JP2000287672A - チューブ状培養槽による微生物の連続培養方法及び装置 - Google Patents

チューブ状培養槽による微生物の連続培養方法及び装置

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Shinya Furusaki
眞也 古崎
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 連続培養の培養液中の有効な担体表面積を
大きくし、かつ基質阻害や競合阻害を防止しつつ、培養
によって最適の活性を有するに至った微生物を劣化させ
ることなく収穫する方法を提供する。 【解決手段】 培養液が連続的に一端から供給され、
他端から排出されるチューブ状の培養槽で微生物を培養
することを特徴とする微生物の連続培養方法、並びに装
置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は微生物の連続培養方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】微生物を連続培養するにあたり、培養槽
に微生物を吸着する担体を導入することが従来行なわれ
ている。担体に微生物が吸着・保持されることによって
培養槽内の菌濃度が上昇し、そのためそれを種として増
殖する微生物量が増加するため大量の微生物を連続培養
によって生産可能になることがその主な理由である。ま
た、担体に微生物が吸着することによって微生物の増殖
速度が上昇したり、微生物の活性が向上するといったこ
とも担体導入のメリットとして挙げられる。
【0003】担体を用いた連続培養の装置としては攪拌
槽型、固定層型、流動層型が一般に良く用いられてい
る。いずれも培養槽中に培養目的とする微生物と担体を
投与し、一方から微生物の培養液を導入し、他方から培
養された微生物を含有する培養液を取り出す形態であ
る。
【0004】攪拌槽型では培養槽に攪拌翼が設置され、
攪拌翼の回転による培養液の攪拌により担体を培養液中
に浮遊させるものである。
【0005】固定層型では培養槽中に担体を密に充填
し、培養液の導入によって担体の間を培養液が流動する
ことで担体と培養液の接触が行なわれるものである。
【0006】流動層型では培養槽中に充填度の低い状態
で担体を投与し、培養液の導入もしくは空気等の気体の
導入による培養液の流動によって担体が培養槽中を浮遊
させるものである。
【0007】また、攪拌槽型や流動層型で培養槽の中央
部に籠を設置し、そこに担体を保持することも行なわれ
ている。
【0008】攪拌槽型や流動層型では培養液の攪拌や流
動によって担体が培養液中を浮遊することが必要であ
り、培養液よりも比重の大きい担体を用いた場合には攪
拌速度や流動速度もそれにあわせて大きくしないと担体
を培養液に浮遊することができない。しかし攪拌速度や
流動速度を上げていくとせん断力で培養液中の微生物や
担体そのものを損傷する程度が大きくなり、また担体に
吸着した微生物を剥離してしまうためそれにも限界があ
る。また、攪拌や流動に要する動力が大きくなると運転
コストが高くなるという問題もある。
【0009】一方、連続培養に担体を用いた場合、微生
物の吸着するのは担体の表面であり、培養液に対する担
体総表面積をできるかぎり大きくすることが担体の効果
を発揮させる上で重要になってくる。そのためには体積
当りの表面積の大きい担体、すなわち粒径が比較的小さ
いか多孔質の担体を用いることが求められる。
【0010】一方、微生物を培養する場合、培養液の基
質濃度が高くなると微生物の増殖や活性が阻害を受ける
場合があり、それを一般に基質阻害と呼んでいる。バッ
チ培養の場合であれば、阻害的に働く基質を培養液中の
濃度が高くならない程度に少しずつ数回に分けて添加す
る流加培養が基質阻害を防ぐ方法として用いられてい
る。この場合、添加する回数を増やせば最終的に生産さ
れる微生物濃度は高くなる。
【0011】これに対して、連続培養では培養液を少し
ずつ連続的に培養槽に供給しているため培養液中の基質
濃度は流加培養同様高くならず、連続培養は基質阻害を
回避するのに好適な培養方法と考えられる。
【0012】また、培養液の基質が微生物に作用させよ
うとする目的物質との間で微生物の酵素を奪い合い、目
的とする微生物の作用を阻害する競合阻害という現象も
ある。
【0013】具体的な例として、有機塩素化合物の微生
物による分解がある。微生物が有機塩素化合物を分解す
るためには誘導物質(インデューサー)と呼ばれる化学物
質の存在が必要である。すなわち、インデューサーを分
解するために発現した酵素によって目的とする有機塩素
化合物を分解することが可能となる。
【0014】現在知られている誘導物質としては、フェ
ノール、クレゾール、トルエン等の芳香族化合物やメタ
ン等が挙げられ、その多くは分解菌を培養するための栄
養源としても利用されうる。
【0015】このインデューサーを用いて有機塩素化合
物を分解する場合、分解を行なう反応場にインデューサ
ーが存在すると分解酵素がインデューサーの分解にばか
り使用されてしまい、肝心の有機塩素化合物の分解が進
まなくなる、つまり競合阻害が生じる。
【0016】インデューサーによる競合阻害はインデュ
ーサーが有機塩素化合物と分解酵素を奪い合う形で生じ
るが、多くの場合有機塩素化合物よりインデューサーの
方が分解酵素との親和性が高く、インデューサー濃度が
わずか数ppm上昇しただけで有機塩素化合物の分解活性
が完全に消失するなど、劇的な結果をもたらすことにな
る。
【0017】バッチ培養であればインデューサーはいつ
かは消費されつくすため問題になりにくいが、連続培養
によるリアクターの場合には次々にインデューサーを含
んだ培養液が培養槽に供給されてくるため、有機塩素化
合物を分解する場にインデューサーを持ち込まないよう
にすること、つまり培養時にインデューサーをほぼ完全
に消費するようにインデューサーの供給速度を設定する
必要がある。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】[第一の課題]粒径が小
