JP5906992B2 - 鋳片の凝固状態推定方法及び連続鋳造方法 - Google Patents
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Description
上記に対応するため、連続鋳造における鋳片の凝固状態のオンライン推定計算は、従来から様々な方法が提案されている。例えば特許文献1には次の計算方法が記載されている。すなわち、連続鋳造中のストランド内に所定長さの鋳込みが進行する毎に鋳込み方向(鋳片長手方向)に垂直な計算面(断面)を発生させる。そして、発生させた各計算面が、鋳込み方向に連続して設定された複数のゾーンをそれぞれ通過し、更に次のゾーン入側境界に到達した時点で、計算面が直前に通過したゾーンの平均冷却条件を基に該計算面内の2次元凝固計算を行う。更に、計算面内の温度分布を、次のゾーン以降で行う凝固計算の初期値として与え、順次計算面内の凝固計算を行って、最終ゾーン入側境界での計算面内の温度分布を求める。
一般に温度を計測する手法としては、熱電対などの接触式と放射温度計などの非接触式の2通りの方法がある。このうち接触式は、鋳片のように対象が移動する場合には現実的ではないため、鋳片表面を連続的に測定するためには放射温度計の方法をとる方法が考えられる。
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、連続鋳造機(以下、連鋳機ともいう。)の機内において、鋳片の最終凝固位置、及び最終凝固形状を精度良く推定することを可能とする連続鋳造の最終凝固予測方法、鋳片の凝固状態推定方法及び連続鋳造方法を提供することを目的とする。
また、上記の連続鋳造の最終凝固予測方法において、上記撮像装置に一番近い上記被計測面の近端における上記撮像角度は40°以上であり、上記撮像装置から一番遠い上記被計測面の遠端における上記撮像角度は65°以下であることを特徴としてもよい。
また、上記の鋳片の凝固状態推定方法において、上記2次冷却は、複数の冷却ゾーンによって実施され、上記熱流束分布を補正するための熱流束分布の補正係数を上記各冷却ゾーン毎に個別に設定することを特徴としてもよい。
また、上記の鋳片の凝固状態推定方法において、上記温度分布の計測は、上記撮像装置として少なくとも2台以上の撮像装置を用いて、上記被計測面を撮像することを特徴としてもよい。
また、上記の鋳片の凝固状態推定方法において、上記被計測面から前記撮像装置に至る撮像の光路が連続鋳造機のセグメントの間隙を通り、且つ、上記光路の80%以上の行程が、前記セグメントの上端より低いところを通ることを特徴としてもよい。
また、上記の鋳片の凝固状態推定方法において、上記温度分布を計測する際は、前記鋳片の被計測面の上方から該被計測面に向けて30Nm3/min以上の気体を送風しながら該被計測面を撮像することを特徴としてもよい。
本発明の更に別の態様に係る連続鋳造方法は、上記の鋳片の凝固状態推定方法で推定した凝固状態に基づき、2次冷却条件、軽圧下条件、鋳造速度、鋳型電磁攪拌強度の少なくとも一つを操作することを特徴とする。
これにより、鋳片に対して撮像装置を走査させる必要がなく、大規模なトラバース装置なども必要としないため、簡易な方法で遠隔から鋳片の温度分布を計測することが可能となる。また、この方法で計測される鋳片幅方向の実測温度を用いて、モデルのパラメータを補正することで、鋳片の最終凝固位置、及び最終凝固形状を精度良く推定することが可能となる。
<第1実施形態>
(連鋳機の構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る垂直曲げ型連鋳機の構成例を示す概念図である。図1に示すように連鋳機では、タンディッシュ1の下方に鋳型2が設けられ、タンディッシュ1の底部に鋳型2への溶鋼供給口となる浸漬ノズル3が設けられている。鋳型2の下方には、複数のサポートロール6が設置され、その複数のサポートロール6に沿って鋳片(例えば、スラブ)5が所定の引抜き速度で引き抜かれる。符号7〜13は、それぞれ分割された冷却ゾーンであり2次冷却ゾーンを構成する。
