以下、図面を参照しながら、例示的な実施形態について、本発明を説明する。なお、図面の記載は、要部を誇張していたり、不要な要素を省略していたりすることがあり、実施時の実施形態を正確に反映したものではないことに留意すべきである。
図1は、本発明の一実施形態に関する複合体の製造方法の例示的なフローチャートである。本実施形態に関する製造方法は、2個以上のゲートを有する金型の内部の、第1のゲートを覆う位置に強化材料を配置する工程と、上記第1のゲートから第1の樹脂を導入して上記強化材料を仮固定する工程と、上記第1のゲートとは異なる第2のゲートから第2の樹脂を導入して、上記仮固定された強化材料と上記第2の樹脂との複合体を成形する工程と、を有する。
なお、本明細書において、複合体とは、強化材料が配置された金型内に樹脂を流入し、その後に樹脂を固化させて得られる、強化材料と樹脂とが一体化された物品を意味する。強化材料は、複合体の表面に配置されることが好ましいが、複合体の内部に配置されていてもよい。
[第1工程:強化材料の配置]
本工程では、2個以上のゲートを有する金型の内部の、第1のゲートを覆う位置に強化材料を配置する。
図2Aは、本実施形態で使用する金型の概略構成を示す模式図であり、図2Bは、図2Aに示す金型の一点鎖線2B-2Bに沿った断面図である。図2Aおよび図2Bに示すように、金型100は、第1のゲート110および第2のゲート120を有する。第1のゲート110および第2のゲート120は、いずれも金型100を貫通してキャビティ面130に開口した貫通孔であり、射出装置からの溶融樹脂を金型100のキャビティ面130側に導入するためのゲートとして作用する。
第1のゲート110および第2のゲート120の位置は特に限定されない。後述するように、第1のゲート110は第1の樹脂の導入により強化材料を仮固定するために用い、第2のゲート120は第2の樹脂の導入により複合体を作製するために用いる。そのため、第1のゲート110は、複合体のうち強化材料が配置される位置に設けられることが好ましい。第2のゲート120は、第1のゲート110を覆う位置に強化材料を配置したときに、強化材料により覆われない位置に設けられることが好ましい。
本工程では、金型100のキャビティ面130の、第1のゲート110を覆う位置に、強化材料200を配置する。図3Aおよび図3Bは、金型100に強化材料200を配置した様子を示す、図2Aおよび図2Bと同様の模式図および断面図である。強化材料200は、本実施形態において作製される複合体のうち強化材料による補強を行うべき位置に応じた、キャビティ面130の一部に、配置される。強化材料200の形状は特に限定されない。本実施形態では、強化材料200はUDシートである。
このとき、キャビティ面130に配置された強化材料200を仮抑えすることが好ましい。仮抑えは、次の工程で強化材料200を仮固定するまでの間、強化材料200の位置ずれを生じなくするものであればよく、たとえば抑え棒のような治具によって強化材料200をキャビティ面130に対して押さえつければよいし、接着剤(両面テープを含む)によって強化材料200をキャビティ面130に貼り付けてもよい。なお、次の工程における第1の樹脂の導入は、強化材料200に接した樹脂の流動を伴わないものであるので、次の工程における仮固定よりも小さい力で仮抑えすれば十分であり、そのため上記治具や接着剤による仮抑え程度で十分である。
なお、図3Aおよび図3Bでは、平面状のキャビティ面130の上に水平に強化材料200を配置している。しかし、強化材料200を配置する面は平面ではなく、曲面であることもある。また、金型を縦置きに配置する射出成形装置を用いるときは、射出成形装置に配置したときにキャビティ面130は水平ではなくなることもある。このような、射出成形装置に配置された金型100のキャビティ面130が非水平となるときには、キャビティ面130に配置された強化材料200は位置ずれを生じやすいため、強化材料200を仮抑えすることが望ましい。
図4は、金型100を射出成形装置400に配置して、強化材料200を仮抑えした様子を示す模式図である。
射出成形装置400は、金型を縦置きに配置する縦型の射出成形装置であり、配置された金型100のキャビティ面130は、非水平(鉛直方向向き)な部位になっている。なお、射出成形装置400は、樹脂を溶融混練して押し出す混練装置410と、混練装置410から押し出された樹脂を流通させる流路422が形成されたマニホールド420と、第1のゲート110に第1の樹脂を導入する第1のノズル432および第2のゲート120に第2の樹脂を射出する第2のノズル434を有する固定盤430と、第1のノズル432を開閉する第1の開閉機構442および第2のノズル434を開閉する第2の開閉機構444(本実施形態ではいずれもバルブゲート)と、を有する。なお、射出成形装置400は、キャビティを形成するための可動コアを有するが、本工程ではまだキャビティを形成しなくてもよいので、図4には可動コアは示していない。なお、本工程では第1のノズル432および第2のノズル434はいずれも解放されていない。
