JP2000323015A - 電子放出素子 - Google Patents

電子放出素子

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JP2000323015A
JP2000323015A JP33706499A JP33706499A JP2000323015A JP 2000323015 A JP2000323015 A JP 2000323015A JP 33706499 A JP33706499 A JP 33706499A JP 33706499 A JP33706499 A JP 33706499A JP 2000323015 A JP2000323015 A JP 2000323015A
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electron
emitting device
region
surface layer
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JP33706499A
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English (en)
Inventor
Takeshi Uenoyama
雄 上野山
Takao Toda
隆夫 任田
Masahiro Deguchi
正洋 出口
Makoto Kitahata
真 北畠
Kentaro Setsune
謙太郎 瀬恒
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子放出特性のよい電子放出素子を提供す
る。 【解決手段】 電子を供給するための電子供給層1をn
−GaN層により構成し、電子を表面側に移動させる電
子移動層2をノンドープ(真性)でAl含有比xについ
て傾斜組成を有するAlx Ga1-x N(0≦x≦1)に
より構成し、表面層3を負の親和力(NEA)を有する
ノンドープのAlNにより構成している。Alx Ga
1-x Nからなる電子移動層2のバンドギャップは、電子
供給層1から表面層3に至るまでほぼ連続的に拡大し、
電子親和力が負又は0に近くなる。表面電極4の側が正
になるような電圧Vを印加すると、Alx Ga1-x Nの
バンドが曲がることで、電子供給層1から電子移動層2
を経て表面層3に、主として拡散電流による電流が流れ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子親和力が負又
は実質的に負である材料により構成される表面層を備え
た電子放出素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、電子放出素子は、タングステン
(W)等の高融点金属材料からなる陰極と、空間を隔て
て陰極に対向する陽極とを設け、陰極を高温に加熱する
ことにより、熱電子を固体から真空中に放出するという
熱陰極方式(電子銃方式)による構造となっている。近
年、電子銃に代わる電子線源として、冷陰極タイプの微
小電子放出素子が注目されている。このようなタイプの
電子放出素子としては、一般的には電界放出型の素子
や、表面に低仕事関数材料を被覆したpn接合型のもの
などが報告されている。
【0003】電界放出型の電子放出素子は、シリコン
(Si)やモリブデン(Mo)などの高融点金属材料に
よって形成されたコーン状のエミッタ部と、このエミッ
タ部とは空間を挟んで設けられた引き出し電極とを備
え、引き出し電極に電圧を印加して高電界(>1×10
9 V/m)を生ぜしめることにより、エミッタ部から電
子を放出させるものであり、微細加工技術を用いること
によって小型化を図ることができるという利点を有す
る。
【0004】それに対し、半導体材料を用いたpn接合
型の電子放出素子は、p型層からなる半導体表面にセシ
ウム(Cs)などの低仕事関数材料の被覆層を備えるこ
とで、負の電子親和力状態を形成したもので、素子にバ
イアス電圧を印加することによって、そのp型半導体表
面層より電子を真空中に放出するように構成されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ここで、冷陰極タイプ
の微小電子放出素子に共通して要求される特性は、比較
的小さな動作電圧で電子を放出し易いこと(例えば、エ
ミッタ材料の電子親和力が小さいこと)、放出される電
子ビームを容易に制御できること、安定な電子放出特性
を有するためにエミッタ部の表面が化学的に安定なこ
と、耐摩耗性や耐熱性に優れていること、などである。
【0006】ところが、上記従来の各種の電子放出素子
においては、それぞれ以下のような不具合があった。
【0007】電界放出形の素子は、高電界によって電子
放出を得るため、動作電圧が比較的高いという不具合が
あった。また放出電流量はエミッタ部の形状依存性や表
面状態依存性が大きく、多数のコーン状エミッタを均一
性良く形成することが困難であるため、放出電流量の制
御性に乏しいという不具合もあった。
【0008】また半導体材料を用いたpn接合型の電子
放出素子は、容易に電子を放出させるためにp型半導体
表面にセシウム(Cs)などの低仕事関数材料の被覆層
が必要不可欠であるが、この被覆層が安定性に乏しいた
め、素子の安定性や寿命に対して不具合があった。
【0009】本発明の目的は、容易に電子放出が可能な
状態を安定性良く得るために、電子親和力が負あるいは
0に近い実質的に負であるような材料を用いつつ、従来
にない素子構成により効率的に電子を電子放出部である
表面層まで供給し得る手段を講じることにより、低電圧
駆動が可能で、かつ電子放出特性のきわめて良好な新タ
イプの電子放出素子を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の電子放出
素子は、電子供給層として機能する半導体層と、上記半
導体層とは離間して設けられ、電子親和力が負あるいは
0に近い材料により構成される表面層と、上記半導体層
と上記表面層との間に介設され、半導体層から表面層に
向かう方向に電子親和力が小さくなるように組成が変化
している組成傾斜層と、上記表面層上に設けられ、半導
体層から表面層の最表面まで電子を供給させるように電
圧を印加するための表面電極とを備えている。
【0011】これにより、電子が移動する領域である組
成傾斜層は、表面層に向かって電子親和力が大きな状態
から小さな状態に変化していくように構成されているの
で、電子供給層として機能する半導体層と表面電極との
間に電圧を印加して、電子を組成傾斜層を経て表面層に
供給することにより、負の電子親和力を有する表面層か
ら真空中に容易に電子が放出される。その際印加する電
圧は、素子構成にも依存するが高くとも10V程度で良
いため、低電圧駆動が可能でかつ電子を高い効率で放出
し得る電子放出素子を実現することができる。
【0012】第1の電子放出素子において、上記組成傾
斜層にドープしていない半導体材料を適用することによ
り、効率的に電子を電子供給層から表面層に供給するこ
とができる。
【0013】第1の電子放出素子において、上記組成傾
斜層に少なくとも一部が上記半導体層から上記表面層ま
でほぼ連続的に拡大するバンドギャップを有するような
構成を適用することにより、組成傾斜層における電子の
移動がスムーズになるので好ましい。
【0014】第1の電子放出素子において、上記表面層
が窒化アルミニウム(AlN)を含んでいることによ
り、AlN表面が持つ負の電子親和力特性を利用して電
子放出効率の高い素子を得ることができるので好まし
い。
【0015】第1の電子放出素子において、上記表面層
の上に設けられ、上記表面層とは異なる材料からなる被
覆層をさらに備えていることにより、電子放出の状態を
調節したり、表面層の保護を図ることができるので好ま
しい。
【0016】第1の電子放出素子において、上記被覆層
が電子親和力が負あるいは0に近い材料を含んでいるこ
とにより、電子放出の状態を調節したり、表面層の保護
を図りつつ、効率的な電子放出特性を維持することがで
きるので好ましい。
【0017】第1の電子放出素子において、上記被覆層
が、窒化アルミニウム(AlN)を含んでいることが好
ましい。
【0018】第1の電子放出素子において、上記組成傾
斜層及び表面層を含む領域は、最表面に近づくほどAl
の割合が多くなるように変化するAlxGa1-xN(0≦
x≦1)により構成されていることにより、容易にかつ
高品質な組成傾斜層及び表面層を形成することができる
ので好ましい。
【0019】第1の電子放出素子において、上記表面電
極は、上記表面層とショットキー接触していることによ
り、制御性良く電子供給層より電子を供給できるので好
ましい。
【0020】第1の電子放出素子において、上記表面電
極は第1の領域と、上記表面層との間のエネルギー障壁
が表面層−第1の領域間のエネルギー障壁より大きい第
2の領域とを有することにより、表面電極の第1の領域
に電子流を集中でき、放出電流密度を高めることができ
るので好ましい。
【0021】第1の電子放出素子において、上記表面電
極が放出される電子の分布を制御するためのパターンを
有していることにより、所望の分布を持った放出電子流
を制御して作り出すことができるので好ましい。
【0022】第1の電子放出素子において、上記表面電
極の上に、上記表面電極の少なくとも一部の上方を開放
するように設けられた絶縁体層と、上記絶縁体層上に設
けられ、上記表面層から外部に放出された電子を加速及
び制御するための制御電極とをさらに備えていることに
より、放出された電子流の加速/制御機構を一体化でき
る。
【0023】本発明の第2の電子放出素子は、電子供給
層として機能する半導体層と、上記半導体層とは離間し
て設けられ、電子親和力が負あるいは0に近い材料によ
り構成される表面層と、上記半導体層と上記表面層との
間に介設され、半導体層から表面層に向かう方向に供給
される電子を共鳴透過させるための複数からなる層を積
層した超格子層と、上記表面層上に設けられ、半導体層
から表面層の最表面まで電子を供給させるように電圧を
印加するための表面電極とを備えている。
【0024】これによっても、表面電極に電圧を印加す
ることにより、超格子層に形成されるサブバンドを介し
て効率的に半導体層から表面層の最表面に電子が輸送さ
れる構成となるので、低電圧を印加するだけで高効率に
電子が放出される素子が得られる。
【0025】第2の電子放出素子において、上記超格子
層は、AlxGa1-xN(0≦x≦1)で表される2つの
混晶であって互いに成分比が異なるものを交互に積層し
た構成にすることにより、良質な超格子層を容易に形成
できるので好ましい。
【0026】第2の電子放出素子においても、上記表面
層は窒化アルミニウム(AlN)を含んでいることが好
ましい。
【0027】第2の電子放出素子においても、上記表面
層の上に設けられ、表面層とは異なる材料からなる被覆
層をさらに備えていることが好ましい。
【0028】第2の電子放出素子においても、上記被覆
層は電子親和力が負あるいは0に近い材料を含んでいる
ことが好ましい。
