明 細 書
幹細胞の凍結保存法およびシステム
技術分野
[0001] 本発明は、幹細胞の分野にある。より詳細には、本発明は、幹細胞 (特に、霊長類 の胚性幹細胞 (本明細書にぉ 、て以下 ES細胞とも 、う) )の効率よ 、保存のための 方法に関する。
背景技術
[0002] 再生医療による疾患治療が最近注目を浴びている。再生医療は、臓器移植のほか 、医療機器での補助システムの利用などに代わる治療法としての役割が期待されて いる。しかし、これを臓器または組織機能不全を呈する多くの患者に対して日常的に 適応するまでには至って ヽな 、。
[0003] 再生医療の中心にある幹細胞、特に ES細胞は、その医療応用面での可能性から 近年その重要性を増して 、る。ヒト ES細胞はその中でも特に重要であるがその榭立 または安定した継代維持が難しく効率的な利用を阻害している。ヒトを含めた霊長類 ES細胞は、その榭立必要とされる胚盤胞の供給がきわめて少なぐ少数の胚盤胞か ら効率よく ES細胞株の榭立を行う必要がある。従来の方法では胚盤胞からの榭立の 効率は 10から 30%程度であると!/、われて!/、る。
[0004] トランスジエニック動物の作出力 ES細胞を使用することで可能となっている。 ES 細胞とは、通常胚盤胞と呼ばれる発生段階の胚に存在する将来動物個体となる未分 化な細胞群である内部細胞塊 (Inner cell mass, ICM)の細胞を培養することによ つて得られた細胞株である。 ES細胞は、 M. J. Evans と M. H. Kaufman (1981 年に非特許文献 1)に続いて、 G. R. Martin (非特許文献 2)によりマウスで多分ィ匕 能を有する細胞株として樹立された。
[0005] ES細胞が、霊長類で榭立され、その応用に対する期待がますます高まる中、これ らの問題を克服するために幹細胞治療とその応用を中心とした再生医学に対する期 待がますます高まっている。
[0006] ES細胞などの幹細胞は、凍結保存されることが頻繁に行われている力 従来行わ
れている緩慢冷却法 (例えば、 Geron社が提供する方法 (非特許文献 3) )では、手 順が煩雑であり、し力も、保存効率がそれほど高くないことが知られている。
[0007] より最近になってガラス化法と!/、う方法が開発された (非特許文献 4)。この方法は、 効率が緩慢冷却法よりも高ぐしかも、簡便であるということで注目を浴びた。しかし、 この方法で用いられるストロー状の容器のために、汚染の危険性が格段に上昇したと いう欠点がある。
[0008] 幹細胞は、非特許文献 5に記載されるように種々の応用が期待されている力 その 保存方法の開発はそれほど進んで 、な 、。
[0009] このように、種々の観点力 簡便で確実な幹細胞の凍結保存方法、ならびにそのた めの媒体およびシステムが待ち望まれて 、る。
非特許文献 1: M.J.Evans & M.H.Kauftnan:Nature,292, 154, 1981
非特許文献 2 : G.R.Martin:Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 78,7634,1981
非特許文献 3 : Freshney R.I., Culture of Animal Cells: A Manual of Basic
Technique'WIley— Liss,Inc.,pp.255— 265、 1994
非特許文献 4: Reubinoff BE, Para MF, Vajta G, Trounson AO., Hum Reprod. 2001 Oct;16(10):2187-94
非特許文献 5 :幹細胞'クローン 研究プロトコール 中辻編、羊土社 (2001) 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] 本発明は、従来技術では達成し得ない程度の効率で幹細胞 (特に、霊長類の ES 細胞)を凍結保存することができる簡便な技術を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
[0011] 本発明は、一部、上記課題が、プロピレングリコールを含む媒体を用いることによつ て、急速凍結をすると、簡便に、かつ、保存効率よぐ幹細胞を凍結保存することがで きることを予想外に見出したことによって解決されることを本発明者らが見出したこと によって完成された。
[0012] 一つの局面において、本発明は、幹細胞を保存するための媒体(medium)であつ て、
A)ジメチルスルホキシド(DMSO);
B)プロピレングリコール;および
C)培地 (culture medium)、
を含む、媒体を提供する。
[0013] 一つの実施形態において、上記 DMSOは、上記媒体の 15— 40%を占める。
[0014] 一つの実施形態において、上記プロピレングリコールと上記 DMSOとは、合計で、 上記媒体の約 30%より多ぐかつ、上記媒体の約 50%未満を占める。
[0015] 一つの実施形態において、上記 DMSOと上記プロピレングリコールとは、約 1: 2— 約 2 : 1のモル比率で存在する。
[0016] 一つの実施形態において、上記 DMSOと上記プロピレングリコールとは、約 3 : 2の モル比率で存在する。
[0017] 一つの実施形態において、本発明の媒体は、ァセトアミドおよび糖からなる群より選 択される成分をさらに含む。
[0018] 一つの実施形態において、上記 DMSOは約 1M— 4M存在し、上記プロピレングリ コールは約 1. 5M— 6M存在する。
[0019] 一つの実施形態において、上記 DMSOは、約 2M存在する。
[0020] 一つの実施形態において、上記プロピレングリコールは、約 3M存在する。
[0021] 一つの実施形態において、上記 DMSOは約 2M存在し、上記プロピレングリコー ルは約 3M存在する。
[0022] 一つの実施形態において、上記 DMSOは約 1M— 4M存在し、上記プロピレングリ コールは約 1. 5M— 6M存在し、さらに約 0M— 2Mのァセトアミドを含む。
[0023] 一つの実施形態において、上記 DMSOは、約 2M存在する。
[0024] 一つの実施形態において、上記プロピレングリコールは、約 3M存在する。
[0025] 一つの実施形態において、上記ァセトアミドは、約 1Mで含まれる。
[0026] 一つの実施形態において、上記 DMSOは、約 2M存在し、上記プロピレングリコー ルは、約 3M存在し、本発明の媒体は約 1Mァセトアミドを含む。
[0027] 一つの実施形態において、上記培地は、 DMEM培地および F12からなる群より選 択される培地またはそれらの混合物を含む。
[0028] 一つの実施形態に: 、て
[0029] 一つの実施形態に : 、て 上記幹細胞は、組織幹細胞および ES細胞力 なる群 より選択される。
[0030] 一つの実施形態に : 、て 上記幹細胞は、 ES細胞を含む。
[0031] 一つの実施形態に : 、て 上記幹細胞は、霊長類 ES細胞を含む。
[0032] 一つの実施形態に : 、て 上記幹細胞は、ヒト ES細胞を含む。
[0033] 一つの実施形態に : 、て 上記保存は、凍結保存である。
[0034] 一つの実施形態に : 、て 上記保存は、急速凍結保存である。
[0035] 一つの実施形態に : 、て 上記急速凍結保存は、約 30°CZ分以上の速度で凍結 される。
[0036] 一つの実施形態に : 、て 本発明の媒体は、上記保存の後、急速解凍される。
[0037] 一つの実施形態に : 、て 上記急速解凍は、約 50°CZ分以上の速度で解凍され
5
[0038] 一つの局面において、本発明は、幹細胞を保存するための媒体 (medium)であつ て、
A) DMSO ;
B)エチレングリコール;および
C)培地 (culture medium)、
を含み、
ここで、上記 DMSOおよび上記エチレングリコールの少なくともいずれか一方は、 2 0重量%未満である、媒体を提供する。
[0039] 一つの実施形態において、上記 DMSOおよびエチレングリコールは、約 15%ずつ 含まれる。
[0040] 一つの実施形態において、本発明の媒体は、さらに、糖を含む。
[0041] 一つの実施形態において、上記糖は、スクロースを含む。
[0042] 一つの実施形態において、上記 DMSOは上記媒体の約 7. 5%— 30%含まれ、上 記エチレングリコールは上記媒体の約 7. 5%— 30%含まれ、上記スクロースは、約 0
. 1875M— 0. 75M含まれる。
[0043] 一つの実施形態において、上記 DMSOは上記媒体の約 15%含まれ、上記ェチレ ングリコールは上記媒体の約 15%含まれ、上記スクロースは、約 0. 375M含まれる
[0044] 一つの実施形態において、上記媒体は、上記幹細胞を凍結保存するためのもので ある。
[0045] 一つの局面において、本発明は、幹細胞を保存するための方法であって、
A) a) DMSO;
b)プロピレングリコール;および
c)培地、
を含む、媒体中で、幹細胞を急速凍結させる工程、
を包含する、方法を提供する。
[0046] 一つの実施形態にお!、て、上記急速凍結は、封入管を用いて行われる。
[0047] 一つの実施形態において、上記幹細胞は、大きなコロニーのまま剥離されたもので ある。
[0048] 一つの実施形態において、上記幹細胞と、上記媒体とは、約 1 X 104/100^ 1- 約 5 X IOVIOO μ 1の比率で存在する。
[0049] 一つの実施形態に :おいて、上記急速凍結は、液体窒素中で行われる。
[0050] 一つの実施形態に :おいて、上記保存後、急速に解凍する工程をさらに包含する。
[0051] 一つの実施形態に :おいて、上記急速解凍は、ピペッティングによる。
[0052] 一つの実施形態に :おいて、上記幹細胞は、組織幹細胞および ES細胞を含む。
[0053] 一つの実施形態に :おいて、上記幹細胞は、 ES細胞を含む。
[0054] 一つの実施形態に :おいて、上記幹細胞は、霊長類 ES細胞を含む。
[0055] 一つの実施形態に :おいて、上記幹細胞は、ヒト ES細胞を含む。
[0056] 一つの実施形態に :おいて、上記媒体は、本明細書に記載される任意の実施形態 の形態を採ることができる。
一つの局面において、本発明は、幹細胞を保存するための方法であって、
A) a) DMSO;
b)エチレングリコール;および
c)培地 (culture medium)、
を含み、
ここで、上記 DMSOおよび上記エチレングリコールの少なくともいずれか一方は、 2
0重量%未満である、
媒体中で、幹細胞を凍結させる工程、
を包含する、方法を提供する。
[0058] 一つの実施形態にお!、て、上記媒体は、本明細書に記載される任意の実施形態 の形態を採ることができる。
[0059] 一つの局面において、本発明は、幹細胞を保存するためのシステムであって、
A) a) DMSO;
b)プロピレングリコール;および
c)培地、
を含む、媒体;
B)急速凍結する手段、
を備える、システムを提供する。
[0060] 一つの実施形態において、本発明のシステムは、さら〖こ、封入管を備える。
[0061] 一つの実施形態にお!、て、上記幹細胞は、組織幹細胞および ES細胞を含む。
[0062] 一つの実施形態において、上記幹細胞は、 ES細胞を含む。
[0063] 一つの実施形態において、上記幹細胞は、霊長類 ES細胞を含む。
[0064] 一つの実施形態において、上記幹細胞は、ヒト ES細胞を含む。
[0065] 一つの実施形態にお!、て、上記媒体は、本明細書に記載される任意の実施形態 の形態を採ることができる。
[0066] 一つの局面において、本発明は、幹細胞を保存するためのシステムであって、
A) a) DMSO;
b)エチレングリコール;および
c)培地 (culture medium)、
を含み、
ここで、上記 DMSOおよび上記エチレングリコールの少なくともいずれか一方は、 2 0重量%未満である、
媒体;
B)凍結する手段、
を備える、システムを提供する。
[0067] 一つの実施形態にお!、て、上記媒体は、本明細書に記載される任意の実施形態 の形態を採ることができる。
[0068] 一つの局面において、本発明は、
a) DMSO ;
b)プロピレングリコール;および
c)培地、
を含む、媒体の、幹細胞を急速凍結保存するための、使用を提供する。
[0069] 一つの実施形態にお!、て、上記媒体は、本明細書に記載される任意の実施形態 の形態を採ることができる。
[0070] 一つの局面において、本発明は、
a) DMSO ;
b)エチレングリコール;および
c)培地 (.culture mediumノ、
を含み、
ここで、上記 DMSOおよび上記エチレングリコールの少なくともいずれか一方は、 2 0重量%未満である、
媒体の、幹細胞を凍結保存するための、使用を提供する。
[0071] 一つの実施形態において、上記媒体は、本明細書に記載される任意の実施形態 の形態を採ることができる。
[0072] 従って、本発明のこれらおよび他の利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な 説明を読みかつ理解すれば、当業者には明白〖こなることが理解される。
発明の効果
[0073] 本発明によって、特に幹細胞を効率よく保存するための技術が提供される。特に、
簡便で、かつ、効率よく幹細胞を保存するという従来達成不可能であった効果を本 発明が達成する。このようにして、本発明によって ES細胞を含む種々の幹細胞を効 率よく保存することができるようになった。
図面の簡単な説明
[0074] [図 1]図 1は、本発明の DAP媒体を用いて幹細胞 (ES細胞)を凍結保存し、解凍した とき (すなわち、簡易ガラス化法)の保存効率 (真ん中)を、 DES媒体を用いて通常の ガラス化法を用いて行った結果 (右)と、 DMSO媒体を用いて行った緩慢冷却法 (左 )と比較して示す。図 1では、独立した 3回の実験データを示し、バーは標準誤差を示 す。 DAPに対して有意差あり(t検定, p< 0. 05)。
[図 2]図 2は、実施例 6に記載されるように、 DESを用いたガラス化凍結法の改良を示 す。
[図 3]図 3は、 DMSOとプロピレングリコール(PG)との比率を種々変更したときの凍 結保存効率を示す。 100を DAP (実施例 5参照)を用いて行った場合の効率として相 対比率を示す。
[図 4]図 4は、 DMSOのみを含む媒体を用いて本発明の簡易ガラス化法を用いた場 合の凍結保存効果を示す。
[図 5]図 5は、プロピレングリコールのみを含む媒体を用いて本発明の簡易ガラス化法 を用いた場合の凍結保存効果を示す。
[図 6]図 6は、 ES細胞榭立スキーム例を示す。
[図 7]図 7は、ヒト ES細胞を記載の方法で凍結し、解凍した後の細胞生存率を示す。 10%DMSOを使用した緩慢凍結法では解凍後の細胞生存率がほぼ 0%に近かつ たのに対し、簡易凍結法を用いることで 10%以上の細胞生存率を得ることができ、生 存率の著しい向上が示された。
発明を実施するための最良の形態
[0075] 以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及 しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形 の冠詞 (例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、そ の複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用
される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられるこ とが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用さ れる全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によつ て一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書 (定義を含め て)が優先する。
[0076] 以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙し、必要な技術の説 明を行い、本発明を説明する。
