JP2000319756A - 疲労特性に優れた加工用熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

疲労特性に優れた加工用熱延鋼板およびその製造方法

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JP2000319756A
JP2000319756A JP11125416A JP12541699A JP2000319756A JP 2000319756 A JP2000319756 A JP 2000319756A JP 11125416 A JP11125416 A JP 11125416A JP 12541699 A JP12541699 A JP 12541699A JP 2000319756 A JP2000319756 A JP 2000319756A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 疲労特性に優れた加工用熱延鋼板およびその
製造方法を提供する。 【解決手段】 C:0.03〜0.20%、Cu:0.
2〜2.0%、B:2〜20ppmを含むフェライトを
主相とし、マルテンサイトまたはマルテンサイトおよび
ベイナイトを第二相とする複合組織鋼板であり、フェラ
イト相でのCuの存在状態は、Cu単独で構成される粒
子の大きさが2nm以下の析出状態および/または固溶
状態であることを特徴とする疲労特性に優れた加工用熱
延鋼板、および上記成分の鋼を、Ar3 変態点以上の温
度域で熱間仕上圧延を終了し、Ar 3 変態点からAr1
変態点までの温度域で1〜10秒間滞留し、その後、2
0℃/s以上の冷却速度で冷却して、350℃以下の巻
取温度で巻き取ることを特徴とする上記鋼板の製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、疲労特性に優れた
加工用熱延鋼板およびその製造方法に関するものであ
り、特に、自動車の足廻り部品やロードホイール等の耐
久性と加工性の両立が求められる素材として好適な疲労
特性に優れた加工用熱延鋼板およびその製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車の燃費向上などのために軽
量化を目的として、Al合金等の軽金属や高強度鋼板の
自動車部材への適用が進められている。ただ、Al合金
等の軽金属は、比強度が高いという利点があるものの、
鋼に比較して著しく高価であるため、その適用は特殊な
用途に限られてきた。より広い範囲で自動車の軽量化を
推進するためには、安価な高強度鋼板の適用が強く求め
られている。一般に、材料は、高強度になるほど延性が
低下して加工性(成形性)が悪くなるばかりでなく、切
り欠き感受性も高くなる。そのため、複雑な形状をして
いる自動車の足廻り部品等への高強度鋼板の適用にあた
っては、その成形性だけでなく、疲労耐久性も重要な検
討課題となる。
【0003】加工性に優れた高強度熱延鋼板として、特
に、低降伏比でかつ延性の優れた高強度鋼板を、フェラ
イトとマルテンサイトを主体とするミクロ組織で得る発
明が、例えば、特開昭58−6937号公報や特開昭6
0−121225号公報等で開示されている。また、特
に、伸びフランジ性(穴拡げ性)の優れた高強度鋼板
を、フェライトとベイナイトを主体とするミクロ組織で
得る発明が、例えば、特開昭57−145965号公報
や特開昭61−96057号公報等で開示されている。
さらにまた、これらの特性を兼ね備えた高強度鋼板を、
フェライト、ベイナイトとマルテンサイトを主体とする
ミクロ組織で得る発明が、例えば、特開平3−2646
45号公報等で開示されている。
【0004】また、疲労特性に優れた高強度熱延鋼板と
しては、特開平4−276016号公報、特開平5−3
31591号公報、特開平6−145792号公報、特
開平8−60240号公報等で、疲労特性を向上させる
ために特定の添加元素に注目して、Pの固溶強化および
/またはCuの析出強化を利用する発明が開示されてい
る。すなわち、上記の特開平4−276016号公報に
は、Pの固溶強化とCuの析出強化によって疲労強度を