さく、比重の軽い担体を用いた場合、攪拌槽型や流動層
型の培養装置によって効率よく培養できる。しかしなが
ら粒径が小さく、比重の重い担体を用いた場合は前述の
ように攪拌槽型や流動層型で培養するのは困難になる。
【0019】粒径が小さく、比重の重い担体を用いた場
合でも攪拌槽型や流動層型の培養装置で培養槽の中央部
に担体を保持する籠を設置した場合や固定層型の場合に
は培養液中に担体を浮遊させる問題は生じない。
【0020】しかし粒径の小さな担体を籠に充填した場
合には担体間の間隙が小さく、籠の内部にまで培養液が
流入しにくい。充填した担体間を培養液が流動するとき
に受ける圧力損失は担体の粒径の二乗の逆数に比例する
ため、粒径が二分の一になると圧力損失は四倍にもな
る。そのため粒径が小さい場合には籠の内部に存在する
担体表面での微生物の増殖は不活発になり、担体の利用
効率が低下することが起きている。
【0021】例えば粒径0.6mmのアニオン交換樹脂
を入れた円筒形の籠(内径30mm、メッシュ孔径0.5
mm)を培養液を含んだ微生物培養液中に浸し、その培
養液を流動させても、籠の内部半径15mm以内にはほ
とんど微生物が増殖していないことが実験的にも確認さ
れている(比較例1-1参照)。
【0022】また固定層型の場合は、充填した担体の間
隙に培養液の流動しやすいチャネルが形成されることが
多く、ある特定の担体表面のみ培養液が接触していると
いう状態が生じやすい。
【0023】いずれの型の培養装置にしても、担体を垂
直方向に充填すると充填密度が高まるため担体間の接触
面積が大きくなり、必然的に担体と培養液との接触面積
が小さくなってしまう。特に担体が柔軟な場合には担体
を充填し積層すると下方の担体が圧縮され、担体どうし
の接触面積はますます大きなものとなる。さらにそれに
伴い担体間の間隙は小さくなり、籠内部への培養液の流
入がますます困難になり、培養液の流動しやすいチャネ
ルがますます形成されやすくなる。
【0024】ところで多孔質の担体を用いた場合、孔隙
径が小さいほど担体の表面積は大きくなる。しかし孔隙
径が小さくなるにつれて培養液の表面張力によって孔隙
内に培養液が流入しにくくなる。特に疎水性の材質から
なる担体では数mm程度の大きさの孔隙径でも培養液の
流入が困難になる。
【0025】また、たとえ微生物が孔隙内部に侵入でき
たとしても、孔隙の内部では培養液の交換速度が低いた
め、孔隙内部の微生物の増殖速度を担体外部と同じレベ
ルに維持することは困難になる。従って孔隙径を小さく
していったときに担体の表面積は拡大していくが、微生
物の吸着に有効利用される表面積はある孔隙径でピーク
に達し、その後は減少していくものと考えられる。
【0026】以上のことから連続培養の培養液中の有効
な担体表面積を大きくすることを目標とした場合、従来
の培養装置を用いたときには 多孔質でない担体を用いる場合には、粒径が小さく比
重の軽い担体を攪拌槽型や流動層型の培養装置に用いな
ければならず、使用する担体の種類が非常に限定される 多孔質の担体を用いる場合でも孔隙の内部表面が微生
物の吸着に有効利用されにくいといった問題を抱えてい
た。
【0027】[第二の課題]連続培養において培養液の供
給速度が設定されているときには供給する培養液の最大
濃度が基質阻害を受けないレベルに限られてしまい、培
養液の微生物濃度もそれに伴って限定され、高濃度の微
生物を生産することができなくなるという問題がある。
【0028】また、例えば分解する基質が有機塩素化合
物の場合、前述したようにあらかじめインデューサーで
誘導し、その一方では競合阻害を避けるため、有機塩素
化合物を分解する場にインデューサーを持ち込まないよ
うに、つまり培養時にインデューサーをほぼ完全に消費
するようにインデューサーの供給速度を設定する必要が
ある。しかし、培養条件や培養する微生物の増殖速度、
インデューサー消費速度の変化によって培養液中の残留
インデューサー濃度は変化しやすく、最適な濃度に制御
することは非常に困難である。
【0029】インデューサーの残留を回避するために培
養液供給速度を必要以上に低くした場合はインデューサ
ーによって生産された酵素が使用されるまでの時間も長
くなるため、その間に酵素の活性が低下する恐れがあ
る。
【0030】また培養液中のインデューサー濃度を低く
設定した場合には分解菌に対するインデュースが弱くな
り、分解酵素の生産が減少してしまう。特にインデュー
サーに微生物の増殖基質としての役割も兼ねさせている
場合には、生産される微生物濃度が低くなり、それによ
っても分解活性が低下してしまう。
【0031】一方、連続培養では供給した培養液はほと
んど一瞬にして培養槽内の培養液によって希釈される
が、培養液を希釈した培養液はそのまま培養槽から排出
されるため、培養装置から生産される培養液中には常に
一定濃度の供給培養液と同じ成分が含まれていることに
なる。従ってインデューサーを含む培養液の供給速度を
高くした場合、培養槽から排出する培養液中に残留する
インデューサー濃度も高くなり、競合阻害が顕著に現れ
ることになる。
【0032】また、培養槽から排出される培養液中に常
に一定量の未使用の培養液が含まれことは常に一定量の
培養液を無駄に廃棄していることであり、培養液の供給
速度を増加した場合、その培養液コストは無視しえない
ものとなる。
【0033】さらに、フェノールやトルエンといったイ
ンデューサーを用いたときには、インデューサー自身の
濃度上昇によっても分解菌がダメージを受ける、前述の
基質阻害が生じることがあり、増殖速度の低下によって
分解菌がリアクターから完全流失してしまったり、イン
デューサー濃度が低下しても活性を持った菌が培養され
てこないといった、連続培養そのものに関わる深刻な問
題を生じる場合がある。
【0034】以上のように連続培養、特に有機塩素化合
物を分解する微生物をインデューサーを用いて連続培養
する場合においては基質阻害や競合阻害を防止しつつ、
培養によって最適の活性を有するに至った微生物を如何
に劣化させることなく収穫するかが大きな課題となって
いる。