図4では、治具としての抑え棒450により、第1のゲート110とは反対側から強化材料200を、キャビティ面130側(第1のゲート110側)に押し付けて、強化材料200を仮抑えしている。本実施形態において、抑え棒450の強化材料200を押し付ける面の大きさは、強化材料200のキャビティ面130を向いた面の表面積よりも大きく、強化材料200の全体をキャビティ面130に押し付けることができる。ただし、抑え棒450の大きさはこれに限定されず、より小さくてもよい。ただし、次の工程における、強化材料200の端部からの第1の樹脂の漏れを抑制する観点からは、抑え棒450の強化材料200を押し付ける面の大きさは、第1のゲート110の開口部の大きさよりも大きいことが好ましい。なお、仮抑えの方法がこれに限定されないことは、上述した通りである。
なお、強化材料200の種類は特に限定されず、樹脂部材(延伸シートなどを含む)、繊維強化樹脂、および強化繊維などのいかなる強化材料であってもよい。強化材料200の形状も特に限定されず、板状、シート状、より厚みのある成形体、あるいは複雑な形状の成形体などのいかなる形状であってもよい。また、強化材料200が強化繊維であるときは、長繊維および短繊維のいずれであってもよいし、これらの強化繊維は引き揃えられていてもよいし、ランダムに配置されていてもよい。
[第2工程:強化材料の仮固定]
本工程では、第1のゲートを覆う位置に強化材料を配置された金型の、第1のゲートから第1の樹脂を導入して強化材料200を仮固定する。
図5は、本工程において強化材料を仮固定する様子を示す模式図である。金型100が配置され、強化材料200が抑え棒450により仮抑えされた状態で、射出成形装置400の第1のノズル432を開放し、第1のノズル432から第1のゲート110に第1の樹脂を流入させる。図5では、第1の開閉機構442であるバルブゲートを構成するバルブピンを後退させて、第1のノズル432を開放している。なお、このとき、第2のノズル434は開放しない。
図6は、第1のノズル432を開放したときの第1のゲート110近傍(図5中の領域A)の様子を示す模式図である。なお、理解をしやすくするため、図6では抑え棒450は省略している。また、本工程でもまだキャビティを形成しなくてもよいので、図6にも可動コアは示していない。
第1のノズル432を開放すると、溶融した第1の樹脂600が第1のゲート110に流入し、第1のゲート110の内部を通って強化材料200に到達する。そして、第1の樹脂600は、開口部110aにおいて、第1のゲート110側から強化材料200に接触する。
このとき、第1の樹脂600を混練装置410から押し出し、所定の圧力をかけて第1の樹脂600を第1のゲート110の内部に流入させてもよい。一方で、本工程では、比較的短い第1のゲート110の内部のみを第1の樹脂600が移動できればよく、かつ開口部110aにおいて比較的少量の第1の樹脂600が強化材料200に接触すればよい。そのため、第1の樹脂600にかける圧力はさほど大きくなくともよく、たとえば混練装置410からの圧力をかけずに、流路422の内部における残存圧力によって第1の樹脂600を第1のゲート110に流入させてもよい。このとき、射出成形装置400の加熱機構(不図示)により金型100を加熱することが好ましい。
その後、第1のノズル432を閉鎖して第1の樹脂600の導入を停止し、金型100を加熱しているときは当該加熱も停止して、強化材料200に接触している第1の樹脂600を冷却して固化させる。これにより、固化した第1の樹脂600により強化材料200を金型100に対して仮固定することができる。
第1の樹脂600の固化により強化材料200が仮固定されたら、前工程で行った強化材料200の仮押さえを外してもよい。
上記仮固定は、第1のゲート110の内部に充填された第1の樹脂600により強化材料200を仮固定するものであり、接着剤などによる仮固定と比較して、より大きい力での強化材料200の仮固定が可能である。また、仮固定は金型100のキャビティ面130側で行い、仮押さえを外した後は、キャビティ内部側(第1のゲート110とは反対側)には治具は配置されないので、第2の樹脂の射出成形時に治具を取り外す等の動作が必要なく、また簡易な構成により強化材料200を仮固定することが可能である。さらには、負圧による仮固定とは異なり、樹脂が装置内部に入り込むおそれがない。
図7は、第1のゲート110の形状を変化させた変形例における、第1のゲート110近傍(図5中の領域A)の様子を示す模式図である。
第1のゲート110は通常、細い管状である。そのため、第1のゲート110の開口部110aの面積も小さく、開口部110aにおける強化材料200と第1の樹脂600との接触面積も小さい。これに対し、図7に示すように、第1のゲート110を、開口部110aにおいて幅広な形状とすることで、開口部110aにおける強化材料200と第1の樹脂600との接触面積を大きくして、より強固に強化材料200を仮固定することもできる。このときの幅広な形状とされた開口部110aの大きさは、強化材料200の端部からの漏れ出しによる第1の樹脂600の圧力低下を抑制する観点から、強化材料200のキャビティ面130を向いた面の表面積以下であることが好ましい。
