JP2002254143A - アルミニウム合金鍛造素材及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金鍛造素材及びその製造方法

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JP2002254143A
JP2002254143A JP2001055583A JP2001055583A JP2002254143A JP 2002254143 A JP2002254143 A JP 2002254143A JP 2001055583 A JP2001055583 A JP 2001055583A JP 2001055583 A JP2001055583 A JP 2001055583A JP 2002254143 A JP2002254143 A JP 2002254143A
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aluminum alloy
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Hiroki Sawada
洋樹 澤田
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 押出加工を経ない鋳造材に対して、均質化熱
処理を経ることなく直接、熱間鍛造して従来と同等以上
の機械的強度及び靭性を有するアルミニウム合金鍛造素
材及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 Tiの含有量を0.01〜0.1質量%
に規制したJIS6000系合金の成分規格を備えるア
ルミニウム合金から、半連続鋳造法を含む連続鋳造法に
より製造されるアルミニウム合金鍛造素材であって、断
面中心部における交線法を用いて算出したデンドライト
アームスペーシングの値の平均値が23μm以下である
ことを特徴とするアルミニウム合金鍛造素材として構成
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高度な平均的機械
的強度および靭性を確保したAl合金鍛造材が得られる
Al合金鍛造素材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車等の車両(以下、単に「自
動車」という。)では、環境問題に対応するための軽量
化の観点から、アルミニウム(以下、アルミニウムを単
に「Al」という。)合金が多用されている。特に、自
動車の緩衝部材にAl合金を適用すれば、自動車のサス
ペンションバネより下方の重量、いわゆるバネ下重量を
軽くすることができて自動車の燃費と走行性能を向上さ
せる効果が顕著となるため、Al合金は自動車の各種緩
衝部材に採用されている。
【0003】このようなAl合金から構成される自動車
の各種緩衝部品には、鋳鉄で構成されるものと同等の機
械的強度(引張り強さ等)、疲労強度、耐衝撃性、及び
耐腐食性等が要求されている。
【0004】この場合、前記Al合金から構成される自
動車の緩衝部材は、一般に、非軸対称形状の比較的複雑
な形状を有するものが多い。そのため、前記Al合金か
ら構成される自動車の緩衝部材は、押出加工を施すこと
なく、Al−Mg−Si系合金を鋳造して形成した鋳造
棒を均質化処理したものを鍛造素材とし、これを熱間鍛
造することにより鍛造品として製造することが現在の主
流となっている。このようなAl合金鍛造素材は、たと
えば、以下に概説する(1)〜(4)の公報に開示され
ている。これら公報には、押出加工を経ずに鋳造棒を熱
間鍛造して製造する自動車の緩衝部材の機械的強度、靭
性等の更なる向上を目的として改良されたAl合金鍛造
素材が種々提案されている。
【0005】(1)特開平8−3675号公報には、S
i:0.6〜3.0%、Mg:0.2〜2.0%、C
u:0.3〜1.0%、Ti:0.01〜0.1%、
B:0.0001〜0.01%、Mn:0.1〜0.5
%、Cr:0.1〜0.5%及びFe:0.05〜0.
5%を含み、かつ合金設計値から換算したMg2Si量
が1.5%以上、または、0.5%以上となるように設
計したAl合金を、冷却速度200℃/秒以下で鋳造し
た後、10〜50%の据込み率で鍛造加工して構成され
るAl合金鍛造素材が開示されている。
【0006】(2)特開平6−256880号公報に
は、Mg:0.8〜1.2wt%、Si:0.7〜1.
