JP2001192702A - 酸化と焼結に対して抵抗性を有するニッケル粉末の製造方法 - Google Patents

酸化と焼結に対して抵抗性を有するニッケル粉末の製造方法

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JP2001192702A JP2000005895A JP2000005895A JP2001192702A JP 2001192702 A JP2001192702 A JP 2001192702A JP 2000005895 A JP2000005895 A JP 2000005895A JP 2000005895 A JP2000005895 A JP 2000005895A JP 2001192702 A JP2001192702 A JP 2001192702A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】粒子形状が球状で表面が平滑であり、平均粒子
径が0.1〜1μmの範囲にあると共に、粒子径が2μm
を越える粗大な粒子の混在がなく、粒度分布が狭く、凝
集がなく、高分散性を有し、結晶性がよく、大気中での
加熱に対して酸化され難いと共に、熱収縮特性が誘電体
に近いニッケル粉末、従って、特に、積層セラミックコ
ンデンサの内部電極材料として好適に用いることができ
るニッケル粉末の製造方法を提供すること。 【解決手段】本発明によれば、原料ニッケル粉末を周期
律表第IIA族元素、第IVA族元素及び希土類元素か
ら選ばれる少なくとも1種の元素の水酸化物にて被覆し
た後、非酸化性又は還元性の雰囲気中、400〜100
0℃に加熱し、このように熱処理したニッケル粉末を酸
洗して、上記元素を一部、ニッケル粒子に残存させるこ
とを特徴とする酸化と焼結に対して抵抗性を有するニッ
ケル粉末の製造方法が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ニッケル粉末の製
造方法に関し、詳しくは、積層セラミックコンデンサの
内部電極材料として好適に用いることができるニッケル
粉末の製造方法に関する。即ち、本発明は、粒子形状が
球状で表面が平滑(滑らか)であり、平均粒子径が0.1
〜1μmの範囲にあると共に、粒子径が2μmを越える
粗大な粒子の混在がなく、粒度分布が狭く、凝集がな
く、高分散性を有し、更に、粒子の内部に空隙がなく、
結晶性がよく、大気中での加熱に対して酸化され難く、
熱収縮特性が誘電体に近く、かくして、積層セラミック
コンデンサの内部電極材料として好適に用いることがで
きるニッケル粉末の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、積層セラミックコンデンサは、内
部電極材料であるパラジウム、銀−パラジウム合金、白
金等の貴金属の粉末を有機バインダーに分散させてペー
ストとし、これを主としてチタン酸バリウムからなるセ
ラミック誘電体のグリーンシート上にスクリーン印刷等
の手段によって塗布、乾燥させ、次いで、これらを複数
枚積み重ねて圧着し、一体化し、これを中性乃至僅かに
還元性の雰囲気中、1300℃程度の温度で焼成して、
上記貴金属からなる内部電極を有する積層焼結体とした
後、この積層焼結体の両端面に上記内部電極と導通する
外部引出し用電極を焼付けて製造されている。
【0003】しかし、近年、積層セラミックコンデンサ
の大容量化と小型化が急速に進んでおり、この大容量化
のために、セラミック誘電体の積層数を大幅に増やすこ
とが必要であるが、上述したように、内部電極材料とし
て貴金属を用いるときは、得られる積層セラミックコン
デンサの製造費用が非常に高くなるという問題がある。
そこで、最近、内部電極材料として、上記貴金属に代え
て、低廉なニッケルを用いることが提案されている。他
方、積層セラミックコンデンサの小型化のためには、内
部電極層と誘電体層を共に薄膜化することが必要であ
る。
【0004】そこで、積層セラミックコンデンサの大容
量化と小型化のためには、上記積層焼結体の製造時にク
ラックやデラミネーション等のような構造欠陥を生じる
ことなく、誘電体間に均一で断点のない緻密な連続した
膜厚からなる内部電極を形成すると共に、このようにし
て形成された内部電極が積層セラミックコンデンサの長
期間にわたる使用においても、特性が変化しないことが
求められる。
【0005】このような内部電極を形成するには、先
ず、用いるニッケル粉末粒子が表面が平滑な球状であ
り、平均粒子径が0.1〜1μmの範囲にあると共に、粒
子径が2μmを越える粗大な粒子の混在がなく、粒度分
布が狭く、凝集がなく、高分散性を有することが必要で
ある。
【0006】このような技術の事情にあって、従来、積
層セラミックコンデンサの内部電極材料として用いるた
めのニッケル粉末の製造方法が種々提案されているが、
しかし、製造費用と物性のいずれの点においても満足し
得る方法は知られていない。
【0007】例えば、特開平4−45207号公報に
は、塩化ニッケルを1000℃程度の高温下、水素で気
相還元する方法が提案されている。しかし、この方法に
よれば、得られるニッケル粉末は、高温下の反応なる熱
履歴を有するので、その粒子の表面は平滑ではあるが、
粒度分布が広く、粗大粒子も存在するので、内部電極の
薄膜化に用いるには適しない。
【0008】他方、特開平7−278619号公報に記
載されているように、塩化ニッケルや硫酸ニッケル等の
水溶性ニッケル塩の水溶液を強アルカリ性条件下、還元
剤としてヒドラジンやその水和物を用いて還元して、ニ
ッケル粉末を得る湿式還元法も提案されている。このよ
うな湿式還元法によれば、気相還元法によるニッケル粉
末に比べて、粒度分布は幾分改善されているものの、粒
子の表面が平滑でなく、緻密な電極を形成させることが
困難である。
【0009】更に、このようにして得られる従来のニッ
ケル粉末は、いずれの方法によるものも、大気中での加
熱において酸化されやすく、また、熱収縮特性が誘電体
との間に大幅な不一致がある。前述したように、積層セ
ラミックコンデンサの製造に際して、内部電極材料のペ
ーストをセラミック誘電体のグリーンシート上に塗布、
乾燥し、その積層体を圧着し、一体化し、これを中性乃
至僅かに還元性の雰囲気中、高温で焼成するが、電極材
料であるニッケル粉末が酸化に対して抵抗性をもたない
