JP6819047B2 - 高分子電解質用のジフェニルスルホン化合物、高分子電解質、高分子電解質の製造方法、膜電極接合体、及び、固体高分子形燃料電池 - Google Patents

高分子電解質用のジフェニルスルホン化合物、高分子電解質、高分子電解質の製造方法、膜電極接合体、及び、固体高分子形燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、高分子電解質用のジフェニルスルホン化合物、高分子電解質、高分子電解質の製造方法、膜電極接合体、及び、固体高分子形燃料電池に関する。
近年、環境問題やエネルギー問題の解決に有効な動力源として、燃料電池が注目されている。燃料電池では、水素などの燃料が酸素などの酸化剤によって酸化され、この際に生じる化学エネルギーが電気エネルギーに変換される。燃料電池のなかでも、固体高分子形燃料電池は、その電池本体が小型であるため、車載電源や家庭据置電源として特に期待されている。
固体高分子形燃料電池では、高分子化合物からなる電解質膜中をプロトンが伝導することによって、電極反応が進行する。こうした高分子電解質としては、現在まで、ナフィオン(デュポン社製:登録商標)に代表されるパーフルオロ系電解質が多く提案されている。
しかしながら、ナフィオンなどのフッ素系高分子電解質は、その製造に複雑な合成経路を必要とするため、こうした電解質を用いると、燃料電池の製造コストが高くなる。また、ナフィオンのガラス転移温度は、車載電源に求められる耐久温度よりも低い。そのため、燃料電池を車載電源として用いる場合にはナフィオンは適さず、また、触媒活性の向上を目的として燃料電池の温度を上げるために、100℃以上の高温に耐え得る安定な電解質膜が必要な場合や、ダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)の電解質として用いる場合にも、ナフィオンは適さない。
そこで、従来から、ナフィオンと比べて製造が容易であり、高い耐熱性を得られやすい炭化水素系高分子電解質の開発が進められている。炭化水素系高分子電解質としては、例えば、スルホン化芳香族ポリエーテルケトン(特許文献1参照)や、スルホン化ポリスルホン(特許文献2参照)など、エンジニアリングプラスチックをスルホン化した芳香族炭化水素系高分子電解質が提案されている。
ところで、燃料電池の普及のためには、高温に加えてかつ低湿度の環境下において燃料電池が作動することが求められ、そのためには、電解質は、水分の少ない状況でもプロトンの伝導が十分に可能なように、高いプロトン伝導性を有することが望ましい。しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の炭化水素系高分子電解質において、プロトン伝導度やそれに作用するイオン交換容量を高めるために高分子中の親水基を増加させると、電解質膜が膨潤しやすくなって、機械的強度が低下する。
これに対し、炭化水素系高分子電解質の他の例として、イオン交換基を含むセグメントとイオン交換基を含まないセグメントとからなる芳香族系共重合体(特許文献3〜5参照)が提案されている。これらの高分子電解質では、イオン交換基の位置や共重合体の構造などに起因した作用によって、膨潤を抑えつつ、プロトン伝導性を高めることができる。
特開平6−93114号公報 特開平9−245818号公報 特許第5295655号 特開2012−229418号公報 特開2013−203999号公報
しかしながら、特許文献3〜5に記載の炭化水素系高分子電解質は、特許文献1や特許文献2に記載の炭化水素系高分子電解質と比較すると、合成が困難であるため収率が低く、高分子電解質の製造を容易にするという観点では、利益が小さい。それゆえ、炭化水素系高分子電解質の構造には、依然として改善の余地が残されている。
本発明は、収率を高めることが可能であって、かつ、プロトン伝導性の向上と膨潤の抑制とが可能な高分子電解質用のジフェニルスルホン化合物、高分子電解質、高分子電解質の製造方法、こうした高分子電解質を含む膜電極接合体、及び、固体高分子形燃料電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決する高分子電解質用のジフェニルスルホン化合物は、下記一般式(1)で示されるジフェニルスルホン化合物である。
上記一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に−(CH−、−O−(CH−、−S−(CH−、−NH−(CH−、−(CF−、−O−(CF−、−S−(CF−、及び、−NH−(CF−からなる群から選択される連結基(aは2以上の整数)であり、 X及びXは、それぞれ独立にハロゲン原子であり、Y及びYは、それぞれ独立に第1族元素及び第2族元素からなる群から選択される原子である。
上記ジフェニルスルホン化合物では、連結基によってイオン交換基がベンゼン環から遠ざけられている。したがって、ジフェニルスルホン基が繰り返し単位となる高分子電解質が、上記ジフェニルスルホン化合物に基づく基から形成されることによって、イオン交換基を含む構造であっても電解質の膨潤を抑えることができる。また、上記ジフェニルスルホン化合物では、連結基がハロゲン基に対してパラ位に位置するため、連結基がハロゲン基に対してメタ位やオルト位に位置する構造と比較して、イオン交換基がハロゲン基から遠ざけられている。したがって、上記ジフェニルスルホン化合物を用いた重合反応が進行しやすくなるため、高分子電解質の収率を高めることが可能であり、電解質のプロトン伝導性も高められる。すなわち、上記ジフェニルスルホン化合物を用いることによって、収率を高めることが可能であって、かつ、プロトン伝導性の向上と膨潤の抑制とが可能な高分子電解質が実現できる。
上記課題を解決する高分子電解質は、下記一般式(2)で示される繰り返し単位を主鎖に含む高分子電解質である。
上記一般式(2)において、R及びRは、それぞれ独立に−(CH−、−O−(CH−、−S−(CH−、−NH−(CH−、−(CF−、−O−(CF−、−S−(CF−、及び、−NH−(CF−からなる群から選択される連結基(aは2以上の整数)であり、Y及びYは、それぞれ独立に第1族元素及び第2族元素からなる群から選択される原子である。
上記高分子電解質では、連結基によって、主鎖を構成するベンゼン環とイオン交換基とが遠ざけられている。したがって、主鎖から親水基が遠ざけられるため、主鎖の親水性が低くなる結果、イオン交換基を有する構造であっても膨潤を抑えることができる。 また、上記高分子電解質では、上記繰り返し単位が、連結基に対してパラ位で他の繰り返し単位と結合するため、重合に際しては、イオン交換基から離れた位置で縮合反応が起こる。したがって、イオン交換基によって縮重合反応が阻害されることが抑えられるため、反応が進行しやすくなる。それゆえ、高分子電解質の収率を高めることが可能であり、電解質のプロトン伝導性も高められる。すなわち、上記高分子電解質は、収率を高めることが可能であって、かつ、プロトン伝導性の向上と膨潤の抑制とが可能である。
上記高分子電解質は、前記一般式(2)で示される繰り返し単位を含むブロックと、イオン交換基を含まないブロックとを主鎖に含むブロック共重合体であることが好ましい。
