JP2000204428A - 高温疲労強度に優れたダイカスト製ピストン及びその製造方法 - Google Patents
高温疲労強度に優れたダイカスト製ピストン及びその製造方法Info
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Abstract
合金製ピストンをダイカスト法で得る。 【構成】 このダイカスト製ピストンは、Si:11〜
16%,Mg:0.5〜2.0%,Cu:3〜7%,N
i:3〜7%,Fe:0.2〜1.5%,Mn:0.2
〜1.0%,P:0.003〜0.015%,Ca:
0.002%以下を含み、他の不純物が合計量0.2%
以下に規制された組成をもち、平均粒径5〜10μmの
初晶Si及び平均粒径5〜10μmのAl−Ni系及び
Al−Ni−Cu系晶出物が鋳造組織に晶出しており、
吸蔵ガス量が1cc/100g−Al以下,介在物の平
均個数を表わすK10値が0.01個/cm2 以下であ
る。更にTi:0.01〜0.3%,B:0.0001
〜0.03%,Cr:0.01〜0.3%,Zr:0.
01〜0.3%等を含むこともある。真空引き,次いで
酸素吹込みにより雰囲気調整した金型キャビティに溶湯
を圧入することにより鋳造される。鋳造後、膨れの発生
なくT5,T6等の熱処理を施すこともできる。
Description
使用されるダイカスト製ピストン及びその製造方法に関
する。
軽量化を図るためアルミニウム合金AC8A(Si:1
1.0〜13.0重量%,Cu:0.8〜1.3重量
%,Mg:0.7〜1.3重量%,Ni:0.8〜1.
5重量%)を重力鋳造法したアルミニウム製ピストンが
使用されている。要求特性としても、耐熱性があり、高
温疲労強度も250℃における設定値をクリアーすれば
十分であった。しかし、不完全燃焼なく燃費を向上さ
せ、大出力が得られる直噴型エンジンでは、ピストンヘ
ッドに燃料が直接噴射されるため、従来の内燃機関に比
較して約100℃程度高い高温雰囲気にピストンが曝さ
れる。雰囲気の高温化は、ガソリンを使用したエンジン
に止まらず、ジーゼルエンジンでも同様の傾向にある。
それに伴って、従来の設定値を350℃でも満足する特
性、具体的には350℃における100MPa以上の強
度及び60MPa以上の高温疲労強度(×107 サイク
ル)が要求される。
0℃での高温特性を満足する材料は種々開発されてい
る。たとえば、超急冷凝固したナノクリスタル材料,セ
ラミックファイバ等を複合化したFRM材料等が挙げら
れるが、何れも製法上から非常に高価な材料となる。そ
こで、生産性が良く、安価なダイカスト鋳造が望まれて
いる。しかし、ダイカスト鋳造によるとき、金型キャビ
ティに残留するN2 ,水蒸気等のガス成分が注入された
アルミニウム合金溶湯に巻き込まれ、ブローホール,ポ
ロシティ等の鋳造欠陥となって製品に移行する。鋳造欠
陥は、フクレや高温疲労クラックの起点となり、ピスト
ンの耐久性を低下させる。また、介在物が高温疲労クラ
ックの原因になることもある。
気の外に、金型内面に塗布された離型剤,プランジャに
塗布された潤滑剤等に由来する水蒸気等もある。ガス成
分は、アルミニウム合金の圧入に先立って金型キャビテ
ィを真空引きする真空ダイカスト法である程度除去でき
るものの、ピストン等の機能材料としてダイカスト製品
を使用するには混入ガス由来の鋳造欠陥が依然として含
まれている。真空ダイカスト法の欠点を解消するものと
して、酸素ダイカスト法が知られている(特開昭50−
21143号公報参照)。酸素ダイカスト法では、キャ
ビティ内のガスを酸素に置換するため、大気圧以上の圧
力で酸素をキャビティに充満させている。キャビティに
送り込まれた酸素は金型の合せ目や注入口から吹き出す
ため、金型の合せ目や注入口から外気がキャビティに侵
入することが防止される。送り込まれた酸素は、溶湯と
反応して微細なAl2 O3 になって製品内に分散し、ダ
イカスト製品に悪影響を及ぼすことはない。
