JP2003160338A - ヒ素吸着性のマンガン化合物とヒ素吸着剤並びに水溶液中ヒ素の吸着除去方法 - Google Patents

ヒ素吸着性のマンガン化合物とヒ素吸着剤並びに水溶液中ヒ素の吸着除去方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 五価のヒ素をはじめ、従来困難とされていた
三価のヒ素をも効率的に除去することが可能な、新しい
技術手段を提供する。 【解決手段】 ビスマスを含むマンガンの酸素化合物で
あって、マンガンを主成分とすることを特徴とするヒ素
吸着性のマンガン化合物を用いて、ヒ素含有水溶液を処
理し、ヒ素を吸着除去する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、ヒ素吸着
性のマンガン化合物とヒ素吸着剤並びに水溶液中のヒ素
の吸着除去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】河川や湖沼水域のヒ素によ
る汚染問題の例は国内外で多くみられ、特に海外ではバ
ングラディッシュの例が大きく報道されている。この地
の土壌はヒ素を豊富に含んでおり、ヒ素で汚染された井
戸水を飲料水として利用している現地住人にはヒ素によ
る皮膚障害や疾患が多くみられる。バングラディッシュ
の中でも最も被害が深刻といわれるNawabganj district
では、飲料水中のヒ素濃度が0.01〜1mg/l(W
HOの水質基準0.01mg/l)にも達すると報告さ
れているが実質的な対策は行われていないのが現状であ
る。一方、国内におけるヒ素汚染問題は主に廃鉱山から
の廃水によるものである。島根県の笹ヶ谷鉱山では、閉
山後の坑道からの廃水により鉱山の周辺の河川水中のヒ
素濃度は環境基準値を越える0.08〜1.3mg/l
であったと報告されている。また、北海道の旧幌別硫黄
鉱山周辺では弁景川へのヒ素を多量に含む強酸性水の流
出により、1975年までは河川水中のヒ素濃度が大き
く環境基準値を越えていた。これに対して、壮瞥町によ
る坑口の封鎖や坑内水の中和処理施設の設置などの鉱害
対策により、1981年以降は当初のヒ素濃度0.2m
g/lに対して10分の1の約0.02mg/lにまで
低下したと報告されている。しかしながら、この処理施
設で中和とヒ素の共沈除去のために用いられるライムケ
ーキ、消石灰および炭酸カルシウムの使用総量は年間4
〜5万トンに達し、これによって発生する多量の沈殿物
の処理場の確保と年間約3億円の経費を必要とすること
が大きな問題となっている。ヒ素による水質汚染問題
は、上記の他にも地熱発電所からの廃水や産業廃棄物に
よるものなど数多く存在する。しかしながら、現在、主
として行われている共沈法には処理後の廃棄物処理や経
費の問題などがあり、これに代わるヒ素の処理法として
ヒ素吸着剤による処理方法が期待されている。特に、三
価のヒ素を酸化剤の添加によって比較的吸着しやすい五
価のヒ素に酸化する過程を省いて直接3価のヒ素を吸着
できる新規な吸着物質を実現することは、経済的なヒ素
除去技術を確立するうえで価値があるものと考えられ
る。
【0003】そこで、この出願の発明は、以上のとおり
の従来技術の問題点を解消し、五価のヒ素はもちろんの
こと、従来困難とされてきた三価のヒ素をも効率的に除
去することが可能な、新しい技術手段を提供することを
課題としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の課題を解決するものとして、第1には、ビスマスを含
むマンガンの酸素化合物であって、マンガンを主成分と
することを特徴とするヒ素吸着性のマンガン化合物を提
供する。
【0005】そしてこの出願の発明は、上記の発明につ
いて、第2には、ビスマスは、マンガンの酸素化合物の
表面の一部に分布して配設されていることを特徴とする
ヒ素吸着性のマンガン化合物を、第3には、ビスマスま
たはその化合物が添加されたマンガンまたはその化合物
が、大気中もしくは含酸素雰囲気中において焼成された
ものであることを特徴とするヒ素吸着性のマンガン化合
物を、第4には、そのビスマスの化合物が炭酸酸化ビス
マスであって、マンガンの化合物が炭酸マンガンである
ことを特徴とするヒ素吸着性のマンガン化合物を、第5
には、マンガンの酸素化合物を含む溶液にビスマスが加
えられて乾燥脱水されたものであることを特徴とするヒ
素吸着性のマンガン化合物を、第6には、マンガン化合
物が粉砕されたものであることを特徴とするヒ素吸着性
のマンガン化合物を、第7には、マンガン化合物が酸処
理されたものであることを特徴とするヒ素吸着性のマン
ガン化合物を提供する。
【0006】そして、この出願の発明は、第8には、よ
り具体的に、炭酸酸化ビスマス粉末と炭酸マンガン粉末
との混合物が100℃〜450℃の温度において焼成さ
れたものであることを特徴とする前記のヒ素吸着性のマ
ンガン化合物を、第9には、200℃近傍の温度におい
て焼成されたものであることを特徴とするヒ素吸着性の
マンガン化合物を、第10には、ビスマスとマンガンの
混合モル比が0.001:1から1:1の範囲であるこ
