JP2000219699A - 遅発育性抗酸菌ポリペプチド - Google Patents

遅発育性抗酸菌ポリペプチド

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JP2000219699A JP11022588A JP2258899A JP2000219699A JP 2000219699 A JP2000219699 A JP 2000219699A JP 11022588 A JP11022588 A JP 11022588A JP 2258899 A JP2258899 A JP 2258899A JP 2000219699 A JP2000219699 A JP 2000219699A
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毅 山田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】結核等の病原性抗酸菌の新たな診断予防、ワク
チン及び治療剤を提供する。 【解決手段】1又は複数個のアミノ酸が置換、付加又は
欠失していてもよい配列番号1(205個のアミノ酸)
で表される病原性抗酸菌に対する免疫原性を有するポリ
ペプチド;該ポリペプチドをコードするDNA、該DN
Aを含むベクターまたは形質転換体、および該ポリペプ
チドの製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遅発育性抗酸菌
(マイコバクテリウム)の産生するポリペプチドおよび
その誘導体、該ポリペプチドをコードするDNAに関す
る。
【0002】
【従来の技術及びその課題】ヒト結核菌(Mycobacteriu
m tuberculosis)、らい菌(Mycobacterium leprae)な
どの病原性抗酸菌(マイコバクテリウム)は非常に増殖
の緩慢な菌で、人類の3分の1に感染しているといわれ
る。遅発育性は、細胞内寄生を可能にし、また薬剤に対
する抵抗性を付与する。
【0003】本発明者は、病原性抗酸菌の遅発育メカニ
ズムを解明し、結核等の病原性抗酸菌の新たな診断予
防、ワクチン及び治療剤を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題に
鑑み鋭意検討した結果、BCG東京株からの配列番号1
で表されるポリペプチド(以下、MDP1(Mycobacteri
umDNA BindingProtein 1)と略す)を分離し、該ポリペプ
チドが遅発育性の原因であることを見出した。
【0005】すなわち、本発明は以下の項1〜項4を提
供するものである。 項1. 1又は複数個のアミノ酸が置換、付加又は欠失
していてもよい配列番号1(205個のアミノ酸)で表
される病原性抗酸菌に対する免疫原性を有するポリペプ
チド。 項2. 項1に記載のポリペプチドをコードしてなるD
NA。 項3. 項2に記載のDNAを含むベクターまたは該ベ
クターを含む形質転換体。 項4. 項3に記載の形質転換体を培養することを特徴
とする項1に記載のポリペプチドの製造法。
【0006】該ポリペプチド、特にリン酸化されたMD
P1は、結核の診断およびワクチンの製造に有用であ
る。該ポリペプチドは、糖鎖により修飾されていてもよ
い。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明のポリペプチドは、例えば
BCG東京株から得ることができるが、該株に限定され
ず、他のBCG株、或いは結核菌、らい菌等のマイコバ
クテリウム属の菌から得られる蛋白質であっても本発明
に包含される。
【0008】本発明の205個のアミノ酸からなるポリ
ペプチドは、病原性抗酸菌に対する免疫原性を有する限
り1又は複数個、好ましくは1〜数個のアミノ酸が特定
の位置又はランダムに置換、付加又は欠失していても良
い。また、本発明のポリペプチドはリン酸化されたもの
であるのが好ましい。なお、病原性抗酸菌に対する免疫
原性を有するとは、該ポリペプチドを必要に応じて他の
タンパク質などと組み合わせて哺乳動物に投与したとき
に病原性抗酸菌に対する抗体産生を誘導する能力を有す
ることを意味する。
【0009】前記アミノ酸をコードするDNAは、該D
NAがコードするポリペプチドが病原性抗酸菌に対する
免疫原性を有する限り1又は複数個、好ましくは1〜数
個の核酸塩基が特定の位置又はランダムに置換、付加又
は欠失していても良い。本発明のDNAには、配列番号
2のDNAとストリンジェントな条件下にハイブリダイ
ズするDNAを包含する。
【0010】特定のアミノ酸を置換、付加又は欠失する
方法としては、ポイントミューテーション法、PCRを
利用したdeletion/insertion法などの従来公知の方法が
広く用いられる。
【0011】本明細書において、「ストリンジェントな
条件」とは、通常ハイブリダイズ法で用いられる条件を
意味し、このような条件は、当業者であれば容易に理解
できる。
【0012】本発明のポリペプチドは、例えば、該ポリ
ペプチドをコードするDNAを組み込んだベクターを細
胞に導入して形質転換体とし、該形質転換体を培地中で
培養することを特徴とする前記項1で表されるポリペプ
チドの製造法により製造される。
【0013】上記のポリペプチドをコードするDNAを
組み込んだベクターで形質転換される細胞としては、特
に限定されず、従来公知の形質転換用の細胞が広く用い
られるが、例えば大腸菌、BCG菌等の細菌類、酵母な
どの真核微生物、マウス、ラット、ハムスター、ヒト、
等の各種哺乳動物の培養細胞が挙げられ、好ましくは細
菌又は酵母が例示される。
【0014】大腸菌等へのベクターの導入も、公知の方
法に従い行うことができる。
【0015】本発明のポリペプチドの製造に用いられる
ベクターとしては、本発明のポリペプチドをコードする
DNAの翻訳に必要なプロモーター等を備えている限り
特に限定されないが、例えば、pBluescript、pGEX等が
挙げられる。
【0016】本発明は、該ポリペプチドをコードするD
NAを組み込んだベクターが前記細胞に組み込まれた形
質転換体にも関する。
【0017】該形質転換体が培養される培地は、形質転
換される細胞の種類にもよるが、例えば大腸菌などの微
生物の場合には、炭素源(グルコース等)、窒素源(硫
酸アンモニウムなど)、無機物(リン酸ナトリウム、硫
