明 細 書
鋼線およびその製造方法 技術分野
本発明は、 ばねや P C鋼線などに最適で、 疲労強度に優れる鋼線と その製造方法に関するものである。 特に、 耐熱性または遅れ破壊特性 にも優れる鋼線とその製造方法に関する。 背景技術
ばね用鋼線として、 C : 0. 6〜 0. 8 , S i : 0. 1 5〜 0. 3 5 , M n : 0. 3〜 0. 9 mass %を含むものが知られている。 この鋼 線は、 圧延→パテンティ ング (ァ化加熱—恒温変態) —伸線— (コィ リ ング) —歪み取り焼鈍 (例えば 3 0 0 ± 3 0 °C) の工程を経て製造 される。
しかし、 このようにパ一ライ ト鋼を伸線した鋼線 (一般にピアノ線 または硬鋼線 : 以下単にピアノ線という) は耐熱性が劣ることが知ら れている。
そのため、 高温環境で耐へたり性が要求される場合、 S i の含有量 が高い ( 1. 0 mass %前後) 耐熱ピアノ線や S i — C r鋼オイルテン パー線 (以下 O T線という) などの焼入れ焼戻し鋼が用いられていた 例えば、 耐熱性が要求される使用環境としては鋼線に溶融亜鉛メ ッキ を施す場合が挙げられ、 その際の強度低下を抑制するために S i を添 加することが行われている。
その他、 セメ ンタイ トを微結晶化してナノオーダーの結晶とすると 強度と靱性に優れた鋼線が得られることも提案されている (特開平 8 -120407号) o
しかし、 上記の従来技術には次のような問題があった。
①鋼線における重要特性として、 a ) 高い引張強さ、 b ) 高い靱性、 c ) 高い疲労強度などがあるが、 伸線加工される鋼線では、 高い引張 強さと疲労強度は必ずしも両立しない。 一般に伸線加工度が大きい程 引張強度が高くなる。 また、 引張強度がある程度高くないと疲労強度 が上がらない。 しかし、 加工度を大きくするこ とは塑性加工による材 料のミ クロ欠陥を増やすことになり、 ミ クロ欠陥が集まるとそれが起 点となって疲労破壊が早期に発生する。
②耐熱ピアノ線では一般に C rの含有量が多く、 熱処理 (パテンテ イ ング) に要する時間が長くかかって生産性が低い。
③耐熱ピアノ線は、 鋼線に溶融亜鉛メ ツキを施す場合 (約 4 5 0 °C X 3 0秒) などの強度低下抑制を目的としており、 2 0 0 °C前後での 耐熱へたり性を狙いとしたものではない。 S i の含有量を高めること で耐熱性が向上することはパラレルワイヤをはじめとする鋼線におい て知られている。 ただし、 耐熱性といってもその狙いは様々であり、 パラレルワイャでの耐熱性は溶融亜鉛メ ッキされた後に引張り強さの 変化の小さいことが本来の狙いである。 一方、 自動車のエンジンにお ける弁ばねや焼き付け塗装時に 2 0 0 °C程度まで加熱される ト一ショ ンバーの場合、 重要なのは 1 0 0 〜 2 0 0 °C程度の温度域でのへたり が小さいことであり、 さらに疲労特性も兼ね具えることである。 この ため、 単にパラレルワイヤの化学成分をばねに応用してもばね材とし て十分な特性は得られない。 すなわち、 パラレルワイヤで S i を添加 することによって疲労特性が向上するとの報告もあるが、 これらは引 張力の繰り返し疲労についてであり、 ばね材の疲労とは本質的に要求 特性が異なる。 パラレルワイヤでは表面硬度の低下があっても疲労特 性への影響が小さいが、 S i含有量の高いばね用鋼線では疲労特性へ
の影響が大きい。
④耐熱ピアノ線は、 ばねにおいて重要な特性である遅れ破壊特性に ついても考慮されていないのが通常である。 鋼線には防食目的でカチ オン塗装などが行われることがあり、 このときに水素が侵入すると遅 れ破壊を引き起こす原因となる。 ばね用鋼線としては特に捻り応力に 対する遅れ破壊特性が重要になるが、 このような遅れ破壊特性の検討 はほとんど行われていない。
⑤ 0 T線はコス 卜が高い。 鋼線製造の最終工程で焼入れ · 焼戻しを 施すことにより耐熱性, 疲労強度共に優れた鋼線を得られるが、 焼入 れ · 焼戻しを施す場合はコス トが高くなる。
従って、 本発明の目的は、 焼入れ ·焼戻しを行わない、 すなわち伸 線加工により得られ、 耐熱性 (特に 2 0 0 °C前後) と疲労強度に優れ た鋼線とその製造方法を提供することにある。
また、 本発明の他の目的は、 耐熱性に加えて遅れ破壊特性にも優れ る鋼線を提供することにある。
さらに、 本発明の別の目的は、 材料強度の向上と共に疲労破壊起点 を最適に減少させることで高疲労特性を得られる鋼線とその製造方法 とを提供することにある。 発明の開示
本発明は次の構成 [ 1 ] 一 [ 4 ] を内容としている。
[ 1 ]
本発明鋼線は、 mas s %で C : 0 . 7〜 1 . 0 , S i : 0 . 5 〜 1 . 5を含むパ一ライ ト組織の鋼線であって、 鋼線横断面において、 表面 から 5 0 (ί ΐηまでの硬度の平均とそれより内部の硬度の平均との差を マイクロビッカース硬度で 5 0以内としている。 この鋼線は高い耐熱
性および疲労強度を具えており、 特にばね用鋼線に最適である。
この鋼線には、 さらに M oを 0 . 0 3 〜 0 . l mass%含有すること が好ましい。 また、 M n : 0. 3 〜 0. 9 mass% , C r : 0 . 2 mas s%以下を含有してもよい。 この鋼線の引張強度は、 十分な疲労強度 を出すためには、 1 8 0 0 N /讓 2 以上が好適である。
ここで、 上記鋼線の金属組織としては、 粒界フヱライ 卜力 5 vol % 以下であることが好ましい。 さらに、 パーライ 卜組織を構成するセメ ンタイ ト形状としては、 セメ ンタイ トの厚さを t , 長さを 1 としたと さ、
1 / t ≥ 5 … (式 1 )
であるものが 8 0 vol %以上であることが望ましい。
このような組織を得るには、
1 0 X { C (mass% ) — 0. 7 6 } — S i (mass% ) + 5 X C r (ma ss%) = T… (式 2 )
として、 ァ化加熱後の冷却速度 V (°C/秒) が 5 8 0 °C以上の温度域 で、
V≥— 5 0 T + 2 7 5 … (式 3 )
を満たせばよい。
また、 本発明鋼線の製造方法は、 mass%で C : 0. 7〜: 1 . 0 , S i : 0 . 5 〜 1 . 5を含むパーライ ト組織の鋼線をシヱ一ビングして からパテンテイ ングし、 伸線することを特徴とする。 この製造方法は、 焼入れ ·焼戻し処理を行うことなく本発明鋼線を製造することができ、 低コス 卜で耐熱性と疲労強度を兼ね具えた鋼線を得ることができる。 さらに、 伸線後に歪み取り焼鈍を 3 5 0 〜 4 5 0 °Cで行うこ とが望ま しい。 なお、 伸線加工度は 8 0 %以上とすることが好適である。
以下、 本発明の構成を上記のように限定した理由を述べる。
く化学成分〉
C : 疲労強度の観点から下限値を決め、 伸線性の観点から上限値を 決めた。
S i : 耐熱性の向上に必要な元素である。 下限値未満では十分な耐 熱性が得られず、 上限値を越えると鋼線表面に傷が付きやすい。
M o : 下限値未満では耐熱性 ·疲労強度向上の効果が小さ く、 上限 値を越えるとパテンティ ングの時間が長く生産性が劣る。
M n : 焼入れ性向上のために添加する。 上限値を越えると偏析が多 くなりやすく、 伸線性に劣る。
C r : 上限値を越えるとパテンティ ングの時間が長く生産性に劣る からである。
< シヱ一ビング〉
鋼線表面の低硬度層の除去が目的である。 鋼線の内部の硬度より も マイクロピツカ一ス硬度で 5 0以上硬度の低い層を除去することで疲 労特性を改善する。
