JP2004014272A - 燃料電池用セパレータ - Google Patents

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宮川 倫成
Ryoichi Yamamoto
山本 良一
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Abstract

【課題】本発明は、集電性能と成形性、強度および耐食性の両方を満足する燃料電池、特に固体高分子電解質型燃料電池用のセパレータを提供することを目的とする。
【解決手段】金属基板11の少なくとも片面に、樹脂と導電性充填剤を混合した樹脂導電層12を設けた燃料電池用セパレータであって、前記樹脂導電層は、(a)樹脂と、(b)体積当たりの含有量が前記金属基板側で高く、表面側で低くなるように連続的に変化している第1の導電性充填剤とを有することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【選択図】  図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は燃料電池用セパレータに係り、詳しくは単電池を複数積層して構成する燃料電池において隣接する単電池間に設けられ、電極との間で燃料ガス流路及び酸化ガス流路を形成すると共に燃料ガスと酸化ガスとを隔てる燃料電池用セパレータであって、特に成形性、強度、耐食性に優れた燃料電池用セパレータに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池、特に固体高分子型燃料電池を構成するセパレータは、固体電解質膜を両側から挟持する各電極に接触して配置されて、該電極との間に燃料ガス、酸化剤ガス等の供給ガス流路を形成するため、セパレータの電極に対向する面にはガス流路を形成するための多数の突起部、溝部等が形成される。
【0003】
また、燃料電池の単電池の起電力は、1V以下と低く、通常、複数個の単電池をセパレータを介して積層して構成される。そのため、セパレータは、電極と接触して電流を導出する役割を果たすため、集電性能に優れたものが要求される。
【0004】
従来、一般に燃料電池用セパレータとしては、基材として強度、導電性に優れた緻密カーボングラファイト、またはステンレス鋼(SUS)、チタン、アルミニウム等の金属材料で構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、緻密カーボングラファイトにて構成されるセパレータでは、電気伝導性が高く、かつ長期間の使用によっても高い集電性能が維持されるが、非常に脆い材料であることからセパレータの表面に多数の突起部や溝部を形成すべく切削加工等の機械加工を施すことは容易ではなく量産が困難であるという問題がある。
【0006】
一方、上記金属材料にて構成されるセパレータにおいては、緻密カーボングラファイトに比較して強度、延性に優れていることからガス流路を形成するための多数の突起部、溝部等の形成はプレス加工が可能であって量産も容易であるという利点がある。しかし、比較的低温で動作する固体高分子型燃料電池であっても、70〜90℃の温度における飽和に近い水蒸気にさらされるため、金属材料を用いたセパレータでは、その表面に腐食による酸化膜が生成され易く、その結果、生成された酸化膜と電極との接触抵抗が大きくなり、セパレータの集電性能が低下する問題がある。
【0007】
そこで、セパレータの構成材料として加工性に優れた金属材料の表面に、耐食性に優れた金等の貴金属材料をコーティングした材料が検討されている。しかしながら、このような材料は極めて高価なために汎用性に欠けるという問題がある。
【0008】
これらの問題を解決するために、本出願人は、金属基板の表面に導電性フィラーを混合した樹脂層を設けたセパレータを開示した(特開2002−15750号公報)。このセパレータでは、電気伝導性が高く、集電性能に優れていると同時に、成形性、強度および耐食性に優れている。
【0009】
本発明は、さらに性能を向上させるためになされたものであり、集電性能と成形性、強度および耐食性の両方を満足する燃料電池、特に固体高分子電解質型燃料電池用のセパレータを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の事項に関するものである。
【0011】
1. 金属基板の少なくとも片面に、樹脂導電層を設けた燃料電池用セパレータであって、
前記樹脂導電層は、(a)樹脂と、(b)体積当たりの含有量が前記金属基板側で高く、表面側で低くなるように連続的に変化している第1の導電性充填剤とを有することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【0012】
2. 第2の導電性充填剤を含有し、少なくとも前記樹脂導電層の表面より体積低効率の低い低電気抵抗層が、前記樹脂導電層の表面に設けられていることを特徴とする上記1記載の燃料電池用セパレータ。
【0013】
