JP2000239797A - 加工性に優れたばね用鋼およびばね用鋼線の製法 - Google Patents

加工性に優れたばね用鋼およびばね用鋼線の製法

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JP2000239797A
JP2000239797A JP33493099A JP33493099A JP2000239797A JP 2000239797 A JP2000239797 A JP 2000239797A JP 33493099 A JP33493099 A JP 33493099A JP 33493099 A JP33493099 A JP 33493099A JP 2000239797 A JP2000239797 A JP 2000239797A
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steel
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spring steel
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Sunao Yoshihara
直 吉原
Takeshi Kuroda
武司 黒田
Nobuhiko Ibaraki
信彦 茨木
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ばねの製造工程で重要なSV性および生引き
伸線性の両特性を兼ね備えたばね用鋼を提供すると共
に、該ばね用鋼を用いて優れたばね特性を有するばね用
鋼線の製法を確立すること。 【解決手段】 圧延され、あるいはその後軟化焼鈍処理
されたばね用鋼であって、下記の機械的特性を満たし、
好ましくは、金属組織が、パーライトまたはフェライト
とパーライトを主体とし過冷却組織の分率が10%以
下、横断面内のビッカース硬さが380以下で、その標
準偏差σが20以下である、加工性に優れたばね用鋼を
開示する。 引張強さ(最大値)≦1200MPa、 30%(最小値)≦絞り値≦70%(最大値)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車のエンジン
やクラッチ、燃料噴射装置、懸架装置等の構造部品に用
いられるばね用鋼と、該ばね用鋼を用いて、上記各種構
造部品の素材となる各種ばね用鋼線を製造する方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】上記の様な各種用途に用いられるばねを
製造するに当たっては、圧延線材に生じた表層欠陥(疵
や脱炭層)を除去する為の切削処理(皮削り:以下「S
V」と略称することがある)を行なった後、鉛などを用
いたパテンティング処理により調質してから伸線加工す
るのが一般的である。
【0003】近年、生産性を高めるため線速の向上が求
められているが、線速を高めるとSV治具(チッパー)
への負担が過大になってチッパー欠けを起こしたり、切
削屑が円滑に排出されなくなって皮削りされない部分が
残る等の問題が生じており、特に材料強度の高い高強度
ばね用鋼においては、SV処理時に上記の様な問題を起
こさない様な材料が強く求められている。
【0004】こうした問題に対し、軟化焼鈍処理を施す
ことによって材料強度を低下させる方法が実施されてい
るが、この軟化焼鈍だけで上記問題を完全に解消するこ
とはできない。そしてこうした問題の解決には、皮削り
前の金属組織や機械的性質が大きな影響を及ぼすと考え
られるが、現実には、該皮削り前の金属組織や機械的性
質に注目した研究はなされていない。
【0005】また同種のばね用鋼を用いる場合であって
も、それほど高い疲労特性が要求されないばねを製造す
る際には、SV処理することなく圧延線材から直接伸線
する所謂「生引き伸線」が行われている。該生引き伸線
に供される線材の製法としては、例えば特開昭57−1
16727号、同63−118013号、特開平3−7
9719号等に幾つかの方法が提案されている。
【0006】一方、ばねの製法に関する最近の技術で
は、SV処理後の鉛パテンチィングに代えて、(A)72
3〜1023Kで表面硬化層を軟化できる程度の短時間
加熱を行う方法(例えば、特開平7−188745
号)、(B)気相中において823〜973Kの加熱温度
で、且つ加熱温度T(K)と加熱時間t(分)が、T×
√t=6700〜12000(K・分)の関係を満たす
条件で熱処理する方法(例えば、特開平8−31154
7号)等の技術が提案されている。
【0007】これらの技術では、圧延組織を殆ど残した
