JP2002309338A - 超大入熱溶接用高張力鋼 - Google Patents

超大入熱溶接用高張力鋼

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JP2002309338A
JP2002309338A JP2001113000A JP2001113000A JP2002309338A JP 2002309338 A JP2002309338 A JP 2002309338A JP 2001113000 A JP2001113000 A JP 2001113000A JP 2001113000 A JP2001113000 A JP 2001113000A JP 2002309338 A JP2002309338 A JP 2002309338A
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steel
heat input
haz
particles
input welding
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JP2001113000A
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Manabu Hoshino
学 星野
Naoki Saito
直樹 斎藤
Yoji Matsubara
洋二 松原
Toshimichi Nagao
年通 長尾
Ryuji Uemori
龍治 植森
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 入熱が200kJ/cm以上(例えば、15
00kJ/cm程度)でも超大入熱溶接熱影響部の靭性
に優れた超大入熱溶接用高張力鋼を提供する。 【解決手段】 粒子径が0.005 〜0.5 μmの(Mn、M
g、Ca)Sなる組成の硫化物を合計して1平方mmあ
たり1.0 ×105 〜1.0 ×107 個を含む超大入熱溶接用高
張力鋼。また、この高張力鋼において、質量%で、0.04
≦C≦0.25、0.02≦Si≦0.5 、0.1 ≦Mn≦2.0 、P
≦0.02、0.002 ≦S≦0.02、0.03≦Cu≦1.5 、0.015
≦Al≦0.5 、0.0005≦Mg≦0.005 、0.0005≦Ca≦0.
005 を含有させる。選択元素として、Ni、Cr、M
o、Nb、V、Ti、Bの1種または2種以上を適量含
有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなるものとす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高層建築等のボッ
クス柱の組み立てで適用されるエレクトロスラグ溶接、
或いは、造船・橋梁等で適用されるエレクトロガス溶接
などの超大入熱溶接における熱影響部(以下、HAZと
称する)靭性に優れた超大入熱溶接用高張力鋼に関する
もので、特に、入熱が200kJ/cm以上で、例えば
750〜1500kJ/cm程度でも優れたHAZ靭性
を有する超大入熱溶接用高張力鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近の建築構造物の高層化に伴い、鋼製
柱が大型化し、これに使用される鋼材の板厚も増してき
た。このような大型の鋼製柱を溶接で組み立てる際に、
高能率で溶接することが必要であり、極厚鋼板を1パス
で溶接できるエレクトロスラグ溶接が広く適用されるよ
うになってきている。また、造船・橋梁分野においても
板厚が25mm程度以上の鋼板を1パスで溶接するエレ
クトロガス溶接が広く適用されるようになってきた。典
型的な入熱の範囲は200〜1500kJ/cmであ
り、このような超大入熱溶接ではサブマージアーク溶接
などの大入熱溶接(入熱は200kJ/cm未満)とは
異なり、溶接融合線(FL)付近やHAZが受ける熱履
歴において1350℃以上の高温滞留時間が極めて長く
なり(超大入熱溶接では大入熱溶接の数倍〜数十倍長時
間滞留する)、オーステナイト粒の粗大化が極めて顕著
であり、HAZの靭性を確保することが困難であった。
最近の大地震を契機として建築構造物の信頼性確保が急
務の課題であり、このような超大入熱溶接HAZ部の靭
性向上を達成することは極めて重要な課題である。
【0003】従来から大入熱溶接HAZ部の靭性向上に
関しては以下に示すように多くの知見・技術があるが、
上記の通り超大入熱溶接と大入熱溶接とではHAZが受
ける熱履歴、特に、1350℃以上における滞留時間が
大きく異なるため、大入熱溶接HAZ靭性向上技術を単
純に本発明の対象分野に適用することはできない。
【0004】従来の大入熱溶接HAZ靭性向上は、大き
く分類すると主に二つの基本技術に基づいたものであっ
た。その一つは鋼中粒子によるピン止め効果を利用した
オーステナイト粒粗大化防止技術であり、他の一つはオ
ーステナイト粒内フェライト変態利用による有効結晶粒
微細化技術である。
【0005】「鉄と鋼」、第61年(1975)第11
号、第68頁には、各種の鋼中窒化物・炭化物について
オーステナイト粒成長抑制効果を検討し、Tiを添加し
た鋼ではTiNの微細粒子が鋼中に生成し、大入熱溶接
HAZにおけるオーステナイト粒成長を効果的に抑制す
る技術が開示されている。
【0006】特開昭60−184663号公報には、A
lを0.04〜0.10%、Tiを0.002〜0.0
2%、さらに、希土類元素(REM)を0.003〜
0.05%含有する鋼において、入熱が150kJ/c
mの大入熱溶接HAZ靭性を向上させる技術が開示され
ている。これは、REMが硫・酸化物を形成して大入熱
溶接時にHAZ部の粗粒化を防止する作用を有するため
である。
【0007】特開昭60−245768号公報には、粒
子径が0.1〜3.0μm、粒子数が5×103 〜1×
107 個/mm3 のTi酸化物、あるいはTi酸化物と
Ti窒化物との複合体のいずれかを含有する鋼では、入
熱が100kJ/cmの大入熱溶接HAZ内でこれら粒
子がフェライト変態核として作用することによりHAZ
組織が微細化してHAZ靭性を向上できる技術が開示さ
れている。
【0008】特開平2−254118号公報には、Ti
とSを適量含有する鋼において大入熱溶接HAZ組織中
にTiNとMnSの複合析出物を核として粒内フェライ
トが生成し、HAZ組織を微細化することによりHAZ
靭性の向上が図れる技術が開示されている。
【0009】特開昭61−253344号公報には、A
lを0.005〜0.08%、Bを0.0003〜0.
