JP2003201538A - 耐塩温水2次密着性に優れた高強度高延性冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
耐塩温水2次密着性に優れた高強度高延性冷延鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
性に優れ、さらには電着塗装後の耐塩温水2次密着性に
も優れた高強度高延性冷延鋼板を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.05〜0.35%、Si:0.5
〜3.0 %、Mn:0.5 〜3.0 %、P:0.05%以下、S:0.
005 %以下、Al:0.10%未満、N:0.0020〜0.0100%お
よびTi:0.001 〜0.20%を含み、かつCaおよび/または
REM :0.0010〜0.010 %を含有し、残部はFeおよび不可
避的不純物の組成になり、さらにフェライト、残留オー
ステナイトおよび低温変態相からなる複合組織であっ
て、該フェライトを体積率で30%以上、該残留オーステ
ナイトを体積率で2%以上を含む鋼組織とし、しかも該
フェライトの平均結晶粒径を15μm 以下、かつ鋼板の最
表層から10nm深さまでのGDS分析によるSiとFeの強度
比Si/Feを 6.0以下とする。
Description
温水2次密着性に優れた高強度高延性冷延鋼板およびそ
の製造方法に関するものである。
自動車の燃費改善が求められている。また、衝突時にお
ける乗員保護の観点から、自動車車体の安全性の向上も
要求されている。そのため、自動車車体の軽量化および
強化が積極的に進められている。自動車車体の軽量化と
強化を両立させるには、部品素材を高強度化することが
効果的であると言われており、最近では、自動車部品に
対して高強度鋼板が積極的に使用されている。
がプレス加工によって成形されることから、自動車部品
用鋼板にはプレス成形性に優れることも要求されてい
る。優れたプレス成形性を実現するには、まず第一に高
い延性を確保することが肝要である。さらに、自動車部
品のプレス成形においては、伸びフランジ変形も多用さ
れる。特に、自動車車体の強度を確保するための骨格部
材であるメンバーやリンフォース等を構成する部品で
は、伸びフランジ変形を多用した部品成形が行われるこ
とが多い。このため、自動車部品用鋼板には、高い延性
と共に、伸びフランジ性に優れることが強く求められて
いる。
イトとマルテンサイトの複合組織を有する二相組織鋼板
が代表的である。また、近年では、例えば(社)日本鉄
鋼協会編「材料とプロセス vol.4 (1991) P.1942」に記
載されているように、0.11mass%CにSi, Mnを適量添加
し、残留オーステナイトに起因する変態誘起塑性(Trans
formation Induced Plasticity:TRIP)を利用した高延
性鋼板も実用化の段階に至っている。しかしながら、こ
のような中炭素鋼は、(社)日本鉄鋼協会編「鉄と鋼 v
ol.8(1995) No.9, P.26 」にも紹介されているように、
Fe−C平衡状態図上での固相線温度近傍で包晶反応(δ
+L→γ)とA4 変態(δ→γ)を伴うため、凝固が不
均一になり易く、このため連続鋳造機の鋳型内で縦割れ
や横割れといった表面割れが発生し易いという問題があ
った。
(社)日本鉄鋼協会編「第3版 鉄鋼便覧II 製銑・製
鋼 P.649」に記載されているように、AlやNb,V,Cuな
どの合金元素の添加によって生成する炭化物や窒化物が
原因で粒界脆化が起こり、スラブの表面割れが発生し易
いため、低速鋳込み、緩冷却などの処置をとりながら生
産されているのが現状である。このような製造条件は、
鉄鋼業の上流工程である製鋼部門での生産性を大幅に低
下させ、最終的には製鉄所全体の生産性を阻害する元凶
となっている。
Siが多量に含有されていることから、焼鈍時にSiの酸化
物が鋼板表面に濃化し、電着塗装後の鋼板が塩温水のよ
うな劣悪な環境に曝された場合に、通常の鋼板に比べて
塗膜が剥がれ易くなるという点である。
に鑑み開発されたもので、鋼組成を特定範囲に規制する
ことによって、上述した製鋼段階で抱える問題を解決す
ると共に、上記した鋼組成の規制に併せて鋼組織を制御
することにより、自動車部品用素材として好適な、高延
