JP2000309864A - 多層膜被覆部材 - Google Patents
多層膜被覆部材Info
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Abstract
性等の問題点等を解決し、酸素を含有する皮膜の密着性
を著しく改善した被覆工具を提供する。 【構成】 多層被覆部材の多層被覆の少なくとも1層は
基体にパルスバイアスを印加して設け、多層被覆は2以
上の第1の層と2以上の第2の層を交互に積層し、該第
1の層は周期律表の4a、5a、6a族、及びAlの少
なくとも1の元素の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる
群から選ばれる少なくとも1つから構成され、該第2層
は周期律表の4a、5a、6a族、及びAlの少なくと
も1の元素の酸化物、炭酸化物、酸窒化物、炭酸窒化物
からなる群から選ばれる少なくとも1つから構成する。
Description
金、サーメット等の超硬質合金基体上に、耐酸化性及び
/又は耐摩耗性に優れた多層の被膜を被覆してなる多層
膜被覆部材に関し、ドリル、エンドミル、フライス用ス
ローアウェイチップに代表される切削工具、旋削工具等
に最適な多層膜被覆部材に関するものである。
質合金基体上に耐酸化性や耐摩耗性にすぐれたセラミッ
クの被膜を被覆し、基体と被膜とのそれぞれの特性を有
効に引き出して、長寿命を達成しようとした被覆部材は
多数提案されている。従来から、被覆工具の被膜として
は、耐摩耗性に優れたTiN、TiCN等の皮膜が汎用
的かつ一般的に使用されている。しかし、TiNを代表
とする金属窒化物は高温で酸化され易く、耐摩耗性が著
しく劣化するという問題がある。近年、これらTiN被
膜等の酸化の問題を改善しようとして、これら被膜にA
lを含有させて耐摩耗性や耐酸化性等を向上させること
が提案されており、その代表的なものとして、特開昭6
2−56565号公報、特公平4−53642号公報、
特公平5−67705号公報等がある。一方、被膜を被
覆する方法としては、大別すると、化学蒸着法(CVD
法)と物理蒸着法(PVD法)があり、このうち、イオ
ンプレーティング法やスパッタ法等のPVD法により被
覆した被膜は、基体の強度を劣化させることなく耐摩耗
性を向上できることが知られており、このため、強度や
耐欠損性を重要視するドリル、エンドミル、フライス用
スローアウェイチップに代表される被覆切削工具等の被
覆は、PVD法により被覆されているのが現状である。
56565号公報等で提案されているAlを含有させた
被膜、例えばTiとAlの炭化物、窒化物、又は炭窒化
物の被膜を被覆した部材は、Alを含有していない被膜
を被覆した部材に比べて耐酸化性及び耐摩耗性に優れた
被覆部材ではあるが、その機械的性質は逆に劣化すると
いう問題のあることが指摘されている。すなわち、被膜
中にAlを含有させることにより、被膜表面の化学的性
質の向上を達成した反面、破壊靭性値が低下すること、
特に高速切削用切削工具として用いた場合には工具の刃
先温度が著しく高温になり、被膜の酸化、急激な摩耗の
進行、熱衝撃性による劣化及び被削材との溶着により短
寿命になるという問題がある。特に近年は、切削速度が
更に高速化する傾向にあり、また、熱処理後の高速度鋼
を切削する等、過酷な条件での加工を要求される場合も
多くなっており、かかる問題点の早急な解決が望まれて
いる。
で、最外層にTiAlON等を被覆することにより被覆
部材の耐酸化性を向上することも提案されているが、単
に、最外層にTiとAlの酸化物を形成しただけでは、
過酷な条件下の加工で要求されるような十分な耐酸化性
を得るには至っていない。更にまた、CVD法で一般的
に用いられているアルミナ皮膜を、イオンプレーティン
グ法で最外層に形成することも提案されている(特開平
9−192906号公報)が、PVD法によるアルミナ
被膜は密着性が弱く、実際の切削においては衝撃力によ
って被膜が剥離してしまい、いまだ満足いくものではな
い。
温度が著しく高温になり、被膜の酸化開始温度よりも高