向上させる技術が開示されている。
【0005】また、特開平5−331591号公報で
は、ミクロ組織をフェライトとマルテンサイトまたはフ
ェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイトと
し、フェライト相にε−Cuを析出させて疲労強度と伸
びフランジ性を向上させる技術が開示されている。ま
た、特開平6−145792号公報では、ミクロ組織を
フェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの三相と
し、それぞれの相の体積分率を規定して強度と伸びフラ
ンジ性を確保するとともに、Cuの析出強化によって疲
労特性を向上させる技術が開示されている。
【0006】さらに、特開平8−60240号公報で
は、ミクロ組織をフェライト、ベイナイトおよびマルテ
ンサイトの三相とし、それぞれの相の体積分率を規定し
て強度延性バランスを確保し、巻取温度を400℃以上
としてCuの析出強化によって疲労特性を向上させる技
術が開示されている。一方、特開平9−137349号
公報では、ミクロ組織をフェライト、ベイナイトおよび
マルテンサイトの三相とし、それぞれの相の体積分率を
特定するとともにTi、Nbの炭化物でフェライト相を
析出強化し、さらに表面近傍のフェライト粒径と鋼板表
面の粗さを規定して疲労特性を向上させる技術が開示さ
れている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ロード
ホィールのディスク等の一部の部品においては、伸び、
低降伏比等の加工性とともに疲労耐久性が大変に重要で
あり、上記従来技術では、満足する特性が得られないと
いわざるを得ない。すなわち、上記特開平4−2760
16号公報に記載の発明では、結晶粒界に偏析し粒界脆
化を引き起こすPが0.05〜0.12%添加されるこ
とが必須であるため、疲労破壊の起点となる粒界破壊が
起こった場合、疲労特性が著しく劣化する可能性があ
る。
【0008】さらに、同文献には、Pによる粒界脆化等
を抑制するBの添加については何も記載されていない。
また、上記特開平5−331591号公報に記載の発明
では、フェライト相にε−Cuを析出させているため延
性が低下して加工性が悪くなる可能性がある。また、上
記特開平6−145792号公報に記載の発明では、熱
履歴等によりフェライト、ベイナイトおよびマルテンサ
イトの各相の体積分率が変動しやすく、それによって延
性等の特性が大きく影響されるため鋼板の長手方向や幅
方向の材質のばらつきを生じやすいという問題点があ
る。
【0009】また、上記特開平8−60240号公報に
記載の発明では、巻取温度を400℃以上と規定してい
るため、ミクロ組織に多量のベイナイトやパーライトが
生成し、十分なマルテンサイトを得られず低降伏比でな
いばかりか、十分な疲労限度比が得られない。さらに、
上記特開平9−137349号公報に記載の発明では、
析出強化に有効なTi、Nbの炭化物を得るために熱間
圧延前の加熱炉工程において高い溶体化温度での加熱が
必要なため操業コストや省エネルギーの観点から好まし
くない。そこで、本発明は、疲労特性と加工性を両立さ
せるための鋼板特性とその製造方法を明らかにして、上
記従来技術の課題を有利に解決できる、590MPa以
上の強度を有する疲労特性に優れた加工用熱延鋼板およ
びその製造方法を提供することを目的とするものであ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、現在通常
に採用されている連続熱間圧延設備により工業的規模で
生産されている熱延鋼板の製造プロセスを念頭におい
て、熱延鋼板の疲労特性と加工性の両立を達成すべく鋭
意研究を重ねた。その結果、固溶しているCuもしくは
Cu単独で構成される粒子サイズが2nm以下のCu析
出物が疲労特性向上に非常に有効であり、かつ加工性も
損なわないことを見出し、本発明をなしたものである。
【0011】以下に、本発明に至った基礎研究結果につ
いて説明する。まず、フェライト相におけるCu単独で
構成される粒子サイズの疲労特性に及ぼす効果について
の調査を行った。そのための供試材は、次のようにして
