JP2004010931A - 自己犠牲型金属防食剤および金属防食方法 - Google Patents

自己犠牲型金属防食剤および金属防食方法 Download PDF

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廣瀬 邦彦
Kengo Takase
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Abstract

【目的】本発明の課題は、無公害かつ優れた防食性および導電性を示す金属防食膜を提供することにある。
【解決手段】400℃以下で溶融する低融点金属粉末と、フラックス剤と、界面活性剤と、増粘剤とを含有するアルコール溶液に、被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属の粉末の一種または二種以上とを分散せしめて処理液とし、該処理液を該被処理金属表面に付着させて加熱処理することにより該低融点金属粉末を溶融させ、該低融点金属粉末溶融物を接着剤として該被処理金属表面に付着せしめる。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は特に鋼鉄、鋳鉄等の鉄系金属表面を防食処理するための自己犠牲型金属防食剤、および該金属防食剤を使用した金属防食方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の金属防食剤としては、被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属粉末、例えば被処理金属が鉄系金属の場合には亜鉛またはアルミニウムの粉末と、6価クロム酸等の6価クロム源と、金属酸化物や金属水酸化物のようなPH調整剤と、オキソヒドロキシ低分子エーテルのような還元性有機化合物と、水性溶剤とからなるものが提供されている。
上記金属防食剤を被処理金属表面に付着させ加熱処理すると、還元性有機化合物によって6価クロム源からの6価クロムが3価クロムに還元され、該3価クロムが該被処理金属表面に沈着し、このようにして該被処理金属表面に沈着した3価クロムが該金属粉末に対してバインダーとして作用し、該金属粉末を該被処理金属表面に接着して金属防食膜が形成される。
しかしながら上記金属防食剤は6価クロムを含むので環境汚染の問題がある。
【0003】
最近6価クロム源に代えて環境汚染の心配のない合成樹脂バインダーを使用した金属防食剤が提供されている。例えば特許第3259976号公報には取扱い容易な水性溶剤中に被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属粉末を分散させ、バインダーとして6価クロムに代えて水溶性合成樹脂を添加し、更に該水性溶剤による該金属粉末の酸化を防止するために酸化防止剤を添加し、更に水溶性合成樹脂による高抵抗を解消するために通電剤を添加した金属防食剤が提供されている。
更に特開2001−303279号公報においては、水溶性防錆剤と、界面活性剤と、増粘剤とを含む水性溶剤中に被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属粉末と、バインダーとして水不溶性熱可塑性樹脂粉末とを分散させた金属防食剤が提供されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記合成樹脂をバインダーとした金属防食剤は6価クロムを含まないので環境汚染の心配はない。しかし水溶性合成樹脂をバインダーとする金属防食剤は、形成する金属防食膜の耐水性が充分でなく、また水不溶性熱可塑性樹脂粉末をバインダーとするものは、金属粉末の密な相互接触が該樹脂粉末によって妨げられ、形成する金属防食膜の導電性が低くなる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属の粉末の一種または二種以上と、400℃以下で溶融する低融点金属粉末と、フラックス剤と、界面活性剤と、増粘剤とからなる自己犠牲型金属防食剤および400℃以下で溶融する低融点金属粉末と、フラックス剤と、界面活性剤と、増粘剤とを含有するアルコール溶液に、被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属の粉末の一種または二種以上とを分散せしめて処理液とし、該処理液を該被処理金属表面に付着させて加熱処理することにより該低融点金属粉末を溶融させ、該低融点金属粉末溶融物を接着剤として該被処理金属表面に付着せしめ、接着固定する金属防食方法を提供するものである。
該被処理金属は鉄系金属であり、該金属粉末は亜鉛粉末および/またはアルミニウム粉末および/または亜鉛−アルミニウム合金粉末であることが望ましく、更に該低融点金属粉末はビスマス、カドミウム、セシウム、ガリウム、インジウム、リチウム、鉛、スズ、タリウムからなる組から選ばれた金属の一種または二種以上の金属の合金であることが望ましい。