所謂「非調質処理」が行なわれているが、こうした状況
の下では、良好なSV性と共に、圧延組織から伸線する
生引き伸線性という2つの特性を確保することが必要に
なってくる。
【0008】また、伸線メーカーによっては、SV処理
の有り・無しのどちらの工程でも製造できる様に、SV
性と生引き伸線性の両特性を確保することが必要となる
が、これら両特性の両立に関しては、これまで全く考慮
されたことがなく、またこれまで提案されている技術で
は、SV性と生引き伸線性の両特性を確保するには不十
分である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこうした状況
の下でなされたものであって、その目的は、ばねの製造
工程において重要なSV性および生引き伸線性の両特性
を兼ね備えたばね用鋼を提供し、更には、該ばね用鋼を
用いて良好なばね特性を発揮するばね用鋼線を製造する
為の有用な方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成し得た本
発明のばね用鋼とは、圧延され、あるいは圧延後下記の
条件で軟化焼鈍されたばね用鋼であって、皮削り処理前
の状態で下記の機械的特性を満足する点に要旨を有して
いる。 引張強さ(最大値)≦1200MPa、 30%(最小値)≦絞り値≦70%(最大値) 軟化焼鈍処理:気相中において、873〜1023Kの
加熱温度で、且つ加熱温度T(K)と加熱時間t(分)
が、T×√t=7300〜15000(K・分)の関係
を満たす熱処理。
【0011】上記本発明のばね用鋼においては、更に他
の特性として (1)金属組織がパーライトまたはフェライトとパーライ
トを主体とし、過冷却組織の分率が10%以下の組織を
有すること、(2)横断面内のビッカース硬さの標準偏差
σが20以下であること、(3)横断面内のビッカース硬
さ(Hv)の最大値が380以下であること、といった
要件を満たすものは、ばね用鋼として一層優れたものと
なるので好ましい。
【0012】また本発明に係るばね用鋼線の製法とは、
上記要件を満たすばね用鋼を使用し、皮削り処理後に下
記(a)〜(c)のいずれかの処理を行なってから、オイルテ
ンパー処理を施すところに要旨を有している。
【0013】(a)皮削り処理後、パテンティング処理を
行なう、(b)皮削り処理後、気相中において823〜9
73Kの加熱温度で、且つ加熱 温度T(K)と加熱時間t(分)が、T×√t=670
0〜12000 (K・分)の関係を満たす範囲で熱処理する、 (C)皮削り処理後、723〜1023Kで表面硬化層を
軟化させる短時間加熱を行なう。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明者らは、上記課題を解決す
るため様々の角度から検討を行なった。その結果、圧延
後、もしくは圧延後更に軟化焼鈍処理の施された状態で
のばね用鋼の機械的特性を適切に調整してやれば、上記
目的が見事に達成されることを見出し、本発明を完成し
た。以下、本発明で定める各要件について詳細に説明し
ていく。
【0015】本発明では、上記の様に引張強さと絞り値
を適切な範囲に規定するもので、これらの範囲を限定し
た理由は次の通りである。
【0016】ばね用の圧延鋼線材をSV処理するに当た
っては、SV処理が切削の一種であることから分かる様
に、材料強度が高過ぎると、線速を上げない場合でもチ
ッパーに過大な負荷がかかり、チッパーが欠けて皮削り
ができなくなったり、線材に筋状の欠陥が発生し線材製
品として使用できなくなることがある。こうした不都合
を回避するには、SV処理に付される材料を軟質化する
必要があり、そのためには引張強さの最大値を1200
MPa以下に抑えなければならない。
【0017】また伸線加工を行なう際にも、引張強さが
高過ぎると断線を起こし易く、特に金属組織中にマルテ
ンサイトやベイナイトの如く非常に硬い過冷却組織が存
在すると、そこを起点として断線が発生するので引張強
さは低く抑えるべきであり、こうした観点からしても引
張強さの最大値は1200MPa以下、より好ましくは
1100MPa以下に抑えるべきである。なお引張強さ
の下限は特に限定されないが、後述するSV処理時の切
り屑処理性を高める上では、900MPa以上であるこ
とが望ましい。
【0018】一方、SV処理性を左右する他の要因とし
ては、SV処理したときに発生する切り屑の排出性も問
題となる。即ち、切り屑の分断性が悪い場合には、切り
屑がチッパー近傍で滞留して線材に絡みつく現象が起こ
り、切り屑がチッパー部分で線材を押し付けるため、線
材が円周方向で均一に皮削りされず一様な表面疵の除去
ができなくなる。そこで、切り屑の分断性を良好にして
