JP2000346187A - ハイブリッド車両およびその制御方法 - Google Patents

ハイブリッド車両およびその制御方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ハイブリッド車両の運転効率を向上する。 【解決手段】 プラネタリギヤ120のサンギヤ121
にモータ130、リングギヤ124に駆動軸112およ
びアシストモータ140を結合し、プラネタリキャリア
123に変速機構を構成するプラネタリギヤ200を介
してエンジン150を結合する。エンジン150から出
力された動力をプラネタリギヤ120で2つの分配し、
一部をモータ130で電力として回生しつつ、残余を駆
動軸112に出力する。また、回生した電力をアシスト
モータ140に供給して駆動軸に出力されるトルクを付
加する。車両の走行状態に応じて、プラネタリギヤ12
0の入出力回転数の差が小さくなるよう変速比を制御す
る。この結果、トルク変換時における回生電力を抑制す
ることができ、動力と電力の変換に伴う損失を低減する
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、少なくともエンジ
ンを動力源として走行可能なパラレルハイブリッド車両
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、エンジンと電動機とを動力源とす
るハイブリッド車両が提案されている(例えば特開平9
−47094に記載の技術等)。ハイブリッド車両の一
種としていわゆるパラレルハイブリッド車両がある。パ
ラレルハイブリッド車両は、エンジンの回転数およびト
ルクを、トルク変換手段によって、動力と電力との変換
を介して目標回転数および目標トルクに変換して駆動軸
に出力し走行する。トルク変換手段には、電力のやりと
りによって動力を調整しつつ伝達する動力調整装置と電
動機とからなる構成が適用される。エンジンから出力さ
れた動力は、その一部が動力調整装置により駆動軸に伝
達され、残余の動力が電力として回生される。この電力
はバッテリに蓄電されたり、エンジン以外の動力源とし
ての電動機を駆動するのに用いられる。パラレルハイブ
リッド車両は、エンジンから出力された動力を任意の回
転数およびトルクで駆動軸に出力することができ、駆動
軸から出力すべき要求動力に関わらずエンジンは運転効
率の高い運転ポイントを選択して運転することができる
ため、燃費および排気浄化性に優れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記構成のパラレルハ
イブリッド車両では、電力と動力との変換を通じてトル
ク変換を行う。電力と動力との変換には、所定の損失が
伴うのが通常である。かかる損失に起因して、従来のパ
ラレルハイブリッド車両では、走行可能な運転領域全般
で十分に高い運転効率を維持することができなかった。
例えば、高速運転領域や高トルクが要求される運転領域
などでは、運転効率が低下することがあった。
【0004】また、従来のハイブリッド車両では、トル
ク変換時に動力の循環が発生して運転効率が低下するこ
とがあった。動力の循環について具体的に説明する。図
22は電動機を駆動軸に結合したハイブリッド車両の概
略構成を示す説明図である。ここでは、動力調整装置と
して、プラネタリギヤPGと発電機Gとを適用した場合
を示した。プラネタリギヤPGは遊星歯車とも呼ばれ、
中心で回転するサンギヤ、その周囲を自転しながら公転
するプラネタリピニオンギヤ、さらにその外周で回転す
るリングギヤから構成される。プラネタリピニオンギヤ
はプラネタリキャリアに軸支されている。プラネタリギ
ヤPGは、周知の通り、サンギヤ、プラネタリキャリ
ア、リングギヤの3者の要素うち、2者の要素の回転状
態が決定されると残余の要素の回転状態が決定されると
いう機械的性質を有している。かかる性質に基づき、プ
ラネタリギヤPGは、一つの要素に入力された動力を他
の2つの要素に分配して伝達することができる。図22
に例示した構成では、サンギヤに発電機Gが結合され、
プラネタリキャリアにエンジンEGが結合され、リング
ギヤに電動機AMおよび駆動軸DSが結合される。プラ
ネタリギヤPG、発電機G、および電動機AMがトルク
変換装置TCを構成する。かかる構成では、エンジンの
回転数よりも駆動軸の回転数が低いアンダードライブ走
行時に運転効率が高くなる特性がある。
【0005】図23は電動機を駆動軸に結合したハイブ
リッド車両において、エンジンの回転数が駆動軸の回転
数よりも高い状態における動力の伝達の様子を示す説明
図である。エンジンEGから出力される動力は、回転数
を低減するとともにトルクを増大して駆動軸DSから出
力される。エンジンEGから出力された動力PU1は、
プラネタリギヤPGによって2つに分配され、一部は回
転数およびトルクが低減された動力PU2として伝達さ
れる。残余の部分は発電機Gに伝達される。この動力で
発電機Gが駆動されると、発電が行われるため、エンジ
ンEGから出力された動力の一部は電力EU1として回
生される。この電力EU1によってアシストモータAM
を力行し、不足分のトルクを補償することによって、要
求された回転数およびトルクからなる動力PU3が駆動
軸DSに出力される。
【0006】図24は電動機を駆動軸に結合したハイブ
リッド車両において、エンジンの回転数が駆動軸の回転
数よりも低い状態における動力の伝達の様子を示す説明
図である。エンジンEGから出力された動力PU1は、
発電機Gを駆動することによって、増速された動力PU
4としてプラネタリギヤPGから下流側に伝達される。
次に、アシストモータAMで負荷を与えて、余剰のトル
クを低減することによって、要求された回転数およびト
ルクからなる動力PU3が駆動軸DSに出力される。ア
シストモータAMでは動力PU4の一部を電力EU2と
して回生することによって負荷を与える。この電力は発
電機Gの力行に用いられる。
【0007】両者を比較すると、エンジンEGの回転数
が駆動軸の回転数よりも高い場合(図23)では、エン
ジンから出力された動力が駆動軸に伝達される経路にお
いて、上流側に位置する動力調整装置PG+Gで回生さ
れた電力が下流側に位置するアシストモータAMに供給
される。エンジンEGの回転数が駆動軸の回転数よりも
低い場合(図24)では、逆に、下流側に位置するアシ
ストモータAMで回生された電力が上流側に位置する動
力調整装置PG+Gに供給される。動力調整装置PG+
Gに供給された電力は、再び機械的な動力として下流側
に位置するアシストモータAMに供給される。この結
果、図24中に示す動力の循環γ1が生じる。動力の循
環γ1が生じると、エンジンEGから出力された動力の
うち、有効に駆動軸DSに伝達される動力が低減するた
め、ハイブリッド車両の運転効率が低下する。
【0008】逆に、電動機を出力軸に結合した場合は、
エンジン、電動機、動力調整装置の順に結合した構成と
なる。図25は電動機を出力軸に結合したハイブリッド
車両の概略構成を示す説明図である。図示する通り、エ
ンジンEGの出力軸CSに電動機AMが結合され、駆動
軸DSに動力調整装置としてのプラネタリギヤPGおよ
び発電機Gが結合される。かかる構成では、逆に、エン
ジンの回転数よりも駆動軸の回転数が高いオーバードラ
イブ走行時に運転効率が高くなる特性がある。
【0009】図26は電動機を出力軸に結合したハイブ
リッド車両において、エンジンの回転数が駆動軸の回転
数よりも高い状態における動力の伝達の様子を示す説明
図である。図27は電動機を出力軸に結合したハイブリ
ッド車両において、エンジンの回転数が駆動軸の回転数
よりも低い状態における動力の伝達の様子を示す説明図
である。伝達される動力について、回転数の調整はプラ
ネタリギヤPGでのみ可能であるため、電動機を出力軸
に結合したハイブリッド車両では、駆動軸に結合した場
合と逆の現象が起きる。エンジンEGの回転数が駆動軸
の回転数よりも低い場合(図26)では、下流側に位置
する動力調整装置PG+Gで回生された電力EO1が上
流側に位置するアシストモータAMに供給される。逆
に、エンジンEGの回転数が駆動軸の回転数よりも高い
場合(図27)では、上流側に位置するアシストモータ
AMにより回生されたEO2が下流側に位置する動力調
整装置PG+Gに供給される。従って、電動機をエンジ
ンの出力軸に結合した状態では、前者の場合に図26に
示す動力の循環γ2が生じ、ハイブリッド車両の運転効
率が低下する。
【0010】このように従来のハイブリッド車両では、
電動機AMの結合先に応じて特定の走行領域において動
力の循環が生じ運転効率が低下する。動力の循環を生じ
ないよう、車両の運転状態に応じて電動機AMの結合先
をエンジンの出力軸CSと駆動軸DSとの間で切り換え
ることも可能ではある。しかしながら、かかる場合に
は、電動機AMの結合先を切り換えを実現するため装置
構成が複雑化したり、切り換え時にトルクショックが生
じ、車両の乗り心地や応答性を低下させるなどの新たな
課題を生じる。
【0011】本発明は、上述の課題の少なくとも一部を
解決するためになされたものであり、エンジンからの動
力の一部を直接駆動軸に出力可能なパラレルハイブリッ
ド車両において、広範な領域で高効率での運転を実現可
能なハイブリッド車両を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上
記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は以
下の構成を採用した。本発明のハイブリッド車両は、出
力軸を有するエンジンと、動力を出力するための駆動軸
と、前記出力軸側に結合された第1の回転軸と前記駆動
軸側に結合された第2の回転軸とを有し動力と電力との
変換を介して該第1の回転軸の回転数およびトルクを変
換して該第2の回転軸に出力可能なトルク変換手段とを
備えるハイブリッド車両であって、前記エンジンから出
力された動力が前記駆動軸に出力されるまでの経路中に
介在し、所定の変速比で動力を伝達する変速機を備える
ことを要旨とする。
【0013】ハイブリッド車両における損失は主にトル
ク変換手段で発生する。上記構成のハイブリッド車両で
は、電力と動力との変換を介してエンジンから出力され
た動力をトルク変換して駆動軸に出力することができ
る。電力と動力との変換には所定のエネルギ損失が生じ
るのが通常である。このエネルギ損失が大きくなれば、
ハイブリッド車両の運転効率は低下する。
【0014】エンジンから駆動軸に機械的に伝達される
動力(以下、直達動力と呼ぶ)の回転数およびトルクと
駆動軸に出力すべき目標回転数および目標トルクとが一
致する場合には、トルク変換の必要はない。この場合、
電力と動力との変換はなされないから、運転効率は高
い。これに対し、直達動力の回転数およびトルクが、駆
動軸の目標回転数および目標トルクと異なる場合には、
電力と動力との変換を介してトルク変換を行う。即ち、
エンジンから出力される動力の一部を機械的な直達動力
として駆動軸に出力しつつ、残余の動力を電力に一旦置
換する。この電力を用いてトルク変換手段の内部に設け
られた電動機を駆動し、直達動力と駆動軸の目標動力と
の差違を補償し、目標回転数および目標トルクからなる
動力を駆動軸に出力する。直達動力と駆動軸の目標動力
との差違が大きくなれば、電力と動力の変換量が大きく
なるため、変換時に生じる損失も大きくなる。この結
果、ハイブリッド車両の運転効率が低下する。
【0015】本発明のハイブリッド車両によれば、上記
変速機の作用により、直達動力と駆動軸の目標動力との
差違を抑制することができる。直達動力の回転数が目標
動力の回転数よりも非常に小さく、トルク変換手段で増
速が必要な走行状態を考える。かかる場合に、本発明の
ハイブリッド車両によれば、変速機を増速側に切り換え
ることにより、エンジンからの直達動力の回転数を増速