【0029】第2の電子放出素子においても、上記被覆
層は窒化アルミニウム(AlN)を含んでいることが好
ましい。
【0030】本発明の第3の電子放出素子は、電子供給
層として機能する半導体層と、上記半導体層とは離間し
て設けられ、電子親和力が負あるいは0に近い材料によ
り構成させる表面層と、上記半導体層と上記表面層との
間に介設され、上記半導体層から表面層に向かう方向に
電子を供給するため電子移動層と、上記表面層上の少な
くとも一部とショットキー接触するように設けられ、上
記半導体層から表面層の最表面まで電子を供給させるよ
うに電圧を印加するための表面電極とを備えている。
【0031】これにより、半導体層とショットキー表面
電極との間に電圧を印加することで、半導体層から電子
移動層を経て制御性良く電子を表面層に供給できるの
で、効率的でかつ制御性の高い電子放出素子が得られ
る。
【0032】第3の電子放出素子においても、上記電子
移動層は、上記半導体層から上記表面層に向かう方向に
電子親和力が小さくなるように組成が変化していること
が好ましい。
【0033】第3の電子放出素子においても、上記電子
移動層は、上記半導体層から上記表面層に向かう方向に
バンドギャップが拡大するように組成が変化しているこ
とが好ましい。
【0034】第3の電子放出素子においても、上記電子
移動層は、上記半導体層から上記表面層に向かう方向に
供給される電子を共鳴透過させるための複数からなる層
を積層した超格子層から構成されていることが好まし
い。
【0035】第3の電子放出素子においても、上記表面
層は、窒化アルミニウム(AlN)を含んでいることが
好ましい。
【0036】第3の電子放出素子においても、上記電子
移動層及び表面層を含む領域は、最表面に近づくほどA
lの割合が多くなるように変化するAlxGa1-xN(0
≦x≦1)により構成されていることが好ましい。
【0037】第3の電子放出素子において、上記表面電
極は、上記表面層の一部のみに接して設けられた上記半
導体層よりも狭い面積を有する第1の領域と、上記第1
の領域と連続して設けられ、表面層との間のエネルギー
障壁が表面層−第1の領域間のエネルギー障壁より大き
い第2の領域とを有することが好ましい。
【0038】また、その場合、上記第2の領域が、上記
第1の領域よりも大きい面積を有し、かつ上記第1の領
域を構成する材料よりもイオン衝撃に対する耐性の大き
い材料により構成されていることにより、電子放出素子
の耐久性が向上するので好ましい。
【0039】また、上記表面層のうち上記表面電極の第
1の領域に接触する領域を除く領域上に形成された絶縁
体層をさらに備え、上記表面電極の第2の領域は、上記
絶縁体層の側面から上面に亘って設けられていることに
より、電子の放出が容易な第1の領域に電子流を集中す
ることができるので、より効率的な電子放出素子を構成
することができる。
【0040】また、第3の電子放出素子において、上記
表面電極の第2の領域は、上記第1の領域よりも大きい
厚みを有していることが好ましい。
【0041】本発明の第4の電子放出素子は、電子制御
層として機能する固体層と、上記固体層の上に設けら
れ、電子親和力が負あるいは0に近い材料からなる表面
層と、上記表面層に接して設けられ、上記固体層と表面
層の最表面との間に電圧を印加するための表面電極と、
上記表面電極と空間を挟んで設けられた外部電極と、上
記表面電極と上記外部電極との間の空間を減圧状態に保
つための密閉部材とを備えている。
【0042】これにより印加される電圧値によって放出
電子量を制御する固体層を経て表面層から減圧状態であ
る空間に放出された電子は、外部電極に印加された正電
圧によって加速され、外部電極に達する。すなわち、外
部電極に与える電圧値によって、放出電子の運動エネル
ギーを制御することができる。また放出電子量そのもの
は、固体層−表面電極間に印加する電圧で制御すること
ができるので、結局表面電極と空間を挟んで設けられた
外部電極に流れる電流を制御することができる。従っ
て、固体層−表面電極間に印加する電圧値で放出電子量
そのものを制御し、さらに減圧状態下の空間で電子を加
速して外部電極で収集することにより、信号増幅やスイ
ッチング動作が可能な素子(真空トランジスタ)として
機能させることが可能となる。
【0043】この素子は、上記のように電子放出が容易
な固体層/表面層からなり、さらに減圧空間で放出電子
を加速する構成となっているので、絶縁耐圧が高い、内
部損失が小さい、かつ低電圧駆動が可能であるといった
利点を有している。
【0044】第4の電子放出素子において、上記固体層
は、電子供給層として機能する半導体層と、上記半導体
層と表面層との間に介設され、半導体層から表面層に向
かう方向に電子親和力が小さくなるように組成が変化し
ている組成傾斜層とを少なくとも有した構成を採ること
ができる。
【0045】第4の電子放出素子において、上記組成傾
斜層は、上記半導体層から上記表面層に向かう方向にバ
ンドギャップが拡大するように組成が変化していること
が好ましい。
【0046】第4の電子放出素子において、上記組成傾
斜層は、少なくとも一部において上記半導体層から上記
表面層までほぼ連続的に拡大するバンドギャップを有す
ることが好ましい。
【0047】第4の電子放出素子において、上記組成傾
斜層および表面層を含む領域は、最表面に近づくほどA
lの割合が多くなるように変化するAlxGa1-xN(0
≦x≦1)により構成されていることが好ましい。
【0048】第4の電子放出素子において、上記固体層
は、電子供給層として機能する半導体層と、上記半導体
層と表面層との間に介設され、上記半導体層から供給さ
れる電子を共鳴透過させるための複数からなる層を積層
した超格子層とを少なくとも有した構成を採ることがで
きる。
【0049】第4の電子放出素子において、上記表面層
は窒化アルミニウム(AlN)により構成されているこ
とが好ましい。
【0050】第4の電子放出素子において、上記表面電
極は、上記表面層の一部のみに接して設けられた上記半
導体層よりも狭い面積を有する第1の領域と、上記第1
の領域と連続して設けられ、上記表面層との間のエネル
ギー障壁が表面層−第1の領域間のエネルギー障壁より
大きい第2の領域とを有することが好ましい。
【0051】第4の電子放出素子においても、上記第2
の領域は、上記第1の領域よりも大きい面積を有し、か
つ上記第1の領域を構成する材料よりもイオン衝撃に対
する耐性の大きい材料により構成されていることが好ま
しい。
【0052】第4の電子放出素子においても、上記表面
層のうち上記表面電極に接触する第1の領域を除く領域
上に形成された絶縁体層をさらに備え、上記表面電極の
第2の領域は、上記絶縁体層の側面から上面に亘って設
けられていることが好ましい。
【0053】
【発明の実施の形態】本発明は、負の電子親和力(Nega
tive Electron Affinity; NEA)を有する半導体材料又
は絶縁体材料を用いた電子放出素子に関する。以下、本
発明の各実施形態を説明する前に、NEA材料を利用し
た電子放出素子(以下、”NEA電子放出素子”とい
う)の原理について説明する。
【0054】−NEA電子放出素子の基本構成及び原理
− 図1は、NEA材料の例として窒化アルミニウム(Al
N)を用いたNEA電子放出素子の構成を示す斜視図で
ある。図1に示すように、本発明のNEA電子放出素子
は、電子を供給するための電子供給層1と、電子供給層
1から供給される電子を固体表面側に移動させる電子移
動層2と、NEA材料からなる表面層3と、電子供給層
1から表面層3に電子を移動させるように電圧を印加す
るための表面電極4とを備えている。
【0055】ここでは、電子供給層1をn型のGaN
(n−GaN)により構成し、電子供給層1から表面層
3まで電子を円滑に移動させる電子移動層2をノンドー
プでAl含有比xが連続的に変化する傾斜組成を有する
AlxGa1-xN(xは0から1までほぼ連続的に増加す
る変数)により構成し、表面層3を真のNEA材料であ
るAlNにより構成し、表面電極を白金(Pt)等の金
属により構成した例を示しているが、本発明のNEA電
子放出素子の各部構成は、これに限定されるものではな
い。
【0056】以下、本発明の基本的特性にとって重要な
性質である電子親和力と、電子を円滑に移動させるため
に必要な電子移動層の構造とについて説明する。
【0057】 電子親和力(Electron Affinity) 半導体材料における”電子親和力”とは、伝導帯端に存
在する電子を真空中に取り出すのに要するエネルギー値
を示し、材料固有の値を持つ。以下に、”負の電子親和
力”(Negative Electron Affinity; NEA)という概念
について説明する。
【0058】図2(a)、(b)は、電子親和力の値が
負及び正である半導体材料のエネルギー状態をそれぞれ
表すエネルギーバンド図である。図2(b)に示すよう
に、半導体のフェルミ準位をEf、伝導帯端のエネルギ
ー準位をEc、価電子帯端のエネルギー準位をEv、バン
ドギャップをEgとし、真空準位をEvacとしたとき、一
般の半導体における電子親和力χは、χ=Evac−Ec
0である。つまり、正の電子親和力を有する。それに対
し、半導体の種類によっては、図2(a)に示すよう
に、χ=Evac−Ec<0となる状態が存在する。つま
り、このような半導体材料、例えばAlNは負の電子親
和力を有することになる。
【0059】ここで、図2(b)に示すように、正の電
子親和力を有する半導体の場合、伝導帯端に存在する電
子を真空中に取り出すためには、χの大きさのエネルギ
ー障壁が存在するため、その分だけエネルギーを与える
必要がある。そのため通常、電子放出させるために加熱
によって電子にエネルギーを与えたり、高電界を印加し
てエネルギー障壁をトンネル透過させる必要がある。
【0060】一方、図2(a)に示すように、負の電子
親和力を有する半導体の場合には、表面の伝導帯端に存
在する電子にとってエネルギー障壁が存在しないので、
電子は容易に真空中に放出されることとなる。すなわ
ち、半導体表面に存在する電子を真空に取り出すための
余分なエネルギーを必要としない。
【0061】ただし、図2(a)、(b)に示すよう
に、一般に半導体材料の伝導帯に存在する電子は、エネ
ルギー分布を有しているため、たとえ電子親和力値χが
正であっても、χが十分に小さい場合には効率的には低
下するが、ある程度の電子を低エネルギーで放出するこ
とは可能である。そこで、本明細書においては、”NE
A材料”というときには、負の電子親和力を有する材料
(図2(a)のような真のNEA材料)だけではなく、
χの値が実質的に0といえる程度に小さい正の電子親和
力を有する材料(擬NEA材料)をも含むものとする。
【0062】これまで知られているNEA材料として
は、ガリウム砒素(GaAs)やガリウム隣(Ga
P)、シリコン(Si)などの半導体表面に低仕事関数
材料であるセシウム(Cs)や酸化セシウム(Cs−
O)、セシウムアンチモン(Cs−Sb)、酸化ルビジ
ウム(Rb−O)等を薄くコートした構成が知られてい
るが、これらの構成においては上記の表面吸着層が安定