その排出が容易に行なわれる様にすることが必要となる
が、その為には、材料の靱延性を過度に高くしないこと
が有効な手段と考えられる。そこでこうした観点から、
本発明では材料の靱延性の指標である絞り値の最大値を
70%以下と定めた。より好ましい最大絞り値は60%
以下である。
【0019】他方、引張強さを低く抑えた場合でも、靱
延性に乏しい粗パーライト組織(ラメラ間隔が大きい組
織)が存在すると、該組織の部分でシェブロンクラック
が発生して断線の原因になることがある。従って、ある
程度の靱延性を確保することも必要であり、その指標で
ある絞り値の最小値を少なくとも30%以上と定めてい
る。安定して高い伸線性を確保するには、該最小絞り値
を40%以上とすることが望ましい。
【0020】なお上記では、圧延ままの状態での引張強
さと絞り率を定めた理由について説明したが、圧延まま
の状態で上記引張強さや絞り率の好適範囲を外れるもの
であっても、これに適正な軟化焼鈍処理を施すことによ
って上記引張強さと絞り値の要件を満たす様に調質処理
されたものであれば、軟化焼鈍済みのばね用鋼として同
様に有効に使用できる。
【0021】該軟化焼鈍処理条件として本発明では、加
熱温度Tを873〜1023Kの範囲とし、該加熱温度
T(K)と加熱時間t(分)が、「T×√t=7300
〜15000(K・分)」の関係を満たす条件を定めて
おり、これらの条件を定めた理由は次の通りである。
【0022】即ち、高温域で焼鈍を施した場合は、線材
中のセメンタイトが球状化して伸線中央部にシェブロン
クラックが発生し、伸線による減面率が大きくなると断
線を生じ易くなる。また、セメンタイトが球状化しない
程度の比較的低い温度で焼鈍した場合でも、伸線中に断
線を起こすことがあり、この断線は、圧延線材の延性不
足に起因していることが確認された。即ち、焼鈍温度が
比較的低い場合は、圧延組織がそのまま熱処理後も引き
継がれ、圧延線材の組織が主として延性に乏しい粗パー
ライトである場合には、焼鈍後の伸線工程において上記
シェブロンクラックが発生し易く断線に至るのである。
また、たとえ伸線中に断線しなくても、上記シェブロン
クラックが内在したままでばね成形を行なうと、折損し
てしまうこともある。
【0023】そこでこうした知見を基に、断線などを生
じることなく伸線加工およびばね加工を円滑に遂行可能
にするための要件として、圧延後の熱処理における加熱
温度および加熱時間の関係を追求した結果、上記関係式
を導くに至ったものである。
【0024】尚、本発明で定める前記絞り値(Reductio
n of Area)とは、引張り試験において、試験片破断後
における最小断面積A'とその原断面積Aとの差を原断
面積Aで割った値を%で表わしたものである[即ち、絞
り値=100×(A−A')/A]。
【0025】本発明では、上記機械的特性を制御するこ
とによって、図1に示す如くSV処理性と生引き性の両
特性を兼ね備えたものを得ることが可能となる。即ち図
1は、鋼材の機械的特性(引張強さおよび絞り値)が、
加工性に及ぼす影響を整理して示したグラフであり、○
印は伸線性およびSV処理性のいずれにおいても良好な
特性を有するものであり(これらの評価基準については
後記実施例参照)、×印は、上記機械的特性の一方また
は両方を欠如するばね用鋼であることを表わしている。
なお図1において、引張強さは各ばね用鋼材の最大値、
絞り値は各ばね用鋼材の最大値または最小値でプロット
したものである。
【0026】本発明者らは、上記発明を完成した後も鋼
材の特性を更に改善すべく更なる検討を加えた。その結
果、より安定した製造性を確保するには、下記の要件を
満足させることが好ましいとの知見を得た。
【0027】まず生引き伸線を行なう場合においても、
ばね用鋼の断面内に見られる部分的な微細組織等の変動
が少なからず影響を及ぼし、断面内の硬さのばらつきも
極力小さくすべきであることを知った。即ち、ばね用鋼
線材の横断面内におけるビッカース硬さのばらつきが大
きいと、横断面内での変形能に差が生じ、厳しい製造条
件下で断線を起こしたり、或いはばね成形時に折損の原
因となるシェブロンクラックが発生し易くなるが、該横
断面内の硬さのばらつきを極力抑えてやれば、それらの
問題を低減できることが確認された。従って本発明にお
いては、横断面内におけるビッカース硬さの標準偏差σ
を20以下、より好ましくは15以下に抑えることが好
ましい。
【0028】一方SV処理を行なう場合には、部分的に
強度の高い部分が存在すると、当該高強度部分でチッパ
ーにかかる負荷が大きくなり、チッパーの摩耗量が大き
くなってチッパー径が大きくなり、目標の削り代が得ら
