【発明の詳細な説明】
InP基板へ格子整合された青色及び濃青色レーザー構造本発明の背景
本発明は、半導体レーザー及び、特に、II/VI族材料から製造され且つ青及び
濃青領域において動作する半導体注入型レーザーに関するものである。
赤及び赤外線領域において動作するIII/V族材料から成る半導体レーザーは
、光学データ記憶応用において普通に見出される。一定のIII/V族材料は固有
に格子整合されるので、III/V族材料に対する異構造(異なるエネルギーバン
ドギャップの材料の層構造)が比較的容易に構成される。
緑、青/緑及び青のような短い波長で動作するレーザー装置が利用できる場合
には、光学データ記憶装置のデータ記憶密度が増大され得る。しかしながら、短
い波長で動作する実際の半導体レーザーダイオードは上に参照されたIII/V族
構造よりも構成するのがもっと困難であることが立証された。これは、一部分、
格子不整合により、それはレーザーのインターフェースにおいて歪みを生じ、且
つ良好なエピタキシャル成長を困難にする。従来技術は、短波長半導体レーザー
を提供するために、整合された格子定数を有するII/VI族材料を使用するための
いろいろな手段に集中してきた。
Fitzpatrickに対する米国特許明細書第5,394,422号が、青波長領域において動
作するII‐VI族レーザー異構造を構成することにおける幾つかの困難を有力に記
載している。高いバンドギャップを達成するために、種々の層が周期表の右側か
らの元素で普通は作られる。しかしながら、化合物へのこれらの小さい電子の付
加は典型的にその化合物の格子定数を低減するように働き、従って不整合へ導く
。市販されているII‐V族青レーザーに向かう進入は、格子整合された層と一緒
に充分高いバンドギャップ(及び従って、低いしきい電流密度)を与える特別の
化合物を選択することに集中されてきた。
この過程はGaines他に対する米国特許明細書第5,363,395号に見られる。その
明細書は青‐緑II‐V族(ZnSe)分離閉じ込め異構造(SCH;Separate Confine-
ment Heterostructure)半導体注入型レーザーを記載している。このSCHはGaAs
基板上にZn1-xMgxSySe1-yクラッディング層とZnSxSe1-z案内層とを有しているZn1-u
CduSe量子井戸を用いている。四元Zn1-xMgxSySe1-yクラッディング層の使用
が、全層の格子整合とクラッディング層と案内層とのバンドギャップの増大との
両方を可能にする。かくして、レーザーが改善された電気的及び光学的閉じ込め
により作られ得る。
GaAs基板の格子定数(他の層に対する格子定数を決定する)は0.56537nmであ
る。米国特許明細書第5,363,395号の構造においては、それらの層は、例えば、
活性層においてはu=0.2、案内層に対してはz=0.06、及びクラッディング層
に対してはx=0.1及びy=0.1に格子整合された。この特定のクラッディング層
(Zn.9Mg.1S.1Se.9)に対し、そのクラッディング層のバンドギャップはほぼ2.9
5eVであった。そのような構造はほぼ294°Kにおいてほぼ516nmの出力波長に対
して500A/cm2の程度のしきい電流密度を有し得る。
米国特許明細書第5,394,422号及び第5,363,395号は参考としてこの明細書に組
み込まれる。
ZnSeレーザーに対してGaAs基板を使用する利点のうちの一つは、上述のように
、それがほぼ0.56537nmの比較的小さい格子定数を有することである。それらの
層はこの比較的小さい格子定数に格子整合されねばならないので、それがクラッ
ディング層、案内層及び量子井戸層の間のバンドギャップでの差を抑制するため
に働き、かくしてレーザーを発するしきい電流密度を増大する。
GaAs基板による接触層の製作もまた困難であることを立証した。ZnSeの格子定
数(0.56689nm)は接触層として用いるためのGaAsと充分に近い。しかしながら、
受容体の充分高い濃度によりをZnSeをドーピングすることが困難であるから、p
