JP5342902B2 - 溶接熱影響部の靭性および母材疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法 - Google Patents

溶接熱影響部の靭性および母材疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、橋梁や高層建造物、船舶などに使用される鋼材に関するものであり、特に、溶接したときに熱影響を受ける部位(以下、「溶接熱影響部」または「HAZ」と呼ぶことがある。)の靭性と、鋼材自体の疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法に関するものである。
橋梁や高層建造物、船舶などに使用される鋼材に要求される特性は、近年益々厳しくなっており、とりわけ良好な靭性が求められている。これらの鋼材は、一般的に溶接して接合されることが多いが、溶接継手部のうち、特にHAZは溶接時に熱影響を受けて靭性が劣化しやすいという問題がある。この靭性劣化は溶接時の入熱量が大きくなるほど顕著に現れ、その原因は、溶接時の入熱量が大きくなるとHAZの冷却速度が遅くなり、焼入性が低下して粗大な島状マルテンサイトを生成することにあると考えられている。従ってHAZの靭性を改善するには、溶接時の入熱量を極力抑えればよいと考えられる。しかしその一方で、溶接作業効率を高めるうえでは、例えばエレクトロガス溶接、エレクトロスラグ溶接、サブマージ溶接などの溶接入熱量が50kJ/mm以上の大入熱溶接法の採用が望まれる。
そこで本出願人は、大入熱溶接法を採用した場合のHAZ靱性劣化を抑制する鋼材を特許文献1〜3に提案している。これらの鋼材は、酸化物としてREMの酸化物および/またはCaOと、ZrO2を含有しているところに特徴がある。上記酸化物は、溶鋼中では液状で存在するため鋼中に微細分散する。しかも上記酸化物は熱的に安定であり、例えば、1400℃レベルの高温に長時間曝されても固溶して消失しないため、HAZ靱性の向上に大きく寄与する。
ところで、橋梁や高層建造物、船舶など構造物は、繰り返し応力を受けることで疲労破壊するため、構造物の安全性を確保する観点から素材として用いられる鋼材には疲労特性が良好であることが望まれている。鋼材の疲労過程は、応力集中部での亀裂の発生と、発生した亀裂が鋼材中を進展するという二つの過程に大別して考えられている。
亀裂の発生については、構造物の疲労亀裂は溶接継手の始端部から発生することが多いため、疲労亀裂の発生を抑制するために、溶接継手の始端形状を改善することが検討されている。
これに対し、鋼材に発生した疲労亀裂は鋼材中を進展していくが、亀裂が進展すると、最終的には鋼材自体が破断してしまうため、発生した亀裂は進展が速やかに停止されるか、或いは亀裂の進展速度をできるだけ小さくして亀裂を進展し難くすることが望まれる。疲労亀裂の進展速度を小さくする技術として、非特許文献1〜3が提案されている。非特許文献1には、金属組織を軟質層(フェライト)と硬質層(マルテンサイト)の混合組織とし、硬質層(マルテンサイト)を偏平化させることで、疲労亀裂を迂回させて疲労亀裂の進展速度を小さくする技術が開示されている。非特許文献2と3には、軟質層(フェライト)に硬質層を分散させることによって疲労亀裂を迂回させて疲労亀裂の進展速度を小さくする技術が開示されている。なお、非特許文献2では、硬質層としてベイナイトを生成させており、非特許文献3では、硬質層としてパーライトを生成させている。
特開2007−100213号公報 特開2007−247004号公報 特開2007−247005号公報
中島清孝他、「厚鋼板の疲労亀裂進展特性と溶接継手疲労特性に及ぼす硬質第二相の影響」、溶接構造シンポジウム2004講演論文集、2004年、335頁 誉田登他、「疲労亀裂進展を自己抑制する新機能厚鋼板およびその継手特性」、溶接学会誌第74巻第4号、2005年、25頁 伊木聡他、「造船用高機能鋼−JFEスチールのライフサイクルコスト低減技術−」、JFE技報No.5、JFEスチール、2004年8月、13頁
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、その目的は、入熱量が50kJ/mm以上の大入熱溶接を行なった場合であってもHAZ靭性に優れており、しかも母材自体の疲労特性を改善した鋼材を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記鋼材の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る溶接熱影響部の靭性および母材疲労特性に優れた鋼材とは、C:0.02〜0.12%(「質量%」の意味。以下、化学成分および酸化物について同じ。)、Si:0.5%以下(0%を含む)、Mn:1〜2%、Zr:0.0002〜0.050%、REM:0.0002〜0.050%、Ca:0.0005〜0.010%、Ti:0.005〜0.02%、N:0.0040〜0.01%、O:0.0005〜0.010%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.015%以下(0%を含まない)、Al:0.05%以下(0%を含む)を満足し、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼材であり、
(a)前記鋼材は、Zr、REM、およびCaを含有する酸化物を含み、
(b)前記鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定して単独酸化物として換算したとき、ZrO2:5〜50%、REMの酸化物(REMをMの記号で表すとM23):10〜50%、およびCaO:5.0〜50%を満足すると共に、
(c)前記鋼材に含まれる全酸化物のうち、円相当直径で0.1〜2.0μmの酸化物が1mm2あたり120個以上、円相当直径で5.0μm超の酸化物が1mm2あたり5個以下であり、
(d)前記鋼材の金属組織を後方散乱電子回折法(EBSP法)で観察したとき、下記(1)式と(2)式を満足し、
(e)前記鋼材の平均硬さが170Hv以上である点に要旨を有する。
D≦25μm ・・・(1)
R≦70面積% ・・・(2)
[但し、(1)式中、Dは、EBSP法で隣接する2つの結晶の方位差を測定し、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径(μm)を意味する。
また、(2)式中、Rは、上記大角粒界に占めるランダム粒界の割合(面積%)を意味する。]
前記鋼材は、更に他の元素として、
(1)Ni:0.4%以下(0%を含まない)、Cu:0.3%以下(0%を含まない)、Cr:1.5%以下(0%を含まない)、およびMo:1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、
(2)Nb:0.1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)、およびB:0.005%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、
等を含有してもよい。
本発明の上記鋼材は、溶鋼の溶存酸素量を0.0010〜0.0060%の範囲に調整した後、溶鋼を攪拌して溶鋼中の酸化物を浮上分離させることによって全酸素量を0.0010〜0.0070%の範囲に調整してから、Ti、次いでZr、REM、およびCaを添加して成分組成を調整した後、鋳造を行なうと共に、熱間圧延に際して、鋼片を1100〜1250℃に加熱した後、1050℃以下、Ar3点+100℃を超える温度域において1パスあたりの平均冷却速度が1.5℃/秒以上となるように冷却しながら累積圧下率が40%以上となるように第1圧延を行ない、次いでAr3点+100℃以下、Ar3点を超える温度域において1パスあたり最大圧下率を12%以下、累積圧下率を50%以上となるように第2圧延を行なった後、表面温度が500℃以下となる温度域まで平均冷却速度5℃/秒以上で冷却することによって製造できる。
前記Zr、REM、およびCaを添加した後は、40分を超えない範囲で溶鋼を攪拌してから鋳造を行なうことが好ましい。前記第1圧延は、オーステナイト再結晶温度域において行なうことが好ましい。前記圧延材の表面温度が500℃以下となる温度域まで平均冷却速度5℃/秒以上で冷却した後は、500℃以上、Ac1点未満の温度範囲で焼き戻し処理を行なってもよい。
本発明によれば、粒内フェライト変態の核となる酸化物(Zr、REM、およびCaを含有する酸化物)が所定量生成されていると共に、鋼材中に存在する酸化物の大きさと個数(粒度分布)も適切に制御されているため、大入熱溶接時のHAZ靭性に優れた鋼材を提供できる。特に本発明の鋼材では、HAZ靱性向上に有用な円相当直径が0.1〜2μmの微細な酸化物が所定量以上存在するだけでなく、HAZ靱性向上に悪影響を及ぼすことが明らかになった円相当直径が5.0μm超の粗大な酸化物の個数が有意に抑制されているため、上記特許文献1の実施例に開示されたHAZ靱性評価方法よりも大きな入熱量で溶接を行なってもHAZ靱性を高めることができる。
また、本発明によれば、金属組織をEBSP法で観察したときに、結晶方位差が15°以上の大角粒界(以下、単に「大角粒界」と呼ぶことがある。)で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dを25μm以下、および大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rを70%以下に制御しており、且つ母材の平均硬さを170Hv以上に制御しているため、母材自体の疲労特性も改善できる。