酸鉄、硫酸マンガンなど)を含む培地が挙げられる。温
度、pH、時間などの培養条件は、各種細胞の通常の培
養条件がそのまま用いられる。
【0018】本発明のポリペプチドを結核または抗酸菌
の診断に用いる場合、本発明のポリペプチドまたはポリ
ペプチド中に含まれる数個から数十個のペプチドを抗原
として用い、該抗原を、抗体を含む生物試料(血清な
ど)とをin vitroで接触させ、次いで、得られた抗原抗
体複合体を検出することにより結核または抗酸菌の診断
を行うことができる。MDP1のワクチンへの応用 さまざまな難病の防御抗原(マラリア等の原虫感染症、
肺炎球菌、クラミジア等の細菌感染症、HIVやインフ
ルエンザ等のウイルス感染症など)が同定され、動物実
験レベルでは感染防御効果を得ているが、ヒトに応用す
る場合、安全で有効なアジュバントが開発されていない
ため、十分な感染防御効果が得られず、ワクチンとして
使用するに至っていない。
【0019】本発明者は、配列番号1のアミノ酸配列を
有するMDP1は、DNAと結合させることで免疫原性
が増強され、抗体価が上がることを証明した。上記の防
御抗原をMDP1内に組み込み、融合タンパク質として
DNAとともに使用することで、感染性のない安全で有
効なワクチンを製造できる。また、アジュバント活性が
十分でない場合には、融合タンパク質を形質転換の宿主
細胞としてのBCG菌内で発現させ、それをワクチンと
して活用できる。BCGはアジュバント活性最大の生ワ
クチンであり、効果が持続し、また安全なワクチンとし
て現在も使用されている。
【0020】MDP1のワクチンとしての使用の態様と
しては、 1.MDP1内に異種抗原を発現させた融合蛋白質をD
NAとともにワクチンとして使用する; 2.上記融合タンパク質を,DNA、既存アジュバント
とともにワクチンとして使用する; 3.上記融合タンパク質をBCG菌内で発現させ、生ワ
クチンとして使用する;などが例示される。
【0021】
【発明の効果】本発明によれば、マイコバクテリウム、
大腸菌などの細菌に対し遅発育性を示す新規ポリペプチ
ドを単離し、その構造を明らかにした。
【0022】該ポリペプチドは、遺伝子工学の方法によ
り容易に大量生産でき、結核、らい等の診断用の抗原、
ワクチン開発等に応用可能である。
【0023】本発明のポリペプチドは、DNA、RNA
またはリボソームに結合して増殖を遅延させるものであ
り、感染症ないし癌の治療にも使用できる。
【0024】
【実施例】以下、本発明を具体的な実施態様を用いてよ
り詳細に説明する。 製造例1 (1) バクテリア株、プラスミド、培養液 BCG東京株、M.tuberculosis H37Rv及びM. smegmatis
ATCC606は、ソートン培地または10%ADC濃縮物及
び0.05%ツイーン80を添加したミドルブルック7
H9ブロス(ディフコ ラボラトリーズ、デトロイト、
米国)中、37℃で増殖させた。M. leprae 53タイ株
は、マツオカ・マサノリ博士から得た。M.smegmatis
は、プラスミドpSO246及びその誘導体の宿主とし
て使用した。
【0025】組換えM. smegmatisクローンは、10%O
ADC濃縮物(ディフコ ラボラトリーズ)、0.5%
グリセロール、ペニシリン400単位/ml、シクロヘ
キシミド100μg/ml7H10アガー)を添加した
ミドルブルック7H10アガー(ディフコ ラボラトリ
ーズ)上で培養することにより選択した。大腸菌株XL1-
Blueは、プラスミドpBluescript SK(+) (pBS SK+)(ス
トラタジーン・クローニング・システム、カリフォルニ
ア、米国)またはpGEX4T−3(ファルマシア・バ
イオテック、東京、日本)及びその誘導体の宿主として
使用した。大腸菌株BL21(DE3)pLysEは、
pET22b(+)(Novagen Madison米国)、λMSO
Elox(アマシャム)及びその誘導体の宿主として使
用した。すべての大腸菌株は、LBブロスで増殖させ
た。 (2) BCGからのMDP1の精製 酸可溶性蛋白質を既述(Jhon et al., 1967)のいくつか
の改変方法で沈殿させた。バクテリアは、50mlTM
NSH(10mMトリス−HCl pH=7.5、10
mMMgCl2、60mMNH4Cl、及び6mM2−メ
ルカプトエタノール)に再懸濁し、超音波により破砕し
た。30000gで2時間遠心分離して得たペレット
を、0.25N HClに4℃で終夜攪拌することによ
り再懸濁し、20000gで20分間遠心分離した。上
澄に0.1倍量の100%(w/v)TCAを激しく攪
拌しながら加えた。4℃で4時間静置して形成した沈殿
を遠心分離により回収し、アセトン(20ml)に0.
01mlの濃塩酸を加えた酸性アセトンで1回洗浄し、
アセトンで2回洗浄し、真空デシケーターで乾燥した。
乾燥された沈殿を0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(p
H6.8)に再懸濁した。次に、酸可溶性蛋白質を0.
2Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)中のグラニ
ジン塩酸塩GdnClの直線グラジエントによりファー
ストフローカラム(ベッドボリューム5ml;ファルマ
シア)Hitrap CM Sepharose上を用い室温でクロマトグ
ラフィーにかけて分画した。グラジエントは、15ml
の0及び5%GdnCl溶液を充填したグラジエント装
置で行った。1ml/minの流速に維持し、1mlの
各フラクションを集めた。精製されたMDP1を含むフ
ラクションを5%GdnClを含む0.2Mリン酸緩衝
液に対して透析し、濃縮した。最後に、Hiload Seperde
x 200 pgカラム(ファルマシア)上でのゲル濾過により
さらに精製した。蛋白質の純度は220nmの吸光度の
測定又はSDS−PAGEによる分析でモニターした。 (3) アミノ酸配列の決定 アミノ酸分析用の標品を、PVDF膜(ミリポア、マサ
チューセッツ、米国)からの蛋白質バンドを切り出すこ
とにより得た。12.5%ポリアクリルアミドゲル中の
蛋白質は、0.05%SDSを含む3−[シクロヘキシ
ルアミノ]−1−プロパンスルホン酸(CAPS;シグ
マ、セントルイスミズーリ)−NaOH緩衝液(pH1
1)を用いてPVDF膜上で電気泳動的にブロットし
