JP2004100616A - 内燃機関の始動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】始動に必要な駆動トルクを得ることができ、かつ少ない気筒数の内燃機関にも適応可能な内燃機関の始動制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の停止時に気筒のピストン停止位置を検出する。内燃機関が自己始動不可能または自己始動しにくい位置にピストンがあることが検出されたときは、圧縮行程で停止している気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を逆転させて自己始動に適した位置に調整した後、膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を正転させる。このようにして、逆転により自己始動が可能、または始動時のフリクションが軽減される位置になった後、膨張行程での燃料噴射及び点火によって内燃機関を始動させる。
【選択図】図6
【解決手段】内燃機関の停止時に気筒のピストン停止位置を検出する。内燃機関が自己始動不可能または自己始動しにくい位置にピストンがあることが検出されたときは、圧縮行程で停止している気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を逆転させて自己始動に適した位置に調整した後、膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を正転させる。このようにして、逆転により自己始動が可能、または始動時のフリクションが軽減される位置になった後、膨張行程での燃料噴射及び点火によって内燃機関を始動させる。
【選択図】図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒内噴射型の内燃機関に適用される始動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
筒内噴射型の内燃機関の始動装置では、停止している内燃機関の膨張行程にある気筒を検出し、この気筒に燃料を直接噴射して点火することでスタータレスで始動させることが知られている。
【0003】
従来、直噴型エンジンが停止しているときに膨張行程にある気筒を特定し、この特定された気筒に燃料を噴射して点火するエンジンの始動システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、停止している膨張行程にある気筒に燃料を直接噴射して点火して内燃機関を始動させるが、停止している気筒は内圧が低下しているために、膨張行程にある気筒内で燃焼を生じさせても、他の気筒の圧縮圧にうち勝ってピストンを押し下げる燃焼圧を得ることは難しい。そこで、膨張行程にある気筒に燃料を噴射、点火しても始動、爆発力が不十分なときはスタータモータを用いこれをアシストする始動装置が示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらには、別の例として、膨張行程にある気筒を検出し、この気筒に燃料を直接噴射して点火することで始動させるが、この際、圧縮行程にある気筒の圧縮力を低下させる低圧圧縮制御手段を設けて、圧縮行程にある気筒の吸気弁、或いは、その気筒の補助排気弁を開くように制御し、また始動時の膨張力を大きくする高圧膨張制御手段を備える等の構成を採用することで、より確実な始動を可能にするものが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−125136号公報
【特許文献2】
特開2002−4985号公報
【特許文献3】
特開2002−39038号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術はいずれも内燃機関の膨張行程で停止している気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を始動させるものであるが、実際には始動に必要な駆動トルクを得ることは容易ではなく、次のような問題点を指摘することができる。
【0008】
第1に、内燃機関の残留圧は数秒で漏れるため、膨張行程での燃焼は大気圧で行われることになる。このため、通常の圧縮状態での燃焼に比べると着火性が悪く、かつ発生する爆発力も小さいので、始動に必要なトルクを得ることは容易ではない。
【0009】
第2に、膨張行程で停止している気筒に点火する場合でも、有効ストローク長を得るために点火位置は上死点付近が望ましい反面、発生する熱量は筒内の酸素量によって決まるので膨張行程後半で筒内容積が多い領域が有利である。このような相反する要求のために、この燃焼形態では膨張行程の中間付近が、有効ストローク長と発生熱量との妥協点となる。しかし、常にピストンがこのような位置で停止しているとは限らない。
【0010】
第3に、内燃機関を自然に停止させた場合には、通常はフリクションの大きくなる圧縮行程後半でピストンが停止する。すなわち、図2に示すように、3気筒エンジンでは、膨張行程の気筒は、膨張行程終了から排気行程前半で排気弁が開弁している状態となる。そのため、この気筒に燃料を噴射し点火してもエンジンは作動しない。
【0011】
図3に示す4気筒エンジンでは、先行気筒は膨張行程後半であるので、燃料を噴射点火することでエンジン起動は可能だが、作動直後に排気弁が開弁するため、充分な駆動トルクを得ることができないので、完全な始動に至らない可能性がある。
【0012】
図4に示す6気筒エンジンでは、先行気筒は膨張行程前半であるので始動に有利な状態にあるといえる。
【0013】
このように、気筒数が少ないエンジンでは、上述した従来の始動方法による始動は困難であり、少なくとも4気筒以上の多気筒エンジンでなければ始動が不可能である。また、エンジンの停止位置によって始動の可能性が大きく左右されてしまう。
【0014】
本発明は上記の問題を解決するためにされたものであり、始動に必要な駆動トルクを得ることができ、かつ少ない気筒数の内燃機関にも適応可能な内燃機関の始動制御装置を提供することを技術的課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明は、気筒の停止位置を検出して、自己始動に不適切な位置に停止している場合には、内燃機関を逆転させて始動に適した位置に調整することで、自己始動を容易または可能にするものである。
【0016】
第1の発明は、気筒内に燃料を噴射し、火花点火で運転される内燃機関において、内燃機関の停止時に気筒のピストン停止位置を検出し、内燃機関が自己始動不可能または自己始動しにくい位置にピストンがあることが検出されたときは、圧縮行程で停止している気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を逆転させて内燃機関が自己始動可能または自己始動し易い位置にピストンを移動させることを特徴とする。
【0017】
このようにすれば、既存の構造を変えることなく、モータの設置等の特別な手段を設けずにピストン位置の調整が可能である。
【0018】
また、圧縮行程で停止している気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を逆転させる場合には、ピストンが圧縮上死点を越えない範囲でピストンの位置を調整することが好ましい。このようにすれば、圧縮上死点を越えるための大きなトルクが不要になる。
【0019】
さらに、圧縮行程で停止している前記気筒のピストンの位置の調整のための爆発力を制御する爆発力調整手段を備えることができる。この爆発力調整手段は、気筒内の空気量を検出し、これに応じて燃料噴射量、点火エネルギーを調整することで、自己始動可能な最適な位置に変更する。
【0020】
前記爆発力調整手段は、燃料噴射後、さらに所定の燃料気化時間が経過した後に点火するものであり、内燃機関の停止位置、内燃機関の暖機状態、内燃機関の停止後の経過時間のうち、少なくとも一つに基づいて爆発力の調整をすることが可能である。
【0021】