また、この連鋳機には、鋳片長手方向における予め設定した1箇所(例えば、機端)に、鋳片5の幅方向表面温度分布を計測する温度測定装置4が設けられている。この温度測定装置4は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサー、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサー等の撮像装置を有する。
図2は、温度測定装置4の構成例を示す側面図である。図2に示すように、各セグメント(例えば、各冷却ゾーンと同じ)には、上面側及び下面側にそれぞれサポートロール6が設置されている。鋳片5は、上面側及び下面側のサポートロール6間のギャップに配置されており、紙面の法線方向に進行している。
また、カメラ32aは、カメラ32aの受光部と被計測面5aとを結ぶ線と該被計測面5aの法線とがなす撮像角度が0°以上、65°以下(40°〜65°)となる撮像範囲を撮像する。同様に、カメラ32bは、カメラ32bの受光部と被計測面5aとを結ぶ線と該被計測面5aの法線とがなす撮像角度が40°〜65°となる撮像範囲を撮像する。
図3は図2と同一の形態を上から見た平面図である。カメラ32a、32bは、二つのセグメント35a、35bの間隙に設置され、セグメントの間から鋳片5を撮像する。前述したように、カメラ32a、32bの被計測面5aからの高さh1は例えば1.8m、セグメント上端からの高さh2は例えば0.3mに設定されている。このとき、カメラ32a、32bが鋳片5を撮像するときの光路の83%(=(1.8−0.3)/1.8×100)、つまり約80%以上がセグメント上端より下となっている。
即ち、測定の外乱となる水蒸気の吸収を受けにくい“大気の窓”と呼ばれる波長帯域は、0.9μm、3.9μm、10μmをそれぞれ極小とした複数存在する。これら帯域の内、0.9μm近傍の帯域が液相の水が鋳片の上にたまったものである水のりには最も強い。これは、まとまった量の水(液相)による赤外線の吸収が発生しており、0.9μm近傍の帯域が水(液相→水のり)の吸収スペクトル値が最も小さいためである。
すなわち、元の撮像された画像は、鋳片5の流れ方向にはセグメント間のごく一部しか写っていないが、この処理により鋳片5の全長全幅の輝度情報を得ることができる。例えば、黒体炉を用いて温度と輝度の関係を事前に計測しておき、事前計測した結果を元にした温度と輝度の関係を表すグラフを作成しておく。このように作成したグラフの一例を図5に示す。ここで輝度Xと温度Tの関係は、AとBを定数として簡易に式(1)のように表すことができる。
このように、本実施形態に係る温度計測方法によれば、カメラ32a、32bで鋳片5の被計測面5aを撮像し、撮像した画像の各表面位置における輝度に基づいて被計測面5aの表面温度分布を求める。表面温度分布を求める際に使用する画像は、カメラ32a、32bの受光部と被計測面5aとを結ぶ線と該被計測面5aの法線とがなす撮像角度が40°以上、65°以下となる撮像範囲の画像である。これにより、鋳片5に対して撮像装置を走査させる必要がなく、大規模なトラバース装置なども必要としないため、簡易な方法で遠隔から鋳片5の温度分布を計測することが可能となる。
前述の温度計測方法について、具体例となる実施例1を挙げてより詳細に説明する。
図6は、本発明の実施例1に係る温度計測方法を示す図である。
図6(a)は、実施の形態で説明した手法で温度を計測した一例である。図7は、図6(a)と後述する図6(b)、(c)の鋳片5の幅方向における同一箇所の温度変化をグラフで表した図である。即ち、図7は、図6(a)、(b)、(c)の各破線に沿った温度を表す図である。なお、図6(a)、(b)、(c)は同一のタイミングで計測されたものではなく、鋳片温度には実際に差がある。このため、図7において、図6(a)、(b)、(c)の各温度が一致するわけではない。
そこで、本発明者は、セグメントの上方に配置された冷却水用のパイプに、乾燥したエア(例えば、室温と同じ温度)をブロアで供給しながら温度計測の実験を行った。図6(b)は、この実験の結果を示す図である。また、図8は、図6(b)の結果を得たときの温度測定方法を示す側面図である。
図6(a)では、非常に狭い範囲での温度低下が一部に見られている。これは水のりの位置と一致しており、水のりによる熱吸収の影響と考えられる。図4で示した流れ方向に最大値をとる演算により、水のりがあってもその前後の温度をとることができ、水のりの影響を低減したが、一部影響が残っている。
