JP2000248330A - 加工性,急速熱処理性及び急速熱処理後の疲労特性に優れた低合金鋼鋼板 - Google Patents

加工性,急速熱処理性及び急速熱処理後の疲労特性に優れた低合金鋼鋼板

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JP2000248330A
JP2000248330A JP5286699A JP5286699A JP2000248330A JP 2000248330 A JP2000248330 A JP 2000248330A JP 5286699 A JP5286699 A JP 5286699A JP 5286699 A JP5286699 A JP 5286699A JP 2000248330 A JP2000248330 A JP 2000248330A
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English (en)
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Terushi Hiramatsu
昭史 平松
Naoto Okubo
直人 大久保
Koji Omosako
浩次 面迫
Makoto Akizuki
誠 秋月
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 穴拡げ性,精密打抜き性,熱処理性に優れ、
各種機械部品に使用される低合金鋼鋼板を提供する。 【構成】 この低合金鋼鋼板は、C:0.15〜0.5
0%,Si:0.30%以下,Mn:0.3〜1.0
%,P:0.03%以下,S:0.01%以下,Ti:
0.01〜0.15%,B:0.0005〜0.005
0%,N:0.01%以下,Al:0.02〜0.10
%,Cr:0〜0.5%を含み、P含有量とB含有量と
の間に[%P]≦6×[%B]+0.005を満足する
組成をもつ。鋼中に分散析出している炭化物は、平均粒
径が0.4〜1.0μmに、球状化率が好ましくは90
%以上に調整されている。また、鋼板の表面粗さは、R
a≦5μmである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子ビーム等の高密度
エネルギビームを照射して鋼板表層部を加熱した後で自
己冷却させることにより表層に硬化層を形成する急速熱
処理に適した低合金鋼鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車搭載用機械部品等では、強度,疲
労特性,耐摩耗性を確保するため普通鋼に浸炭,窒化等
の硬化処理を施し、或いは特殊鋼を焼入れ焼戻しして使
用することが一般的であった。近年では、コスト低減を
図るため、強度,疲労特性,靭性,耐摩耗性等が要求さ
れる部位のみを局部熱処理する方法が採用されている。
局部熱処理としては、必要個所を高周波誘導加熱する方
法,高密度エネルギビームを照射して加熱する方法等が
採用されている。高密度エネルギビームを用いた熱処理
法は、特に複雑形状をもつ部品の必要最小限の部位のみ
を熱処理できる長所をもっている。
【0003】高密度エネルギビームを用いた熱処理で
は、適用する部品や部位に応じて素材の加工性及び強度
を最適化すると共に、高密度エネルギビーム照射された
熱処理部に所望の強度及び用途に応じた疲労特性や耐摩
耗性等を付与することが要求される。素材の加工性に関
しては、従来加工性に難点があった炭素鋼でも加工を簡
略化するため冷間鍛造性,穴拡げ性,精密打抜き性等の
局部的延性が一層要求されるようになってきている。ま
た、高密度エネルギビーム照射で加熱された熱処理部が
高強度化されるため、疲労特性や耐摩耗性の観点から表
面を極力平滑な状態にする必要がある。
【0004】高密度エネルギビーム照射で鋼板表面に硬
化層を形成する方法が特開平10−121125号公報