型接触層としてのZnSeの使用は不確実であった。(1018cm-3の程度又はそれより
高いドーピング濃度が必要である。)
もっと複雑な接触層が企画されてきた。ZnTeがより高い濃度でp型をドープす
ることが容易であるから、例えば、ZnSeとZnTeとの交互に並ぶ層が試みられた。
しかしながら、ZnTeは、その構造(それはGaAsの格子定数(0.56537nm)、ZnSe接
触層の格子定数(0.56689n)、又は他の格子整合された層のうちの一つと考えら
れ得る。)の名目上の格子定数に対し比較的高い格子構造(0.6103nm)を有して
いる。その構造とZnTeとの格子定数の間の差(ほぼ8%)が歪みと構造的欠陥と
を生じる。かくして、そのZnTeはそのような構造的欠陥を低減するために小さい
層に用いられねばならない。この非常に精密な接触層は実施することが困難であ
ると証明された。本発明の要約
青/濃青スペクトル領域において低いしきい電流密度を有するレーザー異構造
を開発することが、かくして本発明の目的である。従って、量子井戸に対してと
同時に、相互に対して大きいバンドギャップ差を有するクラッディング層と案内
層とを有するレーザー異構造を設計することが本発明の目的である。層の間のバ
ンドギャップエネルギーにそのような大きい差が達成され、一方層は互いに充分
に格子整合されたままであるレーザー異構造を設計することもまた本発明の目的
である。
特に、InP基板上にMg(ZnCd)Se層で構成された、SCH(Separate Confinement He
terostructure)半導体注入型レーザーを設計することが、本発明の目的である。
このレーザーの四元層の構成は、それらの層がInP基板へ格子整合されたままで
あり、一方また比較的高く各層間のエネルギー差を維持するように選択される。
担体と光学的閉じ込めとが、実行可能なしきい電流密度において青及び濃青スペ
クトル領域内でレーザーを発することを与えるのに適当である。
付加的に、GaAsに対してInPの高い格子定数(0.58688nm)のせいで、ZnSeTe合金
接触層がその構造へ格子整合され得る。この合金は高くp型ドープできる。代わ
りに、交互に並んでいるZnSe-ZnTe層を具えているp型接触層が、その構造へよ
り良く格子整合され得る。それらの層に対する格子定数はほぼ3.4%〜4.0%だけ
その構造と異なる。従って、その接触層は、ZnTeがGaAsへ格子整合された構造と
ともに用いられた場合よりも少ししか構造的欠陥を有しない。
特に、本発明のSCH半導体注入型レーザーはほぼ0.58688nmの格子定数を有する
InP基板を含んでいる。それらの層の構成は各々式Mgx(ZnyCd1-y)1-xSeに従って
いる。xとyとの値は約2.1eV(x=0,y=0.48に対し)〜約3.6eV(x=0.9,
y=1に対し)の間の種々の層に対してバンドギャップを選択するために変えら
れ得て、一方InP基板へ格子整合されたままである。活性層、案内層及びクラッ
ディング層の構成を、各層間のエネルギー差がほぼ0.3eVであるように選択する
ことにより、担体及び光学的閉じ込めは良好に維持される。400A/cm2の程度のし
きい電流密度を有する、青及び濃青領域内の波長での(例えば、ほぼ464nmでの
)レーザー発生が達成される。
InP基板もまた、充分高い担体濃度を有し且つ欠陥無しか又は許容できるほど
少数の欠陥を有しているpドープされた接触層を支持するレーザー構造を与える
。本発明のSCH半導体注入型レーザーの設計はまた、InPへ格子整合された交互に
並んでいるZnSe-ZnTe接触層又は合成のZnSeTe三元層を含んでいる。
本発明はまた、InP基板とII‐VI族構造の隣接するn型層との間の比較的高い
エネルギー不連続に対する解決をも与える。そのようなエネルギー不連続は、基
板からレーザー構造内への電子の充分な注入を妨げる。本発明はInP基板とII‐V
I族レーザー構造との間に少なくとも1個の格子整合された‐V族バッファ層を
挿入することによりこの不連続を克服する。III‐V族層はInPとII‐VI族構造と