することができる。トルク変換手段では、増速された直
達動力と目標動力との差違を調整する変換を行えば済む
ため、電力と動力との変換量を低減することができる。
換言すれば、駆動軸に出力される動力のうち、直達動力
の割合を増大することができる。この結果、トルク変換
装置で生じる損失を抑制でき、ハイブリッド車両の運転
効率を向上することができる。
【0016】直達動力の回転数が目標動力の回転数より
も非常に高く、トルク変換手段で減速が必要な走行状態
においても同様に運転効率を向上することができる。か
かる場合は、換言すれば、直達動力のトルクが目標動力
のトルクよりも非常に低く、トルク変換手段でトルク付
加が必要な走行状態に相当する。本発明のハイブリッド
車両によれば、かかる走行状態においては、変速比を減
速側に切り換えることにより、エンジンからの直達動力
のトルクを増大することができる。従って、トルク変換
手段では、トルク付加された直達動力と目標動力との差
違を調整する変換を行えば済むため、電力と動力との変
換量を低減することができ、ハイブリッド車両の運転効
率を向上することができる。
【0017】なお、上記変速機は、いわゆる無段階で変
速可能な機構を用いることも可能ではあるが、予め設定
された一定の変速比で変速可能な機構を用いることが望
ましい。ハイブリッド車両では、トルク変換手段によ
り、エンジンから出力される回転数を任意の回転数およ
びトルクに変更して出力可能であるから、更に無段階の
変速機を設ける必要性は低い。無段階の変速機を設ける
ことにより、却って、装置構成の複雑化、大型化などの
新たな課題を招く可能性もある。これに対し、予め設定
された一定の変速比の変速機は、簡易な構成であるた
め、装置の複雑化、大型化、製造コストの増大などの弊
害少なく、組み込むことができる。また、トルク変換手
段における電力と動力の変換を抑制するという目的は、
一定の変速比で変速することにより十分達成することが
できる。かかる観点から、上記変速機は、予め設定され
た一定の変速比で変速可能な機構を用いることが望まし
い。
【0018】変速機は、2以上の変速比を実現できるも
のであればよい。変速比は、必ずしも、減速側と増速側
の双方を備えている必要はない。例えば、変速比の入力
側と出力側とを直結した状態と、減速または増速のいず
れか一方の状態とで切り換え可能な変速機を用いるもの
としても構わない。当然、変速機が切り換え可能な変速
比が多い程、より高い効率での運転を実現可能となるこ
とはいうまでもない。
【0019】本発明のハイブリッド車両においては、上
記変速機の切り換えを手動で行うものとしても構わない
が、前記駆動軸の目標動力を、目標回転数および目標ト
ルクの組合せで設定する目標動力設定手段と、前記目標
動力に応じ、運転効率を優先して設定された回転数およ
びトルクで前記エンジンを運転するエンジン制御手段
と、前記変速機を制御して、前記第1の回転軸の入力回
転数と第2の回転軸の出力回転数との差が、予め設定さ
れた所定範囲内となる変速比を実現する変速機制御手段
とを備えることが望ましい。
【0020】かかる構成によれば、変速機の変速比を自
動制御することができ、ハイブリッド車両を高い効率で
運転することができる。また、運転者に負担をかけるこ
となく、変速機の切り換えを行うことができるため、ハ
イブリッド車両の利便性を向上することができる。な
お、入力回転数と出力回転数との差について、上記制御
の基準となる所定範囲は、ハイブリッド車両の走行領
域、および目標とする運転効率などを考慮し、車両の構
成に応じて種々適切な値を設定することができる。
【0021】また、本発明のハイブリッド車両におい
て、前記変速機は、前記ハイブリッド車両の走行領域に
おいて、前記入力回転数と前記出力回転数との大小関係
を、少なくとも、該トルク変換手段による変換効率が高
い側の関係に維持可能な範囲で設定された変速比で動力
を伝達する機構であり、前記変速機制御手段は、該変速
機を制御して、前記入力回転数と出力回転数の大小関係
を、前記変換効率が高い側の関係に維持する手段である
ものとすることが望ましい。
【0022】ハイブリッド車両のトルク変換手段では、
先に図22〜図27を用いて具体的に説明した通り、第
1の回転軸の入力回転数と第2の回転軸の出力回転数と
の大小関係に応じて動力の循環が生じ、効率が低下する
場合がある。動力の循環は、トルク変換手段の構成に応
じて、入力回転数および出力回転数が所定の大小関係に
ある場合に生じる。上記ハイブリッド車両によれば、車
両の走行領域のほぼ全般において入力回転数と出力回転
数との大小関係をより効率が高い側に維持することがで
き、運転効率を向上することができる。なお、上記構成
のハイブリッド車両は、トルク変換時における効率の低
下を抑制するものである。従って、上記変速機制御手段
は、トルク変換が行われる走行領域において上記大小関
係を一定の状態に維持するものであればよい。トルク変
換が必要とされない走行領域においてまで必ずしも上記
大小関係を維持する必要はない。
【0023】入力回転数と出力回転数との大小関係を維
持するハイブリッド車両について、より具体的には、次
の態様が望ましい。第1の態様は、前記トルク変換手段
が、前記第1の回転軸および第2の回転軸に結合され、
電力のやりとりによって、該第1の回転軸の動力を少な
くとも回転数の異なる動力に調整して該第2の回転軸に
伝達する動力調整装置と、前記第2の回転軸に結合され
た電動機とを備える手段である場合には、前記変換効率
が高い側の関係は、前記入力回転数が前記出力回転数よ
りも大きい関係である。
【0024】第1の態様は、先に図22に示した態様に
相当する。図22中のプラネタリギヤPGおよび発電機
Gが上述の動力調整装置に相当し、アシストモータAM
が上述の電動機に相当する。もちろん、このことは図2
2の構成に限定されることを意味するものではない。既
に図23、図24で説明した通り、電動機が駆動軸に結
合された構成においては、入力回転数が出力回転数より
も低い場合に動力の循環が発生する。第1の態様では、
入力回転数が出力回転数よりも高い状態を維持すること
ができるため、高い効率でトルク変換を行うことができ
る。
【0025】第2の態様は、前記トルク変換手段が、前
記第1の回転軸および第2の回転軸に結合され、電力の
やりとりによって、前記第1の回転軸の動力を少なくと
も回転数の異なる動力に調整して第2の回転軸に伝達す
る動力調整装置と、前記第1の回転軸に結合された電動
機とを備える手段である場合には、前記変換効率が高い
側の関係は、前記入力回転数が前記出力回転数よりも小
さい関係である。
【0026】第2の態様は、先に図25に示した態様に
相当する。もちろん、このことは図25の構成に限定さ
れることを意味するものではない。既に図26、図27
で説明した通り、電動機が駆動軸に結合された構成にお
いては、入力回転数が出力回転数よりも高い場合に動力
の循環が発生する。第2の態様では、入力回転数が出力
回転数よりも低い状態を維持することができるため、高
い効率でトルク変換を行うことができる。
【0027】本発明のハイブリッド車両において、前記
変速機を設ける場所は、種々の選択が可能である。例え
ば、前記変速機を、前記出力軸とトルク変換手段との間
に設けることができる。また、前記変速機を、前記トル
ク変換手段と前記駆動軸との間に設けることもできる。
もちろん、前記出力軸とトルク変換手段の間、およびト
ルク変換手段と駆動軸の間の双方に変速機をそれぞれ設
けるものとしてもよい。
【0028】前者の態様、即ち、変速機をエンジンEG
の出力軸とトルク変換手段との間に介在させるものとす
れば、エンジンEGから出力される動力を変速してトル
ク変換手段に入力することができる。即ち、トルク変換
手段の入力回転数側を変速することにより、入力回転数
と出力回転数との差を所定の範囲内に制御することがで
きる。
【0029】後者の態様、即ち、変速機をトルク変換手
段と駆動軸の間に介在させるものとすれば、トルク変換
手段からから出力される動力を変速して駆動軸に出力す
ることができる。こうすることにより、駆動軸の目標回
転数と出力回転数とを異なる値とすることができる。従
って、後者の態様によれば、トルク変換手段の出力回転
数側を変速することにより、入力回転数と出力回転数と
の差を所定の範囲内に制御することができる。
【0030】上述の2つの態様のうち、いずれを選択す
るものとしても構わない。エンジンEGから出力される
トルクおよび回転数の範囲、駆動軸に要求されるトルク
および回転数の範囲、トルク変換手段に許容されるトル
クおよび回転数の範囲を考慮して適宜選択することがで
きる。例えば、エンジンから非常に大きなトルクの動力
が出力される場合には、変速機をエンジンとトルク変換
手段との間に介在させ、エンジンからのトルクを低減し
てトルク変換手段に入力することが望ましい。また、装
置全体の構成の複雑化、大型化を回避するよう、変速機
の結合部位を選択することも望ましい。
【0031】本発明のハイブリッド車両において、前記
変速機も種々の構成を適用することができる。例えば、
前記変速機は、3つの回転軸のうち、2つの回転軸が前
記出力軸側および前記駆動軸側にそれぞれ結合されたプ
ラネタリギヤと、該プラネタリギヤの残余の回転軸につ
いて、選択的に回転および制止可能な制止手段と、前記
2つの回転軸同士を選択的に結合および解放可能な結合
手段とを備える機構であるものとすることができる。
【0032】プラネタリギヤは、中心で回転するサンギ
ヤ、サンギヤの外周を自転しながら公転するプラネタリ
ピニオンギヤを備えるプラネタリキャリアと、更にその
外周で回転するリングギヤとから構成される。上述の3
つの回転軸とは、サンギヤ、プラネタリキャリア、リン
グギヤにそれぞれ結合された回転軸を意味する。出力軸
側および駆動軸側に結合とは、必ずしも出力軸および駆
動軸に直接結合されている必要はなく、トルク変換手段
を介して出力軸または駆動軸に結合されている場合も含
む意味である。周知の事実であるが、プラネタリギヤ
は、これらの3つの回転軸のうち2つの回転軸の回転状
態が決まると残余の回転軸の回転状態が決まるという特
性を有している。
【0033】上記構成の変速機の作用について説明す
る。上記2つの回転軸を解放し、上記制止手段によって
プラネタリギヤの一つの回転軸の回転を制止した場合を
考える。この結果、解放された2つの回転軸について、
一方の回転状態が決まれば他方の回転状態も決まるた
め、両者はギヤで結合されたのと等価な状態になる。結
合のギヤ比は、プラネタリギヤのギヤ比によって定ま
る。一方、上記2つの回転軸を結合するとともに、残余
の回転軸を解放した場合を考える。このとき、結合され
た2つの回転軸は一体的に回転する。従って、出力軸側
と駆動軸側の回転軸は直結された状態となる。このよう
に上記構成の変速機によれば、結合手段および制止手段
を操作することにより、2つの回転軸を所定の変速比で
結合したり、直結したりすることができる。しかも、か
かる作用を比較的小型の装置構成で実現することができ
る。なお、プラネタリギヤの3つの回転軸への結合状態
については、種々の態様が選択可能である。
【0034】本発明のハイブリッド車両において、前記
トルク変換手段も種々の構成を適用することができる。
例えば、前記トルク変換手段は、ロータ軸を有する発電
機と、3つの回転軸を有し、該回転軸が前記出力軸、駆
動軸、およびロータ軸にそれぞれ結合されたプラネタリ
ギヤと、前記第1の回転軸または第2の回転軸の一方に
結合された電動機とを備える手段であるものとすること
ができる。
【0035】かかる構成によれば、プラネタリギヤの一
般的な動作に基づいて、第1の回転軸の動力を駆動軸と
ロータ軸に分配して伝達することができる。従って、入
力された動力の一部を目標回転数に調整しつつ第2の回
転軸に伝達するとともに、ロータ軸に分配された動力を
