明 細 書
心疾患診断用バイオマーカー及びその利用
技術分野
[0001] 本発明は、心疾患を診断するための新規なバイオマーカー及びその利用法に関 するものである。
背景技術
[0002] 心不全とは、一般に、心筋梗塞、狭心症などの虚血性心疾患、心筋症、高血圧症 などの様々な原因により心機能が低下した病態を指す。現在、このような心不全を診 断するためのノィォマーカーとしては、心房性利尿ペプチド (ANP)、脳性利尿ぺプ チド(BNP)、 N末端 proBNP (NT— proBNP)などが入手可能で、これらのマーカ 一を測定することで、患者が心不全であるか否力、あるいはその重症度はどの程度 カゝを知ることができる。
[0003] し力しながら、心不全に限らず、疾患の多くは原因が単一ではなぐ現実の臨床の 場においては、 1つのバイオマーカーを測定するによって特定の疾患を確定的に診 断することはできない。また、バイオマーカーといえども、種々病態が進行した結果、 血中、尿中等に出現するものであり、病態の進行の過程が患者毎に変化した場合に は、必ずしも特異的なマーカーとなり得ないこともあることから、多くの疾患において、 種々のマーカーを組合せて総合的に判断することが、疾病診断の現状である。 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0004] このように、心不全などの心疾患においても、 ANP、 BNP等の、公知マーカー以外 の新規マーカーの開発が切望されていた。
課題を解決するための手段
[0005] 本発明者は、心疾患の新規なバイオマーカーを開発すベぐ種々検討を行った結 果、心疾患の診断に使用されたことのない、ィムノグロブリン重鎖と解離した遊離のィ ムノグロブリン軽鎖(Free light chain: FLC)に注目した。
[0006] 従来、 FLCは、骨髄腫、アミロイド一シスなどの血液疾患の診断に使用されてきた。
すなわち、骨髄腫では腫瘍化する細胞の種類により、カッパ一 (kappa : K )鎖を産生 する腫瘍ではカッパ一鎖が増加し、カッパ一 Ζラムダ比が上昇するのに対し、ラムダ( lambda: λ )鎖を産生する腫瘍ではラムダ鎖が増加し、カッパ一 Ζラムダ比は低下す る。このような性質を利用し、骨髄腫の診断が行われていた。
[0007] このような FLCは、病態マーカーのひとつであり、 Βリンパ球の活性化を示すマーカ 一でもあると考えられるため、心不全の診断に利用可能であれば、心不全で Βリンパ 球が活性ィ匕することも検出できる可能性があり、このような検出が可能であれば、たと えば、 Βリンパ球の活性ィ匕を調整することにより心不全の新しい治療薬のスクリーニン グゃ開発に利用できるという点で、従来の公知のマーカーとは異なる有用なマーカ 一となり得ると考えられる。
[0008] 本発明者は、 FLCの心疾患診断への応用に関し、鋭意検討を重ねた結果、現在ま で一度も心疾患の診断に利用されたことのない FLCが心不全等の心疾患の診断に 応用できることを見出し、本発明を完成させた。従って、本発明は以下の通りである。
[0009] [1]検体中の FLCのカッパ一鎖及び Ζ又はラムダ鎖を測定し、カッパ一鎖値、ラムダ 鎖値又はカッパ一 Ζラムダの比のいずれか 1つ以上の値と健常者の対応する値を比 較することを特徴とする、心疾患を検出する方法。
[0010] [2]検体中の FLCのカッパ一鎖及び Ζ又はラムダ鎖を測定し、カッパ一鎖値、ラムダ 鎖値又はカッパ一 Ζラムダの比のいずれか 1つ以上の値と健常者の対応する値を比 較することを特徴とする、心疾患におけるウィルス感染の合併を検出する方法。
[0011] [3]検体中の FLCのカッパ一鎖及び Ζ又はラムダ鎖を測定し、カッパ一鎖値、ラムダ 鎖値又はカッパ一 Ζラムダの比のいずれか 1つ以上の値と健常者もしくは心疾患の 軽症者の対応する値を比較することを特徴とする、心疾患の重症度を検出する方法
[0012] [4]心疾患が、心不全、心筋症、心筋炎又は急性心筋梗塞である、上記 [1]、 [2]又 は [3]記載の方法。
[0013] [5]FLCの測定力 ムノアッセィ法である、上記 [1]、 [2]又は [3]記載の方法。
[0014] [6]以下の a)〜d)力もなる群より選ばれる少なくとも 1以上の試薬を含み、上記 [1]、
[2]又は [3]記載の方法を実施するための心疾患診断用キット。
a)固相化 FLC特異抗体
b)標識化 FLC特異抗体
c) FLC特異抗体
d)上記 c)記載の抗体に特異的に結合しうる二次抗体