準備した。すなわち、0.05%C−1.6%Si−
1.4%Mn−1.0%Cu−0.5%Ni−0.00
03%Bに成分調整し溶製した鋳片を熱間圧延して常温
で巻き取った鋼板を、100〜600℃で1時間等温保
持した後、炉冷する熱処理を施し、ミクロ組織が、フェ
ライトを主相とし、マルテンサイト、またはマルテンサ
イトおよびベイナイトを第二相とする複合組織を有し、
フェライト相におけるCu単独で構成される粒子のサイ
ズを変化させた鋼板を得た。
【0012】なお、ここでの第二相は、主としてマルテ
ンサイト、またはマルテンサイトおよびベイナイトであ
るが、一部残留オーステナイトを含むことも許容される
ものである。また、以下ベイナイトとはベイニティック
フェライトも含む。これらの鋼板について疲労試験を行
った結果を、図1に示す。この結果より、フェライトと
マルテンサイト、又はマルテンサイトおよびベイナイト
からなり、一部残留オーステナイトを含む複合組織から
なる鋼板において、そのフェライト相におけるCu単独
で構成される粒子の平均サイズと疲労限度比には強い相
関があり、フェライト相におけるCu単独で構成される
粒子の平均サイズが2nm以下で疲労限度比が著しく向
上することを新規に知見した。
【0013】このメカニズムは必ずしも明らかではない
が、固溶しているCuもしくはCu単独で構成される粒
子サイズが2nm以下のCu析出物はフェライト相にお
いて繰返し荷重下での交差すべりを抑制し、繰返し荷重
による表面のすべりステップの形態を粗で深い状態から
密で浅い状態に変化させ、そこでの応力集中が緩和され
るために疲労き裂の発生抵抗を向上させると推測され
る。また、熱間圧延条件等を制限することによって、フ
ェライト相におけるCu単独で構成される粒子の平均サ
イズが2nm以下という鋼板を製造できることも新たに
知見した。
【0014】次に、B元素の疲労特性に及ぼす効果につ
いての調査を行った。そのための供試材は、次のように
して準備した。すなわち、0.05%C−1.6%Si
−1.4%Mn−0.5%Ni鋼をベースにして、1.
0%のCuを添加した鋼とCuを添加しない鋼に、さら
に、B含有濃度を変化させた鋼を成分調整し溶製した鋳
片を、熱間圧延して常温で巻き取り、ミクロ組織が、フ
ェライトを主相とし、マルテンサイト、またはマルテン
サイトおよびベイナイトを第二相とする複合組織を有す
る鋼板を得た。これらの鋼板について疲労試験を行った
結果を、図2に示す。この結果より、1.0%のCuを
添加した鋼に限り、B含有濃度と疲労限度比に強い相関
があり、さらに、Bの含有濃度が2ppm以上で疲労限
度比が著しく向上することを新規に知見した。
【0015】なお、引張試験による機械的性質について
は、JIS Z 2201記載の5号試験片にて、JI
S Z 2241記載の試験方法で測定した。また、鋼
板の疲労特性は、図3に示すような板厚3.0mm、長
さ98mm、幅38mm、最小断面部の幅が20mm、
切り欠きの曲率半径が30mmである疲労試験片を用
い、完全両振りの平面曲げ疲労試験によって得られた2
×106回での疲労強度σWを鋼板の引張り強さσBで
除した値(疲労限度比σW/σB)で評価した。
【0016】また、フェライト相におけるCu単独で構
成される粒子は、供試鋼の1/4厚のところから透過型
電子顕微鏡サンプルを採取し、エネルギー分散型X線分
光(Energy Dispersive X−ray
Spectroscope:EDS)や電子エネルギ
ー損失分光(Electron Energy Los
s Spectroscope:EELS)の組成分析
機能を加えた、200kVの加速電圧の電界放射型電子
銃(Field Emission Gun:FEG)
を搭載した透過型電子顕微鏡によって観察した。観察さ
れる粒子の組成は、上記EDSおよびEELSによりC
u単独であることを確認した。また本発明で規定するフ
ェライト相におけるCu単独で構成される粒子のサイズ
は、観察される粒子のサイズをそれぞれ測定したものの
その一視野での平均の値である。
【0017】本発明は、上記知見により構成したもの
で、その要旨は以下の通りである。 (1)質量%にて、C:0.03〜0.20%、Si:
1.4超〜2.5%、Mn:0.5〜3.0%、P:≦
0.02%、S:≦0.01%、Al:0.005〜
1.0%、Cu:0.2〜2.0%、B:0.0002
〜0.0020%を含み、残部がFe及び不可避的不純
物からなる鋼であって、そのミクロ組織が、フェライト
を主相とし、マルテンサイト、またはマルテンサイトお
よびベイナイトを第二相とする複合組織であり、フェラ
イト相におけるCuの存在状態は、Cu単独で構成され
る粒子の大きさが2nm以下の析出状態および/または
固溶状態であることを特徴とする、疲労特性に優れた加
工用熱延鋼板。
【0018】(2)前記鋼が、さらに、質量%にて、N
i:0.1〜1.0%を含有することを特徴とする、上
記(1)に記載の疲労特性に優れた加工用熱延鋼板。 (3)前記鋼が、さらに、質量%にて、Ca:0.00
5〜0.02%、REM:0.005〜0.2%の一種
または二種を含有することを特徴とする、上記(1)ま
たは(2)に記載の疲労特性に優れた加工用熱延鋼板。 (4)前記鋼が、さらに、質量%にて、Mo:0.05
〜1.0%、V:0.02〜0.2%、Ti:0.01
〜0.2%、Nb:0.01〜0.1%、Cr:0.0
1〜1.0%、Zr:0.02〜0.2%の一種または
二種以上を含有することを特徴とする、上記(1)ない
し(3)いずれか1項に記載の疲労特性に優れた加工用
熱延鋼板。
【0019】(5)前記(1)ないし(4)のいずれか
1項に記載の成分を有する鋼片の熱間圧延に際し、Ar
3 変態点以上で熱間仕上圧延を終了した後、Ar3 変態
点からAr1 変態点までの温度域で1〜10秒間滞留
し、その後、20℃/s以上の冷却速度で冷却して、3
50℃以下の巻取温度で巻き取り、ミクロ組織が、フェ
ライトを主相とし、マルテンサイト、またはマルテンサ
イトおよびベイナイトを第二相とする複合組織であり、
フェライト相におけるCuの存在状態は、Cu単独で構
成される粒子の大きさが2nm以下の析出状態および/
または固溶状態である鋼板を得ることを特徴とする疲労
特性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法。 (6)前記熱間圧延に際し、粗圧延終了後、高圧デケー
リングを行い、Ar3 変態点以上で熱間仕上圧延を終了
することを特徴とする前記(5)記載の疲労特性に優れ
た加工用熱延鋼板の製造方法にある。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の鋼板のミクロ組織およびCuの存在状態
について説明する。鋼板のミクロ組織は、優れた加工性
を確保するために、フェライトを主相とし、マルテンサ
イト、またはマルテンサイトおよびベイナイトを第二相
とする複合組織とする。ただし、第二相には一部残留オ
ーステナイトを含むことを許容するものである。なお、
良好な加工性を保証する良好な延性を確保するために
は、フェライトの体積分率が50%以上でかつベイナイ
トおよび残留オーステナイトの体積分率の合計が40%
以下が好ましい。また、70%以下の低降伏比を得るた
めに、さらに好ましくは25%以下である。ここで、フ
ェライト、マルテンサイト、ベイナイトおよび残留オー
ステナイトの体積率とは鋼板の圧延方向断面厚みの1/
4厚における光学顕微鏡で200〜500倍で観察され
たミクロ組織中のそれらの組織の面積分率で定義され
る。
【0021】また、フェライト相におけるCuの存在状
態は、Cu単独で構成される粒子の大きさが2nm以下
の析出状態および/または固溶状態とする。これによ
り、加工性の劣化につながる静的強度の上昇を抑えつ
つ、すなわち、フェライトを主相とし、マルテンサイ
ト、またはマルテンサイトおよびベイナイトを第二相と
する複合組織鋼板の優れた加工性を損なうことなく、疲
労特性を向上させることができる。一方、フェライト相
におけるCu単独で構成される粒子の大きさが2nm超
であると、Cuの析出強化により鋼板の静的強度が著し
く上昇するため、加工性が著しく劣化することになる。
また、このようなCuの析出強化では、疲労限は静的強
度の上昇ほどには向上しないので疲労限度比が低下して
しまう。そのため、フェライト相におけるCu単独で構
