明 細 書 磁気マ一力一 技術分野
本発明は、 電子物品監視装置に使用される磁気マーカーに関するものである。 背景技術
商品の盗難を防止するために、 電子物品監視装置を使用する例が近年数多く見 られるようになってきている。 これらの装置は、 対象とする物品に特殊なマ一力
—を貼付し、 これらが発生する信号をたよりに物品の有無を識別する。 方式とし てはいくつかの種類があり、 大きく分けると、 特殊な軟磁性材料の磁化過程を利 用するもの、 L C共振回路のィンピーダンスが特定周波数で急峻に変化すること を利用するもの、 発振回路により特殊な電波を放射するものなどがある。
これらの內でも、 磁気式はマーカーを安価に供給できることから、 近年盛んに 用いられており、 磁歪振動を利用するものとヒステリシス特性を利用するものに 大別される。
ヒステリシス特性を利用した磁気マーカ一およびシステムの詳細は、 例えば、 特公平 3— 2 7 9 5 8号公報に開示されている。 同文献によると、 磁気マ一力一 として F e基の非晶質金属細線を含むものが使用される。 検知用システムは物品 を監視する区域に設置され、 励磁コイルから問い合わせ信号として例えば 7 3 Hz の交番磁界が発振される。 それにより磁気マ一カーに含まれる金属細線が磁化反 転すると、 検知コイルに誘導電圧が発生し、 これを検知信号として識別する。 上 記の金属細線材料は長手方向の磁化が非常に安定で、 磁化の反転は磁界がある臨 界値に達した瞬間に一斉に起こり瞬間的に終了する特徴がある。 この性質は双安 定的であり、 しばしば大バルクハウゼン反転とも呼ばれる。 このような材料は、 大振幅励磁したときのヒステリシスループに不連続で非常に急激な磁化のステツ プが観察されることから、 それと判別することができる。 マーカ一内でこのよう な急激な磁化反転が起こると、 検知コイルには非常に鋭いパルス電圧が誘導され
る。 誘導された電圧波形は、 極めて特殊であるため、 他の一般的な磁性材料、 例 えば買レ、物かごの鉄板などとは容易に区別することができる。上記システムでは、 誘導された電圧の波形の周波数解析をし、 高次の高調波の強度やその発生タイミ ングなどからマーカーの有無を判別し、 警報の発生が必要であるかどうかを判断 する。
また、 ヒステリシス特性を利用した別の形式の磁気マ一カーとシステムが、 特 公平 3— 5 5 8 7 3号公報において開示されている。 このシステムでは、 C o基 非晶質金属薄帯などを含む磁気マーカーが使用される。 これらは、 いわゆる高透 磁率材料として知られているもので、 磁歪ゃ結晶磁気異方性が小さいために低保 磁力であり非常に磁化されやすいものである。 これらの材料を大振幅で励磁する と、 非常に幅が狭く連続的に変化するヒステリシスループが観察される。 磁気マ —力一に含まれるこれらの材料の長さが十分長ければ、 ヒステリシスループの磁 化の立ち上がりは急なものになる。 これは、 監視システム内で磁化変化が急激に 起こることを示している。 同システムも、 特公平 3— 2 7 9 5 8号公報と同じよ うに、 監視区域に励磁コイルから交流磁界が放射され、 検知コイルに誘導された 電圧が信号として捉えられる。 この時に印加される交流磁界は、 例えば 2 5 Hz、 1 . 5 kHz, 2 . 5 kHzの複数の周波数が組み合わされたものが使用される。 磁気マ —力一に含まれる高透磁率材料が磁化されると、 1 . 5 kHzと 2 . 5 kHzの和あるい は差の周波数成分を含むパルス電圧が検知コイルに誘導される。 そこで、 例えば 1 . 5と 2 . 5を加えた 4 kHz の周波数を有する電圧信号の強度が予め決められて いる値以上であれば、 磁気マ一力一が存在すると判定される。 さらに、 このシス テムでは 2 5 Hzの低周波磁界が重畳されており、この磁界は 2 5 Hzでマーカ一を 磁気飽和させるために、先ほどの和あるいは差の混周波信号は 2 5 Hz磁界の零ク ロス点でしか発生しない。 従って、 混周波信号の発生と 2 5 Hz磁界の位相を照合 することで、 システムの感度を保証できる。
