JP2003206178A - 酸素分離用混合伝導性複合酸化物およびその製造方法 - Google Patents

酸素分離用混合伝導性複合酸化物およびその製造方法

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JP2003206178A JP2002228606A JP2002228606A JP2003206178A JP 2003206178 A JP2003206178 A JP 2003206178A JP 2002228606 A JP2002228606 A JP 2002228606A JP 2002228606 A JP2002228606 A JP 2002228606A JP 2003206178 A JP2003206178 A JP 2003206178A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】酸素分離に対する抵抗が小さく、また従来より
も早く酸素分離が可能な電子、酸素イオン混合伝導性酸
化物とその製造方法とを提供すること。 【解決手段】混合伝導性複合酸化物にCe2-xZrx4-
δ(x=0.125〜1.9、δ=0〜0.5)で表さ
れる組成をもつCeO2−ZrO2固溶体を用いることを
特徴とする。また、この混合伝導性複合酸化物は、主要
な結晶系が立方晶でありCeとZrとが規則的に配列し
ており、粉末X線回折測定では、回折パターンが、2θ
=13.8〜14.6、36.0〜37.4、43.2
〜44.9にそれぞれ1本ずつのピークを呈する。この
構造をもつ混合伝導性複合酸化物は、1000℃以上、
かつ酸素分圧P02=10-8atm以下の雰囲気で熱処理
することにより得ることが出来る。本発明の電子、酸素
イオン混合伝導体は、その高い伝導性ゆえに、酸素分離
膜のみならずその他の用途、例えば、固体酸素燃料電池
(SOFC)、酸素センサー、助触媒などに適用しても
高い性能を発揮することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸素含有混合ガス
から酸素を分離する際に用いる電子、酸素イオン混合伝
導性複合酸化物と、この複合酸化物を製造する方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】製鉄、冶金、化学、石炭、パルプなどの
多くの工業において酸素が大量に利用されている。また
現在、熱エネルギー利用において一般的に空気による燃
焼が行われているが、燃焼に不必要な多量の窒素を含む
ため熱効率が悪い。また、窒素酸化物の発生や窒素によ
り希釈されて発生する窒素酸化物および炭酸ガス等の有
害ガスの回収に、さらに膨大なエネルギーを必要とする
といった多くの問題を含んでいる。これに対して、純粋
な酸素を用いる酸素燃焼は、空気燃焼の2倍以上の効率
が期待され、排ガス量が少ないことから、炭酸ガスおよ
びその他の有害ガスの回収を小型装置で容易にしかも低
コストで実施することが出来る。また、窒素酸化物の発
生を抑制することも可能である。
【0003】上記の需要を満たすためには、大量で安価
な酸素を製造することが必要となる。空気などの混合ガ
スから酸素を分離する技術は種々の方法が知られてい
る。例えば液化分離法、圧力スイング吸着方式(PS
A)などである。これらの方法には一長一短がある。例
えば、液化分離法は空気の各成分の沸点の違いを利用し
て蒸留分離する方法で、高純度の酸素が得られる反面、
超低温が必要であるため、大量のエネルギーを必要とす
る。他方圧力スイング吸着方式(PSA)は、加圧原料
ガスをゼオライトのような吸着物質に通して不純物を吸
着分離し、所要純度の目的ガスを得るもので、吸着した
不純物ガスは、大気圧又は真空圧にして開放除去する方
法である。この方法では、液化分離法に比べ省エネルギ
ーは図れるが、高純度の酸素が得られにくい。また、酸
素の吸着・脱着を繰返すので装置が複雑になるなどの問
題点がある。
