JP2000303948A - 形状記憶合金製のアクチュエータ及びその製造方法 - Google Patents

形状記憶合金製のアクチュエータ及びその製造方法

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孝寿 小川
Sadatoshi Ono
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 圧延を繰り返して結晶配列に指向性を持たせ
た薄い板材、又は細い線材を並列に集束したものを必要
な寸法の板バネとして構成した形状記憶合金製アクチュ
エータ、およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 マルテンサイト逆変態温度以上に加熱す
るとマルテンサイト相がオーステナイト相へと変態して
原形状を回復する形状記憶合金をインゴットから加工熱
処理する際に圧延を繰り返して結晶配列に指向性を持た
せた薄い板材を用い、必要寸法の板バネとして構成され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、形状記憶合金製
の板バネによるアクチュエータ及びその製造方法の技術
分野に属する。
【0002】
【従来の技術】土木建築の分野においても、形状記憶合
金製のアクチュエータは、例えば図7と図8に示したよ
うに、梁のプレストレス導入機構の駆動源などとして使
用されている。
【0003】即ち、梁1の軸線方向にPC鋼棒2を通
し、同梁1の端面に受け座3を当てがい、その外側に形
状記憶合金製のアクチュエータ4を設置する。PC鋼棒
2の先端部には前記アクチュエータ4を反力受けとする
ナット5をねじ込んでいる。また、同アクチュエータ4
の外面には加熱手段として面状セラミックヒータ6が設
置されている。
【0004】上記のように梁1のプレストレス導入機構
の駆動源として使用されるアクチュエータ4の動作概要
を図9に示す。図9Aは正常な力の平衡状態を示してい
る。梁の曲げ変形によりPC鋼棒2に作用する負荷(引
っ張り力)が増大すると、形状記憶合金製アクチュエー
タ4は図9Bのように曲げ変形を生ずる。そこで面状セ
ラミックヒータ6へ通電して加熱すると、アクチュエー
タ4は原形状回復の性質によりナット5を介してPC鋼
棒2を緊張し梁1の曲げ変形を修復するのである。
【0005】要するに、形状記憶合金中の結晶相は「高
温安定相」であるところのオーステナイト相である。外
力によって変形するときに応力誘起マルテンサイト相が
生成され、これが所謂「マルテンサイト逆変態温度」以
上に加熱されると、マルテンサイト相がオーステナイト
相へと変態して、原形状を回復するのである。前記のア
クチュエータ4はこうした動作原理を応用している。
【0006】形状記憶合金をアクチュエータとして利用
する場合、その形態はコイルバネ形状(例えば特開昭5
9−107894号公報、特開平4−248031号、
特許第2724815号公報など参照)、あるいは板バ
ネ形状(例えば特開昭62−124893号公報など参
照)とするのが一般的である。こうした形態のバネを予
め変形させておくか、又は外力を受けて変形したとき
に、加熱して形状回復させ、その際の回復力を駆動力と
して利用するのである。
【0007】
【本発明が解決しようとする課題】ところで、形状記憶
合金のインゴットから必要な寸法形状のバネを加工熱処
理し一体物として製造する場合、母相中のオーステナイ
ト相は多結晶体であるため、製造されたバネの結晶配列
はアットランダムになっている。そのため、同バネの形
状記憶・回復効果は等方的であり、指向性を持った結晶
配列の場合に比較して形状記憶・回復効率は低下する。
このような低下傾向は、アクチュエータの寸法が大きく
なるほど顕著に現れる。
【0008】次に、図7と図8とに例示した、建築構造
部材の制御(例えば梁の変形制御)に適用する形状記憶
合金製アクチュエータ4の形態としては、コイルバネ形
状や板バネ形状が考えられる。駆動力としての加熱回復
力の発現は、形状記憶合金のひずみが疑似降伏域にあ
り、結晶相がマルテンサイト変態を起こしていることが
必要である。
【0009】しかし、従来の形状記憶合金は直径が数mm
の線材として製造されるのが殆どであり、その際、加熱
回復力を積極的にアクチュエータとして応用する使用方
法は希であった。形態がコイルバネ形状の場合は、コイ