上記高分子電解質では、イオン交換性を有する相とイオン交換性を有さない相とが分離するため、プロトン伝導性を高めることができる。
上記高分子電解質において、前記イオン交換基を含まないブロックは、下記一般式(3)で示されるブロックであることが好ましい。
上記一般式(3)において、Ar、Ar、Ar、及び、Arは、それぞれ独立に2価の芳香族基である。また、B及びBは、それぞれ独立に2価の連結基、もしくは、それぞれが独立に存在せず、2価の芳香族基がBまたはBを介さずに直接結合していることを示し、C及びCは、それぞれ独立に酸素原子または硫黄原子であり、b、c、d、及び、eは、それぞれ独立に0または1であり、nは、5以上の整数である。
上記高分子電解質によれば、上記イオン交換性を有さない相が、機械的強度の高い高分子化合物から構成されるため、機械的強度を高めることができる。
上記高分子電解質において、イオン交換容量が、0.5ミリ当量/g以上4.0ミリ当量/g以下であることが好ましい。
上記高分子電解質によれば、イオン交換容量が上記の範囲であることにより、プロトン伝導性が向上されるとともに、耐水性や機械的強度が高められる。
上記課題を解決する高分子電解質の製造方法は、下記一般式(4)で示されるジフェニルスルホン化合物を金属錯体の存在下で重合することによって電解質を構成する高分子を生成することを要旨とする。
上記一般式(4)において、R及びRは、それぞれ独立に−(CH−、−O−(CH−、−S−(CH−、−NH−(CH−、−(CF−、−O−(CF−、−S−(CF−、及び、−NH−(CF−からなる群から選択される連結基(aは2以上の整数)であり、 X及びXは、それぞれ独立にハロゲン原子であり、 Y及びYは、それぞれ独立に第1族元素及び第2族元素からなる群から選択される原子である。
上記高分子電解質の製造方法によれば、収率を高めることが可能であって、かつ、プロトン伝導性の向上と膨潤の抑制とが可能な高分子電解質が得られる。
上記高分子電解質の製造方法において、前記金属錯体が、ニッケル錯体及びパラジウム錯体のいずれかであることが好ましい。
上記高分子電解質の製造方法によれば、重合反応の反応効率が高められるとともに、温和な条件で反応を行うことができる。ブロック共重合体を合成する場合には、特に重合反応の反応効率を高めることができる。
上記課題を解決する膜電極接合体は、一対の電極触媒層と、前記一対の電極触媒層に挟まれてこれらの電極触媒層と接する固体高分子電解質膜と、を備える膜電極接合体であって、前記固体高分子電解質膜は、上記高分子電解質を含む。
上記膜電極接合体によれば、収率の高い高分子電解質が用いられるため、製造が容易である。また、プロトン伝導性が高められ、かつ、膨潤の抑えられる高分子電解質が用いられるため、この膜電極接合体を備える燃料電池の発電性能と耐久性とを高めることができる。
上記課題を解決する固体高分子形燃料電池は、上記膜電極接合体と、前記膜電極接合体を挟む一対のセパレーターと、を備える。
上記固体高分子形燃料電池によれば、収率の高い高分子電解質が用いられるため、製造が容易である。また、プロトン伝導性が高められ、かつ、膨潤の抑えられる高分子電解質が用いられるため、燃料電池としての発電性能が高められるとともに、耐久性を高めることができる。
本発明によれば、高分子電解質について、収率を高めることが可能であるとともに、プロトン伝導性の向上と膨潤の抑制とが可能である。
膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池の一実施形態について、その斜視構造を分解して示す分解斜視図。 実施例1のジフェニルスルホン化合物である化合物M1のH−NMRスペクトルを示す図。 実施例1の高分子電解質である化合物P1のH−NMRスペクトルを示す図。
以下、高分子電解質用のジフェニルスルホン化合物、高分子電解質、高分子電解質の製造方法、膜電極接合体、及び、固体高分子形燃料電池の一実施形態について説明する。
[ジフェニルスルホン化合物の単量体]
まず、高分子電解質用のジフェニルスルホン化合物であるジフェニルスルホンモノマーについて説明する。
ジフェニルスルホンモノマーは、下記一般式(5)で示される化合物である。ジフェニルスルホンモノマーは、イオン交換基である−SOY基と、ハロゲン基である−X基とを備えている。
イオン交換基は、ジフェニルスルホンモノマーを用いた重合反応によって生成された重合体が電解質として用いられる場合に、イオン伝導に寄与する基である。特に、上記重合体が固体高分子形燃料電池の電解質として用いられる場合には、イオン交換基はプロトン伝導に寄与する。
−SO 基のYは、水素イオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオンなどの第1族元素イオン、及び、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオンなどの第2族元素イオンからなる群から選択されるいずれかである。上記一般式(5)におけるYとYとは、異なる原子であってもよいが、同じ原子であると、ジフェニルスルホンモノマーの合成が容易となる。また、重合体の製造を容易とするためには、Y及びYの各々は、第1族元素の原子であることが好ましく、ナトリウム原子であることが最も好ましい。
−X基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などハロゲン原子からなる基である。上記一般式(5)におけるXとXとは、異なる原子であってもよいが、同じ原子であると、ジフェニルスルホンモノマーの合成が容易となる。また、重合体の製造を容易とするためには、X及びXの各々は、塩素原子または臭素原子であることが好ましい。X及びXを塩素原子及び臭素原子のいずれとするかは、重合法に応じて選択される。
ジフェニルスルホンモノマーは、−SOY基とベンゼン環との間に、連結基であるR基を備えている。R基は、−(CH−、−O−(CH−、−S−(CH−、−NH−(CH−、−(CF−、−O−(CF−、−S−(CF−、及び、−NH−(CF)a−からなる群から選択されるいずれかである。なお、aは2以上の整数を示す。ジフェニルスルホンモノマーの合成を容易とするためには、R基は、−O−(CH−であることが好ましく、aは、3または4であることが好ましい。上記一般式(5)におけるRとRとは、異なる連結基であってもよいが、同じ連結基であると、ジフェニルスルホンモノマーの合成が容易となる。
連結基は、ハロゲン基に対してパラ位に結合している。また、連結基は、スルホニル基に対してオルト位に結合している。こうした構造によれば、ジフェニルスルホンモノマーの合成が容易となり、その収率も高くなる。
上記一般式(5)に示されるジフェニルスルホンモノマーの具体例としては、下記構造式にて示される化合物が挙げられる。下記の化合物は、上記一般式(5)に示されるジフェニルスルホンモノマーのなかでも、合成を比較的容易に行うことができる。
