JP2002065249A - 抗酸菌選択分離用培地 - Google Patents

抗酸菌選択分離用培地

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JP2002065249A JP2000255231A JP2000255231A JP2002065249A JP 2002065249 A JP2002065249 A JP 2002065249A JP 2000255231 A JP2000255231 A JP 2000255231A JP 2000255231 A JP2000255231 A JP 2000255231A JP 2002065249 A JP2002065249 A JP 2002065249A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、液体培地において抗酸菌を培養する
際に問題となるコンタミネーションを効果的に防止し、
かつ抗酸菌を従来の検出効率と同等またはそれ以上の効
率を維持しつつ検査期間を短縮することができる、抗酸
菌培養用液体培地を提供することを課題とする。本発明
はさらに、CPCを主成分として含む抗酸菌培養用サンプ
ル前処理剤に適合するための固型培地と液体培地の組合
せからなる抗酸菌培養用固型−液体二相培地を提供する
ことを課題とする。 【解決手段】本発明は、M7H9-B培地からなる基本培地
に、ヘミン、L-アスパラギン水和物、カゼインペプト
ン、酵母エキス、オレイン酸を含むことを特徴とする、
改変M7H9-B培地を提供する。本発明はまた、CPCを含む
サンプル前処理剤に適合するための固型ビット培地と液
体改変M7H9-B培地の組合せからなる二相培地を提供す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗酸菌を対象とす
る選択分離培養に関する。より具体的には、抗酸菌培養
用液体培地である改変M7H9-B培地、当該改変M7H9-B培地
を用いた液体−固型二相培地、およびそれらを使用する
抗酸菌培養方法に関する。本発明はさらに、抗酸菌培養
用のサンプル前処理剤および改変M7H9-B培地を含む、抗
酸菌培養キットに関する。
【0002】
【従来の技術】結核菌の検査においては、分離培養法が
しばしば用いられる。分離培養法は、サンプルからの抗
酸菌の検出感度が高く、また分離した菌を用いて菌種の
鑑別・同定や、薬剤耐性試験を行うことができるという
特徴を有している。一般的には、分離培養法は、サンプ
ルの前処理、処理サンプルの培地への接種、および成績
判定の3つの工程から構成される。
【0003】近年の技術の進歩および検査業務の増加に
伴って改訂された新結核菌検査指針2000(2000年4月)
においては、従来の結核菌検査指針と比較して、検査期
間の短縮および検査の精度の向上が要求されている。こ
の新結核菌検査指針2000においては、従来からの直接塗
抹法や小川法に代えて、サンプルの前処理にN-アセチル
-L-システイン・NaOH(NALC-NaOH)を用いる方法により
検査を行うこと、および検出感度の向上に加え迅速性を
重視して、処理サンプル中からの初代分離に液体培地を
使用することが推奨されている。
【0004】喀痰などのサンプルを用いる場合、抗酸菌
以外の他の一般細菌がサンプル中に混入することは避け
られない。サンプル中に抗酸菌以外の一般細菌が残存し
たまま、これらの前処理したサンプルを液体培地中で培
養した場合には、混入した一般細菌も液体培地中で増殖
するため、培地中で増殖した細菌群の中から、抗酸菌の
みを区別することができないという、いわゆるコンタミ
ネーションの問題が生じていた。また、そのようなコン
タミネーションの有無を確認するため、かかる液体培地
中における抗酸菌以外の一般細菌の有無を確認すること
を目的として、種々の染色法あるいは血液寒天培地など
の使用による検出を行うこととすれば、かえって手間と
コストがかかってしまうなどの不利益を生じることにな
る。従って、このサンプル中に含まれる他の一般細菌
は、分離培養を行う前に、前処理をして予め死滅させて
おくことが望まれている。
【0005】このようなサンプルの前処理方法として、
NaOH法、NALC-NaOH法、セチルピリジニウムクロライド
(CPC)法などが知られている。NaOH法は、抗酸菌が、
