【発明の詳細な説明】
組換えDNA由来ヌクレオキャプシドタンパク質を用いる
ウイルストランスフェクタントの作製
発明の背景
インフルエンザウイルスについての逆遺伝学の発展は、ビリオン遺伝子産物の
直接的な操作、および天然には見出されない全く新しい組換えウイルスの作製を
可能にした(例えば、Enamiら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:3802-380
5;Castrucciら(1992)J.Virol.,66:4647-4653;Liら(1992)J.Virol.,66:3
99-404;Liuら(1993)Virol.,194:403-407;Subbaraoら(1993)J.Vlrol.,67:
7223-7228;およびZurcherら(1994)J.Virol.,68:75748-5754を参照のこと)
。一般に、組換えインフルエンザウイルスの産生は、ビリオンリボ核タンパク質
(RNP)コアからの精製タンパク質と合成RNA転写産物との組合せ、次いでヘルパー
ウイルスで予め感染された細胞へのトランスフェクションを必要とする(Enamiら
(1991)J.Virol.65:2711-2713)。
精製RNPコアは、代表的には、ウイルス核タンパク質(NP)に加えて、RNAポリメ
ラーゼタンパク質(例えば、PB1、PB2、およびPA)を含む(例えば、Ishihamaら
(1988)CRC Crit.Rev.Biochem,23:27-76を参照のこと)。ビリオンからのRN
P複合タンパク質の精製は、一部にはその複雑な構造のために、複数の勾配分画
を必要とする最も煩雑な手順の局面の1つである(Enamiら、前出)。以前のウイ
ルストランスフェクション法もまた複雑であった。なぜなら、ウイルストランス
フェクションを達成するためには、ウイルス核タンパク質に加えてウイルスRNA
ポリメラーゼが必要であると考えられていたからである(例えば、米国特許第5,
166,057号を参照のこと)。核タンパク質(NP)に加えてのウイルスRNAポリメラー
ゼの供給は、精巧なクローニング系または時間を要し、面倒な単離および精製手
順を必要とした(例えば、Kimuraら(1992)J.Virol.,1321-1328を参照のこと
)。
発明の要旨
本発明は、精製RNP複合体または精製ウイルスRNAポリメラーゼの必要性を除去
する、ウイルストランスフェクタントを産生する方法を提供する。従って、本発
明の方法は、ウイルストランスフェクタントの調製を劇的に単純化する。
ウイルス核タンパク質(NP)および核酸転写産物(例えば、RNA)のみを含むウ
イルスRNP複合体が、単純ヘルペスウイルスと共に培養された場合に、ウイルス
(例えば、インフルエンザ)の複製を媒介するに十分であることは、本発明の驚
くべき発見であった。
従って、1つの実施態様において、本発明は、ウイルストランスフェクタント
(事前に選択されたリボ核酸を保有するウイルス)を調製する方法を提供する。
この方法は、以下の工程を含む:i)リボ核酸(核酸転写産物)をウイルスの単離
された核タンパク質(NP)と組合わせて、合成リボ核タンパク質複合体(RNP)を形
成させる工程;ii)合成リボ核タンパク質複合体で宿主細胞をトランスフェクト
する工程;およびiii)ウイルスの複製が可能な条件下で宿主細胞を維持(培養)
する工程。宿主細胞におけるRNP複合体からのウイルスの複製は、目的のウイル
スを補完し得る宿主細胞(例えば、組換え操作されてウイルスRNAポリメラーゼ
を発現する宿主細胞)を提供すること、またはより好ましくはヘルパーウイルス
で感染された宿主細胞を提供することによって達成される。宿主細胞は、合成リ
ボ核タンパク質複合体(RNP)でのトランスフェクションの前、間、または後に、
ヘルパーウイルスで感染され得る。好ましいヘルパーウイルスは、弱毒化生ワク
チン親株(例えば、A/Leningrad/57、またはA/Ann Arbor6/60)、または研究室
に適応された野生型ウイルス(例えば、A/PR/8/34、もしくはA/WSN/33)を含む
。
単離されたウイルス核タンパク質(NP)は、好ましくは、他のウイルスタンパク
質から単離され、詳細には基本的にウイルスRNAポリメラーゼタンパク質を含ま
ない。好ましくは、単離されたウイルス核タンパク質は組換え発現される。より
好ましくは真核生物発現系(例えば、バキュロウイルスベクターにおけるSP19細
胞のような昆虫系)において組換え発現される。好ましいウイルス核タンパク質
は、インフルエンザ、パラインフルエンザ、または麻疹ウイルス由来のNPを含む
。インフルエンザ(例えば、A、B、またはC型)NPがより好ましく、そしてA
型
インフルエンザNPが最も好ましい。
宿主細胞は、ウイルストランスフェクタントを培養することが可能である任意
の細胞であり得る。特に好ましい細胞は真核生物細胞であり、雌鳥卵または腎臓
細胞(例えば、MDCK細胞)が最も好ましい。トランスフェクトされるべき目的の
ウイルスは、代表的には核タンパク質複合体(RNP)または等価な構造を含むRNAウ
イルスを含む。特に好ましいウイルスは、オルソミクソウイルス属を含み、より
好ましくは、インフルエンザ、およびパラミクソウイルス(例えばパラインフル
エンザおよび麻疹)を含む。インフルエンザが最も好ましい。
特に好ましい実施態様において、目的のウイルスはインフルエンザウイルスで
あり、核タンパク質はウイルスRNAポリメラーゼを実質的に含まない組換え発現
されたインフルエンザ核タンパク質である。そして宿主細胞は、インフルエンザ
ヘルパーウイルスで感染された卵または腎臓細胞である。
単離されたNPタンパク質は、RNAと組み合わされた場合に、実質的にリボヌク
レアーゼからRNAを保護し、そしてRNAを宿主細胞の核へ導く。従って、別の実施
態様において、本発明はリボ核酸(例えば、RNA転写産物)を宿主細胞の核へ導
入する方法を提供する。この方法は、以下の工程を含む:i)リボ核酸とウイルス
の単離された核タンパク質(NP)とを組み合わせて、合成リボ核タンパク質複合体
(RNP)を形成させる工程;およびii)合成リボ核タンパク質複合体で宿主細胞をト
ランスフェクトする工程。この方法は、さらに宿主細胞をヘルパーウイルスで感
染させる工程を含み得る。上記の任意のウイルス核タンパク質(NP)、および本明
細書中で議論される任意のRNA転写産物、宿主細胞、およびトランスフェクショ
ン法が適切である。
なお別の実施態様において、本発明は、リボ核酸(例えば、RNA転写産物)と
組み合わされ、それにより宿主細胞におけるウイルス複製を媒介し得る合成リボ
核タンパク質複合体を形成する単離されたウイルス核タンパク質を含む、トラン
スフェクション組成物を提供する。上記および本明細書における任意のNPおよび
RNA転写産物が適切である。
本発明の方法は、トランスフェクタント宿主細胞(すなわち、異種核酸を発現
する)またはトランスジェニックウイルス(ウイルストランスフェクタント)を
産生するために使用され得る。従って、別の実施態様において、本発明は、合成
リボ核タンパク質複合体(RNP)でトランスフェクトされた宿主細胞、または産生
された(由来する)ウイルスを提供する。ここで、RNPは、リボ核酸(例えば、R
NA転写産物)と組み合わされた単離されたウイルス核タンパク質(NP)である。上
記および本明細書における任意のウイルス、宿主細胞、NP、およびRNPが適切で
ある。1つの実施態様において、RNA転写産物は、ウイルスによって提示される
ヒト病原体(例えば、gp120またはそのサブ配列)の抗原性決定基を発現する。
ウイルスは、死(感染または複製し得ない)または生弱毒化ウイルスであり得る
。
最後に、本発明はまた、上記の方法の実施のためのキットを提供する。詳細に
は、キットは事前に選択されたRNA転写産物を含む宿主細胞の調製のため、また
はウイルス転写産物の調製のために適切である。このキットは、合成リボ核タン
パク質複合体(RNP)を含む容器を含む。ここで、RNPは、リボ核酸(例えば、RNA
転写産物)と組み合わされた単離されたウイルス核タンパク質(NP)である。キッ
トはさらに、以下の1つ以上を含み得る:本明細書中の上記および下記の方法を
教示する説明書、緩衝液、宿主細胞、培養培地、ヘルパーウイルスなど。定義
本明細書中で使用される用語「目的のウイルス」は、核酸転写産物が中へ挿入
されるウイルスをいうことが意図される。従って、目的のウイルスは、目的のウ
イルスの複製を促進するように作用するヘルパーウイルスと区別される。
「ヘルパーウイルス」とは、欠損ウイルスの複製のために必要である機能を提
供するウイルスをいう。本発明において、ヘルパーウイルスは、合成リボ核タン
パク質複合体(例えば、核酸転写産物と組み合わされたNP)由来の目的のウイル
スの複製のために必要である機能を提供する。用語ヘルパーウイルスはまた単に
、目的のウイルスの複製に必要であるヘルパーウイルスの成分の組み合わせをい
い得る。
本明細書中で使用される用語「合成リボ核タンパク質複合体」または「合成RN
P」とは、複合体中への組み込みの前にその関連する核酸ポリメラーゼタンパク
質から単離された核タンパク質(NP)を含むリボ核タンパク質複合体をいう。RNP
複合体は、一般に、RNA、核タンパク質(NP)、およびウイルスRNAポリメラーゼタ
ンパク質の会合をいうために使用されることが認識される。しかし、本明細書中
で使用されるRNP複合体は、単に、核酸転写産物および核タンパク質(NP)の会合
をいい、これは、宿主細胞のRNPでのトランスフェクションの前、その間、また
はその後のいずれかにおいて、NP/RNA RNPとウイルスRNAポリメラーゼタンパク
質(例えば、ヘルパーウイルスにより供給される)との組み合わせが、目的のウ
イルスの複製を媒介し得るRNPを提供することを認識する。
RNP複合体の文脈において使用される場合、用語「複合体」は、特定の構造的
関係を意味するとは意図されず、単に目的のウイルスの複製を可能にする会合に
おけるRNP成分(特に、NPおよびRNA)の存在を示す。
細胞に関して使用される場合、用語「組換え」は、細胞が、核酸を複製もしく
は発現するか、またはその起源が細胞に対して外因性である核酸によりコードさ