ャビティに送り込むことによっても、キャビティからガ
スを完全に除去することは困難である。ガスの残留は、
キャビティが複雑形状をもつ場合に発生しがちである。
すなわち、ピストン鋳造用の金型では、複雑形状のキャ
ビティに設計されるため、酸素が供給されない隘路が生
じ易い。隘路では空気,水蒸気等のガスが酸素と置換さ
れずに残留し、残留ガスがダイカスト製品に取り込ま
れ、鋳造欠陥を発生させる原因になる。また、ダイカス
ト製品にT5処理,T6処理等の熱処理を施して機械的
特性を向上させようとすると、製品内部に取り込まれて
いるガスに起因して熱処理後の製品に膨れが発生してし
まう。
題を解消すべく案出されたものであり、アルミニウム合
金溶湯の圧入に先立って金型のキャビティをガス成分が
完全に除去された雰囲気に調整し、保持処理された所定
組成のアルミニウム合金溶湯を圧入することにより、吸
蔵ガス量を大幅に低減し、疲労破壊の起点となるガス起
因の鋳造欠陥や介在物を抑制し、優れた高温疲労強度を
もつダイカスト製ピストンを得ることを目的とする。
的を達成するため、Si:11〜16重量%,Mg:
0.5〜2.0重量%,Cu:3〜7重量%,Ni:3
〜7重量%,Fe:0.2〜1.5重量%,Mn:0.
2〜1.0重量%,P:0.003〜0.015重量
%,Ca:0.002重量%以下を含み、残部が実質的
にAlで、他の不純物が合計量0.2重量%以下に規制
された組成をもち、平均粒径5〜10μmの初晶Si及
び平均粒径5〜10μmのAl−Ni系及びAl−Ni
−Cu系晶出物が鋳造組織に晶出しており、吸蔵ガス量
が1cc/100g−Al以下,介在物の平均個数を表
わすK10値が0.01個/cm2 以下であることを特徴
とする。使用するアルミニウム合金は、更にTi:0.
01〜0.3重量%,B:0.0001〜0.03重量
%,Cr:0.01〜0.3重量%,Zr:0.01〜
0.3重量%の少なくとも1種を含むことができる。
0ミリバール以下に減圧した後で大気圧以上の圧力で酸
素を吹き込むことにより雰囲気調整した金型のキャビテ
ィに、脱ガス・脱滓処理を経て740〜780℃で保持
処理した所定組成のアルミニウム合金溶湯を650〜7
40℃の鋳造温度で圧入することにより製造される。鋳
造後、170〜230℃に1〜10時間加熱するT5処
理又は470〜500℃に1〜10時間加熱する溶体
化,水焼入れ,次いで170〜230℃に1〜10時間
加熱するT6処理で強度を向上させることもできる。
下に減圧した後で、大気圧以上の圧力で酸素を吹き込む
と、吹き込まれた酸素は、従来の酸素ダイカスト法に比
較して格段に速い流速で流動し、複雑形状のキャビティ
であってもキャビティの隅々まで十分に行きわたる。そ
のため、金型内面に付着している離型剤や潤滑剤由来の
水蒸気等も酸素流によって十分に洗い出される。このよ
うに金型内部が清浄化されたキャビティにアルミニウム
合金溶湯が圧入されるため、キャビティを充満する合金
溶湯に巻き込まれるガスが大幅に少なくなる。得られた
ダイカスト製品は、ガス巻込みに起因するブローホー
ル,ポロシティ等の鋳造欠陥がなく、介在物も抑制され
ているため、優れた高温疲労強度を示す。高温疲労強度
は、Al−Ni系やAl−Ni−Cu系の晶出物によっ
て更に改善される。更には、熱処理時に膨れ発生がない
ため、T6処理でMg2 Si,CuAl2 等を析出させ
ることによって必要強度を付与できる。たとえば、従来
の重力鋳造法で金型に注湯して製造されるピストンの吸
蔵ガス量が0.2〜1.0cc/100g−Alである
のに対し、普通ダイカスト法で製造した鋳物では吸蔵ガ
ス量が5〜20cc/100g−Alと多く、ピストン
用には適さない。これに対し、本発明法で得られるダイ
カスト製ピストンは、吸蔵ガス量が1.0cc/100
g−Al以下と非常に低くなるため、ピストンとして使
用可能である。