図9及び図10に示すように、セグメントの両側に加えて、セグメント間の上方にもブロア38a、38bを配置する。これらのブロア38a、38bは図示しない固定具によってセグメント間の上方に固定されており、その送風の方向は鋳片5の被計測面5a(即ち、下方向)に向けられている。
なお、図9、図10は、図8の構成を含む内容となっているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。図9、図10では、ブロア37a、37bがなく、ブロア38a、38bのみが設けられている構成でもよい。このような構成であっても、水のりの影響等を除去することができる。
次に、上記温度計測方法を用いて、鋳片5の最終凝固位置及び形状を予測する最終凝固予測方法について説明する。連鋳機の2次冷却計算は、例えば、単位長さ(鋳造方向)にスライスされた鋳片断面を考え、鋳造中のストランド内の場所に応じて、水冷、空冷、ミスト冷却、ロール抜熱などで様々な状況での境界条件の熱流束を与えて、以下の式(2)に示す2次元伝熱方程式を解くことで実施される。
本実施形態では、この2次冷却計算の温度推定値と実測した温度を用いて2次冷却計算を修正する方法をまず提供する。
計算は、まず鋳造方向単位長さの2次元断面スライス1枚毎をメニスカスから機端ま
で連続して温度計算を行う。すなわち、2次冷却計算全体を一度実行し、上流境界条件・機端表面温度分布を計算する。
そして、表面温度観測位置における鋳片表面温度計算値と表面温度実測値の差を誤差面積などで評価関数とし、その値を用いて評価する。その評価関数値が小さくなるように温度計測位置より上流で、最終凝固すなわちクレータエンド(以下、CEとも略記する)の位置よりも上流の適当な位置を定め、その断面の温度分布を修正する。 この断面の温度
分布修正と温度誤差の評価関数による評価の繰り返しにより、評価関数が最小となる温度分布を算出(最適化計算)し、その温度分布に基づいて再計算した結果を、もっとも誤差の少ない温度とする。
の位置から下流へ向かって操業条件に沿った冷却計算を再度実施して最終凝固位置・形状を算出する。
図12は、最適化計算及びCEの位置・形状を予測する処理の流れを示す図である。
Step100では、CE位置より上流の位置を定め温度分布を仮定して与える。そして、Step101で、温度モデルによる機端表面温度分布を推定計算する。推定計算した表面温度分布と実測した表面温度分布と比較し、その誤差を評価関数を用いて評価する(Step102)。
そして、評価関数の収束性を判断し、収束と判断されない場合には、上流温度分布を修正する(Step103)。
Step103における、上流位置の断面温度分布の具体的修正方法の一例を以下に示す。まず、幅方向を計算メッシュより粗い指定した数で分割し、分割区間は一定温度として近似する方法で幅方向表面温度を与え、これを求める変数とする。
前述の最終凝固予測方法について、具体例となる実施例2を挙げてより詳細に説明する。
図13は、機端の放射温度計計測位置の表面温度の予測値と実測値との比較図である。
この例は、最適化計算すなわち上流温度分布の修正を行っていない例であり、表面温度の実測と計算で温度の値に差が生じており、幅方向の分布の仕方も異なっていることがわかる。このような状況では計算結果からCE位置形状を予測しても実態と合っているという保証はない。
ここで、温度合わせこみに用いる幅方向の変数(幅方向メッシュ)については、点の間隔が50〜100mmであれば良い。本例では、半幅1000mmに対して15点とした
ので、点の間隔が約70mmである。これは、内部での幅方向伝熱があるため、表面に現れる計測温度も幅方向において50〜100mm以下のピッチとすると、極端な差が発生しないためである。一方、細かいピッチに設定すると、計算負荷が増大し、所望の計算時間内に計算が終了しないケースが発生するといった問題がある。
そして、図15は、クレータエンド位置・形状の変化を示す図である。図15(a)は、図13に対応する最適化前、図15(b)は、図14に対応する最適化後のCE位置をそれぞれ示すものであり、横軸はメニスカスからの距離、そして縦軸は幅方向位置で凝固完了位置を示している。
このように、高精度にCE位置・形状が予測できるならば、鋳造条件(スプレー条件、軽圧下条件、鋳造速度、モールド電磁攪拌強度など)を様々変更し、この形状がどのように変化していくかを把握することができる。これによって、クレータエンド形状がフラットで中心偏析の少ない鋳片製造条件を定めることができ、優れた品質の鋳片5を提供することが可能になる。