とを特徴とするヒ素吸着性のマンガン化合物を、第11
には、ビスマスとマンガンの混合モル比が0.01:1
から1:1の範囲であることを特徴とするヒ素吸着性の
マンガン化合物を提供する。
【0007】第12には、この出願の発明は、以上いず
れかのマンガン化合物もしくはこれを含有するものから
なることを特徴とするヒ素吸着剤を提供し、第13に
は、マンガン化合物が担体物質に担持もしくは担体物質
に充填されていることを特徴とするヒ素吸着剤を提供す
る。
【0008】さらに、この出願の発明は、第14には、
前記のヒ素吸着剤を、ヒ素を含有する水溶液と接触させ
て、水溶液中のヒ素を吸着除去することを特徴とする水
溶液中のヒ素の吸着除去方法を提供し、第15には、ヒ
素を吸着した吸着剤を酸処理して、ヒ素を酸溶液中に脱
着させ、ヒ素を脱離した吸着剤を再利用可能とすること
を特徴とするヒ素吸着剤の再生方法をも提供する。
【0009】以上のとおりのこの出願の発明によるマン
ガンを主成分とする酸素化合物は、吸着剤法以外の従来
手法のもつ経済性の低さの問題を解決し、さらに従来の
吸着剤法では効率的な除去が技術的に困難であった三価
のヒ素をも極めて短時間に効率良く吸着除去できるとい
った特徴を有している。たとえばこの発明による吸着剤
の場合には、吸着剤1グラムあたりの三価のヒ素吸着量
は50mgにも達する。また、ヒ素を吸着した吸着剤を
希硫酸などの酸溶液と接触させることによって簡易に吸
着ヒ素を酸溶液中に回収でき、吸着剤は再利用が可能に
なるという特徴も有している。
【0010】そして、この出願の発明は、三価のヒ素で
ある亜ヒ酸のみならず、五価のヒ素であるヒ酸に対して
も有効であることも重要な特徴である。一般に工業廃水
中のヒ素は五価のヒ酸の形態で溶存するケースが多いこ
とから、三価の亜ヒ酸だけでなく、五価のヒ酸に対して
も有効であることは、この出願の発明がヒ素含有廃水の
処理において広い適用性を有していることを意味してい
る。
【0011】さらに、以上のような、この発明の吸着剤
は優れた性能を示すと共に、吸着剤による浄水方法の長
所でもある、処理対象となる水溶液の電解質濃度を上げ
ずにすむという長所を併せもつ。すなわち、吸着剤の主
成分であるマンガンとビスマスが処理対象のヒ素水溶液
中に、ほとんど溶出しないという特徴を有している。
【0012】また、これまで粉末状吸着剤の保持方法と
しては、PVC等を用いて造粒したのちカラム等に充填
してやる手法が一般的とされている。しかしながら、こ
の従来の方法ではPVCとの接着面が生ずるために、吸
着剤粒子と処理対象の液体との接触面積が小さくなり、
結果としてカラムがもつ処理能力の低下をまねいてい
た。そこで、この発明では、たとえば、無灰パルプまた
はガラスウールなどの繊維質等の担体物質を用いて、粉
末状吸着剤を保持する手法を新たに開発し、上述した従
来手法の短所を改善している。
【0013】
【発明の実施の形態】この出願の発明は前記のとおりの
特徴をもつものであるが以下にその実施の形態について
説明する。
【0014】まず、この出願の発明が提供するマンガン
化合物は、その機能としてヒ素吸着性を有している。そ
して、このものは、ビスマス(Bi)を含むマンガン
(Mn)の酸素化合物あって、しかもマンガンを主成分
としている。そしてこの出願の発明のマンガン化合物に
おいて、ビスマスは、マンガンの酸素化合物の表面に一
部に分布して配設されていることがより好ましい形態と
して例示される。なお、「酸素化合物」との規定につい
ては、酸化物または複合酸化物等としての酸化物、ある
いはこれを主とした、炭酸基等の酸素含有基を有するも
のを意味している。そしてこのマンガンの酸素化合物と
は、代表的に焼成物として得られるものを考慮すること
ができるが、これに限定されることはない。
【0015】たとえば、焼成については、通常は、10
0℃〜500℃程度の温度において、ビスマスまたはそ
の化合物とマンガンあるいはその化合物とが上記のよう
なマンガンの酸素化合物を構成するようにしている。こ
の焼成においては、大気中あるいは酸素雰囲気中におい
て、上記のとおりの酸素化合物の生成が可能な原料物質
として、金属ビスマスまたはその各種の化合物や金属マ
ンガンまたはその各種の化合物を用いることができる。
より具体的に、この化合物としては、たとえば、硫化
物、臭化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩、ハロ
ゲン化物等であって、固体状の粉末等として存在するも
のが好適に用いられる。ゾル−ゲル法によって沈殿生成
されたものであってもよい。
【0016】この出願の発明のマンガン化合物は、より
代表的には、炭酸酸化ビスマスの粉末と炭酸マンガンの
粉末を混合し、これを混合粉末として、あるいは成形体
として100〜450℃、好ましくは170℃〜250
℃、より限定的には200℃近傍の温度範囲で焼成した
ものが例示される。ここで、200℃近傍とは、200
±20℃程度の温度範囲を示すものとして理解すること
ができる。この代表例の炭酸酸化ビスマスと炭酸マンガ
ンをはじめとする原料物質の混合割合は、ヒ素吸着性能
の点においては、モル比で、ビスマス:マンガンが0.
