JP3875295B2 - 心筋保護液 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は心筋保護液に係り、特に、肥大心筋や病的な状態にある心筋の保護に適した心筋保護液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、開心術中は心臓を停止し、この心臓を心筋保護液を用いて保持し、同時に人工心肺という補助手段を用いている。
【0003】
この心筋のポンプとしての作用は、細胞内のエネルギー状態、各種イオン(特に、Ca2+,Na+ ,Pi)の細胞内濃度、あるいは細胞内のpH、contractile protain のCa2+イオンに対する親和性によって決定されている。従って、心筋を保護するには、これらのバランスを良好に保つことがきわめて重要である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、現時点における心筋保護の中心概念は、超低温で心筋を保持し、その代謝を抑制することにある。すなわち、虚血時に生じるATPの加水分解によるエネルギー消費、水素イオン(H+ )やラクテートの蓄積を最小限にとどめ、手術後の再灌流に備えようとするものである。従って、開心術時には、人工心肺によって体温を低温(28〜30℃)に維持するだけでなく、氷を用いて心筋の局所冷却(4℃程度)を行う必要がある。
【0005】
しかしながら、心筋を氷を用いて冷却する従来の方法では、手術視野を狭めることとなり、円滑な手術の進行の妨げとなっていた。また、上記の氷は一般にラクテートリンゲル液から作られているため、手術中は心臓がラクテート液中に浸漬された状態となる。しかし、このような状態では、虚血時の溶液拡散能力が高く、イオンの濃度勾配不均衡を生じ、虚血解除後、再灌流した時の傷害を増幅するといわれている。
【0006】
また、近年、warm bloodを用い、阻血を作ることなく化学的に心停止を達成し、手術を安全に行えるとするwarm heart surgeryという方法が普及しつつある。しかしながら、この方法は、非常に繁雑であり、また、1分間に150〜200ccの心筋保護液が投与されるため、手術視野の確保が困難であり、さらに、体温を低温に維持しないため、他の臓器傷害、特に脳傷害を招く危険性が高く、現時点では一般的な方法とはいえない。
【0007】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解消するために提案されたもので、その目的は、虚血に弱い肥大心筋や病的心筋を保護し、局所冷却を用いず、無血視野で安全に手術を行うことを可能とし、良好な心機能回復が得られる心筋保護液を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の心筋保護液は、ヒスチジンを90mM/L〜110mM/L、アデノシンを0.05mM/L〜2mM/L含有することを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の心筋保護液は、ヒスチジンを90mM/L〜110mM/L、アデノシンを0.05mM/L〜2mM/L含有し、肥大心筋の保存に用いることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の心筋保護液において、解糖系の基質となるグルコースを9mM/L〜12mM/L、細胞内へのグルコース摂取量を高めるインスリンを7I.U./L〜12I.U./L、Naチャンネルブロッカーであるリドカインを60mg/L〜120mg/L含有することを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載の心筋保護液は、ヒスチジンを100mM/L、アデノシンを0.1mM/L含有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に記載の心筋保護液は、ヒスチジンを100mM/L、アデノシンを0.1mM/L含有し、肥大心筋の保存に用いることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に記載の心筋保護液は、L−Histidineを100mM/L、KH2 PO4 を2.5mM/L、KClを20mM/L、MgSO4 ・7H2 Oを6mM/L、NaClを80mM/L、CaCl2 を0.1mM/L、Adenosineを0.1mM/L、D−glucoseを11mM/L、Mannitolを20mM/L、Lidocaineを100mg/L、NaOHを3.6mM/L、Insulinを10I.U./L含有することを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の心筋保護液において、pHが7.7〜7.9であることを特徴とするものである。
【0015】
上記のような構成を有する各請求項に記載の心筋保護液によれば、ヒスチジンを所定量含有することにより、細胞内の水素イオン(H+ )やラクテートなどが細胞外に緩衝され、その結果、これらのイオンによる解糖系の抑制がとれ、解糖系の反応が促進され、エネルギー産生が起こる。また、アデノシンを所定量含有することにより、適切な血管の拡張作用が得られる。
【0016】
その結果、13℃〜37℃の広い範囲の温度下において、良好な心筋保護が可能となる。また、手術中に氷が不要となり、心筋保護液に血液を用いないため、良好な視野が確保できる。さらに、投与方法が簡単であると共に、基本組成はアミノ酸であり、また、他の内容物も従来から用いられているものであるため、安全性は非常に高いものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による心筋保護液の実施形態について、具体的に説明する。
表1は本実施形態における心筋保護液の組成内容を示したものである。
【0018】
【表1】
本実施形態における心筋保護液の特徴の一つは、アデノシンを0.1mM/L、塩基性アミノ酸であるヒスチジンを100mM/L含有させた点にある。
【0019】
このような組成内容としたのは、以下の理由による。すなわち、虚血によって心筋細胞内の好気下エネルギー産生系であるTCA回路あるいは電子伝達系は停止し、これに伴って、これらの系を介したエネルギー産生も停止する。一方、嫌気下となった心筋細胞内では解糖系だけが働いており、少量ではあるがATP(2モル)が産生され、還元型ニコチンアミド・アデニン・ディヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide : NAD)の再酸化が行われる。しかしながら、この系においても、最終代謝産物であるラクテートや水素イオン(H+ )が細胞内に蓄積することにより、細胞内のpHは低下し、エネルギー産生は停止する。
【0020】
なお、このような虚血心筋細胞内に陽イオンが蓄積すると、細胞の膨化、酵素の不活化、心筋収縮タンパクの変性をもたらすこと、また、生体内にはこれらの陽イオンを緩衝し、細胞環境を一定に保とうとする緩衝剤が存在し、アミノ酸もその一つであることが知られている。また、アミノ酸の中でも、ヒスチジンは強力な緩衝作用を有し、ヒスチジンを外的に投与した場合、細胞内の水素イオン(H+ )は陰イオンであるラクテートなどと共に細胞外に緩衝される。その結果、これらのイオンによる解糖系の抑制がとれ、解糖系の反応が促進され、エネルギー産生が起こる。
【0021】