れるペプチドもしくはタンパク質を発現することを示す。組換え細胞は、ネイテ
ィブの(非組換えの)形態の細胞内において見出されない遺伝子を発現し得る。
組換え細胞はまた、ネイティブの形態の細胞において見出される遺伝子(この遺
伝子は、人為的手段により、例えば、異種プロモーターの制御下で、細胞に再導
入される)を発現し得る。
核酸転写産物(即ち、cRNA)に関して使用される場合、用語「異種」は、非ネ
イティブの状態にある核酸を示す。異種核酸は、ネイティブの核酸の改変(例え
ば、欠失、変異、挿入を含む)であり得るか、または天然で生じている状態にお
いて見出されない核酸配列を含み得るか、もしくはそれにより置換され得る。従
って、異種核酸を含むウイルスは、そのウイルス以外の供給源由来の核酸、また
は同一ウイルス由来の核酸(ここで、核酸は、(例えば、故意に改変された後に
)ウイルスに再導入される)を含む。
用語「ウイルストランスフェクタント」または「トランスジェニックウイルス
」とは、異種核酸を含むウイルスをいう。
特定の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈における用語「サブ配列」は、
特定の核酸もしくはポリペプチドと等しいかまたはそれよりも小さい核酸もしく
はポリペプチドの領域をいう。
用語「核酸」または「核酸転写産物」とは、一本鎖形態または二本鎖形態のい
ずれかにおけるデオキシリボヌクレオチドポリマーまたはリボヌクレオチドポリ
マーをいい、そして他で限定されない限り、天然に存在するヌクレオチドと同様
の様式で機能し得る天然のヌクレオチドの既知のアナログを包含する。核酸中の
塩基は、核酸の機能に干渉しない限り、ホスホジエステル結合以外の連結により
結合され得る。従って、例えば、核酸は、構成塩基がホスホジエステル連結より
もペプチド結合により結合されたペプチド核酸であり得る。特に、用語「核酸転
写産物」または「RNA転写産物」は、ウイルス内に導入される異種RNAをいうため
に、本明細書中で使用される。
タンパク質(例えば、ウイルス核タンパク質(NP))をいう場合、句「実質的に
精製された」または「単離された」は、他の細胞成分またはウイルス成分(タン
パク質は通常、これらと共に存在する)を実質的に有さない化学的組成物を意味
する。これは、乾燥状態または水溶液のいずれかであり得るが、好ましくは、均
質な状態にある。純度および均一性は、代表的には、ポリアクリルアミドゲル電
気泳動または高速液体クロマトグラフィーのような分析化学技術を使用して決定
される。調製物中に存在する優勢種のタンパク質が、単離されるか、または実質
的に精製される。一般的に、実質的に精製されたか、または単離されたタンパク
質は、調製物中に存在する全ての巨大分子種の80%より多くを含む。好ましくは
、タンパク質は、存在する全ての巨大分子種の90%より多くを示すように精製さ
れる。より好ましくは、タンパク質は、95%を超えるまで精製され、そして最も
好ましくは、タンパク質は、本質的に均一まで精製される。ここで、他の巨大分
子種は、従来の技術によって本質的に検出されない。
句「組換えタンパク質」または「組換え的に産生されたタンパク質」とは、タ
ンパク質を発現し得るDNAの内因性のコピーを有さない細胞を使用して産生され
るペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をいう。細胞は、適切な核酸配列
の導入により遺伝的に変化されているので、タンパク質を産生する。
本明細書中で使用される用語「インフルエンザウイルス」とは、Orthomyxovir
idae科のメンバーをいい、そしてこれには、インフルエンザA型、B型、および
C型のウイルス、ならびにダニ媒介Orthomyxovirusesが挙げられるが、これらに
限定されない。パラインフルエンザウイルスおよびはしかは、Paramyxoviridae
のメンバーである。しかし、はしかは、時々、麻疹ウイルスとしていわれる。
核タンパク質(NP)は、ウイルス中に見出される核酸(例えば、RNA)に密接に
会合して天然で見出されるタンパク質である。例えば、インフルエンザにおいて
、核タンパク質は、RNAと会合してらせん構造である核キャプシドを形成する。
従って、核タンパク質は、真核生物のヒストンタンパク質に類似する。インフル
エンザ核タンパク質は、型特異性抗原であり、そして3つの抗原形態のうち1つ
で存在する;これらの異なる形態は、ヒトインフルエンザウイルスのA型、B型
、およびC型への分類のための基準を提供する。
本発明の合成リボ核タンパク質複合体「由来の」ウイルスとは、本発明の合成
リボ核タンパク質複合体から複製されたウイルス、または本発明の合成リボ核タ
ンパク質複合体から複製されたウイルスの子孫のウイルスをいう。同様に、合成
リボ核タンパク質複合体を含むウイルストランスフェクタントベクターでトラン
スフェクトされた宿主細胞とは、そのようにトランスフェクトされた宿主細胞、
または本発明の合成RNP由来ウイルスのウイルスRNPもしくは由来するウイルス自
体のいずれかをなお含むこのような宿主細胞の子孫をいう。
タンパク質を記載する場合、「保存的置換」とは、タンパク質活性(例えば、
核タンパク質活性)を実質的に変化しないタンパク質のアミノ酸組成の変更をい
う。従って、特定のアミノ酸配列の「保存的に改変された変異」とは、タンパク
質活性に重要でないこれらのアミノ酸のアミノ酸置換、またはなお重要なアミノ
酸の置換が活性を実質的に変化しないような類似の特性(例えば、酸性、塩基性
、陽性または陰性の電荷、極性または非極性など)を有する他のアミノ酸でのア
ミノ酸の置換をいう。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当
該分野において周知である。以下の6つの群は、それぞれ、互いに保存的置換と
なるアミノ酸置換を含む:
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);およ
び
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
Creighton(1984)Proteins W.H.Freeman and Companyもまた参照のこと。さらに
、コードされる配列における単一のアミノ酸または少量のパーセントのアミノ酸
を変化、付加、または欠失する、個々の置換、欠失、または付加もまた、「保存
的に改変された変異」である。
詳細な説明
本発明は、異種の核酸配列またはサブ配列を含むウイルス;ウイルストランス
フェクタントを産生する新しい方法を提供する。ウイルストランスフェクタント
(特に、インフルエンザウイルストランスフェクタント)の代表的な産生は、ビ
リオンリボ核タンパク質(RNP)コア由来の精製されたタンパク質と合成RNA転写産
物との組み合わせ、それに続くヘルパーウイルスで以前に感染させた細胞へのト
ランスフェクションを含む(Enamiら、(1991)J.Virol.65:2711-2713)。これら
の精製されたタンパク質には、代表的に、リボ核タンパク質複合体(RNP)の成分
を含む。
リボ核タンパク質複合体は、RNA、核タンパク質(NP)、およびウイルスRNAポ
リメラーゼタンパク質(例えば、PA、PB1、PB2)を含む分子の異種会合体である
。RNPの複合体構造、およびタンパク質とRNA成分との間の密接な会合に起因して
、部分的に、ビリオンからのRNP複合体タンパク質の精製は、複数の勾配の画分
を必要とするウイルストランスフェクション手順の最も大きな労働力を有する局
面の1つを示す(Enamiら、前出)。相当な労力を必要とすることに加えて、こ
れまでのウイルストランスフェクション方法はまた複雑でもあった。なぜなら、
効果的なウイルストランスフェクションのために、ウイルス核タンパク質に加え
てウイルスRNAポリメラーゼが必要であると考えらていたからである。ウイルスR
NAポリメラーゼの供給は、核タンパク質(NP)に加えて、精巧なクローニング系
を必要とするか、または時間がかかり、そして面倒な単離および精製手順を必要
とした(例えば、Kimuraら(1992)J.Virol.,1321-1328を参照)。
従って、核酸(例えば、RNA)との核タンパク質複合体の形成のために、ウイ
ルス核タンパク質(NP)のみで十分であること、およびヘルパーウイルスまたは
同等の複製機構を用いるこの核タンパク質複合体が、宿主細胞中でのウイルス複
製を達成するために十分であることは、本発明の驚くべき発見であった。従って
、本発明は、リボ核タンパク質複合体(RNP)の精製のために必要とされる大き
な労力を必要とする工程を排除する。その代わりに、核酸転写産物が予め精製さ
れた(例えば、組換え発現された)核タンパク質と単純に組み合わされ得、次い
で、宿主細胞にトランスフェクトされて目的のウイルスが核酸転写産物を取り込
みながら複製することが達成され得る。精製された核タンパク質または核タンパ
ク質/RNA複合体は、ストック試薬として提供され得、それにより、ウイルスト
ランスフェクタントの日常的および迅速な作製を可能にする。
ウイルストランスフェクタントの調製に必要とされる労力の劇的な減少に加え
て、精製されたRNP複合体タンパク質の必要性の排除は、ビリオンから精製され
たRNPタンパク質中に存在し得るウイルス遺伝子の導入の可能性を排除する。こ
のことは、故意に導入されたものを除いて野生型遺伝子が存在しないので、トラ
ンスフェクタントの表現型(例えば、弱毒化されたインフルエンザ)の維持を容
易にする。I.ウイルストランスフェクション
上記のように、本発明は、ウイルストランスフェクタント(異種核酸を含むウ
イルス)を調製する方法を提供する。一般に、本発明の方法は、合成核タンパク
質複合体(RNP)を形成するために、核酸転写産物と単離されたウイルス核タン
パク質(NP)とを組合せる工程を包含する。次いで、複合体が、ヘルパーウイル
スまたは同等の複製機構と組み合わされて、ウイルス複製を媒介しそれによって
核酸転写産物のコピーを含む各ビリオンの多重度を生じる宿主細胞中にトランス
フェクトされる。
ヘルパーウイルスまたは同等の複製機構がウイルス複製に必要な全てのタンパ