成される粒子の大きさは、2nm以下とする必要があ
る。
【0022】次に、本発明の化学成分の限定理由につい
て説明する。Cは、0.20%超含有していると加工性
及び溶接性が劣化するので、0.20%以下とする。ま
た0.03%未満であると第二相であるマルテンサイ
ト、またはマルテンサイトおよびベイナイトの体積率が
減少し、強度が低下するので0.03%以上とする。S
iは、フェライト変態の促進と未変態オーステナイト中
へのCの濃化を促進する効果があるとともに固溶強化元
素として強度上昇に有効である。。当該する複合組織に
おいて所望の強度を得るためには、1.4%超含有する
必要がある。しかし、2.5%超含有すると加工性が劣
化する。そこで、Siの含有量は1.4%超、2.5%
以下とする。
【0023】Mnは、目的とする第二相であるマルテン
サイト、またはマルテンサイトおよびベイナイトを得る
ために、0.5%以上必要である。また、3.0%超添
加するとスラブ割れを生ずるため、3.0%以下とす
る。Pは、0.02%超添加すると加工性や溶接性に悪
影響を及ぼすだけでなく、粒界に偏析して粒界強度を低
下させ粒界脆化を起こすので、0.02%以下とする。
【0024】Sは、多すぎると熱間圧延時の割れを引き
起こすので極力低減させるべきであるが、0.01%以
下ならば許容できる範囲である。Alは、溶鋼脱酸のた
めに0.005%以上添加する必要があるが、コストの
上昇を招くため、その上限を1.0%とする。また、あ
まり多量に添加すると、非金属介在物を増大させ伸びを
劣化させるので好ましくは0.5%以下とする。
【0025】Cuは、本発明の最も重要な元素一つであ
り、固溶もしくは2nm以下の粒子サイズに析出させる
ことにより疲労特性を改善する効果がある。ただし、
0.2%未満では、その効果は少なく、2.0%を超え
て含有しても効果が飽和するので、0.2〜2.0%と
含有範囲を限定する。Bは、本発明の最も重要な元素の
一つであり、Cuと複合添加されることによって疲労限
を上昇させる効果がある。ただし、0.0002%未満
ではその効果を得るために不十分であり、0.0020
%超添加するとスラブ割れが起こる。よって、Bの添加
は、0.0002%以上、0.0020%以下とする。
【0026】Niは、Cu含有による熱間脆性防止のた
めに添加する。ただし、0.1%未満ではその効果が少
なく、1.0%を超えて添加してもその効果が飽和する
ので、0.1〜1.0%とする。CaおよびREMは、
破壊の起点となったり、加工性を劣化させる非金属介在
物の形態を変化させて無害化する元素である。ただし、
0.005%未満添加してもその効果がなく、Caなら
ば0.02%超、REMならば0.2%超添加してもそ
の効果が飽和するのでCa=0.005〜0.02%、
REM=0.005〜0.2%とする。
【0027】さらに、強度を付与するために、Mo、
V、Ti、Nb、Cr、Zrの析出強化もしくは固溶強
化元素の一種または二種以上を添加しても良い。ただ
し、それぞれ、0.05%、0.02%、0.01%、
0.01%、0.01%、0.02%未満ではその効果
を得ることができない。また、それぞれ、1.0%、
0.2%、0.2%、0.1%、1.0%、0.2%を
超え添加してもその効果は飽和する。
【0028】次に、本発明の製造方法の限定理由につい
て、以下に詳細に述べる。本発明では、目的の成分含有
量になるように成分調整した溶鋼を鋳込むことによって
得たスラブを、高温鋳片のまま熱間圧延機に直送しても
よいし、室温まで冷却後に加熱炉にて再加熱した後に熱
間圧延してもよい。再加熱温度については特に制限はな
いが、1350℃以上であると、スケールオフ量が多量
になり歩留まりが低下するので、再加熱温度は1350
℃未満が望ましい。
【0029】熱間圧延工程は、粗圧延を終了後、仕上げ
圧延を行うが、最終パス温度(FT)がAr3 変態点以
上の温度域で終了する必要がある。これは、熱間圧延中
に圧延温度がAr3 変態点を切るとフェライト粒にひず
みが残留して延性が低下するためである。ここで、粗圧
延終了後に高圧デスケーリングを行う場合は、鋼板表面
での高圧水の衝突圧P(MPa)×流量L(リットル/
cm2)≧0.0025の条件を満たすことが好まし