他の一般細菌と比較してNaOHに対する抵抗性が強いとい
う特徴を有していることに基づいて行われる前処理であ
る。しかし、NaOHの濃度が高く、作用温度が高く、ある
いは作用時間が長ければ、抗酸菌もNaOHにより死滅して
しまう。このうち作用濃度および作用時間は、サンプル
の粘性に依存して変化させることが一般的である。その
ため、新結核菌検査指針2000においては、喀痰の場合に
は、粘液溶解剤であるNALCを加えて喀痰の消化を促進
し、NaOHの抗酸菌に対する障害作用の軽減を図るNALC-N
aOH法を推奨している。しかし、NALC-NaOH法でも、後述
するCPC法と比較して、サンプル中の他の一般細菌の混
入、いわゆるコンタミネーションの防止が完全ではない
という欠点が存在していた。
【0006】これに対して、CPC法は、CPCが細菌に対す
る静菌効果を有していることを利用する方法であり、抗
酸菌が、他の一般細菌と比較して、CPCに対する抵抗性
が比較的強いという特徴に基づいて行われる前処理方法
である。このサンプルの前処理のためのCPC法は、前述
したように、NaOH法もしくはNALC-NaOH法による前処理
と比較して、他の一般細菌の混入をより完全に防止する
ことができるという利点を有している。従って、分離培
養法についての前処理としては、CPC法による前処理が
望まれる。
【0007】検出感度の向上および迅速性の観点から、
新結核菌検査指針2000において使用することが推奨され
ている液体培地としては、ソートン培地(Sauton's med
ium)、デュボス培地(Dubos medium)、ミドルブルッ
ク7H9ブロス(Middlebrook 7H9 Broth:以下、M7H9-Bと
いう。)といった培地が知られている。これらの液体培
地においては、これまで利用されてきた小川培地などの
固型培地と比較して、培養日数の短縮という目的を達成
することが可能である。
【0008】これらから総合すると、抗酸菌の分離培養
法において最も望ましい態様は、CPC法により前処理し
たサンプルを、上述したような液体培地中で増殖させる
方法である。
【0009】抗酸菌は、CPCに対して他の一般細菌と比
較して抵抗性があるとはいうものの、NaOHの場合と同様
に、CPCに対して長時間曝露されることにより、他の一
般細菌と同様に死滅することが知られている。従って、
CPCにより前処理したサンプルを液体培地を使用して培
養する場合には、CPCによる静菌効果を中和することが
できる培地を使用することが必要である。しかし、これ
までに知られている液体培地の中には、CPCによる静菌
効果を中和することができるものは知られていなかっ
た。そのため、従来は、CPCにより前処理されたサンプ
ルについては、CPCの静菌効果を中和することができる
卵培地、例えば小川培地などの固型培地に接種しなけれ
ばならないという欠点を有していた。
【0010】また、新結核菌検査指針2000の中では、M7
H9-Bを用いた変法として、MGIT(Mycobacteria Growth
Indicator Tube)法も推奨されている。この方法もま
た、検査期間の短縮には非常に効果を発揮し、非放射性
で、特殊な機器を必要とせず、かつ判定も容易であるな
ど利点が多い。しかし、当該液体培地中ではCPCの静菌
効果を中和することができないため、基本的にはサンプ
ルの前処理方法としてCPC法以外の方法を使用すること
しかできず、また試薬としてのコストが高いという問題
点が存在している。
【0011】このような現状の下、現在の当該技術分野
においては、サンプル中に存在する結核菌以外の一般細
菌によるコンタミネーションをできるだけ効率よく防止
し、従来の固型培地を用いた結核菌の分離・培養方法よ
りも結核菌の検出をより確実かつ短期間に行うため、前
処理としてCPCを利用することができ、コストを抑えた
液体培地を開発することが求められている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、液体培地に
おいて抗酸菌を培養する際に問題となるコンタミネーシ
ョンを効果的に防止し、かつ抗酸菌を従来の検出効率と
同等またはそれ以上の効率を維持しつつ検査期間を短縮
することができる、抗酸菌培養用液体培地を提供するこ
とを目的とする。本発明はさらに、CPCを主成分として
含む抗酸菌培養用サンプル前処理剤に適合するための固