ク質成分を供給し得ること、および目的のウイルスの必須タンパク質成分がウイ
ルス核タンパク質(NP)のみであることが、本発明の驚くべき発見であった。以
前は、他のビリオンタンパク質(特に、RNA特異的RNAポリメラーゼ(例えば、PA
、PB1,PB2)を形成するもの)が、首尾よいウイルス複製に必要とされると考え
られた(例えば、来国特許第5,166,057号を参照)。
トランスフェクトしたウイルス由来のRNPポリメラーゼタンパク質の必要性の
排除は、非常に簡易化された、トランスフェクトしたウイルスの産生手段を提供
する。一般に、この方法は、以下の工程を包含する:
i)合成リボ核タンパク質複合体(RNP)を形成するために、核酸転写
産物(例えば、RNA)と単離されたウイルスの核タンパク質(NP)とを組み合わ
せる工程;
ii)合成リボ核タンパク質複合体で宿主細胞をトランスフェクトする工
程;および
iii)ウイルスの複製を可能にする条件下で上記の宿主細胞を保持する
工程。
当然、好ましい目的の(トランスフェクタント)ウイルスは、その複製が、少
なくとも一部核タンパク質(NP)によって媒介されるウイルスである。このよう
なウイルスは、当業者に周知であり、そして例えば、インフルエンザウイルスの
ようなオルソミクソウイルス、およびパラインフルエンザウイルス、麻疹ウイル
スなどのようなパラミクソウイルスを含むミクソウイルスのメンバーを含む。他
の適切なウイルスとしては、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス)が挙げ
られる。特に好ましい実施態様において、目的のウイルスは、インフルエンザウ
イルス(例えば、A、B,またはC型インフルエンザウイルス)である。
上記のように、合成核タンパク質複合体は、それが、ヘルパーウイルスと組み
合わせて、ウイルス複製を媒介する宿主細胞をトランスフェクトするために使用
される。ウイルス培養物が標準的な条件下で維持され、そしてウイルストランス
フェクタントを含有するそれら宿主細胞が、当該分野で標準的な方法に従って選
択され、そして単離される。
この方法の種々の工程が、以下に詳細に記載される。II .合成核タンパク質複合体の調製
上記のように、本発明の方法は、合成核タンパク質複合体の調製を含む。本明
細書中で使用される、合成核タンパク質複合体は、核酸とウイルスNPタンパク質
との組合せおよび会合体をいう。好ましい実施態様において、合成核タンパク質
複合体は、リボ核酸(例えば、RNA転写産物)と、インフルエンザ、パラインフ
ルエンザ、麻疹、または狂犬病から選択されるNPタンパク質との(最も好ましく
は、インフルエンザNPとの)会合体を含む。特に好ましい合成リボ核タンパク質
複合体は、目的のウイルスの核酸ポリメラーゼとは会合せず、そしてそれを含ま
ない。核タンパク質、核酸転写産物、および合成核タンパク質複合体の調製が、
以下に記載される。
A)ウイルス核タンパク質の調製
ウイルス核タンパク質(NP)は当業者に周知である。例えば、インフルエンザ
ウイルスにおいて、核タンパク質はウイルスRNAとに密接に会合したタンパク質
である。RNAとNPとは互いに会合して、らせん状構造であるヌクレオキャプシド
を形成する。核タンパク質(NP)は約60kDaの分子量を有し、そして各ウイルス
粒子に約1000個の分子が存在する。インフルエンザNPは、型特異的抗原であり、
そして3つの抗原の形態の1つで生じる。これらの異なる形態は、A、B,およ
びC型へのヒトインフルエンザウイルスの分類の基準を提供する。
インフルエンザNPに類似のタンパク質が、他のウイルスにおいて公知である。
従って、例えば、パラインフルエンザ、ラブドウイルス、モルビリウイルスなど
が、インフルエンザNPに類似のタンパク質を含む(例えば、Fields Virology,
第2版(1990)Raven Press,N.Y.)。
本発明のウイルス核タンパク質は、それらの天然の構造及び配列の核タンパク
質を含む。しかし、本発明の核タンパク質はまた、それらの活性に有害な影響を
与えず、そして実際、トランスフェクションの安定性または効率、ウイルス複製
速度、伝染力などを含むがこれらに限定されない種々の特性を改善し得る、種々
の様式で改変されたNPを含む。好ましい改変は、先に定義された保存的置換を含
む。いくつかの改変は、核タンパク質のクローニング、発現、または精製を容易
にするように行われ得る。このような改変体は当業者に周知であり、そして例え
ば、開始部位を提供するためのアミノ末端へのメチオニン付加、または適切に配
置された制限部位または終止コドンを作製するためにいずれかの末端へのさらな
るアミノ酸の配置を含む。1つの好ましい改変は、タンパク質の精製を容易にす
るためのカルボキシル末端ポリヒスチジン(例えば、His6)の付加である(例え
ば、Ni-NTAカラムを使用する)。
別の改変もまた行われ得る。従って、例えば、アミノ酸置換が、核酸転写産物
との会合を改善するための、ウイルスパッケージングを改善するため、またはウ
イルスの複製速度または生存性を増大させるためなどに、行われ得る。あるいは
、NP分子の必須ではない領域が、短縮され得るか、または完全に排除され得る。
従って、それ自体が分子の活性に関連しない分子の領域が存在する場合、それら
は排除され得るか、または分子の活性成分間の正確な空間的な関係を維持するた
めに単に供給されるより短いフラグメントと置換され得る。
ウイルス核タンパク質は十分に特徴づけられており、そして全アミノ酸および
対応する核酸配列が公知である(例えば、Coxら(1993)Bull.World.Health.
Org.,61:143-152およびRota(1989)Nucl.Acids Res.,17:3595を参照)。単
離した核タンパク質(NP)を調製する方法もまた当業者に周知であり、そしてウ
イルス培養物からの単離、新規の化学合成、および組換え発現を含む。
ウイルス核タンパク質を精製する手段は当業者に公知である(例えば、米国特
許第5,316,910号およびWO 092/16619号を参照)。好ましい実施態様において、
核タンパク質は他のウイルスタンパク質(特に、ウイルスRNA特異的RNAポリメラ
ーゼ(例えばPB2、PB1、PAなど)に関連するかまたはこれらを含む他のウイルス
タンパク質)から精製される。
あるいは、当業者に公知のアミノ酸配列情報を使用して、ウイルス核タンパク
質(NP)が広範な種類の周知の方法において化学的に新規合成され得る。代表的
には、比較的短いサイズのポリペプチドは、従来の技術(例えば、Merrifield(
1963)J.Am.Chem.Soc.85:2149-2154;BaranyおよびMerrifield,Solid-Phase
Peptide Synthesis;The Peptides,3-284頁:Analysis,Synthesis,Biology,第
2巻:Special Methods in Peptide Synthesis,パートA;およびStewartら、(198
4)Solid Phase Peptide Synthesis,第2版,Pierce Chem.Co.,Rockford,
IIIを参照のこと)に従って、溶液中または固体支持体上で合成される。種々の
自動化合成機および配列決定装置が市販されており、そして公知のプロトコルに
従って使用され得る。例えば、SterwartおよびYoung(1984)Solid Phase Pepti
de Synthesis,第2版,Pierce Chemical Co.を参照のこと。より長いサイズのペ
プチドは、連続的なセグメントのカルボキシル末端およびアミノ末端の間の縮合
反応において結合されるより短いセグメントの化学的合成により調製され、それ
により、単一の連続的なポリペプチドを生じ得る。
好ましい実施態様において、ウイルス核タンパク質は、ポリペプチドをコード
する核酸の組換え発現により産生され、続いて標準的な技術を使用して精製され
る。このような組換え方法は、代表的には、ウイルスNPをコードする核酸配列を
提供する工程、配列をベクターへ挿入する工程、ベクターを宿主細胞へトランス
フェクトする工程、核タンパク質が発現される条件下で宿主細胞を培養する工程
、および発現核タンパク質を単離および精製する工程を包含する。
上に示されるように、ウイルス核タンパク質(特にインフルエンザ、パライン
フルエンザ、および麻疹核タンパク質)のアミノ酸配列および従って核酸配列が
公知である。これらのペプチドをコードする核酸配列は、標準的な組換え技術ま
たは合成技術を使用して作製され得る。化学的技術を使用して、本発明のウイル
ス核タンパク質をコードするDNAは、例えば、Narangらのホスホトリエステル法
(1979)Meth.Enzymol.68:90-99;Brownらのホスホジエステル法(1979)Meth
.Enzymol.68:109-151;Beaucageらのジエチルホスホルアミダイト法(1981)Te
tra.Lett.,22:1859-1862;および米国特許第4,458,066号の固体支持体法のよう
な法を含む任意の適切な方法により調製され得る。
ウイルス核タンパク質(NP)をコードする核酸が与えられれば、当業者は、(
同じまたは機能的に等価な核タンパク質をコードする核酸のような)同じまたは
機能的に等価な核酸を含む種々のクローンを構築し得る。これらの目標を達成す
るためのクローニング方法、および核酸配列を確認するための配列決定方法は、
当該分野で周知である。適切なクローニングおよび配列決定技術の例、ならびに
多くのクローニング作業により当業者が行うために十分な指示は、Bergerおよび
Kimmel,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology第15
2巻Academic Press,Inc.,San Diego,CA(Berger);Sambrookら、(1989)Molecul
ar Cloning-A Laboratory Manual(第2版)1-3巻;およびCurrent Protocols in
Molecular Biology,F.M.Ausubelら編、Current Protocols,Greene Publish
