JP2004100557A - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】マルチ燃料噴射における各噴射の噴射時期と噴射量とを適正な値に制御する。
【解決手段】1気筒サイクルあたりに複数回のマルチ燃料噴射を行うディーゼル機関1の、各気筒に燃焼室内圧力を検出する筒内圧センサ29a〜29dを設ける。機関の電子制御ユニット(ECU)20は、筒内圧センサで検出された燃焼室内圧力に基づいて燃焼室内圧力のクランク角に対する一次変化率と二次変化率とを算出し、算出した一次変化率の値と二次変化率の値とを予め定めた基準値と比較することにより、マルチ燃料噴射のそれぞれの燃料噴射毎に噴射量と噴射時期とが最適値になるように制御する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に関し、詳細にはディーゼル機関の燃焼を最適化する燃料噴射制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の排気ガス規制の強化や騒音低減に対する要求から、ディーゼル機関においても燃焼室内での燃焼最適化の要求が高まってきている。燃焼最適化のためにはディーゼル機関においても燃料噴射量、燃料噴射時期、噴射期間などを正確に制御することが必要となる。
【0003】
しかし、ディーゼル機関では、理論空燃比よりかなり高いリーン空燃比領域で燃焼が行われており、ガソリン機関のように、正確に空燃比を目標空燃比に維持する必要がなかったため、従来、燃料噴射量、燃料噴射時期などの燃料噴射パラメータもガソリン機関ほどには精密な制御は行われていない。又、従来、ディーゼル機関では機関運転条件(回転数、アクセル開度など)から燃料噴射量、噴射時期、噴射圧、EGRガス量などの目標値を決定し、この目標値に応じて燃料噴射弁などをオープンループ制御しているが、オープンループ制御では、実際の燃料噴射量が目標噴射量に対して誤差を生じることを防止できず、燃焼状態を目標とする状態に正確に制御することは困難であった。
【0004】
更に、排気ガス性状の改善と騒音の低減のためには、各気筒の1サイクル中に、主燃料噴射の前後に複数回の燃料噴射を行い、燃焼状態を最適に調整するマルチ燃料噴射が有効である。しかし、マルチ燃料噴射を行うためには、複数回の燃料噴射のそれぞれの燃料噴射量と噴射時期とを精密に制御する必要がある。
【0005】
また、燃焼状態改善のために最近ディーゼル機関において採用されるようになったコモンレール式高圧燃料噴射装置では、燃料噴射時間が短く、しかも噴射中に燃料噴射圧力が変化する等のため、燃料噴射量に誤差を生じやすい問題がある。このため、コモンレール式高圧燃料噴射装置では燃料噴射弁の公差を小さく設定して燃料噴射精度を向上させる等の対策が取られているが、実際には燃料噴射弁は各部の摩耗などにより使用期間ともに燃料噴射特性が変化するため、燃料噴射量を常に正確に目標値に一致させることは困難である。
【0006】
このように、ディーゼル機関では燃料噴射量などに誤差が生じやすいため最適な燃焼状態を得る目標値を設定できても、実際にその燃料噴射量を目標値に合致させることが困難な事情がある。
燃焼状態を目標とする燃焼状態に合致させるためには、実際の燃焼状態を何らかの形で検出し、実際の燃焼状態が目標とする燃焼状態に合致するように燃料噴射量や燃料噴射時期などの燃料噴射パラメータをフィードバック制御することが有効である。
【0007】
このように、燃焼状態を検出して燃料噴射パラメータをフィードバック制御する内燃機関の燃焼制御装置の例としては、特許文献1に記載されたものがある。
【0008】
特許文献1の装置は、ディーゼル機関の燃焼騒音を計測し、計測した燃焼騒音に基づいてパイロット噴射量が多すぎるのか少なすぎるのかを判断し、これに基づいてパイロット噴射量を補正するものである。また、燃焼騒音としては、燃焼室内圧力を検出する筒内圧センサで検出した筒内圧の微分値または2階微分値を用いることによりメカニカルな振動の影響を除いて燃焼騒音の検出精度を向上させるようにしている。
【0009】
すなわち、特許文献1の装置は実際に計測した燃焼騒音に基づいてパイロット噴射量をフィードバック制御することにより、燃焼騒音を常に目標レベル以下に抑制するものである。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−123871号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1の装置では、実際に計測した燃焼騒音に基づいてパイロット噴射量をフィードバック制御するため、燃焼騒音を常に目標レベル以下に抑制することができる。しかし、特許文献1の装置では、燃焼騒音は目標値以下に抑制されるものの、必ずしも常に良好な燃焼状態が得られるとは限らず、排気性状が悪化する場合も生じる。