の成分,含有量,製造条件等を説明する。Si:11〜16重量% 初晶Siとして晶出し、耐熱性及び耐摩耗性を改善する
合金成分である。また、共晶Siにより熱膨張率を低下
させ、鋳造時の湯流れを向上する上でも有効な成分であ
る。更に、時効処理によってMg2 Siとして析出し、
機械強度を向上させる。このような効果は、11重量%
以上のSi含有量で顕著になる。しかし、16重量%を
超える過剰量のSiが含まれると、疲労破壊の原因とな
る粗大な初晶Siが発生しやすくなる。また、鋳造温度
を730℃以上の高温にする必要が生じる。Mg:0.5〜2.0重量% 時効処理でMg2 Siとして析出し、機械強度を向上さ
せる合金成分であり、0.5重量%以上でMgの添加効
果が顕著になる。しかし、Mg含有量が2.0重量%を
超えると、鋳造時に粗大なMg2 Siが晶出し、疲労強
度が劣化する。他方、0.5重量%未満のMg含有量で
は、時効処理によるMg2 Siの析出量が少なく、強度
が不足する。
Ni(Cu)2 等の微細な高融点晶出物となって、高温
強度及び高温疲労強度を改善する合金成分である。ま
た、時効処理でAl2 Cuとして晶出することにより、
材料強度を向上させる作用も呈する。必要な高温強度を
確保する上では、3重量%以上のCu含有量が必要であ
る。しかし、同含有量が7重量%を超えると、伸びを低
下させる粗大なAl2 Cuが晶出しやすくなる。Ni:3〜7重量% マトリックスに固溶したNiは、高温強度,高温疲労強
度及び耐熱性の向上に有効である。固溶しないNi分
は、ダイカストで得られる鋳造組織においては初晶Si
と同様に、Al3 Ni,Al3 Ni2 ,Al3 Ni(C
u)2 等の金属間化合物として晶出し、塊状の晶出物と
なる。高温で安定なこれらの金属間化合物によっても高
温強度が向上し、耐摩耗性が改善される。必要な高温強
度を確保するため、本発明ではNi含有量を3重量%以
上に設定した。しかし、Ni含有量が7重量%を超える
と、溶湯中に初晶Al3 Niが晶出しやすくなり、粗大
に成長したAl3 Niによって高温疲労強度が低下す
る。また、鋳造温度を高温にする必要が生じる。
の金属間化合物として晶出することにより高温強度を向
上させる合金成分であり、0.2重量%以上でFeの添
加効果が顕著になる。しかし、1.5重量%を超える過
剰量のFeが含まれると、Al−Fe系の粗大針状晶出
物が生成し、高温疲労強度を劣化させる。Mn:0.2〜1.0重量% Al−Fe−Mn−Si系の金属間化合物として塊状に
晶出し、高温強度を向上させる合金成分である。また、
Mn添加によってAl−Fe系の粗大針状晶の生成も抑
えられる。このような作用は、0.2重量%以上のMn
含有量で顕著になる。しかし、Mn含有量が1.0重量
%を超えると、Mn系晶出物が粗大になり、却って高温
疲労強度を低下させる。
晶Siの生成を抑制する。また、耐摩耗性に有効な平均
長さ2〜5μmに共晶Siのサイズを調整する作用を呈
する。初晶Siの微細化作用は、0.003重量%以上
のP含有量で顕著になる。しかし、0.015重量%を
超える過剰量のPが含まれると、湯流れ性が悪化する。Ca:0.002重量%以下 湯流れ性を悪化させ、共晶Siを過度に微細化する作用
を呈する。本発明においては、共晶Siにも耐摩耗性を
負担させていることから、共晶Siが過度に微細化され
ないように、Ca含有量を可能な限り少なくする。Ca
含有量が0.002重量%を超えると、Caで共晶Si
の微細化され始め、耐摩耗性が低下する傾向がみられ
る。
0001〜0.03重量%,Cr:0.01〜0.3重
量%,Zr:0.01〜0.3重量%の少なくとも1種
以上 Ti,B,Cr及びZrは、必要に応じて添加される成
分であり、何れも耐摩耗性及び高温強度の向上に有効で
ある。Ti,Bは、α−Al鋳造結晶粒を微細化して高
温強度を改善し、0.01重量%以上のTi添加及び
0.0001重量%以上のB添加で微細化効果が顕著に
なる。しかし、0.3重量%を超えるTi添加量や0.