【0006】
【作用】
本発明の金属防食剤を被処理金属表面に付着させて加熱処理すると、該金属防食剤中に含まれている低融点金属粉末が溶融してバインダーとなり、該金属防食剤中の被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属粉末を、該被処理金属表面に固着せしめる。
上記加熱処理に際しては、該金属防食剤にフラックス剤が添加されているので、該フラックス剤によって被処理金属表面が清浄化されると共に該金属粉末および該被処理金属表面が該低融点金属粉末溶融物中に溶融して合金を形成する。
例えば被処理金属が鉄系金属である場合には、該被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属の粉末としては亜鉛粉末、アルミニウム粉末、亜鉛−アルミニウム合金粉末が使用されるが、低融点金属に含まれているビスマス、カドミウム、セシウム、ガリウム、インジウム、リチウム、鉛、スズ、タリウム等の金属と上記亜鉛および/またはアルミニウムとの合金、更にそれに被処理金属の鉄が溶解した合金が形成されるが、このような合金は従来防食処理としての電気亜鉛メッキ、溶融亜鉛メッキよりも自己犠牲防食能が優れている。
更に形成された金属防食膜は被処理金属表面に非常に良好な密着性を有し、かつ優れた導電性を示す。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明を以下に詳細に説明する。
〔金属粉末〕
本発明において使用される金属粉末としては、被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属の粉末であって、被処理金属が例えば鉄系金属である場合は、亜鉛、アルミニウム、亜鉛−アルミニウム合金等の粉末が例示される。該金属粉末は望ましくは純度99.0質量%以上、更に望ましくは純度99.5質量%以上である。また粉末形状はフレーク状であることが望ましい。そして亜鉛の場合には、該フレークの厚みは3μm 以下、直径10μm 以下、更に望ましくは厚みは0.5μm 以下、直径7μm 以下であり、アルミニウムの場合には該フレークの厚みは1μm 以下、直径10μm 以下、更に望ましくは厚みは0.5μm 以下、直径7μm 以下であり、いずれの金属粉末の場合も厚みは薄ければ薄い方が望ましい。
【0008】
該金属粉末の表面が酸化被膜で覆われていると防食能および接着能において不都合であるため、該金属粉末の表面が出来る限り酸化被膜で覆われないように高級脂肪酸、高級脂肪族アルコール、高融点ワックス、高融点パラフィン等の処理剤で表面を覆わなければならない。
該金属粉末表面をこれら処理剤で処理するには、これら処理剤をケロシン、ミネラルスピリット、ミネラルターペント、無水低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の溶剤に溶解させ、該溶液中に該金属粉末を浸漬したり、該溶液を該金属粉末に噴霧混合する。
【0009】
防食能を有する金属粉末として亜鉛粉末、アルミニウム粉末、亜鉛−アルミニウム合金粉末が単独で使用されるより亜鉛粉末とアルミニウム粉末、亜鉛粉末と亜鉛−アルミニウム合金粉末、亜鉛−アルミニウム合金粉末のように併用する場合の方が自己犠牲型防食性が良く、亜鉛粉末とアルミニウム粉末とを併用する表面処理によって、イオン化傾向がアルミニウムより小さくかつ比重の重い亜鉛粉末が下層に配され、アルミニウム粉末が上層に配され易くなって望ましい自己犠牲型防食性が付与される。
【0010】
上記被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属の粉末は本発明の金属防食剤中に通常1〜70質量%、望ましくは5〜40質量%添加される。自己犠牲型防食性が重要な場合は、上記したように亜鉛粉末とアルミニウム粉末とを併用し、この場合には亜鉛粉末はアルミニウム粉末の倍以上を添加する。
亜鉛粉末とアルミニウム粉末とを併用する場合は亜鉛粉末の添加量は1〜40質量%、望ましくは5〜35質量%、アルミニウム粉末の添加量は1〜25質量%、望ましくは2〜15質量%の範囲に設定される。
亜鉛−アルミニウム合金粉末を単独で使用する場合は1〜40質量%、望ましくは5〜30質量%、亜鉛粉末と亜鉛−アルミニウム合金粉末とを併用する場合は亜鉛粉末の添加量は1〜40質量%、望ましくは5〜30質量%、亜鉛−アルミニウム合金粉末の添加量は1〜40質量%、望ましくは5〜30質量%の範囲に設定される。
【0011】
〔低融点金属粉末〕