以上のような磁気式の電子物品監視システムでは、 これまで、 それぞれの形式 に専用の磁気マーカーが使用されていた。 すなわち、 特公平 3— 2 7 9 5 8号公 報に代表されるシステムでは、 大バルクハウゼン反転を示す F e系の非晶質金属 細線が用いられ、 特公平 3— 5 5 8 7 3号公報では高透磁率材料である C o基非
晶質金属薄帯が専ら利用されていた。
し力 し、 このようにそれぞれのシステムで専用のマーカ一を利用していること は、 これらのシステムの応用を狭める結果をもたらしていた。 最近では、 物品監 視用のマーカーを製品の製造段階で貼付することが望まれている。 これは、 工場 貼着あるいはソースタギングと呼ばれる考え方であり、 予め製品に監視用のマー 力一が備わった状態で流通するために、 改めて店舗で貼着する必要がなく、 管理 コストを下げることができる。 し力 し、 複数の形式の磁気式システムで異なる磁 気マ一カーが存在し、 またそれぞれのシステムでは形式の異なるマーカ一を感知 できないことは、 磁気式マーカ一の工場貼着の普及を妨げていた。
そこで、 異なる磁気式の電子物品監視システムに利用しても、 それぞれのシス テムで十分に感度のよレ、磁気マ一力一が得られれば、 磁気式システムの工場貼着 を大いに進めることができる。 特に、 特公平 3— 2 7 9 5 8号公報に代表される いわゆる大バルクハウゼン型のシステムと、 特公平 3— 5 5 8 7 3号公報に代表 されるいわゆる高透磁率型のシステムの両方で感度よく使用できることが望まし い。
本発明の目的は、 特に、 いわゆる大バルクハウゼン型のシステムと、 いわゆる 高透磁率型のシステムの両方で感度よく使用できる小型の磁気マーカ一を提供す ることである。 発明の開示
本発明者らは、 磁気マーカ一を構成する軟磁性材料として、 磁気特性が注意深 く限定されたものを使用することにより、 上記課題を達成できることを見出し、 本発明に到達した。
本発明に係る磁気マーカ一は、 急峻な磁化反転を示し得る軟磁性材料を含んだ 長さが 7 0議以下の磁気マ一力一であって、 この軟磁性材料は、 外部から 0 . 2
Oe以下の大きさの交番磁界が印加されると、 8 . 0 X 1 0一9 Wb以上の磁束変化量 で急峻な磁化反転を発生する。
好ましくは、 磁気マ一力一において、 上記軟磁性材料が急峻な磁化反転を発生 する磁界強度の変動が 0 . 1 0e以下である。
好ましくは、 磁気マーカ一において、 急峻な磁化反転に伴って周囲に放射され る磁束変化量は 8 . 0 X 1 0一9 Wb以上である。
好ましくは、 磁気マーカーにおいて、 前記の軟磁性材料は、 1 . 5 0e の振幅の 正弦波磁界を 7 3 Hzの周波数で印加した場合、 1 . 5 kHzの信号強度と 3 . 5 kHz の信号強度の差が一 3 dBmよりも小さい。
磁気マーカーにおいて、 たとえば、 前記の軟磁性材料は、 細線である。
また、 磁気マ一カーにおいて、 たとえば、 前記の軟磁性材料は、 薄帯である。 また、 磁気マーカーにおいて、 たとえば、 前記の軟磁性材料は、 薄膜である。 また、 たとえば、磁気マ一カーにおいて、 2種の軟磁性材料が密着配置される。 また、 たとえば、 磁気マーカーにおいて、 細線または薄膜の軟磁性材料が薄膜 の軟磁性材料の上に配置される。
また、 磁気マ一カーにおいて、 軟磁性材料の近傍に軟磁性材料よりも保磁力の 大きな硬磁性材料が配置される。