0wt%、Cu:0.3〜0.6wt%、Mn:0.1
5〜0.3wt%、Fe及びCrを2種合計で0.7w
t%以下を含有し、かつ、デンドライト二次アーム間隔
(DAS)が40μm以下、尚かつ、晶出物の平均粒径
が8μm以下の組織として構成されるAl合金鍛造素材
が開示されている。
【0007】(3)特願平11−224024号公報に
は、Mg:0.6〜1.6%、Si:0.6〜1.8
%、Cu:0.05〜1.0%を含むとともに、Feを
0.03%以下に規制し、Mn:0.15〜0.6%、
Cr:0.1〜0.2%、Zr:0.05〜0.2%の
一種または二種以上を含み、更に、水素:0.25cc
/100gAl以下とし、残部Al及び不可避的不純物
から成る素材を、10℃/秒以上の冷却速度で鋳造し、
530〜600℃の温度で均質化熱処理した後に、熱間
鍛造して鍛造材とし、この鍛造材におけるAl合金組織
中のMg2SiとAl−Fe−Si−(Mn、Cr、Z
r)系における晶出物の合計の面積率を単位面積当り
1.5%以下として構成されるAl合金鍛造素材が開示
されている。
【0008】即ち、前記(1)〜(3)に開示される、
従来のアルミニウム合金鍛造素材の製造方法は、図3
(b)に示されるように、通常の溶製法にてAl合金溶
湯を調製する工程と(S11)、続いて、このAl合金
溶湯を連続鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)、ホッ
トトップ鋳造法等のいわゆる連続鋳造法のうち、いずれ
かの方法によって本発明で規定される範囲にはない冷却
速度で冷却しつつ鋳造し(S12)、アルミニウム合金
の鋳塊を製造する工程と、その後、この鋳塊に均質化熱
処理を施して(S13)、アルミニウム合金結晶の均質
化を行なう工程とからなっていた。尚、Al合金鍛造素
材(前記鋳塊)に、図3(b)には図示していないが、
通常存在する微細な空孔を潰して緻密な組織を形成する
鍛造(S14)を施し、さらに、T6処理(S15)を施
すことにより、アルミニウム合金鍛造材が製造されるこ
ととなる(S16)。
【0009】ところが、前記(1)〜(3)のように押
出加工を経ずに形成されるAl合金鍛造素材では、鋳造
後に均質化熱処理を行なう必要があることより、作業工
程の簡略化が図れないという問題点があった。即ち、こ
のような均質化熱処理は、500℃以上の温度で2〜1
2時間以上加熱することを必要とすることより、アルミ
ニウム合金鍛造素材のコストアップ要因の一つとなって
いた。
【0010】(4)一方、特開平7−150312号公
報には、前記均質化熱処理を省略したAl合金鍛造素材
の製造方法として、重量%で、Mg:0.6〜1.2
%、Si:0.6〜1.5%、Cu:0.3〜1.1%
を含有し、さらに、Ti:0.005〜0.1%、B:
0.0001〜0.004%の1種または2種、Mn:
0.2〜0.8%、Cr:0.05〜0.3%、Zr:
0.05〜0.25%のうち1種以上を含有し、残りが
Alと不可避不純物から成るAl合金鋳塊に対し、押出
加工前の均質化熱処理を施さずに、450〜520℃の
温度で押出加工を施し、この押出材に490〜570℃
の温度で1時間以上の析出処理を施して構成されるAl
合金鍛造素材が開示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】前記(4)の方法によ
れば、前記均質化熱処理の省略が可能となるものの、こ
の均質化熱処理の省略と引き換えに、押出加工を行なう
ことが必要となり、しかも、この押出加工を行なった後
に、490〜570℃で1時間以上加熱して行なう析出
処理がさらに必要となるという問題点があった。即ち、
前記(4)の方法では、従来、前記押出加工の前に行な
われていた前記均質化熱処理を、この押出加工の後に行
なう析出処理に置き換えたものであった。そのため、製
