明 細 書
連続熱処理炉、これを用いた金属管及び熱処理方法
技術分野
[0001] 本発明は、冷間加工された金属管の連続熱処理に関し、さらに詳しくは、炭化水素 系の成分を含む圧延油または潤滑剤を使用して冷間加工される、例えばステンレス 鋼管等の金属管において、管の内面付着物からの発生ガスによる汚染を生じさせる ことがなレ、連続熱処理炉、並びにこれを用いて熱処理された金属管および熱処理方 法に関するものである。
背景技術
[0002] 冷間加工された金属管、例えば、冷間仕上げ鋼管に冷間加工を施す場合、冷間 圧延時には圧延油を塗布し、冷間抽伸時には潤滑剤 (金属石鹼)を被覆するなど、 鋼管の内外表面に適切な表面処理を施し、所定寸法に加工する。
[0003] 冷間加工された鋼管を熱処理する場合には、熱処理前に圧延油や潤滑剤を洗浄( 脱脂)し、鋼管の内外表面の付着物を除去する必要がある。鋼管表面に付着物を残 留させたままで熱処理を施すと、圧延油や潤滑剤は炭化水素系の成分を含み、さら に塩素等を含有するものもあるため、熱処理中にこれらの成分が蒸発して塩素その 他の汚染ガスが発生し、これらのガスが特に滞留しやすい鋼管内面に汚染が発生す ることがある。
[0004] また、前記蒸発ガス中に塩素その他の汚染ガスが含まれていない場合でも、炭素( カーボン)源を含んだ高温気体に鋼管の内外表面が曝されることになるため、温度条 件によって浸炭が発生することがある。表面に浸炭が発生した鋼管は、高温高圧で 使用を繰り返すと、浸炭部が起点となり SCC (応力腐食割れ)を発生させるおそれが ある。このため、冷間加工された鋼管を熱処理する場合には、鋼管の内外表面に浸 炭を発生させないことが必要である。
[0005] 熱処理にともなって鋼管表面に汚染や浸炭を発生させることがないように、熱処理 前に鋼管の内外表面に残留した付着物を除去しょうとすると、冷間加工後のアルカリ 脱脂、洗浄のみでは除去できず、それに加えて、サンドブラスト等の内面清浄化のェ
程が必要になる。また、酸洗を適用すると、そのための工数が増大し、いずれにして も、冷間加工による鋼管製造費が増大することになる。
[0006] 鋼管内面の汚染や浸炭を防止するためには、管内のガスを雰囲気ガスで置換する 方法が有効であり、従来から、そのための種々の対策が提案されている。
[0007] 特開平 5— 320745号公報では、弾性パッドが対向部に設けられた一対の開閉扉 をパージ室の入口部の上下に夫々上下動するように設け、搬入される直管を入口部 にて一時停止させ、上下から開閉扉により挟んでパージ室の雰囲気ガスの圧力を高 くすることにより、直管内を雰囲気ガスに置換するようにした管内ガスパージ装置が提 案されている。
[0008] し力 ながら、特開平 5— 320745号公報で提案された装置では、パージ室の入口 部でその都度直管の装入を停止させる必要があるため、熱処理能率が著しく低下す る。それと同時に、加熱雰囲気での弾性パッドの品質劣化が激しぐ要求性能が得ら れなレ、場合や、頻繁に交換を要するとレ、う問題がある。
[0009] また、特開平 6— 128645号公報に開示される熱処理装置は、直状管を雰囲気ガ ス中で熱処理するための熱処理炉の側方には、直状管の入口に向けて直状管を送 り込む為の装入テーブルを配設し、この装入テーブルには、直状管の先端が上記熱 処理炉内に入った状態において、その直状管の後端が位置する場所を負圧にする 為の負圧手段を設けている。これにより、直状管内のパージ作業を極めて簡易に行 えるとしている。
[0010] しかしながら、特開平 6— 128645号公報が開示する装置は、大容量の負圧手段 を必要とするため、大力 Sかりな設備投資を要し、鋼管製造費が高コストになるという問 題がある。
[0011] さらに、特開 2004— 239505号公報には、「炉入口にその全面を覆うように吊着さ れた耐熱性カーテンを設け、この耐熱性カーテンを通して前記鋼管を装入することを 特徴とする連続熱処理炉」が開示されている。この熱処理炉では、鋼管内面の付着 物が発生する分解ガス(汚染ガス)は鋼管内部に滞留し易いことから、雰囲気ガスを 鋼管の先端から内部に侵入させ、鋼管内部におけるガス流れを顕著にするものであ る。