<歪み取り焼鈍 >
ばねの疲労特性向上のため 3 5 0〜 4 5 0 °Cで行う。 下限値未満で は疲労特性向上の効果が少なく、 上限値を越えるとワイヤの強度, 疲 労強度も下がる。 この焼鈍の時間は、 効果と生産性の点で、 2 0分程 度が好ましい。
<粒界フ エ ライ ト〉
本発明鋼線のように S i の高い材料は粒界フェライ 卜が析出しゃす いことが特徴であり、 疲労特性に対しては欠点である。 この粒界フニ ライ 卜が 5 vo l %以下であると疲労特性および耐熱性に優れる。
<セメ ンタイ ト形状〉
セメ ンタイ ト形状についても同様に疲労 · 耐熱性にとって重要であ
る。 従来パラレルワイヤでの 4 5 0 °C以上の耐熱性とは異なり、 1 0 0〜 2 0 0 °Cの温度域での疲労 · 耐熱性にとっては前述の式 1を満た すことが好ましいからである。
<化学成分と冷却速度との関係〉
化学成分とァ化加熱後の冷却速度との関係が前述の式 2 , 式 3を満 たすことで、 前記の粒界フェライ トゃセメ ンタイ ト形状の組織を得る ことができるからである。
[ 2 ]
本発明鋼線は、 C : 0. 7 5〜 : 1 . 0 mass%, S i : 0. 5〜 1 . 5mass%を含み、 パ一ライ ト組織を塑性加工した鋼線で、 セメ ンタイ 卜は幅が 5〜 2 0 n mの大きさのものと幅が 2 0〜 1 0 0 n mの大き さのものとがほぼ交互に配列され、 セメ ンタイ 卜の厚さは 5〜 2 0 n mである。 この鋼線はピアノ線であっても 2 0 0 °C前後における耐熱 性が O T線に相当する。 そのため、 自動車エンジンの弁ばねなどに利 用することができる。
この鋼線には、 さらに M 0および Vの少なく とも一方を添加し、 こ れらの含有量の合計を 0. 0 5〜 0. 2 maSS%としたり、 A 1 を 0. 0 1 〜 0. 0 3 mass%含有してもよい。
また、 透過型電子顕微鏡写真において、 フニライ 卜とセメ ンタイ ト との界面に半円状の歪みが観察されないことが好ましい。
さらに、 セメ ンタイ トにおける幅 2 0〜 1 0 0 n mの大きさの粒子 の厚さを A l、 これと隣接する幅 5〜 2 0 n mの大きさの粒子が前記 2 0〜 1 0 0 n mの大きさの粒子と接触している厚さ方向の長さを A 2 としたとき、
0. 3 < A 2 /A 1 < 0. 9 5
であることが望ま しい。
上記の鋼線を製造するのに最適な方法は、 C : 0. 7 5〜 1 . 0ma ss%, S i : 0. 5〜; 1 . 5 masS%を含む材料に冷間で真歪が 0. 7 以上の塑性加工を行い、 この加工方法を伸線、 圧延、 ローラダイス伸 線、 スエージの 1つ以上として、 1回の加工での真歪を 0. 1 〜 0. 2 5の範囲とし、 加工途中で鋼線の先端と後端とを入れ替えて加工を 行い、 この塑性加工後に 2 3 0〜 4 5 0 °Cの熱処理を施すことを特徴 とする。 この製造方法により、 耐熱性に優れた本発明鋼線を安価に製 造することができる。 上記冷間での塑性加工の際、 その途中で鋼線の 捻じれを鋼線 1 0 0mm当り 1 5 ° 以内とするとより好ま しい。
上記のように本発明を限定した理由を以下に述べる。
< C : 0. 7 5〜; I . 0 mass% >
0. 7 5 %未満では鋼線の強度が低く、 耐熱性も低くなる。 逆に 1 %を越えると S i の含有量を高めたときに塑性加工が困難になる。
< S i : 0. 5〜: L . 5 mass% >
0. 5 %未満では耐熱性が低く、 1. 5 %を越えると塑性加工が困 難になる。
<セメ ンタイ 卜の形態 >
セメ ンタイ 卜の幅が 5〜 2 0 n mの大きさのものと幅が 2 0〜 1 0 0 n mの大きさのものとがほぼ交互に配列され、 セメ ンタイ 卜の厚さ が 5〜 2 0 n mという範囲から外れると、 2 0 0 °C程度までにおける 耐熱性が低下する。
くフェライ 卜とセメ ンタイ トとの界面の歪み >
半円状の歪みが認められると耐熱性が著しく低下する。
<隣接するセメ ンタイ ト同士の接触状態〉
セメ ンタイ トにおける幅 2 0〜 1 0 0 n mの大きさの粒子の厚さを
A 1、 これと隣接する幅 5〜 2 0 n mの大きさの粒子が前記 2 0〜 1 0 0 n mの大きさの粒子と接触している厚さ方向の長さを A 2 とした とき、 0. 3 < A 2 ZA 1 く 0. 9 5の範囲から外れると耐熱性が低 下する。
く M o , V : 合計含有量が 0. 0 5〜 0. 2mass% >
この範囲を越えて添加すると、 パ一ライ ト組織を得るのが困難にな る。 具体的には変態時間がかかり、 生産性の低下が著しい。
< A 1 : 0. 0 1 〜 0. 0 3 mass% >
この範囲の A 1 の添加により靱性が向上する。
<冷間での塑性加工〉
真歪が 0. 1 〜 0. 2 5の範囲を外れると靭性が低下する。 また、 途中で加工方向を逆転することにより靱性を一層向上させることがで きる。
<加工途中での捻じれ〉
冷間での塑性加工を行う際、 捻じれ量が 1 5 ° 以内であれば、 耐熱 性の向上とセメ ンタイ ト形状の安定化を図ることができる。
[ 3 ]
本発明鋼線は、 C : 0. 7〜 1 . 0腿 ss%, S i : 0. 5〜 : 1. 5 mass%, C r : 0. 2 mass %以下を含有するパ一ライ ト組織の鋼線で 2 5 0 °C以下で次の式 4の関係を満たし、
7 ≤ (0.00004 A
• · · 式 4 ァ =残留せん断歪 (%) ただし、 1 5 0 °C以上、 せん断応力 3 0 0 M P a以上、 0. 1時間以上
A =温度 (°C)
B せん断応力 (M P a )
C =時間 ( h r )
かつ次の式 5の関係を満たす。
TDF> 2 0 0 / て …式 5
て : せん断応力 (MP a ) ただし、 2 0 0 M P a以上 TDF: 遅れ破壊発生時間 (H r )
条件は 2 0 %チォシアン酸アンモニゥム, 5 0 °C液中 この鋼線は、 耐熱へたり性と遅れ破壊特性に優れている。 特に、 2 0 0 °C前後における耐熱へたり性に優れ、 自動車のエンジン周りのば ね用として最適である。
ここで、 N i 0. 0 1〜; L . 0 mass %を添加したり、 T i : 0. 0 1〜 0. 1 5 mass %および V : 0. 0 1〜 0. 1 5 mass%の少なく とも一方を添加することが好ましい。
また、 パーライ ト組織中のフヱライ 卜の格子歪を 0. 0 5〜 0. 2 %とすることが望ましい。
このような鋼線を製造する方法は、 パテンティ ングの後に伸線加工 を行う鋼線の製造方法において、 伸線加工に用いるダイスのダイス角 を 1 0〜 8度にすればよい。 また、 ダイスのベアリ ング長をダイス径 dに対して d Z4〜 d / 5 とすることが望ま しい。
このように本発明の構成を限定した主な理由を説明する。
<式 4 >
ばね、 特に耐熱ばねとして使用される場合、 使用環境として、 ①使 用温度、 ②使用時間, ③使用応力の 3点が重要な要素となる。 後述す る試験例から明らかなように、 この式 4を満たすことが耐熱性を改善 することに有効であることがわかった。 ちなみに、 S i — C r鋼オイ
ルテンパー線などではこの式 4の条件を満たすが、 非常に高価なこと と、 次の式 5の条件を満たさず、 遅れ破壊特性が劣る。
<式 5 〉
