JP2003293094A - 鉄系高強度・高剛性鋼 - Google Patents

鉄系高強度・高剛性鋼

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 比較的安価な溶製法により、加工性や靭延性
を阻害することなく剛性の大幅な向上のみならず、強度
をも兼ね備えた高強度・高剛性鋼とその製造方法を提供
する。 【解決手段】 溶製法で作製された鉄または鉄合金から
なるマトリックス中に、TiB2系化合物が5〜50v
ol%分散されてなる高剛性鋼において、 (Ti/B)≧2.1 (1) 0.1%<C<[0.25(Ti−2.18B)+0.18]% (2) 0.3%≦Si+0.5×Al≦6% (3) を満足する。〔尚、上記(1)〜(3)式において、T
i,B,C,Si,Alはいずれも鋼中の質量%を示
す。〕

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、高い剛性と共に高
い強度が要求される機械構造用部材等に用いられる鉄系
高強度・高剛性鋼に関するものである。 【0002】 【従来の技術】鉄鋼材料は、建築物、輸送用機器、各種
機械等の構造物を維持するために用いられる機械構造部
材として最も多く使用されている。これら構造物を設計
する際に求められる重要な特性として、剛性と強度があ
げられる。剛性や強度の高い材料を使用することによっ
て、構造物の耐用強度が向上し、信頼性の高い構造物を
得ることができる。また、剛性や強度の高い材料を構造
物に用いることは、それだけ使用する材料も少なくする
ことができるので、例えば、自動車、鉄道等の輸送車両
に適用すると、輸送車両の軽量化を達成することがで
き、その結果、燃費向上による省エネルギー化、材料の
節約による省資源化を図ることができる。 【0003】上記のような機械構造部材に用いられる鉄
鋼材料は、各種合金成分の添加や鉄鋼材料の組織改善等
によって特性改善が試みられてきた。これらの方法によ
って、鉄鋼材料の強度は、大幅に改善されたが、剛性の
向上については必ずしも十分とは言えない。剛性は材料
が固有している物理的な値であるため、上記のような方
法では、剛性の向上すなわちヤング率の向上は容易でな
い。しかし、ヤング率の向上は、輸送車両の軽量化を始
めとして、構造物等の設計に際し大きなメリットが得ら
れるので、鉄鋼材料のヤング率を一般的な約200GP
aレベルから10%程度以上高めることが望まれてき
た。 【0004】こうした需要に沿うべく、鉄鋼材料の剛性
向上に関して種々の研究がなされ、多くの提案がなされ
ている。例えば、粉末冶金法による鉄鋼材料の剛性の向
上手段が数多く提案されており、これらの方法は、鋼の
マトリックス中へ高剛性を有する化合物を多量に添加す
るものである(特開平5−239504号公報,特開平
7−188874号公報,特開平7−252609号公
報等)。しかし、これらの技術は、粉末冶金法を適用す
るものであって、その工程の複雑さからコストが高くな
るという問題があった。 【0005】一方、前記粉末冶金法よりも安価な製造方
法である溶製法によって高剛性鋼を製造する方法も提案
されている。例えば、高剛性の化合物粉末を溶湯に分散
させて鋳造する方法(特開平4−325641号公報参
照)や、高剛性を有する化合物(4a,5a族の炭化
物、ホウ化物、またはその複合化物)を溶湯中での反応
により生成・分散させる方法が開示されている(特開平
10−68040号公報参照)。 【0006】以上の様な溶製法による高剛性化技術で、
高剛性鋼を得る方法はある程度明確になった。しかし、
ほとんどの機械部品は剛性だけでなく強度との両立が不
可欠であるため、それらの小型軽量化には不十分である
ことが多い。殊に、上記の開示技術では、強度を向上さ
せるための手法が明らかにされておらず、要求特性を満
足させることが出来ない。 【0007】剛性と強度の両立を図ることを目的とし
て、Vを多量に添加した鋼にVCとして化合物を形成す
る以上の炭素量を添加し、炭素を固溶させて焼入れる方
法が報告されている(特開2001−73068号公
報、CAMP−ISIJ,vol.13(2000)
P.541−542.)。しかし、本方法においては、
焼入れることで剛性が低下するので、達成可能な剛性に
は自ずと限界があり、また、Cをあらかじめ多量に添加
