【発明の詳細な説明】
抗イディオタイプ抗体ワクチン
本出願は、1996年3月21日に出願された米国特許出願第08/619,217号の一部継
続出願であり、その内容は参照文献として本明細書に取り込まれる。
本明細書で開示される発明は、NCIグラント第PO1-CA33049の補助を受けてなさ
れた。従って、米国政府は本発明に対してある種の権利を有する。
本出願を通じて、種々の文献が著者と日付で参照されている。これらの参照文
献を全て掲載した文献リストが、本明細書の最後、請求の範囲の直前にアルファ
ベット順で掲載されている。本明細書に記載し、特許権を請求した発明がなされ
た時点における当業者の状況をより完全に記述するために、これらの文献の開示
内容全体を参照文献として本出願に取り込む。
発明の背景
いくつかの理由により、GD3ガングリオシドは、メラノーマの免疫療法のター
ゲットとして注目される。正常組織でのGD3ガングリオシドの発現は選択的であ
り、低濃度で起こる。GD3ガングリオシドは、殆どのメラノーマで多量に発現さ
れ(Hamiltonら、1993)、GD3に対する抗体は、浸潤および転移における初期の
重要なステップであるメラノーマ細胞の表面への付着を阻止し(Chereshら、198
6;Chapmanら、1990)、且つインビトロでメラノーマ細胞の増殖を阻害すること
ができる(Dippoldら、1984)。動物モデルでは、抗GD3モノクローナル抗体(MAb
)R24は、メラノーマ腫瘍の発生を抑制することができ、抗GD3MAb R24を用いて転
移性メラノーマ患者を治療すると腫瘍は著しく縮小する(Vadhan-Rajら、1988;
Caufieldら、1990;Raymondら、1991;Creekmoreら、1992)。しかし、GD3の免
疫原性は弱く、GD3+細胞、精製したGD3、またはGD3抱合体を用いて、GD3に対し
て患者を免疫する試みは不成功に終わっている(Taiら、1985;Livingstonら、1
989)。
1996年6月25日に登録された米国特許第5,529,922号は、抗GD3モノクローナル
抗体R24に対して作成されたBEC2という抗イディオタイプモノクローナル抗体、
およびその製造法を開示しており、その内容は本出願に取り込まれる。
BEC2抗イディオタイプモノクローナル抗体はGD3の内部イメージを保有している
ため、GD3を模倣する。このようなモノクローナル抗体は、価値の高い免疫学的
試薬である。免疫アジュバントなしで皮下にBEC2を投与して患者を免疫したが、
患者の55%が抗BEC2抗体を産生したにすぎず、検出可能な抗GD3抗体を産生した
のは1/20にすぎなかった。
ガングリオシドおよび抗イディオタイプMAbに対する免疫応答を増強するため
に、QS21およびBCGのような強力な免疫アジュバントが用いられてきた(Mittelm
anら、1992)。QS21は南米産のキラヤの樹「キラヤ・サポナリア・モリナ(Quil
laja saponaria Molina)」の樹皮から抽出されたサポニンであり、顕著なアジ
ュバント活性を有する(Kensilら、1991;Wuら、1992;Newmanら、1992;White
ら、1991)。QS21は広く使用されており、アジュバント効果が高く、且つ低毒性
なので、QS21を選択することが最も好ましい。BCGはマイコバクテリウム・ボビ
ス(Mycobacterium boi)の弱毒株であり、ガングリオシド(Livingstonら、1994
)および抗イディオタイプMAb(Mittelmanら、1992)に対する免疫応答を増大させ
るために用いられてきた強力な免疫アジュバントである。
発明の概要
本発明は、有効量のBEC2と名付けられた抗イディオタイプモノクローナル抗体
、有効量の適切なアジュバント、および抗GD3抗体の産生を増強せしめる薬学的
に許容される担体を具備するワクチンを提供する。
本発明は、メラノーマ患者の抗GD3抗体の産生を増強、刺激する方法であって
、有効量のBEC2と名付けられた抗イディオタイプモノクローナル抗体、有効量の
適切なアジュバント、および薬学的に許容される担体を具備するワクチンを患者
に投与することを具備する方法も提供する。
さらに本発明は、メラノーマ患者を治療する方法であって、有効量のBEC2と名
付けられた抗イディオタイプモノクローナル抗体、有効量の適切なアジュバント
、および薬学的に許容される担体を具備するワクチンを患者に投与することを具
備する方法を提供する。
さらに本発明は、メラノーマの再発を防止する方法であって、有効量のBEC2
と名付けられた抗イディオタイプモノクローナル抗体、有効量の適切なアジュバ
ント、および薬学的に許容される担体を具備するワクチンを患者に投与すること
を具備する方法を提供する。