ing Associates,Inc.とJohn Wiley&Sons,Inc.との共同ベンチャー(1994年補
遺)(Ausubel)に見出される。生物学的試薬および実験装置の製造者からの製
品情報もまた、既知の生物学的方法において有用な情報を提供する。このような
製造者は、Sigma Chemical Company(Saint Louis,Missouri,USA)、R&Dsyst
ems(Minneapolis,Minnesota,USA)、Pharmacia LKB Biothchnology(Piscataway
,New Jersey,USA)、Clontech Laboratories,Inc.(Palo Alto,California,
USA),Chem Genes Corp.,Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin,U
SA)、Glen Research,Inc.,Gibco BRL Life Technologies,Inc.(Gaithersber
g,Maryland,USA),Fluka Chemica-Biochemika Analytika(Fluka Chemie AG,B
uchs,Switzerland)、Invitrogen(San Diego,California USA)、およびApplied
Biosystems(Foster City,California,USA)、ならびに他の当業者に公知の商
業的な供給源を含む。
核タンパク質をコードする核酸配列は、E.coliおよび他の細菌宿主を含む種
々の宿主細胞において発現され得る。しかし、好ましい実施態様において、本発
明において使用される核タンパク質は、例えば、酵母、COS、CHO、およびHeLa細
胞株およびミエローマ細胞株、および昆虫細胞株のような種々の真核生物細胞に
おいて発現される。
組換えNP遺伝子は、各宿主について、適切な発現コントロール配列に作動可能
に連結される。E.coliについて、これは、T7、trp、またはλプロモーターのよ
うなプロモーター、リボソーム結合部位、および好ましくは転写終結シグナルを
含む。真核生物細胞について、このコントロール配列は、プロモーターおよび好
ましくは免疫グロブリン遺伝子由来のエンハンサー、SV40、サイトメガロウイル
スなど、ならびにポリアデニル化配列を含み、そしてスプライシングドナーおよ
びアクセプター配列を含み得る。
本発明のウイルス核タンパク質をコードするプラスミドは、E.coliについて
は塩化カルシウム形質転換、そして真核生物細胞についてはカルシウムリン酸処
置またはエレクトロポレーションのような周知の方法により、選択された宿主細
胞に移入され得る。プラスミドによって形質転換された細胞は、プラスミドに含
まれる遺伝子(例えば、amp、gpt、neoおよびhyg遺伝子)により与えられる抗生
物質に対する耐性により選択され得る。
一旦発現されると、組換え核タンパク質は、硫酸アンモニウム沈澱、アフィニ
ティカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む当該分野の標
準的な手順(一般に、R.Scopes,Protein Purification,Springer-Verlag,N
.Y.(1982),Deutscher,Methods in Enzymology第182巻:Guide to Protein Pu
rification.,Academic Press,Inc.N.Y.(1990)を参照のこと)に従って精製
され得る。少なくとも約90〜95%の均一性の実質的に純粋な組成物が好適であり
、そして98〜99%またはそれ以上の均一性が最も好適である。所望されるように
部分的にまたは均一にまで一旦精製されると、核タンパク質は、次いで本発明の
方法に従って合成核タンパク質複合体を形成するために使用され得る。
当業者は、化学的合成、生物学的発現、または精製の後、核タンパク質がそれ
らの天然の立体構造とは実質的に異なる立体構造を所有し得ることを認識し得る
。この場合、ポリペプチドを変性させるまたは還元すること、次いでポリペプチ
ドを好ましい立体構造に再度折り畳ませるようにすることが必要であり得る。タ
ンパク質を還元および変性する方法、ならびに再折り畳みを誘導する方法は当業
者に周知である。(Debinskiら、J.Biol.Chem.,268:14065-14070(1993);Krei
tmanおよびPastan,Bioconjug.Chem.,4:581-585(1993);およびBuchnerら、Ana
l.Biochem.,205:263-270(1992)を参照のこと)。例えば、Debinskiらは、グア
ニジン-DTEにおける封入体タンパク質の変性および還元を記載する。次いでタン
パク質は酸化型グルタチオンおよびL-アルギニンを含む酸化還元緩衝液中で再折
り畳みされる。
当業者は、組換え核タンパク質の生物学的活性を消失することなくそれらに対
して修飾がなされ得ることを認識し得る。いくつかの修飾は、核タンパク質のク
ローニング、発現、または精製を促進するために行われ得る。このような修飾は
当業者に周知であり、そして例えば、開始部位を提供するためにアミノ末端に付
加されるメチオニン、または都合よく位置する制限酵素部位または終結コドンを
作製するためにどちらかの末端に位置する付加的なアミノ酸を含む。
特に好ましい実施態様において、本発明で使用されるNPは、米国特許第5,316,
910号およびWO 092/16619に記載されるように、バキュロウイルスベクターを使
用するSpodoptera frugiperda(S19)昆虫細胞において発現される。
B)核酸転写産物の調製
実質的にすべての核酸が、本発明中で使用するための核酸転写産物として使用
され得る。代表的には、天然に存在しない(例えば異種)遺伝子産物を発現する
、上昇したレベルで内因性遺伝子産物を発現する、ウイルスの感染力もしくは病
原性を変化させる、または検出可能はマーカーとして働くもしくはコードする核
酸転写産物が選択される。核酸転写産物は適切な宿主細胞系で発現し得、または
異種遺伝子産物を発現、パッケージング、および/または提示する組換えウイル
スを提供し得る。遺伝子産物は、種々の関連物において(例えばワクチン処方物
において)有利に使用され得る。異種遺伝子が転写産物によりコードされる場合
、遺伝子は、ウイルスに対するその効果、宿主細胞に対するその効果について、
または単にウイルス/宿主細胞が、特に遺伝子産物の発現のための適切な、簡便
な、または最適な系を提供するという事実について選択され得る。
MyxoviridaeのゲノムのRNAはネガティブセンス(mRNAのセンスと相補的)であ
り、従って核酸転写産物が遺伝子産物を発現する場合、それはネガティブセンス
の産物でもある。RNA転写産物は、当業者に周知の任意の多数の方法により調製
され得る。好ましい実施態様において、RNAテンプレートは、DNA特異的RNAポリ
メラーゼ(例えば、バクテリオファージT7、T3、またはSp6ポリメラーゼ)を使
用して、適切なDNA配列の転写により調製される。インフルエンザを使用して、
例えば、インフルエンザのウイルスポリメラーゼ結合部位/プロモーターの相補
物(すなわちインフルエンザのゲノムセグメントの3'末端の相補体)により、AT
Gの隣接する上流の異種遺伝子配列のメッセージセンスをコードするために構築
する。ウイルス粒子をレスキューするために、異種コード配列を、インフルエン
ザのゲノムセグメントの3'末端および5'末端の両方の相補体で隣接させることが
好適であり得る。DNA特異的RNAポリメラーゼを用いた転写の後、生じるRNAテン
プレートは、異種遺伝子配列のネガティブ極性をコードし、そしてウイルスRNA
特異的RNAポリメラーゼが転写産物を認識することを可能にするvRNA末端配列を
含む。RNA転写産物(テンプレート)の生産のための詳細なプロトコルは、米国
特許第5,166,057号に提供されている。
しかし、核酸転写産物は、発現されるタンパク質をコードする必要はない。例
えば、核酸転写産物は、それ自身が宿主細胞DNAまたはmRNAを標的化するアンチ
センス分子として作用し得る。さらに、核酸転写産物は、欠失、挿入、点変異、
およびフレームシフト変異を導入することによって、ウイルス自体の機能(例え
ば、感染性、病原性など)を変化させ得る。これらの種々の機能は、下記のセク
ションVIにおいて考察される。
主として、RNA転写産物は、ウイルスゲノムの任意の成分の全てまたは一部を
置換し得る。従って、例えば、インフルエンザウイルスの場合には、主として、
8つの遺伝子セグメントの内のいずれか1つ、または8つのセグメントの内のい
ずれか1つの一部を外来配列に置換し得る。しかし、この方程式の必要な部分は
、欠損ウイルス(正常なウイルス遺伝子産物の欠失または変化のために欠損して
いる)を増殖する能力である。
この問題を回避するための多数の可能なアプローチが存在する。手短には、こ
れらのアプローチは、欠損遺伝子を発現するヘルパーウイルスを伴う培養、欠損
遺伝子を補完するように操作された細胞株における培養、欠損ウイルスの増殖を
可能にする天然宿主範囲系の選択、および野生型ウイルスとの共培養(米国特許
5,166,057を参照)を包含するがこれらに限定されず、そして下記のセクションI
Vにより詳細に考察される。
例えば、インフルエンザの場合には、核酸転写産物は、PB2、PB1、PA、NP、HA
、NA、NS、またはM遺伝子セグメントの全てまたは一部を置換し得る。PB2、PB1
、PAおよびNPタンパク質をコードする遺伝子セグメントは、5'末端に24〜45の非
翻訳ヌクレオチド、および3'末端に22〜57の非翻訳ヌクレオチドを有する単一の
オープンリーディングフレームを含む。任意のこれらのセグメントへの外来遺伝
子配列の挿入は、外来遺伝子でのウイルスコード領域の完全な置換または部分的
な置換のいずれかによって達成され得る。
別々の遺伝子セグメントによりコードされるHAおよびNAタンパク質は、ウイル
スの主要な表面糖タンパク質である。従って、これらのタンパク質は、感染後の
体液性免疫応答に対する主要な標的である。それらは、全てのインフルエンザウ