た。CBBによる染色後、蛋白質のスポットをアプライ
ドバイオシステム477Aガスフェーズシークエンサー
(アプライドバイオシステムズ)での自動エドマン分解
によるアミノ末端配列の決定に供した。 (4) 遺伝子クローニング、DNA配列決定及びコンピュ
ーター分析 BCGのゲノムDNAをDNAの主要部分が1〜5kb
pになるまで注射針を繰り返し通すことにより断片化
し、アマーシャム(Amersham)のcDNAラピッド・アダ
プター・ライゲーション・モジュールを用いてEcoR
Iアダプターにライゲートし、λMOSEloxのEc
oRI部位に挿入した。コロニー・ハイブリダイゼーシ
ョンを既述のように(マツオら、1988)、N末端ア
ミノ酸配列と相同な2セットの[α−32P]標識化オリ
ゴヌクレオチドプローブを用いて行った。プローブ1、
2の配列は、5’−ATGAACAAGGC(C又は
G)GAGCT(C又はG)ATCGACGT(Met-1
〜Val-9に相当)及び5’−GACGT(C又はG)
(T又はC)T(C又はG)AC(C又はG)CAGA
AG(T又はC)T(C又はG)GG(Asp-8〜Gly-15
に相当)であった。MDP1遺伝子を含む挿入されたD
NAフラグメントは、タック・ダイ・プライマー・サイ
クル・シークエンシング・キット及び373Aシステム
(アプライド・バイオシステムズ)を用いて配列決定し
た。配列相同性のサーチは、ファスタプログラム(fasta
program;ピアソン及びリップマン、1988)を用い
たDDBJ(静岡)データベースを通して行った。 (5) 大腸菌におけるGSTとの融合蛋白質としてのMD
P1の発現 プライマーは、MDP1遺伝子の増幅のために合成し
た。プライマーAのDNA配列は、5'GGggatccGGGAGGGT
TGGGATGAACAAAGCAG(センス鎖)であり、プライマーB
のDNA配列は5'GGGggatccAGCACGTGGGTGTTGTCGTTG(ア
ンチセンス鎖)であった。小文字は、加えた制限酵素部
位を示す。プライマーA及びBにより増幅された生成物
は、HindIII及びBamHIで消化され、pGEX4T−3の
同じ部位に挿入された。最終構築物はpGEXMDP1
と名付けられた。大腸菌はこのプラスミドにより形質転
換された。GST−MDP1の発現は、製造元(ファル
マシア)の説明書に従い行った。 (6) ゲル遅延試験 100ngのpBSKS+、HindIIIで消化されたpB
SKS+、または240ngのMS2ファージRNA
を、5%グリセロールを含むPBS6μl中に種々の量
のMDP1(最終濃度;20,10,5,2.5,1.25,0,μ
M)と混合した。サンプルを37℃で10分間プレイン
キュベートし、0.8%(w/v)アガロースゲル中、
TAE緩衝液を用いた電気泳動により分析し、エチジウ
ムブロミド(EtBr)で染色した。核酸を紫外線下に
可視化した。 (7) 免疫電子顕微鏡試験 免疫電子顕微鏡試験を既知のようにして行った(Ferrei
ra等、1992)。 (8) BCGフラクションの調製 ソートン培地中37℃で培養したBCGをTMNSH緩
衝液中で超音波により破砕した。破砕物を1000gで
4℃、5分間の遠心分離を2回行い、壊れていない細胞
を除去した。次いで、細胞壁、細胞膜、リボソーム、細
胞質画分既知の方法により調製した(大原ら、199
7)。分泌タンパク質は既述のように調製した(松本
ら、1996b)。 (9) BCGの50Sリボソームサブユニット由来のリボソ
ーム及びMDP1の精製 BCG由来のリボソームの調製及びリボソームサブユニ
ットの分離は、既に記載されている(山田ら、197
2)。リボソーム蛋白質は、既知のように(ヒンデンナ
ッハら、1971)、0.1MMgCl2の存在下に6
6%酢酸を用いて50Sサブユニットから抽出した。次
いで、抽出物を5%酢酸に対して透析し、凍結乾燥し
た。抽出された蛋白質は、C4カラムを用い日立L−6
000HPLCシステムを用いた逆相−HPLCにより
分離した。2mgの50S総蛋白質を、0.1%TFA
中の30〜70%のアセトニトリルの直線グラジエント
を用い、90分間0.6ml/minの流速でクロマト
グラフを行った。溶離液は、220nmの吸光度の測定
又はSDS−PAGEによる分析でモニターした。 (10)免疫手法 MDP1に対する抗血清を、フロイント不完全アジュバ
ント中の20μgの精製MDP1を雌性BALB/cマ
ウスに2回腹腔内免役して得た。ウエスタンブロット分
析を既知のように行った(松本ら、1996b)。 (11)MDP1によるインビトロでのDNA合成の阻害。
【0026】インビトロでのDNA合成を既述のように
(サムブルックら、1989)クレノウフラグメント
(タカラ)を用いて行った。一本鎖DNAをf1ファー
ジの感染によりpBSKS+を有する大腸菌XL1−B
lueから調製した。反応前に、一本鎖DNA(1μ
g)及び5pmolのM13ファージの1244プライ
マー(日本ジーン)を85℃で10分間インキュベート
し、22℃までゆっくり冷却してアニーリングした。D
NA合成の延長反応は、50mMトリス(pH7.
5)、50mMNaCl、10mMMgCl2、124
4プライマーのアニールされたDNA鋳型0.6μg、
0.9mMのdATP,dGTP及びdTTP、50μ
Ciの[α−32P]dCTP、8ユニットのクレノウフ
ラグメント、10mMのDTT中、MDP1又はBSA
の存在下又は不存在下に行った。最終容量は30μlで
あった。延長反応は、8分間22℃で行った。反応は
0.5MEDTA(pH8.0)を30μl加えて停止
させた。次いで、サンプルを68℃でインキュベート
し、クレノウフラグメントを不活性化した。各サンプル
5μlをグラスファイバーフィルター(Toyo濾紙)
上にスポットした。濾紙は20mMピロリン酸ナトリウ
ムを含む5%TCAで3回洗浄した。濾紙を乾燥後、各
サンプル中のTCA不溶性[α−32P]dCTPをシン
チレーションカウンターにより測定した。 (12)インビトロ転写分析 既述方法(ペダーソンら、1994)を改変してインビ
トロ転写分析を行った。各種の量(20,10,5,2.5,1.
25及び0μM)のPBS中の精製MDP1及びBSAを
0.11pmol(200ng)のpBSKS+と反応
容量を20μlに調整して混合した。37℃で10分間
インキュベート後、等容量の以下の溶液を加えた:0.