[0077] 本明細書において使用される「細胞」は、当該分野において用いられる最も広義の 意味と同様に定義され、多細胞生物の組織の構成単位であって、外界を隔離する膜 構造に包まれ、内部に自己再生能を備え、遺伝情報およびその発現機構を有する 生命体をいう。本発明においては、どのような細胞でも対象とされ得る。本発明で使 用される「細胞」の数は、光学顕微鏡を通じて計数することができる。光学顕微鏡を通 じて計数する場合は、核の数を数えることにより計数を行う。細胞は、へマトキシリン ェォシン (HE)染色を行うことにより細胞外マトリクス (例えば、エラスチンまたはコラー ゲン)および細胞に由来する核を色素によって染め分ける。この細胞を光学顕微鏡 にて検鏡し、特定の面積 (例えば、 200 m X 200 μ m)あたりの核の数を細胞数と 見積って計数することができる。本明細書において使用される細胞は、天然に存在 する細胞であっても、人工的に改変された細胞 (例えば、融合細胞、遺伝子改変細 胞)であってもよい。細胞の供給源としては、例えば、単一の細胞培養物であり得、あ るいは、正常に成長したトランスジエニック動物の胚、血液、または体組織、または正 常に成長した細胞株由来の細胞のような細胞混合物が挙げられるがそれらに限定さ れない。
[0078] 本明細書にぉ 、て「幹細胞」とは、自己複製能を有し、多分化能 (すなわち多能性)
(「pluripotency」)を有する細胞をいう。幹細胞は通常、組織が傷害を受けたときに その組織を再生することができる。本明細書では幹細胞は、 ES細胞または組織幹細 胞 (組織性幹細胞、組織特異的幹細胞または体性幹細胞とも 、う)であり得るがそれ らに限定されない。また、上述の能力を有している限り、人工的に作製した細胞 (たと えば、再プログラム化された細胞など)もまた、幹細胞であり得る。
[0079] 本明細書において「胚性幹細胞」または「ES細胞」とは、交換可能に用いられ、初 期胚に由来する任意の多能性幹細胞をいう。通常 ES細胞は、全能性またはほぼ全 能性を有するとされる。この ES細胞を正常な宿主胚盤胞へ導入し仮親子宮へ戻すこ とによってキメラ作製を行ったところ、高いキメラ形成能を持つ、生殖系列キメラ (ES 細胞由来の機能的生殖細胞を持つキメラマウス)が得られた (A. Bradley et al. : Nature, 309, 255, 1984)。 ES細胞株は、培養下で、種々の遺伝子導入法(例え ばリン酸カルシウム法、レトロウイルスベクター法、リボゾーム法、エレクト口ポレーショ ン法等)の適用が可能である。また、遺伝子が組込まれた細胞を選別する方法をェ 夫し、相同遺伝子組換え(homologous recombination)を利用し、特定の遺伝子 を狙って改変(置換、欠失、挿入)させた細胞のクローンを得ることもできる。インビトロ でこのような処理をした ES細胞株は生殖系列への分ィ匕能を保持することから、ある特 定の遺伝子の機能を個体レベルで調べる研究が現在盛んに行われている(M. R. Capecchi: Science, 244, 1288, 1989)。 ES細胞を利用したトランスジエニックマ ウス作出法は、ある特定の遺伝子のみを任意に改変させた個体を得ることを可能に した点でマイクロインジェクション法によるトランスジエニック動物作出法にはない多く の利点が考えられる。特に、特定の遺伝子を不活ィ匕させたノックアウト動物を作出で きるようになり、遺伝子の機能を解明したり、外来性の遺伝子のみを発現させることが できる。従って、 ES細胞の榭立が容易になれば、その効果は図り知れない。
[0080] 本明細書において「組織幹細胞」とは、 ES細胞とは異なり、分化の方向が限定され ている細胞をいう。通常、組織幹細胞は、組織中の特定の位置に存在し、未分化な 細胞内構造をしている。従って、組織幹細胞は多能性のレベルが低い。組織幹細胞 は、核 Z細胞質比が高ぐ細胞内小器官が乏しい。組織幹細胞は、概して、多分ィ匕 能を有し、細胞周期が遅ぐ個体の一生以上に増殖能を維持する。本明細書におい て使用される場合は、幹細胞としては、好ましくは ES細胞が使用され得る。
[0081] 本発明で用いられる幹細胞として使用される細胞は、幹細胞またはその対応物が ある限り、どの生物由来の細胞 (例えば、哺乳動物 (例えば、単孔類、有袋類、貧歯 類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、 海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ゥサギ目など)由来の細胞)が用いられてもよい
。さらに好ましくは、幹細胞としては、霊長類 (たとえば、チンパンジー、二ホンザル、ヒ ト)由来の細胞が用いられる。最も好ましくは、幹細胞としてはヒト由来の細胞が用い られる。
[0082] ES細胞株は、キメラマウス、ノックアウトマウスなどの作製において非常に重要であ り、これらの技術により遺伝子機能の解析が飛躍的に進歩した。 ES細胞から特定の 糸且織を分ィヒ誘導する系の開発が進んでおり、移植医療への応用の現実味を帯びて いる。また、ヒト ES細胞を利用した臨床応用を考えた場合、サルなどの適切なモデル 動物の ES細胞を利用して前臨床研究をすることは必須に近い程度に重要であると 考えられ、その榭立もまた重要である。
[0083] ES細胞株の榭立は、フィーダ一細胞を用いて行われる。通常、 ES細胞は、胚盤胞 力 分離した内部細胞塊 (ICM)をフィーダ一細胞上で培養することによって榭立さ れる。通常フィーダ一細胞としては、マウス胎仔繊維芽細胞あるいはそれ由来の細胞 株 STOが用いられている。
[0084] 次に ES細胞の一般的な榭立法を解説する。マウスで説明すると、受精後 3. 5日で 胚は胚盤胞に発生する。胚盤胞から胚本体を形成する未分化幹細胞である内部細 胞塊を免疫手術により分離する。この ICMは、胎盤などが作る細胞である栄養外胚 葉への分化能を有する。このため、 3. 5日胚から直接 ICMを分離すると ICMが栄養 外胚葉へと分化することから未分化細胞が喪失することがよくあるとされる。 3. 5日胚 をさら〖こ 1日培養し、 4. 0-4. 5日胚とすると、胚盤胞は透明帯を脱出する。このステ ージでは ICMはもはや栄養外胚葉には分ィ匕しない。このような状態から、 ICMを分 離し、培養を開始すると、未分ィ匕細胞の割合を高めることができる。従って、本発明 における幹細胞の榭立の際も、このような日数の未分ィ匕細胞を用いることができる。
[0085] ES細胞を榭立する際には、胚盤胞は、フィーダ一細胞上に直接培養することもで きるが、直接の場合は、胚盤胞が接着し栄養外胚葉が伸展して ICMが露出すること 力もあまり好ましくない。これを分離し培養したものを用いてもよいが、好ましくは免疫 手術が用いられる。模式的な ES細胞株榭立スキームを図 6に示す。簡単に言うと、 免疫手術で分離した ICMをフィーダ一細胞上で培養し、継代を続けると分ィ匕した細 胞に混じって、未分化幹細胞のコロニーが現れる。これを分離し、継代を行うことで、
安定して維持することができる ES細胞株を榭立することができる。本発明を用いると 、榭立率が 80%を超えることから、安定して維持することができる ES細胞を得る効率 も格段に上がる。
[0086] ES細胞を榭立するためには、実施例において例示的に使用されるフィーダ一細胞 のほ力、 PBS (Caゝ Mg不含)、 0. 25%トリプシン ' lmM EDTA in PBS、 ES細 胞用培地(ダルベッコ改変 Eagle培地(DMEM) (ハイグルコース) 400ml、ゥシ胎仔 血清 100ml、非必須アミノ酸溶液(Gibco) 4ml、ヌクレオシド溶液 (ヌクレオシド、グ ァノシン、シチジン、ゥリジン各 3mM、チミジン lmM水溶液、 40°Cに加熱して溶解し 、濾過滅菌し、—20°Cで保存する) 4ml、 2 メルカプトエタノール 4 1 (0. lmM)、 LI F 100 l (2000UZml) )、 Μ2培地(Sigmaなどから入手可能)、 M16培地(Sig maなど力 入手可能)、酸性タイロード液 (Sigmaなど力 入手可能)、抗マウス血清 (マウス脾臓細胞またはリンパ球 5 X 108細胞をゥサギに 2週間おきに 3回静脈免疫し 、最終免疫から 2週間後に採血する。これを抗血清として非働化し 80°Cで保存する )、モルモット補体、流動パラフィン (軽質;ナカライテスタなど力 入手可能)を用意す ることが必要である。実験器具としては、 COインキュベーター、実体顕微鏡、キヤピ
2
ラリー、マルチウエルプレート(例えば、 4ゥエル、 12ゥエル、 NUNCなどから入手可 能)を用意するとよい。
[0087] 以下に ES細胞の榭立の例示的なプロトコール記載する。このプロトコールは、京都 大学再生医科学研究所においてまとめられたヒト ES細胞株榭立計画書に準じて記 載される力 本明細書では、この特定のプロトコールに限定されず、いずれのプロトコ ールであっても用いることができる。
[0088] (1)凍結胚の解凍と胚盤胞期までの培養
凍結保存されたヒト受精卵または胚盤胞期までの初期胚を順次解凍して培養を行 う。個々の凍結胚容器からは提供者を同定できるものは除去されているため、各回の 解凍 ·培養実験に使用されたヒト受精胚の出自は同定され得ない。し力 ながら、各 々のヒト受精胚の取扱がおろそかにならないように、凍結胚として受け入れた時点か らひとつの凍結容器内に納められたヒト受精胚を榭立研究の過程で個々の存在とし て尊重し、どのような経過をたどつたかを記録する。
[0089] (2)内部細胞塊の分離と細胞株の榭立
胚盤胞期まで到達した胚 (受精後の発生期間が 14日以内のもの)について、抗ヒト 血清による免疫手術などの方法によって内部細胞塊を分離したのち、フィーダ一細 胞層の上で培養する。フィーダ一細胞としては、本実施例において例示されるフィー ダー細胞を用いることができる。内部細胞塊を採取した後の残部についても、礼節を もって取扱う。フィーダ一細胞の上で増殖した細胞を適時に解離して分割継代し、幹 細胞と思われる細胞コロニーの選別培養などを行ないながら、 ES細胞と思われる細 胞株を榭立する。この間に、培養維持方法や細胞凍結保存方法などの改良を目指し た研究を行う。
[0090] (3)幹細胞マーカー発現の有無および染色体検定
ES細胞であることを確認するために、幹細胞マーカー(アルカリ性フォスファターゼ 活性や特異的抗原)の検出を行なう。また核型解析を行なって染色体数や形態が正 常かどうかを検定する。
[0091] (4)分化能の検定
培養下での分ィ匕能を検定するために、培養条件の変更や細胞凝集塊作成による細 胞分化の誘導と各種機能細胞への分化能の解析を行なう。また免疫不全マウスなど への移植を行なってテラトーマ形成による組織分ィ匕能の解析を行なう。
[0092] (5)安全性確保と事故防止
ヒト凍結胚の一時的保存は専用の液体窒素タンクを用いることによって、榭立計画に 用いる以外の細胞や動物胚などに由来するウィルスと微生物による汚染を防ぐ。また 細胞培養実験には専用の炭酸ガスインキュベーターを用いることによって、他種類の 細胞との混合を防ぎ、ウィルスや微生物による汚染の可能性を小さくする。細胞培養 に用いた培養液や培養器具は、実験室内で加圧高温滅菌処理を行なったのちに廃 棄する。ヒト受精胚の保存および細胞株榭立を行なう実験室への入室者の管理を厳 重に行う。
[0093] 本明細書において「多能性」または「多分ィ匕能」とは、互換可能に用いられ、細胞の 性質をいい、 1以上、好ましくは 2以上の種々の組織または臓器に分ィ匕し得る能力を いう。従って、「多能性」および「多分化能」は、本明細書においては特に言及しない
限り「未分化」と互換可能に用いられる。通常、細胞の多能性は発生が進むにつれて 制限され、成体では一つの組織または器官の構成細胞が別のものの細胞に変化す ることは少ない。従って多能性は通常失われている。とくに上皮性の細胞は他の上皮 性細胞に変化しにくい。これが起きる場合通常病的な状態であり、化生 (metaplasia )と呼ばれる。し力し間葉系細胞では比較的単純な刺激で他の間葉性細胞にかわり 化生を起こしやすいので多能性の程度は高い。 ES細胞は、多能性を有する。組織 幹細胞は、多能性を有する。本明細書において、多能性のうち、受精卵のように生体 を構成する全ての種類の細胞に分ィ匕する能力は全能性といい、多能性は全能性の 概念を包含し得る。ある細胞が多能性を有するかどうかは、たとえば、体外培養系に おける、胚様体 (Embryoid Body)の形成、分ィ匕誘導条件下での培養等が挙げら れるがそれらに限定されない。また、生体を用いた多能性の有無についてのアツセィ 法としては、免疫不全マウスへの移植による奇形種 (テラトーマ)の形成、胚盤胞への 注入によるキメラ胚の形成、生体組織への移植、腹水への注入による増殖等が挙げ られるがそれらに限定されない。
[0094] 本明細書において、多能性のうち、受精卵のように生体を構成する全ての種類の 細胞に分ィ匕する能力は「全能性」といい、多能性は全能性の概念を包含し得る。ただ し、明確に区別する場合は、全能性と多能性とは区別され得、前者はどのような細胞 へも分ィ匕し得る能力をいい、後者は、複数の方向を有するが、生物が可能なすべて の方向には分ィ匕できない能力を有することをいう。また、 1つの方向にのみ分ィ匕する 能力は、単能性ともいう。
[0095] 本明細書において全能性と多能性とは、例えば、受精後の日数により判定すること ができ、例えば、マウスであれば、受精後約 8日を基準として区別され得る。理論に束 縛されないが、マウスでは、受精後、以下のような経過をたどることが通常である。受 精後 6. 5日(E6. 5とも表記する)では、原始線条 (原条ともいう)がェピブラストの片 側に出現し、胚の将来の前後軸が明らかになる。原条は、胚の将来の後方端を示し 、外胚葉を横切って円筒の遠位端まで達する。原条は、細胞運動が行われる領域で あり、その結果、将来の内胚葉と中胚葉とが形成されることになる。 E7. 5までに結節 の前方に頭部突起が出現し、この部分には脊索と、それを取り囲んで下層には将来
の内胚葉、上層には神経板が形成されることになる。結節は、 E6. 5日ごろカゝら現れ 、後方へと移動し、軸構造が前から後ろへと形成される。 E8. 5日までに胚は幾分丈 が長くなり、その前端には大部分前方神経板力もなる大きな頭部ヒダが形成される。 体節は E8日力 1. 5時間に 1個の割合で前方力も後方へと形成され始める。この時 期を越えた細胞は、仮に胎盤に戻したとしても、脱分ィ匕をしない限りもはや全能性を 示さず、個体を形成しない。これより前では特別の処理をしなくても全能性を示し得る ことから、この点が全能性の分岐点であるといえる。このことは、 ES細胞がこれ以降の 胚力 樹立することが困難であり、これ以降の胚力 は通常 EG (生殖細胞由来)細胞 と呼ばれる細胞が榭立されることから、そのような意味でも分岐点であるといえる。
[0096] 本明細書にぉ 、て「分ィ匕 (した)細胞」とは、機能および形態が特殊化した細胞 (例 えば、筋細胞、神経細胞など)をいい、幹細胞とは異なり、多能性はないか、またはほ とんどない。分化した細胞としては、例えば、表皮細胞、脾実質細胞、脾管細胞、肝 細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血 管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などが挙げられ る。本発明において用いられる場合、分ィ匕細胞は、集団または組織の形態であって ちょい。
[0097] 本明細書において「体細胞」とは、卵子、精子などの生殖細胞以外の細胞であり、 その DNAを次世代に直接引き渡さない全ての細胞をいう。体細胞は通常、多能性 が限定されている力または消失している。本明細書において使用される体細胞は、 天然に存在するものであってもよぐ遺伝子改変されたものであってもよい。
[0098] 本明細書にぉ ヽて「繊維芽細胞」とは、支持組織の繊維成分を供給し,繊維性結 合組織の重要な成分をなす細胞をいう。組織切片図では、扁平で長目の外形をもち 、不規則な突起を示すことが多い。細胞質は、ミトコンドリア、ゴルジ体、中心体、小脂 肪球などを含むが、そのほかに特殊な分ィ匕は示さない。核は楕円形をしており、しば しば膠原繊維に密接して存在する。
[0099] 本明細書において「フィーダ一層」または「フィーダ一細胞」 (feeder layerまたは f eeder cell)とは、互換可能に用いられ、培養基質に設けられる、単独では培養維 持することのできない細胞種の増殖および Zまたは分ィ匕形質発現を可能にするよう
な、他の細胞種による支持細胞層をいう。組織細胞には、通常の細胞培養条件下で は,分ィ匕形質発現はもとより増殖すらできない細胞種も多いといわれており、そのよう な細胞としては、例えば、幹細胞 (特に、 ES細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、造 血幹細胞など)などが挙げられるがそれらに限定されない。これらの細胞種は一般に 、栄養要求性が高く特異的な増殖因子、分化誘導因子を必要とする。このような細胞 種でも生体内でのその細胞種の支持細胞あるいはそれと類似の細胞が形成する特 定の細胞の層を培養基質に活用することで、培養される細胞種が要求する因子およ び Zまたは栄養源が供給されることによって、増殖および分ィ匕をするようになる。フィ ーダー細胞として用いる細胞種は、対象となる細胞種によって選択される力 UV照 射、マイトマイシン Cなどの抗生物質処理などの方法で細胞増殖を抑制して用いるこ とが多い。