このようなヒスチジンの投与は、すでにBretchneiderらによって試みられているが、4℃の低温下でヒスチジンを用いているため、細胞膜を通過するヒスチジンの量は制限され、細胞外にある比較的大量のヒスチジンは、脱カルボキシル化によってヒスタミンへと変化し、細胞に影響を与える危険性が高いものであった。また、Bretchneiderらによる心筋保護液においては、基質となるグルコースを含有しないため、ヒスチジンを投与することにより解糖系の抑制がとれたとしても、エネルギー産生を期待することはできなかった。
【0022】
本実施形態の心筋保護液においてはこれらの点に着目し、ヒスチジンの量を有効かつ必要最小量とすることにより、ヒスタミンの産生量を極めて少量に抑えることを可能としたものである。
【0023】
また、本実施形態の心筋保護液には、解糖系の基質となるグルコース、細胞内へのグルコース摂取を高めるためのインスリン、及び、Naチャンネルブロッカーであるリドカインが含まれている。
【0024】
ここで、リドカインを含有させた理由は、以下の通りである。すなわち、虚血中においては、細胞内Na+ が蓄積し、その結果、Na+ /H+ チャンネル、あるいはNa+ /Ca2+チャンネルを活性化し、細胞内H+ の増加による細胞内アシドーシスの促進あるいは細胞内Ca2+の上昇をもたらし、これらのイオンの不均衡によって、細胞傷害が惹起される。しかし、リドカインを投与すると、細胞内のNa+ の蓄積が抑えられるため、上記のような細胞傷害の軽減が可能となるからである。
【0025】
また、本実施形態の心筋保護液には、血管拡張作用と高エネルギーリン酸の分解を防ぐために、アデノシンが0.1mM/L含まれている。
アデノシンを0.1mM/Lとした理由は、以下の通りである。すなわち、上述したように、開心術中は心臓を停止し、同時に人工心肺という補助手段を用いるが、人工心肺を使用している間は、腎臓の血流が生理的な状態ではないため、薬物の代謝排泄が大きく遅延する。また、人工心肺中の灌流圧が低下するため、脳、肝臓、腎臓などの他臓器への血流が低下し、手術後に様々な合併症を起こす可能性がきわめて高くなる。したがって、心筋保護液中にアデノシンを多量(例えば、5mM/L程度)に含有させると、血管の拡張作用が強すぎて血圧が大きく低下し、また、低血圧の時期が遷延することとなるからである。
【0026】
以下、より具体的な実施例により、本発明の心筋保護液の作用・効果を説明する。
【0027】
[実施例1]
本実施例は、本発明による心筋保護液を用いることにより、細胞内に蓄積したラクテートや水素イオン(H+ )を細胞内から除去することができ、嫌気性代謝中においても解糖系を促進できることを検証するために行ったものである。
【0028】
(方法)
13頭の雑種成犬(体重18〜26kg)をペントバルビタール(30mg/kg)静脈麻酔後挿管し、レスピレーター管理下に心臓を摘出した。胸骨正中切開の後、腕頭動脈より上行大動脈内へカテーテルを挿入留置した。このカテーテルから灌流装置に用いる血液を採取した後、大動脈を遮断し、同カテーテルから心筋保護液(30ml/kg)を注入して心停止を得た。なお、この心停止液としては、表2に示した組成を有する本発明による心筋保護液(HBS)と、ウイスコンシン大学(UW)液を4℃に冷却して用いた。
【0029】
その後、心臓を摘出し、ヒスチジンを含む保存液(HBS)による単純浸漬保存(4℃)24時間(HBS−24,n=5)あるいは30時間(HBS−30,n=4)保存した群と、ウイスコンシン大学(UW)液で24時間保存(4℃)した群(UW−24,n=4)とに分け、これらの群間の心機能を比較検討した。
【0030】
心機能は、再灌流後2時間で測定し、さらに低濃度のドブタミン(2μg/kg/min:DOB−L)と高濃度のドブタミン(10μg/kg/min:DOB−H)負荷に対する保存心の反応についても検討した。
また、これら保存心の心機能を検討する対照として、新たに3頭の犬を用い、上記と同様に血液を採取した後、大動脈を遮断、リンゲル液(K+ :20mMを含む)(30ml/kg、対照群)による心停止後、心臓を摘出した。
【0031】
【表2】
心機能測定のための左室バルーンを縫着の後、直ちに灌流装置で血液灌流し、2時間後に心機能を評価した。灌流液として、自己血にリンゲル液を加えて、ヘマトクリット値が20〜25%の範囲に調整した灌流液を用い、膠質浸透圧を300Osm/L以上に保つためにアルブミンを添加した。エネルギー基質としてグルコース1800mg、同時にレギュラーインスリン20IUも添加した。
【0032】
摘出心は保存終了直前に左総頸動脈より再灌流後の灌流圧モニター用のカテーテルを挿入固定後、左鎖骨下動脈と大動脈遠位端はそれぞれ閉鎖した。ついで、僧帽弁を切除、腱索を乳頭筋付着部で切除し、経左房的に心機能測定用のバルーンカテーテルを左室内に挿入し、僧帽弁輪部に縫着した。左室心尖部にventtubeを挿入した。灌流装置は、遠心ポンプにより駆出された血液が膜型肺、次いで熱交換機を通過した後、上行大動脈に留置したカテーテルから送血され、心臓を灌流するものである。肺動脈から流出した灌流液は再びリザーバーに蓄えられ酸素化された後、灌流液として使用した。
【0033】
(検討内容)
心機能計測は、左室内バルーン容量を10mlずつ増加させ、各容量での収縮期圧、拡張期圧をそれぞれ5心拍ごとの平均から求めた。また、End−systolic elastance(Ees)は収縮期圧70mmHgの際に得られるend−systolic pressure−volume relationship(ESPVR)のスロープとして求めた。さらに、心室圧が0となる状態での心室容量(equilibrium volume)VoもESPVRカーブから求めた。また、拡張終期容量(Ved)は拡張期圧15mmHg、収縮末期容量(Ves)は収縮期圧70mmHg時の値を求めた。さらに、1回拍出量(SV)はVed−Vesから、左室駆出率(EF)はSV/Vedから求めた。心拍出量(CO)はSVx心拍数により、脈圧は左室拡張期圧15mmHg時の収縮期圧−拡張期圧から求めた。
【0034】
(結果1…再灌流2時間後の心機能)
上記End−systolic elastance(Ees)は、表3及び図1に示したように、各群において有意差は認められなかった。
【0035】
【表3】
また、収縮期パラメーターである上記equilibrium volume(Vo)も、表4及び図2に示したように、各群において有意差は認められなかった。
【0036】
【表4】
一方、同様に収縮期パラメーターである上記拡張終期容量(Ved)は、表5及び図3に示したように、HBS−30,HBS−24に比べて、UW−24で有意に低値を示した。
【0037】
【表5】
また、心拍出量(CO)は、表6及び図4に示したように、HBS−24で最もよく回復し、HBS−30では2例で心拍出量は0であったが、UW−24ではさらに悪く、1例でのみ心拍出が得られた。
【0038】
【表6】
1回拍出量(SV)は、表7に示したように、上記COと同様、HBS−24(11±3.0ml)、HBS−30(2±1.0ml/min)、UW−24の順に良好であった。なお、UW−24では1例のみが心機能を回復した。
【0039】
【表7】
左室駆出率(EF)は、表8及び図5に示したように、HBS−24で回復が最良であったが、HBS−30では顕著に低下し、UW−24では1例のみが心機能を回復したにすぎなかった。
【0040】
【表8】
拡張期圧15mmHgで測定した脈圧は、表9及び図6に示したように、HBS−24が最も良く、HBS−30、UW−24に比べて有意に良好であった。
【表9】