型培地と液体培地の組合せからなる抗酸菌培養用固型−
液体二相培地を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、M7H9-B培地か
らなる基本培地に、ヘミン、L-アスパラギン水和物、カ
ゼインペプトン、酵母エキス、オレイン酸を含むことを
特徴とする、改変M7H9-B培地を提供する。本発明の改変
M7H9-B培地は、さらに抗菌剤を添加して使用してもよ
い。本発明の改変M7H9-B培地は、従来のM7H9-B基本培地
と比較して、大幅な抗酸菌検出能向上という従来にない
効果を奏することができる。
【0014】ここで、改変M7H9-B培地中に含まれるヘミ
ンは、イソニアジド(INH)耐性結核菌の分離向上のた
めに培地中に添加する。また、改変M7H9-B培地中に含ま
れるL-アスパラギン水和物、カゼインペプトン、酵母エ
キス、オレイン酸は、抗酸菌発育支持能向上のために培
地中に添加する。
【0015】前述したように、抗酸菌自体もCPCに長時
間曝されることにより、死滅することが知られているた
め、長期間にわたる培養時においては、CPCによる静菌
効果を中和することが必要となる。しかし、液体培地で
あるM7H9-B基本培地には、このようなCPCによる静菌効
果を中和する作用が存在しない。一方、前述した全卵を
基礎とした培地は、CPCによる静菌効果を中和する効果
を有するが、液体培地のような効率的な抗酸菌の増殖を
期待することができない。
【0016】そこで、本発明はまた、ビット培地上に、
前述した改変M7H9-B培地を重層させた、抗酸菌培養用固
型−液体二相培地(以下、単に二相培地という。)を提
供する。本発明で使用するビット培地は、全卵を基礎と
する固型培地である。本発明の前述した二相培地は、コ
ハク酸およびCPCを含む抗酸菌培養用サンプル前処理剤
により処理されたサンプルに対して使用することができ
ることを特徴とする。M7H9-B培地に基づく改変M7H9-B培
地を、全卵を基礎とするビット培地上に重層することに
より、当該改変M7H9-B培地がビット培地と接触するた
め、改変M7H9-B培地中に含まれるサンプル前処理剤由来
のCPCがビット培地の作用により中和され、かつ、改変M
7H9-B培地中に抗酸菌を接種することができるので、当
該改変M7H9-B培地中で効率のよい抗酸菌の培養を実現す
ることができる。
【0017】本発明は、上記の二相培地を用いた抗酸菌
の培養方法もまた提供する。この抗酸菌の培養方法で
は、上述したようなコハク酸およびCPCにより前処理さ
れたサンプルを培養することができる。本発明の培養方
法では、コハク酸およびCPCの処理を行う前に、サンプ
ルの粘性を低下させる処理を行ってもよい。本発明にお
いては、コハク酸およびCPCによる処理の後に遠心分離
を行って、目的とする抗酸菌を沈殿・濃縮した後に培養
することもできる。
【0018】本発明においては、さらに改変M7H9-B培地
およびビット培地を含む抗酸菌培養キットを提供する。
この抗酸菌培養キットは、さらに抗菌剤を含んでいても
よい。もしくは、本発明においては、コハク酸およびCP
Cを含む抗酸菌培養用サンプル前処理剤をさらに含む抗
酸菌前処理−培養キットもまた提供する。この抗酸菌前
処理−培養キットもまた、そのキット中にさらに抗菌剤
を含んでいてもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】抗酸菌培養用サンプル前処理剤お
よびそれを利用したサンプル前処理方法 本発明では、まず、サンプル中に存在する抗酸菌以外の
一般細菌によるコンタミネーションを効果的に防止する
ため、抗酸菌培養用サンプル前処理剤(以下、単にサン
プル前処理剤という。)による処理を行う。このサンプ
ル前処理剤は、コハク酸および界面活性剤であるCPCを
含むことを特徴とする。このサンプル前処理剤は、抗酸
菌が、他の一般細菌と比較して、コハク酸およびCPCに
対して抵抗性であるという特徴を利用して、他の一般細
菌を死滅させることを目的としたものである。これによ
り、サンプル中の抗酸菌のみを選択的に回収することが
できる。このようなコハク酸およびCPCを使用するサン
プルの前処理方法を、本明細書の以下において「コハク
酸−CPC法」という。
【0020】しかし、前述したように、抗酸菌自体もCP
Cに長時間曝されることにより、死滅することから、CPC
を用いてサンプルの前処理を行う場合には、他の一般細