に紹介されている。この方法では、高密度エネルギビー
ムとして電子ビームを用い、熱処理時の溶融・凝固部及
び熱影響部の深さ,換言すると硬化層の深さを確保して
いる。対象鋼種は、S50C,S10C等の炭素鋼,S
NCM,SCR,SCM等の合金鋼,SK,SKS等の
工具鋼といった比較的一般的な鋼種であり、高密度エネ
ルギビーム照射による熱処理性や熱処理前の加工性・成
形性を考慮した鋼種ではない。また、高密度エネルギビ
ーム照射による溶融部の幅,加工速度に応じて高密度エ
ネルギビームの出力,照射時間を最適化することによ
り、鋼板表面の波打ちを抑制し、溶融深さに影響される
表面処理部の表面状態を良好に維持することも開示され
ている。ところが、高密度エネルギビームを用いた熱処
理では、本発明者等による調査・研究の結果から波打ち
以外にもクレータ状の表面欠陥が生じ、性能を劣化させ
ることが明らかになった。
【0005】高密度エネルギビームとしてレーザビーム
を用い、板厚方向に貫通する熱処理を施す方法も知られ
ている(特開平6−73438号公報,特開平6−73
439号公報,特開平6−73440号公報,特開平6
−73441号公報,特開平6−73442号公報,特
開平6−73443号公報)。たとえば、特開平6−7
3440号公報では、球状化炭化物組織又はパーライト
組織をもつ鋼板について炭化物組織の微細化及び合金成
分の規定により加工性を維持しつつレーザビーム照射に
よる高強度化を図っている。しかし、素材の加工性に関
しては、局部的な延性に関する解明が十分でない。レー
ザビーム照射後の表面状態も明らかでなく、レーザビー
ム照射後の材料特性に関しては強度が取り上げられてい
るが疲労特性については開示されていない。
【0006】加工性に関しては、合金組成の調整により
鍛造時の変形抵抗や割れ限界を改善することにより優れ
た冷間鍛造性を付与した低合金鋼が特開平4−3580
41号公報,特開平9−272946号公報,特開平7
−242989号公報等に紹介されている。また、特開
平8−337843号公報では、合金組成の調整,熱延
終了後の冷却速度及び熱延巻取り温度を規制することに
より、一般的な打抜き加工性を改善した高炭素熱延鋼板
が紹介されている。しかし、加工性のなかでも穴拡げ性
や、素材を拘束し且つクリアランスがほとんどない状態
での精密打抜き加工性等の局部的な延性を改善する手段
が明らかにされていない。また、高密度エネルギビーム
照射による熱処理性や熱処理後の疲労特性についても解
明されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来開示
されている高密度エネルギビーム照射を利用した熱処理
では、素材の穴拡げ性,精密打抜き性等の局部的な延性
を改善し、溶融・凝固部及び熱影響部の深さ(硬化層の
深さ)をより大きくし、溶融深さに影響される表面処理
部を良好な表面状態に保ち、更に熱処理後の疲労特性に
優れた鋼板に関しては十分に明らかにされていない。そ
こで、本発明は、素材の穴拡げ性,精密打抜き性等の局
部的な延性を改善し、高密度エネルギビームの照射によ
り生じる硬化層の深さをより大きくし、溶融深さに影響
される表面処理部の表面状態を良好に維持し、更に熱処
理後の疲労特性に優れた鋼板を提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の低合金鋼鋼板
は、その目的を達成するため、C:0.15〜0.50
重量%,Si:0.30重量%以下,Mn:0.3〜
1.0重量%,P:0.03重量%以下,S:0.01
重量%以下,Ti:0.01〜0.15重量%,B:
0.0005〜0.0050重量%,N:0.01重量
%以下,Al:0.02〜0.10重量%,必要に応じ
Cr:0.5重量%以下,残部が実質的にFeの組成を
もち、P含有量とB含有量との間に[%P]≦6×[%
B]+0.005の関係が成立しており、平均粒径0.
