JP2000058085A - 電解質膜およびその製法とそれを用いた固体高分子電解質型燃料電池ならびにその運転方法 - Google Patents

電解質膜およびその製法とそれを用いた固体高分子電解質型燃料電池ならびにその運転方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】保水性が高く、膜抵抗が小さい電解質膜を提供
する。 【解決手段】 電解質膜に三次元連通性の孔を有する多
孔質電解質層を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電解質膜を備える
固体高分子電解質型燃料電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】固体高分子電解質型燃料電池は、アノー
ドに燃料として例えば水素およびカソードに酸化剤とし
て例えば酸素とを供給して電気化学的に反応させて、電
力を得る電気化学装置である。アノードおよびカソード
はガス拡散電極であり、電解質膜の一方の面にアノード
を、もう一方の面にカソードを接合してガス拡散電極−
電解質膜接合体を構成する。ガス拡散電極はガス拡散層
と反応層とからなり、アノードおよびカソードの触媒層
は白金族金属の金属粒子あるいはこれらの粒子を担持し
たカーボン粒子などを触媒として備えており、ガス拡散
層は撥水性を有する多孔質なカーボンペーパーなどが用
いられる。
【0003】このガス拡散電極−電解質膜接合体をガス
供給流路が形成されたガス不透過性の一対のセパレータ
で挟持して基本単位となる単電池を構成する。この単電
池を複数個積層して固体高分子電解質型燃料電池を構成
する。
【0004】固体高分子電解質型燃料電池を作動させる
とアノードでは、 2H2 → 4H+ + 4e− カソードでは、 O2 + 4H+ + 4e− → 2H2O の電気化学反応が進行する。
【0005】固体高分子電解質型燃料電池おいて電解質
は高分子の膜であり、たとえばイオン交換樹脂膜の一種
でありパーフロロスルホン酸樹脂膜などのプロトン伝導
性を示す膜が用いられる。これらの電解質膜は含水状態
でプロトン導電性を示し、アノードで水素から生成した
プロトンは数個の水和水をともなって電解質膜を介して
カソードに伝達されて酸素と反応して水が生成する。し
かし、これらの電解質膜は乾燥状態ではプロトン導電性
を示さず、また電解質膜の含水量が低減するとプロトン
伝導性が低減し、もって膜抵抗が増大する。
【0006】固体高分子電解質型燃料電池を作動する
と、水和水の移動のためにアノード側の電解質膜の含水
量が低下し、電解質膜の抵抗の増大の原因となる。これ
を防止するために、アノードに供給される燃料ガスは水
分を含む状態に加湿して供給される。固体高分子電解質
型燃料電池において、電解質膜の含水量の低減による抵
抗の増大は抵抗過電圧を著しく増大させて出力特性の低
下の原因となるので、高出力化のためには電解質膜の高
い含水量を保つことが重要である。
【0007】電解質膜の含水量を保つために、加湿した
燃料ガスを供給する方法の他に、電解質膜の含水量を保
ための水管理の方法が提案されている。たとえば、膜厚
の薄い電解質膜を用いる方法がある。電解質膜のカソー
ド側では、電極反応で生成する水およびプロトン移動に
ともなう水和水の移動とにより、アノード側に対して含
水量が過剰になる。つまり電解質膜中では含水量の勾配
が生じる。このとき電解質膜中の水の濃度勾配が駆動力
となってカソード側からアノード側への水の逆拡散が起
こる。電解質膜が薄いほど濃度勾配が急になるので水の
逆拡散は多く起こり、カソード側の含水量の低下の抑制
への寄与が大きくなる。
【0008】また、電解質膜の含水量を保つために、電
解質膜の一端あるいは一部を水と接触させて水を供給す
る方法や電解質膜に吸水性を有する繊維等を埋め込んで
その繊維の一端を水に接触させてウィックにより水を供
給する方法など電解質膜への水の供給方法に関する方法
がある。あるいは、電解質膜中に酸化チタンなどの微細