03重量%を超えるB添加量では、TiAl3 ,TiB
2 等の粗大金属間化合物が晶出し、高温疲労強度を低下
させる。Cr:0.01重量%以上で耐摩耗性の向上効
果、Zr:0.01重量%以上で鋳造結晶粒の微細化効
果が顕著になるが、何れも0.3重量%を超える過剰量
では粗大金属間化合物となって高温疲労強度を低下させ
る。
金等からNa,Sr,Sb,Zn等の不純物が混入す
る。高温雰囲気でシリンダと接触して摺動するピストン
として使用されることから、高温疲労強度に有害な粗大
な酸化物や金属間化合物が製品中に極力混入しないよう
に管理することが重要である。Znは、鋳造割れの発生
原因になることもある。この点、不純物は少ないほど好
ましく、本発明ではNa,Sr,Sb,Zn等の不純物
を合計量で0.2重量%以下に規制した。
Arガス等を吹き込んで脱ガス処理し、脱滓フラックス
を投入した後、740〜780℃に好ましくは30分以
上保持する。保持温度が780を超えるとエネルギ的に
不経済になり、逆に740℃に達しない保持温度では酸
化物等の介在物の浮上分離が十分でなくなる。保持処理
としては、生産性を向上させる上で鋳造炉とは別途の保
持炉を使用することが好ましい。保持処理によって、す
でに原料地金中に生じている金属間化合物が十分に溶湯
に溶し込まれ、疲労クラックの原因が予め除去される。
疲労破壊の起点となる炉滓も、保持処理によって溶湯か
ら浮上分離される。
降温して650〜740℃になったときに鋳造に供され
る。740℃を超える温度でダイカストすると、金型の
寿命が短くなり、金型に対する溶湯の焼付きが生じ易く
なる。逆に650℃未満の鋳造温度では、金型に圧入さ
れた溶湯の湯流れが悪化し、肉厚不良等の鋳造欠陥が発
生しやすくなる。鋳造温度650〜740℃の比較的低
温に溶湯を保持する時間は、短いほど好ましい。このと
きの保持時間が30分を超えると、Al3 Ni,TiA
l3 ,TiB2 ,Mg−Sb等の金属間化合物が溶湯中
に晶出し始める。金属間化合物が成長し、製品中で粗大
金属間化合物となって分散すると、高温疲労破壊の原因
となる。
先立って、キャビティを真空引きし、次いで大気圧以上
の圧力で酸素を吹き込む。真空度100ミリバール以下
にキャビティを減圧すると、キャビティ内にあるN2 等
のガス成分が減少する。真空度100ミリバールまで減
圧するため、金型の合せ目等をシール材で充填し、外気
の侵入を防止することが好ましい。次いで、大気圧以上
の圧力で酸素を吹き込むと、吹き込まれた酸素が高速流
となってキャビティの隅々まで行きわたり、金型内面に
塗布された離型剤やプランジャに塗布された潤滑剤等に
由来する水蒸気が完全に酸素流で洗い出され、複雑形状
のキャビティにあっても空気,水蒸気等がない雰囲気と
なる。このとき、キャビティが大気圧以上の圧力に維持
されているため、外気の侵入が抑えられる。雰囲気調整
されたキャビティにアルミニウム合金溶湯が圧入される
ため、キャビティ内でアルミニウム合金溶湯が冷却凝固
する際に空気,水蒸気等の有害ガス成分がアルミニウム
合金に巻き込まれることがない。また、キャビティにあ
る酸素は、アルミニウム合金溶湯と反応し、反応生成物
Al2 O3 が微細粒子としてマトリックスに分散するた
め、得られるダイカスト製品に悪影響を及ぼさない。
製品に含まれる吸蔵ガス量を1cc/100g−Al以
下に下げることが可能になる。得られたダイカスト製品
は、吸蔵ガス量が大幅に低減しているので、従来のダイ
