JP2000200930A - 圧電体装置及びその製造方法 - Google Patents

圧電体装置及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 圧電体装置の構成において、接着剤による振
動特性の劣化、バラツキを抑え、特性を向上させるこ
と、ならびに、製造工程を簡略化することを課題とす
る。 【解決手段】 基板上に圧電体層とおよそ同一主成分で
あり、同じ結晶構造を有する超微粒子層を形成し、その
超微粒子層上に圧電体層を形成した構造を備えた圧電体
装置を実現する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波モータ、圧
電アクチュエータ、および圧電センサー等に用いられる
圧電体装置およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、圧電アクチュエータは、モータの
微細化、高密度化が可能であるという点で、電磁型モー
タに代わる新しいモータとして、携帯情報機器分野、な
らびに化学、医療分野で注目されている。圧電アクチュ
エータはその駆動に際して電磁ノイズを発生させず、ま
たノイズの影響も受けない。さらに、サブミリメートル
クラスの大きさの機器を作るため、その駆動源として微
小な圧電アクチュエータが求められている。圧電体装置
は、上記の超音波モータ、圧電アクチュエータ等の振動
部分に用いられている。先ず、従来の圧電体装置の構成
を説明する。
【0003】従来の圧電体装置の構造を図14及び図1
5に示す。一般に金属やシリコンなどの基板上の所定の
位置にバルク材の焼結体を加工した圧電体17が設けら
れている。図14に、基板3と圧電体17を接着剤16
を用いて貼り合わされた圧電体装置を示す。圧電体はバ
ルク材の焼結体を所望の大きさ、厚さに研磨加工を施し
たり、グリーンシートから型抜きして熱処理したものを
用いている。このようなバルク材の焼結体、グリーンシ
ートからの成形体では、厚みがおよそ100μm以上の
ものが一般的である。
【0004】一方、接着剤による貼り合わせの他に、ス
パッタ法や印刷法などを用いて、基板上に圧電体を直接
形成する手法がある。図15に直接形成法により作製し
た圧電体装置を示す。通常、スパッタ法やゾルゲル法に
より形成される圧電体の厚みは、数百Å〜数μmであ
り、印刷法では50〜数100μm程度である。また、
いずれの構成においても、圧電体17には電極が設けら
れており、電極を通じて交流電圧が印加されるようにな
っている。
【0005】このような圧電体装置を振動部分に用いた
超音波モータの概略構成を図16に示す。この超音波モ
ータは、ステータ13と移動体7(ロータ)より構成さ
れている。さらに、このステータ13は、一般に弾性材
の振動体6と電極付きの圧電体17を備えており、この
振動体6と圧電体17は接着剤16により貼り合わされ
ている。このような構成の超音波モータでは、圧電体1
7に交流電圧が印加されると、圧電効果によって生じた
力が振動体6に伝播し、ステータ13(振動体6)に加
圧接触している移動体部分7が駆動することとなる。
【0006】上記の説明で代表されるように、圧電体装
置の基本的構成は圧電体と基板を接着剤で貼り合わせた
構成、もしくは基板上に圧電体を直接形成した構成とな
っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
ような構成では、以下のような問題点があった。すなわ
ち、従来のように接着剤を使用した場合、圧電体より発
生した力が伝播する際に接着層で乱反射したり吸収され
てしまい、その結果として、振動部の電気的および機械
的な性能や信頼性を低下させてしまうだけでなく、圧電
体との接着界面における剥離現象も生じさせてしまうと
いう不具合があった。特に、この不具合は、微小構造の
駆動源として圧電体装置の振動部分を用いようとした場
合に、その大きさがサブミリメートルクラスとなるため
に、相対的に接着層の影響が大きくなる。
【0008】このような問題が生じる本質的原因は、接
着層およびその境界面が力学的に不安定な点にある。こ
の問題を解決するために、振動体に圧電体を直接形成す
る方法が近年盛んに研究されてきた。圧電体を直接形成
する製造方法として、スパッタ法や、CVD法が代表的
な製法であるが、寸法の小さい素子を作成できるという
利点の反面、非常に工数がかかるという課題がある。ま
た、アクチュエータの駆動力を出力するためには、圧電
体層を数〜数十μmの厚みに形成する必要があるが、上
