JP2000204428A - 高温疲労強度に優れたダイカスト製ピストン及びその製造方法 - Google Patents

高温疲労強度に優れたダイカスト製ピストン及びその製造方法

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JP2000204428A
JP2000204428A JP401899A JP401899A JP2000204428A JP 2000204428 A JP2000204428 A JP 2000204428A JP 401899 A JP401899 A JP 401899A JP 401899 A JP401899 A JP 401899A JP 2000204428 A JP2000204428 A JP 2000204428A
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    • F05CINDEXING SCHEME RELATING TO MATERIALS, MATERIAL PROPERTIES OR MATERIAL CHARACTERISTICS FOR MACHINES, ENGINES OR PUMPS OTHER THAN NON-POSITIVE-DISPLACEMENT MACHINES OR ENGINES
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高温特性及び耐摩耗性に優れたアルミニウム
合金製ピストンをダイカスト法で得る。 【構成】 このダイカスト製ピストンは、Si:11〜
16%,Mg:0.5〜2.0%,Cu:3〜7%,N
i:3〜7%,Fe:0.2〜1.5%,Mn:0.2
〜1.0%,P:0.003〜0.015%,Ca:
0.002%以下を含み、他の不純物が合計量0.2%
以下に規制された組成をもち、平均粒径5〜10μmの
初晶Si及び平均粒径5〜10μmのAl−Ni系及び
Al−Ni−Cu系晶出物が鋳造組織に晶出しており、
吸蔵ガス量が1cc/100g−Al以下,介在物の平
均個数を表わすK10値が0.01個/cm2 以下であ
る。更にTi:0.01〜0.3%,B:0.0001
〜0.03%,Cr:0.01〜0.3%,Zr:0.
01〜0.3%等を含むこともある。真空引き,次いで
酸素吹込みにより雰囲気調整した金型キャビティに溶湯
を圧入することにより鋳造される。鋳造後、膨れの発生
なくT5,T6等の熱処理を施すこともできる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車輌用等の内燃機関に
使用されるダイカスト製ピストン及びその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関に使用されるピストンとして、
軽量化を図るためアルミニウム合金AC8A(Si:1
1.0〜13.0重量%,Cu:0.8〜1.3重量
%,Mg:0.7〜1.3重量%,Ni:0.8〜1.
5重量%)を重力鋳造法したアルミニウム製ピストンが
使用されている。要求特性としても、耐熱性があり、高
温疲労強度も250℃における設定値をクリアーすれば
十分であった。しかし、不完全燃焼なく燃費を向上さ
せ、大出力が得られる直噴型エンジンでは、ピストンヘ
ッドに燃料が直接噴射されるため、従来の内燃機関に比
較して約100℃程度高い高温雰囲気にピストンが曝さ
れる。雰囲気の高温化は、ガソリンを使用したエンジン
に止まらず、ジーゼルエンジンでも同様の傾向にある。
それに伴って、従来の設定値を350℃でも満足する特
性、具体的には350℃における100MPa以上の強
度及び60MPa以上の高温疲労強度(×107 サイク
ル)が要求される。
【0003】アルミニウム合金製ピストンとして、35