【0004】上記に示した酸素分離技術に対して、より
高効率で簡便に酸素を分離する方法として、イオン伝導
性物質を利用した酸素分離法が提案されている。これは
酸素イオンを選択的に移動することが出来るイオン伝導
性物質を利用して、混合ガスから酸素のみを取出す方法
である。この方法の利点は、理論的には1段の処理手段
で100%純粋な酸素が得られることである。また、混
合ガスから酸素を分離するのに要するエネルギーは、理
想的には混合の自由エンタルピー変化に相当するエネル
ギーのみでよい。そのため、他の方法に比べて高効率で
また省エネルギーである。
【0005】このイオン伝導物質を利用した酸素分離法
には原理が異なるいくつかの方法がある。大きく分け
て、3種類の方法で、直流通電法、濃淡電池短絡法およ
び混合伝導体隔壁法である。
【0006】直流通電法は、安定化ジルコニアなど酸素
イオン伝導体を隔壁として、その両面に電子伝導体を取
付け通電する方法である。一方を空気にさらし、この空
気を負極として通電することによって空気中の酸素分子
が還元される。酸素分子は酸素イオンとなり、これが電
解質中を移動して正極で酸化され、再び酸素となる。
【0007】濃淡電池短絡法は、直流通電法と同じ装置
ではあるが、外部からの通電はせず短絡のみさせるもの
である。隔壁の一方を空気にさらし、他方を減圧する
と、酸素分圧の違いによって起電力が生じ、空気を正極
とする酸素ガス濃淡電池が形成される。外部回路には発
生した起電力に応じた電流が流れ、電解質内では空気極
から減圧極に向って酸素イオンが移動して減圧極表面で
酸素分子となる。
【0008】さらに、この濃淡電池短絡法の外部回路に
よる短絡の代りに、電解質自身に電子伝導性をもたせて
短絡させる方法が混合伝導体隔壁法である。この方法で
は、酸素イオンと電子の双方が動きうる混合伝導性酸化
物が必要となる。混合伝導性酸化物を隔壁として二室を
区切り、一方に空気などの酸素を含む混合ガスを流し他
方を吸引すれば、短絡された酸素濃淡電池となり酸素イ
オンが移動する。このように、混合伝導体隔壁法は、表
面電極も外部回路の導線も不要であり、隔壁の両側に圧
力差をつけるだけで酸素のみが移動するので酸素分離装
置が簡略化できる、という利点がある。
【0009】しかし、残念なことに、現状の混合伝導性
物質では充分満足な性能が得られていないため、混合伝
導体隔壁法による酸素分離は未だ実験室の域を出ていな
い。この最大の問題点は、混合伝導体の導電率が不十分
なために大電流を流せないことである。
【0010】現在、酸素分離膜に関する混合伝導体物質
は、大きく分けて3つの系統に分類される。先ず第1に
は、安定化ジルコニア等の酸素イオン伝導体に対して、
Pd等の貴金属を複合化、すなわち粉末状体で混合させ
て緻密に焼結し、擬似的に混合伝導体物質的な特性を持
たせた複合体を挙げることが出来る(Solid St
ate Ionics,86−88,569−572
(1996),Solid State Ionic
s,76,23−28(1995))。しかし、この複
合体は酸素イオン伝導体である安定化ジルコニアが、も
ともとイオン伝導性が高くないことから、800℃以下
の低温では大電流を流すことができないため、大量の酸
素を分離することは難しい。
【0011】次に、ペロブスカイト構造のLaxSr1-x
CoO3-y、SrCo1-xFeO3-yに代表されるLa−
Sr−Co−O系の酸化物(特開2001−10653
2,Solid State Ionics,106,
189−195(1998))があり、3番目として
は、蛍石型関連構造のCe−Zr−M−O系(M=Y,
Ca,Mg等)の酸化物がある(J.Electroc
hem.Soc.,131,2407−2413(19
84)、Solid State Ionics, 86
−88,739−744(1996))。
【0012】このLa−Sr−Co−O系およびCe−
Zr−M−O系の酸化物は、酸素イオン空孔を介して酸
素イオン伝導性を示す混合伝導体である。両者とも安定