記に示す従来法では、数〜数十μmの厚さの膜を形成す
るのは困難であった。
【0009】また、他の製造方法として、インクジェッ
トプリンタヘッドの圧電素子に広く用いられているスク
リーン印刷法がある。この製造方法は圧電体ペーストを
基板に塗布し、乾燥させ、さらに焼成することにより製
造する方法である。しかしながら、1000℃以上の高
温で焼成するため、基板と圧電体ペーストにかかる熱応
力の差により割れが発生したり、耐熱性基板を用いなけ
ればならないという制約がある。
【0010】同じく圧電体を直接形成する製造方法とし
て水熱法が知られている。これはチタン酸ジルコン酸鉛
を主成分とする強誘電体セラミックス(以下、PZTと
称する)の強アルカリ性溶液をオートクレーブ中で反応
させ、チタン、あるいは酸化チタン基板の上にPZTを
形成するものである。ここではPZTを形成できる基板
がチタン、あるいはチタンを含む材料といったように限
定されてしまう。
【0011】そこで、本発明は、これらの問題点を解決
して製造工程を簡略化でき、しかも特性の向上、安定し
た圧電体装置の製造方法および装置を提供することを目
的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明は、圧電体装置の構成において、基板と圧電
体層との間に超微粒子層が形成されるとともに、超微粒
子層が圧電体層の主成分とおよそ同一の主成分であるこ
ととした。また、基板と圧電体層との間に超微粒子層が
形成されるとともに、超微粒子層が圧電体層の結晶構造
とおよそ同一の結晶構造であることとした。
【0013】さらに、超微粒子層と圧電体層がチタンと
ジルコニウムと鉛を有することとした。さらに、超微粒
子層を形成する超微粒子の粒径が1μm以下であること
とした。また、上述した構成の圧電体装置を製造するた
めに、本発明の製造方法は、基板上に超微粒子層を形成
する第1の工程と、超微粒子層上に圧電体層を形成する
第2の工程と、を備えることとした。
【0014】さらに、超微粒子層を形成する第1の工程
が、超微粒子を含んだペースト状の溶液を基板上に塗布
することによって形成することとした。また、超微粒子
層を形成する第1の工程が超微粒子を基板上に噴射堆積
することにより形成されることとした。あるいは、基板
上に超微粒子層を形成する第1の工程と、超微粒子層上
に圧電体を接合する第2の工程と、を備えることとし
た。
【0015】さらに、超微粒子層上に圧電体を接合する
第2の工程において、超微粒子層と圧電体層を接合する
手段として水素結合を用いることとした。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明による圧電体装置は、基板
と圧電体層との間に超微粒子層が形成されるとともに、
超微粒子層が圧電体層の主成分とおよそ同一の主成分で
あることとした。このように超微粒子層と圧電体層の主
成分を同一にすることにより、基板と圧電体層との密着
性を高めるだけでなく、焼成時における圧電体層と接合
層との熱膨張差を減少させる効果がある。
【0017】また、基板と圧電体層との間に超微粒子層
が形成されるとともに、超微粒子層が圧電体層の結晶構
造とおよそ同一の結晶構造であることとした。このよう
に構成により、圧電体層と基板との接合部分に同じ結晶
構造を持つ超微粒子層を介在させることとなり、基板と
圧電体層との密着性を高めることができる。各層の境界
面において同じ結晶構造を有する層同士を接触させるこ
とにより各層を形成する結晶の格子間隔が近くなり格子
間の歪みが少なくなる。したがって接合層で生じていた
圧電振動の吸収、乱反射が起こりにくくなる。
【0018】さらに、超微粒子層と圧電体層がチタンと
ジルコニウムと鉛を有することとした。これは、圧電体
装置に用いられる圧電体の中でも特に優れた圧電特性を
示すPZTの成分であるチタンとジルコニウムと鉛を超
微粒子層と圧電体層の両方に用いることにより、接合に
よる圧電体の振動特性のばらつきおよび特性不良を減少
させる効果がある。
【0019】また、超微粒子層を形成する超微粒子の粒
径が1μm以下であることとした。これは、圧電体の表
面粗さ、うねりに対してより微小な1μm以下の超微粒
子を接合層に用いることにより、基板および圧電体との
接触点を増加させて密着性を上げることができる。さら
に、粒径を小さくすることにより粒子の体積に対する表
面積の割合(比表面積)を増加させることができるた
め、接合層のもつ表面エネルギーが増加し、焼成時の熱
エネルギーの駆動源となる。そのため通常のPZT系の
圧電体を焼成するよりも低温で焼成することができる。