001:1〜1:1の範囲とすることが好ましい。そし
て、ヒ素吸着の通常的な実施環境下においては、0.0
1:1〜1:1の範囲、より限定的には0.01:1〜
0.5:1の範囲のものとすることを好適な例として示
すことができる。
【0017】一方で、この出願の発明のマンガン化合物
は、焼成物として得られるのもに限定されることはな
く、たとえば、マンガンの酸素化合物を含む溶液にビス
マスが加えられて乾燥脱水されたものとしても実現され
るのである。より具体的には、たとえば、過マンガン酸
カリウムと硫酸マンガンを硫酸浴中で混合攪拌して二酸
化マンガンを含む溶液を調整し、これにたとえば硝酸ビ
スマスを加えて攪拌しながら、200℃で乾燥脱水して
得られるもの等が例示される。この場合のビスマスとマ
ンガンの割合については、前記と同様にすることができ
る。
【0018】このようなこの出願の発明のヒ素吸着性の
マンガン化合物は、ヒ素吸着剤としては、マンガン化合
物を酸処理によって活性化することも有効である。たと
えばこの酸処理は、希硝酸、希硫酸、希塩酸等を用いて
行うことができ、この酸処理によって、この出願の発明
のマンガン化合物のヒ素吸着性能は著しく向上されるこ
とになる。
【0019】さらにヒ素吸着剤としてのこのマンガン化
合物は、焼成物については、たとえば原料を混合粉末あ
るいは成形体としてから焼成することができ、所望の比
表面積を有する焼成物として得ることが可能とされてい
る。
【0020】また、このマンガン化合物は、任意のタイ
ミングにおいて所望の大きさに粉砕し、比表面積を調整
して利用することなども可能である。したがって、上記
の酸処理による活性化を施すことのほかに、焼成物を粉
砕して比表面積を調整することによっても、このマンガ
ン化合物の吸着性能を向上させることができる。
【0021】このようなこの出願の発明のヒ素吸着剤
は、無灰パルプやガラスウール等の担体物質を保持材と
して、これに担持、あるいは充填して、水溶液中のヒ素
の吸着除去に使用することもできる。
【0022】従来技術では、水中の三価のヒ素を酸化剤
の投与によって処理しやすい五価のヒ素に酸化した後、
処理していた。この従来の方法では水中の電解質濃度が
増加することによる水質の悪化が問題となり、さらには
経済性も低いため、水中の三価のヒ素を直接的に吸着処
理できる吸着剤の開発が望まれていた。この出願の発明
では、たとえば、マンガン化合物にビスマス化合物を少
量添加して焼成する等して得られるビスマスを含みマン
ガンを主成分とする金属酸化物を、より好適には酸処理
した後、ヒ素廃水に適用することによって、五価のヒ素
の場合だけでなく、三価のヒ素に対する高性能で経済的
な吸着処理を実現することができる。なお、三価のヒ素
の吸着については、この発明の実証実験において、ヒ素
水溶液のpHと酸化還元電位の測定から亜ヒ酸(HAs
O2)の状態にあるヒ素の場合として確認している。
【0023】また、ガラスウール等を吸着剤保持材とし
て用いることにより、カラムの繰り返し使用時の耐薬品
性が優れた粉末状吸着剤の保持層が得られる。また、無
灰パルプを吸着剤保持材として用いることにより、カラ
ムを繰り返し使用後、廃棄する際に焼却炉等で焼却処分
することが可能となる。この時、粉末吸着剤を抱き込ん
だ保持層の体積の大半を占める無灰パルプはほぼ完全に
燃焼し、焼却後は吸着剤の成分のみが残渣として残るこ
とになる。
【0024】以上のとおり、この出願の発明によれば、
五価のヒ素の場合はもちろんのこと、従来技術では水中
からの除去が困難とされてきた三価のヒ素を効率的に吸
着できる新規な吸着剤が提供される。この吸着剤は、吸
着剤1g当たりの最大ヒ素吸着量が50mg以上に達す
る高い性能を示す。
【0025】この発明による吸着剤をヒ素水溶液に適用
するに当たっては、たとえば以下の手順によると最も効
果が大きい。このことは後述の実施例より明らかであ
る。
【0026】(a)炭酸マンガン粉末MnCO3(特級
試薬)と炭酸酸化ビスマス粉末Bi2(CO3)O2(特
級試薬)とを重量比1:0.1〜0.2の割合で混合
し、電気炉を用いて200℃で4時間30分焼成するこ
とで、ビスマスを含みマンガンを主成分とする金属酸化
物を合成する。
【0027】(b)(a)で得られたビスマスを含みマ
ンガンを主成分とする金属酸化物を濃度0.5mol/
l程度の希硝酸に懸濁させて、残留炭酸成分を気化して
除去する。ついで純水で洗浄して付着している希硝酸を
除去する。
【0028】(c)(b)で得られた試料を乾燥機を用
いて100℃程度で1時間乾燥処理する。以上の操作に
よって吸着剤が製造される。
【0029】(d)吸着剤使用時は、(c)の吸着剤を
ヒ素水溶液に接触させる。必要に応じて、濃度0.5m
ol/l程度の希硝酸に懸濁させて30分〜1時間程度
攪拌した後、ろ取し、純水で洗浄した後、ヒ素水溶液に
懸濁させることができる。
【0030】(e)ヒ素水溶液中のヒ素濃度が排水基準
値である0.1mg/lまで低下した後、吸着剤をろ過
などの手法によってヒ素水溶液中から回収する。浄化さ
れた廃水は公共用水域への放流が可能となる。
【0031】(f)回収したヒ素吸着後の吸着剤に濃度
0.5mol/l程度の希硫酸を少量加え、30分程度
攪拌することによって、希硫酸中に吸着ヒ素を脱着して
濃縮する。
【0032】(g)ヒ素を脱着した後の本吸着剤は再び
ヒ素に対する吸着能力を回復するため、再びヒ素水溶液
と接触させて再使用する。
【0033】また、以上の例示では吸着剤を粉体のまま
でヒ素水溶液に懸濁させているが、工業化の際には必要
に応じて造粒したり、必要に応じて適切な大きさに粉砕
したり、また、多孔質体に担持させてカラムに充填し、
カラムにヒ素水溶液を通水することによってヒ素を除去
する応用も可能である。
【0034】そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく
説明する。もちろん以下の例によって発明が限定される
ことはない。
【0035】
【実施例】実施例1:吸着剤の合成とヒ素吸着 〔吸着剤の合成〕炭酸マンガンMnCO3粉末(特級試
薬)と炭酸酸化ビスマスBi2(CO3)O2粉末(特級
試薬)との混合比を数段変えて充分に混合した。混合し
た各混合粉体を20g程度、それぞれ磁製ルツボに移
し、電気炉を用いて400℃で4.5h焼成した後、室
温まで放冷した。焼成の結果得られたビスマスを含みマ
ンガンを主成分とする金属酸化物を吸着剤として用いて
ヒ素吸着実験を実施し、最も高い吸着量が得られる最適
な炭酸マンガンMnCO3粉末と炭酸酸化ビスマスBi2
(CO3)O2粉末との混合重量比を求めた。また、炭酸
酸化ビスマスBi2(CO3)O2粉末を混合しない、炭
酸マンガンMnCO3粉末のみを同条件で焼成して得ら
れたマンガン酸化物と吸着性能を比較することによって
ビスマスを添加する効果を確認した。
【0036】次に、焼成温度を150℃、200℃、2
50℃、300℃と数段階変化させて4.5h焼成した
後、室温まで放冷し、その結果得られたビスマスを含み
マンガンを主成分とする金属酸化物を吸着剤として用い
てヒ素吸着実験を実施することで最適な焼成温度を調べ
た。
【0037】なお、ここで得られたビスマスを含みマン
ガンを主成分とする吸着剤と、炭酸マンガン粉末の焼成
物は、全て、粒径1〜10μm、比表面積は50m2/g
程度であった。 〔ヒ素吸着実験の方法〕試薬As2O3から調製された三
価のヒ素含有の全濃度が1000mg/lのヒ素標準液
(和光純薬工業製)をイオン交換水で希釈して、濃度が
10mg/l、20mg/l、および40mg/lのヒ
素溶液を1000ml作成してそれぞれの実験に供し
た。またヒ素水溶液のpH調節には水酸化ナトリウム水
溶液を用いた。次に、上述の合成によって得た吸着剤
1.0gを電子天秤で秤量し、0.5mol/lの希硝
酸(希硫酸、または希塩酸でも可)1000mlに懸濁
させて1時間かく拌した。かく拌後、孔径0.6mmの
ガラス繊維ろ紙(GS25アドバンテック東洋(株))
を用いて吸引ろ過を行い、イオン交換水1000mlで
通水洗いを実施した(以下、この操作を酸処理と呼
ぶ)。酸処理の結果得られる活性化した吸着剤をヒ素水
溶液に懸濁させて1時間かく拌した。かく拌中、5分、
10分、20分、30分および60分経過時にヒ素水溶
液からサンプルを20mlずつろ取した。ろ取には、孔
径0.2μmのディスポーサブルメンブランフィルタ
(DISMIC−25アドバンテック東洋(株))を用
いた。ろ取した各サンプル中のヒ素濃度をICP発光分
析装置(ICPS−1000III 島津製作所(株))で
測定し、ヒ素水溶液中のヒ素濃度の時間推移を調べた。 〔ヒ素吸着量と原料混合比〕ヒ素吸着剤を合成するに当
たり、前記のとおり、炭酸マンガンMnCO3粉末(特
級試薬)と炭酸酸化ビスマスBi2(CO3)O2粉末
(特級試薬)との混合比を変えて、最適な混合比を検討
した。焼成温度は400℃とした。その結果を図1に示
した。図1から最も高い吸着量が得られる最適な混合比
は、混合重量比がMnCO3:Bi2(CO3)O2=1:
0.1〜0.2程度であることが判明した。これに対し
て、ビスマスを添加しない場合である混合比が1:0の
マンガン酸化物では吸着量がビスマスを添加した場合に
比べて著しく低く、ビスマスの混合によってヒ素吸着性
能が向上することが判明した。
【0038】X線回折パターンにより確認したところ、
重量比が上記のとおり1:0.1〜0.2の焼成物の場
合には、酸化ビスマスと炭酸酸化ビスマスのピークと、
2θの値が37deg付近でアモルファスマンガン酸化
物によるものと考えられるブロードなピークが認められ
た。 〔ヒ素吸着量と焼成温度〕ヒ素吸着剤を合成するに当た
り、炭酸マンガンと炭酸酸化ビスマスの混合粉体を電気
炉を用いて焼成した際の、焼成温度の違いに対するヒ素
吸着量の変化を検討した。その結果を図2に示した。図
2から、焼成温度が300℃程度の場合に高い吸着量が
得られることがわかる。しかしながら、吸着操作終了後
にヒ素水溶液中に懸濁している吸着剤をろ取し、重量を
計量したところ、初期重量である1gから重量が半分近
くに減少していることがわかった。この吸着剤重量の減
少は、焼成後に得られる吸着剤中に原料試薬である炭酸
マンガンが残留しており、吸着剤の酸処理の際に炭酸成
分が気化して抜けることに起因するものと考えられる。
この重量の減少量を考慮して図2を補正すると図3のよ
うに200℃の焼成によって得られた吸着剤が最も高い
吸着量を示すことが明らかとなった。 〔ヒ素吸着量とpH〕ヒ素吸着量が除去対象の水溶液の
pHによってどのような影響を受けるかを調べた。その
結果、図4のようにヒ素水溶液のpHが弱酸性の場合に
良好なヒ素吸着を示すことが明らかとなった。よって、
除去対象となるヒ素水溶液のpHを予め弱酸性に調整し
ておくと効率的なヒ素除去が行えるものと考えられる。 〔吸着剤からヒ素の脱着方法〕吸着剤に吸着したヒ素は
希硫酸などの酸と接触させると良好な脱着性を示す。脱
着に用いる酸溶液の種類と脱着率の関係を図5に示し
た。図5より、希塩酸あるいは希硫酸を用いた場合に高
い脱着が可能なことがわかる。 〔水溶液中のヒ素濃度と吸着量〕水溶液中のヒ素濃度が
吸着量に与える影響を図6に示した。この図6から明ら
かなように、ヒ素濃度が高まるにしたがって吸着量も増
加する。 〔実際のヒ素廃水への適用例〕合成した吸着剤が、実際
の三価のヒ素を含有するヒ素廃水に対して有効かどうか
を確認した。処理対象としたのは、現在稼働中の地熱発
電所において生じている廃水である。この排水中にはヒ
素が3.5mg/lの濃度で存在している。この廃水の
成分とpHを表1に示した。表1から分かるように、こ
の廃水はヒ素以外にも多成分を含む。実際では、この廃
水1lに対して、上記の混合重量比が1:0.2で20