発電機によって電力として回生することができる。こう
して伝達された動力は、トルクのみが駆動軸の目標トル
クと相違する。上記電動機を力行運転または回生運転す
れば、トルクの相違を補償することができる。上述の構
成によれば、かかる作用によってトルク変換手段として
機能することができる。
【0036】また、前記トルク変換手段は、前記第1の
回転軸に結合された第1のロータと、前記第2の回転軸
に結合された第2のロータとを有する対ロータ電動機
と、前記第1の回転軸または第2の回転軸の一方に結合
された電動機とを備える手段であるものとすることもで
きる。
【0037】対ロータ電動機によれば、第1のロータと
第2のロータとの電磁的な結合により、入力された動力
を目標回転数に調整しつつ第2の回転軸に伝達すること
ができる。また、両者間の相対的な滑りによって動力の
一部を電力として回生することも可能である。上記電動
機を力行運転または回生運転すれば、伝達された動力の
トルクと目標トルクとの相違を補償することができる。
上述の構成によれば、かかる作用によってトルク変換手
段として機能することができる。
【0038】本発明はハイブリッド車両の他、その制御
方法として構成することもできる。即ち、本発明の制御
方法は、出力軸を有するエンジンと、動力を出力するた
めの駆動軸と、前記出力軸側に結合された第1の回転軸
と前記駆動軸側に結合された第2の回転軸とを有し動力
と電力との変換を介して該第1の回転軸の回転数および
トルクを変換して該第2の回転軸に出力可能なトルク変
換手段と、前記エンジンから出力された動力が前記駆動
軸に出力されるまでの経路中に介在し、所定の変速比で
動力を伝達する変速機とを備えるハイブリッド車両の運
転を制御する制御方法であって、(a) 前記駆動軸の
目標動力を、目標回転数および目標トルクの組合せで設
定する工程と、(b) 前記目標動力に応じ、運転効率
を優先して設定された回転数およびトルクで前記エンジ
ンを運転する工程と、(c) 前記第1の回転軸の入力
回転数と第2の回転軸の出力回転数との差が、予め設定
された所定範囲内となるよう、前記変速機の変速比を制
御する工程とを備える制御方法である。
【0039】かかる制御方法によれば、先にハイブリッ
ド車両で説明したのと同様の作用により、車両を広範な
運転領域において高効率で運転することができる。な
お、上記制御方法においても、先にハイブリッド車両で
説明した種々の付加的要素を紙することができることは
言うまでもない。
【0040】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を実施
例に基づいて説明する。 (1)実施例の構成:はじめに、実施例の構成について
図1を用いて説明する。図1は本実施例のハイブリッド
車両の概略構成を示す説明図である。このハイブリッド
車両の動力系統は、次の構成から成っている。動力系統
に備えられたエンジン150は通常のガソリンエンジン
であり、クランクシャフト156を回転させる。エンジ
ン150の運転はEFIECU170により制御されて
いる。EFIECU170は内部にCPU、ROM、R
AM等を有するワンチップ・マイクロコンピュータであ
り、ROMに記録されたプログラムに従いCPUがエン
ジン150の燃料噴射料その他の制御を実行する。これ
らの制御を可能とするために、EFIECU170には
エンジン150の運転状態を示す種々のセンサが接続さ
れている。その一つとしてクランクシャフト156の回
転数を検出する回転数センサ152がある。その他のセ
ンサおよびスイッチなどの図示は省略した。なお、EF
IECU170は、制御ユニット190とも電気的に接
続されており、制御ユニット190との間で種々の情報
を、通信によってやりとりしている。EFIECU17
0は、制御ユニット190からエンジン150の運転状
態に関する種々の指令値を受けてエンジン150を制御
している。
【0041】エンジン150は変速機構を構成するプラ
ネタリギヤ200に結合されている。プラネタリギヤ2
00は、中心で回転するサンギヤ201、その周囲を自
転しながら公転するプラネタリピニオンギヤ202、さ
らにその周囲で回転するリングギヤ204の3種類のギ
ヤから構成されている。プラネタリピニオンギヤ202
はプラネタリキャリア203に軸支されている。クラン
クシャフト156はプラネタリキャリア203に結合さ
れている。変速機構を構成するため、プラネタリギヤ2
00のサンギヤ201には、その回転を制止するための
ブレーキ220が設けられている。また、プラネタリキ
ャリア203とリングギヤとを結合したり解放したりす
るクラッチ210も設けられている。クラッチ210、
ブレーキ220のオン・オフは制御ユニット190によ
り制御される。変速機構の作用については後述する。リ
ングギヤ204の回転軸たるリングギヤ軸205は、上
流側に位置するエンジン150から出力された動力が伝
達される経路において、さらに下流側に設けられ、動力
調整装置を構成するプラネタリギヤ120に結合されて
いる。
【0042】プラネタリギヤ120は、サンギヤ12
1、プラネタリピニオンギヤ122、リングギヤ124
の3種類のギヤから構成されている。プラネタリピニオ
ンギヤ122はプラネタリキャリア123に軸支されて
いる。リングギヤ軸205は、プラネタリキャリア12
3に結合されている。サンギヤ201には、モータ13
0が結合されている。リングギヤ204は、アシストモ
ータ140および駆動軸112に結合され、さらにディ
ファレンシャルギヤ114を介して、駆動輪を備えた車
軸116に結合されている。
【0043】モータ130は、同期電動発電機として構
成されており、外周面に複数個の永久磁石を有するロー
タ132と、回転磁界を形成する三相コイルが巻回され
たステータ133とを備える。モータ130はロータ1
32に備えられた永久磁石による磁界とステータ133
に備えられた三相コイルによって形成される磁界との相
互作用により回転駆動する電動機として動作し、場合に
よってはこれらの相互作用によりステータ133に巻回
された三相コイルの両端に起電力を生じさせる発電機と
しても動作する。なお、モータ130は、ロータ132
とステータ133との間の磁束密度が円周方向に正弦分
布する正弦波着磁モータを適用することも可能である
が、本実施例では、比較的大きなトルクを出力可能な非
正弦波着磁モータを採用した。
【0044】モータ130のステータ133は駆動回路
191を介してバッテリ194に電気的に接続されてい
る。駆動回路191は内部にスイッチング素子としての
トランジスタを複数備えたトランジスタインバータであ
り、制御ユニット190と電気的に接続されている。制
御ユニット190が駆動回路191のトランジスタのオ
ン・オフの時間をPWM制御するとバッテリ194を電
源とする三相交流がモータ130のステータ133に流
れる。この三相交流によりステータ133には回転磁界
が形成されモータ130は回転する。
【0045】アシストモータ140も、モータ130と
同様に同期電動発電機として構成され、外周面に複数個
の永久磁石を有するロータ142と、回転磁界を形成す
る三相コイルが巻回されたステータ143とを備える。
アシストモータ140は駆動回路192を介してバッテ
リ194に接続されている。駆動回路192もトランジ
スタインバータにより構成されており、制御ユニット1
90に電気的に接続されている。制御ユニット190の
制御信号により駆動回路192のトランジスタをスイッ
チングすると、ステータ143に三相交流が流れて回転
磁界を生じ、アシストモータ140は回転する。本実施
例では、アシストモータ140として非正弦波着磁モー
タを適用した。
【0046】本実施例のハイブリッド車両の運転状態は
制御ユニット190により制御されている。制御ユニッ
ト190もEFIECU170と同様、内部にCPU、
ROM、RAM等を有するワンチップ・マイクロコンピ
ュータであり、ROMに記録されたプログラムに従い、
CPUが後述する種々の制御処理を行うよう構成されて
いる。これらの制御を可能とするために、制御ユニット
190には、各種のセンサおよびスイッチが電気的に接
続されている。制御ユニット190に接続されているセ
ンサおよびスイッチとしては、アクセルペダルの操作量
を検出するためのアクセルペダルポジションセンサ16
5、車軸116の回転数を検出する回転数センサ117
等が挙げられる。制御ユニット190は、EFIECU
170とも電気的に接続されており、EFIECU17
0との間で種々の情報を、通信によってやりとりしてい
る。制御ユニット190からエンジン150の制御に必
要な情報をEFIECU170に出力することにより、
エンジン150を間接的に制御することができる。逆に
エンジン150の回転数などの情報をEFIECU17
0から入力することもできる。
【0047】本実施例のハイブリッド車両は、変速機構
を構成するクラッチ210およびブレーキ220のオン
・オフを変更すると、プラネタリギヤ200の作用によ
り、エンジン150をプラネタリギヤ120に結合する
際の変速比を変更することができる。図2は変速機構の
動作について示す説明図である。クラッチ210のオン
・オフおよびブレーキ220のオン・オフで実現される
4通りの組合せについて示した。なお、クラッチ210
およびブレーキ220のオン・オフは制御ユニット19
0により制御される。
【0048】変速機構の動作を説明するため、まず、プ
ラネタリギヤ200の一般的な性質について説明する。
プラネタリギヤ200は、サンギヤ201,プラネタリ
キャリア203およびリングギヤ204のそれぞれに結
合された回転軸の回転数およびトルクに以下の関係が成
立することが機構学上よく知られている。即ち、上記3
つの回転軸のうち、2つの回転軸の動力状態が決定され
ると、以下の関係式に基づいて残余の一つの回転軸の動
力状態が決定される。 Ns=(1+ρ)/ρ×Nc−Nr/ρ; Nc=ρ/(1+ρ)×Ns+Nr/(1+ρ); Nr=(1+ρ)Nc−ρNs; Ts=Tc×ρ/(1+ρ)=ρTr; Tr=Tc/(1+ρ); ρ=サンギヤ201の歯数/リングギヤ202の歯数 ・・・(1) ;
【0049】ここで、Nsはサンギヤ201の回転数;
Tsはサンギヤ201のトルク;Ncはプラネタリキャ
リア203の回転数;Tcはプラネタリキャリア203
のトルク;Nrはリングギヤ204の回転数;Trはリ
ングギヤ204のトルク;である。
【0050】変速機構は、プラネタリギヤ200の上記
性質に基づいて、以下に示す通り、変速比を切り替える
ことができる。図2の左上には、結合状態Aとして、ク
ラッチ210およびブレーキ220を共にオンにした場
合の状態を示した。ブレーキ220がオンとなっている
ため、サンギヤ201の回転は制止され、回転数は0と
なる。また、クラッチ210がオンになっているため、
リングギヤ204とプラネタリキャリア203とは結合
され、両者は一体的に回転する。この結果、上式(1)
のNsに値0を代入し、Nc=Nrを代入すれば明らか
な通り、プラネタリギヤ200は全てのギヤの回転数が
値0となる。従って、結合状態Aでは、走行することが
できない。
【0051】右上には、結合状態Bとして、クラッチ2
10をオフにし、ブレーキ220をオンにした場合の結
合状態を示した。ブレーキ220がオンになっているた
め、サンギヤ201の回転数Nsは値0である。一方、
クラッチ210がオフになっているため、リングギヤ2
04とプラネタリキャリア203とは異なる回転数で回
転可能である。上式(1)のNsに値0を代入すれば明
らかな通り、リングギヤ204の回転数Nrと、プラネ
タリキャリア203の回転数Ncの関係は、「Nr=
(1+ρ)Nc」で与えられる。即ち、エンジン150
は1+ρ倍の回転数に増速されてプラネタリギヤ120
に結合されたのと等価な状態となる。