の伝導帯エネルギーレベルの中間の伝導帯エネルギーレベルを有している。従っ
て、注入された電子がもっと効果的に克服できる低減された大きさの二つのエネ
ルギー不連続がある。この特徴の付加的な改善はInP基板とIII‐V族バッファ
層との間に「勾配付け」を準備することを含む。そのような勾配付けは、例えば
、基板とIII‐V族バッファ層との間に挿入されたInPとIII‐V族材料との多数
の介在する補助層により達成され得る。それらの補助層の厚さを変えることによ
り、低減されたエネルギー不連続の系列が基板とバッファ層との間に確率される
。図面の簡単な説明
本発明の特徴が、添付の図面と一緒に、本発明のII−VI族レーザー構造の図式
的な実施例の以下の詳細な説明を参照することにより、より良く理解され且つ容
易に明らかになるであろう。その図面において、
図1は本発明によるII−VI族構造に使用される構成についての格子定数に対す
るバンドギャップのグラフであり;
図2は本発明によるII−VI族レーザー構造の層にされた構造の断面図の一例で
あり;
図3は図2のレーザー構造の層用のInP基板からの距離に対する順バイアスさ
れたバンドギャップエネルギーのプロットであり;
図4は3個の異なるドーピングレベルについての放射の波長に対する図2に示
されたレーザー構造のようなレーザー構造の計算された利得のプロットであり;
図5は約400A/cm2のしきい電流密度を示している、図2に示された構造のような
構造の注入電流の関数としての計算されたレーザー出力のプロットであり;
図6は図2に示された構造のような構造のクラッディング層内のマグネシウム
の総量の関数としての計算されたしきい電流密度のプロットであり;
図7は多数の材料に対する格子定数の関数としての伝導帯エネルギーのプロッ
トであり;
図8AはInP基板と隣接する格子整合されたAlAsySb1-y層との間のエネルギー不
連続を示し;
図8Bは図8AのInP基板と隣接する格子整合されたAlAsySb1-y層との間に挿入さ
れた勾配を付けられたエネルギー領域を示し;
図9はInP基板と格子整合されたAlAsySb1-yバッファ層間の勾配を付けられた
エネルギー領域の特別の実施例を示し;
図10はInP基板と挿入されたAlAsySb1-yバッファ層とを有する本発明のII−VI
族レーザーダイオード構造を示している。好適な実施例の詳細な記載
図1に示されたように、基板InPはほぼ0.58688nmの格子定数を有している。図
1にはまた、3個の2成分化合物、すなわち0.56689nmの格子定数と(300°Kに
おいて)2.67eVのエネルギーバンドギャップとを有するZnSe;0.6084nmの格子定
数と(300°Kにおいて)1.70eVのエネルギーバンドギャップとを有するCdSe;及
び約0.588nmの格子定数と(300°Kにおいて)約4.0eVのエネルギーバンドギャッ
プとを有するMgSeが示されている。(特に注意されない限り、バンドギャップエ
ネルギーに対する以下の参考の全部が300°Kに対するものである。)
SCH(Separate Confinement Heterostructure)半導体レーザーの層の構成は一
般に次式
Mgx(ZnyCd1-y)1-xSe (式1)
と一致し、そこでx及びyは0≦x≦1及び0≦y≦1のように選ばれる。式1
に従った構成を有する層に対するバンドギャップエネルギーと格子定数とは、斜
線を付けられた三角形10内に(又はその三角形の縁に沿って)入ることが判る。
更にその上、InP基板へ格子整合されるべき層に対して、それらは0.58688nmの
格子定数を有する三角形10内の(あるいはそれの縁における)化合物から選ばれ
ねばならない。これは基準点A及びB間で三角形10を二分する垂直線により示さ
れている。
点Aは式1により記載された最低バンドギャップを有し、且つInPに格子整合
された化合物と対応することが図1から判る。この最低エネルギー限界化合物は
zn0.48Cd0.52Se(すなわち、式1においてx=0,y=0.48)であって、2.10eV
のエネルギーバンドギャップを有している。