ばねとしてのもう一つの重要な特性として遅れ破壊特性に優れるこ とが挙げられる。 この遅れ破壊特性改善する条件として、 後述する試 験例に示すように、 この式 5を満たすこ とが非常に有効である。 遅れ 破壊特性を評価するに際しては、 使用環境として応力が重要である。 従来から遅れ破壊特性は一般に引張応力で評価されていたが、 ばね用 の場合、 捻りが加わる条件で使用されることが多いため、 捻り応力で 評価することが特に重要である。 また、 遅れ破壊の原因となる水素の 侵入条件を一定化して評価する必要があるため、 2 0 %チォシアン酸 アンモニゥム, 5 0 °C液中に試料を浸潰して評価することとした。
< C : 0. 7〜 1 . 0 mass% >
0. 7 %未満では強度、 特に疲労強度が低くなり、 1 . 0 %を越え ると伸線加工性が劣つて生産性が低くなる。
< S i : 0. 5〜 1. 5 mass% >
0. 5 %未満では耐熱性が劣り、 1. 5 %を越えると伸線加工性が 劣って生産性が低くなる。
< C r : 0. 2 mass%以下〉
C rの添加により強度を向上できるが、 0. 2 %を越えて添加する と、 特にパーライ ト変態に要する熱処理時間が長くなって生産性が著 しく低下する。 なお、 C r量を 0. 0 4〜 0. 1 %の範囲とした場合 N i 量を C r量(maSS% ) の 1 / 4以上 1. 0 mass%以下とすること がー層好ましい。
く格子歪 : 0. 0 5〜 0. 2 % >
0. 0 5 %未満では耐熱性が低く、 0. 2 %を越えると材料強度と
して低くなりばね特性を満足しない。
< N i : 0 . 0 1 〜: 1 . 0 mass% >
0. 0 1 %未満では遅れ破壊特性が劣る。 1 . 0 %を越えても遅れ 破壊特性の向上効果は飽和し、 N i が高価なためコス ト高になる。 た だし、 耐熱性と遅れ破壊特性の双方の効果を十分に発揮するには 0 . 1 1 . 0 mass%が好ましい。 さらに、 2 0 0 °Cを越える温度域にお ける長時間の耐熱には 0 . 2 1 . 0 maSS%が望ましい。
< T i および Vの少なく も一方 : 各 0 . 0 1 0 . 1 5 mass%〉 0 . 0 1 %未満では遅れ破壊特性に劣り、 0 . 1 5 %を越えると靭 性が低下してばねとしての利用が困難になる。
くダイス角 : 1 0 8度、 ベアリ ング長 : d / 4 d Z 5 : dは ダイス径〉
ダイス角とベアリ ング長を特定するこ とで伸線加工で導入される歪 特にフェライ 卜—セメ ンタイ 卜界面の歪のマク口的な分布を均一とし. 同界面の歪を緩和しゃすくすると共に耐熱性を両立させる。
[ 4 ]
本発明鋼線は、 パ一ライ ト組織を有し、 化学成分が 111& %で〇 :
0. 7 1 . 0 % S i : 0 . 5 1 . 5 %を含む鋼線であって、 格 子定数を a としたとき、 格子歪△ a LSが下記の条件を満たす。
0. 0 0 1 X a ≤ Δ a LS≤ 0 . 0 0 2 xa
この鋼線によれば、 格子定数と格子歪を特定することで、 鋼線の疲 労特性を飛躍的に向上することができる。
ここで、 鋼線の化学成分には M nと C rの各々を 1 %以下含むこと が望ましい。 このような鋼線は、 ばね加工やより加工を施して、 疲労 強度の求められる自動車部品用ばねとしたり、 P C鋼より線, コン ト
ロールケーブル, スチールコー ド, ノ、。ラ レルワイヤなど補強用に用い られる鋼線として利用することが最適である。 ばね加工した場合、 そ の表面残留応力が引張応力で 1 0 O MP a以下または圧縮応力である ことが望ましい。 上記格子定数 aは 2. 8 6 7 0〜 2. 8 7 0 5 Aの 範囲が適切である。
また、 本発明鋼線は、 パーライ ト組織を有し、 化学成分が maSS% で C : 0. 7〜: 1. 0 %、 S i : 0. 5〜 1. 5 %を含む鋼線であつ て、 格子定数を a としたとき、 格子歪 Δ a LSが下記の条件を満たす ことも特徴とする。
0. 0 0 2 5 x a ≤ A a LS≤ 0. 0 0 4 5 x a この場合、 格子定数 aは 2. 8 6 7 0〜 2. 8 7 1 O Aであること が好ま しい。
さらに、 上記の鋼線を製造するのに最適な本発明方法は、 化学成分 が mass %で C : 0. 7〜 1. 0 %、 S i : 0. 5〜 1. 5 %を含む パーライ ト組織の鋼材を冷間加工し、 冷間加工後の格子定数を a i と したとき、 同格子歪 A a ^sl を下記の①の範囲内にする工程と、
® 0. O O S S x a i A a x^ O . 0 0 4 5 x a i
得られた鋼線に熱処理を施し、 格子定数を a 2 としたとき、 格子歪 Δ a LS2 を下記の②の範囲内にする工程とを具えること特徴とする。
© 0. 0 0 1 X a 2 ≤ A a L_s2 ≤ 0. 0 0 2 x a 2
ここで、 鋼線の化学成分には、 M nと C rの各々を 1 %以下含むこ とが望ましい。 冷間加工には伸線、 ローラダイス, スエージ、 圧延、 鍛造などが挙げられる。 また、 a の範囲としては 2. 8 6 7 0〜 2. 8 7 1 0人、 a 2 の範囲としては 2. 8 6 7 0〜 2. 8 7 0 5人程度 が適切である。 冷間加工により適度な歪導入を行って強度を適正化し、 その後の熱処理によって適度に歪を除去し、 ミ クロ的な欠陥が集中す
ることを回避して疲労破壊の起点をなくすことで疲労特性を向上させ る。 なお、 従来の鋼線は、 冷間加工後の格子定数 a 3 は 2 . 8 6 6 5 〜 2 . 8 7 1 0人、 格子歪 A a L S 3 は 0 . 0 0 1 x a 3 x 0 . 0 0 4 5 x a であった。 また、 熱処理後の格子定数 a 4 は 2 . 8 6 6 5 〜 2 . 8 6 9 5 A、 格子歪 Δ a LS 4 は 0 . 0 0 1 5 x a 4 以上であり、 疲労強度は低かった。
なお、 パテンティ ング後の伸線 (冷間加工) 条件として、 ①ダイス アプローチ角が小さいほど、 ②加工度が小さいほど、 ③鋼線の引抜角 度が小さいほど格子歪のばらつきが小さい。 また、 伸線加工後の熱処 理条件として、 熱処理温度が高いほど格子歪のばらつきを小さ くでき る。 さらに、 ① S i 量が多いほど格子定数は大きく、 ②冷間加工度が 小さいほど格子定数のばらつきが大きく なり、 ③熱処理温度が高いほ ど格子定数のばらつきが大きくなる。
後述する試験から明らかなように、 上記のように格子定数と格子歪 を規定することで疲労特性が飛躍的に向上することがわかった。 つま り、 今回初めて格子歪と疲労との相関を明らかにでき、 格子歪を適正 範囲に制御すれば疲労の起点になるような欠陥が除去できること、 そ して疲労特性を向上できることがわかった。
格子定数そのものは従来材でも得られていた値である (ただし制御 していたわけではない) 。 しかし、 この格子定数に適した格子歪の範 囲を規定することは今まで行われていなかった。 すなわち、 従来は単 に引張強さが高ければ疲労強度も向上するだろう との発想のもと、 ① パーライ トの強度 U P (パテンティ ング温度低下) 、 ②伸線加工度 U P、 ③素材の強度 U P =高 C化などが行なわれていたが疲労強度は向 上しなかった。
これに対して疲労強度が向上するための平均的な歪の量とその分布
