JP3833404B2 - エミッタ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エミッタ及びその製造方法に関し、特に、マイクロ真空管、マイクロウェーブ素子、超高速演算素子、放射線環境(宇宙、原子炉等)や高温環境での表示素子等に応用される微小冷陰極の一つである電界放出陰極に利用されるエミッタ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電界放出陰極を用いた素子は、半導体素子と比較し、電子の移動度が大きく、 高速、高温動作、放射損傷に強い。したがって今日、高輝度、低消費電力が要求される表示素子として利用されつつある。
【0003】
図12に、従来から用いられている電界放出陰極の一部分の構造の斜視図を示す。
電界放出陰極は、先端が尖ったエミッタティップ101と、エミッタティップに負電圧を与えるエミッタ電極102と、電子引出し用のゲート電極103とから構成される。図12に示すように、エミッタティップ101とゲート電極102との間に電圧を印加すると、エミッタティップの先端に大きな電界が加わり、電子放出が起こる。
【0004】
図13に、従来の電界放出陰極を用いた表示装置の概略構成図を示す。陰極板109では、ガラス基板105上に、ストライプ状のエミッタ電極102が形成され、絶縁層104を介して、エミッタ電極102と直交する方向に、ゲート電極103が形成される。エミッタ電極102とゲート電極103の交差部分である画素106に、複数の電界放出陰極からなる微小陰極アレイ(FEA)が形成される。
上方の陽極基板107の表面に赤(R)、緑(G)、青(B)の3種の蛍光体108が形成され、電界放出陰極から出た放出電子が蛍光体108に当たることによって発光を生じる。
【0005】
このような電界放出陰極は、一般にスピントらが開発した製造方法が用いられる。図14に、スピントらが開発した電界放出陰極(陰極板)の製造工程図を示す。
まず、図14の1)において、ガラスなどの絶縁性基板116上に、エミッタ給電膜117を成膜し、2)において、パターニングしてエミッタ電極102を形成する。
この後、3)において、プラズマCVD等により、絶縁膜118とゲート給電膜119をこの順に成膜する。
4)において、円径のゲート開孔部レジストパターンを用いて、ゲート給電膜119と絶縁膜118をそれぞれエッチングして、口径が約1μmの円筒形のゲート開口部120を形成する。
【0006】
次に、5)において、アルミニウム等の犠牲層材料を、ゲート開口部120の中のエミッタ給電膜117には付着しないように、絶縁性基板116に対して斜め方向から蒸着し、犠牲層膜121を形成する。
さらに、6)において、モリブデンなどのエミッタ用金属材料122を絶縁性基板116に垂直に蒸着する。このとき、時間が経つにつれて、エミッタ用金属材料の堆積に伴い、ゲート開口部120は徐々に塞がり、完全に塞がった時には図の6)のようにゲート開口部120内には円錐状のエミッタティップ101が形成されている。
【0007】
次に、7)において、犠牲層膜121を燐酸水溶液などで選択的に溶解してエミッタティップ101以外のエミッタ用金属材料122を除去する。
最後に、図の8)のように、ゲート給電膜119を、所望の形状にパターニングすれば微小な電界放出陰極が完成する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このようにして製造される電界放出陰極は、ディスプレイへ応用する場合に、一画素あたりの電流強度が時間的に安定であることが必要とされる。すなわち、先端から電子が放出されるエミッタティップは、ディスプレイパネル内に存在するガス等によって品質劣化の影響を受けない化学的に安定な材料で形成する必要がある。
【0009】
化学的に安定な材料としては、導電性を持つ粉末状の材料や導電性を持つ酸化物等が考えられるが、現在、このような材料を用いたコーン形状のエミッタティップはまだ提案されていない。
【0010】
また、エミッタティップとして導電性を持つ酸化物を用いた場合、スピント法による酸化物の蒸着では、蒸着中に酸化物の分解が起こり、その結果酸化物の組成が変化する可能性があり、安定した電子放出ができない。
【0011】