[0012] 具体的には、被熱処理材である鋼管を炉内に装入する際、先に装入された鋼管の 先端側が昇温し、表面温度が 200〜600°Cになると、残留付着物が分解して炭化水 素系ガス等を発生する。連続熱処理炉の炉入口を覆ってシールし、望ましくは炉入 口および炉出口部の両端を覆うことによって、炉内の雰囲気ガスを炉外に比べて陽 圧にすることで、鋼管の先端から後端に向力 ガス流れを形成することができる。
[0013] これによれば、鋼管を熱処理炉内に装入する際に、内表面に残留した付着物を分 解、除去するとともに、鋼管内部には先端から後端に向力 雰囲気ガスの流れが生じ るので、管内部を雰囲気ガスに容易に置換することができ、熱処理能率を低下させる ことなぐ付着物の分解ガスに起因する汚染や浸炭を防止することができる。
[0014] しかしながら、特開 2004— 239505号公報が開示する熱処理炉では、被熱処理 材である鋼管の後端が炉内(正確には、前記耐熱性カーテンよりも内側)に入ってし まうと、鋼管の前端と後端の圧力差がなくなり、鋼管内のガス流れがなくなるので、後 端付近に炭化水素系ガスや汚染ガスが滞留しやすくなる。そのため、鋼管の後端が 耐熱性カーテンよりも内側に入る前に鋼管内面の付着物を分解できる温度になるよう に、炉の入口の温度を常時管理することが必要になる。そのため、簡便な方法で、よ り確実に炭化水素系ガスや汚染ガスを除去可能な熱処理炉が望まれている。
発明の開示
[0015] 本発明は、このような冷間加工された鋼管、その他の金属管の内外表面に残留し た付着物の問題に鑑みてなされたものであり、冷間加工後の洗浄工程をアルカリ脱 脂、洗浄のみとした場合であっても、熱処理前に、残留した付着物を簡易に除去する ことができ、しかも熱処理能率を低下させることがない連続熱処理炉、並びにこれを 用いて熱処理された金属管および熱処理方法を提供することを目的としている。
[0016] 本発明者らは、上記の課題を解決するため、冷間加工された鋼管を洗浄した後に 表面に残留した付着物を除去するための熱処理方法について種々の検討をカ卩えた 。その結果、冷間加工後の洗浄工程をアルカリ脱脂、洗浄のみとした場合であっても 、鋼管を熱処理炉に装入する際に、内外表面に残留した付着物を簡易に分解、気 化させ、除去できることを知見した。
[0017] アルカリ脱脂、洗浄後に鋼管表面に残留した付着物 (冷間加工時の圧延油、抽伸
用潤滑剤(金属石鹼)等)のほとんどは、熱処理時に 200〜600°Cに加熱されると、 分解して炭化水素系ガス(さらには、塩素その他の汚染ガス)を発生させる。特に、 4 00°Cで炭化水素系ガス等の発生が最も顕著になる。そのため、残留した付着物を効 果的に分解するには、鋼管表面を 400°C以上に加熱するのが望ましい。
[0018] 通常、熱処理炉内に装入された鋼管では、外面付着物の分解ガスは炉内のガス流 れによって容易に拡散されるが、内面付着物の分解ガスは鋼管内部に滞留し易くな る。付着物の分解ガスは塩素その他の汚染物質を含む場合があり、また、炭化水素 系で浸炭性を有することから、鋼管力 ¾00°C以上に加熱されると、鋼管表面に汚染 や浸炭が発生する場合がある。
[0019] したがって、汚染や浸炭の発生を効果的に防止するには、鋼管表面の温度を 800 °C未満で管理する必要がある。実際の操炉においては、連続熱処理炉内の管理精 度を考慮して、 750°C以下に管理するのが望ましい。
[0020] 鋼管内面の付着物が発生する分解ガス (汚染ガス)は鋼管内部に滞留し易いことか ら、本発明者らは、鋼管内部におけるガス流れをより顕著にする方法について検討を 重ねた。その結果、連続熱処理炉の加熱室の入側に予熱帯を備えた前室を設けると ともに、前室の出側(すなわち、加熱室の入側)にシールカーテンを取り付け、前室で の内圧を「炉外圧以上で加熱室の圧力以下」とすること、すなわち、熱処理炉内に階 段状の圧力差を設けることにより、炉入口の温度を常時管理する必要がなぐ管内面 付着物の分解、除去を容易に、かつ確実に行えることを確認した。
[0021] 本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであり、下記(1)の連続熱処理炉、
(2)の金属管および(3)の熱処理方法を要旨としてレ、る。
[0022] (1)加熱帯を有する加熱室に雰囲気ガスを導入し、炉入口から連続的に金属管を 軸方向に沿って装入して熱処理を施した金属管を炉出口から搬出する連続熱処理 炉であって、加熱室の入側に予熱帯を備えた前室を有し、前室の入側および出側に シールカーテンを有する連続熱処理炉。