を制御すれば良いことを見い出した。 平均的な歪の量は格子定数 aが 2 . 8 6 7 0〜 2 . 8 7 0 5 Aであれば望ましく、 歪の分布は格子歪 A a L S力、' 0 . 0 0 1 X a ≤ Δ a L S≤ 0 . 0 0 2 x aであれば好まし いことがわかった。 これらは従来のよう に、 パテンティ ング条件, 加 ェ度, 成分などだけでは疲労は上昇せず、 最終製品の引張強度だけで は疲労強度が決まらないことを意味する。
格子定数は X線回折法で求めることができる。 また、 格子歪も X線 回折法で求められるが、 一般的な回折ピークの半価幅などによる解析 は定性的であり、 半価幅を数値化しても絶対値の精度が低く、 大きさ の大小の比較は数十%以内の差では判断できないことがある。 そこで これらを精度良く評価できる手法を鋭意研究した結果、 疲労特性を向 上させられる材料範囲を明らかにするこ とができた。 その方法は、 従 来の一般的な X線回折に対して、 W i l son法と呼ばれる計算により格 子歪を結晶子サイズと分離して求めるものである。
まず、 格子歪について説明する。 これは結晶内部の単位格子の不均 一な変形, 回転, 変位, 加工などで生じ、 ミ クロ的には点欠陥や転位 などが原因になっているものである。 単位格子の大きさが歪のない理 想的なサイズと比べて大きかったり、 小さかったり して、 応力的には 引張力や圧縮力が残留する。 このような材料について X線回折で格子 の大きさを測定すると、 その回折ピークはシャープにならず幅が広が る。 この幅の半価幅を評価する (ピーク高さの半分の高さ位置での幅 を測定すること) ことで、 歪の大小は大雑把に判断できる。
しかし、 この幅を広げるのは、 単位格子の大小の他に、 装置固有の 広がり、 結晶子サイズ (X線結晶粒径) がある。 このため、 正確に単 位格子の大きさのばらつきを評価するためには、 これらを分離する必 要がある。 これを正確に測定したのが格子歪である。
格子歪の測定方法について説明する。 この方法はセラ ミ ックスなど の評価にはよく用いられている方法である。 数本の回折ピークの半価 幅を求め、 Wilson法と呼ばれる計算により格子歪と結晶子サイズと を分離して計算する。 数本の回折ピークを測定し、 半価幅 (積分幅) を求める。 今回は、 1 1 0 , 2 0 0 , 2 1 1 , 2 2 0 , 3 1 1の 5本 を測定する。 標準試料 (今回は純鉄粉末) の同一回折ピークの半価幅 を用いて装置定数を較正し、 格子歪と結晶子サイズの影響のみによる 半価幅を求める。 横軸を [ (Δ20 / (tangosinflo) ] 、 縦軸を [ (Δ20 2/tan2 ] でプロッ トして切片を求める (結晶子サイズによる広が りを Cauchy関数、 格子歪による広がりを Gauss関数として近似) 。 求めた切片の平方根を 4で割つた値がここで求めた格子歪の値である, 回折ピークは 5本である必要はない。 また、 今回と同じ回折ピーク を用いる必要もないが、 回折ピークの本数は多いほど精度は高くなる, 評価は歪の分布状態を示す値を用い、 無名数 (または%) で示す。 な お、 Δ2Θ は半価幅 (積分幅) で単位は 「ラジアン」 、 は回折角で 単位は 「度」 である。 このような評価により、 所定の C量, S i量に 対して格子歪を制御することで、 従来の一般的な X線半価幅による評 価では不可能であつた高疲労特性化を達成できる。
なお、 本発明鋼線とその製造方法において、 鋼線の化学成分, 組織 を限定したのは次の理由による。
C ( 0. 7 %以上、 1 . 0 %以下) は鋼線の強度を高めるには最も 効果的な元素である。 0 . 7 %未満では十分な強度が得られず 1 . 0 %を越えると偏祈の問題が発生して実用的でない。
S i ( 0 . 5 %超、 1 . 5 %以下) は基本的には脱酸剤の効果を有 し、 非金属介在物の低減のために必要である。 0 . 5 %を越えると 0 , 5 %以下に比べて固溶強化の効果が大き く、 より疲労特性が向上する,
M nは S i と同様脱酸剤の効果を有する。 1 %を越えると焼き入れ 性が高くなりパ一ライ ト変態での時間が長くなり生産性が低くなる。
C rは強度 U Pには効果あるが、 M n同様焼さ入れ性が高くなるの で 1 %以下が適切である。
パーライ ト鋼としたのは、 伸線加工する場合、 強度と靱性のバラン スが良好だからである。 図面の簡単な説明
図 1 は歪み取り焼鈍温度と疲労限界振幅応力との関係を示すグラフ である。 図 2は線材断面の硬度分布を示すグラフである。 図 3は化学 成分の異なる鋼線の残留剪断歪みおよび疲労限界振幅との関係を示す グラフである。 図 4はセメ ンタイ ト形状 L / t と粒界フェライ 卜量 α の違いによるばね特性評価の結果を示すグラフである。 図 5は Τとァ 化加熱後の冷却速度 Vの違いが組織に与える影響について示すグラフ である。 図 6は温度環境と残留せん断歪との関係を示すグラフである, 図 7は本発明鋼線の金属組織を示す顕微鏡写真である。 図 8は従来の 鋼線の金属組織を示す顕微鏡写真である。 図 9は各実施例と比較例の 残留せん断歪を示すグラフである。 図 1 0は本発明鋼線の金属組織を 示す模式図である。 図 1 1は本発明鋼線の金属組織を示す顕微鏡写真 である。 図 1 2は温度環境と残留せん断歪との関係を示すグラフであ る。 図 1 3は V , M o , A 1 の添加に伴う耐熱性の違いを示すグラフ である。 図 1 4は伸線方法の異なる鋼線について耐熱性の評価を示す グラフである。 図 1 5は化学成分の異なる材料について温度環境と残 留せん断歪との関係を示すグラフである。 図 1 6はセメ ンタイ ト組織 の長さと耐熱性との関係を示すグラフである。 図 1 7セメ ンタイ ト組 織の形態を示す模式図である。 図 1 8は捻り応力を鋼線に加える手順
の説明図である。 図 1 9は低応力一短時間における耐熱へたり試験の 結果を示すグラフである。 図 2 0は高応力一短時間における耐熱へた り試験の結果を示すグラフである。 図 2 1は高応力一長時間における 耐熱へたり試験の結果を示すグラフである。 図 2 2は遅れ破壊特性を 示すグラフである。 図 2 3は N i 量の異なる鋼線における耐熱へたり 試験の結果を示すグラフである。 図 2 4は N i 量の異なる鋼線におけ る遅れ破壊試験の結果を示すグラフである。 図 2 5は耐熱性と遅れ破 壊特性を示すダラフである。 図 2 6は T i , Vの添加に伴う耐熱へた り特性の変化を示すグラフである。 図 2 7は化学成分, 伸線条件およ び熱処理条件の異なる鋼線における格子歪/格子定数と疲労限との関 係を示すグラフである。 図 2 8はコイルばねに加工した鋼線における 格子歪/格子定数と疲労限との関係を示すグラフである。 図 2 9は P C鋼より線に加工した鋼線における格子歪ノ格子定数と疲労限までの 全振幅応力との関係を示すグラフである。 図 3 0は伸線後の鋼線にお ける格子歪ノ格子定数と疲労限との関係および熱処理後の鋼線におけ る格子歪ノ格子定数と疲労限との関係を示すグラフである。 発明を実施するための最良の形態
(試験例 1 一 1 )
C = 0 . 8 2 , S i = 1 . 0 5 , M n = 0 . 5 1 , C r = 0 . 0 9 mas S %の成分のィ ンゴッ 卜 1 0 0 k gを真空溶解設備で溶解铸造し、 熱間鍛造, 圧延により 1 l mm 0と 1 0 匪 0の線材を製造した。
これらの線材のうち、 1 1 mm øのものは 1 0 mm øまでシヱ一ビング により表面層を除去してから、 またシェービングしない 1 O mm 0の線 材はそのままで下記のパテンティ ング, 伸線, 歪み取り焼鈍を行って パ一ライ ト組織の鋼線を得た。