[0015] [7]心疾患が、心不全、心筋症、心筋炎又は急性心筋梗塞である、上記 [6]記載の やット。
[0016] [8]FLCの測定がィムノアッセィ法である、上記 [6]記載のキット。
発明の効果
[0017] 本発明により、 FLCが、心不全、心筋症、心筋炎、急性心筋梗塞等の、心疾患の 診断に有用であることが初めて明ら力となった。さらに、心筋症、心筋炎において、 C 型肝炎ウィルス等のウィルス感染症の合併の診断に有用であることも本発明により初 めて見出されたことである。従って、本発明の心疾患を検出する方法及び心疾患診 断用キットは、心疾患の診断はもとより、心疾患におけるウィルス感染の合併を診断 するのに極めて有用なものである。
[0018] また、カッパ一値、ラムダ値は心不全等の心疾患の重症度、予後測定に有用とされ る NT— proBNP値と相関することから、 FLCの測定は心不全等の心疾患の重症度 、予後判定に有用である。
[0019] さらに、本発明方法により、心疾患の治療薬の効果の測定、抗ウィルス薬の効果の 判定も可能であり、心疾患及びウィルス性感染症の治療薬の開発にも貢献をするこ とがでさる。
図面の簡単な説明
[0020] [図 1]心不全心筋組織内のカッパ一、ラムダ鎖の検出結果を示す図である(へマトキ シリン.ェォジン染色、 FLCkappa (カッパ一鎖の検出)、 FLClambda (ラムダ鎖の検 出)。
発明を実施するための最良の形態
[0021] 1.心疾患の診断方法
FLCのカッパ一鎖値、ラムダ鎖値、カッパ一 Zラムダ比のいずれか 1つ以上の値が 、心疾患病態や予後を反映する。従って、検体中の FLCのカッパ一鎖とラムダ鎖を
定量することにより、心疾患の診断に利用することができる。
使用する検体は、被験者や臨床献体等から単離された、血液、体液、組織又は排 泄物等の試料を意味するが、特に血液、血清、血漿などの血液由来の検体および尿 検体が好ましい。
[0022] FLCの測定は、公知のィムノアツセィ法 (ELISA法、 RIA法など)を採用することに より実施できる。
たとえば、ィムノアツセィ法を具体的に説明すれば、検体中に微量に存在する FLC に対して十分な測定感度を有し、インタタトなィムノグロブリンに対する交差反応性を ほとんど示さず (例えば 1%以下)、検体中の FLC以外の成分の影響を受けない方 法が好適であり、好ましくは中野らが開発した酵素免疫測定法を利用することができ る(J. Immunol. Methods, 2003, 275, 9— 17)。
[0023] また、より高感度に FLCを測定したい場合には、検体中の FLCを捕獲(トラップ)す るための抗体として FLCに特異的なポリクローナル抗体を使用し、トラップされた FL Cを検出するための抗体として FLCに特異的に反応するモノクローナル抗体を使用 するィムノアツセィ法を採用するのが好まし 、。
[0024] 使用する抗体は、 FLCに特異的に反応するモノクローナル抗体及び FLCに特異 的に反応するポリクローナル抗体力 選ばれる 2種類の抗体である。このような抗体 は、抗体自体あるいはそれらの活性フラグメント〔F (ab,)
2、 Fab'など〕であってもかま わない。
[0025] ここで、 FLCに特異的に反応する抗体とは、インタクトイムノグロブリン中に存在する 重鎖と結合した軽鎖に対する反応性が極めて弱いか又は全く認識せず、重鎖に結 合して 、な 、軽鎖には強く反応する抗体を意味する。
[0026] このような FLCに特異的に反応するモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体は 、常法により作製することができる。たとえば FLCのカッパ一鎖又はラムダ鎖を抗原と し、モノクローナル抗体を調製し、得られた抗体の中からインタクトイムノグロブリンと は結合せず、 FLCと特異的に結合する抗体を選出すればょ 、。
[0027] また、 FLCに特異的に反応するポリクローナル抗体は、常法により作製することが できる。たとえば FLCのカッパ一鎖又はラムダ鎖を抗原とし、ポリクローナル抗体を調
製し、得られた抗体成分のうちインタクトイムノグロブリンに結合する抗体を吸収、除 去すればよい。さらに、このような抗体は既に市販されており、利用可能である。ただ し FLCに対する特異性を確認する必要がある。
[0028] 免疫測定法自体は、従来行われて!/、る方法、手順など何等変わるものではな!/、。