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。
図16は、本発明の第2実施形態に係る連鋳機の一例を示す概要図である。図16では、連鋳機として垂直曲げ型連鋳機を例示している。但し、図1と同じものには同一の符号を使用している。この連鋳機には、鋳片5の凝固状態推定装置が適用される。
図16に示すように連鋳機では、タンディッシュ1の下方に鋳型2が設けられ、タンディッシュ1の底部に鋳型2への溶鋼供給口となる浸漬ノズル3が設けられている。鋳型2の下方には、複数のサポートロール6が設置され、その複数のサポートロール6に沿って鋳片5が所定の引抜き速度で引き抜かれる。符号7〜15は、それぞれ分割された冷却ゾーンであり2次冷却ゾーンを構成する。その各冷却ゾーンには複数のスプレー又はエアミストスプレー用ノズルなどの冷却ノズル(不図示)が配置されており、各冷却ノズルから鋳片5の表面に2次冷却水が噴霧されることで、目標とする鋳片5の2次冷却が実施される。なお、図16では、反基準面側(上面側)の冷却ゾーンをaで表示し、基準面側(下面側)をbで表示している。また図16では冷却ゾーンが合計9ゾーンの場合を例示しているが、ゾーン数はこれに限定されない。実際の連鋳機のゾーン数は、機長などによって、いくつに分割されるかは様々である。
また、鋳片長手方向における予め設定した1箇所に対し、温度分布計測手段を構成する温度測定装置4bが配置されている。温度測定装置4bは、機内における鋳片5の幅方向表面温度分布を計測する。
凝固状態推定部20Bは、凝固状態推定部本体20Baと熱流束分布補正部20Bbとを備える。凝固状態推定部本体20Baは、少なくとも2次冷却の冷却条件に基づき熱流束を求めつつ、その求めた熱流束を使用した熱伝達モデルによって、鋳片5の凝固状態(温度状態)を推定する。
ここで、通常の連続鋳造の2次冷却計算は、例えば、鋳片長手方向(鋳造方向)に沿って単位長さでスライスされた鋳片断面を考え、鋳造中のストランド内の場所に応じて、水冷、空冷、ミスト冷却、ロール抜熱などからなる2次冷却条件による鋳片表面での境界条件を示す式(3)に基づき熱流束を求め、その求めた熱流束を使用して、式(5)の2次元伝熱方程式を解くことで実施される。
Q :熱流束
κ :熱伝導率
κd:基準温度での熱伝導率
h :熱伝達係数
T :モデル表面温度
Ta:雰囲気温度
である。
c:比熱
ρ:密度
κ:熱伝導率
T:温度
t:時間
x、y:座標
である。
また、上記式(3)〜(5)を用いて、スライスされた単位長さの断面を鋳片長手方向に沿って連続的に次々と発生させ、計算することによって、鋳造速度変化時などの非定常における温度計算も実現することができる。現在計算機能力が飛躍的に向上しており、水冷実績データ、鋳造速度、タンディッシュ溶鋼温度などの操業条件をオンラインで取り込み、リアルタイムで2次冷却計算、最終凝固計算が可能である。
Qij =dih(T −Ta) ・・・(6)
ここで、
di :熱伝達係数の補正係数(初期値は「1」)
i :幅方向補正位置
j :長手方向位置
である
本実施形態においては、前述の2次冷却モデル(熱伝達モデル)の表面温度計算値と幅方向の表面温度実測値を用いて、2次冷却計算に用いるパラメータを調整することで鋳片5の温度分布を推定し、最終凝固位置・形状を推定する。具体的には2次冷却位置での幅方向の熱流束分布、若しくは熱伝達係数分布を補正するパラメータである補正係数diの修正を行う。
まずステップS10にて、凝固状態推定部本体20Baは、前述のような処理によって、2次冷却計算を行う。上記補正係数diは、初期値として「1」が設定されている。
2次冷却計算は、上記式(6)及び式(5)を用いて、まず鋳造方向単位長さの2次元断面スライス1枚について、そのときの鋳造履歴に応じた鋳造速度で温度を計算する。そのスライスされた単位長さの断面を鋳片長手方向に沿って連続的に次々と発生させ、計算する。
次に、ステップS30では、連続的に入力する温度測定装置4bの計測値から計測位置における実測した鋳片幅方向の温度分布を求める。例えば予め設定した時間間隔における計測値の平均値を、実測した鋳片幅方向の温度分布とする。