い。
【0030】鋼板表面での高圧水の衝突圧Pは以下のよ
うに記述される。(「鉄と鋼」1991 vol.77
No.9 p1450参照) P(MPa)=5.64×P0×V/H2 ただし、 P0(MPa):液圧力 V(リットル/min):ノズル流液量 H(cm):鋼板表面とノズル間の距離
【0031】流量Lは以下のように記述される。 L(リットル/cm2)=V/(W×v) ただし、 V(リットル/min):ノズル流液量 W(cm):ノズル当たり噴射液が鋼板表面に当たって
いる幅 v(cm/min):通板速度
【0032】さらに、仕上げ圧延後の鋼板の最大高さR
yが15μm(15μmRy,l2.5mm,ln1
2.5mm)以下であることが好ましい。これは、例え
ば金属材料疲労設計便覧、日本材料学会編、84ページ
に記載されている通り熱延または酸洗ままの鋼板の疲労
強度は鋼板表面の最大高さRyと相関があることから明
らかである。また、その後の仕上げ圧延はデスケーリン
グ後に再びスケールが生成してしまうのを防ぐために5
秒以内に行うのが望ましい。
【0033】仕上圧延を終了した後の工程は、まず、A
r3 変態点からAr1 変態点までの温度域(フェライト
とオーステナイトの二相域)で1〜10秒間滞留する。
ここでの滞留は、二相域でフェライト変態を促進させる
ために行うが、1秒未満では、二相域におけるフェライ
ト変態が不十分なため、十分な延性が得られない。一
方、10秒超では、パーライトが生成し、目的とするフ
ェライトを主相とし、マルテンサイト、またはマルテン
サイトおよびベイナイトを第二相とするミクロ組織が得
られない。また、1〜10秒間の滞留をさせる温度域は
フェライト変態を容易に促進させるためAr1 変態点以
上800℃以下が望ましく、そのためには、仕上げ圧延
終了後20℃/s以上の冷却速度で当該温度域に迅速に
到達させることが好ましい。
【0034】次に、その温度域から巻取温度(CT)ま
では20℃/s以上の冷却速度で冷却するが、20℃/
s未満の冷却速度では、パーライトもしくは多量のベイ
ナイトが生成してしまい十分なマルテンサイトが得られ
ず目的とするフェライトを主相とし、マルテンサイト、
またはマルテンサイトおよびベイナイトを第二相とする
ミクロ組織が得られない。巻取温度が350℃超では、
多量のベイナイトが生成して十分なマルテンサイトが得
られず目的とするフェライトを主相とし、マルテンサイ
ト、またはマルテンサイトおよびベイナイトを第二相と
するミクロ組織が得られないだけでなく、巻き取り後に
静的強度における析出強化能が大きいサイズのCuの析
出が起こる恐れがあるため、巻取温度は、350℃以下
と限定する。また、巻取温度の下限値は特に限定する必
要はないが、コイルが長時間水濡れの状態にあると錆に
よる外観不良が懸念されるため、50℃以上が望まし
い。
【0035】
【実施例】以下に、実施例により本発明をさらに説明す
る。表1に示す化学成分を有するA〜Zの鋼は、転炉に
て溶製して、連続鋳造後、表2に示す加熱温度(SR
T)で再加熱し、粗圧延後に同じく表2に示す仕上げ圧
延温度(FT)で1.2〜5.4mmの板厚に圧延した
後、表2に示す時間で滞留後、表2に示す冷却速度(C
R)で冷却し巻取温度(CT)でそれぞれ巻き取った。
なお一部については粗圧延後に衝突圧2.7MPa、流
量0.001リットル/cm2の条件で高圧デスケーリ
ングを行った。ただし、表中の化学組成についての表示
は質量%である。このようにして得られた熱延板の引張
試験は、供試材を、まず、JIS Z 2201記載の
5号試験片に加工し、JIS Z2241記載の試験方
法に従って行った。表2にその試験結果を示す。鋼板圧
延方向断面厚みの1/4厚を光学顕微鏡で200〜50
0倍で観察した組織の体積率を合わせて表2に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】さらに、図3に示すような長さ98mm、
幅38mm、最小断面部の幅が20mm、切り欠きの曲
率半径が30mmである平面曲げ疲労試験片にて、完全
両振りの平面曲げ疲労試験を行った。鋼板の疲労特性
は、2×106回での疲労強度σWを鋼板の引張り強さ
