日本国特許第2597355号参照)。直径20μm以上の連通孔を有する種々の多孔体の作製法については、後述の実施例1の記載を参照されたい。
【0028】
多孔体の大きさ、形等は、生体内の移植部位に合わせて、所望の大きさ、形に作製することができる。多孔体の気孔に骨髄細胞が入り込んで増殖し、培養骨組織を形成するためには、例えば、5mm×5mm×5mmのブロック状のものを使用することができる。これらブロック状の多孔体は、これらを複数個組合せて用いて移植部位に適合させることができる。
【0029】
上述のとおり作成された、連通孔の少なくとも一つが直径20μm以上である多孔体に、骨髄細胞を播種し培養することにより、本発明の培養人工骨および培養人工関節は作製され得る。以下に培養人工骨を製造する例を示す。
【0030】
培養は、図1に示すとおり行うことができる。まず、骨髄細胞を採取し、培養フラスコに移し、MEM系培地に10〜15%のFBS(Fetal Bovine Serum)を加えたものを用いて、約10日間、5%CO2の雰囲気下、37℃で培養する(初期培養)。次にトリプシン処理により骨髄細胞を培養フラスコから剥した後、ブロック状の多孔質セラミックスに播種する。細胞を播種されたブロック状の多孔質セラミックスは、MEM系培地に10〜15%のFBSを加えたものを培地として用いて、1〜3時間、5%CO2の雰囲気下、37℃で培養する。播種する細胞濃度は、5mm×5mm×5mmのブロックに対して、1mLの培地あたり100万個以上必要である。その後、MEM系培地に10〜15%のFBSを加えたものをベースに、supplementとして10-8Mのデキサメサゾン、10mMのβ−glycerophosphate、50μg/mLのアスコルビン酸を加えたものを培地として用いて、2日おきに培地を交換しながら、約2週間、5%CO2の雰囲気下、37℃で培養する。得られたブロックは、生体内の骨欠損部に移植するために使用することができる。
【0031】
上述したような連通孔の少なくとも一つが直径20μm以上である多孔体(上記製造例においては多孔質セラミックス)を、骨髄細胞を培養するための足場として用いた場合、連通孔を有していない多孔体や、全ての連通孔の直径が20μm未満である多孔体を用いた場合と比べて、以下の利点を有する。
【0032】
すなわち、連通孔の少なくとも一つが直径20μm以上である多孔体を用いることにより、骨髄細胞は連通孔を通って増殖し、多孔体の中心部まで侵入することが可能となる。また、気孔の連通孔の直径が20μm以上であることにより、骨髄細胞を培養する培養液も浸透しやすく、骨髄細胞の増殖に好都合である。
【0033】
これにより、骨髄細胞は、多孔体の中心部に行き渡るまで網目状に増殖することができ、多孔体に培養骨組織が組み込まれた状態の培養人工骨を作製することが可能となる。この培養人工骨は、従来の人工骨と比べて、骨再生能力が高いため、生体内に移植された際には、短期間で確実に骨を形成することができる。
【0034】
▲2▼また、本発明の培養人工骨および培養人工関節は、多孔体に、骨髄細胞が女性ホルモン様物質の作用により骨組織化されて組み込まれていることを特徴とする。以下、培養人工骨を製造する場合を例に説明する。
【0035】
多孔質セラミックスに骨髄細胞を播種して培養し、培養人工骨を作製する際に女性ホルモン様物質を作用させると、骨髄細胞の増殖や分化が誘導され得ることを本発明において新たに見出した。
【0036】
女性ホルモン様物質としては、女性ホルモン様活性を示す物質であれば特に限定されず、例えば、イソフラボン、エストロゲン、エストリオール、エストラジオール等を使用することができる。
【0037】
なお、女性ホルモン様物質は、骨髄細胞の増殖や分化を誘導することが可能な任意の時期に添加すればよく、例えば、多孔体に骨髄細胞を接着させて培養する際に添加されていてもよいし、多孔体に骨髄細胞を接着させる前の初期培養時に予め添加されていてもよい。多孔体上で骨髄細胞を培養する際に女性ホルモン様物質が添加されていることが好ましい。
【0038】
女性ホルモン様物質は、培養液中、骨髄細胞の分化、増殖を活性化し得る濃度で添加され、好ましくは10-6〜10-8 Mの濃度で添加される。
【0039】