0℃で焼成した1gの吸着剤を濃度0.5mol/lの
希硝酸で酸処理後、廃水に懸濁させて1時間攪拌した。
得られた結果を図7に示した。図7から、廃水中のヒ素
濃度は初期値の3.5mg/lからわずか5分以内で排
水基準値の0.1mg/l以下に減少しており、本吸着
剤が実際のヒ素廃水に対しても極めて有効であることが
証明された。
【0039】
【表1】
【0040】実施例2: 〔無灰パルプまたはガラスウールを用いた粉末状吸着剤
の保持と吸着〕工業化の際には必要に応じて造粒したり
多孔質体に担持させてカラムに充填し、カラムにヒ素水
溶液を通水する事によってヒ素を除去することができ
る。 (1)粉末状吸着剤の保持方法 純水に太さ1μm程度の無灰パルプまたはガラスウール
を適量を加え、十分に攪拌する。使用する無灰パルプま
たはガラスウールの太さは、保持する吸着剤粒子の大き
さに依存する。たとえば直径が1〜数十μm程度の吸着
剤粒子を保持対象とする。次に、吸着剤を加えてさらに
攪拌する。ここで、吸着剤の性質に応じて必要な場合に
は塩酸、硝酸などの鉱酸を加えて所定の時間攪拌する。
この鉱酸を加えて攪拌する処理によって吸着剤粒子の表
面が活性化される。
【0041】ガラスウールを用いる場合には吸着カラム
をつくる筒の上部より少量ずつ上述の懸濁液を加え、そ
の都度下部からポンプなどで完全に吸引して液を排出す
る。これを目的の厚さになるまで繰り返しガラスウール
繊維が粉末状吸着剤を抱き込んだ保持層を成形させる。
【0042】一方、無灰パルプを用いる場合には、吸着
カラムをつくる筒の上部から上述の懸濁液を注ぎ入れ、
下部から徐々に液体を排出させながらカラムの筒中でパ
ルプと吸着剤が均一に沈降するよう棒などで攪拌しなが
ら無灰パルプ繊維が粉末状吸着剤を抱き込んだ保持層を
成形させる。 (2)保持方法による実施例 以下は、前項で述べた吸着方法に対して本保持方法を適
用したヒ素含有水処理の実施例である。
【0043】a)吸着カラム法 この手法は、半導体工場などから排出される三価のヒ素
を含有するヒ素廃水をターゲットとした実施例である。
図8に示したように廃水タンクからポンプを用いて吸着
カラムに廃水を圧入してヒ素を除去する方法であり、連
続的かつ大量に廃水を処理することが可能である。な
お、ポンプと吸着カラムの間にはバルブを設け、吸着カ
ラムへの送液量を制御する。また、吸着カラムは密閉さ
れており、ヒ素吸着剤と大気との接触を防いで吸着剤の
乾燥による吸着カラムの性能低下を防止している。図9
には、この手法によるヒ素廃水処理の実施結果を示し
た。この実施結果は、吸着カラムの直径2cm、カラム
長さ10cmの円筒形のカラムを用いて、1ppmのヒ
素水溶液を300ml/hの速度で通水処理した実験結
果から得られたものである。
【0044】b)吸着マット法 この手法は、バングラディッシュなどにおいて生じてい
る深刻な飲料水のヒ素汚染に対する浄水技術として考案
した実施例である。電源などを一切必要としない簡易な
浄水手法として期待される。図10に示す処理装置は、
取水栓のついた外枠とヒ素吸着マットおよび従来から家
庭用ろ過槽などにも用いられている木炭および砂・小石
等から構成されている。この装置の特徴として、構造が
単純であり壊れにくく、外枠と吸着マットのみを現地に
供給することでヒ素の浄水が可能になる点があげられ
る。小石層および砂層では水中の懸濁微粒子を取り除
き、また木炭層においては有機物等を除去し、さらにヒ
素吸着マットにおいてヒ素を吸着除去することにより安
全な飲料水が手軽に得られる。その他、構造上の特徴と
してヒ素吸着マットの設置位置により取水栓の位置を高
くすることで常に吸着マットが水中にあるようにしてい
ることがあげられる。これによって、吸着マットと大気
との接触によって吸着剤が乾燥し、結果として吸着マッ
トの性能劣化が生じることを防いでいる。
【0045】なお、吸着マットには、あらかじめ鉱酸に
よって活性化処理されたヒ素吸着剤が保持されている。
吸着マットと大気との接触による吸着剤の性能劣化を防
ぐために、吸着マットは外枠部分とは別に充分に水分を
吸わした状態で空気を抜いて密封する必要がある。本装
置を使用する現地までは、吸着マットをフィルムなどで
密閉状態にして送付し、使用開始時にフィルムを剥がし
て開封し、外枠の中に敷き、その上から図のように砂、
小石、木炭を充填して使用する。
【0046】c)吸着パック法 この手法は、b)の手法に対して、より簡易性・利便性
を高めることを目的とし、携帯型のヒ素浄水手法として
考案された実施例である。この手法の実施例を図11に
示した。吸着パック中には通水性をよくするための少量
のガラスウールまたは無灰パルプ等の繊維室とヒ素吸着
剤が封入されており、処理対象の水に投げ入れ、処理対
象水を攪拌することによってヒ素が吸着除去される。
【0047】吸着パック中のヒ素吸着剤は、あらかじめ
鉱酸によって活性化処理され、湿潤状態でビニール袋等
で密封されている。この密封によって、ヒ素吸着剤の吸
着能力は長期にわたって保持される。吸着パックの使用
時には密封袋を破って吸着パックを取り出すことによっ
て即時に利用できる。図12にこの手法の実施結果を示
す。図12では、三価のヒ素含有水1リットルに1個の
吸着パック投入して攪拌した際のヒ素濃度の低下の様子
が見られる。
【0048】実施例3: 〔工業廃水からのヒ酸(五価のヒ素)の除去〕 (実験廃水)表2に示したような成分をもつ実際の工業
廃水からヒ素(V)の除去を上記の混合重量比が1:
0.2で200℃で焼成した吸着剤を用いて試みた。ヒ
素濃度は0.028mg/lであり、環境基準の0.0
1mg/lを上回っている。酸化還元電位の測定によ
り、この廃水中のヒ素はヒ酸であることを確認した。
【0049】
【表2】
【0050】(実験条件)実験廃水1リットルに対し、
0.5規定の濃度の硝酸によって酸処理した吸着剤1.