なお、このときの第1のゲート110の断面形状は、図7に示すような開口部110aのみが幅広になる形状としてもよいし、第1のゲート110の流路幅(断面積)が開口部110aに向けて連続的あるいは段階的に大きくなる形状としてもよい。
第1の樹脂600は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。
上記熱可塑性樹脂の例には、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE樹脂)、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)、液晶ポリエステル、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)などを含むアクリル樹脂、塩化ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、およびポリ4-メチル-1-ペンテンなどを含むポリオレフィン、これらの変性物である変性ポリオレフィン、ならびにフェノキシ樹脂などが含まれる。上記ポリオレフィンは、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体、エチレン/一酸化炭素/ジエン共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル、およびエチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体などを含む共重合体でもよい。
なお、強化材料200が樹脂部材や繊維強化樹脂などの樹脂を含む材料であるとき、第1の樹脂600は、強化材料200が含む樹脂と相溶可能であることが好ましい。なお、本明細書において、「相溶可能」とは、両樹脂を融点以上に加熱混合して25℃まで冷却した場合に単一相が形成されることを意味する。さらに、両樹脂は同一であることがより好ましい。また、本明細書において、「同一」とは、両樹脂のモノマー組成、ポリスチレン換算値の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)が測定誤差の範囲内で同一であることを意味する。両樹脂が相溶可能、さらには同一であると、両樹脂を融着させて、第1の樹脂600により強化材料200をより強力に仮固定させることができる。
[第3工程:複合体の成形]
本工程では、第2のゲートから第2の樹脂を導入して、上記仮固定された強化材料200と第2の樹脂との複合体を成形する。
図8は、本工程において複合体を形成する様子を示す模式図である。金型100のキャビティ面130と対向する位置に可動コア810を配置して、金型100と可動コア810とにより、密閉されたキャビティ820を形成する。この状態で、射出成形装置400の第2のノズル434を開放し、第2のノズル434から第2のゲート120を介して、第2の樹脂をキャビティ820内に射出する。図8では、第2の開閉機構444であるバルブゲートを構成するバルブピンを後退させて、第2のノズル434を開放している。なお、このとき、第1のノズル432は開放しない。
このとき、第2の樹脂800を混練装置410から押し出し、所定の圧力をかけて溶融した第2の樹脂800を第2のゲート120からキャビティ820の内部に射出する。なお、図8に例示する実施形態では、第1の樹脂600と第2の樹脂800とは同一の樹脂である。第2の樹脂800の温度、圧力、射出時間、射出速度や、金型100および可動コア810の加熱温度、キャビティ820内の圧力等は、第2の樹脂800の種類や、キャビティ820の形状およびサイズ等に応じて適宜設定すればよい。
第2の樹脂800がキャビティ820内に十分に充填された後、第2のノズル434を閉鎖して第2の樹脂800の導入を停止し、金型100および可動コア810の加熱も停止して、第2の樹脂800を冷却して固化させる。これにより、固化した第2の樹脂800と強化材料200とを含む複合体を得ることができる。
このとき、強化材料200を樹脂部材および繊維強化樹脂のようなバルク状の物体として、第2の樹脂800と強化材料200とが接合された複合体(インサート成形品)を作製してもよい。また、強化材料200を強化繊維として、第2の樹脂800が強化繊維の内部に含浸された複合体(繊維強化樹脂)を作製してもよい。
本実施形態では、前の工程において強化材料200を第1の樹脂600により仮固定しているため、本工程で第2の樹脂800を射出しても、強化材料200の位置ずれが生じにくい。
第2の樹脂800は、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。