カスト製品を熱処理したとき製品表面に発生していた膨
れが検出されず、T5処理,T6処理等の熱処理で機械
的強度を向上させることができる。また、高温雰囲気で
ピストンとして使用している際にも、吸蔵ガスの膨張が
なく、長期間にわたり円滑な運転が可能となる。更に、
吸蔵ガス量が極端に少ないことは、高温疲労破壊の起点
となるブローホール,ポロシティ等のないことを意味
し、この点でも高温強度,高温疲労強度,耐摩耗性が要
求されるピストンに適した材料といえる。
合金は、吸蔵ガス量が極めて少ないダイカスト製ピスト
ンが得られる。しかも、成分調整によって初晶Si,A
l−Ni系,Al−Ni−Cu系の初晶晶出物の平均粒
径を5〜10μmの範囲にしているので、高温雰囲気で
シリンダと接触して運転されるピストンに要求される耐
摩耗性及び高温強度が満足される。平均粒径が10μm
を超える初晶晶出物は高温疲労破壊の亀裂発生原因とな
り、平均粒径5μm未満の初晶晶出物では耐摩耗性が不
足する。
cm2 以下 ダイカストで得られた鋳造組織には、Al,Na,C
a,Sr,Mg等の酸化物による酸化皮膜,Al−Si
−Fe系,Al−Ti系,Ti−B系,Mg−Sb系等
の晶出金属間化合物,地金溶解時に溶解しきれない粗大
金属間化合物,炉材,工具等から混入する異物等に由来
する介在物が肉眼や10倍ルーペ等で観察される。ピス
トンとして要求される疲労強度をもたせるためには、粗
大介在物を観察視野において0.01個/cm2 以下に
抑えることが重要である。介在物の平均個数は、鋳造さ
れた合金材料の破断面を10倍ルーペで観察し、カウン
トされた個数を単位面積当りに換算したK10値で表示さ
れる。平均個数の測定に際しては、左右の2破断面を一
片とし、5〜6片を1試料として評価される。本発明で
は、更にその面積25cm2 で1試料のデータとし、7
試料のデータの平均値として介在物の平均個数を算出し
た。このように求められたK10値が0.01個/cm2
以下であると、優れた伸び特性及び疲労強度が合金材料
に付与される。他方、K10値が0.01個/cm2 を超
える場合、必要とする疲労強度が得られない。
方法で達成できる。合金配合時に混入してくるNa,C
a,Sr,Sb,Zn,Pb,Sn,Bi等を配合原料
の選択によって極力抑えると共に、溶製時の酸化後に溶
湯を740〜780℃で好ましくは30分以上高温保持
することにより、混入してきたNa,Ca,Sr,S
b,Zn,Pb,Sn,Bi等を炉滓として溶湯から浮
上分離する。浮上したスラグを溶湯から除去すると、N
a,Ca,Sr,Sb,Zn,Pb,Sn,Bi等の極
めて少ないアルミニウム合金溶湯となる。Mg,Al等
も酸化皮膜となって溶湯表面に浮遊するが、これら酸化
皮膜は、除滓時に溶湯から分離される。更に、鋳造時の
低温保持時間を短くすることにより、Fe,Ti,Sb
等がFeAl3 系,TiAl3 系,Mg−Sb系化合物
として粗大晶出物に成長することを抑制する。炉材や工
具に由来する介在物は、740〜780℃の保持処理で
溶湯から分離される。
2 Si,CuAl2 等を析出させることにより、更に強
度が向上する。T5処理では、鋳物を170〜230℃
に1〜10時間加熱する。T6処理では、470〜50
0℃×1〜10時間の溶体化処理後に水焼入れし、17
0〜230℃×1〜10時間で時効処理する。焼入れに
際しては、常温〜80℃の水が使用される。この熱処理
条件を外れると、十分な処理効果が得られず、或いは熱