ときは、この焼成において、雰囲気中の微量の酸素や、
誘電体のグリーンシートや内部電極材料のペースト中の
有機溶媒や樹脂の分解等によって発生する酸素によっ
て、ニッケル粉末が酸化され、その結果、電極としての
特性が劣化する。
【0010】また、一般に、上記焼成に際しては、一般
に、チタン酸バリウムのような誘電体材料よりも電極材
料であるニッケル粉末がより低温にて熱収縮するので、
このような熱収縮の不一致によって、前述したような積
層焼結体とする際に、積層体にクラックやデラミネーシ
ョン等の構造欠陥が生じて、積層セラミックコンデンサ
の製造歩留りが減少する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の積層
セラミックコンデンサの内部電極材料のためのニッケル
粉末の製造における上述したような問題を解決するため
になされたものであって、表面が平滑な球状の粒子から
なり、平均粒子径が0.1〜1μmの範囲にあると共に、
粒子径が2μmを越える粗大な粒子の混在がなく、粒度
分布が狭く、凝集がなく、高分散性を有し、更に、粒子
の内部に空隙がなく、結晶性がよく、大気中での加熱に
対して酸化され難いと共に、熱収縮特性が誘電体に近い
ニッケル粉末、従って、特に、積層セラミックコンデン
サの内部電極材料として好適に用いることができるニッ
ケル粉末の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、原料ニ
ッケル粉末を周期律表第IIA族元素、第IVA族元素
及び希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素の水
酸化物にて被覆した後、非酸化性又は還元性の雰囲気
中、400〜1000℃に加熱し、このように熱処理し
たニッケル粉末を酸洗して、上記元素を一部、ニッケル
粒子に残存させることを特徴とする酸化と焼結に対して
抵抗性を有するニッケル粉末の製造方法が提供される。
【0013】本発明によるこのようなニッケル粉末の製
造方法において、好ましい態様として、原料ニッケル粉
末を分散させた周期律表第IIA族元素、第IVA族元
素及び希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素の
水溶性塩の水溶液にアルカリを加えて、上記元素で原料
ニッケル粉末の表面を被覆した後、これを非酸化性又は
還元性の雰囲気中、400〜1000℃に加熱し、この
ように熱処理したニッケル粉末を酸洗して、上記元素を
一部、ニッケル粒子に残存させることを特徴とする酸化
と焼結に対して抵抗性を有するニッケル粉末の製造方法
が提供される。
【0014】特に、本発明による好ましい態様として、
原料ニッケル粉末の水性スラリーをこのニッケル粉末に
対して0.5〜5重量%の割合の周期律表第IIA族元
素、第IVA族元素及び希土類元素から選ばれる少なく
とも1種の元素の水溶性塩と混合し、得られた混合物に
アルカリを加えて、上記元素で上記原料ニッケル粉末の
表面を被覆することを特徴とするニッケル粉末の製造方
法が提供される。
【0015】更に、本発明によれば、上述した方法にお
いて、水溶性の有機ホスホン酸類及び有機ホスフィン酸
類から選ばれる少なくとも1種の形状制御剤の存在下に
水溶性ニッケル塩をその水溶液中において還元剤で還元
して、原料ニッケル粉末を得るニッケル粉末の製造方法
が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明による第1の側面は、上述
したように、原料ニッケル粉末を処理して、表面が一層
平滑であると共に、酸化と焼結に対して抵抗性を有する
ニッケル粉末を得る点にある。
【0017】即ち、本発明によれば、先ず、原料ニッケ
ル粉末を周期律表第IIA族元素、第IVA族元素及び
希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素の水酸化
物にて被覆した後、非酸化性又は還元性の雰囲気中、4
00〜1000℃に加熱して、熱処理する。本発明にお
いては、以下において、特に、断りのない限り、周期律
表第IIA族元素、第IVA族元素及び希土類元素から
選ばれる少なくとも1種の元素を単に「元素」という。
【0018】原料ニッケル粉末の被覆処理に用いる上記
元素のうち、周期律表第IIA族元素の好ましい例とし
ては、例えば、ストロンチウム又はバリウムを挙げるこ
とができ、第IVA族元素の好ましい例としては、例え
ば、チタン又はジルコニウムを挙げることができ、ま
た、希土類元素の好ましい例としては、例えば、イット
リウム、ランタン又はセリウムを挙げることができる。
本発明においては、これらのなかでも、後述する熱処理
時の焼結防止効果が大きいこと、熱処理後の上記元素の
余剰の除去が容易であること等から、特に、イットリウ
ム、バリウム又はジルコニウムが好ましく、特に、イッ
トリウムが好ましい。
【0019】原料ニッケル粉末の粒子の表面を上記元素
の水酸化物で被覆するには、通常、湿式法によるのが好
ましい。即ち、原料ニッケル粉末を水に分散させてスラ
リーとし、これを上記元素の水溶性の塩の水溶液と混合
して、原料ニッケル粉末を分散させた上記元素の水溶性
塩の水溶液を調製し、これにアルカリ、好ましくは、水
酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリ金属
水酸化物を加えて、上記元素を微細な水酸化物として原
料ニッケル粉末の粒子の表面を被覆する。ここに、この
被覆処理の温度は、特に限定されるものではないが、通
常、室温(20℃)から80℃、好ましくは、40〜7
0℃の範囲である。
【0020】本発明によれば、上記元素による原料ニッ
ケル粉末の被覆処理をこのような湿式法にて行なうに際
して、原料ニッケル粉末に対する上記元素の水溶性塩の
使用量は、最終的に得られる本発明によるニッケル粒子
におけるその残存量を考慮して、その残存量よりも過剰
量であればよいが、特に、熱処理の段階でニッケル粉末
間で焼結凝集が起こらない量、即ち、通常、ニッケル粉
末に対して、0.5重量%以上、好ましくは、1重量%以
上を用いればよい。上記元素の使用量の上限は、特に制
限されるものではないが、余りに多量を用いても、後述
するように、熱処理後の酸洗によって除去すべき元素の
量が多くなるだけであって、被覆処理、熱処理及び酸洗