化ジルコニアより高い酸素イオン伝導性を示す。しか
し、これらの物質であってもまだ酸素ガス分離の抵抗が
大きいために、混合ガスから大規模に酸素を抽出する装
置の実用化には至っていない。この原因として、混合伝
導体内での酸素イオンの伝導性が考えられるが、さらに
その表面での酸素分子の吸着乖離と酸素イオンへのイオ
ン化、およびその逆の酸素イオンの放電と酸素分子の生
成脱離過程が律速となっている可能性が指摘されている
(J.Appl.Electrochem.,24,1
222(1994),Solid State Ion
ics, 53,46(1992))。
【0013】以上のように、高効率で簡便な装置による
酸素分離が可能である混合伝導体隔壁法を実用化するに
あたって、現状では、その混合伝導体の酸素分離に対す
る抵抗が大きいため、800℃以下の低温では大電流を
流すことが出来ないことが問題となっている。この問題
は混合伝導体内での酸素イオンの伝導性が不十分である
のみならず、混合伝導体隔壁表面での酸素分子のイオン
化、および酸素イオンの分子化といった反応速度が律速
となっていると考えられている。
【0014】また、この電子、酸素イオン混合伝導性複
合酸化物は酸素分離膜のみならず、固体酸素燃料電池
(SOFC)や酸素センサーなどへの応用も期待されて
いるが、この点でも未だ十分な性能が得られる電子、酸
素イオン混合伝導性複合酸化物は見出されてはいない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的
は、酸素分離に対する抵抗が小さく、また従来よりも早
く酸素分離が可能な電子、酸素イオン混合伝導性複合酸
化物とその製造方法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、この混合伝導
体複合酸化物にCe2-xZrx4-δ(x=0.125〜
1.9、δ=0〜0.5)で表される組成をもつCeO
2−ZrO2固溶体を用いることを特徴とする。また、本
発明になる混合伝導性複合酸化物は、主要な結晶系が立
方晶でありCeとZrとが規則的に配列していることを
特徴とする。ここで、CeとZrとが規則的に配列して
いるか否かは、Cuを管球とする粉末X線回折測定にお
いて、回折パターンが、2θ=13.8〜14.6、3
6.0〜37.4、43.2〜44.9にそれぞれ1本
ずつのピークを呈することにより確認できる。
【0017】さらに、前記立方晶は、CeとZrとが規
則配列しており、かつ、酸素欠損もある特定の規則配列
をしていることが好ましく、その酸素欠損の規則配列
は、Cuを管球とする粉末X線回折測定において、回折
パターンが、2θ=13.8〜14.6、36.0〜3
7.4、43.2〜44.9にそれぞれ1本ずつのピー
クに加えて、さらに2θ=15.8〜17.2にもピー
クを呈することにより確認することができる。この規則
配列は、空間群がF4 ̄3m(No.216)であり、
基本組成はCeZrO3.75と表すことができる。
【0018】CeO2−ZrO2固溶体は、Ce2-xZrx
4-δ(x=0.125〜1.9、δ=0〜0.5)で
表される複合酸化物を、1000℃以上、かつ酸素分圧
02=10-8atm以下の雰囲気で熱処理することによ
り得ることが出来る。
【0019】また、この複合酸化物を、400〜900
℃に保持し、酸素分圧を10-6atm以下の還元雰囲気
から10-1atm以上の酸化雰囲気まで、4時間以上か
けて上昇させる熱処理を施すことができる。
【0020】さらに、この複合酸化物に、酸素分圧P02
=10-6〜100atmとし、50〜300℃で1〜1
200時間の熱処理を施すことも好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明の電子、酸素イオン混合伝
導性複合酸化物について説明する。
【0022】前述したように、従来よりCe−Zr−M
−O系(M=Y,Ca,Mg等)の蛍石型関連構造酸化
物は混合導電体として検討されてきた。しかし、Sol