粒子を分散することにより保水性を向上する方法や電解
質膜中に白金の微細粒子を分散ことにより電解質膜を透
過してくる酸素と水素とから水を生成する方法など電解
質膜の含水量を向上する方法が提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、電解質
膜の膜厚を薄くする方法では、膜厚の薄くすれば電解質
膜の強度が低減する。このために固体高分子電解質型燃
料電池を構成しうる強度を維持するために膜厚の低減に
も限界がある。一方、電解質膜の含水量を保つために
は、電解質膜自体の保水力を高めることも必要である。
しかし、水との接触や吸水性の繊維などのウィックを用
いた方法では、十分な水を供給することは困難である。
【0010】電解質膜中に酸化チタンを分散させる方法
では、電解質膜の保水力を向上するには不十分である。
また、電解質膜中に白金を分散させる方法では、製造工
程が煩雑になり、また高価な白金を使用するためにコス
トが高くなる。したがって、固体高分子電解質型燃料電
池の高出力化のために、電解質膜の保水性を向上して膜
抵抗を小さくすること、およびその電解質膜の簡易で低
コストな製造方法が必要である。
【0011】
【課題を解決するための手段】両側の電解質層を除く少
なくともひとつの電解質層が三次元連通性の孔を有する
多孔質電解質である複層電解質膜を形成して、この多孔
質電解質層の孔に水を保持させることにより電解質膜の
含水性の向上を図る。少なくとも一方に面に三次元連通
性の孔を有する多孔質電解質層を形成した電解質膜を多
孔質電解質層が接するように電解質膜と一体にすること
により、両側の電解質層を除く少なくともひとつの電解
質層が三次元連通性の孔を有する多孔質電解質層である
複層電解質膜の製造方法でを提供する。
【0012】両側の電解質層を除く少なくともひとつの
電解質層が三次元連通性の孔を有する多孔質電解質であ
る複層電解質膜を備える固体高分子電解質型燃料電池を
構成し、電解質膜の含水性の向上を図って膜抵抗の増大
を抑制し、もって膜抵抗に起因する抵抗過電圧を低減し
て固体高分子電解質型燃料電池を高出力化するととも
に、燃料や酸化剤を加湿しないで供給した場合でも電解
質膜の含水量を保ち出力を安定させる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の複層電解質膜の製造方法
は、つぎの2つの段階からなる。
【0014】段階1では、電解質膜の少なくとも一方の
面に三次元連通性の孔を有する多孔質電解質層を形成す
る。
【0015】段階2では、作製した三次元連通性の孔を
有する多孔質電解質層を備える電解質膜を多孔性電解質
層が接するように電解質膜に配置して一体にすることに
より、本発明の複層電解質膜を作製する。
【0016】はじめに、段階1について説明する。
【0017】三次元連通性の孔を有する多孔質電解質層
は、つぎのようにして作製できる。すなわち、アルコー
ル類を含有する溶媒に溶解した電解質の溶液の濃度を調
整した後、電解質膜の少なくとも一方の面に層状に塗布
して多孔化処理し、電解質の溶液の塗布層を三次元連通
性の孔を有する多孔質電解質にする。多孔化処理はアル
コール性水酸基以外の極性基を有する有機溶媒に浸漬す
ることであり、この処理により溶解している電解質が固
化して三次元連通性の孔を有する多孔質電解質が形成さ
れる。
【0018】つぎに、三次元連通性の孔を有する多孔質
電解質層の作製の方法の一例を具体的に説明する。
【0019】アルコール類を含有する溶媒に電解質を溶
解した溶液として、たとえば市販のパーフロロスルホン
酸樹脂の溶液である5wt%ナフィオン溶液(米国、ア
ルドリッチ社)を用いることができる。このナフィオン
溶液を濃縮することにより、種々の濃度のナフィオン溶
液を調製する。
【0020】電解質膜として、たとえば市販のパーフロ
ロスルホン酸樹脂膜であるナフィオン112膜(米国、
デュポン社)を用いることができる。この電解質膜を精
製水で1時間煮沸してから室温の精製水に保存する。そ