0050%含み、さらに、Ti、Ca、REMのうち少
なくとも1種以上を0.03%以下含む鋼は大入熱溶接
HAZで未溶解のREM・Caの酸化・硫化物あるいは
TiNを起点として冷却過程でBNを形成し、これから
フェライトが生成することにより大入熱HAZ靭性が向
上する技術が開示されている。
【0010】特開平9−157787号公報には、Mg
含有酸化物を1平方mmあたり40,000〜100,
000個含み、且つ、粒子径が0.20〜5.0μmの
Ti含有酸化物とMnSからなる複合体を1平方mmあ
たり20〜400個含む鋼では、オーステナイト粒成長
抑制と粒内フェライト変態促進により超大入熱溶接HA
Z靭性を向上できる技術が開示されている。
【0011】特開平11−286743号公報には、粒
子径が0.005〜0.5μmのMgO、MgS、Mg
(O、S)の2種以上を含む鋼では、これらの微細粒子
によるオーステナイト粒成長抑制により超大入熱溶接H
AZ靭性を向上できる技術が開示されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】前記した「鉄と鋼」、
第61年(1975)第11号、第68頁に開示されて
いる技術は、TiNをはじめとする窒化物を利用してオ
ーステナイト粒成長抑制を図るものであり、大入熱溶接
では効果が発揮されるが、本発明が対象とする超大入熱
溶接では1350℃以上の滞留時間が極めて長いため
に、ほとんどのTiNは固溶し、粒成長抑制の効果を失
う。従って、この技術を本発明が目的とする超大入熱溶
接HAZの靭性には適用できない。
【0013】特開昭60−184663号公報に開示さ
れた技術はREMの硫化・ 酸化物を利用して大入熱溶接
時にHAZ部の粗粒化を防止するものである。硫化・酸
化物は窒化物に比べて1350℃以上の高温における安
定性は高いので、粒成長抑制効果は維持される。しかし
ながら、硫・酸化物を微細に分散させることは困難であ
る。硫・酸化物の個数密度が低いために、個々の粒子の
ピン止め効果は維持されるとしても超大入熱溶接HAZ
のオーステナイト粒径を小さくすることには限度があ
り、これだけで靭性向上をはかることはできない。
【0014】特開昭60−245768号公報に記載さ
れた技術はTi酸化物、あるいはTi酸化物とTi窒化
物との複合体のいずれかの粒子がフェライト変態核とし
て作用することによりHAZ組織を微細化させてHAZ
靭性を向上させるものであり、Ti酸化物の高温安定性
を考慮すると超大入熱溶接においてもその効果は維持さ
れる。しかしながら、粒内変態核から生成するフェライ
トの結晶方位は全くランダムというわけではなく、母相
オーステナイトの結晶方位の影響を受ける。従って、超
大入熱溶接でオーステナイト粒が粗大化する場合には粒
内変態だけでHAZ組織を微細化することには限度があ
る。
【0015】特開平2−254118号公報に開示され
た技術は、TiN−MnS複合析出物からフェライトを
変態させるものであり、大入熱溶接のように1350℃
以上の滞留時間が比較的短い場合には効果を発揮する
が、エレクトロスラグあるいはエレクトロガス溶接のよ
うな超大入熱溶接においては1350℃以上の滞留時間
が長く、この間に多くのTiNは固溶してしまうために
フェライト変態核が消失し、その効果が十分には発揮で
きない。
【0016】特開昭61−253344号公報に開示さ
れた技術は、REM・Caの酸化・硫化物あるいはTi
N上にBNを形成し、これからフェライトを生成させる
ことによりHAZ組織を微細化するものであり、超大入
熱溶接においても同様な効果は期待できる。しかしなが
ら、REM・Caの酸化・硫化物の個数を増加させるこ
とは困難であり、しかもTiNは固溶してフェライト変
態だけでは超大入熱溶接HAZの靭性向上には限度があ
る。
【0017】特開平9−157787号公報に開示され
た技術は本発明者らによるものであり、0.01〜0.