【0012】
すなわち、良好な排気性状を得るためには、パイロット噴射の噴射量のみではなく噴射時期をも適切に制御する必要があるが、特許文献1の装置では、燃焼騒音に基づいてパイロット噴射の噴射量のみを制御しているため、燃焼騒音は低下したとしても、排気性状が常に向上するとは限らない問題がある。
【0013】
また、特許文献1の装置は、パイロット噴射、それもパイロット噴射を1回だけ行う運転のみを対象としているため、複数回のパイロット噴射や、主燃料噴射の後にアフター噴射を行う場合があるマルチ燃料噴射において、各燃料噴射の噴射量や噴射時期を適切に制御することはできない。
【0014】
本発明は、上記従来技術の問題に鑑み、複数回の燃料噴射を行う場合にも各燃料噴射の噴射量と噴射時期とを適正な値に制御することが可能な内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、主燃料噴射に加えて、主燃料噴射の前または後、もしくは前と後との両方に機関燃焼室に燃料を噴射するマルチ燃料噴射を行う内燃機関の燃料噴射制御装置であって、機関燃焼室内の圧力を検出する筒内圧センサを備え、前記筒内圧センサで検出した燃焼室内圧力のクランク角または時間に対する一次変化率と二次変化率とを算出し、前記算出した一時変化率に基づいて前記マルチ燃料噴射におけるそれぞれの燃料噴射の噴射量が適切な値か否かを判定し、前記算出した二次変化率に基づいて燃焼室内の燃焼開始時期が適切か否かを判定するとともに、前記判定結果に応じて前記マルチ燃料噴射の各燃料噴射の噴射量と噴射時期とを制御する、内燃機関の燃料噴射制御装置が提供される。
【0016】
すなわち、請求項1の発明では筒内圧センサで検出した燃焼室内圧力Pの変化率(クランク角θに対する変化率(dP/dθ)と(d2P/dθ2)、または時間tに対する変化率(dP/dt)と(d2P/dt2))に基づいてマルチ燃料噴射における各燃料噴射の噴射量と噴射時期とが制御される。以下、クランク角に対する変化率の場合について説明するが、時間に対する変化率を用いた場合も以下の説明と同様である。
【0017】
燃焼室内に噴射された燃料が燃焼すると燃焼室内の圧力は上昇する。このため、燃焼室内圧力変化率(dP/dθ)の値は、マルチ燃料噴射の各燃料噴射が行われる毎に増大し、各噴射に対応した数だけ(dP/dθ)のピークが生じる。
また、このピークの大きさは燃料噴射量と相関があることが判っている。
【0018】
マルチ燃料噴射が行われる場合には、1行程サイクルに対して複数回の燃料噴射が行われるが、各燃料噴射により噴射された燃料が燃焼すると燃焼圧が上昇するため、燃焼圧そのものにも各燃料噴射により噴射された燃料の燃焼に対応するピークが生じているはずである。しかし、実際には、特にマルチ燃料噴射で各燃料噴射の間隔が短いような場合には燃焼室内の圧力上昇は各噴射によるものが相互に干渉しあってしまい、各燃料噴射に対応する圧力ピークを分離検出することは困難である。
【0019】
これに対して、圧力変化率(dP/dθ)はそれぞれの燃料噴射に対して明瞭なピーク値が現れる。このため、(dP/dθ)を用いて、マルチ燃料噴射が行われる場合も各噴射の噴射量を個別に判断することが可能となるため、噴射量の正確なフィードバック制御を行うことができる。
【0020】
また、燃焼室内圧力の二次変化率(d2P/dθ2)も上記一次変化率と同様に各燃料噴射毎に存在する。また、燃焼室内圧力の二次変化率は燃焼開始時の圧力が上昇を開始し始めた時期に対応したピークを有するため、燃焼室内圧力そのもの、或いは圧力変化率(dP/dθ)では判別が困難な各燃料噴射に対応する燃焼開始時期も明確に判別することができる。このため、マルチ燃料噴射が行われる場合も圧力の二次変化率(d2P/dθ2)を用いて各噴射に対応する燃焼開始時期を個別に判断することが可能となるため、噴射時期の正確なフィードバック制御を行うことができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、前記二次変化率が予め定めた基準値を越えた時点を各燃料噴射で噴射された燃料の燃焼開始時期と判断し、該燃焼開始時期が機関運転条件に応じて予め定めた時期に一致するように前記マルチ燃料噴射の各燃料噴射の噴射量と噴射時期とを制御する、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置が提供される。