の後、たとえばエタノールなどのエタノールに浸漬して
電解質膜をさらに膨潤させる.この膨潤した電解質膜を
エタノールから取り出して膜の表面の余分なエタノール
をペーパータオルなどで拭き取り、少なくも片側の面に
上述の濃度を調製したナフィオン溶液をスプレーなどの
手段により塗布して電解質膜−電解質溶液塗布体を形成
した後、アルコール性水酸基以外の極性基を有する有機
溶媒として、たとえば酢酸ブチルに前述の電解質膜−電
解質溶液塗布体を浸漬して放置する。
【0021】その後、酢酸ブチルから電解質膜−電解質
溶液塗布体を取り出して室温で乾燥すると、電解質膜の
少なくとも片側の面に三次元連通性の孔を有する多孔質
電解質層を形成した電解質膜が作製できる。なお、ナフ
ィオンはデュポン社の登録商標である。
【0022】ここではアルコール類を含有する溶媒に電
解質を溶解した溶液として市販のパーフロロスルホン酸
樹脂の溶液である5wt%ナフィオン溶液を用いて説明
したが、本発明はこの溶液に限定されるものでなく、パ
ーフロロスルホン酸樹脂の溶液であればよく、たとえば
フレミオン(旭ガラスの商標)など他のパーフロロスル
ホン酸樹脂の溶液を用いることができ、また、電解質の
溶液の濃度は希釈あるいは濃縮などの方法により任意に
変更することができる。
【0023】電解質の希釈はメタノール、エタノール、
1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール
あるいは2−ブタノールなどの炭素数が4以下のアルコ
ールあるいは水もしくはこれらを混合物を用いることが
できる。濃縮は加熱や真空乾燥などの方法により電解質
溶液の溶媒の一部を除くことができる。
【0024】電解質膜としてナフィオン112を用いて
説明したが、他のパーフロロスルホン酸膜、パーフロロ
カルボン酸膜などフッ素系の電解質膜あるいはスチレン
ビニルベンゼンスルホン酸など炭化水素系の電解質膜な
ど含水状態でプロトン伝導性を示す高分子膜であれば、
いずれの膜を用いても構わない。また、膜状で市販され
ている電解質膜の他に、電解質の溶液から作製したキャ
スティング膜を用いることもできる。ただし、これらの
高分子膜の中では、耐熱性に優れたパーフロロスルホン
酸膜やパーフロロカルボン酸膜などのフッ素系電解質膜
が好ましい。
【0025】電解質膜への電解質溶液の塗布は、スプレ
ー以外の方法としてたとえばドクターブレード法、スク
リーン印刷法などがあり、従来公知の方法を用いること
ができる。
【0026】含水状態の電解質膜を湿潤させるアルコー
ルは、エタノールの他に炭素数が4以下のメタノール、
1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール
あるいは2−ブタノールを用いることもできる。
【0027】アルコール性水酸基以外の極性基を有する
有機溶媒は酢酸ブチルに限定されるものでなく、分子内
にアルコキシカルボニル基を有する炭素鎖の炭素数が1
〜7の有機溶媒、たとえば、ぎ酸プロピル、ぎ酸ブチ
ル、ぎ酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸
イソプロピル、酢酸アリル、酢酸ブチル、酢酸イソブチ
ル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸メ
チル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、ア
クリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブ
チル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、酪酸エチル、イソ
酪酸エチル、メタクリル酸メチル、酪酸プロピル、イソ
酪酸イソプロピル、酢酸2−エトキシエチル、酢酸2−
(2エトキシエトキシ)エチル等の単独若しくは混合
物、又は分子内にエーテル結合を有する炭素鎖の炭素数