[0023] 前記熱処理炉においては、加熱室の出側に後室を有し、後室の入側にシールカー テンを有することが望ましレ、。
[0024] (2)前記(1)に記載の連続熱処理炉で製造した金属管。
[0025] (3)加熱帯を有する加熱室に雰囲気ガスを導入し、炉入口から連続的に金属管を 軸方向に沿って装入して熱処理を施した金属管を炉出口力も搬出する熱処理方法 であって、カ卩熱室の入側に予熱帯を備えた前室の内圧が、炉外圧以上で加熱室の 圧力以下となるように設定し、前室で金属管の内外表面に残留した付着物を気化で きる温度まで金属管を加熱して、熱処理する熱処理方法。
[0026] ここで、「付着物の気化」とは、付着物を^して炭化水素系ガス等を発生させるこ とをいう。
図面の簡単な説明
[0027] 図 1は、シール性能テスト装置の要部の概略構成を示す図である。
図 2は、性能評価に用いたシール力一テンの構造を示す図で、(a)はシールカーテ ンが 8枚 (4枚 X 2セット)の場合、 (b)は 16枚 (4枚 X 4セット)の場合である。
図 3は、エア供給量とダクト内圧力(シール性能)との関係をシール力一テンの枚数 をパラメータとして示す図である。
図 4は、シールカーテンが 8枚 (4枚 X 2セット)の場合のシールカーテンの長手方向 のダクト内圧力分布を示す図である。
図 5は、シールカーテンが 16枚 (4枚 X 4セット)の場合のシールカーテンの長手方 向のダクト内圧力分布を示す図である。
図 6は、ダクト内圧力の均一性評価試験におけるダクト断面での測定位置を示す図 である。
図 7は、本発明の連続熱処理炉の断面構成例(図 7 (a) )、材料温度パターン (同 (b ) )、炉内圧力分布(同 (c) )および残留汚染ガスの放出効果 (同 (d) )を模式的に示 す図である。
発明を実施するための最良の形態
[り 028] 前述の通り、本発明では、加熱室の入側に予熱帯を備えた前室を設けるとともに、 これにシールカーテンを取り付けるのである力 このような方法で熱処理炉内に階段 状の圧力を付与することに問題がある力否かを調査した。
[0029] この調査には、図 1に示したシール性能テスト装置を用レヽた。この装置は、中央部 にシールカーテン取付け部 9を備えるダクト 10 (断面形状:高さ 160mm X幅 800m
訂正された用紙 (規則 91)
m)を有しており、これにシーノレカーテン 11を取り付け、ダクト 10内に、供給量を 30〜 90Nm3/hとしてガス (空気 (エア)を使用)を供給し、ダクト 10内圧力を測定した (以 下、圧力は「ゲージ圧」で記す)。
[0030] (a)シール力一テンの構造 (枚数)とシール性能
シール性能テスト装置にシールカーテン 11を取り付け、シールカーテン前部の断 面 A (図中に破線を付した部分)におけるダクト内圧力を測定した。シールカーテンの 取り付けは、図 2 (a)に示したカーテン力 ¾枚 (4枚 X 2セット)、および図 2 (b)に示した 16枚 (4枚 X 4セット)とした。なお、シールカーテン前部(断面 A)での測定でシール 性能の評価が可能なことは、後述する試験 (c)で確認した。
[0031] 試験結果を図 3に示す。この結果力も明らかなように、エア供給量が増すとともにダ クト内圧力が向上 (すなわち、シール性能が向上)し、シールカーテンが 16枚の場合 、シールカーテン 8枚に比べて約 2倍の性能を示す。
[0032] (b)シールカーテンの長手方向の圧力分布
シール性能テスト装置において、シールカーテンの取り付けを、図 2 (a)に示した力 一テンカ 枚、およぴ図 2 (b)に示した 16枚とした場合のそれぞれについて、シール 力一テン前部、後部、およびシールカーテンの各セット間におけるダクト内圧力を測 定した。
[0033] 測定結果を図 4およぴ図 5に示す。これらの図においては、シールカーテンの取り 付け位置も併せて図示し、それに対応させて測定結果を示した。これらの結果から、 シールカーテン力 ¾枚、 16枚のいずれの場合も、ダクト内圧力はシーノレカーテン後 部力 前部にかけて直線的に上昇しており、エア供給量 60Nm3Zhのとき、シール 力一テン 1セットで、約 3Paのシール性能が確保できることが確認できた。