本発明において使用される低融点の金属粉末は、上記被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属の粉末に対するバインダーとなるものであり、該低融点金属粉末の粒子の形状としては球状よりもフレーク状の方が良い。また当然該被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属粉末の融点より低い金属粉末を使用しなければならない。
本発明において使用される低融点の金属粉末は、ビスマス、カドミウム、セシウム、ガリウム、インジウム、リチウム、鉛、スズ、タリウム等を挙げることができる。しかし公害問題上カドミウム、鉛を使用することは望ましいものではない。該低融点金属粉末の純度は望ましくは99.0質量%以上、更に望ましくは99.5質量%以上である。該低融点金属粉末の形状がフレークである場合、該フレークの厚みは2μm 以下、直径10μm 以下、更に望ましくは厚みは0.5μm 以下、直径7μm 以下であり、いずれの低融点金属粉末の場合もフレークの厚みは薄ければ薄い方が望ましい。更に該低融点金属粉末の比重は該被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属の粉末の比重に近いものを選択することが望ましい。
【0012】
上記被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属の粉末と、上記低融点金属粉末との割合は本発明の金属防食剤中に通常1:0.1〜8:0.1質量部、望ましくは1:0.5〜4:0.1質量部の割合で含まれるように設定する。
【0013】
〔フラックス剤〕
本発明で使用されるフラックス剤は、被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属の粉末の融点以下の温度で、被処理金属表面の油分と金属酸化被膜を除去し、かつ該被処理金属と該被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属の粉末の酸化を防ぎ、更に該金属粉末および被処理金属の該低融点金属粉末溶融物への溶解を促進するものであり、したがって本発明の金属防食剤において、最も重要な役目を果たす成分であると云える。
【0014】
該フラックス剤は大別して無機系と有機系およびその混合物に分類されるが、無機系および無機−有機混合物はフラックス剤の残渣が最終的に被処理金属表面上に残るため、洗浄して金属表面から除去しなければならない。しかし有機系フラックス剤は処理後の被処理金属表面上に殆ど残らないと云う利点がある。
したがって本発明に使用されるフラックス剤は有機系が望ましい。上記有機系フラックス剤としては、例えば蟻酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ベラルゴン酸、カプリン酸、シウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グリコール酸、乳酸、ブドウ酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、マンデル酸、ナフトエ酸、アビエチン酸、ロジン等を挙げることが出来る。
上記有機系フラックス剤は一般に混合して使用されるが、単独で使用することも出来る。
該有機系フラックス剤の本発明の金属防食剤中に添加される量は、本発明において使用される低融点金属粉末の量によって左右されるが、一般には1〜60質量%で、更に好ましい添加量は5〜30質量%である。
【0015】
〔溶剤〕
本発明に使用されるフラックス剤は、一般に一価アルコール類および/または多価アルコール類を溶媒として溶解した溶液として使用される。本発明において使用される一価アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、セチルアルコール、シクロヘキサノール等を挙げることができ、また多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,2−ブタンジオール等を挙げることができる。更にメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチレングリコール−モノ−t−ブチルエーテル、ジアセトンアルコール等も使用される。
該有機溶剤の添加量は、通常本発明の金属防食剤中3〜60質量%、望ましくは10〜50質量%である。
【0016】
〔増粘剤〕
本発明においては、本発明の金属防食剤の被処理金属表面に対する塗布層の厚みを確保するために、増粘剤を添加しなければならない。本発明において用いられる増粘剤としては、処理温度において変色せず、形成される金属防食膜表面に折出あるいは浮上する性質を有するものが選択される。このような増粘剤としては、例えば高分子ポリエチレン重合物、高分子ポリプロピレン重合物、高分子ポリエチレン−プロピレン共重合物、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルローズ、ポリアクリル酸塩類等を挙げることができる。