ここで使用する多孔体も、上述のとおり、生体適合性を有する多孔体であって、骨髄細胞が増殖するための足場として機能し得るものであれば特に限定されないが、上述の、気孔の連通孔の少なくとも一つが直径20μm以上である多孔体を使用することが好ましい。
【0040】
このように、女性ホルモン様物質の作用により、骨髄細胞の増殖、分化が誘導されると、骨髄細胞は、より活性化した骨組織化された状態で多孔体に組み込まれる。これにより、多孔体に培養骨組織が組み込まれた状態の培養人工骨を作製することが可能となる。この培養人工骨は、従来の人工骨と比べて、骨再生能力が高いため、生体内に移植された際には、短期間で確実に骨を形成することができる。
【0041】
▲3▼更に、本発明の培養人工骨および培養人工関節は、多孔体に、骨髄細胞が重層培養により骨組織化されて組み込まれていることを特徴とする。以下、培養人工骨を製造する場合を例に説明する。
【0042】
多孔質セラミックスに骨髄細胞を播種して培養し、培養人工骨を作製する際に、重層培養を行うことにより、骨髄細胞が骨組織化され易いことを本発明において新たに見出した。
【0043】
すなわち重層培養とは、多孔体に骨髄細胞を播種して所定の期間(例えば1週間)培養した後、更に骨髄細胞を播種して所定の期間(例えば1週間)培養することにより、細胞組織を重層化して培養することをいう。本発明において、細胞を重層する回数は、2回以上であればよく、好ましくは2〜3回である。重層化する細胞は、初期培養細胞や継代培養細胞であってもよい。
【0044】
ここで使用する多孔体も、上述のとおり、生体適合性を有する多孔体であって、骨髄細胞が増殖するための足場として機能し得るものであれば特に限定されないが、上述の、気孔の連通孔の少なくとも一つが直径20μm以上である多孔体を使用することが好ましい。また、重層培養を、女性ホルモン様物質を添加して行うことも好ましい。
【0045】
このように重層培養を行うことにより、骨髄細胞の骨組織化が促進され、多孔体に活性化された培養骨組織が組み込まれた状態の培養人工骨を作製することが可能となる。この培養人工骨は、従来の人工骨と比べて、骨再生能力が高いため、生体内に移植された際には、短期間で確実に骨を形成することができる。
【0046】
また、以上では培養人工骨を製造する例を示したが、同様の製造方法を人工関節の骨接合部に応用することで、より早期に人工関節を骨と結合させることができ、早期のリハビリ、社会復帰が可能となる。
【0047】
▲4▼ 更に本発明は、間葉系の幹細胞を、多孔体上で、女性ホルモン様物質の存在下で培養する工程を含むことを特徴とする、培養人工骨または培養人工関節の製造方法を提供する。
【0048】
▲5▼ また本発明は、培養人工骨または培養人工関節の製造方法であって、間葉系の幹細胞を、多孔体上で培養する第一の工程と、前記培養後の間葉系の幹細胞が付着している多孔体上に、間葉系の幹細胞を重層させて培養する第二の工程とを含み、該第二の工程が少なくとも1回以上繰り返されることを特徴とする方法を提供する。
【0049】
本発明の培養人工骨または培養人工関節の製造方法については、上述の培養人工骨の説明を適宜参照されたい。本発明の培養人工骨または培養人工関節の製造方法を用いれば、骨再生能力の高い培養人工骨や骨結合能力の高い培養人工関節を、短時間に製造することが可能である。
【0050】
【実施例】
(実施例1)
1.アパタイト
炭酸カルシウム粉末とリン酸水素カルシウム2水和物をモル比で2:3の割合で秤量し、純水とともにボールミルポットに入れ、約1日ボールミルで混合粉砕した。得られたスラリーを約80℃で乾燥し、その後、750℃で焼成した。得られた粉末は、焼結性に優れた高純度なアパタイトセラミックスであった。
【0051】
この粉末に、純水とアクリル酸アンモニウム系の解こう材とポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系の界面活性剤を添加し、混合攪拌して発泡スラリーを調製した。この発泡スラリーを乾燥させ、その後1150℃で焼成して、アパタイトの多孔質セラミックスを得た。この多孔質セラミックスは、気孔率が70〜85%の範囲にあり、気孔径は100〜500μmおよび1〜0.1μmの2つの領域に分布があるものであった。
【0052】
2.β−TCP(β-tricalcium phosphate)
