JP4333011B2 - 熱交換器の汚染防止方法およびこの方法に用いる熱交換器 - Google Patents

熱交換器の汚染防止方法およびこの方法に用いる熱交換器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアコン、冷蔵庫、除湿機、および自動車等の放熱・冷却に用いる熱交換器、および熱交換器の汚染防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エアコンや冷蔵庫等に用いられる熱交換器における脱臭技術として、例えば、特開平8−296992号公報に開示されているものがある。この公報では、熱交換器のアルミフィン表面に光触媒をバインダーを用いて塗布し、紫外線ランプを熱交換器に照射するように配設することにより、光触媒の作用により臭気の原因となる熱交換器表面への有機物質の付着・蓄積を低減する熱交換器が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この技術では、熱交換器の表面に光触媒を塗布する作業の他に、紫外線ランプなどを配設しなければならず、設備を増設することによるコストアップなどにより、コスト面で不利であるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑み、設備を増やすこと無く安価な手法にて、表面に付着する有機物質を低減することができる熱交換器の汚染防止方法、およびこの方法に用いる熱交換器を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明者らの一人は、ポリアニリンの化学変化について示す図である図8に示すように、乾燥と湿潤によりポリアニリンのレドックス平衡状態を変えることで、ポリアニリンが可逆的に酸性型と還元型をとることに着目した。そして、ポリアニリンがレドックス反応の触媒となる、いわゆるレドックス触媒としての能力を持つことを知り、これを利用して活性酸素を発生させる方法を発明した。この発明は、すでに特開平9−175801号公報にて開示されている。
【0006】
そして、発明者らは、熱交換器の臭いや汚れが熱交換器の表面に付着する有機物質であることに着目し、この有機物質を、例えば上記ポリアニリンのような、水と接触すると活性酸素を発生する物質を用いて分解すればよいのではないかと考えた。
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、熱交換器における金属基材(4)の表面に、水と接触すると活性酸素を発生する被膜(9)を設け、水は、熱交換器の稼働時に金属基材(4)の表面に生成する凝縮水(8)であって、凝縮水(8)と被膜(9)とを接触させ、凝縮水(8)に溶け込んだ酸素を活性化させることにより、活性酸素を発生させ、発生した活性酸素によって、金属基材(4)の表面に付着した有機物質を低減させ、熱交換器の非稼働時に、凝縮水(8)により湿潤した金属基材(4)の表面が乾燥することにより、活性酸素の発生を自動的に停止する、もしくは活性酸素の発生能力の再生を行うことを特徴としている。
【0008】
それによれば、金属基材(4)の表面に被膜(9)を形成するという簡単な方法により、被膜(9)の周囲に存在する水分中に溶け込んでいる酸素と被膜(9)とを接触させ、活性酸素を発生させることができる。そして、発生した活性酸素の酸化作用により、金属基材(4)の表面に付着した有機物質を分解することができる。よって、本発明によれば、設備を増やすこと無く安価な手法で、有機物質を低減させることができる。
【0012】
請求項に記載の発明では、請求項1および請求項の発明において、被膜(9)が電子供与重合体からなることを特徴としている。これにより凝縮水(8)に溶け込んでいる酸素に電子を与えることにより、酸素を活性酸素とすることができる。
【0013】
