明 細 書
遺伝子改変動物およびその用途
技術分野
[0001] 本発明は、 SLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物、 SLC-1遺伝子発現不全である 肥満および/または II型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物に関する。また、本発明は、 SL C-1拮抗作用のアディポネクチン産生促進用途に関する。
[0002] (発明の背景)
現在、最も有望な抗肥満薬のターゲットとして世界的に注目を浴びているのはメラ ニン ϋ集ホノレモン (melanin- concentrating hormone: MCH)である。 MCHは当初サケ 下垂体から見出された体色素の凝集に関わる環状ペプチドである力 哺乳類では視 床下部外側野に著しく局在し、 MCH陽性ニューロンは脳内に広く投射されている。 M CH遺伝子欠損マウスが摂餌量の減少と痩せを呈し、また、 MCH遺伝子の過剰発現 マウスで摂餌量の亢進とエネルギー消費の減少により肥満の表現型を認めたことか ら、 MCHの過食'肥満への関与が強く示唆された。しかし、 MCH遺伝子を操作したマ ウスでは、 MCHと同一遺伝子上にコードされている神経ペプチド GEや神経ペプチド EIなども同時に欠損されていたので、 MCHの作用を明らかにするにはその受容体の 欠損マウスを作出、解析する必要があった。
[0003] MCH受容体は、ヒトでは Gタンパク質共役型受容体(GPCR)である somatostatin-lik e receptor 1 : SLC-1 (MCHR1)と SLT (MCHR2)の 2種類が報告されている力 齧歯 動物では SLTは存在せず、 SLC-1のみが発現している。これら 2種類の受容体の発現 は、主として脳で認められる力 ヒトでは、 SLC-1は SLTに比べて、視床下部での発現 が高ぐ大脳皮質や海馬などでの発現が低いとされている。従って、摂食、記憶、生 殖、行動など多岐に渡る MCHの作用に関し、 SLC-1は摂食、 SLTは感情や記憶等に 関わって!/、る可能性が示唆される。
[0004] SLC-1欠損マウスは、これまでに Marshら(非特許文献 1 )および Chenら(非特許文 献 2)の各グループにより作製され、自発運動量や酸素消費量の増加に伴うエネルギ 一消費の亢進により、過食にもかかわらず体重増加抑制、体脂肪量減少の表現型を 示すことが報告されている。さらに、 SLC-1欠損マウスと肥満 '糖尿病モデルである ob
/obマウス(レプチン欠損)との交配により得られた二重欠損マウスは、 ob/obマウスに 比べて、体重 ·摂餌量 ·エネルギー消費には差がないが、経口糖負荷試験において 血糖上昇が抑制され、インスリンレベルが低下し、体脂肪の減少、運動量増加、体温 調節の変化が認められたことが報告されている(非特許文献 3)
非特許文献 l : Marsh, D.J.ら,プロシーディングズ'ォヴ'ナショナル'ァカデミ一'ォヴ 'サイエンシーズ.ユー.エス.エー(proc. Natl. Acad. Sci. USA), (米国), 2002年,第 99巻, . 3240-3245
非特許文献 2 : Chen, Y.ら,エンドクリノロジー (Endocrinol.), (米国), 2002年,第 143巻, p. 2469-2477
非特許文献 3 : Bjursell, Μ·ら,ダイアビーテイス(Diabetes), (米国), 2006年,第 55巻, p. 725-733
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0005] 本発明の目的は、 SLC-1遺伝子発現不全動物を作製し、解析することにより、 SLC- 1の生体内での機能を解明することであり、さらに、そこで得られた知見を創薬研究に 反映させることにより、新規かつ有効な抗肥満薬、抗糖尿病薬などを提供することで ある。
課題を解決するための手段
[0006] 本発明者らは、上記の目的を達成すベぐマウスの SLC-1遺伝子の 7回膜貫通領 域を欠損させることにより受容体機能を破壊した SLC-1ノックアウト (KO)マウスを作出 し、その表現型を解析した。その結果、該 KOマウスは、野生型マウスに比べて耐糖 能改善、インスリン感受性上昇、および脂肪細胞の小型化や脂肪分解亢進などの特 十生を示した。
さらに、本発明者らは、該 KOマウスと肥満 · II型糖尿病モデルマウスである KKAyマ ウスとを交配して得られたマウスにつき表現型解析を行った結果、該マウスでは、 Ayマウスに比べて血漿アディポネクチン値が上昇して!/、ることを見出した。このことは 、 SLC-1拮抗薬が肥満 (特に内臓脂肪型肥満)を有するヒトに対するアディポネクチン 産生促進に有効であることを強く示唆する。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成 するに至った。
すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
[1] SLC_1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物であって、対応する野生型動物と比較し て、
(1)耐糖能試験において血中インスリンレベルが低い、
(2)インスリン感受性が増大している、
(3)高脂肪食下でも抗肥満である、
(4)白色脂肪細胞が小型化している、および
(5)脂肪分解が亢進している
ことを特徴とする動物またはその生体の一部;
[2]対応する野生型動物と比較して、
(i)自発運動量および酸素消費量が亢進している、
(ii)体脂肪が減少している、および
(iii)血漿レプチン^ Iが低下してレ、る
ことをさらなる特徴とする、上記 [1]記載の動物またはその生体の一部;
[3]非ヒト哺乳動物がマウスまたはラットである上記 [1]記載の動物またはその生体の 一部;
[4] SLC_1遺伝子発現不全である肥満および/または II型糖尿病モデル非ヒト哺乳 動物であって、該遺伝子発現が正常な対応する肥満および/または II型糖尿病モデ ル非ヒト哺乳動物と比較して、
(1)アディポネクチン発現が上昇している、
(2)高血糖の発症が遅れる、
(3)血中糖化ヘモグロビン値が低い、および
(4)エネルギー消費が亢進して!/、る
ことを特徴とする動物またはその生体の一部;
[5] SLC_1遺伝子発現が正常な対応する肥満および/または II型糖尿病モデル非ヒ ト哺乳動物と比較して、
(i)酸素消費量が増加している、および
(ii)血中コルチコステロン値が低下して!/、る
ことをさらなる特徴とする、上記 [4]記載の動物またはその生体の一部;
[6]非ヒト哺乳動物がマウスまたはラットである上記 [4]記載の動物またはその生体の 一部;
[7]肥満および/または II型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物が KKAyマウスである、上記
[6]記載の動物またはその生体の一部;
[8] SLC-1拮抗薬を含有してなるアディポネクチン産生促進剤;
[9]アディポネクチンレベルの低下を伴うメタボリックシンドロームまたは動脈硬化性 疾患の患者に投与することを特徴とする、上記 [8]記載の剤;
[10] SLC-1を拮抗阻害することを含む、アディポネクチン産生促進方法;
[11]アディポネクチン産生促進剤の製造のための SLC-1拮抗薬の使用。
発明の効果
[0008] 本発明の SLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物は、脂肪分解の亢進、脂肪細胞の 小型化、インスリン感受性上昇、耐糖能改善等の表現型を示すので、 SLC-1の生体 内での機能の解明に有用である。また、該マウスとの交配により、肥満'糖尿病モデ ルマウスにおいて SLC-1遺伝子を欠損させることができ、それによつて SLC-1拮抗薬 の抗肥満薬 ·抗糖尿病薬としての有効性を検証することができる。
さらに、本発明によれば、肥満 ·糖尿病マウスにおける SLC-1欠損はアディポネクチ ン値の上昇をもたらすことから、 SLC-1拮抗薬は、メタボリックシンドロームの重要な上 流因子と考えられる内臓脂肪蓄積に伴うアディポネクチン量の減少を改善するのに 有用である。
図面の簡単な説明
[0009] [図 1] (A) SLC-1遺伝子欠損(-/_)マウス作製に用いたターゲッティングベクターと相 同組換え様式を示す図である。 SLC-1遺伝子のェキソン 2をネオマイシン耐性遺伝子 で置換し、機能を破壊してレ、る。 (B) SLC-1ホモ欠損(-/_)、ヘテロ欠損(+/_)、およ びワイルド(+/+)マウスの全脳における SLC-1遺伝子発現を示す図である。 SLC-1 (- /-)マウスでは SLC-1遺伝子の発現が消失して!/、る。
園 2] (A) SLC-l (-/_)マウスの成長曲線を示す。動物は 5週齢より通常食、あるいは 高脂肪食を 15週間与えて飼育した。 (B) 8週齢時に測定した体重当りの一日の摂餌 量である。図は、平均土標準偏差で示す。
園 3]SLC_1 (-/")マウスの自発運動量 (A)と酸素消費量 (B)を示す。動物は 5週齢よ り通常食、あるいは高脂肪食を与えて飼育した。 自発運動量は、 12週齢の個体 (n=l 6)の平均値土標準偏差で示した。酸素消費量は、 12〜13週齢の個体 (n=20)の平均 値土標準偏差で示した。
園 4]SLC_1 (-/")マウスの耐糖能試験 (A)とインスリン感受性試験 (B)、および末梢 組織におけるインスリン抵抗性試験(C)を示す。 SLC-1 (+/+)、あるいは (-/_)マウス に 5週齢より各試験実施週齢時まで、通常食、あるいは高脂肪食負荷後に、 20時間 絶食を行い、耐糖能、インスリン感受性、あるいはインスリン抵抗性試験を行なった。 図は平均値 ±標準偏差で表示する。
園 5]SLC_1 (-/")マウスの脂肪分解を示す。 5週齢より通常食で飼育したマウスの生 殖器周囲白色脂肪組織を用いて実施した。図は、平均値土標準偏差で示す。
[図 6]KKAyマウス、および KKマウス交雑群の成長曲線 (A)、体重当りの一日の摂餌 量 (B)を示す。体重は 2週齢より 16週間測定し、摂餌量は 6週齢時に測定した。図は 、平均値 ±標準偏差で示す。
[図 7]KKAyマウス、および KKマウス交雑群の血漿パラメーターを示す。血漿ダルコ一 ス値 (A)、血漿トリグリセライド値 (B)、血漿インスリン値 (C)、血漿アディポネクチン値 (D)、血漿レプチン値(E)、ヘモグロビン(Hb)Alc値(F)、血漿遊離脂肪酸(NEFA) 値 (G)、血漿コルチコステロン値 (H)、および血漿トータル T4値 (I)を測定した。図は 、平均値 ±標準偏差で示す。
[図 8]KKAyマウス、および KKマウス交雑群の体脂肪率を測定した。測定を 17週齢で 実施した。図は、平均値 ±標準偏差で示す。
[図 9]KKAyマウス、および KKマウス交雑群の 13〜14週齢時の酸素消費量 (A)、呼吸 商 (B)、および 7〜9週齢時の累積自発運動量 (C)を示す。図は、平均値土標準偏 差で示す。
[図 10]KKAyマウス、および KKマウス交雑群の 16週齢時における耐糖能試験の血漿
グルコース値 (A)、および血漿インスリン値 (B)を示す。図は、平均値土標準偏差で 示す。
[図 l l]KKAyマウス、および KKマウス交雑群の 9週齢時における遺伝子発現量を示す 。間脳 (A)、生殖器周囲白色脂肪 (B)、肝臓 (C)、および骨格筋 (D)での変動を調 ベた。
[0010] (発明の詳細な説明)
本発明は、 SLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
[0011] SLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物とは、内在性 SLC-1の発現が不活性化され た非ヒト哺乳動物を意味し、 SLC-1遺伝子がノックアウト (KO)された ES細胞から、作 製される SLC-1 KO動物の他、アンチセンスもしくは RNAi技術により SLC-1遺伝子の 発現が不活性化されたノックダウン (KD)動物なども含まれる。ここで「ノックアウト (KO )」とは、内在性遺伝子を破壊したり、除去したりすることにより完全な mRNAを産生不 能にすることを意味し、他方、「ノックダウン (KD)」とは、 mRNAから蛋白質への翻訳を 阻害することにより、結果的に内在性遺伝子の発現を不活性化することを意味する。 以下、本発明の SLC-1遺伝子 KO/KD動物を、単に「本発明の KO/KD動物」という場 合がある。
[0012] 本発明で対象とし得る「非ヒト哺乳動物」は、トランスジエニック系が確立されたヒト以 外の哺乳動物であれば特に制限はなぐ例えば、マウス、ラット、ゥシ、サル、ブタ、ヒ ッジ、ャギ、ゥサギ、ィヌ、ネコ、モルモット、ハムスターなどが挙げられる。好ましくは、 マウス、ラット、ゥサギ、ィヌ、ネコ、モルモット、ハムスター等であり、なかでも疾患モデ ル動物作製の面から個体発生および生物サイクルが比較的短ぐ繁殖が容易な齧 歯動物がより好ましぐとりわけマウス(例えば、純系として C57BL/6系統、 BALBん系 統、 DBA2系統など、交雑系として B6C3F系統、 BDF系統、 B6D2F系統、 ICR系統
1 1 1
など)およびラット(例えば、 Wistar、 SDなど)が好まし!/ヽ。
また、哺乳動物以外にもニヮトリなどの鳥類を、本発明で対象とする「非ヒト哺乳動 物」と同様の目的に用いることができる。
[0013] SLC-1遺伝子をノックアウトする具体的な手段としては、対象非ヒト哺乳動物由来の SLC-1遺伝子(ゲノム DNA)を常法に従って単離し、例えば、(1)そのェキソン部分や
プロモーター領域に他の DNA断片(例えば、薬剤耐性遺伝子やレポーター遺伝子 等)を揷入することによりェキソンもしくはプロモーターの機能を破壊する力 (2)Cre-l oxP系や Flp-frt系を用いて SLC-1遺伝子の全部または一部を切り出して該遺伝子を 欠失させるか、(3)蛋白質コード領域内へ終止コドンを挿入して完全な蛋白質の翻訳 を不能にする力、、あるいは (4)転写領域内部へ遺伝子の転写を終結させる DNA配列( 例えば、 polyA付加シグナルなど)を揷入して、完全な mRNAの合成を不能にすること によって、結果的に遺伝子を不活性化するように構築した DNA配列を有する DNA鎖 (以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、相同組換えにより対象非ヒト哺乳動 物の SLC-1遺伝子座に組み込ませる方法などが好ましく用いられ得る。
[0014] 該相同組換え体は、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)への上記ターゲッティングべク ターの導入により取得することができる。