20μmの微細なMg含有酸化物によるオーステナイト
粒成長抑制と0.20〜5.0μmのTi含有酸化物と
MnSからなる複合体による粒内フェライト変態促進に
より超大入熱溶接HAZ靭性を向上できる。しかしなが
ら、Ti含有酸化物の生成にはAl量を0.005%以
下に抑制する必要があり、従来のAl添加鋼の利点を損
なう。すなわち、従来のAl量が0.010〜0.5%
程度のAl脱酸鋼においては、鋼中のAlによる酸化発
熱を利用することで溶鋼温度を容易に制御することがで
き、安価かつ安定な鋼の量産を可能にしてきた。Al添
加量を0.005%程度以下に制限すると、溶鋼加熱装
置による加熱等の、Alの酸化発熱による溶鋼温度制御
を代替する手段が必要となる。溶鋼中のAlは大気中の
酸素による溶鋼汚染防止の役割も有し、また、Alは窒
化物を形成することで材質確保に有効であることも広く
知られており、Al量の0.005%以下への低減はこ
れらのAl添加の利点を損なうことが課題として残る。
【0018】特開平11−286743号公報に開示さ
れた技術も本発明者らによるものであり、0.005〜
0.5μmのMgO、MgS、Mg(O、S)の2種以
上を含む鋼では、これらの微細粒子によるオーステナイ
ト粒成長抑制により超大入熱溶接HAZ靭性を向上でき
る。しかしながら、微細なMgOの生成にはAl量を
0.01%以下に抑制する必要があり、やはり、上述し
たAl添加の利点を損なうことが課題として残る。
【0019】本発明は、高層建築物のボックス柱の組み
立てで適用されるエレクトロスラグ溶接、造船・橋梁等
で適用されるエレクトロガス溶接などの入熱が200k
J/cm以上の超大入熱溶接におけるHAZ靭性に優れ
た溶接用高張力鋼をAl添加鋼を前提に提供することに
ある。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、超大入熱
溶接HAZの靭性向上にはHAZ組織の微細化が必須で
あり、これはHAZのオーステナイト粒成長を著しく抑
制することにより可能であること、さらに、Al添加鋼
を前提として、Ca、Mgを添加した鋼中において、微
細な硫化物粒子が1350℃以上の高温で極めて安定で
あり、かつ微細分散が可能であることを新規に知見し
た。この新規知見によりHAZのオーステナイト粒成長
を著しく抑制し得ること、その結果、超大入熱HAZ靭
性を大きく向上できることを知見して本発明を成した。
【0021】本発明の要旨は次の通りである。 (1)粒子径が0.005〜0.5μmの(Mn、M
g、Ca)Sなる組成の硫化物を合計して1平方mmあ
たり1.0×105 〜1.0×107 個含むことを特徴
とする超大入熱溶接用高張力鋼。 (2)質量%で、 0.04≦C≦0.25、 0.02≦Si≦0.5、 0.1≦Mn≦2.0、 P≦0.02、 0.002≦S≦0.02、 0.015<Al≦0.5、 0.0005≦Mg≦0.005、 0.0005≦Ca≦0.005、 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなる鋼で
あることを特徴とする(1)記載の超大入熱溶接用高張
力鋼。 (3)更に母材強度上昇元素群を、質量%で、 0.05≦Ni≦2.0、 0.02≦Cr≦1.0、 0.02≦Mo≦1.0、 0.005≦Nb≦0.05、 0.005≦V≦0.1、 0.005≦Ti≦0.025、 0.0004≦B≦0.004、 の1種または2種以上を含有することを特徴とする
(2)記載の超大入熱溶接用高張力鋼。
【0022】また、本発明で言うところの「溶接用高張
力鋼」とは、例えば、JIS G3106「溶接構造用
圧延鋼材」、JIS G3115「圧力容器用鋼板」、
JIS G3118「中・常温圧力容器用炭素鋼鋼
板」、JIS G3124「中・常温圧力容器用高強度
鋼板」、JIS G3126「低温用圧力容器用炭素鋼
鋼板」、及び、JIS G3128「溶接構造用高降伏
点鋼板」に相当するものである。
【0023】
【発明の実施の形態】このような超大入熱溶接用高張力