造工程の簡略化や、製造時間の顕著な短縮につながらな
かったことより、前記Al合金鍛造素材のコストダウン
には直接的に寄与するものではなかった。
【0012】そこで、本発明の課題は、均質化熱処理、
及び、押出加工を施すことなく、従来のAl合金鍛造材
と同等以上の機械的強度と靭性とを兼備したAl合金鍛
造材が得られるAl合金鍛造素材の製造方法を提供する
ことにある。また、本発明の課題は、Al合金の鋳塊の
晶出物の大きさを最適化するように構成することによっ
て、高度な平均的機械的強度および靭性を確保したAl
合金鍛造材が得られるAl合金鍛造素材を提供すること
にある。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記した課題に鑑みて鋭
意研究を行なった結果、本発明者等は、Al合金の鍛造
素材に対して行なわれる鋳塊形成工程に含まれる冷却過
程において、冷却が比較的急激に進行する部分と比較的
緩慢に進行する部分が存在することによって、比較的粗
い組織を有する部分がバンド状になって現れることを知
見した。また、本発明者等は、比較的急激に冷却される
部分は急冷凝固によって、合金組織が比較的緻密に形成
され、比較的緩慢に冷却される部分は合金組織が比較的
粗く形成されることを知見した。そして、前記冷却速度
を制御することにより、前記押出加工や均質化熱処理を
施さずに熱間鍛造しても、この熱間鍛造後の溶体化処理
時に晶出物の固溶状態及び組織性状が所要の程度に均一
化されることとなって、従来と同等以上の機械的強度と
靭性を有するAl合金鍛造材が得られうるAl合金鍛造
素材の製造方法を見いだした。
【0014】また、前記Al合金鍛造素材の製造方法に
て得られた鋳塊は、交線法を用いて算出したデンドライ
トアームスペーシング(DAS)の値の平均値が23μ
m以下であり、驚くべきことに、鋳塊について前記所定
の処理(鍛造や、T6処理)を行なうことにより、従来
と同等以上のアルミニウム合金鍛造材が得られることを
見出した。
【0015】即ち、本発明の第1の態様によれば、Ti
の含有量を0.01〜0.1質量%に規制したJIS6
000系合金の成分規格を備えるアルミニウム合金を、
半連続鋳造法を含む連続鋳造法により10℃/秒以上の
冷却速度にて鋳造して鋳塊を形成し、前記鋳塊に均質化
熱処理を施すことなく、かつ、押出し加工を経ずに、鍛
造素材を得るアルミニウム合金鍛造素材の製造方法が提
供される(請求項1)。ここで、JIS6000系合金
には、JIS6101合金、JIS6003合金、JI
S6151合金、JIS6061合金、JIS6N01
合金、及び、JIS6063合金等が含まれる。
【0016】このように冷却速度を制御することによ
り、Tiの含有量を規制したJIS6000系のアルミ
ニウム合金から生成される晶出物が所定の微細構造を有
することとなる。そのため、押出加工、及び、均質化熱
処理を施すことなく、そのまま熱間鍛造を施すことによ
り、従来と同等以上の機械的強度と靭性を有するAl合
金鍛造材が得られるAl合金鍛造素材が製造されること
となる。また、かかる製造方法によれば、均質化処理工
程等の製造工程の簡略化を通じてAl合金鍛造素材の生
産コストを下げると共に、作業性の向上を図ることがで
きる。
【0017】本発明の第2の態様によれば、Tiの含有
量を0.01〜0.1質量%に規制したJIS6000
系合金の成分規格を備えるアルミニウム合金から、半連
続鋳造法を含む連続鋳造法により製造されるアルミニウ
ム合金鍛造素材であって、断面中心部における交線法を
用いて算出したデンドライトアームスペーシング(DA
S)の値の平均値が23μm以下であるアルミニウム合
金鍛造素材が提供される(請求項2)。
【0018】このアルミニウム合金鍛造素材は、前記A
l合金鍛造素材の製造方法により製造されうるAl合金
鍛造素材であって、交線法を用いて算出した鋳塊のデン