0℃での高温特性を満足する材料は種々開発されてい
る。たとえば、超急冷凝固したナノクリスタル材料,セ
ラミックファイバ等を複合化したFRM材料等が挙げら
れるが、何れも製法上から非常に高価な材料となる。そ
こで、生産性が良く、安価なダイカスト鋳造が望まれて
いる。しかし、ダイカスト鋳造によるとき、金型キャビ
ティに残留するN2 ,水蒸気等のガス成分が注入された
アルミニウム合金溶湯に巻き込まれ、ブローホール,ポ
ロシティ等の鋳造欠陥となって製品に移行する。鋳造欠
陥は、フクレや高温疲労クラックの起点となり、ピスト
ンの耐久性を低下させる。また、介在物が高温疲労クラ
ックの原因になることもある。
【0004】ガス成分は、キャビティに残留している空
気の外に、金型内面に塗布された離型剤,プランジャに
塗布された潤滑剤等に由来する水蒸気等もある。ガス成
分は、アルミニウム合金の圧入に先立って金型キャビテ
ィを真空引きする真空ダイカスト法である程度除去でき
るものの、ピストン等の機能材料としてダイカスト製品
を使用するには混入ガス由来の鋳造欠陥が依然として含
まれている。真空ダイカスト法の欠点を解消するものと
して、酸素ダイカスト法が知られている(特開昭50−
21143号公報参照)。酸素ダイカスト法では、キャ
ビティ内のガスを酸素に置換するため、大気圧以上の圧
力で酸素をキャビティに充満させている。キャビティに
送り込まれた酸素は金型の合せ目や注入口から吹き出す
ため、金型の合せ目や注入口から外気がキャビティに侵
入することが防止される。送り込まれた酸素は、溶湯と
反応して微細なAl23 になって製品内に分散し、ダ
イカスト製品に悪影響を及ぼすことはない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】大気圧以上で酸素をキ
ャビティに送り込むことによっても、キャビティからガ
スを完全に除去することは困難である。ガスの残留は、
キャビティが複雑形状をもつ場合に発生しがちである。
すなわち、ピストン鋳造用の金型では、複雑形状のキャ
ビティに設計されるため、酸素が供給されない隘路が生
じ易い。隘路では空気,水蒸気等のガスが酸素と置換さ
れずに残留し、残留ガスがダイカスト製品に取り込ま
れ、鋳造欠陥を発生させる原因になる。また、ダイカス
ト製品にT5処理,T6処理等の熱処理を施して機械的
特性を向上させようとすると、製品内部に取り込まれて
いるガスに起因して熱処理後の製品に膨れが発生してし
まう。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような問
題を解消すべく案出されたものであり、アルミニウム合
金溶湯の圧入に先立って金型のキャビティをガス成分が
完全に除去された雰囲気に調整し、保持処理された所定
組成のアルミニウム合金溶湯を圧入することにより、吸
蔵ガス量を大幅に低減し、疲労破壊の起点となるガス起
因の鋳造欠陥や介在物を抑制し、優れた高温疲労強度を
もつダイカスト製ピストンを得ることを目的とする。
【0007】本発明のダイカスト製ピストンは、その目
的を達成するため、Si:11〜16重量%,Mg:
0.5〜2.0重量%,Cu:3〜7重量%,Ni:3
〜7重量%,Fe:0.2〜1.5重量%,Mn:0.
2〜1.0重量%,P:0.003〜0.015重量
%,Ca:0.002重量%以下を含み、残部が実質的
にAlで、他の不純物が合計量0.2重量%以下に規制
された組成をもち、平均粒径5〜10μmの初晶Si及
び平均粒径5〜10μmのAl−Ni系及びAl−Ni
−Cu系晶出物が鋳造組織に晶出しており、吸蔵ガス量
が1cc/100g−Al以下,介在物の平均個数を表
わすK10値が0.01個/cm2 以下であることを特徴
とする。使用するアルミニウム合金は、更にTi:0.