一般に、主鎖が芳香環から構成されているポリアリーレン型の高分子電解質は、イオン交換基が芳香環に直接結合した構造を有することが多い。こうした構造では、主鎖自身が親水性を有するとともに高分子主鎖同士のスタックが阻害されるため、主鎖周囲での水分子の存在が安定する結果、高分子電解質が膨潤しやすい。なお、スタックとは、ファンデルワールス力などの弱い相互作用により高分子主鎖同士が物理的に結びつくことを示す。
これに対し、本実施形態のジフェニルスルホンモノマーでは、連結基によってイオン交換基がベンゼン環から遠ざけられている。したがって、このジフェニルスルホンモノマーの重合により生成された高分子電解質では、耐水性の低下が抑制され、膨潤が起こりにくくなる。さらに、連結基の運動性によってイオン交換基が移動しやすくなるため、プロトン伝導性も向上する。
また、従来から、主鎖が芳香環から構成されているポリアリーレン型の高分子電解質の製造方法として、上記連結基がハロゲン基に対してオルト位に結合したモノマーを、脱ハロゲン化カップリング反応により重合することによって、上記高分子電解質を得る方法が知られている。しかしながら、こうした構造のモノマーでは、イオン交換基とハロゲン基との位置が近いため、イオン交換基によって脱ハロゲン化カップリング反応が阻害され、重合反応が進みにくい。その結果、高分子電解質の重合度や収率は低くなる。
これに対し、本実施形態のジフェニルスルホンモノマーは、連結基がハロゲン基に対してパラ位に結合しているため、イオン交換基とハロゲン基とが遠ざけられている。したがって、イオン交換基による脱ハロゲン化カップリング反応の阻害が抑えられて、重合反応が進行しやすいため、高分子電解質の重合度が向上するとともに、高い収率で高分子電解質を得ることができる。すなわち、本実施形態のジフェニルスルホンモノマーを用いることによって、高分子電解質を容易に製造することができる。
[ジフェニルスルホン化合物の単量体の製造方法]
次に、高分子電解質用のジフェニルスルホン化合物の製造方法として、上述のジフェニルスルホンモノマーを製造する方法について説明する。なお、ここでは、ジフェニルスルホンモノマーの一例として、上記一般式(5)にて示されるジフェニルスルホンモノマーのうち、R及びRの各々が−O−(CH−であり、X及びXの各々が塩素原子であり、Y及びYの各々が第1族元素の原子である化合物の製造方法について説明する。なお、こうした構造とはR、R、X、X、Y、Yが異なる場合であっても、下記の製造方法に準じた方法によって、ジフェニルスルホンモノマーを得ることができる。
まず、2,2−ジヒドロキシ−5,5ジクロロジフェニルスルフィドを、過酸化水素で処理する。これにより、上記化合物のスルフィド基がスルホニル基となり、下記構造式(6)に示される化合物が得られる。
過酸化水素は、濃度が10質量%以上35質量%以下の水溶液とされた状態で用いることが好ましい。過酸化水素の使用量は、2,2−ジヒドロキシ−5,5ジクロロジフェニルスルフィド100モル%に対して、200モル%以上500モル%以下であることが好ましい。
過酸化水素で処理する際の反応条件として、反応温度は25℃以上100℃以下であることが好ましく、反応時間は1時間以上10時間以下であることが好ましい。また、反応溶媒は、良溶媒であることが好ましく、例えば、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、酢酸を用いることが好ましい。
次に、上記構造式(6)に示される化合物を、無機塩基で処理し、開環性化合物であるスルトンと反応させる。これにより、下記一般式(7)に示されるジフェニルスルホンモノマーが得られる。
無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどを用いることが好ましい。無機塩基の使用量は、上記構造式(6)に示される化合物100モル%に対して、200モル%以上400モル%以下であることが好ましく、200モル%以上300モル%以下であることがより好ましい。
スルトンとしては、例えば、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,5−ペンタンスルトン、1,6−ヘキサンスルトン、1,7−ヘプタンスルトン、1,8−オクタンスルトンなどが挙げられる。そのなかでも、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトンを用いることが好ましい。また、上記スルトンにおける水素原子が全てフッ素原子に置換された化合物を用いてもよい。
スルトンと反応させる際の反応条件として、反応温度は25℃以上100℃以下であることが好ましく、反応時間は10時間以上48時間以下であることが好ましい。この反応は、大気雰囲気下で行われてもよく、窒素雰囲気下で行われてもよい。反応溶媒は、良溶媒であることが好ましく、極性溶媒がより好ましい。例えば、反応溶媒として、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エタノールを用いることが好ましい。
こうした材料及び反応条件によれば、上記一般式(7)に示されるジフェニルスルホンモノマーを収率よく得ることができる。
[高分子電解質]
次に、高分子電解質について説明する。高分子電解質は、下記一般式(8)で表される構成単位を主鎖中に有している。
上記一般式(8)において、R及びRは、それぞれ独立に、−(CH−、−O−(CH−、−S−(CH−、−NH−(CH−、−(CF−、−O−(CF−、−S−(CF−、及び、−NH−(CF−からなる群から選択される連結基である。なお、aは2以上の整数である。Y及びYは第1族元素、及び、第2族元素からなる群から選択されるいずれかの原子である。この高分子電解質を、固体高分子形燃料電池の電解質として用いる場合には、Y及びYの全てが水素原子であると、電解質がプロトンを放出できるため好ましい。
高分子電解質は、上記一般式(8)の構成単位を有していれば、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。共重合の様式は、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、及び、グラフト共重合のなかから選択される。高分子電解質を固体高分子形燃料電池の電解質として用いる場合には、高分子電解質は、上記一般式(8)で示される構成単位からなるイオン交換基を有するブロックと、イオン交換基を有さないブロックとが直接結合して主鎖を形成するブロック共重合体であることが好ましい。
ブロック共重合体では、イオン交換性を有する部分とイオン交換性を有さない部分とがそれぞれ凝集して相分離が起こる。したがって、ブロック共重合体である高分子電解質から電解質膜を形成した場合には、イオン交換性を有する相によってプロトンが伝導される通り道が膜内に形成される。その結果、プロトン伝導性が向上する。
イオン交換基を有さないブロックとは、繰り返し単位あたりに含まれるイオン交換基の数が平均0.1個以下である構造を示す。プロトン伝導性を高めるためには、繰り返し単位あたりのイオン交換基の数が0、すなわちブロックがイオン交換基を含まないことが好ましい。
特に、イオン交換基を有さないブロックは、下記一般式(9)で示される構成単位を含むブロックであることが好ましい。