炭酸カルシウム粉末とリン酸水素カルシウム2水和物をモル比で1:2の割合で秤量し、純水とともにボールミルポットに入れ、約1日ボールミルで混合粉砕した。得られたスラリーを約80℃で乾燥し、その後、750℃で焼成した。得られた粉末は、焼結性に優れた高純度なβ−TCPセラミックスであった。
【0053】
この粉末に、純水とアクリル酸アンモニウム系の解こう材とポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系の界面活性剤を添加し、混合攪拌して発泡スラリーを調製した。この発泡スラリーを乾燥させ、その後1050℃で焼成して、β−TCPの多孔体セラミックスを得た。この多孔質セラミックスは、気孔率が70〜85%の範囲にあり、気孔径は100〜500μmおよび1〜0.1μmの2つの領域に分布があるものであった。
【0054】
3.ポリ乳酸
ポリ乳酸は、塩化ベンゼンで可溶化し、約40℃に加熱し、ドラフターに24時間放置し、塩化ベンゼンを揮発させたものを用いた。
【0055】
4.コラーゲン
コラーゲンは、高研製コラーゲンスポンジを用いた。
【0056】
5.リン酸カルシウムとコラーゲンの組合せ
リン酸カルシウムとコラーゲンの組合せは、上記リン酸カルシウム750℃焼成品とコラーゲンに水を加え、ジルコニア製ポットミルで湿式混合させたものをプレス成形し、機械的に孔あけしたものを用いた。
【0057】
6.リン酸カルシウムとポリ乳酸の組合せ
リン酸カルシウムとポリ乳酸の組合せは、気孔率が90%の多孔体に、塩化ベンゼンで可溶化したポリ乳酸を部分的にしみ込ませたものを用いた。
【0058】
7.メタル
メタルは、ロータス型(蓮根型)タイプにした一方向に孔が連通しているもの、あるいは、人工関節に用いられるたわし状の網目の連通した構造をしているポーラスメタルを用いた。これらには、チタン合金、SUS304、310等が用いられる。
【0059】
(実施例2)
実施例1で作製した、β−TCPの多孔質セラミックス等を足場材料として、骨髄由来骨形成細胞を播種し、インビトロで培養し、培養能力に関し検討した。
【0060】
手術中全身麻酔下で、腸骨より骨髄液3mLを採取した。骨髄液にヘパリン1mLを加え凝固しないようにし、さらに5mLの0.25%トリプシンを加え攪拌し、室温で3分間静置した。培養液(牛胎児血清を含む)40mLを加えて、遠心分離(900 rpm、5分間)し、上澄みを除去し、骨髄細胞をトリプシンで洗浄した。沈殿した骨髄細胞に標準培養液(MEMに抗生剤、牛胎児血清を含む)20mLを加えて、2個のT75フラスコで初期培養した。2週間後トリプシン処理し、培養浮遊液を作製した。この培養浮遊液を2分割し、一方は重層化培養による効果を調べるために使用し、一方は女性ホルモン活性を示すGenisteinの効果を検討するために使用した。
【0061】
a.重層化培養による活性化培養骨の作製
初期培養した細胞浮遊液を、35mmの培養皿に播種し、骨形成培地(上記の標準培養液に、10nM dexamethasone, 10mM beta-glycerophosphate, 82μg/mL ascorbic acid phosphateを含む)で培養した。1週間後、該培養により得られた培養組織の上に、継代培養しておいた骨髄細胞の細胞浮遊液を再播種し、細胞を重層化して培養した。さらに1週間後、重層化培養により得られた培養組織の上に、継代培養しておいた骨髄細胞の細胞浮遊液を再々播種し、細胞を重層化して培養した。さらに1週間後(合計3週間後)、培養により得られた培養組織のアルカリフォスファターゼ活性を測定した。
【0062】
コントロール群では、単層で3週間培養した。骨形成細胞活性を示すアルカリフォスファターゼ活性の測定結果は、コントロール群では、18.5(PN micromol)であったのに対し、重層培養群では、29.0(PN micromol)であった。培養骨組織を重層化することにより、骨形成細胞が58%高い活性を有する培養骨を作製することができた。
【0063】
b.女性ホルモン活性を示すGenistein添加培養による活性化培養骨の作製