れなくなることがある。ところが上記引張強さは、鋼材
の断面全体の強度を示すものであるから、断面内の部分
的な強度変化までは把握できない。
【0029】そこで、断面内のこうした部分的な強度変
化についても正確に制御すべく、該断面内の硬さに注目
して検討を重ねた結果、上記引張強さに加えて、ばね用
鋼線材の横断面内におけるビッカース硬さ(Hv)の最
大値を380以下、より好ましくは370以下に抑える
ことが極めて有効であることを見出した。
【0030】ところで、金属組織中にマルテンサイトや
ベイナイト等の過冷却組織が存在する場合には、軟化焼
鈍処理を施すことによって硬さが低下するので、ある程
度の伸線性は確保される。しかし軟化した過冷却組織
は、硬さの点でパーライト組織等とそれほどの違いはな
くなるにしても、伸線加工による変形能が異なるため、
非常に厳しい伸線加工条件下では断線が発生したり、ば
ね成形時の折損原因となるシェブロンクラックが発生す
ることが判明した。
【0031】そして本発明者らが更に研究を進めたとこ
ろによると、こうした問題発生の確率は、金属組織中に
存在する過冷却組織の分率が小さくなるほど低くなり、
その分率を10%以下、好ましくは5%以下に抑え、実
質的にパーライトまたはパーライト+フェライトを主体
とする組織に制御すれば良いことが明らかとなった。
【0032】なお、本発明で定める前記硬さや微細組織
の測定法としては、下記の方法を採用した。
【0033】まず硬さの測定は、ばね用鋼線材の横断面
において、D/16,D/8,D/4の各位置から少な
くとも4点以上と、D/2の位置(ここで、Dは線材の
直径を意味する)から13点以上をピックアップし、ビ
カース硬さ測定法(JISZ 2244)によって測定
した。また微細組織の測定は、ばね用鋼線材の横断面を
光学顕微鏡で観察し、過冷却組織の面積率を求めた。尚
この面積率の測定には画像解析装置を用いることが好ま
しい。
【0034】本発明で対象となるばね用鋼線の種類は特
に限定されないが、一般的なものとしては、製造過程で
SV処理や伸線処理が行なわれるばね用鋼線であって、
JIS規格のG 3522,G 3560,G 356
1等に規定されるSWOSC−V等の如く、ばね用鋼線
に加工されるものが例示される。
【0035】また、本発明にかかるばね用鋼の化学成分
にも特に制限がなく、要は、優れた機械的性質(引張強
さ、伸び、絞り)が得られ易く、且つ伸線加工中に加工
硬化し過ぎて伸線性を劣化させない、等の特性を総合的
に判断して決定すればよいが、具体的には次の様な化学
成分組成を有するものが好ましい。
【0036】即ち、本発明の対象となるばね用鋼の好ま
しい化学成分組成としては、C:0.38〜0.85%
(質量%の意味、以下同じ),Si:0.25〜2.1
0%,Mn:0.2〜1.0%を含有すると共に、P<
0.035%,S<0.035%に抑えられ、必要によ
っては、Cr:0.65〜1.5%,Mo:0.1〜
0.5%,V:0.05〜0.50%,Ni:0.2〜
0.5%,Nb:0.02〜0.50%,Ti:0.0
2〜0.09%およびCu:0.10〜0.30%より
なる群から選ばれる1種以上を合計で2.5%程度以下
の量で含有する鋼材が例示される。残部成分はFeおよ
び不可避不純物であるが、要求特性によっては更に他の
元素を積極的に含有する鋼材を使用することも可能であ
る。
【0037】ところで、本発明で定める前記要件を満足
させる為の手段は特に限定されないが、好ましい手段と
しては、例えば鋼材の偏析がCmax/C0(最大値/レー
ドル値)が1.2以下であるものを用い、熱間圧延時に
おける仕上げ圧延後・巻取り直前の温度を850℃(1
123K)以下に抑え、巻取り後の冷却速度を、[Ps
点(パーライト変態開始温度)+15℃]から[Pf点
(パーライト変態終了温度)−15℃]の範囲で、1〜
4℃/secとして冷却することが有効である。
【0038】本発明のばね用鋼を用いてSV処理を行な
った後に、下記(a)〜(c)のいずれかの処理を行なってか
ら、オイルテンパー処理を施したところ、いずれも問題
なくばね用鋼線が製造できることを確認した。また、該
オイルテンパー線を、D/d(D:ばねの平均径、d:
線径)=2の条件で巻き付け試験を行なったところ、全
く折損することなく、ばねの加工性も確保できることが
確認できた。
【0039】(a)皮削り処理後、パテンティング処理を
実施する、(b)皮削り処理後、気相中において823〜
973Kの加熱温度で、且つ加熱温度T(K)と加熱時
間t(分)が、T×√t=6700〜12000(K・
分)の関係を満足する範囲で熱処理する、(c)皮削り処
理後、450〜750℃(723〜1023K)で表面