[0034] (c)ダクト内の圧力の均一性
ダクト内の幅方向: 100mmピッチ、高さ方向: 50mmピッチ(図 6参照)、長手方向: 250mmピッチで、エア供給量 60Nm3/h、シールカーテンが 16枚 (4枚 X 4セット) のときの圧力測定を実施した。
[0035] 表 1にシールカーテン前部 (断面 での測定結果を、表 2にシールカーテン後部( 断面 B)での測定結果を示す。
訂正された用紙 (規則 91)
[0036] [表 1] 表 1
(注) 17供給量: 60Nm3/h, シ-ルカ-テン: 4枚 x 4セット
[0037] [表 2] 表 2
(注)エア供給量: 60NmVh. シ-ル力-テン: 4枚 X 4セット
[0038] 表 1および表 2の結果から、シールカーテンの前部および後部とも、ダクト断面で均 一な圧力分布となっており、表示していないが、長手方向でも ± 0. lPa以内で、均 一であることが判明した。また、シールカーテン後部の圧力がほぼ OPaであることから 、シール性能の評価は、シールカーテン前部(例えば、断面 A)における圧力を測定 することにより行えることが確認できた。
[0039] 前記シール性能テスト装置による試験の結果、複数のシールカーテンを重ねてセッ トとし、さらに複数セットを配設したとしても、炉内の任意の断面での圧力の均一性は 保たれ、シールカーテンの枚数に比例して圧力は低下することがわかる。これにより、 熱処理炉の内圧を容易に二段階に設定できることが確認できた。
[0040] そこで、二段階内圧にするための手段として、シールカーテンを採用した。
[0041] 図 7は、本発明の連続熱処理炉の断面構成例(図 7 (a) )、材料温度パターン(同 (b ) )、炉内圧力分布(同(c) )および残留汚染ガスの放出効果 (同 (d) )を模式的に示 す図である。図 7において、(b)〜( における横方向の長さはいずれも(a)のそれに 対応している。
[0042] 図 7 (a)に示す熱処理炉では、加熱帯 laを有する加熱室 1に雰囲気ガスを導入し、 炉入口 2aから連続的に鋼管を軸方向に沿って装入し、所定の熱処理を施した後、 炉出口 2bから搬出する構造になっている。なお、炉入口 2aから炉出口 2bに!:つて 送管用ローラ(図示せず)が炉床に配置されて!/、る。
[0043] 図示するように、加熱室 1の入側に予熱帯 3を有する前室 4が設けられ、前室 4の入 側と、出側 (すなわち、加熱室 1の入側)にそれぞれ本発明で規定するシールカーテ ン 5aおよび 5bが取り付けられている。これにより、送管用ローラ上を流れる鋼管が一 定の距離以上進むと、予熱帯 3を設置した位置において、鋼管内面の付着物が気化 する一方、シールカーテン 5aを挟んで前室 4と連続熱処理炉外とで圧力差が生じて いるため、鋼管の先端から後端に向力う雰囲気ガスの流れが形成され、気化により発 生した汚染ガスが雰囲気ガスとともに鋼管の後端を通して違続熱処理炉外へ排出さ れる。また、鋼管の先端が加熱室 1に入った場合には、シールカーテン 5bを挟んで 加熱室 1と前室 4とで圧力差 (または、加熱室 1と連続熱処理炉外とで圧力差)が生じ ているため、同様に汚染ガスが鋼管の後端を通して前室 4 (または、連続熱処理炉外 )へ排出される。
[0044] さらにこの例では、加熱室 1の出側に、冷却帯を挟んで、本発明で望まし!/ヽとされる 後室 6が設けられ、その入側にシールカーテン 7aが取り付けられている。こうすること により、前室 4に雰囲気ガスの流れる量が多くなり、汚染を生じさせずに送管速度を 早くすることができる。
[0045] なお、この例では、後室 6の出側にもシールカーテン 7bが取り付けられて!/、る。この シールカーテン 7bは、従来も取り付けられており、雰囲気ガスが後室 6の出側 (炉出 口 2b)から一方的に流出しないようにするためのものである。すなわち、従来は、雰 囲気ガスの流出を防止するためのシールカーテン 7bを取り付けてはいたものの、本
訂正された甩紙 (規則 91)
発明の連続熱処理炉で実現されるような雰囲気ガスの急激な内圧勾配 (換言すると 、炉内圧を高め、かつ二段階に設定すること)を考慮したものではなかった。
[0046] 以下に、図 7 (b)〜(d)を用いて詳述する。
