明 細 書
焙煎穀物抽出液の製造方法、及び、焙煎穀物加工物の製造方法 技術分野
[0001] 本発明は、焙煎された穀物から焙煎成分を含有する抽出液を製造する焙煎穀物抽 出液の製造方法、及び、焙煎された穀物を加工した焙煎穀物加工物の製造方法に 関するものである。
背景技術
[0002] 米は、日本人の主食としてなくてはならないものである。特に、玄米は、健康食品と しても有益なものである。そのため、玄米の加工食品も広く普及している。このような 加工食品の中に焙煎米がある。ここで、焙煎米とは、黒く蒸し焼きにした玄米をいう。 この焙煎米は、「黒焼き」とも呼ばれ、古くから民間薬としても用いられている。この焙 煎米を飲料にする試みは従来力 なされている。例えば、焙煎米を極めて小さい粒 子に粉砕して飲料の素を作製し、この飲料の素をお湯に溶かすことが行われて 、る。 また、発芽玄米と抽出水とを接触させ、発芽玄米の水溶性成分を抽出した抽出液を 含有した飲料も考案されている(例えば、特開 2003— 219847号公報を参照。;)。 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0003] し力しながら、飲料の素をお湯に溶かす方法では、飲料の素が溶けきらず残ってし まい、飲料に濁りが生じてしまうという問題があった。また、発芽玄米の水溶性成分を 単に抽出する方法では、十分な濃度の飲料を得ることができないという問題があった
。このため、茶葉抽出液とブレンドする等して味を調える必要があった。換言すれば、 発芽玄米そのものの風味を楽しむものではなかった。
[0004] 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、十分な濃度が 得られる焙煎穀物抽出液の製造方法を実現すること、及び、焙煎穀物抽出液の製造 に適した焙煎穀物加工物の製造方法を実現することにある。
課題を解決するための手段
[0005] 前記課題を解決するための第 1の発明は、
穀物を粒状のまま焙煎する焙煎工程と、
焙煎された穀物に含浸液を含浸させて内部を膨潤させ、前記穀物を割り開かせる 含浸工程と、
割り開力せた前記穀物の内部に溶媒を接触させて、前記内部に存在する焙煎成 分を抽出する抽出工程と、
を有する焙煎穀物抽出液の製造方法である。
[0006] 前記課題を解決するための第 2の発明は、
穀物を粒状のまま焙煎する焙煎工程と、
焙煎された穀物への溶媒の含浸によって内部を膨潤させ、この膨潤によって前記 穀物を割り開かせ、割り開力せた前記穀物の内部に前記溶媒を接触させて、前記内 部に存在する焙煎成分を抽出する含浸抽出工程と、
を有する焙煎穀物抽出液の製造方法である。
[0007] 前記課題を解決するための第 3の発明は、
焙煎穀物加工物に溶媒を接触させて、前記焙煎穀物加工物力 焙煎成分を抽出 する焙煎穀物抽出液の製造方法であって、
前記焙煎穀物加工物は、
穀物を粒状のまま焙煎する焙煎工程と、
焙煎された穀物に含浸液を含浸させて内部を膨潤させ、前記穀物を割り開カゝせる 含浸工程と、
割り開力せた前記穀物が保持する含浸液を除去する含浸液除去工程と、を経て 製造されている、焙煎穀物抽出液の製造方法である。
[0008] 前記課題を解決するための第 4の発明は、
穀物を粒状のまま焙煎する焙煎工程と、
焙煎された穀物に含浸液を含浸させて内部を膨潤させ、前記穀物を割り開かせる 含浸工程と、
割り開かせた前記穀物が保持する含浸液を除去する含浸液除去工程と、 を有する焙煎穀物加工物の製造方法である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載によって明らかに
する。
図面の簡単な説明
[0009] [図 1]第 1実施形態の処理を説明するためのフローチャートである。
[図 2A]焙煎装置の内部構造を説明するための断面図である。
[図 2B]焙煎装置の内部構造を説明するための他の断面図である。
[図 3A]表面に炭化被膜が形成された状態の米を説明する図である。
[図 3B]米内部の炭化が進行している状態の米を説明する図である。
[図 3C]米内部の全体が炭化された状態を説明する図である。
[図 3D]焙煎が終了した状態の米を説明する図である。
[図 4A]焙煎米をバット内に拡げた様子を模式的に説明する図である。
圆 4B]焙煎米に含浸液を注ぐ様子を模式的に説明する図である。
[図 4C]含浸によって焙煎米が割り開かれた状態を模式的に説明する図である。
[図 5A]含浸途中における焙煎米の状態を説明する図である。
[図 5B]含浸によって焙煎米が少し開いた状態を説明する図である。
[図 5C]含浸による開き度合いが進んだ焙煎米を説明する図である。
[図 5D]含浸によって完全に割り開かれた焙煎米を説明する図である。
[図 6A]焙煎米と溶媒とを混合した状態を説明する図である。
[図 6B]焙煎米と溶媒の混合物を、濾し布で濾している様子を説明する図である。
[図 7]吸光度による濃度比較の試験結果を示す図である。
[図 8]第 2実施形態の処理を説明するためのフローチャートである。
[図 9]第 3実施形態の処理を説明するフローチャートである。
[図 10A]溶媒の中に穀物を入れる様子を模式的に説明する図である。
[図 10B]温度を維持している状態を模式的に説明する図である。
[図 10C]焙煎成分が溶媒へ抽出された状態を模式的に説明する図である。 符号の説明
[0010] 1 米 (焙煎米,玄米)、
la 炭化被膜、 lb 米内部、 lc 米中心部、
10 焙煎装置、 11 ハウジング、 12 焙煎釜、
13 バーナー、 14 回転軸、 15 孔、
21 ノ ノト、 22 ラップ、 31 容器、 32 據し布、
33 別の容器、 41 容器、 4Γ 蓋、 42 ヒーター、
43 温度計、 LQ1 含浸液、 LQ2 溶媒
発明を実施するための最良の形態