一方、ステップS50では、熱流束分布補正部20Bbが、ステップS20で求めた鋳片表面温度の計算値と、ステップS30で求めた温度測定装置4bが計測した表面温度実測値との差が小さく若しくはゼロとなるように、上記補正係数di(i=1〜n)を変更する。上記補正係数diを変更したらステップS10に移行して、2次冷却計算の再計算を実施する。
具体的な計算方法としては、指定場所の幅方向温度分布実測データと、同じ位置の表面温度計算結果の誤差面積を評価関数として、その評価関数値が小さくなるように、つまり誤差面積が最小になるように計算を行えばよい。手法としては一般的な最適化手法を用いれば良い。また補正係数に制約を設ける場合には、例えば逐次二次計画法などの非線形最適化手法を用いると良い。
前述の2次冷却計算について、以下に補足説明を行う。
通常の連続鋳造の2次冷却計算は、例えば、鋳片長手方向(鋳造方向)に沿って単位長さでスライスされた鋳片断面を考え、鋳造中のストランド内の場所に応じて、水冷、空冷、ミスト冷却、ロール抜熱などからなる2次冷却条件による鋳片表面での境界条件を示す上記式(3)に基づき熱流束を求め、その求めた熱流束を使用して、上記式(5)の2次元伝熱方程式を解くことで実施される。
一般に比熱、密度、熱伝導率の物性値は鋳片の温度変化とともに変化するので、物性値を温度の関数として変化させて、式(5)を解く必要がある。物性値に温度依存性がある場合、式(5)はこのままでは差分式に展開できない。
そこで、実際の計算では公知の手法である「含温度−変換温度法」を用いて、温度を以下
のように置き換えて線形化している。
そして、式(7)、(8)を式(5)に代入すると、下記式(9)となる。
ここで、スライスの内部点と表面点で差分式が異なる。
鋳片表面では、下記式(10)で表されるとし、
またスラブ鋳造方向の速度をv(z方向)とすると、下記式(11)であるので、
また、上記式では、lは計算時間ステップを表し、lの各値から、次の計算ステップ(
時間)の(l+1)の値を求めている。
これら(12)、(13)の差分化式を用いて差分化法により実際の伝熱計算を行う。
この実際の計算過程では、以下のような(1)〜(9)の手続きを踏んで3次元計算をトレースしている。
(2)このシートが外部の境界条件と2次元内部の熱伝導のみで計算されていく。(進行方向の熱伝導は考えない。)
(3)途中で、速度のデータにより各時刻で速度が変化していく。
(4)途中で、外部冷却パターンデータにより、スプレーパターンが切り替わる。
(5)この1枚のシートが、解析時間の終了時刻まで計算される。
(6)次のシートに移ったとき、入力に合わせ物性値、初期温度を変える。
(7)1枚のシートの計算が終了したら、タイムステップの時間だけ離れて次のシートの計算を開始し解析時間終了時刻まで計算する。
(8)以上の計算を各シートにつき、引き抜き終了時刻まで行う。
(9)途中必要に応じてファイル出力を行う。
上記伝熱計算の演算は、鋳片内の熱伝導を差分法を用いて解析しており、また、構造的対象性より厚み方向1/2の部分を解析対象としている。例えば、短辺、長辺を、m分
割、n分割した場合には、メッシュは図18のようになる。
[使用する熱伝達係数について]
また式(10)における熱伝達係数hは、水冷、空冷、ミスト冷却などの冷却方式、冷却操作量、ロール抜熱量などの2次冷却条件によって決定される。また熱伝達係数hは冷却方法(水のみ、水と空気、空気のみ、及びそれぞれの流量)に従い、計算式を変更する。
実際に使用する抜熱は、これらと放射冷却を比較して、より大きい値を採用している。
固相率の計算は、各セルの温度が、液相線温度よりも下にあるときは固相率=1、固相線温度よりも上にあるときは固相率=0、液相線温度と固相線温度の間にあるときは、下記式としている。
CS:ある温度が固相線温度と等しい炭素濃度
CL:ある温度が液相線温度と等しい炭素濃度、としている。
モールド内ではスライスのモールド通過時間により表面抜熱量を決定している。
なお、抜熱は長辺、短辺ともに均一として決定する。
[計算条件の例について]
計算条件は例えば次のように設定する。
・シミュレーション時間刻み:0.02sec
・鋳造速度 1.4mpm
・解析厚:125mm(半厚、全厚250mm)
・解析幅:1050mm(半幅、全幅2100mm)