この電子供与重合体としては、請求項に記載の発明のように、ポリアニリンまたはポリアニリンの誘導体からなるものを用いることができ、より具体的には、請求項に記載の発明のように、上記式(化1)〜(化4)で表わされるポリアニリンのうちの少なくとも1つを含む重合体からなるものを用いることができる。
【0014】
請求項に記載の発明では、熱交換器における金属基材(4)の表面に、水と接触すると活性酸素が発生する被膜(9)を形成し、水を、稼働時に金属基材(4)の表面に生成する凝縮水(8)とし、凝縮水(8)と被膜(9)とが接触し、凝縮水(8)中に活性酸素が発生されるようにしており、非稼働時に、凝縮水(8)により湿潤した金属基材(4)の表面が乾燥することにより、活性酸素の発生が自動的に停止され、もしくは活性酸素の発生能力の再生が行われるようにしていることを特徴としている。これにより、請求項1の発明と同様の理由から、設備を増やすこと無く安価な手法で、有機物質を低減することができる熱交換器を提供することができる。
【0016】
なお、本発明でいう活性酸素とは、通常の酸素に比べて著しく活性が高く化学反応を起こしやすい酸素をいい、具体的には、一重項酸素、スーパーオキシドアニオンラジカル(・O2 -)、ヒドロキシラジカル(・OH)、スーパーヒドロキシラジカル(・OOH)および過酸化水素等をいうものとする。
【0017】
また、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
まず、本実施形態で用いる、レドックスポリマーである電子供与重合体としてのポリアニリンの合成方法、合成されたポリアニリンによる活性酸素(スーパーオキシド、および過酸化水素)の発生の検証、および有機物質の分解性能の検証について一例を示す。
【0019】
(ポリアニリンの合成方法1)過硫酸アンモニウム12gを含む1mol/l塩酸水溶液50mlを氷冷浴中で十分に冷却する。そして、同じく冷却したアニリン約2.8gを含む1mol/l塩酸水溶液300mlに対して、上記過硫酸アンモニウムを含む塩酸水溶液を徐々に添加し、冷却を続けながら1時間30分攪拌した。溶液は無色から緑青色に変化し、下記化学式9(上記化学式1および5と同等のもの)で示されるポリアニリンが生成した。
【0020】
【化9】
(ここで、Aは陰イオンを表わし、nは2以上5000以下の範囲の整数を表わし、xとyは、x+y=1および0≦y≦0.5を同時に満たす数である。)上記方法により生じた生成物を吸引ろ過し、1モル塩酸水溶液とアセトンでよく洗浄した。次に、これを28%アンモニア水に懸濁し、5分間攪拌することにより、下記化学式10(上記化学式2および6と同等のもの)で示されるポリアニリンが得られた。
【0021】
【化10】
(ここで、nは2以上5000以下の範囲の整数を表わし、xとyは、x+y=1および0≦y≦0.5を同時に満たす数である。)
次に、この方法により合成されたポリアニリンを用いた場合の、活性酸素としてのスーパーオキシド、およびスーパーオキシドが変化して生成される過酸化水素の発生について調べた。
【0022】
(スーパーオキシド(・O2 -)の検出)スーパーオキシドの検出は、ルミネッセンサーAB−2100(アトー製)を用いた。上記ポリアニリンの合成方法1により得られたポリアニリン粉末を、上記ルミネッセンサーに付属の黒色の96ウェルプレート(以下、単にウェルプレートという)に適量計量した。
【0023】
そして、上記ルミネッセンサー用のオプションポンプを用いて、pH7.0の25mmol/lイミダゾール緩衝液を、上記ウェルプレート内に100μl注入した。その後、直ちにスーパーオキシドによって特異的に発光するTDPO−Pyren溶液を、ルミネッセンサーの標準ポンプを用いてウェルプレート内に100μl注入して発光量を計測し、スーパーオキシドの発生量をこの発光量として求めた。上記と同様の方法により、ポリアニリンの上記ウェルプレートへの添加量を変化させて測定した。
【0024】