[0011] = = =開示の概要 = = =
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
[0012] すなわち、穀物を粒状のまま焙煎する焙煎工程と、焙煎された穀物に含浸液を含 浸させて内部を膨潤させ、前記穀物を割り開かせる含浸工程と、割り開カゝせた前記 穀物の内部に溶媒を接触させて、前記内部に存在する焙煎成分を抽出する抽出ェ 程と、を有する焙煎穀物抽出液の製造方法が実現できること。
このような製造方法によれば、焙煎された穀物は、含浸工程を経ることで割り開かれ る。そして、内部の焙煎成分は、含浸液の含浸によって遊離しやすい状態になって いると考えられる。その結果、抽出工程によって、十分な濃度の焙煎穀物の抽出液を 得ることができる。
[0013] 力かる製造方法であって、前記焙煎工程は、水分を内部の全体に吸収させた状態 の前記穀物を加熱し、前記穀物の表面に炭化被膜を形成した後に前記穀物の内部 を炭化させることを特徴とする。
このような製造方法によれば、穀物の内部が炭化される際に、表面の炭化被膜によ つて水分の蒸発や酸素の供給が抑えられると考えられる。その結果、穀物の内部を 蒸し焼きの状態で炭化することができる。
[0014] 力かる製造方法であって、前記含浸工程は、前記焙煎された穀物を、その含浸許 容量に相当する量の含浸液に浸すことを特徴とする。
このような製造方法によれば、穀物を割り開力せた状態で、含浸液の殆どが穀物の 内部に含浸される。つまり、ドリップ (流出分)の発生を抑えることができる。このため、 抽出工程において、高濃度の抽出液を容易に得ることができる。
[0015] 力かる製造方法であって、前記抽出工程は、割り開かせた前記穀物と前記溶媒と を同じ容器に入れて混合し、前記焙煎成分が前記溶媒へ抽出された後に、前記焙
煎成分を含有した溶媒を混合物から分離することを特徴とする。
このような製造方法によれば、高濃度の抽出液を容易に得ることができる。
[0016] 力かる製造方法であって、割り開力せた前記穀物が保持する含浸液を除去する含 浸液除去工程を、前記抽出工程よりも前に行うことを特徴とする。
このような製造方法によれば、抽出工程に先だって含浸液除去工程が行われるの で、割り開力せた穀物の取り扱いが容易となる。例えば、抽出工程を遠隔地で行う場 合において、運搬を容易に行うことができる。
[0017] かかる製造方法であって、前記含浸液除去工程は、前記穀物が保持する含浸液を 凍結させた状態で除去することを特徴とする。
このような製造方法によれば、穀物力も含浸液を選択的に除去できるので、焙煎成 分を高濃度で抽出することができる。
[0018] 力かる製造方法であって、前記抽出工程は、含浸液が除去された前記穀物と前記 溶媒とを同じ容器に入れて混合し、前記焙煎成分が前記溶媒に抽出された後に、前 記焙煎成分を含有した溶媒を混合物から分離することを特徴とする。
このような製造方法によれば、高濃度の抽出液を容易に得ることができる。
[0019] 力かる製造方法であって、前記抽出工程は、前記溶媒として水を用いる、ことを特 徴とする。
このような製造方法によれば、取り扱いの容易な抽出液を得ることができる。
[0020] 力かる製造方法であって、前記抽出工程は、前記溶媒として、 50°C以上 80°C以下 の温度に調整された水を用いることを特徴とする。
このような製造方法によれば、焙煎成分に含まれるうまみ成分を損なうことなぐ量 産に適する時間で抽出が行える。
[0021] 力かる製造方法であって、前記抽出工程は、前記溶媒として、水とアルコールの混 合物を用いることを特徴とする。また、前記溶媒として、水とアルコールの混合物を用 いることを特徴とする。
このような製造方法によれば、アルコールを含有した抽出液を得ることができる。
[0022] また、穀物を粒状のまま焙煎する焙煎工程と、焙煎された穀物への溶媒の含浸によ つて内部を膨潤させ、この膨潤によって前記穀物を割り開カゝせ、割り開かせた前記穀
物の内部に前記溶媒を接触させて、前記内部に存在する焙煎成分を抽出する含浸 抽出工程と、を有する焙煎穀物抽出液の製造方法を実現することもできる。
このような製造方法によれば、穀物を割り開力せつつ焙煎成分を抽出することがで きるので、穀物の移し替えと 、つた作業を省略することができる。
[0023] 力かる製造方法であって、前記含浸抽出工程は、前記溶媒として、水を用いること を特徴とする。
このような製造方法によれば、取り扱いの容易な抽出液を得ることができる。
[0024] 力かる製造方法であって、前記含浸抽出工程は、前記溶媒として、 20°C以上 85°C 以下の温度に調整された水を用いることを特徴とする。
このような製造方法によれば、飲料として適した濃度で焙煎成分を抽出することが できる。
[0025] 力かる製造方法であって、前記含浸抽出工程は、前記溶媒として、 40°C以上 85°C 以下の温度に調整された水を用いることを特徴とする。
このような製造方法によれば、焙煎成分のうまみ成分を損なうことなぐ量産に適し た時間で抽出することができる。
[0026] 力かる製造方法であって、前記含浸抽出工程は、前記溶媒として、水とアルコール の混合物を用いることを特徴とする。また、前記溶媒として、アルコールを用いること を特徴とする。
このような製造方法によれば、アルコールを含有した抽出液を得ることができる。
[0027] 力かる製造方法であって、前記焙煎工程は、前記穀物として玄米を用いることを特 徴とする。
このような製造方法によれば、焙煎された玄米の飲料を製造することができる。
[0028] 力かる製造方法であって、前記焙煎工程は、前記穀物として麦を用いることを特徴 とする。
このような製造方法によれば、焙煎された麦の飲料を製造することができる。