・雰囲気温度:30℃
・二次冷却水温度:28℃
・溶鋼温度:1555℃
・基準温度での熱伝導率:対象とする材の成分に基づき決定
・上記成分から求めた液相温度、固層温度:実験その他で決定
・ 変換温度φ−温度の関係:実験その他で決定
・含熱量H−温度の関係:実験その他で決定
・密度ρ−温度の関係:実験その他で決定
・メッシュ幅方向分割数の例
幅(n)=66
厚(n)=25
図19は本実施形態による幅方向の熱流束分布の補正を実施することなく、表面温度計測時の操業条件を取り込んだ上で、2次冷却計算のみを用いて、温度計設置位置(計測位置)でのモデル計算温度と実測温度を比較した図である。図19では、鋳片5の幅方向中央から片側の状態を図示している。後述の図20〜14等においても同様である。
この図19に示すように計算温度(推定温度)の温度分布は鋳片幅方向にフラットであり、また表面温度実測値との間に差が生じている、このため、計算温度と実測温度とでは、幅方向の分布の仕方も異なっている。このような状況では計算結果から最終凝固位置形状を予測しても実態と合っているという保証はない。
この2つの場合(図19及び図20参照)における、最終凝固の位置(CE位置)及び形状を求めたものが図22(比較例)及び図23(実施例)である。図22及び図23は、縦軸が鋳型2からの鋳片長手方向の距離、横軸が鋳片幅方向位置における凝固完了位置を示している。
以上のように、温度測定装置4bによる計測位置における幅方向のモデル表面温度を、実測表面温度に基づき熱伝達係数の分布を補正することで、実測表面温度に一致若しくは近づける。この結果、より実際の操業状態を反映することが可能となり、最終凝固位置・形状の推定精度を上げることが実現できる。
また、上記求めた最終凝固位置・形状の予測結果に基づき、2次冷却条件、軽圧下条件、鋳造速度、鋳型電磁攪拌強度を操作して、最終凝固位置や形状を、予め設定した目標位置や目標形状に近づくように制御して、能率や品質の向上を図っても良い。
前述の図20〜図23においては、また熱伝達係数の補正係数diの値(補正倍率)は、複数の冷却ゾーンの各ゾーンに対し一律に変更している。
具体的には、式(20)に基づき補正係数diの計算を行っている。
補正係数更新値
=(モデル温度−実測温度)×ゲイン+補正係数前回値 ・・・(20)
冷却ゾーンnの補正係数更新値
=(モデル温度−実測温度)×ゲインn+(冷却ゾーンnの補正係数前回値)・・・(21)
ここでnは冷却ゾーンの番号を示す。
式(21)では、冷却ゾーンによってゲインnを変更している。
このように冷却ゾーン毎に個別に調整する場合には、冷却ゾーン毎に冷却ムラがある場合などがあっても、精度良く最終凝固位置・形状の予測結果を求めることが可能となる。
本例では、温度測定装置4aを使用するケース場合を示す。
式(20)を用いた補正では、表1に示すように冷却ゾーンの全ゾーン共通のゲインnを用いている。
一方、式(21)を用いた補正では、表2に示すようにゾーン毎のゲインnの調整を実施している。例としての表2でのゲインの数値は、冷却の強い7a−8aのゾーンでは冷却による温度ムラの発生が大きいとしてゲインnを大きく、また冷却が弱めの9a−13aのゾーンでは冷却による温度ムラの発生が小さいとして補正用ゲインを小さく設定する。また温度計設置位置以降の14a−15aのゾーンでは、補正用ゲインを0として、温度測定装置による補正を実施しないとしている。
図24に示されるように、同じ温度計値を使用した場合でも、変形例に基づき表2のようにゾーン毎に個別のゲインnを使用した場合の方が最終凝固形状の山谷差が大きくなっている。これは温度測定装置から遠く、かつ冷却の強いゾーンで強く表面温度の補正したためである。このように式(20)のケースと比べ、調整の自由度が向上したことがわかる。これにより、更に実際に即した調整が可能となる。
次に、第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、上記第2実施形態と同様な構成には同一の符号を付して説明する。
本実施形態の基本構成は、上記第2実施形態と同様である。
但し、鋳片長手方向に沿って上記計測位置を2箇所以上設定し、その各計測位置でそれぞれ鋳片幅方向の表面温度分布を計測すると共に、各計測位置毎に、上記熱伝達モデルで推定した推定温度と上記計測した鋳片幅方向の温度分布とが一致するように、上記熱流束の鋳片幅方向の熱流束分布の補正を繰り返し、補正する度に、凝固状態推定部本体20Baによる2次冷却計算を再度実施する。