(結果2…ドブタミン負荷による心機能の変化)
UW−24では、低濃度のDOB(DOB−L)負荷により2例のみが反応し、高濃度のDOB(DOB−H)負荷により3例のみが反応した。
【0041】
上記End−systolic elastance(Ees)は、表10及び図7に示したような結果が得られた。
【0042】
【表10】
また、equilibrium volume(Vo)も、表11及び図8に示したような結果が得られた。
【0043】
【表11】
拡張終期容量(Ved)は、図9に示したように、各群ともDOB−L、DOB−Hによる有意な変化は認められなかった。
【0044】
1回拍出量(SV)は、表12及び図10に示したように、UW−24ではDOB−Hに対しても回復は不良であった。一方、HBS−24ではDOBの量に従い有意に上昇した。また、HBS−30でもDOBに対する反応は良好で、UW−24に比べて有意に上昇した。なお、HBS−30とHBS−24の間には有意差は認められなかった。
【0045】
【表12】
また、心拍出量(CO)は、図11に示したように、UW−24ではDOB−Hの負荷により329±150ml/minに増加した。DOB負荷をしない状態では、HBS−30はHBS−24より有意に低値であったが、DOB負荷により全例で心拍出が認められ、両群のCOは上昇し、群間に有意差は認められなくなった。
【0046】
左室駆出率(EF)は、表13及び図12に示したように、HBS−30、HBS−24ともDOBに対する反応は良好であり、両群間で有意差は認められなかった。
【0047】
【表13】
拡張期圧15mmHgで測定した脈圧は、図13に示したように、HBS−30、HBS−24ともDOBに対する反応は良好であり、両群間で有意差は認められなかった。
【0048】
(考察)
以上述べたように、本発明の心筋保護液であるHBSによる24時間保存、あるいは30時間保存後の心筋においては、UW液より良好な心機能回復が得られた。また、HBS保存心では、再灌流2時間の時点で、24時間保存群の方が30時間保存群より有意に良好な機能回復が見られた。しかし、30時間保存群においても、ドーパミンに対する反応性は良く、24時間保存群とほぼ同等な心機能を示し、24時間以上の保存の可能性が認められた。
【0049】
[実施例2]
本実施例は、本発明による心筋保護液を、肥大心筋の心筋保護液として用いたものである。
【0050】
一般に、hemodynamic overloadに起因する左室肥大心(臨床的には、先天性の心疾患、後天性の弁疾患あるいは肥大型心筋症など)は虚血に弱く、それは主に細胞内のカルシウム((Ca2+)i )調節能の変化と、利用するエネルギー基質の変化に関係していると考えられている。
【0051】
まず、細胞内のカルシウム((Ca2+)i )調節能の変化について説明する。すなわち、(Ca2+)i は心筋細胞が収縮する上で重要であるが、主に細胞膜にあるvoltage依存のCa2+チャンネルと、sarcoplasmic reticulum(SR)にあるCa2+チャンネル(ryanodine receptors)によって調節されている。そして、通常は、SRにあるCa2+チャンネルがCa2+調節に重要な役割を果たしているが、肥大心筋においては、voltage依存のCa2+チャンネルに大きく依存している。
【0052】
また、虚血中においても、細胞内外のイオン調節にエネルギーが使われるため、解糖系からのエネルギー供給が停止した場合、イオン分布が崩れ(特に、Ca2+、Na+ )、再灌流後の傷害が大きくなる。
【0053】
このエネルギー基質は、通常その2/3を脂肪酸代謝に依存しており、グルコースに依存する部分は20%以下と考えられているが、肥大心筋においては、これが解糖系依存へとシフトしている。そのため、虚血にさらされた肥大心筋では解糖系(嫌気性)が亢進するが、その代謝産物であるラクテートの蓄積および細胞内アシドーシスによって解糖系は直ちに停止し、エネルギー供給は絶たれることになる。従って、解糖系の抑制因子であるラクテート及びH+ を除去することにより、解糖系の促進を図り、肥大心筋においても、虚血中の良好なエネルギー産生を可能とすることができると考えられる。このような考えに基づき、塩基性アミノ酸であるヒスチジンを肥大心筋の保護に用いることとしたものである。
【0054】
以下、本発明の心筋保護液(HBS)を虚血時の肥大心筋に用いた場合の効果について説明する。
【0055】
(方法)
生後10日目の家兎を塩酸ケタミンの筋注により麻酔したのち開胸し、下行大動脈にbandingを施し、5〜7週ののち肥大心筋モデルとして実験に使用した。再びケタミン麻酔ののち肥大心を摘出し、ランゲンドルフ灌流モデルで灌流した。灌流液としては、酸素化したKrebs−Henseleit(K−H)液を使用し、30分後に後述の項目を測定した後、K−H液のK+ 濃度を20mMとした液(KCl)30mlあるいはHBS30mlを注入し、40分間37℃の温阻血を加え、さらに30分間再灌流した。再灌流30分の時点で同項目を測定した。
【0056】
測定項目としては、左心室内に挿入したバルーンにより脈圧と拡張期圧を測定し、虚血終了時に各心筋保護液(30ml)を注入、流出液を採取し、ラクテートを測定した。また、31P−NMR spectroscopyにより、細胞内の高エネルギーリン酸(phosphocreatine;PCr)、細胞内pH(pHi)を経時的に測定した。
【0057】
(結果)
肥大心の体重に対する左心室重量(LV/BW ratio)は、HBS群で4.4×10-3±0.6×10-3、KCl群で4.8×10-3±0.6×10-3であり、両群間に差はみられなかった。また、脈圧も虚血前には両群(各群n=5)で差はなかったが、30分の再灌流後ではKCl群で脈圧は有意に低下し、拡張期圧は有意に上昇した。一方、HBS群では拡張期圧は軽度上昇したが、脈圧は有意な低下を認めなかった(図14(A)(B))。さらに、虚血中に産生されたラクテート量はHBS群で有意に高値であった(図15)。
【0058】
また、細胞内pH(pHi)はKCl群で虚血後急速に低下し、40分の虚血後には、6.3±0.07pH units まで低下した。再灌流後は緩やかに回復したが、30分においても6.85±0.16pH units と虚血前より有意に低値であった(図16)。一方、HBS群では、虚血40分においても、細胞内pH(pHi)はよく保たれ(6.75±0.04)、再灌流後5分で前値に復した(図16)。
【0059】
また、phosphocreatine(PCr)は虚血中にKCl群で消失したが、HBS群では前値の約20%が残存していた。また、再灌流後には、HBS群ではほぼ前値に復したのに対し、KCl群では虚血前の約45%であった(図17)。
【0060】
(考察)
上記の結果より、肥大心筋において細胞内に蓄積されたラクテート及びH+ は細胞外に緩衝されており、その結果、嫌気性解糖が促進され、温阻血40分後においても高エネルギーリン酸であるphosphocreatine(PCr)は残存していた(図17)。このことから、本発明による心筋保護液は、再灌流後のエネルギー回復に良い影響を及ぼし、良好な心機能回復をもたらすものと考えられる。
【0061】
[実施例3]
本発明の心筋保護液を用いてウサギの心保存を行い、至適温度の検索を行った。
【0062】
(方法)
生後10日目の家兎を塩酸ケタミンの筋注により麻酔したのち開胸し、下行大動脈にbandingを施し、5〜7週ののち肥大心筋モデルとして実験に使用した。再びケタミン麻酔ののち肥大心を摘出し、ランゲンドルフ灌流モデルで灌流した。