内燃機関の停止位置で必要な逆転の程度が決まり、また、暖気状態で燃料の気化時間が変化するので、これらに基づいて燃料噴射量及び/または気化時間を算定する。さらに、内燃機関の停止後の経過時間で、膨張行程にある気筒の筒内圧が漏れ等によって変化するので、停止後の経過時間に基づいて燃料噴射量の設定を変更することができる。
【0022】
このような内燃機関は、圧縮行程で停止している前記気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を逆転させて自己始動可能な位置に調整した後、膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火して、内燃機関を正転させることで始動させることができる。すなわち、逆転により自己始動が可能、または始動時のフリクションが軽減される位置になった後、膨張行程での燃料噴射及び点火によって内燃機関を始動させる。この膨張行程での点火は、逆転力にうち勝って正転を開始することが可能な位置で行われる。
【0023】
このようにすればスタータレスの始動が可能であるばかりでなく、スタータモータやモータゼネレータによって内燃機関を始動させる場合でも、起動トルクが少ないところから始動させることができ、これらの起動電流を小さくして、スタータモータやモータゼネレータの負担を軽減することができる。
【0024】
次に、膨張行程にある前記気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を始動させる際には、前記気筒の後続気筒は、圧縮行程で燃料を噴射して膨張行程で点火をすることが好適である。このようにすれば、圧縮された混合気に点火することができ、大きな爆発トルクを得ることができる。
【0025】
始動に際しては、圧縮行程で停止している前記気筒に先行する膨張行程または排気行程で停止している気筒に燃料を噴射し、圧縮行程で停止している前記気筒の燃料の噴射及び点火による内燃機関の逆転に伴って、前記先行する膨張行程または排気行程で停止していた気筒内の混合気を圧縮して、この圧縮により回転速度が低下したときに点火し、内燃機関を正転させることができる。このようにして、内燃機関の逆転時に膨張行程あるいは排気行程にある気筒を、燃料を含んだ状態で圧縮しておき、この状態で点火することで始動時に大きなトルクを得ることが可能となる。
【0026】
この場合に、圧縮行程で停止している前記気筒に先行する膨張行程または排気行程で停止している気筒の後続気筒は、圧縮行程で燃料を噴射して膨張行程で点火をすることが好ましい。さらに、圧縮された混合気に点火をすることを継続することで、大きな爆発トルクを得ることができる。
【0027】
上述した膨張行程における燃料の噴射後の点火は、圧縮上死点近傍で内燃機関を正転させるために最大の爆発力が得られる位置であり、圧縮途中で点火してもよい。すなわち、逆転時のクランク角と回転速度を判別し、正転可能な位置であり、逆転速度が速ければ圧縮上死点よりも手前でとなり、反対に回転速度がゆっくりならば、ほとんど圧縮上死点直前となる。逆転から正転に切り替わる際の内燃機関転は、一旦停止してもしなくともよい。
【0028】
上述したような内燃機関の始動制御装置は、内燃機関を搭載した車輌が停止していることを検知したとき、一時的に内燃機関を停止させるように構成された、いわゆるエコランシステムに使用するのに好適である。すなわち、内燃機関が一時停止した後の再始動時には、上記のような始動制御を実施することにより、スタータモータやモータゼネレータの使用頻度が少なくなり、スタータモータ等の負担が軽減され、燃費の向上が図られる。この際、上記始動制御装置による内燃機関の始動制御が不適切な場合のみ、スタータモータ等による始動をするように設定することも可能である。
【0029】
本発明によれば、気筒の停止位置を検出して始動において不適切な位置である場合には、内燃機関を逆転させて始動に適した位置に調整することで、始動を容易または可能にするものである。すなわち、併設した内燃機関のスタート装置を使用する場合にはそのスタート装置による始動を容易にし、またスタート装置を用いない自己始動の場合には自己始動が可能な位置に調整される。自己始動の場合には、正転後に後続気筒を連爆させることで、完全な始動が可能となる。
【0030】
本発明は、内燃機関を始動させる場合において広く適用可能であることは勿論であり、特に気筒数の少ない内燃機関において有効である。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る始動制御装置の具体的な実施態様を図面に基づいて説明する。
【0032】
図1は、本実施の形態に係る内燃機関1とその吸排気系の概略構成を示す図である。この内燃機関1は、4つの気筒2を有する4サイクル・ガソリン機関であり、気筒21が形成されたシリンダブロック1bには、機関出力軸たるクランクシャフト23が回転自在に支持され、このクランクシャフト23は、各気筒21内に摺動自在に装填されたピストン22と連結されている。
【0033】
各気筒21のピストン22上方には、ピストン22の頂面とシリンダヘッド1aの壁面とに囲まれた燃焼室24が形成されている。前記シリンダヘッド1aには、各気筒21の燃焼室24に臨むよう点火栓25が取り付けられている。
【0034】
前記シリンダヘッド1aにおいて各気筒21の燃焼室24に臨む部位には、吸気ポート26の開口端が2つ形成されるとともに、排気ポート27の開口端が2つ形成されている。そして、前記シリンダヘッド1aには、前記吸気ポート26の各開口端を開閉する吸気弁28と、前記排気ポート27の各開口端を開閉する排気弁29とが進退自在に設けられている。
【0035】
一方、燃焼室24内には、燃料を直接噴射する燃料噴射弁30が備えられている。
【0036】
このような内燃機関1は、クランクシャフト23の端部に取り付けられたタイミングロータと電磁ピックアップとからなり、シリンダブロック1bに取り付けられたクランクポジションセンサ51が備えられている。このクランクポジションセンサ51は、内燃機関1のクランクシャフトが一定角度回転する毎に検出信号(パルス)を出力し、この検出信号の時間的な間隔に基づいて機関回転数を演算する。
【0037】
また、クランクシャフト23にはフライホイール52が接続され、その外周に形成されたリングギアに噛み合うピニオンを備えたスタータモータ53が設けられ、内燃機関1のクランキングを行うことが可能となっている。
【0038】
さらに、内燃機関1のシリンダヘッド1aの出口に接続された冷却水路には、温度センサ42が設けられ、冷却水の温度が計測される。
【0039】
このように構成された内燃機関1には、この内燃機関1の運転状態を制御するための電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU、以下ECUと称する)20が併設されている。
【0040】
このECU20には、クランクポジションセンサ51、水温センサ42の他、図示しないスロットルポジションセンサ、エアフローメータ等、の各種センサが電気配線を介して接続されている。
【0041】
また、ECU20は、クランクポジションセンサ51から入力される信号に基づいて、燃料の噴射時期及び点火時期を演算する。
【0042】
これらに加えて、図示しないカム角センサを設けることで、このカム角センサが発するカム角信号により各気筒の位置(行程)を判別することができる。
【0043】
なお、内燃機関1の逆転を検知するために、逆転検知機能を持つセンサ、ここではホール素子を用いたホール効果センサ46によって、内燃機関1の逆転時のピストン22の位置を検出する。
【0044】
一方、内燃機関1を搭載した車輌の運転状態を検出するために、車速センサ43、シフト位置センサ44、及びクラッチ位置センサ45の各センサをそれぞれ備えている。ECU20は、車速センサ43から信号により車速を、シフト位置センサ44からの信号によりシフト位置を、またクラッチ位置センサ45からの信号によってシフト位置をそれぞれ判断することができ、車輌の運転状態を検出することが可能である。
(実施の形態1)
この実施の形態の始動装置では、ECU20は、先ず、車両が停止しているときに各気筒21の停止位置を検出する。車両が停止しているか否かは、車速センサ43、シフト位置センサ44からの信号により車速が0(ゼロ)で、かつ内燃機関1が停止している場合には、車両が停止している、と判断する。