【0020】あるいは、本発明は圧電体装置の製造方法
において、基板上に超微粒子層を形成する第1の工程
と、超微粒子層上に圧電体層を形成する第2の工程と、
を備えることとした。さらに、超微粒子層を形成する第
1の工程が、超微粒子を含んだペースト状の溶液を基板
上に塗布することによって形成することとした。すなわ
ち、接合層にポリビニルアルコールやグリセリンなどの
成形助剤を含んだ超微粒子のペーストを用いることによ
り、成形助剤が超微粒子間をつなぎとめる役割を果たし
焼成後の圧電体層との密着性を上げるだけでなく、十分
な強度を持たせる効果がある。さらに圧電体層をグリー
ンシートから形成した場合、超微粒子のペースト上に圧
電体層のグリーンシートを加圧密着させるとともにペー
ストと圧電体層の同時焼成が可能である。
【0021】また、超微粒子層を形成する第1の工程が
超微粒子を基板上に噴射堆積することにより形成される
こととした。これは、高速で非常に大きな運動エネルギ
ーを持った超微粒子を基板に直接衝突させるため基板と
の密着性を上げることができるとともに、十分な強度を
持った超微粒子層を形成することができる。また、圧電
体層と同じ結晶構造を持ち、主成分が同一である超微粒
子を用いることにより圧電体の振動特性の劣化を防ぐ効
果がある。
【0022】また、粒径およそ0.1μmの超微粒子を
用いることにより気体分子の流れに乗りやすくなるた
め、容易にエアロゾル状態になり得る。すなわち高速で
大きな運動エネルギーを持った超微粒子を噴射堆積する
ことができる。あるいは、本発明による圧電体装置の製
造方法において、基板上に超微粒子層を形成する第1の
工程と、超微粒子層上に圧電体を接合する第2の工程
と、を備えることとした。これは、圧電体と同じ主成分
の超微粒子を基板上に直接形成するため、接着剤を介し
て圧電体を接合するよりも基板との密着性を上げること
ができる。しかも、圧電体層と同じ結晶構造を有する超
微粒子を用いており、接合面において同じ格子間隔を持
った面同士を接合するため、原子レベルでの接合が可能
であり圧電体層との密着性を上げる効果がある。
【0023】また、超微粒子層上に圧電体を接合する第
2の工程において、超微粒子層と圧電体を接合する手段
として水素結合を用いることとした。これは、同じ結晶
構造を有する超微粒子層と圧電体層との接合面に水酸基
を吸着させてその水酸基間の水素結合を利用している。
金属結合や共有結合のように結合に至らしめるための高
温熱処理を必要とせず、さらに結合角や結合距離のフレ
キシビリティが比較的大きいという利点がある。結合に
関与する酸素原子および水素原子の原子間距離は数Å程
度であるため、接合層の厚みは従来の接着剤による接合
層に比べて非常に薄く、圧電体の持つ振動が接合層で吸
収されたり乱反射する問題は極めて少ない。
【0024】
【実施例】以下に、本発明の実施例を図面を基に説明す
る。 (実施例1)図1は、実施例1の圧電体装置の構成を表
す縦断面図である。基板3上の所定の位置に下部電極4
が形成され、その上に圧電体層2と同じ結晶構造を有
し、同一主成分からなる超微粒子を含んだ超微粒子層1
が形成されている。ここでは超微粒子層1はPZTを含
んでいる。さらに、その上にPZT系の圧電体層2を形
成し、その圧電体層2上に上部電極5が形成されてい
る。なお、基板3が下部電極4としても機能する場合
は、基板3上に直接超微粒子層1を設け、超微粒子層1
上に圧電体層2を形成する。
【0025】図14と図15に示した従来の圧電体装置
と比較して、基板と圧電体層の間に接着剤を用いず、圧
電体とおよそ同じ主成分を有する超微粒子層を介してい
るため、介在した超微粒子層において圧電体の振動が妨
げられる可能性は少ない。しかも、圧電体と同一主成分
であり、同じ結晶構造を有する層であるため圧電体層と
の密着性が良い。
【0026】本発明の実施例1における圧電体装置の製
造方法を図8、図9を用いて説明する。圧電体装置の製
造方法の工程を表す模式図を図8に、製造工程のフロー
チャートを図9に示す。はじめに、基板の洗浄工程(工
程A)により洗浄された基板3の表面に蒸着法やスパッ
タ法により、下部電極4を形成する(工程B)。具体的
には、シリコンウエハを洗浄後、中間層Ti膜とSiの
反応を防止する拡散バリア層として約1000Åの熱酸
化膜を形成した。続いて、Pt膜との密着改善層として
中間層にTi膜をスパッタ法を用いて約500Å程度ス
パッタした後、下部電極4となるPt膜をスパッタ法を
用いて約1000〜3000Å程度スパッタした。Ti