の効率とこれら処理の経済性からみて、通常、5重量%
程度が適当である。
【0021】また、原料ニッケル粉末の被覆処理におい
て、上記元素の水溶性塩を水酸化物とするためのアルカ
リとしては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウ
ムのようなアルカリ金属水酸化物が用いられる。
【0022】このように、原料ニッケル粉末の粒子の表
面を前記元素の水酸化物で被覆した後、例えば、洗液の
pHが7〜8程度となるまで、デカンテーションと水洗
(好ましくは、温度40〜70℃程度の温水洗)を繰り
返した後、加熱、乾燥して、被覆処理したニッケル粉末
を得る。
【0023】次いで、このように被覆処理したニッケル
粉末を粉砕し、これを非酸化性乃至還元性の雰囲気中、
400〜1000℃、好ましくは、500〜900℃で
熱処理する。このような熱処理によって、前記元素の一
部は、ニッケル粒子の表面層に固溶する。熱処理の時間
は、特に、制限されないが、通常、1〜12時間程度で
ある。このように、所定時間、熱処理した後、冷却し、
粉砕して、前記元素が一部、表面層に固溶したニッケル
粉末を得る。上記非酸化性の雰囲気とは、例えば、窒素
ガスのような不活性ガス雰囲気であり、還元性雰囲気と
は、例えば、水素と窒素の混合雰囲気である。
【0024】本発明によれば、次いで、このように熱処
理したニッケル粉末を酸洗して、粒子の表面を被覆して
いる余剰の前記元素を除去することによって、前記元素
が一部、ニッケル粒子の表面層に固溶しているために、
酸化と焼結に対して抵抗性を有するニッケル粉末を得る
ことができる。
【0025】ここに、この酸洗においては、好ましく
は、原料ニッケル粉末の被覆処理に用いた前記元素の当
量か、又はそれ以上の量の酸を用いて、熱処理後のニッ
ケル粉末を酸洗して、ニッケル粒子に固溶している前記
元素をニッケル粒子に残存させる。しかし、本発明によ
れば、必要に応じて、原料ニッケル粉末に対して比較的
少量の前記元素の水溶性塩を用いて、原料ニッケル粉末
の被覆処理を行なった後、前記元素の当量以下の酸にて
熱処理後のニッケル粉末を酸洗して、ニッケル粒子に固
溶している前記元素をニッケル粒子に残存させてもよ
い。
【0026】このように、ニッケル粉末に残存している
前記元素の量(残存量)は、例えば、誘導結合プラズマ
発光分析装置にて測定することができる。但し、本発明
において、ニッケル粉末に残存している前記元素の量
(残存量)とは、上述したように酸洗した後にニッケル
粉末に残存している前記元素の量を意味し、固溶してい
る前記元素の量のみが前記元素の残存量ではない。
【0027】本発明によれば、上記酸洗においては、無
機酸を用いるときは、ニッケルをも溶解させて、歩留り
を低下させるので、酸洗には有機酸を用いることが好ま
しく、特に、酢酸やシュウ酸が実用上、好ましく用いら
れる。このように、ニッケル粉末を酸洗した後、洗液の
pHが7〜8程度になるまで、デカンテーションと水洗
を繰り返した後、加熱、乾燥すれば、本発明によるニッ
ケル粉末を得る。
【0028】本発明によれば、前記元素は、ニッケル粉
末に対して、0.1〜2.0重量%、好ましくは、0.2〜1.
5重量%の範囲で残存させるのが好ましく、特に、0.3
〜1.0重量%の範囲で残存させるのが好ましい。ニッケ
ル粉末に残存する前記元素がニッケルに対して0.1重量
%よりも少ないときは、大気中で加熱したときの酸化に
対する抵抗性が十分でないうえに、加熱による熱収縮特
性も、原料ニッケル粉末と殆ど違いがなく、依然とし
て、誘電体との間に大きい不一致が残っている。他方、
ニッケル粉末に対して、2.0重量%を越える量を残存さ
せるときは、積層セラミックコンデンサの内部電極とし
て、望ましくない性質、例えば、電気抵抗の増大等を有
するようになる。
【0029】ニッケル粒子に残存する前記元素の量は、
化学量論的に厳密に制御することはできないが、主とし
て、ニッケル粉末の被覆処理に用いる前記元素の量と熱
処理温度と熱処理時間と酸洗に用いる酸の量の組合わせ
に依存するので、これら条件を実験的に定めることによ
って、再現性よく、ニッケル粉末に所定の残存量にて前
記元素を残存させることができる。
【0030】このようにして、本発明によれば、原料ニ
ッケル粉末を前記元素で被覆処理した後、熱処理するの
で、この熱処理の過程において、原料ニッケル粉末は、
相互に融着、凝集せず、かくして、原料ニッケル粉末の
粒度分布を維持することができる。従って、本発明によ
れば、原料ニッケル粉末として、球状で粒度分布の狭い
ものを用いれば、そのような特性を維持しつつ、表面が
一層平滑な球状の粒子からなるニッケル粉末を得ること
ができる。
【0031】しかも、このようにして得られる本発明に
よるニッケル粉末は、固溶している前記元素をその表面
層に有するために、大気中で数百℃に加熱したときに
も、酸化に対する抵抗性を有すると共に、粒子が相互に
凝集、焼結し難く、かくして、熱膨張特性が積層セラミ
ックコンデンサに用いる誘電体に近くなるので、内部電
極材料として用いて、前述したような焼結積層体を得る
際にも、クラックやデラミネーションが起こらず、歩留
りよく積層セラミックコンデンサを得ることができる。
更に、このようにして得られる積層セラミックコンデン
サは、長期間にわたる使用においても、特性の変化がな
く、耐久性にすぐれる。
【0032】上述したように、本発明によれば、原料ニ
ッケル粉末の球状性や粒度分布を維持したまま、表面が
一層平滑で、しかも、酸化や焼結に対する抵抗性を有す
るニッケル粉末を得ることができる。従って、本発明に
おいて、原料ニッケル粉末は、そのように、球状で粒度
分布幅の狭いものを適宜に選択して用いることができ、
そのような市販品も用いることができる。
【0033】しかし、本発明に従って、特に、表面が平
滑で粒度分布幅の狭い球状の粒子からなるニッケル粉末
を原料として用いることによって、その狭い粒度分布を
維持したまま、表面が一層平滑で、しかも、酸化や焼結
に対する抵抗性を有するニッケル粉末を得ることができ
る。このようなニッケル粉末は、従来、知られているニ
ッケル粉末に比べて、積層セラミックコンデンサの内部
電極材料として、とりわけすぐれているものである。
【0034】そこで、本発明の第2の側面によれば、特
に、水溶性の有機ホスホン酸類及び有機ホスフィン酸類
から選ばれる少なくとも1種の形状制御剤の存在下に水