idState Ionics,98,63−72(1
997)のようにCeO2,ZrO2が固溶しておらず、
単に複合材化しているだけの材料もある。また、従来技
術では、必ずCe,Zr以外の第3金属元素(上記組成
式でMと示した)が添加されている。第3金属元素は、
複合酸化物の結晶構造が正方晶に歪むことなく立方晶を
安定化させることや、複合酸化物からなるセラミックス
の焼結密度を向上させることなどを目的として添加され
ている。複合酸化物は、正方晶に歪むことにより酸素イ
オン伝導性が低下するため、立方晶を安定化させること
は重要である。
【0023】本発明は、上記の従来技術とは異なり、第
3金属元素を添加することなく立方晶を安定化させ、か
つ特定の熱処理を加えることで表面を酸素が吸収放出し
やすいように改質できたものである。
【0024】本発明者らは1000℃以上の高温で、か
つ酸素分圧が10-8atm以下の還元雰囲気下で熱処理
をすることによって、Ce:Zr=2−x:x(x=
0.125〜1.0)の範囲ではCeとZrの配置が特
有の規則配列を組み、完全に立方晶を保ったままで、酸
素分離に対する抵抗の小さいCeO2−ZrO2固溶体か
らなる混合伝導性複合酸化物が製造できることを見出し
た。
【0025】この特有の規則配列は、粉末X線回折測定
によって容易に確認することが出来る。具体的には、C
uを管球とする粉末X線回折測定において、2θ=1
3.8〜14.6、36.0〜37.4、43.2〜4
4.9にそれぞれ1本ずつのピークがあることを特徴と
する。
【0026】また、この特有の規則配列は酸化雰囲気中
で900℃以上の熱処理を行うと消失してしまうが、9
00℃以下もしくは還元雰囲気ではその特有の規則配列
性を維持できる。すなわち、1000℃以上の高温で、
かつ酸素分圧10-10atm以下の還元雰囲気中で熱処
理した後でも、酸化雰囲気中で900℃以上の熱処理を
行わなければどのような熱処理を施しても問題はない。
例えば、複合酸化物固溶体粉末からセラミックスを得る
場合に、1000℃以上の高温で、かつ酸素分圧10
-10atm以下の還元雰囲気中で焼成したとしても、そ
の後の熱処理を900℃以下で実施すれば、雰囲気の如
何に関わらずこの特有の規則配列は維持されるというこ
とである。
【0027】また、Ce:Zr=2−x:x(x=1.
0〜1.9)の範囲においては、熱処理条件、特に冷却
条件によっては一部正方晶相が析出する場合もある。冷
却速度が速い場合には正方晶相の析出は起り難いが、冷
却速度が遅くまた酸素分圧が比較的高い場合には、xが
1.1程度では10%未満の、またxが1.9程度では
50%未満の正方晶相が析出することがある。しかし、
この場合でも主要な結晶相は立方晶であり得られる特性
も従来より優れている。
【0028】このCe、Zrの配列と酸素分離に対する
抵抗低下の相関メカニズムについては明らかではない
が、Zrイオンがある配列を組んだ場合、その周りに酸
素イオンが吸収・脱離しやすいサイトが形成されるもの
と推測される。すなわち、Zrイオンのある配列が複合
酸化物表面での酸素分子の吸着乖離と酸素イオンのイオ
ン化、およびその逆の酸素イオンの放電と分子の生成脱
着過程のどれかを促進していると考えられる。
【0029】また、Ce2-xZrx4-δにおいて、δの
値は複合酸化物の電荷が電気的に中性となるように決め
られるが、このδの値は、複合酸化物が酸素分離に供さ
れる前の組成に基づいて決められる値であって、実際
に、この複合酸化物を酸素分離に使用するときには、こ
の値より若干異なる場合があるが、δの値は0〜0.5
が適当と考えられる。
【0030】本発明の電子、酸素イオン混合伝導性複合
酸化物は、結晶格子中に酸素欠損が生成することによっ
て良好な電子伝導性、イオン伝導性を示す。そして、C
eとZrの組成と酸素欠損量とがある特定の条件を満た
せば酸素イオンが規則配列化する。例えば、Ce:Zr
=1:1で酸素欠損量が1/8の場合にはCe2Zr2