性に乏しいため、高真空下でないとNEA状態を維持す
ることができない。
【0063】また表面吸着層を用いないNEA材料とし
ては、ダイヤモンドやAlNなどに加えて、以下に述べ
るようにAl含有比xの高いAlxGa1-xNも負の電子
親和力を有する。
【0064】図3は、AlxGa1-xN系半導体材料の電
子親和力の測定データを示す図である。この図におい
て、横軸はAlxGa1-xN中のAl含有比xを表してい
る。ただしAl含有比xとは、AlxGa1-xN中のGa
とAl含有量におけるAl割合を示し、AlxGa1-x
全体におけるAl含有比のことではない。以下、同様と
する。この図より、x=0の時、すなわちGaNの電子
親和力は〜3.3eVであり、正の電子親和力特性を示
すが、Al含有比xが増加するにつれて電子親和力値は
減少し、x>0.65の領域では電子親和力値はほぼ
0、あるいは負になることがわかる。したがって、x=
1のAlxGa1-xNであるAlNの電子親和力は負の状
態である。
【0065】 電子移動層 電子放出素子において電子が放出される表面層に、上記
のような電子親和力が負あるいは実質的に0であるよう
な材料を用いることが、効率的な電子放出に有効である
と考えられるが、一般的に平衡状態においてNEA材料
の伝導帯に電子は存在していない。故に、何らかの方法
で電子放出が容易な材料から構成される表面層に効率的
に電子を供給する必要がある。
【0066】その一構成例として、電子が多数存在する
電子供給層1(正の電子親和力)からNEA状態の表面
層3(負の電子親和力)に有効に電子を供給するため
に、電子親和力値が徐々に小さくなるような中間層(電
子移動層2)を介した構造が考えられる。
【0067】図4(a),(b)は、電子供給層1、電
子移動層2、表面層3及び表面電極4とからなる図1の
構成例において、電子供給層1−表面電極4間に電圧を
印加していない状態(平衡状態)及び電圧Vの順バイア
スを印加した時のエネルギーバンド図である。上述のよ
うに、電子移動層2は、表面に向かって徐々に電子親和
力χが小さくなるような材料から選択されるが、その材
料を巧く選択することにより、その材料の組成比を変化
させることによって実現することができる。
【0068】本構成例においては、電子供給層1として
n型にドープされたGaN(キャリア密度:〜4×10
18個/cm3 )、電子移動層2としてドープしていない傾
斜組成のAlxGa1-xN層(0≦x≦1)、表面層3と
してAlN層、及び表面電極4としてPtを用いてい
る。傾斜組成のAlxGa1-xNからなる電子移動層2
は、電子供給層1であるGaNと接する部分ではx=
0、つまりAlを含んでおらず、表面層3であるAlN
と接する部分ではx=1、つまりGaを含んでいない構
成としている。またその途中はx値を徐々に増加させ
た、つまりAl含有量が表面に向かって増加していくよ
うに組成を傾斜させている。このような構造にすること
により、AlxGa1-xNからなる電子移動層2の電子親
和力は、電子供給層1と接する部分では正であるが、表
面に向かうにつれて図3に示したようにAl含有量の増
加に伴って電子親和力値は小さくなり、表面層3と接す
る部分ではAlNと同様の負状態となる。したがって、
電子移動層の電子親和力は電子供給層1から表面層に至
るまでほぼ連続的に減少していることとなる。
【0069】電子移動層2として組成傾斜AlxGa1-x
Nを用いた場合、上記のような構成はバンドギャップの
連続的な拡大ともとらえることもできる。図5は、Al
xGa1-xN(0≦x≦1)のバンドギャップのAl含有
比依存性を示す図である。同図において、横軸はAl含
有比xを表しており、縦軸はその組成におけるバンドギ
ャップEg(eV)を表している。同図に示すように、
AlxGa1-xNのEg値は、xの増加に対して厳密には
直線ではないが、直線に近い関係で大きくなっていく。
故に本構成例のように電子移動層であるAlxGa1-x
は、電子供給層1であるGaNと接する部分ではx=
0、つまりGaNと同じバンドギャップ(Eg=3.4
eV)であり、表面層3であるAlNと接する部分では
x=1、つまりAlNと同じバンドギャップ(Eg=
6.2eV)である。またその途中はx値を徐々に増加
させた、つまり、Al含有量が表面に向かって増加して
いくように組成を傾斜させることにより、AlxGa1-x
Nからなる電子移動層2のバンドギャップは、Al含有
量の増加に伴って、電子供給層1から表面層に至るまで
ほぼ連続的に広がっていくこととなる。このような構成
はAlxGa1-xN系半導体が混晶であることから、原料
組成を変化させたエピタキシャル成長により単結晶薄膜
で実現することが可能である。
【0070】さて、図4(a)に示したような平衡状態
では、電子供給層1の伝導帯には多数の電子が存在して
いるが、表面層3の伝導帯端のエネルギーレベルが高い
ため、電子が最表面に到達することはない。一方、この
ような構造に順バイアス(表面電極側に正電圧)を印加
すると、図4(b)に示すようにエネルギーバンドが曲
がる。その結果、電子供給層1に存在する電子は濃度勾
配及び電位勾配によって、表面層3側への移動が生じ
る。つまり電子電流が流れる。また、電子移動層2であ
るAlxGa1-xNや表面層3であるAlNはノンドープ
であることから、電子供給層1から電子移動層2、表面
層3に注入された電子は、正孔等との再結合によって捕
捉されることなく移動することができる。また電子移動
層2での組成傾斜を連続的に行なうことで、電子移動の
障害となるエネルギー障壁が伝導帯端には形成されない
ため、効率的に電子を表面まで送るという点で有利であ
る。
【0071】以上のように組成傾斜が施されたAlx
1-xN層を電子移動層2として適用することにより、
正の電子親和力であるn−GaN層から負の電子親和力
である表面層3(AlN)まで、効率よく移動させるこ
とが可能になる。このようにして電子移動層2及び表面
層3に注入された電子は、表面層がNEA状態であるこ
とから容易に真空中に取り出すことができるようにな
る。
【0072】次に図4に示す本発明の基本的な構造と、
従来報告されているpn接合型NEA素子とを比較す
る。
【0073】図23(a)、(b)は、表面吸着層を用
いたpn接合型NEA素子の断面構造と順バイアス印加
時のエネルギーバンド図である。この構成の場合、図4
の電子供給層に相当する部分をn型GaAs(n型半導
体層)により構成し、電子移動層に相当する部分をp型
GaAs(p型半導体層)により構成し、表面層に相当
する部分をCs−O吸着層により構成したものと考える
こともできる。この場合、GaAs層、並びにCs−O
層のいずれにおいても単独ではNEA材料ではないが、
接合状態における表面付近のエネルギーバンドの曲がり
のため、p型半導体の伝導帯端のエネルギーレベルが真
空準位よりも高くなるため、表面では実効的にNEA状
態が実現される。故に、n型層から電子を注入してCs
−Oが吸着されたp型半導体表面に供給することによ
り、真空中に電子を取り出すことができる。
【0074】しかし、このような構成においてNEA状
態の表面から電子を取り出すためには、母材として用い
る半導体層と表面吸着層の関係が重要であり、例えばp
型半導体層の代わりにノンドープの真性半導体層を用い
た場合では、たとえ表面吸着層が存在したとしてもNE
A状態は得られない。
【0075】以上の観点から、本発明構成と従来構成を
比較すると、従来構造では、真のNEA材料ではないp
型半導体層と表面吸着層の相関関係により、NEA状態
を得ているのに対し、本発明においては、表面層そのも
のの電子親和力が負あるいは0に近い状態であるため、
半導体層をp型に限定する必要がなく、また、不安定な
表面吸着層を必要としない点で利点を有する。また、従
来構成の場合、p型層を用いる関係上、素子に電子放出
に無関係な正孔電流が流れるのに対し、本発明ではノン
ドープ層で電子移動層を構成しているため、電子電流し
か流れない。すなわち、このことは、注入された電子を
正孔との再結合で失うことがないとともに、素子電流に
対する放出電子電流の割合が高くなるため、非常に高効
率な素子を実現することができる。
【0076】以上のように、図4のような電子供給層と
して機能する半導体層に対して、表面層に向かう方向に
電子親和力が小さくなるように組成が変化していくよう
な組成傾斜層を積層し、さらに電子親和力が負あるいは
0に近い材料からなる表面層からなる電子放出素子構成
とすることによって、組成傾斜層の作用により容易に真
のNEA状態である表面まで電子を供給し、真空中に取
り出すことが可能となる。
【0077】ただし、本構成例においては、電子移動層
の組成が連続的に変化する場合について説明したが、そ
の限りではなく、ステップ状に変化した場合や多少不連
続に変化する場合においても、電子の移動に関して大き
な障害とならない程度であれば問題はない。全体として
電子移動層の電子親和力が表面方向に向かって小さくな
るように組成が変化していくようであれば、本発明の効
果を得ることができる。
【0078】以上の説明では、表面層3に至るまで、連
続的に組成を傾斜させることによって電子移動層2の電
子親和力値を制御し、効率良く電子を半導体層1から表
面層3に供給する構成について説明したが、このような
作用を得る電子移動層2の構成はこの限りではない。
【0079】例えば、電子移動層2として、上記構成例
と同様に、AlxGa1-xNで表される半導体を用いてい
るが、xの最大値として1より小さいところで止めた場
合の構成について説明する。
【0080】図6(a),(b)は、電子移動層として
AlxGa1-xN(0≦x≦y、かつy<1)を適用した
NEA電子放出素子の平衡状態と順バイアス印加時にお
けるエネルギー状態を示すエネルギーバンド図である。
図6(a)に示すように、この構成例では電子供給層1
(n−GaN)の上に電子移動層2として機能するノン
ドープのAlxGa1-xN層(0≦x≦y、かつy<1)
を形成した後、表面層3として更にAlN層が積層され
ている。このような構造においては、図6(a)に示す
ように、電子移動層2と表面層3の界面にエネルギーレ
ベルの不連続が生じる。この伝導帯におけるエネルギー
障壁の値は、電子移動層に適用するAl xGa1-xN層の
Al含有比y(xの最大値)によって決まるが、この値
があまりに大きいと電子供給層から注入される電子が効
率的に表面層3に移動させることができない。故に本構
成例に場合では、0.5≦y≦0.8が好適である。
【0081】そして、図6(b)に示すように、電子供
給層−表面電極間に順バイアス(表面電極側に正電圧)
を印加すると、電子移動層及び表面層のエネルギーバン
ドは印加される電圧値に応じて曲がる。その結果、上記
のように電子供給層より電子は濃度勾配及び電位勾配に
よって、表面層3側への移動が生じる。その際表面層3
に適用するAlN層の膜厚がある程度薄く、かつ伝導帯
に形成されるエネルギー障壁の高さがある程度低いと、
電子移動層−表面層界面に達した電子はトンネリングに
よりエネルギー障壁を透過し、最表面に移動することが
できる。すなわち、電子親和力が負あるいは0に近い材