膜のスパッタは、アルゴンの流量が11SCCM、RF
パワーが0.2kW、圧力が4mtorrの条件でおこ
なった。Pt膜のスパッタは、アルゴンの流量が120
SCCM、RFパワーが2kW、圧力が4mtorrの
条件でおこなった。ここで、下部電極をPtで作成した
のはPtが高温熱処理によって変質しないためである。
スパッタされたPt膜は顕著な配向を示さないが、比較
的(111)面の配向が強く、下層のTiとの格子間隔
からPZTの配向に適している。
【0027】次いで、超微粒子層の形成工程(工程C)
では、圧電体層と同じ結晶構造を有し、同一主成分から
なる超微粒子のペースト状の溶液を基板3に塗布する方
法を用いて形成した。ここではPZTを含む超微粒子の
ペースト状の溶液を用いた。ペースト状の溶液は粒径1
μm以下からなる圧電体層2と同じPZTを含む粉末原
料に成形助剤としてポリビニルアルコール(以下PVA
と称する)を約1%加え混練、脱泡して調製する。この
ペースト状の溶液を印刷法、あるいはスピンコート法、
ディップ法などを用いて基板3上に均一に塗布し超微粒
子層1を形成した。ここでは成形助剤の配合比、および
混練の仕方によりペースト状の溶液の粘性は調整するこ
とが可能である。したがって得られる超微粒子層の厚み
を数μm〜数十μmに制御することができる。
【0028】次に工程Dにおいて、超微粒層1と同じ結
晶構造を有し同一主成分から成る圧電体の燒結材、ある
いはグリーンシートを加圧密着させて一体で焼成し圧電
体層2を形成する。ここでは、PZTを含むペースト状
の溶液を基板3上に塗布した後、同じくPZTを含む圧
電体の燒結材、あるいは型抜きされたグリーンシートを
加圧密着させた。加圧は0.5〜2kgfでおこない、
これを600〜900℃で0.5〜2時間の条件で大気
雰囲気中にて焼成することにより圧電体層2を形成し
た。作成した圧電体装置において超微粒子層1を含めた
圧電体層2の厚みは約80μmを得た。
【0029】この超微粒子層1を含めた圧電体層2の結
晶構造をX線回折により調べたところ、ペロブスカイト
型構造の結晶ピークが検出された。超微粒子層1のみ形
成したときのX線回折ピークと比較して、より鋭くシャ
ープなピークが観察された。最後に、上部電極形成工程
(工程E)により、この圧電体層2の表面に金電極(上
部電極5)を蒸着法で形成した。この物性を測定したと
ころ、比誘電率1200、電圧歪み定数140pC/N
となる優れた特性を示した。 (実施例2)次に実施例2の圧電体装置を図面に基づい
て説明する。図2は、実施例2の圧電体装置の構成を模
式的に表す縦断面図である。基板3上の所定の位置に下
部電極4が形成され、その上に圧電体層と同一主成分か
らなり、同じ結晶構造を有する超微粒子を基板上に噴射
堆積することにより形成された第1の超微粒子層1aを
備えている。さらに同一の超微粒子からなるペースト状
の溶液を塗布することにより形成された第2の超微粒子
層1bが設けられている。ここでは第1の超微粒子層1
aと第2の超微粒子1bはPZTを含んでいる。さら
に、その上にPZT系の圧電体層2を形成し、その圧電
体層2上に上部電極5が形成されている。なお、基板3
が下部電極4としても機能する場合は、基板3上に直接
第1の超微粒子層1aを設け、超第2の微粒子層1b上
に圧電体層2を形成する。
【0030】図14に示した従来の圧電体装置と比較し
て、基板と圧電体層の間に接着剤を用いず、圧電体とお
よそ同じ主成分を有する超微粒子層を介しているため、
介在した超微粒子層において圧電体の振動が妨げられる
可能性が少ない。しかも、超微粒子の衝突エネルギーを
利用するため、従来に比べても低温で基板上に直接形成
することができる。
【0031】本発明の実施例2における圧電体装置の製
造方法を図10、図11を用いて説明する。圧電体装置
の製造方法の工程を表す模式図を図10に、製造工程の
フローチャートを図11に示す。はじめに、基板の洗浄
工程(工程A)により洗浄された基板3の表面に蒸着法
やスパッタ法により、下部電極4を形成する(工程
B)。具体的には、約1000Å厚の熱酸化膜が形成さ
れたシリコンなどの基板上に中間層となるTi膜をスパ
ッタ法を用いて約500Å程度スパッタした後、下部電
極4となるPt膜をスパッタ法を用いて約1000〜3
000Å程度スパッタした。Ti膜のスパッタは、アル
ゴンの流量が11SCCM、RFパワーが0.2kW、
圧力が4mとrrの条件下でおこなった。Pt膜のスパ
ッタは、アルゴンの流量が120SCCM、RFパワー
が2kW、圧力が4mtorrの条件下でおこなった。
【0032】次いで、工程Cで第1段階として超微粒子