[0047] 図 7 (b)は、材料温度パターンで、実線 (図中には、「現状」と表記)は予熱帯 3を設 けていない場合、破線は、本発明の熱処理炉の構成要件である予熱帯 3を備えた前 室 4を加熱室 1の入側に設けた場合である。予熱帯 3を設けることによって、鋼管の温 度を、先に述べた、管内の残留付着物を気化して炭化水素系ガスや塩素その他の 汚染ガス (ここでは、特に汚染に注目して、「汚染ガス」という)を発生させるに際して の望ましい温度範囲内の 450°Cまで、急速に高めることができる。
[0048] 図 7 (c)は、炉内の圧力分布 (一部実測値を含む推定圧力分布)で、実線 (図中に は、「現状 (推定)」と表記)は、前室 4に本発明で規定するシールカーテン 5aおよび 5 bのうちシールカーテン 5bを取り付けておらず、かつ、後室 6に本発明で望ましいとさ れるシールカーテン 7aを設けていない場合である。破線は本発明例で、前室 4の出 側 (すなわち、加熱室 1の入側)にシールカーテン 5bと、後室 6の入側にシールカー テン 7aを設けた場合である。これにより、シールカーテン 5bとシールカーテン 7aの間 で炉内圧力が高くなり、炉内圧を前室 4の部分と加熱室 1の部分とで二段階に設定し て、前室の内圧を炉外圧以上で加熱室の圧力以下とすることができる。
[0049] 図 7 (d)は、鋼管内に残留する汚染ガスの放出効果を説明するための図である。こ の図 (d)における「現状」は、鋼管 8の後端 8bが前室 4の入側部分にあり、鋼管 8の先 端 8aが加熱室 1の中央付近にある場合で、未加熱長さが 13mとなっている。ここでい う「未加熱長さ」とは、材料温度が残留付着物の ?に望ましい温度 (この例では、 4 50°C)まで達していないため、付着物が残留 (または、一部のみが気化)している部 分の長さをいう。図 7 (c)の炉内圧力分布と対比すると、この時点では、先端 8aにお ける圧力が後端 8bにおけるそれよりも高いので、管内ガス流れがあるが、鋼管 8が搬 送されて後端 8bが図 7 (c)の A点に達すると、管の先端 8a、後端 8bで圧力差がなく なるため管内ガス流れは停止し、汚染ガスが管内に滞留する。
[0050] 図 7 (d)の「予熱帯設置時」では、図 7 (b)の材料温度パターンとの対比から明らか なように、材料温度が 450°Cに達する炉入口 2aからの距離が短いので、未加熱長さ
訂正された^紙 (規則 91)
は 5mに減少する。しかし、前記と同様、後端 8bが図 7 (c)の A点に達すると、管内ガ ス流れは停止し、後端 8b近傍の管内に汚染ガスが滞留する。
[0051] 図 7 (d)の「予熱帯 +シールカーテン設置時」の (1)は、鋼管 8の後端 8bが図 7 (c)の Λ点に達し、先端 8aが加熱室 1の中央付近にある場合で、未加熱長さは前記の「予 熱帯設置時」に比べてさらに短くなつている。前室 4の出側 (すなわち、加熱室 1の入 側)にシールカーテン 5bを設けているので、図 7 (c)に示すように、熱処理炉の内圧 が二段階に設定され、その結果、管後端 8bが図 7 (c)の A点に達しても、管の先端 8 aと後端 8bで圧力差があり、管内ガス流れが生じるので、気化した汚染ガスが管内に 滞留することはない。鋼管 8が搬送されて (2)の状態になると、管後端 8bも 450°Cに達 し、未加熱長さは Omとなり、管内の残留付着物は全て分解、気化する。しかも、図 7 ( c)の炉内圧力分布との対比力 明らかなように、気ィ匕した汚染ガスは管内ガス流れ によって管後端から排出される。
[0052] シールカーテンの材質、形状等について特に限定はない。従来使用されている耐 熱' 1·生のカーテンが使用でき、先の実験結果で示したように、複数枚を重ね、更にそれ を複数セットで使用すれば、シールカーテンの前後における圧力差の維持に効果的 である。
[0053] このように、本発明の連続熱処理炉によれば、冷間加工後の洗浄工程をアルカリ脱 脂、洗浄のみとした場合であっても、熱処理前に鋼管内外表面の付着物を容易に除 去することができ、しかも必要とする設備投資も比較的低廉なものとなる。
[0054] 前記 (2)に記載の金属管は、前述の本発明の熱処理炉で製造した金属管である。