この結果を図1に示す。図1では、横軸がポリアニリンの添加量を示し、その単位は1つのウェルプレートにおけるポリアニリンの質量(これをmg/wellで示す)である。また、縦軸は発光量(counts)を示している。図1から、ポリアニリンの添加量が増加するにつれ発光量が増加し、スーパーオキシドが増加していることが確認された。従って、ポリアニリンによりイミダゾール緩衝液中の溶存酸素が活性化され、確実にスーパーオキシドが生成されていることが分かった。
【0025】
(過酸化水素の検出)上記ポリアニリンの合成方法1により得られたポリアニリン粉末を、100mlのビーカーに適量計り取り、純水を10ml添加して攪拌した。攪拌時間は、10分、1時間、24時間とし、ポリアニリンの濃度を変化させて、過酸化水素の濃度を測定した。過酸化水素の定量は、ペルオキシダーゼ酵素法により行った。
【0026】
この結果を図2に示す。図2では、横軸がポリアニリンの濃度(wt%)であり、縦軸が過酸化水素濃度(ppm)である。また、白丸で示されるプロットが、10分間攪拌した結果であり、白四角で示されるプロットが1時間攪拌した結果であり、白三角で示されるプロットが24時間攪拌した結果である。
【0027】
この結果から、ポリアニリンの添加量を多くするほど、過酸化水素濃度が高くなっていることが確認された。従って、スーパーオキシドの検出結果と同様に、ポリアニリンにより純水中の溶存酸素が活性化され、確実にスーパーオキシドが生成されていることが分かった。
【0028】
また、攪拌時間を長くすると、過酸化水素濃度が高くなることも確認され、長時間にわたって活性酸素を発生させる能力を維持することが分かった。なお、24時間攪拌させた場合に、10分攪拌させた場合よりも過酸化水素濃度が低下したのは、発生した過酸化水素が分解されたためである。
【0029】
ここで、上記純水中において発生した活性酸素の量を、過酸化水素の生成量を指標として調べたのは、不均化反応によりスーパーオキシドから過酸化水素が生成するという原理に基づくものである。
【0030】
熱交換器の表面には臭気成分や微生物、ウィルスなどの有機物質が付着し、熱交換器や凝縮水が汚染される。そして、この汚染を防止することが本実施形態の目的であり、本実施形態はポリアニリンにおける上記活性酸素の発生能力を利用して行おうとするものである。次に、このポリアニリンを用いた有機物質の分解性能の一例として殺菌性能について示す。
【0031】
(殺菌性能)上記ポリアニリンの合成方法1で得られた粉末状のポリアニリンを、菌の濃度が約10000個/mlである大腸菌液に添加し、添加するポリアニリンの濃度を変化させて、経時的な菌数の変化をコロニー測定法で測定した。この結果を図3に示す。
【0032】
図3では、横軸がポリアニリンを添加してからの経過時間(分)、縦軸が菌の濃度(個/ml)を示している。図中、黒丸で示されるプロットは、比較例を示しており、ポリアニリンを添加しなかった結果である。また、白丸、黒三角、白三角、および白四角で各々示されるプロットは、ポリアニリンの濃度が、各々0.5wt%、1.0wt%、2.0wt%、および5.0wt%であるものを用いたことを示している。
【0033】
図3から分かるように、ポリアニリンを添加すると、時間の経過とともに菌数が減少していく(菌が分解される)ことが確認された。また、ポリアニリンの濃度が高いほど殺菌効果があることが分かった。
【0034】
以上のように合成されたポリアニリンにおいては、酸素が溶け込んだ水とポリアニリンとが接触すると、溶存酸素が活性酸素となり、その活性酸素が有機物質である大腸菌を低減させることが分かった。
【0035】
次に、このようなポリアニリンを用いた熱交換器および熱交換器の汚染防止方法について述べる。ここでは、例えば、自動車用のエアコンの熱交換器に適用した例について述べる。図4は、自動車用のエアコンの熱交換器の一例を示す斜視図である。この熱交換器1は、図の上下方向を上下にして、図示しない自動車用空調装置のクーリングユニットケース内に設置される。