【0063】
なお、心筋保護液としては、表14に示したような組成を有する本発明による心筋保護液(HBS)と、ウイスコンシン大学(UW)液を用いた。また、浸漬方法としては、心臓移植を想定して、長時間の保存の適否を判断するために、4℃保存の場合のみ単純浸漬保存を行い、その他の場合には、間欠投与(1回/1時間)を行った。さらに、心筋の保存温度としては、4℃、13℃、21℃の3つの場合について検証した。
【0064】
【表14】
(結果)
【表15】
表15及び図18〜図20に示したような結果が得られた。すなわち、図18に示したように、拡張期圧は、4℃で8時間保存した場合には、HBSとUWSともほぼ良好であったが、4℃で16時間保存した場合には、HBSでは良好であったが、UWSでは有意に上昇した。
一方、21℃で8時間保った場合には、HBSでは良好な結果が得られたが、UWSでは非常に高い値が得られた。さらに、HBSでは21℃で16時間保った場合でも、拡張期圧は低く抑えることができた。なお、一般に、拡張期圧は15〜20mmHgを超えたあたりから、不可逆的な心筋細胞傷害が起こると判断されている。
【0065】
また、図19に示したように、脈圧は、4℃で8時間保った場合には、HBSとUWSともほぼ良好であったが、4℃で16時間保った場合には、HBSでは良好であったが、UWSでは有意に低下した。
一方、21℃で8時間保った場合には、HBSでは良好な結果が得られたが、UWSでは非常に低い拡張期圧が得られた。さらに、HBSでは21℃で16時間保った場合でも、高い脈圧を得ることができた。なお、一般に、脈圧は高い方が心機能として良いと判断されている。
【0066】
さらに、HBSを用い、13℃で16時間、20時間、24時間保存した場合の拡張期圧及び脈圧を図20(A)(B)に示した。すなわち、図20(A)に示したように、本発明のHBSを用いて13℃で保存した場合には、24時間保存した後であっても、拡張期圧は約20mmHgであり、良好な心機能回復が可能と判断された。また、図20(B)に示したように、24時間保存後であっても、脈圧は虚血前の70%であった。
【0067】
これらの結果から、間欠投与で13℃、21℃に保たれた群において、16時間〜24時間の長時間の保存が可能であることが分かった。
【0068】
[実施例4]
本実施例は、本発明による心筋保護液を、30数例に臨床応用したものである。すなわち、cold blood cardioplegia(CBC…血液を希釈・冷却して用いる方法)という従来の心筋保護法を用いた場合と、本発明による心筋保護液を用いた場合の、手術後の心機能回復を検討した。
なお、本発明による心筋保護液の臨床での使用方法は、4℃に冷却したHBSを30分毎に投与するものである。
【0069】
その結果は、以下の通りである。すなわち、投与直後、心筋温度は15〜17℃まで低下したが、次回投与まで(30分後)には25〜27℃まで上昇した。また、2回目以降も同様の経過をたどった。
また、CBC投与群では、34例中5例に心室細動がみられ、除細動が必要であったが、HBS投与群では、すべての対象において心室細動はみられず、除細動は不要であった(すなわち、自己心拍を開始した)。
さらに、HBS投与群では、開心術中における強心剤の投与量は、CBC投与群に比べて明らかに少量であった。
このように、本発明の心筋保護液は、臨床に応用した場合にも、良好な結果を示した。
【0070】
[本実施形態の効果]
以上述べたように、本発明の心筋保護液によれば、13℃〜37℃の広い範囲の温度下において、良好な心筋保護が可能であり、また、手術中に氷が不要となり、心筋保護液に血液を用いないため、良好な視野が確保できる。さらに、投与方法が簡単であると共に、基本組成はアミノ酸であり、また、他の内容物も従来から用いられているものであるため、安全性は非常に高いものである。特に、肥大心筋や病的な状態にある心筋に顕著な効果があり、臨床応用に適した心筋保護液である。
【0071】
[他の実施形態]
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、アデノシンの含有量は0.05mM/L〜2mM/L、ヒスチジンの含有量は90mM/L〜110mM/L、グルコースの含有量は9mM/L〜12mM/L、インスリンの含有量は7I.U./L〜12I.U./L、リドカインの含有量は60mg/L〜120mg/L、の範囲内であれば、同様の効果が得られると考えられる。
【0072】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、虚血に弱い肥大心筋や病的心筋を保護し、局所冷却を用いず、無血視野で安全に手術を行うことを可能とし、良好な心機能回復が得られる心筋保護液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1におけるEnd−systolic elastance(Ees)を示す図
【図2】本発明の実施例1におけるequilibrium volume(Vo)を示す図
【図3】本発明の実施例1における拡張終期容量(Ved)を示す図
【図4】本発明の実施例1における心拍出量(CO)を示す図
【図5】本発明の実施例1における左室駆出率(EF)を示す図
【図6】本発明の実施例1における拡張期圧15mmHgで測定した脈圧を示す図
【図7】本発明の実施例1におけるドブタミン負荷によるEnd−systolic elastance(Ees)を示す図
【図8】本発明の実施例1におけるドブタミン負荷によるequilibrium volume(Vo)を示す図
【図9】本発明の実施例1におけるドブタミン負荷による拡張終期容量(Ved)を示す図
【図10】本発明の実施例1におけるドブタミン負荷による1回拍出量(SV)を示す図
【図11】本発明の実施例1におけるドブタミン負荷による心拍出量(CO)を示す図
【図12】本発明の実施例1におけるドブタミン負荷による左室駆出率(EF)を示す図
【図13】本発明の実施例1におけるドブタミン負荷による拡張期圧15mmHgで測定した脈圧を示す図
【図14】(A)は本発明の実施例2における脈圧を示す図、(B)は拡張期圧を示す図
【図15】本発明の実施例2における虚血中に産生されたラクテート量を示す図
【図16】本発明の実施例2における細胞内pHの変化を示す図
【図17】本発明の実施例2におけるPCrの変化を示す図
【図18】本発明の実施例3における拡張期圧を示す図
【図19】本発明の実施例3における脈圧を示す図
【図20】(A)は、13℃で16時間、20時間、24時間保存した場合の拡張期圧を示す図、(B)は脈圧を示す図
【発明の属する技術分野】
本発明は心筋保護液に係り、特に、肥大心筋や病的な状態にある心筋の保護に適した心筋保護液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、開心術中は心臓を停止し、この心臓を心筋保護液を用いて保持し、同時に人工心肺という補助手段を用いている。
【0003】
この心筋のポンプとしての作用は、細胞内のエネルギー状態、各種イオン(特に、Ca2+,Na+ ,Pi)の細胞内濃度、あるいは細胞内のpH、contractile protain のCa2+イオンに対する親和性によって決定されている。従って、心筋を保護するには、これらのバランスを良好に保つことがきわめて重要である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、現時点における心筋保護の中心概念は、超低温で心筋を保持し、その代謝を抑制することにある。すなわち、虚血時に生じるATPの加水分解によるエネルギー消費、水素イオン(H+ )やラクテートの蓄積を最小限にとどめ、手術後の再灌流に備えようとするものである。従って、開心術時には、人工心肺によって体温を低温(28〜30℃)に維持するだけでなく、氷を用いて心筋の局所冷却(4℃程度)を行う必要がある。