上記熱可塑性樹脂の例には、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE樹脂)、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)、液晶ポリエステル、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)などを含むアクリル樹脂、塩化ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、およびポリ4-メチル-1-ペンテンなどを含むポリオレフィン、これらの変性物である変性ポリオレフィン、ならびにフェノキシ樹脂などが含まれる。上記ポリオレフィンは、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体、エチレン/一酸化炭素/ジエン共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル、およびエチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体などを含む共重合体でもよい。
上記熱硬化性樹脂の例には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびジアリルテレフタレート樹脂などが含まれる。
なお、図8には、第1の樹脂600と第2の樹脂800とが同一の樹脂であるときの構成例を示しているが、第1の樹脂600と第2の樹脂800とを別種の樹脂としてもよい。
図9Aおよび図9Bは、第1の樹脂600と第2の樹脂800とを別種の樹脂とするときの実施構成を示す模式図である。図9Aおよび図9Bに示すように、まず、第1の樹脂600aによる強化材料の仮固定を第1の射出成形装置400aで行い、金型100を第2の射出成形装置400bに移動させて、第2の樹脂800bをキャビティに射出して、第1の樹脂600aと第2の樹脂800aとを別種の樹脂として、本実施形態に関する複合体の作製を行うことができる。
図10Aおよび図10Bは、第1の樹脂600と第2の樹脂800とを別種の樹脂とするときの別の実施構成を示す模式図である。図10Aおよび図10Bでは、流路422caを介して第1のノズル432cに接続された第1の混練装置410caと、流路422cbを介して第2のノズル434cに接続された第2の混練装置410cbと、を有する射出成形装置400cを使用する。そして、まず、第2のノズル434cは閉鎖したまま、第1の開閉機構442cにより第1のノズル432cを開放して、第1の混練装置410caから供給される第1の樹脂600cによる強化材料の仮固定を行う。次に、第1のノズル432cは閉鎖したまま、第2の開閉機構444cにより第2のノズル434cを開放して、第2の混練装置410cbから供給される第2の樹脂800cによる複合体の作製を行う。
強化材料200が樹脂部材や繊維強化樹脂などの樹脂を含む材料であるときは、第2の樹脂800は、強化材料200が含む樹脂と相溶可能であることが好ましく、同一であることがより好ましい。両樹脂が相溶可能、さらには同一であると、両樹脂を融着させて、第2の樹脂800と強化材料200との接合強度をより高くすることができる。装置構成を簡略化でき、かつ仮固定の強度向上効果および複合体における接合強度の向上効果のいずれも見込まれることから、第1の樹脂600および第2の樹脂800は、いずれも強化材料200が含む樹脂と同様可能であることが好ましく、同一であることがより好ましい。
金型100から複合体を取り外した後、必要に応じて、強化材料200に固着した第1の樹脂600を除去してもよい。
[強化材料について]
強化材料200の種類は特に限定されず、樹脂部材(延伸シートなどを含む)、繊維強化樹脂、および強化繊維などのいかなる強化材料であってもよい。これら樹脂および強化繊維の種類は特に限定されず、いかなる材料であってもよい。
たとえば、強化材料200の重量が比較的大きいときは、接着剤や吸引などの方法では、金型100内に非水平に配置して仮固定することが難しかったが、本実施形態では、第1の樹脂600によって、金型の形状や射出成形装置の構成を問わず、仮固定を容易に行うことができる。そのため、治具を使用せずより簡易な構成で複合体を作製することが可能となり、複合体作成時のコスト低減や、複合体の形状設計の自由度の向上などが見込まれる。
また、強化材料200の重量が比較的小さいとき(たとえば、強化材料200が強化繊維や延伸シートなどであるとき)は、射出した樹脂による位置ずれが生じやすかったが、本実施形態では、第1の樹脂600によってより強固に仮固定することができ、位置ずれをより効果的に抑制することができる。また、従来の仮固定における不十分な位置ずれ抑制効果を補うため、たとえば特許文献1では繊維強化樹脂シートに対して上面から溶融樹脂を接触させていたが、本実施形態ではその必要はない。たとえば図8、図9Bおよび図10Bに示すように、本実施形態では、キャビティ820に射出されたキャビティ820内部を流動する第2の樹脂800を、強化材料200の横方向から接触(厚み方向の端部に最初に接触)させても位置ずれ抑制効果は十分である。