すなわち、検体中の FLCを捕獲(トラップ)するための抗体としては、担体に結合した 固相抗体を例示することができる。
[0029] 固相抗体を調製する際に使用する担体としては、通常使用されているもの、たとえ ば、ポリ塩化ビュル、ポリスチレン、スチレン—ジビュルベンゼン共重合体、スチレン 無水マレイン酸共重合体、ナイロン、ポリビュルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ アクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリメチレンメタタリレートなどの合成有機高分子化 合物、デキストラン誘導体(セフアデックスなど)、ァガロースゲル(セファロース、バイ ォゲルなど)、セルロース(ペーパーディスク、濾紙など)などの多糖類、ガラス、シリカ ゲル、シリコーンなどの無機高分子化合物を例示することができ、これらはァミノ基、 カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、スルヒドリル基などの官能基が導入された ものであってもよい。
[0030] 担体の形状は、平板状 (マイクロタイタープレート、ディスクなど)、粒子状 (ビーズな ど)、管状 (試験管など)、繊維状、膜状、微粒子状 (ラテックス粒子など)、カプセル状 、小胞体状などいずれの形状であってもよぐ測定法に応じて好適な形状の担体を 適宜選択すればよい。
[0031] 担体と抗体の結合は、物理的吸着法、イオン結合法、共有結合法、包括法など公 知の方法〔たとえば、「固定化酵素」(千畑一郎編、昭和 50年 3月 20日、(株)講談社 発行)参照〕を採用することができ、とりわけ、物理的吸着法は簡便である点で好まし い。また、上記結合は直接行ってもよぐ両物質の間に他の物質を介して行ってもよ い。
このようにして得られた固相試薬は、非特異的結合を抑制するため、ゼラチン、 BS Aなどの通常のブロッキング剤を用いてブロッキング処理を施してもよ!、。
[0032] また、トラップされた FLCを検出するための抗体としては、標識剤で標識された抗体 を例示することができる。標識剤としては、放射性同位体 (たとえば32 P、 3H、 "C、 125I
など)、酵素(たとえば j8—ガラクトシダーゼ、ペルォキシダーゼ、アルカリホスファタ ーゼ、グルコース一 6—リン酸デヒドロゲナーゼ、カタラーゼ、グルコースォキシダーゼ 、乳酸ォキシダーゼ、アルコールォキシダーゼ、モノアミンォキシダーゼなど)、補酵 素'補欠分子族(たとえば、 FAD、 FMN、 ATP、ピオチン、ヘムなど)、フルォレセィ ン誘導体(たとえば、フルォレセインイソチオシァネート、フルォレセインチオフルバミ ルなど)、ローダミン誘導体 (たとえば、テトラメチルローダミン Bイソチオシァネートな ど)、ゥンベリフエロン及び 1ーァ-リノ 8 ナフタレンスルホン酸などの蛍光色素、 ルミノール誘導体〔たとえば、ルミノール、イソルミノール、 N- (6—ァミノへキシル) N -ェチルイソルミノールなど〕などを例示することができる。
[0033] 抗体と標識剤との結合は、成書〔たとえば、「続生化学実験講座 5免疫生化学研究 法」(株)東京化学同人、(1986年発行)第 102〜112頁〕に記載されているような公 知の方法力 適宜選択して実施すればよ!、。
[0034] このような固相抗体と標識抗体を用いての測定手順は、通常の免疫測定法の手順 をそのまま採用すればよい。すなわち、固相抗体と被検試料を反応させ、必要により BF分離後、さらに標識抗体を反応させる (ツーステップ法)か、固相抗体、被検試料 及び標識抗体を同時に反応させ (ワンステップ法)、以後のそれ自体公知の方法によ り試料中の FLCを検出又は定量することができる。
[0035] なお、免疫測定法の詳細については、たとえば以下の文献を参照すればよい。
(1)入江 寛編「続ラジオィムノアツセィ」((株)講談社、昭和 54年 5月 1日発行)
(2)石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第 2版)((株)医学書院、 1982年 12月 15日 発行)
(3)臨床病理 臨時増刊 特集第 53号「臨床検査のためのィムノアツセィー技術と応 用一」(臨床病理刊行会、 1983年発行)
(4)「バイオテクノロジー事典」((株)シーエムシー、 1986年 10月 9日発行)
[0036] (5)「Methods in ENZYMOLOGY Vol. 70」 (Immunochemical techniqu es (Part A) )