3. 前記樹脂導電性層は、層内に均一に混合された第3の導電性充填剤をさらに有することを特徴とする上記1または2記載の燃料電池用セパレータ。
【0014】
4. 前記第1の導電性充填剤は、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物および金属からなる群より選ばれることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
【0015】
5. 前記第1の導電性充填剤が、炭化タングステンであることを特徴とする上記4記載の燃料電池用セパレータ。
【0016】
6. 前記第2の導電性充填剤は、炭素系材料、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物および金属からなる群より選ばれることを特徴とする上記2〜5のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
【0017】
7. 前記第2の導電性充填剤が、炭化タングステン、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーからなる群より選ばれることを特徴とする上記6記載の燃料電池用セパレータ。
【0018】
8. 前記第3の導電性充填剤は、炭素系材料から選ばれることを特徴とする上記3〜7のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
【0019】
9. 前記第3の導電性充填剤は、カーボンナノチューブ及び/又はカーボンナノファイバーであることを特徴とする上記8記載の燃料電池用セパレータ。
【0020】
10. 前記第1の導電性充填剤の含有量が、前記金属基板との界面付近での含有量:表面付近での含有量の比が、6:4から9:1であることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
【0021】
11. 前記樹脂導電層の体積抵抗率が、層内で最も大きなところで1.0Ω・cm以下であることを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
【0022】
12. 金属基板の少なくとも片面に、樹脂導電層を設けた燃料電池用セパレータの製造方法であって、
樹脂溶液中にこの樹脂溶液より密度が大きい第1の導電性充填剤が分散されているスラリーを基材上に塗布し、第1の導電性充填剤の少なくとも一部が沈降できるだけの時間をかけて溶液中の溶媒を乾燥除去して前記樹脂導電層を形成する工程を有する燃料電池用セパレータの製造方法。
【0023】
13. 金属基板の少なくとも片面に、樹脂導電層を設けた燃料電池用セパレータの製造方法であって、
樹脂溶液中に、この樹脂溶液より密度が大きい第1の導電性充填剤および次の溶媒の乾燥除去操作中に沈降が実質的に生じない密度を有する第3の導電性充填剤が分散されているスラリーを基材上に塗布し、第1の導電性充填剤の少なくとも一部が沈降できるだけの時間であってかつ第3の導電性充填剤が実質的に沈降しない時間をかけて溶液中の溶媒を乾燥除去して前記樹脂導電層を形成する工程を有する燃料電池用セパレータの製造方法。
【0024】
14. 前記第1の導電性充填剤は、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物および金属からなる群より選ばれることを特徴とする上記12または13記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【0025】
15. 前記第3の導電性充填剤は、炭素系材料から選ばれることを特徴とする上記13または14記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【0026】
16. 炭素系材料、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物および金属からなる群より選ばれる第2の導電性充填剤を含有し、少なくとも前記樹脂導電層の表面より体積低効率の低い低電気抵抗層を、前記樹脂導電層の表面に積層する工程をさらに有する上記12〜15のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1は、多数の単電池を積層した積層型燃料電池のセパレータ付近を拡大した模式図である。単電池1a、単電池1bはそれぞれ、固体高分子電解質膜2a、2b、それを挟持する電極3a、3bを有し、単電池1aおよび単電池1bの間がセパレータ10で隔てられていると同時に、電極3aに接して単電池1a側でガス流路4aを形成し、また電極3bに接して単電池1b側でガス流路4bを形成している。この形態のセパレータ10は、金属基板11の両面に樹脂導電層12を設けたものであり、電極3aおよび電極3bの両方に接していることから、単電池1aと単電池1bを直列に接続している。
【0028】
本発明のセパレータで使用する金属基板としては、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、鋼からなる薄板が好適に使用でき、厚みは0.03mm〜1.5mmの範囲が望ましい。