該増粘剤の添加量は、通常0.01〜5質量%、望ましくは0.1〜2質量%である。
【0017】
〔処理方法〕
本発明の金属防食剤においては、使用に際して被処理金属よりもイオン化傾向が大きな金属の粉末、低融点金属粉末、フラックス剤、フラックス剤を溶解する溶剤、増粘剤を配合しよく混合攪拌して該金属粉末および低融点金属粉末を分散させて処理液を調整するが、該処理液の粘度は通常岩田式フォードカップ♯4で40±5秒の間に調整される。該処理液を用いて被処理金属を処理するには、まず該金属表面をショットブラスト、サンドブラスト等によって研磨し、更に所望なればn−ヘキサン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン等の有機溶剤で洗浄し乾燥後上記処理液を浸漬、スプレー、ロールコーター、カーテンフローコーター、回転ブラシコーター、静電塗装等によって該金属表面に塗布する。処理液塗布後は室温に放置し、必要あれば空気を送って乾燥しそして240℃〜250℃で少なくとも10分加熱処理を行う。上記加熱処理によって、該金属表面には本発明の金属防食剤の自己犠牲型金属防食被膜が形成される。この金属防食被膜上には、電気亜鉛メッキで施される6価クロム処理の代りに有機被膜処理が施される。この金属防食被膜上には所望なれば更に塗料によって塗装が施されてもよい。
【0018】
上記有機被膜処理はオーバーコート剤を塗布することによって行われる。該オーバーコート剤としては、油溶性および水溶性の樹脂を使用する。油溶性および水溶性樹脂は例えば、フェノール樹脂、ケトン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリ塩化ビニル、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体、アクリロニトリル−エチレン・プロピレン・ジエンゴム−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレン−プロピレン共重合体、ポリパーフルオロアルコキシアルカン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリ三フッ化塩化エチレン、ポリフッ化ビニリデン樹脂、三フッ化塩化エチレン−エチレン共重合体、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリパラビニルフェノール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリブタジエン、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、キシレン樹脂、シアルリフタレート樹脂、ジアリルイソフタレート樹脂、アルキルレゾルシノール系樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ガラス繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化熱可塑性プラスチック、シリコーン樹脂、シリコーンと樹脂とを特殊結合したもの、変性シリコーン樹脂等が挙げられ、これらの樹脂を1種ないし2種以上混合した樹脂を使用塗布する。その割合は、樹脂分として10〜100質量%、更に好ましくは20〜80質量%である。
【0019】
〔自己修復処理剤〕
更に上記金属防食被膜表面には自己犠牲防食性の自己修復剤を塗布することによって自己修復処理が施されることが望ましい。上記自己修復剤としては、高分子量の熱可塑性ウレタン樹脂の水性分散液が望ましい。該熱可塑性ウレタン樹脂の水性分散液としては、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル/ポリエステル系ポリウレタンを界面活性剤によって水性溶媒に分散させたもの、親水基を有するポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル/ポリエステル系ポリウレタンを界面活性剤を使用することなく、水性溶媒に分散させたものがある。
上記熱可塑性ウレタン樹脂水性分散液以外に、溶剤系のウレタン−アクリレート樹脂、ポリウレタン−シリカハイブリット樹脂、ロジン変性樹脂、変性ポリウレタン樹脂と有機ポリイソシアネート混合樹脂等を挙げることができる。上記のような自己修復剤による自己修復処理によって、本発明の金属防食被膜に亜鉛クロメート処理被膜と同様かそれ以上の自己修復性を与えることが出来る。
【0020】
〔実施例1〕
下記の材料を充分攪拌混合する。
Figure 2004010931
【0021】
〔調製方法〕