【0036】
熱交換器1の左右方向の一端側には配管ジョイント2が配設されている。また、多数のチューブ3が並列配置され、このチューブ3内の冷媒通路を流れる冷媒とチューブ3の外部を流れる空気とを熱交換させる熱交換部4を備えている。
【0037】
この熱交換部4において、隣接するチューブ3の外面側相互の間隙に放熱フィン5を接合して、空気側の伝熱面積の増大を図っている。また、このチューブ3の上部および下部はタンク6と連通されており、冷媒が各々のチューブ3およびタンク6を循環し、配管ジョイント2を介して熱交換器1の外部と流出入している。なお、これらの各部品はアルミニウム材からなる。
【0038】
この様な構成の熱交換器1における、熱交換部(請求項でいう金属基材)4の表面に、ポリアニリンからなる皮膜を形成しておく。ここで、このポリアニリンの熱交換部への担持方法の一例について述べる。まず、ポリアニリンを、例えばN−メチルピロリドン等の適当な有機溶媒に溶解させる。次に、熱交換器1における熱交換部4の表面に対して、この液体を塗布する。このようにして、ポリアニリンが熱交換部4に担持される。
【0039】
そして、エアコンの稼動時に、図中、矢印Aで示される水蒸気7を含んだ空気が、車両の前方から熱交換器1を通過する。この際に、熱交換部4とこの空気とが接触すると空気の露点が下がり、空気中の水蒸気が水滴となって熱交換部4の表面に凝縮水として付着する。
【0040】
図5は、この熱交換部の表面の模式図である。図5に示すように、熱交換部4の表面に付着した凝縮水8とポリアニリンからなる皮膜9とが接触すると、ポリアニリンが凝縮水8中の溶存酸素(O2)を還元し(溶存酸素に電子を与え)、活性酸素であるスーパーオキシドアニオンラジカル(O2 -)となる。そして、この活性酸素が凝縮水8中の臭気成分や微生物、細菌などの有機物質を分解する。
【0041】
その結果、図4中矢印Bで示される、熱交換器1を通過した空気は、脱臭され殺菌されたものとなり、クリーンな空気が車両内の空気吹き出し口から排出される。
【0042】
ところで、本実施形態によれば、特別な設備を設けずに、ポリアニリンからなる被膜9を熱交換部4の表面に形成するという簡単な手法により、凝縮水8中の溶存酸素と被膜9とを接触させ、活性酸素を発生させることができる。そして、発生した活性酸素の酸化作用により、熱交換部4の表面に付着した大腸菌を分解することができる。従って、設備を増やすこと無く安価な手法で、熱交換器の表面に付着した微生物、ウィルスなどの有機物質を低減することができる。
【0043】
また、この殺菌はポリアニリンと凝縮水とが接触することにより活性酸素が発生されて行われるものである。従って、エアコンの停止時などの熱交換器が稼動していない時は、熱交換器を通過する空気等により凝縮水が蒸発して、熱交換部の表面が乾燥するため、活性酸素の発生が自動的に停止される。
【0044】
さらに、ポリアニリンは、乾燥させると活性酸素の発生能力が再生される(上記特開平9−175801号公報参照)ため、この熱交換部の乾燥によりポリアニリンも乾燥され、活性酸素の発生能力が回復して繰り返し使用することができる。
【0045】
なお、ポリアニリンの熱交換部への担持方法は、上記方法に限定されるものではなく、例えば、次に示すような方法でもよい。まず、ポリアニリンを適当な水溶液に可溶化させる。具体的には、スルホン酸基等の親水性の官能基をポリアニリンに導入しておき、このポリアニリンを水に溶解させるという方法がある。または、ポリアニリンを適当なバインダーと混合する。
【0046】
そして、上記ポリアニリンが含有された液体(水溶液やバインダーとの混合物)に、熱交換器の金属基材としての熱交換部を浸漬させたり、熱交換部に対して、この液体をスプレーしたりする。このようにして、ポリアニリンが担持される。また、その他の担持方法を用いてもよい。
【0047】