【0029】
金属基板表面には樹脂層との接着性を改良する目的でエッチング層や研磨層などの表面処理層を設けてもよく、表面処理層の厚さは0.001μm〜30μmが望ましい。また、金属基板表面をシランカップリング剤等でプライマー処理してもよい。
【0030】
樹脂導電層に使用される樹脂は、耐薬品性からフッ素樹脂またはフッ素ゴムが好ましい。具体的には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、EPE(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ECTFE(クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVF(ポリビニルフルオライド)、THV(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体)、VDF−HFP(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、TFE−P(フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体)、含フッ素シリコーン系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、含フッ素フォスファゼン系ゴム、および含フッ素熱可塑性エラストマーを挙げることができる。これらのフッ素樹脂またはフッ素ゴムは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
特に、溶媒への分散および溶解性等の点からフッ化ビニリデンを含むPVDF、THV、VDF−HFP、TFE−P、PTFE、FEP等が好ましい。
【0032】
本発明で用いられる第1〜第3の導電性充填剤は、互いに機能が異なっており、場合によっては同一の種類であっても異なる種類でもよい。但し、第1の導電性充填剤と第3の導電性充填剤は、異なるものが選ばれるのが好ましい。詳細については後述するが、第1〜第3の導電性充填剤は次のような導電性充填剤から選ばれるものである。即ち、導電性充填剤は、導電性が高く、耐腐食性に優れるものが好ましく用いられ、例えば、炭素系材料、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物および金属等の導電性材料の粉末または繊維の中から使用環境に合わせて用いることができる。
【0033】
炭素系材料としては、粉末状のものとして、黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛)、カーボンブラック、膨張黒鉛が挙げられ、繊維状のものとしてはカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよび炭素繊維を挙げることができる。尚、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーは、繊維径が0.001〜0.5μm、好ましくは0.003〜0.2μmであり、繊維長が1〜100μm、好ましくは1〜30μmが導電性の点から好ましい。
【0034】
金属炭化物としては、炭化タングステン、炭化ケイ素、炭化タンタル、炭化チタン、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化バナジウム、炭化クロムおよび炭化ハフニウム等の粉末および繊維を挙げることができる。この中でも、炭化タングステン、炭化チタン、炭化ニオブ、炭化クロム等の粉末および繊維が好ましい。
【0035】
金属酸化物としては、酸化チタン、酸化ルテニウム、酸化インジウム、酸化スズおよび酸化亜鉛等の粉末および繊維を挙げることができる。この中でも、酸化スズ、酸化インジウム等の粉末および繊維が好ましい。
【0036】
金属窒化物としては、窒化クロム、窒化アルミニウム、窒化モリブデン、窒化ジルコニウム、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ガリウム、窒化ニオブ、窒化バナジウムおよび窒化ホウ素等の粉末および繊維を挙げることができる。この中でも、窒化クロム、窒化モリブデンの粉末および繊維が好ましい。
【0037】
金属としては、粉末状のものとしてチタン、ニッケル、スズ、銅、アルミニウム、亜鉛、銀、タンタルおよびニオブ等の粉末が挙げられ、繊維としては鉄繊維、銅繊維およびステンレス繊維等を挙げることができる。
【0038】
導電性充填剤は1種類だけを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、カーボンナノチューブおよび/またはカーボンナノファイバーとその他の炭素系材料とを混合して用いることができる。
【0039】