7となり、この規則配列性はパイロクロア構造として知
られている。また、Ce:Zr=1:1で酸素欠損量が
1/16の場合には、複合酸化物の組成はCe 2Zr2
7.5(すなわち、CeZrO3.75)となり、パイロクロ
ア構造とは別種の酸素欠損の規則配列化が生じる。
【0031】この特殊な酸素欠損の規則配列性は、前記
と同様に粉末X線回折測定によって容易に確認すること
が出来る。具体的には、Cuを管球とする粉末X線回折
測定において、2θ=13.8〜14.6、36.0〜
37.4、43.2〜44.9にそれぞれ1本ずつのピ
ークを呈するCeとZrとの規則配列性に加えて、Ce
ZrO4の1/16の酸素が規則配列的に欠損している
ことによって生じる2θ=15.8〜17.2のピーク
によって確認することができる。
【0032】また、このCe:Zr=1:1で酸素欠損
量が1/16の電子、酸素イオン混合伝導性複合酸化物
の結晶構造は、空間群F4 ̄3m(No.216)(I
nternational Tables for C
rystallography:VolumeA)とし
て分類される構造であり、Ce2Zr27.5(すなわ
ち、CeZrO3.75)と表記することができる。
【0033】なお、本発明の組成にはCe、Zr以外の
金属元素は含めていないが、YやTiあるいはCaとい
った金属元素でCeもしくはZrを20重量%以下の微
量範囲で置換しても本発明の利点は損われることなく機
能する。
【0034】なお、もちろん実際にセラミックス薄膜と
して酸素分離や固体酸素燃料電池(SOFC)などに使
用する場合には、その薄膜の両側にPd、Ptなどの酸
素分離を促進する触媒を付与してもよい。
【0035】次に、本発明の電子、酸素イオン混合伝導
複合酸化物およびセラミックスの製造方法について説明
する。
【0036】本発明の電子、酸素イオン混合伝導性複合
酸化物およびセラミックスは、基本的には熱処理を含む
方法により調整することが出来る。たとえば、焼結など
の熱処理過程で酸化物に転換しうる、CeやZrといっ
た金属原子を含む化合物、たとえば、CeO2、ZrO2
のような酸化物、あるいは硝酸塩、炭酸塩、その他にC
eCl3、ZrCl4などの無機酸塩、アルコキシドなど
の有機酸塩、CeF3等のハロゲン化物、あるいはCe
(OH)4、Zr(OH)4等の水酸化物を、所望の割合
で混合し、熱処理を行う方法がある。
【0037】また、上記記載のそれぞれの金属塩の混合
水溶液を、アンモニア水などのアルカリ水溶液で加水分
解する、いわゆる共沈法により得た沈殿物に熱処理を加
えて所望の複合酸化物を得てもよい。さらに、それぞれ
の金属の混合物、又は、合金を熱処理して酸化しても良
い。
【0038】本発明のCeO2−ZrO2固溶体粉末から
セラミックスを得るには次の方法による。すなわち、A
r等の不活性ガス雰囲気中で、加圧圧力50〜500k
gf/cm2、好ましくは100〜250kgf/c
2、加熱温度1100〜1500℃、好ましくは12
00〜1400℃で、加熱時間0.1〜15時間、好ま
しくは2〜5時間の加圧焼結を行う。なお、この時の昇
温速度は1〜20℃/minが望ましい。加圧圧力が5
0kgf/cm2以下ではセラミックスの焼結密度が不
足するためガスがリークする危険性があり、また、50
0kgf/cm2以上では装置上の制約が大きくなり望
ましくない。加熱温度が1100℃以下では緻密な焼結
体が得られず、1500℃以上では結晶系が変化してし
まう危険性がある。加熱時間は0.1時間以下では緻密
なセラミックスが得られず、15時間以上では結晶粒が
粗大化してセラミックスの強度が低下する。
【0039】次に酸素分圧を10-8atm以下、好まし
くは10-8〜10-16atmに制御して、1000℃以
上、好ましくは1100〜1200℃で、0.1〜24
時間焼成する。酸素分圧は、例えばCO2−H2混合ガス
を炉内に導入することにより制御することが出来る。酸
素分圧が10-8atm以上では酸素吸収に伴う体積変化