が3〜5の有機溶媒、たとえば、ジプロピルエーテル、
ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテ
ル、エチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピ
レングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラ
ン等の単独若しくは混合物、又は分子内にカルボニル基
を有する炭素鎖の炭素数が4〜8の有機溶媒、たとえ
ば、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メ
チルヘキシルケトン、ジプロピルケトン等の単独若しく
は混合物、又は分子内にアミノ基を有する炭素鎖の炭素
数が1〜5の有機溶媒、たとえば、イソプロピルアミ
ン、イソブチルアミン、ターシャルブチルアミン、イソ
ペンチルアミン、ジエチルアミン等の単独若しくは混合
物、又は分子内にカルボキシル基を有する炭素鎖の炭素
数が1〜6の有機溶媒、たとえば、プロピオン酸、吉草
酸、カプロン酸、ヘプタン酸等の単独若しくは混合物、
又はこれらの組み合わせから得られるものを用いること
ができる。
【0028】このようにして作製したの三次元連通性の
孔を有する多孔質電解質層の表面の様子を示した図(電
子顕微鏡写真)の一例を図2に示す。空孔部分は連通し
ており三次元的に形成されており、電解質部分は網状に
連続しており三次元的に形成されている。
【0029】また、図3は、三次元連通性の孔を有する
多孔質電解質層の表面の基本構成の様子を示した模式図
である。1は三次元連通性の孔を有する多孔質電解質層
の電解質部分を、2は三次元連通性の孔を有する多孔質
電解質層の空孔部分を、3は三次元連通性の孔を有する
多孔質電解質層の空孔部分の開口径を、4は三次元連通
性の孔を有する多孔質電解質層の電解質部分の径をそれ
ぞれ示す。
【0030】図2は16wt%ナフィオン溶液を用いた
場合の三次元連通性の孔を有する多孔質電解質層であ
り、三次元連通性の孔を有する多孔質電解質層の空孔部
分の開口径は0.3〜5.0μm、三次元連通性の孔を
有する多孔質電解質層の電解質部分の径は0.2〜1.
0μm、多孔度は70%である。
【0031】電解質膜に塗布するナフィオン溶液の濃度
によって、三次元連通性の孔を有する多孔質電解質層の
網状骨格構造の網目部分の開口径を0.1〜10μmの
範囲、網状骨格構造の骨格部分の径を0.1〜30μm
の範囲、多孔度を10〜90%に範囲に調整することが
できる。電解質膜の面に形成する三次元連通性の孔を有
する多孔質電解質層の厚みは、塗布するナフィオン溶液
の量によって、1〜50μmの範囲で調整することがで
きる。
【0032】つぎに、段階2について説明する。
【0033】両側の電解質層を除く少なくともひとつの
電解質層が三次元連通性の孔を有する多孔質電解質であ
る複層電解質膜は、たとえばつぎのようにして作製でき
る。すなわち、段階1で作製した少なくとも一方の面に
三次元連通性の孔を有する多孔質電解質層を備えた電解
質膜の多孔質電解質層が接するように電解質膜と一体に
する。
【0034】つぎに、両側の電解質層を除く少なくとも
ひとつの電解質層が三次元連通性の孔を有する多孔質電
解質である複層電解質膜の作製の方法の一例を具体的に
説明する。
【0035】段階1で作製した一方の面に三次元連通性
の孔を有する多孔質電解質層を備えた電解質を多孔性電
解質層が接するようにナフィオン112に積層する。こ
の積層体をたとえば、50kg/cm2〜500kg/
cm2、125℃で3分間、加熱圧接して一体に接合す
る。両側がナフィオン112膜であり、これらの間に三
次元連通性の孔を有する多孔質電解質が形成された3層
からなる本発明の複層電解質膜が形成される。この本発
明の複層電解質膜の模式図を図1に示す。
【0036】この説明では、段階1で作製した三次元連
通性の孔を有する多孔質電解質を備える電解質膜は片側
にのみ多孔質電解質を備えているが両面に備えるものを