【0045】
上記の内燃機関1の停止位置の検出は前述の方法によって行うが、この停止位置の検出は、内燃機関1の停止直後または始動時の一方、または停止後から始動時の間に停止位置が変化する可能性を考慮して、停止時と始動時の双方で行うようにしてもよい。または、内燃機関1の停止前に、その停止位置を予測して検出することも可能である。
【0046】
圧縮行程で停止している気筒を検出したら、ECU20はこれを記憶する。内燃機関1の始動指令があった時は、前記圧縮行程の気筒21内で燃料を噴射し、この燃料の気化に必要な一定時間の経過後に点火し、内燃機関1を逆転方向に回転させる。
【0047】
ところで、前記始動指令がされたか否かは、通常はイグニションスイッチがonにされたか否かにより判断できるが、例えば、車輌の停止、発信に合わせて内燃機関の自動停止、自動再スタートを行うエコランシステム等では、クラッチ位置センサ45からの信号によってクラッチペダルが踏まれたか否かを判断し、また、内燃機関の再スタートスイッチがonにされたか否か、あるいはブレーキペダルの踏込み力が弱まったか否か、等によって始動指令の有無を判断することができる。
【0048】
一般的に、内燃機関1は気筒21内のピストン22による空気の圧縮による抵抗で停止するので、抵抗が増加する圧縮行程後半で停止する(図2〜図4を参照)。この停止時においては、圧縮行程気筒は気筒の吸排気弁が閉じた状態なので、この気筒に燃料噴射、及び点火をすることで内燃機関1を逆転させることが可能である。
【0049】
また、ECU20は、クランク角度からピストン22の停止位置を検出して燃焼室24の容積、及び冷却水温から燃焼室24内の温度を推定して空気密度を求め、これらに基づいて筒内の空気量を演算する。ECU20は、この空気量に応じて噴射燃料量を決定し、かつ点火エネルギーを調整することで、爆発力を制御して内燃機関1を逆転させ、所望の位置までピストン22を移動させる。
【0050】
通常は、圧縮行程後半で停止している気筒21のピストン22を逆転させて圧縮行程の中間部、あるいは圧縮行程前半まで移動させる。このときの燃料噴射量及び点火時期は、ピストン22の停止位置、水温または/及び内燃機関が停止してからの積算時間に基づいて決定するが、最適混合気を形成可能な燃料量を基準に、状況に応じて噴射燃料量を減らして爆発力を必要な程度まで弱めるようにコントロールすることができる。
【0051】
このようにして、ピストン位置を調整することで、スタータモータ53による内燃機関1の始動時に、その起動電流を小さくすることが可能となる。すなわち、通常の圧縮行程後半の抵抗が大きい位置からのクランキングではスタータモータ53の起動電流が大きくなり、スタータモータ53の負担が大きい。そこで、起動電流が小さくても始動可能なようにピストン位置を調整することで、スタータモータ53の負担を軽減するともに、バッテリ等の負担をも軽くすることができる。このようにすれば、スタータモータ53、及びバッテリの寿命が延び、またスタータ装置の故障等のトラブルを減らすことが期待できる。
【0052】
また、上記の内燃機関1の逆転は、内燃機関1が暖機されていない状態、すなわち常温でも可能であるので、ピストン位置の調整は広範囲の条件下で実施することができる。
【0053】
以下、この実施の形態についてのフローチャートを図5に示し、以下、このフローチャートにしたがって始動制御を説明する。
【0054】
先ず、S101では、車両が完全に停止状態にあるか否かを判断する。車両が停止していると判断された場合にはS102に進む。車両が停止していないと判断されたら一旦このルーチンを終了する。
【0055】
S102では、内燃機関1の気筒21の停止位置を検出して圧縮行程で停止している気筒を特定する。
【0056】
次に、S103では、内燃機関1の始動指令があったか否かを判断する。ここではイグニションスイッチがonにされたか否かによりこれを判断する。内燃機関1の始動指令がされたと判断した場合にはS104に進む。反対に、始動指令はされていないと判断されたら、一旦このルーチンを終了する。
【0057】
その後、S104では、圧縮行程で停止している気筒のピストン位置を内燃機関1を逆転させて調整するため、その燃料噴射量及び点火時期を決定する。
【0058】
次に、S105で圧縮行程気筒に燃料を噴射し、S106で点火をする。
【0059】
S107では、内燃機関1が逆転してピストン位置が調整される。ここでは圧縮行程の気筒において、フリクションが少ない位置からスタートできる位置にピストンが移動する。
【0060】
したがって、スタータモータ53、またはモータゼネレータによる始動をする場合に、その起動電流を少なくすることで、スタータモータ53、バッテリ等の負担を軽減することが可能である。特に、頻繁に機関停止と再始動を繰り返すエコランシステムに搭載すれば、きわめて有効である。
【0061】
本実施の形態の装置によれば、特別な機構を設けることなく内燃機関の停止位置を変更することができる。
(実施の形態2)
この実施の形態の始動装置では、実施の形態1と同様に、ECUは、先ず、内燃機関1が停止しているとき、各気筒の停止位置を検出する。そして圧縮行程で停止している気筒を検出したら、この気筒内で所定量の燃料を噴射し、一定の気化時間の経過後に点火して内燃機関1を逆転方向に回転させる。
【0062】
上記の逆転によって、他の気筒の一つが膨張行程の中間部までピストン22が移動するように調整される。この膨張行程の気筒では、ピストン22が所定位置に停止した後、この気筒内に燃料を噴射し、燃料の気化に必要な一定の時間後に点火して内燃機関1を正転させる。このときの燃料噴射量や燃料の気化時間は、ECU20が、内燃機関1の停止位置、暖気状態、及び停止後の経過時間等に基づいて設定する。すなわち、ピストン停止位置から燃焼室内の空気量を計算して燃料噴射量を決定する。
【0063】
一方、停止時間が長くなれば燃焼室内温度が低下するので燃料の気化時間が長くなる。そこで、燃焼室内温度Th、燃料噴射量Q、気化時間tの関係をマップ化してECU20に記憶させておき、これに基づいて気化時間を設定し、燃料噴射から所定の気化時間経過後に点火をする。なお、気化時間を設定するために、前記燃焼室内温度に代えて、内燃機関1の停止からの時間をカウントしてこの停止時間を用いてもよい。
【0064】
以下、この実施の形態についてのフローチャートを図6に示し、以下、このフローチャートにしたがって始動制御を説明する。
【0065】
最初に、S201では、車両が完全に停止状態にあるか否かを判断する。車両が停止していると判断された場合にはS102に進む。車両が停止していないと判断されたら一旦このルーチンを終了する。
【0066】
S202では、内燃機関1の停止位置を検出して圧縮行程で停止している気筒を特定し、ECU20はこれを記憶する。
【0067】
次に、S203では、内燃機関1の始動指令があったか否かを判断する。ここではイグニションスイッチがonにされたか否かによりこれを判断する。内燃機関1の始動指令がされたと判断した場合にはS104に進む。反対に、始動指令はされていないと判断されたら、一旦このルーチンを終了する。
【0068】
その後、S204では、圧縮行程で停止している気筒のピストン位置を、内燃機関1を逆転させて調整するため、その燃料噴射量及び点火時期を決定する。
【0069】
次に、S205で圧縮行程気筒に燃料を噴射し、S206で点火がされると、内燃機関1が逆転してピストン位置が調整される。ここでは、圧縮行程の気筒では、フリクションが少ない位置からスタートできる位置にピストンが移動し、他の膨張行程の気筒では、始動に必要なストローク長が得られ、かつ燃焼に必要な空気量が確保できる位置、すなわち気筒の中間にピストン22が移動する。
【0070】
S207では、膨張行程にある気筒、すなわち上記のピストンが中間に位置して点火、始動に適した状態の気筒を検出する。
【0071】
S208では、ECU20は、膨張行程の気筒における燃料噴射量及び点火時期を算出する。その後、S209で点火をし、内燃機関1を正転させて始動を終了する。
【0072】