イルスタンパク質の内で最も広範に研究されている。なぜならば、これらのタン
パク質の両方の三次元構造が解析されているからである。
H3赤血球凝集素の三次元構造は、多数の変種についての配列情報とともに、HA
分子における抗原性部位の解明を可能にしている(Websterら、1983,pp 127-16
0:Genetics Of Influenza Virus,P.PaleseおよびD.W.Kingsbury編、Springer-V
erlag,Vienna)。これらの部位は、HAの表面上の4つの分散した重複しない領
域に分類される。これらの領域は、高度に可変性であり、そして挿入および欠損
を受容し得ることも示されている。それ故、外来タンパク質の一部でのHA内のこ
れらの部位(例えば、部位A;A/HK/68HAのアミノ酸122〜147)の置換は、この
外来タンパク質に対する強力な体液性応答を提供し得る。異なるアプローチにお
いて、外来ペプチド配列は、任意のウイルス配列を欠失させることなく抗原性部
位内に挿入され得る。このような構築物の発現産物は、外来抗原に対するワクチ
ンにおいて有用であり得、そしてワクチン接種された宿主における組換えウイル
スの増殖の問題を回避し得る。抗原性部位にのみ置換を有するインタクトなHA分
子は、HA機能を可能にし、従って、生存可能なウイルスの構築を可能にし得る。
それ故、このウイルスは、さらなるヘルパー機能を必要とすることなく増殖され
得る。もちろん、このウイルスは、他の方法で弱毒化されて、偶発的な漏出のい
かなる危険性も回避されるべきである。
他のハイブリッド構築物は、細胞表面でタンパク質を発現するように作製され
るか、またはそれらが細胞から放出されることを可能にするように作製され得る
。表面糖タンパク質のように、HAは、細胞表面への輸送に必要なアミノ末端切断
可能シグナル配列、および膜係留に必要なカルボキシ末端配列を有する。細胞表
面にインタクトな外来タンパク質を発現させるために、これらのHAシグナルを用
いてハイブリッドタンパク質を作製することが必要であり得る。あるいは、輸送
シグナルのみが存在し、そして膜係留ドメインが存在しない場合、タンパク質は
細胞の外に排出され得る。
NAタンパク質の場合、三次元構造が公知であるが、抗原性部位は、分子表面に
拡散し、そして重複している。このことは、配列がNA分子内に挿入され、そして
それがNAの外側表面に発現されれば、免疫原性であるようであることを示す。さ
らに、表面糖タンパク質として、NAは、HAタンパク質とは2つの著しい差異を示
す。第1に、NAは切断可能なシグナル配列を含まない;実際、アミノ末端シグナ
ル配列は、膜係留ドメインとして作用する。この結果、およびNAとHAとの間の第
2の差異は、NAが膜においてアミノ末端で方向付けられ、一方、HAが膜において
カルボキシ末端で方向付けられることである。それ故、いくつかの場合において
、ハイブリッドNAタンパク質を構築することは有利であり得る。なぜなら、融合
タンパク質は、HA融合ハイブリッドの反対に方向付けられるからである。
NSおよびMセグメントの独特の特性は、インフルエンザウイルスの他の6つの
遺伝子セグメントと比較した場合、これらのセグメントが少なくとも2つのタン
パク質産物をコードすることである。各々の場合において、一方のタンパク質は
、ゲノムRNAと同一直線上にあるmRNAによってコードされ、他方のタンパク質は
、スプライシングされたメッセージによってコードされる。しかし、スプライシ
ングドナー部位は、同一直線転写産物のコード領域内に生じるので、NS1およびN
S2タンパク質は同一の10アミノ酸のアミノ末端を有し、一方、M1およびM2は同一
の14アミノ酸のアミノ末端を有する。
この独特の構造の結果として、組換えウイルスは、一方の遺伝子産物をセグメ
ント内で置換し、一方、第2の産物をインタクトなままにしておくように構築さ
れ得る。例えば、外来遺伝子産物でのNS2またはM2コード領域の大部分の置換(
スプライシングアクセプタ−部位を保存する)は、インタクトなNS1またはM1タ
ンパク質、およびNS2またはM2の代わりの融合タンパク質の発現を生じ得る。あ
るいは、外来遺伝子は、NS1またはNS2発現のどちらにも影響することなく、NS遺
伝子セグメント内に挿入され得る。
ほとんどのNS遺伝子は、NS1およびNS2リーディングフレームの実質的な重複を
含むが、特定の天然のNS遺伝子はこれを含まない。例えば、A/Ty/Or/71由来のNS
遺伝子セグメントにおいて、NS1タンパク質は、NS遺伝子セグメントのヌクレオ
チド位置409で終止し、一方、NS2に対するスプライシングアクセプター部位は、
ヌクレオチド位置528である(Nortonら、(1987),Virology 156:204-213)。そ
れ故、外来遺伝子は、いずれのタンパク質にも影響することなく、NS1コード領
域の終止コドンとNS2コード領域のスプライシングアクセプター部位との間に配
置され得る。タンパク質生成を保証するために、外来遺伝子配列の5'末端にスプ
ライシングアクセプター部位を含ませることが必要であり得る(これは、NS1の
アミノ末端を含むハイブリッドタンパク質をコードする)。この方法において、
組換えウイルスは、欠損であるべきではなく、そしてヘルパー機能を必要とする
ことなく、増殖し得るべきである。
上記の種々のウイルス遺伝子の全てもしくは一部への挿入および/またはこれ
らの置換は、当業者に周知の標準的な方法に従って行われ得る。好ましい実施態
様において、本発明のRNA転写産物は、PCR-指向変異誘発の使用によって調製さ
れ得る。ウイルスのトランスフェクタントの産生に適切であるRNA転写産物の構
築の詳細な方法は、米国特許5,166,057に見出され得る。C)合成核タンパク質複合体を形成するための核タンパク質(NP)と転写産物の 組み合わせ
RNA転写産物は、トランスフェクションの前、間、または後に核タンパク質(N
P)と組み合わされ得る。しかし、核タンパク質は、トランスフェクションの間
にリボヌクレアーゼからのいくらかの保護をRNA転写産物に付与するので、好ま
しい実施態様においては、NPは、トランスフェクションの前に、RNA転写産物と
組み合わされる。
RNA転写産物および核タンパク質は、単純な混合によって、トランスフェクシ
ョンの前に組み合わされ得る。同様に、転写産物および核タンパク質は、トラン
スフェクション混合物中に両方の成分を配置することによって、トランスフェク
ションの間に組み合わされ得る。これらの成分は、一方の成分に続いて他方の成
分を単純にトランスフェクトし、そして宿主細胞内にある場合にこれらの成分が
組み合わされることを可能にすることによって、トランスフェクション後に組み
合わされ得る。
しかし、特に好ましい実施態様において、合成核タンパク質複合体の形成は、
核酸転写産物の調製で生じる。従って、例えば、核タンパク質は、反応混合物(
例えば、増幅、逆転写など)に添加され得る。この反応混合物中で核酸転写産物
が産生され、それによってNPと転写産物との迅速な会合が促進される。NPがRNA
分解の防止を援助するので、このアプローチは安定性を改善する。
例えば、1つのアプローチにおいて、核酸転写産物は、核タンパク質の存在下
における、所望のRNA転写産物をコードするcDNAクローンからの逆転写によって
産生される。代表的には、cDNAは、正しいヌクレオチドで転写が開始し得るよう
に位置されたプロモーター(例えば、T7 RNAポリメラーゼプロモーター)の後ろ
に配置される。逆転写は、当業者に公知の標準的な方法に従って行われる(例え
ば、Sambrookら、前出、Ausubelら、前出;Van Gelderら、(1990)Proc.Natl.Aca
d.Sci.USA,87:1663-1667;およびEberwineら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:301
0-3014を参照)。このアプローチは実施例1に例示される。III .宿主細胞のトランスフェクション
合成核タンパク質複合体は宿主細胞中にトランスフェクトされ、そこで複合体
は複製することが可能となる。実質的に任意の宿主細胞がこの方法でトランスフ
ェクトされ得る。しかし、好ましい実施態様において、宿主細胞は、特定の目的
のウイルスの感染および培養に適合性である宿主細胞である。従って、例えば、
トランスフェクトされるウイルスがインフルエンザウイルスである場合、好まし
い宿主細胞は、インフルエンザを培養するために一般的に使用される細胞を含む
。そのような細胞は、孵化卵の羊膜の細胞、アカゲザル、ヒヒ、ニワトリ、また
は種々の他の種由来の腎臓組織の組織培養物を含むが、それらに限定されない。
特に好ましい細胞は、例えば、初代ニワトリ腎臓(PCK)細胞、Madin-Darbyイヌ
腎臓(MDCK)細胞、Madin-Darbyウシ腎臓(MDBK)細胞などを含む。
上記のように、1つの実施態様において、本発明の方法は単にウイルストラン
スフェクタントを調製するためではなく、むしろ異種核酸を含む宿主細胞を提供
するために使用される。これに関して、合成核タンパク質複合体は、単に異種核
酸を宿主細胞の核に指向させるために使用され得る。この場合における宿主細胞
は、異種核酸転写産物でトランスフェクトすることが所望される任意の細胞であ
り得る。
合成リボ核タンパク質複合体は、当業者に周知の任意の多数のトランスフェク
ション方法に従って、宿主細胞中にトランスフェクトされ得る。適切なトランス
フェクション方法は、塩化カルシウム形質転換(例えば、E.coliのための)、
および真核生物細胞のためのリン酸カルシウム処理、エレクトロポレーション、
または弾道トランスフェクション(例えば、高速金マイクロスフェア)を含むが
、それらに限定されない。特に好ましい実施態様において、宿主細胞はエレクト
ロポレーションまたはDEAE-デキストランDMSOプロトコル(例えば、Al-Molishら
、(1973)J.Gen.Virol.,18:189-193;およびLopataら、(1984)Nucl.Acids R
es.12:5707-5717を参照のこと)によりトランスフェクトされ、エレクトロポレ
ーションが最も好ましい。IV .ウイルス培養