パテンティ ング : 9 5 0— 5 8 0 °C鉛浴
伸線 : 1 0 mm ø→ 4 mm ø
歪み取り焼鈍 : 3 0 0 , 3 5 0 , 4 0 0, 4 5 0 , 5 0 0 °Cで各 2
0分間
さらに比較例として、 C : 0 . 6〜 0 . 8 , S i 0 . 1 5〜 0. 3 5 , M n 0. 3〜 0 . 9 mass%を含む鋼種を溶解铸造→圧延→パ テンティ ング"→伸線 (減面率 8 4 %) →歪み取り焼鈍 ( 3 0 0 ± 3 0 °C) の工程で製造される 4 0の鋼線を得た。
そして、 上記の各鋼線に中村式の回転曲げ疲労試験機で疲労試験を 行い、 その際の疲労限を 1 0 7 回とした。 疲労試験に供する鋼線は伸 線加工で生じたカールを除くため伸直加工を施し、 その後上記の歪取 り焼鈍を行った。 その結果を図 1 に示す。 また、 各鋼線の横断面にお ける硬度分布も調べた。 その結果を図 2 に示す。
図 1 に示すように、 シヱ一ビングを行つたものは行わないものに比 ベて疲労限界振幅応力が大き く、 疲労強度に優れることがわかる。 特 に、 シヱ一ビングを行つたものでは歪み取り焼鈍の温度が 3 5 0〜 4 5 0 °Cの場合に好結果となっており、 シェ一ビングを行わないもので も歪み取り焼鈍の温度が 3 5 0〜 4 0 0 °Cの場合に比較例より も好結 果となっている。
また、 図 2に示すよう に、 シヱービングを施していない線材では表 面の硬度が低下しているが、 シェービングを施した線材は断面の中心 から表面にわたってほぼ均等な硬度分布を示している。 そして、 表面 から 5 0 nmにおける平均硬度と内部の平均硬度との差がマイクロビ ッカース硬度で 5 0以内の場合に疲労強度の改善に効果的であつた。 なお、 各鋼線の引張強度は次の通りであった。
シェービングありの線材 : 2 1 3 0 N /mm2
シェ一ビングなしの線材 : 2 1 1 0 N Zmm2
比較例 : 1 9 0 0 N /mm2
(試験例 1 一 2 )
次に、 表 1 に示す化学成分の鋼種について試験例 1 一 1 と同様に真 空溶解でメルトにした後、 試験例 1 と同様の工程で鍛造, 圧延, シェ —ビング, 伸線, 歪み取り焼鈍 ( 3 5 0 °C X 2 0分) を行った。
表 1
そして、 これらの鋼線について耐熱性の評価と回転曲げ疲労試験と を行った。 耐熱性は 7 0 0 MPa の捻じり応力, 1 5 0 °C, 1時間保持
後のへたり量として残留剪断歪を求めることで評価した。 具体的な評 価基準は、 残留剪断歪が従来のピアノ線 (試験例 1 一 1の比較例と同 等の鋼線) の 1 / 2以下となる 0. 0 7 5 %以下、 疲労限界振幅が従 来のピアノ線に対し 2 0 %以上の向上を示す 5 5 OMPa 以上である。 評価結果を図 3に示す。
図 3に示すように、 Cの含有量が多い試料番号 I-5, S i の含有量 が多い同 2-4, M oが多い同 3 - 2 はパテンティ ングでマルテンサイ ト が発生したか表面傷が多発したため、 鋼線として不十分であった。 ま た、 Cの含有量が少ない試料番号 1-1, S i の含有量が少ない同 2-1 は疲労強度, 耐熱性の点で不十分であることがわかる。 これに対し、 試料番号 1-2~1_4, 2-2, 2-3, 3-1 はいずれも疲労強度と耐熱性につい て好結果である。 特に M οを適量添加した試料番号 3-1 は高い疲労 強度と耐熱性を示している。 .
(試験例 1 一 3 )
試験例 1 — 1で用いた 1 1讓線材を用いて試験例 1 と同様の工程 で 4 mmの鋼線を得た。 ただし、 パテンティ ング時のァ化から恒温変 態するまでの冷却速度を変化させて、 それぞれの金属組織とばね特性 (疲労限界振幅応力と残留剪断歪) の関係を評価した。
<金属組織とばね特性の関係 >
セメ ンタイ ト形状 {厚さ t ( m) , 長さ L ( m) } L / t と粒 界フェライ ト量 (vol. %) の違いによるばね特性評価の結果を図 4 のグラフに示す。 なお、 このグラフの評価基準は表 2に示す通りであ る。
表 2
図 4のグラフから明らかなように、 セメ ンタイ ト形状が L / t ≥ 5 で、 粒界フ二ライ ト量《が≤ 5の場合に良好なばね特性を示すことが わかる。 なお、 L Z t ≥ 5 となるセメ ンタイ ト比率が 8 0 %以上であ ると、 ばね特性、 特にへたりで安定性が増す。
<製造条件と組織の関係 >
前記表 1 における試料番号 1- 2~1- 4, 2- 2, 2- 3, 3- 1 の 6鋼種を用い て、 下記の式により求められる丁とァ化加熱後の冷却速度 Vの違いが 組織に与える影響について調べた。 各試料の Tを表 3に、 試験結果を 図 5のグラフに示す。
表 3 試料
番号 T
1-2 一 0. 8 2
1-3 0. 9 2
1-4 1. 4 9
2-2 0. 2 9
2-3 - 0. 7 3
3-1 一 0. 1 3
図 5のグラフから明らかなよう に、 V≥— 5 0 + 2 7 5を満たす条 件において良好な組織が得られているこ とがわかる。
(試験例 2 - 1 )
表 4に示す化学成分の材料に 「圧延—パテンティ ング—伸線—熱処 理 (歪み取り焼鈍) 」 を施し、 5 瞧 0の鋼線を得た。 この工程におい て、 圧延における線材径は 1 2 、 3 mm 0、 パテンティ ング条件は加熱 温度 : 9 5 0 °C , 変態温度 : 5 6 0 °C、 伸線における最終径は 5 mm 0 . 熱処理は 3 5 0 °C X 2 0分である。
表 4
mas s %
さらに、 この伸線は真歪 0 . 1 〜 0 . 2 5の範囲とし、 加工中の線 材の捻じれは鋼線 1 0 0 mm当り 1 0 ° 以内で、 7 mm øまで伸線した ところで伸線方向を入れ替えて加工を行った。
捻じれ量の測定は、 例えば伸線ダイスの直前に取り付けられた捻じ れセンサを用いる。 この捻じれセンサは鋼線のねじれに合わせて回転 する球状のコロを具え、 コ口の回転から走行線と直角方向の単位時間 当りの変位を検出し、 そこから鋼線 1 0 0 mm当りの変位を求めてね じれ量を算出する。
そして、 得られた鋼線について、 1 5 0 , 2 0 0 , 2 5 0 °Cの各々 の温度で 6 0 0 M P aの応力を 2 4時間負荷し、 へたり特性として残 留せん断歪を求めた。 伸線加工後、 耐熱へたり評価を行うために伸直
加工および [型の曲げ加工を行った。 図 1 8に示すように、 [型の試 験材料の一端 A , 屈曲点 Bおよび屈曲点 Cを固定し、 他端 Dを角度 0 分持ち上げて D ' の位置で保持し、 鋼線の B— C間に所定の捻り応力 を加える。 この状態に治具で固定した試験材料を炉内に入れ、 所定の 温度に加熱して所定時間保持した後、 室温で治具を外して残留せん断 歪を求める。 [型の試験材料に捻りを与えて治具で固定する前に 3 5 0 °C X 2 0分の歪取り焼鈍を行った。 なお、 比較のため一般的な 0 T 線の評価も同様に行った。 その結果を図 6に示す。
グラフから明らかなように、 実施例 1 は 2 5 0 °Cまでにおいて 0 T 線とほぼ同等の耐熱性を有していることがわかる。 これに対して S i 量の少ない比較例 1 は残留せん断歪が大き く、 高温における耐へたり 性が劣つている。
(試験例 2 — 2 )