02%(w/v)DEPC;80mMTris−HCl
(pH8.0);16mMのMgCl2;4mMのスペ
ルミジン;10mMのDTT;1.8mMのATP,C
TP,GTP及びUTP;1.84U/mlのRNas
e阻害剤;1.42U/mlのT7RNAポリメラーゼ
(タカラ)及び0.36mCi/mlの[α−32P]U
TP。インビトロ転写は、37℃で30分間行った。次
いで、5μlのサンプルをグラスファイバーフィルター
上にスポットした。濾紙は20mMピロリン酸ナトリウ
ムを含む5%TCAで3回洗浄した。グラスファイバー
フィルターを乾燥後、各サンプル中のTCA不溶性[α
32P]UTPをシンチレーションカウンティングによ
り測定した。 (13)インビトロ翻訳分析 インビトロ翻訳分析を、大腸菌S30共役転写及び翻訳
システム(プロメガ)を用いて行った。各量(最終濃
度;20,10,5,2.5,1.25及び0μM)のMDP1又は
卵白リゾチーム、7μlのS30抽出物、50nCi[
35S]−メチオニン、メチオニンを含まない10μlの
プレミックス(プロメガ)、4μg(3.33pmo
l)のMS2RNA(ベーリンガーマンハイム、東京、
日本)を混合した。最終反応容量は34μlであった。
翻訳は37℃で1時間行った。放射標識メチオニンの取
り込みを評価するために、製造元の説明書に従い、5μ
lのサンプルを取り、245μlの1MNaOHに溶解
し、最終20%のTCAで沈殿させた。TCA処理され
たサンプルは、グラスファイバーフィルター上にトラッ
プ後、5%TCAで3回洗浄した。膜を乾燥し、放射能
を測定した。 (14)MDP1のリン酸化の検出 1μgの精製MDP1をバクテリアのアルカリホスファ
ターゼ(BAP)を用い、50mMトリス−HCl(p
H9.0)及び1mMMgCl2を含む溶液中、65℃
で1時間処理した。製造元の使用説明書に記載されたよ
うに、BAPで処理された或いは処理されていないMD
P1の蛋白イムノブロットホスホスレオニン、ホスホセ
リン、ホスホチロシンに対する抗体(トランスダクショ
ン・ラボラトリーズ、ケンタッキー、米国)を用いてウ
ェスタンブロット法を行った。 (15)速育性細菌におけるMDP1の発現 M.smegmatis中でのMDP1(BCG)の発
現のために、センス鎖用のプライマーCを合成した。該
オリゴヌクレオチド配列は、5'GGGaagcttTTTGAGGGTGCGT
GCGCGTACであった。プライマーB及びCにより増幅した
MDP1構造遺伝子及びその上流領域をコードする遺伝
子をHindIII及びBaMHIの両方で消化し、pBSKS+の
同じ部位(pBMDP1と名付けられた)に挿入され
た。pBMDP1はHindIII及びBamHIで消化され、MD
P1遺伝子を含む1kbpのDNAフラグメントをpS
O246(松本ら、1996a)の同じ部位に挿入し
た。それは、pSOMDP1と名付けられた。M.sm
egmatisを既述のように(松本ら、1996b)
エレクトロポレーションによりpSOMDP1でトラン
スフォームした。大腸菌中で非融合形態のMDP1を発
現するために、以下のプライマーを新たに合成した。セ
ンス鎖用のプライマーDは、CcatatgAACAAAGCAGAGCTCAT
TGACであり、プライマーEは、CaagcttCTATTTGCGACCCCG
CCGAGCGGであった。MDP1の構造遺伝子を含む増幅さ
れたDNAは、NdeIとHindIIIの両方で切断され、pE
T22b(+)の同じ部位に挿入された。このプラスミ
ドはpET22MDP1と名付けられた。大腸菌株BL
21(DE3)pLysEを、pET22MDP1でト
ランスフォームした。トランスフォームされた細胞は、
50μg/mlのカルベニシリン、34μg/mlのク
ロラムフェニコールを含み、並びに、0.5mMのIP
TGを含むか又は含まないLBアガー上で増殖させた。結果 (1) DNA結合能を有する最も豊富な蛋白質の分析 BCG中のDNA結合蛋白を同定するために、細胞ライ
ゼートをSDS−PAGEに供しPVDF膜上にブロッ
トした。該膜は次いで[α−32P]標識pBluescript KS
+(pBSKS+)と反応させ、蛋白−DNA相互作用をオート
ラジオグラフで視覚化した。図1Aに示されるように、
強い反応が28kDaで観察された。この28kDaD
NA結合蛋白を、MDP1と名付けた。SDS−PAG
E分析は、MDP1が最も豊富にある蛋白質であること
を示した(図1Dのレーン1の矢印により示される)。
本発明者は、上記のようにMDP1の精製を行った。最
初に、MDP1の豊富なサンプルは、BCGライゼート
を0.25N−HCl(図1Dのレーン2)で処理し、
次いでイオン交換カラムで精製して調製された。図1B
は、クロマトグラフのプロフィールを示し、主要ピーク
フラクションの蛋白質は図1Dのレーン3に視覚化され
た。このフラクションの蛋白質は、ゲル濾過カラムを通
してさらに精製され(図1C)高度に精製されたMDP
1が得られた(レーン4、図1D)。最終工程におい
て、MDP1は、195kDa蛋白として溶出された
(図1D)。これは、MDP1が多量体を形成している
ことを示すものである。MDP1の最終収率は100g
のBCGの新鮮湿重量から約5mgであった。
【0027】精製されたMDP1のアミノ酸配列のN末
端は、アミノ酸シークエンサーによりMNKAELIDVLYQKLG-
Dと同定された。MDP1をコードする遺伝子をクロー
ン化するために、コロニーハイブリダイゼーションをN
末端アミノ酸配列(実施例参照)に相当する2つの[α
32P]標識されたセットのオリゴヌクレオチドプロー
ブを用いて行った。2つのプローブでハイブリダイズさ
れたDNAフラグメントを得、配列決定した。図2A
は、核酸配列及び推定アミノ酸配列を示す。DNAフラ
グメントは、265位にATGで始まり882位のTA
G終止コドンで終わるオープンリーディングフレーム
(ORF)を含む。MDP1のN末端アミノ酸配列(図
2Aにおいて枠で囲まれた部分)はこのORFと完全に
一致することが見出された。予期されたように、MDP
1は、極度に塩基性(等電点(PI)が12.4)であ
り、アラニン、アルギニン、リシン、プロリン及びスレ
オニンを多量に含む。可能性のあるシャイン−ダルガル
ノ(SD)配列は、開始コドン(図2Aの下線部)の上
流7ヌクレオチドの位置に観察された。バクテリアにお
いて、いくつかの染色体結合蛋白に観察されたDNA結
合モチーフは、46位〜65位みられた(図2Aの太い
下線)。この領域は、MDP1のDNA結合部位と予測
される。
【0028】MDP1に相同ないくつかの蛋白質及びア
ミノ酸配列のアラインメントを示すコンピューター検索
が、図2Bに示される。2つのORFでコードされる高
い相同が、M.tuberculosis及びM.leprae由来のゲノムの
コスミドライブラリーのDNA配列において観察され
た。MDP1は、M.tuberculosisと95%の相同性を有
し、M.lepraeと83%の相同性を有する。コンピュータ
ー分析は、MDP1のN末端領域がバクテリア由来のH
Uに対し部分的な相同性を有し、C末端領域は真核細胞