するので、粗大な初晶炭化物が生成し、加工性や延靭性
に問題が生じる。 【0008】尚、本発明者らは、特願2001−302
998号で、高剛性と高疲労強度を達成した鋼材に関す
る出願をしているが、該出願は鋼材に浸炭あるいは浸窒
処理を施すことを前提としたものであった。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】本発明はこうした状況
に着目してなされたものであって、その目的は、比較的
安価な溶製法を採用し、しかも、後に浸炭処理や浸窒処
理等の熱処理を行なうことなく、鋼の加工性や延靭性を
保持しつつ、剛性の大幅な向上を達成すると共に強度も
兼ね備えた鉄系高強度・高剛性鋼を提供することにあ
る。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明の鉄系高強度・高
剛性鋼は、溶製法で作製された鉄または鉄合金からなる
マトリックス中に、TiB2系化合物が5〜50vol
%分散されてなる高剛性鋼において、 (Ti/B)≧2.1 (1) 0.1%<C<[0.25(Ti−2.18B)+0.18]% (2) 0.3%≦Si+0.5×Al≦6% (3) を満足するところに要旨を有する。〔尚、上記(1)〜
(3)式において、Ti,B,C,Si,Alはいずれ
も鋼中の質量%を示す。〕 【0011】上記規定を満たす鋼材は、特に高いヤング
率を有するTiB2系化合物を多量に且つ微分散させる
ことが可能であるため、得られる鋼材の剛性を高くする
ことができる。さらにSiおよび/またはAlを含むた
め、マトリックスを固溶強化でき、強度にも優れた鋼材
とすることができる。 【0012】 【発明の実施形態】本発明者等は、剛性および強度に優
れた高強度・高剛性鋼を溶製法によって提供するべく、
様々な角度から検討した。これまで剛性に優れた鋼材を
得るには、高ヤング率を有する化合物を鋼材中に分散さ
せることが有効であることは知られていたが、このよう
な化合物を形成する元素を多量に添加すると、溶湯の冷
却時に粗大な初晶を生じたり、化合物が凝集するため、
均一な微分散状態とできず、鋼材の被削性や靭性が低下
し、これらの特性と剛性および強度の両立を達成するこ
とは困難であった。 【0013】しかしながら、本発明者らは、鉄または鉄
合金からなるマトリックス中に、TiB2系化合物を上
述の規定を満たすように均一に微分散させ、同時にCを
含有させることで、剛性と共に強度も兼ね備えた鋼材を
提供し得ること、さらにこの鋼材にSiおよび/または
Alを添加することで、剛性、靭性および延性を阻害す
ることなく、鋼材全体としての強度をより一層向上でき
ることを見出し、本発明を完成した。 【0014】本発明の高強度・高剛性鋼は、鉄または鉄
合金からなるマトリックス中にTiB2系化合物を5〜
50vol%分散させて溶製されたものである。 【0015】このようにして得られた鋼(鉄または鉄合
金:以下、特に断らない限り「鋼」と言う)は、鋼自体
の剛性が高く、そのヤング率は220〜350GPaで
ある。しかし、鋼マトリックス中の前記化合物の分散量
が5vol%未満では、ヤング率が220GPa以上の
高剛性鋼を得ることができない。ヤング率が220GP
a以上の高剛性鋼を得るためには、5vol%以上の前
記化合物を鋼マトリックス中に分散させることが必要で
ある。より一層ヤング率を高めるためには15vol%
以上、さらには20vol%以上の前記化合物を鋼マト
リックス中に分散させることが望ましい。一方、前記化
合物の鋼マトリックス中の分散量が50vol%を超え
ると、溶製後の鋼中に前記化合物の凝集体等が生成し
て、靭性が低下し、構造部材としての使用が困難とな
る。また、靭性と機械加工性の観点から、前記化合物量
は40vol%以下にすることがより好ましい。 【0016】ここでTiB2系化合物とは、該化合物中
のTiB2の割合が体積率で50%以上であるものと規
定するが、他のホウ化物、炭化物、窒化物などを含んで
いても良く、これらの化合物が個々に複合化していても
かまわない。 【0017】本発明に係る鋼材に微分散させるTiB2
系化合物のヤング率(TiB2:529GPa)は、他
のTiC(451GPa)、VC(421GPa)に比
べて特に高く、得られる鋼の剛性を向上させるのに最も