σBで除した値(疲労限度比σW/σB)で評価した。
また、フェライト相におけるCu単独で構成される粒子
は、供試鋼の1/4厚のところから透過型電子顕微鏡サ
ンプルを採取し、エネルギー分散型X線分光(EDS)
や電子エネルギー損失分光(EELS)の組成分析機能
を加えた、200kVの加速電圧の電界放射型電子銃
(FEG)を搭載した透過型電子顕微鏡によって観察し
た。観察される粒子の組成は、上記EDSおよびEEL
SによりCu単独であることを確認した。また、本願で
規定するフェライト相におけるCu単独で構成される粒
子のサイズは、観察される粒子のサイズをそれぞれ測定
したもののその一視野での平均の値である。
【0039】本発明に沿うものは、鋼A−1、C−1、
D−1、E−1、F−1、F−2、F−3、I−1、J
−1、K−1、L−1、M−1、O−1、P−1、Q−
1、Q−2、Q−3、Q−4、Q−5、Q−6、Q−
7、R−1の22鋼であり、フェライトを主相とし、マ
ルテンサイト、またはマルテンサイトおよびベイナイト
を第二相とする複合組織であり、フェライト相における
Cuの存在状態が、Cu単独で構成される粒子の大きさ
が2nm以下の析出状態および/または固溶状態である
疲労特性に優れた加工用熱延鋼板が得られている。
【0040】上記以外の鋼は、以下の理由によって本発
明の範囲外である。すなわち、鋼B−1は、Cの含有量
が本発明の範囲外であるのでミクロ組織中のマルテンサ
イトの体積率が十分でなく低降伏比で十分な疲労限度比
も得られていない。鋼G−1は、Pの含有量が本発明の
範囲外であるのでPが粒界に偏析して粒界強度を低下さ
せるため十分な疲労限度比が得られていない。鋼H−1
は、Cuの含有量が本発明の範囲外であるので疲労特性
を改善する効果が少なく十分な疲労限度比が得られてい
ない。
【0041】鋼K−2および鋼K−5は、仕上圧延後の
滞留時間が本発明の範囲外であるので目的とするフェラ
イトを主相とし、マルテンサイトまたはマルテンサイト
およびベイナイトを第二相とするミクロ組織が得られず
低降伏比で十分な疲労限度比も得られていない。鋼K−
3は、滞留後の冷却速度(CR)が本発明の範囲外であ
るのでパーライトが生成してしまい目的とするフェライ
トを主相とし、マルテンサイトまたはマルテンサイトお
よびベイナイトを第二相とするミクロ組織が得られず低
降伏比(YR)で十分な疲労限度比も得られていない。
鋼K−4は、仕上圧延終了温度(FT)が本発明の範囲
外であるのでフェライト粒にひずみが残留して延性が低
下するたけでなく低降伏比(YR)も得られていない。
【0042】鋼K−6は、熱間圧延後の巻取温度(C
T)が本発明の範囲外であるので目的とする第二相のマ
ルテンサイトを十分に得られない。また、Cu単独で構
成される粒子の大きさが2nm以上になる。そのため十
分な疲労限度比(σW/σB)が得られていない。鋼N
−1は、Si含有量が本発明の範囲外であるので目標と
する強度が得られていない。鋼S−1は、Bの含有量が
本発明の範囲外であるのでCuと複合添加されることで
発現する疲労特性向上効果を得ることができず十分な疲
労限度比も得られていない。鋼T−1は、Mnの含有量
が本発明の範囲外であるので目的とする第二相のマルテ
ンサイトを十分に得られず低降伏比も得られていない。
【0043】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明は、590
MPa以上の強度を有する疲労特性に優れた加工用熱延
鋼板およびその製造方法を提供するものであり、これら
の熱延鋼板を用いることにより、伸びを始めとする加工
性を十分に確保しつつ疲労特性の大幅な改善が期待でき
るため、本発明は、工業的価値が高い発明であると言え
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に至る予備実験の結果を、Cu単独で構
成される粒子の大きさと疲労限度比の関係で示す図であ
る。
【図2】本発明に至る予備実験の結果を、B元素の濃度
と疲労限度比の関係で示す図である。
【図3】疲労試験片の形状を説明する図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年5月26日(1999.5.2