【0035】本発明は上記の課題を解決することを目的
としたものであり、チューブ状の培養槽を用いた連続培
養装置およびそれを用いた連続培養方法である。
【0036】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、培
養液が連続的に一端から供給され、他端から排出される
チューブ状の培養槽で微生物を培養することを特徴とす
る微生物の連続培養方法である。
【0037】該培養槽に担体が充填されていることが好
ましく、さらに該培養槽中への担体の充填密度は任意に
調整できることが好ましい。
【0038】あるいは、該担体の少なくとも内部が多孔
質でその内部に液体を含浸でき、該担体の表面で開口し
た孔隙がその内部の孔隙と連通していることが好まし
い。
【0039】また、チューブ状の培養槽の両端以外に該
培養槽内と外部とを連通し得る分岐管を一本以上設置す
ること、あるいは該培養槽の培養液の排出端に延長チュ
ーブを継続することで、培養を行なうチューブ長を任意
に延長可能としたこと、さらに該延長チューブに該延長
チューブの内部と外部とを連通し得る分岐管が一本以上
設置されていることが好ましい。
【0040】この場合、該分岐管から培養液を供給する
ことで該チューブ内の培養液中の基質を一定濃度以下に
抑え、基質阻害を起こすこと無しに培養全工程において
添加する基質量を増加させることと、さらに、該分岐管
から培養液を排出回収すること、あるいは該チューブの
長さによって培養液の滞留時間を制御すること、を特徴
とする。
【0041】培養液中の残留基質濃度を制御すること、
とりわけ該残留基質濃度は微生物に対して競合阻害を起
こさない濃度であることが好ましい。
【0042】また、該培養槽によってインデューサーを
用いた有機塩素化合物分解微生物の連続培養を行なうこ
とが好ましく、該分岐管から培養液を排出回収すること
で、さらに、該培養槽の培養液排出端からチューブを継
続することでチューブ長を延長することで、排出回収さ
れた培養液中の残留インデューサー濃度を、有機塩素化
合物の分解にとって好適な濃度に制御することが好まし
い。
【0043】また、該残留インデューサー濃度が有機塩
素化合物分解微生物による有機塩素化合物分解に対して
競合阻害を起こさない濃度であることが好ましい。
【0044】また、該分岐管から培養液をモニタリング
すること、さらにそれによって培養液を供給する、ある
いは培養液を回収する分岐管を決定することが好まし
い。
【0045】さらに、微生物を培養する手段としてチュ
ーブ状の培養槽を有し、該培養槽が培養液を連続的に一
端から供給する手段と、他端から排出する手段とを有す
ることを特徴とする微生物の連続培養装置である。
【0046】また、該培養槽に担体が充填されているこ
と、該培養槽の両端以外に該培養槽の内部と外部とを連
通可能とする分岐管が一本以上設置されること、あるい
は該培養槽の培養液排出端に延長チューブの接続部を有
することが好ましい。
【0047】特に該延長チューブがその内部と外部とを
連通可能な分岐管の一本以上を有することが好ましい。
【0048】
【発明の実施の形態】まず、第一の課題に対してはチュ
ーブ状の培養槽に担体を充填することが必要である。以
下に本装置を用いた連続培養方法について充填する担体
が多孔質でないもの(内部に液体を含浸しないもの)と多
孔質であるもの(内部に液体を含浸するもの)と区別して
具体的に説明する(担体の構造・性質については後述す
る)。
【0049】まず、図10で内部に液体を含浸しない非
多孔性担体102について述べる。非多孔性担体102
を充填したチューブ101内に前培養した微生物を仕込
み、チューブ101の一端から培養液103を連続的に
導入するとチューブ内に培養液の流動104が生じる。
培養液105はチューブ内を満たした後チューブ101
の他の一端から排出される。
【0050】こうしたチューブ内の培養液の流動状態の
もとで、まず培養液3と微生物が接触すると培養液中の
栄養素を利用して微生物の増殖が開始する。チューブ内
の培養液中の菌濃度が増加するにつれて担体に吸着する
微生物の量も多くなり、また担体上でも微生物の増殖が
盛んになる。担体上の微生物の密度がある程度高くなる
と担体上の微生物から増殖した微生物は培養液105中
に脱離する。
【0051】培養液105中で増殖した微生物と担体上
で増殖し、培養液中に脱離した微生物によって培養液1
05中の微生物濃度は高くなる。こうした機構で高濃度
に培養された微生物はチューブから排出され、利用に供
される。
【0052】次に図11で内部に液体を含浸する多孔性
担体111について述べる。多孔性担体111を充填し
たチューブ内に前培養した微生物を仕込み、チューブ1
01の一端から培養液103を連続的に導入するとチュ
ーブ内に培養液104の流動が生じる。
【0053】ここで図12で多孔性担体111の部分に
ついて細かく見ると、流動する培養液5が加圧によって
担体表面112から孔隙113を通って担体内部114
に含浸され、さらに加圧によって担体外部に放出され、
そして隣接する担体111に同様に含浸していく。以上
の工程を繰り返し、培養液105はチューブ内を満たし
た後チューブ1の他の一端から排出される。
【0054】こうしたチューブ内の担体内部114を透
過していく培養液105の流動状態のもとで、まず培養
液103と微生物が接触すると培養液中の栄養素を利用
して微生物の増殖が開始する。チューブ内の培養液中の
菌濃度が増加するにつれて担体に吸着する微生物の量も
多くなり、また担体外部もしくは担体内部の孔隙表面1
15でも微生物の増殖が盛んになる。
【0055】担体内外表面の微生物の密度がある程度高
くなると担体内外表面の微生物から増殖した微生物は培
養液105中に脱離する。培養液105中で増殖した微
生物と担体内外表面で増殖し、培養液中に脱離した微生
物によって培養液105中の微生物濃度は高くなる。こ
うした機構で高濃度に培養された微生物はチューブ10
1から排出され、利用に供される。
【0056】第二の課題に対してはチューブ状の培養槽
に担体を充填することは特に必要ではない。担体を充填