くなる場合がしばしばあることに鑑みて、このような高
速切削においても、長寿命で且つ安定した切削ができる
被覆部材を実現することを目的とするものである。
達成するために、本出願人は、TiAlN層を例にして
酸化のメカニズムを鋭意研究した結果、周期律表の4
a、5a、6a族元素又はAlの炭化物、窒化物、炭窒
化物、又はそれらの複合炭化物、複合窒化物、複合炭窒
化物からなる第1の層と、周期律表の4a、5a、6a
族元素又はAlの酸化物、炭酸化物、酸窒化物、炭酸窒
化物、又はそれらの複合酸化物、複合炭酸化物、複合酸
窒化物、複合炭酸窒化物からなる第2の層とを交互に積
層することにより、優れた耐酸化性を有する被膜が形成
出来ることを見出し、その知見に基づき完成した多層膜
被覆部材にかかる発明を出願する。
に詳細に多層膜の構成を解析・研究した結果、ハイス、
超硬合金、サーメット等の超硬質合金からなる基体上に
多層の被膜を被覆してなる多層膜被覆部材であり、該多
層被覆は2以上の第1の層と2以上の第2の層を交互に
積層してなり、該第1の層は周期律表の4a、5a、6
a族、及びAlの少なくとも1の元素の炭化物、窒化
物、炭窒化物からなる群から選ばれる少なくとも1つか
ら構成され、該第2層は周期律表の4a、5a、6a
族、及びAlの少なくとも1の元素の酸化物、炭酸化
物、酸窒化物、炭酸窒化物からなる群から選ばれる少な
くとも1つから構成することにより、皮膜の靭性の劣化
なく高速切削が可能な優れた特性の多層膜被覆部材を実
現できることを発明したものである。本願発明の他の形
態としては、上記第1の層と第2の層とが交互に積層さ
れ、前記第2の層及び該第2の層を介して隣り合う前記
第1の層が結晶の連続性を有すること、また第1の層が
(200)方向に配向させるという手段を採用する。本
願発明の更に他の形態としては、上記第1の層と第2の
層とが交互に積層され、前記第2の層及び該第2の層を
介して隣り合う前記第1の層が面心立方構造の結晶連続
性を有すること、またさらに第1の層を(200)方向
に配向させるという手段を採用する。更にまた、本願発
明の他の形態として、上記第1の層と第2の層とが交互
に積層され、前記第2の層が擬似的超格子構造を有する
という手段を採用する。
に優れると言われるTiAlN層を上記第1の層とし、
上記第2の層をTiAlON層とした場合を例にして説
明するが、本発明における第1の層及び第2の層がこれ
ら層に限定されるものではない。大気中でTiAlN層
の酸化テストを行った場合、被膜表面近傍のAlが最表
面に拡散し、そこでアルミナを形成する。本発明者等の
研究によれば、このアルミナの形成が酸素の被膜内部へ
の拡散を抑制し耐酸化性を向上せしめる理由であるが、
この場合、アルミナ直下の被膜は、Alが最表面に拡散
したためにAlの存在しないルチル構造のTi酸化物と
なる。このTi酸化物は非常にポーラスであり、最表面
に形成されたアルミナは静的な酸化テストでは酸化の促
進に対し酸素拡散のバリヤーとして機能するが、動的な
切削においては、最表面のアルミナはポーラスなTiの
酸化物層より容易に剥離してしまう結果となり、酸化の
促進に対し、バリヤー効果を十分に発揮しなく、連続的
に酸化が進行する。
としてTiAlON層などの酸素を含有する層を介在さ
せて積層構造にした場合には、第1の層であるTiAl
N層からなる一つの層が上述のごとく酸化してポーラス
なTiの酸化物層となって被膜内部へ酸化が進行しよう
としても、その下層にあるTiAlON層からなる第2
の層が酸化拡散の障壁として機能するため、特に被膜の
酸化が動的な切削において被膜内部への酸化拡散が大幅
に抑制される結果となり、切削において安定した長寿命
が達成される。なお、第1の層であるTiAlN層が酸
化により剥離し、最表層となった第2の層であるTiA
lON層も切削中に剥離もしくは摩滅により消滅する
が、更に下層にある第2の層が同様に機能するため、被
膜全体の耐酸化性を大幅に向上せしめる結果となる。し
たがって、第2の層は、できるだけ多く、好ましくは1