特に、軽量であるが従来は仮抑えが困難であり、位置ずれが生じやすかった繊維強化樹脂シートを強化材料200として使用するときに、本発明の効果は顕著である。また、UDシートは、強化繊維の配向方向と強度の発現方向とが密接に関連しているため、わずかな位置ずれ(強化繊維の方向ずれ)が生じただけで、複合体の強化効果の低下が大きく生じることがある。そのため、UD-シートを強化材料200として使用するときに、本発明の効果はさらに顕著である。
(UDシートについて)
上記UDシートは、一方向に配向されて配列された複数の強化繊維と、前記複数の強化繊維に含浸されたマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂のシートである。
上記強化繊維の材料は、特に限定されない。たとえば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、および金属繊維などを、上記強化繊維として用いることができる。これらのうち、力学特性に優れ、かつ成形品をより軽量化できる点から、炭素繊維が好ましい。上記炭素繊維の例には、PAN系の炭素繊維、ピッチ系の炭素繊維およびレーヨン系の炭素繊維が含まれる。これらのうち、強度と弾性率とのバランスに優れることから、PAN系の炭素長繊が好ましい。
上記炭素繊維は、X線光電子分光法により測定される炭素繊維の表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]が、0.05以上0.5以下であることが好ましく、0.08以上0.4以下であることがより好ましく、0.1以上0.3以下であることがさらに好ましい。上記表面酸素濃度比が0.05以上であると、炭素繊維表面に十分な量の官能基を確保して、マトリクス樹脂との接着性をより高めることができる。上記表面酸素濃度比が0.5以下であると、炭素繊維の取扱い性および生産性に優れる。上記表面酸素濃度比[O/C]は、国際公開第2017/183672号に記載の方法により測定できる。上記表面酸素濃度比[O/C]は、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などを含む公知の方法により制御できるが、電解酸化処理による制御が好ましい。
上記強化繊維は、強化繊維による強度の向上効果を十分に高める観点からは、平均直径が1μm以上20μm以下であることが好ましく、3μm以上15μm以下であることがより好ましく、4μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
上記強化繊維の長さは、通常15mm以上である。上記強化繊維の長さの下限値は、20mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましく、500mm以上がさらに好ましい。上記強化繊維の長さの上限値の最大値は、UDシートの長さの最大値と同じであることが好ましく、例えば50mである。通常、後述の樹脂成形体に用いられるUDシートは、UDシートを製造後に所望の長さに裁断されたものが用いられる。そのため、樹脂成形体が含むUDシートが含む強化繊維の長さは、上述の長さの最小値によりも小さくなることがあり得る。
上記強化繊維は、集束剤(サイズ剤)により集束された繊維束が開繊されたものであることが好ましい。上記繊維束の単糸数は特に制限されないが、通常は100本以上350,000本以下であり、1,000本以上250,000本以下であることが好ましく、5,000本以上220,000本以下であることがより好ましい。
上記集束剤は、オレフィン系エマルション、ウレタン系エマルション、エポキシ系エマルション、およびナイロン系エマルションなどを含む公知の集束剤であれはよく、これらのうちオレフィン系エマルションが好ましく、エチレン系エマルションまたはプロピレン系エマルションがより好ましい。上記エチレン系エマルションに含まれるエチレン系重合体の例には、エチレン単独重合体、およびエチレンと炭素原子数3以上10以下のα-オレフィンとの共重合体が含まれる。上記プロピレン系エマルションに含まれるプロピレン系重合体の例には、プロピレン単独重合体、およびプロピレンとエチレンまたは炭素原子数4以上10以下のα-オレフィンとの共重合体が含まれる。
特に、強化繊維束とマトリクス樹脂との間の接着性をより高める観点からは、上記集束剤は、未変性ポリオレフィンと変性ポリオレフィンとを含むことが好ましい。上記未変性ポリオレフィンは、ホモポリプロピレン、ホモポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、またはエチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体であることが好ましい。上記変性ポリオレフィンは、たとえば、未変性ポリオレフィンの重合体鎖に、カルボン酸基、カルボン酸無水物基またはカルボン酸エステル基をグラフト導入し、かつ上記官能基と金属カチオンとの間で塩を形成させたものであればよく、これらのうち、カルボン酸金属塩を含む変性ポリオレフィンであることがより好ましい。