また、金属基材4としての、放熱フィン5やチューブ3がアルミニウム材からなるものについて示したが、クロムや、シリコン、または銅などを用いることができる。
【0048】
次に、ポリアニリンを電解重合により合成する例について示す。まず、ポリアニリンの合成方法について示す。
【0049】
(ポリアニリンの合成方法2)アニリン0.2モル、硫酸0.5モルを含む水溶液中に、作用極としてアルミ板を、対極として白金電極を、また、参照電極として標準カロメル電極を用意した。そして、ポテンシオスタットを用いて、作用極に対して標準カロメル電極を基準として1.2Vの定電位を印加した。このアルミ板は、厚さ1mmで平面形状が一辺30mmの正方形である。
【0050】
約10分後、上記アルミ板上に緑色の上記化学式9で示されるポリアニリンの膜が生成した。そして、この膜を純水でよく洗浄した後、1wt%の炭酸ナトリウム水溶液に浸漬し、上記化学式10で示されるポリアニリンの膜とした。次に、このポリアニリンの殺菌性能について示す。
【0051】
(殺菌性能)上記ポリアニリンの合成方法2と同様にして、厚さ1mmで、平面形状が一辺15mmの正方形であるポリアニリン担持アルミ板を作成した。このアルミ板に菌の濃度が約1000個/mlである大腸菌の懸濁液を100μl添加した。そして、アルミ板全体に大腸菌液が接触するように、一辺30mmの正方形であるビニールシートで覆った。経時後、コロニー測定法にて菌数の変化を調べた。この結果を図6に示す。
【0052】
図6において、横軸は経過時間(分)であり、縦軸はこのアルミ板1枚あたりにおける菌の数(個/アルミ板)である。図中、黒丸で示されるプロットは比較例を示しており、ポリアニリンが担持されていないアルミ板を用いたものである。また、黒四角で示されるプロットはポリアニリンを担持させた場合の結果である。
【0053】
図6から分かるように、時間が経つに従って、菌数が減少していくことが確認された。つまり、ポリアニリンを添加することにより殺菌されることが分かった。
【0054】
本実施形態の合成方法を用いた場合、上記ポリアニリンの合成方法2における作用極を熱交換器の熱交換部とすることにより、この熱交換部の表面にポリアニリンを電析させることができる。そして、第1実施形態と同様にして、凝縮水中の溶存酸素を活性酸素とし、熱交換器に付着した有機物質を低減させることができる。
【0055】
ところで、主としてポリアニリンの殺菌性能について述べてきたが、次に、ポリアニリンの脱臭・分解性能について、熱交換器の熱交換部をモデル化し、ハニカム形状の部材の表面にポリアニリンを形成して調査した結果を示す。まず、この脱臭・分解性能の測定に用いたポリアニリンの合成方法について示す。
【0056】
(ポリアニリンの合成方法3)各辺の長さが、30mm、30mm、10mmである直方体のアルミナ製のハニカムを、アニリン0.1モル、塩酸1モルを含む冷却した水溶液30mlに浸漬した。その後、同じく冷却した過硫酸アンモニウム1.2gを含む1モル塩酸水溶液5mlを添加し、約1時間冷却しながら放置し、アルミナ製のハニカムの細孔内部におけるアルミナ表面に、上記化学式9で示されるポリアニリンを合成した。
【0057】
そして、このハニカムを純粋でよく洗浄した後、1wt%炭酸ナトリウム水溶液に浸漬し、上記化学式10で示されるポリアニリンとした。なお、ハニカム表面に付着した余分なポリアニリンはエアガンを用いて除去した。この合成方法によるポリアニリンの担持量は約0.2gであった。次に、このポリアニリンの脱臭・分解性能について示す。
【0058】
(脱臭・分解性能)上記ポリアニリンの合成方法3で得られた、ポリアニリン担持アルミナ製ハニカムを、10リットルの臭気成分用テドラーバッグに入れ、このテドラーバッグ内に酸素を用いて10ppmに調整した、臭気成分としてのメチルメルカプタンガス10リットルを注入した。
【0059】