【0052】図3はクラッチ210をオフにし、ブレー
キ220をオンにした場合と等価な結合状態を模式的に
示す説明図である。等価な構成においては、図示する通
り、エンジン150は固定の変速ギヤTG1,TG2を
介してプラネタリギヤ120に結合される。変速ギヤT
G1,TG2の変速比は「1/(1+ρ)」である。即
ち、エンジン150の回転数は、上述の通り、「1+
ρ」倍に増速されてプラネタリギヤ120に伝達され
る。逆にトルクは「1/(1+ρ)」倍されてプラネタ
リギヤ120に伝達される。以下の説明では、結合状態
Bを増速結合状態と称する。
【0053】図2の左下には、結合状態Cとして、クラ
ッチ210をオンにし、ブレーキ220をオフにした場
合の結合状態を示した。ブレーキ220がオフになって
いるため、サンギヤ201は自由に回転することができ
る。一方、クラッチ210がオンになっているため、リ
ングギヤ204とプラネタリキャリア203とは一体的
に回転する。結合状態Aと異なり、サンギヤ201の回
転が制止されていないため、リングギヤ204およびプ
ラネタリキャリア203の回転は妨げられない。従っ
て、結合状態Cは、エンジン150をプラネタリギヤ1
20に直結した状態に相当する。図4はクラッチ210
をオンにし、ブレーキ220をオフにした場合と等価な
結合状態を模式的に示す説明図である。等価な構成で
は、図示する通り、エンジン150はプラネタリギヤ1
20に直結される。以下の説明では、結合状態Cを直結
状態と称する。
【0054】図2の右下には、結合状態Dとして、クラ
ッチ210およびブレーキ220を共にオフとした場合
の結合状態を示した。ブレーキ220がオフになってい
るため、サンギヤ201は自由に回転することができ
る。また、クラッチ210も解放されているため、プラ
ネタリキャリア203とリングギヤ204も異なる回転
数で回転可能である。かかる状態では、プラネタリキャ
リア203およびリングギヤ204のうち一方の回転状
態が決定されても、他方の回転状態は決定されない。つ
まり、プラネタリキャリア203とリングギヤ204と
の間では動力を伝達することができない。これは、エン
ジン150がプラネタリギヤ120から切り離された状
態に相当する。
【0055】変速機構は、上述の通り、クラッチ210
およびブレーキ220のオン・オフによって4通りの結
合状態をとり得る。但し、上述の通り、エンジン150
からプラネタリギヤ120に動力を伝達可能なのは、結
合状態B(増速結合状態)と結合状態C(直結状態)で
ある。従って、本実施例では、これら2通りの結合状態
を車両の走行状態に応じて使い分けている。
【0056】本実施例のハイブリッド車両は、プラネタ
リギヤ120の機構上の制限から、車速に応じてエンジ
ン150が運転可能な範囲が制限されている。かかる制
限を差速制限と呼ぶ。以下、差速制限が生じる理由およ
びその範囲について説明する。
【0057】図5はプラネタリギヤ120の回転状態を
示す説明図である。共線図と呼ばれる図である。プラネ
タリギヤ120の各ギヤの回転数は先に示した式(1)
で表される。式(1)から明らかな通り、各ギヤの回転
数は比例関係にある。従って、横軸にサンギヤ121
(S)、プラネタリキャリア123(C)、リングギヤ
124(R)にそれぞれ対応する座標を、SC間の距離
とCR間の距離とが1:ρ1の関係になるようにとり、
各座標においてそれぞれのギヤの回転数を縦軸にとれ
ば、図5に示す通り、各ギヤの回転数は直線で表され
る。なお、ρ1はプラネタリギヤ120のギヤ比であ
る。
【0058】例えば、サンギヤ121の回転数がNs、
プラネタリキャリア123の回転数がNe、リングギヤ
124の回転数がNrの場合を考える。サンギヤ121
の回転状態は、図5の共線図中の点Psで示される。ま
た、プラネタリキャリア123の回転状態は点Pe、リ
ングギヤ124の回転状態は点Prでそれぞれ示され
る。点Ps,Pe,Prはそれぞれ動作共線と呼ばれる
直線上に位置する。
【0059】ここで、プラネタリキャリア123の回転
数、即ちエンジン150の回転数を一定に維持したま
ま、リングギヤ124の回転数、即ち車速が低下した場
合を考える。かかる場合の動作共線を図5中に破線で示
した。車速が低くなるため、リングギヤ124の回転状
態は図5中の点Pr1で示される。プラネタリキャリア
123の回転数は点Peのまま一定である。この結果、
サンギヤ121の回転数は点Ps1で示される値まで増
加する。
【0060】プラネタリギヤ120の各ギヤには、機械
的に許容される回転数の上限がある。図5に示した通
り、低速時においてエンジン150の回転数を高くすれ
ば、サンギヤ121の回転数が非常に高くなり、許容さ
れる上限値を超える場合が生じる。サンギヤ121の回
転数が上限値を超えないようにするためには、例えば、
エンジン150の回転数を図5中の点Pe1に相当する
値まで下げる必要がある。このように本実施例のハイブ
リッド車両では、プラネタリギヤ120の機械的制限に
起因して、車速に応じてエンジン150の運転可能範囲
が制限される。かかる制限が差速制限である。
【0061】図6は本実施例のハイブリッド車両におけ
る差速制限について示す説明図である。上述した通り、
図中の使用可能領域で表された範囲内の車速およびエン
ジン回転数で運転が行われる。なお、図6中の実線で示
した領域は、変速機を直結状態にした場合の使用可能領
域を示している。変速機を増速状態とした場合、プラネ
タリギヤ120に入力される回転数はエンジンの実回転
数よりも高くなるため、使用可能領域は図6中の破線で
示した領域に移行する。
【0062】(2)一般的動作:次に、本実施例のハイ
ブリッド車両の一般的動作として、エンジン150から
出力された動力を要求された回転数およびトルクに変換
して車軸116に出力する動作について説明する。以下
では、説明の容易のため、ディファレンシャルギヤ11
4のギヤ比は値1であるものとして説明する。つまり、
車軸116の回転数およびトルクと駆動軸112の回転
数およびトルクは等しいものとする。
【0063】図7は「車軸116の回転数Nd<エンジ
ン150の回転数Ne」の場合におけるトルク変換の様
子を示す説明図である。横軸に回転数N、縦軸にトルク
Tを採り、エンジン150の運転ポイントPeと車軸1
16の回転ポイントPdを示した。図7中の曲線Pは動
力、つまり回転数とトルクの積が一定の曲線である。回
転数Ne、トルクTeでエンジン150から出力された
動力Peを、Neよりも低い回転数Nd、Teよりも高
いトルクTdの動力Pdに変換して車軸116から出力
する場合を考える。なお、変速機構は直結状態であるも
のとする。
【0064】図7に示した変換を行う場合、車軸116
の回転数Ndはエンジン150の回転数Neよりも小さ
い。プラネタリキャリア123の回転数はエンジン15
0の回転数Neに等しく、リングギヤ124の回転数は
車軸116の回転数Ndに等しい。従って、先に示した
式(1)から明らかな通り、サンギヤ121の回転数N
sおよびトルクTsはそれぞれ次式(2)で表される。 Ns=(1+ρ1)/ρ1×Ne−Nd/ρ1; Ts=Te×ρ1/(1+ρ1); ρ1=サンギヤ121の歯数/リングギヤ124の歯数 ・・・(2); なお、エンジン150単体で回転数およびトルクを個別
に制御することはできないから、実際には、モータ13
0を上述の回転数およびトルクで運転することにより、
結果としてエンジン150が回転数Ne、トルクTeで
運転されることになる。
【0065】エンジン150から出力された動力は、プ
ラネタリギヤ120で2つに分配され、その一部は上記
回転数およびトルクの動力としてモータ130に入力さ
れる。モータ130は回転数NsとトルクTsの積に等
しい動力を電力として回生する。上式(2)によれば、
回生される電力GU1は、次式(3)で表される。この
電力は、図7中の領域GU1の面積に相当する。 GU1=Ns×Ts=Ne×Te−Nd×Te/(1+ρ1) …(3)
【0066】エンジン150から出力された残余の動力
は、リングギヤ124に伝達され、車軸116に機械的
な動力として直接出力される。先に示した式(1)によ
れば、エンジン150から車軸116に出力されるトル
クTreは、「Tre=Te/(1+ρ1)」で与えら
れる。このトルクと車軸の目標トルクTdとの差分のト
ルク「Td−Tre」をアシストモータ140から出力
することにより、車軸116に回転数Nd、トルクTd
の動力を出力することができる。この際、アシストモー
タ140は、差分のトルク×回転数Ndの電力を消費す
る。消費される電力AU1は、次式(4)で表される。
この電力は、図7中の領域AU1の面積に相当する。 AU1=(Td−Te/(1+ρ1))×Nd =Td×Nd−Nd×Te/(1+ρ1) …(4)
【0067】アシストモータ140には、モータ130
で回生された電力が供給される。上式(3)、(4)の
比較から明らかな通り、効率100%で運転されている
場合には、回生される電力GU1と消費される電力とは
等しくなる。上式(3)、(4)の第2項同士は等し
く、PeとPdとが動力一定の曲線P上にあることを考
慮すれば、第1項同士も等しいからである。つまり、
「車軸116の回転数Nd<エンジン150の回転数N
e」の場合には、図7中のハッチングを付した領域に相
当する動力を一旦電力に変換することで、点Peから点
Pdへのトルク変換を行うことができる。なお、実際に
は運転効率が100%になることはないため、バッテリ
194からの電力の持ち出しを伴ったり、損失に相当す
る動力をエンジン150から余分に出力したりして、上
記変換を実現する。説明の容易のため、以下では、運転
効率を100%として本実施例の動作について説明す
る。
【0068】図8は「車軸116の回転数Nd>エンジ
ン150の回転数Ne」の場合におけるトルク変換の様
子を示す説明図である。図8に示した変換を行う場合、
車軸116の回転数Ndはエンジン150の回転数Ne
よりも大きい。従って、上式(2)から明らかな通り、
サンギヤ121の回転数Nsは負となり、逆転する。つ
まり、モータ130は電力の供給を受けて逆転方向に力
行する。このとき、消費される電力は、上式(3)の絶
対値に等しく、図8中のハッチングを施した領域AU2
の面積に等しい。
【0069】一方、車軸116のトルクTdはエンジン
150のトルクTeよりも小さい。従って、アシストモ
ータ140は負のトルクで回生運転される。このとき回
生される電力は、上式(4)の絶対値に等しく、図8中
のハッチングを施した領域GU2の面積に等しい。両モ
ータでの運転効率を100%と仮定すれば、モータ13
0で回生される電力とアシストモータ140に供給され
る電力とが等しくなる。つまり、「車軸116の回転数
Nd>エンジン150の回転数Ne」の場合には、図8
中のハッチングを付した領域に相当する動力を一旦電力
に変換することで、点Peから点Pdへのトルク変換を
行うことができる。かかる変換では、下流側に位置する
アシストモータ140から上流側に位置するモータ13
0に電力が供給されるため、動力の循環が生じる。図8
中の領域GU2とAU2の双方に共通の領域GU3が循
環する動力に相当する。
【0070】以上で説明した通り、本実施例のハイブリ
ッド車両は、エンジン150から出力された動力を要求
された回転数およびトルクからなる動力に変換して、車
軸116から出力することができる(以下、この運転モ
ードを通常走行と呼ぶ)。この他、エンジン150を停
止してアシストモータ140を動力源として走行するこ
とも可能である(以下、この運転モードをEV走行とよ
ぶ)。また、停車中にエンジン150の動力でモータ1
30を回生運転して発電することも可能である。
【0071】図8に示した通り、車軸116の回転数N
dがエンジン150の回転数Neよりも大きい走行時に
は、動力の循環が生じ、車両の運転効率が低下する。上