マトリクス樹脂は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物である。マトリクス樹脂は、充填材その他の樹脂成分以外の成分を含んでもよい。
上記熱可塑性樹脂の例には、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE樹脂)、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)、液晶ポリエステル、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)などを含むアクリル樹脂、塩化ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、およびポリ4-メチル-1-ペンテンなどを含むポリオレフィン、これらの変性物である変性ポリオレフィン、ならびにフェノキシ樹脂などが含まれる。上記ポリオレフィンは、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体、エチレン/一酸化炭素/ジエン共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル、およびエチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体などを含む共重合体でもよい。
上記熱硬化性樹脂の例には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびジアリルテレフタレート樹脂などが含まれる。
これらのうち、第1の樹脂への固着性を高めて仮固定時の安定性を高め、かつ第2の樹脂との接合強度を高める観点、および溶融粘度を低くして仮固定時およびインサート成形時の樹脂漏れを抑制するからは、熱可塑性樹脂が好ましく、極性がより高い樹脂としては、ポリアミド系樹脂およびポリエステル樹脂が好ましく、極性がより低い樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。また、コストを低減したり、成形品を軽量化したりする観点からは、ポリプロピレン系樹脂およびポリアミド系樹脂が好ましい。また、上記集束剤により集束された強化繊維との親和性を高める観点から、マトリクス樹脂は、上述した変性ポリオレフィンを含んでいてもよい。
上記ポリプロピレン系樹脂の種類は特に制限されず、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレン系共重合体であってもよく、これらの混合物であってもよい。ポリプロピレン系樹脂の立体規則性も特に限定されず、イソタクチックであっても、シンジオタクチックであっても、アタクチックであってもよい。上記立体規則性は、イソタクチックまたはシンジオタクチックであることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、未変性ポリプロピレン系樹脂(P1)であってもよいし、重合体鎖に結合したカルボン酸塩等を含む変性ポリプロピレン系樹脂(P2)あってもよい、これらの混合物であってもよいが、これらの混合物であることが好ましい。上記混合物は、未変性ポリプロピレン系樹脂(P1)と変性ポリプロピレン系樹脂(P2)と質量の合計に対する、未変性ポリプロピレン系樹脂(P1)の質量比[(P1)/(P1+P2)]が、80質量%以上99質量%以下であることが好ましく、85質量%以上98質量%であることがより好ましく、90質量%以上97質量%以下であることがさらに好ましい。
上記ポリアミド系樹脂の種類は特に限定されず、公知のポリアミド系樹脂であればよい。上記ポリアミド系樹脂の例には、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド11、および芳香族系ポリアミドなどが含まれる。これらのうち、ポリアミド6、およびポリアミド12が好ましい。
上記ポリアミド系樹脂の80℃、5時間乾燥後ASTM D1238に準じて230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレイト(MFR)は、40g/10分以上であることが好ましく、40g/10分以上400g/10分以下であることがより好ましい。MFRがこの範囲内であると、マトリクス樹脂を強化繊維に十分に含浸させやすい。
上記ポリアミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上50,000以下であることが好ましく、5,000以上30,000以下であることがより好ましい。
マトリクス樹脂は、上記以外の樹脂や、上記強化繊維よりも短い長さの短繊維などの他の成分を含んでいてもよい。
[その他の実施形態]