本実施形態では、鋳片長手方向に沿って各計測位置を境界として区分し、計測位置を、上流側から第1の計測位置、第2の計測位置とした場合に、最上流から第1の計測位置までの計測区間、第1計測位位置から第2の計測位置までの計測区間・・のように、計測位置に基づき複数の計測区間に区分する。そして、各計測区間毎に熱伝達モデルの鋳造幅方
向の熱流束分布を修正し、修正する毎にモデルを使用した計算をやり直す。
本実施形態の凝固状態推定部20Bでの熱伝達係数の補正処理について、図25を参照して説明する。
図25中のステップS10〜S50、S60は、上記第1実施形態(図17)におけるステップS10〜S50、S60と同じ処理を行う。なお、ステップS30では、温度測定装置4aを採用し、温度測定装置4aの計測位置を温度比較位置とする。
また、図25中のステップS110〜ステップS150は、上記第1実施形態(図17)におけるステップS10〜S50と同じ処理を行う。なお、ステップS130では、温度測定装置4bを採用し、温度測定装置4bの計測位置を温度比較位置とする。
但し、ステップS110の計算における熱流束分布の初期値である補正係数di(i=1〜n)は、ステップS10〜ステップS50で補正した値とする。
すなわち、ステップS110の計算においては、第1の計測位置までの範囲においては、補正係数diとしてステップS50で求めた値を使用し、第1の計測位置〜第2の計測位置までの計測区間に対し、ステップS150で調整した補正係数di(i=n)を使用する。
第1の計測位置(温度測定装置4aの位置)までに対して、本実施形態を採用した場合の作用については、上記第1実施形態と同様である(図19〜図21を参照)。
また、図26は、ステップS10〜50の処理による、温度測定装置4aの計測位置に基づく補正後の温度測定装置4aの計測位置における、スライス断面温度分布の例である。
このずれを解消するため、前述温度測定装置4aの計測結果に基づく補正と同様に、温度測定装置4a〜4bの計測位置間の区間内における幅方向の熱伝達係数の倍率(補正係数diの値)を温度測定装置4bの計測結果に基づき修正することで、温度測定装置4bの計測位置においては、図28に示すような表面温度の計算結果を得ることができる。
この図29、図30は、縦軸が鋳型2からの長手方向距離、横軸が幅方向位置で凝固完了位置を示している。ここでは、2箇所の温度計値を用いて2度のモデル温度補正を行うことで、計算温度が上昇し、その結果、最終凝固位置も機端側に伸びる結果となっている。このように、2箇所の表面温度計測位置での計算結果と実測値が一致するならば、鋳片内部の温度状態によって決まる最終凝固位置・形状の推定値の精度確保が期待できる。また温度測定装置を3箇所以上設置して同様の手法を適用することにより更なる精度向上も期待できる。
これに対し、本実施形態にあっては、以上の不都合を低減若しくは解消することが可能となる。
また前述のように従来計算と比べ、高精度に最終凝固位置・形状が観測できるから、シミュレーションにより鋳造条件(冷却条件、軽圧下条件、鋳造速度、鋳型電磁攪拌強度など)を様々変更し、この形状がどのように変化するかを把握することができる。これによって、最終凝固形状がフラットで中心偏析の少ない鋳片製造条件を定めることができる。例えば表面温度に基づいて計算した最終凝固位置・形状に応じて、幅方向に複数設置されたスプレー流量をスプレー毎に変更するなど2次冷却条件を変更することで、最終凝固位置や形状を、予め設定した目標位置や目標形状(最終凝固形状のフラット化など)に近づくように制御して、能率や品質の向上を図っても良い。
その他の構成等については上記第2実施形態と同様である。
2 鋳型
3 浸漬ノズル
4、4a、4b 温度測定装置
5 鋳片
5a 被計測面
6 サポートロール
7a〜15b 冷却ゾーン(セグメント)
20 連鋳制御部
20A 2次冷却制御部
20B 凝固状態推定部
20Ba 凝固状態推定部本体
20Bb 熱流束分布補正部
21 製造管理用制御部
32a、32b カメラ
33a、33b 三脚
34a、34b 通路
35a、35b セグメント
di 補正係数
h 熱伝達係数
Claims (10)