4〜1.0μmの炭化物がフェライトマトリックスに分
散している球状化炭化物組織を呈し、表面粗さがRa≦
5μmであることを特徴とする。ポンチ,ダイス等の性
状を良好に維持し、穴拡げ性を一層向上させるために
は、鋼板中に析出分散している炭化物球状化率を90%
以上にすることが好ましい。
【0009】
【作用】本発明者等は、加工性に優れ且つ高密度エネル
ギビーム照射による熱処理性及び熱処理後の疲労特性に
優れた低合金鋼が得られる条件について種々調査・研究
した。その結果、(1)加工性のなかでも穴拡げ性や精
密打抜き性は切欠き引張伸び(ElV 値)と密接な関係
にあること、(2)一般的な打抜き加工性や曲げ加工性
が向上する場合でも切欠き引張伸びが改善されるとは限
らないこと、(3)軟質さや切欠き引張伸びは鋼板中に
析出している炭化物の分散形態に大きく依存し、炭化物
の一層の球状化及び平均粒径を大きくすることによって
改善されること、及び(4)単に炭化物を球状化させる
だけでは切欠き引張伸びが安定して改善されないことを
知見した。
【0010】局部的な延性が要求される精密打抜き加工
の良否は、打抜き面における破断面の生成難易度により
判断される。破断面の生成は、加工変形中に生じる非常
に局部的な欠陥によって敏感に引き起こされるものと考
えられる。穴拡げ性では、打抜き加工で局部的に変形し
た個所に更に局部変形が加えられる。したがって、穴拡
げ性や精密打抜き性は、局部延性の指標である切欠き引
張伸び(ElV 値)と強い相関関係をもつ。炭素鋼板で
は、炭化物(セメンタイト)を起点として生じたミクロ
ボイドの成長(連結)が局部的な欠陥の生成原因に挙げ
られる。したがって、炭素鋼板の穴拡げ性,換言すると
切欠き引張伸びの改善には、加工変形時にミクロボイド
の生成・成長が可能な限り抑制される金属組織の調整が
重要であると考えられる。他の一般的な加工性の改善に
伴って切欠き引張伸びが必ずしも同様に改善されないこ
とは、他の加工性に影響を及ぼさないミクロ的な欠陥が
切欠き引張伸びに対し敏感に影響することが原因と推察
される。
【0011】このような考察に基づき種々の実験を繰り
返した結果、鋼板中に分散している炭化物の粒径を大き
くすることにより、個々の炭化物を起点として生成した
ミクロボイドの連結が抑制され、穴拡げ性や精密打抜き
性等の局部的な延性、すなわち切欠き引張伸びが顕著に
改善されることを確認した。更に、分散している炭化物
の球状化率を高めることも、ミクロボイドの生成自体を
抑制する上で効果的であることが判った。切欠き引張伸
びの改善には、鋼板の成分のうちC量及びMn量の低下
が有利であるが、C量,Mn量の低下は焼入れ性,焼入
れ硬さの確保等の熱処理性を劣化させ易い。熱処理性の
低下を抑制して切欠き引張伸びを改善するには、適量の
Ti,B,Cr等の添加が有効である。Ti,B,Cr
等を添加して成分調整すると、高密度エネルギビーム照
射による熱処理性も向上する。以上のように、プレスに
よる精密打抜き性,穴拡げ性等の改善には、炭化物粒径
の調整で切欠き引張伸びを向上させることが重要であ
る。そこで、炭化物粒径を種々変化させた鋼板を精密打
抜き加工し、精密打抜き性に及ぼす炭化物粒径の影響を
調査した。
【0012】炭化物粒径を立体的に正確に把握して規制
することは難しく、製品鋼板の適否を判定する上でも煩
雑である。これに対し、鋼板断面の平面的な金属組織を
観察することは容易である。そこで、本発明者等は、鋼
板断面の金属組織に観察される炭化物形状から平均粒径
及び球状化率を求める方法を採用した。平均炭化物粒径
は、鋼板断面の金属組織を観察した視野において個々の
炭化物の円相当半径を測定し、全測定炭化物について平
均した値で表わされる。具体的には、画像処理装置を用
いて個々の炭化物の面積を測定し、測定した全ての炭化
物の円相当径の総和を求め、測定した炭化物の総数で除
すことにより平均炭化物粒径が算出される。観察視野
は、測定結果の信頼性を高めるため、総数で300個以
上の炭化物が析出している領域に設定することが好まし