44gを懸濁させて攪拌した。吸着剤懸濁後5min、
15min、30min、60min、120min経
過時に実験廃水のサンプルを濾取し、通常のICP発光
分析と比較して分析感度の高い水素化物発生装置付きの
ICP発光分析装置によって実験廃水中のヒ素濃度の変
化を調べた。 (実験結果)図13に示したように、横軸の攪拌時間の
経過とともにヒ素濃度は低下し、吸着剤懸濁後30分で
環境基準値の0.01mg/lをクリアした。よって、
この発明の吸着剤は表2のように種々の他成分が共存す
る実際の工業廃水中からヒ素(V)を除去することにも
有効であることが確かめられた。
【0051】実施例4: 〔人工ヒ素(V)廃水からのヒ素の除去〕 (実験廃水)試薬Na2HAsO4を純水に溶解させて、
人工ヒ素(V)廃水3リットルを作成した。ヒ素濃度は
10mg/lとし、pHは水酸化ナトリウム水溶液の添
加によってpH7に調節した。 (実験条件)0.5規定の硝酸で30分酸処理した実施
例3の吸着剤1gを純水で洗浄した後、実験廃水に懸濁
させて1時間攪拌した。 (実験結果)1時間経過時の実験廃水中のヒ素濃度をI
CP発光分析装置で調べたところ、ヒ素濃度は7.2m
g/lに低下していた。実験廃水から吸着剤を濾取し、
重量を計測した結果は0.5gであった。これらの結果
から、吸着剤単位重量当たりのヒ素(V)の吸着量を算
出すると、16.8mg/gという値が得られた。この
値は、試薬As2O3を用いて調合したヒ素(III)を含む
人工亜ヒ酸廃水を用いて実施した実験とほぼ同等な実験
結果であり、この発明の吸着剤が三価のヒ素だけでな
く、五価のヒ素にも同様に有効な吸着剤であることを示
すものである。
【0052】実施例5: 〔吸着剤表面におけるヒ素の吸着状態の観察〕この出願
の発明の吸着剤へのヒ素の吸着状態を観察するために、
大量のヒ素を吸着させた吸着剤を用意した。
【0053】吸着剤としては、炭酸酸化ビスマス粉末と
炭酸マンガン粉末とをモル比でMn:Bi=0.1:1
となるように混合し、200℃で4時間半焼成した焼成
物を、0.5mol/lの希硝酸で30分間攪拌処理
し、25μmのガラス濾紙に濾手して水洗したものを用
いた。この吸着剤0.7gを精秤し、原子吸光分析用ヒ
素標準液から調整した40mg/lの高濃度の人工ヒ素
含有水1Lに懸濁させ、攪拌しながら200時間ヒ素を
吸着させた。
【0054】除去処理開始から200時間後のヒ素の濃
度は、図14に示したように約7.2mg/lであり、
単純に計算して、吸着剤1gあたり約46.8gのヒ素
を吸着している。
【0055】このヒ素を吸着した吸着剤の表面を、走査
型電子顕微鏡(SEM)観察し、その結果を図15に示
した。またこのSEM像に対応する部分をエネルギー分
散型X線分光(EDS)分析により調べ、吸着剤の表面
におけるMn,As,Biの分布状態を観察した。その
結果をそれぞれ図16(a)〜(c)に示した。これら
の図から、吸着剤の表面でBiが偏在していること、ま
たAsは吸着剤の表面にBiが偏在する場所を除いてほ
ぼ均一に存在していることが確認された。
【0056】また、ヒ素吸着前の吸着材、ヒ素吸着後の
吸着剤、およびヒ素吸着後にアルゴンイオンエッチング
して表面を数10nm程度削った吸着剤について、X線
光電子分光(XPS)分析を行ない、その結果をそれぞ
れ図17(a)〜(c)に示した。(a)と比較して、
(b)のヒ素吸着後の吸着剤についてはAs3d軌道電子
の結合エネルギーが44.9eVに見られ、三価の状態
にあるヒ素が吸着されていることが確認された。また、
(c)の表面を削った吸着剤についてはこのスペクトル
が観察されないことから、この吸着剤は、内部気孔など
ではなくごく表面においてヒ素を吸着していることが予
想される。
【0057】以上のことから、この出願の発明の吸着剤
は、主にマンガンの存在する位置に3価の状態でヒ素を
吸着していることがわかった。
【0058】実施例6: 〔バングラディッシュ井戸水からのヒ素の除去〕炭酸酸
化ビスマス粉末と炭酸マンガン粉末とをモル比でMn:
Bi=0.1:1となるように混合し、200℃で4時
間半焼成した焼成物を、0.5mol/lの希硝酸で3
0分間攪拌処理した後、25μmのガラス濾紙に濾手し
て水洗することで、この出願の発明のヒ素吸着剤を得
た。
【0059】まず、この吸着剤についての基本的なヒ素
吸着能を確認するために、原子吸光分析用ヒ素標準液か
ら調整した人工ヒ素水溶液を用いて吸着試験を行い、吸
着等温線を作成した。その結果を図18に示した。この
吸着剤の吸着特性はラングミュア型に分類され、平衡濃
度25mg/lで飽和吸着に到達することが確認され
た。
【0060】また人工ヒ素水溶液のpHを変化させ、平
衡時のpHと分配係数Kdとの関係を図19に示した。
なお、分配係数Kdは次式にしたがって算出したもので
ある。
【0061】Kd=(吸着剤1gあたりのヒ素吸着量/m
ol)÷(人工ヒ素水溶液1cm3中に残存するヒ素の
量/mol) 図19より、この吸着剤については、酸性からアルカリ
性までの広いpH領域で吸着能を示し、特に人工ヒ素水
溶液がpH4.5付近でKd値が最大となり最もヒ素吸
着能が高くなることがわかった。