同様に、点Bは式1により記載された最高バンドギャップエネルギーを有し且
つInPと格子整合された化合物と対応している。この上側エネルギー限界化合物
はMg0.9Zn0.1Se(すなわち、式1においてx=0.9,y=1)であり、3.60eVの
エネルギーバンドギャップを有している。
図2は本発明の構造の好適な実施例を図解している。この構造はInP基板20を
含んでいる。下側クラッディング層22が基板20上に成長されている。下側クラッ
ディング層22上に下側案内層24が成長されている。活性量子井戸層26が下側案内
層24上に成長されている。上側案内層28が活性層26上に成長され、且つ上側クラ
ッディング層30が上側案内層28上に成長されている。最後に、接触層32が上側ク
ラッディング層30上に成長されている。下側層はn型にドープされて、且つ上側
層はp型にドープされている。
本発明の構造の好適な典型的実施例においては、2.67eV(464nm)においてレー
ザーを発するために、下側クラッディング層22と上側クラッディング層30とが、
Mg0.72(Zn0.89Cd0.11)0.28Se(式1におけるx=0.72,y=0.89と対応している
)で構成され且つ各々約1μmの厚さである。下側クラッディング層22は2×1017
cm-3の濃度でClドープされており、且つ上側クラッディング層30は1×1017cm-3
の濃度でNドープされている。(一般に、式1に対して一旦xが定義され、且
つ整合されるべき格子定数が選択されると、yの値が計算され得る。かくして、
x
が与えられた場合には、yに対する特定の値が、例えば図2におけるように呼ば
れなくてもよい。)
下側案内層24と上側案内層28とはMg0.54(Zn0.78Cd0.22)0.46Se(式1における
x=0.54,y=0.78と対応している)で構成され且つ各々約100nm厚さである。
下側案内層24と上側案内層28とは、双方とも1×1017cm-3の濃度により、それぞ
れClドープ及びNドープされている。
活性量子井戸層26は、Mg0.34(Zn0.65Cd0.35)0.66Se(式1におけるx=0.54,
y=0.78と対応している)で構成され、且つ約6nm厚さである。
p型のZnSe-ZnTe又はp型のZnSeTeのいずれかの三元合金接触層32が、上側ク
ラッディング層30上に成長されている。図1を参照し返しすと、InPの格子定数(
0.58688nm)は、GaAs(0.56537nm)及びZnSe(0.5668nm)よりも大きいけれども、ZnT
e(0.6103nm)よりも小さいことが判る。かくして、混成の三元合金ZnSeTeが、InP
へ格子整合され且つ充分高い濃度の受容体を含む上側クラッディング層30上に成
長されてもよい。その三元合金の構成は、例えば約50%ZnSeと50%ZnTeとであっ
てもよい。この三元層は約100nmの厚さであり、且つ1×1018cm-3の濃度でNド
ープされている。
代わりに、接触層32がZnSeとZnTeとの交互に並ぶ層の勾配を付けられた合成物
であってもよい。上に記載されたように、InPを基礎とする構造の格子定数は名
目上は0.58688nmである。これはZnSeとZnTeとの格子定数の間のほぼ中間であり
;かくして、ZnSeの層の格子不整合はほぼ3.4%であり、且つZnTeの格子不整合
はほぼ4.0%である。(不整合のそのようなレベルは、上に記載されたように、
不整合が約8%となるGaAs構造上に、ZnTe層を成長することより優れている。)
ZnSeの層厚さは層当たり0.1nm減少して、1.8nmから0.2nmまで変えられ;ZnTeの
層厚さは層当たり0.1nm増大して、0.2nmから1.8nmまで変えられる。層の全体数
は約34nm厚さであってもよい。ZnSe層は約1018cm-3の濃度でNドープされ、且つ
ZnTe層は1×1019の濃度でNドープされる。
以下にもっと詳細に記載されるように、この特定の構造は400A/c程度のしきい
電流密度と、約464nmのピーク波長とを有するだろう。実験の結果