用いることもできる。この場合、4層からなる表面にも
三次元連通性の孔を有する多孔質電解質を備える本発明
の複層電解質膜が形成される。
【0037】段階1で作製した三次元連通性の孔を有す
る多孔質電解質を備える電解質膜に接合する電解質膜と
してナフィオン112を用いて説明したが、他のパーフ
ロロスルホン酸膜、パーフロロカルボン酸膜などフッ素
系の電解質膜あるいはスチレンビニルベンゼンスルホン
酸など炭化水素系の電解質膜など含水状態でプロトン伝
導性を示す高分子膜であれば、いずれの膜を用いても構
わない。また、膜状で市販されている電解質膜の他に、
電解質の溶液から作製したキャスティング膜を用いるこ
ともできる。
【0038】上述の電解質膜の加熱圧接するときの圧
力、温度および時間は、これらの兼ね合いできまり、場
合に応じて、50kg/cm2〜500kg/cm2 、
100℃〜175℃の範囲で条件が決められる。
【0039】また、作製した本発明の3層の複層電解質
膜に、さらに一方の面に三次元連通性の孔を有する多孔
質電解質層を備えた電解質を多孔性電解質層が接するよ
うに積層して加熱圧接により一体に接合し、図4に示す
ように無孔性の電解質層と多孔性の電解質層とがくり返
し構造をした複層電解質膜を構成することができる。
【0040】このように一方の面に三次元連通性の孔を
有する多孔質電解質層を備えた電解質を任意の回数接合
することを繰り返すことにより、無孔性の電解質層と多
孔性の電解質層とが任意の回数のくり返し構造をした本
発明の複層電解質膜を構成することができる。
【0041】
【実施例】次に、本発明の好適な実施例を図面を参照し
て説明する。
【0042】[実施例1]本発明の複層電解質膜の製造
方法の実施の一例について説明する。図5は、本発明の
複層電解質膜の製造工程の実施の一例を示したフロート
図である。本発明の複層電解質膜の製造は6工程からな
り、図5を用いてそれぞれの工程について具体的に説明
する。
【0043】第一の工程では、電解質溶液の濃度を調製
した。市販の5wt%ナフィオン溶液をサンプル瓶に取
り、撹拌しながら60度に加熱して溶液を16wt%ま
で濃縮した。
【0044】第二の工程では、濃縮したナフィオン溶液
から電解質のキャスティング膜を形成した。間隔を0.
33mmに調整したドクターブレードを用いて16wt
%ナフィオン溶液をアルミ箔に塗布して乾燥し、アルミ
箔上にナフィオンのキャスティング膜を形成した。この
膜の厚みを測定したところ約22μmであり、これを電
解質膜A1とする。
【0045】第三の工程では、電解質膜A1に三次元連
通性の孔を有する多孔質電解質層を形成した。間隔を
0.16mmに調整したドクターブレードを用いて16
wt%ナフィオン溶液を第二の工程で作製したアルミ箔
上の電解質膜A1に塗布し、多孔化処理として酢酸ブチ
ルに10分間浸漬した後、室温で乾燥してアルミ箔上の
電解質膜A1の表面に三次元連通性の孔を有する多孔質
電解質層を形成した。これを電解質膜A2とする。形成
した多孔性の電解質層の厚みは、約17μmであった。
【0046】第四の工程では、電解質膜A2を接合して
複層電解質膜を作製した。アルミ箔上に形成した2枚の
電解質膜A2を多孔性の電解質層が向き合うように積層
する。この積層体をプレス治具に設置し、100kg/
cm2、125℃で3分間加熱圧接して2枚の電解質膜A
2を一体に接合し、両面にアルミ箔が付着した状態の本
発明の複層電解質膜を形成した。
【0047】第五の工程では、作製した複層電解質膜か
らアルミ箔を除去した。作製した複層電解質膜の両面に
はアルミ箔が付着している状態である。これを0.5M
の希硫酸に浸漬し、アルミ箔を溶解して取り除き、本発
明の複層電解質膜を得た。この本発明の複層電解質膜の
厚みは、含水状態で約59μmであった。
【0048】第六の工程では、作製した本発明の複層電
解質膜に前処理を施した。作製した複層電解質膜を別の
0.5Mの希硫酸に移し替えて1時間煮沸した後、精製
水で5回洗浄して電解質膜をプロトン型にする処理を施