[0100] 本明細書において「対応物」とは、例えば、細胞について用いられる場合、ある種の 生物中の細胞に関し、同様の性質および Zまたは機能を有する別の種の細胞をいう
[0101] 本明細書において「胎児」または「胎仔」とは、交換可能に用いられ、哺乳動物の子 が各器官原基の分化を完了し,成長期に入ったとき力 出産までの期間にある生物 体をいう。
[0102] 本明細書において、「榭立された」または「確立された」細胞とは、特定の性質 (例え ば、多分化能)を維持し、かつ、細胞が培養条件下で安定に増殖し続けるようになつ た状態をいう。したがって、榭立された幹細胞は、多分化能を維持する。榭立された 分化細胞は、特定の確定した機能を有する。榭立された分化細胞は癌化しているこ とが多いが、それに限定されない。
[0103] 本明細書において本明細書において「分化」とは、一般的には、 1つの系が 2つ 以上の質的に異なる系に分離することをいい、細胞、糸且織または臓器について用い られるとき、機能および Zまたは形態が特殊ィ匕することをいう。分化に伴い、通常、多 能性は減少または消失する。
[0104] 本発明の細胞は、細胞の保存を支持する限り、任意の培地または培養液を用いる ことができる。そのような培地または培養液としては、例えば、ダルベッコ改変 Eagle
培地(DMEM)、 M2、 M16、 P199、改変 Eagle培地(MEM)、ハンクス緩衝塩類 溶液(HBSS)、 Ham' s F12、 Eagle基本培地(BME)、 RPMI 1640、 MCDB104 、 MCDB153 (KGM)、 DMEMZF12 (1 : 1)などが挙げられるがそれらに限定され ない。保存用の培養液と解凍用の培養液は、同一または異なるものが使用され得る
[0105] このような培地または培養液には、デキサメタゾンなどの副腎皮質ステロイド、インス リン、グルコース、インドメタシン、イソブチルーメチルキサンチン(IBMX)、ァスコルべ ート— 2—ホスフェート、ァスコルビン酸およびその誘導体、グリセ口ホスフェート、ェスト ロゲンおよびその誘導体、プロゲステロンおよびその誘導体、アンドロゲンおよびその 誘導体、酸性線維芽細胞増殖因子 (aFGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子 (bFGF) 、上皮細胞増殖因子 (EGF)、インスリン様増殖因子 (IGF)、トランスフォーミング増 殖因子 β (TGF β )、内皮細胞増殖因子 (ECGF)、骨形成タンパク質 (BMP)、血小 板由来増殖因子 (PDGF)などの増殖因子、下垂体エキス、松果体エキス、レチノィ ン酸、ビタミン D、甲状腺ホルモン、血清 (ゥシ胎仔、ゥマ、ヒトなど)、へノ《リン、炭酸 水素ナトリウム、 HEPES、アルブミン、トランスフェリン、セレン酸(亜セレン酸ナトリウ ムなど)、リノレン酸、 3—イソブチルー 1ーメチルキサンチン、 5—ァザンシチジンなどの 脱メチル化剤、トリコスタチンなどのヒストン脱ァセチル化剤、ァクチビン、 LIF-IL-2- IL— 6などのサイト力イン、へキサメチレンビスァセトアミド(HMBA)、ジメチノレアセトァ ミド(DMA)、ジブチル cAMP (dbcAMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ョード デォキシゥリジン(IdU)、ヒドロキシゥレア(HU)、シトシンァラビノシド (AraC)、マイト マイシン C (MMC)、酪酸ナトリウム(NaBu)、ポリブレン、セレニウムなどを 1つまたは その組み合わせとして含ませてぉ 、てもよ 、。
[0106] 本明細書において「分ィ匕因子」とは、「分ィ匕促進因子」ともいい、分化細胞への分化 を促進することが知られている因子 (例えば、化学物質、温度など)であれば、どのよ うな因子であってもよい。そのような因子としては、例えば、種々の環境要因を挙げる ことができ、そのような因子としては、例えば、温度、湿度、 pH、塩濃度、栄養、金属 、ガス、有機溶媒、圧力、化学物質 (例えば、ステロイド、抗生物質など)などまたはそ れらの任意の組み合わせが挙げられるがそれらに限定されない。そのような因子のう
ち代表的なものとしては、 DNA脱メチル化剤(5—ァザシチジンなど)、ヒストン脱ァセ チル化剤(トリコスタチンなど)、核内レセプターリガンド (例えば、レチノイン酸 (ATR A)、ビタミン D、 T3など)、細胞増殖因子(ァクチビン、 IGF— 1、 FGF, PDGF、 TG
3
F- β、 BMP2/4など)、サイト力イン(LIFゝ IL 2、 IL— 6など)、へキサメチレンビス ァセトアミド、ジメチルァセトアミド、ジブチル cAMP、ジメチォルスルホキシド、ョード デォキシゥリジン、ヒドロキシル尿素、シトシンァラビノシド、マイトマイシン C、酪酸ナト リウム、ァフイディコリン、フルォロデオキシゥリジン、ポリプレン、セレンなどが挙げられ るがそれらに限定されない。
[0107] 本明細書において「生体内」または「インビボ」(in vivo)とは、生体の内部をいう。
特定の文脈において、「生体内」は、目的とする組織または器官が配置されるべき位 置をいう。
[0108] 本明細書にぉ 、て「インビトロ」 (in vitro)とは、種々の研究目的のために生体の 一部分が「生体外に」(例えば、試験管内に)摘出または遊離されている状態をいう。 インビボと対照をなす用語である。
[0109] 本明細書にぉ 、て「ェキソビボ」(ex vivo)とは、遺伝子導入を行うための標的細 胞を被験体より抽出し、インビトロで治療遺伝子を導入した後に、再び同一被験体に 戻す場合、一連の動作をェキソビボという。
[0110] 本明細書において自己または自家とは、ある個体についていうとき、その個体に由 来する個体またはその一部(例えば、細胞、組織、臓器など)をいう。本明細書にお いて自己というときは、広義には遺伝的に同じ他個体 (例えば一卵性双生児)からの 移植片をも含み得る。
[0111] 本明細書において同種(同種異系)とは、同種であっても遺伝的には異なる他個体 カゝら移植される個体またはその一部 (例えば、細胞、組織、臓器など)をいう。遺伝的 に異なることから、同種異系のものは、移植された個体 (レシピエント)において免疫 反応を惹起し得る。そのような細胞などの例としては、親由来の細胞などが挙げられ るがそれらに限定されない。
[0112] 本明細書において異種とは、異種個体力 移植されるものをいう。従って、例えば、 ヒトがレシピエントである場合、ブタからの移植物は異種移植物という。
[0113] 本明細書において「レシピエント」(受容者)とは、移植される細胞などを受け取る個 体といい、「宿主」とも呼ばれる。これに対し、移植される細胞などを提供する個体は、 「ドナー」(供与者)という。レシピエントとドナーとは同じであっても異なっていてもよい
[0114] 本発明で使用される細胞は、同系由来(自己(自家)由来)でも、同種異系由来 (他 個体 (他家)由来)でも、異種由来でもよい。拒絶反応が考えられることから、自己由 来の細胞が好ま U、が、拒絶反応が問題でな 、場合同種異系由来であってもよ 、。
[0115] 本明細書において「移植」とは、本発明の細胞、組成物、医薬などを、単独で、また は他の治療剤と組み合わせて体内に移入することを意味する。本発明は、以下のよ うな治療部位 (例えば、骨などなど)への導入方法,導入形態および導入量が使用さ れ得る:本発明の医薬などの障害部位への直接注入し、貼付後に縫合し、挿入する 等の方法があげられる。本発明の脂肪幹細胞と、分ィ匕細胞との組み合わせは、例え ば、混合物として同時に、別々であるが同時にもしくは並行して;または逐次的にか のいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤力 治療混合物としてとも に投与される提示を含み、そして組み合わせた薬剤が、別々であるが同時に(例え ば、分化促進因子)投与される手順もまた含む。「組み合わせ」投与または移植は、 第 1に与えられ、続いて第 2に与えられる細胞、医薬、化合物または薬剤のうちの 1つ を別々に投与することをさらに含む。
[0116] 本明細書において「保存」とは、細胞、組織または臓器について用いられるとき、そ の機能および Zまたは形態を実質的に保持させることをいう。特に、幹細胞の保存と は、細胞としての生存能のほか、好ましくは、幹細胞が有する多分化能を実質的に保 持することをも含む。
[0117] 本発明の「保存効率」は、解凍後の細胞の増殖能力、および幹細胞が有する多分 化能を評価することによって算出することができる。そのような評価は、相対的または 絶対的に行うことができる。
[0118] そのような評価は、例えば、凍結保存法の効率については、解凍後 4日目の ES細 胞のコロニー数および、 ES細胞数をカウントするというアツセィによって行うことができ る。この方法において、解凍後の細胞の増殖能力は ES細胞のコロニー数および ES
細胞の細胞数として求め、解凍後の多分ィ匕能は、未分ィ匕特異的マーカー(例えば、
Oct3Z4など)の発現および未分化 ES細胞コロニー特異的な形態)を指標として求 めることができる。一般の細胞の凍結保存効率を求める方法として、トリパンブルー染 色による細胞の生死の判別法が用いられることもあるが、この指標は必ずしも解凍後 の細胞の増殖を保証するものではないことから、本明細書では、解凍後の細胞増殖 量を直接計測することによって、凍結保存法の効率を測定することを採用する。
[0119] 本明細書において使用される「再生」(regeneration)とは,個体の組織または臓 器の一部が失われた際に、欠如した組織が補填されて復元される現象をいう。動物 種間または同一個体における組織種に応じて、再生のその程度および様式は変動 する。ヒト組織の多くはその再生能が限られており、大きく失われると完全再生は望め ない。大きな傷害では、失われた組織とは異なる増殖力の強い組織が増殖し,不完 全に組織が再生され機能が回復できない状態で終わる不完全再生が起こり得る。こ の場合には,生体内吸収性材料力もなる構造物を用いて、組織欠損部への増殖力 の強 、組織の侵入を阻止することで本来の組織が増殖できる空間を確保し,さらに 細胞増殖因子を補充することで本来の組織の再生能力を高める再生医療が行われ ている。この例として、軟骨、骨および末梢神経の再生医療がある。あるいは、本発 明の凍結保存方法を利用して榭立された幹細胞を用いれば、どのような組織の再生 も原理的には行うことができ、そのようにして調製された本発明の臓器、組織および 細胞が再生のための移植物として提供される。細胞は、由来により、外胚葉、中胚葉 および内胚葉に由来する幹細胞に分類され得る。外胚葉由来の細胞は、主に脳に 存在し、神経幹細胞およびその分ィ匕細胞などが含まれる。中胚葉由来の細胞は、主 に骨髄に存在し、血管幹細胞およびその分化細胞、造血幹細胞およびその分化細 胞ならびに間葉系幹細胞およびその分ィ匕細胞などが含まれる。内胚葉由来の細胞 は主に臓器に存在し、肝幹細胞およびその分化細胞、脾幹細胞およびその分化細 胞などが含まれる。本明細書では、体細胞はどのような胚葉由来でもよい。
[0120] 本発明にお 、て、幹細胞は遺伝子改変することができる。幹細胞は培養細胞であ るので、他の培養細胞と全く同様に種々の遺伝子導入法 (例えばリン酸カルシウム法 、リボゾーム法、マイクロインジェクション法、エレクト口ポレーシヨン法等)が利用できる
。また、導入できる遺伝子も何ら制限されるものではなぐ細菌、動物またはヒトの染 色体に由来する遺伝子などを挙げることができるがそれに限定されない。同様に、 E S細胞株を利用するジーンターゲッティングの方法として使用されるターゲッティング ベクターを用いた内在遺伝子の相同遺伝子組換えによる改変も可能である。
[0121] 本発明の方法によって保存された幹細胞は、対象とし得る疾患、障害、状態は、臓 器または組織の再生が所望される任意の疾患、障害、状態を含む。本発明は特に、 長期保存が要求される状況において幹細胞が処置に必要である疾患、障害、状態 が対象として特に有利である。
[0122] 1つの実施形態において、本発明が対象とし得る疾患および障害は、循環器系(血 液細胞など)であり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、貧血 (例えば、 再生不良性貧血 (特に重症再生不良性貧血)、腎性貧血、癌性貧血、二次性貧血、 不応性貧血など)、癌または腫瘍 (例えば、白血病)およびその化学療法処置後の造 血不全、血小板減少症、急性骨髄性白血病 (特に、第 1寛解期 (High - risk群)、第 2寛解期以降の寛解期)、急性リンパ性白血病 (特に、第 1寛解期、第 2寛解期以降 の寛解期)、慢性骨髄性白血病 (特に、慢性期、移行期)、悪性リンパ腫 (特に、第 1 寛解期 (High - risk群)、第 2寛解期以降の寛解期)、多発性骨髄腫 (特に、発症後 早期);心不全、狭心症、心筋梗塞、不整脈、弁膜症、心筋,心膜疾患、先天性心疾 患 (たとえば、心房中隔欠損、心室中隔欠損、動脈管開存、ファロー四徴)、動脈疾 患 (たとえば、動脈硬化、動脈瘤)、静脈疾患 (たとえば、静脈瘤)、リンパ管疾患 (たと えば、リンパ浮腫)が挙げられるがそれらに限定されない。
[0123] 別の実施形態において、本発明が対象とし得る疾患および障害は、神経系のもの であり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、痴呆症、脳卒中およびその 後遺症、脳腫瘍、脊髄損傷が挙げられるがそれらに限定されない。
[0124] 別の実施形態において、本発明が対象とし得る疾患および障害は、免疫系のもの であり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、 T細胞欠損症、白血病が挙 げられるがそれらに限定されない。
[0125] 別の実施形態において、本発明が対象とし得る疾患および障害は、運動器,骨格 系のものであり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、骨折、骨粗鬆症、
関節の脱臼、亜脱臼、捻挫、靱帯損傷、変形性関節症、骨肉腫、ユーイング肉腫、 骨形成不全症、筋ジストロフィー、骨軟骨異形成症が挙げられるがそれらに限定され ない。
[0126] 別の実施形態において、本発明が対象とし得る疾患および障害は、皮膚系のもの であり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、無毛症、黒色腫、皮膚悪性 リンパ腫、血管肉腫、組織球症、水疱症、膿疱症、皮膚炎、湿疹が挙げられるがそれ らに限定されない。
[0127] 別の実施形態において、本発明が対象とし得る疾患および障害は、内分泌系のも のであり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、視床下部'下垂体疾患、 甲状腺疾患、副甲状腺 (上皮小体)疾患、副腎皮質,髄質疾患、糖代謝異常、脂質 代謝異常、タンパク質代謝異常、核酸代謝異常、先天性代謝異常 (フェニールケトン 尿症、ガラクトース血症、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症)、無アルブミン血 症、ァスコルビン酸合成能欠如、高ピリルビン血症、高ビリルビン尿症、カリクレイン欠 損、肥満細胞欠損、尿崩症、バソプレツシン分泌異常、侏儒症、ウォルマン病 (酸リバ ーゼ (Acid lipase)欠損症)、ムコ多糖症 VI型等が挙げられるがそれらに限定され ない。
[0128] 別の実施形態において、本発明が対象とし得る疾患および障害は、呼吸器系のも のであり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、肺疾患 (例えば、肺炎、 肺癌など)、気管支疾患が挙げられるがそれらに限定されない。
[0129] 別の実施形態において、本発明が対象とし得る疾患および障害は、消ィ匕器系のも のであり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、食道疾患 (たとえば、食 道癌)、胃 ·十二指腸疾患 (たとえば、胃癌、十二指腸癌)、小腸疾患 ·大腸疾患 (たと えば、大腸ポリープ、結腸癌、直腸癌など)、胆道疾患、肝臓疾患 (たとえば、肝硬変 、肝炎 (A型、 B型、 C型、 D型、 E型など)、劇症肝炎、慢性肝炎、原発性肝癌、アル コール性肝障害、薬物性肝障害)、脾臓疾患 (急性脾炎、慢性脾炎、脾臓癌、嚢胞 性脾疾患)、腹膜 '腹壁'横隔膜疾患 (ヘルニアなど)、ヒルシュスプラング病が挙げら れるがそれらに限定されない。