本発明のある実施態様では、本発明は小型細胞(small cell)肺癌患者の生存
率を上昇させるための方法であって、有効量のBEC2と名付けられた抗イディオタ
イプモノクローナル抗体、有効量の適切なアジュバント、および薬学的に許容さ
れる担体を具備するワクチンを患者に投与することを具備する方法を提供する。
図面の簡単な説明
図1:
A.BEC2/BCGで免疫した患者13の抗血清のBEC2(●)およびMPC11(■)に対する
反応性。5回免疫した後に、図に示されているように抗血清を希釈し、実験の部
に記載したようにBEC2およびMPC11に対する結合を試験した。
B.BEC2/BCG(N=14)またはBEC2/QS21(N=6)で免疫した患者の抗血清のBEC2
(黒のバー)またはMPC(白抜きのバー)に対する反応性の平均。BEC2でコートした
プレートに対する吸光度の表示が約0.5になるように希釈して、各血清サンプル
を試験する。エラーバーは、平均値の標準偏差を表している。
C.BEC2/BCGで免疫した患者13から得た、予め吸収させた(pre-absorbed)血清
のBEC2(●)およびMPC11(■)に対する結合。アッセイを行う前に、図1Aに示
されているものと同一の血清(1:100,000に希釈)を専らMPC11をコートしたアガ
ロースビーズに吸収させる。
図2:
A.BEC2/BCGによって患者1に誘導した抗GD3抗体の力価。血清学的なアッセ
イは実験の部に記載したとおりに行った。矢印は、BEC2/BCGによる免疫を示して
いる。この患者では、抗GD3の反応性は、アルカリフォスファターゼを結合した
抗ヒトIgG第二抗体を用いたときだけ検出された。
B.BEC2/BCGによって患者3に誘導した抗GD3抗体の力価。血清学的なアッセ
イは実験の部に記載したとおりに行った。矢印は、BEC2/BCGによる免疫を示す。
この患者では、抗GD3の反応性は、アルカリフォスファターゼを結合した抗ヒトI
gG第二抗体を用いたときだけ検出された。
C.BEC2/BCGによって患者13に誘導した抗GD3抗体の力価。血清学的なアッセ
イは実験の部に記載したとおりに行った。矢印は、BEC2/BCGによる免疫を示す。
抗GD3の反応性は、アルカリフォスファターゼを結合した抗ヒトIgG第二抗体を用
いたときだけ検出された。
図3:BEC2/BCGで免疫した患者の総生存率(カプラン−マイアー曲線;Kaplan-M
eier Curve)。
図4:BEC2/BCGで免疫したSCLC患者の総生存率。(カプラン−マイアー曲線)。
発明の詳細な説明
本発明は、BEC2と名付けられた抗イディオタイプモノクローナル抗体、有効量
の適切なアジュバント、および薬学的に許容される担体を具備するワクチンを提
供する。該ワクチンは、該ワクチンを投与された患者の抗GD3ガングリオシド抗
体の産生を刺激または増強するのに有用である。
本明細書で使用する「BEC2と名付けられた抗イディオタイプモノクローナル抗
体」という用語には、マウスBEC2抗体、マウスBEC2抗体のキメラ抗体、BEC2の一
本鎖抗体、およびこれらの抗体の機能的な断片が含まれる。キメラ抗体は、免疫
グロビン分子の骨格がヒトであり、相補性決定領域(Complement-arity Determi
ning Region)のみがマウスのものであるようなヒト化BEC2抗体であることが好
ましい。さらに、該抗体は一本鎖抗体であり得る。機能的断片は、FabまたはFab
'断片であり得る。BEC2の機能的断片、キメラ抗体、または一本鎖を作成する方
法は当業者に周知である。
ある実施態様では、BEC2の有効量は、約0.5〜25mgの範囲にある。別の実施態
様では、BEC2の有効量は2.5mgである。
別の実施態様では、適切なアジュバントはBCGである。さらなる実施態様ではB
CGは量を減じて投与する。
好適な実施態様では、ワクチンは少なくとも一つの部位に、一定の間隔で投与
される。さらなる実施態様では、ワクチンは一以上の部位に投与される。該投与
は、皮内、皮下、非経口、または静脈内に行い得る。
本発明は、メラノーマ患者中の抗GD3抗体の産生を増強し、刺激する方法で
あって、有効量のBEC2と名付けられた抗イディオタイプモノクローナル抗体、有
効量の適切なアジュバント、および薬学的に許容される担体を具備するワクチン
を患者に投与することを具備する方法も提供する。
さらに本発明は、患者のメラノーマを治療する方法であって、有効量のBEC2と
名付けられた抗イディオタイプモノクローナル抗体、有効量の適切なアジュバン
ト、および薬学的に許容される担体を具備するワクチンを患者に投与することを
具備する方法を提供する。
さらに本発明は、癌の再発を防止する方法であって、有効量のBEC2と名付けら
れた抗イディオタイプモノクローナル抗体、有効量の適切なアジュバント、およ