[0029] また、焙煎穀物加工物に溶媒を接触させて、前記焙煎穀物加工物力も焙煎成分を 抽出する焙煎穀物抽出液の製造方法であって、前記焙煎穀物加工物は、穀物を粒 状のまま焙煎する焙煎工程と、焙煎された穀物に含浸液を含浸させて内部を膨潤さ
せ、前記穀物を割り開かせる含浸工程と、割り開力せた前記穀物が保持する含浸液 を除去する含浸液除去工程と、を経て製造されている、焙煎穀物抽出液の製造方法 を実現することちできる。
このような製造方法によれば、遠隔の地であっても、焙煎穀物抽出液を容易に製造 することができる。
[0030] また、穀物を粒状のまま焙煎する焙煎工程と、焙煎された穀物に含浸液を含浸させ て内部を膨潤させ、前記穀物を割り開かせる含浸工程と、割り開かせた前記穀物が 保持する含浸液を除去する含浸液除去工程と、を有する焙煎穀物加工物の製造方 法を実現することもできる。
このような製造方法によれば、取り扱いに優れ、且つ、抽出液の製造が容易な焙 煎穀物加工物を得ることができる。
[0031] = = =第 1実施形態 = = =
以下、焙煎穀物抽出液の製造方法について詳細に説明する。まず、第 1実施形態 について説明する。ここで、図 1は、第 1実施形態の処理を説明するためのフローチ ヤートである。図 1に示すように、この第 1実施形態における製造工程は、穀物を粒状 のまま焙煎する焙煎工程 (S10)と、焙煎された穀物に含浸液を含浸させて内部を膨 潤させ、穀物を割り開力せる含浸工程 (S20)と、割り開力せた穀物の内部に溶媒を 接触させて、内部に存在する焙煎成分を抽出する抽出工程 (S30)とからなる。そし て、焙煎される穀物として、米 1 (玄米,図 2Aを参照。)を用いている。以下、各工程 にてついて詳細に説明する。
[0032] <焙煎ェ程 10) >
まず、焙煎工程について説明する。この焙煎工程では、米 1を粒状のまま焙煎する 。すなわち、米 1が破裂したり、米 1の内部に空洞が生じたりすることがないように焙煎 する。本実施形態では、この焙煎工程を、焙煎装置 10を使って行う。ここで、図 2Aは 、焙煎装置 10の内部構造を説明するための断面図である。図 2Bは、焙煎装置 10の 内部構造を説明するための他の断面図である。
[0033] これらの図力 判るように、この焙煎装置 10は、ハウジング 11と、ハウジング 11内に 配置されて 、る焙煎釜 12と、ハウジング 11内における焙煎釜 12の下方に配置され
ているバーナー 13とを有している。焙煎釜 12は、側方から見た断面形状 (縦断面形 状)が楕円形をした筒状の部材によって作製されている。本実施形態の焙煎釜 12は 、その側面に関し、長い側の直径 L1が 0. 56m、短い側の直径 L2が 0. 4mである。 また、焙煎釜 12の幅 W (両側面同士の間隔)が 0. 86mである。この焙煎釜 12は、例 えば金属板によって作製される。そして、焙煎釜 12には、パイプ状の回転軸 14が取 り付けられている。この回転軸 14は、焙煎釜 12の筒中心を通るように取り付けられて いる。そして、回転軸 14の両端部は、焙煎釜 12の楕円形側面よりも外側に突出して いる。また、回転軸 14における両端部を除いた部分、つまり、焙煎釜 12の内部に位 置している部分には複数の孔 15が形成され、これらの孔 15を通じて焙煎釜 12の内 部空間と回転軸 14の空間とが連通している。
[0034] この焙煎装置 10では、回転軸 14を中心にして焙煎釜 12を回転させ、焙煎釜 12内 に入れられた米 1を焙煎する。このとき、焙煎釜 12の縦断面が楕円形状であるため、 楕円の長軸 (L1側の軸)が上下方向に位置しているときに焙煎釜 12の下方に溜まつ ていた米 1は、焙煎釜 12の回転に伴って上昇する。そして、この米 1は、貯留限界を 超えたとき、雪崩のような状態で落下する。このとき、落下する米 1は、他の米 1の上を 転がるようにして落ちるので、米 1の割れを防止することができる。その結果、米 1は、 粒状を維持しつつも、全体的に攪拌されて均一に加熱される。また、この焙煎装置 1 0では、バーナー 13の火力を調節することで、焙煎釜 12の温度を調節することがで きる。例えば、 200数十 °Cまで温度を上昇させることができる。また、回転軸 14がくど (竈内の煙出しの筒)として機能するため、焙煎釜 12内の米 1を、蒸し焼きにすること ができる。なお、以下の説明では、便宜上、焙煎された粒状の米のことを、焙煎米 1と もいう。
[0035] この焙煎工程では、最初に吸水工程を行い、米 1の内部に水を十分に含ませる。
焙煎前に吸水をさせるのは、米 1の内部に存在するデンプンを α化し、その後に炭 化させるためである。本実施形態の吸水工程では、米 1を常温(20°C前後)の水に 2 0分〜 30分浸漬している。ここで、吸水工程にて必要な浸漬時間は、水の温度や米 1の種類等によって相違する。しかし、この浸漬時間は、米 1の芯まで吸水する力否 かの観点で定められるものである。このため、飽和吸水時間以上であれば十分と考え
られる。
[0036] 米 1に吸水をさせたならば加熱工程を行う。この加熱工程では、吸水状態の米 1を 加熱することで、米 1の表面に炭化被膜を形成し、その後米 1の内部を炭化させる。こ のため、焙煎釜 12の温度を時間の経過に合わせて適宜調整する。例えば、 190°C 位まで 1時間程度掛けて少しずつ温度を上げていく。そして、 195°Cから 200°C程度 (連続焙煎温度)を維持しつつ 50分程度焙煎する。その後、 210°C力 215°C程度( 仕上げ温度)まで上げて焙煎を終了する。
[0037] 焙煎条件の具体例を表 1に示す。なお、具体例の焙煎時において、焙煎釜 12の回 転速度は、工程 1において毎分 18回転に設定し、工程 2以降において毎分 36回転 に設定している。
[0038] 【表 1】