効果的である。しかし、剛性向上の手段としてTiB2
を採用する場合、マトリックス中に多量にCを添加する
と、CはTiと結合して、TiCを生成する。その結
果、Bが余剰成分として残り、この余剰Bは鉄ホウ化物
(FeB2)を生成する。このFeB2とFeの共晶温度
は熱間加工される温度域に存在するため、熱間加工性を
極端に低下させる。そのため、従来の知見では、高剛性
が得られるTiB2系での剛性と強度の両立は難しいと
考えられていた。 【0018】しかし、本発明者等は、前記高剛性鋼中に
含まれるTiとBの比(Ti/B)が質量比で2.1以
上であれば、TiB2系でも目的とする強度と剛性を兼
ね備えた鋼が得られることを見出した。 【0019】Ti/Bの値が2.1未満であると、鋼中
にTiB2として結合しない余剰Bが生じる。上述した
ように、余剰Bは鋼マトリックス中のFeと結合してF
eB 2を生成し、得られる鋼の熱間加工性を極端に低下
させる。ゆえに、前記高剛性鋼中に含まれるTiとBの
比(Ti/B)は質量比で2.1以上であることが好ま
しい。より好ましくは2.2以上であり、更に好ましく
は2.3以上である。ただし、Tiが多くなり過ぎると
延性および靭性が低下するため、Ti/Bは6以下に抑
えることが好ましい。 【0020】上述した成分組成に加えて、マトリックス
中のC含有量は質量%で0.1%を超え、[0.25
(Ti−2.18B)+0.18]%未満であることが
好ましい。Cは強度向上に不可欠の元素であり、C含有
量が0.1%以下では強度向上に必要な炭化物の析出が
不十分となり、鋼材に十分な強度を与えることができな
い。一方、C含有量が[0.25(Ti−2.18B)
+0.18]%以上となると、鋼中に過剰なCが存在す
ることになり、過剰なCはTiCを生成する。その結
果、余剰のBを生じ、上述したようにFeB2が生成す
る。よって、FeB2の生成を抑えて、熱間加工性を確
保するためには、溶製後・熱処理前のC含有量を[0.
25(Ti−2.18B)+0.18]%未満に抑える
ことが望ましい。 【0021】SiおよびAlは、剛性を大幅に低下させ
ることなくマトリックスの強化が期待できる固溶強化元
素である。この効果を有効に発揮させるためには、前述
の式(Si+0.5×Al)の値が0.3%以上となるよ
うにSiおよびAlを添加する必要がある。しかし、添
加量が6%を超えると、効果が飽和するだけでなく、鋼
の熱間加工性を極端に低下させるため、添加量の上限は
6%とするのがよい。好ましくは0.4%以上、4%以
下である。 【0022】上述の効果は、SiまたはAlのいずれか
を単独で添加しても、あるいはこれらを複合物として添
加しても同様に得られるものである。尚、前述の式にお
いて、Al含有量に0.5倍の係数を掛けたのは、高強
度化の効果がAlはSiに比べて約半分であったためで
ある。 【0023】固溶強化元素としては他にNi,Cu,P,
N等も存在するが、これらのうちNiおよびCuはオー
ステナイト安定元素であるため鋼の剛性を低下させる恐
れがある。また、PはFeマトリックス中に多量に固溶
できないためにマトリックス強化の効果が小さく、Nは
多量に添加すると熱間加工性を低下させる。これらの理
由から、本発明では固溶強化元素としてSiおよびAl
を採用する。 【0024】また、該高強度・高剛性鋼に含まれるCr
量を30%以下に抑えることも有効である。即ち、Cr
はマトリックスに固溶して剛性を向上させる働きがある
ため添加することが好ましいが、その含有量が30%を
超えると剛性向上効果が飽和すると共に、かえって脆性
が劣化するようになるので30%以下とする必要があ
る。より好ましいCrの添加量の上限は20%であり、
好ましいCr添加量の下限は0.5%である。 【0025】上記の元素以外に、焼入れ性向上を目的と
して、Cu:3.0%以下、Mn:2.0%以下、M
o:2.0%以下、W:2.0%以下、Ni:3.0%
以下を添加しても良い。しかし、これらの選択元素を、
上述した量を超えて添加しても効果は飽和し、コストア
ップするだけであるので無駄である。また、Cu,Ni
の場合には上述した様に剛性の劣化を生じる恐れがあ
る。 【0026】本発明に係る高強度・高剛性鋼を製造する
に際して、その溶製法としては、真空溶解法、プラズマ
溶解法、コールドクルーシブル溶解法、アーク溶解法等