図1は、実施例で用いたコンパクト型試験片(CT試験片)の形状を示す概略説明図である。 図2は、大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dと衝撃特性(vE-60)の関係を示すグラフである。 図3は、大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rと疲労亀裂進展速度(da/dN)の関係を示すグラフである。 図4は、圧延材の平均硬さと疲労亀裂進展速度(da/dN)の関係を示すグラフである。 図5は、Ar3点+100℃以下での累積圧下率と大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dの関係を示すグラフである。 図6は、γ粒径と大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dの関係を示すグラフである。 図7は、1050℃以下での累積圧下率とγ粒径の関係を示すグラフである。 図8は、大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dと大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rの関係を示すグラフである。
本発明は、上記特許文献1に開示された粒内フェライト変態技術を改良し、より大きな入熱量で溶接を行なってもHAZ靱性が良好で、しかも母材自体の疲労特性も優れた鋼材を得るための技術に関するものである。
即ち、本発明は、上記特許文献1に開示された技術をベースとし、HAZ靭性を更に改善するために検討した結果、鋼材中の全酸化物(粒内フェライト変態の核となる上記酸化物に限定されず、全ての酸化物を対象とする。)の大きさと個数がHAZ靱性の向上に深く関与しており、特に、円相当直径で5.0μm超の粗大な酸化物を5個以下に抑えれば、入熱量が概ね50kJ/mm程度の大入熱溶接を行なってもHAZ靱性に優れた鋼材が得られることを見出した。更に本発明者らは、上記のようにHAZ靭性を改善したうえで、母材自体の疲労特性を改善するための検討を重ねた。その結果、鋼材の金属組織と硬さをバランス良く制御すれば、疲労特性を向上できることを見出し、本発明を完成した。具体的には、鋼材の金属組織をEBSP法で隣接する2つの結晶の方位差を測定したときに、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dを25μm以下、および大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rを70面積%以下とし、且つ鋼材の硬さを170Hv以上とすれば、母材自体の疲労特性を改善できることが明らかとなった。
即ち、母材自体の靭性を向上させて疲労特性を改善するには、金属組織を微細化することが有効であり、特に、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dを25μm以下とすればよい。しかし、組織を微細化すると結晶粒界が増加するため、鋼材に発生した亀裂の進展速度が大きくなる。亀裂は結晶粒界を進展し易いため、結晶粒界が増加することで、亀裂の進展経路が増大するからである。そこで、組織を微細化しつつ母材自体の疲労特性を改善することを目指して検討した結果、粒界エネルギーが高く疲労亀裂が進展し易いランダム粒界を低減すれば良いことを見出した。即ち、結晶方位差が15°以上の大角粒界においても、全てのずれ角においてエネルギーが高いわけではなく、ある特定のずれ角では、粒界エネルギーが極端に低い「対応粒界」と呼ばれる粒界が存在する(例えば、「材料組織学」:高木節雄、津崎兼彰 朝倉書店発行 第45頁)。つまり、大角粒界は、粒界エネルギーが低い「対応粒界」と粒界エネルギーが高い「ランダム粒界」に大別され、疲労亀裂は、ランダム粒界は進展し易いが、対応粒界は進展し難いことが知られている。そこで本発明でも結晶方位差が15°以上の大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rを低減させるとの観点に基づき、該割合Rを70面積%以下に低減して母材の疲労特性を改善することを前提としている。
ところが、本発明者らが更に検討したところ、上記のように結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dを25μm以下とし、且つ該大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rを70面積%以下とするだけでは母材の疲労特性改善には不充分であり、更に鋼材の硬さを170Hv以上とすることが極めて重要であることが判明した。
即ち、大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rを低減すると、疲労亀裂がし易い経路が減少するため、疲労亀裂はランダム粒界を選択するように結晶粒界を迂回しつつ鋼材内を進展する。しかし結晶粒界を進展できなくなった疲労亀裂は、結晶粒界ではなく、結晶粒内を進展してしまうことがある。従って、上述したように、大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rを低減して疲労亀裂の進展速度を小さくしても結晶粒内における疲労亀裂の進展速度を併せて小さくしなければ、結局のところ母材自体の疲労特性は改善できないのである。そして本発明では、結晶粒内を進展する疲労亀裂の速度は、結晶粒が軟らかいほど大きくなるとの観点に基づき、結晶粒内における疲労亀裂の進展防止に有用な鋼材硬さを170Hv以上と定めた次第である。
本明細書では、粒内フェライト変態の核となる酸化物、即ち、Zr、REM、およびCaを含有する酸化物と、鋼材中に含まれるすべての酸化物を区別するため、説明の便宜上、前者を特に「Zr・REM・Ca系酸化物」と呼び、後者を特に「全酸化物」と呼ぶ場合がある。
また、上記の「Zr・REM・Ca系酸化物」を構成する必須成分(Zr、REM、およびCa)を、特に粒内フェライト変態核生成元素と呼ぶ場合がある。
また、本明細書では、鋼材に含まれる全酸化物のうち、円相当直径が0.1〜2.0μmの酸化物を「微細な酸化物」と呼び、円相当直径が5.0μm超の酸化物を「粗大な酸化物」と呼ぶ場合がある。
本発明によれば、粗大な酸化物の個数が著しく抑えられているため、上記特許文献1の実施例に開示されたHAZ靱性評価方法[1400℃の加熱温度で5秒間保持した後800℃から500℃までの温度を300秒で冷却する熱サイクル(入熱条件:1400℃×5秒、冷却時間Tc=300秒)を与え、−40℃における吸収エネルギーを測定する方法]よりも大きな入熱量で溶接を行なってもHAZ靱性を向上できる。具体的には、本発明の鋼材は、1400℃の保持時間を30秒間と長くした熱サイクル(入熱条件:1400℃×30秒、冷却時間Tc=300秒)を与えたときの吸収エネルギーを上記と同様にして測定する方法で評価しても良好なHAZ靭性を示すものである(後記する実施例を参照)。
以下、本発明を構成する上記(a)〜(e)の要件について、詳しく説明する。
[(a)Zr・REM・Ca系酸化物について]
まず、粒内フェライト変態の起点となるZr・REM・Ca系酸化物について説明する。上記のZr・REM・Ca系酸化物は、Zrの酸化物とREMの酸化物とCaの酸化物を含んでいるものを意味している。Zr・REM・Ca系酸化物を構成する元素(粒内フェライト変態核生成元素)は、Zr、REM、およびCaであるが、上記以外に、例えば、Ti、Mn、Si、Alなどの酸化物形成元素や、その他の鋼中成分を含んでいても良い。
上記Zr・REM・Ca系酸化物の存在形態は特に限定されず、粒内フェライト変態核生成元素を単独で含有する単独酸化物として存在していても良いし、粒内フェライト変態核生成元素の2種以上を含む複合酸化物として存在していても良い。単独酸化物の例としては、ZrではZrO2;CaではCaO;REMでは、REMを「M」の記号で表したとき、M23、M35、MO2などが例示される。また、これらの酸化物は、互いに凝集して存在しても良いし、上記酸化物に硫化物や窒化物などの他の化合物が複合析出した形態で存在しても良い。
上記のZr・REM・Ca系酸化物は、Tiの酸化物を更に含有していることが好ましい。Tiの酸化物が更に存在すると粒内フェライト変態が促進され、HAZ靭性の向上が一層高められるようになる。Tiの酸化物は、単独酸化物(例えば、Ti23、Ti35、TiO2)として存在していても良いし、上記Zr・REM・Ca系酸化物との複合酸化物の形態で存在していても良い。
[(b)酸化物の平均組成について]
本発明の鋼材は、鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定して単独酸化物(合計が100%)として質量換算したときに、ZrO2を5〜50%、REMの酸化物(REMをMの記号で表すとM23)を10〜50%、およびCaOを5.0〜50%、を満足しており、これにより粒内フェライト変態の核として有効に作用するようになる。各酸化物の下限値を下回ると、溶接時に粒内フェライトの生成核となる酸化物量が不足し、HAZ靭性の向上作用が発揮されない。一方、各酸化物の上限値を超えると、酸化物が粗大化し、粒内フェライトの生成核として有効に作用する微細な酸化物の個数が少なくなり、HAZ靭性向上作用が有効に発揮されない。
上記ZrO2は5%以上であり、10%以上であることが好ましく、より好ましくは13%以上、更に好ましくは15%以上である。一方、上限は50%であり、好ましくは45%、更に好ましくは40%である。
上記REMの酸化物は10%以上であり、15%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上である。一方、上限は50%であり、好ましくは45%、更に好ましくは40%である。なお、REMの酸化物は、REMを記号Mで表すと、鋼材中にM23、M35、MO2などの形態で存在するが、REMの酸化物をすべてM23に換算したときの量を意味する。
上記CaOは5.0%以上であり、10%以上であることが好ましく、より好ましくは15%以上、更に好ましくは18%以上である。一方、上限は50%であり、好ましくは45%、更に好ましくは40%、特に好ましくは30%である。
なお、全酸化物の組成の残りの成分は特に限定されず、本発明の鋼材中に含まれる酸化物形成元素の酸化物(例えばSiO2やAl23、MnOなど)が挙げられる。
鋼材に含まれる全酸化物の組成は、鋼材の表面を例えば電子線マイクロプローブX線分析計(Electron Probe X-ray Micro Analyzer;EPMA)で観察し、観察視野内に認められる酸化物を定量分析して測定する。測定条件の詳細は、後記する実施例の欄で説明する。
[(c)全酸化物の粒度分布について]
次に、本発明を特徴付ける全酸化物(上述したZr・REM・Ca系酸化物に限定されず、鋼材中に存在する全ての酸化物)の個数と大きさについて説明する。