ES細胞は胚盤胞期の受精卵の内部細胞塊 (ICM)に由来し、インビトロで未分化状 態を保ったまま培養維持できる細胞をいう。 ICMの細胞は将来、胚本体を形成する細 胞であり、生殖細胞を含むすべての組織の基になる幹細胞である。 ES細胞としては、 既に樹立された細胞株を用いてもよぐまた、 Evansと Kaufmanの方法(ネイチヤー(Na ture)第 292巻、 154頁、 1981年)に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウス ES細胞の場合、現在、一般的には 129系マウス由来の ES細胞が使用されているが、 免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背 景が明らかな ES細胞を取得するなどの目的で、例えば、 C57BL/6マウスや C57BL/6 の採卵数の少なさを DBA/2との交雑により改善した BDFマウス(C57BL/6と DBA/2と
1
の F )から樹立される ES細胞なども良好に用いることができる。 BDFマウスは、採卵数
1 1
が多ぐかつ卵が丈夫であるという利点に加えて、 C57BL/6マウスを背景に持つので 、これ由来の ES細胞は疾患モデルマウスを作製したとき、 C57BL/6マウスと戻し交雑 することでその遺伝的背景を C57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用 い得る。
[0015] ES細胞の調製は、例えば以下のようにして行うことができる。交配後の雌非ヒト哺乳 動物 [例えばマウス(好ましくは C57BL/6J (B6)などの近交系マウス、 B6と他の近交系 との Fなど)を用いる場合は、約 2ヶ月齢以上の雄マウスと交配させた約 8〜約 10週齢
程度の雌マウス(妊娠約 3.5日)が好ましく用いられる]の子宮から胚盤胞期胚を採取 して(あるいは桑実胚期以前の初期胚を卵管から採取した後、胚培養用培地中で上 記と同様にして胚盤胞期まで培養してもよい)、適当なフィーダ一細胞(例えばマウス の場合、マウス胎仔から調製される初代線維芽細胞や公知の STO線維芽細胞株等) 層上で培養すると、胚盤胞の一部の細胞が集合して将来胚に分化する ICMを形成 する。この内部細胞塊をトリプシン処理して単細胞を解離させ、適切な細胞密度を保 ち、培地交換を行いながら、解離と継代を繰り返すことにより ES細胞が得られる。
[0016] ES細胞は雌雄いずれを用いてもよいが、通常雄の ES細胞の方が生殖系列キメラを 作製するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ 早く雌雄の判別を行うことが望ましい。 ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、 P CR法により Y染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その 1例と して挙げられる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約 106個の細胞 数を要していたのに対して、 1コロニー程度の ES細胞数(約 50個)で済むので、培養 初期における ES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、 早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。 また、第二次セレクションは、例えば、 G-バンデイング法による染色体数の確認等 により行うこと力 Sできる。得られる ES細胞の染色体数は正常数の 100%が望ましい。
[0017] このようにして得られる ES細胞株は、未分化幹細胞の性質を維持するために注意 深く継代培養することが必要である。例えば、 STO線維芽細胞のような適当なフィー ダー細胞上で、分化抑制因子として知られる LIF (l〜10,000U/ml)存在下に炭酸ガ ス培養器内(好ましくは、 5%炭酸ガス/ 95%空気または 5%酸素/ 5%炭酸ガス/ 90%空気) で約 37°Cで培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/ EDTA溶 液(通常 0·001〜0·5%トリプシン /0.1〜5mM EDTA,好ましくは約 0· 1%トリプシン/ ImM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダ一細胞上に播種する方法な ど力 Sとられる。このような継代は、通常 1〜3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行 い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望ま れる。
[0018] ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊
を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプ の細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及び Μ· H. Kaufman,ネイチヤー( Nature)第 292巻、 154頁、 1981年; G. R. Martin,プロシーディングズ 'ォブ 'ナショナ ノレ'アカデミー'ォブ 'サイエンシーズ 'ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.) 第 78巻、 7634頁、 1981年; T. C. Doetschmanら,ジャーナル'ォブ'ェンブリオロジ一' アンド.ェクスペリメンタル.モルフォロジ一、第 87巻、 27頁、 1985年〕、本発明のター ゲッティングベクターを導入された ES細胞を分化させて得られる SLC-1遺伝子発現不 全非ヒト哺乳動物細胞は、インビトロにおける SLC-1の細胞生物学的検討において有 用である。
[0019] 例えば、ターゲッティングベクター力 SLC-1遺伝子のェキソン部分やプロモーター 領域に他の DNA断片を揷入することにより、該ェキソンもしくはプロモーターの機能を 破壊すべく設計されたものである場合、当該ベクターは、例えば、以下のような構成 をとること力 Sできる。
[0020] まず、相同組換えにより、 SLC-1遺伝子のェキソンもしくはプロモーター部分に他の DNA断片が揷入されるために、ターゲッティングベクターは、当該他の DNA断片の 5 ' 上流および 3 '下流に、それぞれ標的部位と相同な配列(5 'アームおよび 3 'アーム) を含む必要がある(例えば、後記実施例においては、ェクソン 2を破壊するように、タ ーゲッティングベクターは、揷入される他の DNA断片の 5 '上流側に SLC-1遺伝子の 5 '調節領域〜イントロン 1にわたる領域と相同な配列を含み、 3 '下流側にはェクソン 2 の一部〜イントロン 2の一部にわたる領域と相同な配列を含む。
[0021] 揷入される他の DNA断片は特に制限はないが、薬剤耐性遺伝子やレポーター遺 伝子を用いると、ターゲッティングベクターが染色体へ組み込まれた ES細胞を、薬剤 耐性もしくはレポーター活性を指標として選択することができる。ここで薬剤耐性遺伝 子としては、例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ II (叩 til)遺伝子、ハイグロ マイシンホスホトランスフェラーゼ (hpt)遺伝子など力 レポーター遺伝子としては、例 えば、 /3 _ガラクトシダーゼ(lacZ)遺伝子、クロラムフエニコールァセチルトランスフェラ ーゼ(cat)遺伝子などがそれぞれ挙げられる力 S、それらに限定されない。
[0022] 薬剤耐性もしくはレポーター遺伝子は、哺乳動物細胞内で機能し得る任意のプロ
モーターの制御下にあることが好ましい。例えば、 SV40由来初期プロモーター、サイ トメガロウィルス(CMV)ロングターミナルリピート(LTR)、ラウス肉腫ウィルス(RSV) LT R、マウス白血病ウィルス(MoMuLV) LTR、アデノウイルス(AdV)由来初期プロモータ 一等のウィルスプロモーター、並びに β -ァクチン遺伝子プロモーター、 PGK遺伝子 プロモーター、トランスフェリン遺伝子プロモーター等の哺乳動物の構成蛋白質遺伝 子のプロモーターなどが挙げられる。しかしながら、薬剤耐性もしくはレポーター遺伝 子が SLC-1遺伝子の内在性プロモーターの制御下におかれるように SLC-1遺伝子内 に揷入される場合は、ターゲッティングベクター中に該遺伝子の転写を制御するプロ モーターは必要でない。
[0023] また、ターゲッティングベクターは、薬剤耐性もしくはレポーター遺伝子の下流に、 該遺伝子からの mRNAの転写を終結させる配列(ポリアデニレーシヨン (polyA)シグナ ノレ、ターミネータ一とも呼ばれる)を有していることが好ましぐ例えば、ウィルス遺伝 子由来、あるいは各種哺乳動物または鳥類の遺伝子由来のターミネータ一配列を用 いること力 Sできる。好ましくは、 SV40由来のターミネータ一などが用いられる。
[0024] 通常、哺乳動物における遺伝子組換えは大部分が非相同的であり、導入された DN Aは染色体の任意の位置にランダムに揷入される。したがって、薬剤耐性やレポータ 一遺伝子の発現を検出するなどの選択 (ポジティブ選択)によっては相同組換えによ り標的となる内在性 SLC-1遺伝子にターゲッティングされたクローンのみを効率よく選 択することができず、選択されたすベてのクローンにつ!/、てサザンハイブリダィゼーシ ヨン法もしくは PCR法による組込み部位の確認が必要となる。そこで、ターゲッティン グベクターの標的配列に相同な領域の外側に、例えば、ガンシクロビル感受性を付 与する単純へルぺスウィルス由来チミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子を連結しておけ ば、該ベクターがランダムに揷入された細胞は HSV-tk遺伝子を有するため、ガンシク 口ビル含有培地では生育できないが、相同組換えにより内在性 SLC-1遺伝子座にタ ーゲッティングされた細胞は HSV-tk遺伝子を有しな!/、ので、ガンシクロビル耐性とな り選択される(ネガティブ選択)。あるいは、 HSV-tk遺伝子の代わりに、例えばジフテ リア毒素遺伝子を連結すれば、該ベクターがランダムに揷入された細胞は自身の産 生する該毒素によって死滅するので、薬剤非存在下で相同組換え体を選択すること
もできる。
[0025] ES細胞へのターゲッティングベクターの導入には、リン酸カルシウム共沈殿法、電 気穿孔(エレクト口ポレーシヨン)法、リポフエクシヨン法、レトロウイルス感染法、凝集法 、顕微注入(マイクロインジェクション)法、遺伝子銃 (パーティクルガン)法、 DEAE -デ キストラン法などのいずれも用いることができる力 上述のように、哺乳動物における 遺伝子組換えは大部分が非相同的であり、相同組換え体が得られる頻度は低いの で、簡便に多数の細胞を処理できること等の点からエレクト口ポレーシヨン法が一般的 に選択される。エレクト口ポレーシヨンには通常の動物細胞への遺伝子導入に使用さ れている条件をそのまま用いればよぐ例えば、対数増殖期にある ES細胞をトリプシ ン処理して単一細胞に分散させた後、 106〜108細胞/ mlとなるように培地に懸濁して キュベットに移し、ターゲッティングベクターを 10〜100 8添加し、 200〜600Vん mの 電気ノ ルスを印加することにより行なうことができる。
[0026] ターゲッティングベクターが組み込まれた ES細胞は、単一細胞をフィーダ一細胞上 で培養して得られるコロニーから分離抽出した染色体 DNAをサザンノヽイブリダィゼー シヨンまたは PCR法によりスクリーニングすることによつても検定することができる力 他 の DNA断片として薬剤耐性遺伝子やレポーター遺伝子を使用した場合は、それらの 発現を指標として細胞段階で形質転換体を選択することができる。例えば、ポジティ ブ選択用マーカー遺伝子として叩 til遺伝子を含むベクターを用いた場合、遺伝子導 入処理後の ES細胞を G418などのネオマイシン系抗生物質を含有する培地中で培養 し、出現した耐性コロニーをトランスフォーマントの候補として選択する。また、ネガテ イブ選択用マーカー遺伝子として、 HSV-tk遺伝子を含むベクターを用いた場合、ガ ンシクロビルを含有する培地中で培養し、出現した耐性コロニーを相同組換え体の 候補として選択する。得られたコロニーをそれぞれ培養プレートに移してトリプシン処 理、培地交換を繰り返した後、一部を培養用として残し、残りを PCRもしくはサザンハ イブリダィゼーシヨンにかけて導入 DNAの存在を確認する。
[0027] 導入 DNAの組込みが確認された ES細胞を同種の非ヒト哺乳動物由来の胚内に戻 すと、宿主胚の ICMに組み込まれてキメラ胚が形成される。これを仮親(受胚用雌)に 移植してさらに発生を続けさせることにより、キメラ KO動物が得られる。キメラ動物の
中で ES細胞が将来卵や精子に分化する始原生殖細胞の形成に寄与した場合には、 生殖系列キメラが得られることとなり、これを交配することにより SLC-1遺伝子不全が 遺伝的に固定された KO動物を作製することができる。
[0028] キメラ胚の作製方法としては、桑実胚期までの初期胚同士を接着させて集合させる 方法 (集合キメラ法)と、胚盤胞の割腔内に細胞を顕微注入する方法 (注入キメラ法) とがある。 ES細胞によるキメラ胚の作製においては従来より後者が広く行なわれてい る力 最近では、 8細胞期胚の透明帯内への ES細胞の注入により集合キメラを作る方 法や、マイクロマニピュレーターが不要で操作が容易な方法として、 ES細胞塊と透明 帯を除去した 8細胞期胚とを共培養して凝集させることによって集合キメラを作製する 方法も行われている。
[0029] いずれの場合も、宿主胚は、後述する受精卵への遺伝子導入において、採卵用雌 として使用され得る非ヒト哺乳動物から同様にして採取することができる力、例えばマ ウスの場合、キメラマウス形成への ES細胞の寄与率を毛色(コートカラー)で判定し得 るように、 ES細胞の由来する系統とは毛色の異なる系統のマウスから宿主胚を採取 することが好ましい。例えば、 ES細胞が 129系マウス(毛色:ァグーチ)由来であれば、 採卵用雌として C57BL/6マウス(毛色:ブラック)や ICRマウス(毛色:アルビノ)を用い 、 ES細胞が C57BL/6もしくは DBFマウス(毛色:ブラック)由来のものや TT2細胞(C57
1
BL/6と CBAとの F (毛色:ァグーチ)由来)であれば、採卵用雌として ICRマウスや BA
1
LBんマウス(毛色:アルビノ)を用いること力 Sできる。
[0030] また、生殖系列キメラ形成能は ES細胞と宿主胚との組み合わせに大きく依存するの で、生殖系列キメラ形成能の高い組み合わせを選択することがより好ましい。例えば マウスの場合、 129系統由来の ES細胞に対しては C57BL/6系統由来の宿主胚等を 用いること力 S好ましく、 C57BL/6系統由来の ES細胞に対しては BALBん系統由来の 宿主胚等が好ましい。