し、精製水中に保存した。
【0049】このようにして作製した本発明の複層電解
質膜を複層電解質膜Aとする。
【0050】本発明による複層電解質膜Aを備える固体
高分子電解質型燃料電池を作製した。 以下にその作製
方法を示す.まず、つぎのようにして本発明の複層電解
質膜Aの両面に触媒層を形成した。すなわち、白金を3
0wt%担持したカーボン触媒2.6gに精製水45m
l加え、次いで2−プロパノール45mlを徐々に拡散
しながら加えて白金担持カーボン触媒を水/2−プロパ
ノール混合溶媒に分散し、さらに撹拌器を用いて30分
間混合する。この混合物にPTFEのディスパージョン溶液
(三井デュポンフロロケミカル社製、PTFE固形成分:6
0%)0.5mlを撹拌しながら徐々に加えて添加後3
0分間撹拌した後、5wt%ナフィオン溶液(米国、ア
ルドリッチ社製)17.5mlを撹拌しながら徐々に加
え、さらに30分間撹拌して触媒分散液を作製した。
【0051】スプレーによりこの触媒分散液を直径3c
mの円形状に複層電解質膜Aの両面に塗布し、乾燥して
複層電解質膜Aの両面に触媒層を形成した。この触媒層
の白金触媒の含有量が約0.5mg/cm2になるよう
に触媒分散物を塗布した。
【0052】つぎに、この両面に触媒層を形成した複層
電解質膜Aにガス拡散層として直径3cmに裁断した撥
水性を有するカーボンペーパーを両側に配置して加熱圧
接(120kg/cm2、135℃、5分間)により一
体に接合してガス拡散電極−複層電解質膜接合体Aを作
製した。
【0053】このようにして作製したガス拡散電極−複
層電解質膜接合体Aをガス供給路が形成された金属製の
セパレータで挟持して本発明の固体高分子電解質型燃料
電池Aを構成した。
【0054】この固体高分子電解質型燃料電池をつぎに
条件で作動させて、電流−電圧特性を測定した.燃料ガ
スには純水素を用いて、利用率が70%になる流量で電
池に供給した。酸化ガスには純酸素を用いて、利用率が
50%になる流量で電池に供給した。酸素および水素の
反応ガスはそれぞれ大気圧で供給し、いずれの反応ガス
も加湿しなかった。電池には65℃のクーラントを循環
して、電池温度を一定に保った。
【0055】[実施例2]市販のナフィオン112膜を
精製水で3回洗浄してから3%濃度の過酸化水素水で1
時間煮沸して精製水で回洗浄し、つぎに0.5Mの希硫
酸1時間煮沸してプロトン型に置換した後、精製水で5
回洗浄した。これを電解質膜Bとする。
【0056】この電解質膜Bを備える固体高分子電解質
型燃料電池を以下のようにして作製した。
【0057】はじめに、スプレーにより実施例1で調製
した触媒分散液を直径3cmの円形状に電解質膜Bの両
面に塗布し、乾燥して電解質膜Bの両面に触媒層を形成
した。この触媒層の白金触媒の含有量が約0.5mg/
cm2になるように触媒分散物を塗布した。
【0058】つぎに、この両面に触媒層を形成した電解
質膜Bにガス拡散層として直径3cmに裁断した撥水性
を有するカーボンペーパーを両側に配置して加熱圧接
(120kg/cm2、135℃、5分間)により一体
に接合してガス拡散電極−電解質膜接合体Bを作製し
た。
【0059】このようにして作製したガス拡散電極−電
解質膜接合体Bをガス供給路が形成された金属製のセパ
レータで挟持して本発明の固体高分子電解質型燃料電池
Bを構成した。
【0060】この固体高分子電解質型燃料電池Bを実施
例1と同じ条件で作動させて、電流−電圧特性を測定し
た。
【0061】実施例1および2で作製した固体高分子電
解質型燃料電池の電流−電圧特性を図6に示す。図6か
ら明らかであるように、本発明の複層電解質膜Aを備え
る固体高分子電解質型燃料電池Aは、通常の電解質膜を
備える固体高分子電解質型燃料電池Bより電池電圧が高
い。反応ガスを無加湿運転で作動しているにもかかわら
ず、本発明の複層電解質膜を備える固体高分子電解質型
燃料電池は高出力である。
【0062】内部抵抗計(TSURUGA MODE
L 3562)を用いて、これらの固体高分子電解質型