を噴射堆積させて第1の超微粒子層1aを形成し、さら
に工程Dで第2段階として同一の超微粒子からなるペー
スト状の溶液を塗布することにより第2の超微粒子層1
bを形成する。ここでは圧電体層と同一のPZTを含む
超微粒子を用いた。ここで超微粒子層1aと超微粒子層
1bは工程上区別するが、本発明の圧電体装置における
振動部分の構成においては同じ特性を示すものとし、超
微粒子層1として同一層とみなす。
【0033】工程Cにおいて、超微粒子層1aの形成は
超微粒子15を基板3に噴射堆積する方法を用いて形成
した。この噴射堆積法は公知の手法であり、例えば特開
平4−188503号公報や、賀集氏による「超微粒子
のガス・デポジション」(真空Vol.35、No.7、
1992、pp649〜pp653)に開示されてい
る。この手法は、粒径が1μm以下の超微粒子を不活性
ガス(窒素、ヘリウム、アルゴン、水素ガスなど)と混
合してエアロゾル化し、そのエアロゾルをガスの流れを
用いて搬送し、基板に吹き付け堆積させる成膜手法であ
る。
【0034】はじめに、基板3を130〜200℃程度
で加熱し、PZTを含む超微粒子15をN2の不活性ガ
ス流にのせ、基板3の上面に噴射ノズル14を通して高
速で噴射堆積する。この時、基板3をホルダーしたステ
ージの移動速度は1〜125μm/sと変化させること
によって超微粒子層1aの膜厚を調節することができ
る。実施例1では、約125μm/sの成膜速度で同じ
エリアを5回往復させることにより、およそ10μmの
膜厚を得た。
【0035】次いで工程Dにおいて、同じ超微粒子のペ
ースト状の溶液を塗布することにより超微粒子層1bを
形成する工程を示す。ペースト状の溶液は粒径1μm以
下からなる圧電体層2と同じPZTを含む粉末原料に成
形助剤としてポリビニルアルコール(以下PVAと称す
る)を約1%加え混練、脱泡して調製する。このペース
ト状の溶液を印刷法、あるいはスピンコート法、ディッ
プ法などを用いて超微粒子層1aを形成した基板3上に
均一に塗布した。
【0036】次に工程Eにおいて、超微粒子層1aおよ
び超微粒子層1bを形成した基板上に圧電体の燒結材、
あるいはグリーンシートを加圧密着させて一体で焼成し
圧電体層2を形成する。ここでは、超微粒子層1bを形
成した後、同じくPZTを含む圧電体の燒結材、あるい
は型抜きされたグリーンシートを加圧密着させた。加圧
は0.5〜2kgfでおこない、これを600〜900
℃で0.5〜2時間の条件で大気雰囲気中にて焼成する
ことにより圧電体層2を形成した。作成した圧電体装置
において超微粒子層1を含めた圧電体層2の厚みは約8
0μmを得た。
【0037】この超微粒子層1を含めた圧電体層2をX
線回折により結晶構造を調べたところ、ペロブスカイト
型構造の結晶ピークが検出された。超微粒子層1のみ形
成したときのX線回折ピークと比較して、より鋭くシャ
ープなピークが観察された。最後に、上部電極形成工程
(工程F)により、この圧電体層2の表面に金電極(上
部電極5)を蒸着法で形成した。この物性を測定したと
ころ、比誘電率1200、電圧歪み定数150pC/N
となる優れた特性を示した。 (実施例3)次に実施例3の製造方法を図面に基づいて
説明する。装置の構成は図1に示すように、実施例1の
製造方法を用いた場合と同じである。すなわち、基板3
上の所定の位置に下部電極4が形成されており、圧電体
と同じ結晶構造を有し、同一主成分からなる超微粒子を
噴射堆積させることにより形成された超微粒子層1が下
部電極上に設けられている。ここでは超微粒子層1はP
ZTを含む超微粒子を用いて形成されている。さらに、
超微粒子層1とPZT系の圧電体層2が水素結合を用い
て接合されており、その圧電体層2の上面に上部電極5
が形成されている。なお、基板3が下部電極4としても
機能する場合は、基板3上に直接超微粒子層1を設け、
超微粒子層1上に圧電体層2を接合する。
【0038】図14に示した従来の圧電体装置と比較し
て、基板と圧電体層の間に接着剤を用いず、圧電体とお
よそ同じ主成分を有する超微粒子層を介しているため、
介在した超微粒子層において圧電体の振動が妨げられる
可能性が少ない。しかも、超微粒子の衝突エネルギーを
利用するため、従来に比べても低温で基板上に直接形成
することができる。また、超微粒子層と圧電体を水素結
合を用いて接合しているため、従来の接着層に比べて接
合層の厚みが数Å程度と非常に小さい。
【0039】さらに、本発明の実施例3による圧電体装
置の製造方法を図12、図13を用いて詳細に説明す