以上の導電性充填剤の中でも、特に導電性が高く、70〜90℃の温度で飽和に近い水蒸気にさらされても安定で、抵抗の変化の少ないものが好ましく、炭素系材料、金属炭化物および金属窒化物が好ましく、特に炭素系材料および金属炭化物が好ましい。具体的には、特にカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーのどちらか一方またはその両方の混合物、炭化タングステン、炭化タングステンとカーボンナノチューブおよび/またはカーボンナノファイバーとの組み合わせが好ましい。
【0040】
導電性充填剤は、粉末の場合は、通常、重量平均粒径(レーザー散乱による測定)が20μm以下、好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下であり、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上である。また、繊維状の場合は、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーについては前述の通りであり、その他の材料の繊維のときは、繊維径が50μm以下、好ましくは20μm以下であり、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、繊維長が1〜10,000μm、好ましくは5〜1,000μmが導電性の点から好ましい。
【0041】
樹脂導電層の厚さは、通常5〜300μm、好ましくは10〜150μmである。
【0042】
以下、本発明の各態様を図面を参照しながら説明する。以下の第1〜第4の形態では、最終的にセパレータに加工する前の段階である、金属基板と樹脂導電層の複合板の構成を示す。尚、セパレータは終端の単電池に用いられる場合などでは、金属基板の片面にのみ樹脂導電層が設けられる場合もあるので、以下の例においても金属基板の片面の層構造のみを示す。
【0043】
<第1の形態>
図2には、金属基板11とその表面に樹脂導電層12を設けた複合板の層構造の1例を示す。樹脂導電層12は、第1の導電性充填剤を含有し、しかも体積当たりの含有量が、金属基板11の界面側で多く、表面側で少なくなるように第1の導電性充填剤の含有量が変化している。
【0044】
この形態では、樹脂導電層の体積抵抗が金属基板との界面で小さくなるので、金属基板との間の界面抵抗が小さく集電性能に優れていると共に、表面側では樹脂成分が多く強度を保つことができるので成形性がよく樹脂導電層の薄膜化が可能である。
【0045】
第1の導電性充填剤は、前述の導電性充填剤の中でも、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物および金属からなる群より選ばれることが好ましい。各材料の中で好ましい具体的なものは前述のとおりである。特に、金属炭化物および金属窒化物が好ましく、金属炭化物については、炭化タングステン、炭化チタン、炭化ニオブ、炭化クロムの粉末または繊維が好ましく、金属窒化物については、窒化クロム、窒化モリブデンの粉末または繊維が好ましい。
【0046】
第1の導電性充填剤は、粉末の場合は、通常、重量平均粒径(レーザー散乱による測定)が20μm以下、好ましくは15μm以下であり、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上である。繊維のときは、繊維径が50μm以下、好ましくは20μm以下であり、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、繊維長が1〜10,000μm、好ましくは5〜1,000μmが導電性の点から好ましい。
【0047】
第1の導電性充填剤の含量は、樹脂との合計に対して、20体積%〜80体積%、好ましくは20体積%〜40体積%である。そして、前記第1の導電性充填剤が、(金属基板との界面付近での含有量):(表面付近での含有量)の比が、6:4から9:1の範囲、特に7:3から9:1の範囲となるように分布させることが好ましい。また、表面側から金属基板との界面までの含有率の分布は、体積含有率が単調に増加するようになっていれば特に制限はなく、後述する製造方法で製造したときに生じる分布程度であればよい。
【0048】
この結果、樹脂導電層の体積抵抗率が、金属基板側と表面側で変化するが、体積抵抗率は、層内で最も大きな表面側でも1.0Ω・cm以下(JIS K 7194による。以下、同じ。)であることが好ましく、特に0.8Ω・cm以下が好ましい。
【0049】
この形態における樹脂導電層の厚さは、通常5〜300μm、好ましくは10〜200μmである。
【0050】
この形態の複合板の好ましい製造方法の例を次に説明する。
【0051】
樹脂を分散または溶解しうる適当な溶媒中に、樹脂と第1の導電性充填剤を加えて、第1の導電性充填剤のスラリーを調製する。これを金属基板の上に塗布した後、溶媒を乾燥除去すると、基材上に樹脂導電層が形成される。ここで、第1の導電性充填剤を選択する際に、その密度が樹脂溶液の密度より大きいものを選ぶことにより、スラリー塗布後に第1の導電性充填剤が沈降し、乾燥終了までに基材との界面側で第1の導電性充填剤の含有量が大きくなり、表面側で含有量が小さくなる。界面側と表面側の含有量の勾配は、第1の導電性充填剤の密度、樹脂溶液の粘度(例えば、溶媒の量、種類によって調整)、溶媒の乾燥速度(例えば、放置時間等により調整)を変えることにより前述の範囲になるように制御することができる。