そして、上記テドラーバッグのガスサンプリング口から、注射器を使ってポリアニリン担持ハニカムに水を噴霧し、メチルメルカプタンガスの濃度と酸化物の生成を、経時的にガスクロマトグラフィーを用いて分析した。
【0060】
この結果を図7に示す。図7の横軸は経過時間(分)を示し、縦軸は、メチルメルカプタンの濃度(ppm)を示している。また、白丸で示されるプロットは比較例であり、ポリアニリンを担持させていないハニカムに水を噴霧した結果である。白四角で示されるプロットは、ポリアニリンを担持させたハニカムに水を噴霧したものである。白三角で示されるプロットは、ポリアニリンを担持させたハニカムに水を噴霧しなかったものである。
【0061】
この結果から、ポリアニリンに水を添加すると、メチルメルカプタンは時間と共に脱臭されることが確認された。従って、ポリアニリンを熱交換器の表面に形成した場合に、脱臭効果を有することが分かった。
【0062】
次に、下記化学式11(上記化学式3および7と同等のもの)および化学式12(上記化学式4および8と同等のもの)で示されるポリアニリンの合成方法について述べる。
【0063】
【化11】
【0064】
【化12】
(ここで、上記化学式11および12において、Aは陰イオンを表わし、nは2以上5000以下の範囲の整数を表わす。)
(ポリアニリンの合成方法4)アニリン0.1mol/l、硫酸0.5mol/l、硫酸ナトリウム0.2mol/lおよびピリジン0.3mol/lを含む水溶液に、作用極として白金板を、対極としてステンレス板、また参照電極として標準カロメル電極を用いた。そして、作用極に、標準カロメル電極を基準として0.7Vの定電位を印加した。約40分後、白金板上に緑色のポリアニリン膜が生成した。
【0065】
次に、この膜をよく水洗いした後、硫酸0.5mol/lおよび硫酸ナトリウム0.2mol/lを含む水溶液に浸漬し、標準カロメル電極と等電位となるようにした。このようにして、淡い黄色である上記化学式11示されるポリアニリンを合成した。
【0066】
(ポリアニリンの合成方法5)冷却した過硫酸アンモニウム183.4gを含む1mol/l塩酸水溶液800mlを、冷却しアニリン74.4gを含む1mol/l塩酸水溶液1200ml中に、窒素雰囲気下で攪拌しながら1分以上かけて加え、さらに、5℃で1時間30分攪拌した。
【0067】
その後、沈殿物を濾別し、1mol/lの塩酸で洗浄し、ドーパント率(プロト化率)が0%のポリアニリンを得た。そして、このポリアニリンをヒドラジン2水和物の20vol%のメタノール溶液中に添加し、3時間攪拌した。続いて、この溶液中の沈殿物をろ過した後洗浄し、さらに減圧下で乾燥することにより上記化学式12で示されるポリアニリンを合成した。
【0068】
なお、上記化学式11および12で示されるポリアニリンを用いた場合も、上記殺菌性能および脱臭・分解性能が同様に発揮されることを確認している。
【0069】
(他の実施形態)
上記実施形態で示した方法の他に、ポリアニリンは、酸化剤を用いる化学的合成法および電気化学的合成法などの既知の方法により合成することができる。また、上記実施形態では、上記化学式9で示されるポリアニリンから、上記化学式10で示されるポリアニリンを合成しているが、化学式9で示されるポリアニリンをそのまま被膜として用いることもできる。また、アミノベンゼンスルホン酸などのアニリン誘導体の重合体を用いることも可能である。
【0070】
また、熱交換器の表面に形成する皮膜としては、活性酸素を発生させる能力を持っていれば、特にポリアニリンに限定されるものではなく、アニリンブラック、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセンなどのベンゼン縮合環化合物などの電子供与重合体を用いることができる。
【0071】
また、本発明を自動車のエアコンの熱交換器に適用する例について示したが、その他、冷蔵庫や除湿機にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリアニリンによるスーパーオキシドの生成に関するグラフである。