ドライトアームスペーシング(DAS)の値の平均値が
23μm以下のアルミニウム合金鍛造素材である。
【0019】このように構成することにより、従来と同
等以上の機械的強度(引張強度等)と靭性とを備えたA
l合金鍛造材が得られるアルミニウム合金鍛造素材をよ
り安価に提供することができるものである。
【0020】
【発明の実施の形態】《Al合金鍛造素材の製造方法》
本発明に係るAl合金鍛造素材の製造方法の実施の形態
について図3(a)を参照しながら詳細に説明する。図
3(a)は、本発明に係るアルミニウム合金鍛造素材の
一例の製造工程のフローを示している。本発明に係るA
l合金鍛造素材の製造方法は、所定範囲の成分量を含有
する原料を溶解して調整されたAl合金溶湯を、所定の
冷却速度で冷却することによって鋳塊を形成(鋳造)す
るものである。前記Al合金鋳塊を鋳造する鋳造方法と
しては、連続鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)、ホ
ットトップ鋳造法等のいわゆる連続鋳造法を適宜に選択
して用いることができる。
【0021】図3(a)に示すように、本発明に係るア
ルミニウム合金鍛造素材の製造方法にあっては、通常の
溶製法にて元素の含有量が本発明で規制する範囲内のA
l合金溶湯を調製し(S01)、引き続いてこのAl合
金溶湯を、半連続鋳造法(DC鋳造法)、ホットトップ
鋳造法等のいわゆる連続鋳造法の中から適宜に選択され
た方法によって、冷却速度を本発明で規定する10℃/
秒以上にて鋳造し(S 02)、所定形状を有するアルミ
ニウム合金の鋳塊を得ることにより、その鋳塊に均質化
熱処理を施すことなく、かつ、押し出し加工を施さずに
アルミニウム合金鍛造素材が製造されることとなる。
尚、Al合金鍛造素材(鋳塊)に、図3(a)には図示
しないが、通常存在する微細な空孔を潰して緻密な組織
を形成する鍛造(S05)をした後、T6処理(S06)
を施すことにより、アルミニウム合金鍛造材が製造され
ることとなる(S07)。
【0022】(Al合金鍛造素材の成分含有量)本発明
に係るアルミニウム合金鍛造素材の製造方法において、
Al合金鍛造素材は、JISH6000系の合金で規定
される成分を所定の量で含有している。この場合、Al
合金鍛造素材のTiの含有量は0.01〜0.1質量%
に規制される。JISH6000系の合金が使用される
理由は、耐食性と強度に優れているためである。また、
Tiを添加する理由は、Tiを添加することによって靭
性をさらに向上させるためである。さらに、Tiの含有
量を前記の範囲に規制した理由は、Tiの含有量が、
0.01質量%未満であると靭性を向上させる効果が小
さく、一方、0.1%を超えると粗大な晶出物が形成さ
れることにより靭性が低下してしまうからである。
【0023】(Al合金溶湯の鋳造時の冷却速度)本発
明に係るアルミニウム合金鍛造素材の製造方法にあって
は、Al合金溶湯を鋳造する際の冷却速度を10℃/秒
以上とする。前記冷却速度を10℃/秒以上とする理由
は、Al合金鋳塊の結晶粒を微細化させて、後に得られ
ることとなるAl合金鍛造材の機械的強度および靭性を
所要レベル以上に向上させるためである。即ち、前記冷
却速度が10℃/秒未満では鋳塊の結晶粒が粗大化し、
後に説明するように、Al合金鋳塊のDASを23μm
以下とすることが難しくなり、結果的に、Al合金鍛造
材の機械的強度および靭性を所定の強度に高めることが
困難になるからである。なお、本発明における冷却速度
の上限は、当該技術分野に公知の通り組織的に健全な鋳
造棒を得ることができる範囲内であり特に規定されない
が、例えば200℃/秒である。
【0024】《Al合金鍛造素材》続いて、本発明の第
2の態様であるAl合金鍛造素材について説明する。本
発明に係るAl合金鍛造素材は、以下に説明する鋳造時