そこで、この発明は以上のような事情を考慮してなされたものであり、エミッタティップの先端部にカーボンナノチューブ等の導電性を持つ粉末状の材料を形成して、より低電圧で安定した電子放出を可能とする構造を有するエミッタ及びエミッタの製造方法を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、エミッタティップを形成するための所定パターンの凹部表面を有する母型を使用し、少なくともその凹部表面の先端部に導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程と、さらに凹部を埋設するようにエミッタ用材料を積層してエミッタを形成する工程と、形成されたエミッタを母型から剥離させる工程とを備え、前記導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程が、前記母型を所定の速度で回転させながら前記導電性を持つ粉末状の材料を含む溶液を前記母型の凹部表面に塗布し、その後乾燥させることからなり、前記導電性を持つ粉末状の材料が、カーボンナノチューブ,ハードカーボンまたは酸化物の粉末のいずれかであり、前記母型が、多数の微小な気泡からなる多孔質状の凹部表面を備え、前記母型が、エミッタティップと同形状の凸部を持つエミッタ元型の表面に樹脂形成用組成物を充填し、硬化させた後、母型となる硬化させた樹脂形成用組成物とエミッタ元型とを剥離させることによって形成され、前記エミッタ元型が、エミッタティップと同形状の凹部を持つシリコン凹型基板に所定強度のイオンビームを照射し、イオンビームの照射によって凹部に形成された微小な凹凸を覆うように樹脂を充填しかつ硬化させ、エミッタ元型となる硬化された樹脂とシリコン凹型基板とを分離することによって形成されることを特徴とするエミッタの製造方法を提供するものである。
ここで、エミッタとは、電界放出陰極のうち、負電圧が印加されるエミッタティップ及びエミッタ電極からなる部分をいう。
【0013】
また、この発明は、エミッタティップを形成するための所定パターンの凹部表面を有する母型を使用し、少なくともその凹部表面の先端部に導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程と、さらに凹部を埋設するようにエミッタ用材料を積層してエミッタを形成する工程と、形成されたエミッタを母型から剥離させる工程とを備え、前記導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程が、前記母型を所定の速度で回転させながら前記導電性を持つ粉末状の材料を含む溶液を前記母型の凹部表面に塗布し、その後乾燥させることからなり、前記導電性を持つ粉末状の材料が、カーボンナノチューブ,ハードカーボンまたは酸化物の粉末のいずれかであり、前記母型が、多数の微小な気泡からなる多孔質状の凹部表面を備え、前記母型が、エミッタティップと同形状の凸部表面を持ちかつその凸部表面を電圧印加を行いながら化成処理をすることでポーラス化されたエミッタ元型の表面に樹脂形成用組成物を充填し、硬化させた後、母型となる硬化させた樹脂形成用組成物とエミッタ元型とを剥離させることによって形成されることを特徴とするエミッタの製造方法を提供するものである。
さらに、エミッタティップを形成するための所定パターンの凹部表面を有する母型を使用し、少なくともその凹部表面の先端部に導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程と、さらに凹部を埋設するようにエミッタ用材料を積層してエミッタを形成する工程と、形成されたエミッタを母型から剥離させる工程とを備え、前記導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程が、前記母型を所定の速度で回転させながら前記導電性を持つ粉末状の材料を含む溶液を前記母型の凹部表面に塗布し、その後乾燥させることからなり、前記導電性を持つ粉末状の材料が、カーボンナノチューブ,ハードカーボンまたは酸化物の粉末のいずれかであり、前記母型が、シリコーンゴム形成用組成物を材料とする樹脂または金属で形成されており、前記母型が電鋳によって作成された金属型であって、かつ導電性を持つ粉末状の材料がカーボンナノチューブである場合、前記導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程が、CVD法によって母型の凹部表面上にカーボンナノチューブを蒸着させる工程からなることを特徴とするエミッタの製造方法を提供するものである。
また、この発明は、電子を放出するための円錐形状の凸部を複数個備え、少なくとも前記凸部の先端の表面部分に、導電性を持つ粉末状の材料が多数付着しているエミッタであって、上記いずれかの製造方法により製造されたエミッタを提供するものである。
ここで、前記導電性を持つ粉末状の材料が、カーボンナノチューブ,ハードカーボンまたは酸化物の粉末のいずれかであることを特徴とする。