でクラックが発生し、また、焼成温度が1000℃以下
では本発明に特有な結晶配列が不十分となる場合があ
り、所望のセラミックスを得ることが出来ない。
【0040】さらに、セラミックスのクラック発生を防
止するため、室温までの冷却は次の方法によることが望
ましい。CO2−H2混合ガスの混合比を変えることなく
0.1〜3℃/minの降温速度で400〜900℃ま
でに降温し、この温度に保持したまま、酸素分圧を10
-6atm以下の還元雰囲気から10-1atmの酸化雰囲
気へ4時間以上、好ましくは6〜72時間かけて徐々に
酸素分圧を上げ、最終的には酸素気流中での焼成とす
る。その後、さらに0.1〜3℃/minの速度で徐冷
する。保持温度が900℃以上では不純物相が析出し、
また400℃以下では酸素吸収が不十分となる。保持時
間は、保持温度および酸素分圧の上昇速度により左右さ
れるが、6時間以上が好ましい。保持時間が6時間以下
では、クラックが発生する危険性がある。また、保持後
の降温速度が3℃/min以上でもクラックが発生する
ことがある。一方、降温速度が0.1℃/min以下で
は著しく生産性を阻害するので現実的ではない。
【0041】以上は、本発明のCeO2−ZrO2固溶体
粉末からセラミックスを得る方法であるが、CeとZr
とが規則配列しており、さらに、酸素欠損をも規則配列
化するセラミックスを得るには次の方法が望ましい。
【0042】すなわち、前記のCeO2−ZrO2固溶体
粉末を、加圧焼結した後、酸素分圧P02を10-6〜10
0atmとし、50〜300℃で1〜1200時間の熱
処理を施す。酸素分圧P02が10-6atm未満では、作
製に1200時間以上の熱処理時間を要することとなり
現実的ではなく、また、100atm(すなわち1気
圧)以上では、加圧が必要なためコストが上昇するので
好ましくない。処理温度が50℃未満では目的とする規
則配列性の生成速度が遅く生産性を大きく阻害するので
適当ではなく、300℃を越えると酸素欠損が消失して
しまうことがあるので好ましくない。
【0043】本発明では所望の立方晶を得るために、上
記のように好ましい焼結条件および焼成条件を規定し
た。これは、上記規定の諸条件以外の条件では、立方晶
系とならなかったり、他の結晶系が混在したりして、酸
素イオン伝導性が低下するとともに、クラックや割れが
発生して所望のセラミックスが得られないためである。
【0044】以上のようにして得られる複合酸化物およ
びセラミックスは、空気などの酸素含有混合ガスから、
酸素を分離する酸素分離膜として好適に使用することが
できる。さらに、この複合酸化物は、酸素吸蔵材料とし
て助触媒に使用することができ、酸素センサー、燃料電
池などの電気化学的な機構を利用したデバイスに使用し
て好適である。
【0045】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説
明する。 (実施例1)実施例1としてCeZrO4を合成した。
すなわち、x=1、δ=0の場合である。硝酸セリウム
(Ce(NO33)と硝酸ジルコニウム(Zr(N
33)を、モル比でCe/Zr=5/5となるように
混合した水溶液を調製し、攪拌しながらアンモニア水を
滴下して中和し沈殿物を生成させた。続いてこの混合水
溶液に含まれるセリウムイオンの1/2のモル数の過酸
化水素を含む過酸化水素水と、得られる複合酸化物の1
0重量%のアルキルベンゼンスルホン酸を含む水溶液を
添加し、混合攪拌した。得られたスラリーを入ガス40
0℃、出ガス250℃の雰囲気中に噴霧し、スプレード
ライ法で乾燥させるとともに共存する硝酸アンモニウム
を蒸発・分解して、複合酸化物固溶体粉末を調製した。
さらにこの粉末を黒鉛ヒータ加熱式の雰囲気加圧焼結炉
を用いて、静止Arガス置換した後、黒鉛のプレス型を
用いて、500kgf/cm2の押圧で1400℃、1
2時間の加圧焼結を行い、φ150mm、高さ約5mm
の焼結体を得た。
【0046】この焼結体をさらに雰囲気焼結炉内に配置