(6)「Methods in ENZYMOLOGY Vol. 73」 (Immunochemical techniqu es (Part B) )
(7)「Methods in ENZYMOLOGY Vol. 74」 (Immunochemical techniqu es (Part C) )
(8)「Methods in ENZYMOLOGY Vol. 84」 (Immunochemical techniqu es (Part D: Selected Immunoassay) )
(9)「Methods in ENZYMOLOGY Vol. 92」 (Immunochemical techniqu es (Part E: Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Metho ds) )
[ (5)〜(9)はアカデミックプレス社発行]
[0037] このようにして測定した FLCのカッパ一鎖値、ラムダ鎖値、カッパ一 Zラムダ比の ヽ ずれか 1つ以上の値が、心疾患病態や予後を診断する。
対象とする心疾患としては、心不全、心筋症、心筋炎、急性心筋梗塞又はそれらの ウィルス感染症が挙げられる。
[0038] 診断は、検体中の FLCのカッパ一鎖値、ラムダ鎖値又はカッパ一 Zラムダの比の いずれか 1つ以上の値と健常者の対応する値を比較することにより、心疾患の存在の 検出、心疾患におけるウィルス感染の合併の検出、あるいは心疾患の重症度の検出
、急性心筋梗塞と心筋炎や心不全との鑑別等が可能である。
[0039] 検体中のカッパ一鎖値、ラムダ鎖値、カッパ一 Zラムダ比は、後記実施例 1に示す ように、病態により変動し、かつ従来のマーカーや心機能を示す指標と相関する。 従って、これらの判定値にもとづき、心疾患の存在の検出、心疾患におけるウィル ス感染の合併の検出、あるいは心疾患の重症度の検出が可能である。ここで心疾患 の検出には、心不全、心筋症、心筋炎及び急性心筋梗塞のそれぞれの鑑別も含ま れる。
[0040] 2.心疾患診断用キット
本発明のキットは、上述の心疾患の診断方法を実施するためのものであり、たとえ ば、下記の試薬から構成される。
1)固相化 FLC特異抗体
2)標識化 FLC特異抗体
[0041] ここで固相化 FLC特異抗体及び標識化 FLC特異抗体に用いる FLC特異抗体は、
FLC特異モノクローナル抗体及び FLC特異ポリクローナル抗体の!/、ずれでもよ!/、が 、 2種の FLC特異モノクローナル抗体を組み合せて用いてもよぐ FLC特異ポリクロ ーナル抗体と FLC特異モノクローナル抗体の組み合せでもよい。このうち、固相化 F LC特異ポリクローナル抗体と標識ィ匕 FLC特異モノクローナル抗体とを組み合せるの 力 感度の点で好ましい。
[0042] また、標識化 FLC特異抗体の代わりに標識ィ匕してな 、FLC特異抗体と二次抗体を 使用してもよぐその場合には次の試薬力も構成される。
1)固相化 FLC特異抗体
2) FLC特異抗体
3)標識ィ匕抗ィムノグロブリン抗体
[0043] ここで用いる固相化 FLC特異抗体及び FLC特異抗体も、前記と同様にモノクロ一 ナル抗体でもポリクローナル抗体でもよい。このうち、固相化 FLC特異ポリクローナル 抗体と FLC特異モノクローナル抗体とを組み合せるの力 感度の点で好ま U、。
[0044] 上記各試薬のほかに、必要により、発色試薬、反応停止用試薬、標準抗原試薬、 試料前処理用試薬などの各試薬カゝら測定法に応じた適当な試薬を適宜選択し、本 発明のキットに添付すればよい。
実施例
[0045] 以下、実施例に基づき、詳細に説明する力 本発明がこれに限定されないことは明 らかである。
[0046] (1)血清検体
本実験に使用した血清検体としては、健常ボランティア、心不全患者、心筋症患者 及び心筋炎患者の血清を用いた。
[0047] (2) FLC特異モノクローナル抗体
FLC特異モノクローナル抗体は FLC (Bethyl laboratories 社, Montgomery , ΤΧ)を BALB/cマウスに免疫し、作製した (J. Immunol. Methods, 275, 9—1 7. (2003) )。また、得られた抗体の F (ab,) フラグメントをホースラデイシュペルォキ
2
シダーゼ(HRP)標識した (J. Histochem. Cytochem. , 22, 1084— 91. (1974
) )。
[0048] (3) FLC測定法