上記一般式(9)において、Ar、Ar、Ar、Arは互いに独立に2価の芳香族基を示す。2価の芳香族基は、フッ素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、または、ニトリル基などで置換されていてもよい。なお、これらのアルキル基、アルコキシ基は置換基を有していてもよい。
また、B、Bは、互いに独立に2価の連結基、もしくは、それぞれが独立に存在せず、2価の芳香族基がBまたはBを介さずに直接結合していることを示す。特に、B及びBの各々は、カルボニル基、スルホニル基、2,2−イソプロピリデン基、2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン基、または、9,9−2置換フルオレンにもとづく基であることが好ましい。
また、C、Cは、互いに独立に酸素原子または硫黄原子を示す。
また、b、c、d、及び、eは、互いに独立に0か1を表す。nは、5以上の整数を表し、5以上200以下であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。nが5以上であると、高分子電解質を固体高分子形燃料電池の電解質として用いた場合に、電解質膜の成膜性や機械的強度、耐久性を十分に得ることができる。
イオン交換基を有さないブロックが上記一般式(9)で示される構成単位を含む構造では、イオン交換性を有さない相が、機械的強度の高い高分子化合物から構成されるため、電解質膜の機械的強度を高めることができる。
上記一般式(9)で示される、イオン交換基を有さないブロックの構成単位の具体例としては、下記の構造が挙げられる。なお、nは上記一般式(9)と同様に定義される。下記の構造は、上記一般式(9)に示される構造のなかでも、重合体の合成を比較的容易に行うことができる。
高分子電解質におけるイオン交換基の導入量は、イオン交換容量で表して0.5ミリ当量/g以上4.0ミリ当量/g以下であることが好ましく、1.0ミリ当量/g以上3.0ミリ当量/g以下であることがより好ましい。イオン交換容量が0.5ミリ当量/g以上であると、プロトン伝導性が向上されるため、燃料電池の発電性能が高くなる。また、イオン交換容量が4.0ミリ当量/g以下であると、電解質膜の耐水性及び機械的強度が高められる。
また、高分子電解質の分子量は、ポリスチレン換算の数平均分子量で表して、5,000以上1,000,000以下であることが好ましく、10,000以上500,000以下であることがより好ましい。分子量が5,000以上であると、電解質膜の成膜性や機械強度が高められる。また、分子量が1,000,000以下であると、電解質膜の製造がより簡便になる。
[高分子電解質の製造方法]
次に、上述の高分子電解質の製造方法について説明する。
高分子電解質は、先に説明した下記一般式(10)に示されるジフェニルスルホンモノマーを、遷移金属錯体を用いた縮合反応により単独重合または共重合することで合成することができる。なお、下記一般式(10)において、R、R、X、X、Y、Yは上述の一般式(5)と同様に定義される。
遷移金属錯体は、配位子が遷移金属と配位結合を形成した錯体である。遷移金属錯体としては、例えば、ニッケル錯体、パラジウム錯体、白金錯体、銅錯体、ロジウム錯体、ジルコニウム錯体、鉄錯体などが挙げられる。これらのなかでも、ニッケル錯体やパラジウム錯体を用いると、反応効率が高められるとともに、温和な条件で反応を行うことができる。遷移金属錯体は、市販品を用いてもよいし、別途合成してもよい。遷移金属錯体の合成方法としては、遷移金属のハロゲン化物または遷移金属酸化物と配位子とを反応させて合成する方法が挙げられる。合成した遷移金属錯体は、反応系中から取り出して使用してもよく、あるいは、反応系中から取り出さずにin situで使用してもよい。
遷移金属錯体は、配位子として、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、アセチルアセトナート、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリブチルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、及び、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンのいずれかを少なくとも1つ有していることが好ましい。遷移金属錯体は、これらの配位子について、1種類を単独で有していてもよく、2種以上を併せて有していてもよい。
以下では、ブロック共重合体からなる高分子電解質の製造方法について説明する。
ブロック共重合体を合成する際には、遷移金属錯体として、ゼロ価ニッケル錯体やゼロ価パラジウム錯体などのゼロ価遷移金属錯体を用いることが好ましい。
ゼロ価ニッケル錯体としては、例えば、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)などが挙げられる。
ゼロ価遷移金属錯体は、上述のように市販品を用いてもよく、別途合成してもよい。ゼロ価遷移金属錯体の合成方法は、遷移金属化合物を亜鉛やマグネシウムなどの還元剤を用いて還元してゼロ価とする方法など、公知の方法を用いることができる。合成したゼロ価遷移金属錯体は、反応系中から取り出して使用してもよく、あるいは、反応系中から取り出さずにin situで使用してもよい。
上記還元剤としては、例えば、鉄、亜鉛、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウムなどが挙げられる。これらのなかでも、還元剤として、亜鉛、マグネシウム、マンガンを用いることが好ましい。これらの還元剤は、有機酸などの酸に接触させることによって、より活性化させることができる。また、必要に応じて、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどのナトリウム化合物や、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウムなどのカリウム化合物や、フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウムなどのアンモニウム化合物を併用してもよい。
ゼロ価遷移金属錯体を合成する際には、通常、2価の遷移金属化合物が用いられるが、0価の化合物を用いてもよい。2価の遷移金属化合物としては、2価ニッケル化合物または2価パラジウム化合物を用いることが好ましい。2価ニッケル化合物としては、例えば、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセテート、ニッケルアセチルアセトナート、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)などが挙げられる。2価パラジウム化合物としては、例えば、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、塩化パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)、臭化パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)などが挙げられる。