上記 「実施例 1 」 について、 伸線および熱処理条件を試験例 2 - 1 の条件から外して行い、 得られた鋼線 (比較例 2 ) と前記実施例 1 に つしヽて T E M (Transm i ss ion E lectron M i croscope) (こよる組織観察 (倍率 2 0万倍) を行った。 実施例 1の組織写真を図 7 に、 比較例 2 の組織写真を図 8に示す。 各図において、 幅の広い白つぼい層がフニ ライ 卜で、 幅の狭い黒つぼい層がセメ ンタイ ト層であり、 各層が交互 に並んでいる。 ここで、 比較例 2には、 主にフヱライ 卜とセメ ンタイ トとの界面に円弧状の歪みが見られるが、 実施例 1にはこのような歪 みがないことがわかる。 また、 実施例 1 におけるセメ ンタイ 卜層の厚 さは 5 〜 2 0 n m程度であった。 なお、 T E M観察用の試料は数百 mの厚さにスライスして研磨した後、 最終的に電解研磨して薄膜化し たものを用いた。 イオンスパッタ リ ング残さの抽出などは組織の変化 の心配があるため行わなかつた。
次に、 実施例 1 , 比較例 2 , 0 T線の耐熱性を評価した結果を図 9 に示す。 耐熱性は 3 O O MP aの捻じり応力を 2 4時間負荷したとき の残留せん断歪を求めることで評価した。 図 9に示すように、 実施例 1は 0 T線と同等の耐熱性を有しているのに対し、 伸線条件が異なる 比較例 2は耐熱性が劣っている。
(試験例 2 - 3 )
さ らに、 前記実施例 1 のセメ ンタイ 卜の形態を表す模式図を図 1 0 に、 顕微鏡写真 (倍率 5 0 0万倍) を図 1 1 に示す。 図 1 0に示すよ うに、 この鋼線はフェライ ト 1 とセメ ンタイ ト 2が交互に積層された 組織を持ち、 このセメ ンタイ ト層の断面を拡大して示すと、 楕円形の 大きい粒子 3 と、 ほぼ円形の小さい粒子 4 とがほぼ交互に配列されて いる。 図 1 1でも、 上下層にフェライ 卜があり、 その間に位置するセ メ ンタイ トは楕円形の粒子と円形の粒子がほぼ交互に並んで構成され ていることがわかる。 この写真では長さが約 6 0 n mと 5 0 n mの楕 円形の組織の間に外径約 1 5 n mの円形の組織が観察された。 また、 「実施例 1」 について、 伸線および熱処理条件を試験例 2— 1 の条件 から外した比較例 3のセメ ンタイ トの組織形態も同様に調べてみたが 1 0〜 5 0 n mの大きさのセメ ンタイ 卜がランダムに並んでおり、 実 施例 1のような組織配列の規則性は見いだされなかった。
次に、 実施例 1 , 比較例 3 , 0 T線の耐熱性を評価した結果を図 1 2に示す。 耐熱性は 7 0 0 MP aの捻じり応力を 2 4時間負荷したと きの残留せん断歪を求めることで評価した。 図 7に示すように、 実施 例 1 は O T線と同等の耐熱性を有しているのに対し、 伸線条件が異な る比較例 2は耐熱性が劣っている。
(試験例 2 - 4 )
表 5に示す化学成分の材料から試験例 2 — 1 と同様の工程により鋼
線を得た。 ただし、 熱処理条件は 4 0 0 °C x 2 0分とした。 また、 こ こでの比較対象は試験例 2 — 1 における比較例 1 とした。 得られた鋼 線に 2 0 0 °Cで 7 0 O M P aの捻じり応力を 2 4時間負荷したときの 残留せん断応力を求めて耐熱性評価を行った。 試験結果を図 1 3に示 す。 このグラフに示すように、 実施例 1 〜 5はいずれも残留せん断歪 が少なく、 耐熱性に優れていることがわかる。 特に、 V, M o , A 1 を添加した実施例 2〜 5はこれらを添加しないものに比べてより耐熱 性に優れている。
表 5
mas s % 前記実施例 1〜 5について、 高分解能 T E Mにてセメ ン夕ィ 卜の形 態を確認したところ、 いずれも厚さが 5〜 2 0 n mで、 幅 5〜 2 0 n mと幅 2 0〜 1 0 0 n mのものがほぼ交互に並んでいることが確認さ れた。 ただし、 幅 5〜 2 0 n mのセメ ンタイ ト又は幅 2 0〜 1 0 O n mのセメ ンタイ トのいずれかが 3個連続して配列されている場合も認 められた。 従って、 同じサイズのセメ ンタイ 卜が 3個程度までなら連 続して配列されていても耐熱性の改善効果が認められることがわかる,
ただし、 鋼線として耐熱性に優れても靱性が劣っては実際の使用条 件に耐えられない。 また、 靭性は生産性にとっても重要な要素である, この点、 Vや M oの添加は合計で 0 . 1 5 maS S %をこえると必要な靱 性を得るのにパテンティ ングの時間が非常に長くなり、 実生産には困 難であった。 また、 A 1 を添加すると耐熱特性を維持しながら靭性も 維持できることがわかった。 例えば、 A 〗 の添加がないときには高速 伸線すると靱性が低下してしまうが、 A 1 を添加すると伸線速度を 5 0 %上げても伸線速度を上げない場合と同等の靱性を得ることができ る。
(試験例 2 - 5 )
表 6に示すように伸線条件を変えて試験例 2 — 1 と同様の工程によ り鋼線を得た。 ただし、 この場合の熱処理は 3 8 0 °C X 2 0分である c また、 加工中の捻じれは試験例 2 — 1 と同様に鋼線 1 0 0 mm当りの 捻じれ量を示している。 各方法により得られた鋼線の耐熱性を評価し た。 評価は 2 0 0。にで 5 0 0 M P aの捻じり応力を 2 4時間負荷して 残留せん断歪を測定することで行った。 また、 比較として O T線(SW0 SC) も同様に評価した。 各方法による試料数を 5 とし、 求められた残 留せん断歪の平均とばらつきとを図 1 4のグラフに示す。 いずれの方 法でも良好な結果が得られているが、 方法 1, 5による試験材がばら つきが少なく、 かつ結果が特に良好である。
表 6
(試験例 2 - 6 )
表 7に示す化学成分の材料に対し、 試験例 2 — 1 と同様の工程で処 理を行った。 その結果、 供試材 14 と 24においては鋼線を製造するェ 程、 特に铸造後において歩留りが低く、 実用的な生産に向いていない ことが判明した。 そのため、 残りの供試材 10~13, 2卜 23 について耐 熱性の評価を行つた。 評価は 1 9 0 °Cで 6 0 O M P aの捻じり応力を 2 4時間負荷して残留せん断歪を測定することで行った。 比較のため O T線(SW0SC) についても同様の評価を行った。 その結果を図 1 5に 示す。 S i の含有量の少ない供試材 21以外は好結果を示しているこ とがわかる。
表 7
mass %
(試験例 2 - 7 )
供試材 31 として C : 0. 7 9, S i : 0. 8 0 , M n : 0. 2 8m ass%を含む材料を用意し、 試験例 2 一 1 と同様の工程で伸線条件を 変えた処理を行って鋼線を得た。 得られた鋼線のセメ ンタイ トは、 図 1 0に示したように、 楕円状の長い粒子とほぼ円形の短い粒子とがほ ぼ交互に配列した形態をしていたが、 各粒子の長さは様々であつたた め、 これら長さの相違と耐熱性との関係について分析した。 図 1 0に おける楕円状の長い粒子の長さを B L, ほぼ円形の短い粒子の長さを B S とし、 2 0 0 °Cで 7 0 O M P aの捻じり応力を 2 4時間負荷して 残留せん断歪を測定することで、 各粒子の長さと耐熱性との関係を調 ベた。 その結果を図 1 6のグラフに示す。 ここで、 「良好」 とは残留 せん断歪が 0 T線(SW0SC) 並の 0. 0 6 %以下であることとした。 こ のグラフに見られるように概ね 2 0≤ B L≤ 1 0 0 n m, 5 ≤ B S≤
2 0 n mの範囲が良好な結果であることがわかる。