01〜0.3重量%,B:0.0001〜0.03重量
%,Cr:0.01〜0.3重量%,Zr:0.01〜
0.3重量%の少なくとも1種を含むことができる。
【0008】このダイカスト製ピストンは、真空度10
0ミリバール以下に減圧した後で大気圧以上の圧力で酸
素を吹き込むことにより雰囲気調整した金型のキャビテ
ィに、脱ガス・脱滓処理を経て740〜780℃で保持
処理した所定組成のアルミニウム合金溶湯を650〜7
40℃の鋳造温度で圧入することにより製造される。鋳
造後、170〜230℃に1〜10時間加熱するT5処
理又は470〜500℃に1〜10時間加熱する溶体
化,水焼入れ,次いで170〜230℃に1〜10時間
加熱するT6処理で強度を向上させることもできる。
【0009】
【作用】金型のキャビティを真空度100ミリバール以
下に減圧した後で、大気圧以上の圧力で酸素を吹き込む
と、吹き込まれた酸素は、従来の酸素ダイカスト法に比
較して格段に速い流速で流動し、複雑形状のキャビティ
であってもキャビティの隅々まで十分に行きわたる。そ
のため、金型内面に付着している離型剤や潤滑剤由来の
水蒸気等も酸素流によって十分に洗い出される。このよ
うに金型内部が清浄化されたキャビティにアルミニウム
合金溶湯が圧入されるため、キャビティを充満する合金
溶湯に巻き込まれるガスが大幅に少なくなる。得られた
ダイカスト製品は、ガス巻込みに起因するブローホー
ル,ポロシティ等の鋳造欠陥がなく、介在物も抑制され
ているため、優れた高温疲労強度を示す。高温疲労強度
は、Al−Ni系やAl−Ni−Cu系の晶出物によっ
て更に改善される。更には、熱処理時に膨れ発生がない
ため、T6処理でMg2 Si,CuAl2 等を析出させ
ることによって必要強度を付与できる。たとえば、従来
の重力鋳造法で金型に注湯して製造されるピストンの吸
蔵ガス量が0.2〜1.0cc/100g−Alである
のに対し、普通ダイカスト法で製造した鋳物では吸蔵ガ
ス量が5〜20cc/100g−Alと多く、ピストン
用には適さない。これに対し、本発明法で得られるダイ
カスト製ピストンは、吸蔵ガス量が1.0cc/100
g−Al以下と非常に低くなるため、ピストンとして使
用可能である。
【0010】以下、本発明で使用するアルミニウム合金
の成分,含有量,製造条件等を説明する。Si:11〜16重量% 初晶Siとして晶出し、耐熱性及び耐摩耗性を改善する
合金成分である。また、共晶Siにより熱膨張率を低下
させ、鋳造時の湯流れを向上する上でも有効な成分であ
る。更に、時効処理によってMg2 Siとして析出し、
機械強度を向上させる。このような効果は、11重量%
以上のSi含有量で顕著になる。しかし、16重量%を
超える過剰量のSiが含まれると、疲労破壊の原因とな
る粗大な初晶Siが発生しやすくなる。また、鋳造温度
を730℃以上の高温にする必要が生じる。Mg:0.5〜2.0重量% 時効処理でMg2 Siとして析出し、機械強度を向上さ
せる合金成分であり、0.5重量%以上でMgの添加効
果が顕著になる。しかし、Mg含有量が2.0重量%を
超えると、鋳造時に粗大なMg2 Siが晶出し、疲労強
度が劣化する。他方、0.5重量%未満のMg含有量で
は、時効処理によるMg2 Siの析出量が少なく、強度
が不足する。
【0011】Cu:3〜7重量% マトリックスに固溶し、またNiと共存するときAl3
Ni(Cu)2 等の微細な高融点晶出物となって、高温
強度及び高温疲労強度を改善する合金成分である。ま
た、時効処理でAl2 Cuとして晶出することにより、
材料強度を向上させる作用も呈する。必要な高温強度を
確保する上では、3重量%以上のCu含有量が必要であ
る。しかし、同含有量が7重量%を超えると、伸びを低
下させる粗大なAl2 Cuが晶出しやすくなる。Ni:3〜7重量% マトリックスに固溶したNiは、高温強度,高温疲労強
度及び耐熱性の向上に有効である。固溶しないNi分