本発明の鋼材に含まれる全酸化物は、円相当直径で0.1〜2.0μmの微細な酸化物が観察視野面積1mm2あたり120個以上で、且つ、円相当直径で5.0μmを超える粗大な酸化物が観察視野面積1mm2あたり5個以下を満足している。
本発明者らが全酸化物の粒度分布とHAZ靱性の関係について詳しく調べたところ、特に、円相当直径が0.1〜2.0μmの微細な酸化物と、5.0μm超の粗大な酸化物とが、大入熱溶接のHAZ靱性に深く関与しており、HAZ靱性の向上に大きく寄与するのは微細な酸化物の個数であり、粗大な酸化物は、脆性破壊の起点となってHAZ靱性の低下を招くことが明らかになった。また、円相当直径で0.1μm未満の微細酸化物は、酸化物分散によるHAZ靱性向上作用に殆ど寄与しないことも明らかになった。従って、HAZ靱性を高めるためには、微細な酸化物の個数はできるだけ多い方が好ましいが、微細な酸化物が多くなると相関して粗大な酸化物の個数も多くなる傾向にあるため、微細な酸化物と粗大な酸化物の個数を適切に制御することが必要である。
微細な酸化物の好ましい個数は、観察視野面積1mm2あたり200個以上であり、より好ましくは500個以上、更に好ましくは1000個以上である。
粗大な酸化物は少ない程良く、好ましくは観察視野面積1mm2あたり3個以下、より好ましくは1個以下、最も好ましくは0個である。上記以外のサイズの酸化物の個数について、本発明は何ら限定するものではなく、上記サイズの酸化物さえ制御されていれば所望とするHAZ靱性が得られることを実験によって確認している。
上記「円相当直径」とは、酸化物の面積が等しくなる様に想定した円の直径であり、透過型電子顕微鏡(TEM)観察面上で認められるものである。
[(d)結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径D、および大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rについて]
本発明の鋼材は、金属組織を後方散乱電子回折像法(EBSP法)で観察したときに、下記(1)式と(2)式を満足している必要がある。両方の式を満足することで、母材自体の疲労特性が改善される。
D≦25μm ・・・(1)
R≦70面積% ・・・(2)
上記(1)式中、Dは、EBSP法で隣接する2つの結晶の方位差を測定し、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径(μm)を意味している。
本発明では、D値を25μm以下とする。D値を25μm以下とすることで、母材自体の靭性を確保することができる。また、疲労亀裂は、結晶方位差が15°以上の大角粒界で屈曲したり、迂回したり、或いは停止することが一般的に知られている。そのため、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた結晶粒を微細化することで、疲労亀裂が屈曲・迂回・停留する位置が増加し、その結果、母材の衝撃特性が上昇し、母材自体の疲労特性が良好となる(後記図2参照)。また、後述するようにランダム粒界の割合Rを所定値以下に低減するには大角粒界で囲まれた結晶粒を微細化することが有効である(後記図8参照)。ランダム粒界の割合Rは、大角粒界で囲まれた結晶粒を微細化するほど低減し易いからである。D値は小さいほど良く、好ましくは23μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。なお、D値の下限は、おおむね13μm程度である。
D値は、鋼材の板厚をt(mm)としたときに、板厚方向のt/2位置における金属組織を観察して測定する。t/2位置におけるD値を基準としたのは、板厚が大きくなるほど歪の付与が難しくなるため、金属組織の制御が最も困難になる位置だからである。具体的な測定手順は、後記の実施例の項で説明する。
上記(2)式中、Rは、EBSP法で隣接する2つの結晶の方位差を測定したときに、結晶方位差が15°以上の大角粒界に占めるランダム粒界の割合(面積%)を意味している。
本発明では、R値を70面積%以下とする。上述したように、大角粒界は、対応粒界とランダム粒界に分けられるが、疲労亀裂が進展し易いランダム粒界を低減することによって、亀裂が迂回する経路が長くなり、亀裂進展速度を小さくできるため、疲労特性を改善できる。また、亀裂のエネルギーは、伝播していく過程で減衰していくため、亀裂の伝播経路を長くすることで、エネルギーが減少することによって亀裂が停止し、母材自体の疲労特性を改善できる(後記図3参照)。
R値は小さいほど良く、好ましくは65面積%以下、より好ましくは60面積%以下である。なお、R値の下限は、おおむね40面積%程度である。
R値は、鋼材の板厚をt(mm)としたときに、板厚方向の表面、t/4位置、t/2位置における金属組織を夫々観察して測定する。鋼材の表面を観察するのは、疲労亀裂は鋼材の表面で発生し易いからであり、t/4位置を観察するのは、鋼材全体の特性を評価する一般的な基準となる位置だからであり、t/2位置を観察するのは、板厚が大きくなるほど歪の付与が難しくなるため、金属組織の制御が最も困難になる位置だからである。具体的な測定手順は、後記の実施例の項で説明する。
[(e)平均硬さについて]
本発明では、鋼材の平均硬さを170Hv以上とする。鋼材をある程度硬くすることで、粒界を進展し難くなった亀裂が粒内を進展する場合でも、粒内を進展する速度を小さくできる。その結果、鋼材内を進展する亀裂の進展速度を小さくできる(後記図4参照)。
平均硬さは大きいほど良く、好ましくは180Hv以上、より好ましくは190Hv以上、更に好ましくは200Hv以上である。
鋼材の平均硬さを170Hv以上とするには、金属組織はベイナイト主体とすることが推奨される。金属組織に占めるフェライト分率が高くなると、鋼材の硬度は小さくなる傾向があるからである。ベイナイト主体とは、金属組織を電子顕微鏡で観察したときに、ベイナイト分率が約60面積%以上であることを意味する。なお、平均硬さの上限は、おおむね260Hv程度である。硬くなり過ぎると、亀裂が粒内を進展せず、亀裂進展速度を小さくし難くなるからである。この平均硬さの上限は、ベイナイト組織の平均硬さとほぼ等しい値である。
鋼材の硬さは、鋼材の板厚をt(mm)としたときに、板厚方向のt/2位置で測定する。t/2位置における硬さを基準としたのは、板厚が大きくなるほど板厚の中央までの冷却が困難になり、金属組織を適切に制御し難いためである。一般に、鋼材の硬さは、金属組織の形態に依存し、金属組織の形態は冷却速度に依存するためである。具体的な測定手順は、後記の実施例の項で説明する。
次に、本発明の鋼材(母材)における成分組成について説明する。本発明の鋼材は、基本成分として、C:0.02〜0.12%、Si:0.5%以下(0%を含む)、Mn:1〜2%、Zr:0.0002〜0.050%、REM:0.0002〜0.050%、Ca:0.0005〜0.010%、Ti:0.005〜0.02%、N:0.0040〜0.01%、O:0.0005〜0.010%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.015%以下(0%を含まない)、Al:0.05%以下(0%を含む)を満足するものである。こうした範囲を定めた理由は以下の通りである。
Cは、鋼材(母材)の強度を確保するために欠くことのできない元素である。こうした効果を発揮させるには、0.02%以上含有させる必要がある。Cは、0.04%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.05%以上である。しかしCが0.12%を超えると、溶接時にHAZに島状マルテンサイト(MA)を多く生成してHAZの靭性劣化を招くばかりでなく、溶接性にも悪影響を及ぼす。従ってCは0.12%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.08%以下とする。
Siは、固溶強化により鋼材の強度を確保するのに寄与する元素である。しかしSiが0.5%を超えると、溶接時にHAZに島状マルテンサイト(MA)を多く生成してHAZ靭性の劣化を招くばかりでなく、溶接性にも悪影響を及ぼす。従ってSiは0.5%以下とする。好ましくは0.3%以下であり、より好ましくは0.2%以下、更に好ましくは0.18%以下である。なお、Siを添加して鋼材の強度を確保するためには、0.02%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.1%以上含有させるのがよい。
Mnは、鋼材(母材)の強度向上に寄与する元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、1%以上含有させる必要がある。Mnは、好ましくは1.2%以上、より好ましくは1.4%以上含有させるのがよい。しかし2%を超えると、鋼材(母材)の溶接性を劣化させる。従ってMnは、2%以下に抑える必要がある。好ましくは1.8%以下であり、より好ましくは1.6%以下とする。
Zrは、ZrO2を生成させるのに必要な元素である。ZrO2を含有することで、酸化物が微細分散し易くなり、この微細分散した酸化物が粒内フェライトの生成核となるためHAZ靭性の向上に寄与する。しかしZrが0.0002%未満では、上記粒内フェライトの生成核となる微細な酸化物量が少なくなるためHAZ靭性を向上させることができない。従ってZrは0.0002%以上含有させる必要がある。好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.0010%以上とする。しかしZrを過剰に添加すると粗大な酸化物が多く生成してHAZ靭性が劣化する。また、析出強化をもたらす微細なZr炭化物を形成し、母材自体の靭性低下を招く。従ってZrは0.050%以下に抑える。好ましくは0.04%以下であり、より好ましくは0.01%以下、更に好ましくは0.008%以下とする。
REM(希土類元素)とCaは、夫々の酸化物を生成させるのに必要な元素である。これらの酸化物を含有することで、酸化物が微細分散し易くなり、この微細分散した酸化物が粒内フェライトの生成核となるためHAZ靭性の向上に寄与する。
