JP2002004012A - 硬化可能なマルテンサイト調質鋼および鋼の熱処理法 - Google Patents

硬化可能なマルテンサイト調質鋼および鋼の熱処理法

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JP2002004012A JP2001151476A JP2001151476A JP2002004012A JP 2002004012 A JP2002004012 A JP 2002004012A JP 2001151476 A JP2001151476 A JP 2001151476A JP 2001151476 A JP2001151476 A JP 2001151476A JP 2002004012 A JP2002004012 A JP 2002004012A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼X12CrNiMo12と比較して300
〜600℃の温度で高められた耐熱性を示す、高い延性
を有する硬化可能なマルテンサイト調質鋼を得る。 【解決手段】 次の組成(質量%):Cr9〜13%、
Mn0.001〜0.25%、Ni2〜7%、Co0.
001〜8%、合計で0.5〜4%のWとMoの少なく
とも1つ、V0.5〜0.8%、合計で0.001〜
0.1%のNbとTaとZrとHfの少なくとも1つ、
Ti0.001〜0.05%、Si0.001〜0.1
5%、C0.01〜0.1%、N0.12〜0.18
%、P最大で0.025%、S最大で0.015%、A
l最大で0.01%、Sb最大で0.0012%、Sn
最大で0.007%、As最大で0.012%、残分鉄
および通常の不純物を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高められた窒素含
量を有する硬化可能なマルテンサイト鋼に関する。本発
明は、耐熱性および延性の際立って良好な組合せの調整
を可能にする、特殊な合金元素の選択および量比的決定
ならびに本発明による合金の熱処理法に関する。
【0002】
【従来の技術】クロム9〜12%を基礎とする硬化可能
なマルテンサイト鋼は、発電所技術の広範な材料であ
る。上記範囲内でのクロムの添加は、大気による腐蝕に
対する良好な安定性を可能にするだけでなく、肉厚の冶
金断片の完全な硬化性を可能にし、こうしてこの冶金断
片は、例えばモノブロック回転子または回転子ディスク
としてガスタービンおよび蒸気タービンに使用される。
この種の上記合金は、一般に炭素約0.08〜0.2%
を含有し、この炭素は、溶液で硬質のマルテンサイト組
織の構造体の調整を可能にする。マルテンサイト組織の
鋼の耐熱性と延性の良好な組合せは、焼戻し処理によっ
て可能になり、この場合には、炭化物の形の炭素の析出
によって同時に置換二次構造体を回復させながら粒子安
定化された二次粒子構造体が形成される。焼戻し挙動お
よびこれから生じる性質は、特殊な炭化物形成剤、例え
ばMo、W、V、NbおよびTaの選択および量比的決
定によって有効に影響を及ぼされうる。
【0003】9〜12%クロム鋼の850MPaを超え
る強度は、焼戻し温度が低く、典型的に600〜650
℃の範囲内に維持されることにより、調節することがで
きる。しかし、低い焼戻し温度の使用は、延性状態で脆
い高い転移温度を導き(0℃を超える)、それによって
材料は、室温で脆い破壊挙動を展開する。明らかに改善
された延性は、焼入れされた強度が700MPa未満に
低下される場合に達成されることができる。この延性
は、700℃を超える焼戻し温度の上昇によって達成さ
れる。この場合、高められた焼戻し温度の使用は、調整
された組織状態が高められた温度で長い時間に亘って安
定であるという利点を有する。蒸気発電において、殊に
回転子鋼として広範囲に使用される典型的な代表例は、
DINで公知のドイツ鋼X20CrMoV12.1であ
る。
【0004】更に、延性が、ニッケルの合金化によって
850MPaの強度レベルに明らかに改善されることが
できることは、公知である。ニッケル約2〜3%の合金
化によって600〜650℃の温度での焼戻し処理後で
あっても脆い延性状態での遷移温度がなお0℃未満にあ
ることは、公知であり、それによって全体的に強度およ
び延性の明らかに改善された組合せが調整されうる。従
って、このような合金は、そこで広範に使用され、この
場合には、明らかに強度ならびに延性についての高い要
件が課され、典型的には、ガスタービン回転子のための
ディスク材料として使用される。ガスタービン技術にお
いて、殊に回転子ディスクのための材料として幅広く使
用されるこの種の合金の典型的な代表例は、DINで公
知のドイツ鋼X12CrNiMo12である。
【0005】過去において、この鋼の特殊な性質を改善
する種々の努力がなされた。即ち、例えば刊行物Kern
他: High Temperature Forged Component for Advanced
SteamPower Plants, in Materials for Advanced Powe
r Engineering 1998, Proceedings of the 6th Liege C
onference, J. Lecomte-Becker他編, die Entwicklungn
euartiger Rotorstaehl fuer Dampfturbineanwendungen
に記載されている。この種の合金において、600℃で
使用するための耐クリープ性および時間安定性を改善す
るために、Cr、Mo、Wの含量は、N約0.03〜
0.07%、Nb0.03〜0.07%および/または
B50〜100ppmを考慮しながらさらに最適化され
る。