燃料電池の作動している状態での内部抵抗を測定した。
電流−内部抵抗の関係を図7に示す。固体高分子電解質
型燃料電池Bは電流が増大すると内部抵抗も増大する
が、固体高分子電解質型燃料電池Aは電流が増大しても
内部抵抗の増大はほとんどみられない。固体高分子電解
質型燃料電池Aが備える複層電解質膜は、三次元連通性
の孔を有する多孔質電解質の空孔部分に水が保持されて
電解質膜の含水量が高くなる。このために電解質膜の含
水量の低下に起因する電解質膜の抵抗の増大が抑制され
るものと思われる。
【0063】すなわち、本発明の複層電解質膜を用いる
と、電解質膜の保水性が向上するので電解質膜の膜抵抗
の増大に起因する抵抗過電圧が小さくなり、かつ燃料や
酸化剤のガスを加湿しないで供給しても安定に作動する
固体高分子電解質型燃料電池を提供することができる。
【0064】
【発明の効果】本発明の複層電解質膜は、三次元連通性
の孔を有する多孔質電解質を形成することにより電解質
の保水性が増大する。このために固体高分子電解質型燃
料電池にこの複層電解質膜を用いた場合、無加湿の反応
ガスで作動しても電解質膜の含水量の低減に起因する膜
抵抗の増大を抑制することができ、もって固体高分子電
解質型燃料電池の抵抗過電圧の低減による高出力化を達
成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の中間層に三次元連通性の孔を有する多
孔質電解質層を備えた複層電解質膜の断面を示す模式図
である。
【図2】本発明の三次元連通性の孔を有する多孔質電解
質層の表面性状を示す図である。(電子顕微鏡写真)
【図3】本発明の三次元連通性の孔を有する多孔質電解
質の単位胞を示す模式図である。
【図4】本発明の無孔性の電解質層と三次元連通性の孔
を有する多孔質電解質層とが交互に繰り返す構造を有す
る複層電解質膜の断面を示す模式図である。
【図5】本発明の中間層に三次元連通性の孔を有する多
孔質電解質層を備えた複層電解質膜の作製工程を示す図
である。
【図6】本発明の複層電解質膜A備えた固体高分子電解
質型燃料電池Aおよび公知の電解質膜Bを備えた固体高
分子電解質型燃料電池Bとの電流−電圧特性を示す図で
ある。
【図7】本発明の複層電解質膜A備えた固体高分子電解
質型燃料電池Aおよび公知の電解質膜Bを備えた固体高
分子電解質型燃料電池Bとの電流−内部抵抗の関係を示
す図である。
【符号の説明】
1 三次元連通性の孔を有する多孔質電解質層の電解質
部分 2 三次元連通性の孔を有する多孔質電解質層の空孔部
分 3 三次元連通性の孔を有する多孔質電解質層の空孔部
分の開口径 4 三次元連通性の孔を有する多孔質電解質層の電解質
部分の径 5 三次元連通性の孔を有する多孔質電解質層 6 無孔性の電解質層 7 本発明の複層電解質膜

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 両側の電解質層を除く少なくともひとつ
    の電解質層が三次元連通性の孔を有する多孔質電解質で
    あることを特徴とする複層電解質膜。
  2. 【請求項2】 少なくとも一方の面に三次元連通性の孔
    を有する多孔質電解質層を形成した電解質膜を多孔質電
    解質層が接するように電解質膜に配置して一体にするこ
    とにより、両側の電解質層を除く少なくともひとつの電
    解質層が三次元連通性の孔を有する多孔質電解質である
    ことを特徴とする複層電解質膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1および請求項2記載の複層電解
    質膜を備えることを特徴とする固体高分子電解質型燃料
    電池。
  4. 【請求項4】 燃料もしくは酸化剤あるいはその両方が
    無加湿で供給されることを特徴とする請求項3記載の固
    体高分子電解質型燃料電池の運転方法。
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