【図2】ポリアニリンによる過酸化水素の生成に関するグラフである。
【図3】ポリアニリンの殺菌性能に関するグラフである。
【図4】熱交換器の一例を示す斜視図である。
【図5】熱交換部の表面の模式図である。
【図6】他のポリアニリンの殺菌性能に関するグラフである。
【図7】ポリアニリンの脱臭性能に関するグラフである。
【図8】ポリアニリンの化学変化に関する図である。
【符号の説明】
4…熱交換部、8…凝縮水、9…被膜。

Claims (11)

  1. 金属基材(4)からなる熱交換器の汚染防止方法において、
    前記金属基材(4)の表面に、水と接触すると活性酸素を発生する被膜(9)を設け、
    前記水は、前記熱交換器の稼働時に前記金属基材(4)の表面に生成する凝縮水(8)であって、
    前記凝縮水(8)と前記被膜(9)とを接触させ、前記凝縮水(8)に溶け込んだ酸素を活性化させることにより、前記活性酸素を発生させ、
    発生した前記活性酸素によって、前記金属基材(4)の表面に付着した有機物質を低減させ
    前記熱交換器の非稼働時に、前記凝縮水(8)により湿潤した前記金属基材(4)の表面が乾燥することにより、前記活性酸素の発生を自動的に停止する、もしくは前記活性酸素の発生能力の再生を行うことを特徴とする熱交換器の汚染防止方法。
  2. 前記金属基材(4)が、アルミニウムからなることを特徴とする請求項に記載の熱交換器の汚染防止方法。
  3. 前記被膜(9)が、電子供与重合体からなることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器の汚染防止方法。
  4. 前記電子供与重合体が、ポリアニリンまたはポリアニリンの誘導体からなることを特徴とする請求項に記載の熱交換器の汚染防止方法。
  5. 前記ポリアニリンが、下記の化学式1ないし化学式4で表わされるポリアニリンのうちの少なくとも1つを含む重合体からなることを特徴とする請求項に記載の熱交換器の汚染防止方法。
    (ここで、上記化学式1ないし化学式4において、Aは陰イオンを表わし、nは2以上5000以下の範囲の整数を表わし、xとyは、x+y=1および0≦y≦0.5を同時に満たす数である。)
  6. 金属基材(4)からなる熱交換器において、
    前記金属基材(4)の表面に、水と接触すると活性酸素を発生する被膜(9)が形成されており、
    前記水は、稼働時に前記金属基材(4)の表面に生成する凝縮水(8)であって、
    前記凝縮水(8)と前記被膜(9)とが接触し、前記凝縮水(8)中に前記活性酸素が発生されるようになっており、
    非稼働時に、前記凝縮水(8)により湿潤した前記金属基材(4)の表面が乾燥することにより、前記活性酸素の発生が自動的に停止され、もしくは前記活性酸素の発生能力の再生が行われるようになっていることを特徴とする熱交換器。
  7. 前記金属基材(4)がアルミニウムよりなることを特徴とする請求項に記載の熱交換器。
  8. 前記被膜(9)が、電子供与重合体からなることを特徴とする請求項6または7に記載の熱交換器。
  9. 前記電子供与重合体が、ポリアニリンまたはポリアニリンの誘導体であることを特徴とする請求項に記載の熱交換器。
  10. 前記ポリアニリンが、下記の化学式5ないし化学式8で表わされるポリアニリンのうちの少なくとも1つを含む重合体からなることを特徴とする請求項に記載の熱交換器。
    (ここで、上記化学式5ないし化学式8において、Aは陰イオンを表わし、nは2以上5000以下の範囲の整数を表わし、xとyは、x+y=1および0≦y≦0.5を同時に満たす数である。)
  11. 自動車用エアコンに用いられることを特徴とする請求項ないし10のいずれか1つに記載の熱交換器。
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