6)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正内容】
【0037】
【表2】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 38/58 C22C 38/58 (72)発明者 高橋 学 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 Fターム(参考) 4K037 EA01 EA02 EA05 EA06 EA09 EA11 EA13 EA15 EA16 EA17 EA19 EA20 EA23 EA25 EA28 EA31 EA32 EA35 EA36 EB05 EB07 EB09 EB11 FB04 FB10 FC07 FD03 FD04 FE01 FE06

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%にて、 C:0.03〜0.20%、 Si:1.4超〜2.5%、 Mn:0.5〜3.0%、 P:≦0.02%、 S:≦0.01%、 Al:0.005〜1.0%、 Cu:0.2〜2.0%、 B:0.0002〜0.0020% を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼であ
    って、そのミクロ組織が、フェライトを主相とし、マル
    テンサイト、またはマルテンサイトおよびベイナイトを
    第二相とする複合組織であり、フェライト相におけるC
    uの存在状態は、Cu単独で構成される粒子の大きさが
    2nm以下の析出状態および/または固溶状態であるこ
    とを特徴とする、疲労特性に優れた加工用熱延鋼板。
  2. 【請求項2】 前記鋼が、さらに、質量%にて、 Ni:0.1〜1.0% を含有することを特徴とする、請求項1に記載の疲労特
    性に優れた加工用熱延鋼板。
  3. 【請求項3】 前記鋼が、さらに、質量%にて、 Ca:0.005〜0.02%、 REM:0.005〜0.2% の一種または二種を含有することを特徴とする、請求項
    1または請求項2に記載の疲労特性に優れた加工用熱延
    鋼板。
  4. 【請求項4】 前記鋼が、さらに、質量%にて、 Mo:0.05〜1.0%、 V:0.02〜0.2%、 Ti:0.01〜0.2%、 Nb:0.01〜0.1%、 Cr:0.01〜1.0%、 Zr:0.02〜0.2% の一種または二種以上を含有することを特徴とする、請
    求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の疲労特性
    に優れた加工用熱延鋼板。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし請求項4のいずれか1項
    に記載の成分を有する鋼片の熱間圧延に際し、Ar3 変
    態点以上で熱間仕上圧延を終了した後、Ar 3 変態点か
    らAr1 変態点までの温度域で1〜10秒間滞留し、そ
    の後、20℃/s以上の冷却速度で冷却して、350℃
    以下の巻取温度で巻き取り、ミクロ組織が、フェライト
    を主相とし、マルテンサイト、またはマルテンサイトお
    よびベイナイトを第二相とする複合組織であり、フェラ
    イト相におけるCuの存在状態は、Cu単独で構成され
    る粒子の大きさが2nm以下の析出状態および/または
    固溶状態である鋼板を得ることを特徴とする疲労特性に
    優れた加工用熱延鋼板の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記熱間圧延に際し、粗圧延終了後、高
    圧デスケーリングを行ない、Ar3 変態点以上で熱間仕
    上圧延を終了することを特徴とする請求項5記載の疲労
    特性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法。
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