しない場合でも担体を培養槽中に充填しない他は前述の
と同様の方法で連続培養を行なえばよい。その様子を図
9に示した。
【0057】また、担体の有無に限らず、図13のよう
にチューブ状の培養槽の途中に適宜の間隔で新たな培養
液を供給したり流動する培養液を排出できる分岐管12
1を設置したり、チューブ状の培養槽の先端132から
新たにチューブ131を延長して培養液の滞留時間を延
長することも可能になっている。
【0058】本連続培養装置はまず第一の課題につい
て、以下のような理由から課題の解決に有効である。
【0059】すなわちサイズの小さな担体を用いる場合
において、担体のサイズが小さく充填密度が高くなって
担体の間隙中を培養液が拡散する速度が低下しても、内
径の小さなチューブ内に担体が充填されている限りにお
いては培養液のフローの近傍に担体が存在することにな
り、拡散に要する距離が短くなるため拡散速度の低下の
影響を減少させることができる。そしてこの効果はいか
なる比重の担体であっても無関係に実現できる。
【0060】またチューブの軸方向を垂直にしなければ
チューブ内の担体の充填方向も垂直にならないため、充
填が最密になることを回避することができる。そのため
充填密度を比較的緩やかに設定することが可能となり、
培養液の担体間隙中での拡散速度を高くすることができ
る。
【0061】さらに内部に液体を含浸する担体を用いた
場合には、チューブ内を流動する培養液の加圧によって
担体内部にも培養液を供給できるため、担体内部表面に
も微生物を吸着させることが可能となり、その微生物に
培養液成分を与えることで増殖させることが可能とな
り、さらに担体内部表面で増殖して担体内部の培養液中
へ脱離した微生物を担体外に回収することが可能とな
る。従って担体内部表面も微生物の増殖に寄与すること
ができるため、担体体積当りの表面積を大きくすること
が可能となる。
【0062】以上のようにサイズの小さい担体や内部に
液体を含浸する多孔質の担体の表面積を高い効率で利用
できるため、担体体積あたりの有効表面積を大きくする
ことができ、従って培養液あたりの担体の効果、すなわ
ち培養装置の微生物増殖能力を向上することが可能とな
り、それによって装置スケールをコンパクトにすること
が可能となる。さらに培養液の培養槽中での滞留時間を
短くできるため、活性の高い新鮮な微生物を外部に供給
することが可能となる。
【0063】また第二の課題について、まず基質阻害に
ついては、培養液の流動方向に対する断面積が大きい通
常の培養槽と違ってチューブ状培養槽中に培養液をほぼ
完全に層流で流動させることができるため、チューブ端
から供給した培養液中の阻害基質濃度をチューブ状培養
槽中を流動させるにともなって減少させることが可能で
あり、またチューブ端からの培養液供給以外にチューブ
状培養槽の途中に設置した分岐管からも少しずつ連続的
に培養液を供給できるため、チューブ端から供給した培
養液中の基質濃度がある程度減少した部位においてチュ
ーブ状培養槽の途中に設置した分岐管から新たに基質を
追加することが可能であり、また、さらに別の分岐管か
ら阻害を受けないレベルに基質濃度を維持しつつ連続培
養中に添加するトータルの添加基質濃度を増加させるこ
とができる。
【0064】また、競合阻害、特に有機塩素化合物を分
解するためのインデューサーによる競合阻害について
も、チューブ状培養槽中に培養液をほぼ完全に層流で流
動させることができるため、培養液の供給速度を高くし
た場合でも培養液と混合して希釈された培養液がそのま
ま培養槽から排出され、反応場にインデューサー等の競
合阻害基質が残留する、といった恐れがなく、競合阻害
を防止することが可能となる。そしてチューブ長を調整
することによって供給する培養液はチューブ状培養槽中
で完全に利用させることができるため、培養液コストも
低減することができる。
【0065】また、培養液中の微生物もチューブ状培養
槽中を流動するにつれてインデュースが進むため、一般
の培養槽のように培養液の滞留時間を調整すればインデ
ューサーに接触してからの時間が短くてインデュースの
程度の低い若い微生物を回収してしまうことも、インデ
ューサーに接触してからの時間が長くてインデュースが
すでに完了し、酵素活性が低下し始めた古い微生物を培
養液中に含んでしまうこともなく、インデュースがちょ
うど完了した最適の活性を持つ微生物のみを高濃度で収
穫することができる。
【0066】さらに培養状態の変化により培養槽中を流
動する微生物のインデューサー消費速度が増加したとき
は、培養槽の途中に設置した分岐管から培養液をサンプ
リングし、それを分析すれば微生物が最適の活性を有し
ている状態のポイントを知ることができるため、今度は
そのポイントから培養液を回収することで再び最適の活
性を持つ微生物を収穫することが可能になる。また培養
槽全長を用いてもインデューサー消費速度が低下したと
きは、チューブの先端から新たにチューブを延長するこ
とで同様に最適の活性を持つ微生物を収穫することが可
能になる。
【0067】なお、前記培養液のサンプリングと分析
(モニタリング)は、培養液の追加供給ポイントを決める
ために応用することもできる。
【0068】次に本発明の連続培養装置の構成について
具体的に説明する。
【0069】まずチューブは培養液の流動が可能であ
り、微生物の吸着がなければいかなるものでもかまわな
いが、使用時にコンパクトに収納できる等の理由から柔
軟性のあるものが好ましい。特に微生物の吸着の少ない
フッ素樹脂でかつ柔軟性のあるPFA製のものが有用で
ある。
【0070】また、チューブのサイズとしてはいかなる
ものでも構わないが、本発明の効果を十分に実現するた
めにはチューブ内径が10mm以下、より好ましくは5
mm以下であることが望ましい。これはチューブの材質
と汚染気体及び培養液の供給速度にもよるが、チューブ
径が小さければ表面張力によって培養液がチューブ内断
面を満たした形をとるため、培養液が担体全体に浸潤
し、さらに担体の内部を透過させることが可能となるた
めである。
【0071】一方、チューブの内径は培養液の流れが途