硬化層を軟化させる短時間加熱を行なう。
【0040】以下、本発明を実施例によって更に詳細に
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変
更して実施することも可能であり、それらはいずれも本
発明の技術的範囲に含まれる。
【0041】
【実施例】下記表1に示す化学成分を有するJIS規格
SUP12のばね用鋼(Si−Cr系ばね用鋼)を、直
径:8.0mmに圧延して線材を作製した。このとき鋼
片の偏析は、Cmax/C0が1.0〜1.5のものを使用
し、圧延の際に仕上げ圧延後巻き取り直前の温度を80
0〜1050℃(1073〜1323K)、巻取り後の
冷却速度を0.1〜10℃/secとした。また、特性
値を変化させるため、温度を600〜700℃(873
〜973K)、保持時間を2〜5時間の範囲で変えて焼
鈍処理を行なった。
【0042】
【表1】
【0043】得られた線材を横断面方向に切断し、埋め
込み研磨してからビッカース硬さを測定した。また、横
断面を埋め込み研磨した後、酸腐食させてから光学顕微
鏡で組織観察を行ない、画像処理することによって微細
組織の分率を測定した。尚、硬さ測定に当たっては、前
述の如くD/16,D/8,D/4を夫々4個所と、D
/2(D:線材の直径)の13点を測定した。また、線
材の機械的特性は、約30cmに切断したものを100
本採取し、引張試験機を用いて引張強さおよび絞り値を
測定した。
【0044】得られた線材を用い、酸洗い及びリン酸亜
鉛皮膜処理を施した後、SV処理性および伸線性を調べ
た。このとき、SV処理性は、D1ダイス:7.7mm
φ、SVチッパー:7.4mmφを用いて行なった。ま
た線速は、通常50〜70m/minの範囲で行なわれ
ているが、この実験では、SVチッパー欠け等の問題を
起こし易くして本発明の効果をより鮮明にするため、8
0m/minの線速で行なった。また、線速80m/m
inで問題のなかった鋼材については、更に線速を10
0m/minに高めて更なる発明の効果を確認した。
【0045】また伸線性の評価については、アプローチ
角度12°前後の伸線ダイスが一般的に用いられるが、
この実験では、カッピー断面等を起こし易くして本発明
の効果がより明確に現れる様、20°のアプローチ角度
を採用した。また20°のダイスで問題のなかった鋼材
については、工業的には殆ど使用されることのない厳し
い条件である30°のアプローチ角のダイスを使用して
本発明の効果を確認した。
【0046】更に、各伸線性の評価条件で伸線すること
のできた直径:3.35mmの線材を用いて強度1,9
50MPaのオイルテンパー線を作製し、D/d=2の
巻付け試験を行なって、折損の有無により発明の効果
(巻付け性)を確認した。鋼材の機械的性質を下記表2
に、評価結果を下記表3に一括して示す。尚、下記表2
に示したSV性、伸線性および巻付け性の各評価基準は
下記の通りである。
【0047】(SV性) ○:問題なし △:SV性に問題はなかったが、やや増径あり ×:チッパー欠け等の問題発生 (伸線性) ○:減面率80%以上で伸線可 ×:断線発生 (巻付け性) ○: 折損なし ×:折損発生
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】これらの結果より次の様に考察できる。
【0051】まずSV性の評価については、引張強さの
高かった比較例のC−1,C−2およびC−5では、線
速が80m/minのときにチッパー欠けが起こった。
またそれら以外の鋼材については線速を100m/mi
nに上げたところ、C−4のでは、切り屑がチッパー部
で線材に絡み付き、チッパー部分で切り屑が線材を押し
付けたため、SV材に削れていない部分が発生してい
た。
【0052】B−3およびB−5については、SV処理
時に問題を生じることはなかったが、SV処理の始めと
終わりで、チッパー径の+0.05mmの増径が認めら
れた。これに対し他の鋼材では、SV処理性に問題を生
じることがないばかりか、チッパー径の増径も+0.0
2mm以内と良好であった。
【0053】一方、アプローチ角20°のダイスを用い
て行なった伸線性評価では、C−1,C−3およびC−
5の引張強さが高いか絞り値が低い材料で、カッピー断
線が起こった。その他の材料は、直径:3.35mmま
で伸線できたので、オイルテンパー線に加工後巻付け試
験を行なったところ、C−2ではカッピー状の折損が認
められた。
【0054】そして、A−1,A−2,B−1〜B−6
およびC−4の鋼材では、いずれも優れた伸線性を示す
ことが確認できた。そこで、それらの鋼材を使用し、ア
プローチ角度30°のダイスを用いて伸線加工を行なう