[0039] この焙煎工程を行うことで、米 1は芯まで炭化(黒焼き)されて焙煎米となる。ここで、 図 3Aは、表面に炭化被膜 laが形成された状態の米 1を説明する図である。図 3Bは 、米内部 lbの炭化が進行している状態の米 1を説明する図である。図 3Cは、米内部 lbの全体が炭化された状態を説明する図である。図 3Dは、焙煎が終了した状態の 米 1 (つまり、焙煎米 1)を説明する図である。なお、これらの図は、焙煎過程で適宜サ ンプリングした米 1の断面を顕微鏡で観察して得られたものである。また、いずれの図 も拡大率は 100倍である。
[0040] これらの図から判るように、前述した条件で焙煎することにより、米 1は、まず表面に 炭化被膜 laが形成され (図 3A)、次に米内部 lbが炭化され(図 3B〜図 3C)、その
後、米中心部 lcまで炭化する(図 3D)。このような過程を経ることで、米 1の状態は次 のように変化していると考えられる。表面に炭化被膜 laが形成されていることから、こ の炭化被膜 laによって、酸素や水分の米内部 lbへの浸入、及び、米内部 lbからの 水分の放出が抑制されると考えられる。このため、焙煎によって米内部 lbが加熱され ると、米内部 lbに含まれている水分も加熱される。しかし、加熱された水分は、炭化 被膜 laによって外部への放出が妨げられる。従って、米内部 lbに含まれている水分 は、僅かずつ放出される力 米内部 lbに留まっているものも多くあり、デンプンを α 化させるように作用する。要するに、表面に炭化被膜 laが形成された後、米内部 lb では、炊かれている状態になっていると考えられる。その後も加熱は続けられるので、 米内部 lbの水分が徐々に放出され、ひいては米内部 lbが炭化する。つまり、蒸し焼 きの状態になっていると考えられる。このとき、米内部 lbでは、 α化したデンプンが炭 化していると考えられる。このため、焙煎米 1における焙煎成分には、 α化したデンプ ンゃミネラル分に起因する、うまみ成分が多く含有されて 、ると考えられる。
[0041] <含浸工程(S20) >
次に、含浸工程について説明する。ここで、図 4A〜図 4Cは、含浸工程を説明する 図である。すなわち、図 4Aは、焙煎米 1をバット 21内に拡げた様子を模式的に説明 する図である。図 4Bは、焙煎米 1に含浸液 LQ1を注ぐ様子を模式的に説明する図で ある。
図 4Cは、含浸によって焙煎米 1が割り開かれた状態を模式的に説明する図である。 なお、本実施形態では、この含浸工程をバット 21等の底の浅い容器で行っている。
[0042] この含浸工程では、まず、バット 21に所定量の焙煎米 1を入れ、均一な厚さとなるよ うに表面をならす(図 4Aの状態)。実験では lKgの焙煎米 1を用いて ヽる。
[0043] 焙煎米 1をバット 21に入れたならば、バット 21に所定量の含浸液 LQ 1を注ぐ(図 4B の状態)。本実施形態では、含浸液 LQ1として常温 (約 20°C)の水を注いでいる。こ のとき、注ぐ水の量は、焙煎米 1の含浸許容量に相当する量にするとよい。これは、 焙煎米 1が十分に水を含浸した状態で、注いだ水の殆どが吸収されるからである。言 い換えれば、ドリップ (流出分)の発生を抑えることができるからである。その結果、含 浸状態の焙煎米 1の取り扱いが容易になり、その後に行われる抽出工程 (S30)にお
いて、高濃度の抽出液を容易に得ることができるようになる。そして、本実施形態では
、前述した焙煎工程 (S10)で焙煎した焙煎米 1の吸水量が、その重量の 1. 6倍であ るという知見を得た。この知見に基づいて、焙煎米 1の 1. 6倍の重量に相当する 1. 6 Lの水を注いでいる。
[0044] 水を注いだならば、バット 21の開口をラップ 22等で覆って水分の蒸発を抑え、ラッ プ 22等で覆った状態で放置する。これにより、米内部 lbに水が含浸される。 2時間 程度放置すると、焙煎米 1の粒が割れ始める。このとき、へら等を用いて全体的に混 ぜ合わせ、その後表面を均一にならす。その後 2時間程度経過すると (つまり、水を 注いで力 4時間程度経過すると)、水が米内部 lbに含浸されたことにより、焙煎米 1 の殆どが割り開かれた状態になる(図 4Cの状態)。この状態になったら、含浸工程を 終了する。
[0045] ここで、水の含浸によって焙煎米 1が割り開かれる様子について、順を追って説明 する。図 5Aは、含浸途中における焙煎米 1の状態を説明する図である。図 5Bは、含 浸によって焙煎米 1が割れ、少し開いた状態を説明する図である。図 5Cは、含浸に よる開き度合いが進んだ焙煎米 1を説明する図である。図 5Dは、含浸によって完全 に割り開かれた焙煎米 1を説明する図である。便宜上、以下の説明では、図 5Bの状 態を軽度の開放状態ともいい、図 5Cの状態を中度の開放状態ともいい、図 5Dの状 態を完全開放状態ともいう。なお、図 5Aにおける撮影倍率は 100倍、図 5B〜図 5D における撮影倍率は 20倍である。また、図 5B〜図 5Dにおいて符号 LIで示す模様 は、天井の照明によるものであり、焙煎米 1とは関係ないものである。
[0046] 水を注いだ直後の状態では、この水は、図 5Aに符号 CR1で示す亀裂等力 米内 部 lbに浸入し、符号 CR2〜CR4で示す組織間の隙間を通って米中心部 lcまで浸 入する。この図 5Aや図 3C,図 3D等力も判るように、焙煎米 1は黒焼きされているの で、米内部 lb組織が崩れることなく残っている。このため、毛細管現象によって、水 は、米中心部 lcまでスムーズに浸入すると考えられる。そして、米内部 lbの組織は、 浸入してきた水を吸収して膨潤する。このとき、炭化被膜 laは、水分を吸収し難くな つているため、米内部 lbの組織が膨潤しようとしても、これを阻止するように作用する と考えられる。しかし、米内部 lbの組織が膨潤する力の方が強いので、炭化被膜 la