の冷却速度と鋳塊の晶出物の関係についての知見に基づ
いて、高度な平均的機械的強度および靭性を確保したA
l合金鍛造材が得られうるように、Al合金鍛造素材の
組織の晶出物の大きさを最適化するように構成したこと
を特徴としている。即ち、本発明に係るAl合金鍛造素
材は、前記鋳塊の断面中心部におけるDASの値の平均
が23μm以下の鋳塊をいう。
【0025】まず、本発明に係るAl合金鍛造素材の理
解を深める目的で、前記Al合金鍛造素材の製造方法に
おける冷却工程(S03)の詳細について、図2を参照
しながら説明する。図2(a)、(b)は、本発明に係
る前記Al合金鍛造素材が製造される工程において、A
l合金溶湯が鋳型に供給され、鋳型から出た鋳片の外周
面に冷却媒体が散布され、所定の冷却速度にて鋳造され
る一連の鋳塊形成工程における抜熱量の変化との対応状
態を示すもので、図2(a)は、鋳型Mと鋳造された直
後の鋳塊Aとが接触してこの鋳塊Aが冷却された部分
(一次冷却部S1)と、続いてこの鋳塊Aの表面が、冷
却水CWで冷却された部分(二次冷却部S2)とを模式
的に示す図である。図2(a)に示すように、鋳塊A
は、鋳型Mと接触されて冷却された後、冷却水CWが表
面に導入されて冷却される。尚、鋳型Mが当接された部
分MCと冷却水CWが導入された部分CWCとの間にエ
アーギャップが存在している。
【0026】続いて、このような冷却過程における鋳塊
の各位置の抜熱量を、図2(b)に概略的に示す。図2
(b)は、図2(a)に示され鋳塊Aの冷却工程進行方
向の位置Z(一次冷却部S1、二次冷却部S2)と、冷
却によって奪われた熱量である抜熱量qとの関係を示す
グラフである。図2(b)に示すように、鋳塊Aからの
抜熱量qは、図2(a)に示すような鋳型Mと冷却水C
Wの各々の冷却作用に対応して比較的大きく変化する部
分と、前記エアーギャップの近傍部分に対応して抜熱量
が比較的小さく変化する部分である徐冷帯が形成されて
いる。
【0027】(Al合金の晶出物)次に、前記冷却工程
の後に得られた鋳塊の断面形状について、図1及び図2
を参照しながら説明していく。図1は、前記Al合金鍛
造素材の製造において、冷却速度12℃/秒で冷却した
後の鋳塊の断面形状のマクロ組織観察写真が示されてい
る。図1に示すように、前記鋳塊の外側の表面部から中
心部へ向けて1/4程度の深さ位置で、DASが30μ
m程度の比較的粗い組織がバンド状に分布していること
が分かる。また、比較的急激に冷却される部分は、急冷
凝固によって、合金組織が比較的緻密に形成され、比較
的緩慢に冷却される部分は合金組織が比較的粗く形成さ
れている。尚、前記のバンド分布が現れた理由は、Al
合金の鍛造素材の製造における冷却過程で、冷却が比較
的急激に進行する部分と比較的緩慢に進行する部分が鋳
塊に存在することによって、比較的粗い組織を有する部
分がバンド状になって現れたものと考えられる。
【0028】(DASの平均値を23μm以下とした理
由)以上の知見に基づいて、本発明に係るAl合金鍛造
素材では、前記冷却工程の後に得られる鋳塊の断面の中
心部の少なくとも1mm×1mmの領域におけるDAS
平均値を23μm以下に規制する。ここで、DASの測
定領域を鋳塊断面の中心部とした理由は、この鋳塊の中
心部まで充分な冷却が行なわれて、組織が微細化されて
いることを確認すると共に、前記のとおりに、鋳塊の外
側の表面部から中心部へ向けて1/4程度の深さ位置に
バンド状に分布するDAS平均値が30μm程度の比較
的粗い組織領域を避けるためである。また、DAS平均
値を23μm以下に規制した理由は、DAS平均値が2
3μmを超えると、その後、均質化熱処理などを施さな
ければ、所要の機械的強度および靭性を有するAl合金
鍛造材が得られなくなるからである。また、DAS平均
値を23μmより小さくなるように構成することによ
り、Al合金鍛造素材の組織に対して機械的強度および