[0031] 採卵用雌マウスは約 4〜約 6週齢程度が好ましぐ交配用の雄マウスとしては約 2〜 約 8ヶ月齢程度の同系統のものが好ましい。交配は自然交配によってもよいが、好ま しくは性腺刺激ホルモン (卵胞刺激ホルモン、次!/、で黄体形成ホルモン)を投与して 過剰排卵を誘起した後に行なわれる。
[0032] 胚盤注入法による場合は、胚盤胞期胚 (例えばマウスの場合、交配後約 3.5日 )を 採卵用雌の子宮から採取し(あるいは桑実胚期以前の初期胚を卵管から採取した後 、胚培養用培地(後述)中で胚盤胞期まで培養してもよい)、マイクロマニピュレータ 一を用いて胚盤胞の割腔内にターゲッティングベクターが導入された ES細胞(約 10 〜約 15個)を注入した後、偽妊娠させた受胚用雌非ヒト哺乳動物の子宮内に移植す る。受胚用雌非ヒト哺乳動物は受精卵への遺伝子導入における受胚用雌として使用 され得る非ヒト哺乳動物を同様に用いることができる。
[0033] 共培養法による場合は、 8細胞期胚および桑実胚 (例えばマウスの場合、交配後約
2.5日)を採卵用雌の卵管および子宮から採取して(あるいは 8細胞期以前の初期胚 を卵管から採取した後、胚培養用培地 (後述)中で 8細胞期または桑実胚期まで培養 してもよ!/、)酸性タイロード液中で透明帯を溶解した後、ミネラルオイルを重層した胚 培養用培地の微小滴中にターゲッティングベクターが導入された ES細胞塊(細胞数 約 10〜約 15個)を入れ、さらに上記 8細胞期胚または桑実胚 (好ましくは 2個)を入れ て一晩共培養する。得られた桑実胚または胚盤胞を上記と同様にして受胚用雌非ヒ ト哺乳動物の子宮内に移植する。
[0034] 移植胚が首尾よく着床し受胚雌が妊娠すれば、自然分娩もしくは帝王切開によりキ メラ非ヒト哺乳動物が得られる。 自然分娩した受胚雌にはそのまま哺乳を継続させれ ばよく、帝王切開により出産した場合は、産仔は別途用意した哺乳用雌 (通常に交配 •分娩した雌非ヒト哺乳動物)に哺乳させること力 Sできる。
[0035] 生殖系列キメラの選択は、まず ES細胞の雌雄が予め判別されて!/、る場合は ES細胞 と同じ性別のキメラマウスを選択し(通常は雄性 ES細胞が使用されるので、雄キメラマ ウスが選択される)、次!/、で毛色等の表現型から ES細胞の寄与率が高!/、キメラマウス (例えば、 50%以上)を選択する。例えば、 129系マウス由来の雄性 ES細胞である D3細 胞と C57BL/6マウス由来の宿主胚とのキメラ胚から得られるキメラマウスの場合、ァグ ーチの毛色の占める割合の高!/、雄マウスを選択するのが好まし!/、。選択されたキメラ 非ヒト哺乳動物が生殖系列キメラであるか否かの確認は、適当な系統の同種動物と の交雑により得られる F動物の表現型に基づいて行なうことができる。例えば、上記
1
キメラマウスの場合、ァグーチはブラックに対して優性であるので、雌 C57BL/6マウス
と交雑すると、選択された雄マウスが生殖系列キメラであれば得られる Fの毛色はァ
1
グーチとなる。
[0036] 上記のようにして得られるターゲッティングベクターが導入された生殖系列キメラ非 ヒト哺乳動物(フアウンダー)は、通常、相同染色体の一方の SLC-1遺伝子のみが KO されたヘテロ接合体として得られる。相同染色体の両方の SLC-1遺伝子が KOされた ホモ接合体を得るためには、上記のようにして得られる F動物のうちへテロ接合体の
1
兄妹同士を交雑すればよい。ヘテロ接合体の選択は、例えば F動物の尾部より分離
1
抽出した染色体 DNAをサザンハイブリダィゼーシヨンまたは PCR法によりスクリーニン グすることにより検定すること力 Sできる。得られる F動物の 1/4がホモ接合体となる。
[0037] ターゲッティングベクターとしてウィルスを用いる場合の別の好ましい一実施態様と して、ポジティブ選択用マーカー遺伝子が 5 'および 3 'アームの間に挿入され、該ァ ームの外側にネガティブ選択用マーカー遺伝子を含む DNAを含むウィルスで、非ヒト 哺乳動物の ES細胞を感染させる方法が挙げられる(例えば、プロシーディングズ 'ォ ヴ'ナショナル 'アカデミー'ォヴ 'サイエンシーズ 'ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. S ci. USA)第 99巻,第 4号,第 2140-2145頁, 2002年参照)。例えば、レトロウイルスゃレ ンチウィルスを用いる場合、ディッシュなどの適当な培養器に細胞を播き、培養液に ウィルスベクターを加えて(所望によりポリプレンを共存させてもよい)、 1〜2日間培養 後、上述のように選択薬剤を添加して培養を続け、ベクターが組み込まれた細胞を 選択する。
[0038] SLC-1遺伝子をノックダウンする具体的な手段としては、 SLC-1のアンチセンス RNA もしくは siRNA (shRNAを含む)をコードする DNAを、自体公知のトランスジエニック作 製技術を用いて導入し、対象非ヒト哺乳動物細胞内で発現させる方法などが挙げら れる。
[0039] 目的のポリヌクレオチドの標的領域と相補的な塩基配列を含む DNA、即ち、 目的の ポリヌクレオチドとハイブリダィズすることができる DNAは、該目的のポリヌクレオチドに
SLC-1をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に、相補的もしくは実質的に相補的 な塩基配列またはその一部を有するアンチセンス DNAとしては、 SLC-1をコードする
ポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはそ の一部を含有し、該ポリヌクレオチドの発現を抑制し得る作用を有するものであれば
SLC-1をコードするポリヌクレオチドに実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、該 ポリヌクレオチドの相補鎖の塩基配列と、オーバーラップする領域に関して、約 70%以 上、好ましくは約 80%以上、より好ましくは約 90%以上、最も好ましくは約 95%以上の相 同性を有する塩基配列である。本明細書における塩基配列の相同性は、例えば、相 同性計算アルゴリズム NCBI BLAST (National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値 =10 ;ギャップを許 す;フィルタリング =ON;マッチスコア =1;ミスマッチスコア =-3)にて計算することができ 特に、 SLC-1をコードするポリヌクレオチドの相補鎖の全塩基配列のうち、(a)翻訳 阻害を指向したアンチセンス DNAの場合は、 SLC-1蛋白質の N末端部位をコードす る部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列など)の相補鎖と約 70%以上 、好ましくは約 80%以上、より好ましくは約 90%以上、最も好ましくは約 95%以上の相同 性を有するアンチセンス DNAが、(b) RNaseHによる RNA分解を指向するアンチセンス DNAの場合は、イントロンを含む SLC-1をコードするポリヌクレオチドの全塩基配列の 相補鎖と約 70%以上、好ましくは約 80%以上、より好ましくは約 90%以上、最も好ましく は約 95%以上の相同性を有するアンチセンス DNAがそれぞれ好適である。
具体的には、対象非ヒト哺乳動物がマウスの場合、 GenBank accession No. 醒— 145 132 (VERSION: NM.145132.1, GI:21553072)として登録されている塩基配列に相補 的もしくは実質的に相補的な塩基配歹 IJ、またはその一部を含むアンチセンス DNA、 好ましくは、該塩基配列に相補的な塩基配列またはその一部を含むアンチセンス DN Aなどが挙げられる。また、対象非ヒト哺乳動物がラットの場合、 GenBank accession N o. NM_031758 (VERSION: NM_031758.1, GI: 13929067)で表される塩基配列に相補 的もしくは実質的に相補的な塩基配歹 IJ、またはその一部を含むアンチセンス DNA、 好ましくは、該塩基配列に相補的な塩基配列またはその一部を含むアンチセンス DN Aなどが挙げられる。
[0042] SLC-1をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的 な塩基配列またはその一部を有するアンチセンス DNA (以下、「本発明のアンチセン ス DNA」ともいう)は、クローン化した、あるいは決定された SLC-1をコードする DNAの 塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。力、かるアンチセンス DNAは、 SLC-1遺伝 子の複製または発現を阻害することができる。即ち、本発明のアンチセンス DNAは、 S LC-1遺伝子から転写される RNA (mRNAまたは初期転写産物)とハイブリダィズするこ とができ、 mRNAの合成(プロセッシング)または機能(蛋白質への翻訳)を阻害するこ と力 Sできる。
[0043] 本発明のアンチセンス DNAの標的領域は、アンチセンス DNAがハイブリダィズする ことにより、結果として SLC-1蛋白質への翻訳が阻害されるものであればその長さに 特に制限はなぐ該蛋白質をコードする mRNAの全配列であっても部分配列であって もよく、短いもので約 10塩基程度、長いもので mRNAまたは初期転写産物の全配列が 挙げられる。具体的には、 SLC-1遺伝子の 5 '端ヘアピンループ、 5 '端 6-ベースペア' リピート、 5 '端非翻訳領域、翻訳開始コドン、蛋白質コード領域、 ORF翻訳終止コドン 、 3,端非翻訳領域、 3,端ノ リンドローム領域または 3,端ヘアピンループなど力 S、アン チセンス DNAの好ましい標的領域として選択しうる力 SLC-1遺伝子内の如何なる領 域も対象として選択しうる。例えば、該遺伝子のイントロン部分を標的領域とすることも できる。
さらに、本発明のアンチセンス DNAは、 SLC-1の mRNAもしくは初期転写産物とハイ ブリダィズして蛋白質への翻訳を阻害するだけでなぐ二本鎖 DNAである SLC-1遺伝 子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、 RNAの転写を阻害し得るものであって もよ!/、。あるいは DNA:RNAノヽイブリツドを形成して RNaseHによる分解を誘導するもの であってもよい。
[0044] SLC-1をコードする mRNAもしくは初期転写産物を、コード領域の内部(初期転写産 物の場合はイントロン部分を含む)で特異的に切断し得るリボザィムをコードする DNA もまた、本発明のアンチセンス DNAに包含され得る。リボザィムとして最も汎用性の高 いものとしては、ウイロイドやウィルソイド等の感染性 RNAに見られるセルフスプライシ ング RNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型
は約 40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両 端の数塩基ずつ(合わせて約 10塩基程度)を mRNAの所望の切断部位と相補的な配 列にすることにより、標的 mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイ プのリボザィムは、 RNAのみを基質とするので、ゲノム DNAを攻撃することがないとい うさらなる利点を有する。 SLC-1 mRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、 RNAへ リカーゼと特異的に結合し得るウィルス核酸由来の RNAモチーフを連結したハイブリ ッドリボザィムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる [Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572-5577 (2001)]。さらに、転写産物の細胞質への移行を 促進するために、 tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザィムとする こともできる [Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788 (2001)]。
[0045] 本明細書においては、 SLC-1の mRNAもしくは初期転写産物のコード領域内の部 分配列(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)に相同なオリゴ RNAとその相 補鎖と力、らなる二本鎖 RNA、いわゆる短鎖干渉 RNA(siRNA)もまた、本発明の KD動 物作製のために用いること力できる。 siRNAを細胞内に導入するとその RNAに相同な mRNAが分解される、いわゆる RNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、 昆虫、植物等で知られていたが、この現象が動物細胞でも広く起こることが確認され て以来 [Nature, 411(6836): 494-498(2001)]、リボザィムの代替技術として汎用されて いる。 siRNAは標的となる mRNAの塩基配列情報に基づいて、市販のソフトウェア(例 : RNAi Designer; Invitrogen)を用いて適宜設計することができる。
[0046] 本発明のアンチセンスオリゴ DNA及びリボザィムは、 SLC-1の cDNA配列もしくはゲ ノミック DNA配列に基づ!/、て mRNAもしくは初期転写産物の標的配列を決定し、巿販 の DNA/RNA自動合成機(アプライド 'バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて 、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。合成されたアンチ センスオリゴ DNAまたはリボザィムは、必要に応じて適当なリンカ一(アダプター)配列 を介して発現ベクターのプロモーターの下流に揷入することにより、アンチセンスオリ ゴ RNAまたはリボザィムをコードする DNA発現ベクターを調製することができる。ここ で用いられ得る発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラス ミド、酵母由来のプラスミド、 λファージなどのバタテリオファージ、モロニ一白血病ゥ