い。
【0013】炭化物球状化率は、同様の観察視野におい
て炭化物総数に占める炭化物の最大長さpを特定し、最
大長さpに直交する方向の最大長さqとの比p/qが3
未満である炭化物の数の割合(%)で示される。本件明
細書では、比p/qが3未満である炭化物を球状化炭化
物という。たとえば、再生パーライトの炭化物ではほと
んどが3以上の比p/qになっており、Ac1 変態点以
上の加熱で残留した未溶解炭化物を起点として成長した
炭化物では比p/qが3未満になっている。精密打抜き
性や穴拡げ性に要求される局部延性は、切欠き引張伸び
で表わすことができる。切欠き引張伸びは、JIS 5
号試験片の平行部長手方向中央位置における幅方向両側
に開き角45度,深さ2mmのVノッチを形成した試験
片を用いて引張り試験し、Vノッチを含む標点間距離5
mmに対する伸び率を試験片の破断後に求めたElV
が使用される。
【0014】炭化物の平均粒径と精密打抜き性との関係
を調査した結果では、炭化物の平均粒径を0.4μm以
上に大きくすると、ほぼ100%剪断面からなる良好な
打抜き面性状が得られることが判った。穴拡げ性試験で
も、平均粒径0.4μm以上の炭化物が析出している鋼
板では穴拡げ性の向上が確認された。また、炭化物の球
状化率を90%以上にすると、ポンチ及びダイスの性状
も良好に維持され、穴拡げ性が更に向上する。大きな炭
化物粒径は加工性向上には重要であるが、平均粒径が
1.0μmを超えると結晶粒界に存在する炭化物が優先
的に成長し易くなる。結晶粒界は、結晶粒内に比較して
強度が低く、粗大炭化物が存在すると変形能も低下す
る。すなわち、大きな炭化物は局部的な延性(換言する
と、切欠き引張伸び)を低下させる原因となるので、本
発明においては炭化物平均粒径の上限を1.0μmに設
定した。
【0015】平均粒径0.4〜1.0μmの炭化物を分
散させ、炭化物の球状化率を90%以上とした組織をも
つ鋼板は、焼鈍方法の改善により製造される。焼鈍方法
としては、鋼板のAc1 変態点直下での均熱,Ac1
態点の直下及び直上の特定温度域における加熱を適正に
組み合わせた焼鈍等が採用される。具体的には、熱延鋼
板又は冷延鋼板に(Ac1 −50℃)〜Ac1 未満の温
度域で0.5時間以上保持する1段目の加熱,Ac1
(Ac1 +100℃)の温度域で0.5〜20時間保持
する2段目の加熱,(Ar1 −80℃)〜Ar1 の温度
域で2〜60時間保持する3段目の加熱を連続して施
し、且つ2段目の保持温度から3段目の保持温度への冷
却速度を5〜30℃/時とする3段階焼鈍によって、本
発明で規定する炭化物が適正に分散し、炭化物球状化率
が90%以上の金属組織をもつ鋼板が製造される。
【0016】製造された鋼板の熱処理性は、効率よく硬
化層を板厚方向に深く形成させることで判定される。高
密度エネルギビーム照射された熱処理部は、高強度化さ
れるため疲労特性,耐摩耗性も向上する。熱処理に際し
ては、硬化層の表面を極力平滑にすること、熱処理後の
疲労特性を改善することも重要な要因になる。そこで、
種々の組成に調整された鋼板を高密度エネルギビームを
用いた熱処理実験に供し、硬化層の形成,各種機械的特
性等を調査した。高密度エネルギビーム照射による熱処
理では、効率よく板厚方向に深い硬化層が形成されるも
のほど熱処理性が良いとされている。硬化層が深く形成
されると、耐摩耗性,寿命が向上し、表面の圧縮残留応
力を大きくできるため疲労強度も向上する。そこで、本
発明者等は、高密度エネルギビームとして電子ビームを
用いて種々の組成をもつ鋼板を熱処理し、合金組成が熱
処理性に及ぼす影響を調査した。その結果、一般的な炭
素鋼や機械構造用鋼に比較して、加工性を劣化させない
ようにC,Si,Mn,Cr含有量を調整し、更に適当
量のBを添加した鋼板では硬化層深さが1.5倍程度大
きくなることを見出した。
【0017】炭化物の平均粒径も熱処理性に影響を及ぼ
す。炭化物の平均粒径が大きいと、高密度エネルギビー
ム照射のように非常に短時間の加熱では炭化物が十分に