が挙げられる。 【0027】尚、本発明の規定を満たす鉄系高強度・鋼
剛性鋼は、剛性とともに十分な強度を備えたものである
ので、溶製後に浸炭および浸窒等の特別な熱処理を行う
ことなく、それぞれの用途に供することができる。 【0028】 【実施例】以下実施例によって本発明をさらに詳述する
が、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発
明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することはすべて
本発明の技術範囲に包含される。尚、「%」は特に断ら
ない限り質量基準であり、各物性値は以下の方法で測定
した。 【0029】[ヤング率]サンプルから試験片を加工
し、JIS Z 2280に基づいてヤング率の測定を
行った。 [引張強度]サンプルからJIS5号の引張試験片を加
工し、引張試験を行った。 【0030】製造例1 真空溶解 マトリックス成分として、クロム鋼(Cr:15.0質
量%、C:0.2質量%、N:0.01質量%)を使用
し、これを真空誘導炉に導入し、特開平10−6804
8号に記載されている様に、化合物が完全に溶解する温
度(2273K)で溶解しておき、表1に示す組成とな
るように、C、B等を適宜添加した。次に、溶解したサ
ンプルを鋳型または水冷鋳型に注湯して、20kgの鋼
塊を製造した。冷却は、真空中(真空度:0.13〜
1.3Pa)で行い、冷却・凝固の過程でTiとBを反
応させることによりTiB2を生成、晶出させ、TiB2
が分散した鋼を得た。このときの冷却速度は、鋳型の場
合は約10K/分程度、水冷鋳型の場合は40K/分程
度とした。 【0031】 【表1】 【0032】その後、熱間鍛造により直径20mmの丸
棒に加工した後、各々の試験片に機械加工した。尚、サ
ンプルE、F、G、Hは、熱間鍛造時に割れが発生し、
その後の処理が出来なかった。 【0033】得られた試験片を用いて、ヤング率の測定
および引張り試験を行った。結果を表2に示す。 【0034】 【表2】 【0035】実験番号4は鋼中に分散しているTiB2
量が少ないため、ヤング率の値が低い。実験番号6はサ
ンプル中の炭素含有量が少なく、鋼材の強度向上に十分
な炭化物量が得られなかっため、引張り強度が劣ってい
た。実験番号7はSiおよびAl添加量が少なく、固溶
強化が不十分であったため引張り強度が劣っていた。 【0036】これらに比べて、本発明の規定を満たす実
験番号1〜3および5は、鋼材中に高剛性化合物が均一
に微分散できたため高いヤング率を有しており、Siお
よびAl添加による固溶強化の効果も得られているため
引張り強度にも優れていた。 【0037】 【発明の効果】本発明の鉄系高強度・高剛性鋼は、加工
性や靭延性を失うことなく剛性の大幅な向上を可能と
し、さらに優れた強度を付与することもできたため、機
械部品の小型軽量化に有用であり、その他の鉄鋼材料に
も好適に用いることができる。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 溶製法で作製された鉄または鉄合金から
    なるマトリックス中に、TiB2系化合物が5〜50v
    ol%分散されてなる高剛性鋼において、 (Ti/B)≧2.1 (1) 0.1%<C<[0.25(Ti−2.18B)+0.18]% (2) 0.3%≦Si+0.5×Al≦6% (3) を満足することを特徴とする鉄系高強度・高剛性鋼。
    〔尚、上記(1)〜(3)式において、Ti,B,C,
    Si,Alはいずれも鋼中の質量%を示す。〕
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JP2015534605A (ja) * 2012-09-14 2015-12-03 タタ、スティール、ネダーランド、テクノロジー、ベスローテン、フェンノートシャップTata Steel Nederland Technology Bv 弾性率が改良された高強度低密度粒子強化鋼およびその製造方法
JP2020012133A (ja) * 2018-07-13 2020-01-23 株式会社豊田自動織機 Fe基合金及びその製造方法並びに回転軸部材

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