ィルスなどのレトロウイルス、レンチウィルス、アデノ随伴ウィルス、ワクシニアウィルス またはバキュロウィルスなどの動物もしくは昆虫ウィルスなどが用いられる。な力、でも、 プラスミド (好ましくは大腸菌由来、枯草菌由来または酵母由来、特に大腸菌由来の プラスミド)や、動物ウィルス(好ましくはレトロウイルス、レンチウィルス)が好ましく例 示される。また、プロモーターとしては、例えば、 SV40由来初期プロモーター、サイトメ ガロウィルス (CMV)ロングターミナルリピート(LTR)、ラウス肉腫ウィルス(RSV) LTR、 マウス白血病ウィルス(MoMuLV) LTR、アデノウイルス(AdV)由来初期プロモーター 等のウィルスプロモーター、並びに β -ァクチン遺伝子プロモーター、 PGK遺伝子プ 口モーター、トランスフェリン遺伝子プロモーター等の哺乳動物の構成蛋白質遺伝子 のプロモーターなどが挙げられる。
[0047] より長いアンチセンス RNA (例えば、 SLC-1 mRNAの相補鎖全長など)をコードする DNA発現ベクターは、常法によりクローユングした SLC-1 cDNAを、必要に応じて適 当なリンカ一(アダプター)配列を介して発現ベクターのプロモーターの下流に逆方 向に挿人することにより調製することカでさる。
[0048] 一方、 siRNAをコードする DNAは、センス鎖またはアンチセンス鎖をコードする DNA として別個に合成し、それぞれを適当な発現ベクター中に揷入することにより調製す ること力 Sできる。 siRNAの発現ベクターとしては、 U6や HIなどの Pol III系プロモーター を有するものが用いられ得る。この場合、該ベクターが導入された動物細胞内で、セ ンス鎖とアンチセンス鎖がそれぞれ転写されてアニーリングすることにより、 siRNA力 S 形成される。 shRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖との間に、適当なループ構造を形 成しうる長さの塩基 (例えば 15から 25塩基程度)を揷入したユニットを、適当な発現べ クタ一中に挿入することにより調製すること力 Sできる。 shRNAの発現ベクターとしては U
6や HIなどの Pol III系プロモーターを有するものが用いられ得る。この場合、該発現 ベクターを導入された動物細胞内で転写された shRNAは、自身でループを形成した 後に、内在の酵素ダイサー(dicer)などによってプロセシングされることにより成熟 siR NAが形成される。あるいは、 Pol II系プロモーターで、ターゲットの siRNA配列を含む マイクロ RNA(miRNA)を発現させて RNAiによりノックダウンを達成することも可能であ る。この場合には組織特異的発現を示すプロモーターにより、組織特異的ノックダウ
ンも可能となる。
[0049] SLC-1のアンチセンス RNA、 siRNA、 shRNA、もしくは miRNAをコードする DNAを含 む発現ベクターを細胞に導入する方法としては、標的細胞に応じて自体公知の方法 が適宜用いられる。例えば、受精卵などの初期胚への導入については、マイクロイン ジェクシヨン法が用いられる。また、 ES細胞への導入については、リン酸カルシウム共 沈殿法、エレクト口ポレーシヨン法、リポフエクシヨン法、レトロウイルス感染法、凝集法 、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、 DEAE-デキストラン法などが用い られ得る。あるいは、ベクターとしてレトロウイルスやレンチウィルスなどを用いる場合 には、初期胚ゃ ES細胞にウィルスを添加して 1〜2日培養し、該細胞を該ウィルスに 感染させることにより、簡便に遺伝子導入を達成し得る場合がある。 ES細胞からの個 体再生 (フアウンダ一の樹立)、継代 (ホモ接合体の作製)等は、本発明の KO動物に おいて上記したと同様の方法により行うことができる。
[0050] 好ましい一実施態様においては、 SLC-1のアンチセンス RNA、 siRNA、 shRNA、もし くは miRNAをコードする DNAを含む発現ベクターは、マイクロインジェクション法により 対象となる非ヒト哺乳動物の初期胚に導入される。
[0051] 対象非ヒト哺乳動物の初期胚は、同種の非ヒト哺乳動物の雌雄を交配させて得られ る体内受精卵を採取するカ あるいは同種の非ヒト哺乳動物の雌雄からそれぞれ採 取した卵と精子を体外受精させることにより得ることができる。
用いる非ヒト哺乳動物の齢や飼育条件等は動物種によってそれぞれ異なる力 例 えばマウス(好ましくは C57BL/6J (B6)などの近交系マウス、 B6と他の近交系との Fな
1 ど)を用いる場合は、雌が約 4〜約 6週齢、雄が約 2〜約 8ヶ月齢程度のものが好ましく 、また、約 12時間明期条件 (例えば 7:00-19:00)で約 1週間飼育したものが好ましい。
[0052] 体内受精は自然交配によってもよいが、性周期の調節と 1個体から多数の初期胚を 得ることを目的として、雌非ヒト哺乳動物に性腺刺激ホルモンを投与して過剰排卵を 誘起した後、雄非ヒト哺乳動物と交配させる方法が好ましい。雌非ヒト哺乳動物の排 卵誘発法としては、例えば初めに卵胞刺激ホルモン (妊馬血清性性腺刺激ホルモン 、一般に PMSGと略する)、次いで黄体形成ホルモン (ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、 一般に hCGと略する)を、例えば腹腔内注射などにより投与する方法が好ましいが、
好まし!/、ホルモンの投与量、投与間隔は非ヒト哺乳動物の種類によりそれぞれ異なる 。例えば、非ヒト哺乳動物がマウス(好ましくは C57BL/6J (B6)などの近交系マウス、 B 6と他の近交系との Fなど)の場合は、通常、卵胞刺激ホルモン投与後、約 48時間後
1
に黄体形成ホルモンを投与し、直ちに雄マウスと交配させることにより受精卵を得る 方法が好ましぐ卵胞刺激ホルモンの投与量は約 20〜約 50IU/個体、好ましくは約 30 IU/個体、黄体形成ホルモンの投与量は約 0〜約 10IU/個体、好ましくは約 5IU/個体 である。
[0053] 一定時間経過後、膣栓の検査等により交配を確認した雌非ヒト哺乳動物の腹腔を 開き、卵管から受精卵を取り出して胚培養用培地(例: M16培地、修正 Whitten培地、 BWW培地、 M2培地、 WM-HEPES培地、 BWW-HEPES培地等)中で洗って卵丘細胞 を除き、微小滴培養法等により 5%炭酸ガス/ 95%大気下で DNA顕微注入まで培養する 。直ちに顕微注入を行わない場合、採取した受精卵を緩慢法または超急速法等で 凍結保存することも可能である。
[0054] 一方、体外受精の場合は、採卵用雌非ヒト哺乳動物(体内受精の場合と同様のも のが好ましく用いられる)に上記と同様に卵胞刺激ホルモンおよび黄体形成ホルモン を投与して排卵を誘発させた後、卵子を採取して受精用培地 (例: TYH培地)中で体 外受精時まで微小滴培養法等により 5%炭酸ガス/ 95%大気下で培養する。他方、同種 の雄非ヒト哺乳動物(体内受精の場合と同様のものが好ましく用いられる)から精巣上 体尾部を取り出し、精子塊を採取して受精用培地中で前培養する。前培養終了後の 精子を卵子を含む受精用培地に添加し、微小滴培養法等により 5%炭酸ガス/ 95%大 気下で培養した後、 2個の前核を有する受精卵を顕微鏡下で選抜する。直ちに DNA の顕微注入を行わな!/、場合は、得られた受精卵を緩慢法または超急速法等で凍結 保存することも可能である。
[0055] 受精卵への DNAの顕微注入は、マイクロマニピュレータ一等の公知の装置を用い て常法に従って実施することができる。簡潔に言えば、胚培養用培地の微小滴中に 入れた受精卵をホールディングピペットで吸引して固定し、インジェクションピペットを 用いて DNA溶液を雄性もしくは雌性前核、好ましくは雄性前核内に直接注入する。 導入 DNAは CsC嘧度勾配超遠心または陰イオン交換樹脂カラム等で高度に精製し
たものを用いることが好ましい。また、導入 DNAは制限酵素を用いてベクター部分を 切断し、直鎖状にしておくことが好ましい。
[0056] DNA導入後の受精卵は胚培養用培地中で微小滴培養法等により 5%炭酸ガス/ 95% 大気下で 1細胞期〜胚盤胞期まで培養した後、偽妊娠させた受胚用雌非ヒト哺乳動 物の卵管または子宮内に移植される。受胚用雌非ヒト哺乳動物は移植される初期胚 が由来する動物と同種のものであればよぐ例えば、マウス初期胚を移植する場合は 、 ICR系の雌マウス(好ましくは約 8〜約 10週齢)などが好ましく用いられる。受胚用雌 非ヒト哺乳動物を偽妊娠状態にする方法としては、例えば、同種の精管切除 (結紮) 雄非ヒト哺乳動物(例えば、マウスの場合、 ICR系の雄マウス(好ましくは約 2ヶ月齢以 上))と交配させて、膣栓の存在が確認されたものを選択する方法が知られている。
[0057] 受胚用雌は自然排卵のものを用いてもよいし、あるいは精管切除 (結紮)雄との交 配に先立って、黄体形成ホルモン放出ホルモン(一般に LHRHと略する)もしくはその 類縁体を投与し、受精能を誘起させたものを用いてもよい。 LHRH類縁体としては、 例えば、 [3,5- DH- Tyr5]- LH- RH、 [Gin8]- LH- RH、 [D- Alaつ- LH- RH、 [des- Gly10]- LH -RH、 [D-His(Bzl)6]-LH-RHおよびそれらの Ethylamideなどが挙げられる。 LHRHもし くはその類縁体の投与量、ならびにその投与後に雄非ヒト哺乳動物と交配させる時 期は、非ヒト哺乳動物の種類によりそれぞれ異なる。例えば、非ヒト哺乳動物がマウス (好ましくは ICR系のマウスなど)の場合には、通常、 LHRHもしくはその類縁体を投与 した後、約 4日目に雄マウスと交配させることが好ましぐ LHRHあるいはその類縁体の 投与量は、通常、約 10〜60 g/個体、好ましくは約 40 g /個体である。
[0058] 通常、移植される初期胚が桑実胚期以後の場合は受胚用雌の子宮に、それより前
(例えば、 1細胞期〜 8細胞期胚)であれば卵管に胚移植される。受胚用雌は、移植 胚の発生段階に応じて偽妊娠からある日数が経過したものが適宜使用される。例え ばマウスの場合、 2細胞期胚を移植するには偽妊娠後約 0.5日の雌マウスが、胚盤胞 期胚を移植するには偽妊娠後約 2.5日の雌マウスが好ましい。受胚用雌を麻酔 (好ま しくは Avertin、ネンブタール等が使用される)後、切開して卵巣を引き出し、胚培養 用培地に懸濁した初期胚 (約 5〜約 10個)を胚移植用ピペットを用いて、卵管腹腔口 もしくは子宮角の卵管接合部付近に注入する。
[0059] 移植胚が首尾よく着床し受胚雌が妊娠すれば、自然分娩もしくは帝王切開により仔 非ヒト哺乳動物が得られる。 自然分娩した受胚雌にはそのまま哺乳を継続させればよ ぐ帝王切開により出産した場合は、産仔は別途用意した哺乳用雌 (例えばマウスの 場合、通常に交配 ·分娩した雌マウス(好ましくは ICR系の雌マウス等))に哺乳させる こと力 Sでさる。
[0060] 受精卵細胞段階における SLC-1のアンチセンス RNA、 siRNA、 shRNA、もしくは miR NAをコードする DNAの導入は、導入 DNAが対象非ヒト哺乳動物の生殖系列細胞お よび体細胞のすべてに存在するように確保される。導入 DNAが染色体 DNAに組み込 まれているか否かは、例えば、産仔の尾部より分離抽出した染色体 DNAをサザンハ イブリダィゼーシヨンまたは PCR法によりスクリーニングすることにより検定することがで きる。上記のようにして得られる仔非ヒト哺乳動物(F )の生殖系列細胞においてター
0
ゲッティングベクターが存在することは、その後代(F )の動物全てが、その生殖系列
1
細胞および体細胞のすべてにターゲッティングベクターが存在することを意味する。 通常、 F動物は相同染色体の一方にのみ導入 DNAを有するヘテロ接合体として得
0
られる。また、個々の F個体は相同組換えによらない限り異なる染色体上にランダム
0
に揷入される。相同染色体の両方にターゲッティングベクターを有するホモ接合体を 得るためには、 F動物と非トランスジエニック動物とを交雑して F動物を作製し、相同
0 1
染色体の一方にのみ導入 DNAを有するヘテロ接合体の兄妹同士を交雑すればよい 。 1遺伝子座にのみ導入 DNAが組み込まれていれば、得られる F動物の 1/4がホモ 接合体となる。
[0061] ベクターとしてウィルスを用いる場合の別の好ましい一実施態様として、上記 KO動 物の場合と同様に、 SLC-1のアンチセンス RNA、 siRNA、 shRNA、もしくは miRNAをコ ードする DNAを含むウィルスで、非ヒト哺乳動物の初期胚もしくは ES細胞を感染させ る方法が挙げられる。細胞として受精卵を用いる場合は、感染に先立って透明帯を 除いておくことが好ましい。ウィルスベクターを感染させて 1〜2日間培養後、初期胚 であれば、上述のように偽妊娠させた受胚用雌非ヒト哺乳動物の卵管または子宮内 に移植し、 ES細胞であれば、上述のように選択薬剤を添加して培養を続け、ベクター が組み込まれた細胞を選択する。
[0062] さらに、プロシーディングズ'ォヴ'ナショナル'アカデミー'ォヴ 'サイエンシーズ'ュ 一エスエー(proc. Natl. Acad. Sci. USA)第 98巻,第 13090-13095頁, 2001年に記載 されるように、雄非ヒト哺乳動物から採取した精原細胞を STOフィーダ一細胞と共培 養する間にウィルスベクターに感染させた後、雄性不妊非ヒト哺乳動物の精細管に 注入して雌非ヒト哺乳動物と交配させることにより、効率よく SLC-1のアンチセンス RN A、 siRNA、 shRNA、もしくは miRNAをコードする DNAのへテロ Tg(+/_)産仔を得ること ができる。
[0063] 本発明の SLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物は、対応する野生型動物と比較し て、以下の特性:
(1)耐糖能試験において血中インスリンレベルが低い、
(2)インスリン感受性が増大している、
(3)高脂肪食下でも抗肥満である、
(4)白色脂肪細胞が小型化している、および
(5)脂肪分解が亢進している
を有する。これらの表現型は、従来公知の SLC-1 KOマウスにおいては、少なくとも報 告されて!/、ない(プロシーディングズ 'ォヴ ·ナショナノレ ·ァカデミ一 ·ォヴ ·サイェンシ ーズ 'ユー 'エス'エー (Pro Natl. Acad. Sci. USA), 2002年,第 99巻, . 3240-3245 およびエンドクリノロジー(Endocrinol.), 2002年,第 143巻, . 2469-2477参照)。
[0064] さらに、本発明の SLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物は、対応する野生型動物と 比較して、以下の特性:
(i)自発運動量および酸素消費量が亢進している、
(ii)体脂肪が減少している、および
(iii)血漿レプチン^ Iが低下してレ、る
を有する。これらの表現型は従来公知の SLC-1 KOマウスと一致する。