【0022】
すなわち、請求項2の発明では、燃焼室内の圧力の二次変化率が所定の基準値を越えた時を燃焼室内の燃焼開始時期と判断する。圧力の二次変化率のピークは燃焼開始時期に対応しているが、本発明では、極大値を検出する代わりに二次変化率が増大して基準値以上になった時点を燃焼開始時期と判断し、この検出した燃焼開始時期が予め実験等により求めておいた最適な燃焼時期に一致するように各燃料噴射の噴射時期をフィードバック制御する。このように、圧力二次変化率が基準値以上になったか否かを判断することにより、二次変化率のピーク検出(極大値検出)を行う必要がなくなるため、簡易に燃焼開始時期が判定できるため、制御装置の計算負荷を軽減することができる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、前記算出した一次変化率の前記マルチ燃料噴射における各燃料噴射に対応する値の全部が、それぞれ所定の基準範囲になるように各燃料噴射における噴射量を制御する請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置が提供される。
【0024】
すなわち、請求項3ではマルチ燃料噴射の各噴射に対応する燃焼室内圧力の一次変化率の値の全部がそれぞれの基準範囲になるように各燃料噴射の噴射量が制御される。前述したように、各燃料噴射に対応する圧力の一次変化率と各燃料噴射における噴射量とは相関があるが、各燃料噴射に対応する圧力の一次変化率のみでは対応する燃料噴射の噴射量が適切か否かが必ずしも定まらない場合がある。例えば、仮にパイロット噴射に対応する圧力二次変化率が基準値をこえていたとしても、パイロット噴射の量が少ない場合には主燃料噴射の燃料の燃焼による圧力上昇速度が大きくなり、圧力の一次変化率のピーク値が過大になる。このため、パイロット噴射の噴射量を適正にするためにはパイロット噴射の噴射量を、主燃料噴射に対応する圧力の一次変化率が或る上限値以下になるまで減少させる必要がある。
【0025】
本発明では、全部の燃料噴射の噴射量が適切になる時の、各燃料噴射に対応する圧力の一次変化率の基準範囲が予め実験などにより定めてあり、機関運転中に各燃料噴射に対応する圧力の一次変化率がこの基準範囲に入るように各燃料噴射の噴射量を制御する。これにより、全部の燃料噴射の燃料噴射量が適切な値に制御されるようになる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の燃料噴射装置を自動車用ディーゼル機関に適用した場合の実施形態の概略構成を示す図である。
【0027】
図1において、1は内燃機関(本実施形態では#1から#4の4つの気筒を備えた4気筒4サイクルディーゼル機関が使用される)、10aから10dは機関1の#1から#4の各気筒燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁を示している。燃料噴射弁10aから10dは、それぞれ燃料通路(高圧燃料配管)を介して共通の蓄圧室(コモンレール)3に接続されている。コモンレール3は、高圧燃料噴射ポンプ5から供給される加圧燃料を貯留し、貯留した高圧燃料を高圧燃料配管を介して各燃料噴射弁10aから10dに分配する機能を有する。
【0028】
図1に20で示すのは、機関の制御を行う電子制御ユニット(ECU)である。ECU20は、リードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、マイクロプロセッサ(CPU)、入出力ポートを双方向バスで接続した公知の構成のマイクロコンピュータとして構成されている。ECU20は、本実施形態では、燃料ポンプ5の吐出量を制御してコモンレール3圧力を機関運転条件に応じて定まる目標値に制御する燃料圧制御を行っている他、機関運転状態に応じて燃料噴射の噴射時期及び噴射量を設定するとともに、後述する筒内圧センサ出力に基づいて求めた燃焼室内圧の一次変化率と二次変化率とを用いて燃料噴射量、噴射時期等をフィードバック制御する燃料噴射制御等の機関の基本制御を行う。
【0029】