のヒストンH1クラスと部分的な相同性を有することを
示した。代表例として、MDP1と大腸菌のHU2及び
ヒトのヒストンH1の比較を図2Bに示す。最初の90
アミノ酸の最良のアラインメントは、MDP1とHU2
の間で41%(Kanoら、1987)、MDP1とヒ
トヒストンH1の間で25%(Albigら、199
1)であった。 (2) MDP1による核酸コンフォーメーションの認識 MDP1のDNA結合能は、以下のように確認された。
MDP1はSchistosoma japonicum グルタチオンS−ト
ランスフェラーゼ(GST)(GST−MDP1)との
融合蛋白質として発現された。大腸菌発現GST−MD
P1の全蛋白質は、膜に転写された。膜は[α−32P]
標識pBSKS+と反応し、そのオートラジオグラフが
図3Aに示される。付加的なバンドがレーン4とレーン
5に観察され(図3A上の矢印で示される)、抗MDP
1抗体(データは示さない)により認識された(データ
は示されていない)。これは、該遺伝子によりコードさ
れる産物のDNA結合能を確認する。分解産物が観察さ
れ、この融合蛋白が大腸菌中で安定でないことを示す。
MDP1の核酸結合活性をより詳細に分析するために、
ゲル遅延アッセイを次に行った。各種濃度の精製MDP
1を環状プラスミド、直鎖プラスミド、又はRNAとと
もにインキュベーション後、複合体をアガロースゲル電
気泳動で分析した(図3B、3C及び3D)。ヌクレオ
チドがMDP1の濃度に依存してスロット中で遅延する
ので、該データは、MDP1がDNA及びRNAの両方
に結合することを示した。MDP1のニックを有するD
NA(図3B)、直鎖形態のDNA(図3C)及びRN
A(図3D)に対する結合能は、ほぼ同一であった。一
方、他のものよりもスーパーコイルDNAのゲルへの移
動に対する優先的な阻害は、10〜5μMMDP1にお
いて観察された(図3B、3C)。これらは、MDP1
が核酸のコンフォーメーションを認識することを示す。 (3) 細胞中のMDP1の局在化 MDP1の局在化を知るために、最初は、免疫電子顕微
鏡試験をBCGを標的として行った。結果は、MDP1
同族体が細胞壁、細胞膜、リボソーム領域、染色体DN
A領域に局在化することを示した(図4A,パネル
a)。第2に、BCG由来の各細胞下画分が調製され
た。これらのサンプルは、膜上に転写され、抗MDP1
抗体と反応された(図4B、パネルb)。強い反応が細
胞壁、細胞膜、リボソーム画分の28kDa蛋白で観察
されたが、分泌蛋白及び細胞質蛋白では観察されなかっ
た。同時に、蛋白質をSDS−PAGE後にゲル染色に
より視覚化され、推定MDP1バンドが図4Bのパネル
aにおいて矢印で示される。これらの生化学的観察は、
BCGに関する免疫電子顕微鏡試験の結果と一致する。
興味あることに、抗MDP1抗体のいくつかは免疫電子
顕微鏡分析において直接にリボソーム粒子と反応してい
るらしく、それらはリボソーム画分と強力に反応する
(図4B、パネルb)。これらは、MDP1がリボソー
ムに結合する可能性を示す。この点を明らかにするため
に、リボソーム粒子(30S及び50Sサブユニット)
をシュクロース密度勾配遠心により分離した。30S又
は50Sサブユニットに由来する蛋白質が、SDS−P
AGE後、転移した膜上で抗MDP1抗体と反応され
た。該反応は、図4Bのパネルbに示されるように、3
0Sサブユニットではなく50Sサブユニットの28k
Da及び27kDa蛋白質において観察された。この結
果を確認するために、50Sサブユニットの蛋白質をR
P−HPLC(図4C、パネルa)により分離された。
各画分の蛋白は、CBBにより染色されたSDS−PA
GEにより視覚化され(図4C、パネルb)、或いはこ
れらは、膜上にブロッティングした後、抗MDP1抗体
と反応させた。結果は、28kDa及び27kDa蛋白
質は各々約47%(図4Cのパネルaの画分27)およ
び40%(画分18、19)アセトニトリルの濃度で溶
出した。アミノ酸シークエンサーによるN末端アミノ酸
の配列決定は、28kDaの蛋白質がMDP1であるこ
とを示す。この結果は、50Sリボソームサブユニット
はMDP1を含むことを示す。しかしながら、27kD
aのN末端アミノ酸は配列決定されていない。従って、
27kDaの蛋白質がN末端での修飾アミノ酸なのか、
異なる遺伝子をコードする遺伝子の同族体なのかは明ら
かでない。 (4) MDP1のインビトロにおける複製、転写及び翻訳
の阻害 インビトロにおけるマクロ分子合成をMDP1の分子プ
ロセスを解明するために研究した。第1に、DNAポリ
メラーゼIの機能に関するMDP1の効果を、DNA合
成の伸長を見るために調べた(図5A)DNA合成は、
MDP1により用量依存的に抑制された。1.25μM
のMDP1で97%までの阻害が観察された。
【0029】第2に、本発明者は、T7RNAポリメラ
ーゼの転写に対するMDP1の効果を評価した(図5
B)。転写は、2.5μMのMDP1でほぼ完全に阻害
された。
【0030】第3に、翻訳に関するMDP1の効果をイ
ンビトロで調べた。インビトロでの翻訳分析は、大腸菌
S30抽出物を用いて行った(図5C)。30分のイン
キュベーション後、蛋白合成をMS2ファージRNAの
鋳型なしでさえ観察された。これは、大腸菌S30抽出
物の内因性天然mRNAのためであるかもしれない。M
DP1による蛋白合成の阻害は、MDP1の濃度に依存
して観察された。10μMにおいて、MDP1は翻訳を
ほぼ完全に阻害した。 (5) MDP1によるバクテリアの増殖遅延 上記の結果から、MDP1はDNA、RNA及びリボソ
ームに対する結合に依存してマクロ分子生合成の阻害に
より増殖遅延を起こかもしれない。本発明者は、この仮
説を速やかに増殖するバクテリア中においてMDP1を
発現させることにより調べた。MDP1の非キメラ形態
を発現するために、pSOMDP1及びpETMDP1
を構築した(実施例参照)。M.smegmatis及
び大腸菌を、各プラスミドを用いてトランスフォーム
し、プレート上で集めた。図6に示すように、両方のバ
クテリアの増殖速度はMDP1の発現により劇的に減少
し、MDP1はバクテリアの増殖速度を減少することを
示す。 (6) MDP1蛋白のスレオニンリン酸化 リン酸化及び脱リン酸化は、真核細胞における細胞増殖
を制御する主要なメカニズムの1つである。本発明者は
MDP1がリン酸化蛋白かそうでないかを調べた。精製
されたMDP1は、ホスホセリン、ホスホチロシン又は
ホスホスレオニンに対するモノクローナル抗体と反応さ
せた。抗ホスホスレオニン抗体のみがMDP1と反応
し、予期したようにこの反応は、反応前にバクテリアの
アルカリホスファターゼ(BAP)でMDP1を処理す
ることにより消失した(データは示さない)。これら
は、MDP1がスレオニンリン酸化蛋白質であることを
示す。 (7) 迅速及び遅延増殖マイコバクテリウム間の対数及び
定常増殖期におけるMDP1の発現の比較 様々なマイコバクテリウム種のMDP1の発現をSDS
−PAGE(図7A)及びウエスタンブロット分析(図
7B)により調べた。抗体は、BCGの28kDaの蛋
白質(図7Bのレーン1及び2)、M.tuberculosisの3