【0052】
このような溶液コート法により樹脂導電層を形成する際には、第1の導電性充填剤は樹脂溶液より密度の大きいものが選ばれ、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物および金属が、通常は使用できるが、場合によっては密度を選んで使用するのが好ましい。炭化タングステン、炭化チタン、炭化ニオブ、炭化クロム等、酸化スズ、酸化インジウム、窒化クロム、窒化モリブデン、チタン、ニッケル、スズ、銅、アルミニウム、亜鉛、銀、タンタル、ニオブ、ステンレススチールは使用可能である。
【0053】
<第2の形態>
この形態は、図3に示すように、第1の形態において、樹脂導電層12の表面に第2の導電性充填剤を含有する低電気抵抗層13が設けられている。
【0054】
第2の導電性充填剤としては、前述の導電性充填剤の中でも、炭素系材料、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物および金属からなる群より選ばれることが好ましく、フィラー自体の体積抵抗率が0.5Ω・cm以下(JIS K 7194による)のものが好ましく、特に0.1Ω・cm以下のものが好ましい。また通常は0.00001Ω・cm以上である。各材料の中で好ましい具体的なものは前述のとおりである。この中でも、炭素系材料、金属炭化物、金属窒化物が好ましく、特に炭素系材料および金属炭化物が好ましい。炭素系材料としては、粉末状のものとして、黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛)、カーボンブラック、膨張黒鉛、繊維状のものとして、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよび炭素繊維が好ましい。金属炭化物としては、炭化タングステン、炭化チタン、炭化ニオブ、炭化クロム等の粉末および繊維が好ましい。これらの中でも、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよび炭化タングステンが最も好ましい。
【0055】
第2の導電性充填剤は、粉末の場合は、通常、重量平均粒径(レーザー散乱による測定)が20μm以下、好ましくは15μm以下であり、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上である。
【0056】
また、繊維のときは、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーの場合は、前述のとおりの繊維径、繊維長が好ましく、その他の繊維の場合は、繊維径が50μm以下、好ましくは20μm以下であり、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、繊維長が1〜10,000μm、好ましくは5〜1,000μmが導電性の点から好ましい。
【0057】
低電気抵抗層の体積抵抗率に関しては、少なくとも樹脂導電層の表面より体積低効率が小さく、好ましくは0.5Ω・cm以下、さらに好ましくは0.1Ω・cm以下である。低電気抵抗層中の第2の導電性充填剤の含有量は45〜90体積%が好ましく、さらに好ましくは、60〜90体積%である。また、低電気抵抗層の厚さは、好ましくは0.1〜20μm、さらに好ましくは1〜15μmである。
【0058】
この第2の形態のセパレータは、第1の形態に従って、金属基板上に樹脂導電層を形成した積層構造を得た後に、この樹脂導電層の表面に第2の導電性充填剤を含有する低電気抵抗層を、例えば転写法により積層して製造することができる。第2の導電性充填剤を含む層の転写法は、特に制限はないが、例えば樹脂を溶解した液中に第2の導電性充填剤を分散した塗料を適当な基材フィルムにバーコータ等で塗布し溶媒を乾燥して転写シートを得、これを第1の形態の積層構造の樹脂導電層表面に転写して基材フィルムをはがす方法などが好ましい。
【0059】
また、低電気抵抗層の形成方法として埋め込み法を用いてもよい。この方法では、第1の形態に従って形成した樹脂導電層の表面に、第2の導電性充填剤を撒布(例えばスラリーを塗布・乾燥)し、熱プレスすることで、樹脂導電層の表面に第2の導電性充填剤を埋め込むことができる。
【0060】
第2の形態の積層構造では、燃料電池の電極との接触抵抗を大きく低下することができるので、集電性能が著しく向上する効果がある。
【0061】
<第3の形態>
この形態は、図4に示すように金属基板11の表面に、第1の導電性充填剤と第3の導電性充填剤を含有している樹脂導電層14が設けられた構造である。第1の導電性充填剤は、体積当たりの含有量が、金属基板11の界面側で多く、表面側で少なくなるように含有量が変化している。一方、第3の導電性充填剤は、樹脂導電層内にほぼ均一に分散混合されている。