る。圧電体装置の製造方法の工程を表す模式図を図12
に、製造工程のフローチャートを図13に示す。はじめ
に、基板の洗浄工程(工程A)により洗浄された基板3
の表面に蒸着法やスパッタ法により、下部電極4を形成
する(工程B)。具体的には、約1000Å厚の熱酸化
膜が形成されたシリコンなどの基板上に中間層となるT
i膜をスパッタ法を用いて約500Å程度スパッタした
後、スパッタ法を用いて下部電極4となるPt膜を約1
000〜3000Å程度スパッタした。Ti膜のスパッ
タは、アルゴンの流量が11SCCM、RFパワーが
0.2kW、圧力が4mtorrの条件でおこなった。
Pt膜のスパッタは、アルゴンの流量が120SCC
M、RFパワーが2kW、圧力が4mtorrの条件で
おこなった。
【0040】次いで、超微粒子層の形成工程(工程C)
では、超微粒子15を基板3に噴射堆積する方法を用い
て形成した。ここでは圧電体層と同じPZTを含む超微
粒子を用いた。この手法は、粒径が1μm以下の超微粒
子を不活性ガス(窒素、ヘリウム、アルゴン、水素ガス
など)と混合してエアロゾル化し、そのエアロゾルをガ
スの流れを用いて搬送し、基板に吹き付け堆積させる成
膜手法である。
【0041】はじめに、基板3を130〜200℃程度
で加熱し、PZTを含む超微粒子15をN2の不活性ガ
ス流にのせ、基板3の上面に噴射ノズル14を通して高
速で噴射堆積する。この時、基板3をホルダーしたステ
ージの移動速度は1〜125μm/sと変化させること
によって超微粒子層1の膜厚を調節することができる。
実施例1では、約125μm/sの成膜速度で同じエリ
アを5回往復させることにより、およそ10μmの膜厚
を得た。
【0042】次いで工程Dにおいて、超微粒子層1と圧
電体層2を水素結合を用いて接合する工程を示す。ここ
では圧電体層2にPZT系の圧電体の燒結材を用いた。
圧電体層2は粒度0.05μmのアルミナを用いて平均
面粗度(Ra)がおよそ40nmまで表面研磨をおこな
った。同様に超微粒子層1についても表面研磨をおこな
いRaがおよそ20〜40nmを得た。さらに水酸基の
吸着はドライプロセスによりおこなった。まず、水蒸気
を4×10-2Paまで導入し、イオン源内部で電子衝撃
によりイオン化し、イオン加速電圧300V、イオン電
流密度200μA/cm2の条件で超微粒子層1と圧電体
層2の表面にイオン照射した。イオン照射時間は試料
(ここでは超微粒子層1および圧電体層2)表面に存在
する水素量を測定することにより決定した。各々の表面
に水酸基を吸着させた後、大気中で加圧することにより
密着させて接合した。密着の条件は、400℃において
は30MPa、250℃においては150MPaとし
た。圧電体層2に燒結材ではなく、型抜きされたグリー
ンシートを用いた場合は加圧密着させた後、600〜9
00℃で30分〜2時間の条件下で大気雰囲気中にて焼
成することにより圧電体層2を形成した。接合強度は引
っ張り試験によって評価した。作成した圧電体装置にお
いて超微粒子層1を含めた圧電体層2の厚みは約80μ
mを得た。
【0043】最後に、上部電極形成工程(工程E)によ
り、この圧電体層2の表面に金電極(上部電極5)を蒸
着法で形成した。この物性を測定したところ、比誘電率
1200、電圧歪み定数150pC/Nとなる優れた特
性を示した。次に、実施例1から実施例3の製造方法を
用いて作製した圧電体装置を振動部分に用いた超音波モ
ータの構成と特性について説明する。
【0044】この発明による圧電体装置を振動部分に用
いた超音波モータの基本構造を図17に、振動部分の構
造を図18に示す。超微粒子層1を介して圧電体層2が
設けられた振動体6は金属などからなる弾性部材で作製
されており、中心軸11に打ち込みなどにより支持され
ている。さらに、この中心軸11が案内として組み込ま
れ、上方にある加圧ばね10により振動体6に加圧接触
するように配置されている。ここで2本のリード線12
に時間的位相がほぼ90°異なる信号を印加することに
よって、圧電体層2と振動体6は屈曲運動による機械的
進行波を発生し、振動体6に加圧接触させた移動体7が
回転運動する構成である。実際に本発明の圧電体装置の
構成を持つ超音波モータを製作した。モータの径は4mm
φとし、振動体6の材質にはアルミニウム、またはSU
S304材を用いた。振動体6の形状は、NC旋盤によ
り丸棒原料を加工することで振動体6の形状は形成さ
れ、煽動面も切削加工で仕上げられている。摩擦材8の
材質はカーボンファイバを含有した複合プラスチックを
用いた。
【0045】実施例1から実施例3の製造方法を用いて