FLC¾J定法【こつ!ヽて ίま文献 (J. Immunol. Methods, 2003, 275, 9 17)【こ従 つて行った。すなわち、 FLC特異モノクローナル抗体をコートした 96穴マイクロプレ ート (Nunc)に検体あるいは標準濃度溶液を 100 1毎加え、室温で 2時間反応させ た。洗浄した後、二次抗体として抗カッパ一軽鎖型抗体ならびに抗ラムダ軽鎖型抗 体の西洋ヮサビペルォキシダーゼ標識体を各 100 1加え、 37°C、 30分反応させた 。反応後、 0. 05% Tween20を含む PBSで洗浄し、発色液(OPD、 Sigma)を 100 1毎分注し発色させた。 1N硫酸にて発色を停止後、 492nmでの吸光度を測定し た。なお、アツセィ用の緩衝液としては 1%ゥシ血清アルブミンを含む 50mMトリス塩 酸 (PH7. 5)を使用した。
[0049] 実施例 1
心不全患者 63例(2002年 12月〜 2004年 11月)について、以下の検討を行った 。上記の患者のうち NT— proBNP、幹細胞因子(SCF)を測定した 17例における F LCとの相関を表 1に示す。
[0050] [表 1]
[0051] 実施例 2
心筋炎多施設臨床試験(Myocarditis Treatment Trial)の血清中の FLCの測 定結果を以下に示す。
(1)心筋炎全体の測定結果を表 2に示す。
[0052] [表 2] n kappa (mg/し) lambda (mg/L) kappa/lambda 心筋炎 1, 318 37. 6 土 19. 2** 72. 4 ± 124. 2* 0. 64 ± 0. 32 正常者 17 27. 9 ± 5. 3 43. 6 ± 8. 8 0. 66 ± 0· 16 平均 ±標準偏差、 * ρ < 0 . 0 0 0 5 , * * ρ < 0 . 0 0 0 1
[0053] (2) C型肝炎ウィルス (HCV)感染の有無との関係を表 3に示す。
[0054] [表 3] n kappa (mg/L) lambda (mg/L) kappa/lambda
HCV (+) 42 30. 6 土 14 8* 173. 1 ± 37. 1* 0, 27 土 0. 22*
HCV (-) 1, 276 37. 9 土 19. 3* 69. 1 土 81. 7* 0. 66 士 0. 31 正常者 17 27. 9 ± 5. 3 43. 6 ± 8. 8 0. 66 土 0, 16 平均士標準偏差、 * p < 0 . 0 0 0 1対正常者、 H C V ( + ,— ) pく 0 . 0 0 0 1
[0055] (3) C型肝炎ウィルス抗体陽性の心筋症患者における FLC値を表 4に示す。
[0056] [表 4] n kappa lambda kappa/lambda
C型肝炎ウィルス抗体 (+) 5 42. 5 土 27. 2* 79. 9 士 74. 0* 0. 558 ± 0. 338 正常者 17 27. 9 土 5. 3 43. 6 土 8. 8 0. 661 土 0. 162 氺 p < 0 . 0 5
[0057] (4) FLCと心不全重症度の関係
ニューヨーク心臓協会 (NYHA)の自覚症状に基づく心不全の心機能分類によつ て軽症 (I度 + Π度)と重症 (III度 + IV度)に分けて、重症度との関連について検討し た結果を表 5に示す。
[0058] [表 5]
N Y HA心機能分類 軽症(I度 +11度)(n=17) 重症(III度 +IV度) (n=63) P kappa 32. 0 士 15. 4 40. 8 土 39. 2 NS 丄 smbcis 55. 0 + 44. 0 93. 2 + 67. 9 0. 03 kappa / lambda 0. 67 士 0. 31 0. 46 土 0. 14 0. 0001
[0059] (5)実施例 1及び 2の結果のまとめ
(5— 1)心不全におけるカッパ一、ラムダ値は、心不全の重症度や予後と関係する N T—proBNPと正の相関を有し、特にラムダ値との相関が強ぐ一方カッパ一 Zラム ダ比とは負の相関を示した。
[0060] (5- 2)心不全におけるカッパ一、ラムダ値は、 SCF値と正の相関を有する。
(5— 3)心筋炎において、カッパ一、ラムダ値は上昇する力 カッパ一 Zラムダ比に変 化はない。
(5—4)心筋炎において、カッパ一、ラムダ値は、 NT—proBNPと正の相関を示し、 カッパ一 Zラムダ比は NT— proBNPと負の相関を示す。