0層以上介在させることにより、十分に満足される切削
寿命を達成することが出来る。更に望ましくは100〜
500層程度である。
る被膜内部の構造を示す透過型電子顕微鏡(以下、TE
Mと称する。)写真である。理解しやすいように、図の
左側部に補足線を入れてあるが、基体上にTiAlNか
らなる厚さ0.03〜0.05μm程度の第1の層が、
補足線で示す極めて薄い第2の層を介して多層に形成さ
れている。図2は、図1に示した本発明多層被膜部材に
おける第1の層及び第2の層についてのTEMによる拡
大写真である。また、第2の層のエネルギー分散型X線
分光器(以下、EDXと称する。)分析及び電子エネル
ギー損失分光法(以下、EELSと称する。)による解
析結果を図3及び図4に示す。このEDX及びEELS
の解析結果から、第2の層はTi及びAlの化合物であ
り、N及びOを含有する化合物、すなわちTiAlON
からなる層であることがわかる。また、図2において、
第2の層は、厚さ1〜2nm程度の極めて薄い層として
いるため、第2の層及び第2の層を介して隣り合う二つ
の第1の層の組織を観察すると、第2の層が存在するに
もかかわらず、結晶の連続性が維持されていることが判
る。
うに、本発明の多層被膜部材は、周期律表の4a、5
a、6a族元素又はAlの炭化物、窒化物、炭窒化物、
又はそれらの複合炭化物、複合窒化物、複合炭窒化物か
らなる第1の層と、周期律表の4a、5a、6a族元素
又はAlの炭酸化物、酸窒化物、炭酸窒化物、又はそれ
らの複合炭酸化物、複合酸窒化物、複合炭酸窒化物から
なる薄い第2の層とが交互に積層し、かつ第2の層を介
して隣り合う第1の層の相互間には結晶の連続性が維持
されていることを基本的な構成とするものである。
て、結晶の構造は面心立方構造(FCC構造)とするこ
とがより望ましい。一般に、PVD法により被覆した被
膜は、基体の強度を劣化させることなく耐摩耗性を向上
できるとされており、本発明多層被覆部材においても、
PVD法により被膜形成することが好ましい。この場
合、被膜の結晶構造をFCC構造にすると、結晶の連続
性を損なわずに安定した被膜形成を行うことが出来る。
また、FCC構造の結晶をもつ被膜は、他の構造の被膜
に比べて、耐摩耗性においてより優れた特性を有してい
る。
おいては、第1の層と第2の層の間に被膜形成時の残留
応力に大きな差異がある場合には、第1の層と第2の層
の界面に残留応力の差に起因する高い剪断応力が作用
し、この剪断応力が被膜の密着性を損なう原因となる。
被膜そのものの残留圧縮応力は、コーティング条件に強
く依存する。一般に、イオンのエネルギーが低い条件下
でのコーティングにおいては被膜の残留応力は低い結果
となり、反対にイオンのエネルギーが高い条件下のコー
ティングにおいては被膜の残留応力は高くなる。本発明
者等の研究によれば、残留応力が低い場合には被膜は
(200)に配向する傾向にある。したがって、本発明
においては、単に結晶の連続性を有するのみならず、被
膜を(200)方向に配向することによって、被膜の密
着度を高めて耐摩耗性を向上できるのである。成膜時
に、イオンのエネルギーを決定するのは、主に基体に付
与するバイアス電圧と真空度である。したがって、(2
00)に配向するには、これら要件を適宜選択設定する
ことにより実現できる。また、配向方向は、X線回折に
より容易に判定することができる。
空アーク放電を用いたイオンプレーティング法により作
成したTiN/VN超格子薄膜等が知られており、その
積層周期が5.2nmにおいて硬度が極大となると報告
されているように、高い硬度を有する被膜を実現され
る。本発明者等は、本発明多層被覆部材における第2の
層が極めて薄い(例えば、数nm程度)場合には、この
ような超格子構造によく似た構造の膜となることを見出
した。本発明多層被覆部材における第1の層は超格子を
構成するには比較的厚いので、本発明においては、これ
を擬似的な超格子構造と称する。この擬似的な超格子構
造の多層被膜部材の場合には、被膜自体の硬度が高いこ
とが予測され、また被膜相互間の結合も強固となるた