【0062】
第1の導電性充填剤に関しては、第1の形態と同様に選択して構成することができる。
【0063】
この形態の場合、第1の導電性充填剤の含量は、樹脂との合計に対して、5体積%〜40体積%、好ましくは5体積%〜20体積%である。そして、前記第1の導電性充填剤が、(金属基板との界面付近での含有量):(表面付近での含有量)の比が、6:4から9:1の範囲、特に7:3から9:1の範囲となるように分布させることが好ましい。
【0064】
第3の導電性充填剤は、前述の導電性充填剤の中でも、炭素系材料から選ばれることが好ましい。粉末状のものとして、黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛)、カーボンブラック、膨張黒鉛が挙げられ、繊維状のものとしてはカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよび炭素繊維を挙げることができる。好ましい大きさ、形態等は、前述のとおりである。
【0065】
第3の導電性充填剤の含有量は、15体積%〜40体積%、好ましくは15体積%〜20体積%である。
【0066】
この形態では、第1の形態で説明した効果に加え、樹脂導電層全体の体積抵抗率を一様に下げ、全体の導電性を高めることができる。
【0067】
この形態のセパレータ好ましい製造方法の例を次に説明する。
【0068】
樹脂を溶解しうる適当な溶媒中に、樹脂、第1の導電性充填剤および第2の導電性充填剤を加えて、スラリーを調製し、その後は第1の形態と全く同様の工程にて製造する。ここで、第1の導電性充填剤の密度が樹脂溶液の密度より大きく、また第3の導電性充填剤の密度が樹脂溶液の密度と同程度になるように選ぶことにより、スラリー塗布後、乾燥終了までに第1の導電性充填剤は沈降し、層の厚さ方向に含有量が連続的に変化する分布で固定され、一方、第3の導電性充填剤は層中にほぼ均一な分布で固定される。
【0069】
界面側と表面側の含有量の勾配を変更する方法等は、第1の形態で説明したものと同じである。
【0070】
尚、炭素系材料は、樹脂溶媒にほぼ均一に分散することが可能で、このような溶媒コート法を用いても、塗布後の沈降を無視することができ、ほぼ均一に層内に分布させることができる。
【0071】
<第4の形態>
この形態では、図5に示すように第3の形態において、樹脂導電層14の表面に第2の導電性充填剤を含有する低電気抵抗層13を有している。即ち、樹脂導電層内で、第1の導電性充填剤は金属基板11側で含有量が高く、表面側で含有量が低く、第3の導電性充填剤が層内にほぼ均一に分散混合されており、さらに樹脂導電層14の表面に第2の導電性充填剤を含有する低電気抵抗層13が設けられている。
【0072】
従って、低電気抵抗層13を形成する前の構成は第3の形態と全く同一であり、低電気抵抗層13の構造は第2の形態で説明したものと同じである。この形態は、第3の形態の積層構造を形成した後、第2の形態で説明した方法で第2の導電性充填剤を含有する低電気抵抗層を形成することで製造することができる。
【0073】
この構成では、第3の形態で説明した効果に加えて、燃料電池の電極との接触抵抗をさらに大きく低下することができるので、集電性能が著しく向上する効果がある。
【0074】
以上、第1〜第4の形態で説明した複合板を形成した後、プレス加工により突起部や溝部を形成して、所定の形状のセパレータとする方法が生産性等の点から好ましい。
【0075】
【実施例】
以下、実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
[実施例1]<第1の形態複合板の作製>
フッ素樹脂(「住友スリーエム(株)」製 THV220G 比重2)10重量%をMIBK(メチルイソブチルケトン)90重量%に溶解した後、第1の導電性充填剤としてタングステンカーバード(「(株)アライドマテリアル」製 WC20 比重15 平均粒径2.0μm)を導電性充填剤と上記フッ素樹脂との割合が20体積%対80体積%になるように混合し、スラリーを得た。
【0077】
金属基板はSUS304(日本金属(株)製:厚み0.3mm)をブラスト研磨法にて0.1μmの表面研磨層を形成したものを使用し、プライマーとしてシランカップリング剤(「GE東芝シリコーン(株)」製 TSL8331)3%エタノール溶液を#10バーコーター(「松尾産業製」)で上記表面研磨したSUS304の両面に塗布後、100℃で10分間乾燥した。
【0078】
得られたスラリーを、上記プライマー処理された金属基板の片面上にバーコータ(「松尾産業製」#80番)で塗布し、1分間放置した後、80℃で溶媒を乾燥した。得られた樹脂導電層の厚さは30μmであった。更に金属基板のもう一方の面にも同様の方法で厚さ20μmの樹脂導電層を形成した。得られた複合板を複合板1とした。
【0079】
[実施例2]<第2の形態複合板の作製>
MEK(メチルエチルケトン)に固形分として10重量%になるように、フッ素樹脂(「住友スリーエム(株)」製 THV220G 比重2)と第2の導電剤としてカーボンナノチューブ(「昭和電工(株)」製 気相法炭素繊維<VGCF> 比重2)を体積比30/70で混合し塗料を作製した。