本実施の形態の装置による始動は、3気筒エンジン等の少気筒の内燃機関において有効である。少気筒の内燃機関では、図2に示すように、停止時に膨張行程にある気筒に着目すると、その停止位置が膨張行程の終わりから排気行程の始めになる確立が高い。この場合は膨張行程にある気筒の排気弁が開いているので、膨張行程で停止している気筒に燃料を噴射、点火する従来の方法では自己始動が不可能である。しかし、本実施の形態のように内燃機関を逆転させて膨張行程の中間位置までピストンを移動させることで、排気弁が閉じられ、かつ有効ストローク長が得られるので自己始動が可能となる。
【0073】
なお、本実施の形態で述べた方法によって自己始動が不調の場合は、通常のスタータモータ53による始動に切り換えることで、速やかに内燃機関を始動させるようにすることが好ましい。
【0074】
本実施の形態の装置は、通常の位置よりも始動し易い位置からの始動が可能となり、かつ少気筒の内燃機関であっても始動可能な位置に容易に変更できる。
(実施の形態3)
この実施の形態の始動装置では、内燃機関1が停止しているとき、各気筒の停止位置を検出し、前述の実施の形態2等で述べたように、内燃機関1を逆転方向に回転させる。
【0075】
この逆転によって、膨張行程の気筒でピストン22が所定位置に停止した後、この膨張行程の気筒内に燃料を噴射し、燃料の気化に必要な一定の時間後に点火して内燃機関1を正転させる。このとき、後続気筒が圧縮上死点を通過する以前に、筒内空気量に対応する燃料を噴射し、後続気筒が圧縮上死点付近で正転方向に最大の爆発力が発生する位置に達したときに点火する。このようにして、後続気筒を次々に連爆させて自立運転に至らしめ、内燃機関の始動を完了する。
【0076】
以下、図7のフローチャートにしたがって本実施の形態の始動制御を説明する。
【0077】
S301からS309までは、前記の実施の形態2と同様であるので、その説明を省略する。
【0078】
S309では、膨張行程の気筒に点火して内燃機関1を正転させるが、S310では、その気筒に後続する気筒のクランク位置を検出して膨張行程にある気筒を次々に特定し、この特定した気筒が圧縮上死点に至る前に燃料を噴射する。
【0079】
次に、S311では、圧縮行程にある気筒の点火時期を決定して点火する。通常は、点火時期は圧縮上死点を越えた直後が好ましい。この位置での点火は、正転方向に大きなトルクを発生させる爆発を生じるからである。このようにして、後続する膨張行程気筒を連爆させて内燃機関1を完全に始動させる。
【0080】
本実施の形態の装置では、膨張行程気筒の点火に続いて後続の膨張気筒を連爆させるので、迅速な始動が可能となる。
(実施の形態4)
この実施の形態の始動装置では、内燃機関1が停止しているときに圧縮行程で停止している気筒を検出し、これに燃料噴射及び点火をすることで内燃機関1を逆転方向に回転させることは前述したものと同様である。しかし、ここでは、逆転時に、圧縮行程で停止している気筒に先行する膨張行程もしくは排気行程に停止している気筒に燃料噴射し、圧縮行程気筒の噴射点火による内燃機関の逆転でこれらの気筒を圧縮することが特徴である。そして、これらの先行気筒が圧縮上死点に到達する以前の位置で、筒内圧が上昇し、かつ逆転速度が低下した位置に到達した時点で点火し、内燃機関を正転させる。
【0081】
こような膨張行程もしくは排気行程に停止している気筒を、内燃機関の逆転により圧縮する場合には、前述した実施の形態のように、ピストン位置の調整のみを行う場合と異なり、逆転は始動時に行う。
【0082】
前記先行気筒は、内燃機関1の逆転によって疑似的にスタータモータ53によって正転させて圧縮上死点を越えたときと同様の状態、すなわち一定量の混合気を圧縮して有効ストロークが確保された状態にすることができる。この状態で点火すれば、通常の始動爆発力と同等のトルクが得られるので、確実な始動が可能である。このときの燃料噴射量、気化時間は内燃機関の停止位置、暖気状態、及び停止後の経過時間等に基づいて決定される。
【0083】
上記の内燃機関1の逆転のための燃焼は、前記先行気筒の圧縮を目的とするので、その際に要求される燃料噴射量、点火エネルギーは先の実施の形態1の場合に比べて相対的に多くなる。ただし、その最大量は逆転により圧縮上死点を逆転方向に通過し、逆転が加速されることがない範囲に設定する。
【0084】
以下、図8のフローチャートにしたがって本実施の形態の始動制御を説明する。
【0085】
最初に、S401では、車両が完全に停止状態にあるか否かを判断する。車両が停止していると判断された場合にはS402に進む。車両が停止していないと判断されたら一旦このルーチンを終了する。
【0086】
S402では、内燃機関1の停止位置を検出して圧縮行程で停止している気筒、及びこの気筒に先行する膨張行程にある気筒を検出して特定し、ECU20はこれらを記憶する。
【0087】
次に、S403では、内燃機関1の始動指令があったか否かを判断する。ここではイグニションスイッチがonにされたか否かによりこれを判断する。内燃機関1の始動指令がされたと判断した場合にはS404に進む。反対に、始動指令はされていないと判断されたら、一旦このルーチンを終了する。
【0088】
その後、S404では、圧縮行程で停止している気筒のピストン位置を、内燃機関1を逆転させて調整するため、その燃料噴射量及び点火時期を決定する。
【0089】
次に、S405で圧縮行程気筒に燃料を噴射する。続けて、S406では、これに先行する膨張行程気筒に燃料を噴射する。なお、ここで先行する膨張気筒の他に、さらに先行する排気行程の気筒にも燃料を噴射しておくことも可能である。
【0090】
S407で、圧縮行程気筒に点火がされると、内燃機関1が逆転してピストン位置が調整されると同時に、これに先行する膨張行程気筒では混合気が圧縮される。この膨張行程の気筒では、一定量の混合気を圧縮して有効ストロークが確保された状態までピストン22が移動する。
【0091】
S408では、圧縮された膨張行程にある気筒の点火時期を決定する。この時期は、逆転にうち勝って内燃機関1を正転させることができ、かつ有効ストローク量が最大限確保できる位置である。
【0092】
S409では、先行する膨張気筒に点火がされ、内燃機関1は逆転から正転に転じる。
【0093】
続いて、S410では、これに後続する圧縮行程にある気筒を特定し、ピストン22が上死点に至る前に燃料を噴射する。
【0094】
S411では、S410で燃料が噴射された気筒が上死点を越え、膨張行程となった時期に点火をする。
【0095】
上記S410及びS411は、後続気筒について続けて実施してこれらを連爆させて内燃機関1の始動を終了する。
【0096】
さらに、この実施の形態の始動装置の制御における各気筒の状態を、図9に示す。ここでは、内燃機関1が停止しているときに圧縮行程で停止している第4気筒、及び膨張行程にある第3気筒を検出する。この第4気筒に燃料噴射をし、かつ第3気筒に燃料噴射をする。次に第4気筒に点火をすることで、内燃機関1を逆転方向に回転させる(▲1▼の行程)。
【0097】
このとき、膨張行程の第3気筒を圧縮し、膨張行程の最初まで逆転したところで点火をする(▲2▼の行程)。この点火により内燃機関は逆転から正転に移行する。
【0098】
次に、圧縮行程にある第4気筒に燃料噴射し、膨張行程に到達したときに点火する(▲3▼の行程)。同様に、圧縮行程にある第2気筒に燃料噴射して、圧縮上死点付近で点火する(▲4▼の行程)。
【0099】
なお、▲1▼行程の燃焼気筒と▲3▼の行程の燃焼気筒はともに第4気筒であるので、▲3▼の行程での燃焼時に気筒内の残存酸素の不足が生じる懸念があるが、▲1▼の行程の燃焼時の逆転によって吸気弁開弁位置までピストンが移動するので、この時点である程度気筒内が掃気され、▲3▼の行程の燃焼に必要な酸素が燃焼室に補充されるので問題はない。
【0100】
本実施の形態では、以上のようにして、内燃機関1が始動する。
【0101】
なお、内燃機関の始動のために、▲2▼の行程の燃焼では、後続気筒を圧縮して圧縮上死点を越えさせることが必要であるが、この実施の形態では▲2▼の行程の燃焼を予め圧縮してから行うため、大きなトルクを得ることができるので有利である。
【0102】
また、少気筒の内燃機関では、後続気筒が圧縮上死点を越えるために多くの回転角が必要となるが、少気筒の場合は、回転角が大きければ圧縮時に気筒内の多くの空気が利用できるので、少気筒のデメリットを相殺することができる。