は、ダイカストで得られる鋳造組織においては初晶Si
と同様に、Al3 Ni,Al3 Ni2 ,Al3 Ni(C
u)2 等の金属間化合物として晶出し、塊状の晶出物と
なる。高温で安定なこれらの金属間化合物によっても高
温強度が向上し、耐摩耗性が改善される。必要な高温強
度を確保するため、本発明ではNi含有量を3重量%以
上に設定した。しかし、Ni含有量が7重量%を超える
と、溶湯中に初晶Al3 Niが晶出しやすくなり、粗大
に成長したAl3 Niによって高温疲労強度が低下す
る。また、鋳造温度を高温にする必要が生じる。
【0012】Fe:0.2〜1.5重量% ダイカスト時に金型への焼付きを防止すると共に、種々
の金属間化合物として晶出することにより高温強度を向
上させる合金成分であり、0.2重量%以上でFeの添
加効果が顕著になる。しかし、1.5重量%を超える過
剰量のFeが含まれると、Al−Fe系の粗大針状晶出
物が生成し、高温疲労強度を劣化させる。Mn:0.2〜1.0重量% Al−Fe−Mn−Si系の金属間化合物として塊状に
晶出し、高温強度を向上させる合金成分である。また、
Mn添加によってAl−Fe系の粗大針状晶の生成も抑
えられる。このような作用は、0.2重量%以上のMn
含有量で顕著になる。しかし、Mn含有量が1.0重量
%を超えると、Mn系晶出物が粗大になり、却って高温
疲労強度を低下させる。
【0013】P:0.003〜0.015重量% 初晶Siを微細化し、高温疲労強度を低下させる粗大初
晶Siの生成を抑制する。また、耐摩耗性に有効な平均
長さ2〜5μmに共晶Siのサイズを調整する作用を呈
する。初晶Siの微細化作用は、0.003重量%以上
のP含有量で顕著になる。しかし、0.015重量%を
超える過剰量のPが含まれると、湯流れ性が悪化する。Ca:0.002重量%以下 湯流れ性を悪化させ、共晶Siを過度に微細化する作用
を呈する。本発明においては、共晶Siにも耐摩耗性を
負担させていることから、共晶Siが過度に微細化され
ないように、Ca含有量を可能な限り少なくする。Ca
含有量が0.002重量%を超えると、Caで共晶Si
の微細化され始め、耐摩耗性が低下する傾向がみられ
る。
【0014】Ti:0.01〜0.3重量%,B:0.
0001〜0.03重量%,Cr:0.01〜0.3重
量%,Zr:0.01〜0.3重量%の少なくとも1種
以上 Ti,B,Cr及びZrは、必要に応じて添加される成
分であり、何れも耐摩耗性及び高温強度の向上に有効で
ある。Ti,Bは、α−Al鋳造結晶粒を微細化して高
温強度を改善し、0.01重量%以上のTi添加及び
0.0001重量%以上のB添加で微細化効果が顕著に
なる。しかし、0.3重量%を超えるTi添加量や0.
03重量%を超えるB添加量では、TiAl3 ,TiB
2 等の粗大金属間化合物が晶出し、高温疲労強度を低下
させる。Cr:0.01重量%以上で耐摩耗性の向上効
果、Zr:0.01重量%以上で鋳造結晶粒の微細化効
果が顕著になるが、何れも0.3重量%を超える過剰量
では粗大金属間化合物となって高温疲労強度を低下させ
る。
【0015】他の不純物:合計量0.2重量%以下 本発明で使用するアルミニウム合金には、スクラップ地
金等からNa,Sr,Sb,Zn等の不純物が混入す
る。高温雰囲気でシリンダと接触して摺動するピストン
として使用されることから、高温疲労強度に有害な粗大
な酸化物や金属間化合物が製品中に極力混入しないよう
に管理することが重要である。Znは、鋳造割れの発生
原因になることもある。この点、不純物は少ないほど好
ましく、本発明ではNa,Sr,Sb,Zn等の不純物
を合計量で0.2重量%以下に規制した。
【0016】溶湯の調製 所定組成に溶製されたアルミニウム合金溶湯を、N2
Arガス等を吹き込んで脱ガス処理し、脱滓フラックス
を投入した後、740〜780℃に好ましくは30分以