[0061] (5- 5)心筋炎において、 C型肝炎ウィルス感染者ではカッパ一、ラムダ値は上昇す る力 特にラムダ値の上昇が著明で、カッパ一 Zラムダ比は著明に低下する。
(5— 6) C型肝炎ウィルス感染陽性の心筋症では、カッパ一、ラムダ値とも増加し、力 ッパー Zラムダ比は低下傾向を示す。
[0062] (5— 7)重症心不全では、軽症に比べラムダ値が高ぐカッパ一 Zラムダ比は低下し た。従って、心不全におけるラムダ値、カッパ一 Zラムダ比は心不全の重症度と関連 する。
(5— 8)心不全に C型肝炎ウィルス感染が加わると、ラムダ値が一層上昇し、カッパ一 Zラムダ比は逆に低下する。
[0063] 実施例 3
心不全患者 48例において以下の検討を行った。
(1)心不全患者 48例の正常者 17例の FLCカッパ一鎖、ラムダ鎖、カッパ一 Zラムダ 比を比較した。
その結果、心不全では FLCラムダ鎖が増加し、カッパ一 Zラムダ比が低下すること が明らかとなった。
[0064] [表 6] n Kappa lambda kappa/lambda 心不全 48 32. 7± 0. 5 80. 2 ±57. 5* 0. 46±0. 12w 正常者 17 27. 9 ± 5. 3 43. 6±8. 8 0. 66±0. 16 平均士標準偏差、 t検定、 *pく 0. 05、 *¾<0. 0001
[0065] (2)心不全 48例において生存期間と FLCとの関連を検討した。
その結果、生存期間とラムダ鎖には負の相関があることが明らかとなった。
[0066] [表 7]
生存期間 (曰) (y)
X r r P
lambda y=-6. 2x+ 1010 -0. 48 0. 23 p<0. 05
[0067] (3) FLCカッパ一鎖、ラムダ鎖、カッパ一 Zラムダ比と心不全、心筋傷害の指標であ る NT— proBNP (Roche Diagnostics)との関連を検討した。
その結果、カッパ一鎖、ラムダ鎖は NT—proBNPと正の相関を示し、カッパ一/ラ ムダ比とは、負の相関を示し、心不全、心筋傷害の指標となることが明らかとなった。
[0068] [表 8]
NT-proBNP (pg/ml) (y)
X r r2 P kappa y= :246x-3290 0. 40 0. 16 p<0. 005 丄 smbds y= :54. 7x+ 341 0. 49 0. 24 p<0. 0005 kap / lamb da y= :-18800x + 13300 -0. 36 0. 13 p<0. 05
[0069] (4) FLCカッパ一、ラムダ、カッパ一/ラムダ比と心臓カテーテル検査における肺動 脈圧との関連を検討した。
その結果、カッパ一鎖、ラムダ鎖は平均肺動脈圧と正の相関を示した。
[0070] [表 9] 平均肺動脈圧 (mmHg) (y)
X r rz P kappa 0. 71x + 8. 7 0. 54 0. 30 p<0. 05 lambda 0. 22x + 14 0. 48 0. 23 pく 0. 05
[0071] (5) FLCカッパ一、ラムダ、カッパ一/ラムダ比と心臓カテーテル検査における心拍 出係数との関連を検討した。
その結果、カッパ一鎖、ラムダ鎖は心拍出係数と有意な負の相関を示し、心機能と 関連することが明らかとなった。
[0072] [表 10]
心拍出係数 (L/m2) (y)
X r r2 P
kappa y=-0. 4x+4. 19 -0. 78 0. 61 p<0. 0001 lambda y=- 0. lx + 3. 74 -0. 59 0. 35 p<0. 005
[0073] (6) FLCカッパ一鎖、ラムダ鎖、カッパ一 Zラムダ比と心エコー図による左室収縮末 期経 (LVDs)、拡張末期経 (LVDd)、及び心収縮能の指標である左室駆出分画 (E
F)との関係を検討した。
その結果、ラムダ鎖は LVDd, LVDsと有意な正の相関を有し、左室腔の拡大と関 連し、カッパ一 Zラムダ比は LVDd, LVDsと負の相関、 EFとは正の相関を示し、左 室腔の拡大、心臓の収縮能と関連することが明らかとなった。
[0074] [表 11]
LVDd (mm) (y)
X r r2 P kappa y= :0. 41x+62. 8 0. 25 0. 06 p=0. 24 lambda y= :0. 33x+ 51. 3 0. 58 0. 33 p<0. 005 kappa/lambda y= :-98x + 119 -0. 72 0. 51 p<0. 0001
LVDs (mm) (y)