これらの制御を行なうために、本実施形態ではコモンレール3にはコモンレール内燃料圧力を検出する燃料圧センサ27が設けられている他、機関1のアクセルペダル(図示せず)近傍にはアクセル開度(運転者のアクセルペダル踏み込み量)を検出するアクセル開度センサ21が設けられている。また、図1に23で示すのは機関1のカム軸の回転位相を検出するカム角センサ、25で示すのはクランク軸の回転位相を検出するクランク角センサである。カム角センサ23は、機関1のカム軸近傍に配置され、クランク回転角度に換算して720度毎に基準パルスを出力する。また、クランク角センサ25は、機関1のクランク軸近傍に配置され所定クランク回転角毎(例えば15度毎)にクランク角パルスを発生する。
【0030】
ECU20は、クランク角センサ25から入力するクランク回転角パルス信号の周波数から機関回転数を算出し、アクセル開度センサ21から入力するアクセル開度信号と、機関回転数とに基づいて燃料噴射弁10aから10dの燃料噴射時期と燃料噴射量とを算出する。
【0031】
また、図1に29aから29dで示すのは、各気筒10aから10dに配置され、気筒燃焼室内の圧力を検出する公知の形式の筒内圧センサである。筒内圧センサ29aから29dで検出された各燃焼室内圧力は、ADコンバータ30を経てECU20に供給される。
【0032】
本実施形態では、コモンレール3の燃料圧力はECU20により機関運転状態に応じた圧力に制御され、例えば10MPaから150MPa程度の高圧で、しかも広い範囲で変化する。また、本実施形態では、機関1は各気筒の行程1サイクルの間に複数回気筒内に燃料を噴射するマルチ燃料噴射を行う。
【0033】
図2は、本実施形態におけるマルチ燃料噴射を構成するそれぞれの燃料噴射を説明する図である。
【0034】
図2において、横軸はクランク角(CA)を示し、横軸状のTDCは圧縮上死点を表している。また、図2の縦軸はそれぞれの燃料噴射の噴射率を表しており、それぞれの山の面積は概略各燃料噴射の相対的な燃料噴射量を示している。図に示すように、マルチ燃料噴射では早期パイロット噴射、近接パイロット噴射、メイン噴射(主燃料噴射)、アフター噴射、ポスト噴射等の全部または一部が行われる。
【0035】
以下、メイン噴射以外のそれぞれの燃料噴射について簡単に説明する。
(1)早期パイロット噴射
早期パイロット噴射は、メイン噴射よりかなり早い時期(例えばメイン噴射開始よりクランク角で20度(20°CA)以上早い時期)に行われるパイロット噴射である。早期パイロット噴射で噴射された燃料は予混合気を形成し、圧縮着火するためNOやパティキュレートをほとんど生成せず、早期パイロット噴射を行うことにより排気性状を向上させることができる。また、早期パイロット噴射は、燃焼室内の温度と圧力とを上昇させ、後述する近接パイロット噴射やメイン噴射の着火遅れ期間を短縮するため、メイン噴射による燃焼の騒音やNO生成を抑制することができる。
【0036】
早期パイロット噴射は、比較的燃焼室内の温度圧力が低い時点で行われるため、噴射量が多い場合には噴射された燃料が液状のままシリンダ壁に到達して、潤滑油希釈などの問題を起こす。このため、早期パイロット噴射は噴射量が多い場合には必要とされる噴射量を複数回に分割して少量ずつ噴射することによりシリンダ壁への液状燃料の到達を防止する。
【0037】
(2)近接パイロット噴射
近接パイロット噴射は、メイン噴射の直前(例えば、メイン噴射開始より20°CA以内)に行われるパイロット噴射である。近接パイロット噴射は、早期パイロット噴射に較べて炭化水素の発生が少なく、早期パイロット噴射と同様にメイン噴射の着火遅れ期間を短縮してメイン噴射の騒音やNO生成を抑制することができる。
【0038】
(3)アフター噴射
アフター噴射は、メイン噴射終了直後、または比較的短い間隔(例えばメイン噴射終了後15°CA以内)に開始される噴射である。
アフター噴射は、メイン噴射の燃料の燃焼後期に再度燃焼室内の温度、圧力、乱れなどを増加させて燃焼を良好にすることと、メイン噴射の噴射量を減らすことを目的として行われる。
【0039】
すなわち、メイン噴射の燃焼後期には燃焼室内の温度、圧力は低下し、筒内の乱れも小さくなっているため、燃料が燃焼しにくくなっている。この状態でアフター噴射を行うことにより、燃料の噴射による乱れの増大と噴射された燃料の燃焼による温度、圧力の増大が生じるため、燃焼室内の雰囲気が燃焼を促進する方向に改善される。また、アフター噴射の噴射量分だけメイン噴射の噴射量を減らすことができるため、メイン噴射燃料により生成される局所的な過濃領域の生成が抑制される。また、アフター噴射の量と時期とを適切に設定することによりメイン噴射量を低減して燃焼による筒内最高温度を低下させることができるため、NOの生成が抑制される効果がある。