作製された超音波モータの特性を以下に示す。図3に従
来の接着剤16による接合方法によって構成された振動
体を備えた超音波モータのアドミッタンス特性を示し、
図4に本実施例の製造方法を用いて形成した超微粒子層
1が設けられた振動体を備えた本発明による超音波モー
タのアドミッタンス特性を示す。ただし、これら図に示
したアドミッタンス特性は移動体を取り外した状態、す
なわち、振動体が上下方向に対してフリーな状態で測定
したものである。対象としたモータ仕様の概略を下記の
表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】図3では、主共振点以外でのスプリアス振
動が見られるのに対して、図4では機械的Q値が高く、
主共振点以外でのスプリアス振動が見られない。これら
のアドミッタンス特性において、スプリアス振動は境界
面での力の乱反射に起因する現象であり、Q値は力が伝
播する際の減衰の度合いを示すものであるから、本発明
によるアクチュエータは従来型のアクチュエータと比較
して、大きく性能向上していることが判明する。
【0048】図5は本発明にかかる超微粒子層を備えた
進行性超音波モータの周波数−回転数特性を示す図表で
ある。駆動電圧は正弦波形で約6Vp-p 、振動体6への
移動体7の加圧力は約10gfでの特性である。本発明
の構成によれば、回転周波数領域も比較的広く、最大回
転数も6000rpm以上と高速なことから、中速〜高
速領域における超音波モータの適用も可能であり、本発
明の有効性を示すものである。
【0049】つぎに、この超音波モータを駆動させた場
合のトルク性能、および耐久性を調査した。図6に超音
波モータのトルク性能を示す効率の測定結果を示し、図
7に耐久性についての測定結果を示す。図中の(a)は
本発明にかかる超微粒子層を設けた振動部分を有する超
音波モータの測定結果を表し、(b)は従来例による振
動部分を有する超音波モータの測定結果を表している。
これらの結果から明らかなように、効率および耐久性と
もに、本発明による振動部分の構造を有する超音波モー
タは従来法に比べ明らかに優れている。このように、超
微粒子層を介して振動体と圧電体を接合した振動部分を
有する超音波モータでは、性能および耐久性が向上する
と言える。
【0050】すなわち、本発明にかかる超微粒子層を設
けた振動部分の構成によれば、径小薄型な超音波モータ
においても高効率化が実現できるようになると言える。
なお、実施例ではPZT系圧電体の組成を純粋な二成分
系としたが、圧電特性を向上させるために、例えば、マ
グネシウムニオブ酸鉛−ジルコン酸鉛−チタン酸鉛のよ
うな三成分系にしたり、また、耐電圧向上のために鉄、
経時変化を小さくする目的でクロム、強度向上のために
アンチモンのような添加物を加えても良い。この場合、
超微粒子粉末原料の組成を目的とする組成に合わせて調
製することにより対応することができる。
【0051】また、実施例において、セラミックス圧電
体の超微粒子をエアロゾル化するための不活性ガスはN
2 、He、Arなどいずれのものも使用できる。なお、
圧電振動子を利用した超音波モータについては定在波方
式と進行波方式が考えられるが、本発明にかかる振動部
分の構造はいずれの方式においても利用することができ
る。
【0052】
【発明の効果】この発明によれば、基板上に圧電体と同
じ結晶構造を有し同一主成分から成る超微粒子層を直接
形成することができるので、従来の接着剤を用いず、超
微粒子層を介してバルクの圧電体と基板を接合すること
ができる。本発明では、下部電極を形成した基板、ある
いは下部電極として機能する基板に超微粒子層を形成し
たことにより、圧電体層と基板の間に圧電特性を低下さ
せる接着層をなくした。これにより、圧電体層より発生
した力が接着層で乱反射したり、吸収されることなく伝
播し、不要なスプリアス振動が発生せず、良好なアドミ
ッタンス特性を示す。さらに、モータの効率、および耐
久性を向上させることができる。特に、マイクロマシン
のような微小構造の駆動源として電気的および機械的性
能を向上させ、信頼性を高めることができる。また、1
μm以下の超微粒子を用いることにより、緻密な膜が構
成されるだけでなく、基板との密着性を良くし、さらに
圧電体層との密着性をあげることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による圧電体装置の構造を示す概略図。
【図2】実施例2による圧電体装置の構造を示す概略図
【図3】従来の超音波モータの特性を表す図表。
【図4】本発明に係る超音波モータの特性を表す図表。