ル全体に弾性変形が生じても、コイル線材の降伏変形は
小さいため、発生する加熱回復力(駆動力)も非常に小
さいからである。
【0010】したがって、アクチュエータとして大きな
駆動力を実現するためには、その形状を板バネ形状と
し、曲げの形式で使用するのが効果的である。しかしな
がら、建築部材の制御に使用できる寸法の板バネ(厚さ
が数10mm以上)は極めて特殊な事例であり、工業的に
製造された例は見聞しない。一方、金属材料は、圧延処
理を行うと、母相中の結晶配列が指向性を持つようにな
る。これは金属学的に見て、既知の重要な現象である。
【0011】したがって、本発明の目的は、形状記憶合
金製アクチュエータの形状記憶・回復効率を向上させる
こと、換言すれば、圧延を繰り返して結晶配列に指向性
を持たせた薄い板材、又は細い線材を並列に集束して板
状となし、これらを必要な寸法の板バネとして構成した
形状記憶合金製アクチュエータ、およびその製造方法を
提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記従来技術の課題を解
決する手段として、請求項1に記載した形状記憶合金製
のアクチュエータは、結晶相がマルテンサイト変態を起
こしており、マルテンサイト逆変態温度以上に加熱する
とマルテンサイト相がオーステナイト相へと変態して原
形状を回復する形状記憶合金をインゴットから加工熱処
理する際に圧延を繰り返して結晶配列に指向性を持たせ
た薄い板材を用い、必要寸法の板バネとして構成されて
いることを特徴とする。
【0013】請求項2に記載した発明に係る形状記憶合
金製のアクチュエータは、結晶相がマルテンサイト変態
を起こしており、マルテンサイト逆変態温度以上に加熱
するとマルテンサイト相がオーステナイト相へと変態し
て原形状を回復する形状記憶合金をインゴットから加工
熱処理する際に圧延を繰り返して結晶配列に指向性を持
たせた薄い板材を、板状または線状の発熱体と組み合わ
せて用い、必要寸法の板バネとして構成されていること
を特徴とする。
【0014】請求項3記載の発明は、請求項1または2
に記載した形状記憶合金製のアクチュエータにおいて、
薄い板材は、結晶相がマルテンサイト変態を起こしてお
り、マルテンサイト逆変態温度以上に加熱するとマルテ
ンサイト相がオーステナイト相へと変態して原形状を回
復する形状記憶合金をインゴットから加工熱処理する際
に圧延を繰り返して結晶配列に指向性を持たせた細い線
材を複数並列に並べて一体化した構成であることを特徴
とする。
【0015】請求項4に記載した発明に係る形状記憶合
金製アクチュエータの製造方法は、結晶相がマルテンサ
イト変態を起こしており、マルテンサイト逆変態温度以
上に加熱するとマルテンサイト相がオーステナイト相へ
と変態して原形状を回復する形状記憶合金をインゴット
から加工熱処理する際に、圧延を繰り返して結晶配列に
指向性を持たせた薄い板材を作り、この板材を用いて、
必要寸法の板バネとして製造することを特徴とする。
【0016】請求項5に記載した発明に係る形状記憶合
金製アクチュエータの製造方法は、結晶相がマルテンサ
イト変態を起こしており、マルテンサイト逆変態温度以
上に加熱するとマルテンサイト相がオーステナイト相へ
と変態して原形状を回復する形状記憶合金をインゴット
から加工熱処理する際に、圧延を繰り返して結晶配列に
指向性を持たせた薄い板材を作り、前記板材を板状また
は線状の発熱体と組み合わせて用い、必要寸法の板バネ
として製造することを特徴とする。
【0017】
【発明の実施形態及び実施例】結晶相がマルテンサイト
変態を起こしていて、マルテンサイト逆変態温度以上に
加熱するとマルテンサイト相がオーステナイト相へと変
態して原形状を回復する形状記憶合金を、インゴットか
ら加工熱処理する際に圧延を繰り返して薄い板状を製造
する。即ち、インゴットの加工熱処理の際に圧延を繰り
返して薄い板状に成形することにより、結果的に結晶配
列に指向性を持たせた薄い板材を作ることができる。こ
の板材を複数層に重合するべく用いて、必要寸法(厚さ
数10mm)の板バネとして製造する。但し、板バネが曲
げ変形する際には重層構造の板同士の層間に滑りが生ず
るので、この滑りを拘束しないように板同士の層間を自
由にするか、又は耐熱性の弾性な接着剤で接着する。
【0018】図1〜図5には、前記のように作られた板
材を用いて重層構造に製造された板バネ(アクチュエー
タ)の横断面の概念図を示している。先ず図1は、上述