靭性を低下させるように作用する晶出物が充分に微細化
されるため、均質化熱処理や押出し加工を施すことなく
機械的強度および靭性を向上させる効果を高めることが
できるからである。
【0029】また、DASの測定領域を少なくとも1m
m×1mmとした理由は、DASが40μm程度と比較
的大きい場合に、このDASが少なくとも200本含ま
れるような面積とするためである。
【0030】(DASの測定方法)このようなDASを
用いたAl合金の特性評価は、相互に直接比較しうるD
ASを得ることが難しい場合が多い。特に、Al合金へ
Tiを添加する場合には、Al合金の結晶がより微細化
されてデンドライトアームの大きさが小さくなる傾向が
あってDASの測定値がばらつき易いため、標準化され
たDASの測定方法によってAl合金の特性評価を行な
う必要がある。そこで、軽金属学会の鋳造・凝固部会が
推奨している「アルミニウムのデンドライトアームスペ
ーシングと冷却速度の測定法」、軽金属学会、研究委員
会、鋳造・凝固部会編、p46−52(1988年8
月)に記載されている「交線法」を用いてDASを測定
した。
【0031】本発明に係るAl合金鍛造素材の成分や、
含有量は、前記Al合金鍛造素材の製造方法に記載した
内容と同様であるため、ここではその記載を省略する。
また、本発明に係るAl合金鍛造素材は、前記の本発明
に係るAl合金鍛造素材の製造方法によってのみ製造さ
れるものでないことはいうまでもない。したがって、本
発明に係るAl合金鍛造素材には、均質化熱処理工程を
含む製造方法によって製造されるAl合金鍛造素材も含
まれる。
【0032】
【実施例】次に、本発明の実施例について詳細に説明す
る。尚、本発明はこの実施例のみに限定されるものでは
なく、本発明の技術的思想に基づく限りにおいて適宜に
変更することが可能である。以下に詳細に説明するAl
合金鍛造素材の製造方法にしたがって、Al合金鍛造素
材を作製し、その後、得られたAl合金鍛造素材につい
て、鍛造及びT6処理を施すことにより得られたAl合
金鍛造素材を作製した。そして、本発明の範囲内にある
Al合金鍛造素材から製造された供試材(Al合金鍛造
材)を実施例とし、本発明の範囲内にないAl合金鍛造
素材から製造された供試材(Al合金鍛造材)を比較例
とした。
【0033】表1に、前記の各供試材を作製するための
ベースに用いたJIS6000系の合金の各成分含有量
を示す。また、表2に、表1に示す各Al合金から作製
した、前記実施例及び比較例についての作製条件(鋳造
時の冷却速度、交線法を用いて算出したDASの測定
値、Tiの含有量)、並びに、実施例及び比較例のシャ
ルピー衝撃試験(JIS Z2242、試験片形状;J
IS Z2202の3号)による衝撃値を示す。
【0034】以下に、図3(a)(b)を参照しなが
ら、各供試材(実施例および比較例)の製造方法の詳細
を説明する。 (実施例:No.1、2、3、4)図3(a)に示すよ
うに、実施例として、通常の溶製法にて元素の含有量が
本発明で規制する範囲内にあるAl合金溶湯を調製し
(S01)、引き続いてこれらのAl合金溶湯を半連続
鋳造法(DC鋳造法)にて、冷却速度を各々本発明の要
件を満たす12、15、20、および25℃/秒で冷却
して鋳造し(S02)、直径が89mmのAl合金鍛造
素材を作製した。
【0035】(実施例:No.5)図3(a)に示すよ
うに、均質化熱処理を行なうことを除き、前記実施例1
〜4と同様に、通常の溶製法にて元素の含有量が本発明
で規制する範囲内にあるAl合金溶湯を調製し(S
01)、引き続いてこれらのAl合金溶湯を半連続鋳造
法(DC鋳造法)にて、冷却速度を各々本発明の要件を
満たす25℃/秒で冷却して鋳造し(S02)、直径が
89mmの鋳塊を作製した。
【0036】(比較例:No.1、2、3)一方、比較
例として、図3(b)に示すように、前記実施例と同様