性で高伸びフランジ性という優れた機械的特性に確保
し、さらには電着塗装後の耐塩温水2次密着性にも優れ
た高強度高延性冷延鋼板を、その有利な製造方法と共に
提供することを目的とする。
の目的を達成するため、スラブの表面割れを防止し、し
かも鋼板の延性および伸びフランジ性を最適化する、鋼
板の成分組成、ミクロ組織および表面性状について鋭意
研究を重ねた。その結果、(1) TiとNを適量添加するこ
とによって、低温で析出するAlNやNb系炭化物,V系炭
化物が結晶粒界に優先的に析出するのを防止することが
できる、(2) 連続焼鈍後に得られる高強度冷延鋼板の組
織を、フェライト、残留オーステナイトおよび低温変態
相からなる複合組織とし、各相の体積率を所定の比率と
することによって、鋼板に優れた延性を発現させること
ができる、(3) 上記した複合組織の主体であるフェライ
トの結晶粒径を微細化することによって、高延性に加え
て優れた伸びフランジ性が得られることの知見を得た。
また、(4) 焼鈍後における鋼板表面の酸化物の濃化形態
を制御することによって、耐塩温水2次密着性が大幅に
改善されることも併せて見出した。本発明は、上記の知
見に立脚するものである。
である。 1.質量%で、 C:0.05〜0.35%、 Si:0.5 〜3.0 %、 Mn:0.5 〜3.0 %、 P:0.05%以下、 S:0.005 %以下、 Al:0.10%未満、 N:0.0020〜0.0100%および Ti:0.001 〜0.20% を含み、かつ Caおよび/またはREM :0.0010〜0.010 % を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成にな
り、さらにフェライト、残留オーステナイトおよび低温
変態相からなる複合組織であって、該フェライトを体積
率で30%以上、該残留オーステナイトを体積率で2%以
上を含む鋼組織を有し、しかも該フェライトの平均結晶
粒径が15μm 以下で、かつ鋼板の最表層から10nm深さま
でのGDS分析によるSiとFeの強度比Si/Feが 6.0以下
であることを特徴とする、耐塩温水2次密着性に優れた
高強度高延性冷延鋼板。
り、さらにフェライト、残留オーステナイトおよび低温
変態相からなる複合組織であって、該フェライトを体積
率で30%以上、該残留オーステナイトを体積率で2%以
上を含む鋼組織を有し、しかも該フェライトの平均結晶
粒径が15μm 以下で、かつ鋼板の表層におけるFT−I
R分析によるSiO2とMn2SiO4 の強度比SiO2/Mn2SiO4 が
1.5 以下であることを特徴とする、耐塩温水2次密着性
に優れた高強度高延性冷延鋼板。
に、質量%で、 NbおよびVのうちから選んだ1種または2種合計:0.00
1 〜0.30% を含有する組成になることを特徴とする、耐塩温水2次
密着性に優れた高強度高延性冷延鋼板。
さらに、質量%で、 Cr:1.5 %以下、 Mo:0.5 %以下および B:0.010 %以下 のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成に
なることを特徴とする、耐塩温水2次密着性に優れた高
強度高延性冷延鋼板。
鋼スラブを、熱間圧延した後、冷間圧延し、ついで連続
焼鈍によりAc1変態点以上の温度に加熱した後、10℃/s
以上の冷却速度で 300〜500 ℃の温度域に冷却し、この
温度域に60秒以上滞留させたのち、冷却中あるいは冷却
後に酸洗処理および/またはブラシ処理を施して、鋼板
の最表層から10nm深さまでのGDS分析によるSiとFeの
強度比Si/Feを 6.0以下とすることを特徴とする、耐塩
温水2次密着性に優れた高強度高延性冷延鋼板の製造方
法。
鋼スラブを、熱間圧延した後、冷間圧延し、ついで連続
焼鈍により、炉内の雰囲気露点が−30℃以上の条件下で
Ac1変態点以上の温度に加熱した後、10℃/s以上の冷却
速度で 300〜500℃の温度域に冷却し、この温度域に60
秒以上滞留させたのち冷却することを特徴とする、耐塩
温水2次密着性に優れた高強度高延性冷延鋼板の製造方
法。
さらに、質量%で、 NbおよびVのうちから選んだ1種または2種合計:0.00
1 〜0.30% を含有する組成になることを特徴とする、耐塩温水2次
密着性に優れた高強度高延性冷延鋼板の製造方法。