記説明では、変速機が直結状態の場合を例にとって説明
したが、増速結合状態の場合も同様に動力の循環が生じ
る。上記説明においてエンジン150の回転数Neをプ
ラネタリキャリア123の回転数Ncに置換して考えれ
ばよい。なお、動力の循環はサンギヤ121が逆転する
ときに発生する。先に示した式(2)によれば、サンギ
ヤ121の回転数は「(1+ρ1)/ρ1×Nc−Nd
/ρ1」で与えられるから、厳密には、「(1+ρ1)
/ρ1×Nc」の値が「Nd/ρ1」の値よりも小さい
場合に動力の循環が生じる。以下の説明では、かかる条
件を満足し動力の循環が生じる走行状態をオーバードラ
イブ走行とよぶ。本実施例のハイブリッド車両は、動力
の循環を極力抑え、運転効率を向上するよう、走行領域
に応じて変速機構を制御して走行する。
【0072】図9は本実施例のハイブリッド車両におけ
る各種走行モードの使い分けの様子を示す説明図であ
る。図中の曲線LIMはハイブリッド車両が走行可能な
領域を示している。図示する通り、車速およびトルクが
比較的低い領域では、EV走行を行う。車速およびトル
クが所定値以上の領域では、通常走行を行う。図中の領
域WODでは原則として増速結合状態で走行し、領域U
Eでは直結状態で走行する。例えば、図10中の曲線D
Dに沿って車両の走行状態が変化していく場合には、当
初EV走行を行った後、増速結合状態での走行に移行す
ることになる。
【0073】(3)運転制御処理:次に、本実施例のハ
イブリッド車両の運転制御処理について説明する。先に
説明した通り、本実施例のハイブリッド車両は、EV走
行、通常走行など種々の運転モードにより走行すること
ができる。制御ユニット190内のCPU(以下、単に
「CPU」という)は車両の走行状態に応じて運転モー
ドを判定し、それぞれのモードについてエンジン15
0、モータ130、アシストモータ140、クラッチ2
10、ブレーキ220の制御を実行する。これらの制御
は種々の制御処理ルーチンを周期的に実行することによ
り行われる。以下では、これらの運転モードのうち、通
常走行モードについてトルク制御処理の内容を説明す
る。
【0074】図10は通常走行時のトルク制御ルーチン
のフローチャートである。この処理が開始されるとCP
Uは駆動軸112から出力すべき動力Pdを設定する
(ステップS10)。この動力は、アクセルペダルポジ
ションセンサ165により検出されたアクセルの踏み込
み量および車速に基づいて設定される。駆動軸から出力
すべき動力Pdは、駆動軸112の回転数Nd*と目標
トルクTd*の積で表される。回転数Nd*は車速と等
価なパラメータである。目標トルクTd*はアクセル開
度および車速に応じたテーブルとして予め設定されてい
る。
【0075】次に、充放電電力Pbおよび補機駆動動力
Phを算出する(ステップS15,S20)。充放電電
力Pbとは、バッテリ194の充放電に要する動力であ
り、バッテリ194を充電する必要がある場合には正の
値、放電する必要がある場合には負の値を採る。補機駆
動動力Phとは、エアコンなどの補機を駆動するために
必要となる電力である。こうして算出された電力の総和
が要求動力Peとなる(ステップS25)。
【0076】次に、CPUは、こうして設定された要求
動力Peに基づいてエンジン150の運転ポイントを設
定する(ステップS30)。運転ポイントとは、エンジ
ン150の目標回転数Neと目標トルクTeの組み合わ
せをいう。エンジン150の運転ポイントは、予め定め
たマップに従って、基本的にはエンジン150の運転効
率を優先して設定する。
【0077】図11はエンジンの運転ポイントと運転効
率との関係について示す説明図である。回転数Neを横
軸に、トルクTeを縦軸にとりエンジン150の運転状
態を示している。図中の曲線Bはエンジン150の運転
が可能な限界範囲を示している。曲線α1からα6まで
はエンジン150の運転効率が一定となる運転ポイント
を示している。α1からα6の順に運転効率は低くなっ
ていく。また、曲線C1からC3はそれぞれエンジン1
50から出力される動力(回転数×トルク)が一定とな
るラインを示している。
【0078】エンジン150は図示する通り、回転数お
よびトルクに応じて、運転効率が大きく相違する。エン
ジン150から曲線C1に相当する動力を出力する場合
には、図中のA1点に相当する運転ポイント(回転数お
よびトルク)が最も高効率となる。同様に曲線C2およ
びC3に相当する動力を出力する場合には図中のA2点
およびA3点で運転する場合が最も高効率となる。出力
すべき動力ごとに最も運転効率が高くなる運転ポイント
を選択すると、図中の曲線Aが得られる。これを動作曲
線と呼ぶ。
【0079】図10のステップS30における運転ポイ
ントの設定では、予め実験的に求められた動作曲線Aを
制御ユニット190内のROMにマップとして記憶して
おき、かかるマップから要求動力Peに応じた運転ポイ
ントを読み込むことで、エンジン150の目標回転数N
eおよび目標トルクTeを設定する。こうすることによ
り、エンジン150について効率の高い運転ポイントを
設定することができる。
【0080】こうして設定されたエンジン150の運転
ポイントに応じて、CPUは変速比切り替え制御処理を
行う(ステップS100)。この処理は、ハイブリッド
車両の走行状態に応じて変速機構の結合状態を増速結合
状態(図2の結合状態B)と直結状態(図2の結合状態
C)とで切り替える処理である。処理内容の詳細は後述
する。
【0081】次にCPUは、CPUは変速機構が増速結
合状態であるか否かを判断し(ステップS200)、そ
の結合状態に応じて、モータ130およびアシストモー
タ140のトルクおよび回転数の指令値を設定する(ス
テップS205,S210)。増速結合状態でない場
合、即ち、直結状態の場合は次の通り指令値を設定する
(ステップS205)。モータ130の目標回転数N1
*は、先に示した式(2)において、駆動軸112の目
標回転数Nd*、エンジン回転数Ne*を代入すること
により設定される。モータ130の目標トルクT1*は
式(2)において、駆動軸112の目標トルクTd*、
エンジン目標トルクTe*を代入することで求めること
も可能ではあるが、本実施例では、回転数を上記目標値
に精度良く制御できるよう、目標回転数N1*と実際の
回転数N1との偏差に基づく比例積分制御によってモー
タ130の目標トルクT1*を設定した。モータ130
の目標回転数N1*および目標トルクT1*は次式
(5)の通り設定される。 N1*=(1+ρ1)/ρ1×Ne*−Nd*/ρ1; T1*=K1×(N1*−N1)+K2×Σ(N1*−N1) ・・・(5)
【0082】ここで、ρ1はプラネタリギヤ120のギ
ヤ比である。また、目標トルクT1*の式におけるK
1,K2は、それぞれ比例積分制御におけるゲインであ
る。K1は回転数の偏差に対する比例項のゲイン、K2
は回転数の偏差の積分項のゲインに相当する。これらの
ゲインは、制御の安定性、応答性を考慮して実験等によ
り予め設定することができる。比例積分制御については
周知の技術であるため、これ以上の詳細な説明を省略す
る。
【0083】アシストモータ140の運転ポイントは次
の通り設定される。アシストモータ140の目標回転数
N2*は駆動軸112の目標回転数Nd*に等しい。ま
た、目標トルクT2*は、エンジン150からプラネタ
リギヤ120を介して駆動軸112に伝達される直達ト
ルクと、駆動軸112の目標トルクTd*との差を補償
するよう設定される。なお、エンジン150からの直達
トルクはモータ130のトルクT1*によって変動する
ため、ここでは上式(5)で設定されたトルクT1*を
用いて直達トルクを求める。先に示した式(1)におい
てサンギヤのトルクTsにT1*を代入すれば、直達ト
ルクは「T1*/ρ1」と求めることができる。以上よ
り、アシストモータ140の目標回転数N2*および目
標トルクT2*は次式(6)の通り設定される。 N2*=Nd*; T2*=Td*−T1*/ρ1 ・・・(6)
【0084】一方、増速結合状態の場合は次の通り指令
値を設定する(ステップS210)。プラネタリギヤ2
00のギヤ比をρとすれば、変速機構の作用によって、
エンジン150の回転数は、「1+ρ」倍されてプラネ
タリギヤ120に伝達される。従って、上式(5)およ
び(6)において、エンジンの回転数Ne*に代えて、
「(1+ρ)Ne*」を代入することにより、モータ1
30およびアシストモータ140の運転ポイントが設定
される。各運転ポイントは次式(7)の通り設定され
る。 N1*=(1+ρ1)/ρ1×(1+ρ)Ne*−Nd*/ρ1; T1*=K1×(N1*−N1)+K2×Σ(N1*−N1); N2*=Nd*; T2*=Td*−T1*/ρ1 ・・・(7)
【0085】こうして設定されたトルク指令値および回
転数指令値に基づいて、CPUはモータ130、アシス
トモータ140、エンジン150の運転を制御する(ス
テップS215)。モータの運転制御処理は、同期モー
タの制御として周知の処理を適用することができる。本
実施例では、いわゆる比例積分制御による制御を実行し
ている。つまり、各モータの現在のトルクを検出し、目
標トルクとの偏差および目標回転数に基づいて、各相に
印加する電圧指令値を設定する。印加される電圧値は上
記偏差の比例項、積分項によって設定される。それぞれ
の項にかかるゲインは実験などにより適切な値が設定さ
れる。こうして設定された電圧は、駆動回路191,1
92を構成するトランジスタインバータのスイッチング
のデューティに置換され、いわゆるPWM制御により各
モータに印加される。
【0086】CPUは駆動回路191,192のスイッ
チングを制御することによって、上述の通り、モータ1
30およびアシストモータ140の運転を直接制御す
る。これに対し、エンジン150の運転は現実にはEF
IECU170が実施する処理である。従って、制御ユ
ニット190のCPUはEFIECU170に対してエ
ンジン150の運転ポイントの情報を出力することで、
間接的にエンジン150の運転を制御する。
【0087】以上の処理を周期的に実行することによ
り、本実施例のハイブリッド車両は、エンジン150か
ら出力された動力を所望の回転数およびトルクに変換し
て駆動軸から出力し、走行することができる。
【0088】次に、変速比切り替え制御処理について説
明する。図12は変速比切り換え制御ルーチンのフロー
チャートである。本ルーチンが開始されると、CPUは
駆動軸112の目標運転ポイント、即ち目標回転数Nd
*および目標トルクTd*を読み込む(ステップS10
2)。次に、駆動軸112の目標運転ポイントに基づい
て、CPUは変速比の切換が必要であるか否かを判定す
る(ステップS104)。判定は、車両の走行状態が先
に図9で示した領域UDおよび領域ODのいずれに該当
するかによって行われる。切り替えの判断について具体
例で説明する。
【0089】図13は直結状態から増速結合状態への切
り替えの判断を示す説明図である。曲線DUはハイブリ
ッド車両の走行中における車速とトルクの変遷の一例を
示している。かかる軌跡で走行する場合、車両は走行抵
抗DDよりも大きなトルクを出力して加速される。加速
とともに出力トルクが低下し、やがて出力トルクと走行
抵抗DDとが釣り合った速度で定常的に走行する。直結
状態から増速結合状態への切り替えは、例えばこうした
加速の過程で生じる。車速の変化に伴って駆動軸112
の回転状態が、図中の矢印で示されるように変化し、領
域UDと領域ODとの境界点PD1に至ったとき、CP
Uは増速結合状態への切り換えを行うべきと判断する。
【0090】図14は増速結合状態から直結状態への切
り替えの判断を示す説明図である。曲線DDは勾配のな
い道路を定常走行している状態での車速とトルクとの関
係である。ある車速で定常走行している状態が図中の点
PO0に相当する。この状態で走行中に運転者がアクセ