上保持する。保持温度が780を超えるとエネルギ的に
不経済になり、逆に740℃に達しない保持温度では酸
化物等の介在物の浮上分離が十分でなくなる。保持処理
としては、生産性を向上させる上で鋳造炉とは別途の保
持炉を使用することが好ましい。保持処理によって、す
でに原料地金中に生じている金属間化合物が十分に溶湯
に溶し込まれ、疲労クラックの原因が予め除去される。
疲労破壊の起点となる炉滓も、保持処理によって溶湯か
ら浮上分離される。
【0017】保持処理されたアルミニウム合金溶湯は、
降温して650〜740℃になったときに鋳造に供され
る。740℃を超える温度でダイカストすると、金型の
寿命が短くなり、金型に対する溶湯の焼付きが生じ易く
なる。逆に650℃未満の鋳造温度では、金型に圧入さ
れた溶湯の湯流れが悪化し、肉厚不良等の鋳造欠陥が発
生しやすくなる。鋳造温度650〜740℃の比較的低
温に溶湯を保持する時間は、短いほど好ましい。このと
きの保持時間が30分を超えると、Al3 Ni,TiA
3 ,TiB2 ,Mg−Sb等の金属間化合物が溶湯中
に晶出し始める。金属間化合物が成長し、製品中で粗大
金属間化合物となって分散すると、高温疲労破壊の原因
となる。
【0018】金型キャビティの雰囲気調整 保持処理したアルミニウム合金溶湯を金型に圧入するに
先立って、キャビティを真空引きし、次いで大気圧以上
の圧力で酸素を吹き込む。真空度100ミリバール以下
にキャビティを減圧すると、キャビティ内にあるN2
のガス成分が減少する。真空度100ミリバールまで減
圧するため、金型の合せ目等をシール材で充填し、外気
の侵入を防止することが好ましい。次いで、大気圧以上
の圧力で酸素を吹き込むと、吹き込まれた酸素が高速流
となってキャビティの隅々まで行きわたり、金型内面に
塗布された離型剤やプランジャに塗布された潤滑剤等に
由来する水蒸気が完全に酸素流で洗い出され、複雑形状
のキャビティにあっても空気,水蒸気等がない雰囲気と
なる。このとき、キャビティが大気圧以上の圧力に維持
されているため、外気の侵入が抑えられる。雰囲気調整
されたキャビティにアルミニウム合金溶湯が圧入される
ため、キャビティ内でアルミニウム合金溶湯が冷却凝固
する際に空気,水蒸気等の有害ガス成分がアルミニウム
合金に巻き込まれることがない。また、キャビティにあ
る酸素は、アルミニウム合金溶湯と反応し、反応生成物
Al23 が微細粒子としてマトリックスに分散するた
め、得られるダイカスト製品に悪影響を及ぼさない。
【0019】このような雰囲気調整により、ダイカスト
製品に含まれる吸蔵ガス量を1cc/100g−Al以
下に下げることが可能になる。得られたダイカスト製品
は、吸蔵ガス量が大幅に低減しているので、従来のダイ
カスト製品を熱処理したとき製品表面に発生していた膨
れが検出されず、T5処理,T6処理等の熱処理で機械
的強度を向上させることができる。また、高温雰囲気で
ピストンとして使用している際にも、吸蔵ガスの膨張が
なく、長期間にわたり円滑な運転が可能となる。更に、
吸蔵ガス量が極端に少ないことは、高温疲労破壊の起点
となるブローホール,ポロシティ等のないことを意味
し、この点でも高温強度,高温疲労強度,耐摩耗性が要
求されるピストンに適した材料といえる。
【0020】鋳造組織 雰囲気調整されたキャビティに圧入されたアルミニウム
合金は、吸蔵ガス量が極めて少ないダイカスト製ピスト
ンが得られる。しかも、成分調整によって初晶Si,A
l−Ni系,Al−Ni−Cu系の初晶晶出物の平均粒
径を5〜10μmの範囲にしているので、高温雰囲気で
シリンダと接触して運転されるピストンに要求される耐
摩耗性及び高温強度が満足される。平均粒径が10μm
を超える初晶晶出物は高温疲労破壊の亀裂発生原因とな
り、平均粒径5μm未満の初晶晶出物では耐摩耗性が不
足する。
【0021】介在物の平均個数:K10値で0.01個/