ブがさらに、質量%で、 Cr:1.5 %以下、 Mo:0.5 %以下および B:0.010 %以下 のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成に
なることを特徴とする、耐塩温水2次密着性に優れた高
強度高延性冷延鋼板の製造方法。
る。まず、本発明において、鋼板の成分組成を上記の範
囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関す
る「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するもの
とする。 C:0.05〜0.35% Cは、鋼の高強度化に不可欠の元素であり、また残留オ
ーステナイトや低温変態相の生成にも有効な元素であ
る。しかしながら、C量が0.05%に満たないと所望の高
強度を得ることができず、一方0.35%を超えると溶接性
の劣化を招く。このため、Cは0.05〜0.35%の範囲に限
定した。より好ましくは0.10〜0.25%である。
く、オーステナイトを安定化して残留オーステナイト相
の生成を促進させる元素でもある。しかしながら、含有
量が 0.5%に満たないとその添加効果に乏しく、一方
3.0%を超えて含有させると延性の劣化を招く。このた
め、Siは 0.5〜3.0 %の範囲に限定した。より好ましく
は 1.0〜2.0 %である。
焼入性を向上させて残留オーステナイトや低温変態相の
生成を促進させる作用がある。このような作用は、Mn量
が 0.5%以上で認められる。一方、 3.0%を超えて含有
させても効果は飽和に達し、含有量に見合うだけの効果
が期待できなくなり、むしろコストの上昇を招く。この
ため、Mnは 0.5〜3.0 %の範囲に限定した。より好まし
くは 1.0〜2.0 %である。
で有用な元素ではあるが、0.05%超の含有はスポット溶
接性の低下を招くので、本発明では、0.05%を上限とし
て含有させるものとした。より好ましくは 0.020%以下
である。
下させる有害元素である。このため、Sの混入は極力低
減することが好ましいが、0.005 %以下であれば許容で
きる。より好ましくは 0.003%以下である。
性を低下させる非金属介在物をスラグ中に分離するため
に必要な元素である。しかしながら、0.10%以上の含有
は合金コストを上昇させてしまうので、本発明では0.10
%未満で含有させるものとした。好ましい範囲は0.02〜
0.09%である。
本発明のような組織強化型の鋼板では、歪時効は起こら
ず、むしろTiNなどの析出物により、スラブの表面割れ
を防止する有用元素である。このようなスラブの表面割
れを防止するためには、0.0020%以上の含有を必要とす
るが、0.0100%超のNを含有させることは、製鋼上難し
く、またコスト高ともなるため、Nは0.0020〜0.0100%
の範囲に限定した。より好ましくは0.0025〜0.0080%で
ある。
長を抑え、鋼組織を微細化して、穴拡げ性を著しく向上
させるのに有用な元素である。また、Tiは、スラブ冷却
時に、高温でTi系炭窒化物や硫化物を析出して、比較的
低温で生成するAlNや、結晶粒微細化の目的で添加され
るNb, Vによって粒界に生成するNb系やV系の炭化物の
析出物を抑制し、スラブ表面割れを防止する上でも有効
な元素である。このような効果を発現させるためには、
少なくとも 0.001%の含有を必要とする。一方、0.20%
を超える含有は、合金コストの上昇を招くだけでなく、
TiCの析出量を増大させて、TRIP効果を発現させるため
の残留オーステナイトを減少させてしまう他、析出強化
能が大きくなりすぎ、高延性が得られなくなる不利が生
じる。従って、本発明ではTiの含有量は 0.001〜0.20%
の範囲に限定した。好ましくは 0.010〜0.10%である。
を有し、これにより鋼板の伸びフランジ性の向上に有効
に寄与する。しかしながら、Ca, REM のうちから選んだ
1種または2種の合計量が0.0010%に満たないとその添
加効果に乏しく、一方 0.010%を超えると効果は飽和に
達する。このため、CaおよびREM は、単独添加または複
合添加いずれの場合も0.0010〜0.010 %の範囲で含有さ
せるものとした。より好ましい範囲は0.0010〜0.005 %
である。