料により構成される表面層より真空に取り出すことがで
きる。このようなトンネリング透過が可能な表面層の膜
厚としては、電子移動層の膜厚やAl組成比との兼ね合
いもあり、限定はできないが概ね10nm以下である。
【0082】以上のように、不連続なエネルギー障壁を
伝導帯に有する組成傾斜AlxGa1 -xN層を電子移動層
として適用した場合においても、正の電子親和力である
n−GaN層から負の電子親和力である表面層まで、効
率よくかつ移動させることが可能になる。このようにし
て電子移動層及び表面層に注入された電子は、表面層が
NEA状態であることから容易に真空中に取り出すこと
ができるようになる。
【0083】上記は組成傾斜することによって電子移動
層2の電子親和力値を制御し、効率良く電子を半導体層
1から表面層3に供給する構成について説明したが、こ
のような作用を得る構成はこの限りではない。
【0084】例えば図7は、電子移動層2として、Al
xGa1-xNで表される半導体であって、Al含有比の異
なる2つの層(例えば、GaN層とAlN層)を交互に
積層した超格子層を適用した場合の電子放出素子の構成
を模式的に示す図である。このタイプの電子放出素子
は、電子移動層2として適当な組成からなる層を適当な
膜厚で適当な回数交互に積層することにより、電子供給
層1から供給される電子を超格子層の伝導帯部分に形成
されるサブバンドを介して共鳴透過させ、効率的に表面
層3に移動させるように構成されている。
【0085】電子供給層1は、上記構成と同様に、例え
ばn−GaNを用いることができる。また電子移動層に
用いる各層のパラメータは、一方の層として、Al含有
比xが0≦x≦0.2であり、他方は0.6≦x≦1の
ものが好ましく用いられ、それぞれ膜厚は各々5〜10
nm程度であるが、この限りではない。またその積層回
数は2〜5組程度が好適である。一般的に、表面層3が
この電子移動層2の上に積層されるが、超格子構造から
なる電子移動層に用いる層の最表面層の構成が、例えば
AlNのような電子親和力が負あるいは0に近い材料で
構成される場合には、この層が表面層と同等の機能をは
たすので、新たな表面層の形成を省略することも可能で
ある。
【0086】図8(a)、(b)は、電子移動層として
超格子層を適用したNEA電子放出素子の平衡状態と順
バイアス印加時におけるエネルギー状態を示すエネルギ
ーバンド図である。図8(a)に示すように、この構成
例では電子供給層1(n−GaN)の上にノンドープの
AlN層とノンドープのGaNを交互に2組積層して
後、表面層3として、さらにAlN層が積層されてい
る。このような構造においては、図8(a)に示すよう
に、電子移動層2の超格子層にエネルギーレベルが不連
続なサブバンドが形成される。そして、図8(b)に示
すように、電子供給層−表面電極間に順バイアス(表面
電極側に正電圧)を印加すると、超格子層のエネルギー
バンドは印加される電圧値に応じて曲がる。その際、最
適な電圧を印加することで、隣合う量子井戸部の許容エ
ネルギー準位が一致するようになると、電子がサブバン
ドを介して共鳴透過し、超格子層内を容易に移動できる
ようになる。その結果、電子供給層より何層かの超格子
構造からなる電子移動層を共鳴透過した電子は表面層付
近において、真空準位よりも高い、あるいは同等のエネ
ルギーレベルを有するようになるため、表面層より容易
に真空中に放出させることができる。この場合、電子が
表面層より放出されるような印加電圧は、超格子層の構
造で決められる離散値であり、上記の構成例とは異なっ
た印加電圧依存性を示す。
【0087】以上、図7に示すように、電子供給層とし
て機能する半導体層に対して、異なる組成を有する層を
積層した超格子層を積層し、さらに電子親和力が負ある
いは0に近い材料からなる表面層からなる電子放出素子
構成とすることによって、超格子層の作用により容易に
真のNEA状態である表面まで電子を供給し、真空中に
取り出すことが可能となる。
【0088】次に、以上のような本発明の基本的な構造
を応用して得られる電子放出素子の各種実施形態につい
て、以下に説明する。
【0089】−第1の実施形態− 図9は、本発明の第1の実施形態におけるNEA電子放
出素子の構造を示す断面図である。同図に示すように、
本実施形態のNEA電子放出素子は、サファイア(アル
ミナ単結晶)基板11と、サファイア基板11の上に設
けられた電子供給層として機能するn−GaN層12
と、n−GaN層12の上に設けられ、Al組成比xが
0から1までほぼ連続的に変化する組成傾斜層であり電
子移動層として機能するAlxGa1-xN層13と、Al
xGa1-xN層13の上に設けられた表面層として機能す
るAlN層14とを備えている。さらに、n−GaN層
12の上に設けられた下部電極15と、AlN層14の
上に設けられ、AlN層14とショットキー接触する表
面電極16とを備えている。ここでAlxGa1-xN層1
3は、n−GaN層12との接合面においてはAl含有
比xがほぼ0であり、AlN層14との接合面において
はAl含有比がほぼ1である傾斜組成を有している。ま
た本実施形態における表面電極16は単一組成の金属膜
(例えば、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金
(Pt))により構成されていて、膜厚が薄い第1の領
域16a(膜厚:5〜10nm)とその周囲の膜厚が厚
い第2の領域16b(膜厚:100nm以上)とを有し
ている。
【0090】本実施形態の電子放出素子においては、図
1に示すNEA電子放出素子の基本構造例とほぼ同じ構
造を有しているので、既に説明したとおり、順バイアス
を印加することによって、n−GaN層12(電子供給
層)から供給される電子を制御性良くAlxGa1-xN層
13(電子移動層)内を移動させて、AlN層14(表
面層)から真空中に効率よく放出させることができる。
その際、当然のことながら表面電極16に流れ込んでし
まう電子が存在するが、表面電極16の材質及び第1、
第2の領域の膜厚並びに面積を巧く設定することによ
り、表面電極16のうち膜厚の薄い第1の領域16aか
ら主に電子を取り出すことができる。
【0091】ここで、本実施形態のNEA電子放出素子
の製造方法について説明する。
【0092】まず、サファイア基板11の上に、MOC
VD法により、トリメチルガリウム(TMG)とアンモ
ニア(NH3)とを反応させて、GaNバッファ層(図
示せず)を形成した後、同様の反応ガスにシラン(Si
4)を添加して電子供給層であるn−GaN層12を
形成する。次に、ドープガスであるSiH4の供給を停
止した後、トリメチルアルミニウム(TMA)を導入し
て、Alの添加量を徐々に増大させながら、AlxGa
1-xN層13を形成し始め、途中よりTMGの供給を徐
々に減少させていくことによってAl含有比の高いAl
xGa1-xN層13を連続的に形成する。そして最終的に
Al含有比xを1、つまりGa含有比を0にすること
で、表面層であるAlN層14をAlxGa1-xN層13
の上に連続して形成することができる。このとき、高品
質なAlxGa1-xN層13を成長させるために、反応温
度も徐々に変化させる場合もある。このような手法によ
り、電子供給層であるn−GaN層12、電子移動層で
あるAlxGa1-xN層13及び表面層であるAlN層1
4を連続的に、かつ高品質に形成することができる。本
実施形態においては、各層の膜厚をそれぞれ、n−Ga
N層:4μm、AlxGa1-xN層:0.07μm、Al
N層:0.01μmとした。
【0093】なお、GaN、AlxGa1-xN、AlN各
層の形成方法は、上記の方法に限定されるものではな
い。例えば、MOCVD法に代わって、MBE法などを
用いて形成することも可能である。また傾斜組成を有す
るAlxGa1-xN層を形成する他の方法としては、例え
ば、GaN層の上に薄いAl層をエピタキシャル成長さ
せて、これを熱処理することによって下方に行くほどA
l含有比が小さく、表面に近いほどAl含有比が大きい
AlxGa1-xN層を形成することも可能である。
【0094】次に、電子供給層であるn−GaN層12
に下部電極15を形成する。このとき、基板として用い
たサファイアは絶縁体であることから、サファイア基板
11の裏面に電極を設けることができない。そこで、n
−GaN層12の一部を露出するために表面からある深
さまでエッチングし、このエッチング処理によって露出
したn−GaN層面上に下部電極15(材質:Ti/A
l)を真空蒸着法により形成した。
【0095】さらに、表面層であるAlN層14上に表
面電極16を形成する。その材質は、適宜選択される
が、Pt、Ni、Ti等が好ましく用いられる。また形
成方法についても、限定されるものではないが、電子ビ
ーム蒸着法が一般的である。なお、表面電極16のうち
電子放出部として機能する第1の領域16aは、電子の
放出効率を高めるため、できる限り薄いことが好まし
い。故に、表面電極16全体を形成する際には、第1の
領域16aと第2の領域16bを分けて形成することも
ある。本実施形態では、各領域の膜厚をそれぞれ、第1
の領域:5nm、第2の領域:200nmとした。
【0096】また、各領域の大きさはそれぞれ、第1の
領域:φ20μm、第2の領域:φ50μmとした。
【0097】このような第1の実施形態の構造を有する
NEA電子放出素子に、2〜10V程度の順方向バイア
スを下部電極−表面電極間に印加した結果、印加電圧に
応じて、102〜103(A/cm2)程度の放出電子電
流が確認された。
【0098】なお、第1の領域16aがない場合、つま
り表面電極16の中央部が空間になっている場合におい
ても、効率的には低下するが電子を放出させることは可
能である。
【0099】−第2の実施形態− 上記第1の実施形態の構造を有するNEA電子放出素子
は、真空中に電子を放出する機能を有するだけで、放出
された電子流を収集する機能を備えているわけではな
い。そこで、図10に示すように、このNEA電子放出
素子の近辺にアノードとなる電極を付設することによ
り、放出された電子の加速/収集を行なうことができ
る。
【0100】図10は、本発明の第2の実施形態におけ
るNEA電子放出素子の構造を示す断面図である。同図
に示すように、本実施形態においては、第1の実施形態
の構造に加えて、表面層と空間を隔てて対向したアノー
ド電極17が設けられている。このアノード電極17に
対して、適当なバイアス電圧を印加することにより、放
出された電子流を容易に制御することができる。また、
アノード表面に蛍光体等を塗布しておけば、この電子照
射による発光が得られるため、この発光を利用したディ
スプレィなどの表示素子を構成することができる。
【0101】なお、本実施形態において、アノード電極
17はNEA電子放出素子とは空間的に切り離された位
置に配置されているが、この限りではなく、絶縁構造を
用いてアノード電極17がNEA電子放出素子と一体化
された構成も可能である。
【0102】−第3の実施形態− 上記第1の実施形態においては、AlN層14を表面層
としているが、AlxGa1-xNの内Al含有比xが0.