[0130] 別の実施形態において、本発明が対象とし得る疾患および障害は、泌尿器系のも
のであり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、腎疾患(腎不全、原発性 糸球体疾患、腎血管障害、尿細管機能異常、間質性腎疾患、全身性疾患による腎 障害、腎癌など)、膀胱疾患 (膀胱炎、膀胱癌など)が挙げられるがそれらに限定され ない。
[0131] 別の実施形態において、本発明が対象とし得る疾患および障害は、生殖器系のも のであり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、男性生殖器疾患 (男性不 妊、前立腺肥大症、前立腺癌、精巣癌など)、女性生殖器疾患 (女性不妊、卵巣機 能障害、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮癌、子宮内膜症、卵巣癌、絨毛性疾患など) が挙げられるがそれらに限定されな 、。
[0132] 本発明が医薬目的で使用される場合、そのような医薬は、薬学的に受容可能なキ ャリアなどをさらに含み得る。本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリア としては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。医薬目的で使用され る場合は、そのまま医薬として使用することのほか、解凍してもとに戻して力も医薬と して使用することも含まれることが理解される。
[0133] そのような適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤 、保存剤、着色料、風味料、希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩 衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントが挙げられ るがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、ジメチルスルホキシド (D MSO);プロピレングリコール;および C)培地を含む媒体、あるいはその媒体を用い て維持された幹細胞ある 、はその幹細胞力も調製された分ィ匕細胞などを、 1つ以上 の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で 投与される。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄 液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充す ることが可能である。
[0134] 本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエン トに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不 活性であり、例えば、リン酸塩、クェン酸塩、または他の有機酸;ァスコルビン酸、 a— トコフエロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質 (例えば、血清アルブミン、ゼラチン
または免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビュルピロリドン);アミノ酸 (例 えば、グリシン、グルタミン、ァスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジ サッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む); キレート剤(例えば、 EDTA);糖アルコール(例えば、マン-トールまたはソルビトー ル);塩形成対イオン (例えば、ナトリウム);ならびに Zあるいは非イオン性表面活性 化剤(例えば、 Tween、プル口ニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG ) )などが挙げられるがそれらに限定されな 、。
[0135] 例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと 混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤 (例 えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希 釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。
[0136] 必要に応じて本発明の医薬は、着色料、保存剤、香料、矯味矯臭剤、甘味料等、 ならびに他の薬剤を含んで 、てもよ 、。
[0137] 本発明の処置方法において使用される医薬の量は、使用目的、対象疾患 (種類、 重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮 して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被験体 (または患 者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患 (種類、重篤度など)、患者の年 齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定す ることができる。頻度としては、例えば、毎日一数ケ月に 1回(例えば、 1週間に 1回一 1ヶ月に 1回)の投与が挙げられる。 1週間一 1ヶ月に 1回の投与を、経過を見ながら 施すことが好ましい。投与する量は、処置されるべき部位が必要とする量を見積もる こと〖こよって確定することができる。
[0138] 本明細書において「指示書」は、本発明の医薬などを投与する方法または診断する 方法などを医師、患者など投与を行う人、診断する人 (患者本人であり得る)に対して 記載したものである。この指示書は、本発明の診断薬、医薬などを投与する手順を指 示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁( 例えば、 日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局 (FDA)など)が規 定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指
示書は、いわゆる添付文書 (package insert)であり、通常は紙媒体で提供される 力 それに限定されず、例えば、電子媒体 (例えば、インターネットで提供されるホー ムページ (ウェブサイト)、電子メール)のような形態でも提供され得る。
[0139] 本発明の方法による治療の終了の判断は、商業的に利用できるアツセィもしくは機 器使用による標準的な臨床検査の結果または上記疾患 (例えば、造血疾患、神経疾 患、心臓疾患など)に特徴的な臨床症状の消滅によって支持され得る。治療は、上 記疾患 (例えば、造血疾患、神経疾患、心臓疾患など)の再発により再開することが できる。
[0140] 本発明はまた、本発明の医薬の 1つ以上の成分 (例えば、 ES細胞のような幹細胞) および本発明の保存媒体を満たした 1つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキ ットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政 府機関が定めた形式の通知力 このような容器に任意に付属し得、この通知は、ヒト への投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。
[0141] 本発明が研究用試薬として使用される場合、本発明の幹細胞は、当局の定める倫 理規定に従って、本発明の保存媒体を用いて分配されることが望ましい。そのような 規定としては、例えば、日本政府が定めるものが挙げられるがそれに限定されない。 以下にその規定の例を記載する。
[0142] 榭立機関の業務および義務として政府指針などに定められているもの従い、ヒト ES 細胞の榭立および使用に関する指針に従って承認された研究計画をもつ使用機関 からの要請を受けて、榭立後特性解析を行った細胞株を本発明の保存媒体を用い て分配する。分配の開始の時期としては、多分化能と正常核型の検定と確認を行つ た細胞株を増殖させて、細胞株保存のために必要な数の凍結細胞サンプルが得ら れた時点力 分配を始めることが企図される。
[0143] 榭立と分配を開始する時点では、分配機関が分配に責任を持って担当する。分配 機関には細胞培養に必要なクリーンルームと機器および細胞凍結保存用液体窒素 タンクが整備されるべきである。ヒト ES細胞株の榭立チームが使用し、その人員構成 は、例えば、研究者 5名(内 2名は医師免許保持者が好ましい)力もなる。細胞の分配 を開始する時点では、さらに実験補佐員 2名程度と事務補佐員 1名程度が実務を分
担してもよい。細胞分配および研修の要請の増加に応じて、あらたに人員および施 設を増加させることが好まし 、。
[0144] 分配の方法および条件は例えば以下のようなものを挙げることができる: ES細胞株 の維持および増殖の継続に必要な榭立機関における細胞ストックの確保が優先され るべさである。
[0145] 幹細胞の提供者がヒトである場合、インフォームド 'コンセントを得る必要がある。
[0146] ヒト受精胚の提供候補者については、 ES細胞研究に (好ましくは、本発明の保存 媒体を用いた)凍結胚を提供依頼にあたってのインフォームド 'コンセントによる同意 が与えられるかどうかを、次のような手順に従って確認する。不妊治療の開始から凍 結胚の廃棄決定に至る手続き、および関連文書、その後に始まる ES細胞研究への 提供に関するプロセスの例示的概要を示す。
[0147] (1) 不妊治療の結果作られて凍結保存されているヒト受精胚が、子宮へ移植され ることなく廃棄させることが決定するまでは、 ES細胞研究とは全く無関係な不妊治療 プロセスとして患者と不妊治療担当医師による臨床的問題である。
[0148] (2) 廃棄させることが決定した凍結胚について、不妊治療担当医師が中立的立場 を保ちながら、 ES細胞の研究について説明を受けるかどうか提供候補者に質問する
[0149] (3) 説明を受けたいとの意思を示した提供候補者に対して、榭立機関の説明者( 榭立責任者以外)が ES細胞とはなにか、将来の医療への応用の可能性、研究内容 の概要、 ES細胞株榭立によって提供者は利益も不利益も受けないこと、提供者のプ ライパシーは保護されること、などについて十分に説明する。これらの説明は、全く中 立の立場で行われる。
[0150] (4) 提供候補者は説明を受けた後に、提供医療機関の長に対して提供に同意す るかどうかを回答する。同意はインフォームド 'コンセントの書類への署名を必要とし、 その書類は提供医療機関が厳重に保管する。特定の提供候補者による同意あるい は不同意に関する結果は榭立関係者には伝えない。
[0151] (5) 提供候補者による同意の署名カゝら一ヶ月間以上の猶予期間をおいて、提供候
補者の意思に変更がない場合は、凍結胚を榭立機関に移送する。その際、複数の 提供者からの凍結胚を同時に引渡すとともに、凍結胚容器力ゝらは提供者を同定でき るラベルなどを完全に除去しておく。従って、榭立機関の説明担当者が複数の提供 候補者と面会はするが、その氏名などの個人情報は知ることがなぐまたそれらの候 補のうち誰が同意して提供者となった力も知ることがないので、提供者の匿名性は保 証され得る。さらに、複数の提供者からの凍結胚を使ってその一部のみ力 細胞株 が榭立されるので、どの提供者の胚から実際に ES細胞株が樹立されたかは榭立機 関と提供医療機関の両者ともに知ることができな ヽようにする。
[0152] 本明細書において「キット」とは、通常 2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部 分 (例えば、試薬、細胞、本発明の保存媒体など)が提供されるュ-ットをいう。混合 されて提供されるべきでなぐ使用直前に混合して使用することが好ましいような組成 物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。例えば、本発明の保存 媒体を用いて保存をする場合、各成分 (例えば、 DMSO、プロピレングリコール、ェ チレングリコール、ァセトアミドなど)が各々配置されている。そのようなキットは、好ま しくは、提供される部分 (例えば、試薬、細胞、本発明の保存媒体の各成分など)をど のように処理すべきかを記載する説明書を備えていることが有利である。このような説 明書は、どのような媒体であってもよぐ例えば、そのような媒体としては、紙媒体、伝 送媒体、記録媒体などが挙げられるがそれらに限定されない。伝送媒体としては、例 えば、インターネット、イントラネット、ェクストラネット、 WAN, LANなどが挙げられる がそれらに限定されない。記録媒体としては、 CD— ROM、 CD-R,フレキシブルデ イスク、 DVD— ROM、 DVD-R, MD、ミニディスク、 MO、メモリースティックなどが挙 げられるがそれらに限定されない。
[0153] (一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手 法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、 Sambrook J. et al. (1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual,し old Spring Harborおよびその 3rd Ed. (2001); Ausubel, F. M. (1987). Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. AssociatES and Wiley— Interscience; Ausubel, F. M. (1989). Short
Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley— Interscience; Innis, M. A. (1990). PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press; Ausubel, F. M. (1992). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Ausubel, F. M. (1995). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Innis, M. A. et al. (1995). PCR Strategies, Academic Press; Ausubel, F. M. (1999). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, and annual updates; Sninsky, J. J. et al. (1999). PCR Applications: Protocols for Functional Genomics, Academic Press ¾'J 冊実験医学「遺伝子導入 &発現解析実験法」羊土社、 1997などに記載されており、 これらは本明細書において関連する部分 (全部であり得る)が参考として援用される。
[0154] 人工的に合成した遺伝子を作製するための DNA合成技術および核酸化学につい て ίま、 f列 J¾、 Gait, M. J. (1985). Oligonucleotide Syntnesis: A Practical Approach, IRL Press; Gait, M. J. (1990). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Eckstein, F. (1991). Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, IRL Press; Adams, R. L. et al. (1992). The Biochemistry of the Nucleic Acids, Chapman & Hall; ^habarova, Z. et al. (1994). Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim; Blackburn, G. M. et al. (1996). Nucleic Acids in
Chemistry and Biology, Oxford University Press; Hermanson, G. T. (I99b .