Mgx(ZnyCd1-y)1-xSeを基礎とする量子井戸層、特に、上述の寸法と構成とを有
する図2に示されたレーザー構造の動作を調査するためにシミュレーションが展
開された。そのシミュレーションに関する他のパラメータは、その構造に対して
最初に展開されたのと修正されたのとの、双方又はいずれか一方であった。
図3は量子井戸26に関する距離の関数として図2に示された構造の種々の層の
バンドギャップエネルギーを示している。図3は、図2と図1において示された
バンドギャップエネルギーとに関して、上に与えられた構造の寸法と構成とを用
いて構成された。
層インターフェースにおける伝導帶オフセット比(Qc)がレーザーの動作に
対して特に重要なパラメータであることは、この技術においては既知である。Qc
はインターフェースにおける全体バンドギャップエネルギーにおける変化に対
する伝導帯エネルギー変化の比である。(インターフェースにおける全体バンド
ギャップエネルギーにおける変化は伝導帯エネルギーにおける変化と価電子帯エ
ネルギーにおける変化との合計と等価である。)かくして、図3を参照して、例
えば、案内層24と量子井戸26との間のインターフェースに対するQcは
である。
伝導帶オフセット比はMgSe/Cd0.54Zn0.46Se装置に対して約0.6になるように実
験的に決められてきた。本装置に対する物理的特性における類似性のせいで、量
子井戸/案内及び案内/クラッディングインターフェースにおける伝導帯オフセ
ット比(Qc)に対して0.6である。
その層に対して選ばれた構成がほぼ0.3eVにより各々分離されたバンドギャッ
プを与える。かくして、下側クラッディング領域22と上側クラッディング領域30
とがほぼ3.3eVのエネルギーバンドギャップを有し、下側案内層24と上側案内層2
8とはほぼ3.0eVのエネルギーバンドギャップを有し、且つ活性層26はほぼ2.67eV
のエネルギーバンドギャップを有している。
式1により記載されたように、Mgを含む4元層の屈折率(nI)に対する一般化
された式は既知である。図2に関して上に記載された構成を有し、且つ上に直接
与えられたバンドギャップを有する特定の四元層に対して、屈折率は:
クラッディング層Mg0.72(ZnyCd1-y)0.28Se:nI=2.483
案内層 Mg0.54(ZnyCd1-y)0.46Se:nI=2.682
量子井戸 Mg0.34(ZnyCd1-y)0.66Se:nI=2.707
上に展開されたパラメータにより更に記載されるように、図2のレーザー構造
へ適用されるシミュレーションモデルは、ドリフト拡散及び光学式の筋の通った
解答を基礎としたレーザーに対する理論的モデルを使った。歪んだ(又は歪まな
い)量子井戸活性層を説明するためにkp理論が用いられた。利得拡がりモデル
は担体一担体散乱により且つτscat=30fsを用いて説明した。各層に対して用い
られた電子と正孔との実効質量は、ZnSeに対する実効質量と等しく設定された。
100cm2/Vs及び7cm2/Vsの電子及び正孔移動度が選択された(青‐緑ZnCdSeを基
礎としたSCHレーザーにおいてMgZnSSe層のために用いられるのと同等である)。
ドープされてい案内層内の少数担体寿命は、ドープされていないZnSeに対する実
験値と同じく、2nsに設定された。
この構造に対するシミュレーション結果は図4及び5に与えられている。図4
においては、利得は活性領域内への種々の注入レベルに対して与えられている。
1×1019cm-3の程度の担体濃度に対して、正の利得がほぼ464nmのピーク波長の付
近で観察され、n=1の電子と重正孔副バンドとの間の遷移エネルギーと対応し
ている。図5において示されたように、これはその構造に対するほぼ400A/cm2の
しきい電流密度と一致している。(電流、約4mAが、構造の面積、1000平方ミク
ロンにより割られた。)
このしきい値はZnCdSe/ZnSSe/ZnMgSSe SCH構造に基づいて青/緑レーザーに対
して予報されたしきい値よりも低く、室温において500A/cm2の程度である。その
差は、案内層とクラッディング層との間のバンドギャップでの差を最大限に拡大