菌に対する静菌効果を発揮でき、かつ抗酸菌に対する静
菌効果を発揮しないような条件下、例えばCPC濃度およ
びサンプル前処理剤反応時間などの条件下、において行
うことが必要である。抗酸菌を死滅させることはない
が、他の一般細菌は死滅させることができる程度のCPC
の濃度は、0.01〜1.0%、より好ましくは0.01〜0.2%、
最も好ましくは0.0375%である。また、サンプル中のコ
ハク酸濃度は、5%であることが好ましい。例えば、コ
ハク酸およびCPCを含むサンプル前処理剤は、以下の組
成:
【0021】
【表1】
【0022】を有することができる。そして、当該サン
プル前処理剤による処理時間は、好ましくは5〜60分
間、より好ましくは15〜30分間、最も好ましくは20分間
である。本発明の分離培養方法では、上述したコハク酸
−CPC法による処理を行う前に、サンプルの粘性を低下
させることを目的とする処理を行ってもよい。サンプル
の粘性を低下させることにより、サンプル中に混入する
抗酸菌以外の一般細菌に対するサンプル前処理剤の静菌
効果をより効率よく発揮することができる。サンプルの
粘性を低下させる処理としては、セミアルカリプロテア
ーゼによる処理があげられるがこれには限定されない。
サンプル前処理においてセミアルカリプロテアーゼを使
用した場合、そのサンプル溶液中のセミアルカリプロテ
アーゼ濃度および処理時間は、サンプルの粘性に応じて
当業者が適宜決定することができるが、通常、0.125〜
1.0%、より好ましくは0.125〜0.5%、最も好ましくは
0.25%の濃度、および1〜10分間、より好ましくは5〜10
分間、最も好ましくは10分間である。
【0023】サンプル前処理剤による処理を行う前に、
セミアルカリプロテアーゼ処理に加えて、NALC-NaOH処
理を行ってもよい。このNALC-NaOH処理の手順は、新結
核菌検査指針2000に記載されるNALC-NaOH法の手順に準
じて行うことができる。このNALC-NaOH処理では、NALC
の作用によりサンプルの粘性を低下させる効果を得られ
る他、NaOHの作用により一般細菌に対する静菌効果を得
ることもできる。NALC-NaOHのサンプル溶液中濃度およ
び処理時間は、サンプルの粘性、検体量に応じて当業者
が適宜決定することができるが、通常、1〜5%、より好
ましくは1〜3%、最も好ましくは1%の濃度で、そして1
0〜30分間、より好ましくは15〜20分間、最も好ましく
は15分間である。
【0024】セミアルカリプロテアーゼ処理したサンプ
ル、もしくはセミアルカリプロテアーゼ処理およびNALC
-NaOH処理したサンプルは、遠心分離して目的とする抗
酸菌を沈殿・濃縮した後にサンプル前処理剤による処理
に供してもよい。遠心分離の条件は、抗酸菌が沈殿し、
かつ抗酸菌を破壊しない程度の条件を当業者が適宜選択
することができ、好ましくは、2000〜3000×gで10〜30
分間、より好ましくは2000〜3000×gで15〜20分間、最
も好ましくは3000×gで20分間である。サンプルの遠心
分離を行う前に、リン酸緩衝液などの緩衝液を添加して
もよい。
【0025】本発明の分離培養方法において処理するサ
ンプルは、粘性が高く、抗酸菌以外の一般細菌が混入し
ているサンプル、例えば、喀痰、気管支ファイバー下擦
過サンプル、気管支肺胞、胃内容物などが該当するが、
これらに限定されない。
【0026】抗酸菌選択分離培地およびそれを利用した
抗酸菌培養方法 サンプル前処理剤で処理したサンプルは、その後、通常
の固型培地である2%小川培地、または後述する本発明
の二相培地のいずれにも接種することができる。ここで
2%小川培地とは、以下の組成:
【0027】
【表2】
【0028】を有する培地を、90℃で1時間かけて凝固
滅菌し、固型化したものをいう。また、ビット培地と
は、上記組成を有する2%小川培地に対して、さらにSTC
を150 mg添加し、90℃で1時間かけて凝固滅菌し、固型
化したものである。ここでSTCとは、2,3ジフェニル-5-
チエニル-(2)-テトラゾリウムクロリドをいう。
【0029】本発明において使用するM7H9-B基本培地
は、蒸留水1 Lあたり以下の組成を有する。
【0030】
【表3】
【0031】本発明は、上記M7H9-B培地を改良して大幅
に抗酸菌検出能を向上した改変M7H9-B培地を提供する。