[0065] これらの知見に基づけば、 SLC-1は、摂食促進を通じて肥満、糖尿病の発症'進展 に関与するだけでなぐ耐糖能'インスリン感受性の悪化にも深く関与していることが 強く示唆される。したがって、本発明の発現不全動物は、例えば、各種疾患モデル動 物(特に肥満および/または II型糖尿病モデル動物、あるいはそれらを共通の基盤と
する動脈硬化性疾患のモデル動物)と交配して、該疾患モデル動物を SLC-1欠損と することにより、該疾患の病態に及ぼす SLC-1欠損の効果を調べる等、 SLC-1の生理 機能の解明および SLC-1拮抗薬のそれら疾患の予防 ·治療薬としての有効性の検証 などに利用することができる。
[0066] また、上記のようにして作製された発現不全動物の生体の一部(例えば、(l)SLC-l 遺伝子発現不全である細胞、組織、臓器など、(2)これらに由来する細胞または組織 を培養し、必要に応じて継代したものなど)も、本発明の発現不全動物と同様な目的 に用いることができる。本発明の発現不全動物の生体の一部としては、勝臓、肝臓、 脂肪組織、骨格筋、腎臓、副腎、血管、心臓、消化管、脳などの臓器や、当該臓器 由来の組織片および細胞などが好ましく例示される。
[0067] 本発明の SLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物は、内在性 SLC-1遺伝子の発現 が不活性化されていることに加えて、 SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしく は類似の病態を生じさせるような、 1以上の他の遺伝子改変を有してレ、てもよレ、。
「SLC_1の活性調節が関与する疾患」とは、 SLC-1活性の異常に起因する力、もしく は結果的に SLC-1活性の異常を生じる疾患だけでなぐ SLC-1活性を調節することに より予防および/または治療効果が得られ得る疾患をも含めた概念として把握される べきである。
例えば、 SLC-1活性を阻害することにより予防 ·治療可能な疾患として、肥満症、高 脂血症、 II型糖尿病およびその合併症 (例えば、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症 、糖尿病性網膜症等)、インスリノーマ、メタボリックシンドローム(上記各種疾患の 1以 上が重積した病態を含む)、動脈硬化性疾患 (例えば、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、 脳出血、脳血栓、脳塞栓、大動脈瘤、大動脈解離、腎硬化症、腎不全、閉塞性動脈 硬化症、 PCI後再狭窄、急性冠症候群、冠動脈疾患、末梢動脈閉塞症等)、神経症( 例えば、鬱、不安等)などがそれぞれ挙げられる。
[0068] 「他の遺伝子改変」としては、自然突然変異により内在性遺伝子に異常を有する自 然発症疾患モデル動物、他の遺伝子をさらに導入された Tg動物、 SLC-1遺伝子以 外の内在性遺伝子を不活化された KO/KD動物 (揷入突然変異等による遺伝子破壊 のほか、アンチセンス DNAや中和抗体をコードする DNAの導入により遺伝子発現が
検出不可能もしくは無視し得る程度にまで低下した Tg動物を含む)、変異内在性遺 伝子が導入されたドミナントネガティブ変異 Tg動物などが含まれる。
「SLC_1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる 1以上 の他の遺伝子改変を有する疾患モデル」としては、例えば、糖尿病モデルとして NO Dマウス(Makino S.ら、ェクスペリメンタノレ'アニマル(Exp. Anim.)、第 29巻、第 1頁、 1 980年)、 BBラット(Crisaしら、ダイアビーテイス 'メタボリズム 'レヴュー(Diabetes Meta b. Rev.) ,第 8巻、第 4頁、 1992年)、 ob/obマウス、 db/dbマウス(Hummelしら、サイエ ンス(Science)、第 153巻、第 1127頁、 1966年)、 KKマウス、 KKAyマウス、 GKラット(Go to Υ·ら、トウホク 'ジャーナル'ォヴ'ェクスペリメンタル'メディシン(Tohoku J. Exp. Me d.)、第 119巻、第 85頁、 1976年)、 Zucker fattyラッ HZuckerし Μ·ら、ァニュアル'ォ ヴ'ニューヨーク 'アカデミー'ォヴ 'サイエンス(Ann. NY Acad. Sci.)、第 131巻、第 44 7頁、 1965年)、 ZDFラット、 OLETFラット(Kawano Κ·ら、ダイアビーテイス(Diabetes)、 第 41巻、第 1422頁、 1992年)等が、肥満モデルとして ob/obマウス、 db/dbマウス、 KK マウス、 KKAyマウス、 Zucker fattyラット、 ZDFラット、 OLETFラット等力 高脂血症もし くは動脈硬化症モデルとして WHHLゥサギ(低比重リポ蛋白レセプター(LDLR)に変 異を有する; Watanabe Υ·、ァテロスクレローシス(Atherosclerosis)、第 36巻、第 261頁 、 1980年)、 SHLM (apoE欠損変異を有する自然発症マウス; Matsushima Υ·ら、マンマ リアン'ジ一ノウム(Mamm. Genome)、第 10巻、第 352頁、 1999年)、 LDLR KOマウス(I shibashi S.ら、ジャーナノレ 'ォヴ 'クリニ力ノレ'インヴエスティゲーシヨン(J. Clin. Invest. )、第 92巻、第 883頁、 1993年)、 apoE KOマウス(Piedrahita J.A.ら、プロシーデイング ズ'ォヴ'ナショナル'アカデミー'ォヴ 'サイエンシーズ 'ユーエスエー(Pro Natl. Ac ad. Sci. USA)、第 89巻、第 4471頁、 1992年)、ヒト apo Α·ヒト apoBダブル Tgマウス(Ca How M.J.ら、プロシーディングズ'ォヴ'ナショナル'アカデミー'ォヴ 'サイエンシーズ' ユーエスエー(proc. Natl. Acad. Sci. USA)、第 91巻、第 2130頁、 1994年)等が、脂肪 肝モデルとして ob/obマウス(Herbergし及び Coleman D丄.、メタボリズム(Metabolism )、第 26巻、第 59頁、 1977年)、 KKマウス(Nakamura Μ·及び Yamada Κ·、ダイアベトロ ジァ(Diabetologia)、第 3巻、第 212頁、 1967頁)、 FLSマウス(Soga Μ·ら、ラボラトリー. ォヴ.アニマル.サイエンス(Lab. Anim. Sci.) ,第 49巻、第 269頁、 1999年)、虚血性心
疾患モデルとして CD55 CD59ダブル Tgマウス(Cowan P.J.ら、ゼノトランスプランティ シヨン(Xenotransplantation)、第 5巻、第 184-90頁、 1998年)等が知られている。
これらの「他の遺伝子改変を有する疾患モデル」は、例えば、米国の Jackson研究 所などから購入可能であるか、あるいは周知の遺伝子改変技術を用いて容易に作製 すること力 Sでさる。
[0070] 本発明の発現不全動物に、 SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似 の病態を生じさせる 1以上の他の遺伝子改変を導入する方法は特に制限はなぐ例 えば、(1)本発明の発現不全動物と、 SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしく は類似の病態を生じさせる 1以上の他の遺伝子改変を有する同種の非ヒト哺乳動物 とを交雑する方法; (2) SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態 を生じさせる 1以上の他の遺伝子改変を有する非ヒト哺乳動物の初期胚ゃ ES細胞を 上述の方法により処理し、内在性 SLC-1遺伝子の発現を不活性化して KO/KD動物 を得る方法; (3)内在性 SLC-1遺伝子が不活性化された非ヒト哺乳動物の初期胚ゃ ES 細胞に、上述の方法により、 SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の 病態を生じさせる 1以上の他の遺伝子改変を導入する方法等が挙げられる。また、 SL C-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる 1以上の他の 遺伝子改変が、外来遺伝子やドミナント変異遺伝子の導入による場合、野生型非ヒト 哺乳動物の初期胚ゃ ES細胞に、該外来遺伝子等とターゲッティングベクター/アン チセンス RNAもしくは siRNAをコードする DNAとを同時にもしくは順次導入して KO/K D動物を得てもよい。
[0071] 本発明の発現不全動物と、 SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似 の病態を生じさせる 1以上の他の遺伝子改変を有する同種の疾患モデル非ヒト哺乳 動物とを交雑する場合、ホモ接合体同士を交雑することが望ましい。例えば、 SLC-1 遺伝子発現不全ホモ接合体マウスと、 KKAyマウス(肥満 · II型糖尿病モデル)とを交 雑して得られる Fは、 1/2の確率で SLC_l (+/_) X KKAyもしくは SLC_l (+/_) X KKで
1
ある。この F個体の SLC-l (+/_) X KKAyと SLC-l (+/_) X KKとを交雑することにより、
1
1/8の確率で SLC-l (-/_) X KKAy力 S得られる。 F個体以降のホモ個体の取得は、 SL
3
C-K-/-) X KKAyと SLC-l (-/_) X KKを交雑することにより行うことができる(1/2の確
率でホモ個体が取得される)。
[0072] 本発明の発現不全動物は、 SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似 の病態を生じさせる 1以上の非遺伝的処理を施されていてもよい。 「非遺伝的処理」と は対象非ヒト哺乳動物における遺伝子改変を生じさせない処理を意味する。このよう な処理としては、例えば、 STZなどの薬剤誘発処理、高脂肪食負荷、糖負荷、絶食等 の食餌的ストレス負荷、 UV、活性酸素、熱、血管結紮/再灌流等の外的ストレス負 荷などが挙げられる力 S、これらに限定されない。
[0073] 好ましくは、「SLC_1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさ せる 1以上の他の遺伝子改変を有する疾患モデル」として、肥満および/または II型 糖尿病モデル、特に好ましくは KKAyマウスが挙げられる。従って、本発明はまた、 SL C-1遺伝子発現不全である肥満および/または II型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物( 好ましくは KKAyマウス)を提供する。
本発明の SLC-1遺伝子発現不全である肥満および/または II型糖尿病モデル非ヒ ト哺乳動物は、該遺伝子発現が正常な対応する肥満および/または II型糖尿病モデ ル非ヒト哺乳動物と比較して、以下の特性:
(1)アディポネクチン発現が上昇している、
(2)高血糖の発症が遅れる、
(3)血中糖化ヘモグロビン値が低い、および
(4)エネルギー消費が亢進して!/、る
を有する。これらの表現型は、従来公知の SLC-1欠損/肥満 · II型糖尿病モデルマウ スでは、少なくとも報告されていない(ダイアビーテイス(Diabetes), 2006年,第 55巻, p. 725-733を参照)。
[0074] さらに、本発明の SLC-1遺伝子発現不全である肥満および/または II型糖尿病モ デル非ヒト哺乳動物は、 SLC-1遺伝子発現が正常な対応する肥満および/または II 型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物と比較して、以下の特性:
(i)酸素消費量が増加している、および
(ii)血中コルチコステロン値が低下して!/、る
を有する。これらの表現型は、従来公知の SLC-1欠損/肥満 · II型糖尿病モデルマウ
スと一致する。
[0075] 上述のように、本発明の SLC-1遺伝子発現不全である肥満および/または II型糖 尿病モデル非ヒト哺乳動物では、該遺伝子発現が正常な対応する肥満および/また は II型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物と比較して、アディポネクチン発現が上昇して!/ヽ る。このことは、 SLC-1拮抗薬が、肥満、特に脂肪細胞の肥大を伴う内臓脂肪型肥満 を有する動物個体において、脂肪細胞におけるアディポネクチンの産生を促進する 作用を有することを強く示唆する。
したがって、本発明はまた、 SLC-1拮抗薬を含む、アディポネクチン産生促進剤を 提供する。ここで「拮抗薬」とは、「アンタゴニスト活性を有する物質」のことであり、「ァ ンタゴ二スト活性」とは、 SLC-1のリガンド結合部位に拮抗的に結合する力 活性型と 不活性型の平衡状態にほとんど又は全く影響を及ぼさない性質、あるいは SLC-1の 任意の部位に結合して、 SLC-1の活性型と不活性型の平衡状態をより不活性側にシ フトさせる性質をいう。従って、本明細書において「拮抗薬」とは、いわゆるニュートラ ルアンタゴニストとインバースァゴニストの両方を包含する概念として定義されるものと する。
[0076] SLC-1拮抗薬を含む、本発明のアディポネクチン産生促進剤は、例えば、肥満を伴 う哺乳動物における、高脂血症、 II型糖尿病およびその合併症 (例えば、糖尿病性神 経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症等)、インスリン抵抗性症候群、高血圧、ィ ンスリノーマを含む癌、メタボリックシンドローム(上記各種疾患の 1以上が重積した病 態を含む)、動脈硬化性疾患 (例えば、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳出血、脳血栓 、脳塞栓、大動脈瘤、大動脈解離、腎硬化症、腎不全、閉塞性動脈硬化症、 PCI後 再狭窄、急性冠症候群、冠動脈疾患、末梢動脈閉塞症等)などの予防および/また は治療に使用することができる。
[0077] SLC-1拮抗薬としては、例えば、 WO 01/21577、 WO 01/82925、 WO 01/87834、 W 0 03/35624、 WO 2004/072018等に記載される化合物等が挙げられるが、それらに 限定されない。例えば、 WO 00/40725等に記載されるスクリーニング法によって選択 される SLC-1拮抗薬も、同様に好ましく用いられ得る。
[0078] SLC-1拮抗薬は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マ