また、前記凸部が、金属またはエポキシ系樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
前記導電性を持つ粉末状の材料としては、カーボンナノチューブやハードカーボンのような炭素化合物の粉末,酸化ジルコニウム等の酸化物の粉末のいずれかを用いることができるが、特にカーボンナノチューブを用いることが好ましい。前記エミッタ用材料は、ニッケルなどの金属またはエポキシ系樹脂を用いることができる。前記母型は、シリコーンゴム形成用組成物を材料とする樹脂またはニッケル等の金属で形成される。
【0015】
さらに、前記母型は、カーボンナノチューブを凹部表面から突き出した形状で形成するために、多数の微小な気泡からなる多孔質状の凹部表面を備えていることが好ましい。
ここで、前記カーボンナノチューブを前記多孔質状の凹部表面を備えた母型に付着した後、エミッタ用材料を積層する前に、より多くのカーボンナノチューブが微小な気泡の中に突き出した形で入るように、前記母型の凹部表面とは異なる側から真空吸引することが好ましい。
【0016】
また、前記母型は、エミッタティップと同形状の凸部を持つエミッタ元型の表面に樹脂形成用組成物を充填し、硬化させた後、母型となる硬化させた樹脂形成用組成物とエミッタ元型とを剥離させることによって形成され、前記エミッタ元型は、エミッタティップと同形状の凹部を持つシリコン凹型基板に所定強度のイオンビームを照射し、イオンビームの照射によって凹部に形成された微小な凹凸を覆うように樹脂を充填しかつ硬化させ、エミッタ元型となる硬化された樹脂とシリコン凹型基板とを分離することによって形成されるようにしてもよい。
【0017】
また、前記母型は、エミッタティップと同形状の凸部表面を持ちかつその凸部表面がポーラス化されたエミッタ元型の表面に樹脂形成用組成物を充填し、硬化させた後、母型となる硬化させた樹脂形成用組成物とエミッタ元型とを剥離させることによって形成されるようにしてもよい。
また、前記母型が電鋳によって作成された金属型である場合、前記カーボンナノチューブを付着する工程は、CVD法によって母型の凹部表面上にカーボンナノチューブを蒸着させる工程を用いてもよい。
【0018】
以下、図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳述する。なお、これによってこの発明が限定されるものではない。
この発明の製造方法で作成される電界放出陰極は、図12に示したものと同様に、エミッタティップ、エミッタ電極及びゲート電極とから構成される。
また、特に、エミッタティップ及びエミッタ電極からなる部分を「エミッタ」と呼ぶことにする。
【0019】
図1に、この発明の電界放出陰極のエミッタの製造工程の概略フローチャートを示す。
まず、表面にエミッタティップとほぼ同形状の凸部を持つ「エミッタ元型」を形成する(ステップS1)。
エミッタ元型の形成方法は、従来から種々のものが提案されているが、たとえば、IVMC’95,Tech,Digest,186頁(1995)に示された方法を用いることができる。エミッタ元型の材料としては、たとえばシリコンを用いることができる。
【0020】
次に、エミッタ元型のエミッタティップの表面全体をおおうように、樹脂を充填し、硬化させる(ステップS2)。これによってエミッタティップを製造するための樹脂製の母型(凹型スタンパ)が形成される。樹脂としては、剥離のしやすさの点から、シリコーンゴム形成用組成物を用いることが好ましい。
この後、硬化させた樹脂製の母型をエミッタ元型から剥離する(ステップS3)。
【0021】
カーボンナノチューブ,ハードカーボン等の導電性を持つ粉末状の材料を樹脂製の母型の凹部に付着後、樹脂製の母型の凹部を完全に埋設し、かつ樹脂製の母型の表面に薄膜状のエミッタを形成するようにエミッタ用金属材料(たとえばニッケル)を形成する(ステップS4)。
さらに、薄膜状のエミッタの上に、エミッタティップへの給電ライン(エミッタ電極)となるべき陰極配線金属膜(たとえば銅、ニッケル)を形成する(ステップS5)。
以上により、電界放出陰極のエミッタが樹脂製の母型上に形成される。
この後、電界放出陰極のエミッタを樹脂製の母型から剥離する(ステップS6)。
【0022】
以上がこの発明の電界放出陰極のエミッタの製造工程の概要フローであるが、特に製造工程のうちステップS4において、薄膜状のエミッタを形成する前に、導電性を持つ粉末状の材料を樹脂製の母型の凹部に付着させることが、この発明の特徴である。