さらに説明すると、 本発明に係る磁気マーカーは、 その長さが 7 O ram以下の小 型の磁気マ一カーである。 この磁気マ一カーはその中に軟磁性材料を含み、 この 軟磁性材料は外部から交番磁界が印加されるとその磁界強度がある臨界値を超え ると急峻な磁化反転を示し得る特徴を有している。 好ましくは、 軟磁性材料が磁 化反転する磁界の大きさは、 0 . 2 0e以下であり、 かつ臨界磁界の変動は 0 . 1 0e 以下であり、 その急峻な磁化反転に伴って周囲に放射される磁束変化量は 8 . 0 X 1 0— 9Wb以上である。このように磁気特性が注意深く限定された軟磁性材料か らなる本発明の磁気マ一力一は、 特に、 特公平 3— 2 7 9 5 8号公報に代表され るいわゆる大バルクハウゼン型のシステムと、 特公平 3— 5 5 8 7 3号公報に代 表されるいわゆる高透磁率型のシステムの両方で感度よく使用できる。
本発明の磁気マーカーは、 小さな磁界の印加で急峻な磁化反転を示し得る軟磁 性材料を包含しているものであるので、 大バルクハウゼン効果素子を利用したシ ステムや高透磁率素子を利用したシステムなど、 複数の電子式盗難防止システム で好適に利用できる。 図面の簡単な説明
図 1 A〜図 1 Fは、 各種磁気センサーの図式的な平面図である。
図 2は、 監視ゲ一トの空間の斜視図である。
図 3は、 磁気センサの 3種の空間位置を示す斜視図である。 発明を実施するための最良の形態
次に、 本発明の実施の形態について、 添付の図面を参照して説明する。
まず、 磁気マーカ一を構成する軟磁性材料の磁気特性などの限定について説明 する。 本発明の磁気マ一力一は工場貼着に適応可能なように、 その長さは 7 O mm 以下で小型である。 この長さは好ましくは 5 O mra以下であり、 2 5讓以下であれ ばなお好ましい。 下限は特に限定されないが、 磁性体の反磁界が強くなるため
1 O mm以下とするのは実際上好ましくない。
本発明の磁気マーカ一は、 外部から交番磁界が印加された時、 その磁界強度が ある臨界値を超えると急峻な磁化反転を示し得る軟磁性材料を含む。 ここで、 急 峻な磁化反転とは、 極めて短時間あるいは極めて微少な磁界変化の間に軟磁性材 料の磁化の方向が変わることを意味している。 このような材料では、 磁気ヒステ リス曲線を観測すると、 ステップ状の変化域が観察される。 このようなステップ 状の磁化反転特性は、 材料がさらされる励磁磁界の最大強度に影響を受ける特徴 がある。 例えば、 一般に大バルクハウゼン反転材料と呼ばれている材料は、 ある 臨界強度の磁界を印加されると急峻な磁化反転を起こし、 ヒステリシス曲線にス テツプ状の変化を示すが、 それ以下の磁界では全く磁化が反転せずヒステリシス を示さない。 その他のものとして、 比較的小さな磁界から磁化反転は始めるもの のその変化はなだらかで連続的なヒステリシス曲線を示すが、 臨界強度以上の磁 界になると急峻に磁化反転してヒステリシス曲線にステツプ状の変化を示す材料 もある。 いずれの場合でも、 臨界磁界以上では急峻な磁化反転をするために、 本 発明の磁気マ一力に利用することができる。
磁化反転の急峻さは、 例えば、 磁性材料の磁化反転に伴って周囲に放射される 磁気パルスを周波数解析することによって評価することができる。 すなわち、 磁 性材料が磁化反転すると周囲には磁界が 2次放射される。 磁化反転が急激であれ ばこの放射磁界は瞬間的に変化する。 磁性材料の近傍にコイルを配置すると、 コ
ィルには電圧パルスが誘導される。 この電圧パルス信号の周波数スぺク トルを解 折し、 各周波数における信号強度、 さらにはその強度比を比較することで磁性体 の磁化反転の急峻さを評価できる。 すなわち、 より高周波数の信号の強度が強い ほどに磁化反転が急峻であると判断できる。 これらの信号の強度は、 例えば励磁 周波数と同じ周波数の信号強度に対する各周波数の信号強度の比で規格化する方 法によって、 測定装置の仕様や磁性体の大きさなどの影響を抑えた一般ィヒした形 で評価できる。 また、 基本周波数よりも十分高い 2つの周波数の信号の強度比を 用いる方法は、 磁界の急峻さをより簡便に評価できる方法である。 例えば、 1 . 5 Oeの振幅の正弦波磁界を 7 3 Hzの周波数で磁性材料に印加した場合、