び薬学的に許容される担体を具備するワクチンをメラノーマ患者に投与すること
を具備する方法を提供する。
本発明のある実施態様では、本発明は、小型細胞肺癌患者の生存率を上昇させ
るための方法であって、有効量のBEC2と名付けられた抗イディオタイプモノクロ
ーナル抗体、有効量の適切なアジュバント、および薬学的に許容される担体を具
備するワクチンを患者に投与することを具備する方法を提供する。
本発明の別の実施態様では、本発明は、小型細胞の肺癌患者の生存率を上昇さ
せるための方法であって、化学療法剤による治療とともに、有効量のBEC2と名付
けられた抗イディオタイプモノクローナル抗体、有効量の適切なアジュバント、
および薬学的に許容される担体を具備するワクチンを患者に投与することを具備
する方法を提供する。
本発明の別の実施態様では、適切なアジュバントはBCGである。
本発明の別の実施態様では、BEC2抗イディオタイプモノクローナル抗体の有効
量は約0.5〜25mgの範囲にある。
本発明の別の実施態様では、BEC2抗イディオタイプモノクローナル抗体の有効
量は約2.5mgである。
本発明においては、異なる有効量のBEC2抗イディオタイプモノクローナル抗体
を使用してもよい。当業者であれば、簡易な滴定実験を行って、効果的な免疫を
行うためには、どの程度の有効量が必要であるかを決定することができる。この
ような滴定実験の例は、0.5〜32mgの異なる量のBEC2抗イディオタイプモノ
クローナル抗体を投与して、血清の変換(seroconversion)を行った後、免疫応
答を調べることである。
本発明の別の実施態様では、アジュバントはBCGであり、BCGの有効量は約107
コロニー形成単位(CFU)である。
本発明では、異なる有効量の適切なアジュバントを使用し得る。当業者であれ
ば、簡易な滴定実験を行って、効果的な免疫を行うためには、どの程度の有効量
が必要であるかを決定することができる。このような滴定実験の例は、異なる量
の適切なアジュバントを投与した後、免疫応答を調べることである。
本発明の別の実験では、2.5mgのBEC2および用量を減らしたBCGを具備するワク
チンを0,2,4,6および10週に投与する。
本発明の別の実施態様では、次のBCGの用量は1/3に減らす。
本発明の別の実施態様では、ワクチンは皮内、皮下または静脈内に投与される
。
薬学的に許容される担体は、当業者に周知である。このような薬学的に許容さ
れる担体は、水溶液または非水溶液、懸濁液、およびエマルジョンであり得る。
非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ
油のような植物油であり、オレイン酸エチルのような投与可能な有機エステルで
ある。水性担体には、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液、生
理的食塩水と緩衝化した溶媒が含まれる。非経口担体には、塩化ナトリウム溶液
、リンゲルのデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リン
ゲルまたは固定油が含まれる。静脈内担体には、液体と栄養補給素、リンゲルの
デキストロースを基礎とした電解質補給素などが含まれる。例えば、抗菌剤、抗
酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどの防腐剤および他の添加物が存在していて
もよい。
本発明は、以下の実験の詳細を参照することによって、さらによく理解される
であろう。しかし、当業者であれば、記載されている具体例は単なる例示であり
、本明細書に記載され、その後の請求の範囲で明記されている本発明を限定する
意図ではないことが容易に理解されるできるであろう。
実験の詳細
第一の実験
物質と方法
患者の選択
逐次的な(sequential)臨床試験において、完全な外科的切除の後、病気に罹
患していないが、再発の危険性が高いメラノーマ患者を2.5mgのBEC2を用いて、B
CGと混合したBEC2(BEC2/BCG)で免役する。原発腫瘍の深さが4mm以上であれば
、ステージIIのAJCCを切除した後、病気に罹患していない患者も適格とする。適
格性に関する他の要件は、WBCとWBC分画の数が正常であること、化学療法、免疫
療法または放射線療法を1ヶ月以内に受けていないこと、過去5年以内に他の悪
性腫瘍の既往歴がないことである。著しい医学的な問題を抱えている患者(例え
ば、NYHAクラスIIIまたはIVの心臓病、抗生物質を要する感染症に罹っている、
または出血が起こっている)、抗ヒスタミン剤、ステロイドまたは非ステロイド
性抗炎症薬を必要とする患者、免疫不全症に罹っている者または脾臓がない者、
中枢神経への転移歴がある者、または妊娠もしくは授乳中の者は除外する。
ワクチン成分