- 鋳型に注入された溶鋼を、引き抜きながら2次冷却を行うことで凝固させて連続して鋳片を製造する連続鋳造における、上記鋳片の最終凝固位置及び形状を推定する凝固状態推定方法において、
少なくとも上記2次冷却の冷却条件に基づく熱流束を使用した熱伝達モデルによって上記鋳片の最終凝固位置及び形状を推定すると共に、鋳片長手方向における予め設定した計測位置での鋳片幅方向の温度分布を計測し、
上記計測位置における上記熱伝達モデルで推定した推定温度と上記計測した鋳片幅方向の温度分布とが一致するように、上記熱流束の鋳片幅方向の熱流束分布を補正することで、上記計測位置よりも上流側での上記熱伝達モデルによる推定温度を修正し、
上記温度分布の計測は、撮像装置で上記鋳片の被計測面を撮像し、撮像した画像の各表面位置における輝度に基づいて上記被計測面の温度分布を求め、
上記温度分布を求める際に使用する画像は、
上記撮像装置から見て上記被計測面の上記鋳片幅方向の一端における撮像角度をθ1とし、上記撮像装置からみて上記被計測面の上記鋳片幅方向における他端における撮像角度をθ2としたとき、前記θ1と前記θ2はそれぞれ40°以上、65°以下となる画像であり、
上記2次冷却は、複数の冷却ゾーンによって実施され、
上記熱流束分布を補正するための熱流束分布の補正係数を上記各冷却ゾーン毎に個別に設定することを特徴とする鋳片の凝固状態推定方法。 - 鋳片長手方向に沿って上記計測位置を2箇所以上設定し、その各計測位置でそれぞれ鋳片幅方向の温度分布を計測すると共に、上記2箇所以上の計測位置毎に、上記熱伝達モデルで推定した推定温度と上記計測した鋳片幅方向の温度分布とが一致するように、上記熱流束の鋳片幅方向の熱流束分布の補正を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載した鋳片の凝固状態推定方法。
- 上記撮像装置に一番近い上記被計測面の近端における上記撮像角度は40°以上であり、上記撮像装置から一番遠い上記被計測面の遠端における上記撮像角度は65°以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した鋳片の凝固状態推定方法。
- 上記温度分布の計測は、上記撮像装置として少なくとも2台以上の撮像装置を用いて、上記被計測面を撮像することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載した鋳片の凝固状態推定方法。
- 2台の撮像装置を鋳片幅方向の両側にそれぞれ配置し、
上記2台の撮像装置で同一の被計測面を撮像し、各撮像装置で撮像した各画像の輝度に基づいて被計測面の温度分布を求めることを特徴とする請求項4に記載した鋳片の凝固状態推定方法。 - 前記撮像装置は連続鋳造機のセグメントよりも上方に位置し、
上記被計測面から前記撮像装置に至る撮像の光路が前記セグメントの間隙を通り、且つ、上記光路の80%以上が、前記セグメントの上端より低いところを通ることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載した鋳片の凝固状態推定方法。 - 上記温度分布を計測する際は、上記鋳片の被計測面を0.85μm以上、1.0μm以下の波長域で該被計測面を撮像することを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載した鋳片の凝固状態推定方法。
- 上記温度分布を計測する際は、前記鋳片の被計測面の上方から該被計測面に向けて30Nm3/min以上の気体を送風しながら該被計測面を撮像することを特徴とする請求項1から請求項7の何れか一項に記載した鋳片の凝固状態推定方法。
- 上記温度分布を計測する際は、連続鋳造機のセグメントを冷却するための冷却媒を流すパイプに30Nm3/min以上の気体を送風しながら該被計測面を撮像することを特徴とする請求項1から請求項8の何れか一項に記載した鋳片の凝固状態推定方法。
- 請求項1から請求項9の何れか一項に記載した鋳片の凝固状態推定方法で推定した上記鋳片の最終凝固位置及び形状に基づき、2次冷却条件、軽圧下条件、鋳造速度、鋳型電磁攪拌強度の少なくとも一つを操作することを特徴とする連続鋳造方法。
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