の通常の溶製法にて元素の含有量が本発明で規制する範
囲内にあるAl合金溶湯、および、元素の含有量が本発
明で規制する範囲内にないAl合金溶湯を調製し(S1
1)、続いてこれらのAl合金溶湯を半連続鋳造法(D
C鋳造法)にて、冷却速度を各々本発明の要件を満たさ
ない6、および、8℃/秒で冷却して鋳造し(S
12)、直径が89mmのAl合金鍛造素材を作製し
た。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】いいかえると、表1において、Siの含有
量が0.76〜0.82質量%、Feの含有量が0.2
2〜0.28質量%、Cuの含有量が0.23〜0.2
6質量%、Mnの含有量が0.01質量%未満、Mgの
含有量が0.98〜1.09質量%、Crの含有量が
0.13質量%、Znの含有量が0.01質量%未満、
Tiの含有量が0.04〜0.23質量%、残部がAl
と不可避的不純物で構成されるNo.1〜7のAl合金
の供試材を用いて、表2に示すような本発明に係る実施
例(No.1、2、3、4、5)と、本発明の要件を満
足しない比較例(No.1、2、3)のAl合金鍛造素
材を作製した。
【0040】そして、このようにして作製した実施例に
かかるAl合金鍛造素材、および、比較例に係るAl合
金鍛造素材に対してDAS測定を行なった。
【0041】さらに、前記本発明に係るAl合金鍛造素
材(鋳塊)に、圧下率75%で、この鋳塊の組織の内部
に通常存在する微細な空孔を潰して緻密な組織を形成す
る鍛造を施した後、T6処理を施して、本発明に係るA
l合金鍛造素材から製造された実施例(No.1、2、
3、4、5)と比較例(No.1、2、3)のAl合金
鍛造材を作製した。
【0042】そして、このようにして作製したアルミニ
ウム合金鍛造材の長手方向、および、幅方向においてJ
IS3号の衝撃試験用の試験片を切り出し、シャルピー
衝撃値を測定した。その際、試験片の測定箇所は肉厚中
心部とし、測定箇所は各方向で3箇所とし、得られた各
測定値の平均値をとって、この平均値が16J/cm 2
のものを合格とした。その結果を表2に示す。
【0043】表2に示す各試験片の衝撃値を参照する
と、前記鋳造時の冷却速度(℃/秒)、DAS(μ
m)、およびTi含有量(質量%)がすべて本発明の要
件を満たしている実施例1、2、3、4、5では、衝撃
値が16.9〜25.7(J/cm 2)であり、比較的
高い機械的強度を有するAl合金鍛造材となっているこ
とが確認された。特に、本発明に係る製造方法から製造
されたAl合金鍛造素材を鍛造して得られたAl合金鍛
造材は(実施例1,2,3,4)、均質化熱処理を施さ
なかったにもかかわらず、比較的高い機械的強度を有す
るAl合金鍛造材となっていることが確認された。
【0044】一方、鋳造時の冷却速度(℃/秒)、DA
Sが本発明に規制する範囲内にないもの(比較例No.
1、2)、または、Tiの含有量が本発明で規制する範
囲にないもの(比較例No.7)では、均質化熱処理の
有りとなしとにかかわらず衝撃値が15.2〜16.2
(J/cm2)と、本発明に係る実施例(No.1、
2、3、4、5))に比べてより低いものとなっている
ことが確認された。いいかえると、DASが23μmを
超えている比較例(No.1、2)では、均質化熱処理
の有無に拘わらず前記衝撃値が不合格となった。また、
DASが本発明で規制する23μm以下であっても、T
i含有量が本発明で規制する0.01〜0.1質量%を
満たさない比較例(No.3)では、前記衝撃値が不合
格となった。そして、鋳造時の冷却速度が本発明で規制
する10℃/秒以上を満たさない比較例(No.1、
2、3)では、DASが23μm超となっており、前記
衝撃値が不合格となった。
【0045】以上より、発明の要件を満たすAl合金鍛
造素材を鍛造して得られた鍛造材である実施例(No.