【0040】
(4)ポスト噴射
ポスト噴射は、メイン噴射終了後比較的間隔をあけて(例えばメイン噴射終了後15°CA以上)開始される燃料噴射である。ポスト噴射の主な目的は排気温度、圧力を上昇させることである。
【0041】
例えば、排気系に配置した排気浄化触媒の温度が低く活性化温度に到達しないため排ガス浄化作用を得られないような場合には、ポスト噴射を行うことにより排気温度を上昇させて短時間で触媒温度を活性化温度まで上昇させることができる。また、ポスト噴射を行うことにより排気の温度、圧力が上昇するため、ターボチャージャを有する機関ではタービンの仕事を増大させて過給圧上昇による加速性能の向上や加速時のスモーク抑制などの効果を得ることができる。
また、排気浄化触媒として、HC成分を用いて排気中のNOを浄化する選択還元触媒を使用する場合には、ポスト噴射を行うことにより触媒にHCを供給してNOの浄化率を向上させることができる。
【0042】
上記のようにマルチ燃料噴射を行うことにより、ディーゼル機関の排気性状や騒音を大幅に改善することが可能であるが、この改善効果を得るためにはマルチ燃料噴射における各燃料噴射の噴射量と噴射時期とを精密に制御する必要がある。例えば、最も噴射量と噴射時期との精度が要求される近接パイロット噴射では、1回の燃料噴射噴射量は1.5〜2.5mm程度に、噴射時期は±2°CA以内程度に制御する必要がある。
前述したように、燃料噴射弁には公差による個体間のばらつきや、使用期間による燃料噴射特性の変化などが生じるため、通常のオープンループ制御では燃料噴射の精度を向上させることはできない。
【0043】
また、例えば前述の特許文献1の装置のように燃焼騒音に基づいて燃料噴射を制御しても、一部のパイロット噴射の噴射量は制御できるものの、各燃料噴射の噴射量を個別に制御することはできず、更に噴射時期については全く制御することができない問題がある。
特に、マルチ燃料噴射においては、上述した近接パイロット噴射、メイン噴射、アフター噴射の燃料噴射は、噴射間隔が極端に短くなると各噴射が連続して行われる場合が生じてしまい、単に燃焼騒音に基づいたのみではこの3つの噴射の噴射量を分離して判別することすらできない問題がある。
【0044】
本実施形態では、筒内圧センサ29a〜29dを用いて検出した燃焼室内圧力のクランク角もしくは時間に対する一次変化率(微分値)と二次変化率(2階微分値)とを用いて各燃料噴射の噴射量と噴射時期とを制御することにより、それぞれの燃料噴射を正確に制御することを可能としている。
【0045】
なお、以下の説明では燃焼室内圧力Pのクランク角θに対する一次変化率と二次変化率((dP/dθ)と(d2P/dθ2))とを用いて燃料噴射を制御する場合を例にとって説明するが、燃焼室内圧力の時間に対する一次変化率と二次変化率とを用いた場合にも全く同様の制御が可能である。
【0046】
図3(A)〜(D)は、近接パイロット噴射、メイン噴射、アフター噴射からなるマルチ燃料噴射を行った場合の、筒内圧センサ29a〜29dで検出した燃焼室内圧力とその変化率とのクランク角(横軸)に対する変化を示すタイミング図である。
【0047】
図3において、図3(A)は燃料噴射弁のバルブリフト(略燃料噴射率に等しい)を示し、図3(A)のIは近接パイロット噴射、IIはメイン噴射、IIIはアフター噴射を示している。
【0048】
図3(B)は、筒内圧センサで検出した燃焼室内圧力Pの変化を示す。図3(B)に示すように単に燃焼室内圧力Pから見たのでは近接パイロット噴射、メイン噴射、アフター噴射のそれぞれの噴射による圧力変化は互いに重複、干渉しあっており、それぞれの噴射に対応するピークを判別することはできない。
【0049】
図3(C)は、図3(B)の燃焼室内圧力Pのクランク角に対する一次変化率(dP/dθ)を示す図である。図3(C)から判るように、圧力Pの一次変化率(dP/dθ)をとることにより、近接パイロット噴射、メイン噴射、アフター噴射に対するピーク(I、II、III)が明確に分離され判別可能となっている。圧力Pの一次変化率(dP/dθ)は圧力の上昇速度であり、その極大値(ピーク値)は、それぞれの噴射における噴射量と相関があることが判明している。このため、圧力Pの一次変化率のピーク値からそれぞれの噴射における実際の噴射量を個別に判別することができる。
【0050】
次に、図3(D)は圧力Pのクランク角に対する二次変化率(d2P/dθ2)を示す図である。図3(D)に示すように圧力Pの二次変化率(d2P/dθ2)もそれぞれの噴射に対応する明確なピーク(図3(D)I〜III)を有している。