し、CO2−H2混合ガス(CO2/H2=9.5)を流す
ことで、炉内の酸素分圧P02を10-9atmに制御しな
がら、1200℃で12時間の焼成を行った。さらに、
このCO2−H2混合比を変えることなく、800℃まで
温度を下げ、800℃に保ったまま48時間かけて徐々
に酸素分圧を上げ、最終的には酸素気流中での焼成とし
た。その後、1℃/minの降温速度で徐冷し、目的の
セラミックス試料を得た。この多段の熱処理は、クラッ
クなしに、本発明で特定した組成および構造の試料を得
るために必要な熱処理である。得られたセラミックス試
料をφ20mm、厚さ1mmの円盤状の薄片に切出し、
酸素分離用の試料とした。
【0047】また、このセラミックスの試料を粉砕して
粉末X線回折測定を行った。結果を図1に示す。得られ
た回折パターンのピークは、全て立方晶に帰属され、1
4.5゜、37.1゜、44.7゜付近(図中▼)にC
eとZrが規則配列していることを示すピークが認めら
れた。
【0048】上記のように切出したセラミックス試料に
ついて、図2に示す評価装置を用いて酸素透過速度を評
価した。ガス1入口より、乾燥空気を20cc/min
の速度で導入し、高酸素濃度側とした。また、ガス2入
口より、高純度ヘリウムガス(酸素分圧10-3atm以
下)を20cc/minの速度で導入し、低酸素濃度側
とした。作製したセラミックス試料は、ガラスシールに
よってアルミナチューブに接着し、高酸素濃度側と低酸
素濃度側とを完全に隔離した。ガス1出口およびガス2
出口から放出されるガスを、それぞれ四重極型質量分析
装置と酸素センサーを用いて分析した。セラミックス試
料を通過した酸素量は、ガス出口2から放出されるガス
の酸素濃度とヘリウムガスの流量とから求めた。高酸素
濃度側と低酸素濃度側との隔離は、ガス1出口から放出
されるガスにヘリウムガスが検出されないことによって
確認した。
【0049】酸素透過の実験は、この装置を電気炉によ
り加熱して、750℃、入側酸素分圧0.2atm、出
側酸素分圧10-6atmの条件下で実施した。その結
果、酸素透過性能は、2.3cc・min-1cm-2であ
った。 (比較例1)比較例として、従来から知られている電
子、酸素イオン伝導体であるLa0.6Sr0.4Co03-
δを合成した。酸化ランタン、炭酸ストロンチウム、四
三酸化コバルトを上記組成のモル比になるように秤量
し、これらの混合物を自動乳鉢でよく混合した。この混
合物を空気中、850℃で12時間仮焼した。この仮焼
体を静水圧プレスにより厚さ約2mmの円盤状に加圧成
形し、成形体を1300℃で6時間、空気中で焼成して
焼結させた。この焼結体を実施例1と同様にφ20m
m、厚さ1mmの円盤状の薄片に切出し、酸素分離用の
試料とした。
【0050】実施例1と同様の条件で酸素透過の試験を
実施した。その結果、酸素透過性能は、1.2cc・m
in-1cm-2であった。 (実施例2)実施例2としてCeZrO3.75を合成し
た。すなわち、x=1、δ=0.25の場合である。
【0051】まず、硝酸セリウム(Ce(NO33)と
硝酸ジルコニウム(Zr(NO33)との混合水溶液か
ら、実施例1と同様に処理して複合酸化物固溶体粉末を
調整した。さらに、この固溶体粉末に実施例1と同様の
加圧焼結を施してφ150mm、高さ約5mmの焼結体
を得た。
【0052】次に、この焼結体をさらに雰囲気焼成炉に
おいて、200℃で酸素ガスで4時間焼成を行った後、
5℃/minの速度で冷却して、目的の焼結体を得た。
この焼結体から実施例1と同様のφ20mm、厚さ1m
mの円盤状の薄片を切出し、酸素分離用の試料とした。
【0053】また、この焼結体の試料を粉砕して粉末X
線回折測定を行った。結果を図3に示す。得られた回折
パターンのピークは、全て立方晶に帰属され、14.4
゜、36.7゜、44.2゜(図中▼)にCeとZrが
規則配列していることを示すピークが認められた。さら
に、CeZrO4の1/16の酸素が規則配列的に欠損
していることによって生じるピーク(図中▽)が16.