鋼を、大量の製造実績があり優れた量産プロセスである
Al脱酸を前提に製造する。本発明者らは、超大入熱溶
接HAZの組織と靭性の関係に関する詳細な調査・研究
を実施した結果、従来の大入熱溶接HAZの組織制御ま
たは靭性向上法をそのまま適用しても、超大入熱溶接H
AZ靭性は限られたものであり、靭性向上にはHAZの
オーステナイト粒を著しく微細化する必要があるとの結
論に達した。
【0024】まず、オーステナイト粒の微細化には鋼中
粒子によるピン止め効果を利用することが有効である
が、窒化物の中で最も熱的に安定であるとされるTiN
でも1350℃以上に長時間加熱されるとほとんどが溶
解し、ピン止め効果を失うために、超大入熱溶接への適
用には限度がある。従って、高温で安定である粒子の利
用が必須となる。しかしながら、従来技術のREMある
いはCa酸化物(酸化・硫化物も含む)では、超大入熱
溶接HAZのオーステナイト粒粗大化抑制に十分な程度
にこれら酸化物を鋼中に微細分散させることは極めて困
難である。
【0025】本発明者らは、これまでに各種の粒子につ
いて比較検討した結果、微細なMg含有酸化物が有効で
あることをすでに知見している。しかしながら、これら
の微細酸化物を鋼中に多量に生成させるには、鋼中のA
l量を例えば0.005%程度以下に抑制する必要があ
り、先に述べたようにAl添加の利点を損なう。
【0026】本発明者らはAl脱酸鋼を前提に各種の粒
子について比較検討した結果、(Mn、Mg、Ca)S
のような硫化物が高温で安定で、しかも微細分散に適し
た粒子であることを新規に知見した。HAZのオーステ
ナイト粒成長抑制に効果を発揮する粒子は主に0.1μ
m以下のものであるが、Mn、S、Mg、Al、Ca添
加量などを制御することにより、微細なCaを含有する
硫化物粒子を鋼中に多量に微細分散させることが可能で
ある。
【0027】従来よりAl脱酸鋼において0.1〜2%
程度のMnおよび0.002〜0.02%程度のSが添
加されているものは数多くあり、MnSを形成すること
は広く知られている。このMnSは高温で不安定であり
溶解してしまうため、オーステナイト粒微細化粒子には
なり得なかった。しかしながら、MgおよびCaを特定
量以上含有する鋼においては、硫化物生成挙動が従来鋼
とは全く異なり、上記のような硫化物微細粒子の生成が
著しく促進されるために、HAZのオーステナイト粒成
長抑制効果を有することがわかった。このようなMg、
Caを含有する鋼において(Mn、Mg、Ca)S粒子
などの生成が著しく促進される理由は現在の所不明であ
る。
【0028】上述したように鋼中のCa、Mgにより
(Mn、Mg、Ca)S粒子の生成が著しく促進される
が、単に鋼中にCa、Mgを添加しただけでは(Mn、
Mg、Ca)Sはほとんど生成しない。その理由はC
a、Mgが強脱酸元素であり酸化物となってしまうこと
にある。Ca、Mgは蒸気圧が高く、多量に添加しても
溶鋼中に歩留りにくい元素である。このため、0.00
05〜0.005%程度の微量のCa、Mgが酸化物と
して消費されてしまうのを防ぎ、(Mn、Mg、Ca)
S粒子の生成を著しく促進させる鋼中のCa、Mgを確
保することは極めて重要となる。図1にMn、S、M
g、Ca添加量が本発明範囲内の鋼における、0.00
5〜0.5μmの大きさの(Mn、Mg、Ca)S粒子
の個数に及ぼすAl添加量の影響を示す。Al添加量が
0.015%未満では(Mn、Mg、Ca)S粒子の個
数は少ない。この時のMgは主にMgAl2 O4 あるい
はMgOとして、Caは、CaO酸化物として存在す
る。一方、Al添加量が0.015%以上では、(M
n、Mg、Ca)S粒子の個数が顕著に増加し、酸化物
はAl 2 O3 主体でMgの多くは(Mn、Mg、Ca)
S生成に有効な鋼中Ca、Mgとして存在する。すなわ
ち、0.015%以上のAl添加により微細な(Mn、
Mg、Ca)S粒子を多数生成させることができる。
【0029】本発明では、(Mn、Mg、Ca)Sの粒
子径を0.005〜0.5μmに限定した。0.005