【0006】特に、ガスタービンの使用にとっては、別
の面で、時間安定性を450〜500℃の範囲内で高い
延性レベルで改善するかまたは脆化傾向を425〜50
0℃の温度で減少させるために、努力が為された。即
ち、欧州特許出願公開第0931845号明細書A1に
は、構成においてドイツ鋼X12CrNiMo12に類
似したニッケル含有の12%クロム鋼が記載されてお
り、この場合元素モリブデンは、公知の鋼X12CrN
iMo12と比較して減少されているが、しかし、タン
グステンの高められた含量が合金化された。ドイツ連邦
共和国特許出願公開第19832430号明細書A1に
は、商品名M152を有する、X12CrNiMo12
と同種の鋼の他の最適化が開示されており、この場合に
は、希土類元素の添加によって脆化傾向が425〜50
0℃の温度範囲内で制限されている。
【0007】上記開発の何れにも、強度、殊に耐熱性
を、300〜600℃の温度で鋼X12CrNiMo1
2と比較可能な高い延性レベルに対して改善することが
できなかったことは、欠点である。
【0008】同時に高い延性の際の耐熱性を改善するた
めの1つの可能な手がかりが、高められた窒素含量を有
する鋼の開発と共に提案された。欧州特許出願公開第0
866145号明細書A2には、0.12〜0.25%
の範囲内の窒素含量を有するマルテンサイト組織のクロ
ム鋼の新規種類が記載されている。この種類の鋼の場合
には、全体の組織構造は、特殊な窒化物、殊に窒化バナ
ジウムの形成によって制御され、鍛造処理、オーステナ
イト化、制御された冷却処理または焼戻し処理によって
多種多様な方法で分布させることができる。強度は窒化
物の硬化作用に関連して達成されるけれども、高い延性
の調整は、この欧州特許出願公開明細書においては窒化
物の形態の分布、なかんずく粒子粗大化の制限によって
鍛造の間および溶解焼鈍処理の間に達成しようと努力さ
れる。この延性の調整は、記載された欧州特許出願公開
明細書において、高められた体積含分ならびに難溶性の
窒化物の高い粒子粗大化抵抗によって達成され、したが
って窒化物の緻密な分散液は、粒子成長それ自体を11
50〜1200℃のオーステナイト化温度であってもな
お有効に制限することができる。欧州特許出願公開第0
866145号明細書A2に記載の合金の本質的な利用
は、強度と延性との組合せを専ら熱処理の適当な定義に
よる分布および形態に関連して窒化物の形成により最適
に影響を及ぼすことができることにある。
【0009】しかし、窒化物の最適化された形成状態
は、最大の延性を達成させるための1つのファクターで
あるにすぎない。他の影響ファクターは、溶解された置
換元素、例えばニッケル、コバルトおよびマンガンの作
用によって予想することができる。マンガンにより、こ
の元素は、延性を促進させるよりも先に脆化作用を生じ
ることは、炭素鋼から公知である。殊に、合金を350
〜500℃の範囲内の温度で長時間の焼鈍に晒すこと
は、脆化をまねく。更に、炭素鋼中のニッケルは、延性
を改善するが、しかし、耐熱性は、高い温度で低下する
傾向にある。この耐熱性は、ニッケル含有の鋼中の減少
された炭化物安定性と関連する。これに対して、耐熱性
と延性との組合せに対するコバルトの作用は、炭素含有
の9〜12%のクロム鋼において極めて僅かであること
が公知である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、公知
技術水準、殊に鋼X12CrNiMo12と比較して3
00〜600℃の温度で高められた耐熱性を示す、高い
延性を有する硬化可能なマルテンサイト調質鋼を得るこ
とに基づく。延性のマルテンサイトの焼戻し組織および
同時に耐熱性のマルテンサイトの焼戻し組織の形成を可
能にする、一面で適当な鋼組織、他面、熱処理法を前記
組成の材料に対して記載されるはずである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の核心は、次の組
成(質量%での記載):Cr9〜13%、Mn0.00
1〜0.25%、Ni2〜7%、Co0.001〜8
%、合計で0.5〜4%のWとMoの少なくとも1つ、
V0.5〜0.8%、合計で0.001〜0.1%のN
bとTaとZrとHfの少なくとも1つ、Ti0.00
1〜0.05%、Si0.001〜0.15%、C0.
01〜0.1%、N0.12〜0.18%、P最大で
0.025%、S最大で0.015%、Al最大で0.
01%、Sb最大で0.0012%、Sn最大で0.0
07%、As最大で0.012%、残分鉄および通常の
不純物を有し、但し、バナジウムと窒素との質量比V/
Nは、3.5〜4.2の範囲にある、硬化可能なマルテ
ンサイト調質鋼にある。
【0012】本発明による組成物の個々の合金元素につ
いて好ましい範囲は、請求項2から16までのいずれか
1項に記載されている。
【0013】本発明による合金のための熱処理法は、次
の処理過程: − 1050〜1250℃での溶解焼鈍、 − 300℃未満の温度への冷却、 − 焼戻し処理、600〜900℃での部分的または完
全な再オーステナイト化、 − 300℃未満の温度への冷却、 − 550〜650℃の温度での焼鈍 によって特徴付けられる。
【0014】本発明の利点は、記載された合金の際に強
靱な基礎マトリックスおよび耐熱性をもたらす窒化物の
存在に顕著である焼戻し組織が調整されることにある。
基礎マトリックスの靭性は、置換元素、有利にニッケ
ル、第二にコバルトの存在によって調節される。この置
換元素の含量は、この置換元素が最大の耐熱性の調整の
ために特殊な窒化物、有利に窒化バナジウムによるマル
テンサイト硬化ならびに粒子硬化の最適な発揮を可能に
する程度に定められる。
【0015】公知の硬化可能なマルテンサイト9〜12