0kDaの蛋白質(レーン3及び4)、M.lepraeの26
kDaの蛋白質(レーン5)、M.smegmatisの31kD
aの蛋白質(レーン6および7)と強く反応したが、大
腸菌の蛋白質とは全く反応しなかった。対数及び定常増
殖期におけるBCG及びM.tuberculosis由来のライゼー
トの豊富な蛋白バンドは、抗MDP1血清反応バンドと
同一である。M.lepraeは、バクテリア中で最も増殖が遅
く、インビトロでの培養が未だ成功していない。ヌード
マウスのフットパッドで増殖するM.lepraeは、図7に示
すように多量のMDP1を発現する。一方、M.smegmati
sにおいて、抗MDP1血清を認識する蛋白は定常期に
おいてのみ高度に発現される。本発明者は、これらMD
P1同族体がDNAに結合する能力を有することをサウ
スウエスタンブロット分析により確認した(データは示
さない)。これらの結果は、MDP1が広範囲のマイコ
バクテリウムにおいて保存されているが、MDP1の発
現量は遅い増殖菌と速い増殖菌で異なっている。遅い増
殖菌は増殖期と無関係に多量のMDP1を発現するが、
速い増殖菌は定常状態で主に発現され、対数増殖期では
発現されない。 実施例1 6〜10週齢の4種のマウス(C3H/He、C57BL/6、A/J、
BALB/c)にMDP1をフレウントのインコンプリートア
ジュバントとともに5μgずつ2回(2回目は3週後)
免疫し(1回目は皮下、2回目は腹腔内)、4週後に採
血して血清を100倍に希釈し(希釈液:1%BSA in PB
S)、一次抗体としてウェスタンブロットに用いた。抗原
は、BCGのライゼートを用いた。MDP1に対する抗
体の産生が認められたマウスはBALB/cのみであった。
【0031】次に、BCG菌を投与した3種のマウス
(C3H/He、C57BL/6、A/J;1回目血中、2回目腹腔内;
BCG106CFU)の血清を同様に反応させた結果、
いずれのマウスにおいてもMDP1に対する抗体産生が
確認された。また、抗体はBCG抗原のうちMDP1に
最も強く反応した。
【0032】この実験結果から、菌体で免疫すると、M
DP1に対する抗体が強く誘導されることが明らかにな
った。 実施例2:患者血清との反応 ハンセン氏病患者3名、結核患者4名及び健常人血清を
100倍に希釈した。精製したMDP1をメンブレンに
転写し、希釈抗体と反応させた。その結果、すべての抗
酸菌症患者の血清中に、MDP1を認識する抗体の存在
が明らかになった。一方、健常人のサンプルには該抗体
の存在は認められなかった。同じウェスタンブロットの
系で、分泌蛋白質(85コンプレックスを含む)に対し
て反応させると、ハンセン氏病患者の血清には反応する
が、結核患者の血清とは反応しなかった。この結果は、
MDP1はAg85よりも抗酸菌症において抗原性が高
いことを示している。 実験1 BCG東京株を、ソートン培地で培養後、0.45μm
(Millipore)のフィルターに通し、菌体と分泌蛋白質を
分離した。菌体はSDS−サンプルバッファーに溶解
し、超音波で破砕し、100℃で5分間煮沸した。分泌
蛋白質は、培養濾過物に終濃度80%になるように硫酸
アンモニウムを加えてタンパク質を析出させ、それをP
BS(pH7.2)に透析した。得られた分泌タンパク
質にSDS−サンプルバッファーを加え、100℃で5
分間煮沸した。それぞれのサンプルを遠心し、その上清
(タンパク質量20μg)を、SDS−PAGE(2
1.5%)にて電気泳動した後、タンパク質を電気的に
ポリビニリデンジフルオライド膜(PVDF膜;Millipo
re)上に転写した。PVDF膜を3%BSAを含むPB
S中で30分間浸し、ブロッキングを行った。抗体の調
製は、BCG東京株10 7CFUをC3H/He静脈に
投与し、1ヶ月後同量の菌体を腹腔内に投与し、その1
ヶ月後に血清を採取し、PBS+1%BSAで100倍
希釈した。調製した抗体を、BSAでブロッキングした
PVDF膜と4℃で終夜反応させ、0.05%のNonidet P40
を含むPBSで洗浄し、PBSで1000倍に希釈し
たペルオキシダーゼ標識した抗マウス抗体と反応させ、
上記洗浄液で洗浄後、25mgの3,3-ジアミノベンジジ
ン・テトラヒドロクロライドを20mMTris(pH7.
5)100ml中に溶解し、29μlのH22を加えた溶
液にPVDF膜を浸し、抗体検出を行った。結果を図8
に示す。図8に示されるように、菌体タンパク質ではM
DP1に相当する分子量のタンパク質および45〜47
kDaのタンパク質に対する抗体が検出された。一方、
分泌タンパク質に対する抗体は、この条件では検出され
なかったことから、MDP1は最も強い抗原性を有する
といわれているAg85を上回る抗原性を有していると
考えられた。 実験2 BCG東京株(107CFU)を、A/j、BALB/
c、C3H/He、C57BL/6に腹腔内投与し、1
ヶ月後血清を採取し、PBS+1%BSAで100倍希
釈した。精製MDP1を1μg/レーンでSDS−PA
GE後、PVDF膜上に転写し、希釈血清と上記と同様
の方法で反応させ、MDP1に対する抗体の検出を行っ
た。その結果、4種全てのマウスの血清中に抗MDP1
抗体が産生されていることが分かった。 実験3 BCG菌(108CFU)を、マウス(C3H/He:
slc)に尾静脈より投与し、MDP1(5μg)/R
AS(リビアジュバントシステム)、DNA(M. tuberc
ulosis DNA 0.5μg)/RAS、MDP1(5μg)+
DNA(0.5μg)/RASをマウス(C3H/H
e:slc)に皮下投与し、3週間後に同用量を腹腔内
投与した後、4週間後に血清を採取し、採取した血清を
PBS+1%BSAで100倍希釈した。精製MDP1
を1μg/レーンでSDS−PAGE後、PVDF膜上
に転写し、希釈血清と反応させた。その結果(図9)、
BCG及びMDP1+DNAで免疫したマウスにのみ抗
体が産生されており、MDP1単独、DNA単独では抗
体産生が認められず、MDP1はDNAと結合させるこ
とで免疫原性が増強され、抗体価が上がることが確認さ
れた。 実験4 MDP1、ヒストンH1、H2、H3(ベーリンガーマ
ンハイム、牛由来)をそれぞれ5μgずつ、単独または
結核菌由来DNA(0.5μg)と混合して、リビアジ
ュバント(RIBI immunochen Research, Inc. Hamilton,
MT)を用い、C3H/Heマウス(初回免疫時、7週
齢)に免疫した。サンプルは、PBSで希釈し、1匹の
マウスに100μlとなるように調整した。免疫方法
は、初回免疫を皮下投与で、3週間後の追加免疫を腹腔
内投与により行った。追加免疫の1週間後のマウスより
採血を行い、遠心分離により血清成分を得た。それぞれ
に抗原に対する抗体の検出は、ELISA法により行っ
た。即ち、ELISA用96穴プレートH(住友ベーク
ライト株式会社)に、それぞれの抗原を2μg/mlに
なるように0.05M炭酸バッファー(pH9.6)で
溶解し、100μlずつ各ウェルに分注し、室温で2時
間放置し、抗原を個層化した。ブロッキングは、BBS
(pH8.0;ホウ酸10.33g/L、NaCl7.