固溶せず、熱処理性を劣化させることがある。熱処理性
を顕著に劣化させないためには、炭化物の平均粒径を
1.0μm以下に規制することが必要であり、1.0μ
mを超える大径の炭化物では固溶せずに残留する虞れも
ある。硬化層の表面性状は、素材鋼板の表面粗さに影響
される。熱処理前の表面粗さが大きいと、熱処理された
鋼板表面にクレータ状の表面欠陥が発生し易くなる。ク
レータ状表面欠陥の発生は、鋼板表面にある凹部の底が
高密度エネルギビーム照射で溶融する際に大気や底に残
存していた油脂,汚れ等から生成したガスが巻込まれる
ことに原因があると推察される。クレータ状表面欠陥
は、耐摩耗性に悪影響を及ぼすと共に、疲労特性を劣化
させる切欠き効果を呈する。本発明者等による研究結果
から、素材鋼板の表面粗さをRa≦5μmにするとき耐
摩耗性や疲労特性に悪影響を及ぼすクレータ状表面欠陥
が熱処理後の鋼板表面に発生しないことが判った。
【0018】疲労特性を微量添加成分で改善する一般的
な方策としては、P及びBの調整が考えられる。すなわ
ち、粒界に偏析して脆化を促進させるP量を低減し、粒
界に偏析して粒界を強化するBを添加すると、疲労特性
が向上する。P量の低減及びB添加は、熱処理前の鋼板
の加工性にも悪影響を及ぼさない。しかし、P量の低減
は、製鋼段階で経済的に不利になる。そこで、P量及び
B量を種々変化させた鋼板を電子ビーム照射で熱処理し
て曲げ式の疲労試験に供し、疲労限度改善に有効なP量
とB量とのバランスを詳細に調査した。その結果、本発
明で規定する成分系においては、単純なP量の低減及び
B添加だけでなく、[%P]≦6×[%B]+0.00
5の関係をP量とB量との間に成立させるとき、加工性
に悪影響を及ぼすことなく疲労強度が更に改善されるこ
とが判った。
【0019】以下、本発明鋼板に含まれる合金成分,含
有量等を説明する。 C:0.15〜0.50重量% 本発明は、C含有量が0.15〜0.50重量%の範囲
にある中炭素鋼を対象にしている。Cは炭素鋼において
最も基本となる合金成分であり、C含有量に応じて焼入
れ硬さ,炭化物量等が大きく変動する。C含有量が低い
ほど切欠き引張伸びが向上するが、十分な焼入れ硬さを
確保するため0.15重量%以上が必要である。しか
し、0.50重量%を超える過剰量のCが含まれると、
熱延後の靭性が低下し、鋼帯の製造性・取扱い性が悪く
なるばかりでなく、焼鈍後に十分な切欠き引張伸びが得
られない。したがって、高密度エネルギビーム照射によ
る適度な焼入れ硬さ及び加工性を兼ね備えた鋼板を得る
上から、0.15〜0.50重量%の範囲にC含有量を
定めた。 Si:0.30重量%以下 穴拡げ性,精密打抜き性等の局部的な延性の指標である
切欠き引張伸びに影響を与える合金成分であり、0.3
0重量%を超える過剰量のSiは固溶強化作用によりフ
ェライトを硬化し、成形加工時に割れ発生の原因とな
る。また、Si含有量の増加に伴って製造過程で鋼板表
面にスケール疵が発生し易くなり、鋼板の表面品質を低
下させる。
【0020】Mn:0.3〜1.0重量% 鋼板の焼入れ性を高め、強靭化にも有効な合金成分であ
る。十分な焼入れ性を得るためには、0.3重量%以上
のMnが必要である。しかし、1.0重量%を超える過
剰量のMnが含まれると、フェライトが硬化し、加工性
が低下する。 P:0.03重量%以下 疲労特性に悪影響を及ぼす成分であるが、B量とのバラ
ンス調整によりある程度まで含まれることが許容され
る。しかし、P含有量が0.03重量%を超えると、B
量とのバランス調整に拘わらず、延性や靭性を劣化させ
る傾向が大きくなる。 S:0.01重量%以下 MnS系介在物を形成する有害成分である。MnS系介
在物が多くなると切欠き引張伸びが低下するので、S含
有量は可能な限り低いほど好ましい。しかし、炭化物分
散形態を本発明で規定したように調整すると、極低S化
の必要はなく、一般的な市販鋼であっても精密打抜き性
及び切欠き引張伸びが改善される。しかし、C含有量を
0.50重量%近くまで上げた鋼板にあっても高い切欠