Bioconjugate Techniques, Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書 において関連する部分が参考として援用される。
[0155] (好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本 発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に 限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参 酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。なお、本
発明の好ましい実施形態において使用される場合、特に言及しない限り、%は重量 %を示す。
[0156] (幹細胞保存 DA媒体)
1つの局面において、本発明は、幹細胞を保存するための媒体 (medium)であつ て、 A) DMSO; B)プロピレングリコール;および C)培地(culture medium)、を含 む、媒体 (本明細書において「DA媒体」とも称する)を提供する。ここで、 DMSOは、 細胞培養および Zまたは保存に適したものであれば、どのような等級または由来のも のであっても使用することができる。プロピレングリコールもまた、細胞培養および Z または保存に適したものであれば、どのような等級または由来のものであっても使用 することができる。このようなものは、各々の成分が単独で市販されたものを使用する ことができる。培地としては、細胞培養および Zまたは保存に適したものであれば、ど のような等級または由来のものであっても使用することができる。そのような培地として は、例えば、 DMEM培地、 F12培地、 CMK培地(実施例 1において説明される)、 DMEM/F12 (1: 1)培地などまたはそれらの混合物を含むものを使用することがで きるがそれらに限定されない。好ましくは、このような培地としては、 CMK培地が使用 されるがそれらに限定されず、保存が企図される幹細胞に応じてその培地は変更し て使用することができる。このような培地には、ゥシ胎仔血清 (FBS)、 KSRなどの補 充物が補充されていてもよい。好ましくは、 DMEMZF12 (1 : 1)培地 +KSRが使用 され、より好ましくは、 DMEMZF12 (1 : 1)培地 + 20%KSRが使用される。
[0157] 本発明は、プロピレングリコールと DMSOとの混合物力 幹細胞の保存(特に、凍 結保存)に特に適切であることを初めて見出したことによって完成されたものであり、 それゆえ、この混合物が適切な培地中に適切な濃度で存在していることが必要であ る。そのような濃度は、本明細書の開示をもとに当業者が適宜決定することができる 力 好ましくは、例えば、 DMSOとプロピレングリコールとは、通常、約 1 : 5—約 5 : 1 で混合され、好ましくは約 1 : 2—約 2 : 1のモル比率で混合され、より好ましくは、 DM SOとプロピレングリコールとは、約 1: 1より DMSOが若干多いモル比率(例えば、約 3: 2のモル比率)で混合されることが有利である。このような比率でこれらの成分を混 合した媒体を用いることによって、従来達成不可能であった程度で幹細胞 (特に、 ES
細胞)を凍結保存することが可能になった。
[0158] 1つの実施形態において、本発明において使用される DMSOは、本発明の媒体中 15— 40%を占めることが好ましいがそれに限定されず、 15%未満または 40%以上 DMSOが含まれる媒体もまた、本発明の目的に応じて使用することができることが理 解され得る。
[0159] 別の実施形態において、本発明において使用されるプロピレングリコールは、本発 明の媒体中約 5%—約 35%を占めることが好ましいがそれに限定されない。 5%未 満または 35%以上プロピレングリコールが含まれる媒体もまた、本発明の目的に応じ て使用することができることが理解され得る。
[0160] 好ましい実施形態において、 DMSOとプロピレングリコールとは、合計で、本発明 の媒体の約 30%より多ぐかつ、本発明の媒体の約 50%未満を占めることが好まし い。この範囲において、従来に比べて少なくとも 3倍の、より好ましくは 5倍の、さらに 好ましくは 10倍の保存効率が達成された力もである。従って、この範囲はあくまでも 好ましい範囲であり、当業者は、 DMSOとプロピレングリコールとが、認識可能な程 度の量で混合される限り、従来達成されていた効率より高い保存効率で幹細胞 (特 に、 ES細胞)を保存することができることを理解する。
[0161] 好ましい実施形態において、本発明の媒体は、ァセトアミドおよび糖からなる群より 選択される成分をさらに含む。より好ましくは、本発明の媒体は、ァセトアミドを含むこ とがなお有利である。ァセトアミドを含むことによって、より高い保存効率が達成された 力もである。ァセトアミドは、任意の割合で本発明の媒体に含ませることができるが、 好ましくは、 DMSOまたはプロピレングリコールの 10%— 100%の間、より好ましくは 25%— 75%の間の割合で含ませることができる。あるいは、本発明の媒体中に 0. 5 M— 1. 5Mの間で存在することが好ましい。また、ある実施形態において、本発明に おいて糖を含むことが好ましいのは、糖を含むことによって、凍結保存効率が上昇す ることが一般的に知られているからである。この糖としては、例えば、スクロースを含ま せることができるが、それに限定されず、例えば、グルコース、ラフイノース、トレハロー ス、フイコール (Ficoll)、ラタトース、ソルビトールなどを挙げることができるがそれらに 限定されない。
[0162] 別の好ましい実施形態において、本発明の媒体において、 DMSOは、約 1一 4M の間で存在し、より通常には約 1一 3Mの間で存在し、同様にプロピレングリコールは 、約 1. 5— 6Mの間で存在し、より通常には約 2— 4Mの間で存在する。より好ましく は、それぞれ、 DMSOは約 2Mで存在し、プロピレングリコールは約 3Mで存在する ことが有利である。この濃度で存在することによって、凍結保存効率が従来のガラス 化凍結法に比べて少なくとも 3倍、通常少なくとも約 5倍になるからである。
[0163] ここで、 2倍濃度で作製するとタンパク質、塩などが析出して液が濁ることがあるが、 そのような場合、析出した後の液状の媒体を使用することができる。従って、これらの 成分の合計濃度の上限は、通常およそ 10Mであるが、各々の成分の比率によっても 変化する。このような上限は、当業者が本明細書を参酌して容易に決定することがで きる。また、この上限濃度は、基材にする培地のタンパク質濃度によっても最高濃度 が変わり得る。好ましくは、例示の範囲で、沈殿等を生じない組み合わせとしては、例 えば、合計 9Mを挙げることができるがそれに限定されない。最も好ましい組み合わ せは、 DMSO、ァセトアミドおよびプロピレングリコール力 それぞれ約 2M、約 1Mお よび約 3M付近である。ァセトアミドについては、除去しても他の 2成分の濃度を最適 にすると 7割程度の効果はあることから、 0— 2Mの濃度範囲が適切であり得、好ましく は 0. 5M— 2Mであり得る。
[0164] 別の好ましい実施形態において、本発明の媒体において、 DMSOは、約 1一 4M の間で存在し、より通常には約 1一 3Mの間で存在し、同様にプロピレングリコールは 、約 1. 5— 6Mの間で存在し、より通常には約 2— 4Mの間で存在し、かつ、ァセトアミ ドをさらに含み、このァセトアミドは、通常は、約 0— 2M、より通常には、約 0. 5M— 2 M存在する。より好ましくは、本発明の媒体において、 DMSOは、約 2Mで存在し、 プロピレングリコールは約 3Mで存在し、かつ、ァセトアミドは、約 1Mで存在すること が有利である。この濃度で存在することによって、凍結保存効率が従来のガラス化凍 結法に比べて少なくとも 5倍、通常約 10倍程度になるからである。
[0165] 本発明が保存の対象とする幹細胞は、どのような幹細胞であってもよぐしたがって 、組織幹細胞および ES細胞を含む幹細胞力 任意に選択される。組織幹細胞として は、例えば、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、心筋幹細胞、骨髄細胞など
が挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、本発明が保存の対象とする幹細 胞は、 ES細胞を含む。 ES細胞は、多能性を保持しつつ保存することが困難であると 考えられており、本発明によって、初めて、従来では達成できな力つた保存効率を達 成することができた力 である。本発明によって達成することができた保存効率によつ て、 ES細胞の一般配布という行為が実質的に可能になったという事実にかんがみる と、本発明の産業上における有用性および意義は高い。特に、本発明が対象とする 幹細胞は、霊長類 ES細胞であり、特にヒト ES細胞である。このような霊長類、特にヒト の ES細胞が保存可能になったことによって、一般配布が可能になり、霊長類および ヒト ES細胞を用いた研究を行うことが格段に進歩したと 、うことは特筆に価すると!/、う ことができる。
[0166] 本発明の幹細胞の保存は、通常凍結保存であるがそれに限定されない。本発明の DMSO、プロピレングリコールなどを含む媒体は、凍結保存によってその効力を通 常発揮すると考えられるからである。
[0167] 好ましくは、本発明の幹細胞の保存は、凍結保存によって行われる。凍結保存は、 媒体が凍結するような状態で、行われるのあれば、どのような形態であってもよいが、 通常 0°C以下、— 20°C以下、好ましくは、— 80°C以下、より好ましくは、— 150°C以下、 さらに好ましくは液体窒素下またはそれよりも低い温度で行われることが好ましい。
[0168] 好ましい実施形態において、本発明の保存は、急速凍結保存によって行われる。
本発明において「急速凍結保存」とは、通常 30°CZ分以上の速度で、より通常には 5 0°CZ分以上の速度で凍結されることをいう。好ましくは、急速凍結保存は、 100°C/ 分以上、より好ましくは、 500°CZ分以上であることが有利である。ここで、凍結速度 は、初速および終速については、考慮しないことが好ましい。あるいは、この凍結速 度は、平均速度であり得る。凍結開始直後、および目的とする温度に達する直前は、 通常凍結速度が緩和される可能性が高いからである。あるいは、通常の培養温度( 例えば、 37°C)から、目的とする凍結保存温度 (例えば、— 196°C)までに要する時間 が例えば、通常 5分以内、より好ましくは 3分以内、さらに好ましくは 1分以内、もっとも 好ましくは 15秒以内であることもまた、急速凍結保存の定義内に入る。
[0169] 別の好ましい実施形態において、本発明の保存の後、実際に使用する際には、本
発明の幹細胞は、急速解凍されることが有利である。本発明において「急速解凍」と は、通常 30°CZ分以上の速度で、より通常には 50°CZ分以上の速度で解凍される ことをいう。好ましくは、急速解凍は、 100°CZ分以上、より好ましくは、 500°CZ分以 上であることが有利である。ここで、解凍度は、初速および終速については、考慮しな いことが好ましい。あるいは、この凍結速度は、平均速度であり得る。解凍開始直後、 および目的とする温度 (例えば、 37°C)に達する直前は、通常解凍速度が緩和される 可能性が高いからである。あるいは、通常の保存温度 (例えば、— 196°C)から、目的 とする温度 (例えば、 37°C)までに要する時間が例えば、通常 5分以内、より好ましく は 3分以内、さらに好ましくは 1分以内、もっとも好ましくは 15秒以内であることもまた 、急速解凍の定義内に入る。
[0170] 本発明では、急速凍結および急速解凍は、速ければ速!、ほどよ 、ことが理解され る。
[0171] 本明細書にぉ 、て「ガラス化保存法」または「ガラス化法」とは、本明細書にぉ ヽて 交換可能に用いられ、非特許文献 4に記載されるような従来技術に記載される方法 をいい、特に、幹細胞などの凍結すべき細胞を、液体窒素などでの極低温での凍結 および解凍により、保存および再利用する方法をいう。従来のガラス化法では、通常 ストロー状の開口管を用いて凍結することが特徴であり、このような方法では、汚染の 危険性がある。また、従来のガラス化法は、卵、精子または胚の凍結に用いられてき た方法であるが、ガラス管を用いるため、保存できる量が比較的少なぐ操作も煩雑 であるという欠点もあった。本発明は、これらの欠点を克服するという利点も有する。
[0172] 本明細書において「簡易ガラス化保存法」または「簡易ガラス化法」は、本明細書に おいて交換可能に用いられ、幹細胞などの凍結すべき細胞を、本発明の媒体を用い て液体窒素などを用いて急速冷凍し、その後、急速解凍する方法をいい、本発明に おいて初めて提供されるものであり、本発明の範囲内にある。従来のガラス化法とは 、ストロー状の開口管を用いるのではなぐ好ましくは封入管のような汚染しにくいも のを用いる点に特徴があり、このほか、簡易ガラス化法では、凍結細胞数のスケール アップが容易であり、ガラス化法に比べて操作が楽で簡易であるという利点があり、さ らに、特別な器具 (例えば、ガラス管)を用いる必要がないという点も特徴である。
[0173] (DE媒体)
別の局面において、本発明は、幹細胞を保存するための媒体 (medium)であって 、 A) DMSO; B)エチレングリコール;および C)培地(culture medium)、を含み、 ここで、該 DMSOおよび該エチレングリコールの少なくともいずれか一方は、 20重量 %未満である、媒体 (本明細書において「DE媒体」ともいう)を提供する。この媒体は 、スクロースを含む場合に DES媒体とも呼ばれ、ガラス化凍結法で頻繁に用いられ ているが、本発明では、従来よりも薄い DMSOおよび Zまたはエチレングリコールを 用いることによって、予想外に高 、効率で幹細胞を保存することができたと 、うことが 初めて見出された。特に、 DMSOおよびエチレングリコールは、約 15%ずつ含まれ る場合に、従来の DES媒体(DMSO20%、エチレングリコール 15%、スクロース 0. 5M)よりも顕著に高い保存効率 (例えば、 0. 75 X DESの場合約 5倍)を達成するこ とができたことは驚くべき発見である。このように、本発明の好ましい媒体では、糖を 含むことが有利である。糖を含むことによって、凍結保存効率が上昇することが一般 的に知られている力もである。この糖としては、例えば、スクロースを含ませることがで きる。
[0174] 依り好ましい実施形態では、本発明の媒体において、 DMSOは本発明の媒体の 約 7. 5%— 30%含まれ、エチレングリコールは本発明の媒体の約 7. 5%— 30%含 まれ、スクロースは、約 0. 1875M— 0. 75M含まれることが有利である。
[0175] 従って、さらに好ましい実施形態において、本発明の媒体において、 DMSOは本 発明の媒体の約 15%含まれ、エチレングリコールは本発明の媒体の約 15%含まれ 、スクロースは、約 0. 375M含まれることが有利である。この比率において、従来の D ES X 1媒体を用いた場合に比べて約 5倍以上の保存効率を達成した力 である。
[0176] 好ましくは、本発明の幹細胞の DE媒体を用いた保存は、凍結保存によって行われ る。凍結保存は、媒体が凍結するような状態で、行われる限り、どのような形態であつ てもよいが、通常 0°C以下、 20°C以下、好ましくは、 80°C以下、より好ましくは、 1 50°C以下、さらに好ましくは液体窒素下またはそれよりも低い温度で行われることが 好ましい。 DE媒体を用いた場合もまた、急速凍結保存を行うことが好ましい。
