JP2003177331A - 顕微鏡観察用培養基板および観察方法 - Google Patents

顕微鏡観察用培養基板および観察方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生物標本を観察する際に、生物標本を培養す
ることができ結像性能の劣化が少ない顕微鏡観察用培養
基板を提供すると共に、その培養基板を用いて生物標本
の観察に適した観察方法を提供する 【解決手段】 屈折率が1.33以上で1.34以下の
透明フッ素樹脂からなり、基板表面が親水化処理された
顕微鏡観察用培養基板である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は水浸対物レンズ、特
に高倍率・高開口数の水浸対物レンズを用いて生物標本
を観察する際に用いられる顕微鏡観察用培養基板に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、高コントラスト、高解像力を有す
る走査型レーザー顕微鏡による細胞骨格や染色体の三次
元構造解析、走査型レーザー顕微鏡を用いた蛍光抗体法
による細胞内蛍光物質の局在検出などが、生物、医学の
基礎研究の場で大きな注目を集めつつある。
【0003】走査型レーザー顕微鏡は、共焦点光学系に
より標本を光学的にスライスすることにより3次元画像
が得られることを大きな特徴としている。ところで、こ
の走査型レーザー顕微鏡を用いて、例えば培養液に浸漬
された生物標本(細胞等)を観察しようとする際には、
結像性能の劣化を引き起こさないような構成が必要とさ
れる。
【0004】この結像性能の劣化防止技術としては、実
開平5−64816号公報に開示されたものが知られて
いる。これによると、培養液の屈折率と同程度の屈折率
をもつ対物レンズが必要とされ、さらに高倍率・高開口
数の対物レンズでは、カバープレートの微小な厚み誤差
によっても結像性能の劣化を生ずることが指摘され、こ
の対策としてカバープレートの屈折率についても培養液
の屈折率と同程度のものを用いることが必要とされてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
技術を用いて標本を観察する際にはまだ解決すべき課題
が存在していた。培養液中の標本は、培養基板と呼ばれ
るガラス上に付着させて培養され生物標本として観察で
きるようになっているが、培養基板と生物標本との付着
状態の観察などで境界部分の観察が必要とされる場合が
ある。
【0006】そこで、対物レンズの光軸に対して標本を
積載している培養基板に傾きを与え観察したい面に走査
型レーザー顕微鏡の走査面をあわせて、標本と培養基板
とを一体として観察する必要が生ずるが、この場合、基
板と細胞の境界近傍で、水の屈折率(1.333)と培
養基板ガラスの屈折率(1.521)との差が影響し鮮
明な画像を得ることができないという問題点があった。
【0007】一方、前述の従来技術(実開平5−648
16)にはサイトップ(商品名:旭硝子株式会社製透明
フッ素樹脂、屈折率:1.33〜1.34)を用いたカ
バープレートが使用されており、水とカバープレートの
屈折率を同程度とすることで、カバープレート厚みの変
化や面精度の悪さの影響を受けることなく鮮明な画像を
得られることが開示されている。
【0008】そこで、このサイトップを培養基板として
使用することが考えられるが、サイトップ表面の撥水性
が非常に高いために、培養基板に標本を培養するための
コラーゲンを塗布して定着させることができず、サイト
ップを培養基板として用いることは困難であった。さら
に、サイトップ表面の撥水性が非常に高いために、生物
標本と培養基板との付着も十分でなく培養基板に傾きを
与え種々の角度から観察を行うことにも制約が生じ十分
な観察方法が適用されてはいなかった。
【0009】本発明は、以上の問題点に鑑みてなされた
ものであって、水浸対物レンズ、特に高倍率・高開口数
の水浸対物レンズを装着した走査型レーザー顕微鏡を用
いて生物標本を観察する際に、生物標本を培養すること
ができ結像性能の劣化が少ない顕微鏡観察用培養基板を
提供すると共に、その培養基板を用いて生物標本の観察
に適した観察方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解消するため
の本発明は、屈折率が1.33以上で1.34以下の透
明フッ素樹脂からなり基板表面が親水化処理された顕微
鏡観察用培養基板である。
【0011】また本発明は、上記記載の発明である顕微
鏡観察用培養基板において、基板表面の親水化処理に紫
外光源を用いた顕微鏡観察用培養基板である。
【0012】また本発明は、上記記載の発明である顕微
鏡観察用培養基板において、基板表面の一部が親水化処
理された顕微鏡観察用培養基板である。