REMは、0.0002%以上含有させるべきであり、好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.0010%以上、更に好ましくは0.0015%以上である。しかしREMを過剰に添加すると粗大な酸化物を形成し、HAZ靭性が却って劣化する。従ってREMは0.050%以下に抑えるべきである。好ましくは0.04%以下であり、より好ましくは0.01%以下である。
なお、本発明において、REMとは、ランタノイド元素(LaからLnまでの15元素)およびSc(スカンジウム)とY(イットリウム)を含む意味である。これらの元素のなかでも、La、CeおよびYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましく、より好ましくはLaおよび/またはCeを含有するのがよい。
Caは、0.0005%以上含有させるべきであり、好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.0015%以上である。しかしCaを過剰に添加すると、粗大な酸化物を形成し、HAZ靭性が却って劣化する。従ってCaは、0.010%以下に抑える必要がある。好ましくは0.008%以下であり、より好ましくは0.005%以下である。
Tiは、鋼材中にTiNなどの窒化物やTi酸化物を生成し、HAZ靭性の向上に寄与する元素である。こうした効果を発揮させるには、Tiは0.005%以上含有させる必要がある。好ましくは0.007%以上、より好ましくは0.010%以上とする。しかしTiを過剰に添加すると鋼材(母材)の靭性を劣化させるため、Tiは0.02%以下に抑えるべきである。好ましくは0.018%以下であり、より好ましくは0.017%以下である。
Nは、窒化物(例えば、ZrNやTiNなど)を析出する元素であり、該窒化物は、ピン止め効果により、溶接時にHAZに生成するオーステナイト粒の粗大化を防止してフェライト変態を促進し、HAZ靭性の向上に寄与する。こうした効果を有効に発揮させるには、0.0040%以上含有させる必要がある。好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.006%以上である。Nは多いほどTi含有窒化物を形成してオーステナイト粒の微細化が促進されるため、HAZの靭性向上に有効に作用する。しかしNが0.01%を超えると、固溶N量が増大して母材自体の靭性が劣化し、HAZ靭性も低下する。従ってNは0.01%以下に抑える必要がある。好ましくは0.0095%以下、より好ましくは0.009%以下とする。
O(酸素)は、HAZ靭性の向上に寄与する粒内フェライトの生成核となる微細な酸化物を生成させるために必要な元素である。しかしOが0.0005%未満では、上記微細な酸化物量が不足し、HAZ靭性を向上させることができない。従ってOは0.0005%以上含有させる必要がある。好ましくは0.0010%以上、より好ましくは0.0015%以上である。しかし過剰に添加すると酸化物が粗大化してHAZ靭性を却って劣化させる。従ってOは0.010%以下に抑えるべきである。好ましくは0.008%以下であり、より好ましくは0.005%以下である。
Pは、偏析し易い元素であり、特に鋼材中の結晶粒界に偏析して母材の靭性を劣化させる。従ってPは0.02%以下に抑制する必要がある。好ましくは0.018%以下、より好ましくは0.015%以下とする。
Sは、Mnと結合して硫化物(MnS)を生成し、母材の靭性や板厚方向の延性を劣化させる有害な元素である。従ってSは0.015%以下に抑制する必要がある。好ましくは0.012%以下であり、より好ましくは0.008%以下、更に好ましくは0.006%以下である。
Alは、脱酸力が強く、脱酸剤として作用する元素である。しかし過剰に添加すると酸化物を還元し、HAZ靭性の向上に寄与する上記Zr・REM・Ca系酸化物を生成し難くする。従ってAlは0.05%以下に抑える必要がある。Alは、好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.035%以下である。なお、Alは0%でもよい。
本発明の鋼材は、上記元素を必須成分として含有するものであり、残部は鉄および不可避不純物(例えば、MgやAs,Seなど)であってもよい。
本発明の鋼材は、更に他の元素として、鋼材の強度を向上させる元素(Ni、Cu、Cr、Mo)やHAZ靭性を更に向上させる元素(Nb、V、B)等を含有させることも有効である。具体的には、
(1)Ni:0.4%以下(0%を含まない)、Cu:0.3%以下(0%を含まない)、Cr:1.5%以下(0%を含まない)、およびMo:1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、
(2)Nb:0.1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)、およびB:0.005%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、
等を含有することが好ましい。こうした範囲を定めた理由は以下の通りである。
[(1)Ni、Cu、Cr、Mo]
Ni、Cu、Cr、およびMoは、いずれも鋼材の強度を高めるのに寄与する元素であり、夫々単独で、或いは複合して添加することができる。
特に、Niは、鋼材の強度を高めると共に、鋼材自体の靭性を向上させるのにも寄与する元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上、更に好ましくは0.2%以上である。Niはできるだけ含有させることが好ましいが、高価な元素であるため、過剰に含有するとコスト高となる。従って、経済的理由から上限は0.4%とすることが好ましい。より好ましくは0.38%以下、更に好ましくは0.35%以下である。
Cuは、固溶強化して鋼材の強度を高める元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上、更に好ましくは0.2%以上である。しかし0.3%を超えて含有すると、鋼材の靭性が劣化するため、Cuは0.3%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.28%以下であり、更に好ましくは0.25%以下である。
Crは、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.5%以上である。しかしCrが1.5%を超えると、鋼材(母材)の強度を著しく高め過ぎて母材靭性が劣化するためHAZ靭性が低下する。従ってCrは1.5%以下とすることが好ましい。より好ましくは1.2%以下、更に好ましくは1%以下である。
Moは、0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.3%以上である。しかし1%を超えると、鋼材(母材)の強度が著しく高くなり過ぎて母材靭性が却って劣化するためHAZ靭性も低下する。従ってMoは1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.7%以下、更に好ましくは0.5%以下である。
[(2)Nb、V、B]
Nb、V、Bは、いずれもHAZ靭性を向上させる元素であり、夫々単独で、或いは複合して添加することができる。
特にNbとVは、固溶によるソリュートドラック効果と炭窒化物の析出によるピン止め効果によって圧延前のスラブ加熱時にオーステナイト粒が粗大化するのを抑制し、組織を微細化してHAZ靭性を向上させる作用を有する元素である。
Nb添加によるこうした作用を有効に発揮させるには、0.002%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.005%以上、更に好ましくは0.008%以上である。しかしNbが0.1%を超えると、析出する炭窒化物が粗大化して母材の靭性が劣化する。従ってNbは0.1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.05%以下である。
VもNbと同様に、0.1%を超えて添加すると、析出する炭窒化物が粗大化して母材の靭性が劣化する。従ってVは0.1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.05%以下である。なお、V添加による作用を有効に発揮させるには、0.002%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.005%以上、更に好ましくは0.01%以上である。
一方、Bは、粒界フェライトの生成を抑制してHAZ靭性を向上させる元素である。しかしBが0.005%を超えると、オーステナイト粒界にBNとして析出してHAZ靭性の低下を招く。従ってBは0.005%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.004%以下である。なお、B添加による作用を有効に発揮させるには、0.001%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.0015%以上である。
次に、本発明の鋼材を製造するに当たり、好適に採用できる製法について説明する。
まず、鋳造にあたっては、溶鋼の溶存酸素量を0.0010〜0.0060%の範囲に調整した後、溶鋼を攪拌して溶鋼中の酸化物を浮上分離させることによって全酸素量を0.0010〜0.0070%の範囲に調整してから、Ti、次いでZr、REM、およびCaを添加して成分組成に調整する。これにより上記(a)〜(c)の要件を満足させることができる。
次いで、熱間圧延にあたっては、鋼片を1100〜1250℃に加熱した後、1050℃以下、Ar3点+100℃を超える温度域において1パスあたりの平均冷却速度が1.5℃/秒以上となるように冷却しながら累積圧下率が40%以上となるように第1圧延(粗圧延に相当)を行ない、次いでAr3点+100℃以下、Ar3点を超える温度域において1パスあたり最大圧下率を12%以下、累積圧下率を50%以上となるように第2圧延(仕上げ圧延に相当)を行なった後、表面温度が500℃以下となる温度域まで平均冷却速度5℃/秒以上で冷却する。これにより上記(d)、(e)の要件を満足させることができる。
本発明の製法の概略を説明すると次の通りである。