合成リボ核タンパク質複合体による細胞のトランスフェクション後、細胞は好
ましくは目的のウイルスの複製を可能にする条件下で培養される。当業者は、RN
AおよびNPのみを含むリボ核タンパク質複合体(RNP)が、一般に目的のウイルス
単独を複製するに不十分であり、そしてさらなる「複製機構」が代表的には必要
とされることを理解する。さらに、核酸転写産物が異種核酸を含む場合、ウイル
スはしばしば「欠損」である。なぜなら正常なウイルス遺伝子産物がしばしば失
われるか変化されるからである。
上記のように、多数の可能なアプローチがこの問題を回避するために存在する
。ウイルス(例えば、インフルエンザ)の変異体(トランスフェクタント)は、
「欠損」遺伝予を構成的に発現するように構築された細胞株中で増殖され得る(
例えば、Krystalら、(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:2709-2813を参照の
こと、彼らは、PB2およびNPタンパク質に欠損があるインフルエンザウイルスの
変異体を、ポリメラーゼおよびNPタンパク質を構成的に発現するように構築され
た細胞株において増殖させた)。ウイルスタンパク質を発現するように作製され
たこれらの細胞株は、組換えウイルスにおける欠損を補完し、それによりそれを
増殖させるために使用され得る(例えば、Kimuraら、(1992)J.Gen.Viro
l.,73:1321-1328)。
あるいは、特定の天然の宿主域系が、組換えウイルスを増殖させるために利用
可能であり得る。このアプローチの例は、天然のインフルエンザ単離物CR43-3に
関係する。このウイルスは、初代ニワトリ腎臓細胞(PCK)において継代された
場合には正常に増殖するが、インフルエンザのための天然の宿主であるMadin-Da
rbyイヌ腎臓細胞(MDCK)においては増殖しない(MaassabおよびDeBorde(1983
)Virology,130:342-350)。このウイルスは、12アミノ酸の欠失により引き起
こされた欠損NS1タンパク質をコードする。PCK細胞は、欠損NS1タンパク質を補
完するか、または欠損タンパク質を完全に置換し得るかのいずれかの、いくらか
の活性を含む。
上記のように、目的のウイルスのRNAポリメラーゼを完全に欠く合成リボ核タ
ンパク質複合体(RNP)が、ヘルパーウイルスにより補完される場合に完全に複
製し得ることが、本発明の驚くべき発見および利点であった。本発明はそれによ
り、ウイルス増殖のための精製RNPタンパク質または組換え操作された宿主細胞
の必要性を排除する。
従って、好ましい実施態様において、ウイルストランスフェクタントは、野生
型またはヘルパーウイルスとの同時培養を通して増殖される。これは、単に組換
えウイルスを取り、そして細胞を合成RNPおよび野生型(例えば、ワクチン株)
またはヘルパーウイルスで同時感染することにより行われ得る。野生型またはヘ
ルパーウイルスは、欠損ウイルス遺伝子産物を補完し、そしてヘルパーまたは野
生型ウイルスと組換えウイルスとの両方の増殖を可能にするべきである。
同時培養が野生型ウイルスと共にである場合、これはインフルエンザウイルス
の干渉性欠損粒子の増殖に類似する(Nayakら、(1983):Genetics of Influenza
Viruses,P.PaleseおよびD.W.Kingsbury編、Springer-Verlag,Vienna,255
-279頁)。干渉性欠損ウイルスの場合、増殖されるウイルスの大部分が野生型ウ
イルスではなく欠損粒子であるように、条件が改変され得る。それゆえ、このア
プローチは、組換えウイルスの高力価ストックの生成において有用であり得る。
しかし、これらのストックは必然的にいくらかの野生型ウイルスを含む。
特に好ましい実施態様において、合成RNPはヘルパーウイルスの存在下で培養
される。適切なヘルパーウイルスは当業者に周知であり、そして野生型(例えば
、A/PR8/34もしくはA/WSN/33)または生弱毒化ワクチン株(例えば、A/Leningra
d/57またはA/Ann Arbor/6/60)を含むがそれらに限定されない。
宿主細胞は、当業者に周知の標準的な方法に従って、細胞中への合成リボ核タ
ンパク質複合体のトランスフェクションの前に、それと共に、またはその後にヘ
ルパーウイルスで感染され得る(例えば、Enami M.およびPalese,P.(1991)J.
Virol.,65:2711を参照のこと)。同様に、本発明の方法に従って産生されるト
ランスジェニックウイルスはまた、適切な補完する野生型またはヘルパーウイル
スの存在下で培養され得る。
なおさらに別のアプローチにおいて、8つ全てのインフルエンザウイルスタン
パク質をコードする合成RNPでの宿主細胞の感染は、感染性トランスジェニック
(トランスフェクタント)ウイルス粒子の産生を生じる。この系は、選択系の必
要性を排除する。なぜなら、産生される全ての組換えウイルスが所望の遺伝子型
であるからである。
合成リボ核タンパク質複合体またはウイルストランスフェクタントは、標準的
な培養系(例えば、孵化卵および組織培養を含む)において培養され得る。
A)孵化卵における培養
ウイルス(例えば、インフルエンザ)は、10〜12日孵化卵の羊膜または尿膜接
種により培養され得る。ウイルスは、羊膜腔の液から羊膜の細胞に吸収され、そ
こでそれらは複製し、新たに形成されたウイルスを羊膜液中に放出し戻す。2〜
3日のインキュベーション後、ウイルスは高力価で羊膜液中に存在し得、そして
回収された羊膜液のアリコートをニワトリ、シチメンチョウ、モルモット、また
はヒト赤血球に添加し、そして赤血球凝集を観察することにより検出され得る。
孵化卵におけるウイルス培養のための詳細なプロトコルは当業者に周知であり、
そして標準的な参考文献において見出され得る(例えば、Fields Virology(前
出)を参照のこと)。
B)組織培養
目的のウイルスはまた、標準的な方法に従って、真核生物組織培養物中で培養
され得る。例えば、インフルエンザは、イヌ、アカゲザル、ヒヒ、ニワトリ、ま
たは種々の他の種由来の腎臓の組織培養物において培養され得る。特に好ましい
細胞は、例えば、H292細胞、初代ニワトリ腎臓(PCK)細胞、Madin-Darbyイヌ腎
臓(MDCK)細胞、Madin-Darbyウシ腎臓(MDBK)細胞などを含む。
吸収(トランスフェクション)およびウイルス感染細胞のインキュベーション
の後に、新たに産生されたウイルスは多数の方法で検出され得る。1つのアプロ
ーチにおいて、組織培養物の維持培地中に放出された遊離ウイルスが検出され得
る(例えば、赤血球での赤血球凝集により)。あるいは、ウイルスは感染細胞の
細胞表面から遅く放出されるので、赤血球はこれらの感染細胞に直接接着し(赤
血球吸着)、そして顕微鏡下で検出され得る。組織培養物におけるウイルスの維
持および増殖の方法は、当業者に公知である(例えば、Concepts and Proceedur
es for Laboratory-Based Influenza Surveillance,Dept.Health and Hum.Se
r.,Centers for Disease Control(1982)を参照のこと)。V.トランスフェクタントの選択
ウイルストランスフェクタント(トランスジェニックウイルス)は、当業者に
公知の標準的な方法に従って同定および選択され得る。代表的には、これは、ウ
イルストランスフェクタントについてポジティブの培養細胞(または培養上清)
を同定すること、および細胞または上清からウイルスを含む宿主細胞および/ま
たはウイルス自体を選択的に増殖させることを含む。宿主細胞または上清の同定
は、当業者に周知の手段により、そして代表的には異種RNA(転写産物)または
その産物の存在または非存在の直接的または間接的検出を含む。
直接的検出は、異種RNA(またはそれから転写されるDNA)自体の検出を含む。
これは、異種RNA(もしくはそれから転写されるDNA)またはそのサブ配列に特異
的な核酸アフィニティカラム(それに相補的なプローブを含む)、RNA(もしく
はそれから転写されるDNA)中の特定の標的配列またはサブ配列の増幅(例えば
、PCRを介する)、制限分析などを含むがそれらに限定されない多数の手段によ
り達成され得る。1つの好ましい実施態様において(実施例1により例証される
)、異種RNAは、Klimovら、(1995)J.Virol.Meth.,52:41-49の方法に従って、
PCR
制限分析により検出される。
他の実施態様において、ウイルストランスフェクタント、またはウイルストラ
ンスフェクタントを保有する宿主細胞は、異種核酸により発現されるタンパク質
産物またはタンパク質産物の活性の存在または非存在の検出により同定され得る
。従って、異種核酸は、抗生物質耐性を与える配列を含み得、それにより宿主細
胞の抗生物質耐性によるトランスフェクタントの選択を可能にし得る。あるいは
、異種核酸は、下記のような検出可能マーカーをコードし得る。VI .ウイルストランスフェクションの使用。
本発明の方法に従って作製した合成リボ核タンパク質複合体およびウイルスト
ランスフェクタントを使用して、組換えRNPおよびウイルスでの宿主細胞の同時
トランスフェクションにより、宿主細胞内で異種遺伝子産物を発現し得るか、ま
たはウイルス粒子において異種遺伝子をレスキューし得る。あるいは、異種遺伝
子は、形質転換された宿主細胞においてレスキューされて、ウイルス粒子におけ
る異種遺伝子の補完およびレスキューを可能にし得る。
得られた発現産物および/またはキメラビリオンはまた、ワクチン処方物にお
いて有利に利用され得る。検出可能な標識を発現するウイルストランスフェクタ
ントは、抗ウイルス化合物をスクリーニングするためおよびウイルス生態学を研
究するための効果的なレポーターシステムを提供する。最後に、NPタンパク質が
リボヌクレアーゼ活性に対する保護を与えるので、RNA/NPリボヌクレアーゼ複合
体およびそれらに由来するウイルスは、アンチセンスRNAの送達のための効果的
なシステムを提供する。これらの種々の使用は、以下により完全に議論される。
A)合成RNP複合体を使用する異種遺伝子産物の発現。
上記のように調製した組換えテンプレートは種々の方法において使用され、適