%クロム鋼の場合には、耐熱性と延性との良好な組合せ
は焼入れ処理によって生じさせることができ、この焼入
れ処理は、オーステナイト化処理、急冷処理および焼戻
し処理を含む。この場合、達成可能な強度は、急冷され
たマルテンサイト組織の基礎的硬化および焼戻し処理の
際に形成される析出段階の潜在的な粒子硬化作用によっ
て決定的に制限される。急冷されたマルテンサイト組織
の基礎的硬化を越えての強度の上昇は、所謂二次硬化範
囲での焼戻し処理によって可能である。この二次硬化範
囲は、発電所技術で十分に知られた12%クロム鋼にと
って450〜約530℃の温度範囲内にある。
【0016】原則的に2つの硬化機構、マルテンサイト
組織の硬化ならびに析出硬化、延性は低下する。この場
合、特徴のある方法で二次硬化の範囲内で延性の最小が
観察される。この延性の最小は、専ら固有の析出硬化機
構によって惹起される必要はない。或る程度の脆化の貢
献は、粒子境界への不純物の偏折によってもたらされて
もよいし、できるだけ溶解された合金原子の近接秩序の
調節によってもたらされてもよい。
【0017】二次硬化範囲を超えて焼戻し温度を上昇さ
せることにより、炭化物の明らかな成長を有する完全な
析出が生じる。それによって、強度は減少し、延性は増
大する。本質的に置き換え二次構造の回復と粒子の粗大
化が同時に行なわれることによって、延性は強化されて
増大し、したがって強度と延性との組合せは、全体的に
改善される。この改善は、粒子安定化された二次構造の
形成に帰因する。この場合、ニッケル貧有の9〜13%
クロム鋼中には、700℃を上廻る焼戻し処理により延
性の構造が形成される。この形成は、粒子安定化された
二次粒子構造の延性ならびに強度が粒子二次構造の形態
中の不均一性によって減少されることから出発する。二
次粒子境界での析出は、促進された粗大化に左右され、
隣接した析出と一緒に凝集傾向を生じる。粗大な相およ
び凝集された相は、破壊を引き起こす突然の故障を発生
させ、この故障は、延性を低下させる。しかし、なかん
ずく析出の不均一な分布によって、高い温度で最も有効
な硬化機構、即ち粒子硬化は著しく制限される。
【0018】作用の点で制限された延性の上昇は、粒度
の減少によって可能である。しかし、この延性は、工業
的に公知の合金の際に大きな構造部材において鍛造技術
により変えることが困難であり、殆んど効果を残さな
い。マルテンサイト組織の常用の硬化可能な鋼において
延性を高めるための幾らか重要な手段は、ニッケルの合
金化である。しかし、これに関連する作用の原因は、全
ての点で公知ではなく、ニッケル含量に著しく依存して
いてよい。即ち、ニッケルの少ない含量は、既に延性を
極めて促進していてもよく、この場合には、それによっ
て例えばδ−フェライトの形成は、完全に抑制されるこ
とができる。これに対して、ニッケル含量が2質量%を
超える場合には、ニッケルによってAc1−温度(これ
は、加熱の間にオーステナイトへのフェライトの変換を
開始する温度である)は、700℃未満の温度に減少さ
れる。即ち、強度が700℃未満への焼戻し温度の低下
によって高められ、この場合には、高められたニッケル
含量の存在下に焼戻しの際にオーステナイトへのフェラ
イトの変態が計算される。この変態は、延性を或る程度
促進する粒子の新しい形成と関連している。しかし、こ
れに対して、Ac1−温度を超えての炭化物の析出が不
完全にのみ進行することは、注目することができる。そ
れというのも、オーステナイトを安定化する元素の炭素
の溶解性はフェライトの場合よりもオーステナイトの場
合の方が大きいからである。更に、形成されるオーステ
ナイトは、不十分に安定化され、したがって再形成され
たオーステナイトの大きな体積含量は、再冷却の際に焼
戻し後のさらなるマルテンサイト変態に左右されてい
る。延性の上昇に対するニッケルの前記の2つの作用の
貢献とともに、置換元素としての作用の点でのニッケル
の或る程度の延性の貢献は、明確な解決を生じうる。こ
の解決は、電子理論的に元素のニッケルが付加的に自由
電子を鉄格子中に供給し、それによって鉄合金をなお”
金属”にするというように説明することができる。
【0019】原則的にニッケルと合金化された常用の硬
化可能なマルテンサイト鋼は、ニッケル貧有の合金と比
較して特殊な耐熱性の利点を有していない。これは、少
なくとも500℃を超える試験温度に関連し、ニッケル
含量が高められた場合には、焼戻しの際の上記再オース
テナイト化と関連しうる。更に、この種の鋼中へのニッ
ケルの合金化は、高められた温度で長時間の貯蔵条件下
で組織不安定性を明らかに促進する。この場合、この長
時間の組織不安定性は、炭化物の促進された粗大化と関
連する。
【0020】コバルトは、ニッケルと同様のオーステナ
イト安定性元素である。従って、固溶体において、延性
に関連してニッケルと同様の作用を予想することができ
る。しかし、その限りにおいて化学的観点からは、コバ
ルトがキュリー温度を上昇させる強磁性を支持する場合
よりも重要な差を構成する。鉄マトリックス中での自己
拡散は、キュリー温度を超えた際に突然に増大するの
で、キュリー温度を超えた際に拡散制御された全ての回
復プロセスおよび粗大化プロセスは、促進される。従っ
て、キュリー温度を高めることによって、焼戻し安定性
の改善も予想することができる。更に、コバルト合金化
された構造は、焼戻し処理の間に減速されて軟化し、ひ
いては高められた強度の調節を可能にする。更に、コバ
ルトが合金添加剤1質量%当たりのAc1−温度をニッ
ケルよりも明らかに少なく低下させるという事実は、重
要なことである。
【0021】ニッケルおよびコバルトとは異なり、マン
ガンは、元素の周期律表において元素の鉄と共に左側に
ある。このマンガンは、元素の乏しい元素であり、それ
によって固溶体中でのこの元素の作用は、明らかにニッ