BEC2は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーおよび陰イオン交換
クロマトグラフィーを用いて、セルテク社(Celltech,Ltd;Slough,England)の
無ウイルス、無リポタンパク質細胞培養上清から精製する。SDSポリアクリルア
ミドゲル電気泳動で決定したところによれば、最終産物は>95%純粋である。BE
C2は、単回用量のバイアル中に2.5mg/mLの濃度で無菌のPBSに入れる。
凍結乾燥された状態で、バイアル当たり3.4×108コロニー形成単位(CFU)を
含有するバイアル中に入れられたBCG(TheraCysTM)は、コンノートラボラトリ
ーズ(Connaught Laboratories;Swiftwater,PA)から購入する。投与直前に、B
CGを3.4mLの無菌希釈液に戻して、必要であれば正常な生理的食塩水でさらに希
釈する。ワクチンは、投与直前に適切に希釈した0.1mLのBCGと1mLのBEC2(2.5mg
)を混合することによって調製する。
以前記載したように(Kensilら、1991)、シリカおよび逆相クロマトグラフィ
ーを用いて、ケンブリッジバイオサイエンス社(Cambridge Bioscience,Inc.;Wo
rcester,MA)から供給されるQS21を、キラヤ・サポナリア・モリナの樹脂
からを抽出する。凍結乾燥した粉末として2.1mgのバイアルに入れるが、一旦無
菌PBSに戻すと、4℃では14日間しか保存できない。1mLのBEC2(2.5mg)と100μ
gのQS21を混合することによって、QS21を含有するワクチンを投与直前に調製す
る。QS21の用量は、以前の第I相臨床試験(Livingstonら、1994)に基づいて選
択する。
BEC2/BCG
部位を変えながら、第0,2,4,6および10週に複数の部位にワクチンを皮内投与
する。局所の骨盤内リンパ節(lymph node basin)が正常に保持されている体肢
だけに投与する。抗GD3抗体が生じた患者には、抗GD3抗体の力価がベースライン
に戻った時点で、6回目の免疫を行う。
最初の免疫は、1×107CFUのBCGと混合した2.5mgのBEC2を含有していた。局所
的毒性がグレードIIIである場合、BCGの用量を連続的に1/3ずつ減らしていく(す
なわち、3×106CFU、1×106CFU、3×105CFU、1×105CFU、3×104CFU、1×104CFU
)。PPD陽性の患者(またはPPD陽性の既往歴がある患者)は、BCGの用量を3×106
CFUに減らして開始した。
BEC2/QS21
BEC2/BCGワクチンの場合と同一のスケジュール(0,2,4,6および10週)およびB
EC2用量を用いて、単回皮下投与としてワクチンを投与する。各ワクチンは、2.5
mgのBEC2および100μgのQS21からなる。QS21の用量は減らさない。
血清学的評価
処置前、各免疫化の時点、および各免疫化の二週間後に血清を採集し、-20℃
で保存する。以前記載したように(Chapmanら、1994)ELISAアッセイを用いて、
血清にBEC2抗体および抗GD3抗体が存在しているか検査する。十全且つ再現性の
ある感度を確保するために、各アッセイでは内部標準を用いている。抗BEC2応答
の特異性は、フレームワーク配列を有するアイソタイプが一致したマウスMAb(I
gG2b)であるMPC11に対するIgG応答と抗BEC2IgG応答を比較することによって特
定する(Ngら、1993)。BEC2は結合し得るがMPC11は結合し得ないという基準に
より、Ab3抗体を検出する。BEC2に対する結合が上限に達しないような血清の希
釈率(約0.5の吸光度値を使用する)を用いて、ELISA
によって、BEC2とMPC11の結合の程度を比較する。まず、これを行って、各血清
サンプルの滴定曲線の直線部分に相当する血清希釈率でアッセイが行われている
ことを確認し、次にアッセイを標準化して、処置群のデータが分析できるように
する。MPC11に対する反応性が検出されないようになるまで、MPC11でコートした
アガロースビーズ(Affigel 10,Bio-Rad Laboratories,Hercules,CA)に抗血清
を徹底的に吸収させることによって、選択した患者にAb3抗体が存在しているこ
とを確認する。次に吸収させた血清のBEC2結合をアッセイする。
処置前のサンプルと比較して、処置後の血清サンプルの抗GD3反応性が、少な
くとも二回、再現性をもって、4倍以上増加することが示されれば、患者は抗GD3
抗体を産生したと考える。この厳格な基準は、BCGだけで免疫した患者による我
々の血清学的研究に基づいて、BCGおよび他のアジュバントによって引き起こさ
れ得る一過性の、低レベル、非特異的反応性と混同しないように確立した。抗GD