【0103】
さらに、内燃機関が逆転した後に正転して始動するので、始動時の振動が相殺され小さくなる利点があり、また、始動可能な領域が広いので燃費上も有利である。
(その他の実施の形態)
本発明の始動装置は、アイドリング時に内燃機関を一旦停止させ、再始動させるいわゆるエコランシステムに搭載することができる。エコランシステムとは、渋滞、信号待ち等、アイドリング状態で停車している時間が多い場合に、車輌の停止、発信に合わせて内燃機関の自動停止、自動再スタートを行うことで無駄なアイドリングをなくすものである。
【0104】
このシステムの基本的な構成は、ECUが、車速、内燃機関の回転数、変速機のギア位置、マニュアル車ではこれらに加えてクラッチペダルの踏み込みの有無、等の情報に基づいて、内燃機関の停止条件または始動条件が満たされているか否かを判定する。これらに加えて、運転者が内燃機関のスタートスイッチを操作して、内燃機関の始動をさせる場合もある。
【0105】
ECUは、上述した車速、内燃機関の回転数等から車輌が停止しているものと判断すると、イグニッション回路を切断する等の方法によって、内燃機関を停止させる。
【0106】
また、クラッチペダルを踏み込むか、またはスタートスイッチをonにしてギアをニュートラル位置にする等の所定の操作をして内燃機関を再始動させるものである。すなわち、ECUは、始動指令の有無を所定の操作に基づいて判断する。
【0107】
このような、頻繁に内燃機関の停止と再始動を繰り返す場合に本発明の始動装置を適用すれば、内燃機関の再始動時に作動するモータゼネレータ、またはスタータモータの起動電流を小さくすることで、これらの負担の軽減と装置の小型化を実現できる。
【0108】
さらに、スタータモータやモータゼネレータを作動させることなく、内燃機関の再始動が可能とすることができるので、これらのスタータ装置の寿命を延ばし、故障の可能性を低減させることができる。また、モータ電流が不要であるので、燃費上も有利である。
【0109】
一方、フリクションの大きい低温時等は、スタータ装置による通常のスタータを実行できるようにすることで、始動の確実性を担保する。実際には、本発明の始動装置が使用し易い条件下であっても、本発明の始動装置による始動を試み、一定時間以内に始動が不可能であった場合にはスタータモータが作動して、始動が完了するようにすることが好ましい。
【0110】
上述の実施の形態は、4気筒の内燃機関について述べたが、勿論、本発明を3気筒や6気筒、その他の気筒数の内燃機関について適用することが可能である。
【0111】
【発明の効果】
本発明に係る始動装置によれば、始動に必要な駆動トルクを容易に得ることができるので、スタータ装置の負担が軽減される。また、少ない気筒数の内燃機関においても自己始動を可能とするものである。
【0112】
また、エコランシステムに適用することで、このシステムにおける内燃機関の再始動時のスタータ装置の負担を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る内燃機関の概略構成図である。
【図2】3気筒内燃機関の停止しやすい領域を示す図である。
【図3】4気筒内燃機関の停止しやすい領域を示す図である。
【図4】6気筒内燃機関の停止しやすい領域を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における始動制御の実行フローを示すフローチャート図である。
【図6】本発明の実施の形態2における始動制御の実行フローを示すフローチャート図である。
【図7】本発明の実施の形態3における始動制御の実行フローを示すフローチャート図である。
【図8】本発明の実施の形態4における始動制御の実行フローを示すフローチャート図である。
【図9】本発明の実施の形態4における始動時の各気筒の状態を示す図である。
【符号の説明】
1・・・・内燃機関
20・・・ECU
21・・・気筒
22・・・ピストン
23・・・クランクシャフト
24・・・燃焼室
25・・・点火栓
26・・・・吸気管
27・・・排気管
28・・・吸気弁
29・・・排気弁
30・・・・燃料噴射弁
42・・・水温センサ
43・・・車速センサ
44・・・シフト位置センサ
45・・・クラッチ位置センサ
46・・・ホール効果センサ
51・・・クランクポジションセンサ
52・・・フライホイール
53・・・スタータモータ
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒内噴射型の内燃機関に適用される始動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
筒内噴射型の内燃機関の始動装置では、停止している内燃機関の膨張行程にある気筒を検出し、この気筒に燃料を直接噴射して点火することでスタータレスで始動させることが知られている。
【0003】
従来、直噴型エンジンが停止しているときに膨張行程にある気筒を特定し、この特定された気筒に燃料を噴射して点火するエンジンの始動システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、停止している膨張行程にある気筒に燃料を直接噴射して点火して内燃機関を始動させるが、停止している気筒は内圧が低下しているために、膨張行程にある気筒内で燃焼を生じさせても、他の気筒の圧縮圧にうち勝ってピストンを押し下げる燃焼圧を得ることは難しい。そこで、膨張行程にある気筒に燃料を噴射、点火しても始動、爆発力が不十分なときはスタータモータを用いこれをアシストする始動装置が示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらには、別の例として、膨張行程にある気筒を検出し、この気筒に燃料を直接噴射して点火することで始動させるが、この際、圧縮行程にある気筒の圧縮力を低下させる低圧圧縮制御手段を設けて、圧縮行程にある気筒の吸気弁、或いは、その気筒の補助排気弁を開くように制御し、また始動時の膨張力を大きくする高圧膨張制御手段を備える等の構成を採用することで、より確実な始動を可能にするものが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−125136号公報
【特許文献2】
特開2002−4985号公報
【特許文献3】
特開2002−39038号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術はいずれも内燃機関の膨張行程で停止している気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を始動させるものであるが、実際には始動に必要な駆動トルクを得ることは容易ではなく、次のような問題点を指摘することができる。
【0008】
第1に、内燃機関の残留圧は数秒で漏れるため、膨張行程での燃焼は大気圧で行われることになる。このため、通常の圧縮状態での燃焼に比べると着火性が悪く、かつ発生する爆発力も小さいので、始動に必要なトルクを得ることは容易ではない。
【0009】
第2に、膨張行程で停止している気筒に点火する場合でも、有効ストローク長を得るために点火位置は上死点付近が望ましい反面、発生する熱量は筒内の酸素量によって決まるので膨張行程後半で筒内容積が多い領域が有利である。このような相反する要求のために、この燃焼形態では膨張行程の中間付近が、有効ストローク長と発生熱量との妥協点となる。しかし、常にピストンがこのような位置で停止しているとは限らない。
【0010】
第3に、内燃機関を自然に停止させた場合には、通常はフリクションの大きくなる圧縮行程後半でピストンが停止する。すなわち、図2に示すように、3気筒エンジンでは、膨張行程の気筒は、膨張行程終了から排気行程前半で排気弁が開弁している状態となる。そのため、この気筒に燃料を噴射し点火してもエンジンは作動しない。
【0011】
図3に示す4気筒エンジンでは、先行気筒は膨張行程後半であるので、燃料を噴射点火することでエンジン起動は可能だが、作動直後に排気弁が開弁するため、充分な駆動トルクを得ることができないので、完全な始動に至らない可能性がある。
【0012】
図4に示す6気筒エンジンでは、先行気筒は膨張行程前半であるので始動に有利な状態にあるといえる。
【0013】