本発明の改変M7H9-B培地は、上記M7H9-B培地に対して、
さらに以下の組成:
【0032】
【表4】
【0033】を含むことを特徴とする。ここで、ヘミン
は、イソニアジド(INH)耐性結核菌の分離向上のため
にM7H9-B培地中に添加する。また、L-アスパラギン水和
物、カゼインペプトン、酵母エキス、オレイン酸は、抗
酸菌発育支持能向上のためにM7H9-B培地中に添加する。
【0034】本発明の改変M7H9-B培地には、さらに抗菌
剤を添加して使用してもよい。本発明の改変M7H9-B培地
に添加して使用することができる抗菌剤は、アンホテリ
シンB、シクロヘキシミド、ポリミキシンB、ナリジキシ
ン酸、トリメトプリム、アズロシリンなどから選択する
ことができる。より好ましくはアンホテリシンBおよび
シクロヘキシミドを使用する。改変M7H9-B培地中に使用
する抗菌剤の濃度は、当業者が適宜決定することができ
るが、本発明の場合、例えば、以下の組成:
【0035】
【表5】
【0036】の抗菌剤を使用する。本発明の二相培地
は、斜面状に固型化したビット培地上に、上述した改変
M7H9-B培地または抗菌剤を含む改変M7H9-B培地を重層す
ることにより作成する。ビット培地の培地量と改変M7H9
-B培地の培地量は、後に添加するサンプル中のCPC量に
応じて、当業者が適宜決定することができる。好ましい
態様としては、例えば、試験管内で固型化された7 mlの
ビット培地に対して、3 mlの改変M7H9-B培地を重層し、
そして、この二相培地に抗酸菌のサンプルを0.1 ml添加
することができる。以下において、この方法を「二相培
地法」と呼ぶ。
【0037】サンプルを接種した改変M7H9-B培地または
二相培地は、キャップを閉めた状態で37℃にて培養す
る。培養日数は、接種後8週間を目安とする。臨床検査
の現場においては、当該改変M7H9-B培地もしくは二相培
地におけるサンプルの培養と平行して、従来の固型培地
による抗酸菌の培養を行ってもよい。
【0038】抗酸菌培養キットおよび抗酸菌前処理−培
養キット 本発明においては、改変M7H9-B培地およびビット培地を
組み合わせて、抗酸菌培養キットを提供することができ
る。この抗酸菌培養キットには、さらに抗菌剤を含んで
もよい。改変M7H9-B培地は、例えば表3に記載した組成
を有するM7H9-B基礎培地に表4に記載した成分をさらに
加えた組成を有することができる。また抗菌剤は、当業
者が適宜決定することができるが、例えば表5に記載の
組成を有することができる。
【0039】本発明においては、また、コハク酸および
CPCを含むサンプル前処理剤、改変M7H9-B培地およびビ
ット培地を含む、抗酸菌前処理−培養キットを提供す
る。サンプル前処理剤に含まれるコハク酸およびCPCの
濃度は、当業者が適宜決定することができるが、例えば
5%コハク酸および0.0375%CPCを含むサンプル前処理剤
を使用することができる。
【0040】
【実施例】以下に、本発明のコハク酸−CPC法−二相培
地法の効果を、従来から存在する他の方法と比較して説
明する。これらの実施例は本発明を具体的に説明するた
めだけのものであり、本発明の範囲を限定することを意
図しているものではない。
【0041】実施例1:サンプル前処理方法の検討 実施例1では、コハク酸−CPC法により前処理した場合
の抗酸菌検出率、抗酸菌平均検出日数、および一般細菌
汚染率について、他法との比較を行った。
【0042】本発明で使用するサンプル前処理法である
コハク酸−CPC法は、以下の手順に従って行われる。ま
ず、喀痰サンプル(1 ml)に3倍量の0.25%セミアルカ
リプロテアーゼを添加し、十分に攪拌した後、室温(20
〜25℃)において10分間反応させる。次いで、喀痰サン
プルの2倍量のNALC-NaOHを添加し、十分に攪拌した後、
室温(20〜25℃)において15分間反応させる。これに滅
菌リン酸緩衝液(pH 6.8)を全量で50 mlとなるように
添加してNaOHを中和した後、3000×gで20分間遠心分離
し、抗酸菌を沈渣として回収する。この沈渣に5%のコ
ハク酸と0.0375%のCPCとを含む0.5 mlのサンプル前処
理剤を添加し、20分間反応させる。この前処理をしたサ
ンプルを二相培地に接種し、抗酸菌検出率、抗酸菌平均
検出日数および一般細菌汚染率を得た。
【0043】本実施例においては、二種類の比較対照を