め、より一層優れた耐摩耗性を有するものとなる。
自体の耐酸化性を向上すべく、本発明者等は種々の第三
成分の添加を試みたが、その結果、Si又は3a族金属
のY、Nd、Sm、Scの添加において、被膜の耐酸化
性が向上することがわかった。これらの成分は、第1の
被膜の結晶粒界に偏析し、粒界での酸素の拡散を抑制
し、被膜の耐酸化性を向上せしめる効果があるものと考
えられる。この第三成分の置換量は、1原子%未満だと
耐酸化性の向上に効果がなく、一方、30原子%を越え
て含有させると被膜の耐摩耗性を劣化させるため、1〜
30原子%の範囲で置換することが望ましい。更に、望
ましくは1〜10原子%の範囲である。
の層は、酸素を含有する層であり、被膜内部への酸化拡
散を防止すると共に、第1の層と結晶構造の連続性を形
成せしめることにより層間の密着性を格段に向上し、切
削中の剥離を発生しなくなる働きを持つ。この第2の層
の厚さは、1nm未満だと耐酸化性の向上に効果が無
く、200nmを越えると酸化物内で破壊が発生し、そ
の結果、被膜が剥離する場合があるため、1〜200n
mの範囲とすることが望ましい。また、擬似的な超格子
構造として、その作用・効果を享受しようとする場合な
どには、1〜10nmの範囲とすることが好ましい。
層膜のうちの最外層を、周期律表の4a、5a、6a族
元素とAlの複合酸化物、複合炭酸化物、複合酸窒化
物、複合炭酸窒化物からなる層とすることにより、切削
初期での耐酸化性を向上させると共に、被加工物に対す
る耐溶着性も向上し、切削における更なる長寿命化を図
ることが出来る。この場合、最外層膜がアモルファス状
の結晶構造の場合、より一層の耐酸化性の向上が認めら
れる。つまり、酸素は粒界で優先的に拡散するため、粒
界のないアモルファス層であると、一層酸素の拡散が抑
制され耐酸化性の向上に効果的であると考えられる。
といった結晶質にした場合には、多少耐酸化性は劣化す
るが、最外層そのものが硬質となり、耐摩耗性を向上さ
せるため、切削用途によって、アモルファス層とするか
結晶層とするか、選択することが好ましい。いずれにお
いても厚さは5nm未満であると耐酸化性の向上に効果
が少なく、500nmを越えると密着性が劣化するため
5〜500nmの範囲が好ましい。
のうちの最内層は、基体との密着性に優れた層とするこ
とが好ましい。このような密着強化層の一つとして、例
えばTiN層である。またTi、TiAlといった金属
層は皮膜の残留圧縮応力を低減させ皮膜の密着性を向上
させる働きを有する。いずれにおいても厚さが2nm未
満であると密着性向上に効果がなく、5000nmを越
えると皮膜全体の密着性が劣化するため、2〜5000
nmの範囲が好ましい。
結晶形態等について述べたが、その成膜方法と欠陥の関
係より更に考察する。酸化は皮膜の結晶粒子そのものの
酸化と結晶粒子の粒界での酸素拡散により進行する。結
晶粒界は格子欠陥が多数あり、ここでの酸素の拡散速度
は結晶内部での酸素拡散速度の数十倍となり、皮膜の酸
化は結晶粒界の欠陥密度に比例して速くなる。従って皮
膜の結晶粒界の格子欠陥をなくせば、理論的には酸化速
度は十数分の一となることになる。このような格子欠陥
は結晶粒界だけでなく、結晶粒内にも多数存在し、皮膜
密度を理論値より低いものとするものである。従って皮
膜の密度を向上すれば、確実に皮膜の耐酸化性は向上す
ると考えられる。
グはイオンプレーティングと呼ばれるようにエレクトロ
ンビーム法(ホロカソード法)、スパッタリング法、マ
グネトロンスパッタリンぐ法、カソードアーク法いずれ
においても、被覆物にマイナスのバイアスを印加し、イ
オン化した金属イオンや窒素イオンを電気的に加速し物
質を堆積させるものである。いずれも共通して被覆物に
印加するバイアスには直流の電圧を使用するものであ
る。高圧の直流電圧を連続的に印加すると被覆物の温度
が上昇するため、直流電圧は現状では20V〜200V
であるのが一般的である。このような印加電圧範囲では
被覆物表面に堆積するイオンは表面移動に十分なエネル
ギーがなく表面上の移動可能距離が限定され格子欠陥を