cm2 以下 ダイカストで得られた鋳造組織には、Al,Na,C
a,Sr,Mg等の酸化物による酸化皮膜,Al−Si
−Fe系,Al−Ti系,Ti−B系,Mg−Sb系等
の晶出金属間化合物,地金溶解時に溶解しきれない粗大
金属間化合物,炉材,工具等から混入する異物等に由来
する介在物が肉眼や10倍ルーペ等で観察される。ピス
トンとして要求される疲労強度をもたせるためには、粗
大介在物を観察視野において0.01個/cm2 以下に
抑えることが重要である。介在物の平均個数は、鋳造さ
れた合金材料の破断面を10倍ルーペで観察し、カウン
トされた個数を単位面積当りに換算したK10値で表示さ
れる。平均個数の測定に際しては、左右の2破断面を一
片とし、5〜6片を1試料として評価される。本発明で
は、更にその面積25cm2 で1試料のデータとし、7
試料のデータの平均値として介在物の平均個数を算出し
た。このように求められたK10値が0.01個/cm2
以下であると、優れた伸び特性及び疲労強度が合金材料
に付与される。他方、K10値が0.01個/cm2 を超
える場合、必要とする疲労強度が得られない。
【0022】0.01個/cm2 以下のK10値は、次の
方法で達成できる。合金配合時に混入してくるNa,C
a,Sr,Sb,Zn,Pb,Sn,Bi等を配合原料
の選択によって極力抑えると共に、溶製時の酸化後に溶
湯を740〜780℃で好ましくは30分以上高温保持
することにより、混入してきたNa,Ca,Sr,S
b,Zn,Pb,Sn,Bi等を炉滓として溶湯から浮
上分離する。浮上したスラグを溶湯から除去すると、N
a,Ca,Sr,Sb,Zn,Pb,Sn,Bi等の極
めて少ないアルミニウム合金溶湯となる。Mg,Al等
も酸化皮膜となって溶湯表面に浮遊するが、これら酸化
皮膜は、除滓時に溶湯から分離される。更に、鋳造時の
低温保持時間を短くすることにより、Fe,Ti,Sb
等がFeAl3 系,TiAl3 系,Mg−Sb系化合物
として粗大晶出物に成長することを抑制する。炉材や工
具に由来する介在物は、740〜780℃の保持処理で
溶湯から分離される。
【0023】熱処理 ダイカスト製ピストンは、T5処理又はT6処理でMg
2 Si,CuAl2 等を析出させることにより、更に強
度が向上する。T5処理では、鋳物を170〜230℃
に1〜10時間加熱する。T6処理では、470〜50
0℃×1〜10時間の溶体化処理後に水焼入れし、17
0〜230℃×1〜10時間で時効処理する。焼入れに
際しては、常温〜80℃の水が使用される。この熱処理
条件を外れると、十分な処理効果が得られず、或いは熱
処理コストが高くなる。T6処理は、溶体化を伴うこと
から処理コストが高くなるが、より高い機械強度が得ら
れる。熱処理される鋳物は、金型キャビティの雰囲気調
整によって吸蔵ガス量が極めて低く抑えられているた
め、熱処理時の加熱でガス成分が膨張して膨れを発生さ
せることがない。この点は、従来のダイカスト製品と大
きく相違するところである。また、要求される設計値を
満足する限り、強度は若干低下するものの、時効処理温
度を高くして時効析出による寸法の歪みを抑え、機械加
工量も少なくする寸法安定化処理も採用できる。この場
合の時効条件は、230〜350℃×1〜5時間に設定
される。この時効条件は、本発明ピストンの最高使用温
度が350℃であることを考慮すると、T5処理,T6
処理の時効条件としても使用可能である。
【0024】
【実施例】回転ロータからN2 ガスを30分噴出させ、
成分調整したアルミニウム合金溶湯を脱ガス処理した。
次いで、脱滓フラックスを用いて脱滓処理し、750℃
に45分間保持することにより溶湯から介在物を十分に
浮上分離させ、溶湯表面に浮遊している滓を除去した。
調製されたアルミニウム合金溶湯は、Si:12.6重
量%,Cu:4.2重量%,Mg:1.2重量%,N
i:4.5重量%,Fe:0.51重量%,Mn:0.