き引張伸びを安定して確保するため、S含有量の上限を
0.01重量%に規定する。また、非常に優れた切欠き
引張伸びをもつ鋼板を安定して得るためには、S含有量
を0.005重量%以下にすることが好ましい。
【0021】Ti:0.01〜0.15重量% 溶鋼の脱酸調整に使用される成分であり、脱窒作用も呈
する。また、鋼中に固溶しているNを窒化物として固定
するため、焼入れ性の改善に必要な有効B量を高める。
更には、炭窒化物を形成し、焼入れ時の結晶粒粗大化を
防止する作用も呈する。これらの作用を安定して得るた
めには、0.01重量%以上のTiが必要である。しか
し、0.15重量%を超える過剰量のTiは、経済的に
不利なだけでなく、局部的な延性、すなわち切欠き引張
伸びを劣化させる原因にもなる。 B:0.0005〜0.0050重量% 極微量の添加で熱処理性を大幅に向上させる作用を呈
し、焼入れ硬さを安定して得るために必要な合金成分で
ある。このような作用は、0.0005重量%以上のB
含有量で顕著になるが、B量0.0050重量%で飽和
し、0.0050重量%を超えるBを添加しても却って
靭性が劣化する。
【0022】N:0.01重量%以下 Tiと結合してTiNとなり、焼入れ時の結晶粒を微細
化する作用を呈する合金成分である。しかし、N含有量
が0.01重量%を超えると、延性が低下する。また、
過剰なNは、Bと結合し、焼入れ性の改善に有効なB量
を消費する。 Al:0.02〜0.10重量% Alは、溶鋼の脱酸剤として使用される成分であり、A
lNとしてNを固定する作用も呈する。このような作用
は、0.02重量%以上のAl含有量で顕著になる。し
かし、鋼中のAl量が0.10重量%を超えると、鋼の
清浄度が損われ、鋼板に表面疵が発生し易くなる。 Cr:0.5重量%以下 必要に応じて添加される合金成分であり、焼入れ性を改
善すると共に、焼戻し軟化抵抗を大きくする。しかし、
0.5重量%を超える過剰量のCrを添加すると、3段
階焼鈍によっても軟質化し難く、焼入れ前のプレス成形
性,加工性等が劣化する。
【0023】
【実施例】表1に示す組成の鋼を溶製した。鋼A〜D
は、本発明で規定した成分条件及び[%P]≦6×[%
B]+0.005を満足する鋼である。比較鋼E〜Kの
うち、鋼Eは[%P]≦6×[%B]+0.005を満
足するが、C含有量が本発明で規定した範囲より低くな
っている。鋼Fは、C含有量が高く、Ti,Bが添加さ
れていない点で本発明で規定する条件を満足していな
い。鋼Gは、JIS鋼種のS35Cであり、Ti,Bが
添加されていない点で本発明で規定する条件を満足して
いない。鋼Hは、N量が多く、Ti,Bが添加されてい
ない点で本発明で規定する条件を満足していない。鋼I
及びJは、[%P]≦6×[%B]+0.005を満足
しない鋼である。鋼Kは、Cr含有量が高く、Ti,B
が添加されていない点で本発明で規定する条件を満足し
ていない。
【0024】
【0025】各溶鋼を鋳造して得た鋼塊を熱間圧延し、
板厚4.0mmの熱延板とした。熱延時、コイル巻取り
温度を変えて熱延組織を変化させた。熱延板を酸洗した
後、種々の条件で焼鈍し、鋼板に分散析出する炭化物の
平均粒径及び球状化率を変化させた。焼鈍された鋼板の
断面を走査型電子顕微鏡で観察した。総数300個以上
の炭化物が析出している領域を観察視野にとり、個々の
炭化物について測定した円相当径を全測定炭化物で平均
することにより、炭化物の平均粒径を求めた。同じ観察
視野で、炭化物の最大長さpを特定し、最大長さpに直
交する方向の最大長さqの比p/qが3未満の炭化物
(球状化炭化物)の個数をカウントし、炭化物総数に占
める球状化炭化物の数の割合を炭化物球状化率(%)と
して求めた。
【0026】また、各鋼板から切り出した試験片を切欠
き引張試験に供した。切欠き引張試験では、JIS 5
号試験片の平行部長手方向中央位置における幅方向両側
に開き角45度,深さ2mmのVノッチを形成した試験
片を用いて引張り試験した。そして、Vノッチを含む標