以下に、この導電性を持つ粉末状の材料として、カーボンナノチューブを用いた、電界放出陰極の製造工程の実施例について説明する。
【0023】
図2に、この発明の一実施例における電界放出陰極の製造工程を示す。
図2(a)において、シリコン基板からなるエミッタ元型1を形成する。
フラットなシリコン基板の表面の所定の位置をマスクして、CF4ガスを用いてエッチングすることにより、コーン形状の表面を形成する。
さらに、この表面を熱酸化させることにより、非常に強固で尖った先端を持つエミッタティップと同形状の表面を形成することができる。
【0024】
図2(b)において、樹脂製の母型2となるべき樹脂を、エミッタ元型の表面全体に充填し、加熱することにより硬化させる。ここで樹脂としては、シリコーンゴム形成用組成物を用いればよく、たとえば信越シリコーンゴム製のKE−12を用いることができる。
【0025】
図2(c)において、硬化したシリコーンゴム製の母型2をエッチング等を利用してエミッタ元型1から離型する。これによって、シリコーンゴム製の母型2の表面には、エミッタティップと反対の凹部の表面形状が形成される。
【0026】
次に、母型2の凹型形状の表面に、カーボンナノチューブの付着を行う。この付着のために、まず、図5に示すスピンコート法により、カーボンナノチューブを添加したイソプロピルアルコール(IPA)の混濁液15を、一定速度で回転させた母型2の凹型形状の表面に滴下して塗布する。
【0027】
この後、この母型全体を120℃で乾燥させ、IPAのみを蒸発させる。この蒸発により、カーボンナノチューブのみが母型2の凹型形状の表面に残る。
さらに、蒸着あるいはめっき法を用いて、エミッタ用金属材料3を、カーボンナノチューブが形成された凹型形状表面に薄膜状に形成する(図2(d))。
エミッタ用金属材料3としては、ニッケルを用いる。
【0028】
図2(e)において、上記薄膜3の上に、エミッタティップへの給電ラインとなる陰極配線材料の膜4を形成する。陰極配線材料としては、エミッタ用金属材料3と同じ材料を用いればよいが、銅を用いてもよい。この陰極配線膜4は厚膜として形成する必要があるために、電解めっき法を用いることが好ましい。
以上によって、薄膜3と陰極配線膜4とからなるエミッタが形成される。
【0029】
図2(f)において、剥離によってシリコーンゴム製の母型2とエミッタとを分離する。この剥離は、前記したように、母型2がシリコーンゴムでできているために、特殊な作業、材料は必要とせず、手作業でも容易にできる。
剥離されたエミッタの凸型表面であるエミッタティップの先端部分9には、図4に示すように、カーボンナノチューブ8が多数付着している。陰極配線膜4に負電圧をかけると、この多数のカーボンナノチューブ8から電子が放出される。
【0030】
さらに、以下に示す工程を実施することにより、ゲート電極を含む電界放出陰極が完成する。
図2(g)において、エミッタティップが形成された表面全体を覆うように、図のように絶縁膜5を形成する。絶縁膜5としては、SiO2を用いればよい。絶縁膜5の形成は、プラズマCVD法による他、スパッタ法やSOG等を用いてもよい。
【0031】
図2(h)において、絶縁膜5の上部に、薄いゲート電極膜6を形成する。
ゲート電極膜6の材料は、モノブデンシリサイドを用いることができる。
ゲート電極膜6の形成は、スパッタ法、真空蒸着法等を用いればよい。
【0032】
図2(i)において、エミッタティップの上方部にゲート口7を形成するために、エミッタティップ上方のゲート電極膜6の一部分を除去する。
ゲート電極膜6の除去は、マスクパターンを用いて残したいゲート電極膜6の部分にレジストを塗布し、レジストのない部分をエッチング又は研磨することによって行う。
【0033】
図2(j)において、形成されたゲート口7の下部にある絶縁膜5を除去する。絶縁膜5の除去は、CF4ガスによるリアクティブイオンエッチング(RIE)あるいはフッ酸によるウエットエッチングを用いればよい。
このようなエッチングを所定の条件(時間及び温度)のもとで行えば、図2(j)に示すような開口が形成でき、エミッタティップを露出させることができる。以上によって、ゲート電極も含んだ電界放出陰極が作成される。
【0034】
このような工程を経て作成された電界放出陰極は、エミッタティップの先端部分9に、多数のカーボンナノチューブ8が付着しているので、封入されるガス等によって影響を受けることがなく比較的低電圧で安定した電子放出が可能である。
【0035】
カーボンナノチューブの付着を行う際に、スピンコート法により混濁液15を塗布する方法を示したが、図6に示すように、カーボンナノチューブを含むIPA混濁液15をスプレーに入れ、母型2の凹型形状表面に噴霧してもよい。