1、2、3、4、5)は、本発明の要件を満たさない比
較例(No.1、2、3)に比べて優れた耐衝撃性を備
えているということがいえた。また、本発明に係るAl
合金鍛造素材の製造方法によりえられたAl合金鍛造素
材から得られたAl合金鍛造材である実施例(No.
1、2、3、4)では、均質化熱処理を施すことなく、
自動車緩衝部材に要求される鍛造材の長手方向と幅方向
の衝撃値の平均値が所要の値を満足させることが可能で
あるということがいえた。
【0046】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明は以下の効果
を奏する。請求項1に係るアルミニウム合金鍛造素材の
製造方法によれば、鍛造組織が微細化されて晶出物が微
細化されて靭性がより一層向上するようになり、均質化
熱処理、および、押出加工を施すことなくそのまま熱間
鍛造を施して鍛造材を製造することができるようにな
る。請求項2に係るアルミニウム合金鍛造素材によれ
ば、断面中心部におけるデンドライト二次アーム間隔
(DAS)を23μm以下としたので、鍛造組織が微細
化されて晶出物が微細化され、靭性がより一層向上した
アルミニウム合金鍛造材を提供することができるように
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係る実施例におけるアルミニウ
ム合金鍛造素材の断面を示すマクロ観察写真である。
【図2】図2(a)は、鋳型Mにより鋳造される状態に
おけるアルミニウム合金の鋳塊表面の急冷される部分
(一次冷却部)と、このアルミニウム合金の鋳塊表面が
直接水で冷却される部分(二次冷却部)とを模式的に示
す図である。図2(b)は、図2(a)の冷却工程の進
行方向の位置と奪われた熱量である抜熱量qとの関係を
示すグラフである。
【図3】(a)本発明に係るアルミニウム合金鍛造素材
の製造工程のフローを示す図面である。 (b)従来のアルミニウム合金鍛造素材の製造工程のフ
ローを示す図面である。
【符号の説明】
A アルミニウム合金の鋳塊 CW 冷却水 M 鋳型 MC 鋳型Mが当接された部分 CWC 冷却水が導入された部分 S1 アルミニウム合金の鋳塊Aの一次冷却部 S2 アルミニウム合金の鋳塊Aの二次冷却部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 21/02 C22C 21/02 21/06 21/06 C22F 1/05 C22F 1/05 // C22F 1/00 601 1/00 601 630 630A 630B 630K 692 692A

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Tiの含有量を0.01〜0.1質量%
    に規制したJIS6000系合金の成分規格を備えるア
    ルミニウム合金を、半連続鋳造法を含む連続鋳造法によ
    り10℃/秒以上の冷却速度にて鋳造して鋳塊を形成
    し、前記鋳塊に均質化熱処理を施すことなく、かつ、押
    出し加工を経ずに、鍛造素材を得ることを特徴とするア
    ルミニウム合金鍛造素材の製造方法。
  2. 【請求項2】 Tiの含有量を0.01〜0.1質量%
    に規制したJIS6000系合金の成分規格を備えるア
    ルミニウム合金から、半連続鋳造法を含む連続鋳造法に
    より製造されるアルミニウム合金鍛造素材であって、断
    面中心部における交線法を用いて算出したデンドライト
    アームスペーシングの値の平均値が23μm以下である
    ことを特徴とするアルミニウム合金鍛造素材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009513357A (ja) * 2005-10-28 2009-04-02 ノベリス・インコーポレイテッド 鋳造金属の均質化および熱処理
CN110777286A (zh) * 2019-12-04 2020-02-11 中南大学 一种中强可焊耐蚀含钪高镁铝合金锻件的制备方法

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