[0177] (DA媒体を用いた細胞保存法)
別の局面において、本発明は、幹細胞を保存するための方法であって、 A) a) DM SO ;b)プロピレングリコール;および c)培地、を含む、媒体中で、幹細胞を急速凍結 させる工程、を包含する、方法を提供する。ここで、この媒体において含まれる DMS 0、プロピレングリコール、培地およびその他の成分についての詳細な説明は、上述 の DA媒体の節において詳述されており、本発明の細胞保存法においてもまた、そこ で説明される任意の形態を採用することができることが理解される。ここで、急速凍結 もまた、上述の DA媒体の節において説明されており、本発明の細胞保存法におい てもまた、そこで説明される任意の形態を採用することができることが理解される。
[0178] 好ましくは、本発明における急速凍結は、封入管を用いて行われる。従来のガラス 化凍結保存法では、先が開いたストロー状の管を用いて、幹細胞を凍結していた。保 存効率に影響があるとされていた力 である。しかし、そのような開放的な構造では、 細胞汚染の問題が生じることから、本発明では、そのような構造のものを使用しないこ とが好ましい。し力も、本発明では、そのようなストロー状のものを使用しなくても、高 度の細胞保存効率を達成したことは従来の保存技術からは達成できな力つたことと いえる。
[0179] 好ましい実施形態において、本発明の保存方法の際に採取される幹細胞は、大き なコロニーのまま剥離されたものである。理論に束縛されることを望まないが、大きな コロニーのまま剥離されたほうが、細胞の凍結保存効率が上昇するからである。
[0180] 本発明の保存方法において、幹細胞と、媒体とは、通常 1 X 103Ζΐ00 /ζ 1— 5 X 1 oVioo μ 1の比率で存在し、好ましくは、 1 X IOVIOO 1一 1 X IOVIOO μ 1の 範囲で存在することが有利である。理論に束縛されることを望まないが、上記範囲内 の比率で細胞を混ぜることによって、少なすぎると操作の際にロスすることが多くなり 、多すぎると細胞を懸濁することが難しくなることが予測されるからである。
[0181] 1つの実施形態において、本発明の急速凍結は、任意の凍結手段を用いて行われ る力 好ましくは、液体窒素中で行われる。比較的安価でかつ急速凍結を容易に行う ことができるからである。液体窒素を用いた凍結を行う場合には、管の全体が液体窒 素に浸されていること、細胞に保存液を加えた後、速やかに液体窒素中に浸すという 点に注意する必要がある。細胞保存効率に影響することが考えられるからである。ま
た、低温フリーザーまたはドライアイスを用いるよりも急速に凍結することができるとい う効果が期待されるからである。
[0182] 好ましい実施形態において、本発明の急速凍結の後、保存し、その後、使用時に は、急速に解凍する工程をさらに包含することが有利である。理論に束縛されることを 望まないが、急速に解凍することによって、細胞の保存時の生存効率を上げることが 可能となった力 である。
[0183] 上記急速凍結および急速解凍は、上記 DA媒体の節にお ヽて行った説明に記載さ れて 、る任意の形態を用いることができる。
[0184] 1つの実施形態において、本発明の幹細胞の保存において、急速解凍は、ウォー ターバス中で振とうして解凍することも可能であり、温めた培地を力卩ぇピペッティング することが好ま U、。速やかに細胞を解凍することができる力もである。
[0185] 本発明が保存の対象とする幹細胞は、どのような幹細胞であってもよぐしたがって 、組織幹細胞および ES細胞を含む幹細胞力 任意に選択される。組織幹細胞として は、例えば、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、心筋幹細胞、骨髄細胞など が挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、本発明が保存の対象とする幹細 胞は、 ES細胞を含む。 ES細胞は、多能性を保持しつつ保存することが困難であると 考えられており、本発明によって、初めて、従来では達成できな力つた保存効率を達 成することができた力 である。本発明によって達成することができた保存効率によつ て、 ES細胞の一般配布という行為が実質的に可能になったという事実にかんがみる と、本発明の産業上における有用性および意義は高い。特に、本発明が対象とする 幹細胞は、霊長類 ES細胞であり、特にヒト ES細胞である。このような霊長類、特にヒト の ES細胞が保存可能になったことによって、一般配布が可能になり、霊長類および ヒト ES細胞を用いた研究を行うことが格段に進歩したと 、うことは特筆に価すると!/、う ことができる。
[0186] (DE媒体を用いた保存方法)
別の局面において、本発明は、幹細胞を保存するための方法であって、 A) a) DM SO ;b)エチレングリコール;および c)培地(culture medium)、を含み、ここで、該 DMSOおよび該エチレングリコールの少なくともいずれか一方は、 20重量%未満で
ある、媒体中で、幹細胞を凍結させる工程、を包含する、方法を提供する。
[0187] ここで、 DE媒体としては、上記 DE媒体の節にぉ 、て説明されて 、る任意の形態を 用!/、ることができる。
[0188] 好ましくは、本発明の幹細胞の保存は、凍結保存によって行われる。凍結保存は、 媒体が凍結するような状態で行われる限り、どのような形態であってもよいが、好まし くは、 0°C以下、— 20°C以下、— 80°C以下、より好ましくは、— 150°C以下、さらに好ま しくは液体窒素下またはそれよりも低 、温度で行われることが好ま 、。 DE媒体を用 V、た場合、好ましくは急速凍結保存を行うことが有利である。
[0189] (DA媒体を用いた幹細胞保存システム)
別の局面において、本発明は、幹細胞を保存するためのシステムであって、 A) a) DMSO ;b)プロピレングリコール;および c)培地、を含む、媒体; B)急速凍結する手 段、を備える、システムを提供する。ここで、この媒体において含まれる DMSO、プロ ピレンダリコール、培地およびその他の成分についての詳細な説明は、上述の DA媒 体の節において詳述されており、本発明の細胞保存法においてもまた、そこで説明 される任意の形態を採用することができることが理解される。ここで、急速凍結もまた、 上述の DA媒体の節において説明されており、本発明の細胞保存法においてもまた 、そこで説明される任意の形態を採用することができることが理解される。従って、急 速凍結する手段としては、任意の凍結手段 (例えば、液体窒素)を用いることができる 。本発明の急速凍結手段は、上記「DA媒体を用いた細胞保存法」の節において例 示されている任意のものを使用することができる。
[0190] 好ましくは、本発明のシステムは、さらに、封入管を備えることが好ましい。封入管を 使用することによって、本発明は、無菌的に幹細胞を効率よく保存することができるよ うになつた力もである。このような無菌的な高効率の保存方法は、従来開示されてお らず、その有用性および意義は高い。
[0191] 本発明のシステムが保存の対象とする幹細胞は、どのような幹細胞であってもよぐ したがって、組織幹細胞および ES細胞を含む幹細胞から任意に選択される。組織幹 細胞としては、例えば、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、心筋幹細胞、骨 髄細胞などが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、本発明が保存の対象
とする幹細胞は、 ES細胞を含む。 ES細胞は、多能性を保持しつつ保存することが困 難であると考えられており、本発明によって、初めて、従来では達成できな力 た保 存効率を達成することができた力もである。本発明によって達成することができた保 存効率によって、 ES細胞の一般配布という行為が実質的に可能になったという事実 にかんがみると、本発明のシステムもまた、産業上における有用性および意義は高い 。特に、本発明が対象とする幹細胞は、霊長類 ES細胞であり、特にヒト ES細胞であ る。このような霊長類、特にヒトの ES細胞が保存可能になったことによって、一般配布 が可能になり、霊長類およびヒト ES細胞を用いた研究を行うことが格段に進歩したと V、うことは特筆に価すると 、うことができる。
[0192] (DE媒体を用いたシステム)
別の局面において、本発明は、幹細胞を保存するためのシステムであって、 A) a) DMSO ;b)エチレングリコール;および c)培地(culture medium)、
を含み、ここで、該 DMSOおよび該エチレングリコールの少なくともいずれか一方は 、 20重量%未満である、媒体; B)凍結する手段、を備える、システムを提供する。ここ で、使用される DE媒体中の DMSO、エチレングリコールなどは、上述の DE媒体の 節において説明される任意の形態を用いることができる。凍結手段は、当該分野に おいて使用される任意の手段を用いることができる。そのような手段としては、例えば 、液体窒素、低温フリーザー、冷凍庫、塩を付加した氷、ドライアイスなどが挙げられ るがそれらに限定されない。
[0193] (保存媒体の凍結保存のための使用)
別の局面において、本発明は、 a) DMSO ;b)プロピレングリコール;および c)培地 、を含む、媒体の、幹細胞を急速凍結保存するための、使用を提供する。ここで、 D MSO、プロピレングリコール、培地および追加の成分としては、上述の DA媒体の節 において説明される任意の形態を用いることができる。凍結保存についてもまた、上 述の DA媒体の節において説明される任意の形態を用いることができ、当業者は上 述の開示および下記実施例の記載から適宜任意の適切な形態で実施することがで きることが理解される。
[0194] 他の局面において、本発明は、 a) DMSO ;b)エチレングリコール;および c)培地(c
ulture medium)、含み、ここで、該 DMSOおよび該エチレングリコールの少なくと もいずれか一方は、 20重量%未満である、媒体の、幹細胞を凍結保存するための、 使用を提供する。ここで、 DMSO、エチレングリコール、培地および追加の成分とし ては、上述の DE媒体の節において説明される任意の形態を用いることができる。凍 結保存についてもまた、上述の DE媒体の節において説明される任意の形態を用い ることができ、当業者は上述の開示および下記実施例の記載力 適宜任意の適切な 形態で実施することができることが理解される。
[0195] 以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的の みに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例 にも限定されるものではなぐ請求の範囲によってのみ限定される。
実施例
[0196] 以下に示した実施例において使用した試薬は、特に言及しない限り和光純薬、
Sigmaから、細胞関連の試薬は Gibcoから得た。動物の飼育は、 National Society for Medical Researchg作成し 7こ「Principles of Laboratory Animal じ ar e」およひnstitute of Laboratory Animal Resource力 S作成、 National Inst itute of Health力 S公表した「Guide for the じ are and Use of Laborator y AnimalsJ (NIH Publication, No. 86— 23, 1985,改訂)に遵つて、京都大学 および日本政府が規定する基準に遵ぃ、動物愛護精神に則って行った。ヒトを対象 とする場合は、厚生労働省の基準に従い、事前に同意を得た上で実験を行う。その 同意方法は、本明細書において記載されるとおりである。
[0197] (実施例 1 :ヒト ES細胞の調製)
ヒト ES細胞の調製は、提供者の合意を得た上で、情報が完全に守られる形で行う。 具体的には、本明細書において別の場所において記載されるように、慎重に、かつ、 認証された機関で行う。以下に示す実験は京都大学再生医科学研究所において、 行われる。
[0198] まず、その一般的手順は以下のとおりである。 ES細胞のソースとなる胚を取得し、 凍結する。その後、凍結胚を解凍し、胚盤胞期まで培養する。次に、内部細胞塊を 分離し、細胞株を榭立する。幹細胞マーカー発現の有無および染色体検定により、
幹細胞であること、特に ES細胞であることを確認する。 ES細胞であることを確認する ために、幹細胞マーカー(アルカリ性フォスファターゼ活性、特異的抗原、 Oct3/4 など)の検出を行なう。また核型解析を行なって染色体数や形態が正常かどうかを検 定する。その後、分化能を検定する。培養下での分ィ匕能を検定するために、培養条 件の変更や細胞凝集塊作成による細胞分化の誘導と各種機能細胞への分化能の 解析を行なう。また免疫不全マウスなどへの移植を行なってテラトーマ形成による組 織分ィ匕能の解析を行なう。
[0199] 具体的には以下のように行う。
[0200] (ES細胞用培養液)
培地組成: (本明細書にぉ 、て CMK培地とも!、う)
DMEM/F12 (Sigma D— 6421) 80ml
非必須アミノ酸 (Gibco) 0. 8ml
200mM L グルタミン lml
KSR (Gibco) 20ml
2—メルカプトエタノール 0. 8 ^ 1
ヒト白血病阻害因子 (huLIF) (lO ^ g/ml) lOO ^ KlOng/ml) 塩基性線維芽細胞増殖因子 (bFGF) (lmg/ml) 0. 4 1 (4ngZml)。
[0201] (細胞解離液)
0. 25% トリプシン (リン酸緩衝ィ匕生理食塩水(PBS) )
ImM CaCl
2
20%KSR。
[0202] (ディッシュ)
フィーダ一をつくる培養ディッシュは予めゼラチンコートしておく。 0. 1%ゼラチン溶 液(swine skin, Type A: Sigma社製)で覆い、 37°Cで 1 時間以上インキュベー トする。培養ディッシュのゼラチン溶液を除き、細胞の懸濁液を加える。数時間経て ばフィーダ一細胞として使用可能である。
[0203] フィーダ一細胞を用いた ES細胞の榭立は、以下のように行った。
[0204] 1.フィーダ一細胞の培養液を ES細胞用の培養液に交換した。
[0205] 2.免疫手術法もしくは機械的操作により胚盤胞カゝら内部細胞塊を分離した。免疫 手術法は、簡単に述べると、以下のとおりである。
[0206] 酵素処理などにより透明帯を取り除き、マウス表面抗原に反応する抗体溶液内でィ ンキュペートした。次に補体溶液内でインキュベートすることによって最外層の細胞で ある栄養外胚葉が取り除かれ、内部細胞塊が分離された。
[0207] ヒト ES細胞の場合は、ヒトの細胞表面抗原に反応する抗体溶液を用いることに留意 して上記手順を行った。力-クイサル((株)ケアリー力も入手)の場合は、サルの細胞 表面抗原に反応する抗体溶液を用いることに留意して上記手順を行った。
[0208] 3.分離した内部細胞塊をフィーダ一細胞上で培養した。
[0209] 4.翌日内部細胞塊がフィーダ一細胞に接着して 、ることを確認して、培養液を交 換した。以後毎日培地交換した。
[0210] 5. 5— 10日後に内部細胞塊力も増殖してくる ES細胞様の細胞が認められるように なった。細胞塊が 100から 200 mになったら継代を行った。
[0211] 6.培養液をのぞき細胞解離液を入れた。