ケルおよびコバルトとは区別される。しかし、それにも
拘わらず、Ac1−温度を著しく減少させるオーステナ
イト安定性元素は、延性に対して特にプラスの作用を残
すのではなく、むしろ不利な作用を残す。
【0022】この確認事項および仮定から出発して、耐
熱性と延性との組合せによる改善に関連して合金の企画
が提案される: 1)本発明による合金は、有効な核の新規形成挙動を有
し、したがって鍛造および標準化(オーステナイト化)
によって改善された粒子構造およびブロック構造を発生
させることができる。この粒子の微細化は、難溶性の窒
化物の分散液によって発生され、この分散液は、窒素を
強力な窒化物形成体、例えばバナジウム、ニオブ、タン
タル、チタン、ハフニウムおよびジルコニウムに合金化
することによって形成される。粒子の微細化それ自体
は、調節された粒子構造およびブロック構造が窒化物に
よって粗大化に対して良好に安定化されている場合に
は、耐熱性に貢献することができる。しかし、決定的な
ことは、延性に対する粒子微細化の有利な作用が延性に
対する粗大な一次相の不利な作用を凌駕することであ
る。
【0023】2)改善された耐熱性は、熱安定性の析出
相によって保証され、この析出相は、少ない体積含分、
即ち僅かな溶解性、ひいては粗大化に対する高い抵抗で
高められた試験温度の際に1モル容量当たり最大の粒子
硬化作用を可能にする。好ましい析出相は、項目1にお
ける粒径限界を可能にする窒化物と同じ型であるべきで
ある。
【0024】3)析出反応は、均一に進行すべきであ
り、したがって延性と耐熱性との組合せは、粗大な被膜
状の析出物および粒度および二次粒度の不均一な分布に
よって損なわれない。
【0025】4)ニッケルの延性を促進させる作用を置
換要素として利用しかつAc1−温度およびAc3−温
度を低下させるために、ニッケルを合金化すべきであ
る。この変換温度の減少は、材料を室温から硬化温度へ
加熱した後に、窒化物の析出を深いオーステナイト化温
度で可能にする。
【0026】5)コバルトの作用は、ニッケルに対する
補助的な置換要素として延性の向上のために利用される
べきである。このコバルトは、ニッケルとは異なり、専
ら溶解された元素として利用され、相変換に影響を及ぼ
す(フェライト/オーステナイト)ために利用されるべ
きではない。また、置換元素として、焼戻し安定性を改
善する。
【0027】6)望ましい合金化、殊に窒素の導入は、
脆化をもたらす元素、例えば珪素およびマンガンの含量
が要件に相応して僅かに維持されることができるという
枠条件下で得ることができる。
【0028】欧州特許出願公開第0866145号明細
書A2の記載から、窒素、バナジウムおよび他の特殊な
窒化物形成剤、例えばニオブ、チタン、タンタル、ジル
コニウムおよびハフニウムの制御された合金化は、第1
の3つの点を極めて十分に満たし、したがって改善され
た機械的性質に関連して鋼合金化の発展に利用すること
ができる。この場合、粒子の微細化ならびに析出物の硬
化に有効に利用することができる窒化バナジウムは、手
がかりとなる役割を果たす。決定的なことは、この種の
鋼の焼戻し処理が600〜650℃の温度で、同様に焼
戻しされたが、しかし、常用の合金と比較して明らかに
耐熱性を上昇させることができることにある。この耐熱
性の上昇は、700℃の温度で最初にGoecmen, A. 他:
Precipitation Behavior and Stability of Nitrides i
n High Nitrogen Martensitic 9%and 12% Chromium St
eels, ISIJ Int., 1996, 36, p. 769によって観察され
た、前記温度範囲内での窒化バナジウムによって開始さ
れる析出硬化に帰因する。この場合、重要なことは、鉄
格子に対する窒化バナジウムの高い干渉性を有する微細
で緊密な析出状態が見い出されたことにある。即ち、6
00〜650℃で窒化バナジウム上での二次硬化が45
0〜530℃での古典的な二次硬化と比較して特殊な延
性の利点を提供しないものと推論することができる。
【0029】欧州特許出願公開第0866145号明細
書A2に記載の本発明による合金の他の重要な役割は、
元素のマンガンによって演じられる。従って、元素のマ
ンガンには、特に高い窒素含有の鋼において重要な役割
が与えられている。それというのも、このマンガンは、
溶融液中ならびにオーステナイトマトリックス中で窒素
に対する溶解性を上昇させるからである。更に、マンガ
ンは、長時間でオーステナイト−フェライト変態の変態
鼻を移動させるという性質を有している。このマンガン
の性質から、窒化バナジウムを溶解焼鈍処理後になおマ
ルテンサイト組織の変態前に準安定性のオーステナイト
の範囲内で再び析出するという有利な前提条件が明らか
となる。これとは異なり、炭素含有の12%のクロム鋼
の面上でマンガンは、焼戻しによる脆化を本質的に促進
する不純物元素として理解される。従って、マンガンの
含量は、殊に350〜500℃の温度範囲内での使用に
関連して一般に最少量に制限されている。
【0030】高い窒素含有の9〜13%のクロム鋼中で
のニッケルによるマンガンの置換は、新規の利点および
可能性を成し遂げる。この置換は、ニッケルが置換元素
として固溶体中で結晶マトリックスの延性を改善するこ
とから出発する。更に、ニッケルを有する合金によっ
て、Ac1−温度およびAc3−温度は減少される。こ
の合金は、N−合金化系およびV−合金化系において、
窒化バナジウムを低いオーステナイト化温度で、即ちオ
ーステナイトマトリックス中で析出することができると
いう利点を成し遂げる。しかし、決定的な利点は、オー
ステナイト組織のマトリックスへの変性前に、それ自体