亜鉛粉末と、スズ粉末と、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、ロジン系フラックス剤とを攪拌混合し、その中にポリアクリル樹脂を加え24時間攪拌して粘度のある処理液を調整した。この液を200メッシュの篩で濾過し、処理液Aとする。処理液Aの粘度は岩田式フォードカップ♯4で約25秒であった。
【0022】
〔実施例2〕
下記の処方を実施例1と同様に攪拌混合する。
Figure 2004010931
【0023】
〔調製方法〕
亜鉛−アルミニウム合金粉末と、スズ粉末と、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、ロジン系フラックス剤とを攪拌混合し、その中にヒドロキシプロピルセルローズを加えて24時間攪拌して、粘度ある処理液を調整した。この液を200メッシュの篩で濾過し、処理液Bとする。該処理液Bの粘度は岩田式フォードカップ♯4で約43秒であった。
【0024】
〔実施例3〕
下記の処方を実施例1と同様に攪拌混合する。
Figure 2004010931
【0025】
〔調製方法〕
亜鉛−アルミニウム合金粉末と、スズ粉末と、イソプロピルアルコール、ロジン系フラックス剤とを攪拌混合し、その中にヒドロキシエチルセルローズを加えて24時間攪拌して、粘度ある処理液を調整した。この液を200メッシュの篩で濾過し、処理液Cとする。該処理液Cの粘度は岩田式フォードカップ♯4で約40秒であった。
【0026】
〔実施例4、自己修復剤イの調製〕
下記の材料を攪拌混合して自己修復剤イを調製した。
Figure 2004010931
【0027】
〔実施例5、自己修復剤ロの調製〕
下記の材料を攪拌混合して自己修復剤ロを調製した。
Figure 2004010931
【0028】
1.試験試料
(1)鋼板:SS−41鋼板(50×100×0.5mm)を使用した。
該鋼板はn−ヘキサンで洗浄し、乾燥後ショットブラストによって 表面を研磨し、次いでn−ヘキサン→エーテルで洗浄し、乾燥した。(2)ねじ:長さ75mm、径2mm、頭部8mm、ねじ部50mmのプラスねじを使用した。該ねじはn−ヘキサンで洗浄し、乾燥後ショットブラストによっ
て表面を研磨し、次いでn−ヘキサンで洗浄し、乾燥した。
【0029】
2.塗布および熱処理
(1)鋼板
上記鋼板に上記処理液A,B,Cを加熱処理後に膜厚が10〜14μm になるように塗布し、1分間風乾後150〜160℃の乾燥機に入れ5分間予備
加熱乾燥し、その後250℃で10分間加熱処理を行った。
(2)ねじ
上記ねじを上記処理液A,B,Cの各々に浸漬し、引き上げた後、脱水機(カゴの径200mm、深さ200mm、回転速度270回/分)にて、正回転3秒、逆回転3秒で脱水処理を行い、1分間風乾後150〜160℃で5分間予備加熱乾燥した後、250℃で10分間加熱処理を行った。この処理は2
回繰返された。
【0030】
〔試験結果〕
1.鋼板の塗膜の外観
塗膜の外観を目視観察した結果は以下の通りであった。
(1)処理液Aによる処理試料:銀鼠色の美しいなめらかな表面をした塗膜である

(2)処理液Bによる処理試料:銀鼠色の美しいなめらかな表面をした塗膜である

(3)処理液Cによる処理試料:やゝ黄味がかった銀鼠色の美しいなめらかな表面
をした塗膜である。
【0031】
2.ねじの塗膜の外観
塗膜の外観を目視観察した結果は以下の通りであった。
(1)処理液Aによる処理試料:銀鼠色の美しいなめらかな表面をした塗膜である

(2)処理液Bによる処理試料:銀鼠色の美しいなめらかな表面をした塗膜である

(3)処理液Cによる処理試料:銀鼠色の暖かみのあるなめらかな表面をした塗膜
である。
【0032】
3.塗膜の密着性
(1)試験方法
鋼板:処理液A,B,Cで処理した鋼板について、ゴバン目試験を行った。
ねじ:処理液A,B,Cで処理したねじの頭部を手の指先で強く3回摩擦し、
指先に付着物が存在するかどうかを調べる。
【0033】
(2)試験結果
上記試験結果を表1に示す。
【表1】
Figure 2004010931
【0034】
表1によれば上記処理液A,B,Cで処理した鋼板およびねじにおける金属防食被膜の密着性は優れたものであった。
【0035】
4.塩水噴霧試験
(1)鋼板
上記防錆処理した鋼板およびねじについて、JIS−Z−23717に準じて塩水噴霧試験を行った。なお鋼板はクロスに切れ目を入れ、ねじは5本1組
として行った。その結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
Figure 2004010931
比較例の鋼板:通常の電気亜鉛メッキ処理した鋼板であり、膜厚は12.5μ
m のユニクロメート処理品である。
比較例のねじ:鋼板と同様のユニクロメート処理品であり、頭部の膜厚は12μm である。
評価
○:変化なし
△1):5本中1本に錆発生
△2):5本中3本に錆発生
×1):塗膜面のクロスの切れ目に錆発生