【0051】
圧力Pの二次変化率におけるピーク値は、圧力Pの一次変化率すなわち圧力上昇速度の変化の極大値、すなわち各噴射における燃料の燃焼開始時の圧力上昇速度の変化率を示している。このため、(d2P/dθ2)がある基準値を越えた場合には、急激な圧力上昇が開始されたこと、すなわち燃焼が開始されたと判断することができる。
本実施形態では、圧力Pの二次変化率が図3(D)に示す一定の基準値P0”を越えた場合に燃焼が開始されたと判定する。
【0052】
なお、圧力Pの一次変化率(dP/dθ)も図3(C)に示すように各噴射に対応する明確なピークを示しており、(dP/dθ)は燃焼室内の圧力上昇速度を表すのであるから、理論的には圧力Pの圧力上昇速度(dP/dθ)が所定の基準値を越えたときに燃焼が開始されたと判断することも可能である。
【0053】
しかし、圧力Pの一次変化率(dP/dθ)のピーク値は近接パイロット噴射、メイン噴射、アフター噴射それぞれで大きく異なっているため、(dP/dθ)を用いてそれぞれの燃料噴射開始の有無を判定するためには各噴射毎に燃焼開始判定用の基準値を設ける必要がある。
【0054】
これに対して、圧力Pの二次変化率(d2P/dθ2)を用いると、それぞれの噴射に対応するピーク値は略同じ値となるため、全部の噴射に対して共通の基準値(図3(D)P0”)を用いて燃焼開始の判定を行うことができる利点がある。なお、図3(A)から(D)は近接パイロット噴射、メイン噴射、アフター噴射のみを行った場合について示しているが、他に早期パイロット噴射、ポスト噴射がある場合についても同一の判定値(図3(D)P0”)で燃焼開始の有無を判定することができる。
【0055】
次に、本実施形態における燃料噴射量と噴射時期とのフィードバック制御について説明する。
本実施形態では、以下の手順で各燃料噴射の噴射量と噴射時期とを制御する。
(1)基本燃料噴射量、噴射時期の設定
本実施形態では、ECU20はクランク角センサ25の出力から算出した機関回転数と、アクセル開度センサ21で検出したアクセル開度とから、予め定めた関係に基づいてマルチ燃料噴射の各噴射の基本噴射量と基本噴射時期とを設定する。それぞれの噴射の基本(目標)噴射量と基本(目標)噴射時期とは、機関回転数とアクセル開度とを用いた二次元数値テーブルとしてECU20のROMに予め格納されている。この基本噴射量、噴射時期の設定方法は公知のいかなる方法をも使用可能であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0056】
(2)各燃料噴射の燃焼確認と燃料噴射量の調整
上記基本噴射量と基本噴射時期とで各燃料噴射を行った場合に、燃焼が生じているか否かを燃焼室圧力Pの二次変化率(d2P/dθ2)が基準値P0”を越えているか否かに基づいて判断し、基準値を越えていない場合には対応する噴射の燃料噴射量を増大させる。
【0057】
例えば、図3の例で仮に図3(D)で(d2P/dθ2)のIに相当するピークがない場合、すなわち近接パイロット噴射開始からメイン噴射開始までの間で(d2P/dθ2)が基準値を越えなかった場合には、近接パイロット噴射がされていないか、或いは噴射量が不足していることになる。このため、この場合には、Iに相当する部分で(d2P/dθ2)が基準値P0”を越えるまで近接パイロット噴射の噴射量を増大する。
【0058】
また、図3(D)でIII(アフター噴射)に相当するピークがない場合、すなわちメイン噴射終了後に(d2P/dθ2)が基準値を越えなかった場合には、アフター噴射がされていないか、或いは噴射量が不足していると判断し、メイン噴射後に(d2P/dθ2)が基準値を越えるまでアフター噴射の噴射量を増大する。
上記の操作を各噴射に対応する圧力の二次変化率(d2P/dθ2)の値が基準値P0”を越えるまで行うことより、各噴射で噴射された燃料が確実に燃焼するようになる。
【0059】
(3)噴射時期の調整
上記の操作により、各噴射に対応する圧力の二次変化率(d2P/dθ2)が全て基準値P0”を越えた場合には、次に(d2P/dθ2)が基準値P0”を越えるクランク角が、(1)で設定した基本噴射時期に一致するように各噴射の噴射時期を調整する。これにより、各噴射の噴射時期が目標噴射時期(本実施形態では基本噴射時期)にフィードバック制御される。
【0060】
(4)噴射量の最終調整