このように、気筒数が少ないエンジンでは、上述した従来の始動方法による始動は困難であり、少なくとも4気筒以上の多気筒エンジンでなければ始動が不可能である。また、エンジンの停止位置によって始動の可能性が大きく左右されてしまう。
【0014】
本発明は上記の問題を解決するためにされたものであり、始動に必要な駆動トルクを得ることができ、かつ少ない気筒数の内燃機関にも適応可能な内燃機関の始動制御装置を提供することを技術的課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明は、気筒の停止位置を検出して、自己始動に不適切な位置に停止している場合には、内燃機関を逆転させて始動に適した位置に調整することで、自己始動を容易または可能にするものである。
【0016】
第1の発明は、気筒内に燃料を噴射し、火花点火で運転される内燃機関において、内燃機関の停止時に気筒のピストン停止位置を検出し、内燃機関が自己始動不可能または自己始動しにくい位置にピストンがあることが検出されたときは、圧縮行程で停止している気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を逆転させて内燃機関が自己始動可能または自己始動し易い位置にピストンを移動させることを特徴とする。
【0017】
このようにすれば、既存の構造を変えることなく、モータの設置等の特別な手段を設けずにピストン位置の調整が可能である。
【0018】
また、圧縮行程で停止している気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を逆転させる場合には、ピストンが圧縮上死点を越えない範囲でピストンの位置を調整することが好ましい。このようにすれば、圧縮上死点を越えるための大きなトルクが不要になる。
【0019】
さらに、圧縮行程で停止している前記気筒のピストンの位置の調整のための爆発力を制御する爆発力調整手段を備えることができる。この爆発力調整手段は、気筒内の空気量を検出し、これに応じて燃料噴射量、点火エネルギーを調整することで、自己始動可能な最適な位置に変更する。
【0020】
前記爆発力調整手段は、燃料噴射後、さらに所定の燃料気化時間が経過した後に点火するものであり、内燃機関の停止位置、内燃機関の暖機状態、内燃機関の停止後の経過時間のうち、少なくとも一つに基づいて爆発力の調整をすることが可能である。
【0021】
内燃機関の停止位置で必要な逆転の程度が決まり、また、暖気状態で燃料の気化時間が変化するので、これらに基づいて燃料噴射量及び/または気化時間を算定する。さらに、内燃機関の停止後の経過時間で、膨張行程にある気筒の筒内圧が漏れ等によって変化するので、停止後の経過時間に基づいて燃料噴射量の設定を変更することができる。
【0022】
このような内燃機関は、圧縮行程で停止している前記気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を逆転させて自己始動可能な位置に調整した後、膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火して、内燃機関を正転させることで始動させることができる。すなわち、逆転により自己始動が可能、または始動時のフリクションが軽減される位置になった後、膨張行程での燃料噴射及び点火によって内燃機関を始動させる。この膨張行程での点火は、逆転力にうち勝って正転を開始することが可能な位置で行われる。
【0023】
このようにすればスタータレスの始動が可能であるばかりでなく、スタータモータやモータゼネレータによって内燃機関を始動させる場合でも、起動トルクが少ないところから始動させることができ、これらの起動電流を小さくして、スタータモータやモータゼネレータの負担を軽減することができる。
【0024】
次に、膨張行程にある前記気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を始動させる際には、前記気筒の後続気筒は、圧縮行程で燃料を噴射して膨張行程で点火をすることが好適である。このようにすれば、圧縮された混合気に点火することができ、大きな爆発トルクを得ることができる。
【0025】
始動に際しては、圧縮行程で停止している前記気筒に先行する膨張行程または排気行程で停止している気筒に燃料を噴射し、圧縮行程で停止している前記気筒の燃料の噴射及び点火による内燃機関の逆転に伴って、前記先行する膨張行程または排気行程で停止していた気筒内の混合気を圧縮して、この圧縮により回転速度が低下したときに点火し、内燃機関を正転させることができる。このようにして、内燃機関の逆転時に膨張行程あるいは排気行程にある気筒を、燃料を含んだ状態で圧縮しておき、この状態で点火することで始動時に大きなトルクを得ることが可能となる。
【0026】
この場合に、圧縮行程で停止している前記気筒に先行する膨張行程または排気行程で停止している気筒の後続気筒は、圧縮行程で燃料を噴射して膨張行程で点火をすることが好ましい。さらに、圧縮された混合気に点火をすることを継続することで、大きな爆発トルクを得ることができる。
【0027】
上述した膨張行程における燃料の噴射後の点火は、圧縮上死点近傍で内燃機関を正転させるために最大の爆発力が得られる位置であり、圧縮途中で点火してもよい。すなわち、逆転時のクランク角と回転速度を判別し、正転可能な位置であり、逆転速度が速ければ圧縮上死点よりも手前でとなり、反対に回転速度がゆっくりならば、ほとんど圧縮上死点直前となる。逆転から正転に切り替わる際の内燃機関転は、一旦停止してもしなくともよい。
【0028】
上述したような内燃機関の始動制御装置は、内燃機関を搭載した車輌が停止していることを検知したとき、一時的に内燃機関を停止させるように構成された、いわゆるエコランシステムに使用するのに好適である。すなわち、内燃機関が一時停止した後の再始動時には、上記のような始動制御を実施することにより、スタータモータやモータゼネレータの使用頻度が少なくなり、スタータモータ等の負担が軽減され、燃費の向上が図られる。この際、上記始動制御装置による内燃機関の始動制御が不適切な場合のみ、スタータモータ等による始動をするように設定することも可能である。
【0029】
本発明によれば、気筒の停止位置を検出して始動において不適切な位置である場合には、内燃機関を逆転させて始動に適した位置に調整することで、始動を容易または可能にするものである。すなわち、併設した内燃機関のスタート装置を使用する場合にはそのスタート装置による始動を容易にし、またスタート装置を用いない自己始動の場合には自己始動が可能な位置に調整される。自己始動の場合には、正転後に後続気筒を連爆させることで、完全な始動が可能となる。
【0030】
本発明は、内燃機関を始動させる場合において広く適用可能であることは勿論であり、特に気筒数の少ない内燃機関において有効である。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る始動制御装置の具体的な実施態様を図面に基づいて説明する。
【0032】
図1は、本実施の形態に係る内燃機関1とその吸排気系の概略構成を示す図である。この内燃機関1は、4つの気筒2を有する4サイクル・ガソリン機関であり、気筒21が形成されたシリンダブロック1bには、機関出力軸たるクランクシャフト23が回転自在に支持され、このクランクシャフト23は、各気筒21内に摺動自在に装填されたピストン22と連結されている。
【0033】
各気筒21のピストン22上方には、ピストン22の頂面とシリンダヘッド1aの壁面とに囲まれた燃焼室24が形成されている。前記シリンダヘッド1aには、各気筒21の燃焼室24に臨むよう点火栓25が取り付けられている。
【0034】
前記シリンダヘッド1aにおいて各気筒21の燃焼室24に臨む部位には、吸気ポート26の開口端が2つ形成されるとともに、排気ポート27の開口端が2つ形成されている。そして、前記シリンダヘッド1aには、前記吸気ポート26の各開口端を開閉する吸気弁28と、前記排気ポート27の各開口端を開閉する排気弁29とが進退自在に設けられている。
【0035】
一方、燃焼室24内には、燃料を直接噴射する燃料噴射弁30が備えられている。
【0036】