中で詰まったりするのを防ぎ、安定した流れが得られる
ように設定すれば良く、例えばチューブ内径は1mm以
上、より好ましくは3mm以上とすることができる。
【0072】チューブ内への担体の充填方法としては、
チューブの軸方向を垂直にして充填するのでなければい
かなる方法、充填密度でも可能であるが、内部に液体を
含浸しない担体の場合で担体サイズが非常に小さい等、
担体間の間隙が特に小さくなるときは充填密度を緩やか
にし、間隙への培養液の拡散速度を増加することが好ま
しい。この場合、充填部の両端にフィルターを設けるな
ど担体の流出を防止する方策をとることが好ましい。
【0073】一方、内部に液体を含浸する担体の場合に
はチューブ断面を見たとき担体が密に充填され、間隙が
少なくなるような方法が望ましい。これは充填材が充填
されていない部分が水道になってそこを培養液が優先的
に通過し、担体内部を培養液が透過しないことを防止す
るためである。
【0074】担体の材質としては、培養する微生物の生
育にとって有害でなく、微生物を吸着して培養液中の微
生物濃度を高めるとともに、増殖した微生物が担体から
脱離しやすいものであることが必要である。また、担体
に吸着することによって微生物の増殖能や活性が増大す
るものであればなお望ましい。
【0075】担体のサイズとしては、チューブ内径以下
であれば良く、数十ミクロン以下では充填材間の間隙が
小さすぎ、培養液の透過が困難となるため望ましくな
い。
【0076】内部に液体を含浸する担体に関しては、材
質が柔軟なものでチューブ内壁と担体もしくは担体間が
密着し、チューブと担体もしくは担体間の間隙をなくせ
るようであれば、担体内部への培養液の透過を十分に行
なわせることができるため、高い効果を期待できる。
【0077】担体内部の孔隙の形状としては、担体内部
で閉塞しているようなものは不適当で、担体表面で開口
した孔隙が必ず他の複数の孔隙と連通していることが必
要である。孔隙径としては培養液の透過が容易で、微生
物の移動も困難とならない数十ミクロン以上が望まし
い。
【0078】内部に液体を含浸しない担体の具体例とし
ては、アニオン交換樹脂、ガラスビーズ、アルミナビー
ズ、けい砂等が挙げられる。
【0079】内部に液体を含浸する担体としてはキトパ
ール(富士紡績社製)、ゼオライト、セルロース、テフロ
ン、多孔質ガラス、ポリウレタン等が挙げられる。
【0080】微生物の培養条件としては通常の培養装置
で培養する場合と特に異なるものではないが、培養され
る微生物の濃度が高くなるため、培養液中の栄養素の濃
度や培養液の供給速度、培養液中の酸素濃度を通常より
高くする等、微生物の培養状態等から変更を加えた方が
より効率よく培養できる可能性がある。
【0081】また、好気的な培養の場合、培養に要する
酸素は曝気等によりあらかじめ培養液に酸素を溶解させ
ておいたり、培養槽の直前に曝気槽を設けたり、あるい
は培養槽に培養液の合間に空気等を供給することで対処
できる。特に担体を用いた場合には、通気する量が多く
なっても担体表面に培養液が付着しているため培養液が
通気速度と同じ速度で培養槽から排出されるのを防ぐこ
とができる。
【0082】例えば、チューブ状のバイオリアクターの
一方の開口から前記培養液の所定量と気体の所定量とを
交互に導入する際に、気密性のある槽内に分解微生物を
保持する該微生物の培養液の液相と、該液相と接する気
相とを形成し、該液相内に該微生物の培養液と気体を更
に流入させ、該流入圧力によってこれら液相と気相の界
面付近に開口が位置する排出管から該微生物を含む培養
液と該気体を交互に流出させ、チューブ状のバイオリア
クターに導入する方法をとることができる。
【0083】培養槽のチューブに分岐管を設置する方法
としてはチューブの材質に適したものであればいかなる
方法でも構わないが、分岐管から培養液を排出する必要
のないときに分岐管へ培養液が移行するのを防ぐため、
培養槽と接続している部分の近傍にコックをつけておく
ことが望ましい。
【0084】また培養槽のチューブの端に新たにチュー
ブを継続してチューブ長を延長する場合も、チューブを
継続する方法としてはチューブの材質に適したものであ
ればいかなる方法でも構わない。
【0085】
【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説
明する。
【0086】[実施例1] 液浸透性のない担体を用いた
チューブ状培養槽による連続培養 トリクロロエチレン分解菌である、シュードモナス・セ
パシア(Pseudomonascepacia)KK01株(通商産業省
工業技術院生命工学工業技術研究所、受託番号:FER
M BP-4235、受託日:平成4年3月11日)を用
いて液浸透性のない担体を充填したチューブ状培養槽に
よる連続培養を行なった。KK01株はトリクロロエチ
レンの分解酵素を発現するためにインデューサーが必要
であり、本実施例では増殖基質も兼ねてフェノールを用
いた。
【0087】KK01株を坂口フラスコ中のフェノール
200ppmとミネラルを含有したM9培地200mLに
接種し、23.5℃で24時間振とうして前培養を行な
った。この培養液を図10に示すような粒径0.6mm
に篩別したアニオン交換樹脂(アンバーライトIRA41
0、比重1.25)100gを担体102として充填した
チューブ状の培養槽101(PFA製、4mmΦ×36
700mm、貯留培養液量380mL)に注入し、一端か
ら培養液を10mL/hrで供給し、他端から培養液を排出
しながら23.5℃にて連続培養を行なった。その装置
の全体を図14に示す。
【0088】培養液3はフェノール1000ppmとミネ
ラルを含有したM9培地を用い、5Lのリザーバー11
に貯留し、ディフューザー16によって20mL/minで
バブリングした。
【0089】3日間培養を継続し、馴致を行なった後、
排出された培養液を10mLサンプリングし、これを2
0mL容量のバイアル瓶に添加し、テフロンコーティン
グした栓で密閉した。これにバイアル瓶中の液相濃度が
約40ppmになるようにトリクロロエチレンのガス0.