その後、同様に、120℃での乾燥工程を行ってIPAのみを蒸発させれば、カーボンナノチューブ8のみが凹型形状表面に残る。
【0036】
前記実施例では、図2(c)で作成された母型2としては、シリコーンゴム製のものを用いる例を示したが、ニッケル電鋳により作成した金属型を用いてもよい。金属型を用いれば、耐熱性,耐久性を増加させることができる。
【0037】
図3に、金属型の製造工程の説明図を示す。
図3(a)は、図2(a)と同じエミッタ元型1を示している。
図3(b)において、エミッタ元型1の凸型表面上に、シリコーンゴム製の樹脂10を充填した後、加熱して硬化させる。
【0038】
次に、図3(c)において、この樹脂製母型10を、エッチング等を利用してエミッタ元型1から剥離する。
図3(d)において、樹脂製母型10の凹型表面全体に、塩ビペーストレジン11を注入し、真空脱泡を行い加熱硬化させる。
この樹脂11によって形成された型(以下、樹脂エミッタ型という)は、その表面にエミッタティップの凸型形状を有するものである。
【0039】
図3(e)において、樹脂製母型10から、樹脂エミッタ型11を剥離する。次に、図3(f)において、この樹脂エミッタ型11の凸型表面に、導電性を付与するために無電解めっきあるいは乾式めっきにより薄くめっきを行う。この後、スルファミン酸浴を用いた普通濃度浴から高濃度浴の高電流密度で電鋳し、ニッケル12を形成する。
そして、ニッケル12を樹脂エミッタ型11から剥離すれば、母型2となる金属型12が完成する。
【0040】
図7に、この金属型12を用いて、エミッタを形成する工程の説明図を示す。図7(a)において、金属型12の凹型表面上に、カーボンナノチューブを含む混合樹脂13を印刷等の方法により塗布する。
ここで、混合樹脂13は、エチルセルロース5gとテルピネオール100gとを6時間程度、乳鉢によって混合した樹脂にカーボンナノチューブを所定量混合したものである。
【0041】
次に、図7(b)において、450℃の大気雰囲気中で焼成して、樹脂成分を蒸発させると、カーボンナノチューブのみの膜14が金属型12の凹型表面上に残る。
そして、図7(c)において、カーボンナノチューブの膜14の上にニッケルなどのエミッタ用金属材料3を充填し、薄膜状のエミッタ3を形成する。
この後、前記した図2(e)から図2(j)に示したのと同じ工程を行えば、電界放出陰極が完成する。
【0042】
また、図2(c)で作成された母型2として、多数の気泡を有する樹脂母型を用いてもよい。
多数の気泡を有する樹脂母型を用いれば、その表面が微小な凹部を有する多孔質状となるので、この微小な凹部にカーボンナノチューブが立った形で入り込み、エミッタティップの先端部分の表面からカーボンナノチューブが突き出た構造となりやすい。すなわち、カーボンナノチューブがエミッタティップ表面から突き出た構造であるため、より低電圧で安定した電子放出が可能となる。
【0043】
多数の気泡を有する樹脂母型2は、図2(b)において、空気を十分取りこむようにして樹脂の主剤と硬化剤とを混合したものをエミッタ元型1の表面全体に充填することによって形成できる。
この充填後、樹脂母型2を加熱によって硬化させれば、樹脂母型2の表面及び内部が多数の気泡を有する多孔質状となる。
【0044】
この多孔質状の樹脂母型2の凹型表面に、前記したようにスピンコート法やスプレー等によってカーボンナノチューブ8を塗布すれば、表面の微小な気泡にカーボンナノチューブ8が入り込み、カーボンナノチューブ8はエミッタティップ表面から突き出た形で形成される。この後、前記したのと同様に、エミッタティップ材料3の形成(図2(d))から絶縁膜の除去(図2(j))までの処理を行えば電界放出陰極が作成できる。
【0045】
また、さらに多くのカーボンナノチューブ8を、エミッタティップの表面から突き出た形で形成する方法としては、樹脂母型2の凹型表面の反対側から真空吸引する方法もある。
【0046】
図8に、この発明の真空吸引の説明図を示す。
図8(a)は、前記したように、表面及び内部に多数の気泡を有する多孔質状の樹脂母型2を示している。
図8(b)に示すように、この母型2の凹型表面に、カーボンナノチューブ8を含む混濁液15を塗布する。この状態でも、ある程度は、カーボンナノチューブ8が、気泡の中に入って突き出た形状となっている。
【0047】
次に、図8(c)において、母型2の凹型表面の反対側、すなわち紙面の下方から真空吸引する。