65以上の範囲であればNEA材料であるので、0.6
5≦x≦1の領域のAlxGa1-xNを表面層に用いても
良い。
【0103】図11は、本発明の第3の実施形態におけ
るNEA電子放出素子の構造を示す断面図である。同図
に示すように、本実施形態においては、サファイア基板
11の上に電子供給層であるn−GaN層12と、この
n−GaN層12に接触する下部電極15とが設けられ
ている。またn−GaN層12の上にはAlxGa1-x
層13が設けられている。ここで本実施形態において
は、AlN層が設けられていない。なぜならば、第1の
実施形態においては、NEA材料であるAlN層を表面
層としているが、AlxGa1-xNの内Al含有比xが
0.65以上であればAlNと同様にNEA材料となり
うるので、0.65≦x≦1の領域のAlxGa1-xNを
表面層に適用できるからである。すなわち、AlxGa
1-xN層13の表面付近がAl含有比x=0.65以上
であるように構成することで、AlxGa1-xN層13の
うち、表面層として機能する上部18と、電子移動層と
して機能する下部19とに機能別に分けて考えることが
できる。
【0104】例えば、本実施形態としては、AlxGa
1-xN層13のAl含有比xを電子供給層側から連続的
に変化させてAl0.9Ga0.1Nに達した時点でエピタキ
シャル成長を止めて得られる構造も適用できるし、Al
0.9Ga0.1Nの組成に達してから、さらに同組成で数n
m程度の厚さの層をエピタキシャル成長させて得られる
構造であっても良い。
【0105】さらに、既に説明したように、表面層の電
子親和力が必ずしも負に達していなくても、伝導帯に分
布する電子の相当量の部分が、真空準位よりも高いエネ
ルギーレベルを持つような電子親和力値を持つ組成にな
っていればよい。つまり真のNEA材料により構成され
ていなくても、実質的にNEA状態が実現されるような
材料により構成されていればよい。
【0106】そして、AlxGa1-xN層の表面層である
上部19の上には、ショットキー接触する金属からなる
表面電極16が設けられている。この表面電極16に用
いる金属及びその構成は、上記第1の実施形態で用いた
ものと同様である。
【0107】また、図11に示す構造においては、アノ
ード電極は設けられていないが、上記第2の実施形態と
同様にさらに表面電極16に対向してアノード電極を設
けることで、収束された電子流をアノード電極で加速/
収集することが可能となる。
【0108】第1の実施形態と同様に、本構成のNEA
電子放出素子に順バイアス(表面電極16に正電圧)を
印加することによって、n−GaN層12(電子供給
層)から供給される電子を制御性良くAlxGa1-xN層
の電子移動層部19内を移動させて、表面層として機能
するAlxGa1-xN層表面18から真空中に効率よく放
出させることができる。
【0109】−第4の実施形態− 上記第3の実施形態においては、NEA状態であるAl
xGa1-xN層(0.65≦x<1)の上部を表面層とし
ているが、さらにその上に直接AlN層のようなNEA
材料を堆積しても良い。この構成の場合、図6を参照し
ながら説明した伝導帯にエネルギー障壁が存在する構造
ともとれるし、AlNからなる被覆層を設けた構造とも
考えることができる。いずれの場合においても上記と同
様に、効率的に電子を真空中に取り出すことができる。
【0110】また、このようなAlxGa1-xN層上にN
EA材料をさらに付加する構成においては、AlxGa
1-xN層のAl含有比が0≦x≦0.65の場合におい
ても、表面に形成するAlN層のようなNEA材料の膜
厚等が適当な値(5〜10nm)であるならば、電子供
給層より注入された電子を表面にトンネル透過できるた
め、上記に説明された機構により同様の効果を得ること
ができる。
【0111】−第5の実施形態− 図12は、本発明の第5の実施形態におけるNEA電子
放出素子の構造を示す断面図である。本実施形態におい
ては、第1の実施形態の構造に加えて、AlxGa1-x
層13内に形成された埋め込み絶縁層(あるいは、埋め
込みp型層)20とを備えている。
【0112】本実施形態では、上記第1の実施形態のN
EA電子放出素子の機能に加えて、AlxGa1-xN層1
3内に設けられた埋め込み絶縁層20によって電子移動
層であるAlxGa1-xN層を移動する電子流を狭窄し
て、主たる電子放出部である表面電極16aに到達する
電子密度を高めるものである。例えば、開口径がφ5μ
mの埋め込み絶縁層20を挿入した場合には、電子流の
集中効果により、2×103(A/cm2)程度の電流密
度が得られた。
【0113】なお、本実施例においても、表面電極16
のうち電子放出部として機能する第1の領域16aは、
電子の放出効率を高めるため、できる限り薄いことが好
ましい。
【0114】また第1の領域16aがない場合、つまり
表面電極16の中央部が空間になっている場合において
も、効率的には低下するが電子を放出させることは可能
である。
【0115】また、本実施形態においては、AlN層1
4を表面層としているが、AlxGa1-xNの内Al含有
比xが0.65以上であればNEA材料であるので、
0.65≦x≦1の領域のAlxGa1-xNを表面層に用
いても良い。また、さらにその上にAlN層を形成した
場合においても、AlNの被覆層を設けた構造とも考え
ることができる。いずれの場合においても上記と同様
に、効率的に電子を真空中に取り出すことができる。
【0116】また本実施形態において、AlxGa1-x
層のAl含有比が0≦x≦0.65の場合においても、
上記のように表面層として適用するAlN層の膜厚等を
適当な値にすることで、注入された電子を表面にトンネ
ル透過できるため、同様の効果を得ることができる。
【0117】−第6の実施形態− 図13は、本発明の第6の実施形態におけるNEA電子
放出素子の構造を示す断面図である。本実施形態におい
ては、第1の実施形態における表面電極16a、16b
に代えて、仕事関数の相異なる金属によって構成される
第1の領域21aと、第2の領域21bとを有する表面
電極21が設けられている。ここで第1の領域21aを
構成する金属の仕事関数φM1と、第2の領域21bを構
成する金属の仕事関数φM2の関係は、φM1<φM2であ
り、その差が大きいほど効果的である。また、第1の領
域21aを構成する金属の膜厚dM1と、第2の領域21
bを構成する金属の膜厚dM2の関係は、dM1<dM2であ
る。それぞれの領域を構成する金属材料は、上記の関係
を満たしていれば特に限定されるわけではないが、形成
のし易さなどの観点から適宜選択される。例えば、第1
の領域21aを構成する仕事関数が小さい金属には、チ
タン(Ti)、マグネシウム(Mg)、ユウロピウム
(Eu)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)
などが、第2の領域21bを構成する仕事関数が大きい
金属には、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステ
ン(W)、ニッケル(Ni)、金(Au)などがある。
【0118】図13に示す構造においては、埋め込み絶
縁層(埋め込みp型層)は設けられていないが、Alx
Ga1-xN層13内に埋め込み絶縁層を設けても良い。
また図13に示す構造においては、アノード電極は設け
られていないが、表面層に対向してアノード電極を設け
ても良い。
【0119】本実施形態においては、表面電極21の第
1の領域21aが、第2の領域21bよりも仕事関数φ
の小さい金属により構成されているので、上記の実施形
態の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0120】表面電極21に順方向バイアスを印加する
と、AlN層14のうち第1の領域21aが配置された
領域の方が、表面層14−第2の領域21b間に形成さ
れているエネルギー障壁よりも小さいため、第2の領域
21bが配置された領域よりも先に電子供給層から供給
される電流が流れ始める。したがって、第1の領域21
aが電子放出部として機能し、第2の領域21bは、外
部との信号接続部として機能することになる。
【0121】本実施形態によると、第2の領域21bを
構成する金属よりも仕事関数の小さい金属により第1の
領域21aを構成し、さらに第2の領域21bを構成す
る金属よりも膜厚の薄い金属により第1の領域21aを
構成することにより、第1の領域21aから電子を集中
して放出させることができ、よって上記の実施形態より
も電子の放出効率をさらに高めることができる。
【0122】例えば、上記の実施形態と同じ条件でバイ
アス電圧を印加した場合、1×10 4(A/cm2)程度
の電流密度が得られた。なお、この場合においては、第
1の領域21aの金属として、膜厚が5nmで直径がφ
20μmのチタン(Ti)を、第2の領域21bの金属
として、膜厚が200nmで直径が200μmの白金
(Pt)を用いた。
【0123】なお、本実施形態では厚さが5nmのTi
を用いたが、表面電極21のうち電子放出部として機能
する第1の領域21aは、電子の放出効率を高めるた
め、できる限り薄いことが好ましい。
【0124】−第7の実施形態− 図14は、本発明の第7の実施形態におけるNEA電子
放出素子の構造を示す断面図である。同図に示すよう
に、本実施形態においては、サファイア基板11の上に
電子供給層であるn−GaN層12と、このn−GaN
層12に接触する下部電極15とが設けられている。こ
こで本実施形態においては、AlN層が設けられていな
い。そしてAlxGa1-xN層13のうち表面層である上
部18の付近は、Al含有比x=0.65以上であるよ
うに構成することから、負の電子親和力を有し、表面層
として機能する。AlxGa1-xN層13のうち、表面層
として機能する上部を除く部分である下部19が電子移
動層として機能する。
【0125】例えば、本実施形態としては、AlxGa
1-xN層のAl含有比xを電子供給層側から連続的に変
化させてAl0.9Ga0.1Nに達した時点でエピタキシャ
ル成長を止めて得られる構造も適用できるし、Al0.9
Ga0.1Nの組成に達してから、さらに同組成で数nm
程度の厚さの層をエピタキシャル成長させて得られる構
造であっても良い。さらに、既に説明したように、表面
層の電子親和力が必ずしも負に達していなくても、つま
り真のNEA材料により構成されていなくても、実質的
にNEA状態が実現されるような材料により構成されて
いればよい。
【0126】本実施形態においては、第6の実施形態と
同様、仕事関数の相異なる金属によって構成される第1
の領域21aと第2の領域21bとを有する表面電極2
1が設けられている。用いられる金属及びその条件につ
いては、上記第6の実施形態で説明したものの中から、
適宜選択される。
【0127】本実施形態においても、第2の領域21b
を構成する金属よりも仕事関数の小さい金属により第1
の領域21aを構成し、さらに第2の領域21bを構成
する金属よりも膜厚の薄い金属により第1の領域21a
を構成することにより、第1の領域21aから電子を集
中して放出させることができ、よって上記実施形態より
も電子の放出効率をさらに高めることができる。
【0128】なお図14に示す構造においては、アノー
ド電極は設けられていないが、表面層に対向してアノー
ド電極を設けても良い。
【0129】また本実施形態においては、0.65≦x
≦1の領域のAlxGa1-xNを表面層としているが、さ
らにその上にAlN層を形成した場合、AlNの被覆層
を設けた構造とも考えることができるので、上記と同様
に、効率的に電子を真空中に取り出すことができる。
【0130】また本実施形態において、AlxGa1-x
層のAl含有比が0≦x≦0.65の場合においても、
上記のように表面層として適用するAlN層の膜厚等を
適当な値にすることで、注入された電子を表面にトンネ
ル透過できるため、同様の効果を得ることができる。
【0131】−第8の実施形態− 図15は、本発明の第8の実施形態におけるNEA電子
放出素子の構造を示す断面図である。同図に示すよう
に、本実施形態のNEA電子放出素子の構造は、図13
に示す第6の実施形態の構造と見かけ上同じである。そ
して、サファイア基板11、n−GaN層12、Alx
Ga1-xN層13、AlN層14、下部電極15の構造
も、上記第6の実施形態と同様である。
【0132】本実施形態においては、第6の実施形態に
おける表面電極21a、21bに代えて、イオン衝撃に
対する耐性が相異なる金属によって構成される第1の領
域22aと、第2の領域22bとを有する表面電極22
が設けられている。それぞれの領域を構成する金属材料
は適宜選択されるが、例えば第1の領域22aを構成す
る金属は、上記と同様に仕事関数が小さいチタン(T
i)、マグネシウム(Mg)、ユウロピウム(Eu)、
バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)などで構成
されるのに対し、第2の領域22bはイオン衝撃に対し
て耐性の高いタングステン(W)、モリブデン(M
o)、タンタル(Ta)などによって構成される。