このような内燃機関1は、クランクシャフト23の端部に取り付けられたタイミングロータと電磁ピックアップとからなり、シリンダブロック1bに取り付けられたクランクポジションセンサ51が備えられている。このクランクポジションセンサ51は、内燃機関1のクランクシャフトが一定角度回転する毎に検出信号(パルス)を出力し、この検出信号の時間的な間隔に基づいて機関回転数を演算する。
【0037】
また、クランクシャフト23にはフライホイール52が接続され、その外周に形成されたリングギアに噛み合うピニオンを備えたスタータモータ53が設けられ、内燃機関1のクランキングを行うことが可能となっている。
【0038】
さらに、内燃機関1のシリンダヘッド1aの出口に接続された冷却水路には、温度センサ42が設けられ、冷却水の温度が計測される。
【0039】
このように構成された内燃機関1には、この内燃機関1の運転状態を制御するための電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU、以下ECUと称する)20が併設されている。
【0040】
このECU20には、クランクポジションセンサ51、水温センサ42の他、図示しないスロットルポジションセンサ、エアフローメータ等、の各種センサが電気配線を介して接続されている。
【0041】
また、ECU20は、クランクポジションセンサ51から入力される信号に基づいて、燃料の噴射時期及び点火時期を演算する。
【0042】
これらに加えて、図示しないカム角センサを設けることで、このカム角センサが発するカム角信号により各気筒の位置(行程)を判別することができる。
【0043】
なお、内燃機関1の逆転を検知するために、逆転検知機能を持つセンサ、ここではホール素子を用いたホール効果センサ46によって、内燃機関1の逆転時のピストン22の位置を検出する。
【0044】
一方、内燃機関1を搭載した車輌の運転状態を検出するために、車速センサ43、シフト位置センサ44、及びクラッチ位置センサ45の各センサをそれぞれ備えている。ECU20は、車速センサ43から信号により車速を、シフト位置センサ44からの信号によりシフト位置を、またクラッチ位置センサ45からの信号によってシフト位置をそれぞれ判断することができ、車輌の運転状態を検出することが可能である。
(実施の形態1)
この実施の形態の始動装置では、ECU20は、先ず、車両が停止しているときに各気筒21の停止位置を検出する。車両が停止しているか否かは、車速センサ43、シフト位置センサ44からの信号により車速が0(ゼロ)で、かつ内燃機関1が停止している場合には、車両が停止している、と判断する。
【0045】
上記の内燃機関1の停止位置の検出は前述の方法によって行うが、この停止位置の検出は、内燃機関1の停止直後または始動時の一方、または停止後から始動時の間に停止位置が変化する可能性を考慮して、停止時と始動時の双方で行うようにしてもよい。または、内燃機関1の停止前に、その停止位置を予測して検出することも可能である。
【0046】
圧縮行程で停止している気筒を検出したら、ECU20はこれを記憶する。内燃機関1の始動指令があった時は、前記圧縮行程の気筒21内で燃料を噴射し、この燃料の気化に必要な一定時間の経過後に点火し、内燃機関1を逆転方向に回転させる。
【0047】
ところで、前記始動指令がされたか否かは、通常はイグニションスイッチがonにされたか否かにより判断できるが、例えば、車輌の停止、発信に合わせて内燃機関の自動停止、自動再スタートを行うエコランシステム等では、クラッチ位置センサ45からの信号によってクラッチペダルが踏まれたか否かを判断し、また、内燃機関の再スタートスイッチがonにされたか否か、あるいはブレーキペダルの踏込み力が弱まったか否か、等によって始動指令の有無を判断することができる。
【0048】
一般的に、内燃機関1は気筒21内のピストン22による空気の圧縮による抵抗で停止するので、抵抗が増加する圧縮行程後半で停止する(図2〜図4を参照)。この停止時においては、圧縮行程気筒は気筒の吸排気弁が閉じた状態なので、この気筒に燃料噴射、及び点火をすることで内燃機関1を逆転させることが可能である。
【0049】
また、ECU20は、クランク角度からピストン22の停止位置を検出して燃焼室24の容積、及び冷却水温から燃焼室24内の温度を推定して空気密度を求め、これらに基づいて筒内の空気量を演算する。ECU20は、この空気量に応じて噴射燃料量を決定し、かつ点火エネルギーを調整することで、爆発力を制御して内燃機関1を逆転させ、所望の位置までピストン22を移動させる。
【0050】
通常は、圧縮行程後半で停止している気筒21のピストン22を逆転させて圧縮行程の中間部、あるいは圧縮行程前半まで移動させる。このときの燃料噴射量及び点火時期は、ピストン22の停止位置、水温または/及び内燃機関が停止してからの積算時間に基づいて決定するが、最適混合気を形成可能な燃料量を基準に、状況に応じて噴射燃料量を減らして爆発力を必要な程度まで弱めるようにコントロールすることができる。
【0051】
このようにして、ピストン位置を調整することで、スタータモータ53による内燃機関1の始動時に、その起動電流を小さくすることが可能となる。すなわち、通常の圧縮行程後半の抵抗が大きい位置からのクランキングではスタータモータ53の起動電流が大きくなり、スタータモータ53の負担が大きい。そこで、起動電流が小さくても始動可能なようにピストン位置を調整することで、スタータモータ53の負担を軽減するともに、バッテリ等の負担をも軽くすることができる。このようにすれば、スタータモータ53、及びバッテリの寿命が延び、またスタータ装置の故障等のトラブルを減らすことが期待できる。
【0052】
また、上記の内燃機関1の逆転は、内燃機関1が暖機されていない状態、すなわち常温でも可能であるので、ピストン位置の調整は広範囲の条件下で実施することができる。
【0053】
以下、この実施の形態についてのフローチャートを図5に示し、以下、このフローチャートにしたがって始動制御を説明する。
【0054】
先ず、S101では、車両が完全に停止状態にあるか否かを判断する。車両が停止していると判断された場合にはS102に進む。車両が停止していないと判断されたら一旦このルーチンを終了する。
【0055】
S102では、内燃機関1の気筒21の停止位置を検出して圧縮行程で停止している気筒を特定する。
【0056】
次に、S103では、内燃機関1の始動指令があったか否かを判断する。ここではイグニションスイッチがonにされたか否かによりこれを判断する。内燃機関1の始動指令がされたと判断した場合にはS104に進む。反対に、始動指令はされていないと判断されたら、一旦このルーチンを終了する。
【0057】
その後、S104では、圧縮行程で停止している気筒のピストン位置を内燃機関1を逆転させて調整するため、その燃料噴射量及び点火時期を決定する。
【0058】
次に、S105で圧縮行程気筒に燃料を噴射し、S106で点火をする。
【0059】
S107では、内燃機関1が逆転してピストン位置が調整される。ここでは圧縮行程の気筒において、フリクションが少ない位置からスタートできる位置にピストンが移動する。
【0060】
したがって、スタータモータ53、またはモータゼネレータによる始動をする場合に、その起動電流を少なくすることで、スタータモータ53、バッテリ等の負担を軽減することが可能である。特に、頻繁に機関停止と再始動を繰り返すエコランシステムに搭載すれば、きわめて有効である。
【0061】
本実施の形態の装置によれば、特別な機構を設けることなく内燃機関の停止位置を変更することができる。
(実施の形態2)
この実施の形態の始動装置では、実施の形態1と同様に、ECUは、先ず、内燃機関1が停止しているとき、各気筒の停止位置を検出する。そして圧縮行程で停止している気筒を検出したら、この気筒内で所定量の燃料を噴射し、一定の気化時間の経過後に点火して内燃機関1を逆転方向に回転させる。
【0062】
上記の逆転によって、他の気筒の一つが膨張行程の中間部までピストン22が移動するように調整される。この膨張行程の気筒では、ピストン22が所定位置に停止した後、この気筒内に燃料を噴射し、燃料の気化に必要な一定の時間後に点火して内燃機関1を正転させる。このときの燃料噴射量や燃料の気化時間は、ECU20が、内燃機関1の停止位置、暖気状態、及び停止後の経過時間等に基づいて設定する。すなわち、ピストン停止位置から燃焼室内の空気量を計算して燃料噴射量を決定する。