X r r2 P kappa Y = :0. 42x+ 52. 1 0. 25 0. 06 p=0. 24 丄 Eimbds y= :0. 33x+40. 8 0. 57 0. 32 p<0. 005 kappa/ lamb da y= 102x + 110 -0. 73 0. 53 p<0. 0001
EF (%) (y)
X r r2 P kappa/lambda y= :67. 4x-0. 14 0. 59 0. 35 p<0. 005
(7) FLCカッパ一鎖、ラムダ鎖、カッパ一 Zラムダ比と炎症反応の指標である CRPと 相関を検討した。
その結果、カッパ一鎖、ラムダ鎖は CRPと有意な正の相関を示し、カッパ一鎖、ラム ダ鎖は炎症反応を反映することが示された。
[0076] [表 12]
CRP (mg/dl) (y)
X r r2 P kappa y= =0. 3x- 6. 89 0. 5 0. 25 pく 0. 05 丄 smbdei y= :0. 95x-4. 54 0. 46 0. 21 pく 0. 05 kappa/lambda y= - Ί. 8 + 5. 73 -0. 16 0. 02 p=0. 46
[0077] (8) FLCカッパ一鎖、ラムダ鎖、カッパ一 Zラムダ比と線維化の指標である IV型コラ 一ゲンとの相関を検討した。
その結果、カッパ一鎖、ラムダ鎖は IV型コラーゲンと正の相関を示し、カッパ一 Zラ ムダ比は IV型コラーゲンと負の相関を示し、 FLCは線維化のマーカーと関連するこ とが明ら力となった。
[0078] [表 13]
IV型二 2ラーゲン(ng/ml) (y)
X r r2 P kappa y=0. 48x4-20. 5 0. 62 0. 39 p<0. 0001 lambda y= l. lx+89. 3 0. 78 0. 61 pく 0. 0001 kappa/ lambda y=-250x + 291 -0. 38 0. 14 pく 0. 01
[0079] (9)心不全症例の心筋標本のパラフィン切片を用いてへマトキシリン'ェォジン染色 を行い、心筋細胞径を測定し、 FLCとの関連を検討した。
その結果、心筋細胞径はカッパ一 Zラムダ比と負の相関を示した。
[0080] [表 14] 心筋細胞径 (μ ηι) (y)
X r r2 P kappa/lambda y=-31. 8x+44. 9 -0. 63 0. 39 pく 0. 005
[0081] (10) FLCとマスト細胞との関連を検討するため、心不全の手術時に採取された凍結 保存された心筋組織を用い RNAを抽出し、リアルタイム PCR法により幹細胞因子(S CF)、メタ口プロテアーゼ(MMP— 9)、キマーゼ、トリプターゼのメッセンジャー RNA (mRNA)の発現を検討した。各 mRNAはハウスキーピング遺伝子である GAPDH で補正した。
その結果、カッパ一 Zラムダ比は、 SCF、 MMP— 9、キマーゼ、トリプターゼの発 現と正の相関を示し、マスト細胞の活性化との関連が考えられた。
[0082] [表 15]
SCF/GAPDH (y)
X r r2 p
kappa/lambda y- 12900x-4590 0. 46 0. 21 p<0. 05
MMP-9/GAPDH (y)
X r r2 p
kappa/lambda = 651x - 231 0. 44
Chymase/GAPDH (y)
X r r2 p
kappa/ lamb da y=349x-124 0. 43 i o o o
Tryptase/GAPDH (y)
0 0
X r r2 p
kappa/ lamb da y= 1050x-373 0. 43
[0083] (11)心不全例の心臓組織におけるカッパ一鎖、ラムダ鎖原の分布を検討 o した。
心不全の心臓のホルマリン固定標本のパラフィンブロックより 5ミクロンの切片を作製 した。切片はキシレンにより脱パラフィンを行った後、アルコールにより脱水し、過酸 化水素により内因ペルォキシダーゼを不活ィ匕した。
一次抗体としてカッパ一鎖、ラムダ鎖に対するマウスモノクローナル抗体 (ャマサ醤 油、千葉)を用い 4°Cで一夜インキュベートし、マウス IgG用にぺクスタイン ABC kit ( バーリンゲーム、 CA、 U. S. A. )により免疫染色を行い、 DAB発色を行った。
その結果、図に示す如く心不全の心臓において、心筋組織内の白血球にカッパ一 鎖、ラムダ鎖が検出され、心不全の心筋内に浸潤した白血球がカッパ一鎖、ラムダ鎖 を産生することが明ら力となった。
[0084] (12)心不全患者 20例における尿中 FLCを測定し、正常者の尿中 FLCと比較検討 した。