ルを踏み込むと、車両の出力トルクは図中の曲線DOに
示すように増加し車両は加速する。増速結合状態から直
結状態への切り替えは、例えばこうした過程で生じる。
図中の矢印に従って駆動軸112の回転状態が変化し、
領域ODと領域UDとの境界点PO1に至ったとき、C
PUは直結状態への切り替えを行うべきと判断する。
【0091】このようにCPUは車両の走行領域が領域
UDと領域ODとの間で移行するか否かに基づいて切り
替えの必要性を判断する。なお、本実施例では、変速比
の切り替えが頻繁に行われるのを回避するため、切り替
えの判断処理に一定のヒステリシスを持たせている。つ
まり、直結状態から増速結合状態への切り替えは、図1
3中の領域OD内に設定された所定の境界線ULに至っ
た場合に切り替えが必要と判断する。増速結合状態から
直結状態への切り替えば、図14中の領域UD内に設定
された所定の境界線HLに至った場合に切り替えが必要
と判断する。ヒステリシスの幅、即ち、曲線UL,HL
の位置は車両の運転効率や頻繁な切り替えによって生じ
る乗り心地の低下などを考慮して、任意に設定すること
ができる。
【0092】ステップS104において、切り替えが必
要と判断された場合には、切り替え処理が実行され(ス
テップS106)、切り替え不要と判断された場合に
は、この処理をスキップして変速比切り替え制御ルーチ
ンを終了する。図2に示した通り、増速結合状態(結合
状態B)は、クラッチ210をオフ、ブレーキ220を
オンにした結合状態である。直結状態(結合状態C)
は、クラッチ210をオン、ブレーキ220をオフにし
た結合状態である。両者間の切り替えは、いわゆる半ク
ラッチ状態を経て行われる。増速結合状態から直結状態
への切り替えは、ブレーキ220の油圧を徐々に低減し
つつ、クラッチ210の油圧を徐々に増大させることに
よって行われる。直結状態から増速結合状態への切り替
えは、逆に、ブレーキ220の油圧を徐々に増大させつ
つ、クラッチ210の油圧を徐々に低減させることによ
って行われる。もちろん、クラッチ210、ブレーキ2
20の双方を一旦オフにした状態(図2中の結合状態
D)を経てから、いずれか一方をオンにする態様で切り
替えを行うものとしても構わない。
【0093】以上で説明した本実施例のハイブリッド車
両によれば、車両の運転状態に応じて変速比を切り換え
ることによって、高い効率でハイブリッド車両を運転す
ることができる。以下、かかる効果について説明する。
【0094】図15はオーバードライブ走行時のトルク
変換の様子を示す説明図である。図8で説明したトルク
変換に相当する。図8と同様、駆動軸から回転数Nd、
トルクTdの動力を出力する場合を考える。図8では、
エンジンが図15中の点Peで運転される場合のトルク
変換の様子を示した。ここでは、増速結合状態における
トルク変換の様子を示す。エンジン150の運転ポイン
トは変速比に関わらず、要求動力と動作曲線A(図11
参照)との交点で設定される。従って、増速結合状態で
もエンジン150は点Peで運転される。但し、増速結
合状態では、変速機で回転数が増速されるため、プラネ
タリギヤ120に入力される動力は図中の点Pe1に相
当する動力となる。即ち、入力される動力の回転数Ne
1は点Peの回転数Neよりも高く、トルクTe1は点
PeのトルクTeよりも低くなる。
【0095】かかる動力が入力されると、ハイブリッド
車両は図8で示したのと同じく、プラネタリギヤ12
0、モータ130およびアシストモータ140の作用に
よってトルク変換を行う。既に説明した通り、エンジン
150から出力される動力のうち、図15中の領域GU
2’の面積に相当する動力は一旦電力に置換される。ま
た、図中の領域AU2’の面積に相当する電力をモータ
130で消費する。かかるトルク変換では、図15中の
領域GU3’の面積に相当する動力の循環が生じる。
【0096】ここで、図8と図15とを比較する。図8
は直結状態でトルク変換した場合に相当し、領域GU3
の面積に相当する動力の循環が生じる。図15は増速結
合状態でトルク変換した場合に相当し、領域GU3’の
面積に相当する動力の循環が生じる。両者の比較から明
らかな通り、領域GU3’の方が領域GU3よりも面積
が小さい。つまり、増速結合状態でトルク変換すること
により、循環する動力を抑制することができる。
【0097】このように本実施例のハイブリッド車両
は、オーバードライブ走行時に増速結合状態でトルク変
換することにより、エンジン150からプラネタリギヤ
120に入力される動力の回転数、トルクを駆動軸11
2の目標回転数Nd、目標トルクTdに近づけることが
できる。この結果、トルク変換で生じる動力の循環量を
抑制することができ、車両の運転効率を向上することが
できる。
【0098】なお、変速比によっては、動力の循環の発
生を回避することも可能である。増速時の変速比を大き
くすれば、エンジン150の運転ポイントPeに対し、
プラネタリギヤ120に入力される動力を図15中の点
Pe2に相当する回転数まで増速することができる。駆
動軸112の回転数Ndは点Pe2の回転数よりも低
い。従って、かかる状態で行われるトルク変換は、先に
図7で説明したのと同じ態様で行われることになり、動
力の循環は生じない。このような変速比を設定すれば、
オーバードライブ走行時にも動力の循環の発生を回避す
ることができ、更に高い効率でハイブリッド車両を運転
することができる。
【0099】本実施例のハイブリッド車両は、変速比の
切り換えにより、オーバードライブ走行時のみならず、
アンダードライブ走行時にも運転効率を向上することが
できる。図16はアンダードライブ走行時のトルク変換
の様子を示す説明図である。図7で説明したトルク変換
に相当する。図7と同様、駆動軸から回転数Nd、トル
クTdの動力を出力する場合を考える。図7では、エン
ジンが図15中の点Peで運転される場合のトルク変換
の様子を示した。ここでは、車両の走行状態に応じた変
速比の切り換えを行わない場合、即ち、アンダードライ
ブ走行時にも増速結合状態を維持した場合のトルク変換
の様子を示す。増速結合状態では、変速機で回転数が増
速されるため、プラネタリギヤ120に入力される動力
は図中の点Pe3に相当する動力となる。
【0100】かかる動力に対し、ハイブリッド車両は図
7で示したのと同じく、プラネタリギヤ120、モータ
130およびアシストモータ140の作用によってトル
ク変換を行う。既に説明した通り、エンジン150から
出力される動力のうち、図16中の領域GU1’の面積
に相当する動力は一旦電力に置換される。また、図中の
領域AU1’の面積に相当する電力をモータ130で消
費する。
【0101】ここで、図7と図16とを比較する。図7
は直結状態でトルク変換した場合に相当し、一旦電力に
置換されて伝達される動力は領域GU1の面積に相当す
る。図16は増速結合状態でトルク変換した場合に相当
し、一旦電力に置換されて伝達される動力は領域GU
1’の面積に相当する。両者の比較から明らかな通り、
領域GU1’の方が領域GU1よりも面積が大きくな
る。つまり、アンダードライブ走行時には増速結合状態
でトルク変換することにより、電力への変換を介して伝
達される動力が増大する。一般に電力と機械的な動力と
の変換には損失が生じる。従って、電力への変換を介し
て伝達される動力が増大すれば、トルク変換時に生じる
損失が増大する。
【0102】本実施例のハイブリッド車両は、アンダー
ドライブ走行時には直結状態でトルク変換を行う。従っ
て、常に増速状態でトルク変換を行う場合(図16中の
点Pe3に相当)に対し、高い効率で車両を運転するこ
とができる。なお、アンダードライブ走行時にはエンジ
ン150の動力を減速してプラネタリギヤ120に伝達
するものとしてもよい。例えば、エンジン150の動力
を図16中の点Pe4に相当する回転数まで減速してプ
ラネタリギヤ120に伝達するものとすれば、プラネタ
リギヤ120への入力回転数が、駆動軸112の回転状
態Pdに近づく。この結果、トルク変換時に一旦電力に
置換される動力を直結状態よりも更に低減することがで
き、運転効率を更に向上することができる。
【0103】本実施例のハイブリッド車両では、アンダ
ードライブ結合時に直結状態とすることによって、以下
に示す通り、高い動力を出力しやすくなるという利点も
生じる。先に図6で説明した通り、本実施例のハイブリ
ッド車両では差速制限が存在し、車速に応じてエンジン
150の回転数の上限値が定められている。ここで、低
速走行時、例えば、図6中の車速VLで走行している場
合を考える。増速結合状態には、図6中に破線で示した
差速制限に基づき、エンジン150の上限回転数は点P
L2に相当する回転数となる。直結状態では、図6中に
実線で示した差速制限に基づき、エンジン150の上限
回転数は点PL1に相当する回転数となる。図示する通
り、直結状態における上限回転数の方が増速結合状態に
おける上限回転数よりも高い。一般にエンジン150の
出力は回転数が増大するにつれて増大する。従って、上
記差速制限によって上限回転数が制限される結果、増速
結合状態よりも直結状態の方が大きな動力を出力するこ
とができる。本実施例のハイブリッド車両では、図9に
示す通り、高トルクが要求される走行領域において、直
結状態で運転する。このように変速比を切り換えること
によって、要求に応じた動力をエンジン150から出力
することができ、バッテリ194の電力消費を抑えて車
両を運転することができる。
【0104】以上で説明した種々の作用によって、本実
施例のハイブリッド車両は、車両の走行状態に応じて変
速比を切り換えることにより、高い効率での運転を実現
することができる。なお、高い効率での運転を実現する
ためには、例えば、以下に示す方法によって、変速比を
適切に設定する必要がある。
【0105】図17は変速比の設定方法について示す説
明図である。横軸にプラネタリギヤ120の入出力の回
転数差ΔNをとり、縦軸にトルク変換時の運転効率をと
って示した。回転数差ΔNとは、「プラネタリキャリア
123の回転数−リングギヤ124の回転数」である。
回転数差ΔNが正の場合がアンダードライブ側に相当
し、負の場合がオーバードライブ側に相当する。図15
で示した通り、オーバードライブ側では動力の循環が生
じるため、運転効率が低くなる。回転数差ΔNの絶対値
が大きくなるにつれて動力の循環量が増大し、運転効率
が徐々に低くなる。アンダードライブ側では動力の循環
が生じないため、運転効率は比較的高い。しかしなが
ら、回転数差が大きくなるにつれて、一旦電力への置換
を介して伝達される動力が増えるから、トルク変換時の
損失が増大し、運転効率が徐々に低下する。
【0106】変速比は、運転効率と回転数差ΔNとの関
係を踏まえて設定される。まず、車両が実現する目標の
運転効率を設定する。次に、目標運転効率を実現可能な
回転数差ΔNの範囲を設定する。図17に示す通り、回
転数差と運転効率との関係から、目標運転効率を設定す
れば、実現すべき回転数差ΔNの範囲は、ΔN2〜ΔN
3の間と設定することができる。この範囲はハイブリッ
ド車両の構成に応じて相違することはいうまでもない。
【0107】ハイブリッド車両の走行領域において回転
数差ΔNが上述の目標範囲ΔN2〜ΔN3に納まるよう
に変速比を設定すればよい。例えば、ハイブリッド車両
が最大車速で走行している場合に、直結状態でトルク変
換を行う場合の回転数差が図17中のΔN1で表される
ものとする。この回転数差がΔN2になる変速比を求め
れば、増速側の変速比が設定される。アンダードライブ
側も同様にして変速比を設定することができる。アンダ
ードライブ側の走行領域で実現される回転数差がΔN3
よりも小さい場合には、直結状態のみで十分な運転効率
を確保可能となる。
【0108】変速比はこのように運転効率と回転数差Δ
Nとの関係に応じて設定することができる。実施例で