【0013】ここで、基板表面の「一部」とは、基板表
面の少なくとも1ヶ所の部分を意味する。従って、基板
表面の複数箇所に親水化処理された部分が存在する場合
も含み、またその部分は片面に限られず表面、裏面の両
面に存在するものも含むものである。
【0014】また本発明は、上記記載の発明である顕微
鏡観察用培養基板を用いた生物標本の観察方法におい
て、顕微鏡観察用培養基板を水浸対物レンズの光軸に対
して任意の角度に配置して観察する生物標本の観察方法
である。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の一つは、サイトップに代
表される透明フッ素樹脂にコラーゲン等の塗布が可能と
なり、生物標本との付着性が向上できるようにその表面
を改質するものである。発明者らは、この点について鋭
意検討を進め、コラーゲン塗布が可能となるためには、
サイトップの撥水性を改質して、濡れ性を向上させれば
良いとの見解に達した。そして、この見解に基づいてサ
イトップの表面の濡れ性を向上させるための親水性処理
方法について試験を重ね、培養基板として用いることの
できる処理方法を見出したものである。
【0016】図1は、本発明に係る顕微鏡観察用培養基
板の改質方法を説明する概略のフロー図である。
【0017】先ず、フッ素系樹脂であるサイトップを扱
いやすい大きさにサンプル加工した後、フッ素系樹脂を
水に浸す(S1)、紫外光源としてArFエキシマレー
ザーを照射してサンプル表面を改質する(S2)。
【0018】この処理は、フッ素系樹脂の濡れ性を向上
させるための親水化処理として知られているものである
が、屈折率が1.33以上で1.34以下の透明フッ素
樹脂であるサイトップに対し培養基板に適した状態に改
質するための処理条件については明らかにされていな
い。発明者らは種々の条件の下での試験を繰り返し、そ
の結果、培養基板に適した状態に改質するためのエキシ
マレーザの照射条件としてエネルギ密度5〜100mJ
/cm、繰り返し発信数1〜100Hz、ショット数
3,000〜50,000ショットの範囲が適切である
ことを見出した。
【0019】本実施の形態では照射条件としてエネルギ
密度20mJ/cm、繰り返し周波数30Hz,2
5,200ショットを用いた。この照射条件では、ショ
ット数が通常の親水化処理では2,000〜3,000
であるに対してその10倍程度の値になっている。これ
は、一般的な親水化処理においては、紫外レーザを使用
することで非熱的光化学反応によりフッ素樹脂の特定表
面に均一なアミノ基が導入されて親水性が増すと考えら
れているが、培養基板用に改質するためには、この親水
化処理をさらに進行させてフッ素樹脂の表面の粗度が変
化する迄の照射が必要なためであると考えられる。尚、
水の接触角は処理前の87°から処理後には64°に変
化しており、接触角の変化からも処理の有効性が確認で
きる。
【0020】以上の親水化処理に続いて、培養のための
前処理を行う。培養のための前処理は一般的な処理であ
り、前記の親水化処理を施した培養基板に対して、紫外
線照射30分による滅菌(S3)→70%エチルアルコ
ール、水,PBSによる洗浄(S4)→約10分のアル
ブミン浸漬(S5)→PBSによる洗浄(S6)→1/
10コラーゲン塗布(S7)→PBSによる洗浄(S
8)を行うものである。
【0021】尚、本実施の形態では、透明フッ素樹脂と
してサイトップを用いたが、サイトップの代わりにネオ
フロン(商品名:ダイキン工業(株)製透明フッ素樹
脂)を用いてもかまわないし、屈折率が水の屈折率
(1.333)と同程度であれば他の有機材料を使用し
てもかまわない。また、親水化処理に紫外光源を用いる
場合も、ArFエキシマレーザに限られるものではな
く、UVランプ、エキシマランプ等も状況に応じて使用
可能である。さらに、親水化処理を行う際に半導体製造
装置のようにマスクをかけて、培養基板の一部に施した
親水化処理部分を任意の形状にすることも可能である。
【0022】次に、このようにして調整した培養基板を
用いて、生物標本を観察する方法について説明する。
【0023】図2は、本発明に係る観察方法の第1の実
施形態を示す図である。
【0024】水浸対物レンズ1は、図示していない走査
型レーザー顕微鏡に装着された状態でレンズ先端部が図
示していない容器中の水4の中に浸っている。
【0025】培養基板2は、サイトップを用い扱い易い
大きさ(15mm×5mm×0.2mm程度)に加工し
てある。培養基板2の片面の一部には、紫外光源として
ArFエキシマレーザーを用いた親水化処理と、培養の
ための前処理が施されており、培養された細胞3が活き
た状態で付着している。尚、細胞3は、HeLa細胞で
あり37℃,5%COで培養を行った後に、顕微鏡観
察のために遺伝子導入を行ったものである。
【0026】培養基板2は、水浸対物レンズ1の光軸に