【0133】なお、図15に示す構造においては、アノ
ード電極は設けられていないが、表面層に対向してアノ
ード電極を設けても良い。
【0134】本実施形態においては、表面電極22の第
2の領域22bが、イオン衝撃耐性の高い金属により構
成されているので、上記の実施形態の効果に加えて、以
下の効果が得られる。
【0135】表面電極22に順方向バイアスを印加する
と、AlN層14のうち第1の領域22aが配置された
領域より、主に電子が放出される。電子放出素子の表面
層から電子が真空中に放出されると、アノード電極(図
示せず)に達するまでに、残留気体中のガス分子と衝突
してイオンを発生する。このイオンは表面電極22に向
かって加速されるので、高速で表面電極に衝突する、い
わゆるイオン衝撃が発生する。その際、このイオン衝撃
によって表面電極内の電子放出部が消耗することで、N
EA電子放出素子の寿命が短くなってしまう懸念があ
る。そこで、本実施形態に示すように、イオン耐性の高
い金属で表面電極の第2の領域22bを形成すること
で、イオンが衝突する領域を分散すると共に、表面電極
の消耗を軽減することができる。
【0136】本実施形態によると、第2の領域22bに
イオン衝撃耐性の高い金属を適用することにより、上記
の実施形態よりもNEA電子放出素子の耐久性を高める
ことができる。
【0137】−第9の実施形態− 図16は、本発明の第9の実施形態におけるNEA電子
放出素子の構造を示す断面図である。本実施形態におい
ては、上記実施形態の構造に加えて、一部を開口した酸
化膜、窒化膜等からなる絶縁体膜23が設けられてお
り、絶縁体膜23の開口底面に相当する領域には表面電
極24の第1の領域24aが設けられ、絶縁体膜23の
側面から上面に亘る部分に表面電極24の第2の領域2
4bが設けられている。上記第1の領域24aが電子放
出部として機能し、第2の領域24bが外部との信号接
続部として主に機能する。
【0138】本実施形態においては、表面電極の第1の
領域24a及び第2の領域24b共に、表面層とショッ
トキー接触する金属、例えば仕事関数の小さいチタン
(Ti)、マグネシウム(Mg)、ユウロピウム(E
u)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)など
により構成されている。そして、特に第1の領域24a
は、膜厚が10nm以下と薄く設けられ、第2の領域2
4bは膜厚が100nm以上と比較的厚く設けられてい
る。ただし、この第2の領域24bを、上記第1の領域
24aとは別の金属、例えば仕事関数の大きい白金(P
t)、クロム(Cr)、タングステン(W)、ニッケル
(Ni)、金(Au)などで構成しても良い。
【0139】本実施形態においては、表面電極24が絶
縁体膜23を挿入された領域と挿入されていない領域に
より構成されているので、上記の実施形態の効果に加え
て、以下の効果が得られる。
【0140】表面電極24に順方向バイアスを印加する
と、AlN層14は電子放出部として機能する表面電極
の第1の領域24aと絶縁体膜の開口底部において接し
ており、その他の領域とは絶縁体膜と接しているので、
電子供給層から供給されて電子移動層を移動する電子流
は、第1の領域24a部のみに収束する。したがって本
実施形態によると、一部を開口した絶縁体膜23に対し
て、その開口底部に薄い表面電極層(第1の領域24
a)を構成することにより、第1の領域24aから電子
を集中して放出させることができ、よって上記実施形態
よりも電子の放出効率をさらに高めることができる。
【0141】なお、図16に示す構造においては、アノ
ード電極は設けられていないが、表面層に対向してアノ
ード電極を設けても良い。
【0142】また、本実施形態においては、AlN層1
4を表面層としているが、AlxGa1-xNの内Al含有
比xが0.65以上であればNEA材料であるので、
0.65≦x≦1の領域のAlxGa1-xNを表面層に用
いても良い。また、さらにその上にAlN層を形成した
場合においても、AlNの被覆層を設けた構造とも考え
ることができる。いずれの場合においても上記と同様
に、効率的に電子を真空中に取り出すことができる。
【0143】また、本実施形態において、AlxGa1-x
N層のAl含有比が0≦x≦0.65の場合において
も、上記のように表面層として適用するAlN層の膜厚
等を適当な値にすることで、注入された電子を表面にト
ンネル透過できるため、同様の効果を得ることができ
る。
【0144】−第10の実施形態− 図17は、本発明の第10の実施形態におけるNEA電
子放出素子の構造を示す断面図である。本実施形態にお
いては、上記第1の実施形態の構造に加えて、表面電極
16の第2の領域16bの上に形成された酸化膜や窒化
膜などの絶縁体膜25と、絶縁体膜25上に設けられた
制御電極26とを備えている。
【0145】本実施形態のNEA電子放出素子は、上記
第1の実施形態のNEA電子放出素子の機能に加えて、
真空中に放出された電子流を制御する機能をも備えてい
る。
【0146】例えば、下部電極15−表面電極16間に
に順バイアスを印加し、さらに制御電極26に適当な正
電圧を印加した場合、真空中に放出された電子流の発散
を制御電極18に印加したバイアスの効果により、抑制
することが可能となる。この場合に適用した素子の作製
条件は、電子供給層12、電子移動層13、表面層1
4、表面電極16に関しては、上記の第1の実施形態で
用いたものと同様である。また、電子放出領域(制御電
極26の開口部)の大きさは、φ10μm、酸化膜25
の厚さは、10μmである。
【0147】なお、本実施例においても、表面電極16
のうち電子放出部として機能する第1の領域16aは、
電子の放出効率を高めるため、できる限り薄いことが好
ましい。
【0148】また第1の領域16aがない場合、つまり
表面電極16の中央部が空間になっている場合において
も、効率的には低下するが電子を放出させることは可能
である。
【0149】また、本実施形態においては、AlN層1
4を表面層としているが、AlxGa1-xNの内Al含有
比xが0.65以上であればNEA材料であるので、
0.65≦x≦1の領域のAlxGa1-xNを表面層に用
いても良い。また、さらにその上にAlN層を形成した
場合においても、AlNの被覆層を設けた構造とも考え
ることができる。いずれの場合においても上記と同様
に、効率的に電子を真空中に取り出すことができる。
【0150】また、本実施形態において、AlxGa1-x
N層のAl含有比が0≦x≦0.65の場合において
も、上記のように表面層として適用するAlN層の膜厚
等を適当な値にすることで、注入された電子を表面にト
ンネル透過できるため、同様の効果を得ることができ
る。
【0151】また、図17に示す構造においては、アノ
ード電極は設けられていないが、さらに制御電極に対向
してアノード電極を設けることで、収束された電子流を
アノード電極で加速/収集することが可能となる。
【0152】−第11の実施形態− 図18は、本発明の第11の実施形態におけるNEA電
子放出素子の構造を示す断面図である。同図に示すよう
に、本実施形態のNEA電子放出素子の構造は、図9に
示す第6の実施形態の構造と見かけ上同じであるが、本
実施形態においては電子移動層としてAlN層(厚さ:
5nm)とGaN層(厚さ:5nm)とを交互に二層ず
つ積層した超格子層27を用いた。すなわち、本構成
は、n−GaN層12上にAlN層/GaN層/AlN
層/GaN層からなる超格子層27を積層し、さらにそ
の上にAlN層14(表面層)を形成した形となる。な
お表面電極16に関しては、上記第1の実施形態と同様
である。
【0153】また図18に示す構造においては、アノー
ド電極は設けられていないが、表面層に対向してアノー
ド電極を設けても良い。
【0154】このような第11の実施形態の構造を有す
るNEA電子放出素子に、2〜10V程度の順方向バイ
アスを下部電極−表面電極間に印加した結果、上記実施
形態と同様に印加電圧に応じて、102〜103(A/c
2)程度の放出電子電流が確認された。
【0155】−第12の実施形態− 図19は、上記各実施形態で適用可能なNEA電子放出
素子の表面電極部構成を説明する図である。上記のよう
な第1〜第11の各実施形態において、表面電極におけ
る第1の領域と第2の領域の配分は、一般的に任意であ
るが、その配分を巧く設定することにより放出される電
子ビームの形状や強度分布を制御することができる。
【0156】図19(a)は、制御された表面電極配置
を有するNEA電子放出素子の表面電極部の斜視図であ
る。表面電極30全体は、第1の領域28と第2の領域
29とで構成されるが、本実施例において、主に電子放
出領域として機能する第1の領域28は、第2の領域2
9で囲われた範囲内に微小サイズで点在させた形で分布
している。その配置密度は、一般的には図18(b)に
示すようなガウシアン分布が採用される。なお、図19
(a)に示す第1の領域28は、上記第1〜第5及び第
10、第11の実施形態における第1の領域16aの形
状(図9〜図12、図17、図18参照)として、第
6、第7の実施形態における第1の領域21aの形状
(図13、図14参照)として、第8の実施形態におけ
る第1の領域22aの形状(図15参照)として、第9
の実施形態における第1の領域24aの形状(図16参
照)として採用することができる。
【0157】図19(a)に示すように、表面電極30
内には微細な第1の領域部28が多数存在するが、上記
のように第1の領域28に配置される金属電極の厚さは
5〜10nm程度、第2の領域29に配置される金属電
極の厚さは100nm以上である。具体的な構成例とし
ては、表面領域30全体の大きさがφ300μm程度で
あり、その中に直径がφ5μmの第1の領域28を15
00個程度、表面電極の中心部が密になるような分布
(ガウシアン分布)で配置した。このような表面電極構
成とすることより、表面電極全体から一様に電子が放出
された場合と比べて、放出電子流の広がりが抑制されて
いることが確認された。
【0158】以上のように、本実施形態により、分割さ
れた微細な多数の電子放出領域(第1の領域28)を表
面電極30内に配置し、かつその分布を適宜設定するこ
とにより、放出される電子流の強度分布を制御すること
ができる。その際、電子放出領域の大きさ、形状、数を
適宜調整することにより、電子ビームの形状や電子ビー
ム内での強度分布を所望の分布状態、例えばガウシアン
分布に制御することが可能になる。その結果、同一のピ
ーク強度が得られる従来の単一電子放出源から得られる
電子ビームに比べて、広がりの小さな電子ビームを得る
ことができる。なお、この電子放出部が貫通孔であっ
て、金属膜が存在していない状態であってもよいものと
する。 −第13の実施形態− 本実施形態においては、上記のNEA電子放出素子を真
空トランジスタに適用した例について説明する。
【0159】図20は、第13の実施形態における微小
真空トランジスタの構造を示す断面図である。本実施形
態の微小真空トランジスタは、第9の実施形態(図16
に示すNEA電子放出素子)に類似したNEA電子放出
素子の構造を利用している。図20に示すように、本実
施形態の微小真空トランジスタは、サファイア基板51
と、サファイア基板51の上に設けられた電子供給層と
して機能するn−GaN層52と、n−GaN層52の
上に設けられ、組成がほぼ連続的に変化する組成傾斜層
であり、電子移動層として機能するAlxGa1-xN層5
3と、AlxGa1-xN層53の上に設けられ、表面層と
して機能するAlN層54と、n−GaN層52の上に
設けられた下部電極55と、AlN層54の上に設けら
れ、AlN層54とショットキー接触する表面電極56
と、AlN層54の上に形成され、開口部を有する第1
の絶縁膜57が設けられている。第1の絶縁膜57は、
一般的に酸化シリコン等で構成されている。そして、第
1の絶縁膜57の開口部の底面に露出するAlN層54
の表面から第1の絶縁膜57の開口部の底面に露出する
AlN層54の表面から第1の絶縁膜57の開口部の側
面を経て、第1の絶縁膜57の上面に至る領域に、上記
表面電極56の薄膜部56aが形成されている。表面電
極56の薄膜部56aは厚みが5〜10nm程度の薄い
金属からなり、薄膜部56aのうち開口部内でAlN層
54のショットキー接触する部分が電子放出部となって
いる。そして、表面電極56の厚膜部56bは、第1の
絶縁膜57の上の設けられた厚みが100nm以上の金
属からなり、厚膜部56bは薄膜部56aに接続されて
配線の接続用パット部として機能する。以上の構造は、
上記の実施形態において説明したNEA電子放出素子と
基本的に共通する構造となっている。
【0160】ここで、本実施形態においては、第1の絶
縁膜57の上に、第1の絶縁膜57の開口径よりも大き
い内径を有する一部が欠けた円筒状の第2の絶縁膜58
と、第2の絶縁膜58の上端面を塞ぐ金属からなる上部
電極59とが設けられている。この第2の絶縁膜58
も、一般的に酸化シリコン等で構成されている。また、
第1の絶縁膜57の上には、第2の絶縁膜58の周囲を
囲む酸化シリコン、あるいは窒化シリコンからなるサイ