1 . 5 kHzの信号強度と 3 . 5 kHzの信号強度の差によつて磁化反転の急峻さを評 価できる。 例えば、 一 3 dBm よりも小さいと、 極めて急峻な磁ィヒ反転が起こって いると判断でき、 本発明には好適に用いることができる。 もちろん、 この差は小 さいほど好適であって、 一 2 dBm以下であればさらに好ましレ、。
本発明の磁気マ一力一は、 外部から交番磁界が印加された時、 その磁界強度が ある臨界値を超えると急峻な磁化反転を示し得る軟磁性材料を含み、 いわゆる大 バルクハウゼン型のシステム、および、いわゆる高透磁率型のシステムにおいて、 十分高い感度を有する。上記軟磁性材料は、 7 3 Hzの交番磁界が印加されると 0 . 2 Oe以下の磁界強度で急峻な磁化反転を示し、 その磁界強度は 0 . 1 5 0e以下で あれば好ましく、 0 . 1 Oe 以下であればさらに好ましい。 下限は特にはなく、 そ の値は小さいほど好感度であるが、 おおよそ 0 . 0 3 0e よりも小さくなるとそれ 以下になっても感度はさほどは変わらない。 一方、 磁化反転磁界が 0 . 2 0e を超 えて大きな軟磁性材料では、 特に、 いわゆる高透磁率型のシステムにおいて感度 が低下し、 本発明には好ましくない。 この磁界強度の物理的な意味は、 磁気マー カーが十分大きな磁界で励磁された場合、 軟磁性材料の保磁力に相当する。 保磁 力は一般的に励磁界の振幅強度に依存する傾向があるが、 上記の値は 7 3 Hz、 振 幅強度 1 Oeで励磁した際の保磁力におおむね相当する。保磁力の励磁界振幅依存 性が小さレ、ものが各システムにおレ、て検知感度の高レ、磁気マーカ一を得る上で好 ましく、例えば 1 0eで励磁された時と 5 0eで励磁されたときの保磁力の差が 5 0e で励磁されたときの保磁力の 5 0 %以内にあれば好ましい。 また、 保磁力が励磁
周波数によって影響されることが一般的に知られているが、例えば 7 3 Hzで励磁 された時と 1 kHz で励磁されたときの保磁力の差が 1 kHz で励磁されたときの保 磁力の 5 0 %以内にあれば好ましい。 なお、 本発明の磁気マ一カーに用いられる 軟磁性材料には磁化反転するのに必要な臨界磁界が存在し、 臨界磁界の前後で不 連続な磁化反転挙動を示す。 例えば、 臨界磁界より小さな磁界が印加されている 状態では、 軟磁性材料は全く磁化反転をしないが、 臨界磁界に達した瞬間に急激 に磁化を反転する。 本発明では、 この臨界磁界の強度は、 0 . 1 5 0e以下であれ ば好ましく、 0 . 1 Oe以下であればさらに好ましレ、。
次に、 磁化反転磁界が上記のような条件範囲にあっても、 磁化反転による磁束 変化量がある範囲以上でないと、 システムでの検知感度が十分ではないことが、 本発明者らによって見いだされた。 すなわち、 マ一力一が含む軟磁性材料が急峻 な磁化反転により周囲に放射する磁束変化量は 8 . 0 X 1 0 " 9Wb以上でなければ ならない。磁束変化量は 9 . 0 X 1 0— 9Wb以上であれば好ましく、 1 0 . 0 X 1 0 一9 Wb以上ではさらに好ましい。磁束変化量は次のようにして実測される。 システ ムに対応する周波数 (例えば、 特公平 3 - 2 7 9 5 8号公報のシステムでは 7 3
Hz) の交流磁界によって交流 MHループを測定し、 そのヒステリシスループに観 察される急峻な磁ィヒ反転での磁化変化量を磁束変化量とみなせばよレ、。 磁束変化 量が 8 . 0 X 1 0— 9Wbに満たない場合、 磁気マーカ一の発する信号強度が弱く、 特に、 特公平 3— 2 7 9 5 8号公報に代表されるいわゆる大バルクハウゼン型の システムでの検知感度が低下するため好ましくない。