なお、上述した実施形態は本発明の一例を示すものである。本発明は、その技術思想に基づき、上述した実施形態以外の構成をとり得ることがあることは、当業者に理解可能である。
たとえば、上述の実施形態では、金型は第1のゲートおよび第2のゲートをいずれも1個ずつ有していた。しかし、金型は複数個の第1のゲートを有していてもよいし、複数個の第2のゲートを有していてもよい。たとえば、複合体のうち複数の箇所に強化材料を配置するときは、金型は、これらの強化材料の配置位置に応じた複数個の第1のゲートを有し、これら複数個の第1のゲートにより複数個の強化材料を仮固定することができる。複数個の強化材料を仮固定するとき、これらの強化材料は同一の材料であってもよいし、互いに異なる材料であってもよい。また、強化材料をより強固に仮固定して位置ずれを抑制する観点からは、複数個の第1のゲートを有し、これら複数個の第1のゲートにより1つの強化材料を固定することが好ましい。
また、上述の実施形態では、金型のキャビティ面は平面状であった。しかし、金型のキャビティ面は曲面であってもよいし、複数の平面または曲面が所定の角度で組み合わされた形状であってもよい。
また、上述の実施形態では、強化材料のキャビティ面側の一部に第1の樹脂を接触させていた。しかし、強化材料のキャビティ面側の一部に第1の樹脂を接触させて仮固定してもよい。このようにして、強化材料の表面に第1の樹脂による被膜が形成された複合体を得ることもできる。そして、上記第1の樹脂による被膜を、保護コーティングや、色彩コーティングとすることもできるし、強化繊維の突出を抑止する抑止層とすることもできる。
以下、実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例の記載に限定されない。
1.複合体1の作製(実施例)
UDシート(三井化学株式会社製、TAFNEX (「TAFNEX」は同社の登録商標))を用いて、下記の方法でポリプロピレンとの複合体を作製した。このUDシートは、ポリプロピレンと炭素繊維とを含有するUDシートであり、繊維体積分率(Vf)は50体積%、厚さは160μmだった。
図2に概要を示す金型を、図4に示すように、型締力が1000tである縦型の射出成形装置に設置した。この金型は、第1のゲートの開口部が内径5mmの円形状であり、第1のゲートと第2のゲートとの間の距離は130mmの、特殊な構成を有さない金型であった。
UDシートを100mm×100mmに裁断し、上記金型の、第1のゲートを覆う位置に鉛直方向に配置した。このとき、正方形であるUDシートの4つの角部のうち1つに、正方形の頂点が含まれる20mm×20mmの領域を設定し、この領域が第1のゲートの開口部を覆うように、UDシートを金型のキャビティ面に沿って配置した。また、UDシートの4つの角部のうち、第1のゲートの開口部を覆う上記領域に含まれる角部が第2のゲートに最も近くなるようにし、かつ上記領域に含まれる角部と、それと対向する角部と、を結ぶ対角線の延長戦上に第2のゲートが位置されるように、UDシートを配置した。この状態で、上記配置されたUDシートを、金型のキャビティ面に対し、治具としての抑え棒により、第1の樹脂の導入時にUDシートの位置ずれが生じないように仮抑えした。
この状態で、第1のゲートから、第1の樹脂としてのポリプロピレン(プライムポリマー株式会社製、プライムポリプロJ106G)を、導入時間1秒間、樹脂温度260℃として、射出成形装置内の残存圧力を利用して導入した。なお、このポリプロピレンは、UDシートに含まれるポリプロピレンと融点以上で加熱混合して25℃まで冷却したときに、単一相が形成される(相溶である)ことを確認していた。射出成形装置のバブルピンを閉じてポリプロピレンの流入を止めた後、240秒間放置してポリプロピレンを固化させた。その後、UDシートを仮抑えしていた治具を取り除いた。治具を取り除いたUDシートは、金型のキャビティ面から外れず、金型のキャビティ面に仮固定されたことが確認された。
次に、金型を閉じてキャビティを形成し、第2のゲートから、第2の樹脂としてのポリプロピレン(プライムポリマー株式会社製、プライムポリプロJ106G)を、射出時間2.7秒間、樹脂温度230℃、射出速度40m/s、保圧時間5秒間、保圧圧力20MPaとして射出した。射出成形装置のバブルピンを閉じてポリプロピレンの流入を止めた後、所定時間放置してポリプロピレンを固化させた。その後、射出成形装置を開けて、UDシートと第2の樹脂とを有する複合体を金型から取り出した。複合体1を確認したところ、UDシートの位置ずれは生じていなかった。
2.複合体2の作製(比較例)
治具を使用せず、UDシートの全周内面を両面テープ(株式会社寺岡製作所製、No.760)で金型のキャビティ面に仮固定し、第1のゲートからの第1の樹脂の導入および固化を行わずに、両面テープで仮固定したまま第2のゲートから第2の樹脂を射出し、固化させた。その他の条件は複合体1の作製と同様にして、複合体2を作製した。複合体2を確認したところ、UDシートの位置ずれが生じていた。