種晶添加するのが困難な窒化バナジウムに容易にマルテ
ンサイト組織の状態変化に富んだマトリックス中で種晶
添加することができることにある。即ち、窒化バナジウ
ムをオーステナイト組織のマトリックス中で微細に分散
させて析出することを意図する場合には、欧州特許出願
公開第0866145号明細書A2に記載されているよ
うに、溶解焼鈍処理に直接に続けて”準安定性”のオー
ステナイト中で時効硬化を実施することは、もはや不必
要である。更に、窒化バナジウムのための種晶を簡単に
マルテンサイト組織のマトリックス中で形成させること
ができるので、オーステナイト組織中での窒化物の熟成
のための時効硬化時間は明らかに短縮させることができ
る。従って、ニッケルとの合金化によって、窒化バナジ
ウムを、変態能を有するオーステナイト組織のマトリッ
クス中で急速かつ有効に析出するという新しい方法が提
供される。更に、オーステナイト硬化は、有効にマンガ
ンなしに実施されることができるので、マルテンサイト
組織のマトリックスの安定性も焼戻し脆化と比較してマ
ンガンの著しい制限によってさらに改善させることがで
きる。
【0031】更に、合金は窒素の好ましい含量に対して
十分に高い溶解性をもたらすことを考慮することが肝要
である。マンガンが窒素に対する溶解性を上昇させ、ニ
ッケルが窒素に対する溶解性を低下させることは、公知
である。更に、望ましい合金の企画の特殊な利点は、窒
素に要求される溶解性が既に元素のバナジウムによって
提供されることにあり、この場合このバナジウムは、最
適な組織の形成のために窒素に対して殆んど化学量論的
割合で合金化される。窒素の溶解性に対するバナジウム
の支配的な作用は、窒素の高められた好ましい含量をバ
ナジウムによってバナジウムに対して殆んど化学量論的
に過圧の使用なしに導入することができ、したがって副
次的にのみニッケルおよびコバルトの存在によって妨害
することを可能にする。
【0032】更に、元素のコバルトを用いた場合には、
窒化物の過剰老化および焼戻しの際に強化されたオース
テナイト復帰を誘発させることなく焼戻しの際の置き換
えの回復を減少させる方法を提供する。
【0033】次に、それぞれの元素の質量%での好まし
い量および選択された本発明による合金化範囲について
の理由は、それから生じる熱処理の方法と関連して提示
される。
【0034】クロム:クロム9〜13%の質量含分は、
肉厚の構成部材の良好な硬化可能性を可能にし、550
℃の温度までの十分な酸化安定性を保証する。9%未満
の質量含分は、焼入れ可能性を損なう。13%を超える
含量は、窒素とともにバナジウムをも結合し、ひいては
窒化バナジウムによる硬化の作用を減少させる、焼戻し
の間の六方晶系窒化クロムの促進された形成をまねく。
最適なクロム含量は、10.5〜11.5%である。
【0035】マンガンおよび珪素:これらの元素は、珪
素と一緒になって焼戻し脆化を促進させ、したがって最
少含量に制限されなければならない。規定すべき範囲
は、取鍋冶金学的方法(pfannenmetallurgischen Moegl
ichkeiten)を考慮しながらマンガンに対して0.00
1〜0.25%の範囲内および珪素に対して0.001
〜0.15%の範囲内にある。
【0036】ニッケル:ニッケルは、オーステナイト安
定性元素としてδ−フェライトの抑制のために使用され
る。更に、このニッケルは、溶解された元素としてフェ
ライトマトリックスにおいて延性を改善する。約3.5
質量%までのニッケル含量は、焼戻し温度もしくは応力
残留なしの焼鈍温度が全体の焼入れ処理の終結まで60
0℃を超えない場合には、溶解されたマトリックス中で
均質のままである。低い温度、即ち600〜640℃で
焼戻しされる合金については、好ましいニッケル含量
は、3〜4質量%である。4質量%を超えるニッケル含
量は、溶解焼鈍および焼戻しの後に残留オーステナイト
もしくは焼戻しオーステナイトの高められた含分が焼入
れされたマルテンサイト中に存在しうるように、オース
テナイト安定性を強化する。しかし、化学量論的な窒素
含分およびバナジウム含分の存在下に高い窒素含有の鋼
には、特殊な熱処理が提供される。このような合金を高
い温度、例えば1150〜1200℃で溶解焼鈍した場
合には、焼戻し後の高められた残留オーステナイト含分
は、溶液中の高い窒素濃度およびバナジウム濃度の作用
に帰因し、こうして生じるマルテンサイト開始温度の上
昇に帰因する。しかし、700〜850℃の温度での改
めての再オーステナイト化は、窒化バナジウムの新たな
析出を可能にし、この新たな析出は、急冷によるマルテ
ンサイトへの完全な再変態を再び可能にするようにマル
テンサイト出発温度を再び上昇させることができる。こ
の種の低い再オーステナイト化温度は、窒化バナジウム
の早期の過剰老化を阻止し、したがってこの再オーステ
ナイト化温度は、依然として本質的な粒子硬化に貢献す
ることができる。この処理によって、窒化バナジウムで
良好に安定化されたマルテンサイトが生成されることが
でき、このマルテンサイトは、先行する粒子新形成過程
によって特に高い延性の採用を可能にする。例えば、6
00℃でのもう1つの焼戻し処理は、小さなオーステナ
イト島の形成を生じ、このオーステナイト島は、マルテ
ンサイトへの再変態に対して十分に安定化されている。
このオーステナイトの体積含分は、ニッケル含量が7%
を超えない限り、5%未満である。なお、いっそう高い
体積含分は、高められた温度で長時間の貯蔵の際に脆化
の危険を増大させる。この種の熱処理は、ニッケル2〜
7%を有する合金に適している。耐熱性と延性との特に
良好な組合せは、前記の特殊な熱処理技術を考慮しなが
ら4.5〜6.5%の範囲内のニッケル含量を用いて達
成される。
【0037】コバルト:この元素は、固溶体中の鉄に対