設定した。1つ目の比較対照として、前述の前処理と同
様にコハク酸−CPC法により前処理したサンプルを、固
型培地であるビット培地上に塗抹し、抗酸菌検出率、抗
酸菌平均検出日数および一般細菌汚染率を得た。
【0044】また、2つ目の比較対照としては、新結核
菌検査指針2000に基づき、NALC-NaOH法により前処理し
た喀痰を用いて、MGIT法により分離培養し、抗酸菌検出
率、抗酸菌平均検出日数および一般細菌汚染率を得た。
NALC-NaOH法は、具体的には、以下の手順に従って行わ
れる。まず、喀痰サンプル(1 ml)に2倍量のNALC-NaOH
を添加し、十分に攪拌した後、室温(20〜25℃)におい
て15分間反応させる。これにリン酸緩衝液(pH 6.8)を
全量で50 mlとなるように添加してNaOHを中和した後、3
000×gで20分間遠心分離し、抗酸菌を沈渣として回収す
る。この沈渣を0.5 mlの滅菌リン酸緩衝液で再懸濁し、
MGIT培地に0.5 mlを接種する。
【0045】MGIT法は、M7H9-B液体培地を含むMGIT試験
管底部に設置されたシリコン中に、培地中の溶存酸素に
対して感受性の蛍光化合物が包埋されており、液体培地
中で抗酸菌の増殖に伴い活発な酸素消費が行われると、
紫外線を照射した際に上記蛍光化合物が蛍光を発すると
いう原理に基づく方法である。
【0046】塗抹陽性喀痰20サンプルを用いた抗酸菌検
出率、抗酸菌平均検出日数および一般細菌汚染率の結果
を以下の表に示す。
【0047】
【表6】
【0048】抗酸菌検出率(%)は、本発明の二相培地
で培養した場合、他の対照方法により培養した場合と同
様に、抗酸菌を検出することができることがわかった。
抗酸菌平均検出日数(日)は、抗酸菌の菌種によっても
若干異なるが、コハク酸−CPC法により前処理したサン
プルでは、NALC-NaOH法により前処理したサンプルと比
較して、平均検出日数が長くなっていた。これは、コハ
ク酸−CPC法におけるコハク酸およびCPCによる、抗酸菌
の増殖抑制作用に基づいていると考えられる。
【0049】一般細菌汚染率については、NALC-NaOH法
により前処理した場合には10%の汚染率であったが、コ
ハク酸−CPC法によれば、汚染率は0%であった。これら
の結果から、本発明においては、サンプルに混入した一
般細菌を死滅させるため、コハク酸およびCPCを包含す
るサンプル前処理剤を使用することとした。しかし、こ
のコハク酸−CPC法および二相培地による本発明の培養
方法によれば、抗酸菌平均検出日数が、NALC-NaOH法に
よる前処理の後MGIT法により培養する従来から使用され
る培養方法よりも長くかかることから、サンプル前処理
剤の構成成分のうち、抗酸菌の増殖に特に影響を与える
と考えられるCPCの濃度を減少させるべく、以下に検討
を加えた。
【0050】実施例2:サンプル前処理剤の改良 サンプル前処理剤は、コハク酸とCPCとを構成成分とし
て含む。このうち、コハク酸については濃度を5%に設
定し、種々の菌種に対する増殖抑制効果を検討した。CP
Cについては、特に抗酸菌の増殖に強い影響を与えるこ
とが考えられるため、種々の菌種毎に、107 CFU/mlの各
細菌の増殖を抑制することができる最小CPC濃度を検討
した。
【0051】本実施例でCPCおよびコハク酸による前処
理の対象としたのは、喀痰中に存在する一般細菌のう
ち、以下のもの:E. faecalis(ATCC19433、ATCC51299、ATCC29212)S. aureus(ATCC29213)S. pyogenes(ATCC19615)E. coli(ATCC25922)B. subtilis(ATCC6633)P. aeruginosa(ATCC27853) の8種類である。これらのそれぞれの細菌について、107
CFU/mlの細菌の増殖を抑制することができる最小CPC濃
度および5%コハク酸による静菌効果を検討した。
【0052】コハク酸−CPC法の手順は、添加するサン
プル前処理剤のうちCPCの濃度を除き、実施例1におい
て記載した方法と同一の方法により行った。
【0053】
【表7】
【0054】P. aeruginosa(ATCC27853)以外の細菌
は、0.002〜0.006%と非常に低いCPC濃度で増殖を抑制
することができることが確認された。また、P. aerugin
osa(ATCC27853)は、0.013%と他の菌種と比較して、