次に、 磁化反転する磁界の時間的変動について詳しく検討した結果、 特に、 特 公平 3 - 2 7 9 5 8号公報に代表されるいわゆる大バルクハウゼン型のシステム において、 磁化反転を起こす磁界の変動がマーカ一の検知感度に非常に大きく影 響し、 ある範囲内でないと好感度が得られないことが判明した。 すなわち、 本発 明のマーカ一が備える軟磁性材料が磁化反転を起こす磁界の強度は、 O . l Oe の 変動範囲内であることが望まれる。 この変動範囲は 0 . 0 7 0e以下であることが 好ましく、 0 . 0 5 0e以下であればさらに好ましい。 この場合の反転磁界の変動 とは、 同じ磁気マーカ一に同じ振幅強度の交番磁界を繰り返し印加した際に、 磁 気マーカーの軟磁性材料が磁化反転する磁界強度がサイクルごとに変化すること
を意味している。 その値は、 本発明においては次のようにして評価される。 磁化 反転磁界の強度を 2 0サイクル連続で測定し、 正または負のサイクルでのそれぞ れの反転磁界強度の平均を計算する。 次に、 正または負のそれぞれのサイクルで の平均の磁化反転磁界強度と実際の磁化反転磁界強度との差の絶対値を計算し、 それぞれの計算結果を加算した上で 4 0で除算した値を反転磁界の変動と定義す る。 反転磁界の変動が 0 . 1 0e を超えた場合は、 特公平 3— 2 7 9 5 8号公報に 代表されるいわゆる大バルクハウゼン型のシステムで検知感度が極めて低下する ために好ましくない。
以上のような磁気特性の軟磁性材料からなる本発明の磁気マーカ一は、 様々な 構成で実現でき、 本発明では特に限定するものではない。 具体的には、 本発明の 磁気マーカ一に好適な軟磁性材料としては、 例えば次のようなものを挙げること ができる。 例えば、 特開昭 5 6 - 1 6 5 0 1 6号公報に開示されている回転液中 紡糸装置で製造された非晶質金属細線、 あるいは特公平 3 - 2 7 9 5 8号公報に 開示されている単口ール装置で製造された非晶質金属薄帯が、 本発明の磁気マー カーの軟磁性材料として好適に用いられる。 これらに、 さらに、 張力、 ねじり、 磁界、 通電などを印加しながら熱処理を施すと磁化反転の臨界磁界やその磁束変 化量を任意に調整できる。 細線や薄帯を熱処理する前に、 伸線加工、 圧延加工、 スリッ ト加工などの加工を施すことは、 任意の形状にすることができ、 反磁界を 調整できることからも有効である。 このような細線あるいは薄帯と併せて、 薄膜 形状の磁性体もまた、 本発明の軟磁性材料に好適に使用される。 このような磁性 薄膜材料は、 例えば、 特開平 4一 2 1 8 9 0 5号公報に開示がある。 これらの文 献によると、 臨界値を伴う急峻な磁化反転挙動を示す軟磁性薄膜が得られ、 本発 明の目的には好適である。
図 1 A〜図 1 Fは、 種々の磁気マーカーを図式的に示す。 図 1 Aは、 P E Tフ イルム 1 0に貼りつけられた軟磁性細線 1 2からなる磁気マーカ一を示す。また、 図 1 Bは、 P E Tフィルム 1 0に貼りつけられた軟磁性薄帯 1 4からなる磁気マ 一力一を示し、 図 1 Cは、 P E Tフィルム 1 0に貼りつけられた軟磁性薄膜 1 8 からなる磁気マ一力一を示す。
また、 2種類以上の軟磁性材料を組み合わせて本発明の磁気マ一力一を構成す
ることもでき、 性能の向上などが期待できる。 例えば、 図 1 Dのように、 線状の 軟磁性材料 1 2の両端に切片状の軟磁性材料 1 6を密着配置して組み合わせると、 線状の磁性体を単独で用いた場合よりも高感度な盗難防止システム用マ一カーが 得られ、 より小型のマーカ一を実現することもできる。 ここで切片状の磁性材料 は、 近傍の磁界を集中して線状の磁性体に導く磁気ヨークの働きをして、 感度を 向上させていると推察されている。 また、 同様の効果は、 図 1 Eのように、 P E Tフィルム 1 0上に、 線状の磁性体 1 2と磁性薄膜 1 8を組み合わせた場合にも 認められており、 この場合は 1枚の磁性薄膜の上に線状の磁性体を置くと良い。 特に線状の磁性体の長さ方向が磁化困難方向となるような磁気異方性を有する薄 膜を用いるとその効果が顕著であり、 良好な性能を得ることができる。