する置換元素として延性と耐熱性の最終的な微細な調整
に使用される。コバルト10%までの湿量含分は、オー
ステナイト変態を600〜650℃の範囲内の焼戻し温
度で予想しうることなく、合金化されることができる。
コバルトの最適な含量は、モリブデンおよびタングステ
ンの量比により左右される。コバルトの合金は、約8質
量%を超えると不経済であることが証明されている。コ
バルトの高い合金費用を考慮して、好ましい合金範囲
は、3.5〜4.5質量%である。
【0038】モリブデンおよびタングステン:双方の元
素は、部分的に溶解された元素としての混合結晶の硬化
および長時間の応力負荷の間の析出硬化により耐クリー
プ性を改善する。しかし、これらの元素の過度に高い含
量は、長時間の貯蔵の間に脆化をまねき、この脆化は、
ラーヴェス相(W、Mo)およびシグマ相(Mo)の析
出および粗大化によって定められている。この理由か
ら、全含量Mo+Wは、4%に制限されなければならな
い。理想的な範囲は、W+Moの場合には、1〜4%の
範囲内にある。この場合、モリブデンは、タングステン
と比較してよりいっそう高い溶解性のために好ましい。
好ましい範囲は、1〜2%の範囲内のモリブデン含量お
よび1%未満のタングステン含量によって定められてい
る。よりいっそう好ましいのは、1〜2.5%のモリブ
デン含量および0.5%未満のタングステン含量であ
る。特に好ましい範囲は、無視することができる少量の
タングステン含量によって定められるが、しかし、1〜
3%のモリブデン含量によって定められる。
【0039】バナジウムおよび窒素:これら双方の元素
は、一緒になって粒度の構成および析出の硬化を決定的
に制御する。組織の形成の態様は、元素のバナジウムお
よび窒素が殆んど化学量論的割合で互いに合金化されて
いる場合に最適である。この場合、理想的な質量比V/
Nは、3.6である。窒素の溶解性は、バナジウムによ
って改善されるので、簡単に過剰の化学量論的なV/N
比を得ようと努力することができる。簡単に過剰の化学
量論的割合は、ときどき窒化クロムに対する窒化バナジ
ウムの安定性を上昇させる。総じて云えば、好ましくは
V/N比は、3.5〜4.2の範囲内にある。特に好ま
しい範囲は、3.8〜4.2である。窒素および窒化バ
ナジウムの具体的な含量は、窒化バナジウムの最適な体
積含量により左右され、この場合この窒化バナジウム
は、溶解焼鈍の間に不溶性の一次窒化物として残留す
る。バナジウムおよび窒素の全含量が高くなればなるほ
ど、もはや溶解しない窒化バナジウムの含量がますます
高くなり、かつ粒子の微細化の効果がますます大きくな
る。しかし、延性に対する粒子の微細化のプラスの影響
は制限されている。それというのも、一次窒化物の体積
含量が増大するにつれて、一次窒化物それ自体は、延性
を制限するからである。窒素の好ましい含量は、0.1
3〜0.18質量%の範囲内にあり、バナジウムの好ま
しい含量は、0.5〜0.8質量%の範囲内にある。
【0040】チタン:窒化チタンは、難溶性の窒化物で
あり、この窒化物は、粒子の微細化を支持する。しか
し、窒化バナジウムとは異なり、この窒化チタンは、既
に溶融相中および殊に凝固相中で形成することができ、
それによって凝固全体は、静かに微細に行なわれる。し
かし、高い質量含分は、極めて大きな一次窒化物を生
じ、この一次窒化物は、延性を劣化する。従って、上限
のチタン含量は、0.05%に制限されなければならな
い。
【0041】ニオブ、タンタル、ジルコニウムおよびハ
フニウム:これらは、全て強力な窒化物形成剤であり、
この窒化物形成剤は、粒子微細化効果を支持する。一次
窒化物の体積含量を少なく維持するために、この一次窒
化物の全含量は、0.1%に制限されなければならな
い。特に好ましい窒化物形成剤は、ニオブである。それ
というのも、ニオブは、少量で窒化バナジウム中に溶解
し、それによって窒化バナジウムの安定性を改善するこ
とができるからである。好ましくは、ニオブは、0.0
1〜0.07%の範囲内で合金化される。
【0042】燐、硫黄、砒素、アンチモンおよび錫:こ
れらの元素は、珪素およびマンガンと一緒になって35
0〜500℃の範囲内で長時間貯蔵した際に焼戻し脆化
を強化する。従って、これらの元素は、最少の許容可能
な含量に制限される。
【0043】アルミニウム:この元素は、強力な窒化物
形成剤であり、この窒化物形成剤は、窒素を既に溶融液
中に結合し、それによって合金化された窒素の作用を強
力に損なう。溶融液中に形成された窒化アルミニウム
は、極めて粗大であり、延性を減少させる。従って、ア
ルミニウムは、0.01%の湿量含分に制限されなけれ
ばならない。
【0044】炭素:炭素は、焼戻しの際に炭化クロムを
形成し、この炭化クロムは、改善された耐クリープ性に
必要とされる。しかし、高すぎる炭素含量の場合には、
これから生じる、炭化物の高められた体積含量は、延性
の低下をまねき、この延性の低下は、殊に炭化物の粗大
化によって長時間の貯蔵の間に効果を発揮する。従っ
て、炭素含量は、上向きに0.1%に制限される。ま
た、炭素が溶接の際に硬化を強化するという事実は、欠
点である。特に好ましい炭素含量は、0.02〜0.0
7質量%の範囲内にある。
【0045】次に本発明を実施例および図1〜5につき
詳説する。
【0046】
【実施例】第1表は、一連の本発明による合金を記載し
たものである。
【0047】溶融液10kgとして誘導炉中で溶融され
た合金AP35およびAP38を除外して、全て別の合
金を電極60〜80kgの形で電極−スラッグ−再溶融
法により製造した。更に、合金AP28Mを除外して、
規定された窒素含量の調整の際に溶融の間もしくは再溶
融過程の間に過圧を使用しなかった。即ち、この合金
は、0.9バール(大気圧)で溶融されたかまたは再溶