その結果、心不全では尿中カッパ一鎖、ラムダ鎖は正常者に比し有意に高値を示
した。
[0085] [表 16] n kappa mg/L) lambda (mg/L) kappa/lambda 正常者 29 2. 14± 2. 34 2. 79 ± 3. 49 0. 82±0· 29 心不全 20 5. 74± 7. 56* 7. 10±8. 75* 0. 82±0· 29
*Ρ<0. 05 対正常者
[0086] (13)心不全患者 20例における尿中と血中の FLCの相関を調べた。
その結果、尿中のカッパ一鎖、ラムダ鎖、カッパ一 Zラムダ比と血中のカッパ一鎖、 ラムダ鎖、カッパ一 Zラムダ比には有意な正の相関がみられた。
[0087] [表 17] n r r2 P 尿中 k卿 a、y) :血中 kappa (X) y= =0. 165x-6. 28 0. 45 0. 20 pく 0. 05 尿中 lambda (y) :血中 lambda (x) y= :0. 0936-3. 5 0. 58 0. 34 pく 0. 01 尿中 kappa :血中 kappa
/lambda {γ) /lambda ) y= =0. 922x4-0. 156 0. 65 0. 42 pく 0. 005
[0088] (14)実施例 3の結果のまとめ
(14- 1)心不全ではラムダ鎖が増加し、カッパ一 Zラムダ比が低下する。
(14— 2)ラムダ鎖は心不全の生命予後と関連する。
(14— 3)カッパ一、ラムダ鎖は心不全、心筋傷害のマーカー NT—proBNPと相関し 、炎症マーカーである CRPとも相関する。
(14— 4)カッパ一、ラムダ鎖は心機能と関連し、ラムダ鎖、カッパ一/ラムダ比は心 内腔の拡大と相関する。
(14 5)カッパ一鎖、ラムダ鎖、カッパ一 Zラムダ比は線維化のマーカーと相関する
(14-6)カッパ一 Zラムダ比は心筋細胞肥大と逆相関する。
(14- 7)カッパ一 Zラムダ比は、マスト細胞関連メディエータと相関する。
( 14 8)心不全の心筋内に浸潤した白血球細胞力もカッパ一、ラムダ鎖が産生され る。
(14— 9)心不全患者尿中のカッパ一、ラムダ鎖は増加する。
(14— 10)心不全患者尿中のカッパ一鎖、ラムダ鎖、カッパ一 Zラムダ比は血中の力 ッパー鎖、ラムダ鎖、カッパ一 Zラムダ比と相関する。
[0089] 実施例 4
急性心筋梗塞発症当日、 24時間後、 4週後の FLCを測定し、正常者と比較検討し た。
その結果、カッパ一鎖は、心筋梗塞発症当日、 24時間後は有意に減少したが、ラ ムダ鎖、カッパ一 Zラムダ比には有意な差がみられな力つた。
このことから、 FLCカッパ一鎖の測定は急性心筋梗塞の診断に有用であり、さらに 急性心筋梗塞と心筋炎や心不全との鑑別にも有用であることがわ力つた。
[0090] [表 18] kappa、mg/L) lambda (mg/L) kappa/lambda 正常者 17 27. 9± 5. 3 43. 6± 8. 8 0. 66± 0. 16 急性心筋梗塞
発症当日 70 23. 6±8. 3* 50. 2±40. 5 0. 54±0. 20 2 4時間後 65 22. 5 ±6. 8* 48. 7±42. 5 0. 56±0. 23
4週後 36 27. 4± 7. 8 53. 6± 19. 8 0. 53 ±0. 14
—元配置分散分析: F=5. 0; pく 0. 005
各群比較: Fisherの LDS法、 *p<0. 05 (対 正常者及び 4週後)
[0091] 以上の結果から、 FLCの測定は、心不全、心筋症、心筋炎、急性心筋梗塞の診断 に有用である。心筋症、心筋炎において C型肝炎ウィルス感染者では、カッパ一、ラ ムダ値が増加し、カッパ一 Zラムダ比は低下することから、 C型肝炎ウィルス感染やそ の他のウィルス感染症の診断に有用である。
[0092] HCV感染のある心不全では、 HCV感染のない心不全に比し、ラムダ値が一層高 値となり、カッパ一 Zラムダ比は逆に低下するため、感染症の合併を診断することが できる。
従って、心不全の治療薬の効果、及び抗ウィルス薬の効果の判定ができ、心不全、 心筋症、心筋炎、ウィルス性感染症の治療薬の開発に貢献できる。
[0093] 重症心不全では、軽症に比べラムダ値がさらに高ぐカッパ一 zラムダ比は低下し 、心不全の重症度と関連した。また、カッパ一、ラムダ値は心不全の重症度、予後測 定に有用とされる NT— proBNP値と相関することから、 FLCの測定は心不全の重症 度、予後判定に有用である。