の亀裂が拡がり、焙煎米 1は軽度の開放状態になる。そして、米内部 lbの組織の膨 潤がさらに進むと、炭化被膜 laの亀裂が所々で拡がって、焙煎米 1は中度の開放状 態となり(図 5C)、最終的には完全開放状態となる(図 5D)。このように、完全開放状 態になると、米内部 lbの組織は十分に吸水した状態となっているので、この米内部 1 bの組織に付着した焙煎成分は、離脱し易い状態になっていると考えられる。
[0047] ところで、前述した実施形態では、含浸液 LQ1として常温の水道水を用いて 、たが 、焙煎米 1の完全開放までに要する時間は、含浸液 LQ1の温度に依存して変化する ことが判った。即ち、含浸液 LQ1の温度が高いほど、焙煎米 1が早く開放することが 判った。以下、この点について説明する。ここで、含浸液 LQ1の温度を変えて開放時 間を測定した結果を表 2に示す。なお、この測定でも含浸液 LQ1としては水を用いて いる。
[0048] 【表 2】
[0049] この測定結果より、含浸液 LQ1として水を用いた場合、この水の温度は常温(20°C )力も 85°Cの範囲で選択できることが判った (サンプル 1— 1, 1— 2)。なお、 95°C (サ ンプル 1 3)で焙煎米 1が開放しな力つた理由は明らかではな 、が、表面の炭化被 膜 laが含有する脂質が固化した等が考えられる。そして、常温力も 85°Cの範囲内で あれば、高い温度である程、完全開放状態までの所要時間を短縮することができる。 このため、処理効率の観点からは高温を選択することが好ましいといえる。
[0050] ところで、この含浸工程は、米内部 lbの組織を十分に膨潤させることで、焙煎成分 を抽出しやすい状態にするという目的も有している。ここで、抽出温度を変えると、抽 出された液体の濃度(ひいては味)が変わる可能性がある。このため、含浸工程で用 いる含浸液 LQ1の温度は、抽出工程を経て得られた液体、すなわち、焙煎成分を含 有した溶媒 (焙煎穀物抽出液に相当する。)の味も加味して定めることがより好ましい といえる。
[0051] <抽出工程(S30) >
次に、抽出工程について説明する。ここで、図 6Aは、割り開力せた焙煎米 1と溶媒 LQ2とを同じ容器 31に入れて混合した状態を説明する図である。図 6Bは、焙煎米 1 と溶媒 LQ2の混合物を、濾し布 32で濾している様子を模式的に説明する図である。 この抽出工程では、割り開かせた焙煎米 1が有する焙煎成分を溶媒 LQ2へ抽出して 、焙煎穀物抽出液を得る。本実施形態では、溶媒 LQ2として所定温度に調整された 水を用いている。具体的には、割り開力せた焙煎米 l (400g)に対し、 70°C〜80°C 程度に調整された水を lL (lOOOg)用いている。この抽出工程では、図 6Aに示すよ うに、割り開力せた焙煎米 1と水 (溶媒 LQ2)とを同じ容器 31に入れて混合する。この とき、水の温度が下がるので、ヒータ(図示せず)等を用いて 70°C〜80°Cの温度範囲 を維持する。そして、この温度範囲で 30分程度維持した後、図 6Bに示すように、濾し 布 32を用いて焙煎米 1と水との混合物から、焙煎成分を含有した水を別の容器 33へ 分離している。なお、今回は、この分離時において圧搾をして、焙煎成分を含有した 水を絞り出している。このような方法を用いることで、焙煎成分を高濃度で含有する水 (焙煎穀物抽出液)を容易に得ることができる。そして、この焙煎穀物抽出液は、焙煎 米飲料の原液となる。すなわち、焙煎穀物抽出液を所定濃度に希釈することで、焙 煎米飲料が得られる。また、この焙煎穀物抽出液は、調理素材として用いてもよい。
[0052] ところで、抽出温度、つまり、溶媒 LQ2 (例えば水)の温度を変えると、抽出液の濃 度が変化する可能性がある。そこで、溶媒 LQ2の温度を異ならせて抽出試験を行つ た。その結果を表 3に示す。なお、この試験では抽出時間がまちまちになっているが 、試験時間の都合によるものである。すなわち、所定の濃度が得られたものは短時間 で試験を終了させている。また、溶媒 LQ2としては水を用いている。
[0053] 【表 3】
[0054] この試験結果により、抽出工程では、溶媒 LQ2の温度による影響が大きいことが判
つた。すなわち、溶媒 LQ2としての水は、その温度が 53°C以上 83°C以下(サンプル 2— 1〜サンプル 2— 4)であれば、量産に適した時間(2時間 30分以内)で所望の濃 度の抽出液が得られることが判った。また、常温では、量産に適した時間で十分な濃 度を得ることはできな力つた。
[0055] <吸光度による抽出液の濃度比較にっ 、て >
表 3の試験結果は、目視によって抽出液の濃度を判定したものであった。この場合 、基準が曖昧になりがちで、客観的な結果が得られ難い。このため、吸光度による濃 度確認試験を行った。この確認試験では、含浸工程 (S 20)で得られた含浸状態の 焙煎米 1を lOOgと、所定温度に調整した水 300gとを用いた。そして、保温機能付き のスターラーにて所定温度を維持しつつ、 30分間に亘つて攪拌(回転子 260rpm)し て得られた抽出液の吸光度を測定した。なお、吸光度を測定するにあたり、抽出液は 10倍に希釈した。試験結果を図 7に示す。
[0056] 図 7の縦軸は吸光度を示している。また、図 7の横軸はサンプルであり、維持温度の 低 、サンプルが図の左側に、維持温度の高!、サンプルが図の右側にそれぞれ配置 されている。今回のサンプルでは、吸光度で 0. 4以上あれば見た目の濃度としては 十分であった。つまり、飲料として十分な濃度であった。このことから、抽出温度を 50 °C以上に設定することで、十分な濃さの抽出液が得られることが判った。そして、この 結果は、表 3の試験結果と合致するものであった。
[0057] <抽出温度についての考察 >