35重量%,P:0.007重量%,Ca:0.001
重量%,Ti:0.02重量%,B:0.0001重量
%,Cr:0.08重量%,Zr:0.05重量%,N
a<0.001重量%,Sr<0.001重量%,Sb
<0.001重量%,Zn:0.03重量%,残部が不
純物を除きAlの組成をもっていた。
【0025】アルミニウム合金溶湯が660℃に降温し
たとき、ダイカスト金型に鋳込み、図1に示す形状をも
ち外径84mm,高さ72mmのピストンを製造した。
なお、鋳造に先立って200℃に加熱した金型の内面に
離型剤を塗布し、キャビティを吸引量700ミリバール
/秒で真空引きして真空度75ミリバールに減圧し、次
いで1200ミリバールの圧力で酸素を吹き込んでオー
バーフローさせることにより雰囲気調整した。また、ア
ルミニウム合金溶湯をキャビティに圧入するプランジャ
にも潤滑剤を塗布した。雰囲気調整されたキャビティに
鋳込まれたアルミニウム合金が冷却凝固した後、製品で
あるピストンを金型から鋳物を取り出した。得られた製
品から試験片を切り出し、成分分析すると共に、ミクロ
組織を観察し、吸蔵ガス量及び介在物の個数を測定し
た。また、鋳造後の製品に220℃×6時間加熱のT5
処理を施した後、機械的性質を調査した。吸蔵ガス量
は、ランズレー法で測定した。
【0026】介在物の個数測定では、鋳造されたピスト
ンから切り出された高さ0.5cm,長さ5cmの長尺
厚板にノッチを入れて破断し、肉眼及び10倍ルーペで
1試料につき0.5cm×5cmの10破断面(2
面)、すなわち合計で25cm2の面積を観察して1試
料のデータとし、7試料のデータの平均値として介在物
の個数をカウントし、カウント数を1cm2 に換算する
ことによりK10値を算出した。介在物は、大半が酸化物
系であり、0.1〜3mm程度の介在物が黒みがかった
色調を呈していた。調査結果を表1に示す。なお、比較
のため、重力鋳造法で鋳造する以外は同じ条件下で製造
したピストン(比較例1),780℃で溶解したアルミ
ニウム合金溶湯を脱ガス・脱滓処理した後で保持処理す
ることなく、660℃に下がったときキャビティが雰囲
気調整された金型に鋳込んで製造したピストン(比較例
2)についても同様に調査した。
【0027】比較例1は、同じ条件下で調製したアルミ
ニウム合金溶湯から作られたものであるため介在物の個
数はほぼ同じであったが、冷却速度が遅い重力鋳造法で
製造されたことから、初晶Siが平均粒径で16μm,
Al−Ni系,Al−Ni−Cu系晶出物が平均粒径で
35μmと大きな鋳造組織をもっていた。粗大な晶出物
のため、高温の機械的性質が劣っていた。ただし、吸蔵
ガス量は、ダイカスト法で製造した本発明例及び比較例
2よりも若干少なかった。比較例2では、介在物の浮上
分離させる保持処理を施さなかったため、得られたダイ
カスト製品に多数の介在物が分散した。また、吸蔵ガス
量は低いものの、本発明例との比較で高温の機械的性質
が劣っていた。これに対し、本発明例では、介在物が少
なく適正な大きさの晶出物が分散した組織をもってい
た。吸蔵ガス量は、ダイカスト法の1種であるにも拘わ
らず、重力鋳造で製造した比較例1とほぼ同じ低い値を
示した。このようなことから、重力鋳造法よりも格段に
生産性が高いダイカスト法により、350℃での引張強
さが100MPa以上,高温疲労強度(×107 サイク
ル)が60MPa以上となり、高温雰囲気で稼動する直
噴型エンジンのピストンとして十分使用できることが判
った。
【0028】
【0029】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のダイカ