【0005】
しかしながら、心筋を氷を用いて冷却する従来の方法では、手術視野を狭めることとなり、円滑な手術の進行の妨げとなっていた。また、上記の氷は一般にラクテートリンゲル液から作られているため、手術中は心臓がラクテート液中に浸漬された状態となる。しかし、このような状態では、虚血時の溶液拡散能力が高く、イオンの濃度勾配不均衡を生じ、虚血解除後、再灌流した時の傷害を増幅するといわれている。
【0006】
また、近年、warm bloodを用い、阻血を作ることなく化学的に心停止を達成し、手術を安全に行えるとするwarm heart surgeryという方法が普及しつつある。しかしながら、この方法は、非常に繁雑であり、また、1分間に150〜200ccの心筋保護液が投与されるため、手術視野の確保が困難であり、さらに、体温を低温に維持しないため、他の臓器傷害、特に脳傷害を招く危険性が高く、現時点では一般的な方法とはいえない。
【0007】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解消するために提案されたもので、その目的は、虚血に弱い肥大心筋や病的心筋を保護し、局所冷却を用いず、無血視野で安全に手術を行うことを可能とし、良好な心機能回復が得られる心筋保護液を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の心筋保護液は、ヒスチジンを90mM/L〜110mM/L、アデノシンを0.05mM/L〜2mM/L含有することを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の心筋保護液は、ヒスチジンを90mM/L〜110mM/L、アデノシンを0.05mM/L〜2mM/L含有し、肥大心筋の保存に用いることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の心筋保護液において、解糖系の基質となるグルコースを9mM/L〜12mM/L、細胞内へのグルコース摂取量を高めるインスリンを7I.U./L〜12I.U./L、Naチャンネルブロッカーであるリドカインを60mg/L〜120mg/L含有することを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載の心筋保護液は、ヒスチジンを100mM/L、アデノシンを0.1mM/L含有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に記載の心筋保護液は、ヒスチジンを100mM/L、アデノシンを0.1mM/L含有し、肥大心筋の保存に用いることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に記載の心筋保護液は、L−Histidineを100mM/L、KH2 PO4 を2.5mM/L、KClを20mM/L、MgSO4 ・7H2 Oを6mM/L、NaClを80mM/L、CaCl2 を0.1mM/L、Adenosineを0.1mM/L、D−glucoseを11mM/L、Mannitolを20mM/L、Lidocaineを100mg/L、NaOHを3.6mM/L、Insulinを10I.U./L含有することを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の心筋保護液において、pHが7.7〜7.9であることを特徴とするものである。
【0015】
上記のような構成を有する各請求項に記載の心筋保護液によれば、ヒスチジンを所定量含有することにより、細胞内の水素イオン(H+ )やラクテートなどが細胞外に緩衝され、その結果、これらのイオンによる解糖系の抑制がとれ、解糖系の反応が促進され、エネルギー産生が起こる。また、アデノシンを所定量含有することにより、適切な血管の拡張作用が得られる。
【0016】
その結果、13℃〜37℃の広い範囲の温度下において、良好な心筋保護が可能となる。また、手術中に氷が不要となり、心筋保護液に血液を用いないため、良好な視野が確保できる。さらに、投与方法が簡単であると共に、基本組成はアミノ酸であり、また、他の内容物も従来から用いられているものであるため、安全性は非常に高いものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による心筋保護液の実施形態について、具体的に説明する。
表1は本実施形態における心筋保護液の組成内容を示したものである。
【0018】
【表1】
本実施形態における心筋保護液の特徴の一つは、アデノシンを0.1mM/L、塩基性アミノ酸であるヒスチジンを100mM/L含有させた点にある。
【0019】
このような組成内容としたのは、以下の理由による。すなわち、虚血によって心筋細胞内の好気下エネルギー産生系であるTCA回路あるいは電子伝達系は停止し、これに伴って、これらの系を介したエネルギー産生も停止する。一方、嫌気下となった心筋細胞内では解糖系だけが働いており、少量ではあるがATP(2モル)が産生され、還元型ニコチンアミド・アデニン・ディヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide : NAD)の再酸化が行われる。しかしながら、この系においても、最終代謝産物であるラクテートや水素イオン(H+ )が細胞内に蓄積することにより、細胞内のpHは低下し、エネルギー産生は停止する。
【0020】
なお、このような虚血心筋細胞内に陽イオンが蓄積すると、細胞の膨化、酵素の不活化、心筋収縮タンパクの変性をもたらすこと、また、生体内にはこれらの陽イオンを緩衝し、細胞環境を一定に保とうとする緩衝剤が存在し、アミノ酸もその一つであることが知られている。また、アミノ酸の中でも、ヒスチジンは強力な緩衝作用を有し、ヒスチジンを外的に投与した場合、細胞内の水素イオン(H+ )は陰イオンであるラクテートなどと共に細胞外に緩衝される。その結果、これらのイオンによる解糖系の抑制がとれ、解糖系の反応が促進され、エネルギー産生が起こる。
【0021】
このようなヒスチジンの投与は、すでにBretchneiderらによって試みられているが、4℃の低温下でヒスチジンを用いているため、細胞膜を通過するヒスチジンの量は制限され、細胞外にある比較的大量のヒスチジンは、脱カルボキシル化によってヒスタミンへと変化し、細胞に影響を与える危険性が高いものであった。また、Bretchneiderらによる心筋保護液においては、基質となるグルコースを含有しないため、ヒスチジンを投与することにより解糖系の抑制がとれたとしても、エネルギー産生を期待することはできなかった。
【0022】
本実施形態の心筋保護液においてはこれらの点に着目し、ヒスチジンの量を有効かつ必要最小量とすることにより、ヒスタミンの産生量を極めて少量に抑えることを可能としたものである。
【0023】
また、本実施形態の心筋保護液には、解糖系の基質となるグルコース、細胞内へのグルコース摂取を高めるためのインスリン、及び、Naチャンネルブロッカーであるリドカインが含まれている。
【0024】