本発明に用いられる軟磁性材料の長さとしては、 特に限定されないが、 少なく とも磁気マ一力一の長さよりも長くはできないので 7 0議以下であることが望 まれ、 1 0〜7 0隱が好ましく、 特に 2 0〜 6 0讓が好ましレヽ。
なお、 軟磁性材料には反磁界が影響するため、 断面積と長さの関係は重要であ り、 例えば線材の場合、 直径 3 0 μ mの材料では長さ 1 0瞧でも好適に利用でき るが、 直径が 1 0 0 m ではもっと長いものでなければ特性が劣る傾向にあり、 このような場合には例えば 2 O mm以上の長さが望ましい。 この点に関しては、 薄 帯や薄膜も同様の傾向がある。 この際、 磁気マ一カーから発せられる信号の強度 は、 軟磁性材料の体積、 特に断面積に強く依存する傾向がある。 すなわち、 軟磁 性材料の大きさは必要とされる信号の強度レベルを考慮することが望まれる。 本発明の磁気マーカ一では、 上述の軟磁性材料とともに、 性質の異なる磁性材 料をさらに使用することで、 失活機能を加えることができる。 すなわち、 図 1 F に示すように、 P E Tフィルム 1 0上で、 上述の軟磁性材料よりも保磁力の大き な硬磁性材料 2 0 (この例では 3箇所) を軟磁性材料 1 2の近傍に配置し、 硬磁 性材料の残留磁化によって軟磁性材料にバイアス磁界を印加できるような構造の 磁気マ一カーにより失活機能を提供できる。 このような構造のマーカーでは、 硬 磁性材料が消磁されておれば軟磁性材料が本来の急峻な磁化反転を示すために監 視区域でマーカーが反応するが、 硬磁性材料が着磁されれば軟磁性材料の磁化が 制限されるためマーカ一は反応せず失活される。 このようなマ一カーの失活ある
いは復活を簡単な装置で行えるため、 使用者は電子式物品監視システムをさらに 広い用途に応用できる。 このような目的に使用される硬磁性材料には、 例えばァ —ノクロム (アーノルド社)、 セミバック (バキュームシュメルツエ社) などの金 属薄帯が好適に使用され、 さらに磁性粉末を含む塗料、 N i等の硬磁性箔なども 利用できる。
本発明の磁気マーカーは、 通常、 粘着層のついたラベル、 タグ、 その他の形態 で用いられるが、 本発明では、 特にこれらの形態に限定することはないが、 内容 の理解のために、 例えば、 ラベル形状の磁気マーカーについて説明する。 ラベル 型マーカーでは、 監視区域で信号を発する軟磁性材料は 2枚の紙あるいはプラス ティックフィルムの間に挟まれている。 これらの紙あるいはフィルムの内面には 粘着層が塗布されて軟磁性材料が保持される。 失活機能のための硬磁性材料が含 まれる場合は、 軟磁性材に密着するように硬磁性材が配置されて、 これらの 2枚 の紙あるいはプラスティックフィルムの間に挟まれる。 紙あるいはフィルムのう ち 1枚の外面には、 さらに別の粘着層が塗布され、 この粘着層によって監視の必 要な物品にマーカ一が貼付される。 これらのマ一カーは、 離けい処理された紙の リールの上に連続的に貼られ、 巻き取られた状態で使用者に提供され、 ハンドラ ベラ一や自動貼着装置あるいは手で離けい紙からマーカ一をはがして使用される。 なお、 粘着層の形成されていないもう 1枚の紙あるいはフィルムの外面には、 目 的に併せて印刷などが施される。
以下では、 さらに磁気マ一カーの具体例について説明する。
(軟磁性材料の作製)