ところで、水出しコーヒーのように、長時間を掛けてゆっくりと抽出する方法もある。こ のような方法を採った場合には、常温の水であっても所望の濃度が得られる場合が ある (第 3実施形態を参照。 )0そして、風味の観点力 すれば、抽出温度は低い方が よい場合もある。これは、水溶性のうまみ成分の溶出温度に起因すると考えられる。
そして、風味の観点力もすれば、抽出温度は 80°C以下が好ましいことが判った。 従って、抽出効率と風味の観点の両方を加味すると、抽出温度は 50°C以上 80°C以 下であることが好ま 、と 、える。
[0058] <第 1実施形態のまとめ >
以上説明したように、この第 1実施形態では、焙煎工程 (S10)と、含浸工程 (S20)
と、抽出工程 (S30)とを行うことにより、焙煎成分を高い濃度で含有した焙煎穀物抽 出液を製造することができる。
[0059] = = =第 2実施形態 = = =
前述した第 1実施形態では、含浸工程 (S20)から抽出工程 (S30)へ移行するにあ たり、割り開力せた焙煎米 1を別の場所に移す必要がある。ここで、この焙煎米 1は含 浸液 LQ1 (例えば水)を保持しているので、重くなつている。また、含浸液 LQ1を保持 した状態では、長期保存に適さない場合もある。これらの問題は、含浸工程を行うェ 場と、抽出工程を行う工場とが遠隔の地にある場合に顕著になる。
[0060] この第 2実施形態は、このような事情に鑑みてなされたものであり、割り開かせた穀 物 (焙煎米 1)が保持する含浸液 LQ1を除去する含浸液除去工程を、抽出工程よりも 前に行うことを特徴としている。ここで、図 8は、第 2実施形態の処理を説明するため のフローチャートである。この図 8に示すように、この第 2実施形態における製造工程 は、穀物を粒状のまま焙煎する焙煎工程 (S 110)と、焙煎された穀物に含浸液 LQ1 を含浸させて穀物の内部を膨潤させ、穀物を割り開力せる含浸工程 (S120)と、割り 開かせた穀物が保持する含浸液 LQ1を凍結除去するフリーズドライ工程 (S130)と、 含浸液 LQ1が除去された穀物に溶媒 LQ2を接触させて、穀物の内部に存在する焙 煎成分を抽出する抽出工程 (S140)とからなる。なお、穀物としては、第 1実施形態と 同様に、米 1 (玄米)が用いられている。また、含浸液 LQ1や溶媒 LQ2としては、所定 温度の水が用いられて 、る。
[0061] そして、焙煎工程 (S 110)は第 1実施形態の焙煎工程 (S 10)に対応し、含浸工程 ( S120)は第 1実施形態の焙煎工程 (S20)に対応し、抽出工程 (S140)は第 1実施 形態の抽出工程 (S30)に対応する。すなわち、この第 2実施形態では、フリーズドラ イエ程(S130)が行われている点、及び、抽出工程(S140)にて、水分が除去された 焙煎米 1と水とを混合している点が相違している。このため、以下の説明は、主な相 違点であるフリーズドライ工程(S130)について行い、共通点については省略するこ とにする。
[0062] <フリーズドライ工程(S 130) >
フリーズドライ工程は、含浸工程 (S 120)で割り開力せた穀物について、この穀物
が保持している含浸液 LQ 1を除去する含浸液除去工程の一種であり、この穀物を凍 結したままの状態で乾燥する工程である。
[0063] このフリーズドライ工程では、焙煎米 1 (穀物)に保持されている水分 (含浸液 LQ1) を凍結させる。そして、凍結状態の焙煎米 1を 4. 6mmHg (6. 12hPa)以下の真空 条件下に晒し、熱を加える。これにより、氷の結晶を昇華によって水蒸気に変えて除 去する。この場合、純粋に水分だけを除去することができる。この実施形態では、初 期温度を 65°Cに、終了時の温度を 45°Cにそれぞれ設定し、 18時間掛けて水分を除 去している。これにより、乾燥状態の焙煎米ブロック(図示せず)が得られた。この焙 煎米ブロックは、焙煎米加工物(焙煎穀物加工物)の一種であり、抽出工程 (S140) における原材料となる。
[0064] そして、このフリーズドライ工程を行うことで、焙煎米ブロックの重量は約 1Z3になる 。また、水分が除去されているので、保存性も向上している。その結果、焙煎米 1の取 り扱いが容易になる。例えば、抽出工程を遠隔地で行う場合において、運搬を容易 に行うことができるし、長期保存もできる。
[0065] <抽出工程(S140) >
次に、抽出工程について説明する。この抽出工程に関しては、第 1実施形態と同様 の手順で行われる。このため簡単に説明する。この抽出工程では、フリーズドライエ 程で得られた焙煎米ブロック (焙煎穀物加工物)に溶媒 LQ2としての水を接触させ、 焙煎米ブロックから焙煎成分を抽出する。すなわち、焙煎米ブロックと溶媒 LQ2とし ての水とを混合し、濾し布 32を用いて焙煎米ブロックと水との混合物から、焙煎成分 を含有した水を分離する。これにより、十分な濃度の焙煎米 1の抽出液 (焙煎穀物抽 出液)を得ることができる。そして、この抽出工程 (S 140)でも、水の温度や量に留意 する必要がある。
[0066] <第 2実施形態のまとめ >
以上説明したように、この第 2実施形態では、抽出工程よりも前に、水分除去工程( フリーズドライ工程)を行っているので、割り開かせた穀物の取り扱いが容易となる。
なお、フリーズドライ工程で得られた穀物加工物(焙煎米ブロック)は、工場での抽 出工程に用いられる他、小分けして家庭用としてもよい。この場合、各家庭では、この
穀物加工物から焙煎穀物飲料を抽出することができる。例えば、焙煎米ブロックの適 当量を、所定温度に調整された水に投入して攪拌し、得られた混合物をコーヒー用 フィルタや茶こしを用いて濾過することで、焙煎米飲料を手軽に楽しむことができる。 また、焙煎米ブロックは、ケーキの風味付け等、調理素材として用いてもよい。加えて 、焙煎成分を抽出した後の残滓も、調理素材等に用いることができる。繊維質が豊富 で健康食品として有用である。