83g/L)でウェルを1回洗浄後、3%BSAを含む
BBSを300μlずつウェルに分注し、室温で2時間
放置し、BBSで1回洗浄することで行った。それぞれ
の血清サンプルは、50〜102400倍まで、1%B
SAを含むBBS溶液で希釈し、それぞれのウェルに1
00μlずつ加え、30分間37℃で反応させた。反応
プレートをHBBS(pH8.0;ホウ酸10.33g
/L、NaCl29.22g/L)を調製し、各ウェル
を300μlずつ7回洗浄した。その後、ペルオキシダ
ーゼ抗マウス抗体を、1%BSAを含むBBS溶液で2
000倍に希釈し、100μlずつ各ウェルに分注し、
30分間37℃で培養した。その後、上記洗浄液で同様
の洗浄を行い、オルト−フェニレンジアミン二塩酸塩を
0.4mg/mlとなるように、80mMクエン酸−リン酸緩衝
液に加え、その溶液10mlにつきH22を4μl加え
た検出液を用い、発色を行った。3−5分間反応後、1
Nの硫酸を等量加えて反応を停止し、492nmの吸光
度で測定した。その結果、図10〜13に示されるよう
に、MDP1とDNAを混合して免疫し、得られたサン
プルのみ吸光度の上昇が観察され、同じDNA結合タン
パク質であるヒストンH1、H2、H3のいずれの場合
にも吸光度の上昇は観察されなかった。このことから抗
原性に関してはMDP1特異的であることが明らかにな
った。 実験5 精製したMDP1を1μg/レーンでSDS−PAGE
後、PVDF膜上に転写し、らい患者(L1、L2、L
3)、結核患者(T1、T2、T3、T4)の血清希釈
液と上記と同様にして反応させ、MDP1に対する抗体
の検出を行った。その結果(図14)、試験した全ての
患者血清中にMDP1に対する抗体が検出された。この
結果から、MDP1は結核、らい患者等の診断薬として
の応用が考えられる。MDP1の診断薬への応用 MDP1は抗酸菌に特異的なタンパク質であり、強い抗
原性を有していることが上記実験より確認できた。特に
実験1の結果より現在抗原性が最も強く、診断薬として
検討されている抗酸菌特異的な抗原Ag85complexよりも
強い抗原性を有することが明らかになった。従って、M
DP1に対する抗体を同定することで、結核による感染
の有無を診断できる(実験5)。また、抗酸菌の種が異
なればMDP1の配列も異なることから、種特異的な抗
原またはペプチドを用いることで感染菌の同定の可能性
もある。従って、結核菌を含む各種抗酸菌のMDP1お
よびそのMDP1中に含まれるペプチドは、診断薬の抗
原として利用できる。
【0033】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Ostuka Pharmaceutical Co., Ltd. <120> MDP1 gene <130> 3588JP <160> 8 <170> PatentIn Ver. 2.0 <210> 1 <211> 205 <212> PRT <213> BCG strain <400> 1 Met Asn Lys Ala Glu Leu Ile Asp Val Leu Thr Gln Lys Leu Gly Ser 1 5 10 15 Asp Arg Arg Gln Ala Thr Ala Ala Val Glu Asn Val Val Asp Thr Ile 20 25 30 Val Arg Ala Val His Lys Gly Asp Ser Val Thr Ile Thr Gly Phe Gly 35 40 45 Val Phe Glu Gln Arg Arg Arg Ala Ala Arg Val Ala Arg Asn Pro Arg 50 55 60 Thr Gly Glu Thr Val Lys Val Lys Pro Thr Ser Val Pro Ala Phe Arg 65 70 75 80 Pro Gly Ala Gln Phe Lys Ala Val Val Ser Gly Ala Gln Arg Leu Pro 85 90 95 Ala Glu Gly Pro Ala Val Lys Arg Gly Val Gly Ala Ser Ala Ala Lys 100 105 110 Lys Val Ala Lys Lys Ala Pro Ala Lys Lys Ala Thr Lys Ala Ala Lys 115 120 125 Lys Ala Ala Thr Lys Ala Pro Ala Lys Lys Ala Ala Thr Lys Ala Pro 130 135 140 Ala Lys Lys Ala Val Lys Ala Thr Lys Ser Pro Ala Lys Lys Val Thr 145 150 155 160 Lys Ala Val Lys Lys Thr Ala Val Lys Ala Ser Val Arg Lys Ala Ala 165 170 175 Thr Lys Ala Pro Ala Lys Lys Ala Ala Ala Lys Arg Pro Ala Thr Lys 180 185 190 Ala Pro Ala Lys Lys Ala Thr Ala Arg Arg Gly Arg Lys 195 200 205 <210> 2 <211> 1026 <212> DNA <213> BCG strain <400> 2 ctttgagggt gcgtgcgcgt actggaaacc gcgcactcta cccgccccct gaggcgtaga 60 accgggcgaa atttcagcgt gacccgccgg cagaacctga gccattttgg ggccgcgcca 120 ccggtcaagg gcggcaaccg gattgcgaaa aaccggtcgt tggctcagtg aaattgcgcg 180 tggctcttgg aaatcagccg ggtaagggtt taccgtgtcc actagtcggt tccaaacgag 240 gaccactggt ttcggagggt tgggatgaac aaagcagagc tcattgacgt gctcacacag 300 aaattgggct cggaccgtcg gcaggcgacc gccgccgtcg agaatgtcgt tgacacgatt 360 gtgcgtgcgg tacacaaagg cgacagcgtc accattaccg ggttcggtgt gttcgaacag 420 cgtcgccgcg cggctcgagt ggcccgcaat ccgcgtaccg gcgagacagt aaaggtgaag 480 ccgacgtcgg tgccggcgtt ccgcccgggc gcgcaattca aagcggttgt gtctggcgcg 540 cagcgtctcc cggcagaagg acccgctgtt aagcgtggtg tgggggccag tgcagccaag 600 aaggtagcga agaaggcacc tgccaagaag gcgacaaagg ccgccaagaa ggcggcgacc 660 aaggcgcccg ccaagaaagc ggcgaccaag gcgcccgcca agaaagctgt caaggccacg 720 aagtcacccg ccaagaaggt gaccaaggcg gtgaagaaga ccgcggtcaa ggcatcggtg 780 cgtaaggcgg cgaccaaggc gccggcaaag aaggcagcgg ccaagcggcc ggctaccaag 840 gctcccgcca agaaggcaac cgctcggcgg ggtcgcaaat aggtcaagac acacggatac 900 cctttgcacg gtggcaatgt gacgaagggt atccgtgtgt taggcccgca cgttggcggc 960 cagcgcaccg ccgatgtggt cggctgtcac aagcctgccg gctgacaacg acaacaccca 1020 cgtgct 1026 <210> 3 <211> 1026 <212> DNA <213> BCG strain <400> 3 ctttgagggt gcgtgcgcgt actggaaacc gcgcactcta cccgccccct gaggcgtaga 60 accgggcgaa atttcagcgt gacccgccgg cagaacctga gccattttgg ggccgcgcca 120 ccggtcaagg gcggcaaccg gattgcgaaa aaccggtcgt tggctcagtg aaattgcgcg 180 tggctcttgg aaatcagccg ggtaagggtt taccgtgtcc actagtcggt tccaaacgag 240 gaccactggt