点間距離5mmに対する伸び率を試験片の破断後に求
め、得られたElV 値で加工性を評価した。炭化物の分
散形態と切欠き引張伸びElV 値との関係を調査したと
ころ、表2に示すように炭化物の平均粒径が0.44〜
0.95μm,炭化物球状化率が81〜87%にある試
験番号1,3,5,7(本発明例)は、ElV 値が43
〜51%と高く、優れた加工性を示した。試験番号2,
4,6,8(本発明例)は、試験番号1,3,5,7と
ほぼ同じ炭化物平均粒径であったが、炭化物球状化率が
93〜99%と高い値を示したことから、ElV 値が4
2〜56%と更に優れた加工性が示された。これに対
し、試験番号9〜12(比較例)は、炭化物が0.4μ
m未満の小さな平均粒径であり、ElV 値が31〜34
%と低くなっている。また、試験番号13,14では、
炭化物平均粒径が0.4μm以上であるにも拘わらず、
C含有量及びCr含有量が多いためにElV 値が22
%,27%と低く、加工性に劣っていた。
【0027】
【0028】更に、各鋼板から切り出された試験片の表
面を番手が異なるエメリー紙で研磨し、表面粗さを変え
た試料を用意した。そして、加速電圧60kV,ビーム
電流70mA,ビーム振幅周波数1.5kHz,照射ス
ピード4m/分,照射幅10mmの電子ビーム照射条件
下で熱処理した後、熱処理部に発生したクレータ状表面
欠陥を目視観察し、単位面積当りのクレータ状表面欠陥
発生個数(/cm2 )を求めた。素材鋼板の表面粗さと
クレータ状欠陥発生個数との関係を示す表3にみられる
ように、表面粗さをRa0.8〜4.6μmに調整した
試験番号15〜22(本発明例)では熱処理部のクレー
タ状表面欠陥発生個数が0〜3個/cm2 となってお
り、良好な表面を呈していた。他方、表面粗さがRa
5.5〜11.3μmと粗く調整された試験番号23〜
28(比較例)では、熱処理部のクレータ状表面欠陥発
生個数が8〜16個/cm2 と本発明例に比較して著し
く多く、表面不良になっていた。
【0029】
【0030】更に、各鋼板から切り出された試験片を、
加速電圧60kV,ビーム電流70mA,ビーム振幅周
波数1.5kHz,照射スピード4m/分,照射幅10
mmの電子ビーム照射で試験片を熱処理し、熱処理部の
断面硬さを測定した。そして、最高硬さの80%に相当
する硬さが得られる位置から試験片表面までの距離を測
定し、硬化層の深さとした。また、加速電圧60kV,
ビーム電流70mA,ビーム振幅周波数1.5kHz,
照射スピード4m/分,照射幅30mmの条件で試験片
の表裏両面を電子ビーム照射した後、平面曲げの両振り
疲労試験(周波数23Hz)により疲労限度を測定し
た。
【0031】表4の調査結果にみられるように、試験番
号29,30(本発明例)では、ほぼ同じC含有量の試
験番号40(比較例,鋼G)に比較して硬化層が約25
0μmと深く、疲労特性も優れていた。試験番号31,
32,35,36(本発明例)は、試験番号40(比較
例,鋼G)のC含有量0.34重量%に比較してC含有
量がほぼ0.2重量%と低いにも拘わらず、深い硬化層
が形成されている。試験番号33,34(本発明例)
は、ほぼ同じC含有量の試験番号41(比較例,鋼H)
に比較して硬化層が深く、疲労特性も優れていた。試験
番号37,38( 比較例) は、炭化物の平均粒径が1μ
mを超えており、同じ鋼を使用した試験番号29,30
( 本発明例) 及び試験番号33,34(本発明例)に比
較すると硬化層深さが小さくなっている。C含有量が低
い鋼Eを用いた試験番号39( 比較例)では、最高硬さ
が低く、しかも硬化層深さも小さいため、本発明が目標
とする各種機械部品としての使用には支障を来す。試験
番号42,43(比較例)は、何れも[%P]≦6×
[%B] +0.005の条件を満足しないものであり、
それぞれC含有量がほぼ同じ試験番号29,30( 本発
明例) 及び試験番号33,34( 本発明例) と同じレベ
ルの硬化層深さをもつが、疲労限度が低くなっている。
【0032】