まず、 例 1〜 3と比較例 1〜 2の試料の作製について説明する。 回転液中紡糸 装置により、 表 1に示す組成の金属細線を作製した。 この時の回転液中紡糸法の 製造条件は次の通りであった。 石英ノズルに約 2 0 O g の母合金を挿入し、 アル ゴン雰囲気下で高周波溶解した。 アルゴンガス圧を約 4 . 5 kgん m2に加圧し、 直 径約 1 3 0 μ πι のノズル孔から金属溶湯を噴出した。 金属溶湯は、 約 3 0 0 rpm で回転する直径 6 0 O mm の円筒ドラムの内壁に形成された冷却水層に噴出され て急冷凝固し、 そのままドラム内壁に卷とられた。 このようにして得られた細線 を、 ダイスによって所定の線径にまで伸線加工し、 1 3 5 kg/議 2の張力下で、
3 4 0 °C、 1 0分の熱処理を施した。 このようにして得られた金属細線を 6 5隱 に切断し、 2 3 μ πιの粘着材が塗布された厚さ 2 5 μ πιの 2枚の P E Tフィルムの 間に挟んで固定し、磁気マ一力一としたものを比較例 1とした。実施例 1 〜 3は、 上記のように張力熱処理がされた細線に、 さらに、 無張力下で 4 0 0 °C、 1 0分 の熱処理を施し、 この細線を元にして上記と同様の方法で磁気マーカ一を作製し て試料とした。 なお、 比較例 2は例 1、 例 2の試料に比べてさらに 5 0 %細く伸 ^111ェしたものである。
次に、 例 4 〜 5と比較例 3の作製について説明する。 単ロール装置を用いて、 表 1に示す組成の金属薄帯を作製した。 この時の単ロール法の製造条件は次の通 りであった。 石英ノズルに約 2 0 O g の母合金を挿入し、 アルゴン雰囲気下で高 周波溶解をした。 アルゴンガス圧を約 2 kg/cm2に加圧し、 直径約 3 0 0 / mのノ ズル孔から金属溶湯を噴出した。 金属溶湯は、 約 1 2 0 O rpmで回転する直径 2 0 O mmの銅ロール外周面に噴出されて急冷凝固し、巻き取り機構によってリー ルに卷きとられた。 このようにして得られた金属薄帯に、 l m あたり 5〜 1 0回 の捻りを付与しながら 3 2 0 °C、 1 0分の熱処理を施したものを、 例 1と同様の 方法で磁気マーカーに加工して例 4 〜 5の試料とした。 比較例 3については、 単 ロール装置によって得られた薄帯を熱処理せずにそのまま磁気マーカーにし、 試 料とした。
各種試料の特性値
実施例一 4 実施例— 5 比較例— 3 急峻な磁化反転の有無 〇 〇 X 臨界磁界 (Oe) 0.1 0.06 保磁力 (Oe) 0.19 0.14 0.06 磁束変化量 20.44 13.98 15.6
( X 10-9Wb)
磁化反転磁界の変動 0.03 0.06 0.02
(Oe)
1.5kHz信号強度 -43.3 - 44.5 -44.6
(dBm)
3.5 kHz信号強度 -44.4 - 45.5 -49.6
(dBm)
3.5 kHz- 1.5kHz比 -1.1 - 1.0 - 5.0
(dBm)
検知感度 (A) (%) 82 70 38 検知感度 (B) (%) 42 52 63
(結晶組織、 試料形状の測定)
上記の各試料は X線回折法により組織が測定され、 すべての試料でハローパタ —ンのみが観察されたことから、 非晶質相と同定された。 また、 試料形状につい ては、 1 0箇所について断面をニコン社製、 O P T I P H O T光学顕微鏡で観察 し、 その平均を用いて測定した。 上記の各試料の磁気ヒステリシス特性は、 理研 電子社製、交流磁気履歴測定装置 A C B H- 1 0 O Kによって測定された。直径 6 0删、長さ 1 9 8讓、 1 8 9ターンの励磁用ソレノィドコイルの中に直径 3 O mm、 長さ 2 0瞧、 1 0 0ターンの補償コイル付きのピックアップコイルを配置し、 ピ ックアップコィルの位置が試料中央になるように上記の例 1 〜 5および比較例 1