5mLをシリンジで注入し、23.5℃で振とうした。
【0090】このバイアルの気相部分のトリクロロエチ
レン濃度をガスクロマトグラフィーによって経時的に測
定し、トリクロロエチレンの減少速度からトリクロロエ
チレンの分解初速度を求めた。また培養液中の残留フェ
ノール濃度をアミノアンチピリン法によって測定した。
【0091】さらに培養液供給速度を20、30、4
0、50、60、70mL/hrに段階的に増やし、各々3
〜4日間の馴致後に以上の工程を同様に行ない、各培養
液供給速度でのトリクロロエチレン分解初速度と培養液
中の残留フェノール濃度を求めた。
【0092】以上の結果を図1、2に示す。
【0093】[比較例1-1]KK01株を実施例1と同
様に前培養し、培養液を図15に示す気泡塔式攪拌型の
培養槽41(46mmΦ×400mm、貯留培養液38
0mL)に注入した。培養槽には円筒形の籠140(内径
30mm、メッシュ孔径0.5mm)を中央に設置し、実
施例1と同じ担体100gを充填した。
【0094】培養槽の下部からフェノール1000ppm
とミネラルを含有したM9培地を10mL/hrで供給し、
ディフューザーによって20mL/minでバブリングし、
培養液の上面から培養液を排出して23.5℃にて連続
培養を行なった。
【0095】3日間培養を継続し、馴致を行なった後、
実施例1と同様の方法でトリクロロエチレンの分解初速
度を求めた。また培養液中の残留フェノール濃度をアミ
ノアンチピリン法によって測定した。
【0096】さらに培養液供給速度を15、20、2
5、30、35mL/hrに段階的に増やし、各々3〜4日
間の馴致後に以上の工程を同様に行ない、各培養液供給
速度でのトリクロロエチレン分解初速度と培養液中の残
留フェノール濃度を求めた。
【0097】以上の測定結果を図1、2に示す。
【0098】[比較例1-2]KK01株を実施例1と同
様に前培養し、培養液を実施例1と同じ担体100gを
充填した図16に示す固定層型の培養槽51(46mm
Φ×400mm、貯留培養液380mL)に注入した。培
養槽の下部から培養液を10mL/hrで供給し、培養液の
上面から培養液を排出して23.5℃にて連続培養を行
なった。培養液はフェノール1000ppmとミネラルを
含有したM9培地を用い、5Lのリザーバーに貯留し、
ディフューザーによって20mL/minでバブリングし
た。
【0099】3日間培養を継続し、馴致を行なった後、
実施例1と同様の方法でトリクロロエチレンの分解初速
度を求めた。また培養液中の残留フェノール濃度をアミ
ノアンチピリン法によって測定した。
【0100】さらに培養液供給速度を15、20、2
5、30、35mL/hrに段階的に増やし、各々3〜4日
間の馴致後に以上の工程を同様に行ない、各培養液供給
速度でのトリクロロエチレン分解初速度と培養液中の残
留フェノール濃度を求めた。
【0101】以上の測定結果を図1、2に示す。
【0102】実施例1では培養液供給量を増加してもト
リクロロエチレン分解初速度が高く、比較例1-1、1-
2と比べ同じ貯留培養液量でも生産できる培養液量が高
く、培養効率の高い培養槽であることがわかる。
【0103】[実施例2] 液浸透性のある担体を用いた
チューブ状培養槽による連続培養 トリクロロエチレン分解菌にJ1株(通商産業省工業技術
院生命工学工業技術研究所、受託番号:FERM BP-
5102、受託日:平成6年5月25日)、インデューサ
ー兼増殖基質にフェノール、担体に液浸透性のあるポリ
ウレタン24g、チューブ状の培養槽にPFA製、4m
mΦ×38300mm、貯留培養液量380mLをそれ
ぞれ用い、培養液供給速度を10、15、20、25、
30、35、40mL/hrにした他は実施例1と同様に行
ない、トリクロロエチレン分解初速度と培養液中の残留
フェノール濃度を求めた。
【0104】結果を図3、4に示す。
【0105】[比較例2-1]トリクロロエチレン分解菌
に前記J1株、インデューサー兼増殖基質にフェノー
ル、担体に液浸透性のあるポリウレタン24gをそれぞ
れ用い、担体の比重が小さいため担体を入れる籠を使用
しなかった他は比較例1-1と同様に行ない、トリクロ
ロエチレン分解初速度と培養液中の残留フェノール濃度
を求めた。
【0106】結果を図3、4に示す。
【0107】[比較例2-2]トリクロロエチレン分解菌
に前記J1株、インデューサー兼増殖基質にフェノー
ル、担体に液浸透性のあるポリウレタン24gをそれぞ
れ用いた他は比較例1-2と同様に行ない、トリクロロ
エチレン分解初速度と培養液中の残留フェノール濃度を
求めた。
【0108】結果を図3、4に示す。
【0109】実施例2では培養液供給量を増加してもト
リクロロエチレン分解初速度が高く、比較例2-1、2-
2と比べ同じ貯留培養液量でも生産できる培養液量が高
く、培養効率の高い培養槽であることがわかる。
【0110】[実施例3] 分岐管及び延長チューブから
培養液を回収するチューブ状培養槽による連続培養 基質による競合阻害が生じる場合において、培養条件の
変化によって残留する基質濃度が変化した場合を想定
し、培養液中の基質濃度を変化させることで残留する基
質濃度の変化を模擬的に引き起こした実験を行なった。
【0111】実施例1と同様に前培養したKK01株の
培養液を5000mm間隔に分岐管を有するチューブ状
の培養槽(4mmΦ×30000mm、貯留培養液量3
60mL)に注入し、一端から培養液を20mL/hrで供給
し、他端から培養液を排出しながら23.5℃にて連続
培養を行なった。培養液はフェノール800ppmとミネ
ラルを含有したM9培地を用い、5Lのリザーバーに貯
留し、ディフューザーによって20mL/minでバブリン
グした。
【0112】培地の成分は以下に示した通りである。
【0113】3日間培養を継続し、馴致を行なった後、
培養槽の途中に設置した各分岐管及びチューブ端から排
出される培養液をサンプリングした。またさらに同様の
分岐管を有する同様のチューブを培養液を排出している
端に継続し、各分岐管及び新しいチューブ端から排出さ