溶性ニッケル塩をその水溶液中において還元剤で還元し
て得られるニッケル粉末を原料として用いる。
【0035】このような本発明による原料ニッケル粉末
の製造について説明する。本発明において、上記水溶性
ニッケル塩としては、例えば、塩化ニッケル、硫酸ニッ
ケル、酢酸ニッケル、硝酸ニッケル等が用いられるが、
しかし、これらに限定されるものではない。
【0036】また、還元剤としては、通常、ヒドラジン
又はその水和物が好ましく用いられる。このような還元
剤は、用いるニッケル塩に由来するNi2+1モル部に対
して、1〜10モル部の範囲で用いられる。還元剤の使
用量がNi2+1モル部に対して、1モル部よりも少ない
ときは、塩化ニッケルが十分に還元されず、ニッケル粉
末の収量が低下する。しかし、Ni2+1モル部に対して
10モル部を越える量の還元剤を用いるときは、得られ
るニッケル粉末の粒子径が過度に小さくなるので好まし
くない。特に、本発明においては、還元剤は、Ni2+
モル部に対して、好ましくは、2〜5モル部の範囲で用
いられる。
【0037】本発明による原料ニッケル粉末の製造は、
水溶性の有機ホスホン酸類及び有機ホスフィン酸類から
選ばれる少なくとも1種の形状制御剤の存在下に水溶性
ニッケル塩をその水溶液中において還元剤で還元する点
に特徴を有する。有機ホスホン酸類及び有機ホスフィン
酸類は、その塩をも含むものとする。本発明によれば、
上記形状制御剤として、一般式(I)
【0038】
【化7】
【0039】(式中、Mはそれぞれ独立に水素原子又は
アルカリ金属を示す。)で表わされる有機ホスホン酸
類、一般式(II)
【0040】
【化8】
【0041】(式中、Mはそれぞれ独立に水素原子又は
アルカリ金属を示す。)で表わされる有機ホスホン酸
類、一般式(III)
【0042】
【化9】
【0043】(式中、Mはそれぞれ独立に水素原子又は
アルカリ金属を示す。)で表わされる有機ホスホン酸
類、一般式(IV)
【0044】
【化10】
【0045】(式中、Mはそれぞれ独立に水素原子又は
アルカリ金属を示し、mは1〜4の整数を示す。)で表
わされる有機ホスホン酸類、又は一般式(V)
【0046】
【化11】
【0047】(式中、Mはそれぞれ独立に水素原子又は
アルカリ金属を示し、x及びyは4≦x+y≦16を満
たす整数を示す。)で表わされる有機ホスフィン酸類か
ら選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0048】これらの有機ホスホン酸類及び有機ホスフ
ィン酸類の塩としては、特に、ナトリウム塩又はカリウ
ム塩が好ましく用いられる。
【0049】従って、上記一般式(I)で表わされる有
機ホスホン酸又はその塩の具体例として、例えば、2−
ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、2−ホス
ホノブタントリカルボン酸−1,2,4−一ナトリウム
塩、2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4−
一カリウム塩、2−ホスホノブタントリカルボン酸−
1,2,4−二ナトリウム塩、2−ホスホノブタントリ
カルボン酸−1,2,4−二カリウム塩、2−ホスホノ
ブタントリカルボン酸−1,2,4−三ナトリウム塩、
2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4−三カ
リウム塩、2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,
2,4−四ナトリウム塩、2−ホスホノブタントリカル
ボン酸−1,2,4−四カリウム塩等を挙げることがで
きる。
【0050】上記一般式(II)で表わされる有機ホスホ
ン酸又はその塩の具体例として、例えば、1−ヒドロキ
シエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシ
エチリデン−1,1−ジホスホン酸−一ナトリウム塩、
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸−一
カリウム塩、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホ
スホン酸−二ナトリウム塩、1−ヒドロキシエチリデン
−1,1−ジホスホン酸−二カリウム塩、1−ヒドロキ
シエチリデン−1,1−ジホスホン酸−三ナトリウム
塩、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸
−三カリウム塩等を挙げることができる。
【0051】上記一般式(III)で表わされる有機ホスホ
ン酸又はその塩の具体例として、例えば、アミノトリ
(メチレンホスホン酸)、アミノトリ(メチレンホスホ
ン酸)−一ナトリウム塩、アミノトリ(メチレンホスホ
ン酸)−一カリウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン
酸)−二ナトリウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン
酸)−二カリウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン
酸)−三ナトリウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン
酸)−三カリウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン
酸)−四ナトリウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン
酸)−四カリウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン
酸)−五ナトリウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン
酸)−五カリウム塩等を挙げることができる。
【0052】上記一般式(IV)で表わされる有機ホスホ
ン酸又はその塩の具体例として、例えば、エチレンジア
ミンテトラ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミン
テトラ(メチレンホスホン酸)−一ナトリウム塩、エチ
レンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)−一カリウ
ム塩、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)
−二ナトリウム塩、エチレンジアミンテトラ(メチレン
ホスホン酸)−二カリウム塩、エチレンジアミンテトラ
(メチレンホスホン酸)−三ナトリウム塩、エチレンジ
アミンテトラ(メチレンホスホン酸)−三カリウム塩、
エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)−四ナ
トリウム塩、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホ
ン酸)−四カリウム塩、エチレンジアミンテトラ(メチ
レンホスホン酸)−五ナトリウム塩、エチレンジアミン
テトラ(メチレンホスホン酸)−五カリウム塩、エチレ
ンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)−六ナトリウ
ム塩、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)
−六カリウム塩等を挙げることができる。
【0053】また、上記一般式(IV)で表わされる有機
ホスフィン酸又はその塩の具体例として、例えば、ビス
(ポリ−2−カルボキシエチル)ホスフィン酸、ビス
(ポリ−2−カルボキシエチル)ホスフィン酸ナトリウ
ム、ビス(ポリ−2−カルボキシエチル)ホスフィン酸
カリウム等を挙げることができる。
【0054】本発明によれば、これらのなかでも、上記
一般式(I)で表わされる有機ホスホン酸又はその塩が
好ましく用いられ、特に、2−ホスホノブタントリカル
ボン酸−1,2,4又は2−ホスホノブタントリカルボ
ン酸−1,2,4−四ナトリウム塩が好ましく用いられ
る。
【0055】本発明においては、このような形状制御剤
は、用いるニッケル塩に由来する全Ni2+に対して、0.
5〜20重量%の範囲、好ましくは、1〜15重量%の
範囲、特に好ましくは、2〜10重量%の範囲で用いら
れる。形状制御剤の使用量がNi2+に対して0.5重量%
よりも少ないときは、得られるニッケル粉末の粒子の表
面が平滑でなく、凹凸を有し、また、粒度分布も広くな
る。しかし、形状制御剤をNi2+に対して、20重量%
を越えて多く用いても、得られるニッケル粉末の形状や
表面の平滑さがそれ以上改善されることもなく、また、
不経済でもある。
【0056】本発明によれば、このような形状制御剤の
存在下、好ましくは、pH10〜14程度の強アルカリ
性条件下において、上記ニッケル塩を還元剤で還元する
ことによって、ニッケル粉末を得る。上記強アルカリと
しては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの
ようなアルカリ金属水酸化物が好ましく用いられる。ま
た、還元反応のための反応温度は、通常、40〜80℃
の範囲であり、好ましくは、50〜70℃の範囲であ
る。
【0057】しかし、本発明によれば、この場合におい
て、水溶性ニッケル塩の水溶液に先ず、還元剤を加え
て、ニッケル−ヒドラジン錯体を生成させた後、これを
上記温度に加温し、次に、強アルカリ物質を加え、強ア
ルカリ性として、攪拌下に還元反応を行なってもよく、
また、水溶性ニッケル塩の水溶液に先ず、強アルカリ物
質を加えて、強アルカリ性とし、次に、これを上記温度
に加温した後、これに還元剤を加えて攪拌下に還元反応
を行なってもよい。
【0058】更に、本発明においては、必要に応じて、
水溶性ニッケル塩の水溶液に予め分散剤を溶解させてお
いてもよい。このような分散剤としては、例えば、ゼラ
チンやカルボキシメチルセルロース等が用いられるが、
これぱに限定されるものではない。
【0059】本発明によれば、ニッケル塩を還元するた
めに要する反応時間は、特に、限定されるものではない
が、通常、30分から5時間の範囲であり、好ましく
は、45分から3時間の範囲である。
【0060】反応の進行に伴って、水溶性ニッケル塩の
水溶液からニッケル粉末が析出、沈殿する。そこで、反
応の終了後、例えば、デカンテーションと水洗を繰り返
して、洗液がほぼ中性となるまで、生成したニッケル粉
末を洗浄した後、これを加熱乾燥して、目的とするニッ
ケル粉末を得る。また、反応の終了後、必要に応じて、
得られた反応混合物に塩酸、酢酸等の酸を加えて、反応
混合物を中和し、この後、生成したニッケル粉末を濾取
し、洗液がほぼ中性となるまで洗浄し、加熱乾燥するこ
とによっても、目的とするニッケル粉末を得ることもで
きる。
【0061】
【実施例】以下に実施例と共に比較例を挙げて本発明を
説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定され
るものではない。
【0062】比較例1 Ni2+濃度1モル/Lの塩化ニッケル水溶液を反応槽に
仕込み、これに0.5重量%濃度のカルボキシメチルセル
ロース水溶液を全Ni2+に対してカルボキシメチルセル
ロース換算で1重量%加え、更に、2−ホスホノブタン
トリカルボン酸−1,2,4を全Ni2+に対して5重量
%加えた。
【0063】次いで、このようにして得られた混合溶液
を攪拌しながら、これにヒドラジン水和物をNi2+1モ
ル部に対して3モル部加えて、ニッケル−ヒドラジン錯
体を生成させた後、55℃に加温し、この温度に保ちな
がら、これに同じ温度の300g/L濃度の水酸化ナト
リウム水溶液をNi2+1モル部に対して2.5モル部加え
て強アルカリ性(pH11)とし、2時間、還元反応を
行なって、ニッケル粉末を析出させた。
【0064】反応終了後、得られたニッケル粉末を洗液
のpHが7となるまでデカンテーションと50℃の温水
洗浄を繰り返した後、ニッケル粉末を濾取し、100℃
で15時間乾燥させて、ニッケル粉末を得た。
【0065】このようにして得られたニッケル粉末は、
その走査型電子顕微鏡写真(20000倍)を図1に示
すように、表面が平滑な球状の粒子からなるものであっ
た。また、粒度分布が狭いことも示されている。より正
確には、その粒度分布を図2に示すように、D10=0.9
9μm、D50(平均粒子径)=0.57μm、D90=0.2
7μmであり、タップ密度2.8g/cm3 、比表面積3.