[0067] = = =第 3実施形態 = = =
前述した各実施形態では、焙煎穀物を割り開かせる工程 (含浸工程 S20, S120) と、焙煎成分を抽出する工程 (抽出工程 S30, S140)とが別の工程であった。この場 合、割り開力せた焙煎穀物を移動させる等の処理が必要があった。第 3実施形態は 、この点に着目してなされたものであり、焙煎された穀物を割り開かせつつ焙煎成分 の抽出を行うものである。すなわち、焙煎された穀物への溶媒 LQ2の含浸によって 穀物の内部を膨潤させ、この膨潤によって穀物を割り開かせ、割り開カゝせた穀物の内 部に溶媒 LQ2を接触させて、内部に存在する焙煎成分を抽出する含浸抽出工程を 行うことを特徴としている。
[0068] ここで、図 9は、第 3実施形態の処理を説明するフローチャートである。図 9に示すよ うに、この第 3実施形態における製造工程は、穀物を粒状のまま焙煎する焙煎工程( S210)と、焙煎された穀物を割り開かせつつ焙煎成分の抽出を行う含浸抽出工程( S220)と、焙煎された穀物と水との混合物から、焙煎成分を含有した水を分離する 濾過工程 (S230)とからなる。そして、焙煎される穀物として、米 1 (玄米)を用いてい る。
[0069] これらの工程の中で、焙煎工程 (S210)は、前述した各実施形態(S 10, S110)に 対応している。また、濾過工程 (S230)は、前述した各実施形態における抽出工程( S30, S 140)の中の処理と同様である。すなわち、この第 3実施形態では、含浸抽出 工程 (S220)が行われている点に特徴を有している。このため、以下の説明は、含浸 抽出工程 (S220)について行い、共通点については省略することにする。
[0070] <含浸抽出工程(S220) >
含浸抽出工程は、焙煎工程 (S210)で焙煎された穀物に溶媒 LQ2を含浸させて
割り開かせ、割り開かせた穀物が有する焙煎成分を、溶媒 LQ2によって抽出する処 理である。ここで、図 10Aは、所定温度に調整された溶媒 LQ2の中に、所定量の穀 物 (焙煎米 1)を入れる様子を模式的に説明する図である。図 10Bは、穀物を溶媒 L Q2の中に入れて温度を維持して 、る状態を模式的に説明する図である。図 10Cは 、穀物が割り開かれ、焙煎成分が溶媒 LQ2へ抽出された状態を模式的に説明する 図である。なお、この実施形態でも、焙煎される穀物は米 1 (玄米)であり、溶媒 LQ2 は所定温度に調整された水である。
[0071] この含浸抽出工程では、まず、図 10Aに示すように、土鍋等の保温性のよい容器 4 1をヒーター 42の上に置き、この容器 41に溶媒 LQ2 (水)を 、れて所定温度に調整 する。容器 41の溶媒 LQ2が所定温度になったならば、図 10Bに示すように、所定量 の焙煎米 1 (穀物)を容器 41の中に投入して全体的に攪拌する。その後、蓋 4Γをし て、図 10Cに示すように、焙煎米 1が割り開かれ、焙煎成分が溶媒 LQ2へ抽出される まで、この温度状態を維持する。このとき、温度計 43による測定結果に基づいてヒー ター 42を適宜制御する。
[0072] そして、この含浸抽出工程では、焙煎米 1が割り開かれることが重要である。これは 、焙煎米 1の表面に炭化被膜 laが生成されていること、及び、米内部 lbに存在する 焙煎成分がデンプンの α化の後に生成されている点に起因している。すなわち、焙 煎米 1が割り開かれな力つた場合、炭化被膜 laに付着している焙煎成分のみが溶媒 LQ2へ抽出されることになる。つまり、デンプンの α化によって生じるうまみ成分が、 米内部 lbに閉じこめられてしまう。その結果、溶媒 LQ2としての水は、色が着いてい てもうまみの乏しいものとなってしまう。従って、この含浸抽出工程では、焙煎米 1が 割り開かれた状態となり、米内部 lbの焙煎成分が溶媒 LQ2へ充分に抽出されるまで 行うことが求められる。ここで、溶媒 LQ2 (水)の温度を変えて行った場合の試験結果 を表 4に示す。
[0073] 【表 4
[0074] この試験結果より、次のことが判った。水の温度を 95°C以上に設定すると (サンプ ル 3— 1)、抽出後の水 (抽出液)に色は着くものの、焙煎米 1が全く割れ開かなかつ た。このため、得られた抽出液は、苦みが強く風味の飛んだ味になっていた。また、 濁りも多く出ていた。水の温度を約 90°Cに設定すると (サンプル 3— 2)、少量の焙煎 米 1 (おおむね 10%)について割れ開いていることが確認できた。し力し、得られた抽 出液は、苦みが強く雑味もあるものであった。なお、この場合も濁りが目立っていた。
[0075] 水の温度を約 85°Cに設定すると(サンプル 3— 3)、ほぼ半量(おおむね 50%)の焙 煎米 1が割れ開き、得られた抽出液は、サンプル 3— 2のものよりも多少薄い感じでは あるが、濁りが少な力つた。そして、焙煎による苦みやうまみがあった。水の温度を約 70°Cに設定すると (サンプル 3— 4)、大多数 (おおむね 80%)の焙煎米 1が割れ開 いた。得られた抽出液は、若干のとろみがあった。そして、濃厚な味であり、強い苦み があった。しかし、嫌な苦みではなかった。カロえて、風味が残っている感じでうまみが あった。水の温度を約 60°Cに設定すると (サンプル 3— 5)、半分を多少超える程度( おおむね 60%)の焙煎米 1が割れ開き、得られた抽出液は、サンプル 3— 4のものと 同じような感じであった。水の温度を約 50°Cに設定すると(サンプル 3— 6)、おおむ ね 30%の焙煎米 1が割れ開いた。得られた抽出液は、とろみはなぐ前述した各サン プルよりも味は薄力つた。そして、苦みがあった。しかし、嫌な苦みではな力つた。カロ えて、風味が残っている感じでうまみがあった。水の温度を約 40°Cに設定すると(サ ンプル 3— 7)、おおむね 20%の焙煎米 1が割れ開いた。得られた抽出液は、とろみ はなぐ前述したサンプル 3— 6のものよりも味は薄く少々の苦みがあった。そのまま 飲んでおいしいと感じる程度の濃さであった。従って、抽出時間を 2時間 30分に限つ