ブロック共重合体は、上記一般式(10)に示されるジフェニルスルホンモノマーと、下記一般式(11)に示される、上述のイオン交換基を有さないブロックの前駆体(マクロモノマー)とを、ゼロ価遷移金属錯体の存在下で縮重合することによって合成される。なお、下記一般式(11)において、Ar、Ar、Ar、Ar、B、B、C、C、b、c、d、e、nは、上記一般式(9)と同様に定義される。また、Zは、縮合反応における脱離基を示し、下記一般式(11)における2つのZは、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
上記脱離基としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、p−トルエンスルホニルオキシ基(CH−p−SO−)、メタンスルホニルオキシ基(CHSO−)、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基(CFSO−)などが挙げられる。
上記一般式(11)で示されるマクロモノマーの具体例としては、下記構造の化合物が挙げられる。これらのマクロモノマーは、市場から容易に入手可能であるか、市場から容易に入手可能な原料を用いて公知の方法で製造することができる。なお、Zは上記一般(11)と同様に定義される。
上記一般式(10)に表されるジフェニルスルホンモノマーと、上記一般式(11)に表されるマクロモノマーとを、上記遷移金属錯体を用いて縮合反応する際には、用いた遷移金属錯体の配位子となり得る化合物を添加することが好ましい。これにより、重合反応の反応性が向上されて高分子電解質の収率や重合度が高められる。添加する化合物は、用いた遷移金属錯体の配位子と同じでもよいし、異なっていてもよい。例えば、トリフェニルホスフィンや2,2’−ビピリジルは、汎用性が高く安価であるため、添加する化合物として好ましい。
配位子の添加量は、ゼロ価遷移金属錯体100モル%に対して、10モル%以上1000モル%以下であることが好ましく、100モル%以上500モル%以下であることがより好ましい。
ゼロ価遷移金属錯体の使用量は、上記一般式(10)に示されるジフェニルスルホンモノマー100モル%に対して、10モル%以上であればよいが、特に、100モル%以上が好ましく、200モル%以上がより好ましい。使用量が10モル%以上であると、高分子電解質の収率や重合度が低下することを抑制することができる。使用量の上限について特に制限はないが、500モル%以下であると、重合の後処理をする際の処理が容易となる。
縮重合反応の条件として、反応温度は0℃以上200℃以下であることが好ましく、50℃以上100℃以下であることがより好ましい。反応時間は、0.5時間以上100時間以下であることが好ましく、1時間以上40時間以下であることがより好ましい。縮重合反応は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。こうした条件によれば、縮重合反応による高分子電解質の収率や重合度が高められる。
縮重合反応の反応溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼン、ブチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチルなどのエステル系溶媒、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化アルキル系溶媒などが挙げられる。これらの重合溶媒は、十分に脱水してから用いることが好ましい。
縮重合反応による高分子電解質の収率や重合度を高めるためには、高分子が溶媒に十分溶解していることが望ましい。したがって、反応溶媒としては、上記溶媒のなかでも、高分子に対して良溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、トルエン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどを用いることが好ましい。特に、反応溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、及び、これら2種類以上の混合物が好ましく用いられる。
重合溶媒中における上記一般式(10)に示されるジフェニルスルホンモノマーの総量の濃度は、1質量%以上90質量%以下であることが好ましい。また、重合溶媒中における上記一般式(11)に示されるマクロモノマーの総量の濃度は、5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。濃度の下限が上記値であれば、生成した高分子化合物の回収が容易となる。また、濃度の上限が上記値であれば、反応中の撹拌が容易となる。
こうした方法によって、ブロック共重合体である高分子電解質が合成される。生成したブロック共重合体を反応混合物から取り出す際には、常法が適用できる。例えば、反応混合物に貧溶媒を添加することで高分子化合物を析出させ、濾別などにより目的物を得ることができる。また、必要に応じて、更に水洗や良溶媒と貧溶媒を用いての再沈殿などの一般的な精製方法によって高分子電解質を精製することができる。
また、高分子電解質を固体高分子形燃料電池の電解質として利用する場合には、生成したブロック共重合体中のスルホン酸基がナトリウム塩などの塩となっている場合、スルホン酸基を遊離酸に変換することが好ましい。遊離酸への変換は、通常、酸性溶媒での洗浄によって行われる。使用される酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられ、特に塩酸が好ましい。
なお、ブロック共重合体以外の重合体についても、公知の方法を用いて、上述の製造方法に準じて製造することが可能である。
上述のように、本実施形態のジフェニルスルホンモノマーは、イオン交換基とベンゼン環とに挟まれる連結基がハロゲン基に対してパラ位に結合しているため、重合に際して、イオン交換基が、ハロゲン基の脱離を伴うカップリング反応を阻害することが抑えられる。したがって、高分子電解質の収率や重合度が高められる。
[膜電極接合体、及び、固体高分子形燃料電池]
次に、固体高分子形燃料電池、及び、固体高分子形燃料電池の備える膜電極接合体について説明する。まず、固体高分子形燃料電池の構成について図1を参照して説明する。
図1に示されるように、固体高分子形燃料電池10は、上述の高分子電解質からなる固体高分子電解質膜1を中心とする積層体として構成されている。固体高分子電解質膜1には、固体高分子電解質膜1を挟んで互いに向い合う一対の電極触媒層2a,2bが敷設されている。固体高分子電解質膜1は、これらの電極触媒層2a,2bに接しており、これら固体高分子電解質膜1及び電極触媒層2a,2bにより膜電極接合体3が構成されている。