×2):塗膜面のクロスの切れ目に錆はないが、表面に2〜3個所に錆発生
×3):塗膜面のクロスの切れ目に錆はないが、表面の1/2以上に錆発生
【0037】
表2によれば本発明の金属防食剤である処理液A,B,Cによって処理された試料は実用性のある防食性を示している。特にCで処理された試料は優れた自己犠牲型防食性を示し、従来の亜鉛メッキ物と比較しても充分優れた自己犠牲型防食性を発揮していることが示された。
【0038】
〔電気抵抗測定〕
本発明の金属防食剤である処理液A,B,Cによって、ガラス板上に18〜21μmの塗膜を形成させ、その電気抵抗値をHIOKI製KITHITester3021 にてテスター針300g 圧で測定した。
また、比較試料として特開2001−303279号に準じて調製した塗膜形成試料の電気抵抗値も同一テスターで測定した。
【0039】
〔測定結果〕
処理液Aによる塗膜:50Ω/cm
処理液Bによる塗膜:43Ω/cm
処理液Cによる塗膜:30Ω/cm
比較試料の塗膜:通電性無し(ガラス板上)
【0040】
上記測定結果より本発明の金属防食剤による処理液A,B,Cによって処理された試料は、比較試料では鉄系試料上の塗膜は通電性は有するが、ガラス板上の塗膜は通電性が認められなかったのに比べ、はるかに優れた通電性をガラス板上においても認めることが出来た。
【0041】
〔自己修復処理試験〕
本発明の金属防食剤である処理液Cによって処理した鋼板を更に上記自己修復剤イまたは自己修復剤ロにそれぞれ浸漬して引上げた後風乾し、その後150〜160℃、10分間の加熱乾燥を行った。処理後塗膜面にクロスの切れ目を入れ、5質量%食塩水に浸漬し、クロス切れ目個所の赤錆発生の有無を調べた。
試験の結果を下記する。
【0042】
Figure 2004010931
上記の結果により、自己修復剤イ、ロによって処理すれば、金属防食被膜に亜鉛クロメート処理膜と同等あるいはそれ以上の自己修復性を持つことが判明した。
【0043】
【発明の効果】
本発明の金属防食剤による金属防食被膜には6価クロム等の有害物質は一切含まれず、更に本発明によって処理した金属は廃棄処理後、リサイクルしても有害成分あるいは有害成分を生成するような成分は含まれておらず、したがって本発明の金属防食剤を使用する金属防食処理方法は、地球環境に優しい省資源、省エネルギー、リサイクルし易い処理方法であり、かつ電気亜鉛メッキ、溶融亜鉛メッキ、衝撃亜鉛メッキ等に比しても優れた自己犠牲型防食性を有し、また導電性に優れた金属防食被膜を提供することが出来る。

Claims (6)

  1. 被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属の粉末の一種または二種以上と、400℃以下で溶融する低融点金属粉末と、フラックス剤と、界面活性剤と、増粘剤とからなることを特徴とする自己犠牲型金属防食剤
  2. 該被処理金属は鉄系金属であり、該金属粉末は亜鉛粉末および/またはアルミニウム粉末および/または亜鉛−アルミニウム合金粉末である請求項1に記載の自己犠牲型金属防食剤
  3. 該低融点金属粉末はビスマス、カドミウム、セシウム、ガリウム、インジウム、リチウム、鉛、スズ、タリウムからなる組から選ばれた金属の一種または二種以上の金属の合金である請求項1または2に記載の自己犠牲型金属防食剤
  4. 400℃以下で溶融する低融点金属粉末と、フラックス剤と、界面活性剤と、増粘剤とを含有するアルコール溶液に、被処理金属よりもイオン化傾向の大きな金属の粉末の一種または二種以上とを分散せしめて処理液とし、該処理液を該被処理金属表面に付着させて加熱処理することにより該低融点金属粉末を溶融させ、該低融点金属粉末溶融物を接着剤として該被処理金属表面に付着せしめ、接着固定することを特徴とする金属防食方法
  5. 該被処理金属は鉄系金属であり、該金属粉末は亜鉛粉末および/またはアルミニウム粉末および/または亜鉛−アルミニウム合金粉末である請求項4に記載の金属防食方法
  6. 該低融点金属粉末はビスマス、カドミウム、セシウム、ガリウム、インジウム、リチウム、鉛、スズ、タリウムからなる組から選ばれた金属の一種または二種以上の金属の合金である請求項4または5に記載の金属防食方法
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005238001A (ja) * 2004-02-24 2005-09-08 Hoden Seimitsu Kako Kenkyusho Ltd 防錆塗装した金属製品
JP2006348147A (ja) * 2005-06-15 2006-12-28 Kunihiko Hirose 異種金属含有亜鉛フレークの製造方法およびそれを用いた自己犠牲型防錆防食剤の製造方法

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