うめることに限界が存在する。結晶粒界の格子欠陥密度
は皮膜の密度を支配すると思われる。通常のマイナスの
バイアスを印加した場合のコーティング皮膜の密度は実
際のところ、組成から計算される理論値に対し、60%
〜70%程度である。
アスをパルス化しより高バイアスでの被覆を可能にすれ
ば皮膜結晶粒内の欠陥や結晶粒界の欠陥を大幅に減少さ
せることが可能であるという知見を得るに至った。つま
りバイアス電圧を間欠的に付与することにより、被覆物
の温度上昇を抑制しながら、表面に堆積するイオンのエ
ネルギーを格段に高め、表面での移動可能距離を高める
ことにより、イオンが格子欠陥をうめる位置までの移動
を可能にすることに成功した。即ち本発明者は、この結
晶内部及び結晶粒界の格子欠陥を低減し皮膜密度を向上
せしめるには被覆物に印加するバイアスを間欠的パルス
化することにより可能であり、そのようにした被覆工具
は刃先温度が高温となる場合での耐酸化性に優れるばか
りでなく、刃先温度が比較的低い場合でも耐剥離性、耐
チッピング性に優れ、よりいっそう優れた切削性能と、
より広い適用範囲を示すことを見いだし本発明に至っ
た。
%、無印加(0V)50%の比率で一秒間に20kHz
の周波数で電圧を印加すると、被覆物の温度上昇なくイ
オンエネルギーを向上させることが可能となる。イオン
エネルギーの向上によりイオン、原子の移動距離が長く
なり粒内欠陥、粒界欠陥まで原子が移動可能となり、皮
膜内の欠陥を大幅に低減し、皮膜の密度を大幅に向上す
ることが可能となる。このように、皮膜内の欠陥を少な
め、皮膜密度を向上させることにより酸素の拡散速度は
大幅に低下し、皮膜の耐酸化性を大幅に高める結果とな
り切削温度が上昇する高速切削、高硬度鋼切削で極めて
長い切削寿命を達成することが可能となる。また皮膜結
晶内部に存在する格子欠陥は、格子歪を発生し皮膜に残
留する圧縮応力を増加せしめる。圧縮応力が増加すると
皮膜の密着性が劣化し剥離を生じやすくなり安定した切
削ができず、皮膜の微少剥離に起因するチッピング等が
発生し易くなる。バイアスのパルス化は残留圧縮応力の
低減にも大きく寄与する。
Yといった第三成分を添加することにより、皮膜の耐酸
化性が向上しさらに切削特性を向上させることが可能で
ある。これら第三成分はTiAl系皮膜の結晶粒界に偏
析し、粒界の格子欠陥をさらにうめ、粒界での酸素の拡
散をさらに抑制することにより皮膜の耐酸化性を向上せ
しめる。このような効果をもたらす成分としてMn、S
i、Cr、Zr、Hf、Y、Nb、Ndが確認された。
マイクロスコピーを用いた。測定方法は周波数域40M
Hz〜140MHzの超音波センサーを用い、入射角を
種々変更し、超音波反射率の測定を行った。各周波数に
おける反射率の位相曲線における最急峻となる位置をレ
ーリー臨界角とみなして、各周波数における臨界角を決
定し、スネルの法則よりレーリー波速度を決定する。各
周波数とレーリ波速度の分散曲線から逆解析を用いて、
皮膜の弾性特性を算出する。具体的には計算される分散
曲線と実験より求めた分散曲線との残差の自乗和を最小
にする最適化法により求めた。
す条件にて本発明例及び比較例のコーティングを行い、
被覆超硬エンドミルを作製した。コーティング条件は、
パルスバイアス電圧−300〜−800V、付与率30
〜80%、反応ガス圧力3Paとした。総膜厚さは、
2.5μmとした。したがって、被膜全体における総層
数は各例において異なるものである。なお、第2の層及
び最外層のTiAlONは、TiAl合金ターゲットを
用い、酸素ガスを間欠的に導入することにより成膜し
た。また、基体との密着性を向上する目的で、最内層に
はTiN層を形成してある。比較例として多層構造を有
さない皮膜を−800Vの直流バイアスにて成膜した試
料も作成したので表1に併記する。表1において、特に
結晶構造を記載していないTiAlONは、アモルファ
ス構造のものである。また、本発明例1、2、6、9の
試料について、第2の層及びその近傍の第2の層をTE
Mにて観察したところ、同じ結晶構造をしており、また