処理コストが高くなる。T6処理は、溶体化を伴うこと
から処理コストが高くなるが、より高い機械強度が得ら
れる。熱処理される鋳物は、金型キャビティの雰囲気調
整によって吸蔵ガス量が極めて低く抑えられているた
め、熱処理時の加熱でガス成分が膨張して膨れを発生さ
せることがない。この点は、従来のダイカスト製品と大
きく相違するところである。また、要求される設計値を
満足する限り、強度は若干低下するものの、時効処理温
度を高くして時効析出による寸法の歪みを抑え、機械加
工量も少なくする寸法安定化処理も採用できる。この場
合の時効条件は、230〜350℃×1〜5時間に設定
される。この時効条件は、本発明ピストンの最高使用温
度が350℃であることを考慮すると、T5処理,T6
処理の時効条件としても使用可能である。
成分調整したアルミニウム合金溶湯を脱ガス処理した。
次いで、脱滓フラックスを用いて脱滓処理し、750℃
に45分間保持することにより溶湯から介在物を十分に
浮上分離させ、溶湯表面に浮遊している滓を除去した。
調製されたアルミニウム合金溶湯は、Si:12.6重
量%,Cu:4.2重量%,Mg:1.2重量%,N
i:4.5重量%,Fe:0.51重量%,Mn:0.
35重量%,P:0.007重量%,Ca:0.001
重量%,Ti:0.02重量%,B:0.0001重量
%,Cr:0.08重量%,Zr:0.05重量%,N
a<0.001重量%,Sr<0.001重量%,Sb
<0.001重量%,Zn:0.03重量%,残部が不
純物を除きAlの組成をもっていた。
たとき、ダイカスト金型に鋳込み、図1に示す形状をも
ち外径84mm,高さ72mmのピストンを製造した。
なお、鋳造に先立って200℃に加熱した金型の内面に
離型剤を塗布し、キャビティを吸引量700ミリバール
/秒で真空引きして真空度75ミリバールに減圧し、次
いで1200ミリバールの圧力で酸素を吹き込んでオー
バーフローさせることにより雰囲気調整した。また、ア
ルミニウム合金溶湯をキャビティに圧入するプランジャ
にも潤滑剤を塗布した。雰囲気調整されたキャビティに
鋳込まれたアルミニウム合金が冷却凝固した後、製品で
あるピストンを金型から鋳物を取り出した。得られた製
品から試験片を切り出し、成分分析すると共に、ミクロ
組織を観察し、吸蔵ガス量及び介在物の個数を測定し
た。また、鋳造後の製品に220℃×6時間加熱のT5
処理を施した後、機械的性質を調査した。吸蔵ガス量
は、ランズレー法で測定した。
ンから切り出された高さ0.5cm,長さ5cmの長尺
厚板にノッチを入れて破断し、肉眼及び10倍ルーペで
1試料につき0.5cm×5cmの10破断面(2
面)、すなわち合計で25cm2の面積を観察して1試
料のデータとし、7試料のデータの平均値として介在物
の個数をカウントし、カウント数を1cm2 に換算する
ことによりK10値を算出した。介在物は、大半が酸化物
系であり、0.1〜3mm程度の介在物が黒みがかった
色調を呈していた。調査結果を表1に示す。なお、比較
のため、重力鋳造法で鋳造する以外は同じ条件下で製造
したピストン(比較例1),780℃で溶解したアルミ
ニウム合金溶湯を脱ガス・脱滓処理した後で保持処理す
ることなく、660℃に下がったときキャビティが雰囲
気調整された金型に鋳込んで製造したピストン(比較例
2)についても同様に調査した。
ニウム合金溶湯から作られたものであるため介在物の個
数はほぼ同じであったが、冷却速度が遅い重力鋳造法で
製造されたことから、初晶Siが平均粒径で16μm,