[0212] 7. 5から 10分間処理すると ES細胞様細胞が培養ディッシュよりはがれてくるので、 これを細く弓 I V、たガラス管で拾 、上げ数回出し入れすることで細胞塊を数個に分け た。
[0213] 8.培養液中で細胞解離液を洗浄して除き、新しいフィーダ一上に細胞塊を移した [0214] 9.翌日、培養液を交換した。以後毎日培地交換した。
[0215] 10.フィーダ一上で個々の細胞塊が 100— 200 m程度に増殖するのを確認した 後、同様の操作で継代を行った。
[0216] 11.細胞が十分増殖するようになれば(35mm培養ディッシュ 1枚に増えるぐらい) サル ES細胞の通常の継代操作と同様に継代ができるようになった。この段階に達す れば以後安定した培養が可能であることが確認される。
[0217] この実施例で榭立された細胞は、幹細胞であることが確認される。
[0218] 本実施例では、基本培地に DMEM/F12を使用した力 DMEMまたは他の基本培地 でも問題なく使用できることが示される。
[0219] (マーカーによる染色)
次に、榭立した細胞の未分化状態を、特異的マーカーによる染色により調べた。 E S細胞を、 4% PFAで固定し標準的な培養細胞の免疫染色法 (Willingham, M. C. et. al. , 1985. An Atlas of Immunofluorescence m Cultured Cell , Academic Press, Orlando, FL, pp. 1—13. ) に従い免疫染色を行つ た。ブロッキングは 0. 1% Triton XZPBSZ2%スキムミルクを用い室温で一時 間、洗いは 0. 1% TritonXZPBSを用い室温で 5分を 4回行った。一次抗体は SS EA— 4、 TRA— 1—60のモノクローナル抗体をそれぞれ 200 μ g/ml (CLONTECH )を 1Z100希釈したものを、二次抗体は FITC標識 goat 抗ー mouse IgG (H + L) (ZYMED LABORATORIES, INC)を 1Z200希釈したものを使用した。二次抗 体の反応後はローダミンファロイデイン (rhodamine phalloidin) (Molecular Pro be)、 DAPI (SIGMA)の順に染色を行 、シグナルを検出した。
[0220] ALP (アルカリホスファターゼ)の組織ィ匕学的染色は、以下のように行った。培養デ イツシュをダルベッコの PBS (—)で 2回洗浄した後、 4°Cの 95%冷エタノールで 30分 以上固定し、次いで 4°Cの無水エタノールで 30分以脱水した。固定液を除き、デイツ シュを室温で 0. 1M Tris— HCl(pH9. 0—9. 5)にて 5分間 3回洗浄した後、 1. 5 一 2mlの染色液(ナフトール AS— BIホスフェート(シグマ社、カタログ番号 N— 2125) 2. 5mgと、ファースト赤 TR塩(Sigma) 15mg [またはファースト紫 B塩 6mg (Sigma) 、ファースト青 BB塩 12. 5mg (Sigma) ]とを 0. 1M Tris— HC1緩衝液 25mlに加え 、遮光下で 3— 5分間撹拌して溶解し、次いで濾過する)を各ディッシュに加え、遮光 下で室温にて ALPを 15— 30分間染色した。 PBS (—)で 2回洗浄した後グリセロール を加え位相差立体顕微鏡で赤褐色に染まった ES細胞コロニーを検鏡した。
[0221] 結果力も明らかなように、榭立した幹細胞は通常どおり多分ィ匕能を保持していること が確認された。
[0222] このようにして得た ES細胞を、以下の保存実験において用いる。
[0223] 本実施例では、補填成分として KSRを使用した力 KSRのかわりに通常使用され ているゥシ胎仔血清でもよいようである。ただし、 KSRのほうがゥシ胎仔血清よりも良 い結果が出るようであった。
[0224] さらに必要に応じて 1一 2mg/mlのコラゲナーゼを添カ卩した。コラゲナーゼの添加に より、若干榭立しゃすくなるようである。
[0225] (実施例 2 :サル ES細胞の調製)
力-クイサルカ の ES細胞の調製は、実施例 1において記載されるヒトの ES細胞 の調製に準じて行った。力-クイサルは、(株)ケアリー力も入手し、施設内では、京 都大学において規定される基準に従って動物愛護精神にのっとって維持した。
[0226] このようにして得た ES細胞を、以下の保存実験において用いた。
[0227] (実施例 3:凍結保存の凍結保存のための媒体)
(1) 10% DMSOZCMK培地
9 ml の ES細胞培養培地に、 1mlの DMSOをカ卩え、 30°Cで保存。 4°Cで使用 した。
(2) DES (20%DMSO, 20%エチレングリコール, 0. 5Mスクロース ZCMK培地) スクロースを 1. 026g量り取り、 DMSOとエチレングリコールとをそれぞれ 2mlカロえ
、 ES細胞培養培地で 10mlにメスアップした。 30°Cで保存した。 4°Cで使用した。
(3) DAP (2M DMSO, 1Mァセトアミド, 3Mプロピレングリコール ZCMK mediu m)
ァセトアミドを 0. 65g量り取り、 1. 42mlの DMSOと 2. 24mlのプロピレングリコー ルを加え、 ES細胞培養培地で 10mlにメスアップした。 30°Cで保存した。 4°Cで使 用した。
[0228] (実施例 4:凍結保存法の比較)
実施例 2で調製した力-クイザル ES細胞を 10 cmディッシュで培養し、それぞれ 3 分の 1量ずつ、緩慢冷却法、ガラス化法、および簡易ガラス化法の 3法で凍結保存を 行った。 150°Cで数日間保存した後、それぞれの方法により、 ES細胞を解凍し、そ の 10分の 1量および、 2分の 1量をフィーダ一細胞でコートした 3. 5cmディッシュに 解凍した。各凍結保存法の効率については、解凍後 4日目の ES細胞のコロニー数 および、 ES細胞数をカウントして求めた。
[0229] (A1.緩慢冷却法)
従来技術として知られる緩慢冷却法は、 Geron社から販売されるキットに従って、
以下のようにして行った。その概略は非特許文献 3に記載されるとおりである。
[0230] 1) ES細胞をトリプシン処理し、出来るだけ大きなコロニーのままはがした。
[0231] 2)細胞を回収し、遠心分離した。
[0232] 3)上澄みを取り除き、ペレットに lmlの凍結保存液(10% DMSOZCMK培地) を加え、軽くピペッティングした。
[0233] 4)細胞懸濁液をクライオチューブ(ナルゲン、 systemlOO クライオジェニックバイ アル)に移した。
[0234] 5)クライオチューブを凍結保存容器 (ナルゲン、 Mr. frosty)に入れ、 80°Cのフリ 一ザ一中でー晚放置した。
[0235] 6)翌日、 150°Cのフリーザーに移し、保存した。
[0236] (A2.緩慢冷却法の解凍手順)
1)あらかじめ、 15 ml遠心チューブに培地を 10 mlカ卩えたものを準備しておいた。
[0237] 2)クライオチューブを 37°Cのウォーターバス中で振りながら、すばやく溶かした。
[0238] 3)氷が半分ほど溶けたら、遠心チューブに細胞懸濁液を移し、残った氷も培地を 加え、完全に溶力した後、チューブに移した。
[0239] 4) 1000 rpm (クボタ ユニバーサル冷却遠心分離機 5800)で 3分間遠心分離した。
[0240] 5)上澄みを取り除き、培地にサスペンドした。
[0241] 6)フィーダ一細胞でコートした 3. 5cmディッシュ 2枚に、それぞれ 10分の 1量およ び 2分の 1量まいた。
[0242] 7) 37°C、 5% COの条件下で、 4日間培養した。
2
[0243] (B1. ガラス化法)
ガラス化法もまた、従来技術に基づいて行ったが、使用した管はストロー状ではなく 、先が閉じた封入形状のものを用いた。そのほかは、非特許文献 4に基づいて行った
[0244] 1) ES細胞をトリプシン処理し、出来るだけ大きなコロニーのままはがした。
細胞を回収し、遠心分離した。
[0245] 2)上澄みを取り除き、ペレットに 200 1の凍結保存液(DES)で細胞をサスペンド した後、すぐにクライオチューブに移し、液体窒素中で急速凍結した。
[0246] 3)— 150°Cのフリーザーに移し、保存した。
[0247] (B2 ガラス化法の解凍手順)
1)あらかじめ、 15ml遠心チューブに培地を 10mlカ卩えたものと、 37°Cに温めた培 地を準備しておいた。
[0248] 2)クライオチューブに温めた培地 800 μ 1を加え、すばやくピペッティングして、急 速に氷を溶力した。
[0249] 3)完全に溶けたら、遠心チューブに細胞懸濁液を移し、 lOOOrpmで 3分間遠心分 離し 7こ。
[0250] 4)上澄みを取り除き、培地にサスペンドした。
[0251] 5)フィーダ一細胞でコートした 3. 5cmディッシュ 2枚に、それぞれ 10分の 1量およ び 2分の 1量まいた。
[0252] 6) 37°C、 5% COの条件下で、 4日間培養した。
2
[0253] (B1 ' 従来のガラス化法)
プラスチック製ストロー(250 μ 1、 IMV,フランス)をホットプレート上でやわらかくし て直径がほぼ半分になるまで引き伸ばす。細くした部分でストローを切断する。加工 したストローを放射線照射により滅菌する。
[0254] 4一 6個の ES細胞の塊を、 10%DMSO、 10%エチレングリコール ZDMEM + 20 %FBS中で、 37°Cで 1分間インキュベートし、次いで 20%DMSO、 20%エチレング リコール、 0. 5Mスクロース ZDMEM + 20%FBS中で 20秒間インキュベートした後 、同溶液 1一 2 1とともにストローの細いほうに吸い上げ、直ちに液体窒素を投入し、 急速凍結する。
[0255] (B2 '従来のガラス化法の解凍法)
解凍は、ストローを液体窒素力 取り出した 3秒後にストローの細いほうの先端を 0. 2Mスクロース ZDMEM + 20%FBSに浸し、ストロー内の液が解けたら反対の端を 封じる。これにより、ストロー内の気体部分の温度上昇に伴いストロー内の液は、培地 中に移動する。 1分間インキュベートし、 0. 1Mスクロース ZDMEM + 20%FBSに 細胞塊を移し、 5分間インキュベートする。 DMEM + 20%FBSで細胞塊を 5分間洗 浄し、これを 2回行い、フィーダ一細胞の上に移し培養する。
[0256] (CI 簡易ガラス化法)
本発明の簡易ガラス化法を説明する。
[0257] 1) ES細胞をトリプシン処理し、出来るだけ大きなコロニーのままはがした。
細胞を回収し、遠心した。
[0258] 2)上澄みを取り除き、ペレットに 200 1の凍結保存液(DAP)で細胞をサスペン ドした後、すぐにクライオチューブに移し、液体窒素中で急速凍結した。
[0259] 3)— 150°Cのフリーザーに移し、保存した。
[0260] (C2 簡易ガラス化法の解凍手順)
簡易ガラス化法で凍結して保存したものを利用する場合、ガラス化法 (B1)と同様 の方法で解凍することができる。
[0261] (D 幹細胞のコロニー数の計測)
1)解凍後 4日目に、 10分の 1量まいたディッシュの ES細胞のコロニー数を、倒立顕 微鏡下でカウントした。
[0262] (E 幹細胞の細胞数の計測)
1) ES細胞を 0. 25%トリプシンで処理した後、ピペッティングし、細胞を一つ一つバ ラバラにした。
[0263] 2)培地を lmlカ卩え、トリプシンの活性を止めた後、血球計算盤を用いて、 ES細胞の 数をカウントした。(細胞内小器官が多ぐ細胞の大きさも適当なものを ES細胞として カウントした。 GFPを導入した ES細胞を用いて確認した。
[0264] 図 1に上記実験結果を示す。図 1には、 A、 Bおよび Cの方法を用いた場合を示す。
図 1からも明らかなように、本発明の方法によって、従来方法よりも、顕著に優れた効 率で ES細胞などの幹細胞を保存することができることが実証された。また、従来の非 特許文献 4にお ヽて記載されるガラス化法で用いた場合は、本発明の DAPを用いて 行ったものを 100とした場合、凍結保存効率は 5— 10程度であった。従って、本発明 は、従来最高と言われて 、た Reubinoffのガラス化法に比べて 10倍以上の効果を 示すことができる。また、 B'で示される方法を用いた場合、手順が非常に煩雑であり 、効率も、 Bまたは Cの方法には及ばない。
[0265] (実施例 5 : DE媒体の効果)
次に、 DES媒体(DMSO20%、エチレングリコール 20%、スクロース 0. 5Mを X 1 溶液とする)の濃度を振って、その効果を確認した。ここでは、 0. 5 X DES, 0. 75 X DES、 1. O X DES, 1. 25 X DESおよび 1. 5 X DESの 5種類の媒体を調製して、 実施例 4に記載されるようにガラス化凍結法を行った。その結果を図 2に示す。図 2に 示すように、 1 X DESに比べて、 0. 75 X DESでの凍結効率が格段に上がっていた ことが分力ゝつた。これは、従来使用されている DESが、ガラス化凍結法においてもより 薄めの物を用いることが良いことを実証する。このような効果は従来知られておらず、 従って、本発明において初めて見出された効果を示す。
[0266] (実施例 6: DA媒体における DMSOとプロピレングリコールとの混合)
次に、 DA媒体において、 DMSOとプロピレングリコールの混合比が凍結保存効率 に与える影響を考慮した。
[0267] 15%、 20%、 25%、 30%の DMSOと、 15%、 20%、 25%、 30%のプロピレングリ コールとを混合した DA媒体を調製し、実施例 4に記載されるように簡易ガラス化法に よって凍結保存実験を行った。その結果を図 3に示す。図から明らかなように、 DMS Oとプロピレングリコールとは、合計で約 30%—約 50%、その比率は、約 1: 2— 2 : 1 で存在することが好ましいことが明らかになった。しかし、どの混合比でも、 DAP媒体 には効率は及ばなかつたが、従来技術で達成された凍結保存効率よりも格段に優れ た効率であることには変わりはな力つた。
[0268] (実施例 7:媒体の説明 プロピレングリコールおよび DMSOの単独の効果)
DMSOおよびプロピレングリコールがそれぞれ、 5%、 10%、 15%、 20%、 30%、 40%、 50%、 60%単独で存在する保存媒体を用いて、その凍結保存効率における 効果を確認した。実施例 4に記載の通り、簡易ガラス化法を行った。その結果を図 4 および図 5に示す。結果から明らかなように、 DMSOは単独では 20— 40%、プロピレ ングリコールは 40— 60%で存在することが好ましいことが明らかになった。しかし、ど の存在比でも、 DAP媒体には効率は及ばな力つた。
[0269] また、エチレングリコールのみを含むものについても、凍結保存効果を見た。すると 、 40%の点において DAPの 40%程度の効率を示すことが明らかになった。この効 果は、 DES単独よりも高い。従って、本発明の簡易ガラス化法は、優れた効果を示す
ことが明らかになった。
[0270] さらに、グリセロール、ァセトアミド単独のものについても効果を見た力 これらにつ いては、ほとんど効果は見出されな力つた。
[0271] (実施例 8 :濃度についてのさらなる検証)
実施例 7に記載される実験を、 DMSOの濃度(0. 5M— 5M)、プロピレングリコー ル(0. 5M— 8M)、ァセトアミド(0. 5M— 3M)の範囲内で 0. 5Mごとに行う。その結 果、 DMSOの濃度は、 2Mを頂点に 1M— 4Mの範囲で凍結保存改善効果が顕著 であり、プロピレングリコールは、 1. 5M— 6Mの範囲で凍結保存改善効果が顕著で あり、ァセトアミドは、 0. 5M— 2Mの範囲で凍結保存改善効果が顕著であることが確 認される。なお、ァセトアミドについては、 OMであっても、他の二成分によって凍結保 存改善効果が見られることから、必須ではな 、ことが分かる。