【0033】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の低合金
鋼鋼板は、鋼中に分散析出している炭化物の平均粒径及
び球状化率を規制して穴拡げ加工,精密打抜き等で要求
される局部延性を改善し、更に高密度エネルギビーム照
射による熱処理で形成される硬化層を深く、熱処理後の
疲労特性を改善した合金設計を採用している。また、素
材鋼板の表面粗さを規制しているため、高密度エネルギ
ビーム照射による熱処理で生じがちなクレータ状表面欠
陥の発生も抑制され、良好な表面を呈する熱処理製品が
得られる。このような長所を活用し、本発明の低合金鋼
鋼板は、自動車搭載部品を始めとして各種機械部品に使
用される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 面迫 浩次 広島県呉市昭和町11番1号 日新製鋼株式 会社技術研究所内 (72)発明者 秋月 誠 広島県呉市昭和町11番1号 日新製鋼株式 会社技術研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.15〜0.50重量%,Si:
    0.30重量%以下,Mn:0.3〜1.0重量%,
    P:0.03重量%以下,S:0.01重量%以下,T
    i:0.01〜0.15重量%,B:0.0005〜
    0.0050重量%,N:0.01重量%以下,Al:
    0.02〜0.10重量%,残部が実質的にFeの組成
    をもち、P含有量とB含有量との間に[%P]≦6×
    [%B]+0.005の関係が成立しており、平均粒径
    0.4〜1.0μmの炭化物がフェライトマトリックス
    に分散している球状化炭化物組織を呈し、表面粗さがR
    a≦5μmである加工性,急速熱処理性及び急速熱処理
    後の疲労特性に優れた低合金鋼鋼板。
  2. 【請求項2】 C:0.15〜0.50重量%,Si:
    0.30重量%以下,Mn:0.3〜1.0重量%,
    P:0.03重量%以下,S:0.01重量%以下,T
    i:0.01〜0.15重量%,B:0.0005〜
    0.0050重量%,N:0.01重量%以下,Al:
    0.02〜0.10重量%,Cr:0.5重量%以下,
    残部が実質的にFeの組成をもち、P含有量とB含有量
    との間に[%P]≦6×[%B]+0.005の関係が
    成立しており、平均粒径0.4〜1.0μmの炭化物が
    フェライトマトリックスに分散している球状化炭化物組
    織を呈し、表面粗さがRa≦5μmである加工性,急速
    熱処理性及び急速熱処理後の疲労特性に優れた低合金鋼
    鋼板。
  3. 【請求項3】 鋼板断面の金属組織を観察した視野内に
    おいて炭化物総数に占める炭化物の最大長さpと最大長
    さpに直交する方向の最大長さqとの比p/qが3未満
    である炭化物の数の割合(%)で示した炭化物球状化率
    が90%以上である請求項1又は2記載の加工性,急速
    熱処理性及び急速熱処理後の疲労特性に優れた低合金鋼
    鋼板。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009191733A (ja) * 2008-02-14 2009-08-27 Toshiba Corp 蒸気タービン翼およびその表面改質方法
EP1980635A4 (en) * 2006-01-31 2010-12-01 Jfe Steel Corp STEEL SHEET PERFECTLY FOR FINE CUTTING AND METHOD FOR PRODUCING THE SAME
CN105200308A (zh) * 2014-05-28 2015-12-30 宝山钢铁股份有限公司 精冲钢材及其调节机构精冲零部件制造方法

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