3応答の特異性をさらに特定する目的で、GD3+同種異系メラノーマ細胞株に対す
る血液吸着アッセイ(hemadsorption assay;Vadhan-Rajら、1988)と免疫薄層ク
ロマトグラフィー(Chapmanら、1994)を併用した。
実験結果
患者の特徴
14人の患者をBEC2/BCGで免疫し、6人の患者をBEC2/QS21で免役する。患者の
特徴は表1に示してある。二つの患者群は比較的似ているが、BEC2/BCGで免疫し
た患者は、BEC2/QS21群に比べて男性が多く、若干高齢である。また、BEC2/BCG
で免疫した患者は、5以上のリンパ節が陽性であるステージIII、またはステージ
IVの疾患を有しているが、BEC2/QS21の患者群には、このように悪い予後の徴候
を示す者はいない。
表1BEC2/BCGまたはBEC2/QS21の何れかで免疫した患者の特徴血清学的応答
両試験とも全ての患者が抗BEC2IgG抗体を産生する(表2)。BEC2/BCGおよびB
EC2/QS21(表2)によって誘導された抗BEC2 IgGの力価の中央値またはレンジに
は有意な差は存在せず、抗BEC2IgGを誘導するために必要な免疫回数にも有意な
差はない(データは示していない)。このことは、BCGとQS21アジュバントがと
もに等しく抗BEC2抗体応答を強力に増強することを示唆している。
表2BEC2/BCGまたはBEC2+QS21で免疫した患者の血清学的応答率
抗BEC2応答の一部がAb3応答であるかどうかを決定するために、高い力価の抗B
EC2 IgGを示す抗血清がMPC11(アイソタイプが一致するマウスMAb(IgG2)であ
り、フレームワークの75%がBEC2のフレームワーク配列と同一である、未公開)
を結合するどうか調べた。BEC2/BCGで免疫された患者の11/14(79%)およびBEC2/
QS21で免疫された患者の5/6(83%)で、BEC2への選択的な結合(高い力価または
高い吸光度表示の何れかを観察することによって示
される)が観察され、大部分の患者で、免疫化によってBEC2特異的なIgG抗体が
誘導されることを示唆している。ある患者のデータ(BEC2/BCGで免疫した患者13
)を図1Aに示す。
各処理群についてBEC2に対する相対的特異性とMPC11に対する相対的特異性を
比較するために、BEC2に対する結合が上限に達しないような血清の希釈率(405n
mで、約0.5の吸光度値を使用する)で、BEC2結合の吸光度値をMPC11結合の値と比
較する。これによりアッセイは標準化され、各血清サンプルの滴定曲線の直線部
分に相当する希釈率で、アッセイが行われることが担保される。図1BはBEC2/BCG
またはBEC2/QS21で免疫した患者のBEC2およびMPC11に対する吸光度の平均値を示
す。両処置群ともに、MPC11に対する平均吸光度はBEC2に対する値よりも低く、
免疫化によってBEC2特異的IgGが生じることが再度示唆される。BEC2に特異的な
抗体(Ab3)の存在を確認するために、選択した血清をMPC11に徹底して吸収させ
てからBEC2に対する結合を試験する。
図1Cは、図1Aで使用したのと同じ血清サンプルを用いた実験の結果を示す。MP
C11に吸収させた後には、抗MPC11の反応性は残存していないが、BEC2に対する反
応性は相当観察され、Ab3抗体の存在を実証している。
BEC2/BCGで免疫した患者の3/14(21%)で、ELISAにより抗GD3抗体が検出され
たが(表2)、BEC2/QS21で免疫した患者では検出可能な抗GD3抗体の産生はみら
れなかった。ヒトIgGに対する二次抗体によって抗GD3抗体が検出されたが、IgM
に対する二次抗体では検出されなかったので、それらはIgGアイソタイプである
と推測される。抗GD3抗体応答の力価は図2に示されており、1:80〜1:640の範囲
にある。
疾病の再発と総生存率
BEC2/BCGで免疫した患者のうち生存者を中央値で2.4年間(2.2-2.9年間)追跡
調査したところ、10/14の患者(71%)が生き残っている。これらの10人の患者
のうち8人は全く再発せず、1人は孤立性の転移を再発して切除され、1人は転
移性の疾患を発症しながら生存している。図3は総生存率がプラトーに達してい
ることを示しているので、生き残った患者の無疾患状態が永続的なものであり得
ることを示唆している。3人の患者のうち2人は抗GD3抗体を産生し(その
うち一人の患者はステージIVの疾患を患っていた)、無疾患の状態を維持してい
る。
BEC2/QS21で免疫した患者を中央値で2年間追跡調査したところ、免疫した6
人の患者のうち3人が無疾患の状態を維持している。
毒性
BEC2/BCGで免疫した全患者で、炎症、潰瘍および滲出などを特徴とするグレー