電極触媒層2a,2bの各々には、固体高分子電解質膜1及びこれら電極触媒層2a,2bを挟んで互いに向い合う一対のガス拡散層4a,4bが覆設されている。このうち、固体高分子電解質膜1の一方側の電極触媒層2aとガス拡散層4aとが空気極(カソード)5を構成し、他方側の電極触媒層2bとガス拡散層4bとが燃料極(アノード)6を構成する。
さらに、膜電極接合体3及びガス拡散層4a,4bは、互いに向い合う一対のセパレーター7a,7bによって挟持されている。セパレーター7a,7bの各々にて、ガス拡散層4a,4bと互いに向かい合う側面には、ガス流路8a,8bが凹設され、またガス拡散層4a,4bとは反対側の側面には、冷却水流路9a,9bが凹設されている。
このように構成される固体高分子形燃料電池10では、空気極5に対面するセパレーター7aのガス流路8aに、酸化剤ガスとして、例えば酸素を含むガスが流され、燃料極6に対面するセパレーター7bのガス流路8bに、燃料ガスとして、例えば水素ガスが流される。また、セパレーター7a,7bの冷却水流路9a,9bの各々には、冷却水が流される。そして、空気極5と燃料極6とに上記ガス流路8a,8bからガスが供給されることによって、固体高分子電解質膜1中でのプロトン伝導を伴う電極反応が進行し、これによって空気極5と燃料極6との間に起電力が生じる。
なお、図1に示される固体高分子形燃料電池10は、一組のセパレーター7a,7bに固体高分子電解質膜1、電極触媒層2a,2b、及び、ガス拡散層4a,4bが挟持された単セル構造の固体高分子形燃料電池である。これに限らず、固体高分子形燃料電池は、セパレーター7a,7bを介して複数のセルが積層され、これらの複数のセルが直列接続された構造を有していてもよい。
続いて、固体高分子形燃料電池10を構成する各部の材料及び製造方法について説明する。
(固体高分子電解質膜)
固体高分子電解質膜1は、本実施形態の高分子電解質から構成される。
高分子電解質を膜状に成形する方法としては、例えば、キャスティング法などのように、高分子電解質を含む溶液を基材上に塗工することによりフィルム状の膜を成膜する方法が好ましく用いられる。基材は、一般的な溶液キャスティング法に用いられる基材であればよく、例えば、ガラス、プラスチック、金属などからなる基材が用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの熱可塑性樹脂からなる基材を用いることが好ましい。
成膜に際して高分子電解質を溶解させる溶媒は、高分子電解質が溶解可能であり、かつ、成膜後に除去し得る溶媒であればよい。こうした溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの非プロトン性極性溶媒、または、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒、または、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類などが好ましく用いられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、必要に応じて2種類以上の溶媒を混合して用いてもよい。これらのなかでも、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホランなどは、高分子化合物の溶解性が高いため溶媒として好ましい。
高分子電解質を溶解させた溶液における高分子電解質の濃度は、5質量%以上40質量%以下が好ましく、7質量%以上25質量%以下であるとより好ましい。濃度が5質量%以上であれば、厚膜化が容易となり、膜におけるピンホールの生成を抑制することができる。一方、濃度が40質量%以下であれば、成膜が容易に行える程度に溶液粘度が保たれ、膜表面の平滑性が向上される。
固体高分子電解質膜1の厚みは、5μm以上300μm以下が好ましく、10μm以上80μm以下がより好ましい。膜厚が5μm以上であると、膜の機械的強度が実用的な大きさまで高められる。また、膜厚が300μm以下であると、膜抵抗が小さくなるため、固体高分子形燃料電池10の特性がより向上する。膜厚は、溶液の濃度及び基材上への塗布厚により制御することが可能である。
また、固体高分子電解質膜1の各種物性の改良を目的として、固体高分子電解質膜1には、一般的な高分子化合物に用いられる可塑剤、安定剤、離型材などが添加されていてもよい。また、同一溶媒中で本実施形態の高分子電解質と他の高分子化合物とを混合し、共キャスティングするなどの方法により、本実施形態の高分子電解質と他の高分子化合物とを複合アロイ化して、固体高分子電解質膜1を形成してもよい。
さらに、固体高分子形燃料電池10の電解質膜として水管理を容易にするために、固体高分子電解質膜1には、無機あるいは有機の微粒子が保水剤として添加されていてもよい。また、膜の機械的強度の向上などを目的として、電子線や放射線などの照射によって架橋構造が形成されてもよい。
また、膜の機械的強度や柔軟性や耐久性の向上のために、固体高分子電解質膜1として、本実施形態の高分子電解質を有効成分とし、これを多孔質基材に含浸させた複合電解質膜を作製することも可能である。複合化方法は公知の方法を使用可能である。 多孔質基材は、上述の目的に応じて選択される。例えば、多孔質膜、不織布、フィブリルなどは、その形状や材質によらず多孔質基材として用いることが可能である。多孔質基材として、脂肪族系高分子、芳香族系高分子、または、フッ素系高分子から構成される基材を用いると、膜の耐熱性が向上するとともに、機械的強度が高められる。
(電極触媒層)
電極触媒層2a,2bに用いられる触媒は、水素または酸素との酸化還元反応を活性化できる物質であれば公知の材料を用いることができる。特に、触媒としては、白金または白金系合金の微粒子を用いることが好ましい。白金または白金系合金の微粒子は、活性炭や黒鉛などの粒子状のカーボンあるいは繊維状のカーボンに担持されていることが好ましい。
電極触媒層2a,2bは、こうした触媒担持炭素粒子が、本実施形態の高分子電解質、または、有機物が混合後に酸処理除去された本実施形態の高分子電解質で包埋された構成を有する。電極触媒層は、触媒担持炭素粒子と高分子電解質とを溶媒に分散させた電極触媒インクを基材に塗布し、乾燥させることにより得られる。
電極触媒インクの分散媒として使用される溶媒は、触媒粒子や高分子電解質を侵食することなく、高分子電解質が流動性の高い状態で溶解または微細ゲルとして分散される溶媒であればよい。特に、分散媒には、少なくとも揮発性の液体有機溶媒が含まれることが望ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、メチルイソブチルケトン、へプタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、ジイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、メトキシトルエン、ジブチルエーテルなどのエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジアセトンアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどの極性溶剤などが用いられることが好ましい。また、これらの溶媒のうちの二種以上を混合して、分散媒として用いてもよい。