したように形状記憶合金のインゴットから加工熱処理す
る際に圧延を繰り返して製造し指向性を持たせた薄い板
材10を、同じく薄い板状の発熱体11と交互の配置で
複数層重合した構成のアクチュエータを示している。発
熱体11としては例えばセラミックス面状発熱体などを
使用できる。但し、板バネ(アクチュエータ)に作用す
る外力は直接発熱体11へ伝達しない構造にする。
【0019】図2は、同じく形状記憶合金のインゴット
の加工熱処理の際に圧延を繰り返して製造し指向性を持
たせた薄い板材を、アクチュエータの基本幅の板材10
と、図示例では1/3幅の板材10’との組合わせと
し、一方、板状の発熱体11は1/3幅とし、この発熱
体11がアクチュエータの基本幅の範囲において、中央
と両側に交互に配置されて所謂市松模様状をなし、伝熱
効率の良い重層構成としたアクチュエータを示してい
る。
【0020】図3は、上記のように製造した2枚(但
し、層数はこの限りではない。)の板材10、10を積
層するとともに、両板の中間の中央位置に線状の発熱体
11を挟み込んだ構成のアクチュエータを示している。
図4は、線状の発熱体11を幅方向に3本等配した構成
のアクチュエータを示している。図5は、云うなれば図
4の構成を背中合せに複数積層した構成のアクチュエー
タを示している。
【0021】形状記憶合金製アクチュエータの形状記憶
・回復効果は加熱のための熱源(ヒータなど)から与え
られる熱のやり取りの如何に支配される。よって、上記
のように薄い板材10又は10’の積層により製造され
たアクチュエータ(板バネ)は、表面積が増大して熱交
換効率が増し、加熱効率が高いので、形状記憶・回復の
速度の大きい加熱回復力を発現する。したがって、建築
部材の動的な挙動の制御にも適用できる。
【0022】次に、図6は形状記憶合金のインゴットの
加工熱処理の際に圧延を繰り返して指向性を持たせた細
い線材を成形し、複数の線材を並列に並べて一体化した
薄い「板材」を作り、この「板材」を上述の各板材10
又は10’の代わりに使用してアクチュエータを製造す
る場合の実施形態を示している。
【0023】図6Aは、形状記憶合金で製作した成形用
形枠12の中に、前記のように成形した線材13と発熱
体11をそれぞれ複数並列に並べ、耐熱性で弾性な合成
樹脂14で固めた、成形用型枠12と線材13及び合成
樹脂14が三位一体となった「板材」を、板バネの製造
に使用する実施例を示している。
【0024】また、図6Bは、成形用型枠12としては
合成樹脂14が接着しない材質のものを使用し、合成樹
脂14が硬化した後に脱型した「板材」を、板バネの製
造に使用する実施例を示している。
【0025】図6Aのように製造された「板材」で作ら
れる板バネ(アクチュエータ)の曲げ変形特性は、成形
用型枠12と線材13及び合成樹脂14が三位一体とな
った特性によって決定される。図6Bのように製造され
た「板材」で作られる板バネ(アクチュエータ)の曲げ
変形特性は、線材13及び合成樹脂14の特性によって
決定される。いずれにしても、合成樹脂14は線材13
を固めて成形することが目的であり、期待する板バネ特
性を発揮するための線材13の容積は合成樹脂14の容
積よりも大きいと考えられる。合成樹脂14の特性が板
バネの特性に対して支配的とならないように、線材13
と合成樹脂14の容積比を決定することが肝要である。
【0026】勿論、本発明は、その要旨を逸脱すること
なく、当業技術者の通常の知識に基いてなされる変形、
応用、変更の実施が可能である。例えば板材10を直接
純粋に積層し、発熱体は、外周面にのみ付着させる構成
(請求項1又は4記載の発明)で実施することができ
る。
【0027】
【本発明が奏する効果】請求項1〜6に記載した発明に
係る形状記憶合金製のアクチュエータ及びその製造方法
によれば、薄い板材を積層して作られるので、加熱回復
力を得るための加熱効率が向上し、アクチュエータの作
動速度を上げることが可能である。しかも、薄い板材は
形状記憶合金の結晶に指向性を持たせているので、形状
記憶・回復効率が増大し、この意味でも高性能のアクチ
ュエータを提供できるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアクチュエータ(板バネ)の断面
図である。
【図2】本発明に係るアクチュエータ(板バネ)の異な
る断面図である。
【図3】本発明に係るアクチュエータ(板バネ)の異な