【0062】次に、図20に示すように、上記酸処理後
の吸着剤2gを無灰パルプ1.5gに担持させて内径2
cmのクロマト管に充填し、カラムタイプのヒ素吸着剤
とした。
【0063】このカラムに、1mg/l,pH5.0の
人工ヒ素水溶液を、通水速度100ml/1.0時間で
通水する破過試験を行い、その結果を図21に示した。
このカラムの場合のヒ素処理能力が、1mg/lの人工
ヒ素水溶液について35lであることがわかった。
【0064】そして、次に、前記と同じカラムを用い、
バングラディッシュの井戸水からヒ素を除去することを
ことを試みた。この水は、ダッカの西、インドとの国境
付近にあるChapai Nawabganjiにおける井戸で採取した
ものである。なお、カラムへの井戸水の通水速度は10
0ml/10minとした。カラム通水の前後における
井戸水の各成分の濃度変化を測定し、表3に示した。こ
こで、As,Mn,Biの濃度については水素化物発生
装置つきICP発光分析装置((株)島津製作所製:I
CPS−1000III)を、その他の成分の濃度につい
てはイオンクロマトグラフ((株)島津製作所製:イオ
ンクロマトグラフPIA−1000,)を用いて測定し
た。
【0065】
【表3】
【0066】井戸水に含まれる砒素の濃度は、初期濃度
の0.01mg/lから検出限界値以下の濃度にまで低
下したことが確認された。このように、この出願の発明
の吸着剤によって、バングラディッシュの井戸水、ある
いはそれ以上の濃度のヒ素を含む水から、ほぼ完全にヒ
素を除去できることが示された。
【0067】実施例7: 〔酸処理をしない吸着剤によるヒ素の除去〕炭酸酸化ビ
スマス粉末と炭酸マンガン粉末とをモル比でMn:Bi
=0.1:1となるように混合し、200℃で4時間半
焼成した焼成物を、酸処理せずに、そのままメノウ乳鉢
で平均粒径が1/2程度になるように軽く粉砕して、こ
の出願の発明のヒ素吸着剤とした。
【0068】この吸着剤0.5gを、原子吸光分析用ヒ
素標準液から調整した10mg/lのヒ素水溶液に入
れ、マグネチックスターラーで120分間攪拌した後、
ヒ素水溶液中のヒ素濃度をICP発光分析装置により測
定した。その結果、ヒ素水溶液の濃度は4.1mg/l
にまで低下したことが確認された。吸着試験終了後に吸
着剤を回収し、乾燥させた時の重量を測定したところ
0.39gであった。これらの結果から、吸着剤1gあ
たりに吸着されているヒ素の量は約30mgであり、酸
処理をした吸着剤について同様の吸着試験をした場合の
結果の35mg/gに比較して、遜色のない値であるこ
とかわかった。
【0069】以上のことから、この出願の発明の吸着剤
についても、その比表面積を増大させることで、ヒ素吸
着能を向上できることが確認された。そして、たとえば
酸処理のためのコストや、酸処理により吸着剤重量の目
減りといった問題を解消するために、吸着剤の比表面積
を適切に調整することが有効であることも示された。
【0070】実施例8: 〔異なる原料から製造した吸着剤によるヒ素の除去〕硫
酸マンガンと硫酸ビスマスとをモル比でMn:Bi=
0.1:1となるように混合し、400℃で4時間半焼
成してこの出願の発明のヒ素吸着剤とした。得られた吸
着剤の粒径は1〜10μm、比表面積は50m2/g程度
であった。
【0071】このものは、上記実施例に示したような炭
酸酸化ビスマスと炭酸マンガンとを焼成して得られる吸
着剤とほぼ同じ物質であると認められ、また、より安価
に作製できるものの、ヒ素吸着能については7割程度で
あった。一方の、ビスマスを含まないマンガン酸化物の
焼成物に比較すると、約2倍以上の高いヒ素吸着能を有
することが確認された。したがって、原料として炭酸酸
化ビスマスと炭酸マンガンを用いるとより吸着性能の高
いヒ素吸着剤を得ることができることがわかった。ま
た、この出願の発明の吸着剤をより安価に製造するため
には、原料として、硫酸マンガンや硫酸ビスマス等を用
いることも有効であることがわかった。
【0072】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この出願の
発明によって、五価のヒ素をはじめ、従来困難とされて
きた三価のヒ素をも廃水等から効率的に除去することが
可能な、新しい技術手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】炭酸マンガンと炭酸酸化ビスマスの混合重量比
に対するヒ素吸着量の関係を例示した図である。
【図2】焼成温度とヒ素吸着量との関係を例示した図で
ある。
【図3】図2において補正後の関係を例示した図であ
る。
【図4】初期pHとヒ素吸着量との関係を例示した図で
ある。
【図5】脱着率と吸着時間との関係を例示した図であ
る。
【図6】水溶液ヒ素濃度とヒ素吸着量との関係を例示し
た図である。
【図7】攪拌時間とヒ素濃度との関係を例示した図であ
る。
【図8】吸着カラムによる排水処理を例示した概要図で
ある。
【図9】吸着カラム法によるヒ素排水処理の結果を例示
した図である。
【図10】吸着マットによる簡易な浄水法を例示した概
要図である。
【図11】吸着パックによる携帯用浄水法を例示した概
要図である。
【図12】吸着パック法による排水処理の結果を例示し