融された。これから生じる窒素分析(第1表)は、好ま
しい窒素含量それ自体を高いニッケル含量(5.5%ま
で)の際に過圧なしに生産の間に導入することができる
ことを証明する。
【0048】次の熱処理は、溶解焼鈍(再オーステナイ
ト化温度)および焼戻し(再オーステナイト化温度)に
関連して1つの範囲を記載したものであり、この場合こ
の温度範囲で熱処理は実施された: W2: 1080℃での溶解焼鈍/2時間/室温での空気冷却 640℃での焼戻し処理/2時間/室温での空気冷却 600℃での応力残留なしの焼鈍/1時間 W4: 1180での溶解焼鈍/2時間/室温での空気冷却 640℃での焼戻し処理/2時間/室温での空気冷却 600℃での応力残留なしの焼鈍/1時間 T2C: 1180℃での溶解焼鈍/2時間/室温での空気冷却 750℃での再オーステナイト化/2時間/室温での空
気冷却 600℃での応力残留なしの焼鈍/1時間 全て別の熱処理において、いずれにせよ、溶解焼鈍温度
および焼戻し温度を、これらの温度が依然としてW2、
W4およびT2Cの温度の間にあるように変えた。熱処
理には、7×7cmの断面寸法を有する鍛造されたブ
ロックを使用した。
【0049】図1は、全てコバルト4質量%で合金化さ
れておりかつその他の点で主にニッケル含量において互
いに区別される、3つの異なる本発明による合金AP2
8M、”アロイD”および”アロイE”に関連して室温
および組織の転移温度(FATT)で見掛降伏点により
調整可能な組合せを示す。結果は、1060℃で溶解焼
鈍され、640℃で焼戻しされ、かつ600℃で応力残
留なしで焼鈍された、型X12CrNiMo12の商業
的合金の結果と比較される。原則的に、選択された合金
によって、改善された見掛降伏点及び/又は延性を達成
することができることを確認することができる。この場
合決定的なことは、見掛降伏点と延性の達成可能な組合
せが敏感な方法でニッケルの含量ならびに溶解焼鈍温度
によって影響を及ぼされうることが確認されることであ
る。図1から、溶解焼鈍温度の上昇によって見掛降伏点
は、有効に改善されうるが、しかし、同様に減少された
延性の低下も改善されうることが判明する。更に、図1
から、ニッケル含量の上昇によって、延性は有効に改善
されうるが、しかし、強度の低下も改善されうることが
判明する。これらの確認事項の組合せから、一面でニッ
ケル含量の最適化、他面、熱処理の最適化によって改善
された強度および延性の性質を調整する新しい方法が明
らかになる。(W2:1080℃/640℃/600
℃)に対する簡単な熱処理において、耐熱性と延性の最
適な組合せは、3〜3.5%の範囲内のニッケル含量で
達成される。見掛降伏点と延性の際立った良好な組合せ
は、殊に高いニッケル含有の合金(”アロイE”)を用
いて2段階のオーステナイト化処理によって1180℃
および750℃で現われることができる。この好ましい
性質の組合せは、高いニッケル含有の合金の低いAc3
−温度によって可能になる。即ち、例えば5.5質量%
のニッケル含有量を有する合金において、マトリックス
は、750℃で殆んど完全にオーステナイト化されてい
ることから出発する。これは、1180℃で溶解された
窒化バナジウムの高い体積含量が次の焼鈍処理で750
℃でオーステナイト組織中で新たに析出されうることを
意味する。ニッケルを有する合金は、溶解焼鈍処理およ
び室温への急冷の後に低いオーステナイト化温度で貯蔵
焼鈍を導入するために、明らかに良好に利用することが
でき、その後に熱処理と古典的な急冷処理および焼戻し
処理が継続される。
【0050】図2は、種々の合金について、室温での見
掛降伏点と組織の転移温度FATTとの組合せに対する
コバルトの作用を示す。この例において、種々の熱処理
は、1080〜1200℃の溶解焼鈍温度、640〜7
50℃の焼戻し温度で試験され、最終的に応力残留なし
の焼鈍処理は、600℃で試験された。低いコバルト含
量を有する全ての合金は、低い見掛降伏点の値および高
いFATT値の際に象限内の下方に存在し、即ち高めら
れたコバルト含量を有する類似の合金は、見掛降伏点と
延性との調整可能な組合せに関連して明らかに劣ってい
る。
【0051】図3には、図2に示した結果と同様に、室
温で同じ合金についての試験結果(同様の熱処理)が5
50℃での熱時見掛降伏点を考慮しながら示されてい
る。コバルトを有する合金、例えばAP28Mは、コバ
ルトなしの合金、例えば”アロイA”よりも、550℃
での熱時見掛降伏点と組織の転移温度との明らかに良好
な組合せを提供する。最高の結果は、2段階の溶解焼鈍
処理(1180℃、750℃)で達成される。
【0052】図4および図5は、本発明による合金”ア
ロイD”および”アロイE”の見掛降伏点が実施された
熱処理に依存して試験温度に対しプロットされているグ
ラフ図を示す。更に、比較合金X12CrNiMo12
(硬化可能なマルテンサイト鋼)およびIN706(析
出可能なNi−Fe合金)の見掛降伏点ならびにそのノ
ッチ付試験片による衝撃試験作業Avが本発明による合
金と比較して記入されている。本発明による合金”アロ
イD”および”アロイE”に関連して、耐熱性の改善
は、熱処理およびニッケル含量とは無関係に高い試験温
度になるまで維持されたままであることが確認される。
本発明による新規の合金は、ニッケル−鉄を基礎とする
オーステナイト高温合金(IN706)と比較して室温
でのノッチ付試験片による衝撃試験作業と550℃での
耐熱性との極めて良好な組合せを示す。
【0053】勿論、本発明は、記載された実施例に限定
されるものではない。
【0054】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】組織の転移温度(FATT)に依存して室温で