ただし、 2 0≤ B L≤ 1 0 0 n m, 5 B S≤ 2 0 n mの範囲内で あっても結果が 「やや不良」 のものも存在したため、 さらに詳細にセ メ ンタイ ト組織の分析を行った。 分析は、 図 1 7に示すように、 セメ ンタイ 卜の幅が 2 0 1 0 0 n mの大きさの粒子 3の厚さを A 1 とし、 隣接する小さいセメ ンタイ ト粒子 4が接触する厚さ方向の長さ A 2 と したときに、 これらの比率がどのような関係にあるかで評価した。 そ の結果、 0. 3く A 2 ZA 1 く 0. 9 5の場合に結果が 「良好」 で、 それ以外の場合に結果が 「やや不良」 であることがわかった。
(試験例 3 - 1 )
表 8に示す化学成分のばね用鋼線を試作して特性評価を行った。 試 作工程は、 まず上記成分の鋼種を真空溶解炉にて溶解 · 铸造し、 鍛 造 · 圧延を熱間で行い、 1 l mm0の線材を得た。 この線材のう ち、 供 試材 1-1 には表面のシェービングを行わず、 他の供試材には表面の シヱ一ビングを行った。 1 1 0の線材をパテンティ ング処理してパ —ライ ト組織を得た。 パテンティ ング条件はいずれも 9 5 0 9 8 0 °Cに加熱し、 5 8 0 °Cの鉛浴中で処理することとした。 パ一ライ ト 変態に要した時間は、 供試材 1-1, 1-2, 1-4 は約 1 5秒であつたのに 対し、 供試材 1 - 3 1-5 は 3 0 6 0秒と非常に時間がかかり、 生産 性に劣ることがわかった。 以上の処理を行った後、 6mmまで伸線加 ェを行い、 ばね用鋼線を得た。 伸線加工に用いたダイスは、 ダイス 角 : 1 0 8度、 ベアリ ング長 : d / 4 d Z 5 ( dはダイス径) で ある。
表 8
mass % 伸線加工後、 耐熱へたり評価を行うために伸直加工および [型の曲 げ加工を行った。 図 1 8に示すように、 [型の試験材料の一端 A, 屈 曲点 Bおよび屈曲点 Cを固定し、 他端 Dを角度 0分持ち上げて D' の 位置で保持し、 鋼線の B— C間に所定の捻り応力を加える。 この状態 に治具で固定した試験材料を炉内に入れ、 所定の温度に加熱して所定 時間保持した後、 室温で治具を外して残留せん断歪を求める。 なお、 [型の試験材料に捻りを与えて治具で固定する前に 3 5 0 °C X 2 0分 の歪取り焼鈍を行った。
低応力—短時間の例として、 捻り応力 : 3 0 0 MP a , 保持時間 : 2 4時間における試験結果を図 1 9に、 高応力一短時間の例として、 捻り応力 : 6 0 0 MP a , 保持時間 : 2 4時間における試験結果を図 2 0に、 高応力—長時間の例として、 捻り応力 : 6 0 0 MP a , 保持 温度 : 2 0 0 °Cにおける試験結果を図 2 1 に示す。
いずれの場合も従来のピアノ線である供試材 1-2 が耐熱性に劣り、 それ以外は耐熱性がほぼ同等であることがわかる。 特に、 高温, 高応 力になるほど供試材 1 - 2 とそれ以外の供試材との評価結果に大きな 差が見られる。
次に、 遅れ破壊特性の評価を行った。 図 1 8に示すように捻りを加 えた試験材料を 5 0 °C, 2 0 %チォシアン酸アンモニゥム液中に浸漬 し、 破断するまでの時間を測定する。 捻り応力は 2 0 0 MP a と 4 0
0 M P aの 2種類とした。 その結果を図 2 2に示す。 供試材 1 - 4, 1-5 が早期に遅れ破壊するのに対し、 それ以外の供試材は破断までの時 間が長く遅れ破壊特性に優れていることがわかる。 なお、 同条件で S
1 — C r鋼オイルテンパ一線についても耐熱性を評価したところ、 い ずれの捻り応力でも破断までの時間は 3 0分以内であった。
以上の試験結果から各供試材と前述の式 4, 式 5 との関係を求め、 併せて生産性 (パテンティ ング時間) との関係を表 9にまとめた。 表 9
〇 : 式を満足 X : 式を満足しない
△: 式を満足する場合としない場合がある
これらの結果から、 実施例である供試材 1 - 1 が耐熱性, 遅れ破壊 特性, 生産性に優れ、 供試材 1-3, 1-5 は生産性に劣り、 供試材 1 - 2 は耐熱性に劣り、 供試材 1-4, 1-5 は遅れ破壊特性に劣ることがわか る。
得られた鋼線のうち、 供試材 1-1 について硬度と組成分布の分析
も行った。 その結果、 鋼線の直径を Dとしたとき、 鋼線表面から DZ 4におけるピツカ一ス硬度のばらつきは平均値の 1 5 %以内に最大値 と最小値が含まれていた。 また、 フェライ ト相におけるセメ ンタイ ト 相との界面から 5 ηπιの範囲における S i 量はフェライ ト相における S i の平均含有量の 1. 6倍以下であつた。 これによりフヱライ トと セメ ンタイ ト界面の歪が緩和されやすく、 耐熱性を確保しやすいと推 測される。
さらに、 それぞれの材料を実際にばねに成形し、 式 4, 式 5の特性 に実用上の有効性が認められるかどうかを評価した。
まず、 耐熱性試験として、 2 0 0 °C近傍の耐熱性を調べるため、 1 8 0 °C, 2 0 0 °C , 2 2 0 °Cで各々捻り応力 0 と 5 0 0 M P aを 1 0 0回繰り返し負荷し、 負荷後の残留せん断歪を測定した。 この歪が 0. 0 5 %以下であれば良好と判断する評価を行ったところ、 供試材 1 - 1, 1-3 のみがこの基準を満足し、 式 4の妥当性が確認された。
次に、 耐食性を目的として一般的なカチオン塗装をばねに行い、 そ の後、 6 0 0 MP aの圧縮力をばねに負荷して保持した。 その結果、 供試材 1-4, 1-5 は 2 0 0時間以内に折損したが、 供試材 1-1, 1-2, 1-3 は 2 0 0時間保持しても折損せず、 遅れ破壊にも優れることが確認 され、 式 5の妥当性が確認された。
(試験例 3 - 2 )
前記供試材 1-1 の N i 量を変えて耐熱性と遅れ破壊特性とを評価 した。 ここでの供試材の化学成分を表 1 0に示す。
表 1 o
mass % 耐熱性の評価は、 試験例 3— 1で説明した耐熱へたり試験による残 留せん断応力の測定により行い、 その条件は捻り応力 : 6 0 0 MP a , 温度 : 2 0 0 °C , 時間 : 1 1 0 , 1 0 0時間である。 また、 遅れ破 壊試験も試験例 1の遅れ破壊試験と同じ試験法で行い、 負荷応力は 2 O O MP a と 4 0 0 MP aの 2種類とした。 耐熱性試験結果を図 2 3 に、 遅れ破壊特性の試験結果を図 2 4に示す。
N i 量の極端に少ない供試材 2- 5 は遅れ破壊特性に劣り、 かつ残 留せん断歪が大き く耐熱性も劣っている。 また、 N i 量の多い供試材 2-3, 2-4 は遅れ破壊特性に優れる。 しかし、 供試材 2- 3 と 2-4 の特 性差はほとんどなく、 供試材 2 - 4 は高価になることから供試材 2-3 の N i量で十分良好であることがわかる。 供試材 2 - 1 2-2 2- 3 は耐 熱性, 遅れ破壊特性、 さらには価格的にもバランス良く優れている。
(試験例 3 - 3 )
供試材 1-1 の成分の材料に試験例 3— 1 と同様のパテンティ ング を行った後、 加工度が 6 0 9 4 %の伸線加工と、 温度が 2 5 0 4 5 0 °Cの歪取り焼鈍とを組み合わせて鋼線を作製し、 焼鈍後の鋼線の
パーライ 卜組織におけるフニライ 卜の格子歪の測定を行った。 測定は X線を利用し、 willson 法により解析した。 測定試料の表面は多くの 誤差を含むため、 縦断面を測定対象とし、 縦断面をラッ ビングした後 電解研磨で 5 0 m以上研磨してラッビングの歪を十分に除去した。