る断面図である。
【図4】本発明に係るアクチュエータ(板バネ)の異な
る断面図である。
【図5】本発明に係るアクチュエータ(板バネ)の異な
る断面図である。
【図6】A、Bは形状記憶合金製線材をアクチュエータ
に適用する「板材」として成形したものを示した断面図
である。
【図7】形状記憶合金製アクチュエータの適用例を示し
た断面図である。
【図8】図7の側面図である。
【図9】A〜Cは形状記憶合金製アクチュエータの作動
概要を示した説明図である。
【符号の説明】
10 板材 11 発熱体 13 線材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小川 孝寿 千葉県印西市大塚一丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 (72)発明者 大野 定俊 千葉県印西市大塚一丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 Fターム(参考) 3J059 AA10 BA11 BC03 DA36 GA50

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】結晶相がマルテンサイト変態を起こしてお
    り、マルテンサイト逆変態温度以上に加熱するとマルテ
    ンサイト相がオーステナイト相へと変態して原形状を回
    復する形状記憶合金をインゴットから加工熱処理する際
    に圧延を繰り返して結晶配列に指向性を持たせた薄い板
    材を用い、必要寸法の板バネとして構成されていること
    を特徴とする、形状記憶合金製のアクチュエータ。
  2. 【請求項2】結晶相がマルテンサイト変態を起こしてお
    り、マルテンサイト逆変態温度以上に加熱するとマルテ
    ンサイト相がオーステナイト相へと変態して原形状を回
    復する形状記憶合金をインゴットから加工熱処理する際
    に圧延を繰り返して結晶配列に指向性を持たせた薄い板
    材を、板状または線状の発熱体と組み合わせて用い、必
    要寸法の板バネとして構成されていることを特徴とす
    る、形状記憶合金製のアクチュエータ。
  3. 【請求項3】薄い板材は、結晶相がマルテンサイト変態
    を起こしており、マルテンサイト逆変態温度以上に加熱
    するとマルテンサイト相がオーステナイト相へと変態し
    て原形状を回復する形状記憶合金をインゴットから加工
    熱処理する際に圧延を繰り返して結晶配列に指向性を持
    たせた細い線材を複数並列に並べて一体化した構成であ
    ることを特徴とする、請求項1または2に記載した形状
    記憶合金製のアクチュエータ。
  4. 【請求項4】結晶相がマルテンサイト変態を起こしてお
    り、マルテンサイト逆変態温度以上に加熱するとマルテ
    ンサイト相がオーステナイト相へと変態して原形状を回
    復する形状記憶合金をインゴットから加工熱処理する際
    に、圧延を繰り返して結晶配列に指向性を持たせた薄い
    板材を作り、この板材を用いて、必要寸法の板バネとし
    て製造することを特徴とする、形状記憶合金製アクチュ
    エータの製造方法。
  5. 【請求項5】結晶相がマルテンサイト変態を起こしてお
    り、マルテンサイト逆変態温度以上に加熱するとマルテ
    ンサイト相がオーステナイト相へと変態して原形状を回
    復する形状記憶合金をインゴットから加工熱処理する際
    に、圧延を繰り返して結晶配列に指向性を持たせた薄い
    板材を作り、前記板材を板状または線状の発熱体と組み
    合わせて用い、必要寸法の板バネとして製造することを
    特徴とする、形状記憶合金製アクチュエータの製造方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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DE102014107821A1 (de) 2014-06-04 2015-12-17 G. Rau Gmbh & Co. Kg Thermisches Stellelement aus einer Formgedächtnislegierung
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