選択された合金の見掛降伏点をプロットしたものであ
り、見掛降伏点およびFATTに対するニッケルの作用
および熱処理温度の作用を認めることができるグラフ
図。
【図2】組織の転移温度(FATT)に依存して室温で
選択された合金の見掛降伏点をプロットしたものであ
り、見掛降伏点およびFATTに対するニッケルの作用
およびコバルトの作用を認めることができるグラフ図。
【図3】組織の転移温度(FATT)に対して550℃
の試験温度で選択された合金の見掛降伏点をプロットし
たものであり、550℃での見掛降伏点およびFATT
に対するニッケルの作用およびコバルトの作用を認める
ことができるグラフ図。
【図4】比較合金X12CrNiMo12(硬化可能な
マルテンサイト鋼)およびIN706(析出可能なNi
−Fe合金)と一緒に生じる、種々の熱処理による本発
明による合金”アロイ(alloy)D”の見掛降伏点およ
びそれに属する、試験温度に対するノッチ付試験片によ
る衝撃試験作業Avをプロットしたグラフ図。
【図5】比較合金X12CrNiMo12(硬化可能な
マルテンサイト鋼)およびIN706(析出可能なNi
−Fe合金)と一緒に生じる、種々の熱処理による本発
明による合金”アロイ(alloy)E”の見掛降伏点およ
びそれに属する、試験温度に対するノッチ付試験片によ
る衝撃試験作業Avをプロットしたグラフ図。

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 硬化可能なマルテンサイト調質鋼におい
    て、次の組成(質量%での記載):Cr9〜13%、M
    n0.001〜0.25%、Ni2〜7%、Co0.0
    01〜8%、合計で0.5〜4%のWとMoの少なくと
    も1つ、V0.5〜0.8%、合計で0.001〜0.
    1%のNbとTaとZrとHfの少なくとも1つ、Ti
    0.001〜0.05%、Si0.001〜0.15
    %、C0.01〜0.1%、N0.12〜0.18%、
    P最大で0.025%、S最大で0.015%、Al最
    大で0.01%、Sb最大で0.0012%、Sn最大
    で0.007%、As最大で0.012%、残分鉄およ
    び通常の不純物を有し、但し、バナジウムと窒素との質
    量比V/Nは、3.5〜4.2の範囲にあることを特徴
    とする、硬化可能なマルテンサイト調質鋼。
  2. 【請求項2】 Ni2〜4.5%を有する、請求項1記
    載の硬化可能なマルテンサイト調質鋼。
  3. 【請求項3】 Ni2.7〜3.7%を有する、請求項
    1記載の硬化可能なマルテンサイト調質鋼。
  4. 【請求項4】 Ni4〜7%を有する、請求項1記載の
    硬化可能なマルテンサイト調質鋼。
  5. 【請求項5】 Ni4.5〜6.5%を有する、請求項
    1記載の硬化可能なマルテンサイト調質鋼。
  6. 【請求項6】 Co0.5〜6%を有する、請求項1か
    ら5までのいずれか1項に記載の硬化可能なマルテンサ
    イト調質鋼。
  7. 【請求項7】 Co2〜6%を有する、請求項6記載の
    硬化可能なマルテンサイト調質鋼。
  8. 【請求項8】 Co3.5〜4.5%を有する、請求項
    6記載の硬化可能なマルテンサイト調質鋼。
  9. 【請求項9】 Cr10〜12%を有する、請求項1か
    ら8までのいずれか1項に記載の硬化可能なマルテンサ
    イト調質鋼。
  10. 【請求項10】 Cr10.5〜11.5%を有する、
    請求項9記載の硬化可能なマルテンサイト調質鋼。
  11. 【請求項11】 C0.02〜0.07%を有する、請
    求項1から10までのいずれか1項に記載の硬化可能な
    マルテンサイト調質鋼。
  12. 【請求項12】 V0.5〜0.7%およびN0.14
    〜0.17%を有する、請求項1から11までのいずれ
    か1項に記載の硬化可能なマルテンサイト調質鋼。
  13. 【請求項13】 Nb0.01〜0.07%を有する、
    請求項1から12までのいずれか1項に記載の硬化可能
    なマルテンサイト調質鋼。
  14. 【請求項14】 1〜4%の範囲内のMoとWの合計を
    有する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の
    硬化可能なマルテンサイト調質鋼。
  15. 【請求項15】 W1%未満および1〜2.5%の範囲
    内のMoとWの合計を有する、請求項14記載の硬化可
    能なマルテンサイト調質鋼。
  16. 【請求項16】 W0.5%未満および1〜2.5%の
    範囲内のMoとWの合計を有する、請求項15記載の硬
    化可能なマルテンサイト調質鋼。
  17. 【請求項17】 請求項1から16までのいずれか1項
    に記載の組成を有する鋼を熱処理する方法において、次
    の時間的に順次の処理過程: − 1050〜1250℃での溶解焼鈍、 − 300℃未満の温度への冷却、 − 焼戻し処理、600〜900℃での部分的または完
    全な再オーステナイト化、 − 300℃未満の温度への冷却、 − 550〜650℃の温度での焼鈍を有する、請求項
    1から16までのいずれか1項に記載の組成を有する鋼
    を熱処理する方法。
JP2001151476A 2000-05-24 2001-05-21 硬化可能なマルテンサイト調質鋼および鋼の熱処理法 Ceased JP2002004012A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

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