冷間加工後の洗浄工程をアルカリ脱脂、洗浄のみとした場合であっても、熱処理で 高温 (前記図 7に示した例では、 1100°C)に加熱される前に、予熱帯で管の内外表 面の残留付着物が除去されるので、金属管表面 (特に、内面)が汚染されることはな い。
[0055] 前記' (3)に記載の熱処理方法は、『加熱帯を有する加熱室に雰囲気ガスを導入し、 炉入口から連続的に金属管を軸方向に沿って装入して熱処理を施した金属管を炉 出口から搬出する熱処理方法であって、加熱室の入側に予熱帯を備えた前室の内 圧が、炉外圧以上で加熱室の圧力以下となるように設定し、前室で金属管の内外表
訂正された用紙 (規則 91)
面に残留した付着物を気化できる温度まで金属管を加熱して、熱処理する方法』で ある。
[0056] 前記の「雰囲気ガス」としては、管の表面酸化を抑える場合には、非酸化性ガスで ある水素、窒素や、 He、 Ar等の不活性ガスを単独または混合して使用する。管表面 に耐食性を確保するため緻密で密着性の高い酸化被膜を形成する場合は、水蒸気 や C〇、 O等の酸化性ガスまたはそれらと非酸化性ガスの混合ガスを使用する。ま
2 2
た、上記のガスに限らず、大気と燃料である LNGの燃焼排ガスを使用すれば、熱処 理コストを低下させること力 Sできる。
[0057] 「付着物を気化できる温度まで金属管を加熱」する際の温度は、管の内表面温度が 400°C以上で、かつ 750°C以下にするのが望ましい。残留した付着物を効果的に分 解、気化するには、表面温度を 400°C以上に加熱するのが適しており、汚染ガスの 作用を緩和し、また浸炭の発生を防止するには、管理精度を考慮して 750°C以下に するのが有効であることによる。
[0058] 「前室の内圧が、炉外圧以上で加熱室の圧力以下となるように設定」するには、雰 囲気ガスを適切な供給量で加熱室内に導入するだけでよい。前室の出側に設けた シールカーテン 5b、入り側に設けたシールカーテン 5aが有効に作用して、前室の内 圧が、炉外圧以上で加熱室の圧力以下となる。
[0059] この熱処理方法は、前述した本発明の熱処理炉を用いて実施することができる。す なわち、炉内圧を前室の部分と加熱室の部分の二段階に設定できるので、前室の内 圧を、炉外圧以上で加熱室の圧力以下とすることが可能となり、これによつて、管内 部に先端から後端に向力 雰囲気ガスの流れを無理なく生じさせることができるので 、管内部の残留付着物を気化し、雰囲気ガスにより置換、除去することができる。その 後引き続き所定の温度で熱処理が施されるので、熱処理能率を低下させることもな レ、。
実施例
[0060] 両端に Δ Ρ [Pa]の差圧が生じている管内のガス流れを表す「等温流れモデル式」
P
を使用し、予熱帯およびシールカーテンの設置条件等を変えて、内径 6mm、長さ 20 mの鋼管を送管したときの管内ガスの排出の可否を検討し、さらに、実炉で塩素を含
む付着物による管内面の汚染の有無を調査した。なお、前記管内ガスの排出可否の 検討において必要になる炉内圧分布は後述する炉内圧力分布推定式で推定した。
[0061] 「等温流れモデル式」の導出:
管両端に生じている差圧 Δ Ρ [Pa]と管内に発生するガス流速 [ Zs]は下記 (1
P V m
P
)式の関係を有する。
ただし、 λ Ρ 管摩擦係数 [―]
し P 管長さ [m]
D P 管径 [m]
P ガスの密度 [kg/m3 ]
V p ガス流速 [m/s] 層流の場合、
ただし、 Re: レイノルズ数 [一]
ϋ :粘性率 [kg/m' s] であるから、 Δ Ρ [Pa]は
[0065] 一方、前室の入口を L = 0、前室の入側に設置したシールカーテンの後端の位置を
L、前室の出側に設置したシールカーテンの前端および後端の位置をそれぞれ L、
2
L (L =L +「シールカーテン 5bの厚み」)とし (図 7 (a)参照)、シールカーテン前後
3 3 2
で静圧が直線的に増加し、シールカーテン間では等圧と近似すれば、炉内圧力分 布は下記 (4)式で表される。
[0066] [数 4]
Δ P p ( L) = P ον.π (し)一 Po,.n ( L― (4)
ただし、 前室入口を基準とする管先端の炉内位置 [m]
管の全長 [m]
Ρο 炉内圧力 [Pa]
[0067] ここで、鋼管力 S450°Cになったとき、汚染ガスが発生する (管内面に付着している汚 染物質が気化する)と仮定し、鋼管が 450°Cに達する炉内位置を L 、鋼管の先端(