切な宿主細胞において異種遺伝子産物を発現し得るか、または異種遺伝子産物を
発現するキメラウイルスを作製し得る。1つの実施態様において、組換えテンプ
レートは、セクシヨン6(後出)に記載のように精製されたウイルスポリメラー
ゼ複合体と組み合わされて、感染性であるrRNPを生成し得る。あるいは、組換え
テンプレートは、組換えDNA方法を使用して調製されたウイルスポリメラーゼ複
合体と混合され得る(例えば、Kingsburyら、(1987)、Virology 156:396-403
を参照のこと)。このようなrRNPは、適切な宿主細胞をトランスフェクトするた
めに使用する場合、高レベルでの異種遺伝子産物の発現を指向し得る。高レベル
の発現を提供する宿主細胞システムは、ウイルス機能を供給する継続的細胞株(
例えば、インフルエンザで重感染された細胞株、インフルエンザウイルス機能を
補完するために操作された細胞株など)を含む。
B)検出可能な異種配列の使用。
別の実施態様において、異種RNA転写産物は、検出可能な標識として作用し得
るか、または検出可能な標識であるタンパク質を発現し得る。検出可能な標識は
、特定のサンプル中のウイルスの定量、または存在もしくは非存在の検出を可能
にする。検出可能な標識を有するウイルストランスフェクタントは、インビトロ
またはインビボで抗ウイルス剤のスクリーニングのための効果的な指標を提供す
る。例えば、生物または細胞株は、検出可能なマーカーを有するウイルストラン
スフェクタントで感染され、次いで1つ以上の試験化合物で処理される。処理後
の検出可能なマーカーの定量およびコントロールサンプルと試験サンプルとの比
較は、試験された化合物の効力の規準を提供する。
検出可能な標識が、容易に捕捉され得る標識(例えば、核酸アフィニティーカ
ラムで捕捉され得る特定の核酸配列またはポリペプチド配列(例えば、N1-NTAカ
ラムを使用して捕捉され得るHis6のようなポリヒスチジン))である場合、ウイ
ルストランスフェクタントを使用して、抗ウイルス抗体を単離し得る。この実施
態様において、生物は、免疫応答を上昇させることを可能にする条件下でウイル
ストランスフェクタントで抗原投与され得る。ウイルストランスフェクタントの
引き続く捕捉(検出可能な標識の捕捉による)はまた、ウイルスに結合する任意
の抗体を捕捉する。
検出可能な標識もまた使用して、1つ以上のウイルス株(例えば、インフルエ
ンザ)をインビトロまたはインビボでモニター(例えば、検出および/または定
量)し得る。これは、単独でまたは他のウイルスとの組合せで、感染性および/
または特定のウイルスの病原性の迅速な評価を可能にする。これは、宿主上およ
び他のウイルス株上の種々のウイルス株を産生する変異の効果の評価を可能にす
る。検出可能な標識を有するウイルストランスフェクタントの他の使用は、当業
者に公知である。
本発明における使用に適切な検出可能な標識は、(例えば、特定のプローブも
しくは捕捉配列へのハイブリダイゼーション、またはRFLPもしくは他のフィンガ
ープリント技術などを介して)検出可能である任意の核酸配列、または以下を含
むがそれらに限定されない検出可能である任意のポリペプチド配列を含む;酵素
(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、および他の
ELISAにおいて一般に使用される酵素)、および特異的に検出され得るおよび/
または捕捉され得る他のポリペプチド配列(例えば、N1-NTAカラムを使用して捕
捉され得るポリHis)。このような標識を検出する手段は、当業者に周知である
。
C)ワクチン処方物のためのウイルストランスフェクタントの使用。
得られた発現産物および/またはキメラビリオンはウイルス処方物において使
用され得る。この目的のための組換えインフルエンザの使用は、特に魅力的であ
る。なぜなら、インフルエンザは、途方もない株変異性を示し、ワクチン処方物
の莫大なレパートリーの構築が可能だからである。キメラウイルスを構築するた
めの何千ものインフルエンザ変異体から選択する能力は、ワクシニアのような他
のウイルスを使用する場合に遭遇する宿主の耐性という問題を除去する。さらに
、インフルエンザは活発な分泌および細胞傷害性T細胞応答を刺激するので、外
来性エピトープのインフルエンザウイルスバックグラウンドにおける提示はまた
、分泌性免疫および細胞媒介性免疫の誘導を提供し得る。
実質的に任意の異種遺伝子配列が、ワクチンにおける使用のために本発明のキ
メラ(トランスフェクタント)ウイルス内に構築され得る。好ましくは、任意の
種々の病原体に対する防御免疫応答を誘導するエピトープ、または中和抗体と結
合する抗原は、ウイルストランスフェクタントによるかまたはその一部として発
現され得る。例えば、ワクチンにおける使用のための本発明のキメラウイルスへ
構築され得る異種遺伝子配列は、以下を含むが、それらに限定されない:gp120
のようなヒト免疫不全ウイルス(HIV)のエピトープ;B型肝炎ウイルス表面抗
原(HBsAg);ヘルペスウイルスの糖タンパク質(例えば、gD,gE);ポリオウ
イルスのVPI;非ウイルス病原体(例えば、細菌および寄生生物)の抗原決定基
などが挙げられるが少ない。別の実施態様において、イムノグロブリン遺伝子の
すべてまたは一部は発現され得る。例えば、このようなエピトープを模倣する抗
イディオタイプイムノグロブリンの可変領域は、本発明のキメラウイルス内に構
築され得る。
生の組換えウイルスワクチンまたは不活化された組換えウイルスワクチンのい
ずれかが、処方され得る。生ワクチンが好ましい。なぜなら、宿主内の複製が、
天然の感染において生じる刺激と類似の種類および規模の刺激の延長を誘導し、
それゆえ、実質的に長期の免疫を与えるからである。このような生の組換えウイ
ルスワクチン処方物の製造は、細胞培養物またはニワトリ胚の尿膜におけるウイ
ルスの増殖に続く精製を含む、従来の方法を使用して達成され得る。
この点で、ワクチン目的のために遺伝子操作されたインフルエンザウイルス(
ベクター)の使用は、これらの株における弱毒化特性の存在を必要とし得る。ヒ
トにおける使用のための現在の生ウイルスワクチン候補は、寒冷適応させるか、
温度感受性か、または継代されているかのいずれかであり、その結果弱毒化を生
じるいくつかの(6つの)遺伝子をトリウイルスから誘導させる。トランスフェ
クションで使用されるRNA転写産物への適切な変異(例えば、欠失)の導入は、
弱毒化特性を有する新規なウイルスを提供し得る。例えば、温度感受性または寒
冷適応に関連する特定のミスセンス変異は、欠失変異に作製され得る。これらの
変異は、寒冷または温度感受性変異体に関連する点変異よりはより安定であるは
ずであり、そして復帰頻度は極度に低いはずである。
あるいは、「自殺」特性を有するウイルストランスフェクタントが、構築され
得る。このようなウイルスは、宿主内において1回または数回の複製のみを経験
する。例えば、インフルエンザにおいて、HAの切断は、複製の再開を可能にする
ために必要である。それゆえ、HA切断部位における変化は、適切な細胞システム
において複製するがしかしヒト宿主においては複製しないウイルスを生成し得る
。ワクチンとして使用される場合、組換えウイルスは、1回の複製サイクルを経
験
し、そして充分なレベルの免疫応答を誘導するが、ヒト宿主においてさらには進
行せず、疾患を引き起こさない。
1つ以上の必須なインフルエンザウイルス遺伝子を欠く組換えインフルエンザ
ウイルスは、次の回の複製を経験し得ない。このような欠損ウイルスは、例えば
、特定の遺伝子を恒常的に発現する細胞株にこれらの遺伝子を欠く再構築したRN
Pを同時トランスフェクトすることにより生成され得る。必須の遺伝子を欠くウ
イルスは、これらの細胞株において複製されるが、ヒト宿主に投与される場合は
、1回の複製を完了し得ない。このような調製物は、免疫応答を誘導するのに充
分な数の遺伝子を(この頓挫性サイクルにおいて)転写し、そして翻訳し得る。
あるいは、これらの調製物が、不活化(殺傷された)ウイルス、ワクチンとして
作用するように、さらに多量の株が投与され得る。
不活化されたワクチンにおいて、異種遺伝子産物は、遺伝子産物がビリオンに
随伴するようにウイルス成分として発現されることが好ましい。このような調製
物の利点は、これらがネイティブなタンパク質を含み、そして殺傷ウイルスワク
チンの製造において使用されるホルマリンまたは他の薬剤での処理による不活化
を受けないことである。
本発明のこの局面の別の実施態様において、不活化ワクチン処方物は、ウイル
ストランスフェクタントを「殺傷する」従来技術を用いて調製され得る。不活化
ワクチンは、それらの感染性が破壊されているという意味において「死んで」い
る。理想的には、ウイルスの感染性は、その免疫原性に影響することなく破壊さ
れる。不活化ワクチンを調製するために、ウイルストランスフェクタントは細胞
培養物またはニワトリ胚の尿膜において増殖され得、ゾーン遠心分離により精製
され得、ホルムアルデヒドまたはβ-プロピオラクトンにより不活化されて、そ
してプールされ得る。得られたワクチンは、好ましくは、筋肉内接種される。
不活化ウイルスは、免疫応答を増強するために適切なアジュバントとともに処
方され得る。このようなアジュバントは、以下を含み得るがこれらに限定されな
い:ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム);表面活性物質(例えば、リ
ゾレシチン、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン);ペプチド
;油性乳剤;および潜在的に有用なヒトアジュバント(例えば、BCGおよびCor
ynebacterium parvum)。
多くの方法が、上記のワクチン処方物を目的の生物中(例えば、ブタ、ウサギ
、ヤギ、マウス、ラット、ヒトを含む霊長類など)に導入するために用いられ得
る。これらには、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、および鼻腔内経
路が含まれる。それのためにワクチンが設計される病原体の感染の天然の経路を
介して、キメラウイルスワクチン処方物を導入することが好適であり得る。生存