μm未満ではオーステナイト粒成長抑制効果が小さくな
る。また、0.5μm超ではこれらの粒子や粒子と地鉄
との界面が破壊起点となる確率が高くなり靭性を低下さ
せる。0.005〜0.5μmのサイズの(Mn、M
g、Ca)S粒子の個数が1平方mmあたり1.0×1
05 個以上の場合にオーステナイト粒成長抑制効果が顕
著となり、1.0×107 個を超えると鋼の延性を低下
させるので、(Mn、Mg、Ca)S粒子の個数を1平
方mmあたり1.0×105 〜1.0×107 個に制限
した。
【0030】粒子個数の測定方法は、鋼板から抽出レプ
リカを作成し、特性X線検出器(EDX)付きの透過型
電子顕微鏡(TEM)で、0.005〜0.5μmの大
きさの粒子個数を、少なくとも1000μm2 以上の面
積につき測定し、単位面積当たりの個数に換算する。例
えば、2万倍の倍率にて1視野を100mm×80mm
として観察した場合、1視野あたりの観察面積は20μ
m2 であるから少なくとも50視野につき観察を行う。
この時の0.005〜0.5μmの粒子の個数が50視
野(1000μm2 )で200個であれば、粒子個数は
1平方mmあたり2×105 個と換算できる。
【0031】次に、個数を測定した粒子のうち、(M
n、Mg、Ca)S粒子がどれだけ存在したかを測定す
るが、粒子個数は最低でも100個以上、多い場合には
10000個以上となるため全粒子を逐一同定すること
は大変な作業となる。このため、少なくとも50個以上
の粒子について下記の条件にて(Mn、Mg、Ca)S
を同定しその存在割合を求め、先に求めた粒子個数に硫
化物の存在割合をかけることで(Mn、Mg、Ca)S
の個数を求める。例えば、上述した粒子個数、1平方m
mあたり2×105 個に対し、(Mn、Mg、Ca)S
の存在割合が90%であった場合には(Mn、Mg、C
a)Sの個数は1平方mmあたり1.8×105 個であ
るとする。
【0032】次に(Mn、Mg、Ca)Sの同定方法に
ついて述べる。本発明では(Mn、Mg、Ca)S中の
Mn、Mg、Caの割合を重量%で50%≦Mn≦95
%、2%≦Mg≦20%、2%≦Ca≦20%と限定す
る。これ以外の元素が検出されても、(Mn、Mg、C
a)Sを主体とする硫化物であれば本発明のオーステナ
イト粒微細化効果を発揮するものと考えられる。また、
粒子中から微量のOが検出される場合があるが、SとO
の割合が重量%にて95%≦Sであり、含まれているO
が5%未満と微量であれば(Mn、Mg、Ca)Sであ
るとみなす。これらの量の割合は、TEM−EDXにて
定量して求める。この定量時に使用する電子ビーム径は
0.001〜0.02μm、TEM観察倍率は5万〜1
00万倍とし、微細な(Mn、Mg、Ca)S粒子内の
任意の位置を定量する。
【0033】鋼板から抽出レプリカを作成した場合に、
0.005〜0.5μmのサイズの(Mn、Mg、C
a)S以外の析出物、例えばセメンタイトや合金炭窒化
物などが多数生成して(Mn、Mg、Ca)S粒子の個
数を測定しにくい場合には、1400℃にて60秒程度
保持して(Mn、Mg、Ca)S以外の粒子を固溶さ
せ、その後急冷してセメンタイトや合金炭窒化物が少な
いサンプルを作成し、これから抽出レプリカを作成する
と良い。
【0034】上記のようなサイズおよび個数の粒子を鋼
中に分散させるためには、Mn、S、Mg、Caおよび
Alの含有量を下記のとおり限定することが望ましい。
Mnは、(Mn、Mg、Ca)Sを構成する元素である
ため本発明に必須の元素である。Mnは0.1%以上添
加することで微細な(Mn、Mg、Ca)Sの多量分散
が可能となるので0.1%を下限とした。Mnが2.0
%を超えると(Mn、Mg、Ca)Sが粗大化しやすく
なりHAZ靭性向上効果が小さくなるため2.0%を上
限とした。
【0035】Sは、(Mn、Mg、Ca)Sを構成する
元素であるため本発明に必須の元素である。0.002
%未満では(Mn、Mg、Ca)Sの量が不十分である
ので、下限を0.002%とした。より多量の微細な
(Mn、Mg、Ca)S粒子を生成させるためには0.