た図である。
【図13】五価のヒ素含有廃水についての処理結果を例
示した図である。
【図14】40mg/lの人工ヒ素含有水に吸着剤を入
れたときのヒ素濃度の経時変化を例示した図である。
【図15】ヒ素を吸着した吸着剤の表面をSEM観察し
た結果を例示した図である。
【図16】EDS分析により、図15のSEM像に対応
する部分における(a)Mn,(b)As,(c)Bi
の分布状態を例示した図である。
【図17】(a)ヒ素吸着前の吸着材、(b)ヒ素吸着
後の吸着剤、および(c)ヒ素吸着後にアルゴンイオン
エッチングして表面を数10nm程度削った吸着剤につ
いて、X線光電子分光(XPS)分析を行なった結果を
例示した図である。
【図18】吸着剤のヒ素吸着等温線を例示した図であ
る。
【図19】吸着剤の吸着平衡時のpHと分配係数Kdと
の関係を例示した図である。
【図20】カラムタイプのヒ素吸着剤の構成を例示した
図である。
【図21】カラム通水試験における破過曲線を例示した
図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C02F 1/28 C02F 1/28 E Fターム(参考) 4D024 AA01 AA04 AB17 BA05 BA14 BB01 BB02 BB03 BB08 CA01 DA07 DB03 DB20 4G048 AA03 AB05 AC08 AD04 AE05 4G066 AA02A AA02B AA26A AA26B AA43A AA47A AA71C AC07C BA20 BA26 CA46 DA07 DA08 EA20 FA02 FA22 FA34 FA37 GA11

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ビスマスを含むマンガンの酸素化合物で
    あって、マンガンを主成分とすることを特徴とするヒ素
    吸着性のマンガン化合物。
  2. 【請求項2】 ビスマスは、マンガンの酸素化合物の表
    面の一部に分布して配設されていることを特徴とする請
    求項1記載のヒ素吸着性のマンガン化合物。
  3. 【請求項3】 ビスマスまたはその化合物が添加された
    マンガンまたはその化合物が、大気中もしくは含酸素雰
    囲気中において焼成されたものであることを特徴とする
    請求項1または2記載のヒ素吸着性のマンガン化合物。
  4. 【請求項4】 ビスマスの化合物が炭酸酸化ビスマスで
    あって、マンガンの化合物が炭酸マンガンであることを
    特徴とする請求項3記載のヒ素吸着性のマンガン化合
    物。
  5. 【請求項5】 マンガンの酸素化合物を含む溶液にビス
    マスが加えられて乾燥脱水されたものであることを特徴
    とする請求項1または2記載のヒ素吸着性のマンガン化
    合物。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5いずれかに記載のマン
    ガン化合物が粉砕されたものであることを特徴とするヒ
    素吸着性のマンガン化合物。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし5いずれかに記載のマン
    ガン化合物が酸処理されたものであることを特徴とする
    ヒ素吸着性のマンガン化合物。
  8. 【請求項8】 炭酸酸化ビスマス粉末と炭酸マンガン粉
    末との混合物が100℃〜450℃の温度において焼成
    されたものであることを特徴とする請求項1ないし7い
    ずれかに記載のヒ素吸着性のマンガン化合物。
  9. 【請求項9】 200℃近傍の温度において焼成された
    ものであることを特徴とする請求項8記載のヒ素吸着性
    のマンガン化合物。
  10. 【請求項10】 ビスマスとマンガンの混合モル比が
    0.001:1から1:1の範囲であることを特徴とす
    る請求項1ないし9いずれかに記載のヒ素吸着性のマン
    ガン化合物。
  11. 【請求項11】 ビスマスとマンガンの混合モル比が
    0.01:1から1:1の範囲であることを特徴とする
    請求項10記載のヒ素吸着性のマンガン化合物。
  12. 【請求項12】 請求項1ないし11いずれかに記載の
    マンガン化合物もしくはこれを含有するものからなるこ
    とを特徴とするヒ素吸着剤。
  13. 【請求項13】 マンガン化合物が担体物質に担持もし
    くは担体物質に充填されていることを特徴とする請求項
    12記載のヒ素吸着剤。
  14. 【請求項14】 請求項12または13のヒ素吸着剤
    を、ヒ素を含有する水溶液と接触させて、水溶液中のヒ
    素を吸着除去することを特徴とする水溶液中のヒ素の吸
    着除去方法。
  15. 【請求項15】 請求項14の方法によりヒ素を吸着し
    た吸着剤を酸処理して、ヒ素を酸溶液中に脱着させ、ヒ
    素を脱離した吸着剤を再利用可能とすることを特徴とす
    るヒ素吸着剤の再生方法。
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