450
送管方向端部)が L に到達する時刻を t 、鋼管の両端の^ ΐがなくなる位置 L (
450 450 4
L =L +L、 Lは管の全長)に到達する時刻を tとすると、時間 (t -t )の間に鋼
4 3 P P 4 4 450
管の先端位置にある雰囲気ガスが管内を移動する距離 L (0)は下記 (5)式で表され る。
[0068] [数 5]
L drain (0) =
t t
[0069] [数 6] PP(L)dL ' . (6)
となり、鋼管の先端力もの管内位置 x[m]にあるガス力 S450°Cに達してから鋼管両端 のの翻^ IEがなくなる位置 Lまで送管される間に鋼管内を移動する距離 L (X)は、
4 arain
[0070] mm
Q 2 し
. drain (x)= J APP(L)dL · · (7)
32 fl L p 2/ t L 50+ x
訂正された用紙 則 91)
で表される。したがって、未加熱長さ L は、
res
[0071] 園
Lres = Max { (し一 x)—し in υ<) }
ただし、 0≤X≤ LP で表され、 L ≤0であれば、「未加熱長さなし」、すなわち雰囲気ガスの管内からの
res
排出が可能で、それに伴われ汚染ガスも管内から排出される。
[0072] 炉内圧力分布推定式:
j枚目のシールカーテンから流出するガス質量流量 G[kgZs]および静圧変化 Δ P
[Pa]はそれぞれ下記 (9)式および (10)式で表される。
[0073] [数 9]
G = p j A 2/ j (9)
Δ P j = :— J ^ J (10)
A 力 テンのガス通過部断面積 [m2]
厶 P J 力 テン前後の差圧 [Pa]
力 テン 1枚当たりの抵抗係数 [-]
P j 力 —テン前後のガスの平均密度 [kg/m3]
V j 力 テン断面積平均ガス通過速度 [m/s]
[0074] ガスがシールカーテン n枚を通過する際に生じる差圧 ΔΡ [Pa]は、下記 (11)式と
total
ただし、 ρ は一定値とし、 z=n 7A2 [m— 2] とする 前室入側、前室出側、および後室内に設置されたシールカーテンセット数(1セット =4枚)をそれぞれ N N N [セット] 前室側および後室側から流出する
水素ガス量をそれぞれ G 、 G [kgZs]とすれば、加熱帯静圧 Δ Ρ =冷却帯
en ex H― Zone
静圧から、(12)式が得られる。
[0077] ほ女 11] 厶 P 。ne = N Z · ' ( 12)
[0078] 二で、 G =G +G とおけば、(13)式および (14)式が得られる c
total
[0079] [数 12] en = 一, ; ; . , , ; ; 7 « total · * U 3)
( N en-in/ β an-i n + N en-out/ en-oUt) U2+ ( N ex/ ") 1 2
( en-i n/ P en-in + N en-out/ β en-out) 1 /2
一, ; ; : ΤΤ -, 7Τ G · · ( 14)
( βη-ίη/ p en-i n + N en-out/ en-out) Z + ( N β ex)
[0080] 前記 (12)〜(14)式から、シールカーテンセット数と総水素供給量 G を与えると、加
total
熱帯静圧(すなわち、加熱室圧力) Δ P が求まる。また前室の圧力 Δ P も、
H— Zone 前室
en- i n により求めることができる。
[0082] シミュレーションの結果(管内ガスの排出可否の検討結果):
前述した「等温流れモデル式」を用い、内径 6mm、長さ 20mの鋼管を熱処理する ことを仮定して、未加熱長さ L を計算した。前述したように、未加熱長さ L ≤0であ
res res れば、管内の汚染ガスは管の後端から排出される。ここで、管内温度としては、熱処 理炉内の温度 450〜1100°Cの平均温度 775°Cを採用した。
[0083] シミュレーションでは、前室に予熱帯および出側シールカーテンがなぐ後室に入 側シールカーテンがない場合 (シミュレーション 1)、前室に予熱帯のみ有する場合( シミュレーション 2)、前室に出側シールカーテンのみ有する場合(シミュレーション 3) 、前室に予熱帯および出側シールカーテンを有する場合(シミュレーション 4)、並び に前室に予熱帯および出側シールカーテンを有し、かつ後室に入側シールカーテン