おおむね平行に(すなわち培養基板2と仮想的な観察面
5とが直交するように)配置され、観察したい部分が視
野内に入るよう調整されている。本観察方法では、前述
の親水化処理した培養基板2を用いることで、培養基板
2と細胞3が付着した状態を保ったまま培養基板2を光
軸に平行に配置できるため、走査型レーザー顕微鏡操作
により、細胞3を光学的にスライスし細胞3のみでな
く、培養基板2と細胞3の付着状態をも観察することが
できる。
【0027】図3は、顕微鏡によって観察された画像を
示す図である。
【0028】画像では、左側に培養基板2が配置されて
いるが、培養基板2の屈折率は1.33以上で1.34
以下であり水に極めて近いため、光学的にはあたかも培
養細胞が活きたまま(基板に付着したままで)水中に浮
かんでいる状態を実現することができる。そして、観察
された画像は結像性能の劣化が少なく鮮明な画像となっ
ている。
【0029】また、培養基板2と細胞3とが付着してい
るため、図4に示すように光軸に対する培養基板2の角
度を変化して観察することも可能となり、結像性能の劣
化がほとんど無い状態で、培養基板2と細胞3の付着状
態を含んだ任意断面の画像を得ることができる。図5に
は、培養基板2の角度を変化させて観察した画像を示し
ている。
【0030】尚、本実施の形態では細胞3を培養するた
めに水4を用いているが、この形態に限定されず一般的
に用いられている培養液であっても良く、また実験の内
容により成分や濃度が調整されてもかまわない。さら
に、親水化処理や培養の前処理の条件や方法は、観察す
る標本や実験内容により異なることがあるため、その場
合には適宜変更して使用すれば良い。
【0031】図6は、光軸に対する培養基板2の角度を
変化させる機構例を示す図である。
【0032】図6の(1)に示すように、本機構では、
顕微鏡ステージの上に積載されるベース8に凹部を有す
る球形状の可動部材9が嵌合し、この可動部材9は球面
摺動部10によって球状に回動可能に構成されている。
そして、この可動部材9の凹部内には細胞3が載置され
た培養基板2が保持され、この凹部内には水4が満たさ
れている。
【0033】培養基板2の傾きを調整するときは、図6
の(2)に示すように可動部材9を回動させて細胞3の
光軸に対する角度を変化させる。尚、回動による観察へ
の影響を少なくするため、細胞3は可動部材9の回動中
心とほぼ一致する位置に載置されるように構成すること
が望ましい。
【0034】ここで、可動部材9の回動は検鏡者が手で
行っても良く、図示しない駆動装置を介して操作するも
のであっても良い。また、可動部材9は球形状でなくて
も、断面が円形の円柱形状を用いて構成するものであっ
ても良い。
【0035】図7は、本発明に係る観察方法の第2の実
施形態を示す図である。本図において、図2と同一機能
の部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態では観察時における細胞3に作用する重力
の影響を少なくするために、第1の実施形態と異なり水
浸対物レンズ1の光軸が水平方向に配置された構成であ
る。
【0036】水浸対物レンズ1の先端部は、容器11の
中に挿入され、水浸対物レンズ1を水平方向に移動させ
て焦点調整の操作ができるようにOリング12を用いて
封止されている。容器11内部は、培養液41が満たさ
れており、さらに細胞3を培養するための炭酸ガス導入
用の配管(図示せず)が接続されている。また、容器1
1には、培養された細胞3を積載した培養基板2が軸1
3a,13bを介して回動可能に取り付けられており、
外部からの操作で傾きが変えられるようになっている。
【0037】本実施例の構成では、培養基板2を常に水
平近傍に保つことができるので、細胞がより自然なかた
ちで培養して観察することができるとともに、第1の実
施形態と同様に、結像性能の劣化がほとんど無い状態
で、任意断面の画像を得ることが可能となる。
【0038】図8は、本発明に係る観察方法の第3の実
施形態を示す図である。本図において、図2と同一機能
の部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】本実施形態は、第1の実施形態と異なり、
培養基板2の両面に前述の親水化処理を施して、その両
面それぞれに細胞3a,3bを培養したものである。針
7は、中空のパイプであり、一端を薬品注入用の注射器
に接続されており、他の一端は細胞3bの近傍に配置し
てあり、細胞を刺激するための薬品注入用として使用す
る。
【0040】このように構成することにより、図9に示
すように、基板で隔てたられた2つの環境の細胞を、同
時に観察することが可能となるとともに、針7を用いて
試薬等で片方のみを刺激することで、刺激の有無による
細胞の状態を比較観察することが可能となる。