することにより達成される、高められた光学的閉じ込めによるものとされる。Zn
CdSe/ZnSSe/ZnMgSSeに基づく青/緑レーザーに対しては、案内層とクラッディン
グ層との間のバンドギャップでの差は139meVだけであり、かくして、屈折率にお
ける差は0.084だけである。上記されたMgx(ZnyCd1-y)1-xSeを基礎とする量子井
戸レーザーに対しては、しかしながら、案内層とクラッディング層との間の
バンドギャップでの差は、ほぼ300meVとなるように選択され;屈折率における差
は0.199である。
光学的閉じ込めに対するクラッディング層と案内層との間のバンドギャップで
の差の重要性は、シミュレーションにおいてクラッディング四元層内でMgを操作
することにより強調される。図6は、クラッディング四元層内のMgのパーセンテ
ージが低減されるにつれて、しきい電流密度が著しく増大することを示している
。クラッディング層内のマグネシウムのパーセンテージを低減することにより、
クラッディング層と案内層との間のバンドギャップにおける差(及び従って、屈
折率における差)が低減される。これが光学的閉じ込めを低減し、それにより図
6に示したように、しきい電流密度を増大する。
本発明のInP基板とII/VI族レーザー構造との間のインターフェースは障害を
与え得る。図4に関して上述したように、活性領域内へ注入された電流が正利得
となるためにそれに対して充分に高くなくてはならない。従って、充分な数の電
子がnドープされた化合物内へn型基板から注入されねばならない。上述の図2
の構造に対して、電子はInP基板20から隣接する下側クラッディング層22へ流れ
る。
図7を参照して、InPと(例えば、図7においてInPとZnSeとの間の差Xとなる
ように取られた)格子整合されたII/VI族化合物との伝導帯エネルギーの間の不
連続は名目上0.8eVであることが判る。II‐VI族「化合物」が本発明のレーザー
構造の、n型クラッディング層のような、層である場合には、この不連続が充分
な担体密度を発生するためには高すぎであり得る。
この不連続の大きさはInP基板とII‐VI族構造との間に少なくとも1個のIII‐
V族層を挿入することにより低減され得る。そのIII‐V族層は、InPと隣接する
II‐VI族材料との伝導帯エネルギーの中間の伝導帯エネルギーを有している。か
くして、挿入されたIII‐V族層は、注入される電子によりもっと容易に克服さ
れ得る、低減された大きさの2個のエネルギー不連続を創出できる。
例えば、再び図7を参照して、格子整合された(又は不正形)III‐V族の材
料AlAsySb1-yと格子整合された(又は不正形)II/VI族化合物との伝導帯エネル
ギーとの間の不連続はほぼ0.2eVである。(これは図7においてAlAsySb1-yとZnS
e
との間の伝導帯エネルギーでの差Yとして示されており;AlAsySb1-yは、yが約
0.56、すなわちAlAs0.56Sb0.44である場合に、InPに対して格子整合されるか又
は不正形である。)正確なエネルギー障壁もまたAlAsySb1-yバッファ層とII/VI
族構造の隣接層とのドーピングレベルの関数であり;しかしながら、このより低
い障壁を克服するため、隣接するII‐VI族構造内へのAlAsySb1-y層からの電子の
注入が非常にもっと効果的となるであろう。
そのような格子整合されたAlAsySb1-y層はInP基板上に成長されてもよいこと
はこの技術において既知である。(そのような層は欠陥を低減するために用いら
れてきた。)従って、隣接するII/VI族構造内へのそのようなAlAsySb1-y層から
の電子の注入が非常にもっと効果的であろう。
しかしながら、図7はInP基板と格子整合されたAlAsySb1-yとの伝導帯エネル
ギーの間の不連続が約0.6eVであることを示している。(これは図7においては
差Zとして示されている。)一般に、InP基板とIII‐V族バッファ層との間のこ
のエネルギー不連続は、格子整合されたバッファ層内へ基板から直接注入を与え
るためにまだ比較的高い障壁である。