増殖抑制のために高い濃度のCPCが必要とされるが、5%
コハク酸の作用により増殖抑制をすることができること
が明らかになった。
【0055】この結果、サンプル前処理剤による抗酸菌
増殖抑制効果を低減するため、コハク酸と組み合わせる
ことにより、サンプル前処理剤中のCPC濃度を下げるこ
とが可能であることがわかった。
【0056】実施例3:臨床材料からの抗酸菌の検出 本実施例においては、実際に臨床材料として集められた
喀痰サンプルについて、本発明のコハク酸−CPC法によ
り前処理した場合の抗酸菌検出率、抗酸菌平均検出日
数、および一般細菌汚染率について、他法との比較を行
った。
【0057】サンプルの前処理は、添加するサンプル前
処理剤のうちCPCの濃度を除き、実施例1において記載
した方法と同一の方法により行った。この前処理をした
サンプルを本発明の二相培地に接種し、それぞれのサン
プルについて、抗酸菌検出率、抗酸菌平均検出日数およ
び一般細菌汚染率を得た。
【0058】本実施例においては、三種類の比較対照を
設定した。1つ目の比較対照として、コハク酸−CPC法に
より前処理したサンプルを、固型培地であるビット培地
上に塗抹し、抗酸菌検出率、抗酸菌平均検出日数および
一般細菌汚染率を得た。
【0059】また、2つ目の比較対照としては、実施例
1に記載した方法と同一の方法により、NALC-NaOH法−M
GIT法により抗酸菌検出率、抗酸菌平均検出日数および
一般細菌汚染率を得た。
【0060】さらに、3つ目の比較対照として、NALC-Na
OH法により前処理したサンプルを、固型培地であるビッ
ト培地上に塗抹し、抗酸菌検出率、抗酸菌平均検出日数
および一般細菌汚染率を得た。
【0061】喀痰100サンプルを用いた抗酸菌検出率、
抗酸菌平均検出日数および一般細菌汚染率の結果を以下
の表に示す。
【0062】
【表8】
【0063】表8は、抗酸菌検出率について4種類の前
処理方法−培養方法を対比した結果を示している。この
結果、本発明の方法であるコハク酸−CPC法−二相培地
法による培養が最も高い検出能を示すことが明らかにな
った。すなわち、塗抹の結果、陽性と判定された全ての
サンプルについて、コハク酸−CPC法−二相培地法の培
養方法で検出することができた。また、塗抹の結果、陰
性と判定されたサンプル中からも、5サンプルの全てに
ついて陽性の判定が得られた。
【0064】
【表9】
【0065】表9は、抗酸菌平均検出日数について4種
類の前処理方法−培養方法を対比した結果を示してい
る。この結果から、実施例1に記載したようにコハク酸
−CPC法において使用するCPC濃度を検討した結果、本発
明の方法であるコハク酸−CPC法−二相培地法による培
養がMGIT法と同等の日数で抗酸菌を検出することができ
ることが示された。
【0066】
【表10】
【0067】表10は、一般細菌汚染率について4種類
の前処理方法−培養方法を対比した結果を示している。
この結果から、コハク酸−CPC法で前処理することによ
り、NALC-NaOH法で前処理した場合と比較して、有意に
一般細菌汚染率を低下させることができることが示され
た。
【0068】上記の抗酸菌検出率、抗酸菌平均検出日数
および一般細菌汚染率の結果から、抗酸菌を検出するた
めの対比した他法および従来からの塗抹により抗酸菌を
検出する方法と比較した場合、本発明のコハク酸−CPC
法−二相培地法による検出方法が優れていることが示さ
れた。
【0069】実施例4:分離された抗酸菌の同定 本実施例では、本発明のコハク酸−CPC法−二相培地法
で培養されたサンプル中の抗酸菌について、培養後に菌
種の同定に移行することが可能かどうかについて検討し
た。
【0070】本実施例においては、NALC-NaOH法−MGIT
法により培養した抗酸菌を対照として使用した。培養さ
れた抗酸菌の同定は、DNAプローブテストにより行っ
た。DNAプローブテストは、抗酸菌中に存在するリボソ
ームRNA(rRNA)を、このrRNAの配列に相補的な配列を
有する標識DNAプローブを用いて検出する方法である。
具体的なDNAプローブテストの手順は、新結核菌検査指
針2000に記載された手順に従った。
【0071】DNAプローブテストの原理は次の通りであ
る。抗酸菌が有するrRNAの遺伝子配列のうち、抗酸菌の
それぞれの菌種に特異的な配列部分が知られている。こ
のような特異的な配列部分に対して相補的な配列を有す