明ではその他にも、以下に述べる元素を適宜含有させる
ことができる。 NbおよびVのうちから選んだ1種または2種合計:0.00
1 〜0.30% NbおよびVはいずれも、Tiと同様、NbC,VCを析出し
て、連続焼鈍時の加熱段階でのフェライト相の成長を抑
え、鋼組織を微細化して、穴拡げ性を著しく向上させる
のに有用な元素である。かかる効果を発現させるために
は、少なくとも0.001%の添加を必要とする。一方、0.3
0%超の含有は析出強化によりYSが上昇し、加工性が
低下してしまうだけでなく、TRIP効果を発現させるため
の残留オーステナイトを減少させてしまう不利が生じ
る。また、Nb,Vは、Tiよりも低温で炭化物を生成し、
これが結晶粒界に優先的に析出するとスラブの表面割れ
の原因となる。従って、本発明では、Nb,Vは、単独添
加または複合添加いずれの場合も 0.001〜0.30%の範囲
で含有させるものとした。より好ましい範囲は 0.001〜
0.10%である。
B:0.010 %以下のうちから選んだ1種または2種以上 Cr,MoおよびBはいずれも、鋼の焼入性を向上させ、低
温変態相の生成を促進す作用を有する有用元素である。
しかしながら、上記の作用は、Crが 1.5%超、Moが 0.5
%超、Bが 0.010%超の含有では、その効果が飽和し、
含有量に見合うだけの効果が期待できず、むしろ経済的
な不利を生じる。従って、Crは 1.5%以下、Moは 0.5%
以下、Bは 0.010%以下で含有させるものとした。な
お、より好ましい範囲は、Cr, Mo, Bのうちから選んだ
1種または2種合計で0.0005〜1.0%である。
したが、本発明では、鋼組織も重要で、フェライト、残
留オーステナイトおよび低温変態相からなる複合組織と
することが肝要である。フェライト フェライトは、鉄炭化物を含まない軟質な相であり、高
い変形能を有し、鋼板の延性を向上させる。本発明の鋼
板では、このようなフェライトを、体積率で30%以上含
有させる必要がある。というのは、フェライト量が30%
未満では、顕著な延性向上効果が期待できないからであ
る。より好ましいフェライト量は50%以上である。
起変態し、局所的に加えられた加工歪を広く分散させ、
鋼板の延性を向上させる作用を有する。本発明の鋼板で
は、このような残留オーステナイトを、体積率で2%以
上含有させるものとした。というのは、残留オーステナ
イト量が2%未満では、顕著な延性の向上が期待できな
いからである。より好ましい残留オーステナイト量は5
%以上である。
ベイナイトを指す。マルテンサイトおよびベイナイト
は、ともに硬質相であり、組織強化によって鋼板の強度
を増加させる作用を有している。また、変態生成時に可
動転位の発生を伴うため、鋼板の降伏比を低下させる作
用も有する。そして、上記の作用を十分に得るために
は、低温変態相はマルテンサイトとするのがより好適で
ある。なお、この低温変態相の量は特に限定されず、鋼
板の強度に応じて適宜配分すればよい。
結晶粒径も重要である。すなわち、結晶粒の微細化は、
鋼板の伸びフランジ性の向上に有効に寄与する。そこ
で、本発明では、複合組織中のフェライトの平均結晶粒
径を15μm 以下に制限することにした。その理由は、フ
ェライトの平均結晶粒径が15μm を超えると、伸びフラ
ンジ性の顕著な向上作用が期待できないからである。よ
り好ましくは10μm 以下である。
要であり、鋼板最表層から10nm深さまでのGDS分析に
よるSiとFeの強度比Si/Feを 6.0以下とするか、あるい
は鋼板の表層におけるFT−IR分析によるSiO2とMn2S
iO4 の強度比SiO2/Mn2SiO4を 1.5以下とする必要があ
る。というのは、上記した強度比(Si/Fe)が 6.0を超
えると、鋼板表面のSi酸化物が原因となって、電着塗装
後、塩温水のような劣悪な環境に曝された場合に、塗膜
の2次密着性が著しく劣化するからである。より好まし
い範囲は、Si/Fe≦3.0 である。
O2とMn2SiO4 が主であるが、このうちMn2SiO4 は化成処
理性に悪影響を及ぼさず、SiO2がMn2SiO4 に比較して少
ない場合には、良好な化成処理性を呈することが判明し
た。そして、生成した酸化物をFT−IRによって分析
した場合、SiO2とMn2SiO4 の強度比SiO2/Mn2SiO4 が1.