Al−Ni系,Al−Ni−Cu系晶出物が平均粒径で
35μmと大きな鋳造組織をもっていた。粗大な晶出物
のため、高温の機械的性質が劣っていた。ただし、吸蔵
ガス量は、ダイカスト法で製造した本発明例及び比較例
2よりも若干少なかった。比較例2では、介在物の浮上
分離させる保持処理を施さなかったため、得られたダイ
カスト製品に多数の介在物が分散した。また、吸蔵ガス
量は低いものの、本発明例との比較で高温の機械的性質
が劣っていた。これに対し、本発明例では、介在物が少
なく適正な大きさの晶出物が分散した組織をもってい
た。吸蔵ガス量は、ダイカスト法の1種であるにも拘わ
らず、重力鋳造で製造した比較例1とほぼ同じ低い値を
示した。このようなことから、重力鋳造法よりも格段に
生産性が高いダイカスト法により、350℃での引張強
さが100MPa以上,高温疲労強度(×107 サイク
ル)が60MPa以上となり、高温雰囲気で稼動する直
噴型エンジンのピストンとして十分使用できることが判
った。
スト製ピストンは、ダイカスト法で製造されたものであ
るにも拘わらず、吸蔵ガス量が極めて低く抑えられてい
るため、疲労破壊の起点となるブローホール,ポロシテ
ィ等の鋳造欠陥がなく、また膨れの発生なく熱処理で強
度を向上させることもできる。このようにして、生産性
に優れたダイカスト法で製造できることから、高温雰囲
気で稼動される直噴型エンジンを始めとする各種内燃機
関に使用され、高温強度,高温疲労強度及び耐摩耗性に
優れたダイカスト製ピストンが安価に提供される。
Claims (5)
- 【請求項1】 Si:11〜16重量%,Mg:0.5
〜2.0重量%,Cu:3〜7重量%,Ni:3〜7重
量%,Fe:0.2〜1.5重量%,Mn:0.2〜
1.0重量%,P:0.003〜0.015重量%,C
a:0.002重量%以下を含み、残部が実質的にAl
で、他の不純物が合計量0.2重量%以下に規制された
組成をもち、平均粒径5〜10μmの初晶Si及び平均
粒径5〜10μmのAl−Ni系及びAl−Ni−Cu
系晶出物が鋳造組織に晶出しており、吸蔵ガス量が1c
c/100g−Al以下,介在物の平均個数を表わすK
1 0 値が0.01個/cm2 以下である高温疲労強度に
優れたダイカスト製ピストン。 - 【請求項2】 更にTi:0.01〜0.3重量%,
B:0.0001〜0.03重量%,Cr:0.01〜
0.3重量%,Zr:0.01〜0.3重量%の少なく
とも1種を含む請求項1記載の高温疲労強度に優れたダ
イカスト製ピストン。 - 【請求項3】 真空度100ミリバール以下に減圧した
後で大気圧以上の圧力で酸素を吹き込むことにより雰囲
気調整した金型のキャビティに、脱ガス・脱滓処理を経
て740〜780℃で保持処理した請求項1又は2の組
成をもつアルミニウム合金溶湯を650〜740℃の鋳
造温度で圧入することを特徴とする高温疲労強度に優れ
たダイカスト製ピストンの製造方法。 - 【請求項4】 鋳造後、170〜230℃に1〜10時
間加熱する時効処理を施す請求項3記載の高温疲労強度
に優れたダイカスト製ピストンの製造方法。 - 【請求項5】 鋳造後、470〜500℃に1〜10時
間加熱する溶体化処理,水焼入れ,次いで170〜23
0℃に1〜10時間加熱する時効処理を施す請求項3記
載の高温疲労強度に優れたダイカスト製ピストンの製造
方法。
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