イク口カプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容 し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用でき る。該拮抗薬は、生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、べヒクル、防腐剤、 安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態 で混和することによって製剤化することができる。これら製剤における有効成分量は 後述する投与量を考慮して適宜選択される。
[0079] 錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、 コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような 賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグ ネシゥムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、 ァカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセ ルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有すること カできる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなべヒクル中の活性物質、胡 麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常 の製剤実施に従って処方することができる。
[0080] 注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含 む等張液 (例えば、 D-ソルビトール、 D-マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが挙げ られ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコ ール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面 活性剤(例えば、ポリソルベート 80™、 HCO-50など)などと併用してもよい。油性液と しては、例えば、ゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジ ル、ベンジノレアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝 液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコユウム、塩酸プ ロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保 存剤(例えば、ベンジルアルコール、フエノールなど)、酸化防止剤などと配合しても よい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
[0081] このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、哺乳動物(例え ば、ヒト、ラット、マウス、モノレモット、ゥサギ、ヒッジ、ブタ、ゥシ、ゥマ、ネコ、ィヌ、サル
など)に対して投与することができる。上述のように、 SLC-1欠損は、肥満を有する場 合にアディポネクチン値の上昇効果を奏する。即ち、肥満、特に脂肪細胞の肥大を 伴う内臓脂肪型肥満を有する動物個体においては、脂肪細胞におけるアディポネク チンの産生 ·分泌が抑制されている力 SLC-1活性が阻害されると血漿中のアディポ ネクチン値が回復傾向を示す。他方、肥満を伴わない動物個体では、もともとアディ ポネクチンの産生 ·分泌の有意な低下は認められず、 SLC-1を欠損することによって もアディポネクチンレベルの上昇は見られない。従って、 SLC-1拮抗薬を有効成分と する、本発明のアディポネクチン産生促進剤は、好ましくは、肥満、特に脂肪細胞の 肥大を伴う内臓脂肪型肥満などにより、アディポネクチンレベルが低下している上記 哺乳動物に対して投与される。
[0082] SLC-1拮抗薬の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより異なるが、 例えば、アディポネクチンレベルの低下を伴う糖尿病の治療目的で経口投与する場 合、一般的に成人(体重 60kg)においては、一日にっき約 O. lmg〜約 100mg、好ましく は約 1.0〜約 50mg、より好ましくは約 1.0〜約 20mgである。非経口投与の場合、当該 拮抗薬の投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なる力 例えば、アディポネ クチンレベルの低下を伴う糖尿病の治療目的で注射剤として成人(体重 60kg)に投 与する場合、一日にっき約 0.01〜約 30mg程度、好ましくは約 0.1〜約 20mg程度、より 好ましくは約 0.1〜約 10mg程度である。投与対象がヒト以外の動物の場合も、体重 60 kg当たりに換算した量を投与することができる。
[0083] 本願明細書において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、 IUPAC-IUB Co mmission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における'慣用 略号に基づくものであり、その例を次に挙げる。
DNA :デォキシリボ核酸
cDNA :相補的デォキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グァニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸 dATP :デォキシアデノシン三リン酸 dTTP :デォキシチミジン三リン酸 dGTP :デォキシグアノシン三リン酸 dCTP :デォキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジァミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
Gly :グリシン
Ala :ァラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
lie :ィソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレ才ニン
Cys :システィン
Met :メチォニン
Glu :グルタミン酸
Asp :ァスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フエニノレアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリブトファン
Pro :プロリン
Gin :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Me :メチル基
Et :ェチノレ基
Bu :ブチノレ基
Ph :フエニル基
TC :チアゾリジン 4 (R) カルボキサミド基
実施例
[0084] 以下に実施例を用いて本発明を詳述する力 本発明は以下の実施例に限定され るものではない。
[0085] 実施例 1 SLC-1遺伝子欠損マウスの作製
ターゲッティングベクター(図 1A)を含むプラスミド pSLCTA-2は、マウス SLC-1ゲノ ム DNAのェキソン 1を含む Xbal断片 7.7kbpとェキソン 2の Sadから 3'非翻訳領域の Eco RIまでの 0.87kbpをそれぞれ 5'アーム、 3'アームとしてクローニング後、 pKOScramble Γ (レキシコン ジエネテイクス社製)に導入し、ェキソン 2の 7回膜貫通領域をネオマイ シン耐性遺伝子で置換することにより作製した。ターゲッティングベクターを Notl切断 で直線化し、ジーンパルサー(バイオラッド社製)を用いて 129SvEvマウス由来の ES細 胞 AB2.2 (レキシコン ジエネテイクス社製)にエレクト口ポーレーシヨン後、ネオマイシ ンアナログの G418 (レキシコン ジエネテイクス社製)で選択培養した。 G418耐性株 48 0個よりゲノム DNAを抽出し、ネオマイシン耐性遺伝子(neo)配列中の NE5プライマー (5 ' -CTAAAGCGCATGCTCCAGAC-3 ':配列番号 1)と 3,アームの外側の配列の M C 18プライマー(5 ' -ATATCAGGTATTAGAGTGAC-3 ':配列番号 2)を用レ、て PCR スクリーニングし、 14個の相同組換え株を選抜した。さらに相同組換え株より抽出した ゲノム DNAを Hindlllで切断し、 3'アームの外側のプローブを用いてサザンハイブリダ ィゼーシヨンを行い、野生型由来の断片 3.5kbpと相同組換え株由来の断片 1.5kbpを 確認した。相同組換え株を C57BL/6Jマウスの胚盤胞にマイクロインジェクションし、 生殖系列雄性キメラマウスを取得した。生殖系列雄性キメラマウスと雌性 C57BL/6Jマ ウスとの交配により産仔を取得し、その遺伝子型は尾から抽出した DNAを铸型に用い
て、 neo遺伝子配列中の NE1プライマー(5,- CCGCTTCCATTGCTCAGCGG-3 ':配 列番号 3)、欠損したェキソン 2領域中の MC19プライマー(5 ' -GCTTGGTGCTGTCG GTGAAG-3 ':配列番号 4)と 3,アーム中の MC 14プライマー(5, - TATTCTGTCAAG GGGATC-3 ':配列番号 5)で PCRを行い判定した。産仔における SLC-1遺伝子発現 の有無は、 ISOGEN (二ツボンジーン社製)で抽出した全脳のトータル RNAの逆転写 産物を铸型とし、欠失したェキソン 2領域中に設定した MC26プライマー(5 ' -CCTCG CACAAGGAGTGTCTC-3 ':配列番号 6)と MC29プライマー(5 ' -TAATGAACGAG AGAGCCCAC-3 ':配列番号 7)を用いて reverse transcription- PCRを行い、 SLC-1 mRNA由来の 0.43kbpのバンドの増幅の可否で確認した(図 IB)。
ES細胞由来の 129SvEv系統と、交配に用いた C57BL/6J系統との交雑個体から、非 コンジエニック系を作製した。一方で、スピードコンジエニック法により、非コンジェニッ ク系を C57BL/6Jマウスに 4世代戻し交配を行った後、兄妹交配によりコンジエニック 系を作製した。
[0086] 実施例 2 KKAyマウス、あるいは KKマウスと SLC-1ホモ欠損(-/_)マウスとの交雑個 体の作製
コンジエニック化した SLC-1 (-/_)マウスと KKAyマウスとの交雑により、 KKAyマウス、 あるいは KKマウスの遺伝背景が 50%導入された SLC-1ヘテロ欠損(+/_)マウスを取 得した。それぞれをインタークロスすることにより、 SLC-1ワイルド(+/+)マウス系 [KKA 7SLC-1 (+/+)、 /SLC-1 (+/+) ]と SLC-1 (― /— )マウス系 [KKAy/SLC— 1 (― /— )、 / SLC-1 (-/_) ]を取得した。
[0087] 実施例 3 SLC- -/-)マウスの一般性状
SLC- +/+)マウス、および SLC- -/-)マウスを 12時間の明喑周期、室温 24 ± 1°C 、湿度 55 ± 5%の条件下で 5週齢から個別に飼育した。飼料は通常食(CE-2、 11.6% kcal from fat、 346.8kcal/100g、 日本クレア社製)、あるいは無塩バター含有高脂肪 食(40.7% kcal from fat、 464.6kcal/100g、 日本クレア社製)を使用した。体重は、毎 週指定日の午前 8時より測定した。摂餌量は、 1週間分の摂餌量を測定し、一週間の 摂餌量 (g) X餌のカロリー (kcal/100g) /体重(g) /7 (day)の計算式により、一日の体重 100g当りのカロリー摂取量に換算した。血液パラメータ一は、 12週齢、および 21週齢
時に飽食下で午前 8時よりへパリン採血管(ドラモンドサイエンティフィックカンパニー 社製)を用いて眼窩採血し、血漿中のグルコース(ドライケムシステム、富士写真フィ ルム社製)、トリダリセライド(ドライケムシステム、富士写真フィルム社製)、総コレステ ロール(ドライケムシステム、富士写真フィルム社製)、インスリン (レビスインスリンキッ ト、シバヤギ社製)、レブチン (マウスレブチンキット、ゲンザィムテクネ社製)、遊離脂 肪酸(nonestified fatty acid: NEFA、 NEFA C_テストヮコ一、和光純薬工業社製)を測 定した。
体重につ!/、て、 SLC-1 (-/")マウスは SLC-1 (+/+)マウスと比べて通常食群では実 験期間(5〜20週齢)を通じて有意差を示さな力 たが、高脂肪食群では 6週齢以降 において小さかった(P< 0.01、 8週齢時)(図 2A)。一日当りの摂餌量 (kcal/day)は 通常食群の SLC-l (-/_)マウスに増加が見られた力 高脂肪食群では両マウス間に 差は認められなかった(データ未掲載)。体重補正した摂餌量は、通常食、および高 脂肪食の両群ともに SLC-1 (-/")マウスにお!/、て多かった(図 2B)。血漿パラメーター については、通常食群ではグルコース、トリダリセライド、総コレステロール、および遊 離脂肪酸は SLC-1 (+/+)マウスと SLC-1 (-/")マウスの間で差が認められなかったが 、レプチン、およびインスリン値は SLC-l (-/_)マウスで有意に低値を示した。高脂肪 食群においても、通常食群同様の傾向が認められた (表 1)。
[0088] [表 1]
SLC-1欠損マウスの血漿パラメータ一
通常食群 高脂肪食群
SLC-1 (+/+ ) SLC-K-/-) SLC-K V+) SLC-1 (»/-) グルコース(mg dl ) 185士 9 187±10 219土 6 204土 9 卜リグリセライド (mg/dl ) 99土 4 85士 8 103土 6 89土 4 総コレステロール(mgAJI ) 114± 11 92士 8 218土 8 190士 8 レプチン(ng/ml ) 3.9土 0.6 1.4±0.2 9.4±1.4 3.9 ±0.8 遊離脂肪酸(mEq/l ) 0.20 ±0.03 0.18±0.03 0.39 ±0.03 0.41 ±0.04 インスリン (ng/mi ) 1.4±0.2 0.7±0.1 7.1 ±2.2 2.3 ±0.6 雄性マウスを用いた。グルコース、トリグリセライド、総コレステロール、レプチン、および遊離脂肪酸は 12週齢、インス リンは 21週齢時に測定した。 rFlO, Mean±S.E., *, Pく 0.05 ; **, Pく 0.01 vs. each SLC-1 (+/+).