6m2 /gであった。更に、この原料ニッケル粉末のX
線回折図を図3に示す。これから求めた原料ニッケル粉
末の結晶子径は200Åであった。
【0066】次に、このニッケル粉末を空気中、400
℃で加熱したときの加熱時間と重量増加率との関係を図
4に示す。このニッケル粉末は、30分の加熱によって
重量増加が15%に達する。また、このニッケル粉末
は、これを窒素95容量%と水素5容量%とからなる雰
囲気中、10℃/分の割合で加熱したときの温度と熱膨
張率との関係を誘電体(チタン酸バリウム)との比較に
おいて図5に示すように、熱収縮が550℃で始まり、
710℃で終了し、誘電体との熱収縮特性が大幅に相違
する。このニッケル粉末のこのような粒度分布及び特性
を表2に示す。
【0067】実施例1 上記比較例1において得られたニッケル粉末を原料粉末
とし、これを水に分散させて25g/L濃度のスラリー
とし、50℃に加温し、攪拌しながら、これにニッケル
に対してイットリウム換算で2.0重量%となるように1
65g/L濃度の塩化イットリウム水溶液を加えた後、
150g/L濃度の水酸化ナトリウムの水溶液をイット
リウム1モル部に対して4.5モル部の割合で加えて、イ
ットリウムの微細な水酸化物をニッケル粒子の表面に析
出させた。このように表面処理したニッケル粉末につい
て、洗液のpHが7となるまでデカンテーションと50
℃の温水洗浄を繰り返した後、被覆処理したニッケル粉
末を濾取し、100℃で15時間乾燥させた後、粉砕し
た。
【0068】次に、このように被覆処理したニッケル粉
末をガス雰囲気炉に仕込み、炉中に窒素ガスを流しなが
ら、750℃に4時間加熱した後、200℃以下まで放
冷した。炉から取り出し、粉砕して、熱処理したニッケ
ル粉末を得た。
【0069】このようにして、熱処理したニッケル粉末
を得た後、これを水に分散させて75g/L濃度のスラ
リーとし、攪拌しながら、温度25℃を保持して、先の
ニッケルに対して2.0重量%のイットリウムを溶解させ
る理論量の3倍量(3当量)の酢酸を加えて、2時間反
応させた。この後、洗液のpHが7となるまでデカンテ
ーションと水洗浄を繰り返した後、ニッケル粉末を濾取
し、100℃で15時間乾燥させて、本発明によるニッ
ケル粉末を得た。
【0070】このようにして得た本発明によるニッケル
粉末におけるイットリウムの残存量は、誘導結合プラズ
マ発光分析装置にて分析した結果、0.53重量%であっ
た。
【0071】この本発明によるニッケル粉末は、その走
査型電子顕微鏡写真(20000倍)を図6に示すよう
に、原料ニッケル粉末に比べて、表面が一層平滑な球状
の粒子からなるものであった。その粒度分布は、図7に
示すように、D10=1.00μm、D50(平均粒子径)=
0.59μm、D90=0.27μmであり、タップ密度3.2
g/cm3 、比表面積3.1m2 /gであった。
【0072】また、用いた上記原料ニッケル粉末と本発
明によるニッケル粉末の積算粒度分布を図8に示すよう
に、両者の粒度分布はほぼ一致している。即ち、本発明
によれば、原料ニッケル粉末を焼成する際に、粒子の相
互の融着や凝集が起こらないことが示される。しかし、
本発明によるニッケル粉末は、原料に比べて、タップ密
度の増大と比表面積の減少がみられる。更に、この本発
明によるニッケル粉末のX線回折図を図9に示す。これ
から求めた原料ニッケル粉末の結晶子径は700Åであ
り、結晶性の高いことが示される。
【0073】次に、本発明によるニッケル粉末を空気
中、400℃で加熱したときの加熱時間と重量増加率と
の関係を図4に示す。本発明によるニッケル粉末は、2
時間加熱したときにも、その重量増加は15%を下回っ
ている。また、本発明によるニッケル粉末を窒素95容
量%と水素5容量%とからなる雰囲気中、10℃/分の
割合で加熱したときの温度と熱膨張率との関係(熱収縮
特性)を誘電体(チタン酸バリウム)との比較において
図5に示す。本発明によるニッケル粉末は、原料ニッケ
ル粉末に比べて、熱収縮特性が誘電体に近接しているこ
とが示される。
【0074】原料ニッケル粉末の熱処理及び酸洗条件を
まとめて表1に示し、得られた本発明によるニッケル粉
末の特性をまとめて表2に示す。
【0075】実施例2〜11 前記比較例1において得られたニッケル粉末を原料粉末
として、これを表1に示す条件で被覆処理し、熱処理し
た以外は、実施例1と同様にして、それぞれ本発明によ
るニッケル粉末を得た。
【0076】これらのニッケル粉末のそれぞれについ
て、実施例1と同様にして求めた前記元素の残存量、粒
度分布、空気中、400℃で2時間加熱したときの重量
増加率、窒素95容量%と水素5容量%とからなる雰囲
気中、10℃/分の割合で加熱したときの熱収縮の開始
及び終了時間(熱収縮特性)、結晶子径、比表面積及び
タップ密度を表2に示す。
【0077】比較例2 比較例1において、2−ホスホノブタントリカルボン酸
−1,2,4を用いなかった以外は、比較例1と同様に
して、ニッケル粉末を得た。
【0078】このようにして得られたニッケル粉末は、
その走査型電子顕微鏡写真(20000倍)を図10に
示すように、表面が平滑でなく、凹凸を有する粒子から
なるものであった。また、その粒度分布を図11に示す
ように、粒度分布が広く、D 10=1.35μm、D50(平
均粒子径)=0.70μm、D90=0.29μmであり、タ
ップ密度2.4g/cm3 、比表面積4.5m2 /g、結晶
子径190Åであった。これらの特性をまとめて表2に