まず、溶存酸素量と全酸素量を調整した溶鋼に、所定の順番で所定の合金元素を添加することによって、粒内フェライトの生成核となる所望の酸化物を生成させることができる。特に本発明では、粗大な酸化物が生成しないように、溶存酸素量を調整した後、全酸素量を調整することが極めて重要である。
溶存酸素とは、酸化物を形成しておらず、溶鋼中に存在するフリーな状態の酸素を意味する。全酸素とは、溶鋼に含まれる全ての酸素、即ち、フリー酸素と酸化物を形成している酸素の総和を意味する。
次いで、鋳造し、得られた鋼片を熱間圧延するが、大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dを25μm以下とし、且つ大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rを70面積%以下とするには、第2圧延として規定するように、Ar3点+100℃からAr3点までの温度域において1パスあたり最大圧下率を12%以下、累積圧下率を50%以上に制御して熱間圧延することが重要である。そして、この温度域における熱間圧延でR≦70面積%を達成しつつD≦25μmを満足させるには、第1圧延として規定するように1050℃からAr3点+100℃までの温度域において1パスあたりの平均冷却速度が1.5℃/秒以上となるように冷却しながら累積圧下率が40%以上となるように圧延を行なう。このように第1圧延を行ない、オーステナイト(γ)粒径を50μm以下としておくことによって、第1圧延に次ぐ第2圧延で金属組織が適切に制御され、本発明で規定する要件を満足するように調整される。以下、本発明の製法について順を追って詳しく説明する。
まず、溶鋼の溶存酸素量を0.0010〜0.0060%の範囲に調整する。溶鋼の溶存酸素量が0.0010%未満では、溶鋼中の溶存酸素量が不足するため、粒内フェライト変態の核となるZr・REM・Ca系酸化物を所定量確保することができず、優れたHAZ靭性が得られない。また、溶存酸素量が不足すると、酸化物を形成できなかったZrが炭化物を形成したり、REMやCaが硫化物を形成するため、母材自体の靭性を劣化させる原因となる。従って上記溶存酸素量は、0.0010%以上とする。上記溶存酸素は、好ましくは0.0013%以上、より好ましくは0.0020%以上である。
一方、上記溶存酸素量が0.0060%を超えると、溶鋼中の酸素量が多過ぎるため、溶鋼中の酸素と上記元素の反応が激しくなって溶製作業上好ましくないばかりか、粗大な酸化物を生成して却ってHAZ靭性を劣化させる。従って上記溶存酸素量は0.0060%以下に抑えるべきである。上記溶存酸素量は、好ましくは0.0055%以下、より好ましくは0.0053%以下とする。
ところで、転炉や電気炉で一次精錬された溶鋼中の溶存酸素量は、通常0.010%を超えている。そこで本発明の製法では、溶鋼中の溶存酸素量を何らかの方法で上記範囲に調整する必要がある。
溶鋼中の溶存酸素量を調整する方法としては、例えばRH式脱ガス精錬装置を用いて真空C脱酸する方法や、SiやMn,Ti,Alなどの脱酸性元素を添加する方法などが挙げられ、これらの方法を適宜組み合わせて溶存酸素量を調整しても良い。また、RH式脱ガス精錬装置の代わりに、取鍋加熱式精錬装置や簡易式溶鋼処理設備などを用いて溶存酸素量を調整しても良い。この場合、真空C脱酸による溶存酸素量の調整はできないため、溶存酸素量の調整にはSi等の脱酸性元素を添加する方法を採用すれば良い。Si等の脱酸性元素を添加する方法を採用するときは、転炉から取鍋へ出鋼する際に脱酸性元素を添加しても構わない。
溶鋼の溶存酸素量を0.0010〜0.0060%の範囲に調整した後は溶鋼を攪拌し、溶鋼中の酸化物を浮上分離することによって溶鋼中の全酸素量を0.0010〜0.0070%に調整する。このように本発明では、溶存酸素量が適切に制御された溶鋼を撹拌し、不要な酸化物を除去してから、Zrなどの粒内フェライト変態核生成元素を添加しているため、粗大な酸化物の生成を防止できる。前述した特許文献1では、この浮上分離工程を行なっていないため、粗大な酸化物が生成し、良好なHAZ靱性を確保することができない(後記する実施例を参照)。
上記全酸素量が0.0010%未満では、所望の酸化物量不足になるため、HAZ靭性の向上に寄与する粒内フェライトの生成核となる酸化物量を確保することができない。従って上記全酸素量は、0.0010%以上とする。上記全酸素量は、好ましくは0.0015%以上、より好ましくは0.0018%以上である。
一方、上記全酸素量が0.0070%を超えると、溶鋼中の酸化物量が過剰となり、粗大な酸化物が生成してHAZ靭性が劣化する。従って上記全酸素量は0.0070%以下に抑えるべきである。上記全酸素量は、好ましくは0.0060%以下、より好ましくは0.0050%以下とする。
溶鋼中の全酸素量は、概ね溶鋼の攪拌時間に相関して変化することから、撹拌時間を調整するなどして制御することができる。具体的には、溶鋼を撹拌し、浮上してきた酸化物を除去した後の溶鋼中の全酸素量を適宜測定しながら、溶鋼中の全酸素量を適切に制御する。
溶鋼中の全酸素量を上記範囲に調整した後は、Tiを添加し、次いでZr、REM、およびCaを添加してから鋳造する。全酸素量を調整した溶鋼へ上記の元素を添加することによって所望とする粒内フェライト変態の核となるZr・Ca・REM系酸化物が得られる。Ti酸化物は、Zr・REM・Ca系酸化物に比べて溶鋼との界面エネルギーが小さいため、合金元素をこの順番で添加すれば、Ti酸化物は微細化されるため、結果的に、HAZ靱性に寄与する微細な酸化物を生成させることができる。
溶鋼へ添加するREMやCa,Zr,Tiの形態は特に限定されず、例えば、REMとして、純Laや純Ce,純Yなど、或いは純Ca,純Zr,純Ti、更にはFe−Si−La合金,Fe−Si−Ce合金,Fe−Si−Ca合金,Fe−Si−La−Ce合金,Fe−Ca合金,Ni−Ca合金などを添加すればよい。また、溶鋼へミッシュメタルを添加してもよい。ミッシュメタルとは、セリウム族希土類元素の混合物であり、具体的には、Ceを40〜50%程度,Laを20〜40%程度含有している。但し、ミッシュメタルには不純物としてCaを含むことが多いので、ミッシュメタルがCaを含む場合は本発明で規定する範囲を満足する必要がある。
本発明では、粗大な酸化物の除去を促進する目的で、Zr、REM、およびCaを添加した後は、40分を超えない範囲で溶鋼を攪拌することが好ましい。攪拌時間が40分を超えると、微細な酸化物が溶鋼中で凝集・合体するため酸化物が粗大化し、HAZ靭性が劣化する。従って攪拌時間は40分以内とすることが好ましい。攪拌時間は、より好ましくは35分以内であり、更に好ましくは30分以内である。溶鋼の攪拌時間の下限値は特に限定されないが、攪拌時間が短過ぎると添加元素の濃度が不均一となり、鋼材全体として所望の効果が得られない。従って容器サイズに応じた所望の攪拌時間が必要となる。
以上のようにZr、REM、およびCaを添加することで、成分組成が調整された溶鋼が得られる。得られた溶鋼を用いて鋳造し、鋼片を得る。
得られた鋳片は熱間圧延するが、熱間圧延時の加熱温度は1100〜1250℃とする。加熱温度の下限を1100℃とするのは、鋼片の金属組織をオーステナイトとするためである。しかし加熱温度が高過ぎると、初期のオーステナイト組織が粗大化し過ぎるため、変態後の組織を充分に微細化することが困難となる。従って加熱温度の上限は1250℃とする。
加熱後は、鋼片のt/2位置(tは鋼片の厚み)の温度が、1050℃以下、Ar3点+100℃を超える温度域において1パスあたりの平均冷却速度が1.5℃/秒以上となるように冷却しながら累積圧下率が40%以上となるように第1圧延を行なう。
1050℃以下、Ar3点+100℃を超える温度域において冷却しつつ圧延を行なうことで、オーステナイトの粗大化を防止してオーステナイト粒径を50μm以下とすることができ、後述する適切な条件で第2圧延することによって、大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dを25μm以下に制御できる(後記図6を参照)。
但し、上記温度域で圧延するときの平均冷却速度が1.5℃/秒を下回るか、累積圧下率が40%を下回ると、オーステナイトが粗大化してオーステナイト粒径が50μmを超え、後記するように適切な条件で第2圧延を行なっても大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dを25μm以下に制御できない(後記図7を参照)。そのため母材の疲労特性を改善できない。従って上記温度域で圧延するときの平均冷却速度は1.5℃/秒以上とする。好ましくは2℃/秒以上、より好ましくは2.5℃以上である。
また、累積圧下率は40%以上とする。好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上である。累積圧下率の上限は特に限定されないが、おおむね65%程度である。
上記Ar3点の温度は、下記(3)式から算出できる。式中、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示しており、tは、製品の仕上厚(mm)を意味している。
Ar3(℃)=910−310×[C]−80×[Mn]−20×[Cu]−15×[Cr]−55×[Ni]−80×[Mo]+0.35×(t−8) ・・・(3)
上記累積圧下率は、下記(4)式によって求められる値である。t0は、鋼片の平均温度が狙いの温度域にある時の圧延開始厚(mm)、t1は、鋼片の平均温度が狙いの温度域にある時の圧延終了厚(mm)を意味する。
累積圧下率=[(t0−t1)/t0]×100(%) ・・・(4)
1050℃以下、Ar3点+100℃を超える温度域で第1圧延を行なった後は、連続して後述する第2圧延を行なってもよいが、第1圧延は、1050℃以下、Ar3点+100℃を超える温度域のうち、オーステナイトが再結晶する温度域で行なうことが好ましい。オーステナイト再結晶温度からAr3点+100℃を超える温度(この温度域を以下、オーステナイト未再結晶温度域と呼ぶことがある。)で圧延するには、圧下率を高める必要があり、設備負荷がかかる。
オーステナイト再結晶温度の上限値は、鋼片の化学成分組成によって多少変化するが、本発明で対象としている鋼種では、おおむね1060℃である。オーステナイト再結晶温度域で第1圧延を終了することで、オーステナイト粒径を小さくできる。