また、分散媒として低級アルコールを用いる場合には、水との混合溶媒にすると、発火の可能性を抑制することができる。水の添加量は、高分子電解質が分離して白濁を生じたり、ゲル化したりしない程度であればよい。
電極触媒インクの固形分含有量は、1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。固形分含有量が1質量%以上であれば、電極触媒インクの粘度が高くなりすぎないため、電極触媒層表面にクラックが入りにくくなる。また、固形分含有量が50質量%以下であれば、成膜レートが適切に維持されるため、電極触媒層2a,2bの生産性が向上される。
電極触媒インクを塗布する基材としては、電極触媒層2a,2bを挟むガス拡散層4a,4b、電極触媒層2a,2bに挟まれる固体高分子電解質膜1、または、固体高分子形燃料電池10の構成部材とは別の転写シートを用いることができる。転写シートは、転写性の良好な材質のシートであればよい。電極触媒インクの塗布方法としては、ドクターブレード法、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、スプレー法などを用いることができる。
(膜電極接合体)
膜電極接合体3は、固体高分子電解質膜1に、電極触媒層2a,2bと集電体としての導電性物質とを接合することによって得られる。集電体としての導電性物質は、公知の材料を用いることができる。特に、多孔質性のカーボン織布、カーボン不織布やカーボンペーパーが、好ましく用いられる。これらの材料は原料ガスを触媒へ効率的に輸送することができるため、ガス拡散層4a,4bとして用いることが可能である。すなわち、集電体としての導電性物質がガス拡散層4a,4bを兼ねる場合には、膜電極接合体3は、固体高分子電解質膜1、電極触媒層2a,2b、及び、ガス拡散層4a,4bから構成される。
電極触媒層2a,2bを形成する基材として固体高分子電解質膜1が用いられた場合には、固体高分子電解質膜1の両面に電極触媒層2a,2bが直接成膜される。電極触媒層2a,2bを形成する基材としてガス拡散層4a,4bが用いられた場合には、電極触媒層2a,2bとガス拡散層4a,4bとの積層体を固体高分子電解質膜1に接合することにより、固体高分子電解質膜1の両面に電極触媒層2a,2bが配置される。電極触媒層2a,2bを形成する基材として転写シートが用いられた場合には、固体高分子電解質膜1に電極触媒層2a,2bを接合後に転写シートを剥離することにより、固体高分子電解質膜1の両面に電極触媒層2a,2bが配置される。
なお、有機物の酸処理洗浄による除去は、有機物を含有した固体高分子電解質膜1と電極触媒層2a,2bとを作製し、膜電極接合体3を作製した後に行ってもよい。
(ガス拡散層及びセパレーター)
ガス拡散層4a,4b及びセパレーター7a,7bとしては、公知の燃料電池に用いられている材料を用いることができる。ガス拡散層4a,4bは、ガス拡散性と導電性とを有する材料を用いればよく、例えば、カーボンクロス、カーボンペーパー、不織布などのポーラスカーボン材を用いることができる。セパレーター7a,7bは、導電性でかつ不透過性の材料から形成され、カーボンタイプや金属タイプなどのセパレーターを用いることができる。
固体高分子形燃料電池10は、上述の各部と、ガス供給装置、冷却装置などの付随する装置を組み立てることによって製造される。
本実施形態の高分子電解質を用いた膜電極接合体3及び固体高分子形燃料電池10は、容易に製造可能な高分子電解質を用いて製造されるため、製造コストの削減が可能である。また、プロトン伝導性が高められ、かつ、膨潤の抑えられる高分子電解質が用いられることにより、固体高分子形燃料電池10の発電性能が高められるとともに、耐久性を高めることができる。
なお、本実施形態の高分子電解質は、固体高分子形燃料電池の他、ダイレクトメタノール燃料電池、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、アクチュエーターなどの電気化学デバイスの電解質として用いることができる。
[実施例]
上述した高分子電解質用のジフェニルスルホン化合物、及び、高分子電解質について、以下に具体的な実施例を挙げて説明する。なお、実施例及び比較例において、イオン交換容量、プロトン伝導度、分子量、及び、熱水膨潤率の測定、並びに、核磁気共鳴分光法(NMR)による解析は下記の条件で行った。
(イオン交換容量)
スルホン酸基が遊離酸となっている高分子電解質を、乾燥後、所定量を秤量して、2M塩化ナトリウム水溶液中で1晩撹拌し、濾別した。濾液に対し、フェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液を用いて滴定を行い、中和点からイオン交換容量を求めた。
(プロトン伝導度)
高分子電解質を膜状に成形し、短冊状の電解質膜の表面に白金線(φ=0.5mm)を押し当て、恒温恒湿装置中に試料を保持し、白金線間の交流インピーダンスを測定することによって、交流抵抗を求めた。すなわち、80℃において、所定の湿度環境下で交流におけるインピーダンスを測定した。抵抗測定装置は、エヌエフ回路設計ブロック社製の5800Frequency Response Analyzer、または、Solartron社製のSI1260を用いた。恒温恒湿装置は、エスペック社製の小型環境試験機SH−221またはSH−241を用いた。白金線は、電解質膜の表面に5mm間隔に4本を押し当てて、白金線の線間距離を5mm〜15mmの間で変化させ、交流抵抗を測定した。線間距離と交流抵抗の値とから膜抵抗を算出し、この値から、プロトン伝導度を算出した。
(分子量)
分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。下記に測定条件を示す。
・GPC装置 :HLC−8120GPC(東ソー社製)
・カラム :TSKgel SuperAWM−H (6.0mml.D.×15cm)×2本
・検出器 :示差屈折率計(RI検出器)、Polarity=(+)
・溶離液 :ジメチルスルホキシド+LiBr+リン酸
・流速 :0.6mL/min
・カラム温度 :40℃
・試料濃度 :1mg/mL
・試料注入量 :20μL
(熱水膨潤率)
高分子電解質を膜状に成形して2cm×2cmの正方形にカットし、これを80℃の熱水に1時間浸漬させたのち、1辺の長さを測定し、膨潤率を測定した。
(NMR)
H−NMRスペクトルは、JEOL社製のJNM−LA300 spectrometerを用い、重溶媒に重ジメチルスルホキシドを用いて測定した。
[実施例1]
<イオン交換基を含むジハロゲン化合物(ジフェニルスルホン化合物)の合成>