スト製ピストンは、ダイカスト法で製造されたものであ
るにも拘わらず、吸蔵ガス量が極めて低く抑えられてい
るため、疲労破壊の起点となるブローホール,ポロシテ
ィ等の鋳造欠陥がなく、また膨れの発生なく熱処理で強
度を向上させることもできる。このようにして、生産性
に優れたダイカスト法で製造できることから、高温雰囲
気で稼動される直噴型エンジンを始めとする各種内燃機
関に使用され、高温強度,高温疲労強度及び耐摩耗性に
優れたダイカスト製ピストンが安価に提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例で製造したピストン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02F 3/00 F02F 3/00 G F16J 1/01 F16J 1/01 // C22F 1/00 601 C22F 1/00 601 602 602 611 611 650 650D 651 651B 681 681 691 691B 691C 692 692A (72)発明者 織田 和宏 静岡県庵原郡蒲原町蒲原1丁目34番1号 日本軽金属株式会社グループ技術センター 内 Fターム(参考) 3J044 AA02 BA04 CA40 EA01 4E093 UA06

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si:11〜16重量%,Mg:0.5
    〜2.0重量%,Cu:3〜7重量%,Ni:3〜7重
    量%,Fe:0.2〜1.5重量%,Mn:0.2〜
    1.0重量%,P:0.003〜0.015重量%,C
    a:0.002重量%以下を含み、残部が実質的にAl
    で、他の不純物が合計量0.2重量%以下に規制された
    組成をもち、平均粒径5〜10μmの初晶Si及び平均
    粒径5〜10μmのAl−Ni系及びAl−Ni−Cu
    系晶出物が鋳造組織に晶出しており、吸蔵ガス量が1c
    c/100g−Al以下,介在物の平均個数を表わすK
    1 0 値が0.01個/cm2 以下である高温疲労強度に
    優れたダイカスト製ピストン。
  2. 【請求項2】 更にTi:0.01〜0.3重量%,
    B:0.0001〜0.03重量%,Cr:0.01〜
    0.3重量%,Zr:0.01〜0.3重量%の少なく
    とも1種を含む請求項1記載の高温疲労強度に優れたダ
    イカスト製ピストン。
  3. 【請求項3】 真空度100ミリバール以下に減圧した
    後で大気圧以上の圧力で酸素を吹き込むことにより雰囲
    気調整した金型のキャビティに、脱ガス・脱滓処理を経
    て740〜780℃で保持処理した請求項1又は2の組
    成をもつアルミニウム合金溶湯を650〜740℃の鋳
    造温度で圧入することを特徴とする高温疲労強度に優れ
    たダイカスト製ピストンの製造方法。
  4. 【請求項4】 鋳造後、170〜230℃に1〜10時
    間加熱する時効処理を施す請求項3記載の高温疲労強度
    に優れたダイカスト製ピストンの製造方法。
  5. 【請求項5】 鋳造後、470〜500℃に1〜10時
    間加熱する溶体化処理,水焼入れ,次いで170〜23
    0℃に1〜10時間加熱する時効処理を施す請求項3記
    載の高温疲労強度に優れたダイカスト製ピストンの製造
    方法。
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