示す。
【0079】実施例12 比較例2において得られたニッケル粉末を原料ニッケル
粉末として用いて、実施例1と同様にイットリウムによ
る被覆処理とその後の熱処理を行なって、本発明による
ニッケル粉末を得た。このようにして得た本発明による
ニッケル粉末におけるイットリウムの残存量は、誘導結
合プラズマ発光分析装置にて分析した結果、0.55重量
%であった。
【0080】この本発明によるニッケル粉末は、その走
査型電子顕微鏡写真(20000倍)を図12に示すよ
うに、原料ニッケル粉末に比べて、表面が平滑な球状の
粒子からなるものであった。その粒度分布は、図13に
示すように、D10=1.35μm、D50(平均粒子径)=
0.72μm、D90=0.31μmであり、タップ密度2.6
g/cm3 、比表面積3.9m2 /gであった。
【0081】また、このニッケル粉末を空気中、400
℃で加熱したときの加熱時間と重量増加率との関係を図
4に示すように、2時間加熱したときにも、その重量増
加は15%を下回っている。また、本発明によるニッケ
ル粉末を窒素95容量%と水素5容量%とからなる雰囲
気中、10℃/分の割合で加熱したときの温度と熱膨張
率との関係を誘電体(チタン酸バリウム)との比較にお
いて図5に示す。本発明によるニッケル粉末は、原料ニ
ッケル粉末に比べて、熱収縮特性が誘電体に近接してい
ることが示される。
【0082】原料ニッケル粉末の熱処理及び酸洗条件を
まとめて表1に示し、得られた本発明によるニッケル粉
末の特性をまとめて表2に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、原料ニ
ッケル粉末を周期律表第IIA族元素、第IVA族元素
及び希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素の水
酸化物にて被覆し、非酸化性又は還元性の雰囲気中で熱
処理した後、酸洗して、上記元素を一部、ニッケル粒子
の表面層に残存させることによって、原料ニッケル粉末
の球状性と粒度分布とを維持したまま、粒子の表面を一
層滑らかにすると共に、酸化と焼結に対して抵抗性を有
するニッケル粉末を得ることができる。従って、このよ
うなニッケル粉末を積層セラミックコンデンサの内部電
極材料として用いることによって、クラックやデラミネ
ーション等の構造欠陥なしに積層セラミックコンデンサ
を製造することができる。
【0086】特に、本発明によれば、水溶性の有機ホス
ホン酸類及び有機ホスフィン酸類から選ばれる少なくと
も1種の形状制御剤の存在下に水溶性ニッケル塩をその
水溶液中において還元剤で還元することによって、表面
が平滑な球状の粒子からなり、平均粒子径が0.1〜1μ
mの範囲にあると共に、粒子径が2μmを越える粗大な
粒子の混在がなく、粒度分布幅が狭いニッケル粉末を得
ることができるので、これを原料ニッケル粉末として用
いることによって、そのようなニッケル粉末の球状性と
粒度分布特性とを維持したまま、粒子の表面が一層滑ら
かで、しかも、酸化と焼結に対して抵抗性を有するニッ
ケル粉末を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、形状制御剤の存在下に塩化ニッケルをヒド
ラジン水和物で還元して得られた原料ニッケル粉末の走
査型電子顕微鏡写真(20000倍)である。
【図2】は、上記図1に示す原料ニッケル粉末の粒度分
布図である。
【図3】は、上記図1に示す原料ニッケル粉末のX線回
折図である。
【図4】は、本発明によるニッケル粉末の一例を空気
中、400℃で加熱したときの加熱時間と重量増加率と
の関係を比較例であるニッケル粉末の結果と併せて示す
グラフである。
【図5】は、本発明によるニッケル粉末の一例を窒素9
5容量%と水素5容量%とからなる雰囲気中、10℃/
分の割合で加熱したときの温度と熱膨張率との関係(熱
収縮特性)を比較例であるニッケル粉末の結果と併せ
て、誘電体(チタン酸バリウム)との比較において示す
グラフである。
【図6】は、本発明によるニッケル粉末の一例の走査型
電子顕微鏡写真(20000倍)である。
【図7】は、上記図6に示すニッケル粉末の粒度分布図
である。
【図8】は、原料ニッケル粉末と上記図6に示すニッケ
ル粉末の積算粒度分布図である。
【図9】は、上記図6に示すニッケル粉末のX線回折図
である。
【図10】は、形状制御剤の不存在下に塩化ニッケルを
ヒドラジン水和物で還元して得られた原料ニッケル粉末
の走査型電子顕微鏡写真(20000倍)である。
【図11】は、上記図1に示すニッケル粉末の粒度分布
図である。
【図12】は、上記図10に示すニッケル粉末を原料と
して用いて、イットリウムで被覆処理した後、熱処理し
て得られた本発明によるニッケル粉末の走査型電子顕微
鏡写真(20000倍)である。
【図13】は、上記図12に示すニッケル粉末の粒度分
布図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川端 喜代三 大阪府堺市上89番地 大崎工業株式会社内 (72)発明者 長谷川 一成 大阪府堺市上89番地 大崎工業株式会社内 Fターム(参考) 4K017 AA03 BA03 CA01 CA08 DA08 EJ01 FB07 4K018 BA04 BB03 BB05 BC01 BC15 BC28 BD04

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原料ニッケル粉末を周期律表第IIA族元