ドIIIの毒性が免疫部位に見られた。ある患者では、前のワクチン部位を治癒さ
せるために、3回目の免疫化を1ヶ月遅らせなければならなかった。全ての部位
は、傷に対する最小限のケアを行うことで治癒し、BCG障害(BCGosis)の症例は
なかった。8人の患者でグレードIIの発熱がみられ、3人がグレードIIの疲労ま
たは不快感を示し、1人の患者で一過性のグレードIIのグルコース上昇をみた。
グレードIの毒性には、肝機能指標の上昇(6人の患者)、高血糖(3人の患者)
、疲労(3人の患者)、発熱(1人の患者)、および低カルシウム血症が含まれた
。
BEC2/QS21で免疫した全ての患者でも投与部位に炎症が見られたが、程度がグ
レードIIであり、期間も短かった。潰瘍または滲出はなかった。また、2人の患
者がグレードIIの発熱を示した。グレードIの毒性には、疲労(4人の患者)、
高血糖(2人の患者)、好中球減少(2人の患者)、および下痢(1人の患者)が
含まれた。
免疫化は概ね良好に受容され、好ましくない反応のために研究から除外された
患者は全くいない。
HLAクラスIIオリゴタイピング
BEC2は外来抗原として抗原提示細胞に取り込まれ、加工されてペプチドになり
、ヘルパーT細胞エピトープはHLAクラスII分子の提示を受ける。このようにBEC2
は、GD3に対するB細胞の応答に、T細胞による補助を与えるかもしれない。そ
れ故、出願人は、患者のHLAクラスIIタイプを明らかにして、BEC2に対する免疫
応答または総生存率とHLAクラスIIタイプとの間に何らかの関係があるかどうか
を決定することに興味を抱いている。
表3BEC2/BCGで免疫したメラノーマ患者のHLAクラスII遺伝子タイピング BEC2/BCGで免疫した14人の患者中12人に、クラスIIオリゴタイピングを行う(
表3)。残り二人のBEC2/BCG患者からはサンプルが得られない。患者数が少ない
ので、BEC2/QS21患者ではオリゴタイピングは行わない。抗GD3抗体の誘導、抗BE
C2抗体の誘導、または生存とHLAクラスIIの遺伝子型の間には明白な関連はない
。
HLAクラスIIのオリゴタイピングは、物質と方法で記載したように行う。患者
1ではDNAを毛球から抽出する以外は、DNAはPBMCから抽出する。患者2または9
からはDNAは得られない。*血清学的表記は、オリゴタイピングデータから導いた
ものであり、直接決定したものではない。
血清学的に決定された対応するクラスII対立遺伝子の患者内での分布をアメリ
カのコーカサス人種について一般的に公表されている分布(Riegerら)と比較し
た。この参照群(N=232)を用いたのは、12人のメラノーマ患者の群を最もよく
反映していたからである。DR座には明白な相違はないが、メラノーマ患者ではDQ
1の頻度が明白に少なく(43.7%vs.25%)、それに対応してDQ2の頻度(22.9%v
s.33.3%)とDQ7の頻度(16.3%vs.33.3%)は高かった。しかし、サンプル数が
少なかったので、正式な統計学的検査は行っていない。これらのデータは、ある
HLAクラスII対立遺伝子、またはある対立遺伝子の欠損がメラノーマのリスクの
増大に関わっているという仮説と一致する。
実験の考察
これらの臨床試験は、BEC2のみで免疫したメラノーマ患者に対する以前の観察
を拡張する。以前の研究では、BEC2を皮下投与して患者を免疫したが、免疫アジ
ュバントは用いなかったので、55%の患者が抗BEC2抗体を産生したにとどまり、
検出可能な抗GD3抗体を産生した者は1/20にすぎなかった(Chapmanら、1994)。
同じスケジュールにより、BCGまたはQS21アジュバントのうちの何れかを混合し
た同じ用量のBEC2で患者を免疫した本研究では、全ての患者が抗BEC2抗体を産生
し、力価もアジュバントなしで免疫した患者より有意に高かった。この差は統計
学的に有意である(p=0.001、フィッシャーの正確なテスト(Fisher's exact te
st))。さらに、BEC2/BCGで免疫した患者のうち3/14は、抗GD3抗体を産生する
が、BEC2/QS21で免疫した6人の患者は何れも抗GD3
抗体を産生しない。このように、BCGとQS21はともに、抗BEC2抗体の応答を増強
する強力なアジュバントであるが、抗GD3応答はBEC2/BCGを投与された患者のみ
にみられる。
これは、高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA;high molecular weight-mel
anoma associated antigen)を模したMELIMMUNE抗イディオタイプMAbワクチンを
用いた以前の観察とは幾分対照的である。この研究では、抗MELIMMUNE抗体を誘
導するうえで、QS21はBCGに比べて優れていた(Livingstonら、1995)。