るDNAプローブをアクリジニウムエステル(AE)で標識
し、被検サンプルから抽出したrRNAとDNAプローブとの
間でハイブリダイゼーションを行う。次いで、テトラホ
ウ酸ナトリウムで加水分解することにより、未反応のDN
AプローブのAE部分のみを特異的に分解・失活させる。
その結果、AE部分はハイブリッド内部に取り込まれたも
ののみとなるため、AE部分からの化学発光を検出するこ
とにより抗酸菌由来のrRNAが存在していることを示すこ
とができる。
【0072】コハク酸−CPC法−二相培地法により分離
された抗酸菌株およびNALC-NaOH法−MGIT法により分離
された抗酸菌株について、DNAプローブテストを行った
結果を以下の表に示した。第1回のDNAプローブテストで
同定できなかった株については、第2回目のDNAプローブ
テストを行い、同定を行った。
【0073】
【表11】
【0074】この結果、第1回目のDNAプローブテスト
で、ほぼ全てのコハク酸−CPC法−二相培地法により分
離された株の同定が可能であることがわかった。これは
対照として使用したNALC-NaOH法-MGIT法により分離され
た株を同様にDNAプローブテストにより同定した場合
と、同等またはそれ以上の効率であった。
【0075】
【発明の効果】本発明により、液体培地において抗酸菌
を培養する際に問題となるコンタミネーションを効果的
に防止し、かつ抗酸菌を従来の検出効率と同等またはそ
れ以上の効率を維持しつつ検査期間を短縮することがで
きる、抗酸菌培養用液体培地を提供することができた。
本発明により、さらに、CPCを主成分として含む抗酸菌
培養用サンプル前処理剤に適合するための固型培地と液
体培地の組合せからなる抗酸菌培養用固型−液体二相培
地を提供することができた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B065 AA36X AC05 BB04 BB08 BB10 BB12 BB19 BB29 BB37 BD13 BD22 BD25 BD29

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ミドルブルック7H9ブロス(M7H9-B培
    地)からなる基本培地に、L-アスパラギン水和物、カゼ
    インペプトン、酵母エキス、オレイン酸、ヘミンを含む
    ことを特徴とする、抗酸菌培養用液体培地である改変M7
    H9-B培地。
  2. 【請求項2】 さらに抗菌剤を添加することを特徴とす
    る、請求項1に記載の改変M7H9-B培地。
  3. 【請求項3】 抗菌剤がアンホテリシンBおよびシクロ
    ヘキシミドである、請求項2に記載の改変M7H9-B培地。
  4. 【請求項4】 ビット培地上に、請求項1〜3のいずれ
    か1項に記載の抗酸菌培養用液体培地を重層させた、抗
    酸菌培養用の二相培地。
  5. 【請求項5】 コハク酸およびセチルピリジニウムクロ
    ライドを含む抗酸菌培養用サンプル前処理剤により処理
    されたサンプルに対して使用することができることを特
    徴とする、請求項4に記載の二相培地。
  6. 【請求項6】 サンプルを請求項4または5に記載の二
    相培地上で培養する、抗酸菌培養方法。
  7. 【請求項7】 コハク酸およびセチルピリジニウムクロ
    ライドを含む抗酸菌培養用サンプル前処理剤により処理
    されたサンプルに対して使用することができることを特
    徴とする、請求項6に記載の抗酸菌培養方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の改
    変M7H9-B培地、およびビット培地を含む、抗酸菌培養キ
    ット。
  9. 【請求項9】 さらに抗菌剤を含む、請求項8に記載の
    抗酸菌培養キット。
  10. 【請求項10】 コハク酸およびセチルピリジニウムク
    ロライドを含む抗酸菌培養用のサンプル前処理剤、およ
    び請求項8または9に記載の抗酸菌培養キットからな
    る、抗酸菌前処理−培養キット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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