この真空吸引により、母型内部の気泡を通して、カーボンナノチューブ8が下方へ吸引され、より多くのカーボンナノチューブを気泡の中に入り込ませることが可能となる。この後、前記したように図2(d)以降の処理を行えば、電界放出陰極が作成できる。
このような真空吸引により、より多くのカーボンナノチューブを気泡中に突き出させた構造とすれば、さらに低電圧での電子放出が可能となる。
【0048】
また、多数の気泡を有する樹脂母型2を作成するために、エミッタ元型1の表面がポーラス状になるように化成処理して、エミッタ元型1を作成してもよい。図9に、この発明のエミッタ元型1の表面をポーラス状にする化成処理の説明図を示す。
図9において、エミッタ元型1がn型シリコンで作成されている場合、HF:H2O:C25OH(=1:1:2)溶液中に、エミッタ元型1と対向電極としてのPt電極とを浸漬し、エミッタ元型1に正電圧、Pt電極に負電圧を印加する。
【0049】
たとえば、100Wのタングステンエキシマーランプを照射し、エミッタ元型とPt電極間に電流密度40mA/cm2 の電流を30秒間流す。
これにより、エミッタ元型1の表面は酸化され、470nm程度の膜厚のポーラス層ができる。
このエミッタ元型1を用いて、図2(b)及び図2(c)の処理を行えば、表面に多数の気泡を有する樹脂母型2を作成することができ、カーボンナノチューブが気泡の中に入り込んで突き出た形のエミッタティップが形成される。
【0050】
また、表面に凹凸を有するエミッタ元型1を作成するために、シリコン凹型基板を用い、このシリコン凹型基板の凹型表面にイオンビームを照射してもよい。イオンビームの照射によりシリコン凹型基板の凹型表面に微小な凹凸ができる。
図10に、この発明のエミッタ元型1の製造工程の説明図を示す。
【0051】
図10(a)において、シリコン基板21上のエミッタティップを形成しない領域に、マスクパターンを用いて、熱酸化膜22(SiO2)を形成する。
図10(b)において、CF4等を用いた異方性エッチングを行う。
これにより、熱酸化されていないシリコン基板21の表面に逆ピラミッド形状のくぼみが形成される。
【0052】
図10(c)において、シリコン基板21に対して熱酸化を行う。符号23が、熱酸化部分である。これにより、図10(c)に示すように、くぼみの表面が酸化され、逆ピラミッド形状の側面が盛り上がり、エミッタティップ形状に相当するくぼみが形成される。すなわち逆ピラミッド形状の先端がより先鋭化される。
【0053】
図10(d)において、シリコン凹型基板21のくぼみの表面に、イオンビームを照射すると、表面に微小な凹凸が形成される(図10(e))。
イオンビームは、たとえば2kV程度に加速された電流値1μA程度のArイオンビームを用いればよい。
図10(f)において、シリコーンゴム形成用組成物等の樹脂24をくぼみが形成された表面全体に埋め込み硬化させる。
図10(g)において、埋め込まれた樹脂24を、剥離によってシリコン基板21から離型する。このようにして離型された樹脂24を、エミッタ元型1として用いる。くぼみの表面には微小な凹凸が形成されているので、樹脂24の凸型表面にも微小な凹凸が形成されている。
【0054】
この後、このエミッタ元型1を用いて前記した図2(b)及び図2(c)の処理を行えば、表面に多数の気泡を有する樹脂母型2を作成することができる。 イオンビームを用いて表面に凹凸を有するエミッタ元型1を作成する場合には、イオンビームのエネルギーを調整することにより、エミッタ元型の表面上の微小な凹凸の形状をきめ細かく制御することができる。したがって、イオンビームのエネルギーの微調整により、より多くのカーボンナノチューブをエミッタティップ表面から突き出させることが可能である。
【0055】
図7において、図3の工程により作成した金属型12を用いてエミッタを形成する実施例を示したが、図7(a),(b)に示したような塗布、焼成工程のかわりに、図11に示すようなCVD法(chemical vapor deposition)を用いて、金属型12をカーボンナノチューブ生成雰囲気中にさらす(図11(a))ことにより、金属型12の凹型表面にカーボンナノチューブの膜14を形成することもできる(図11(b)参照)。
【0056】
図11(c)のように、カーボンナノチューブの膜14上に、エミッタ用金属材料3を充填すれば、表面にカーボンナノチューブが形成された薄膜状のエミッタが作成できる。
このCVD法によれば、カーボンナノチューブの膜厚を微調整できるので、より適切な量のカーボンナノチューブをエミッタティップの先端部に付着させることができる。
【0057】
【発明の効果】