5 を超えると、塩温水環境において鋼板と塗膜との間で
酸化還元反応が生じ易くなり、塗膜の二次密着性が劣化
することが分かった。そこで、FT−IR分析を利用し
た場合におけるSiO2とMn2SiO4 の強度比SiO2/Mn2SiO4
は 1.5以下、好ましくは 1.2以下としたのである。ここ
で、SiO2とMn2SiO4 の強度比SiO2/Mn2SiO4 は、FT−
IR分析でのWavenumber :1250 /cm近傍部に現れるSiO
2ピークと Wave number:1000 /cm近傍部に現れるMn2Si
O4 ピークの高さ比で求めるものとする。
強度比Si/Feが 6.0以下、あるいはFT−IR分析によ
るSiO2とMn2SiO4 の強度比SiO2/Mn2SiO4 が 1.5以下の
うちいずれか一方を満足すれば、塗膜の二次密着性は確
保できるけれども、SiとFeの強度比Si/Feが 6.0以下と
SiO2とMn2SiO4 の強度比SiO2/Mn2SiO4 が 1.5以下の両
方を満たせばより好ましいことは言うまでもない。
域は、耐塩温水2次密着性には何ら影響を及ぼさないた
め、本発明では、GDS分析によってSiとFeの強度比を
測定すべき深さを鋼板の最表層から10nm深さまでとし
た。なお、FT−IR分析によるSiO2とMn2SiO4 の強度
比については、測定深さはあえて問わない。
明する。上記の好適成分組成に調製した溶鋼を、公知の
方法で鋳造し、常法に従って熱間圧延ついで冷間圧延し
たのち、連続焼鈍による加熱後、冷却し、その途中、所
定の温度で保持処理を行ったのち、冷却して製品とす
る。
続焼鈍の際にAc1変態点以上の温度に加熱すること、冷
却の際に10℃/s以上の速度で急冷すること、急冷の終了
温度を 300〜500 ℃とし、この温度域に60秒以上滞留さ
せること、そして冷却中あるいは冷却後に酸洗処理およ
び/またはブラシ処理を施して、鋼板最表層から10nm深
さまでのGDS分析によるSiとFeの強度比Si/Feを 6.0
以下にすること、あるいは上記の連続焼鈍工程におい
て、炉内の雰囲気露点を−30℃以上とすることにより、
鋼板最表層から10nm深さまでのFT−IR分析によるSi
O2とMn2SiO4 の強度比SiO2/Mn2SiO4 を1.5 以下とする
ことが重要である。
理由について説明する。 加熱温度:Ac1変態点以上 連続焼鈍における加熱温度はAc1変態点以上にしなけれ
ばならない。その理由は、(α+γ)2相域まで加熱し
ないことには残留オーステナイトが得られず、TRIP効果
が発現しないからである。従って、本発明では加熱温度
の下限をAc1変態点とした。なお、加熱温度が 850℃を
超えて高くなるとフェライト粒径が大きくなって、伸び
フランジ性が低下するおそれがあることから、加熱温度
の上限は850 ℃程度とすることが好ましい。
内の雰囲気露点を−30℃以上とすることで、前述したSi
O2/Mn2SiO4 比を 1.5以下とすることができる。Ac1変
態点以上の温度域での炉内雰囲気露点が−30℃未満で
は、SiO2のMn2SiO4 に対する生成量が多くなり、強度比
SiO2/Mn2SiO4 が 1.5を超えてしまう。Ac1変態点未満
の温度域についてはSiO2の生成量が少ないので、特に炉
内雰囲気の露点調整を行う必要はない。なお、後述する
酸洗処理あるいはブラシ処理により、SiとFeの強度比Si
/Feを6.0以下とする場合には、Ac1変態点以上の温度
域における雰囲気露点の調整は必ずしも必要ではない。
速度では、オーステナイト相はパーライトもしくはべイ
ナイトに変態し、残留オーステナイトが消失してしまう
ため、TRIP効果が得られなくなるからである。 より好ま
しくは20℃/s以上の速度である。
回る温度まで急冷すると、オーステナイト相は全てマル
テンサイトに変態してしまうからであり、また500 ℃超
の温度ではオーステナイト相はほとんどがパーライトも
しくはベイナイトに変態してしまい、TRIP効果が期待で