003%以上の添加がより好ましい。0.02%超含有
すると、粗大な(Mn、Mg、Ca)Sが生成して超大
入熱溶接HAZのγ粒細粒化効果が得られないため上限
値を0.02%とした。
【0036】Mgは、(Mn、Mg、Ca)Sの生成促
進に必須の元素である。0.0005%未満では必要な
個数の(Mn、Mg、Ca)S粒子を得ることはできな
い。より多量の微細な(Mn、Mg、Ca)S粒子を生
成させるためには0.0015%以上の添加がより好ま
しい。0.005%超の添加はMgが酸化物を生成する
ため(Mn、Mg、Ca)S量が飽和しHAZ靭性向上
効果も飽和する上、経済性を損なうのでその上限値を
0.005%とした。
【0037】Caは、(Mn、Mg、Ca)Sの生成促
進に必須の元素である。0.0005%未満では必要な
個数の(Mn、Mg、Ca)S粒子を得ることはできな
い。より多量の微細な(Mn、Mg、Ca)S粒子を生
成させるためには0.0015%以上の添加がより好ま
しい。0.005%超の添加はMgが酸化物を生成する
ため(Mn、Mg、Ca)S量が飽和しHAZ靭性向上
効果も飽和する上、経済性を損なうのでその上限値を
0.005%とした。
【0038】Alは、Mgが酸化物を生成することを抑
制し、(Mn、Mg、Ca)Sの生成促進に必要な鋼中
Mgを得るために必須の元素であり、0.015%以上
の添加が必要である。より多量の微細な(Mn、Mg、
Ca)S粒子を生成させるためには、0.02%以上の
Al添加がより好ましい。0.5%を超えて含有する
と、固溶AlによるHAZ脆化が起るため(Mn、M
g、Ca)SによってHAZのオーステナイト粒を微細
化しても大きな靭性向上効果が得られない。従って、上
限を0.5%とした。
【0039】HAZ靭性は、オーステナイト粒微細化と
粒内組織微細化だけではなく、合金元素により大きく変
化する。また、母材の強度確保のためにも適正な合金元
素を含有させる場合があるので、以下の理由により合金
元素の添加量を限定した。
【0040】Cは、母材の強度を上昇できる元素であ
る。0.04%未満では母材強度の確保が得られないの
で0.04%を下限とした。逆に、Cを多く含有する
と、脆性破壊の起点となるセメンタイトや島状マルテン
サイトを増加させるため、Mn、Mg、Ca)Sによっ
てHAZのオーステナイト粒を微細化しても大きな靭性
向上効果が得られない。0.25%を超えると靭性低下
が顕著となるので、これを上限値とした。
【0041】Siは、母材強度上昇に有効な元素であ
る。0.02%未満ではこの効果が得られないので下限
値を0.02%とした。逆に、0.5%超含有すると、
HAZ組織中に島状マルテンサイトが多量に生成し、さ
らに、フェライト地を硬化させるので、(Mn、Mg、
Ca)SによってHAZのオーステナイト粒を微細化し
ても大きな靭性向上効果が得られない。従って、上限を
0.5%とした。
【0042】Pは、粒界脆化をもたらし、靭性に有害な
元素であり、低いほうが望ましい。0.02%超含有す
ると(Mn、Mg、Ca)S粒子によりHAZのオース
テナイト粒を微細化しても靭性低下が顕著となるので
0.02%を上限とする。
【0043】さらに、母材強度上昇に効果のある選択元
素の限定範囲を以下の理由で決定した。Niは、焼入れ
性を上昇させることにより母材強度上昇に効果を有し、
さらに靭性を向上させる。0.05%未満ではこれらの
効果が得られないので下限値を0.05%とした。Ni
は高価な元素であり、2.0%超含有すると経済性を損
なうため上限値を2.0%とした。
【0044】Crは、母材強度上昇に効果を有する。
0.02%未満ではこの効果が得られないので下限値を
0.02%とした。逆に、1.0%超含有するとHAZ
に硬化組織を生成し、(Mn、Mg、Ca)Sによって
HAZのオーステナイト粒を微細化しても大きなHAZ
靭性向上効果が得られない。従って、上限値を1.0%
とした。
【0045】Moは、母材強度上昇に効果を有する。
0.02%未満ではこの効果が得られないので下限値を
0.02%とした。逆に、1.0%超含有するとHAZ
に硬化組織を生成し、(Mn、Mg、Ca)Sによって
HAZのオーステナイト粒を微細化しても大きなHAZ
靭性向上効果が得られない。従って、上限値を1.0%
とした。
【0046】Nbは、母材の強度上昇および細粒化に有
効な元素である。0.005%未満ではこれらの効果が
得られないので下限値を0.005%とした。逆に、
0.05%超含有するとHAZにおけるNb炭窒化物の
析出が顕著となり、(Mn、Mg、Ca)SによってH
AZのオーステナイト粒を微細化しても大きなHAZ靭
性向上効果が得られない。従って、上限値を0.05%
とした。
【0047】Vは、母材の強度上昇および細粒化に有効
な元素である。0.005%未満ではこれらの効果が得
られないので下限値を0.005%とした。逆に、0.