この発明によれば、導電性を持つ粉末状の物質をエミッタティップの先端部に形成しているので、ガス等の影響を受けず、より低電圧で化学的に安定した電子放出が可能となる電界放出陰極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の電界放出陰極の製造工程の概略フローチャートである。
【図2】この発明の電界放出陰極の製造工程の一実施例の説明図である。
【図3】この発明の金属型の製造工程の説明図である。
【図4】この発明において、エミッタティップの先端部にカーボンナノチューブが多数付着した状態を示す説明図である。
【図5】この発明において、スピンコート法によりカーボンナノチューブを含む混濁液を塗布する場合の説明図である。
【図6】この発明において、スプレーによってカーボンナノチューブを含む混濁液を母型の凹型形状表面に噴霧する場合の説明図である。
【図7】この発明の金属型を用いてエミッタを形成する工程の説明図である。
【図8】この発明の真空吸引の説明図である。
【図9】この発明のエミッタ元型の表面をポーラス状にする化成処理の説明図である。
【図10】この発明のエミッタ元型の製造工程の説明図である。
【図11】この発明のエミッタを形成する場合にCVD法を用いた製造工程の説明図である。
【図12】電界放出陰極の一部分の構造の斜視図である。
【図13】従来の電界放出陰極を用いた表示装置の構成図である。
【図14】従来から用いられている電界放出陰極の製造工程図である。
【符号の説明】
1 エミッタ元型
2 母型(シリコーンゴム製母型)
3 エミッタ用金属材料
4 陰極配線膜
5 絶縁膜
6 ゲート電極膜
7 ゲート口
8 カーボンナノチューブ
9 エミッタティップの先端部
10 樹脂製母型
11 樹脂エミッタ型
12 金属型
13 混合樹脂
14 カーボンナノチューブ膜
15 混濁液
21 シリコン基板
22 熱酸化膜
23 熱酸化部分
24 樹脂(エミッタ元型)

Claims (8)

  1. エミッタティップを形成するための所定パターンの凹部表面を有する母型を使用し、少なくともその凹部表面の先端部に導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程と、さらに凹部を埋設するようにエミッタ用材料を積層してエミッタを形成する工程と、形成されたエミッタを母型から剥離させる工程とを備え
    前記導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程が、前記母型を所定の速度で回転させながら前記導電性を持つ粉末状の材料を含む溶液を前記母型の凹部表面に塗布し、その後乾燥させることからなり、
    前記導電性を持つ粉末状の材料が、カーボンナノチューブ,ハードカーボンまたは酸化物の粉末のいずれかであり、
    前記母型が、多数の微小な気泡からなる多孔質状の凹部表面を備え、
    前記母型が、エミッタティップと同形状の凸部を持つエミッタ元型の表面に樹脂形成用組成物を充填し、硬化させた後、母型となる硬化させた樹脂形成用組成物とエミッタ元型とを剥離させることによって形成され、前記エミッタ元型が、エミッタティップと同形状の凹部を持つシリコン凹型基板に所定強度のイオンビームを照射し、イオンビームの照射によって凹部に形成された微小な凹凸を覆うように樹脂を充填しかつ硬化させ、エミッタ元型となる硬化された樹脂とシリコン凹型基板とを分離することによって形成されることを特徴とするエミッタの製造方法。
  2. エミッタティップを形成するための所定パターンの凹部表面を有する母型を使用し、少なくともその凹部表面の先端部に導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程と、さらに凹部を埋設するようにエミッタ用材料を積層してエミッタを形成する工程と、形成されたエミッタを母型から剥離させる工程とを備え
    前記導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程が、前記母型を所定の速度で回転させながら前記導電性を持つ粉末状の材料を含む溶液を前記母型の凹部表面に塗布し、その後乾燥させることからなり、
    前記導電性を持つ粉末状の材料が、カーボンナノチューブ,ハードカーボンまたは酸化物の粉末のいずれかであり、
    前記母型が、多数の微小な気泡からなる多孔質状の凹部表面を備え、
    前記母型が、エミッタティップと同形状の凸部表面を持ちかつその凸部表面を電圧印加を行いながら化成処理をすることによって、ポーラス化されたエミッタ元型の表面に樹脂形成用組成物を充填し、硬化させた後、母型となる硬化させた樹脂形成用組成物とエミッタ元型とを剥離させることによって形成されることを特徴とするエミッタの製造方法。