【0080】
上記塗料を基材フィルム(ポリエチレンテレフタレート、三菱化学ポリエステル(株)製:厚み25μm)上にバーコータ(「松尾産業製」#24番)で塗布し、80℃で溶媒を乾燥して転写層の厚さが10μmの転写シートを得た。
【0081】
得られた転写シートを2枚用いて、その樹脂面を[実施例1]と同様の方法で得られた、樹脂導電層/金属基板/樹脂導電層複合板の樹脂導電層に重ね合わせ、温度200℃、10分、圧力3.5×10Pa(36kgf/cm)にて熱プレスした後、基材フィルムをはがして低電気抵抗層を形成した。得られた複合板を複合板2とした。
【0082】
[実施例3]<第3の形態複合板の作製>
フッ素樹脂(「住友スリーエム(株)」製  THV220G 比重2)10重量%をMIBK(メチルイソブチルケトン)90重量%に溶解した後、第1の導電性充填剤としてタングステンカーバード(「(株)アライドマテリアル」製WC20 比重15 平均粒径2.0μm)と、第3の導電性充填剤としてカーボン短繊維(「東邦テナックス(株)」製 HTA−0040 直径4〜7μm、長さ40〜1,000μm、比重1.77)を、第1の導電性充填剤と第3の導電性充填剤と上記フッ素樹脂との割合が10体積%対20体積%対70体積%になるように混合し、スラリーを得た。
【0083】
得られたスラリーを、[実施例1]と同様にプライマー処理された金属基板(SUS304:厚み0.3mm)の片面上にバーコータ(「松尾産業製」#80番)で塗布し、1分間放置した後、80℃で溶媒を乾燥した。得られた樹脂導電層の厚さは30μmであった。更に金属基板のもう一方の面にも同様の方法で厚さ30μmの樹脂導電層を形成した。得られた複合板を複合板3とした。
【0084】
[実施例4]<第4の形態複合板の作製>
[実施例2]と同じ方法で得られた転写シートを2枚用いて、[実施例3]と同様の方法で得られた樹脂導電層(第1,3の導電性充填剤を含む)/金属基板/樹脂導電層(第1,3の導電性充填剤を含む)複合板の樹脂導電層に転写シートの樹脂面を重ね合わせた。次いで、温度200℃、10分、圧力3.5×10Pa(36kgf/cm)にて熱プレスした後、基材フィルムをはがして低電気抵抗層を両面に形成した。
【0085】
得られた複合板を複合板4とした。
【0086】
<プレス加工の結果>
上記実施例1〜4で得られた複合板14を、プレス後のガス流路の形状は波形で、ガス流路のピッチが3mm、波形の凸部と凹部の差は0.5mmに成形できる金型を使用して、プレス成型機「(株)アマダ」製 トルクパックプレス プレス速度45spm)にて室温でプレス成形した。
【0087】
得られた燃料電池用セパレータは、タングステンカーバイドまたはカーボンナノチューブを含むフッ素樹脂層と金属板との接着性が良好で剥離等がなかった。
【0088】
<接触抵抗の測定>
実施例1〜4で得られた複合板1〜4の接触抵抗を測定した。接触抵抗の評価は以下のように行った。
1.測定装置
抵抗計:YMR−3型((株)山崎精機研究所社製)
負荷装置:YSR−8型((株)山崎精機研究所社製)
電極:真鍮製平板2枚(面積1平方インチ、鏡面仕上げ)
Figure 2004014272
3.測定方法
図6に示した測定装置により、セパレータ23を、カーボンペーパー22を介して両側から真鍮製電極21で挟み、所定の荷重を加えながら、4端子法にて所定の電流印加時の電圧を測定して接触抵抗を求めた。
【0089】
測定結果を図7のグラフ中の複合板1〜4で示した。比較のために東海カーボン社製樹脂含浸黒鉛G347Bも評価した。
【0090】
図7のグラフに示す通り、特に複合板2、4は、接触抵抗値が格段に小さく、樹脂含浸黒鉛とほぼ同等の接触抵抗値であった。
【0091】
【発明の効果】
本発明によれば、集電性能と成形性、強度および耐食性の両方を満足する燃料電池、特に固体高分子電解質型燃料電池用のセパレータを提供することができる。従って、長時間の運転が可能な燃料電池用としての利用性が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料電池のセパレータ付近を模式的に示す図である。
【図2】第1の形態のセパレータの層構造の1例を示す図である。
【図3】第2の形態のセパレータの層構造の1例を示す図である。
【図4】第3の形態のセパレータの層構造の1例を示す図である。
【図5】第4の形態のセパレータの層構造の1例を示す図である。
【図6】接触抵抗の測定方法を示す図である。
【図7】接触荷重と接触抵抗値の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1a、1b 単電池
2a、2b 固体高分子電解質膜
3a、3b 電極
4a、4b ガス流路
10 セパレータ
11 金属基板
12 樹脂導電層
13 低電気抵抗層
14 樹脂導電層
21 真鍮製電極
22 カーボンペーパー
23 セパレータ

Claims (16)

  1. 金属基板の少なくとも片面に、樹脂導電層を設けた燃料電池用セパレータであって、