境界部でのミスフィット転移もほとんど観察されず擬似
的な超格子構造を有していることが確認できた。
切削テストを行い、折損するまで切削を行った。折損が
発生した時点の切削長を表1に併記した。 切削条件 エンドミル φ8mm 6枚刃 被削材 SKD11 HRC60 切削速度 40m/min 送り 0.06mm/刃 切り込み 12mm×0.8mm 切削油 dry
テストを行い、酸化層の厚さを測定した。その結果も表
1に併記した。表1より、第2の層としてFCC構造の
TiAlON層を設け結晶の連続性を有するようにした
本発明においては、被膜の耐酸化性が著しく改善され、
焼き入れした高硬度材の切削において、優れた特性を示
すことが明らかである。本発明者等の測定によれば、H
RC60の鋼を上記条件で切削した場合、刃先温度は9
50℃に達することが確認された。また、HRC50の
鋼では切削速度120m/mim(他の条件は上記に同
じ)で950℃に達する。このことから、本発明による
多層被覆部材は、被切削材の硬さによらず、刃先温度が
950℃を越えるような過酷な切削条件下でも、優れた
切削特性を示すことがわかる。特に、乾式切削において
は、有効な効果をもたらすものである。
超硬合金ドリル、超硬合金インサートに被覆し、次に示
す条件で切削テストを行った。なお、ドリルの場合は3
000穴切削後の摩耗量を、インサートの場合は10m
切削後の逃げ面摩耗量を測定した。その結果を表2に示
す。
長さ250mmの面取り) 切削速度 150m/min 送り 0.15m/刃 切り込み 1.5mm
のは、ドリル、インサートでも同様に、優れた工具寿命
を示すことが確認された。傾向は、エンドミル、ドリ
ル、インサートともに同様である。
すコーティングを行い、本発明例及び比較例による被膜
を被覆した超硬合金エンドミル及び超硬合金インサート
を作製した。コーティング条件は、パルスバイアス電圧
−300〜−800V、付与率30〜80%、反応ガス
圧力3Paとした。最外層の結晶化は、αの場合は79
0℃、γの場合は680℃の被覆条件にて成膜を行っ
た。比較例の成膜条件は実施例1と略同様とした。
2で示した切削条件にて切削評価を行い、その結果を表
3に併記した。また、大気中1000℃、2時間保持の
条件で酸化テストを行い、形成した酸化層の厚さについ
ても表3に併記した。なお、本実施例においても、総層
膜厚は2.5μmとした。
優れた耐酸化性、切削寿命を示すことが明らかである。
すなわち、本発明のように、内部に酸化物被膜を介在さ
せることにより、耐酸化性及び工具寿命はより一層向上
することがわかる。
用い、コーティング条件は、パルスバイアス電圧−30
0〜−800V、付与率30〜80%、反応ガス圧力3
Paとし、表4に示す本発明例及び比較例の被膜を被覆
した超硬合金エンドミルを作製し、実施例1と同一の切
削評価ならびに実施例3と同一の酸化テストを行った。
それらの結果を表4に併記する。この場合、第2の層
は、FCC構造のTiAlON層(5nm)に統一し、
最外層はアモルファスのTiAlON層に統一した。
を更に向上させることが明らかである。
化物等から成る第1の層と、酸素を含有する第2の層と
を、結晶の連続性を持たせつつ交互に積層し、その結晶
構造をFCC構造とすること及び/又は(200)に配
向すること、あるいは擬似的な超格子構造の被膜を介在
させることにより、高速切削等の過酷な条件下でも十分
に使用に耐え得る、耐酸化性及び密着性に優れた多層被
膜部材を実現することが出来た。すなわち、本発明によ
れば、より過酷な条件下でのフライス切削、エンドミル
切削、ドリル切削等が可能な優れた特性の被膜工具を提
供することが可能になる。
構造を示すTEM写真であり、TiAlNからなる第1
の層と極めて薄い第2の層とが交互に積層されているこ
とを示している。
組織のTEMによる拡大写真であり、TiAlONから
なる第2の層を介して隣り合う、TiAlNからなる第
1の層の相互間には、結晶の連続性があることを示して
いる。
のEDX分析図であり、第2の層がTi及びAlの化合