ここで、リドカインを含有させた理由は、以下の通りである。すなわち、虚血中においては、細胞内Na+ が蓄積し、その結果、Na+ /H+ チャンネル、あるいはNa+ /Ca2+チャンネルを活性化し、細胞内H+ の増加による細胞内アシドーシスの促進あるいは細胞内Ca2+の上昇をもたらし、これらのイオンの不均衡によって、細胞傷害が惹起される。しかし、リドカインを投与すると、細胞内のNa+ の蓄積が抑えられるため、上記のような細胞傷害の軽減が可能となるからである。
【0025】
また、本実施形態の心筋保護液には、血管拡張作用と高エネルギーリン酸の分解を防ぐために、アデノシンが0.1mM/L含まれている。
アデノシンを0.1mM/Lとした理由は、以下の通りである。すなわち、上述したように、開心術中は心臓を停止し、同時に人工心肺という補助手段を用いるが、人工心肺を使用している間は、腎臓の血流が生理的な状態ではないため、薬物の代謝排泄が大きく遅延する。また、人工心肺中の灌流圧が低下するため、脳、肝臓、腎臓などの他臓器への血流が低下し、手術後に様々な合併症を起こす可能性がきわめて高くなる。したがって、心筋保護液中にアデノシンを多量(例えば、5mM/L程度)に含有させると、血管の拡張作用が強すぎて血圧が大きく低下し、また、低血圧の時期が遷延することとなるからである。
【0026】
以下、より具体的な実施例により、本発明の心筋保護液の作用・効果を説明する。
【0027】
[実施例1]
本実施例は、本発明による心筋保護液を用いることにより、細胞内に蓄積したラクテートや水素イオン(H+ )を細胞内から除去することができ、嫌気性代謝中においても解糖系を促進できることを検証するために行ったものである。
【0028】
(方法)
13頭の雑種成犬(体重18〜26kg)をペントバルビタール(30mg/kg)静脈麻酔後挿管し、レスピレーター管理下に心臓を摘出した。胸骨正中切開の後、腕頭動脈より上行大動脈内へカテーテルを挿入留置した。このカテーテルから灌流装置に用いる血液を採取した後、大動脈を遮断し、同カテーテルから心筋保護液(30ml/kg)を注入して心停止を得た。なお、この心停止液としては、表2に示した組成を有する本発明による心筋保護液(HBS)と、ウイスコンシン大学(UW)液を4℃に冷却して用いた。
【0029】
その後、心臓を摘出し、ヒスチジンを含む保存液(HBS)による単純浸漬保存(4℃)24時間(HBS−24,n=5)あるいは30時間(HBS−30,n=4)保存した群と、ウイスコンシン大学(UW)液で24時間保存(4℃)した群(UW−24,n=4)とに分け、これらの群間の心機能を比較検討した。
【0030】
心機能は、再灌流後2時間で測定し、さらに低濃度のドブタミン(2μg/kg/min:DOB−L)と高濃度のドブタミン(10μg/kg/min:DOB−H)負荷に対する保存心の反応についても検討した。
また、これら保存心の心機能を検討する対照として、新たに3頭の犬を用い、上記と同様に血液を採取した後、大動脈を遮断、リンゲル液(K+ :20mMを含む)(30ml/kg、対照群)による心停止後、心臓を摘出した。
【0031】
【表2】
心機能測定のための左室バルーンを縫着の後、直ちに灌流装置で血液灌流し、2時間後に心機能を評価した。灌流液として、自己血にリンゲル液を加えて、ヘマトクリット値が20〜25%の範囲に調整した灌流液を用い、膠質浸透圧を300Osm/L以上に保つためにアルブミンを添加した。エネルギー基質としてグルコース1800mg、同時にレギュラーインスリン20IUも添加した。
【0032】
摘出心は保存終了直前に左総頸動脈より再灌流後の灌流圧モニター用のカテーテルを挿入固定後、左鎖骨下動脈と大動脈遠位端はそれぞれ閉鎖した。ついで、僧帽弁を切除、腱索を乳頭筋付着部で切除し、経左房的に心機能測定用のバルーンカテーテルを左室内に挿入し、僧帽弁輪部に縫着した。左室心尖部にventtubeを挿入した。灌流装置は、遠心ポンプにより駆出された血液が膜型肺、次いで熱交換機を通過した後、上行大動脈に留置したカテーテルから送血され、心臓を灌流するものである。肺動脈から流出した灌流液は再びリザーバーに蓄えられ酸素化された後、灌流液として使用した。
【0033】
(検討内容)
心機能計測は、左室内バルーン容量を10mlずつ増加させ、各容量での収縮期圧、拡張期圧をそれぞれ5心拍ごとの平均から求めた。また、End−systolic elastance(Ees)は収縮期圧70mmHgの際に得られるend−systolic pressure−volume relationship(ESPVR)のスロープとして求めた。さらに、心室圧が0となる状態での心室容量(equilibrium volume)VoもESPVRカーブから求めた。また、拡張終期容量(Ved)は拡張期圧15mmHg、収縮末期容量(Ves)は収縮期圧70mmHg時の値を求めた。さらに、1回拍出量(SV)はVed−Vesから、左室駆出率(EF)はSV/Vedから求めた。心拍出量(CO)はSVx心拍数により、脈圧は左室拡張期圧15mmHg時の収縮期圧−拡張期圧から求めた。
【0034】
(結果1…再灌流2時間後の心機能)
上記End−systolic elastance(Ees)は、表3及び図1に示したように、各群において有意差は認められなかった。
【0035】
【表3】
また、収縮期パラメーターである上記equilibrium volume(Vo)も、表4及び図2に示したように、各群において有意差は認められなかった。
【0036】
【表4】
一方、同様に収縮期パラメーターである上記拡張終期容量(Ved)は、表5及び図3に示したように、HBS−30,HBS−24に比べて、UW−24で有意に低値を示した。
【0037】
【表5】
また、心拍出量(CO)は、表6及び図4に示したように、HBS−24で最もよく回復し、HBS−30では2例で心拍出量は0であったが、UW−24ではさらに悪く、1例でのみ心拍出が得られた。
【0038】
【表6】
1回拍出量(SV)は、表7に示したように、上記COと同様、HBS−24(11±3.0ml)、HBS−30(2±1.0ml/min)、UW−24の順に良好であった。なお、UW−24では1例のみが心機能を回復した。
【0039】
【表7】
左室駆出率(EF)は、表8及び図5に示したように、HBS−24で回復が最良であったが、HBS−30では顕著に低下し、UW−24では1例のみが心機能を回復したにすぎなかった。
【0040】
【表8】
拡張期圧15mmHgで測定した脈圧は、表9及び図6に示したように、HBS−24が最も良く、HBS−30、UW−24に比べて有意に良好であった。
【表9】
(結果2…ドブタミン負荷による心機能の変化)
UW−24では、低濃度のDOB(DOB−L)負荷により2例のみが反応し、高濃度のDOB(DOB−H)負荷により3例のみが反応した。
【0041】
上記End−systolic elastance(Ees)は、表10及び図7に示したような結果が得られた。
【0042】
【表10】
また、equilibrium volume(Vo)も、表11及び図8に示したような結果が得られた。
【0043】
【表11】
拡張終期容量(Ved)は、図9に示したように、各群ともDOB−L、DOB−Hによる有意な変化は認められなかった。
【0044】
1回拍出量(SV)は、表12及び図10に示したように、UW−24ではDOB−Hに対しても回復は不良であった。一方、HBS−24ではDOBの量に従い有意に上昇した。また、HBS−30でもDOBに対する反応は良好で、UW−24に比べて有意に上昇した。なお、HBS−30とHBS−24の間には有意差は認められなかった。
【0045】
【表12】