は、増速結合状態と直結状態の2段階で変速比を切り換
える場合を示したが、変速比は、これに限らず種々の設
定が可能である。減速状態と直結状態とで切り換える設
定とすることもできるし、増速、減速、直結の3段階で
切り換えることもできる。また、増速側、減速側に多段
階の変速比で切り換えるものとしてもよい。
【0109】上述のハイブリッド車両では、プラネタリ
ギヤ200を用いた変速機構によって変速比を切り替え
る場合を例示した。実施例では、プラネタリギヤ200
のサンギヤ201にブレーキ220、プラネタリキャリ
ア203にエンジン150、リングギヤ204にプラネ
タリキャリア軸206を結合し、更にプラネタリキャリ
ア203とリングギヤ204とを結合するクラッチ21
0を設けた場合を例示した。プラネタリギヤ200と各
要素の結合は、これに限らず種々の態様を採りうる。
【0110】図18は第1の変形例としてのハイブリッ
ド車両の概略構成を示す説明図である。ここでは、動力
をやりとりする要素についてのみ示した。制御ユニット
や駆動回路等の電気系統は図示を省略した。実施例(図
1)の構成に対し、プラネタリギヤ200への各要素の
結合が相違する。第1の変形例では、サンギヤ201に
エンジン150、プラネタリキャリア203にプラネタ
リキャリア軸206、リングギヤ204にブレーキ22
0を結合する。また、プラネタリキャリア203とサン
ギヤ201とを結合するクラッチ210を設ける。その
他の構成は、実施例と同じである。
【0111】第1の変形例のハイブリッド車両では、ク
ラッチ210をオフ、ブレーキ220をオンにすること
により、実施例と同様、エンジン150を所定の変速比
でプラネタリギヤ120に結合することができる。先に
示した式(1)によれば、「Nc=ρ/(1+ρ)×N
s」なる関係があるから、実現される変速比は、「(1
+ρ)/ρ」となる。従って、第1の変形例のハイブリ
ッド車両では、プラネタリギヤ200の変速比を変える
ことなく、実施例のハイブリッド車両と異なる変速比を
実現することができる。図示を省略するが、プラネタリ
ギヤ200と各要素との結合は、実施例および第1の変
形例に示した例に限らず、種々の組み合わせを採ること
ができる。
【0112】実施例および第1の変形例では、プラネタ
リギヤ200を用いた変速機構をエンジン150とプラ
ネタリギヤ120との間に介在させた場合を例示した。
変速機構は、プラネタリギヤ120の下流側に設けるこ
とも可能である。図19は第2の変形例としてのハイブ
リッド車両の概略構成を示す説明図である。ここでは、
動力をやりとりする要素についてのみ示した。制御ユニ
ットや駆動回路等の電気系統は図示を省略した。実施例
(図1)の構成に対し、プラネタリギヤ200の結合箇
所が相違する。即ち、第2の変形例では、変速機構を構
成するプラネタリギヤ200のプラネタリキャリア20
3を、動力調整装置を構成するプラネタリギヤ120の
リングギヤ124に結合した。また、プラネタリギヤ2
00のリングギヤ204を駆動軸112に結合した。そ
の他の構成は、実施例と同じである。
【0113】第2の変形例のハイブリッド車両は、プラ
ネタリギヤ200を動力調整装置と駆動軸112との間
に介在させた構成に相当する。かかる構成において、変
速比を切り換えると、動力調整装置を構成するプラネタ
リギヤ120のリングギヤ124に結合されたリングギ
ヤ軸125と駆動軸112との間で変速を行うことがで
きる。実施例では、変速することにより、トルク変換に
おけるプラネタリギヤ120の入力回転数を駆動軸11
2の目標回転数との差を低減し、運転効率の向上を実現
した。これに対し、第2の変形例では、変速することに
より、プラネタリギヤ120の出力回転数、即ち、リン
グギヤ軸125の目標回転数をエンジン150の目標回
転数に近づけることにより、運転効率の向上を図ること
ができる。従って、第2の変形例によっても実施例と同
様の効果を得ることができる。
【0114】なお、第2の変形例においても、プラネタ
リギヤ200への各要素の結合状態は、種々の態様を採
りうることは言うまでもない。また、実施例と第2の変
形例を組合せ、プラネタリギヤ120の上流側および下
流側の双方に変速機構を設ける構成を採ることも可能で
ある。
【0115】トルク変換を行う装置の構成も種々の変形
例を適用することができる。上記実施例および変形例で
は、プラネタリギヤ120のサンギヤ121をモータ1
30に結合し、プラネタリキャリア123をエンジン1
50側に結合し、リングギヤ124をモータ140およ
び駆動軸112に結合した。既に説明した通り、かかる
構成では、オーバードライブ走行時に動力の循環が生じ
る。これに対し、モータ140をエンジン150側に結
合するものとしてもよい。かかる構成について第3の変
形例として説明する。
【0116】図20は第3の変形例としてのハイブリッ
ド車両の概略構成を示す説明図である。ここでは、動力
をやりとりする要素についてのみ示した。制御ユニット
や駆動回路等の電気系統は図示を省略した。実施例のハ
イブリッド車両に対し、アシストモータ140の結合先
が相違する。即ち、第3の変形例のハイブリッド車両で
は、動力調整装置を構成するプラネタリギヤ120のプ
ラネタリキャリア123にアシストモータ140を結合
する。プラネタリギヤ120よいも上流側にアシストモ
ータ140を結合することになる。
【0117】かかる構成は、先に図25を用いて説明し
た結合状態に対応する。従って、図26、図27で説明
した通り、アンダードライブ走行時に動力の循環が生じ
る。第3の変形例でも、エンジン150から出力される
動力の回転数を駆動軸112の目標回転数に近づけるよ
うに変速比を制御すれば、運転効率を向上することがで
きる。なお、第3の変形例では、アンダードライブ走行
時に動力の循環が生じるため、プラネタリギヤ120の
入出力回転数がオーバードライブ走行に相当する関係を
維持するように変速比を設定および制御すれば、更に運
転効率の向上を図ることができる。第3の変形例におい
ても、変速機構を構成するプラネタリギヤ200への各
要素の結合状態、およびプラネタリギヤ200の結合箇
所について種々の選択が可能である。
【0118】上述の実施例等では、プラネタリギヤ12
0およびモータ130動力調整装置として用いたトルク
変換装置を適用した場合を例示した。動力調整装置と
は、エンジン150から入力された動力を、電力のやり
とりによって少なくとも回転数の異なる動力に調整して
伝達可能な装置をいう。実施例では、プラネタリギヤ1
20に結合されたモータ130を力行または回生運転し
て、その回転数を制御することによって、エンジン15
0から出力された動力の大きさを変更しつつ、リングギ
ヤ124側に伝達することができる。動力調整装置は、
かかる作用を奏する構成であれば、その他種々の装置を
適用することができる。異なる構成の動力調整装置を適
用した場合を第4の変形例として例示する。
【0119】図21は第4の変形例のハイブリッド車両
の概略構成を示す説明図である。第2の変形例は、プラ
ネタリギヤ120およびモータ130に代えて、クラッ
チモータ230が用いられる点で実施例と相違する。そ
の他の構成は、第1実施例のハイブリッド車両(図1参
照)と同じである。
【0120】クラッチモータ230は、インナロータ2
32とアウタロータ234を備え、両者が相対的に回転
可能な対ロータ電動機である。変速機構を構成するプラ
ネタリギヤ200の出力軸、即ちリングギヤ204に結
合された回転軸は、インナロータ232に結合されてい
る。アウタロータ234は駆動軸112に結合されてい
る。駆動軸112には実施例と同様、アシストモータ1
40が結合されている。
【0121】クラッチモータ230は、対ロータの同期
電動発電機として構成されており、外周面に複数個の永
久磁石を有するインナロータ232と、回転磁界を形成
する三相コイルが巻回されたアウタロータ234とを備
える。アウタロータ234とインナロータ232とは、
共に相対的に回転可能に軸支されている。クラッチモー
タ230はインナロータ232に備えられた永久磁石に
よる磁界とアウタロータ234に備えられた三相コイル
によって形成される磁界との相互作用により両者が相対
的に回転駆動する電動機として動作し、場合によっては
これらの相互作用によりアウタロータ234に巻回され
た三相コイルの両端に起電力を生じさせる発電機として
も動作する。アウタロータ234との電力のやりとり
は、スリップリング118および駆動回路191を介し
て行われる。
【0122】クラッチモータ230はインナロータ23
2とアウタロータ234の双方が回転可能であるため、
これらの一方から入力された動力を他方に伝達すること
ができる。クラッチモータ230を電動機として力行運
転すれば他方の軸に伝達される回転数を増すことができ
る。発電機として回生運転すれば動力の一部を電力の形
で取り出しつつ回転数を低減して動力を伝達することが
できる。また、力行運転も回生運転も行わなければ、動
力が伝達されない状態となる。この状態は機械的なクラ
ッチを解放にした状態に相当する。作用・反作用の原理
から明らかな通り、クラッチモータ230に入力される
トルクと出力されるトルクとは常に等しい。
【0123】かかる構成のハイブリッド車両におけるト
ルク変換について説明する。まず、「インナロータ23
2の回転数>駆動軸112の目標回転数Nd」の場合を
考える。この場合は、クラッチモータ230を回生運転
して、アウタロータ234の回転数が目標回転数Ndに
なるよう、回転数を低減して動力を伝達する。クラッチ
モータ230で伝達されたトルクは駆動軸112の目標
トルクTdよりも低いから、アシストモータ140を力
行してトルクを付加する。アシストモータ140の力行
には、クラッチモータで回生された電力が用いられる。
「インナロータ232の回転数>駆動軸112の目標回
転数Nd」の場合には、上流側に位置するクラッチモー
タ230から下流側に位置するアシストモータ140に
電力が供給されるため、動力の循環は生じない。
【0124】次に、まず、「インナロータ232の回転
数<駆動軸112の目標回転数Nd」の場合を考える。
この場合は、クラッチモータ230を力行運転して、ア
ウタロータ234の回転数が目標回転数Ndになるよ
う、回転数を増大して動力を伝達する。クラッチモータ
230で伝達されたトルクは駆動軸112の目標トルク
Tdよりも高いから、アシストモータ140を回生運転
して負荷をかける。アシストモータ140で得られた電
力は、クラッチモータ230の力行に使用される。「イ
ンナロータ232の回転数<駆動軸112の目標回転数
Nd」の場合には、下流側に位置するアシストモータ1
40から上流側に位置するクラッチモータ230に電力
が供給されるため、動力の循環が生じる。
【0125】以上で説明した通り、第4の変形例のハイ
ブリッド車両によれば、実施例のハイブリッド車両と同
様、エンジン150から出力される動力を種々の回転数
およびトルクからなる動力にトルク変換して駆動軸11
2に出力することができる。トルク変換の過程におい
て、電力への変換を介して伝達される動力が存在する点
も実施例と同様である。また、所定の走行状態において
は、動力の循環が生じる点も同様である。従って、クラ
ッチモータ230の入力回転数と出力回転数の差が近づ
くように走行状態に応じて変速比を制御すれば、実施例
と同様の作用によりハイブリッド車両の運転効率を向上
することができる。
【0126】第4の変形例においても、プラネタリギヤ
120を用いた動力調整装置において説明した変形例と
同様、種々の結合状態を採ることができる。また、動力
調整装置は、実施例および第4の変形例の構成に限ら
ず、電力のやりとりを介して回転数を変更しつつ動力を
伝達可能な種々の構成を適用できる。
【0127】以上で示した実施例等では、プラネタリギ