かくして、InP基板のレベルからIII‐V族バッファ層へエネルギーレベルまで
遷移する「勾配を付けられた」領域を設けることが望ましい。図8Bは、上記の特
別の例に対する、InP基板とAlAsySb1-yバッファ層との間のそのような「勾配を
付けられた」領域を描写しているエネルギー線図である。図8Bは勾配を付けない
不連続変化のエネルギー線図である。双方の場合に、注入される電子は0.6eV障
壁を克服しなくてはならないが、注入される電子は不連続障壁よりも非常に容易
に0.6eVの勾配を付けられた障壁を通過するだろう。
そのような勾配付けは、連続するIII‐V族補助層の厚さを増大し、一方連続
するInP補助層の厚さを低減して、InP基板上へInPとIII‐V族材料の交互に並ぶ
補助層を適用することにより、一般に達成され得る。補助層のこの系列により、
基板とIII‐V族バッファ層との間の不連続が、ある距離に渡って広がった小さ
い不連続の系列に低減され得て、かくして連続なエネルギー遷移を近似する。
上記に展開された特別の例においては、そのような勾配付けは、InP基板及びA
lAsySb1-yバッファ層の間に、変わり得る厚さを有する、交互に並んだInP及び
AlAsySbl-y補助層の系列を挿入することによって、達成され得る。図9はInPとA
lAsySb1-y層との間にエネルギー遷移を与えるそのような「ディジタル的に勾配
を付けられた」領域の一例を示している。図示のように、基板InPと直接隣接す
るAlAsySb1-yの補助層102はほぼ0.5nmであり、且つInPの次の補助層104はほぼ2.
5nmである。AlAsySb1-yの次の補助層は0.1nmだけ増大され、一方InPの次の補助
層は0.1nmだけ低減される。AlAsySb1-y層の最も近くにあるAlAsySb1-yの補助層1
82は2.5nmであって、且つAlAsySb1-y層に隣接するInPの補助層184は0.5nmである
。全部のInP及びAlAsySb1-y補助層(全部で42個)の付加が、勾配を付けられた
領域がエネルギーでの0.6eV変化に対してほぼ63nmであることを示している。(
勾配付けは0.1eV当たり約10nmに対して与えねばならない。)そのようなディジ
タル勾配付けは図8bに示されたInPとAlAsySb1-yとの間のエネルギーでの勾配付
けされた0.6eV遷移を近似するだろう。
代わりに、勾配を付けられた領域がその勾配を付けられた領域における構成で
の連続な変化を有するIn,P,Al,As及びSbの合金であってもよい。基板と直接
隣接する領域におけるその合金の構成は100%InP(すなわちAl,As及びSb無し
)であり、且つAlAsySb1-yバッファ層と直接に隣接する領域における合金は100
%AlAsySb1-yである。基板から離れた勾配を付けられた領域を通して動かして、
その合金内のInPのパーセンテージが100%から零へ低減して、且つAlAsySbl-yの
パーセンテージが零かち100%へ増加する。
図10は基板とAlAsySb1-yとの間の不連続が代わりに全体として包囲されてもよ
い。II‐VI族構造の面に対してAlAsySb1-yバッファ層へ直接に接点を貼付するこ
により、電子がバッファ層内へ直接注入され、且つそこからII‐VI族構造内へ注
入される。かくして、電子が勾配を付けられた領域を通過しないので、基板とバ
ッファ層との間に勾配を付けられた領域は必要無い。
種々の変形が、本発明の精神と範囲とから離れることなく、ここに開示された
本発明の種々の実施例へなされ得ることは理解されるであろう。上記のように、
例えば、層の種々の構成が予想される。また、レーザー構造を形成する層内に用
いられ得るII/VI族元素の選択の広い範囲がある。全部の組み合わせが本発明の
範囲内に入る。それ故にその構造の好適な例の上の記載は本発明の制限として構
成されるべきでなく単に本発明の好適な実施例を提供することとして構成される
べきである。この技術に熟達した人々は、以下に提供される請求項により定義さ
れるような本発明の精神と範囲との中に他の変形を想像するだろう。