1%超含有するとHAZにおける炭窒化物の析出が顕著
となり、(Mn、Mg、Ca)SによってHAZのオー
ステナイト粒を微細化しても大きなHAZ靭性向上効果
が得られない。従って、上限値を0.1%とした。
【0048】Tiは、母材の強度上昇および細粒化に有
効な元素である。0.005%未満ではこれらの効果が
得られないので下限値を0.005%とした。逆に、
0.025%超含有すると粗大なTiNを生成しこれが
破壊の発生起点となるため、(Mn、Mg、Ca)S粒
子によってHAZのオーステナイト粒を微細化しても大
きなHAZ靭性向上効果が得られない。従って、上限値
を0.025%とした。
【0049】Bは、制御冷却および焼入れ熱処理を施す
場合に特に顕著な強度上昇の効果を発揮する。0.00
04%未満の含有量では強度上昇効果が得られないので
下限値を0.0004%とした。逆に、0.004%超
含有すると粗大なB窒化物や炭硼化物を析出してこれが
破壊の起点となるために、(Mn、Mg、Ca)Sによ
ってHAZのオーステナイト粒を微細化しても大きなH
AZ靭性向上効果が得られない。従って、上限値を0.
004%とした。
【0050】本発明では微細な(Mn、Mg、Ca)S
を生成させることが必要であり、このためにCu、Mn
以外の硫化物形成元素は極力下げることが望ましい。代
表的な元素はCaおよびREMであり、これらは0.0
005%以下とすることが望ましい。
【0051】本発明では鋼中酸素量については特に制限
しない。0.015〜0.5%のAl添加鋼では鋼中酸
素量は0.0003〜0.0040%程度となるが、こ
の範囲内の酸素量であれば本発明の細粒化効果を損なう
ことはない。本発明では鋼中窒素量については特に制限
しない。通常の0.0010〜0.010%程度の窒素
量であれば本発明の細粒化効果を損なうことはない。本
発明によるHAZ靭性向上効果は超大入熱溶接ばかりで
なく、大入熱溶接(例えば、100〜200未満kJ/
cm程度)でも有効である。
【0052】なお、本発明では鋼中に通常不可避的に含
有される不純物元素は許容できる。Ni、Cr、Mo、
Nb、V、B、N、Ti等が不純物として混入しても本
発明の性質を損なうことはない。例えば、Niは約0.
05%、Cr、およびMoは約0.02%、Nb、V、
Tiは約0.005%、Bは約0.0004%まで不純
物として含有されていても特に悪影響を及ぼさない。
【0053】鋼の溶製方法は、例えば溶鋼温度を165
0℃以下として、溶鋼O濃度を0.01%以下、溶鋼S
濃度を0.02%以下とした状態で、適量のCa、M
n、MgおよびAlを添加し、この溶鋼を連続鋳造する
ことにより鋼中に(Mn、Mg、Ca)Sの微細粒子を
含有させることができる。鋼の製造方法は、(Mn、M
g、Ca)Sが所定量存在すれば良いので、鋳造後の加
熱、圧延、熱処理条件は母鋼材の機械的性質に応じて適
宜選定すればよい。
【0054】
【実施例】以下に本発明の実施例を示す。転炉により鋼
を溶製し、連続鋳造により厚さが240〜400mmの
スラブを製造した。表1に鋼材の化学成分を示す。HA
Z靭性は鋼材の炭素等量にも大きく依存するので、本発
明の効果を確認するために、ほぼ同一の化学成分でM
n、S、Mg、Ca、Alのみを変えた鋼を溶製して比
較した。
【0055】表2に鋼板の製造方法と板厚、母材の機械
的性質を示す。同表に示すとおり、制御圧延・制御冷却
法、焼入れ・焼戻し法、直接焼入れ・焼戻し法、および
直接焼入れ・二相域熱処理・焼戻し法により鋼板を製造
した。板厚は35〜100mmとした。図2に示すエレ
クトロガス溶接及び図3に示すエレクトロスラグ溶接に
より溶接試験体を作成した。板厚を35mmにそろえ
て、入熱が310kJ/cmのエレクトロガス溶接を実
施した。ここで、溶接の電流を610A、電圧を35
V、速度を4.1cm/分とした。同図に示すように、
溶接融合線(FL)および溶接融合線から3mm(HA
Z3)の位置がノッチ位置に一致するようにシャルピー
衝撃試験片を採取した。また、エレクトロスラグ溶接の
電流は380A、電圧は46V、速度は1.14cm/
分とした。入熱は920kJ/cmである。エレクトロ
スラグ溶接と同じノッチ位置となるようにシャルピー衝
撃試験片を採取した。衝撃試験は−5℃で行い、3本繰