れる培養液をサンプリングした。そして実施例1と同様
に各培養液のトリクロロエチレン分解初速度を測定し、
最も高い分解初速度を求めた。またその培養液中の残留
フェノール濃度をアミノアンチピリン法によって測定し
た。
【0114】さらに培養液中のフェノール濃度を90
0、1000、1100、1200、1300ppmに段
階的に増やし、各々3〜4日間の馴致後に以上の工程を
同様に行ない、各フェノール濃度での最高のトリクロロ
エチレン分解初速度と培養液中の残留フェノール濃度を
求めた。
【0115】以上の結果を図5、6に示す。
【0116】[比較例3]分岐管のないチューブ状の培養
槽(4mmΦ×30000mm、貯留培養液量360m
L)を用い、チューブの延長を行なわなかった他は実施例
3と同様に行ない、各フェノール濃度でのトリクロロエ
チレン分解初速度と培養液中の残留フェノール濃度を求
めた。
【0117】以上の測定結果を図5、6に示す。
【0118】実施例3では培養条件の変化が起こって培
養液中に残留するフェノール濃度が高くなった場合でも
チューブを延長することで滞留時間を延長し、フェノー
ルによる競合阻害を防止することができた。また培養液
中に残留するフェノール濃度が低くなった場合には分岐
管から培養液を収穫することで最も分解活性の高くなる
滞留時間の培養液を収穫することができた。
【0119】[実施例4] 分岐管から培養液を添加する
チューブ状培養槽による連続培養 基質阻害が生じる場合において培養全工程で添加する基
質量を増やす実験を分岐管を有するチューブ状培養槽を
用いて行なった。
【0120】実施例1と同様に前培養したKK01株の
培養液をちょうど中央部分に分岐管を有するチューブ状
の培養槽(4mmΦ×30000mm、貯留培養液量3
60mL)に注入し、一端からフェノール800ppmとミ
ネラルを含有したM9培地を15mL/hrで供給し、また
分岐管からも同じ培養液を5mL/hrで供給し、他端から
培養液を排出しながら23.5℃にて連続培養を行なっ
た。培養液は5Lのリザーバーに貯留し、ディフューザ
ーによって20mL/minでバブリングした。
【0121】3日間培養を継続し、馴致を行なった後、
排出された培養液を10mLサンプリングし、これを2
0mL容量のバイアル瓶に添加し、テフロンコーティン
グした栓で密閉した。これにバイアル瓶中の液相濃度が
約40ppmになるようにトリクロロエチレンのガス0.
5mLをシリンジで注入し、23.5℃で振とうした。こ
のバイアルの気相部分のトリクロロエチレン濃度をガス
クロマトグラフィーによって経時的に測定し、トリクロ
ロエチレンの減少速度からトリクロロエチレンの分解初
速度を求めた。また培養液中の残留フェノール濃度をア
ミノアンチピリン法によって測定した。
【0122】さらに培養液中のフェノール濃度を90
0、1000、1100、1200、1300ppmに段
階的に増やし、各々3〜4日間の馴致後に以上の工程を
同様に行ない、各フェノール濃度での最高のトリクロロ
エチレン分解初速度と培養液中の残留フェノール濃度を
求めた。
【0123】以上の結果を図7、8に示す。
【0124】[比較例4]比較例3と同じ実験であるた
め、比較例3のトリクロロエチレン分解初速度と培養液
中の残留フェノール濃度のデータを用いた。
【0125】以上の結果を図7、8に示す。
【0126】実施例4と比較例4では培養全工程におい
て与えたフェノール量は同じであるが、実施例4では基
質であるフェノールを培養液の滞留時間に差をつけて2
個所から供給したため培養液中のフェノール濃度を上昇
しても残留フェノール濃度の上昇は抑えられ、基質阻害
が生じにくくなることがわかる。
【0127】
【発明の効果】本発明のチューブ状培養槽により、比重
の大きい担体や粒径が小さい担体を有効に使用すること
ができる。また多孔質担体の孔隙内部表面も有効に利用
できるため、培養液中の担体の有効表面積を大きくする
ことができ、連続培養の効率を向上することが可能とな
る。
【0128】また、連続培養、特に有機塩素化合物分解
微生物をインデューサーを用いて連続培養する場合にお
いて基質阻害や競合阻害を防止し、活性の高い状態の微
生物培養液を選択的に収穫することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】液浸透性のない担体を用いた場合の、培養液供
給速度とトリクロロエチレン分解初速度との関係を培養
槽の形態ごとに比較して示したグラフである。
【図2】液浸透性のない担体を用いた場合の、培養液供
給速度と培養液中の残留フェノール濃度との関係を培養
槽の形態ごとに比較して示したグラフである。
【図3】液浸透性のある担体を用いた場合の、培養液供
給速度とトリクロロエチレン分解初速度との関係を培養
槽の形態ごとに比較して示したグラフである。
【図4】液浸透性のある担体を用いた場合の、培養液供
給速度と培養液中の残留フェノール濃度との関係を培養
槽の形態ごとに比較して示したグラフである。
【図5】分岐管及び延長チューブから培養液を回収する
チューブ状培養槽における、供給培養液中のフェノール
濃度とトリクロロエチレン分解初速度との関係を、回収
を行なわない場合と比較して示したグラフである。
【図6】分岐管及び延長チューブから培養液を回収する
チューブ状培養槽における、供給培養液中のフェノール
濃度と残留フェノール濃度との関係を、回収を行なわな
い場合と比較して示したグラフである。
【図7】分岐管から培養液を添加するチューブ状培養槽
における、供給培養液中のフェノール濃度とトリクロロ
エチレン分解初速度との関係を、添加を行なわない場合
と比較して示したグラフである。
【図8】分岐管から培養液を添加するチューブ状培養槽
における、供給培養液中のフェノール濃度と残留フェノ
ール濃度との関係を、添加を行なわない場合と比較して
示したグラフである。
【図9】担体を充填しない場合のチューブ状培養槽を示
した図である。
【図10】液浸透性のない担体を充填した場合のチュー
ブ状培養槽を示した図である。
【図11】液浸透性のある担体を充填した場合のチュー
ブ状培養槽を示した図である。