上記の操作終了後、(2)で調整した各噴射の噴射量を、各噴射に対応する圧力の一次変化率(dP/dθ)をそれぞれの噴射の基準値と比較することにより調整される。
【0061】
本実施形態では各噴射の基準値として予め上限値が設定されており、各燃料噴射に対応する(dP/dθ)がそれぞれの上限値を越えないように、すなわち各燃料噴射に対応する燃焼における圧力上昇速度が過大にならないように噴射量が調整される。ここでそれぞれの噴射に対応する基準値(上限値)は、各運転条件(機関回転数とアクセル開度との組み合わせ)において予め実験等により最適な燃焼が得られる(dP/dθ)の上限値として求められており、マルチ燃料噴射の各噴射毎に機関回転数とアクセル開度とを用いた数値テーブルとしてECU20のROMに格納されている。
【0062】
また、この場合噴射量の調整は必ずしも(dP/dθ)が上限値を越えた噴射に対してのみ行うわけではなく、他の噴射についても行い、最終的に各噴射に対応する(dP/dθ)の値が全てそれぞれの上限値以下になるように、各噴射量を調整する。
【0063】
例えば、図3の例で説明すると、仮にパイロット噴射に対する(dP/dθ)の値(図3(C)I)が上限値(図3、P1′)を越えている場合には、パイロット噴射量が過大になっていると判断できるため、パイロット噴射量そのものを減量して、(dP/dθ)が上限値P1′以下になるようにする。
【0064】
また、アフター噴射に対する(dP/dθ)の値(図3(C)III)が上限値(図3、P3′)を越えている場合には、同様にアフター噴射の噴射量を減量して(dP/dθ)が上限値P3′以下になるようにする。
【0065】
しかし、メイン噴射に対する(dP/dθ)の値(図3(C)II)が上限値P2′を越えている場合には、メイン噴射そのものの噴射量を調整するのではなく、パイロット噴射の噴射量を増大する。これは、メイン噴射に対応する(dP/dθ)が上限値P2′を越えたと言うことは、パイロット噴射量が不十分であるためにメイン噴射の燃料の着火遅れが大きくなり、そのために圧力上昇速度が過大になっていると考えられるからである。
【0066】
以上の操作を行って、各燃料噴射に対する圧力の一次変化率の値が全てそれぞれの基準範囲内(本実施形態では上限値以下)になるように各燃料噴射の噴射量を調整することにより、各燃料噴射の噴射量が最適な値にフィードバック制御される。
【0067】
図4は、上記(2)から(4)に相当する制御操作を示すフローチャートである。本操作はECU20により一定間隔(一定クランク角)毎に実行される。
【0068】
図4において、ステップ401とステップ403とは、それぞれ(dP/dθ)と(d2P/dθ2)との算出操作を示している。
【0069】
本実施形態では、燃焼室内圧力Pの一次変化率(dP/dθ)と二次変化率(d2P/dθ2)とは、それぞれ次式で算出される。
【0070】
(dP/dθ)=Pn−P(n−1)
(d2P/dθ2)=(P(n)−2P(n−1)+P(n−2))
ここで、Pnは、筒内圧センサ29a〜29dで検出した燃焼室内圧力を示す。本実施形態では、ECU20は一定クランク角毎に筒内圧センサ出力をサンプリングしており、Pnは今回サンプリングした燃焼室内圧力、P(n−1)は前回サンプリングした燃焼室内圧力、P(n−2)は前々回にサンプリングした燃焼室内圧力である。
【0071】
次いでステップ405、407では上記(2)で説明した各燃料噴射の燃焼確認と燃料噴射量の調整が行われる。すなわち、ステップ405では各燃料噴射に対応する圧力二次変化率(d2P/dθ2)が共通の基準値P0”と比較され、基準値に到達していない場合には、基準値に到達するまで対応する噴射の噴射量が増大される(ステップ407)。
【0072】
ステップ409は、上記(3)で説明した噴射時期の調整操作である。すなわち、ステップ409では各噴射に対応する二次変化率(d2P/dθ2)が基準値P0”より大きくなるクランク角が、機関回転数とアクセル開度とから定まる基本噴射時期に一致するように各噴射の噴射時期が調整される。
【0073】
ステップ409で噴射時期の調整終了後、ステップ411では上記(4)で説明した噴射量の最終調整が行われ、各噴射に対応する(dP/dθ)の値が全てそれぞれの基準範囲(上限値以下)になるように各噴射の噴射量が調整される。
【0074】
なお、上述の実施形態では、図3の近接パイロット噴射、メイン噴射、アフター噴射のみを行う場合について説明したが、他に早期パイロット噴射(複数回の場合を含む)やポスト噴射を行う場合も同様な制御が可能である。