[0272] エチレングリコールを含む媒体について確認したところ、 DMSOの濃度を 2. 5%— 40%の間で 2. 5%ごと、エチレングリコールを 2. 5%— 40%の間で 2. 5%ごと、およ びスクロースの濃度を、 1. 5Mから 1Z2の系列希釈により 0. 09375Mまでの濃度( 0. 75M、 0. 375Mおよび 0. 1875M)でアツセィを行う。その結果、 DMSOは、 7. 5%— 30%の濃度範囲で凍結保存改善効果が顕著であり、エチレングリコールは、 7 . 5%— 30%の濃度範囲で凍結保存改善効果が顕著であり、スクロースの濃度は、 0 . 1875M— 0. 75Mの濃度範囲で凍結保存改善効果が顕著であることが確認され る。
[0273] (実施例 9 :神経細胞への分化)
本発明の上記実施例 4において保存し解凍した ES細胞を、 3回無血清培地にて洗 浄し、血清を完全に取り除く。 KSR (Knockout Serum Replacement; GIBCO /Invitrogen Cat. No. 10828— 028)を含む ES細胞培地を用いて、 PA6フィー ダー細胞上で未分化細胞を 8— 11日間培養する(Kawasaki et al. , 2000, Neu ron 28 ; 31-40, Tada et al. , 2003 ; Dev. Dyn. , 227 ; 504-510.参照;)。こ れにより、神経細胞に分化させる。
[0274] その結果、本発明の方法で保存した ES細胞は、神経への分ィ匕能を保持することが 明らかになる。
[0275] (実施例 10 :テラトーマ形成)
次に、本発明の上記実施例 4にお ヽて保存し解凍した ES細胞のテラトーマ形成能 を確認した。 SCIDマウス(日本クレア、東京)の皮下および腹腔内に本発明の ES細 胞を約 107個移植し、 1一 3ヶ月様子を見る。
[0276] 1一 3力月後に得られるテラトーマを回収し、組織学的解析を行う。その一例を図 5 に示す。本発明の方法で保存した ES細胞は、外胚葉、内胚葉、中胚葉などに由来 する種々の組織が観察される。したがって、本発明の方法で保存された ES細胞は、 多分ィ匕能を保持して 、ることが実証される。
[0277] (実施例 11 :造血系細胞への分化)
次に、本発明の上記実施例 4にお 、て保存し解凍した ES細胞の造血系細胞への 分化を観察する。分化誘導培養液として、 a MEM (Gibco BRL、 Cat # 11900— 0
16)に 10%ゥシ胎仔血清をカ卩え、 5 X 10— 5Mメルカプトエタノールを加えた培養液を 使用した。
[0278] まず、 ES細胞は、中胚葉細胞へと分化させた。未分化 ES細胞を、上述の分化誘 導培養液で懸濁し、 IV型コラーゲンコート 6プレートに 1 X 104Zゥエルの密度で播種 する。これを 37°C、 5% COで 4日間培養する。
2
[0279] 培養上清を回収し、ゥエルを PBS (—)で一回洗う。次に細胞剥離液 (Cell Dissoci ation Buffer (Gibco BRL, # 13150— 016)を入れて 10分間静置(37°C、 5%C O )し、細胞を剥離して回収する。細胞塊をほぐし、ほぐれないものはメッシュで除き、
2
細胞数を計数する。 1, 200rpmで 5分間遠心分離し、上清を除いた。
[0280] 次に、 10mlの HBSSZBSAで細胞を懸濁し、 1, 200rpmで 5分間遠心分離して 上清を除いた。 1 X 107細胞あたり 0. 1mlの正常マウス血清に懸濁し、 10分間静置 した。適切な量の E—力ドヘリン抗体および抗 FLK1抗体をカ卩ぇ 20分間氷水上に配 置した。 HBSSZBSAで 2回細胞を洗浄した後、 FLK1 +E—力ドヘリン一中胚葉細 胞を F ACSによりソートする。
[0281] ここで選択した中胚葉細胞を、分化誘導用培養液で懸濁し、 IV型コラーゲンコート プレートに 3 X 105の密度で播種する。培養液は 1ゥエルあたり 3mlカ卩え、 37°C、 5%
COで 3日間培養する。
[0282] 細胞の回収およびブロッキングを行う。回収およびブロッキングは、上述のように行 う。適切な量の VE—力ドヘリン抗体をカ卩え、 20分間氷温に静置する。細胞を HBSS ZBSAで洗浄した後、 VE—力ドヘリン +血管内皮細胞を FACSによりソートして血管 内皮細胞を調製する。
[0283] このようにして、本発明の方法で保存した ES細胞が造血系細胞へも分化することが 実証される。
[0284] (実施例 12 :心筋への分化誘導)
上述の実施例で凍結保存した後に解凍した ES細胞を、 KSRを含む基本培地 (例 えば、 DMEM)中で浮遊培養することによって胚様体を形成させる。胚様体形成後
、 4一 7日経過後に胚様体を集めゼラチンコート下培養ディッシュに播種する。 KSR を含む基本培地中で 1一 3週間培養することによって心筋細胞が分ィ匕する。
[0285] (実施例 13:他の動物由来の幹細胞での実験)
次に、マウス ES細胞を用いて、本発明の保存媒体がもたらす凍結保存効果を実証 する。 ES細胞は、非特許文献 5に記載されるように調製することができる。具体的に は、実施例 1に記載される手順に準じて行う。
[0286] このようにして得たマウス ES細胞を、実施例 5に準じて保存する。マウス細胞を使用 する場合の留意点は以下のとおりである。マウスの場合は、マウスに特異的なマーカ 一を用いることが重要である。
[0287] このようにして、マウス ES細胞を用いた場合でも、本発明の媒体が優れた保存効果 を有することが示される。
[0288] (実施例 14 :他の幹細胞 (例えば糸且織幹細胞)での実験)
組織幹細胞 (神経幹細胞、間葉系幹細胞など)を含む組織を取り出して単離して、 上記実施例のように凍結保存および解凍することによって、組織幹細胞でも安定して 凍結保存することができる細胞株が樹立される。
[0289] (実施例 15:サルでの再生治療)
次に、力-クイサルから、 ES細胞を採取し、実施例 5と同様の保存を行った後、神 経細胞に分化させる。神経への分化は、適切な分化因子 (神経成長因子 (NGF)、 脳由来神経栄養因子 (BDNF)、グリア細胞由来神経栄養因子 (GDNF)、ニューロ
トロフィン(neurotrophin)、 IL— 6、 TGF— j8、 TNF)を含む培地中で培養することに よって行う。この神経細胞の移植物を神経疾患を有する力二クイサル被検体に移植 すると、移植物が機能できることがわかる。
[0290] (実施例 16 :ヒトの ES細胞の調製)
実施例 4に記載の方法を改変して、ヒトの ES細胞の保存効率が上がることを実証し た。以下に詳細なプロトコールを示す。
[0291] (ヒト ES細胞の継代培養法)
方法
1)前日までに、 4日以内に作成したフィーダ一細胞を準備する。
[0292] 通常の継代は、 60mmディッシュ 1枚分の ES細胞を 60mmディッシュ 2枚に継代す る。
[0293] 継代当日、ヒト ES細胞のコロニーの状態を観察し、コンフルェントであることを確認 する。
2) (以下の試薬容量は、 60mm細胞培養ディッシュ 1枚の場合)
ヒト ES細胞用培地を室温にもどす。ヒト ES細胞用解離液を解凍し、室温にもどす。
3)細胞解離液 0. 5mlをディッシュにカ卩え、細胞表面全体に液が行き渡るようにした 後、 37°C、 COインキュベーターで 5分間加温する。
2
4)細胞の状態を顕微鏡で観察する。半分以上のコロニーが周囲力 小さくまとまり、 フィーダ一細胞からはがれかけている状態が望ましい。ここで、 5分以上放置してもコ 口-一がこのような状態にならない場合は、原因として解離溶液が充分に室温にもど つて 、な 、、ある 、は失活して 、ることが考えられる。
5)ヒト ES細胞用培地を 2ml加え、細胞をディッシュからはがす。数回ピペッティング を行い、コロニーを適切なサイズに砕く。ギルソン P— 1000を使用するとよい。 ES細 胞コロニー 1つあたり約 100細胞程度になるようにする。ここで、コロニーが小さくなり すぎると再接着 ·増殖の効率が極端に低下する原因になるため、顕微鏡で確認しな がら、コロニーを解離する。
6)約 170 X g (l, OOOrpm)、 5分間遠心。
7)上澄みをできるだけ除く。
8)フィーダ一細胞のディッシュ力も培地を除き、ヒト ES細胞用培地を 4 mlずつ加え る。
9)コ-カルチューブに 2mlの培地をカ卩え、軽く懸濁する。ここで、既に ES細胞は 100 細胞前後の適切なサイズのコロニーなって 、るため、激し 、ピペッティングを避ける。 もし大きなコロニーがみえるようなら、細胞懸濁液を吸い上げたピペットの先端をコ- カルチューブの底に軽く押しつけ、穏やかに細胞懸濁液を排出して細胞をほぐす。
10)フィーダ一細胞ディッシュ 1枚あたり 1mlの ES細胞懸濁液をカ卩える。最終濃度 5n g/mlで繊維芽増殖因子 (bFGF;科研製薬)を加える
11)細胞の状態を顕微鏡で観察する。
12) ES細胞のコロニーがディッシュ全体に行き渡るように、ディッシュを充分に揺する 。 37°C、 COインキュベーターでー晚培養する。
2
13)翌日、顕微鏡で細胞の状態を観察する。培地交換。
14)以後毎日培地交換する。 3— 4日でコンフルェントになる。
[0294] (ヒト ES細胞の凍結保存法)
材料
凍結保存溶液 DAP213
2 M DMSO, 1Mァセトアミド, 3Mプロピレングリコール Zヒト ES細胞用培地 •0. 59gァセトアミドを 6ml程度の ES培地に溶解。 0. 22 mフィルターで濾過滅菌 。 15mlの遠心分離チューブへ入れる。
•DMSO 1. 42ml、プロピレングリコール 2. 2mlを添カ卩する。
• 10mlに培地でメスアップ(チューブの目盛りでよ 、)。
'よく混ぜて、 1mlずつクライオチューブに分注し、 80°Cで保存する。数回の融解' 凍結は可能である。
[0295] 方法
1)コンフルェントの状態のヒト ES細胞を 60mm細胞培養ディッシュ 1枚準備する。
2)ヒト ES細胞用培地を室温にもどす。ヒト ES細胞用解離液を解凍し、室温にもどす
3)液体窒素と氷を準備する。凍結保存用チューブ (Nulgene # 5000-1012)に「
細胞名」「日付」「継代数」等を記入し、氷上で冷やしておく。
4)凍結保存液 DAP213を解凍、氷上で冷やしておく。
5)ヒト ES細胞ディッシュの培地を除き、適量の PBS (-)をカ卩え、細胞を洗う。
6)ヒト ES細胞用トリプシン溶液 lmlをディッシュにカ卩え、細胞表面全体に液が行き渡 るようにする。
7)細胞の状態を顕微鏡で観察する。半分以上のコロニーが周囲力 小さくまとまり、 フィーダ一細胞からはがれかけて 、る状態が望まし 、。
8)ヒト ES細胞用培地を 5ml加え、細胞全体をディッシュからはがす。凍結、融解時に 自然にコロニーがほぐれるため、この時点でほぐす必要はない。
9)細胞懸濁液を 15 mlコ-カルチューブに回収する。新しいヒト ES細胞用培地 5ml をディッシュに加え、残りの細胞も回収する。
10) 170 X g (l, OOOrpm)、 4°Cで 5分間遠心分離する。ここで、サンプル数が多い 場合、遠心後、氷上においておく。
11)上澄みをできるだけ除く。
12) DAPを 200 1カ卩え、穏やかに懸濁する。予め準備した凍結保存用チューブに 移す。ピンセットで凍結チューブをつかみ、液体窒素につける。ここで、 DAPは細胞 毒性が強いため出来る限りすばやく作業すること。目安として 15秒以内。また、加え る DAPは、凍結する細胞数に関係なく 200 1で良い。
13)液体窒素中で、 30秒から 1分間凍結する。ここで、内部まで完全に凍らせる。
14)液体窒素保存容器に移す。
(ヒト ES細胞の解凍法)
方法
1)前日までに、ヒト ES細胞の凍結チューブ 1本あたり 60mm細胞培養ディッシュ 1枚 分のフィーダ一細胞を用意する。
2)ヒト ES細胞用培地 10mlを 15mlコ-カルチューブに移し、 37°Cウォーターバスで 温めておく。
3)凍結保存していたヒト ES細胞凍結チューブに、あらかじめ 37°Cに温めたヒト ES細 胞用培地を lml加え、ピペッティングを行い、急速解凍する。ここで、解凍および希釈
はすばやく行う。また、ウォーターバスでの解凍は、融解後の細胞生存率が極端に低 下する原因になる。
4)細胞懸濁液を 15mlコ-カルチューブへ移す。
5)約 170 X g (l, OOOrpm)、 5分間遠心。
6)上清を吸引し、ヒト ES細胞用培地を 10ml加える。ピペッティングを穏やかに行い、 ES細胞のコロニーが小さくなりすぎない程度に懸濁する。大きなコロニーは、細胞懸 濁液を吸い上げたピペットの先端をコ-カルチューブの底に軽く押しつけ、穏やかに 細胞懸濁液を排出してほぐす。
7)フィーダ一細胞の培地を除く。
8) ES細胞懸濁液全量を 60mmフィーダ一細胞ディッシュに移す。
9)顕微鏡で細胞の状態を確認する。
10) 37°C、 COインキュベーターでー晚培養する。
2
11)翌日、顕微鏡で細胞の状態を確認する。通常解凍した翌日は、多数の細胞が死 んでいるのが確認される。毎日 1回培地交換を継続する。通常、 3日程度で継代可能 になる。
[0297] 結果を、図 7に示す。ヒト ES細胞を記載の方法で凍結し、解凍後の細胞生存率が 示されて!/、る。 10%DMSOを使用した緩慢凍結法では解凍後の細胞生存率がほぼ 0%に近力つたのに対し、簡易凍結法を用いることで 10%以上の細胞生存率を得る ことができ、ヒト ES細胞を用いても生存率の著しい向上が示された。
[0298] (実施例 17 :ヒトでの再生治療)
次に、ヒトの ES細胞を調製し、実施例 15に記載されるように保存した後、皮膚細胞 に分化させる。皮膚への分化は、適切な分ィ匕因子 (皮膚 (ケラチノサイト)の場合は、 TGF— j8、FGF— 7 (KGF:ケラチノサイト増殖因子 =keratinocyte growth fact or)、 EGF)を含む培地中で必要に応じて適切なフィーダ一細胞を用いて培養するこ とによって達成される。この皮膚細胞の移植物を、皮膚疾患を有するヒト被検体に移 植すると、移植物が機能し、皮膚の機能が回復することがわかる。
[0299] 以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきた力 本発 明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求
の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、 本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に 基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引 用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載さ れているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであるこ とが理解される。
産業上の利用可能性
本発明は、再生医療において、多大な有用性を有する。好ましい実施形態では特 に、従来達成不可能であった高い保存効率でかつ簡便に幹細胞を保存することが できたことから、その有用性は高い。したがって、本発明は、再生医療およびその治 療用医薬などを製造する業にぉ 、て利用可能性がある。