【図12】液浸透性のある担体の構造図である。
【図13】チューブ状培養槽に分岐管及び延長チューブ
が取り付けられた場合の図である。
【図14】実施例1及び2の装置全体図である。
【図15】比較例1-1の装置全体図(気泡塔式攪拌槽型
培養槽使用の場合)である。
【図16】比較例1-2の装置全体図(固定層型培養槽使
用の場合)である。
【符号の説明】
3:培養液(供給) 10:ポンプ・モーター 11:リザーバー 12、22:培養液 14:空気 15:排気 16、26:ディフューザー 17:気泡 18、38:排出管 19、39:排出管開口部 35:排気 41:気泡塔式攪拌槽型培養槽 51:固定層型培養槽 53:担体 101:チューブ状培養槽 102:非多孔性担体 103:培養液(流入) 104:培養液(内部流動) 105:培養液(流出) 111:多孔性担体 112:担体表面 113:孔隙 114:担体内部 115:孔隙表面 121:分岐管 131:(延長)チューブ 132:チューブ状培養槽末端(延長接続部)

Claims (27)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 培養液が連続的に一端から供給され、他
    端から排出されるチューブ状の培養槽で微生物を培養す
    ることを特徴とする微生物の連続培養方法。
  2. 【請求項2】 該培養槽に担体が充填されている請求項
    1記載の方法。
  3. 【請求項3】 該培養槽中への担体の充填密度を任意に
    調整する請求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 該担体の粒径が0.6mm以下である請
    求項2〜3記載の方法。
  5. 【請求項5】 該担体の比重が培養液より大きい請求項
    2〜4記載の方法。
  6. 【請求項6】 該担体の少なくとも内部が多孔質でその
    内部に液体を含浸でき、該担体の表面で開口した孔隙が
    その内部の孔隙と連通している請求項2〜4記載の方
    法。
  7. 【請求項7】 チューブ状の培養槽の両端以外に該培養
    槽内と外部とを連通し得る分岐管を一本以上設置する請
    求項1〜6記載の方法。
  8. 【請求項8】 該培養槽の培養液の排出端に延長チュー
    ブを継続することで、培養を行なうチューブ長を任意に
    延長可能とした請求項1〜7記載の方法。
  9. 【請求項9】 該延長チューブに該延長チューブの内部
    と外部とを連通し得る分岐管が一本以上設置されている
    請求項8記載の方法。
  10. 【請求項10】 該分岐管から培養液を供給することで
    該チューブ内の培養液中の基質を一定濃度以下に抑え、
    基質阻害を起こすこと無しに培養全工程において添加す
    る基質量を増加させる請求項7または9記載の方法。
  11. 【請求項11】 該分岐管から培養液を排出回収するこ
    とで培養液の滞留時間を制御する請求項7または9記載
    の方法。
  12. 【請求項12】 該チューブの長さによって培養液の滞
    留時間を制御する請求項8〜9記載の方法。
  13. 【請求項13】 該培養槽によってインデューサーを用
    いた有機塩素化合物分解微生物の連続培養を行なう請求
    項1〜12記載の方法。
  14. 【請求項14】 該分岐管から培養液を排出回収するこ
    とで該排出回収された培養液中の残留基質濃度を制御す
    る請求項13記載の方法。
  15. 【請求項15】 該チューブの長さによって該排出回収
    された培養液中の残留基質濃度を制御する請求項13記
    載の方法。
  16. 【請求項16】 該残留基質濃度が微生物に対して競合
    阻害を起こさない濃度である請求項14または15記載
    の方法。
  17. 【請求項17】 該分岐管から培養液を排出回収するこ
    とで該排出回収された培養液中の残留インデューサー濃
    度を有機塩素化合物の分解にとって好適な濃度に制御す
    る請求項13記載の方法。
  18. 【請求項18】 該培養槽の培養液排出端からチューブ
    を継続することでチューブ長を延長し、それによって排
    出回収された培養液中の残留インデューサー濃度を有機
    塩素化合物の分解にとって好適な濃度に制御する請求項
    13記載の方法。
  19. 【請求項19】 該残留インデューサー濃度が有機塩素
    化合物分解微生物による有機塩素化合物分解に対して競
    合阻害を起こさない濃度である請求項17〜18記載の
    方法。
  20. 【請求項20】 該分岐管から培養液をモニタリングす
    る請求項7または9記載の方法。
  21. 【請求項21】 該分岐管から培養液をモニタリングす
    ることで培養液を供給する分岐管を決定する請求項10
    記載の方法。
  22. 【請求項22】 該分岐管から培養液をモニタリングす
    ることで培養液を回収する分岐管を決定する請求項11
    〜19記載の方法。
  23. 【請求項23】 微生物を培養する手段としてチューブ
    状の培養槽を有し、該培養槽が培養液を連続的に一端か
    ら供給する手段と、他端から排出する手段とを有するこ
    とを特徴とする微生物の連続培養装置。
  24. 【請求項24】 該培養槽に担体が充填されている請求
    項23記載の装置。
  25. 【請求項25】 該培養槽の両端以外に該培養槽の内部
    と外部とを連通可能とする分岐管が一本以上設置される
    請求項23〜24記載の装置。
  26. 【請求項26】 該培養槽の培養液排出端に延長チュー
    ブの接続部を有する請求項23〜25記載の装置。
  27. 【請求項27】 該延長チューブがその内部と外部とを
    連通可能な分岐管の一本以上を有する請求項26記載の
    装置。
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