ヤ200を用いた変速機構を適用した場合を例示した。
かかる変速機構は、比較的簡易かつ小型の機構である利
点がある。但し、本発明はかかる変速機構にのみ限定さ
れるものではなく、種々の変速機構を適用することがで
きる。
【0128】以上、本発明の実施の形態について説明し
たが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるも
のではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内におい
て、更に種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
例えば、本実施例のハイブリッド車両では、エンジンと
してガソリンエンジン150を用いたが、ディーゼルエ
ンジンその他の動力源となる装置を用いることができ
る。また、本実施例では、モータとして全て三相同期モ
ータを適用したが、誘導モータその他の交流モータおよ
び直流モータを用いるものとしてもよい。また、本実施
例では、種々の制御処理をCPUがソフトウェアを実行
することにより実現しているが、かかる制御処理をハー
ド的に実現することもできる。更に、制御ユニット19
0により変速比の切替制御を行う場合を実施の形態とし
て示したが、手動で切り換える態様、または自動での切
り換えと手動での切り換えとを選択可能な態様で構成す
ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例のハイブリッド車両の概略構成を示す
説明図である。
【図2】変速機構の動作について示す説明図である。
【図3】クラッチ210をオフにし、ブレーキ220を
オンにした場合と等価な結合状態を模式的に示す説明図
である。
【図4】クラッチ210をオンにし、ブレーキ220を
オフにした場合と等価な結合状態を模式的に示す説明図
である。
【図5】プラネタリギヤ120の回転状態を示す説明図
である。
【図6】本実施例のハイブリッド車両における差速制限
について示す説明図である。
【図7】「車軸116の回転数Nd<エンジン150の
回転数Ne」の場合におけるトルク変換の様子を示す説
明図である。
【図8】「車軸116の回転数Nd>エンジン150の
回転数Ne」の場合におけるトルク変換の様子を示す説
明図である。
【図9】本実施例のハイブリッド車両における各種走行
モードの使い分けの様子を示す説明図である。
【図10】通常走行時のトルク制御ルーチンのフローチ
ャートである。
【図11】エンジンの運転ポイントと運転効率との関係
について示す説明図である。
【図12】変速比切り換え制御ルーチンのフローチャー
トである。
【図13】直結状態から増速結合状態への切り替えの判
断を示す説明図である。
【図14】増速結合状態から直結状態への切り替えの判
断を示す説明図である。
【図15】オーバードライブ走行時のトルク変換の様子
を示す説明図である。
【図16】アンダードライブ走行時のトルク変換の様子
を示す説明図である。
【図17】変速比の設定方法について示す説明図であ
る。
【図18】第1の変形例としてのハイブリッド車両の概
略構成を示す説明図である。
【図19】第2の変形例としてのハイブリッド車両の概
略構成を示す説明図である。
【図20】第3の変形例としてのハイブリッド車両の概
略構成を示す説明図である。
【図21】第4の変形例のハイブリッド車両の概略構成
を示す説明図である。
【図22】電動機を駆動軸に結合したハイブリッド車両
の概略構成を示す説明図である。
【図23】電動機を駆動軸に結合したハイブリッド車両
において、エンジンの回転数が駆動軸の回転数よりも高
い状態における動力の伝達の様子を示す説明図である。
【図24】電動機を駆動軸に結合したハイブリッド車両
において、エンジンの回転数が駆動軸の回転数よりも低
い状態における動力の伝達の様子を示す説明図である。
【図25】電動機を出力軸に結合したハイブリッド車両
の概略構成を示す説明図である。
【図26】電動機を出力軸に結合したハイブリッド車両
において、エンジンの回転数が駆動軸の回転数よりも高
い状態における動力の伝達の様子を示す説明図である。
【図27】オーバードライブ結合において、エンジンの
回転数が駆動軸の回転数よりも低い状態における動力の
伝達の様子を示す説明図である。
【符号の説明】
112…駆動軸 114…ディファレンシャルギヤ 116R,116L…駆動輪 116…車軸 117…回転数センサ 118…スリップリング 120…プラネタリギヤ 121…サンギヤ 122…プラネタリピニオンギヤ 123…プラネタリキャリア 124…リングギヤ 125…リングギヤ軸 130…モータ 132…ロータ 133…ステータ 140…アシストモータ 142…ロータ 143…ステータ 150…エンジン 152…回転数センサ 156…クランクシャフト 165…アクセルペダルポジションセンサ 190…制御ユニット 191,192…駆動回路 194…バッテリ 200…プラネタリギヤ 201…サンギヤ 202…プラネタリピニオンギヤ 203…プラネタリキャリア 204…リングギヤ 205…リングギヤ軸 210…クラッチ 220…ブレーキ 230…クラッチモータ 232…インナロータ 234…アウタロータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B60L 15/20 H02P 15/00 D H02K 7/10 B60K 9/00 Z H02P 15/00 Fターム(参考) 3D039 AA04 AB26 AC39 3J052 AA11 AA14 GC43 GC44 HA02 LA01 5H115 PA01 PG04 PI16 PI24 PI29 PI30 PU10 PU22 PU24 PU25 PV09 PV23 QA01 QN03 RB08 RB22 RE05 SE04 SE05 SE08 SJ12 TB01 TO21 5H607 BB01 BB02 BB07 BB14 CC03 CC05 CC07 EE02 EE06 EE22 EE33 EE34 FF22 FF24 HH03

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 出力軸を有するエンジンと、動力を出力
    するための駆動軸と、前記出力軸側に結合された第1の
    回転軸と前記駆動軸側に結合された第2の回転軸とを有
    し動力と電力との変換を介して該第1の回転軸の回転数
    およびトルクを変換して該第2の回転軸に出力可能なト
    ルク変換手段とを備えるハイブリッド車両であって、 前記エンジンから出力された動力が前記駆動軸に出力さ
    れるまでの経路中に介在し、所定の変速比で動力を伝達
    する変速機を備えるハイブリッド車両。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のハイブリッド車両であっ
    て、 前記駆動軸の目標動力を、目標回転数および目標トルク
    の組合せで設定する目標動力設定手段と、 前記目標動力に応じ、運転効率を優先して設定された回
    転数およびトルクで前記エンジンを運転するエンジン制
    御手段と、 前記変速機を制御して、前記第1の回転軸の入力回転数
    と第2の回転軸の出力回転数との差が、予め設定された
    所定範囲内となる変速比を実現する変速機制御手段とを
    備えるハイブリッド車両。
  3. 【請求項3】 請求項2記載のハイブリッド車両であっ
    て、 前記変速機は、前記ハイブリッド車両の走行領域におい
    て、前記入力回転数と前記出力回転数との大小関係を、
    少なくとも、該トルク変換手段による変換効率が高い側
    の関係に維持可能な範囲で設定された変速比で動力を伝
    達する機構であり、 前記変速機制御手段は、該変速機を制御して、前記入力
    回転数と出力回転数の大小関係を、前記変換効率が高い
    側の関係に維持する手段であるハイブリッド車両。
  4. 【請求項4】 請求項3記載のハイブリッド車両であっ
    て、 前記トルク変換手段は、 前記第1の回転軸および第2の回転軸に結合され、電力
    のやりとりによって、該第1の回転軸の動力を少なくと
    も回転数の異なる動力に調整して該第2の回転軸に伝達
    する動力調整装置と、 前記第2の回転軸に結合された電動機とを備える手段で
    あり、 前記変換効率が高い側の関係は、前記入力回転数が前記
    出力回転数よりも大きい関係であるハイブリッド車両。
  5. 【請求項5】 請求項3記載のハイブリッド車両であっ
    て、 前記トルク変換手段は、 前記第1の回転軸および第2の回転軸に結合され、電力
    のやりとりによって、前記第1の回転軸の動力を少なく
    とも回転数の異なる動力に調整して第2の回転軸に伝達
    する動力調整装置と、 前記第1の回転軸に結合された電動機とを備える手段で
    あり、 前記変換効率が高い側の関係は、前記入力回転数が前記
    出力回転数よりも小さい関係であるハイブリッド車両。
  6. 【請求項6】 前記変速機が、前記出力軸とトルク変換
    手段との間に設けられた請求項1記載のハイブリッド車
    両。
  7. 【請求項7】 前記変速機が、前記トルク変換手段と前
    記駆動軸との間に設けられた請求項1記載のハイブリッ
    ド車両。
  8. 【請求項8】 請求項1記載のハイブリッド車両であっ
    て、 前記変速機は、 3つの回転軸のうち、2つの回転軸が前記出力軸側およ
    び前記駆動軸側にそれぞれ結合されたプラネタリギヤ
    と、 該プラネタリギヤの残余の回転軸について、選択的に回
    転および制止可能な制止手段と、 前記2つの回転軸同士を選択的に結合および解放可能な
    結合手段とを備える機構であるハイブリッド車両。
  9. 【請求項9】 請求項1記載のハイブリッド車両であっ
    て、 前記トルク変換手段は、 ロータ軸を有する発電機と、 3つの回転軸を有し、該回転軸が前記出力軸、駆動軸、
    およびロータ軸にそれぞれ結合されたプラネタリギヤ
    と、 前記第1の回転軸または第2の回転軸の一方に結合され
    た電動機とを備える手段であるハイブリッド車両。
  10. 【請求項10】 請求項1記載のハイブリッド車両であ
    って、 前記トルク変換手段は、 前記第1の回転軸に結合された第1のロータと、前記第
    2の回転軸に結合された第2のロータとを有する対ロー
    タ電動機と、 前記第1の回転軸または第2の回転軸の一方に結合され
    た電動機とを備える手段であるハイブリッド車両。
  11. 【請求項11】 出力軸を有するエンジンと、動力を出
    力するための駆動軸と、前記出力軸側に結合された第1
    の回転軸と前記駆動軸側に結合された第2の回転軸とを
    有し動力と電力との変換を介して該第1の回転軸の回転
    数およびトルクを変換して該第2の回転軸に出力可能な
    トルク変換手段と、前記エンジンから出力された動力が
    前記駆動軸に出力されるまでの経路中に介在し、所定の
    変速比で動力を伝達する変速機とを備えるハイブリッド
    車両の運転を制御する制御方法であって、(a) 前記
    駆動軸の目標動力を、目標回転数および目標トルクの組
    合せで設定する工程と、(b) 前記目標動力に応じ、
    運転効率を優先して設定された回転数およびトルクで前
    記エンジンを運転する工程と、(c) 前記第1の回転
    軸の入力回転数と第2の回転軸の出力回転数との差が、
    予め設定された所定範囲内となるよう、前記変速機の変
    速比を制御する工程とを備える制御方法。
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