きなくなるからである。 より好ましい温度域は 350〜45
0 ℃である。
のは、60秒未満の短時間で 300℃未満の温度域に達する
と、ほとんどの残留オーステナイトがマルテンサイトに
変態してしまうため、プレス加工時にTRIP効果が発現し
なくなるからである。 一方、あまりに長時間では、べイ
ナイト変態の生成ノーズにかかり、残留オーステナイト
が減少するので好ましくない。 特に好ましい保持時間は
60〜1200秒である。
またはブラシ処理 塗装後の耐塩温水2次密着性を向上させるためには、鋼
板表面に濃化したSi酸化物を除去し、GDS分析による
SiとFeの強度比Si/Feを 6.0以下とすることが不可欠で
ある。 このために、上記の冷却中あるいは冷却後に酸洗
処理および/またはブラシ処理を行う。酸洗処理により
Si/Feを 6.0以下とするには、例えば、50℃の(1%塩
酸+25%硝酸)混合液中に10秒以上浸漬して酸洗する方
法が挙げられるが、これに限定されるものではない。 また、ブラシ処理によりSi/Feを 6.0以下とするには、
例えば♯240 のSiCを埋め込んだ芯材を有する300 mmφ
のブラシロールを少なくとも1rpm 以上の回転速度で回
転させながら、圧力:29.4 N/cm2以上の圧力で鋼板に対
して押し付け、鋼板表面をこすることが好適である。な
お、前述した連続焼鈍時に、Ac1変態点以上の温度域に
おける雰囲気露点を−30℃以上に制御した場合には、か
ような酸洗処理やブラシ処理は必ずしも必要ではない。
正や粗度調整の目的で調質圧延を行うことは有利であ
る。ただし、かような調質圧延を施さなくても、特に材
質上の問題はない。
続鋳造によりスラブとした。得られたスラブを、板厚:
3.0 mmまで熱間圧延し、ついで酸洗後、冷間圧延により
板厚:1.6 mmの冷延鋼板とした。 ついで、これらの冷延鋼板を、連続焼鈍ラインにて、表
2に示す条件で、加熱保持したのち、冷却し、冷却後、
53℃の(0.6%HCl + 26%HNO3)混合液中に6〜21秒間浸
漬する酸洗処理または55℃の5%HCl 溶液中に17秒間浸
漬する酸洗処理あるいはブラシ処理を施し、ついで水
洗、乾燥後、圧下率:0.5 %の調質圧延を施して製品と
した。得られた鋼板のミクロ組織および表面性状につい
て調べた結果を、表2に併記する。また、スラブ製造時
における表面割れの発生状況、製品板の機械的特性およ
び耐塩温水2次密着性について調査した結果を、表3に
示す。
割れの有無で評価した。また、スラブから高温引張り試
験用のサンプルを切り出し、引張り試験片に加工後、12
00℃で10分間の溶体化処理を施し、 100℃/分の冷却速
度で 800℃まで冷却し、20分間保持してのち、引張り試
験を行い、原断面直径(D0 )と引張り後の破断面直径
(D)から、次式 絞り比(%)=(D0 −D)/D0 ×100 により、絞り比を求めた。
を光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡で観察することに
より調査した。 倍率:1000倍の断面組織写真を用いて、
画像解析により任意に設定した 100mm四方の正方形領域
内に存在するフェライト相の占有面積率を求め、該当相
の体積率とした。 また、残留オーステナイト量は、鋼板を板厚方向の中心
面まで研磨し、板厚中心面での回折X線強度測定により
求めた。入射X線には MoKα線を使用し、残留オーステ
ナイト相の{111}、{200}、{220}、{3
11}各面の回折X線強度比を求め、これらの平均値を
残留オーステナイトの体積率とした。 フェライト粒径は、JIS Z 0552に規定の方法に準拠して
結晶粒度を測定し、平均結晶粒径に換算した。
よび穴拡げ試験などにより測定した。引張り特性は、鋼
板から圧延直角方向に採取したJIS Z 2204に規定の5号
試験片を用いて、JIS Z 2241に規定の方法に準拠して、