〜 3の各試料が挿入された。励磁用ソレノィドコイルにより 7 3 Hzの交流磁界を 発生し、 試料の磁化変化がピックアップコイルによって検出された。 このように して得られたヒステリシスループから、 各試料が不連続で急激な磁ィヒ変化を起こ すかどうかが確認され、 さらに磁化反転磁界強度、 磁化反転した際の磁束変化量 が測定された。 磁化反転の急峻さを調べるために、 試料が発する磁気信号を周波 数解析した。 ø 4 0 0隱のヘルムホルツコィルにヒューレッ トパッカ一ド社製、 ファンクションジェネレータ一 3 3 1 4 Aおよび N Fエレク トロニック ·インス ツルメント社製、 高速パワーアンプ 4 0 2 5を接続して、 周波数 7 3 Hz、 中心位 置での振幅 1 . 50e の正弦波磁界を発生させた。 中心位置には 2 0 0ターンの検 知コイルを設置し、 試料は検知コイルに揷入した。 検知コイルの出力をヒュ一レ ットパッカード社製、 ダイナミックシグナルアナライザ一 3 5 6 6 5 Aで周波数 解析した。 各周波数の信号強度は 1 mVを基底とした dBmで表現した。 特に、 1 . 5 kHz と 3 . 5 Hz の高調波信号強度の差を磁化反転の急峻さの指標として評価し た。
(マーカー感度測定)
特公平 3— 2 7 9 5 8号公報に代表されるいわゆる大バルクハウゼン型のシス テムとしてセンサ一マティック社製のシステムを選択し、 特公平 3— 5 5 8 7 3 号公報に代表されるいわゆる高透磁率型のシステムとしてエセルトメ ト社製のシ ステム 2 2 0 0 S Aを選択し、 上記実施例 1 〜 5と比較例 1 〜 3の磁気マ一力一
の検知感度を測定した。 図 2に示したように、 監視ゲート 2の空間を、 ゲート入 口に向かって、 高さに対しては下から 3 9、 6 5、 9 3、 1 2 0、 1 3 5 cm、 幅 方向に対してはゲート中央から 1 O cm間隔で区切り、磁気マーカーをそれぞれの 空間でゲート通路を通過させ、 システムが感知するかどうか調べた。 この際、 軟 磁性材料 (金属細線、 薄帯など) 3を含む磁気マーカ一 1は、 図 3の左側、 中央、 右側に示すように、 ゲート 2に対して縦、 横、 垂直 (それぞれの方向は図 3に図 示) の各方向に配置しなおして測定され、 ゲート 2に入る際と出る際で都合 2回 測定された。 磁気マ一カー 1の検知感度は、 システムが感知した回数をマーカ一 がゲートを通過した全回数で割った割合 (%) で評価し、 表中ではセンサ一マテ イツク社のシステムでの結果を(A)、エセルトメ ト社のシステムでの結果を(B ) として示した。
表 1に示したように、 比較例 3のように不連続で急激な磁化反転を示さないも のでは、 センサーマティック社のシステムで感度が低かった。 不連続で急激な磁 ィ匕反転を示すものについては、 磁化反転磁界が 0 . 2 0e を超える比較例 1で、 ェ セルトメ ト社のシステムで感度が明らかに低かった。 磁化反転磁界が 0 . 2 0e よ りも小さなものでも、 磁化反転する際に放射する磁束変化量が 8 . 0 X 1 0一9 Wb よりも小さい比較例 2は、 センサ一マティック社のシステムでもエセルトメ ト社 のシステムでも十分な感度を示さなかった。 それに対して、 不連続で急激な磁化 反転が 0 . 2 Oeよりも小さな磁界で発生し、 その際の磁束変化量が 8 . 0 X 1 0 — 9Wbよりも大きい、本発明の磁気マ一カーである実施例 1〜 5は、センサーマテ イツク社のシステムでもエセルトメ ト社のシステムでも良好な感度を示した。 な お、 磁化反転磁界が 0 . 1 Oe よりも大きく変動した実施例 3は、 他の実施例に比 ベるとセンサーマティック社のシステムで感度が低レ、ものであった。
本発明は、 その要旨から外れることなく種々の方法で具体化できる。 したがつ て、 その実施形態は上で詳しく説明されたが、 これは例示であり、 本発明は実施 形態に限定されるものではない。 本発明の範囲は請求の範囲により示され、 請求 の範囲の中でのすべての変形は本発明に含まれるものである。