【0041】図10は、本発明に係る観察方法の第4の
実施形態を示す図である。本図において、図2と同一機
能の部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略す
る。
【0042】本実施形態では、第1の実施形態と異な
り、概半球形状をした培養基板23が容器21の底面開
口部にOリング24を介して回動自在に取り付けられて
いる。この培養基板23の平面側には親水化処理と培養
処理が施され、細胞3が培養されている。また、培養基
板23の球面側には傾き操作用のハンドル22が取り付
けられ、さらに、培養基板23の下方には照明装置25
と図示しない照明用の光学系とが設けられている。
【0043】このように、培養基板23を半球形状に形
成して、照明光学系の一部を構成するようにすれば、傾
き操作用のハンドル22を操作して細胞3の角度を変え
ても細胞下面からの照明状態に変化が無く、常に明るい
観察画像を得ることができる。
【0044】このように、各実施の形態を用いることで
前述の課題を達成することができるが、前述の各実施の
形態は殊に、培養細胞の観察には有効なものである。即
ち、培養細胞の極性構造は培養基板に対して垂直に展開
する。従来は、走査型レーザ顕微鏡のステージを移動す
ることで、Z軸方向の情報を得ていたがこの従来の方法
では観察に限界があった。しかしながら、本各実施の形
態を用いることにより細胞極性に関する情報を高精度に
かつ迅速に観察することができる。
【0045】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば水
浸対物レンズ、特に高倍率・高開口数の水浸対物レンズ
を装着した走査型レーザー顕微鏡を用いて生物標本を観
察する際に、生物標本を培養することができ結像性能の
劣化が少ない顕微鏡観察用培養基板を得ることができる
と共に、その培養基板を用いて生物標本に適した観察方
法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る顕微鏡観察用培養基板の改質方法
を説明する概略のフロー図。
【図2】本発明に係る観察方法の実施形態を示す図。
【図3】顕微鏡によって観察された画像を示す図。
【図4】本発明に係る観察方法の他の実施形態を示す
図。
【図5】顕微鏡によって観察された画像を示す図。
【図6】光軸に対する培養基板の角度を変化させる機構
を示す図。
【図7】本発明に係る観察方法の他の実施形態を示す
図。
【図8】本発明に係る観察方法の他の実施形態を示す
図。
【図9】顕微鏡によって観察された画像を示す図。
【図10】本発明に係る観察方法の他の実施形態を示す
図。
【符号の説明】
1…水浸対物レンズ 2…培養基板 3…細胞 3a…細胞 3b…細胞 4…水 7…針 8…ベース 9…可動部材 12…Oリング 22…ハンドル 23…培養基板 24…Oリング 25…照明装置 41…培養液
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三島 周三 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 (72)発明者 清水 敬之 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 (72)発明者 葛西 広明 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 Fターム(参考) 2G045 AA24 CB01 FA16 JA07 2H052 AA08 AA09 AB02 AC15 AC34 AD22 AE03 AE13

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水浸対物レンズを用いた生物標本観察に
    使用する顕微鏡観察用培養基板において、 屈折率が1.33以上で1.34以下の透明フッ素樹脂
    からなり、基板表面が親水化処理されたことを特徴とす
    る顕微鏡観察用培養基板。
  2. 【請求項2】 前記基板表面の親水化処理に紫外光源を
    用いたことを特徴とする請求項1記載の顕微鏡観察用培
    養基板。
  3. 【請求項3】 前記基板表面の一部が親水化処理された
    ことを特徴とする請求項1記載の顕微鏡観察用培養基
    板。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の顕微鏡観察用培養基板を
    用いた生物標本の観察方法において、 前記顕微鏡観察用培養基板を前記水浸対物レンズの光軸
    に対して任意の角度に配置して観察することを特徴とす
    る生物標本の観察方法。
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