第1圧延を終了する温度は、オーステナイト再結晶温度域のうち、下限値ギリギリの温度(オーステナイト未再結晶域に到達する直前の温度)とすることが好ましい。第1圧延終了後に、オーステナイト再結晶温度域で長時間保持すると、オーステナイトが再結晶して粗大化するからである。
第1圧延を終了した後は、鋼片のt/2位置(tは鋼片の厚み)における温度が、Ar3点+100℃以下、Ar3点を超える温度域において1パスあたり最大圧下率を12%以下、累積圧下率を50%以上となるように第2圧延を行なう。
Ar3点+100℃を超える温度で第2圧延を行なうと、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた結晶粒を微細化できない。一方、Ar3点以下の温度で第2圧延を行なっても大角粒界で囲まれた結晶粒を微細化できないし、圧延温度が低過ぎるため設備負荷が大きくなる。
上記温度域で圧延するときの1パスあたりの最大圧下率は12%以下とする。最大圧下率が12%を超えると、過度の歪みが蓄積して再結晶を起こし、大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rが大きくなる。従って最大圧下率は12%以下とする。好ましくは11.5%以下であり、より好ましくは11%以下である。
上記温度域で圧延するときの累積圧下率は50%以上とする。累積圧下率が50%を下回ると、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dが大きくなり(後記図5参照)、また大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rが大きくなるため、疲労亀裂進展速度が大きくなり、母材の疲労特性を改善できない。従って累積圧下率は50%以上とする。好ましくは55%以上であり、より好ましくは60%以上である。
なお、第1圧延をオーステナイト再結晶温度域で終了したときは、鋼片のt/2位置の温度がAr3点+100℃以下となる温度域まで冷却してから第2圧延を開始する。
また、生産の都合上、或いは設備の都合上、第1圧延終了後、第2圧延開始までに時間がかかる場合は、第1圧延が終了した後、速やかにオーステナイト未再結晶温度域に冷却し、この温度域で待機させ、準備ができたら第2圧延を開始すればよい。鋼片の待機温度をオーステナイト未結晶温度域とすることで、微細化したオーステナイトが再度粗大化するのを防止するためである。
第2圧延を終了した後は、鋼片の表面温度で、Ar3点を超える温度から、500℃以下となるまで平均冷却速度を5℃/秒以上として積極冷却(加速冷却)する。冷却開始温度がAr3点を下回ると、フェライトが多く生成して硬さを確保することができない。従って冷却開始温度はAr3点を超える温度とする。なお、冷却停止温度は、変態を完全に完了させるために500℃以下とする。
Ar3点を超える温度から、500℃以下となるまでの平均冷却速度は5℃/秒以上とする。平均冷却速度が5℃/秒を下回ると、フェライトが多く生成して硬さを確保することができない。従って平均冷却速度は5℃/秒以上とする。好ましくは7℃/秒以上である、より好ましくは9℃/秒以上である。
鋼片の表面温度が500℃以下となる温度域まで冷却した後は、500℃以上、Ac1点未満の温度範囲で焼き戻し処理を行ってもよい。焼き戻し処理することで、圧延や変態によって導入された歪が消失するため、母材靭性を向上させることができる。
上記Ac1点の温度は、下記(5)式から算出できる。式中、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示している。
Ac1(℃)=723−14×[Mn]+22×[Si]−14.4×[Ni]+23.3×[Cr] ・・・(5)
本発明に係る鋼材は、例えば橋梁や高層建造物、船舶などの構造物の材料として使用でき、小〜中入熱溶接はもとより、入熱量が50kJ/mm以上の大入熱溶接においても溶接熱影響部の靭性劣化を防ぐことができる。
本発明の鋼材は、板厚が約3.0mm以上の厚鋼板などの鋼材を対象としている。本発明による優れたHAZ靱性向上作用は、板厚が20mm以上(特に40mm以上)の厚鋼板とし、入熱量が50kJ/mm以上の大入熱溶接を行ったときに有効に発揮される。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
真空溶解炉(容量150kg)を用い、下記表1に示した条件で下記表2に示した化学成分(質量%)を含有する供試鋼(鋼種a〜w。残部は鉄および不可避不純物。)を溶製し、150kgのインゴットに鋳造して冷却した。得られたインゴットを下記表3または表4に示す加熱温度に加熱した後、スラブのt/2位置(tはスラブの厚み。以下同じ。)における平均温度が1050℃以下となるまで冷却し、次いで熱間圧延して製品厚が10〜80mmの圧延材を製造した。以下、製造条件について具体的に説明する。
真空溶解炉で供試鋼を溶製するに当っては、Ti、Zr、Al、REM、およびCa以外の元素について成分調整すると共に、C,SiおよびMnから選ばれる少なくとも1種の元素を用いて脱酸して溶鋼の溶存酸素量を調整した。調整後の溶存酸素量(ppm)を下記表1に示す。
溶存酸素量を調整した溶鋼を1〜10分程度攪拌して溶鋼中の酸化物を浮上分離させることによって溶鋼の全酸素量を調整した。調整後の全酸素量(ppm)を下記表1に示す。
全酸素量を調整した溶鋼に、Tiを添加した後、Zr、REM、およびCaを添加することによって成分調整した溶鋼を得た。なお、TiはFe−Ti合金の形態で、ZrはFe−Zr合金の形態で、REMはLaを約25%とCeを約50%含有するミッシュメタルの形態で、CaはNi−Ca合金、またはCa−Si合金、またはFe−Ca圧粉体の形態で、夫々添加した。
但し、表1のNo.22は、全酸素量を調整するためにFeOを添加した。また、表1のNo.7は、溶存酸素量を調整した溶鋼を攪拌せずに、直ぐにTiを添加した。
上記元素(Zr、REM、およびCa)を添加して成分調整を行った溶鋼は、下記表1に示す時間攪拌してからインゴットに鋳造して冷却した。
得られたインゴットを下記表3または表4に示す加熱温度に加熱した後、熱間圧延した。本実施例では、第1圧延を粗圧延機を用いて行ない、第2圧延を仕上げ圧延機を用いて行なった。
粗圧延の圧延開始温度を下記表3または表4に示す。なお、圧延開始温度は、鋼片のt/2位置における平均温度で管理した。
粗圧延は、1パスあたりの平均冷却速度が下記表3または表4に示す速度となるように冷却しながら行なった。粗圧延の終了温度はAr3+120℃以上とした。粗圧延での累積圧下率を下記表3または表4に示す。
粗圧延終了後、鋼片のt/2位置における平均温度がAr3点+100℃以下になるまで冷却し、仕上げ圧延を行なった。仕上げ圧延開始温度はAr3点+100℃以下、仕上げ圧延終了温度はAr3+40℃以上とした。仕上げ圧延における1パスあたりの最大圧下率と、累積圧下率を下記表3または表4に示す。
仕上げ圧延終了後は、熱間圧延材の表面温度が500℃以下となるまで冷却した。仕上げ圧延終了後の冷却開始温度を下記表3または表4に示す。また、冷却開始温度から500℃までの平均冷却速度を下記表3または表4に示す。
なお、表3のNo.1−2〜1−8は表2に示した鋼種a、表3のNo.2−2は表2に示した鋼種b、表3のNo.3−2は表2の鋼種cを夫々用い、熱間圧延条件等を変えた例である。
また、表3のNo.1−2とNo.1−3は、熱間圧延材の表面温度が500℃以下となる温度域まで冷却した後、下記表3に示す焼き戻し温度(表面温度で管理)で焼き戻し処理を行なった例である。
鋼片のt/2位置における温度は、下記手順で計算した。
《平均温度の算出方法》
(1)プロセスコンピュータを用い、加熱開始から抽出までの雰囲気温度と在炉時間に基づき、鋼片の表面から裏面までの板厚方向における任意の位置の加熱温度を算出する。
(2)上記算出した加熱温度を用い、圧延中の圧延パススケジュールやパス間の冷却方法(水冷あるいは空冷)のデータに基づいて、板厚方向の任意の位置における圧延温度を差分法など計算に適した方法を用いて算出しつつ、圧延する。
(3)鋼片の表面温度は、圧延ライン上に設置された放射型温度計を用いて実測する(但し、プロセスコンピュータ上においても計算する。)。
(4)粗圧延開始時、粗圧延終了時、および仕上圧延開始時に夫々実測した鋼片の表面温度を、プロセスコンピュータ上の計算表面温度と照合する。
(5)計算表面温度と実測した鋼片の表面温度の差が±30℃以上の場合は、実測した鋼片の表面温度を上記計算表面温度に置き換えてプロセスコンピュータ上の計算表面温度とする。
(6)補正された計算表面温度を用い、t/2位置における温度を求める。
一方、熱間圧延材の表面温度は、圧延ライン上に設置された放射型温度計を用いて測定した。
下記表3または表4には、冷却して得られた圧延材の製品厚(mm)も示した。また、下記表3または表4には、上記表2に示した化学成分組成に基づいて、上記(3)式、(5)式を用いて算出したAr3点、Ac1点の値も示す。
得られた圧延材のt/4位置(tは圧延材の厚み)における横断面からサンプルを切り出し、該サンプルに含まれる全酸化物の組成を測定し、単独酸化物として質量換算して酸化物の平均組成を算出した。
切り出されたサンプル表面を島津製作所製「EPMA−8705(装置名)」を用いて600倍で観察し、最大径が0.2μm以上の粒子について成分組成を定量分析した。観察条件は、加速電圧を20kV,試料電流を0.01μA,観察視野面積を1〜5cm2,分析個数を100個とし、特性X線の波長分散分光により粒子中央部での成分組成を定量分析した。分析対象元素は、Mn、Ti、Zr、La、Ce、Ca、Si、Al、およびO(酸素)とし、既知物質を用いて各元素の電子線強度と元素濃度の関係を予め検量線として求めておき、次いで、上記粒子から得られた電子線強度と予め前記検量線からその粒子の元素濃度を定量した。
得られた定量結果のうち酸素含量が5%以上の粒子を酸化物とし、単独酸化物として質量換算したものを平均したものを酸化物の平均組成とした。全酸化物の平均組成を下記表3または表4に示す。なお、REMの酸化物は、金属元素をMで表すと、鋼材中にM23やM35,MO2の形態で存在するが、全ての酸化物をM23に換算し、組成を測定した。また、一つの介在物から複数の元素が観測された場合には、それらの元素の存在を示すX線強度の比から各元素の単独酸化物に換算して酸化物の組成を算出した。