り返しの平均値で靭性を評価した。結果を表3に示す。
また、エレクトロスラグ溶接部FL直近のHAZのミク
ロ組織観察を実施しγ粒径を測定し、さらに、0.00
5〜0.5μmの粒子径の(Mn、Mg、Ca)Sの粒
子個数を上記の方法に従って測定した結果を表3に併せ
て示す。
【0056】表3から明らかなとおり、本発明鋼[1、
2、3、4、11、12、13、14、16、17、1
9、21、23、25、27]は(Mn、Mg、Ca)
Sの粒子個数が多く、エレクトロスラグ溶接HAZのγ
粒径が小さい。その結果、超大入熱溶接HAZの靭性が
高い。同様に、エレクトロガス溶接でも本発明鋼のHA
Z靭性向上が明らかである。これに対して、比較鋼5、
6、15は、Sの添加量が本発明範囲を逸脱しているた
めに、(Mn、Mg、Ca)S粒子の個数が所定の数を
満たしておらず、溶接熱影部のγ粒径が粗大化してお
り、シャルピー吸収エネルギーも低い。また、比較鋼
7、8は、Al添加量が本発明範囲より低い場合、比較
鋼9、10、22、24、26、28はMgの添加量が
本発明範囲外であるが、全く添加されていない場合であ
り、いずれもγ粒径の粗大化とともに、靭性が低い。さ
らに、比較鋼18、20はMgとともに、Caの添加量
においても本発明範囲を逸脱しているものであり、同様
な理由で靭性が低く、粒系の粗大化ともに、靭性が低下
している。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明鋼ではAl
脱酸鋼において鋼中に(Mn、Mg、Ca)Sの粒子を
微細分散させることにより入熱が200kJ/cm以上
の超大入熱溶接のFL及びHAZのγ粒成長抑制作用に
よりHAZの有効結晶粒が微細化され、HAZ靭性を顕
著に向上させることができる。本発明を超大入熱溶接が
適用される構造物に適用することにより、極めて信頼性
の高い溶接構造物を製造することが可能である。従っ
て、本発明は工業上極めて効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】0.005〜0.5μmの大きさの(Mn、M
g、Ca)S粒子の個数に及ぼすAl添加量の影響を示
す図である。
【図2】エレクトロガス溶接の条件を示す図である。
【図3】エレクトロスラグ溶接の条件を示す図である。
【符号の説明】
1 シャルピー試験片 2 シャルピー試験片のノッチ位置:FL 3 シャルピー試験片のノッチ位置:HAZ3mm
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松原 洋二 愛知県東海市東海町5−3 新日本製鐵株 式会社名古屋製鐵所内 (72)発明者 長尾 年通 愛知県東海市東海町5−3 新日本製鐵株 式会社名古屋製鐵所内 (72)発明者 植森 龍治 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粒子径が0.005〜0.5μmの(M
    n、Mg、Ca)Sなる組成の硫化物を合計して1平方
    mmあたり1.0×105 〜1.0×107個含むこと
    を特徴とする超大入熱溶接用高張力鋼。
  2. 【請求項2】 質量%で、 0.04≦C≦0.25、 0.02≦Si≦0.5、 0.1≦Mn≦2.0、 P≦0.02、 0.002≦S≦0.02、 0.015<Al≦0.5、 0.0005≦Mg≦0.005、 0.0005≦Ca≦0.005、 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなる鋼で
    あることを特徴とする請求項1記載の超大入熱溶接用高
    張力鋼。
  3. 【請求項3】 更に母材強度上昇元素群を、質量%で、 0.05≦Ni≦2.0、 0.02≦Cr≦1.0、 0.02≦Mo≦1.0、 0.005≦Nb≦0.05、 0.005≦V≦0.1、 0.005≦Ti≦0.025、 0.0004≦B≦0.004、 の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項2記載の超大入熱溶接用高張力鋼。
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