ことにより発明の効果を確認した。
【0055】その結果、B−1およびB−6では、減面
率が80%を超えるまでにカッピー断線が起こった。ま
た、伸線できたA−1,A−2,B−2〜B−5につい
てオイルテンパー線に加工後巻付け試験を行なったとこ
ろ、B−2,B−4,B−5では、カッピー状の折損が
発生した。
【0056】以上の結果から、SV性、生引き伸線性の
両方を満足するには、A−1,A−2およびB−1〜B
−6の特性が最低限必要であることが判明した。また、
如何なる条件下でも安定した製造性を確保するには、A
−1およびA−2の特性を具備していることが好ましい
ことが判明した。
【0057】また、前記と同じ化学成分の鋼材を使用
し、圧延条件を種々変えて表4に示す如く引張強さを高
めた圧延材を使用し、これに種々の軟化焼鈍処理を施し
て引張強さと絞り値を調整した線材について同様にして
物性およびSV性を調べ、表4に示す結果を得た。
【0058】
【表4】
【0059】表4の実験例では、圧延時に□155mm
から直径8.0mmに圧下して引張強さを高めた線材を
用いたもので、軟化焼鈍処理を施すことにより、引張強
さを下げると共に絞り値を高めたものである。
【0060】表4からも明らかな様に、圧延状態で引張
強さが過大で絞り率の低い線材であっても、これに好適
な条件で軟化焼鈍処理を施して適正な引張強さと絞り値
を与えたもの、特に符号5および7の軟化焼鈍線材で
は、優れたSV性を示すことが分かる。
【0061】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、ば
ねの製造工程で重要なSV性と生引き伸線性の両特性を
確保したばね用鋼を得ることができ、該ばね用鋼を用い
て所定の条件で処理することによって、優れたばね特性
を発揮するばね用鋼線材を提供し得ることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼材の機械的特性(引張強さ,絞り値)が加工
性に及ぼす影響を示したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 茨木 信彦 神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会社神戸 製鋼所神戸製鉄所内 Fターム(参考) 4K043 AA02 AB04 AB05 AB10 AB15 AB25 AB26 AB27 AB28 BA04 BA05 BA06 DA00 DA05 FA03 FA07 FA11

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧延されたばね用鋼であって、下記の機
    械的特性を満たすことを特徴とする加工性に優れたばね
    用鋼。 引張強さ(最大値)≦1200MPa、 30%(最小値)≦絞り値≦70%(最大値)
  2. 【請求項2】 ばね用鋼が、圧延後に下記の条件で軟化
    焼鈍処理されたものである請求項1に記載のばね用鋼。 軟化焼鈍処理:気相中において、873〜1023Kの
    加熱温度で、且つ加熱温度T(K)と加熱時間t(分)
    が、T×√t=7300〜15000(K・分)の関係
    を満たす熱処理。
  3. 【請求項3】 金属組織が、パーライトまたはフェライ
    トとパーライトを主体とし、過冷却組織の分率が10%
    以下である請求項1または2に記載のばね用鋼。
  4. 【請求項4】 横断面内のビッカース硬さ(Hv)の標
    準偏差σが20以下である請求項1〜3のいずれかに記
    載のばね用鋼。
  5. 【請求項5】 横断面内のビッカース硬さ(Hv)の最
    大値が380以下である請求項1〜4のいずれかに記載
    のばね用鋼。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載のばね用
    鋼を用い、皮削り処理後、或いは伸線の後に、下記(a)
    〜(c)のいずれかの処理を行なった後、オイルテンパー
    処理を施すことを特徴とするばね用鋼線の製法。 (a)皮削り処理後、パテンティング処理を行なう、 (b)皮削り処理後、気相中において823〜973Kの
    加熱温度で、且つ加熱温度T(K)と加熱時間t(分)
    が、T×√t=6700〜12000(K・分)の関係
    を満足する範囲で熱処理する、 (c)皮削り処理後、723〜1023Kで表面硬化層を
    軟化させる短時間加熱を行なう。
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