[0089] 実施例 4 SLC-1 (-/_)マウスの脂肪組織
12〜14週齢時に体脂肪率、脂肪組織重量、および白色脂肪細胞サイズを測定した
。体 S旨月方率はネンブターノレ麻酔下において double-energy X-ray absorptiometry (D EXA, QDR-4500a Rat Whole Body V8.26a、ホロジック社製)で測定した。脂肪組織 重量は、白色脂肪組織については、後腹膜、生殖器周囲、腸間膜、腎周囲、および 皮下鼠径部を、褐色脂肪組織については、肩甲骨間を測定した。 白色脂肪細胞サイ ズは以下の方法で測定した。脂肪細胞の調製は Rodbellの方法に準じた(Rodbell, M. (19D4) Metabolism of isolated fat cells. I. Effects of hormones on glucose metabolis m and lipolysis. J. Biol. Chem. 239:375-380)。マウス生殖器周囲白色脂肪組織を摘 出後、 酸紙上で細切し、 3% BSA (Albumin, bovine serum, fraction V, fatty acid-fr ee、和光純薬工業社製)と 0.075%コラゲナーゼ タイプ 1 (ヮーシントン バイオケミカ ル社製)を含むクレプスリンガー重炭酸塩緩衝液中に加えた後、気相に 95% 0 - 5 % COガスを吹き込み、 37°C、 120ストローク/分で 35分間振盪した。浮遊した脂肪細 胞をメッシュ布でろ過し、組織片を取り除いた。静置後、液層を取り除き、脂肪細胞層 を 1 % BSAを含むクレプスリンガー重炭酸塩緩衝液(15〜20ml)で 3回洗浄した。脂肪 細胞浮遊液を懸濁後、シリコナイズしたスライドガラス上にマウントし、倒立顕微鏡下 にお!/、て 200倍で写真撮影し、細胞の直径を計測した(細胞数≥ 180)。
SLC-l (-/_)マウスは通常食群、高脂肪食群ともに DEXA法により測定した体脂肪 率が有意な低値を示した (表 2)。脂肪組織重量も通常食群で後腹膜脂肪組織、生 殖器周囲脂肪組織、腸間膜白色脂肪組織、および肩甲骨間褐色脂肪組織において 減少傾向、あるいは有意な減少が見られたが、この差は高脂肪食負荷による肥満誘 発条件下でさらに明確になり、腎周囲と皮下脂肪組織を含めた測定全部位の脂肪組 織の重量に有意な減少が認められた (表 2)。生殖器周囲白色脂肪組織の脂肪細胞 サイズは、 SLC- +/+)マウスに比べ、 SLC-l (-/_)マウスでは通常食、および高脂肪 食を負荷した!/、ずれの群にお!/、ても有意に小さかった(表 2)。
[表 2]
SLC-l欠損マウスの体脂肪率、脂肪組織重量と脂肪細胞サイズにおける変化
通常食群 高脂肪食群
SLC-K +/+) _ SLC-1 (-/-) SLC-K +/+ ) 一 SLC-K-/-)
** 体脂肪率(% BW) 10.2土 0.9 6.9土 0.5 31.8土 3.2 15,6士 2.0 後腹膜白色脂肪組織(mg) 52.8士 7.5 35.5 ± 3.8 312.4士 38.7 136.5土 31.0
** 生殖器周囲白色脂肪組織(mg) 253.2 ± 16.4 207.4+ 15.8 1212.0士 145.3 494.7土 93.9
** 腸間膜白色脂肪組織 (mg) 275.0±23.2 225.6±13.8 580.1 ±70.6 291.3 ±49.7 腎周囲白色脂肪組織(mg) 29.9±3.0 27.8 ±1.9 114.9±21.0 62.4±10.6
** 皮下白色脂肪組織(mg) 147.1 ±16.4 158.9 ± 10.5 821.3土 104.0 360.3+46.2
** ** 肩甲骨間褐色脂肪組織 (mg) 126.9 ±13.0 71.5±4.1 183.4±12.0 120.0±8.7
** 生殖器周囲白色脂肪細胞 直径 ( m) 684±0.9 52.8+0.6 93.4±1.7 70.8±0.8 週齢の雄性マウスを用い、測定した。
体脂肪率、脂肪組織重量データ: fFlO, Mean土 S.E.、脂肪細胞サイズ:細胞数≥180, Mean±S.E.,
*, P<0.05 ; **, Pく 0.01 vs. each SLC-1 (+/+).
[0091] 実施例 5 SLC-1 (-/_)マウスのエネルギー消費
自発運動量は、 12週齢時に赤外線行動解析装置 (ABSystem3.04、ニューロサイエ ンス)を用いて測定した。飽食下で馴化後、 2日間測定した。計測は、 0.5秒以上の移 動変化をカウントし、結果は 2日間の明期、あるいは喑期の計測平均値で表示した。 酸素消費の測定には小動物代謝計測システム(model M -5000RQ/06,室町機械) を用いた。マウスを個別にエアタイトチャンバ一〔150W x 150D xl50H (mm)〕に入れ、 エアー流量 0.5_0.8L/minの条件下で、 24時間測定した。餌と水は自由摂取させた。 チャンバ一内外のエアーは 5分 15秒毎に採取し、サンプル中の酸素濃度(%)、ある いは二酸化炭素濃度(%)を測定した。酸素消費量 (VO : ml/min/lOOg BW)、あるい は二酸化炭素排出量 (VCO : ml/min/100g BW)は、チャンバ一内外の各濃度の差 にエアー流量をかけて算出し、マウスの体重 100g当たりに補正した。呼吸商 (Respirat ory quotient: RQ)は、二酸化炭素排出量 (VCO ) /酸素消費量 (VO )の計算式で算 出した。結果は、明期、あるいは喑期の計測平均値で表示した。
SLC-l (-/_)マウスでは、自発運動量は喑期に 37%亢進、また一日量についても 36 %亢進が認められた(図 3A)。酸素消費量も明期、喑期のいずれにおいても有意に 増加していた(図 3B)。三大栄養素 (糖質、タンパク質、および脂質)の代謝割合を反 映する呼吸商に差は認められなかった (データ未掲載)。
[0092] 実施例 6 SLC-l (-/_)マウスの耐糖能試験、およびインスリン感受性試験
耐糖能試験は、以下の方法で実施した。即ち、通常食、あるいは高脂肪食負荷下 で飼育したマウスを用い、 20時間絶食した後に、グルコース(lg/kg)を経口投与し、 0 、 5、 15、 30、 60、および 120分経過時にへパリン採血管(ドラモンドサイェンティフイツ クカンパニー社製)を用いて眼窩採血した。血漿中のグルコース値(ドライケムシステ ム、富士写真フィルム社製)とインスリン値 (マウスインスリンキット、シバヤギ社製)を測 定した。
インスリン感受性試験は、以下の方法で実施した。即ち、通常食、あるいは高脂肪 食負荷下で飼育したマウスを用い、 20時間絶食した後に、インスリン (0.75U/kg、ノボ ノルディスク ファーマ社製)を腹腔内注射した。 0、 15、 30、 60、および 120分経過時 にへパリン採血管(ドラモンドサイエンティフィックカンパニー社製)を用いて眼窩採血 を行い、血漿中のグルコース値(ドライケムシステム、富士写真フィルム社製)を測定 した。
インスリン抵抗性試験(steady state plasma glucose: SSPG法)は、以下の方法で実 施した。即ち、高脂肪食負荷下で飼育したマウスを用い、 20時間絶食した後に、イン スリン(lU/kg、ノボノルディスク ファーマ社製)、グルコース(3g/kg、和光純薬工業 社製)、ェピネフリン(100 g/kg、シグマ アルドリッチ社製)、プロプラノロ一ノレ(5mg /kg、シグマ アルドリッチ社製)の混合液を皮下投与した。血中グルコース値とイン スリン値が定常状態に達した 50、および 75分後に眼窩採血し、血漿中のグルコース 値(ドライケムシステム、富士写真フィルム社製)とインスリン値(マウスインスリンキット 、シバヤギ社製)を測定した。結果は 50分と 75分の平均値で表示した。
16週齢時の耐糖能試験では、糖負荷前後の血漿グルコース値は通常食群、高脂 肪食群ともに SLC-1 (-/")マウスでは SLC-1 (+/+)マウスと比べて差が認められなレヽ 力 血漿インスリン値は低く保たれ(図 4A)、 SLC-l (-/_)マウスではインスリン感受性 が高い成績が得られた。
21週齢時のインスリン感受性試験では、 SLC-1 (-/")マウスは SLC-1 (+/+)マウスに 比べ、インスリン投与後の血漿グルコースは低値を示した(図 4B)。さらに高脂肪食 負荷時の変化を明らかにするために 29週齢時に末梢組織におけるインスリン抵抗性 を評価する試験(SSPG法)を行なった。 SLC-1 (-/_)マウスでは SLC-1 (+/+)マウスに
比べ、 steady state plasma insulin (SSPI)値に差が見られない条件下において、 SSPG 値が有意に低値を示した(図 4C)。
[0093] 実施例 7 SLC-U-/-)マウスの脂肪分解
左右の生殖器周囲白色脂肪組織を摘出後、 2% BSA (Albumin, bovine serum, frac tion V, fatty acid-free,和光純薬工業社製)を含むクレプスリンガー重炭酸塩緩衝液 で洗浄し、それぞれ二分割した。組織片は余剰水分を除去後、秤量し、種々の濃度 のェピネフリン(0、 0.01, 0.03, 0.1、 0.3〃 g/ml、シグマ アルドリッチ社製)と 2% BSA を含むクレプスリンガー重炭酸塩緩衝液 lml中に浸漬した。気相に 95% 0 - 5% CO ガスを吹き込み、 37°C、 80ストローク/分で 3時間振盪した。振盪後、反応液中の遊離 脂肪酸 (NEFA C-テストヮコ一、和光純薬工業社製)を測定した。
SLC-1 (-/")マウスでは SLC-1 (+/+)マウスに比べ、亢進して!/、た(P< 0.01) 1 脂 肪分解を亢進させるェピネフリンを添加した時の反応性は両群間で差は認められな かった(図 5)。
[0094] 実施例 8 KKAyマウス、および KKマウス交雑群の一般性状
SLC-1ワイルド(+/+)マウス系 [KKAy/SLC_l (+/+)、 KK/SLC—1 (+/+) ]と SLC—1 (-/ -)マウス系 [KKAy/SLC-l (-/_)、 KK/SLC-U-/-) ]を 12時間の明喑周期、室温 24土 1°C、湿度 55 ± 5%の条件下で個別に飼育した。飼料は通常食(CE-2、 11.6% kcal f rom fat、 346.8kcal/100g、 日本クレア社製)を与えた。体重は、毎週指定日の午前 8 時より測定した。摂餌量は、 1週間分の摂餌量を測定し、一週間の摂餌量 (g) x餌の力 口リー(kcal/100g) /体重(g) /7 (day)の計算式により、一日の体重 100g当りのカロリー 摂取量に換算した。血液パラメータ一は、飽食下で午前 8時よりへパリン採血管(ドラ モンドサイエンティフィックカンパニー社製)を用いて眼窩採血し、血漿中のダルコ一 ス(ドライケムシステム、富士写真フィルム社製)、トリダリセライド(ドライケムシステム、 富士写真フィルム社製)、総コレステロール(ドライケムシステム、富士写真フィルム社 ト、ゲンザィムテクネ社製)、アディポネクチン (マウスアディポネクチン RIAキット、リン コリサーチ社製)、遊離脂肪酸(nonestified fatty acid: NEFA, NEFA C-テストヮコー 、和光純薬工業社製)と全血中のヘモグロビン Ale (HbAlc:糖化ヘモグロビン、自動
グリコヘモグロビン分析計 HLC_723GHbV Alc2.2、東ソ一社製)を測定した。また、飽 食下で頸動脈より採血後、 2% EDTA溶液を 1/100容量添加して調製した血漿中のコ
)、トータル T4 (DPOトータル T4、三菱化学ャトロン社製)を測定した。
A7SLC-1 (+/+)マウスと KKA7SLC-1 (-/-)マウス間では体重に差は認められ なかったが、 KK/SLC- +/+)マウスと KK/SLC-l (-/_)マウス間では 6週齢以降、 KK /SLC-l (-/_)マウスが有意に低い体重増加を示した(P< 0.05、 6週齢時)(図 6A)。 一日当たりのマウスの摂餌量(kcal/day)は、 KKAy/SLC_l (+/+)マウスと KKAy/SLC_ 1 (-/")マウス、および KK/SLC-1 (+/+)マウスと KK/SLC-1 (-/-)マウスの間で差は認 められなかった(データ未掲載)。しかし、一日当たりの摂餌量を体重補正すると、 A7SLC-1 (+/+)マウスと KKA7SLC-1 (-/-)マウス間では差が認められな力、つたが、 /SLC-1 (-/")マウスは KK/SLC-1 (+/+)マウスに比べ有意に過食を示した(図 6B )。