物であることを示している。
のEELS分析図であり、第2の層がN及びOを含有す
る化合物であることを示している。
Claims (15)
- 【請求項1】 ハイス、超硬合金、サーメット等の超硬
質合金とその上にイオンプレーティング法によって形成
された多層被覆よりなる多層被覆部材であり、該多層被
覆の少なくとも1層は基体にパルスバイアスを印加して
設けられ、該多層被覆は2以上の第1の層と2以上の第
2の層を交互に積層してなり、該第1の層は周期律表の
4a、5a、6a族、及びAlの少なくとも1の元素の
炭化物、窒化物、炭窒化物からなる群から選ばれる少な
くとも1つから構成され、該第2層は周期律表の4a、
5a、6a族、及びAlの少なくとも1の元素の酸化
物、炭酸化物、酸窒化物、炭酸窒化物からなる群から選
ばれる少なくとも1つから構成されることを特徴とする
多層被覆部材。 - 【請求項2】 請求項1記載の多層被覆部材において、
該第2の層に隣接する該第1の層は実質的に(該第2の
層と)同一の結晶方位性を有することを特徴とする多層
被覆部材。 - 【請求項3】 請求項1又は2記載の多層被覆部材にお
いて、該第1の層はfcc結晶構造を有することを特徴
とする多層被覆部材。 - 【請求項4】 請求項1乃至3記載の多層被覆部材にお
いて、該第1の層はMn、Si、Y、Nd、Sm、Sc
から選ばれる少なくとも1の追加元素を1〜30原子%
含むことを特徴とする多層被覆部材。 - 【請求項5】 請求項1乃至4記載の多層被覆部材にお
いて、該多層被覆は周期律表の4a、5a、6a族及び
Alより選ばれる少なくとも1の元素の酸化物、炭酸化
物、酸窒化物、炭酸窒化物から選ばれる少なくとも1つ
からなる最外層を有することを特徴とする多層被覆部
材。 - 【請求項6】 請求項5記載の多層被覆部材において、
該最外層はTiとAlの酸化物、炭酸化物、酸窒化物、
炭酸窒化物から選ばれる少なくとも1からなることを特
徴とする多層被覆部材。 - 【請求項7】 請求項5記載の多層被覆部材において、
該最外層はTiとSiとAlの酸化物、炭酸化物、酸窒
化物、炭酸窒化物から選ばれる少なくとも1からなるこ
とを特徴とする多層被覆部材。 - 【請求項8】 請求項5記載の多層被覆部材において、
該最外層はTiの酸化物、炭酸化物、酸窒化物、炭酸窒
化物から選ばれる少なくとも1からなることを特徴とす
る多層被覆部材。 - 【請求項9】 請求項3乃至8記載の多層被覆部材にお
いて、該最外層は非晶質であることことを特徴とする多
層被覆部材。 - 【請求項10】 請求項3乃至8記載の多層被覆部材に
おいて、該最外層は結晶質であることを特徴とする多層
被覆部材。 - 【請求項11】 請求項1乃至10記載の多層被覆部材
において、該多層被覆は、基体との密着力に優れた最内
層を有し、該最内層はTiN、TiCN、Ti、TiA
lの少なくとも1よりなり2〜5000nmの厚さを有
することを特徴とする多層被覆部材。 - 【請求項12】 請求項1乃至11記載の多層被覆部材
において、該第1の層の結晶方位は最大X線回折強度が
(200)面に対応することで規定されることを特徴と
する多層被覆部材。 - 【請求項13】 請求項1乃至12記載の多層被覆部材
において、該第1の層は5〜1000nmの厚さを有す
ることを特徴とする多層被覆部材。 - 【請求項14】 請求項1乃至13記載の多層被覆部材
において、該第2の層は5〜200nmの厚さを有する
ことを特徴とする多層被覆部材。 - 【請求項15】 請求項5乃至10記載の多層被覆部材
において、該最外層は5〜500nmの厚さを有するこ
とを特徴とする多層被覆部材。
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1999
- 1999-04-23 JP JP11576299A patent/JP4252154B2/ja not_active Expired - Fee Related
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