GD3のような炭水化物抗原に対する抗体応答は、一般的にはIgMアイソタイプで
あるが、BEC2で免疫した後に検出される抗GD3応答がIgGであることは興味深い。
これは、我々が以前BEC2を用いてウサギを免疫したときの観察(Chapmanら、1991
)と一致しており、GD3を模倣するタンパク質として、BEC2はアイソタイプクラス
のスイッチングに必要なT細胞の補助を与え得る可能性があるという事実による
のかもしれない。
中央値で2.4年間のフォローアップをした後、BEC2/BCGで免疫した10/14(71%
)の患者が生存し、且つ9/14(64%)が疾病に罹患していないということはきわ
めて興味深い観察である。これはステージIIIのメラノーマ患者の一般的な生存
率(Livingstonら、1995)および手術後疾病に罹患しなかったステージIIIの患
者(Balchら、1992)と比べて良好なものであり、フォローアップは比較的短か
ったが、以前の観察(Livingstonら、1995)と過去19ヶ月に再発が全く見られな
かったという事実を合わせると、再発の多くは既に起こったものと推測される。
多くの長期生存者には、BEC2で免疫した後、GD3に対する血清抗体が検出されな
かったことは興味深い。これは抗GD3血清学的アッセイの感度が不十分であるた
めかもしれず、あるいは観察された防御効果には非抗体的な機序が役割を果たし
ているのかもしれない。メラノーマ患者にBCGのみを使用した無作為試験(Drepp
erら、1993)および非無作為試験(Parkinsonら、1992)は、疾病を発症せずに
生存することに対するBCGの効果を実証していないことから、BEC2/BCGの生存に
対する効果にBCGのみが必要であるとは考えにくい。
このようなBEC2/BCG患者の無疾患生存率は、同様の患者群をアジュバント
を用いずにBEC2で免疫した以前の研究の患者に対する観察結果(Brokerら、1986
)と対照的である。この研究では、抗GD3抗体を産生した患者は全く存在せず、
中央値で2.8年間のフォローアップを行った後、わずか33%の患者が生き残った
だけであった。これらの観察から、BEC2の高免疫原性処方物は、患者に抗GD3抗
体を誘導することができ、生存期間の延長に寄与するかもしれないと推測される
。
BEC2/BCGで免疫した患者のHLAクラスIIタイプを決定したが、クラスIIの遺伝
子型とBEC2または無疾患生存に対する血清の応答との間には明白な関連性は見ら
れなかった。以前の報告によれば、健康な対照群(27%)と比べて、メラノーマ
患者にはDQB1*0301(血清学的にはDQ7に相当する)が多く(56%)、進行した病
気のリスクが増大することとDQB1*0301には相関があることが明らかとなってい
る(Chapmanら、1995)。我々の患者でのDQB1*0301の発生率(58%)が同様であ
ることを出願人は見出し、我々の患者におけるDQ7対立遺伝子の頻度がアメリカ
のコーカサス人種について公表されている頻度に比べて高いことにも気付いた。
研究した患者数が少ないので、これらの発見の意義は注意深く解釈されなければ
ならず、慎重にマッチングした対照群とDQB1*0301(DQ7)の発生率が有意に異な
るかどうかはなお不明である。これにも関わらず、本研究は、メラノーマ患者は
DQ7の頻度が高いという観察と合致する二番目の報告であるといえる。 第二の実験
20年以上前に併用療法(combination therapy)が開発されて以来、化学療法
による治療によっては、小型細胞肺癌(SCLC)患者の生存期間は7〜16ヶ月の中
央値から実質的に延びない。
物質と方法
患者の選別
初期療法に対して強い応答を示す患者に対して、第0,2,4,6および10週に2.5mg
のBEC2と2×107CFUのBCGを皮内投与する。III以上の皮膚毒性のために、BCGの用
量は減らす。患者の特徴は、年齢の中央値が63才、KPSの中央値が80%、6人の
患者のうち2人でLDH2が上昇し、6人の患者のうち2人が低ナトリウム血症であ
る(表4)。
8人のSCLC患者のうち、6人の患者で、中央値で36ヶ月(レンジは16〜43ヶ月
)のフォローアップをして応答を評価することが可能である(表4)。
ワクチン成分
BEC2は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーおよび陰イオン交換
クロマトグラフィーを用いて、セルテク社(Slough,England)の無ウイルス、無
リポタンパク質細胞培養上清から精製する。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳
動で決定したところによれば、最終産物は>95%純粋である。BEC2は、単回用量