を有する場合(シミュレーション 5)の計 5ケースにっレ、て、それぞれ送管速度を 1450 mm/minまたは 950mmZminとして計算を行つた。
[0084] 表 3に、シミュレーション結果を示す。なお、表 3には、未加熱長さ L に加えて、予 res
熱帯やシールカーテンの有無等、連続熱処理炉における設備上の設定条件、並び に前室および加熱室の圧力も併せて示した。熱処理炉の「前室」および「後室」の欄 の〇印は予熱帯やシールカーテンを備えていることを、また、「未加熱長さ L 」の欄 res の〇印は管内面における汚染を計算上防止できることを、 X印は防止できないことを 表す。
[0085] [表 3]
表 3に示した結果から明らかなように、前室に予熱帯および出側シールカーテンを 有するシミュレーション 4では、送管速度が遅い(950mmZmin)場合、未加熱長さ
力 SO以下 (L ≤0)となった。すなわち、汚染ガスを管内から排出できると予想される。
res
さらに、前室に予熱帯および出側シールカーテンを有し、かつ後室に入側シール力 一テンを有するシミュレーション 5では、送管速度が速くても(1450mm/min)、未 加熱長さが 0以下となり、より効率的な熱処理が行えるものと予想される。
[0087] 実炉での管内面汚染の有無の調查:
前記シミュレーションに続き、実炉で、内外表面に塩素を含有する潤滑剤が付着し た鋼管(内径 6mm、長さ 20m)の熱処理を行レ、、塩素による汚染の有無を調査した。 熱処理炉内の雰囲気ガスには水素ガスを使用し、供給量を 95. 00Nm3/hとして、 加熱室へ送通した。送管速度は 950m/minまたは 1450m/minとした。
[0088] 表 4に調査結果を示す。表 4において、前室入側のシールカーテンは、通常使用さ れているカーテンを用い、比較例および実施例のいずれにも設置されているので、 表示していない。また、「汚染の有無」については、熱処理後の鋼管から特に塩素が 残留しやすい後端部 (鋼管の進行方向に対して後端になる部分)を切り出し、その内 面に付着している塩素を純水で抽出し、この抽出水についてイオンクロマトグラフ分 析を行って、管内面における残留塩素量を調査した。
[0089] [表 4]
、
/炉 ()後内圧力P水素供給
3)室側熱帯前室側量(h入出N予am
有無総投量 ()入350kW
ΐ
較 O例比 1 ο o o ο
Έ in LO LO LO LO o
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m CO 00 C較例比 3O CO CO O
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O 00 o施実例 1o CO
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1 I I I I 体 、
1 I
体 体 、
1 I
体 体 律
[0090] 表 4に示した結果から明らかなように、本発明で規定する条件から外れる比較例 1 〜3では、いずれも「汚染有り」と判定されたが、実施例 1、 3では「汚染なし」、または「 僅少」(実施例 2)であった。
[0091] 実施例 2で若干の汚染が認められたのは、同じ条件の実施例 1に比べて送管速度
が速ぐ管内汚染ガスの雰囲気ガスによる置換に遅れが生じ、汚染ガスが管の後端 付近に残留したことによるものと考えられる。実施例 3で送管速度が速いにもかかわら ず汚染が認められなかったのは、後室入側にもシールカーテンを設置した結果、カロ 熱室内の圧力が 8. 73Pa力ら 11. 93Paへと高くなり、前室に流れる雰囲気ガス量が 多くなつて管内のガスの置換が促進され、汚染ガスが除去されたことによるものである 産業上の利用の可能性
本発明の連続熱処理炉および熱処理方法によれば、冷間加工後の洗浄工程をァ ルカリ脱脂、洗浄のみとした場合であっても、熱処理前に金属管内外表面の付着物 を簡易に除去することができる。したがって、炭化水素系の成分を含む圧延油または 潤滑剤が使用され冷間加工されるステンレス鋼管やニッケルクロム鉄合金管をはじめ とする金属管の製造に好適に利用することができる。