している(live)キメラウイルスワクチン調製物が用いられる場合、インフルエ
ンザウイルスの天然の感染の経路を介して、処方物を導入することが好適であり
得る。インフルエンザウイルスの強力な分泌および細胞性免疫応答を誘導する能
力が有利に使用され得る。例えば、キメラインフルエンザウイルスによる呼吸管
の感染は、特定の疾患を引き起こす因子に対する随伴性防御を伴って、強力な分
泌免疫応答を(例えば、泌尿生殖器系において)誘導し得る。
D)細胞内活性の調節
本発明の方法にしたがって調製されるウイルストランスフェクタントは、宿主
細胞の細胞内活性を調節するために用いられ得る。この調節は、ウイルストラン
スフェクタントにおけるRNA転写産物の活性によって直接、またはウイルストラ
ンスフェクタントにおけるRNA転写産物によりコードされるポリペプチドにより
間接的に達成され得る。
例えば、宿主細胞のゲノムDNAの領域または特定の遺伝子により発現されたmRN
Aに相補的(アンチセンス)であるRNA転写産物が提供され得る。宿主DNAへのRNA
転写産物のハイブリダイゼーションは、標的領域の転写を阻害し得るが、mRNAへ
のハイブリダイゼーションは、そのmRNAの翻訳、そしてそれゆえ、そのmRNAによ
ってコードされるタンパク質の発現をブロックし得る。同様に、転写レギュレー
ター(例えば、プロモーター、開始部位、リプレッサーなど)へのアンチセンス
RNAの結合は、特定の標的遺伝子の転写をアップレギュレートまたはダウンレギ
ュレートし得る。タンパク質発現を調節(例えば、アップレギュレートまたはダ
ウンレギュレート)するためのアンチセンス分子の使用は、当業者に周知である
(例えば、Castanottoら(1994)Adv.Pharmacol.,25:289-317,WO 90/13641
および本明細書中で援用される参考文献を参照のこと)。
従って、1つの実施態様において、本発明は、細胞の核へのアンチセンス分子
の送達のための方法および組成物を提供する。上記のように、ウイルス核タンパ
ク質は、リボヌクレアーゼからのRNA転写産物防御が可能であり、そしてRNA転写
産物を宿主細胞の核へ導く。NPと複合体を形成したアンチセンスRNAを含むリボ
核タンパク質複合体は、アンチセンス分子の送達のための有効なビヒクルを提供
する。同様に、アンチセンスRNAを含むウイルストランスフェクタントはまた、
アンチセンス分子のための高度に有効な送達システムを提供する。
上記のように、発現されたタンパク質によって細胞内活性を調節するRNA転写
産物が選択され得る。発現されたタンパク質は、細胞内シグナル伝達経路の機能
的成分(例えば、エストロゲンレセプター(ER)、jun,fos,Elk,ATF2、チロシ
ンキナーゼ、GTP結合タンパク質(例えば、Ras.Racなど)、シグナル伝達分子
(例えば、JAK、PLC、およびPI3K))であり得、または反対に、シグナル伝達カ
スケードの成分を阻害するタンパク質であり得る。このようなタンパク質は当業
者に周知である(例えば、DarnellおよびBaltimore,(1986)Molecular Cell Biol
ogy,Scientific American Books)。
E)遺伝子治療のためのウイルストランスフェクタントの使用
本発明のウイルストランスフェクタントはまた、遺伝子治療のための適切なベ
クターを提供する。ウイルスは、治療価値のあるタンパク質をコードするRNA転
写産物を含む。さらに、RNA転写産物は、宿主細胞(生物)のゲノムへの目的の
異種遺伝子の組み込みを媒介するセグメントを含み(またはコードし)得る。宿
主ゲノムとの組み込みを媒介するセグメントは、当業者に公知であり、アデノ随
伴ウイルス(AAV)、逆方向末端反復配列(ITR)、およびレトロウイルスLTRを
含むがこれらに限定されない。遺伝子治療のために適切な核酸転写産物の選択お
よび設計は、当業者に周知である(例えば、Freifelder Molecular Biology、第
2版、1987,Jones and Bartlett,Pub.,Bostonを参照のこと)。VII .本発明の実施のためのキット
本発明はさらに、本明細書中に開示される方法の実施のためのキットを提供す
る。好ましい実施態様において、キットは、本発明の方法の実施のために、上記
の単離されたウイルス核タンパク質(NP)を含む容器を含む。キットはさらに、
標識またはウイルストランスフェクタントを作成する方法、および/または上記
の宿主細胞中へリボ核酸を導入する方法を記載する説明書を含む。NPは、単独で
、またはリボ核酸(例えば、RNA転写産物)との複合体で提供され得る。キット
は、1つ以上の以下のエレメントをさらに含み得る:緩衝液、宿主細胞、培養培
地、ヘルパーウイルス、目的のウイルスなど。
実施例
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されるが、限定するために提供
されるのではない。
実施例1
トランスフェクションアッセイを、インフルエンザウイルスA型NPを発現する
組換えバキュロウイルスで感染させた昆虫細胞から精製した核タンパク質(NP)を
用いて行った。結果は、ビリオンポリメラーゼタンパク質が、細胞中にトランス
フェクトさせた人工的RNP複合体にとって不要であることを示す。
核タンパク質(NP)を、インフルエンザA/Ann Arbor/6/60ヌクレオキャプシド
タンパク質を発現する組換えバキュロウイルスで感染させたSF9(Spodoptera)
細胞から精製した(例えば、Rotalら(1990)J.Gen.Virol.,71:1545-1554;R
otaら、米国特許第5,316,910号およびWO 92/16619)。細胞を、再び凍結しそして
0.001M EDTAおよび1M NaClを含有する0.01M Tris-HC1(pH7.4)中に懸濁すること
によって溶解した。リン酸緩衝化生理食塩水(PBS,pH7.3)に対して一晩透析し
た後、溶解物の上清を、製造業者の方法を用いてBio-Rad A-14 Affigelマトリッ
クスに結合させそしてPBS中で平衡化したモノクローナル抗NP IgG(Wallsら(19
86)J.Clin.Microbiol.,23:240-245)のカラムで分画した。結合したタンパ
ク質を、1M MgCl2で溶出し、そして50mM Tris-HC1(pH7.6)、100mM NaCl、10M Mg
Cl2、2mM DTT、50%グリセロールに対して透析することによって濃縮した。
純度をSDS PAGEによって評価した。アリコートをトランスフェクションアッセイ
で用いるまで-70℃で保存した。
トランスフェクションアッセイについて、25A-Iウイルス、A/PR/8/34ウイルス
由来の7つの遺伝子および生存弱毒化した低温適応A/Leningrad/47/57ウイルス
由来のNS遺伝子を有する7/1ts再構築物をヘルパーとして使用した。転写が正し
いヌクレオチド上で開始されるようにするために位置されたT7 RNAポリメラーゼ
プロモーターの後ろに配置され、そしてリョクトウ(mung bean)ヌクレアーゼ
での処理の後に転写産物を放出する(run off)ために下流にBseAI部位を有する
A/PR/8/34ウイルスNS遺伝子のcDNAクローンを、トランスフェクションのためのR
NAの供給源として使用した。転写反応は、5μgの精製バキュロウイルス発現核
タンパク質(NP)の存在下で行われた。得られる合成RNP複合体を、Liら(1995
)Vlrus Res.,37:153-161のエレクトロポレーション法により25A-1再構築ヘル
パーウイルスで1時間前に感染させたMDCK細胞中にトランスフェクトした。
34℃での18時間のインキュベーションの後、培養上清を用いてコンフルエント
MDCK細胞を37℃で2日間感染した後、培養上清を39℃で3日間プラーク形成した
。合計15プラークを選択し、そのうち9個が10日の胚を有するニワトリの卵にお
いて増殖した。各クローン中のNS遺伝子の起源をPCR制限分析によって決定した(
Klimovら、(1995)J.Virol.Meth.,52:41-49)。分析した9個のクローンのうち
、4つがA/PR/8/34NS遺伝子を有し、従って、機能的ポリメラーゼが、細胞にト
ランスフェクトされた合成RNPにおいて必要でないことを示した。DEAEデキスト
ランDMSOプロトコル(Al-Molishら(1973)J.Gen.Virol.,18:189-193;およびLo
pataら(1984)Nucl.Acids Res.12:5707-5717)を用いるトランスフェクション
実験は、合計11のクローンを生じ、そのうち1つのみがA/PR/8/34NS遺伝子を有
し、従ってインフルエンザウイルストランスフェクタントの生成についてのエレ
クトロポレーションのより優れた効率を示した。
特定の理論に結びつけられずに、NPの役割(分解からのRNA転写産物の防御、
およびヘルパーウイルスが必要な転写および複製機構を供給する細胞核への移送
)が二重であると考えられる。
RNPタンパク質の困難な精製手順を排除することに加えて、組換えDNA由来NPの
使用は、ビリオンから精製されるRNPタンパク質中に存在し得るウイルス遺伝子
を導入する可能性を排除する。生存弱毒化ワクチンの場合には、これは弱毒化表
現型を維持することをより容易にする。なぜなら、故意に導入されたもの以外は
、野生型遺伝子が存在しないからである。
本明細書中に記載される実施例および実施態様は、例示のためのみであり、本
発明に照らして種々の改変または変化が、当業者に示唆され、そして本願の精神
および本文ならびに添付の請求の範囲内に含まれることが理解される。本明細書
中に引用される全ての出版物、特許、および特許出願が、全ての目的のために参
考として本明細書中で援用される。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 ヘンプヒル,マーク エル.
アメリカ合衆国 ジョージア 30244,ロ
ーレンスビル,ミルベール プレイス
911
(72)発明者 ジュ,ジアン
アメリカ合衆国 ジョージア 30092,ノ
ークロス,ケントフォード レーン 3694