    前記樹脂導電層は、(a)樹脂と、(b)体積当たりの含有量が前記金属基板側で高く、表面側で低くなるように連続的に変化している第1の導電性充填剤とを有することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
  2. 第2の導電性充填剤を含有し、少なくとも前記樹脂導電層の表面より体積低効率の低い低電気抵抗層が、前記樹脂導電層の表面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池用セパレータ。
  3. 前記樹脂導電性層は、層内に均一に混合された第3の導電性充填剤をさらに有することを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池用セパレータ。
  4. 前記第1の導電性充填剤は、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物および金属からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
  5. 前記第1の導電性充填剤が、炭化タングステンであることを特徴とする請求項4記載の燃料電池用セパレータ。
  6. 前記第2の導電性充填剤は、炭素系材料、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物および金属からなる群より選ばれることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
  7. 前記第2の導電性充填剤が、炭化タングステン、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーからなる群より選ばれることを特徴とする請求項6記載の燃料電池用セパレータ。
  8. 前記第3の導電性充填剤は、炭素系材料から選ばれることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
  9. 前記第3の導電性充填剤は、カーボンナノチューブ及び/又はカーボンナノファイバーであることを特徴とする請求項8記載の燃料電池用セパレータ。
  10. 前記第1の導電性充填剤の含有量が、前記金属基板との界面付近での含有量:表面付近での含有量の比が、6:4から9:1であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
  11. 前記樹脂導電層の体積抵抗率が、層内で最も大きなところで1.0Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
  12. 金属基板の少なくとも片面に、樹脂導電層を設けた燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    樹脂溶液中にこの樹脂溶液より密度が大きい第1の導電性充填剤が分散されているスラリーを基材上に塗布し、第1の導電性充填剤の少なくとも一部が沈降できるだけの時間をかけて溶液中の溶媒を乾燥除去して前記樹脂導電層を形成する工程を有する燃料電池用セパレータの製造方法。
  13. 金属基板の少なくとも片面に、樹脂導電層を設けた燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    樹脂溶液中に、この樹脂溶液より密度が大きい第1の導電性充填剤および次の溶媒の乾燥除去操作中に沈降が実質的に生じない密度を有する第3の導電性充填剤が分散されているスラリーを基材上に塗布し、第1の導電性充填剤の少なくとも一部が沈降できるだけの時間であってかつ第3の導電性充填剤が実質的に沈降しない時間をかけて溶液中の溶媒を乾燥除去して前記樹脂導電層を形成する工程を有する燃料電池用セパレータの製造方法。
  14. 前記第1の導電性充填剤は、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物および金属からなる群より選ばれることを特徴とする請求項12または13記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  15. 前記第3の導電性充填剤は、炭素系材料から選ばれることを特徴とする請求項13または14記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  16. 炭素系材料、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物および金属からなる群より選ばれる第2の導電性充填剤を含有し、少なくとも前記樹脂導電層の表面より体積低効率の低い低電気抵抗層を、前記樹脂導電層の表面に積層する工程をさらに有する請求項12〜15のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
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