また、心拍出量(CO)は、図11に示したように、UW−24ではDOB−Hの負荷により329±150ml/minに増加した。DOB負荷をしない状態では、HBS−30はHBS−24より有意に低値であったが、DOB負荷により全例で心拍出が認められ、両群のCOは上昇し、群間に有意差は認められなくなった。
【0046】
左室駆出率(EF)は、表13及び図12に示したように、HBS−30、HBS−24ともDOBに対する反応は良好であり、両群間で有意差は認められなかった。
【0047】
【表13】
拡張期圧15mmHgで測定した脈圧は、図13に示したように、HBS−30、HBS−24ともDOBに対する反応は良好であり、両群間で有意差は認められなかった。
【0048】
(考察)
以上述べたように、本発明の心筋保護液であるHBSによる24時間保存、あるいは30時間保存後の心筋においては、UW液より良好な心機能回復が得られた。また、HBS保存心では、再灌流2時間の時点で、24時間保存群の方が30時間保存群より有意に良好な機能回復が見られた。しかし、30時間保存群においても、ドーパミンに対する反応性は良く、24時間保存群とほぼ同等な心機能を示し、24時間以上の保存の可能性が認められた。
【0049】
[実施例2]
本実施例は、本発明による心筋保護液を、肥大心筋の心筋保護液として用いたものである。
【0050】
一般に、hemodynamic overloadに起因する左室肥大心(臨床的には、先天性の心疾患、後天性の弁疾患あるいは肥大型心筋症など)は虚血に弱く、それは主に細胞内のカルシウム((Ca2+)i )調節能の変化と、利用するエネルギー基質の変化に関係していると考えられている。
【0051】
まず、細胞内のカルシウム((Ca2+)i )調節能の変化について説明する。すなわち、(Ca2+)i は心筋細胞が収縮する上で重要であるが、主に細胞膜にあるvoltage依存のCa2+チャンネルと、sarcoplasmic reticulum(SR)にあるCa2+チャンネル(ryanodine receptors)によって調節されている。そして、通常は、SRにあるCa2+チャンネルがCa2+調節に重要な役割を果たしているが、肥大心筋においては、voltage依存のCa2+チャンネルに大きく依存している。
【0052】
また、虚血中においても、細胞内外のイオン調節にエネルギーが使われるため、解糖系からのエネルギー供給が停止した場合、イオン分布が崩れ(特に、Ca2+、Na+ )、再灌流後の傷害が大きくなる。
【0053】
このエネルギー基質は、通常その2/3を脂肪酸代謝に依存しており、グルコースに依存する部分は20%以下と考えられているが、肥大心筋においては、これが解糖系依存へとシフトしている。そのため、虚血にさらされた肥大心筋では解糖系(嫌気性)が亢進するが、その代謝産物であるラクテートの蓄積および細胞内アシドーシスによって解糖系は直ちに停止し、エネルギー供給は絶たれることになる。従って、解糖系の抑制因子であるラクテート及びH+ を除去することにより、解糖系の促進を図り、肥大心筋においても、虚血中の良好なエネルギー産生を可能とすることができると考えられる。このような考えに基づき、塩基性アミノ酸であるヒスチジンを肥大心筋の保護に用いることとしたものである。
【0054】
以下、本発明の心筋保護液(HBS)を虚血時の肥大心筋に用いた場合の効果について説明する。
【0055】
(方法)
生後10日目の家兎を塩酸ケタミンの筋注により麻酔したのち開胸し、下行大動脈にbandingを施し、5〜7週ののち肥大心筋モデルとして実験に使用した。再びケタミン麻酔ののち肥大心を摘出し、ランゲンドルフ灌流モデルで灌流した。灌流液としては、酸素化したKrebs−Henseleit(K−H)液を使用し、30分後に後述の項目を測定した後、K−H液のK+ 濃度を20mMとした液(KCl)30mlあるいはHBS30mlを注入し、40分間37℃の温阻血を加え、さらに30分間再灌流した。再灌流30分の時点で同項目を測定した。
【0056】
測定項目としては、左心室内に挿入したバルーンにより脈圧と拡張期圧を測定し、虚血終了時に各心筋保護液(30ml)を注入、流出液を採取し、ラクテートを測定した。また、31P−NMR spectroscopyにより、細胞内の高エネルギーリン酸(phosphocreatine;PCr)、細胞内pH(pHi)を経時的に測定した。
【0057】
(結果)
肥大心の体重に対する左心室重量(LV/BW ratio)は、HBS群で4.4×10-3±0.6×10-3、KCl群で4.8×10-3±0.6×10-3であり、両群間に差はみられなかった。また、脈圧も虚血前には両群(各群n=5)で差はなかったが、30分の再灌流後ではKCl群で脈圧は有意に低下し、拡張期圧は有意に上昇した。一方、HBS群では拡張期圧は軽度上昇したが、脈圧は有意な低下を認めなかった(図14(A)(B))。さらに、虚血中に産生されたラクテート量はHBS群で有意に高値であった(図15)。
【0058】
また、細胞内pH(pHi)はKCl群で虚血後急速に低下し、40分の虚血後には、6.3±0.07pH units まで低下した。再灌流後は緩やかに回復したが、30分においても6.85±0.16pH units と虚血前より有意に低値であった(図16)。一方、HBS群では、虚血40分においても、細胞内pH(pHi)はよく保たれ(6.75±0.04)、再灌流後5分で前値に復した(図16)。
【0059】
また、phosphocreatine(PCr)は虚血中にKCl群で消失したが、HBS群では前値の約20%が残存していた。また、再灌流後には、HBS群ではほぼ前値に復したのに対し、KCl群では虚血前の約45%であった(図17)。
【0060】
(考察)
上記の結果より、肥大心筋において細胞内に蓄積されたラクテート及びH+ は細胞外に緩衝されており、その結果、嫌気性解糖が促進され、温阻血40分後においても高エネルギーリン酸であるphosphocreatine(PCr)は残存していた(図17)。このことから、本発明による心筋保護液は、再灌流後のエネルギー回復に良い影響を及ぼし、良好な心機能回復をもたらすものと考えられる。
【0061】
[実施例3]
本発明の心筋保護液を用いてウサギの心保存を行い、至適温度の検索を行った。
【0062】
(方法)
生後10日目の家兎を塩酸ケタミンの筋注により麻酔したのち開胸し、下行大動脈にbandingを施し、5〜7週ののち肥大心筋モデルとして実験に使用した。再びケタミン麻酔ののち肥大心を摘出し、ランゲンドルフ灌流モデルで灌流した。
【0063】
なお、心筋保護液としては、表14に示したような組成を有する本発明による心筋保護液(HBS)と、ウイスコンシン大学(UW)液を用いた。また、浸漬方法としては、心臓移植を想定して、長時間の保存の適否を判断するために、4℃保存の場合のみ単純浸漬保存を行い、その他の場合には、間欠投与(1回/1時間)を行った。さらに、心筋の保存温度としては、4℃、13℃、21℃の3つの場合について検証した。
【0064】
【表14】
(結果)
【表15】
表15及び図18〜図20に示したような結果が得られた。すなわち、図18に示したように、拡張期圧は、4℃で8時間保存した場合には、HBSとUWSともほぼ良好であったが、4℃で16時間保存した場合には、HBSでは良好であったが、UWSでは有意に上昇した。
一方、21℃で8時間保った場合には、HBSでは良好な結果が得られたが、UWSでは非常に高い値が得られた。さらに、HBSでは21℃で16時間保った場合でも、拡張期圧は低く抑えることができた。なお、一般に、拡張期圧は15〜20mmHgを超えたあたりから、不可逆的な心筋細胞傷害が起こると判断されている。