ビス(5−クロロ−2−ヒドロキシフェニル)スルホン50g(157mmol)をナスフラスコに入れ、無水エタノール660gを加えて溶解させた。この溶液に、水酸化ナトリウム26.69g(667mmol)を加えて80℃で30分間攪拌した。次に、攪拌した上記溶液に、1,3−プロパンスルトン72.49g(593mmol)を加えて10時間加熱還流を行った。析出した白色固体を濾過により回収した。回収した固体を水/エタノール溶液で洗浄後、再度、濾過を行い、濾物を回収し減圧乾燥して、実施例1のジフェニルスルホン化合物である目的物を67.53g(白色固体、収率65%)得た。この得られた白色固体のH−NMRスペクトルを図2に示す。実施例1のジフェニルスルホン化合物は、下記構造式(12)に示す化合物M1である。
<イオン交換基を含まないジハロゲン化合物の合成>
三口フラスコに4,4’−ジクロロジフェニルスルホン7.40g(25.7mmol)、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.83g(23.3mmol)、炭酸カリウム4.20g(30.3mmol)を入れて窒素置換し、N,N ジメチルアセトアミド(DMAc)150mL、トルエン20mLを加えて加熱還流を行い、系中の水を除去しながら反応させた。反応後、4,4‘−ジクロロフェニルスルホン1.00g(3.48mmol)を加えてさらに180℃で3時間反応させた。反応後の溶液をメタノールに注ぎ、再沈殿を行った。析出物を濾過により回収し水で洗浄後、105℃で2時間減圧乾燥した。回収した固体を再びクロロホルムに溶解させてメタノールに注ぎ、再沈殿を行った。析出物を濾過により回収後、105℃で3時間減圧乾燥し、下記構造式(13)に示す化合物M2である目的物を得た。得られた固体の分子量(Mw)は、20,000であった。
<ジフェニルスルホン化合物のブロック共重合体の合成>
イオン交換基を含むジハロゲン化合物である化合物M1と、イオン交換基を含まないジハロゲン化合物である化合物M2との重合反応を行った。50mLシュレンク管に化合物M1を0.50g(0.823mmol)入れ、120℃のオイルバスで減圧乾燥した。乾燥後、シュレンク管を窒素置換し、化合物M2を200mg、2,2’−ビピリジルを359mg(2.30mmol)、脱水ジメチルスルホキシドを4mL加え、120℃で溶解させた。すべて溶解したことを確認した後、温度を80℃まで下げ、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(Ni(cod))を0.63g(2.29mmol)加え、80℃で24時間撹拌した。反応後の溶液をメタノールに滴下し、ポリマーを析出させ、濾過により回収した。回収したポリマーを再度メタノール洗浄し、3N塩酸中で撹拌することにより、プロトン化を行った。ポリマーを再度濾過により回収し、水で洗浄後、80℃で2時間減圧乾燥して、実施例1の高分子電解質を得た。この得られた高分子化合物のH−NMRスペクトルを図3に示す。実施例1の高分子電解質は、下記構造式(14)に示す化合物P1である。
[比較例1]
<イオン交換基を含むジハロゲン化合物の合成>
ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)スルホン6.38g(20.0mmol)を500mLナスフラスコに入れ、70mLのエタノールに溶解させた。この溶液に、水酸化ナトリウム1.68g(42.0mmol)を加えて70℃で30分間撹拌した。次に、攪拌した上記溶液に、1,3−プロパンスルトン4.94g(40.5mmol)を加えて20時間加熱還流を行った。析出した白色固体を濾過により回収した。回収した固体を水/エタノール溶液で洗浄後、再度、濾過を行い、濾物を回収し減圧乾燥して、比較例1のジフェニルスルホン化合物である目的物を7.84g(白色固体、収率65%)得た。比較例1のジフェニルスルホン化合物は、下記構造式(15)に示す化合物M3である。
<ジフェニルスルホン化合物のブロック共重合体の合成>
イオン交換基を含むジハロゲン化合物として、化合物M1に代えて化合物M3を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で重合反応を行い、下記構造式(16)に示す化合物P2である比較例1の高分子電解質を得た。
[評価結果]
実施例1及び比較例1の高分子電解質について、収率を算出し、分子量、イオン交換容量、プロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
また、実施例1及び比較例1の高分子電解質の各々から形成した膜について、熱水膨潤率を測定したところ、実施例1および比較例1ともに熱水膨潤率は5%以下であった。これにより、実施例1及び比較例1のいずれの高分子電解質を用いた場合であっても、膨潤が小さいことが確認された。
表1に示されるように、実施例1の高分子電解質は、比較例1の高分子電解質と比べて、収率が極めて高く、分子量も大きい。すなわち、比較例1のジフェニルスルホン化合物を用いた重合反応が進行しにくいことに対して、実施例1のジフェニルスルホン化合物を用いた重合反応は進行しやすいことが示唆される。そして、実施例1の高分子電解質は、比較例1の高分子電解質と比べて、イオン交換容量及びプロトン伝導度が高い。これは、実施例1では、ジフェニルスルホン化合物にて縮合反応の阻害が抑えられる結果、ジフェニルスルホン化合物に基づく基がポリマーに組み込まれやすく、比較例1よりも高分子電解質へのイオン交換基の導入量が多いことを示唆する。また、実施例1の高分子電解質を用いた電解質膜では、上述のように、膨潤も抑えられることが確認された。このように、実施例1の高分子電解質は、収率を高めることが可能であって、かつ、プロトン伝導性の向上と膨潤の抑制とが可能であることが示された。
1…固体高分子電解質膜、2a,2b…電極触媒層、3…膜電極接合体、4a,4b…ガス拡散層、5…空気極、6…燃料極、7a,7b…セパレーター、8a,8b…ガス流路、9a,9b…冷却水流路、10…固体高分子形燃料電池。

Claims (3)

  1. 下記一般式()で示される化学構造を繰り返し単位としたブロックと、
    下記一般式()で示されるイオン交換基を含まないブロックと、を含む
    下記一般式(14)で示されるブロック共重合体を備えた
    高分子電解質。
    前記一般式(8)において、R 及びR は、−O−(CH であり、Y 及びY は水素原子である。前記一般式(9)において、Ar 、Ar 、Ar 、及び、Ar は、フェニル基であり、B は、スルホニル基であり、B は、2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン基であり、C 及びC は、酸素原子であり、b、c、d、及び、eは、1であり、nは、5以上の整数である。
  2. 一対の電極触媒層と、
    前記一対の電極触媒層に挟まれてこれらの電極触媒層と接する固体高分子電解質膜と、
    を備える膜電極接合体であって、
    前記固体高分子電解質膜は、請求項1に記載の高分子電解質を含む
    膜電極接合体。
  3. 請求項2に記載の膜電極接合体と、
    前記膜電極接合体を挟む一対のセパレーターと、
    を備える固体高分子形燃料電池。
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