また、 併せて試験材料の耐熱へたり性と遅れ破壊特性も調べた。 耐 熱へたり特性は 6 0 0 M P a , 2 0 0 °C, 2 4時間の条件で残留せん 断歪を測定し、 遅れ破壊特性の捻り応力は 3 O O MP a とした。 この ようにして測定した格子歪の測定値と耐熱性および遅れ破壊特性との 関係を図 2 5のグラフに示す。 このグラフに示すように、 残留せん断 歪 : 0. 0 5 %以下、 遅れ破壊特性 : 8時間以上の両方を満足する格 子歪は 0. 0 5〜 0. 2 %であることがわかる。
(試験例 3 - 4 )
供試材 1-1 の成分をベースとして T i , Vを添加した材料につい ても試験例 3— 1 と同様の工程で試験材料を試作し、 その耐熱性と遅 れ破壊特性とを評価した。 試験材料の化学成分は C : 0. 8 2 , S i : 1. 0 , M n : 0. 8 , C r : 0. 1 , i , 0. 1 , T i : 0 〜 0. 1 5, V : 0〜 0. 1 5 mass%とした。 耐熱性と遅れ破壊特性 (捻り応力 : 3 0 0 MP a ) の評価方法も試験例 3— 1 と同様である, その結果、 耐熱性では T iや Vの添加の有無に関係なく大きな差異 は認められなかった。 一方、 遅れ破壊特性は、 図 2 6に示すように、 T i および Vの少なく とも一方の添加によって遅れ破壊特性が向上す ることがわかる。 ただし、 0. 1 5 nmSS%を越えて添加すると伸線加 ェ性および伸線後の靱性が低下してばね用鋼線として実用性が低くな るこ とが認められた。
(試験例 4一 1 )
表 1 1の成分 (単位は全て masS%) の供試材を溶解 · 铸造後、 熱 間铸造, 熱間圧延し、 その後下引伸線加工を施してパテンティ ング処 理した。 さらに冷間細径加工熱処理を行なって鋼線を製造した。 得ら れた鋼線を疲労試験に供し、 さらに X線回折で格子歪の測定を行なつ た。 格子歪の求め方は前述した手法とした (後述する試験例 1 6〜 1 8においても同じ) 。
表 1 1
各工程でのサイズは、 熱間圧延後が 5. 5 mm, 下引伸線後が 3. 6 mm øである。 また、 ノ、0テンティ ングは 5 7 0 + ( S i % X 3 0 ) と した。 さらに、 冷間加工は穴ダイスによる引抜加工で行なった。 開発 材, 比較材の伸線加工条件は、 ダイスアプローチ角度は 8 ° 、 1加工 あたりの減面率は 1 8〜 1 5 %とした。 また、 伸線速度は 1 0 mZ分 以下で単釜で伸線し、 さらにダイス出口から釜へ接触するまでの引抜 方向はダイス穴の中心軸から 0. 5 ° 以内に制御した。 この伸線加工 により 3. 6 mm0力、ら 1 . 6隱 0まで加工した後、 伸直加工して熱処 理を行なった。 この熱処理は 3 5 0〜 4 5 0 °C X 2 0分の範囲で実施 した。 開発材と比較材とは、 化学成分を除き製造条件は同一である。 一方、 従来材における伸線加工は、 アプローチ角 1 1 ° 、 1加工当 りの減面率 2 0〜 1 7 %、 伸線速度 3 0〜 5 0 0 m/分の中から選択
し、 引抜方向は同角度を約 1 ° とした (線くせをつけるため) 。 また- 伸線後の熱処理条件は 3 0 0〜 3 5 0 °C X 2 0分である。
上記方法によって得られた供試材でハンタ一式回転曲げ疲労試験を 行い、 疲労強度を求めると共に X線回折による格子定数, 格子歪を求 めた。 伸線後と熱処理後の各々における格子定数と格子歪は表 1 2の 通りである。
表 1 2
この結果を疲労特性の結果と併せて図 2 7のグラフに示す。 このグ ラフから明らかなように、 本発明鋼線である開発材 1 , 2は格子定数 を a としたとき、 0. 0 0 1 X a ≤ A a
LS≤ 0. 0 0 2 x aの範囲に おいて疲労限が高く、 疲労特性に優れていることがわかる。 これに対 して、 従来材, 比較材 1 , 2は疲労特性が劣る。 これらのことから、 ①熱処理前、 すなわち冷間加工後において、 格子歪が 0. 0 0 2 5 a 〜 0. 0 0 4 5 aの範囲に入ればよいこ と、 ②熱処理後において、 格 子歪が 0. 0 0 1 a〜 0. 0 0 2 aの範囲に入ればよいことは明らか である。
(試験例 4 一 2 )
開発材 1を 1. 6讓 0に伸線加工するところまで試験例 4一 1 と同 様に行った後、 コイルばねに加工し、 疲労試験を行なった。 コィ リ ン
グ加工後の熱処理条件を 3 0 0 °C〜 4 5 0 °Cまで変えたところ、 残留 応力は引張で 2 8 0 MP a〜圧縮で 3 0 MP aまでそれぞれ変化した, 各熱処理条件で得られたばねを星型疲労試験機で疲労試験をした結果 を図 2 8のグラフに示す。 その結果、 格子定数を a としたとき、 0. 0 0 1 X a ≤ Δ a LS≤ 0. 0 0 2 x aの範囲において、 引張で 1 0 0 M P a以下もしく は圧縮の残留応力のとき特に高い疲労限を示した。
(試験例 4 一 3 )
開発材 1の成分の鋼種を 1 1 . 5 0に圧延し、 その直後沸騰水中 で冷却してパーライ ト変態を行なった。 この線材を 4. 2 2mm0 と 4. 3 5 mm øに伸線加工し、 4. 3 5 mm øの鋼線を中心線、 4. 2 2 mm ø の鋼線を側線 ( 6束) としてより線加工した。 より線後、 3 5 0〜 4 5 0 °Cの範囲で熱処理し、 降伏点を上昇させて P C鋼より線とした。 なお、 沸騰水冷却でなくても、 鉛, ソル ト, ミ ス ト, 強風などで冷却 しても同様の効果が得られる可能性があることは容易に推測できる。 伸線加工条件はサイズ以外は基本的には試験例 4 1 の条件と同じ とした。 この様にして得た P C鋼より線の引張疲労試験を行なつた。 疲労試験は 8 6. 4 kg/mm2を m a x荷重として破断までの全振幅荷 重の大きさ ( σΑ ) を調べた。 破断寿命は 2 0 0万回とした。 また、 試験例 4 一 1 と同様に格子定数と格子歪も求めた。 その結果を図 2 9 に示す。
ここでも格子定数を a としたとき、 0. 0 0 1 X a ≤ Δ a LS≤ 0. 0 0 2 x aの範囲において全振幅荷重 ( σΑ ) が大きく、 疲労特性に 優れていることがわかる。
(試験例 4 一 4 )
開発材 1の成分において 3. 6 5 øでパテンティ ング後、 伸線加 ェ度および伸線後の熱処理条件を変化させてそれぞれの疲労強度を調
ベた。 線径 (加工度) 以外は疲労試験条件, 伸線加工条件および熱処 理条件共に試験例 4 一 1 と同じである。 伸線加工後と熱処理後の各格 子定数を a , a 2 、 格子歪をそれぞれ Δ a 、 Δ a LS2 として疲 労特性との関係を図 3 0に示す。
このグラフから明らかなように、 伸線加工後の格子定数を a とし たとき、 格子歪 Δ a LS1 が 0. 0 0 2 5 X a i ≤ Δ a LS1 ≤ 0. 0 0 4 5 x a ! の範囲で、 熱処理後の鋼線の格子定数を a 2 としたとき、 格子歪 Δ a LS2 力、' 0. 0 0 1 Xa2 ≤ Δ a LS2 ≤ 0. 0 0 2 x a 2 の 範囲内のとき、 高い疲労特性を具えていることがわかる。 産業上の利用可能性
以上説明したように、 本発明鋼線は高い耐熱性または疲労強度を具 えており、 ばね用鋼線、 P C鋼より線、 コン ト口一ルケ一ブル、 スチ —ルコ一 ド、 ノ、。ラレルワイヤなどに利用することができる。 特に、 ば ね用鋼線としては、 自動車エンジンの弁ばね用として最適である。