血漿グルコース値は、 5週齢では KKA7SLC-1 (+/+)マウスと KKA7SLC-1 (-/-)マ ウスとの間に差がなかった(図 7A)。 9週齢以降になると KKAy/SLC-l (+/+)マウスは 高血糖を示したが、 A7SLC-1 (-/_)マウスでは血漿グルコース値の上昇が抑制さ れた(P< 0.05、 16週齢時)(図 7A)。一方、 KK/SLC- +/+)マウスと KK/SLC-U-/- )マウスでは加齢による血漿グルコース値の上昇は認められず、両マウス間にも差は なかった(図 7A)。
血漿トリグリセライド値は、 KKAYマウスと KKマウスのいずれにおいても SLC-1欠損に より有意に低値を示した (P< 0.05、 16週齢時)(図 7B)。
血漿インスリンィ直は、 KKAYマウスと KKマウスのいずれにおいても SLC-1欠損により 減少する傾向を示した(図 7C)。
血漿アディポネクチン値について、 5週齢の KKA7SLC-1 (-/_)マウスは KKAY/SLC -U+/+)マウスに比べて低値であった(P< 0.05) (図 7D)。 9週齢以降では KKAY/SL C-l (+/+)マウスでは低下した力 KKA7SLC-I (-/-)マウスは上昇した(Ρ< 0·01、 1 6週齢時)(図 7D)。一方、 KK/SLC- +/+)マウスと KK/SLC-l (-/_)マウスでは加齢 と共に上昇を示し、両群間に差は認められな力、つた(図 7D)。
血漿レプチン値は、 KKAy/SLC_l (+/+)マウスでは加齢に伴い上昇した。 KKAy/SL C-1 (-/")マウスでは、 9週齢までは KKA7SLC-1 (+/+)マウスに比べて有意に低値を 示した(P< 0.05、 9週齢時)が、その後、加齢に伴い差は認められなくなった(図 7E) 。一方、 KK/SLC- +/+)マウスでは加齢に伴い上昇した力 KK/SLC-l (-/_)マウス では低値を維持していた(P< 0.01、 16週齢時)(図 7E)。
HbAlc値は、糖尿病状態を反映して高値を示した KKAy/SLC_l (+/+)マウスに比べ 、 KKA7SLC-1 (-/-)マウスでは有意に低かった(図 7F)。 KK/SLC-1 (+/+)マウス、 および KK/SLC-1 (-/")マウスでは正常値を示した(図 7F)。
18週齢時の血漿 NEFA値は、 KKA7SLC-1 (+/+)マウスに比べ KKAy/SLC_l (-/-) マウスでは有意に低ぐ /SLC-1 (+/+)マウスと KK/SLC-1 (-/-)マウスでも同様の 傾向であった(図 7G)。
21週齢時の血漿コルチコステロン値は、 KKA7SLC-1 (+/+)マウスでは高値を示し 、 A7SLC-1 (-/-)マウスでは KKA7SLC-1 (+/+)マウスに比べて有意に低値であ つた(図 7H) 。 KK/SLC- +/+)マウスと KK/SLC- -/-)マウス間では差を認めな かった。
血漿トータル T4値は、 4群間に差を認めな力、つた(図 71)。
[0095] 実施例 9 KKAyマウス、および KKマウス交雑群の体脂肪率
17週齢のマウスの体脂肪率を実施例 4と同様に測定した。その結果、 KAVSLC-l (-/-)マウスの体脂肪率は、 KKAy/SLC-l (+/+)マウスに比べ、差が認められなかつ た力 /SLC-1 (-/")マウスの体脂肪率は KK/SLC-1 (+/+)マウスより有意に低かつ た(図 8)。
[0096] 実施例 10 KKAyマウス、および KKマウス交雑群のエネルギー消費
酸素消費量、および自発運動量の測定は実施例 5と同様に実施した。
成熟期(13〜14週齢)の酸素消費量は、明期、および喑期を通じ、 KKAyマウス、お よび KKマウスのいずれにおいても SLC-1欠損により各々の対照マウスより有意な増 加を認めた(図 9A)。この現象は若齢期(5〜6週齢)でも認められた(データ未掲載) 。呼吸商は、成熟期の KKA7SLC-I (-/-)マウスでは対照マウスに比べ、喑期で高く なり、糖質の消費が亢進していることが示唆された(図 9B)。また 7〜9週齢時の自発
運動量は、各々の対照マウスと比較して KKA7SLC-1 (-/")マウス、 KK/SLC-1 (-/-) マウスに増加が認められた(図 9C)。
[0097] 実施例 11 KKAyマウス、および KKマウス交雑群の耐糖能試験
16週齢のマウスを用い、実施例 6と同様に耐糖能試験を実施した。
KKAy群の耐糖能試験実施前の飽食時における血液パラメーターについて、 KKAy /SLC-1 (-/")マウスは KKA7SLC-1 (+/+)マウスに比べ、体重、および血漿レプチン 値に変化は見られな!/、が、血漿グルコース値の有意な低下(32.5%)を示して!/、た( 図 6A、 7A、 7E)。耐糖能試験時の血漿グルコース値は、絶食時 (糖負荷前 0分)に 両マウス間には差を認めな力、つた力 糖負荷後 30分以後は KKA7SLC-1 (-/_)マウ スが低値を示した(図 10A)。 AUC (グルコース曲線下面積、 0〜120分)を求めると、 A7SLC-1 (-/_)マウスでは KKA7SLC-1 (+/+)マウスに比べ、 24.0 %減少していた
。 KKA7SLC-I (-/-)マウスの血漿インスリン値は絶食時 (糖負荷前 0分)、および糖 負荷後 30分で有意な低値を示した(図 10B)。
KK群では飽食時の体重、血漿グルコース値は KK/SLC-1 (+/+)マウスと KK/SLC-1 (-/-)マウス間に差が認められなかった力 S、 KK/SLC-1 (-/_)マウスの血漿レプチン 値は 76.6%有意に低下(Ρ< 0·01)し、血漿インスリン値も 91.1%の低下を示した(図 6 A、 7A、 7C、 7E)。耐糖能試験では糖負荷後、 30、 60、および 120分時の血漿ダルコ 一ス値カ K/SLC-1 (-/")マウスで有意に低く(図 10A)、 AUC (0〜 120分)も 26.2% 有意に低下 (P< 0.01)し、血漿インスリン値も絶食時、および糖負荷後 15分以後で有 意に低値を示した(図 10B)。 KKAy群、および KK群におけるこれらの結果は肥満、糖 尿病発症前の 6週齢時でも同様であった(データ未掲載)。
[0098] 実施例 12 KKAyマウス、および KKマウス交雑群の組織における遺伝子発現
KKAyマウス、および KKマウス交雑群について、糖尿病発症初期の摂食関連遺伝 子、および代謝関連遺伝子の発現変動を real time PCRで調べた。
9週齢のマウス各 5匹より、間脳、生殖器周囲白色脂肪組織、肝臓、および骨格筋を 採取し、 ISOGEN (二ツボンジーン社製)でトータル RNAを抽出後、 RNeasy mini kit (キ ァゲン社製)で精製した。トータノレ RNAは TaqMan Reverse Transcription Reagents ( アプライドバイオシステムズジャパン社製)で逆転写し、 real time PCR (ABI7700、ァプ
ライドバイオシステムズジャパン社製)による発現量解析の铸型にした。測定値は β - actin遺伝子の値で補正した。
間脳において、 KKAy/SLC-l (+/+)マウスでは KK/SLC- +/+)マウスに比べ、内 因性リガンドである melanin-concentrating hormone (MCH)遺伝子の発現増加(31.3 %、 Ρ< 0·05)が見られた力 SLC-1欠損により KKマウスと同程度まで抑制された(図 11A) 0 KK/SLC- +/+)マウスと KK/SLC- -/-)マウス間に差は見られなかった。 K Kマウスに比べて KKAyマウスでは neurop印 tide Y (NPY)遺伝子の発現減少、および p roopiomelanocortine (POMC)遺伝子の発現増加が認められた力 V、ずれのマウスの 遺伝子発現にも SLC-1欠損の影響は見られなかった(図 11A)。 agouti-related pepti de AgRP)退 子、 ghrelm退 子、 corticotropin-releasing hormone (し RH)退 isナの 発現につ!/、ては 4群間で差が認められな力 た(データ未掲載)。
生殖器周囲白色脂肪組織において、 KKA7SLC-1 (-/_)マウスは KKA7SLC-1 (+/ +)マウスに比べ、脂肪細胞から分泌され、摂食調節やエネルギー消費に負に作用す るレブチンの遺伝子発現の有意な減少、また、肥満、糖尿病、動脈硬化抑制に関与 するアディポネクチン遺伝子発現の有意な増加を示した(図 11B)。インスリン抵抗性 に関与する tumor necrosis factor alpha (TNF- a )遺伝子の発現は 41.1 %の減少力 S 認められたが、有意な差ではなかった(データ未掲載)。 KKマウスにおいても KKAyマ ウスの場合と同様の SLC-1欠損の影響が見られたが(図 11B)、さらに脂質代謝や糖 代 s Nこ ¾]与すな peroxisome prolirerator— activated receptor— gamma (PPAR γ ) mfe 子発現量は SLC-1遺伝子欠損により 124.2% (P< 0.05)増加していた(データ未掲載 )。
肝臓において、 KKAyマウスでは KKマウスに比べ、脂質代謝に関与する sterol regul atory element binding protein_lc (SREBP_lc) sナ、 acetyl-CoA carboxylase 1 (A CC1)遺伝子、 fatty acid synthase (FAS)遺伝子の発現が増加傾向にあった。 KKAy /SLC-1 (-/")マウスでは KKA7SLC-1 (+/+)マウスに比べ、 SREBP-lc遺伝子、 ACC 1遺伝子、 FAS遺伝子、および stearoyl CoA desaturase 1 (SCD-1)遺伝子の発現が 減少してレ、た(図 11C)。 /SLC-1 (-/")マウスにお!/、ても KKAy群と同様の傾向が 見られた。
骨格筋において、 AVSLC-l (-/_)マウスでは KKAy/SLC_l (+/+)マウスに比べ 、 uncoupling protein 3 (UCP3)遺伝子、および糖代謝に関与する Aktキナーゼ遺伝 子の発現が増加し、 ACC1遺伝子の発現が減少した(図 11D)。
産業上の利用可能性
[0099] 本発明の SLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物は、 SLC-1の機能の解析などに有 用である。本発明の SLC-1遺伝子発現不全である肥満および/または II型糖尿病モ デル非ヒト哺乳動物は、肥満および/または Π型糖尿病の予防'治療薬の開発など に有用である。本発明によれば、 SLC-1拮抗薬はアディポネクチン産生促進をもたら し得ることから、肥満を伴う糖尿病に対する医薬などとして有用であることが示唆され
[0100] 本発明を好ましい態様を強調して説明してきたが、好ましい態様が変更され得るこ とは当業者にとって自明であろう。本発明は、本発明が本明細書に詳細に記載され た以外の方法で実施され得ることを意図する。したがって、本発明は添付の「請求の 範囲」の精神および範囲に包含されるすべての変更を含むものである。
本出願は、 日本で出願された特願 2006-176978 (出願日:平成 18年 6月 27日)を基 礎としており、そこに開示される内容は本明細書にすべて包含されるものである。また 、ここで述べられた特許および特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内 容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に 組み込まれるものである。