上記サンプル表面をEPMAで観察した結果、観察された酸化物は、Ti、Zr、REM、およびCaを含む複合酸化物が大半であったが、単独酸化物としてTi23、ZrO2、REMの酸化物、CaOも生成していた。
また、得られた定量結果のうち酸素含量が5%以上である酸化物の円相当直径を測定し、円相当直径(粒径)が0.1〜2.0μmの酸化物の個数と円相当直径(粒径)が5.0μmを超える酸化物の個数を算出した。下記表5に酸化物の個数を観察視野1mm2あたりに換算した個数を示す。
次に、溶接時に熱影響を受けるHAZの靭性を評価するために、大入熱溶接を模擬して下記に示す溶接再現試験を行なった。溶接再現試験は、圧延材から切り出したサンプルが1400℃になる様に加熱し、この温度で30秒間保持した後、冷却する熱サイクルを与えた。冷却速度は、800℃から500℃への冷却時間が300秒となるように調整した。
冷却後のサンプルの衝撃特性は、Vノッチシャルピー試験して−40℃における吸収エネルギー(vE-40)を測定して評価した。vE-40が100J以上のものを合格(HAZ靭性良好)とする。測定結果を下記表5に示す。
次に、得られた圧延材の金属組織を下記手順で観察し、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dと、大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rを求めた。D(μm)とR(面積%)の値を下記表6に示す。
《Dの算出方法》
(1)圧延材の表面と裏面の両方を含むように、圧延方向(長手方向)に平行に切断したサンプルを準備する。
(2)#150〜#1000までの湿式エメリー研磨紙、或いはそれと同等の機能を有する研磨方法で研磨し、ダイヤモンドスラリーなどの研磨剤を用いて鏡面仕上げを施す。
(3)鏡面研磨面を、TexSEM Laboratories社製のEBSP(Electron Back Scattering Pattern)装置で、板厚方向のt/2位置において測定範囲を200μm×200μm、ピッチを0.5μmとして2つの結晶の方位差を測定し、結晶方位差が15°以上の境界を大角粒界とする。なお、測定方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデックスが0.1よりも小さい測定点は解析対象から除外する。
(4)Grain distribution mapにおいて、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた結晶粒の最大幅(通常板厚方向に沿った長さ)と最大長さ(通常圧延方向に沿った長さ)を測定し、結晶粒の面積を算出して結晶粒の円相当径を算出し、平均値を求める。
《Rの算出方法》
(1)大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rは、上記Dを算出するときと同じ条件で鏡面仕上げを施したサンプルを用い、TexSEM Laboratories社製のEBSP装置で、鏡面研磨面のうち板厚方向の表面とt/2位置とt/4位置において測定範囲を200μm×200μm、ピッチを0.5μmとして2つの結晶の方位差を測定する。なお、測定方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデックスが0.1よりも小さい測定点は解析対象から除外する。
(2)測定結果のうち、結晶方位差が5.5°未満のものはノイズと考えて削除し、62.5°までの各方位差における分布を求める。
(3)上記(2)の工程で作成した結晶方位差分布と対応粒界マップ(各対応粒界の個数が記載されている表)を対応させることにより、各板厚位置における大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rを算出する。具体的には、各対応粒界(Σ1〜49)を結晶方位分布より得られる方位差15°以上の大角粒界の個数で割ることにより、各対応粒界の分布を求め、これを合計し、100%から差し引きくことで、各板厚位置における大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rを算出する。各板厚位置における最大のランダム粒界の割合Rを、その圧延材におけるランダム粒界の割合Rとする[対応粒界以外をランダム粒界とする(>Σ49)]。
なお、対応粒界の測定には、株式会社TSL社の「TSL OIM Data Collection ver5.2」を用い、解析には、株式会社TSL社の「TSL OIM Analysis ver5.0」を用いた。
また、得られた圧延材の金属組織を下記手順で観察し、オーステナイト粒径(γ粒径)と硬さを求めた。γ粒径の値を下記表6に示す。
《γ粒径の測定方法》
(1)圧延材のγ粒径は、上記Dを算出するときと同じ条件で鏡面仕上げを施したサンプルを用い、極低炭素腐食溶液を用いて腐食し、旧γ粒界を現出させたあと、板厚方向t/2位置での領域を光学顕微鏡で倍率100倍または400倍で撮影し、6cm×8cmの写真とした。即ち、観察倍率100倍では600μm×800μm、観察倍率400倍では150μm×200μmに相当する。
(2)写真の6cmの辺は板厚方向に対応し、8cmの辺は圧延方向に対応している。撮影された写真を画像解析し、観察視野内に認められるγ粒の平均粒径を求めた。
《硬さの測定方法》
圧延材の硬さは、上記Dを算出するときと同じ条件で鏡面仕上げを施したサンプルを用い、ビッカース硬さ試験機で測定した。測定位置は、圧延材の板厚方向のt/2位置とし、荷重を10kgf、測定回数を20点とし、平均値を圧延材の硬さとした。
次に、得られた圧延材の疲労特性を次の手順で評価した。
《衝撃特性の評価》
圧延材の衝撃特性は、Vノッチシャルピー試験を行い、圧延材の衝撃特性を−60℃における吸収エネルギー(vE-60)を測定することによって評価した。vE-60の測定は、t/4位置からNK(日本海事協会)船級が定めるU4号試験片を採取し、JIS Z2242に従って行なった。測定結果を下記表6に示す。なお、NK船級における造船Eグレードでは母材の衝撃特性を、試験温度を−40℃で評価するため、本実験例では、条件をより厳しく試験温度を−60℃として吸収エネルギー(vE-60)を測定し、この平均値が100J以上を合格(母材の低温靭性が良好)とした。
《疲労亀裂進展速度の測定》
圧延材のt/4位置から、厚さ:12.5mmのコンパクト型試験片(CT試験片)を採取した。採取したCT試験片の形状を図1に示す。このCT試験片を用い、ASTM E647に準拠し、疲労亀裂進展試験を実施することによって、疲労亀裂進展速度を求めた。試験条件は、下記の通りである。
試験方法:電気油圧サーボ式±10トン疲労試験機を使用し、亀裂長さの測定はコンピュータ制御によるコンプライアンス法によって求めた。コンプライアンスとは、亀裂開口変位δと荷重Pの比(δ/P)の意味であり、このコンプライアンスから亀裂長さが自動的に測定される。
試験環境:室温、大気中
制御方法:荷重制御
制御波形:正弦波
応力比:R=0.1
試験速度:600〜1200cpm
亀裂は溶接止端部から発生し、HAZ、母材と進展することを想定し、中ΔK領域であるΔK=20(MPa・√m)の値で評価した。尚、この試験のΔK領域は、下記(6)式によって規定されるパリス則が成り立つ安定成長領域であることが判明した。
da/dN=C(ΔK)m ・・・(6)
但し、a:亀裂長さ,n:繰り返し数,C,m:材料、荷重等の件で決まる定数、ΔK:応力拡大係数範囲、を夫々示す。
尚、CT試験による疲労亀裂進展速度の値はばらつくことが知られているため、従来鋼板のデータの平均値を基準として評価した。従来鋼板のデータの平均値が5.4×10-5mm/cycle程度であるため、本発明では、5.4×10-5mm/cycle未満を合格とした。なお、従来鋼板のデータの平均値は、社団法人 日本材料学会発行の「金属材料疲労亀裂進展抵抗データ」に基づいて決定した。
これらの結果に基づき、大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dと衝撃特性(vE-60)の関係を図2に示す。図2から、−60℃における衝撃特性を改善するには、上記平均円相当径Dを25μm以下とすることが有用であることが分かる。
大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rと疲労亀裂進展速度(da/dN)の関係を図3に示す。図3から、疲労亀裂進展速度を5.4×10-5mm/cycle未満とするには、上記ランダム粒界の割合Rを70面積%以下とすることが有用であることが分かる。
圧延材の平均硬さと疲労亀裂進展速度(da/dN)の関係を図4に示す。図4から、疲労亀裂進展速度を5.4×10-5mm/cycle未満とするには、圧延材の平均硬さを170Hv以上とすることが有用であることが分かる。
Ar3点+100℃以下での累積圧下率と大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dの関係を図5に示す。図5から、上記平均円相当径Dを25μm以下とするには、Ar3点+100℃以下での累積圧下率を50%以上とすることが有用であることが分かる。
γ粒径と大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dの関係を図6に示す。図6から、上記平均円相当径Dを25μm以下とするには、γ粒径を50μm以下とすることが有用であることが分かる。
1050℃以下での累積圧下率とγ粒径の関係を図7に示す。図7から、γ粒径を50μm以下とするには、1050℃以下での累積圧下率を40%以上とすることが有用であることが分かる。
大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dと大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rの関係を図8に示す。図8から、大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dと、大角粒界に占めるランダム粒界の割合Rには相関があり、大角粒界で囲まれた結晶粒を小さくするほど、ランダム粒界を低減できることが分かる。