ドウォール63が形成されている。そして、表面電極5
6,第2の絶縁膜58,サイドウォール63および上部
電極59により囲まれる電子走行室60は、内径が約1
0μmで、圧力が10-5Torr(約1.33mPa)程度
の減圧状態となっている。
【0161】なお、本実施形態において、AlxGa1-x
N層53は下端部においてはGaに対するAl含有比が
ほぼ0であり(x=0)、逆に上端部においてはAl含
有比がほぼ1である傾斜組成を有している。
【0162】以上の構成において、半導体層52と電子
移動層53とによって電子制御層として機能する固体層
が構成されており、上部電極59が外部電極として機能
し、第2の絶縁膜58とサイドウォール63とにより密
閉部材が構成されている。
【0163】本真空トランジスタは、表面電極56と下
部電極55の間に印加された信号に対応して放出される
電子を、減圧された電子走行室60で加速して、上部電
極59で受けるものであり、電子走行領域を真空として
いるため、絶縁性が高く、内部損失が小さく、温度依存
性も小さい増幅素子又はスィッチング素子として機能す
る。
【0164】なお、本実施形態の微小真空トランジスタ
は、第9の実施形態に類似したNEA電子放出素子の構
造を利用したが、この限りではなく、第1〜第11の実
施形態のうちいずれかの実施形態で説明したNEA電子
放出素子も利用できる。
【0165】ここで、本実施形態の真空トランジスタの
製造方法について説明する。図21(a)〜(d)は、
本実施形態における真空トランジスタの製造工程を示す
図である。
【0166】まず、サファイア基板51上に電子供給層
であるn−GaN52と、電子移動層であるAlxGa
1-xN層53と、表面層であるAlN層54とを形成す
る。この工程については、上記第1の実施形態において
説明した通りである。
【0167】次に、図20(a)に示す工程で、第1の
絶縁膜57として酸化シリコン膜を堆積した後、電子放
出部用の開口を形成し、その後、基板の全面上に上部電
極56の薄膜部56aを形成するための厚み5〜10n
mのチタン膜56xを堆積する。更に、その上にアルミ
ニウム膜を堆積した後、このアルミニウム膜をパターニ
ングして、第1の絶縁膜57の開口部とほぼ同心位置に
あって第1の絶縁膜57の開口部よりも大径の円柱部
と、この円柱部の底部から四方に延びる棹状部とからな
る中子65を形成する。この中子65は、アルミニウム
膜の第1回目のパターニングにより、縦方向の軸を有す
る円柱部と、この円柱部から四方に放射状に延びる同じ
厚みの縦壁部とからなる水車状パターンを形成し、第1
回目のパターニングによって縦壁部の厚みを低減するこ
とにより容易に形成される。なお、この中子65をフォ
トレジストにより構成しても良い。後に形成するサイド
ウォール63の材料によっては縦壁部の厚みをわずかに
低減するだけでも良いし、あるいは全く低減しなくても
良い。
【0168】次に、図20(b)に示す工程で、低温C
VD法により、基板の全面上に第2の絶縁膜59となる
酸化シリコン膜58xを堆積した後、例えばCMP法に
より、アルミニウム膜の中子65が露出するまで酸化シ
リコン膜58xを平坦化する。その後、スパッタリング
により、基板の全面上に、上部電極59となるタングス
テン膜59xを堆積する。
【0169】次に図20(c)に示す工程で、フォトリ
ソグラフィー及びドライエッチングにより、タングステ
ン膜59x、酸化シリコン膜58x、中子65及びチタ
ン膜56xの全体を縦型円柱状にパターニングする。こ
れにより、第1の絶縁膜58、上部電極59及び表面電
極56の薄膜部56aの寸法がほぼ決まる。
【0170】次に、図20(d)に示す工程で、基板全
体を硫酸化水液(硫酸、過酸化水素水の混合溶液)中に
浸漬する。このとき、中子65の棹上部の端面が露出し
ていることから、アルミニウムによって構成される中子
65がこの部分から硫酸化水液によってエッチングさ
れ、最終的に中子65が除去される。そして、第2の絶
縁膜58、上部電極59及び表面電極56の薄膜部56
aで囲まれる電子走行室60が形成される。
【0171】次に、基板上に厚い酸化シリコン膜を堆積
すると、中子65の棹状部が除去された後に形成されて
いる横穴が厚い酸化シリコン膜によって塞がれる。この
とき、MBE法,スパッタリング法,真空蒸着法などを
利用して、SiO2 を上方から基板上に堆積することに
より、内部の電子走行室60の圧力を例えば10-5Tor
r (約1.33mPa)以下の低圧に減圧しながら、容
易に横穴をシリコン酸化膜で塞ぐことができる。
【0172】特に、当初はCVD法などを利用して横穴
の大部分を塞いだ後、最終的にMBE法,スパッタリン
グ法,真空蒸着法などによって絶縁体材料により横穴を
完全に塞ぐなどの工夫を行なうことにより、横穴の開口
寸法を大きくして工程の容易化を図りつつ、内部の電子
走行室60の真空状態を確保することができる。
【0173】その後、厚いシリコン酸化膜の異方性エッ
チングを行なって、上部電極59、第2の絶縁膜58及
び表面電極56の薄膜部56aの側面を取り囲むサイド
ウォール63を形成する。
【0174】その後の工程の図示は省略するが、サイド
ウォール63、上部電極59、第2の絶縁膜58の一端
部を除去した後、基板上に金属膜(例えば、Pt膜な
ど)を堆積して、これをパターニングすることにより、
表面電極56の厚膜部56bを形成する。その後、基板
にn−GaN層52の一部に達する孔を形成して、下部
電極55を形成する。
【0175】以上の工程により、真空トランジスタを容
易に得ることができる。
【0176】なお、本実施形態だけでなく、上記第1〜
第11の実施形態において開示したいずれかのNEA電
子放出素子の構造を利用して、真空トランジスタを形成
することができることは言うまでもない。したがって、
AlxGa1-xN層53に代えて超格子層を設けたり、A
lN層54を設けないでAl含有比xが高いAlxGa
1-xN層に直接ショットキー接触する表面電極を設ける
ことなどが可能である。
【0177】−第14の実施形態− 次に、上記第13の実施形態の変形例ともいえる第14
の実施形態における真空トランジスタについて説明す
る。
【0178】図22は、本実施形態における真空トラン
ジスタの構造を示す断面図である。本実施形態において
は、NEA電子放出素子を密閉容器内に収納した構造を
有している。
【0179】図22に示すように、本実施形態の真空ト
ランジスタは、上記第13の実施形態における図20に
示す構造とほぼ同様の構造に加えて、密閉用のキャップ
70と、キャップ70及びNEA電子放出素子を取り付
けるための治具71と、下部電極55、表面電極56、
上部電極59に電気的に接続される端子72〜74とを
備えている。ただし、本実施形態においては、電子走行
室60は第2の絶縁膜58、上部電極59などによって
密閉されているわけではなく、第2の絶縁膜58がブリ
ッジ状に形成されている。そして、図20に示すサイド
ウォール63は存在していない。本実施形態において
は、密閉部材がキャップ70及び治具71によって構成
され、内部の電子走行室60が10-5Torr (約1.3
3mPa)以下の高真空に保たれている。
【0180】本実施形態によっても、上記第13の実施
形態と同様の効果を発揮することができる。特に、本実
施形態においては、電子走行室60の真空度(減圧度)
を10-5Torr (約1.33mPa)以下にすることが
容易であるという利点がある。
【0181】−その他の実施形態− 上記第1〜第11の実施形態における構造において、様
々な構成例を示したが、それらの構成を複合化したよう
な構造を用いることで、それぞれの効果を兼ね備えるこ
とも可能である。
【0182】上記各実施形態においては、表面層にAl
NまたはAlxGa1-xNにより構成したが、それ以外の
NEA材料であるダイヤモンド等によって表面層を構成
しても良い。
【0183】また、AlN、AlxGa1-xNや、これら
のNEA材料膜の複数を積層することもできる。例え
ば、上記各実施形態における表面層上に、表面層の保護
のためダイヤモンド層などのごく薄い被覆層を設けても
良い。特に、電子放出部に金属膜を設けずに表面層上を
開放する場合には、表面層を構成するAlN層やAlx
Ga1-xN層保護のため、被覆層を設けることが好まし
い。
【0184】上記第1〜第11の実施形態におけるAl
xGa1-xN層内にn型不純物をドープして、n型半導体
として機能させても良い。
【0185】上記第1〜第11の実施形態における電子
放出部は、1つの素子に複数個設けられていても良い。
【0186】上記AlxGa1-xN層を利用した実施形態
においては、AlxGa1-xN層のAl含有比xが連続的
に変化する構造としたが、AlxGa1-xN層のAl含有
比xが、例えば階段状に変化するものがあってもよい。
【0187】
【発明の効果】本発明の電子放出素子によれば、負の電
子親和力又は負に近い電子親和力を有する材料により表
面層を構成すると共に、電子供給層から表面層に電子を
スムーズに移動させるための組成傾斜層や超格子層を設
けたので、低電圧駆動が可能で、かつな高効率に電子を
放出する機能を有する電子放出の提供を図ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】NEA材料の例としてAlNを用いたNEA電
子放出素子の構造を示す斜視図である。
【図2】(a),(b)は、負の電子親和力を有する半
導体と正の電子親和力を有する半導体とのエネルギーバ
ンド状態をそれぞれ示すエネルギーバンド図である。
【図3】Alx Ga1-x Nの電子親和力の測定データを
示す図である。
【図4】(a),(b)は、無負荷状態および表面電極
−電子供給層間に電圧Vを印加したときにおける各層の
エネルギーバンド状態を示すエネルギーバンド図であ
る。
【図5】Alx Ga1-x NのバンドギャップのAl含有
比依存性を示す図である。
【図6】(a),(b)は、単一障壁タイプ型のNEA
電子放出素子の無負荷時と電圧印加時におけるエネルギ
ーバンド状態を示すエネルギーバンド図である。
【図7】電子移動層として、Alx Ga1-x Nで表され
るAl含有比の異なる2つの超格子層を交互に積層した
超格子積層部を有する電子放出素子の構造を模式的に示
す図である。
【図8】(a),(b)は、超格子積層型のNEA電子
放出素子の無負荷時と電圧印加時におけるエネルギーバ
ンド構造を示すエネルギーバンド図である。
【図9】本発明の第1の実施形態におけるNEA電子放
出素子の構造を示す断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態におけるNEA電子
放出素子の構造を示す断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態におけるNEA電子
放出素子の構造を示す断面図である。
【図12】本発明の第5の実施形態におけるNEA電子
放出素子の構造を示す断面図である。
【図13】本発明の第6の実施形態におけるNEA電子
放出素子の構造を示す断面図である。
【図14】本発明の第7の実施形態におけるNEA電子
放出素子の構造を示す断面図である。
【図15】本発明の第8の実施形態におけるNEA電子
放出素子の構造を示す断面図である。
【図16】本発明の第9の実施形態におけるNEA電子
放出素子の構造を示す断面図である。
【図17】本発明の第10の実施形態におけるNEA電
子放出素子の構造を示す断面図である。
【図18】本発明の第11の実施形態におけるマイクロ
バキュームトランジスタの構造を示す断面図である。
【図19】(a),(b)は、各実施形態で適用可能な
NEA電子放出素子の表面電極部の構成を説明する図で
ある。
【図20】第13の実施形態における微小真空トランジ
スタの構造を示す断面図である。
【図21】(a)〜(d)は、第13の実施形態におけ
るマイクロバキュームトランジスタの製造工程を示す断
面図である。
【図22】本発明の第14の実施形態におけるマイクロ
バキュームトランジスタの構造を示す断面図である。
【図23】(a),(b)は、今までに報告されている
接合型NEAデバイスの構造を示す断面図およびこれに
電圧を印加したときのエネルギーバンド状態を示すエネ
ルギーバンド図である。
【符号の説明】
1 電子供給層 2 電子移動層 3 表面層 4 表面電極 11 サファイア基板 12 n−GaN層 13 Alx Ga1-x N層 14 AlN層 15 下部電極 16 表面電極 16a 第1の領域(電子放出部) 16b 第2の領域 17 アノード電極 18 上部(表面層) 19 下部 20 埋め込み絶縁層(埋め込みp型層) 21 表面電極 21a 第1の領域(電子放出部) 21b 第2の領域 22 表面電極 22a 第1の領域(電子放出部) 22b 第2の領域 23 絶縁体膜 24 表面電極 24a 第1の領域(電子放出部) 24b 第2の領域 25 絶縁体膜 26 制御電極 27 超格子層 28 第1の領域(電子放出部) 29 第2の領域 30 表面電極 51 サファイア基板 52 n−GaN層 53 Alx Ga1-x N層 54 AlN層 55 下部電極 56 表面電極 56a 薄膜部 56b 厚膜部 57 第1の絶縁膜 58 第2の絶縁膜 59 上部電極 60 電子走行室 61 高周波信号源 62 配線 63 サイドウォール 65 中子 70 キャップ 71 治具 72〜74 端子