【0065】
また、図19に示したように、脈圧は、4℃で8時間保った場合には、HBSとUWSともほぼ良好であったが、4℃で16時間保った場合には、HBSでは良好であったが、UWSでは有意に低下した。
一方、21℃で8時間保った場合には、HBSでは良好な結果が得られたが、UWSでは非常に低い拡張期圧が得られた。さらに、HBSでは21℃で16時間保った場合でも、高い脈圧を得ることができた。なお、一般に、脈圧は高い方が心機能として良いと判断されている。
【0066】
さらに、HBSを用い、13℃で16時間、20時間、24時間保存した場合の拡張期圧及び脈圧を図20(A)(B)に示した。すなわち、図20(A)に示したように、本発明のHBSを用いて13℃で保存した場合には、24時間保存した後であっても、拡張期圧は約20mmHgであり、良好な心機能回復が可能と判断された。また、図20(B)に示したように、24時間保存後であっても、脈圧は虚血前の70%であった。
【0067】
これらの結果から、間欠投与で13℃、21℃に保たれた群において、16時間〜24時間の長時間の保存が可能であることが分かった。
【0068】
[実施例4]
本実施例は、本発明による心筋保護液を、30数例に臨床応用したものである。すなわち、cold blood cardioplegia(CBC…血液を希釈・冷却して用いる方法)という従来の心筋保護法を用いた場合と、本発明による心筋保護液を用いた場合の、手術後の心機能回復を検討した。
なお、本発明による心筋保護液の臨床での使用方法は、4℃に冷却したHBSを30分毎に投与するものである。
【0069】
その結果は、以下の通りである。すなわち、投与直後、心筋温度は15〜17℃まで低下したが、次回投与まで(30分後)には25〜27℃まで上昇した。また、2回目以降も同様の経過をたどった。
また、CBC投与群では、34例中5例に心室細動がみられ、除細動が必要であったが、HBS投与群では、すべての対象において心室細動はみられず、除細動は不要であった(すなわち、自己心拍を開始した)。
さらに、HBS投与群では、開心術中における強心剤の投与量は、CBC投与群に比べて明らかに少量であった。
このように、本発明の心筋保護液は、臨床に応用した場合にも、良好な結果を示した。
【0070】
[本実施形態の効果]
以上述べたように、本発明の心筋保護液によれば、13℃〜37℃の広い範囲の温度下において、良好な心筋保護が可能であり、また、手術中に氷が不要となり、心筋保護液に血液を用いないため、良好な視野が確保できる。さらに、投与方法が簡単であると共に、基本組成はアミノ酸であり、また、他の内容物も従来から用いられているものであるため、安全性は非常に高いものである。特に、肥大心筋や病的な状態にある心筋に顕著な効果があり、臨床応用に適した心筋保護液である。
【0071】
[他の実施形態]
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、アデノシンの含有量は0.05mM/L〜2mM/L、ヒスチジンの含有量は90mM/L〜110mM/L、グルコースの含有量は9mM/L〜12mM/L、インスリンの含有量は7I.U./L〜12I.U./L、リドカインの含有量は60mg/L〜120mg/L、の範囲内であれば、同様の効果が得られると考えられる。
【0072】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、虚血に弱い肥大心筋や病的心筋を保護し、局所冷却を用いず、無血視野で安全に手術を行うことを可能とし、良好な心機能回復が得られる心筋保護液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1におけるEnd−systolic elastance(Ees)を示す図
【図2】本発明の実施例1におけるequilibrium volume(Vo)を示す図
【図3】本発明の実施例1における拡張終期容量(Ved)を示す図
【図4】本発明の実施例1における心拍出量(CO)を示す図
【図5】本発明の実施例1における左室駆出率(EF)を示す図
【図6】本発明の実施例1における拡張期圧15mmHgで測定した脈圧を示す図
【図7】本発明の実施例1におけるドブタミン負荷によるEnd−systolic elastance(Ees)を示す図
【図8】本発明の実施例1におけるドブタミン負荷によるequilibrium volume(Vo)を示す図
【図9】本発明の実施例1におけるドブタミン負荷による拡張終期容量(Ved)を示す図
【図10】本発明の実施例1におけるドブタミン負荷による1回拍出量(SV)を示す図
【図11】本発明の実施例1におけるドブタミン負荷による心拍出量(CO)を示す図
【図12】本発明の実施例1におけるドブタミン負荷による左室駆出率(EF)を示す図
【図13】本発明の実施例1におけるドブタミン負荷による拡張期圧15mmHgで測定した脈圧を示す図
【図14】(A)は本発明の実施例2における脈圧を示す図、(B)は拡張期圧を示す図
【図15】本発明の実施例2における虚血中に産生されたラクテート量を示す図
【図16】本発明の実施例2における細胞内pHの変化を示す図
【図17】本発明の実施例2におけるPCrの変化を示す図
【図18】本発明の実施例3における拡張期圧を示す図
【図19】本発明の実施例3における脈圧を示す図
【図20】(A)は、13℃で16時間、20時間、24時間保存した場合の拡張期圧を示す図、(B)は脈圧を示す図
Claims (7)
- 開心術時に心臓に投与する心筋保護液において、ヒスチジンを90mM/L〜110mM/L、アデノシンを0.05mM/L〜2mM/L含有することを特徴とする心筋保護液。
- 開心術時に心臓に投与する心筋保護液において、ヒスチジンを90mM/L〜110mM/L、アデノシンを0.05mM/L〜2mM/L含有し、肥大心筋の保存に用いることを特徴とする心筋保護液。
- 開心術時に心臓に投与する心筋保護液において、解糖系の基質となるグルコースを9mM/L〜12mM/L、細胞内へのグルコース摂取量を高めるインスリンを7I.U./L〜12I.U./L、Naチャンネルブロッカーであるリドカインを60mg/L〜120mg/L含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の心筋保護液。
- 開心術時に心臓に投与する心筋保護液において、ヒスチジンを100mM/L、アデノシンを0.1mM/L含有することを特徴とする心筋保護液。
- 開心術時に心臓に投与する心筋保護液において、ヒスチジンを100mM/L、アデノシンを0.1mM/L含有し、肥大心筋の保存に用いることを特徴とする心筋保護液。
- 開心術時に心臓に投与する心筋保護液において、L−Histidineを100mM/L、KH2PO4を2.5mM/L、KClを20mM/L、MgSO4・7H2Oを6mM/L、NaClを80mM/L、CaCl2を0.1mM/L、Adenosineを0.1mM/L、D−glucoseを11mM/L、Mannitolを20mM/L、Lidocaineを100mg/L、NaOHを3.6mM/L、Insulinを10I.U./L含有することを特徴とする心筋保護液。
- pHが7.7〜7.9である請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の心筋保護液。
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