次に、表5に示した結果に基づいて、溶接したときのHAZ靭性について考察する。
No.1−1、No.2−1、No.3−1、No.23は、本発明で規定する要件を満足する例であり、全酸化物の組成を測定して単独酸化物として質量換算したときに、ZrO2、REMの酸化物、およびCaOを所定量含有するように調整したうえで、円相当直径が5.0μmを超える粗大な酸化物が生成しないように、円相当直径が0.1〜2.0μmの微細な酸化物を多く生成させているため、HAZ靭性が良好な鋼材が得られている。
一方、No.4〜22は、本発明で規定するいずれかの要件を外れる例である。
No.4は、溶鋼の溶存酸素量が不足している例であり、HAZ靭性の向上に寄与する粒内フェライトの生成核となる微細な酸化物の量を確保することができず、HAZ靭性を改善できていない。No.5は、溶鋼の溶存酸素量が過剰な例であり、粗大な酸化物を生成してHAZ靭性が却って劣化している。No.6は、溶鋼の溶存酸素量が不足している例であり、Ti等を添加する前の溶鋼の全酸素量も不足している例である。そのためHAZ靭性の向上に寄与する粒内フェライトの生成核となる微細な酸化物の量を確保することができず、HAZ靭性を改善できていない。
No.7は、特許文献1に開示した鋼材の組成を模擬した例である。溶鋼の溶存酸素量を調整した後、溶鋼を攪拌して全酸素量を調整していないため、Tiを添加する前の全酸素量が本発明で規定している範囲を超えている。よって粗大な酸化物が多くなり、HAZ靭性が劣化している。
No.8とNo.9は、Zr、REM、およびCaを添加した後に、溶鋼を長時間攪拌しているため、溶鋼中の酸化物が互いに凝集して粗大な酸化物を多く生成している。そのためHAZ靭性が劣化している。
No.10は、Alが多過ぎる例であり、粗大な酸化物が生成し、HAZ靭性が劣化している。No.11は、Tiが少な過ぎる例であり、HAZ靭性の向上に寄与する粒内フェライトの生成核となる微細な窒化物が少なくなるため、HAZ靭性を向上させることができていない。No.12は、Tiが多過ぎる例であり、酸化物が粗大化してHAZ靭性が劣化している。No.13は、REMが少な過ぎる例であり、単独酸化物に換算したときのREMの酸化物量が少なく、HAZ靭性の向上に寄与する粒内フェライトの生成核となる微細な酸化物量が少なくなるため、HAZ靭性を向上できていない。No.14は、REMが多過ぎる例であり、単独酸化物に換算したときのREMの酸化物量が多く、粗大な酸化物を生成してHAZ靭性を却って劣化させている。No.15は、Zrが少な過ぎる例であり、単独酸化物に換算したときのZrO2量が少なく、HAZ靭性の向上に寄与する粒内フェライトの生成核となる微細な酸化物量が少なくなるため、HAZ靭性を向上できていない。No.16は、Zrが多過ぎる例であり、単独酸化物に換算したときのZrO2量が多く、粗大な酸化物を生成してHAZ靭性を却って劣化させている。No.17は、Caが少な過ぎる例であり、単独酸化物に換算したときのCaO量が少なく、HAZ靭性の向上に寄与する粒内フェライトの生成核となる微細な酸化物量が少なくなるため、HAZ靭性を向上できていない。No.18は、Caが多過ぎる例であり、単独酸化物に換算したときのCaO量が多く、粗大な酸化物を生成してHAZ靭性を却って劣化させている。No.19は、Nが多過ぎる例であり、固溶N量が増大して母材自体の靭性が劣化し、HAZ靭性も低下している。No.20は、Nが少な過ぎる例であり、Ti含有窒化物の生成が抑制されるため、ピン止め効果によるオーステナイト粒の粗大化を防止できず、HAZ靭性が劣化している。No.21は、Oが少な過ぎる例であり、粒内フェライトの生成核となる微細な酸化物量が不足し、HAZ靭性を向上させることができていない。No.22は、Oが多過ぎる例であり、酸化物が粗大化してHAZ靭性が却って劣化している。
次に、表6に示した結果に基づいて、母材自体の疲労特性について考察する。
No.1−1〜1−6、No.2−1、No.2−2、No.3−1、No.3−2、No.23は、いずれも本発明で規定する要件を満足する鋼種a〜cを用いた例であり、鋼材の金属組織が適切に制御されているため母材の疲労特性が優れている。
No.1−7とNo.1−8は、本発明で規定する要件を満足する鋼種aを用いた例であるが、鋼材が硬過ぎるため母材の疲労特性が劣っている。
No.15〜17は、鋼材の金属組織が適切に制御されていないため疲労特性が劣っている。特に結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径Dが25μmを超えているため、衝撃特性も劣っている。
No.10、12〜14、18、21、22は、鋼材の金属組織が適切に制御されていないため、疲労特性のうち衝撃特性は良好であるが、疲労亀裂進展速度を小さくできていない。
なお、No.4〜9、11、19、20は、鋼材の金属組織が適切に制御されているため、母材の疲労特性は良好であるが、鋼材の成分組成が本発明で規定する要件を満足していないため、上述したように溶接したときのHAZ靭性を改善できていない。
次に、表5〜表6に示した結果を総合して考察する。
表6のNo.1−1〜1−6、No.2−1、No.2−2、No.3−1、No.3−2、No.23は、本発明で規定する要件を満足する鋼種a〜c、鋼種wを用いた例であり、これらの鋼種を用いて得られた鋼材は、表5から明らかなようにHAZ靭性が良好で、表6から明らかなように母材の疲労特性も優れている。
一方、表6のNo.1−7、No.1−8、No.4〜22は、本発明で規定するいずれかの要件を満足しない例であり、HAZ靭性または母材疲労特性の少なくとも一方が劣っている例である。
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Claims (7)

  1. C :0.02〜0.12%(「質量%」の意味。以下、化学成分および酸化物について同じ。)、
    Si:0.5%以下(0%を含む)、
    Mn:1〜2%、
    Zr:0.0002〜0.050%、
    REM:0.0002〜0.050%、
    Ca:0.0005〜0.010%、
    Ti:0.005〜0.02%、
    N :0.0040〜0.01%、
    O :0.0005〜0.010%、
    P :0.02%以下(0%を含まない)、
    S :0.015%以下(0%を含まない)、
    Al:0.05%以下(0%を含む)を満足し、
    残部が鉄および不可避不純物からなる鋼材であり、
    (a)前記鋼材は、Zr、REM、およびCaを含有する酸化物を含み、
    (b)前記鋼材に含まれる全酸化物の組成を測定して単独酸化物として換算したとき、
    ZrO2:5〜50%、
    REMの酸化物(REMをMの記号で表すとM23):10〜50%、および
    CaO:5.0〜50%を満足すると共に、
    (c)前記鋼材に含まれる全酸化物のうち、
    円相当直径で0.1〜2.0μmの酸化物が1mm2あたり120個以上、
    円相当直径で5.0μm超の酸化物が1mm2あたり5個以下であり、
    (d)前記鋼材の金属組織を後方散乱電子回折法(EBSP法)で観察したとき、下記(1)式と(2)式を満足し、
    (e)前記鋼材の平均硬さが170Hv以上
    であることを特徴とする溶接熱影響部の靭性および母材疲労特性に優れた鋼材。
    D≦25μm ・・・(1)
    R≦70面積% ・・・(2)
    [但し、(1)式中、Dは、EBSP法で隣接する2つの結晶の方位差を測定し、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた結晶粒の平均円相当径(μm)を意味する。
    また、(2)式中、Rは、上記大角粒界に占めるランダム粒界の割合(面積%)を意味する。]
  2. 前記鋼材が、更に他の元素として、
    Ni:0.4%以下(0%を含まない)、
    Cu:0.3%以下(0%を含まない)、
    Cr:1.5%以下(0%を含まない)、および
    Mo:1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1に記載の鋼材。
  3. 前記鋼材が、更に他の元素として、
    Nb:0.1%以下(0%を含まない)、
    V :0.1%以下(0%を含まない)、および
    B :0.005%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の鋼材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の鋼材を製造する方法であって、
    溶鋼の溶存酸素量を0.0010〜0.0060%の範囲に調整した後、溶鋼を攪拌して溶鋼中の酸化物を浮上分離させることによって全酸素量を0.0010〜0.0070%の範囲に調整してから、Ti、次いでZr、REM、およびCaを添加して請求項1〜3のいずれかに記載の成分組成に調整した後、鋳造を行なうと共に、
    熱間圧延に際して、鋼片を1100〜1250℃に加熱した後、1050℃以下、Ar3点+100℃を超える温度域において1パスあたりの平均冷却速度が1.5℃/秒以上となるように冷却しながら累積圧下率が40%以上となるように第1圧延を行ない、
    次いでAr3点+100℃以下、Ar3点を超える温度域において1パスあたり最大圧下率を12%以下、累積圧下率を50%以上となるように第2圧延を行なった後、
    表面温度が500℃以下となる温度域まで平均冷却速度5℃/秒以上で冷却することを特徴とする溶接熱影響部の靭性および母材疲労特性に優れた鋼材の製造方法。
  5. 前記Zr、REM、およびCaを添加した後、40分を超えない範囲で溶鋼を攪拌してから鋳造を行なう請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記第1圧延をオーステナイト再結晶温度域において行なう請求項4または5に記載の製造方法。
  7. 前記圧延材の表面温度が500℃以下となる温度域まで平均冷却速度5℃/秒以上で冷却した後、500℃以上、Ac1点未満の温度範囲で焼き戻し処理を行なう請求項4〜6のいずれかに記載の製造方法。
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