た場合には、飲料に適した濃度を得るために必要な水の温度は少なくとも 40°C以上 必要といえる。
[0076] また、常温で抽出した場合 (サンプル 3— 8)、 4時間後にほぼ全ての焙煎米 1が割 れ開いた。そして、ほぼ 1日放置した後に濾過したところ、色は 85°Cのものよりは薄い ものの、濁りが少な力 た。濃度は、そのまま焙煎米飲料として飲める程度であった 力 良好な風味を醸していた。これは、常温の水を用いたことにより、うまみ成分がバ ランス良く抽出されたためと考えられる。
[0077] <第 3実施形態のまとめ >
以上説明したように、この第 3実施形態では、含浸抽出工程 (S220)にて、焙煎さ れた穀物を割り開カゝせつつ焙煎成分の抽出を行うので、割り開かれた穀物を移し替 える等の作業を省略することができ、作業性の向上が図れる。また、溶媒 LQ2に関し 、量産に適した抽出時間(例えば 2時間 30分以内)で、飲料に適した濃度の抽出液 を得るという観点によれば、その温度を 40°C〜85°Cの範囲に定めればよい。この範 囲に定めることにより、焙煎成分のうまみ成分を損なうことなぐ量産に適した時間で 抽出が行える。また、飲料に適した濃度で焙煎成分を抽出するという観点力 すれば 、溶媒 LQ2の温度を 20°C〜85°Cの範囲に定めればよい。
[0078] = = =その他の実施形態 = = =
上記の各実施形態は、主として焙煎穀物力 の抽出液の製造方法について記載さ れているが、その中には、焙煎穀物加工物の製造方法や、この焙煎穀物加工物から の抽出液の製造方法も含まれている。また、上記の各実施形態は、本発明の理解を 容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発 明は、その趣旨を逸脱することなぐ変更、改良され得ると共に、本発明にはその等 価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発 明に含まれるものである。
[0079] <焙煎対象となる穀物について >
ところで、前述した各実施形態では、穀物として米 1 (玄米)を用い、これを焙煎する ことで焙煎米を得ていた。しかし、焙煎対象となる穀物は、米 1に限定されるものでは ない。例えば小麦であってもよい。小麦の焙煎条件の具体例を表 5に示す。
[0080] 【表 5】
[0081] 上記の焙煎条件で焙煎したところ、内部が全体的に黒焼きされた小麦 (以下、焙煎 小麦ともいう。)が得られた。そして、この焙煎小麦に水を含浸させたところ、時間は要 したものの焙煎米 1と同様に割り開力せることができた。さらに、前述した抽出工程を 行うことで、焙煎小麦の抽出液を得ることができた。得られた抽出液は、焙煎米 1の抽 出液と同等の濃度であった。また、焙煎米 1の抽出液に比べて濁りが少な力つた。以 上より、焙煎小麦でも抽出液が得られることが確認できた。そして、小麦について焙 煎抽出液が得られたことから、大麦でも焙煎抽出液が得られると考えられる。すなわ ち、焙煎された麦について、抽出液を得ることができる。また、米 1と小麦について焙 煎抽出液が得られたことから、他の穀物についても焙煎条件等を設定することにより 、焙煎抽出液が得られると考えられる。
[0082] <含浸液及び抽出液について >
前述した各実施形態において、含浸工程 (S 20, S 120)で焙煎米 1に含浸させる 含浸液 LQ1、及び、抽出工程 (S30, S140)や含浸抽出工程 (S220)で用いられる 溶媒 LQ2は、いずれも水を用いていた。このように、水を用いると、各工程における 取り扱いが容易であり、且つ、抽出液の取り扱いも容易となる。しかし、含浸液 LQ1 及び溶媒 LQ2は水に限定されるものではない。例えば、含浸液 LQ1や溶媒 LQ2は 、水とアルコールの混合物であってもよい。特に、溶媒 LQ2については、純粋なアル コールであってもよい。これらの場合、焙煎穀物のアルコール飲料を製造することが できる。ここで、アルコールは、焙煎成分に対する抽出力が水よりも強いと考えられる ので、水よりも低い温度で高濃度の抽出液が得られると考えられる。例えば、常温か ら 50°C前後の範囲であれば、十分高濃度の抽出液が得られると考えられる。
[0083] <含浸液除去工程について >
前述した第 2実施形態では、含浸液除去工程としてフリーズドライ工程を行って!/ヽ
た。しかし、この含浸液除去工程では、穀物が保持している含浸液を除去できれば他 の乾燥方法を用いてもよい。例えば、温風乾燥を用いてもよい。なお、第 2実施形態 のように、フリーズドライ工程を行った場合には、焙煎成分を損なうことなぐ含浸液だ けを除去することができると 、う利点がある。
<焙煎工程について >
前述した各実施形態では、焙煎装置 10によって焙煎することにより、先に穀物の表 面に炭化被膜 laを形成し、その後に穀物の米内部 lbを炭化させている。このような 段階を経て焙煎されることの重要性は先に述べた通りであるが、そのための焙煎条 件は 1つではないと考えられる。例えば、温度調整や攪拌条件等を上手く設定すれ ば、フライパンによる手作業であっても同じような焙煎穀物を得ることができる。反対 に、前述した焙煎装置 10を用いたとしても、焙煎釜 12の温度、焙煎釜 12の回転速 度、及び、焙煎時間等の設定を誤ると、上手く焙煎できない場合もある。このため、焙 煎にあたっては、焙煎条件に留意する必要がある。