のバイアル中に2.5mg/mLの濃度で無菌のPBSに入れる。
凍結乾燥された状態で、バイアル当たり3.4×108コロニー形成単位(CFU)を
含有するバイアル中に入れられたBCG(TheraCysTM)は、コンノートラボラトリ
ーズ(Swiftwater,PA)から購入する。投与直前に、BCGを3.4mLの無菌希釈液に
戻して、必要であれば正常な生理的食塩水でさらに希釈する。ワクチンは、投与
直前に適切に希釈した0.1mLのBCGと1mLのBEC2(2.5mg)を混合することによって
調製する。
表4BEC2およびBCGを用いた小型細胞肺癌患者の免疫BEC2/BCG
部位を変えて、第0,2,4,6および10週に、複数部位にワクチンを皮内投与する
。
最初の免疫は、1×107CFUのBCGと混合した2.5mgのBEC2を含有していた。局所
的毒性グレードIIIある場合、BCGの用量を連続的に1/3ずつ減らしていく(すなわ
ち、3×106CFU、1×106CFU、3×105CFU、1×105CFU、3×104CFU、1×104CFU)。P
PD陽性の患者(またはPPD陽性の既往歴がある患者)は、BCGの用量を3×106CFUに
減らして始めた。
実験結果
SCLC患者の疾病の再発と総生存率
BEC2/BCGで免疫したSCLC患者は全て抗BEC2を産生し、1/6が抗GD3抗体を産生し
た。生存期間の中央値は得られなかったが、36ヶ月は超えるであろう。
生存率を比較するために、少なくとも6回の化学療法および/または放射線療
法後に顕著な腫瘍反応を示した34人の患者を参照群とした。参照群とBEC2/BCGを
与えた患者の問には、予後徴候の特徴には何ら差はなかった。参照群とBEC2/BCG
を与えた患者の生存期間の中央値は、16.2ヶ月(95%Cl;14-21ヶ月)である。対
数ランク試験(log-rank test)を用いて、カプランーマイアー曲線の有意な差
を実証した(p=0.019)。36ヶ月における参照群の生存率は18%(95%
Cl;8-35%)であったのに対し、BEC2/BCGを投与された患者では67%(95%Cl;26
-92%)であった(図4)。BEC2/BCGで免疫した患者の生存期間の中央値は長く
、36ヶ月生存率もきわめて良好であった。
第三の実験
初期療法後にBEC2とBCGで免疫した小型細胞肺癌(SCLC)患者15人の長期の生存
化学療法によるSCLC患者の生存率は、20年前と実質的には変わっていない。初
期療法に対して顕著な応答を示したSCLC患者が、SCLC腫瘍に存在するGD3ガング
リオシドに対して免役され得るか評価を行った。患者に対して、第0,2,4,6およ
び10週に2.5mgのBEC2(GD3を模倣し、抗GD3抗体を誘導し得る抗イディオタイプ
マウスモノクローナル抗体(Ab))を投与した。アジュバントとしてBCG(2×107C
FU)を添加した。参加した15人の患者のうち14/15の患者で、皮膚毒性3+であっ
たので、用量を減らした。3はSCLCが進行したため免疫化を完了できなかった。
全員について、応答を評価した。フォローアップの中央値は16ヶ月である(レン
ジは、10〜55ヶ月)。患者の特徴は、年齢の中央値が61才;KPSの中央値が80%;
男性が8人;ステージは、広範囲(ED;extensive)が8人、限局(LD;limited)
が7人;LDHの上昇5人;低ナトリウム血症3人である。全員抗BEC2抗体を産生
し、1人が抗GD3抗体を産生した。生存期間の中央値は20.5ヶ月である。生存期
間を比較するために、最も最近完了した我々のSCLC試験に参加した104人の患者
のうち、少なくとも6回の化学療法・放射線治療を行った後に顕著な腫瘍応答を
有する31人の患者を参照群とした。この群とBEC2+BCGを与えた患者の間には、予
後徴候の特徴に有意な差はなかった。参照群の生存期間の中央値は17.9ヶ月であ
る。16ヶ月の時点における、BEC2患者の予想総生存率(os;overall survival)
は75.8%(95%CI;43.9%〜92.6%)であったのに対して、参照群では51.6%(3
7.1%〜71.4%)であった。EDの予想総生存率は16ヶ月で56.3%であり、LDでは2
0ヶ月で75%である。対数ランク試験を用いると、カプラン−メーラー生存曲線
に有意な差があることが実証された(p=0.03)。BEC2+BCGで免疫した患者は長期
間の生存を示し、これらの有望な生存結果によって、無作為試験が可能となる。
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(72)発明者 ホートン、アラン・エヌ
アメリカ合衆国、ニューヨーク州 10021、
ニューヨーク、イースト・シックスティフ
ォース・ストリート 402、アパートメン
ト 7シー