  3. エミッタティップを形成するための所定パターンの凹部表面を有する母型を使用し、少なくともその凹部表面の先端部に導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程と、さらに凹部を埋設するようにエミッタ用材料を積層してエミッタを形成する工程と、形成されたエミッタを母型から剥離させる工程とを備え、
    前記導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程が、前記母型を所定の速度で回転させながら前記導電性を持つ粉末状の材料を含む溶液を前記母型の凹部表面に塗布し、その後乾燥させることからなり、
    前記導電性を持つ粉末状の材料が、カーボンナノチューブ,ハードカーボンまたは酸化物の粉末のいずれかであり、
    前記母型が、シリコーンゴム形成用組成物を材料とする樹脂または金属で形成されており、
    前記母型が電鋳によって作成された金属型であって、かつ導電性を持つ粉末状の材料がカーボンナノチューブである場合、前記導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程が、CVD法によって母型の凹部表面上にカーボンナノチューブを蒸着させる工程からなることを特徴とするエミッタの製造方法。
  4. エミッタティップを形成するための所定パターンの凹部表面を有する母型を使用し、少なくともその凹部表面の先端部に導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程と、さらに凹部を埋設するようにエミッタ用材料を積層してエミッタを形成する工程と、形成されたエミッタを母型から剥離させる工程とを備え
    前記導電性を持つ粉末状の材料が、カーボンナノチューブ,ハードカーボンまたは酸化物の粉末のいずれかであり、
    前記母型が、多数の微小な気泡からなる多孔質状の凹部表面を備え、
    前記母型が、エミッタティップと同形状の凸部を持つエミッタ元型の表面に樹脂形成用組成物を充填し、硬化させた後、母型となる硬化させた樹脂形成用組成物とエミッタ元型とを剥離させることによって形成され、前記エミッタ元型が、エミッタティップと同形状の凹部を持つシリコン凹型基板に所定強度のイオンビームを照射し、イオンビームの照射によって凹部に形成された微小な凹凸を覆うように樹脂を充填しかつ硬化させ、エミッタ元型となる硬化された樹脂とシリコン凹型基板とを分離することによって形成されることを特徴とするエミッタの製造方法。
  5. エミッタティップを形成するための所定パターンの凹部表面を有する母型を使用し、少なくともその凹部表面の先端部に導電性を持つ粉末状の材料を付着させる工程と、さらに凹部を埋設するようにエミッタ用材料を積層してエミッタを形成する工程と、形成されたエミッタを母型から剥離させる工程とを備え、
    前記導電性を持つ粉末状の材料を付着する工程が、導電性を持つ粉末状の材料を含む溶液を前記母型の凹部表面に噴霧し、その後乾燥させることからなり、
    前記導電性を持つ粉末状の材料が、カーボンナノチューブ,ハードカーボンまたは酸化物の粉末のいずれかであり、
    前記母型が、多数の微小な気泡からなる多孔質状の凹部表面を備え、
    前記母型が、エミッタティップと同形状の凸部を持つエミッタ元型の表面に樹脂形成用組成物を充填し、硬化させた後、母型となる硬化させた樹脂形成用組成物とエミッタ元型とを剥離させることによって形成され、前記エミッタ元型が、エミッタティップと同形状の凹部を持つシリコン凹型基板に所定強度のイオンビームを照射し、イオンビームの照射によって凹部に形成された微小な凹凸を覆うように樹脂を充填しかつ硬化させ、エミッタ元型となる硬化された樹脂とシリコン凹型基板とを分離することによって形成されることを特徴とするエミッタの製造方法。
  6. 電子を放出するための円形状の凸部を複数個備え、少なくとも前記凸部の先端の表面部分に、導電性を持つ粉末状の材料が多数付着しているエミッタであって、請求項1乃至5のいずれかの製造方法により製造されたエミッタ。
  7. 前記導電性を持つ粉末状の材料が、カーボンナノチューブ,ハードカーボンまたは酸化物の粉末のいずれかであることを特徴とする請求項記載のエミッタ。
  8. 前記凸部が、金属またはエポキシ系樹脂で形成されていることを特徴とする請求項または記載のエミッタ。
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