耐力(YS) ,引張り強さ(TS)、破断伸び(El)、降伏伸び(Y
El) を測定した。伸びフランジ性は、JFS T 1001に規定
の方法に準拠して穴拡げ率(A) を測定し、この値で評価
した。
150mm×75mmの試験片に化成処理を施したのち、厚さが
25μm になるように電着塗装し、ついでカッターナイフ
で、(長さ:45mm、3本)/試験片の切り込みを入れ
て、5%NaCl, 55℃の塩温水中に 240時間浸漬したの
ち、セロハンテープを切り込み上に貼って、剥がしたあ
とのはく離幅を測定して、評価した。 ここに、最大はく
離全幅が 5.0mm以下であれば、耐塩温水2次密着性は良
好といえる。
満足する発明例はいずれも、強度−延びバランス(TS×
El)が 20000 MPa・%以上と極めて良好な値を示し、ま
た強度−穴拡げバランス(TS×λ)が 40000 MPa・%以
上と伸びフランジ性にも優れていた。さらに、スラブ製
造時に表面割れの発生がなく、また電着塗装後の耐塩温
水2次密着性も良好であった。また、本発明の鋼板は、
表面粗度形態を制御しているので摩擦係数が非常に小さ
く、プレス成形性に優れていることも確認されている。
続鋳造によりスラブとした。得られたスラブを、板厚:
3.0 mmまで熱間圧延し、ついで酸洗後、冷間圧延により
板厚:1.4 mmの冷延鋼板とした。 ついで、これらの冷延鋼板を、連続焼鈍ラインにて、表
5に示す条件で加熱保持したのち、冷却し、圧下率:0.
5 %の調質圧延を施して製品とした。得られた鋼板のミ
クロ組織および表面性状について調べた結果を、表5に
併記する。また、スラブ製造時における表面割れの発生
状況、製品板の機械的特性および耐塩温水2次密着性に
ついて調査した結果を、表6に示す。
満足する発明例はいずれも、強度−延びバランス(TS×
El)が 20000 MPa・%以上と極めて良好な値を示し、ま
た強度−穴拡げバランス(TS×λ)が 40000 MPa・%以
上と伸びフランジ性にも優れていた。さらに、スラブ製
造時に表面割れの発生がなく、また電着塗装後の耐塩温
水2次密着性も良好であった。また、本発明の鋼板は、
表面粗度形態を制御しているので摩擦係数が非常に小さ
く、プレス成形性に優れていることも確認されている。
つ、優れた伸びフランジ性を有する高強度冷延鋼板を、
安価にしかも安定して製造することができる。従って、
本発明の冷延鋼板を自動車部品用素材として適用するこ
とにより、自動車の軽量化、低燃費化が可能になり、ひ
いては地球環境の改善に大きく貢献する。
Claims (8)
- 【請求項1】 質量%で、 C:0.05〜0.35%、 Si:0.5 〜3.0 %、 Mn:0.5 〜3.0 %、 P:0.05%以下、 S:0.005 %以下、 Al:0.10%未満、 N:0.0020〜0.0100%および Ti:0.001 〜0.20% を含み、かつ Caおよび/またはREM :0.0010〜0.010 % を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成にな
り、さらにフェライト、残留オーステナイトおよび低温
変態相からなる複合組織であって、該フェライトを体積
率で30%以上、該残留オーステナイトを体積率で2%以
上を含む鋼組織を有し、しかも該フェライトの平均結晶
粒径が15μm 以下で、かつ鋼板の最表層から10nm深さま
でのGDS分析によるSiとFeの強度比Si/Feが 6.0以下
であることを特徴とする、耐塩温水2次密着性に優れた
高強度高延性冷延鋼板。 - 【請求項2】 質量%で、 C:0.05〜0.35%、 Si:0.5 〜3.0 %、 Mn:0.5 〜3.0 %、 P:0.05%以下、 S:0.005 %以下、 Al:0.10%未満、 N:0.0020〜0.0100%および Ti:0.001 〜0.20% を含み、かつ Caおよび/またはREM :0.0010〜0.010 % を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成にな