フロントページの続き (72)発明者 出口 正洋 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 北畠 真 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 瀬恒 謙太郎 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 5C035 BB01 BB03

Claims (37)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子供給層として機能する半導体層と、 上記半導体層とは離間して設けられ、電子親和力が負あ
    るいは0に近い材料により構成される表面層と、 上記半導体層と上記表面層との間に介設され、半導体層
    から表面層に向かう方向に電子親和力が小さくなるよう
    に組成が変化している組成傾斜層と、 上記表面層上に設けられ、半導体層から表面層の最表面
    まで電子を供給させるように電圧を印加するための表面
    電極とを備えている電子放出素子。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の電子放出素子において、 上記組成傾斜層は、ドープしていない半導体材料からな
    ることを特徴とする電子放出素子。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の電子放出素子において、 上記組成傾斜層は、少なくとも一部において上記半導体
    層から上記表面層までほぼ連続的に拡大するバンドギャ
    ップを有することを特徴とする電子放出素子。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のうちいずれか1つに記載
    の電子放出素子において、 上記表面層は、窒化アルミニウム(AlN)を含んでい
    ることを特徴とする電子放出素子。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の電子放出素子において、 上記表面層の上に設けられ、表面層とは異なる材料から
    なる被覆層をさらに備えていることを特徴とする電子放
    出素子。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の電子放出素子において、 上記被覆層は、電子親和力が負あるいは0に近い材料を
    含んでいることを特徴とする電子放出素子。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の電子放出素子において、 上記被覆層は、窒化アルミニウム(AlN)を含んでい
    ることを特徴とする電子放出素子。
  8. 【請求項8】 請求項1〜3のうちいずれか1つに記載
    の電子放出素子において、 上記組成傾斜層及び表面層を含む領域は、最表面に近づ
    くほどAlの割合が多くなるように変化するAlxGa
    1-xN(0≦x≦1)により構成されていることを特徴
    とする電子放出素子。
  9. 【請求項9】 請求項1〜4のうちいずれかの1つに記
    載の電子放出素子において、 上記表面電極は、上記表面層とショットキー接触してい
    ることを特徴とする電子放出素子。
  10. 【請求項10】 請求項1〜9のうちいずれかの1つに
    記載の電子放出素子において、 上記表面電極は、第1の領域と、 上記表面層との間のエネルギー障壁が表面層−第1の領
    域間のエネルギー障壁より大きい第2の領域とを有する
    ことを特徴とする電子放出素子。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のうちいずれか1つに
    記載の電子放出素子において、 上記表面電極は、放出される電子の分布を制御するため
    のパターンを有していることを特徴とする電子放出素
    子。
  12. 【請求項12】 請求項1〜11のうちいずれか1つに
    記載の電子放出素子において、 上記表面電極上に、上記表面電極の少なくとも一部の上
    方を開放するように設けられた絶縁体層と、 上記絶縁体層上に設けられ、上記表面層から外部に放出
    された電子を加速及び制御するための外部電極とをさら
    に備えていることを特徴とする電子放出素子。
  13. 【請求項13】 電子供給層として機能する半導体層
    と、 上記半導体層とは離間して設けられ、電子親和力が負あ
    るいは0に近い材料により構成される表面層と、 上記半導体層と上記表面層との間に介設され、半導体層
    から表面層に向かう方向に供給される電子を共鳴透過さ
    せるための複数からなる層を積層した超格子層と、 上記表面層上に設けられ、半導体層から表面層の最表面
    まで電子を供給させるように電圧を印加するための表面
    電極とを備えている電子放出素子。
  14. 【請求項14】 請求項13記載の電子放出素子におい
    て、 上記超格子層は、AlxGa1-xN(0≦x≦1)で表さ
    れる2つの混晶であって互いに成分比が異なるものを交
    互に積層して構成されていることを特徴とする電子放出
    素子。
  15. 【請求項15】 請求項13又は14に記載の電子放出
    素子において、 上記表面層は、窒化アルミニウム(AlN)を含んでい
    ることを特徴とする電子放出素子。
  16. 【請求項16】 請求項13〜15のうちのいずれか1
    つに記載の電子放出素子において、 上記表面層の上に設けられ、表面層とは異なる材料から
    なる被覆層をさらに備えていることを特徴とする電子放
    出素子。
  17. 【請求項17】 請求項16記載の電子放出素子におい
    て、 上記被覆層は、電子親和力が負あるいは0に近い材料を
    含んでいることを特徴とする電子放出素子。
  18. 【請求項18】 請求項16記載の電子放出素子におい
    て、 上記被覆層は、窒化アルミニウム(AlN)を含んでい
    ることを特徴とする電子放出素子。
  19. 【請求項19】 電子供給層として機能する半導体層
    と、 上記半導体層とは離間して設けられ、電子親和力が負あ
    るいは0に近い材料により構成される表面層と、 上記半導体層と上記表面層との間に介設され、上記半導
    体層から表面層に向かう方向に電子を供給するため電子
    移動層と、 上記表面層上の少なくとも一部とショットキー接触する
    ように設けられ、半導体層から表面層の最表面まで電子
    を供給させるように電圧を印加するための表面電極とを
    備えている電子放出素子。
  20. 【請求項20】 請求項19記載の電子放出素子におい
    て、 上記電子移動層は、上記半導体層から上記表面層に向か
    う方向に電子親和力が小さくなるように組成が変化して
    いることを特徴とする電子放出素子。
  21. 【請求項21】 請求項19記載の電子放出素子におい
    て、 上記電子移動層は、上記半導体層から上記表面層に向か
    う方向にバンドギャップが拡大するように組成が変化し
    ていることを特徴とする電子放出素子。
  22. 【請求項22】 請求項19記載の電子放出素子におい
    て、 上記電子移動層は、上記半導体層から上記表面層に向か
    う方向に供給される電子を共鳴透過させるための複数か
    らなる層を積層した超格子層から構成されていることを
    特徴とする電子放出素子。
  23. 【請求項23】 請求項19〜22のうちいずれか1つ
    に記載の電子放出素子において、 上記表面層は、窒化アルミニウム(AlN)を含んでい
    ることを特徴とする電子放出素子。
  24. 【請求項24】 請求項19記載の電子放出素子におい
    て、 上記電子移動層及び表面層を含む領域は、最表面に近づ
    くほどAlの割合が多くなるように変化するAlxGa
    1-xN(0≦x≦1)により構成されていることを特徴
    とする電子放出素子。
  25. 【請求項25】 請求項19記載の電子放出素子におい
    て、 上記表面電極は、上記表面層の一部のみに接して設けら
    れた上記半導体層よりも狭い面積を有する第1の領域
    と、 上記第1の領域と連続して設けられ、上記表面層との間
    のエネルギー障壁が表面層−第1の領域間のエネルギー
    障壁より大きい第2の領域とを有することを特徴とする
    電子放出素子。
  26. 【請求項26】 請求項25記載の電子放出素子におい
    て、 上記第2の領域は、上記第1の領域よりも大きい面積を
    有し、かつ第1の領域を構成する材料よりもイオン衝撃
    に対する耐性の大きい材料により構成されていることを
    特徴とする電子放出素子。
  27. 【請求項27】 請求項25又は26記載の電子放出素
    子において、 上記表面層のうち、上記表面電極に接触する第1の領域
    を除く領域上に形成された絶縁体層をさらに備え、 上記表面電極の第2の領域は、上記絶縁体層の側面から
    上面に亘って設けられていることを特徴とする電子放出
    素子。
  28. 【請求項28】 請求項25又は26に記載の電子放出
    素子において、 上記表面電極の第2の領域は、上記第1の領域よりも大
    きい厚みを有していることを特徴とする電子放出素子。
  29. 【請求項29】 電子制御層として機能する固体層と、 上記固体層の上に設けられ、電子親和力が負あるいは0
    に近い材料からなる表面層と、 上記表面層に接して設けられ、上記固体層と表面層の最
    表面との間に電圧を印加するための表面電極と、 上記表面電極とは空間を挟んで設けられた外部電極と、 上記表面電極と上記外部電極との間の空間を減圧状態に
    保つための密閉部材とを備えている電子放出素子。
  30. 【請求項30】 請求項29記載の電子放出素子におい
    て、 上記固体層は、 電子供給層として機能する半導体層と、 上記半導体層と上記表面層との間に介設され、半導体層
    から表面層に向かう方向に電子親和力が小さくなるよう
    に組成が変化している組成傾斜層とを有していることを
    特徴とする電子放出素子。
  31. 【請求項31】 請求項30記載の電子放出素子におい
    て、 上記組成傾斜層は、上記半導体層から上記表面層に向か
    う方向にバンドギャップが拡大するように組成が変化し
    ていることを特徴とする電子放出素子。
  32. 【請求項32】 請求項29又は30記載の電子放出素
    子において、 上記組成傾斜層および表面層を含む領域は、最表面に近
    づくほどAlの割合が多くなるように変化するAlx
    1-xN(0≦x≦1)により構成されていることを特
    徴とする電子放出素子。
  33. 【請求項33】 請求項29記載の電子放出素子におい
    て、 上記固体層は、 電子供給層として機能する半導体層と、 上記半導体層と上記表面層との間に介設され、半導体層
    から表面層に向かう方向に供給される電子を共鳴透過さ
    せるための複数からなる層を積層した超格子層とを有し
    ていることを特徴とする電子放出素子。
  34. 【請求項34】 請求項29〜33のうちいずれか1つ
    に記載の電子放出素子において、 上記表面層は、窒化アルミニウム(AlN)を含んでい
    ることを特徴とする電子放出素子。
  35. 【請求項35】 請求項29〜33のうちいずれか1つ
    に記載の電子放出素子において、 上記表面電極は、 上記表面層の一部のみに接して設けられた上記半導体層
    よりも狭い面積を有する第1の領域と、 上記第1の領域と連続して設けられ、上記表面層との間
    のエネルギー障壁が表面層−第1の領域間のエネルギー
    障壁より大きい第2の領域とを有することを特徴とする
    電子放出素子。
  36. 【請求項36】 請求項35に記載の電子放出素子にお
    いて、 上記第2の領域は、上記第1の領域よりも大きい面積を
    有し、かつ上記第1の領域を構成する材料よりもイオン
    衝撃に対する耐性の大きい材料により構成されているこ
    とを特徴とする電子放出素子。
  37. 【請求項37】 請求項35に記載の電子放出素子にお
    いて、 上記表面層のうち上記表面電極に接触する第1の領域を
    除く領域上に形成された絶縁体層をさらに備え、 上記表面電極の第2の領域は、上記絶縁体層の側面から
    上面に亘って設けられていることを特徴とする電子放出
    素子。
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