6゜に現れている。
【0054】実施例1と同様に図2に示す評価装置を用
いて酸素透過試験を行った。酸素透過試験は、この装置
を電気炉で200℃に加熱して、入側酸素分圧0.2a
tm、出側酸素分圧10-6atmの条件下で実施した。
その結果、酸素透過性能は、0.1cc・min-1cm
-2であった。これは従来から知られている電子、酸素イ
オン伝導体であるLa0.6Sr0.4Co03-δ(比較例
1)を用いて同一条件で得られる酸素透過性能が、0c
c・min-1cm-2であったのに対して、本実施例は極
めて優れた酸素透過性能を有するということができる。
【0055】
【発明の効果】本発明によれば、電子、酸素イオンとも
に高い伝導性を有する混合伝導体を製造することができ
る。したがって、混合電導体隔壁法による酸素分離装置
に、実用に耐えうる性能を有する混合伝導性複合酸化物
を提供することがでる。また、これにより従来よりもエ
ネルギー消費量が少なく、低コストで酸素製造ができる
技術を提供することができる。
【0056】さらに、本発明の電子、酸素イオン混合伝
導体は、その高い伝導性ゆえに、酸素分離膜のみならず
その他の用途、例えば、固体酸素燃料電池(SOF
C)、酸素センサー、助触媒などに適用しても高い性能
を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になるCeZrO4の粉末X線回折パタ
ーンであり、CeとZrの規則配列を示す(図中▼)。
【図2】本発明の混合伝導性複合酸化物からなる焼結体
の酸素透過速度を評価した評価装置の概略図である。
【図3】本発明になるCeZrO3.75(Ce2Zr2
7.5)の粉末X線回折パターンであり、CeとZrが規
則配列していることと、1/16の酸素が規則配列的に
欠損していること(図中▽)とを示している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01M 8/02 H01M 8/02 K 8/12 8/12 Fターム(参考) 4G031 AA07 AA12 BA02 BA03 BA07 CA01 GA16 GA17 4G048 AA03 AB02 AC04 AD03 AE07 5G301 CA02 CA28 CA30 CD01 5H026 AA06 BB01 CX04 EE13 HH00 HH05 HH08 HH09 HH10

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Ce2-xZrx4-δ(x=0.125〜
    1.9、δ=0〜0.5)で表され、かつ、主要な結晶
    系が立方晶であることを特徴とする電子、酸素イオン混
    合伝導性複合酸化物。
  2. 【請求項2】前記立方晶は、Cuを管球とする粉末X線
    回折測定において、2θ=13.8〜14.6、36.
    0〜37.4、43.2〜44.9にそれぞれ1本ずつ
    のピークを呈する請求項1記載の電子、酸素イオン混合
    伝導性複合酸化物。
  3. 【請求項3】前記立方晶は、CeとZrとが規則配列し
    ており、かつ、酸素欠損も規則配列している請求項1に
    記載の電子、酸素イオン混合伝導性複合酸化物。
  4. 【請求項4】前記立方晶は、Cuを管球とする粉末X線
    回折測定において、2θ=13.8〜14.6、36.
    0〜37.4、43.2〜44.9にそれぞれ1本ずつ
    のピークに加えて、さらに2θ=15.8〜17.2に
    もピークを呈する請求項3に記載の電子、酸素イオン混
    合伝導性複合酸化物。
  5. 【請求項5】空間群がF4 ̄3m(No.216)であ
    り、基本組成がCeZrO3.75で表される請求項3また
    は4に記載の電子、酸素イオン混合伝導性複合酸化物。
  6. 【請求項6】Ce2-xZrx4-δ(x=0.125〜
    1.9、δ=0〜0.5)で表される複合酸化物を、1
    000℃以上、かつ酸素分圧P02=10-8atm以下の
    雰囲気で熱処理することを特徴とする請求項1から5の
    いずれかに記載の電子、酸素イオン混合伝導性複合酸化
    物の製造方法。
  7. 【請求項7】前記複合酸化物を、400〜900℃に保
    持し、酸素分圧を10 -6atm以下の還元雰囲気から1
    -1atm以上の酸化雰囲気まで、4時間以上かけて上
    昇させる熱処理を含む請求項6に記載の電子、酸素イオ
    ン混合伝導性複合酸化物の製造方法。
  8. 【請求項8】前記複合酸化物を、酸素分圧P02=10-6
    〜100atmとし、50〜300℃で1〜1200時
    間の熱処理を含む請求項6に記載の電子、酸素イオン混
    合伝導性複合酸化物の製造方法。
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