Genisteinは、大豆に含まれるイソフラボンの一種であるが、女性ホルモン様活性を示す。通常生体の女性ホルモンは、投与されると乳癌の発生率を上昇させたり、女性性器に対する作用により不正出血をおこしたりなどの副作用があるが、このGenisteinには、発癌性や女性性器に対する副作用がないことが報告されており、極めて副作用のすくない女性ホルモン剤として注目されている。
【0064】
初期培養したヒト細胞浮遊液を6well plateに播種し、上記の骨形成培地に、Genisteinを最終濃度10-5、10-6、10-7、10-8Mとなるように添加し、培養した。2週後に、培養組織の骨形成細胞活性を示すアルカリフォスファターゼ活性と、細胞の増殖能を示すDNA量を測定した。
【0065】
アルカリフォスファターゼ活性は、Genisteinの最終濃度が0(コントロール)、10-5、10-6、10-7、10-8Mである各添加群において、それぞれ1.0±0.5、0.9±0.2、0.71±0.5、2.4±0.2、2.3±0.5(PN micromol)であった。DNA測定値は、それぞれ54±7、34±3、34±8、64±5、65±4(mg)であった。Genisteinの最終濃度が10-7、10-8Mである添加群において、コントロールより2.3ないし2.4倍の骨形成細胞活性を示し、DNA量も19ないし20%増加した。Genisteinを最終濃度10-7、10-8Mで添加して培養することにより、細胞増殖が促進され、数倍高い骨再生活性を有する培養骨を作製できることが示された。
【0066】
以上、a,bの実施例より、培養液に女性ホルモン活性を示す骨形成促進因子を加えて培養することと、培養骨組織を重層化する培養方法を併用することにより、さらに高い骨再生活性を有する培養骨の作製が可能になる。この活性化した培養骨を人工骨や人工関節材料上に培養することにより、より高い骨再生能力をもつ培養人工骨、培養人工関節材料の作製が可能である。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の培養人工骨または培養人工関節は、骨髄細胞が骨組織にまで分化した状態で多孔体に組み込まれており、従来の培養人工骨または培養人工関節より骨組織が高度に組織化されている点で優れている。実際、本発明において、本発明の培養人工骨または培養人工関節が、従来の培養人工骨または培養人工関節より高い骨形成活性を有していることが示されている。従って、本発明の培養人工骨または培養人工関節を用いれば、生体に移植した際に骨を形成する能力が高く、短期間に確実に骨形成することが可能である。
【0068】
また、本発明の培養人工骨または培養人工関節の製造方法を用いれば、骨再生能力の高い培養人工骨または培養人工関節を、短時間に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 培養人工骨の一般的な作成方法を示す図。
【図2】 気孔と気孔が連通する様子を示す、多孔体の部分断面図。
Claims (5)
- 多孔体に、間葉系の幹細胞がゲニステイン( Genistein )の作用により骨組織化されて組み込まれた培養人工骨または培養人工関節であって、前記ゲニステインの濃度が10-7〜10-8Mであることを特徴とする培養人工骨または培養人工関節。
- 請求項1に記載の培養人工骨または培養人工関節であって、前記多孔体が、気孔の連通孔の少なくとも一つが直径20μm以上であることを特徴とする培養人工骨または培養人工関節。
- 請求項1または2に記載の培養人工骨または培養人工関節であって、前記多孔体に、前記間葉系の幹細胞が重層培養により骨組織化されて組み込まれていることを特徴とする培養人工骨または培養人工関節。
- 間葉系の幹細胞を、多孔体上で、10-7〜10-8Mのゲニステインの存在下で培養する工程を含むことを特徴とする、培養人工骨または培養人工関節の製造方法。
- 間葉系の幹細胞を、多孔体上で、10-7〜10-8Mのゲニステインの存在下で培養する第一の工程と、
前記培養後の間葉系の幹細胞が付着している多孔体上に、間葉系の幹細胞を重層させて、10-7〜10-8Mのゲニステインの存在下で培養する第二の工程とを含み、
該第二の工程が少なくとも1回以上繰り返されることを特徴とする、培養人工骨または培養人工関節の製造方法。
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