ttcggagggt tggg atg aac aaa gca gag ctc att gac gtg 291 Met Asn Lys Ala Glu Leu Ile Asp Val 1 5 ctc aca cag aaa ttg ggc tcg gac cgt cgg cag gcg acc gcc gcc gtc 339 Leu Thr Gln Lys Leu Gly Ser Asp Arg Arg Gln Ala Thr Ala Ala Val 10 15 20 25 gag aat gtc gtt gac acg att gtg cgt gcg gta cac aaa ggc gac agc 387 Glu Asn Val Val Asp Thr Ile Val Arg Ala Val His Lys Gly Asp Ser 30 35 40 gtc acc att acc ggg ttc ggt gtg ttc gaa cag cgt cgc cgc gcg gct 435 Val Thr Ile Thr Gly Phe Gly Val Phe Glu Gln Arg Arg Arg Ala Ala 45 50 55 cga gtg gcc cgc aat ccg cgt acc ggc gag aca gta aag gtg aag ccg 483 Arg Val Ala Arg Asn Pro Arg Thr Gly Glu Thr Val Lys Val Lys Pro 60 65 70 acg tcg gtg ccg gcg ttc cgc ccg ggc gcg caa ttc aaa gcg gtt gtg 531 Thr Ser Val Pro Ala Phe Arg Pro Gly Ala Gln Phe Lys Ala Val Val 75 80 85 tct ggc gcg cag cgt ctc ccg gca gaa gga ccc gct gtt aag cgt ggt 579 Ser Gly Ala Gln Arg Leu Pro Ala Glu Gly Pro Ala Val Lys Arg Gly 90 95 100 105 gtg ggg gcc agt gca gcc aag aag gta gcg aag aag gca cct gcc aag 627 Val Gly Ala Ser Ala Ala Lys Lys Val Ala Lys Lys Ala Pro Ala Lys 110 115 120 aag gcg aca aag gcc gcc aag aag gcg gcg acc aag gcg ccc gcc aag 675 Lys Ala Thr Lys Ala Ala Lys Lys Ala Ala Thr Lys Ala Pro Ala Lys 125 130 135 aaa gcg gcg acc aag gcg ccc gcc aag aaa gct gtc aag gcc acg aag 723 Lys Ala Ala Thr Lys Ala Pro Ala Lys Lys Ala Val Lys Ala Thr Lys 140 145 150 tca ccc gcc aag aag gtg acc aag gcg gtg aag aag acc gcg gtc aag 771 Ser Pro Ala Lys Lys Val Thr Lys Ala Val Lys Lys Thr Ala Val Lys 155 160 165 gca tcg gtg cgt aag gcg gcg acc aag gcg ccg gca aag aag gca gcg 819 Ala Ser Val Arg Lys Ala Ala Thr Lys Ala Pro Ala Lys Lys Ala Ala 170 175 180 185 gcc aag cgg ccg gct acc aag gct ccc gcc aag aag gca acc gct cgg 867 Ala Lys Arg Pro Ala Thr Lys Ala Pro Ala Lys Lys Ala Thr Ala Arg 190 195 200 cgg ggt cgc aaa taggtcaaga cacacggata ccctttgcac ggtggcaatg 919 Arg Gly Arg Lys 205 tgacgaaggg tatccgtgtg ttaggcccgc acgttggcgg ccagcgcacc gccgatgtgg 979 tcggctgtca caagcctgcc ggctgacaac gacaacaccc acgtgct 1026 <210> 4 <211> 33 <212> DNA <400> 4 ggggatccgg gagggttggg atgaacaaag cag 33 <210> 5 <211> 30 <212> DNA <400> 5 gggggatcca gcacgtgggt gttgtcgttg 30 <210> 6 <211> 30 <212> DNA <400> 6 gggaagcttt ttgagggtgc gtgcgcgtac 30 <210> 7 <211> 28 <212> DNA <400> 7 ccatatgaac aaagcagagc tcattgac 28 <210> 8 <211> 30 <212> DNA <400> 8 caagcttcta tttgcgaccc cgccgagcgg 30
【図面の簡単な説明】
【図1】図1Aは蛋白−DNA相互作用をオートラジオ
グラフを示す。図1Bは、クロマトグラフのプロフィー
ルを示す。図1Cはゲル濾過カラムの結果を示す。図1
DはSDS−PAGE分析の結果を示す。
【図2】図2Aは、核酸配列及び推定アミノ酸配列を示
す。図2Bは、MDP1に相同ないくつかの蛋白質及び
アミノ酸配列のアラインメントを示すコンピューター検
索結果を示す。
【図3】図3Aは、オートラジオグラフ結果を示す。図
3B、図3C及び図3Dは、アガロースゲル電気泳動の
分析結果を示す。
【図4】図4Aは免疫電子顕微鏡試験結果を示す。図4
Bはサンプルと抗MDP1抗体との反応結果を示す。図
4CはRP−HPLCの結果(パネルa)、SDS−P
AGEによる視覚化(パネルb)を示す。
【図5】図5Aは、DNAポリメラーゼIの機能に関す
るMDP1の効果を示す。図5Bは、T7RNAポリメ
ラーゼの転写に対するMDP1の効果を示す。図5C
は、翻訳に関するMDP1の効果を示す。
【図6】M.smegmatis及び大腸菌を、各プラ
スミドを用いてトランスフォームし、プレート上で集め
た結果を示す。
【図7】図7AはSDS−PAGE結果を示す。図7B
はウエスタンブロット分析結果を示す。
【図8】抗体検出結果を示す。
【図9】精製MDP1と希釈血清の反応結果を示す。
【図10】抗MDP1血清を用いた結果を示す。
【図11】抗ヒストンH1血清を用いた結果を示す。
【図12】抗ヒストンH2血清を用いた結果を示す。
【図13】抗ヒストンH3血清を用いた結果を示す。
【図14】MDP1に対する抗体の検出結果を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松本 壮吉 長崎県西彼杵郡長与町吉無田郷1163−52 Fターム(参考) 4B024 AA01 AA13 BA31 CA03 CA09 DA05 DA06 EA04 GA11 GA14 GA19 HA14 4B064 AG01 AG31 BH09 CA02 CA10 CA19 CC24 CE03 CE07 CE11 DA01 DA15 4B065 AA26X AA36X AA36Y AA91X AB01 BA02 BA03 BD04 BD15 CA24 CA44 CA45 CA46 4H045 AA10 AA20 BA10 BA41 CA11 DA75 DA86 EA29 EA31 EA52 FA72 FA74 GA05 GA06 GA10 GA15 GA22 GA23 GA25

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1又は複数個のアミノ酸が置換、付加又は
    欠失していてもよい配列番号1(205個のアミノ酸)
    で表される病原性抗酸菌に対する免疫原性を有するポリ
    ペプチド。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のポリペプチドをコードし
    てなるDNA。
  3. 【請求項3】請求項2に記載のDNAを含むベクターま
    たは該ベクターを含む形質転換体。
  4. 【請求項4】請求項3に記載の形質転換体を培養するこ
    とを特徴とする請求項1に記載のポリペプチドの製造
    法。
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