【0075】
なお、早期パイロット噴射を行った場合に、早期パイロット噴射の噴射量が少ない場合などは早期パイロット噴射に対する(dP/dθ)や(d2P/dθ2)のピークが明確に現れない場合があり得る。このような場合は、通常近接パイロット噴射に対応する(dP/dθ)が上限値P1′を越えており近接パイロット噴射の噴射量が多すぎると判定されるにもかかわらず、メイン噴射に対応する(dP/dθ)が上限値P2′を越えてしまいパイロット噴射量が不足すると判断される。このような場合には、早期パイロット噴射の噴射量が不足していると判断することができるため、早期パイロット噴射の噴射量を増量することにより、各燃料噴射に対応する(dP/dθ)が全て上限値以下になるように調整される。
【0076】
また、上述したように、図4の操作では、簡易な演算(差分計算)で算出可能な圧力の一次変化率と二次変化率とを用いて噴射量と噴射時期との調整を行い、しかも、算出した一次変化率と二次変化率とが予め定めた基準値を越えているか否かの判断のみで噴射量、噴射時期の調整ができ、煩雑な操作を行いこれらの値の極大値や極小値を求める必要がない。このため、ECU20の計算負荷が増大することが防止され、簡易かつ確実に各噴射の噴射量と噴射時期とを正確に調節することができる。
また、本実施形態ではマルチ燃料噴射の各噴射量と噴射時期とがフィードバック制御されるため、例えば燃料噴射弁の公差による燃料噴射特性の個体間ばらつきが比較的大きい場合や、或いは使用とともに燃料噴射特性が変化するような場合であっても各燃料噴射を正確に制御することができる。このため、コモンレール式燃料噴射装置においても、燃料噴射弁の特性のばらつきをある程度許容することができ、従来のように燃料噴射弁の特性のばらつきを厳しく管理する必要がなくなるため、燃料噴射弁のコストを低減することが可能となる。
【0077】
【発明の効果】
各請求項に記載の発明によれば、マルチ燃料噴射を行う機関においても各燃料噴射の噴射量と噴射時期とを適正な値にフィードバック制御することが可能となるという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を自動車用4気筒ディーゼル機関に適用した実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】マルチ燃料噴射を構成する各燃料噴射を説明する図である。
【図3】本発明における各燃料噴射の噴射量と噴射時期との調整の原理を説明する図である。
【図4】燃料噴射制御操作の一例を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1…ディーゼル機関
3…コモンレール
10a〜10d…筒内燃料噴射弁
20…電子制御ユニット(ECU)
21…アクセル開度センサ
25…クランク角センサ
29a〜29d…筒内圧センサ

Claims (3)

  1. 主燃料噴射に加えて、主燃料噴射の前または後、もしくは前と後との両方に機関燃焼室に燃料を噴射するマルチ燃料噴射を行う内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
    機関燃焼室内の圧力を検出する筒内圧センサを備え、
    前記筒内圧センサで検出した燃焼室内圧力のクランク角または時間に対する一次変化率と二次変化率とを算出し、前記算出した一時変化率に基づいて前記マルチ燃料噴射におけるそれぞれの燃料噴射の噴射量が適切な値か否かを判定し、前記算出した二次変化率に基づいて燃焼室内の燃焼開始時期が適切か否かを判定するとともに、前記判定結果に応じて前記マルチ燃料噴射の各燃料噴射の噴射量と噴射時期とを制御する、内燃機関の燃料噴射制御装置。
  2. 前記二次変化率が予め定めた基準値を越えた時点を各燃料噴射で噴射された燃料の燃焼開始時期と判断し、該燃焼開始時期が機関運転条件に応じて予め定めた時期に一致するように前記マルチ燃料噴射の各燃料噴射の噴射量と噴射時期とを制御する、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  3. 前記算出した一次変化率の前記マルチ燃料噴射における各燃料噴射に対応する値の全部が、それぞれ所定の基準範囲になるように各燃料噴射における噴射量を制御する請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
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