【図5】本発明に係る超音波モータの周波数−回転特性
を表す図表。
【図6】本発明に係る超音波モータの効率を表す図表。
【図7】本発明に係る超音波モータの耐久性を表す図
表。
【図8】本発明の実施例1による製造工程を表す模式
図。
【図9】本発明の実施例1による製造工程を示すフロー
チャート図。
【図10】本発明の実施例2による製造工程を表す模式
図。
【図11】本発明の実施例2による製造工程を示すフロ
ーチャート図。
【図12】本発明の実施例3による製造工程を表す模式
図。
【図13】本発明の実施例3による製造工程を示すフロ
ーチャート図。
【図14】従来の製造方法による圧電体装置を示す概略
図。
【図15】従来の製造方法による圧電体装置を示す概略
図。
【図16】従来の圧電体装置を用いた超音波モータの振
動部分を示す概略図。
【図17】本発明の圧電体装置を用いた超音波モータの
縦断面図。
【図18】本発明による圧電体装置を用いた超音波モー
タの振動部分の構造を示す概略図。
【符号の説明】
1 超微粒子層 1a 第1の超微粒子層 1b 第2の超微粒子層 2 圧電体層 3 基板 4 下部電極 5 上部電極 6 振動体 7 移動体(ロータ) 8 摩擦材 9 固定台 10 加圧ばね 13 ステータ 15 超微粒子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 作原 寿彦 千葉県千葉市美浜区中瀬1丁目8番地 セ イコーインスツルメンツ株式会社内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に圧電体層が設けられた圧電体装
    置において、前記基板と前記圧電体層の間に超微粒子層
    が形成されるとともに、前記超微粒子層が前記圧電体層
    の主成分とおよそ同一の主成分であることを特徴とする
    圧電体装置。
  2. 【請求項2】 基板上に圧電体層が設けられた圧電体装
    置において、前記基板と前記圧電体層との間に超微粒子
    層が形成されるとともに、前記超微粒子層が前記圧電体
    層の結晶構造とおよそ同一の結晶構造であることを特徴
    とする圧電体装置。
  3. 【請求項3】 前記超微粒子層と前記圧電体層の結晶構
    造がおよそ同一であることを特徴とする請求項1に記載
    の圧電体装置。
  4. 【請求項4】 前記超微粒子層と前記圧電体層がチタン
    とジルコニウムと鉛を有することを特徴とする請求項1
    から3のいずれか1項に記載の圧電体装置。
  5. 【請求項5】 前記超微粒子層を形成する超微粒子の粒
    径が1μm以下であることを特徴とする請求項1から4
    のいずれか1項に記載の圧電体装置。
  6. 【請求項6】 基板上に超微粒子層を形成する第1の工
    程と、 前記超微粒子層上に圧電体層を形成する第2の工程と、
    を備えることを特徴とする圧電体装置の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記第1の工程において、超微粒子を含
    んだペースト状の溶液を基板上に塗布することによって
    前記超微粒子層を形成することを特徴とする請求項6記
    載の圧電体装置の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記第1の工程において、超微粒子を基
    板上に噴射堆積することによって前記超微粒子層を形成
    することを特徴とする請求項6記載の圧電体装置の製造
    方法。
  9. 【請求項9】 前記第1の工程が、基板上に超微粒子を
    噴射堆積して第1の超微粒子層を形成する工程と、前記
    第1の超微粒子層に超微粒子を含んだペースト状の溶液
    を塗布する工程と、を有することを特徴とする請求項6
    に記載の圧電体装置の製造方法。
  10. 【請求項10】 圧電体を形成する工程と、 基板上に超微粒子層を形成する工程と、 前記超微粒子層と前記圧電体を接合する工程と、を備え
    ることを特徴とする圧電装置の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記超微粒子層と前記圧電体層を形成
    する工程において、前記超微粒子層と前記圧電体層が水
    素結合を用いて接合されることを特徴とする請求項10
    に記載の圧電体装置の製造方法。
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