り、さらにフェライト、残留オーステナイトおよび低温
変態相からなる複合組織であって、該フェライトを体積
率で30%以上、該残留オーステナイトを体積率で2%以
上を含む鋼組織を有し、しかも該フェライトの平均結晶
粒径が15μm 以下で、かつ鋼板の表層におけるFT−I
R分析によるSiO2とMn2SiO4 の強度比SiO2/Mn2SiO4 が
1.5 以下であることを特徴とする、耐塩温水2次密着性
に優れた高強度高延性冷延鋼板。 - 【請求項3】 請求項1または2において、鋼板がさら
に、質量%で、 NbおよびVのうちから選んだ1種または2種合計:0.00
1 〜0.30% を含有する組成になることを特徴とする、耐塩温水2次
密着性に優れた高強度高延性冷延鋼板。 - 【請求項4】 請求項1,2または3において、鋼板が
さらに、質量%で、 Cr:1.5 %以下、 Mo:0.5 %以下および B:0.010 %以下 のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成に
なることを特徴とする、耐塩温水2次密着性に優れた高
強度高延性冷延鋼板。 - 【請求項5】 質量%で、 C:0.05〜0.35%、 Si:0.5 〜3.0 %、 Mn:0.5 〜3.0 %、 P:0.05%以下、 S:0.005 %以下、 Al:0.10%未満、 N:0.0020〜0.0100%および Ti:0.001 〜0.20% を含み、かつ Caおよび/またはREM :0.0010〜0.010 % を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる
鋼スラブを、熱間圧延した後、冷間圧延し、ついで連続
焼鈍によりAc1変態点以上の温度に加熱した後、10℃/s
以上の冷却速度で 300〜500 ℃の温度域に冷却し、この
温度域に60秒以上滞留させたのち、冷却中あるいは冷却
後に酸洗処理および/またはブラシ処理を施して、鋼板
の最表層から10nm深さまでのGDS分析によるSiとFeの
強度比Si/Feを 6.0以下とすることを特徴とする、耐塩
温水2次密着性に優れた高強度高延性冷延鋼板の製造方
法。 - 【請求項6】 質量%で、 C:0.05〜0.35%、 Si:0.5 〜3.0 %、 Mn:0.5 〜3.0 %、 P:0.05%以下、 S:0.005 %以下、 Al:0.10%未満、 N:0.0020〜0.0100%および Ti:0.001 〜0.20% を含み、かつ Caおよび/またはREM :0.0010〜0.010 % を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる
鋼スラブを、熱間圧延した後、冷間圧延し、ついで連続
焼鈍により、炉内の雰囲気露点が−30℃以上の条件下で
Ac1変態点以上の温度に加熱した後、10℃/s以上の冷却
速度で 300〜500℃の温度域に冷却し、この温度域に60
秒以上滞留させたのち冷却することを特徴とする、耐塩
温水2次密着性に優れた高強度高延性冷延鋼板の製造方
法。 - 【請求項7】 請求項5または6において、鋼スラブが
さらに、質量%で、 NbおよびVのうちから選んだ1種または2種合計:0.00
1 〜0.30% を含有する組成になることを特徴とする、耐塩温水2次
密着性に優れた高強度高延性冷延鋼板の製造方法。 - 【請求項8】 請求項5,6または7において、鋼スラ
ブがさらに、質量%で、 Cr:1.5 %以下、 Mo:0.5 %以下および B:0.010 %以下 のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成に
なることを特徴とする、耐塩温水2次密着性に優れた高
強度高延性冷延鋼板の製造方法。
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