    素、第IVA族元素及び希土類元素から選ばれる少なく
    とも1種の元素の水酸化物にて被覆した後、非酸化性又
    は還元性の雰囲気中、400〜1000℃に加熱し、こ
    のように熱処理したニッケル粉末を酸洗して、上記元素
    を一部、ニッケル粒子に残存させることを特徴とする酸
    化と焼結に対して抵抗性を有するニッケル粉末の製造方
    法。
  2. 【請求項2】原料ニッケル粉末を分散させた周期律表第
    IIA族元素、第IVA族元素及び希土類元素から選ば
    れる少なくとも1種の元素の水溶性塩の水溶液にアルカ
    リを加えて、上記元素で原料ニッケル粉末の表面を被覆
    した後、これを非酸化性又は還元性の雰囲気中、400
    〜1000℃に加熱し、このように熱処理したニッケル
    粉末を酸洗して、上記元素を一部、ニッケル粒子に残存
    させることを特徴とする酸化と焼結に対して抵抗性を有
    するニッケル粉末の製造方法。
  3. 【請求項3】原料ニッケル粉末の水性スラリーをこのニ
    ッケル粉末に対して0.5〜5重量%の割合の周期律表第
    IIA族元素、第IVA族元素及び希土類元素から選ば
    れる少なくとも1種の元素の水溶性塩と混合し、得られ
    た混合物にアルカリを加えて、上記元素で上記原料ニッ
    ケル粉末の表面を被覆する請求項1又は2に記載のニッ
    ケル粉末の製造方法。
  4. 【請求項4】周期律表第IIA族元素がストロンチウム
    又はバリウムである請求項1から3のいずれかに記載の
    ニッケル粉末の製造方法。
  5. 【請求項5】周期律表第IVA族元素がチタン又はジル
    コニウムである請求項1から3のいずれかに記載のニッ
    ケル粉末の製造方法。
  6. 【請求項6】希土類元素がイットリウム、ランタン又は
    セリウムである請求項1から3のいずれかに記載のニッ
    ケル粉末の製造方法。
  7. 【請求項7】周期律表第IIA族元素、第IVA族元素
    及び希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素をニ
    ッケルに対して0.1〜2.0重量%の範囲で残存させる請
    求項1から6のいずれかに記載のニッケル粉末の製造方
    法。
  8. 【請求項8】周期律表第IIA族元素、第IVA族元素
    及び希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素を被
    覆したニッケル粉末を酢酸又はシュウ酸で酸洗する請求
    項1から7のいずれかに記載のニッケル粉末の製造方
    法。
  9. 【請求項9】請求項1から8のいずれかに記載のニッケ
    ル粉末の製造方法において、水溶性の有機ホスホン酸類
    及び有機ホスフィン酸類から選ばれる少なくとも1種の
    形状制御剤の存在下に水溶性ニッケル塩をその水溶液中
    において還元剤で還元して、原料ニッケル粉末を得るニ
    ッケル粉末の製造方法。
  10. 【請求項10】形状制御剤が一般式(I) 【化1】 (式中、Mはそれぞれ独立に水素原子又はアルカリ金属
    を示す。)で表わされる有機ホスホン酸類及びその塩、
    一般式(II) 【化2】 (式中、Mはそれぞれ独立に水素原子又はアルカリ金属
    を示す。)で表わされる有機ホスホン酸類及びその塩、
    一般式(III) 【化3】 (式中、Mはそれぞれ独立に水素原子又はアルカリ金属
    を示す。)で表わされる有機ホスホン酸類及びその塩、
    一般式(IV) 【化4】 (式中、Mはそれぞれ独立に水素原子又はアルカリ金属
    を示し、mは1〜4の整数を示す。)で表わされる有機
    ホスホン酸類及びその塩、又は一般式(V) 【化5】 (式中、Mはそれぞれ独立に水素原子又はアルカリ金属
    を示し、x及びyは4≦x+y≦16を満たす整数を示
    す。)で表わされる有機ホスフィン酸類及びその塩、か
    ら選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載のニッ
    ケル粉末の製造方法。
  11. 【請求項11】形状制御剤が一般式(I) 【化6】 (式中、Mはそれぞれ独立に水素原子又はアルカリ金属
    を示す。)で表わされる有機ホスホン酸類及びその塩か
    ら選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載のニッ
    ケル粉末の製造方法。
  12. 【請求項12】形状制御剤を全Ni2+に対して0.5〜2
    0重量%の範囲で存在させる請求項9から11のいずれ
    かに記載のニッケル粉末の製造方法。
  13. 【請求項13】還元剤をNi2+1モル部に対して1〜1
    0モル部の範囲で用いる請求項9に記載のニッケル粉末
    の製造方法。
  14. 【請求項14】還元剤がヒドラジン又はその水和物であ
    る請求項9又は13に記載のニッケル粉末の製造方法。
  15. 【請求項15】形状制御剤の存在下に水溶性ニッケル塩
    を強アルカリ性の水溶液中において還元剤で還元する請
    求項9から14のいずれかに記載のニッケル粉末の製造
    方法。
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