【0063】
一方、停止時間が長くなれば燃焼室内温度が低下するので燃料の気化時間が長くなる。そこで、燃焼室内温度Th、燃料噴射量Q、気化時間tの関係をマップ化してECU20に記憶させておき、これに基づいて気化時間を設定し、燃料噴射から所定の気化時間経過後に点火をする。なお、気化時間を設定するために、前記燃焼室内温度に代えて、内燃機関1の停止からの時間をカウントしてこの停止時間を用いてもよい。
【0064】
以下、この実施の形態についてのフローチャートを図6に示し、以下、このフローチャートにしたがって始動制御を説明する。
【0065】
最初に、S201では、車両が完全に停止状態にあるか否かを判断する。車両が停止していると判断された場合にはS102に進む。車両が停止していないと判断されたら一旦このルーチンを終了する。
【0066】
S202では、内燃機関1の停止位置を検出して圧縮行程で停止している気筒を特定し、ECU20はこれを記憶する。
【0067】
次に、S203では、内燃機関1の始動指令があったか否かを判断する。ここではイグニションスイッチがonにされたか否かによりこれを判断する。内燃機関1の始動指令がされたと判断した場合にはS104に進む。反対に、始動指令はされていないと判断されたら、一旦このルーチンを終了する。
【0068】
その後、S204では、圧縮行程で停止している気筒のピストン位置を、内燃機関1を逆転させて調整するため、その燃料噴射量及び点火時期を決定する。
【0069】
次に、S205で圧縮行程気筒に燃料を噴射し、S206で点火がされると、内燃機関1が逆転してピストン位置が調整される。ここでは、圧縮行程の気筒では、フリクションが少ない位置からスタートできる位置にピストンが移動し、他の膨張行程の気筒では、始動に必要なストローク長が得られ、かつ燃焼に必要な空気量が確保できる位置、すなわち気筒の中間にピストン22が移動する。
【0070】
S207では、膨張行程にある気筒、すなわち上記のピストンが中間に位置して点火、始動に適した状態の気筒を検出する。
【0071】
S208では、ECU20は、膨張行程の気筒における燃料噴射量及び点火時期を算出する。その後、S209で点火をし、内燃機関1を正転させて始動を終了する。
【0072】
本実施の形態の装置による始動は、3気筒エンジン等の少気筒の内燃機関において有効である。少気筒の内燃機関では、図2に示すように、停止時に膨張行程にある気筒に着目すると、その停止位置が膨張行程の終わりから排気行程の始めになる確立が高い。この場合は膨張行程にある気筒の排気弁が開いているので、膨張行程で停止している気筒に燃料を噴射、点火する従来の方法では自己始動が不可能である。しかし、本実施の形態のように内燃機関を逆転させて膨張行程の中間位置までピストンを移動させることで、排気弁が閉じられ、かつ有効ストローク長が得られるので自己始動が可能となる。
【0073】
なお、本実施の形態で述べた方法によって自己始動が不調の場合は、通常のスタータモータ53による始動に切り換えることで、速やかに内燃機関を始動させるようにすることが好ましい。
【0074】
本実施の形態の装置は、通常の位置よりも始動し易い位置からの始動が可能となり、かつ少気筒の内燃機関であっても始動可能な位置に容易に変更できる。
(実施の形態3)
この実施の形態の始動装置では、内燃機関1が停止しているとき、各気筒の停止位置を検出し、前述の実施の形態2等で述べたように、内燃機関1を逆転方向に回転させる。
【0075】
この逆転によって、膨張行程の気筒でピストン22が所定位置に停止した後、この膨張行程の気筒内に燃料を噴射し、燃料の気化に必要な一定の時間後に点火して内燃機関1を正転させる。このとき、後続気筒が圧縮上死点を通過する以前に、筒内空気量に対応する燃料を噴射し、後続気筒が圧縮上死点付近で正転方向に最大の爆発力が発生する位置に達したときに点火する。このようにして、後続気筒を次々に連爆させて自立運転に至らしめ、内燃機関の始動を完了する。
【0076】
以下、図7のフローチャートにしたがって本実施の形態の始動制御を説明する。
【0077】
S301からS309までは、前記の実施の形態2と同様であるので、その説明を省略する。
【0078】
S309では、膨張行程の気筒に点火して内燃機関1を正転させるが、S310では、その気筒に後続する気筒のクランク位置を検出して膨張行程にある気筒を次々に特定し、この特定した気筒が圧縮上死点に至る前に燃料を噴射する。
【0079】
次に、S311では、圧縮行程にある気筒の点火時期を決定して点火する。通常は、点火時期は圧縮上死点を越えた直後が好ましい。この位置での点火は、正転方向に大きなトルクを発生させる爆発を生じるからである。このようにして、後続する膨張行程気筒を連爆させて内燃機関1を完全に始動させる。
【0080】
本実施の形態の装置では、膨張行程気筒の点火に続いて後続の膨張気筒を連爆させるので、迅速な始動が可能となる。
(実施の形態4)
この実施の形態の始動装置では、内燃機関1が停止しているときに圧縮行程で停止している気筒を検出し、これに燃料噴射及び点火をすることで内燃機関1を逆転方向に回転させることは前述したものと同様である。しかし、ここでは、逆転時に、圧縮行程で停止している気筒に先行する膨張行程もしくは排気行程に停止している気筒に燃料噴射し、圧縮行程気筒の噴射点火による内燃機関の逆転でこれらの気筒を圧縮することが特徴である。そして、これらの先行気筒が圧縮上死点に到達する以前の位置で、筒内圧が上昇し、かつ逆転速度が低下した位置に到達した時点で点火し、内燃機関を正転させる。
【0081】
こような膨張行程もしくは排気行程に停止している気筒を、内燃機関の逆転により圧縮する場合には、前述した実施の形態のように、ピストン位置の調整のみを行う場合と異なり、逆転は始動時に行う。
【0082】
前記先行気筒は、内燃機関1の逆転によって疑似的にスタータモータ53によって正転させて圧縮上死点を越えたときと同様の状態、すなわち一定量の混合気を圧縮して有効ストロークが確保された状態にすることができる。この状態で点火すれば、通常の始動爆発力と同等のトルクが得られるので、確実な始動が可能である。このときの燃料噴射量、気化時間は内燃機関の停止位置、暖気状態、及び停止後の経過時間等に基づいて決定される。
【0083】
上記の内燃機関1の逆転のための燃焼は、前記先行気筒の圧縮を目的とするので、その際に要求される燃料噴射量、点火エネルギーは先の実施の形態1の場合に比べて相対的に多くなる。ただし、その最大量は逆転により圧縮上死点を逆転方向に通過し、逆転が加速されることがない範囲に設定する。
【0084】
以下、図8のフローチャートにしたがって本実施の形態の始動制御を説明する。
【0085】
最初に、S401では、車両が完全に停止状態にあるか否かを判断する。車両が停止していると判断された場合にはS402に進む。車両が停止していないと判断されたら一旦このルーチンを終了する。
【0086】
S402では、内燃機関1の停止位置を検出して圧縮行程で停止している気筒、及びこの気筒に先行する膨張行程にある気筒を検出して特定し、ECU20はこれらを記憶する。
【0087】
次に、S403では、内燃機関1の始動指令があったか否かを判断する。ここではイグニションスイッチがonにされたか否かによりこれを判断する。内燃機関1の始動指令がされたと判断した場合にはS404に進む。反対に、始動指令はされていないと判断されたら、一旦このルーチンを終了する。
【0088】
その後、S404では、圧縮行程で停止している気筒のピストン位置を、内燃機関1を逆転させて調整するため、その燃料噴射量及び点火時期を決定する。
【0089】
次に、S405で圧縮行程気筒に燃料を噴射する。続けて、S406では、これに先行する膨張行程気筒に燃料を噴射する。なお、ここで先行する膨張気筒の他に、さらに先行する排気行程の気筒にも燃料を噴射しておくことも可能である。
【0090】
S407で、圧縮行程気筒に点火がされると、内燃機関1が逆転してピストン位置が調整されると同時に、これに先行する膨張行程気筒では混合気が圧縮される。この膨張行程の気筒では、一定量の混合気を圧縮して有効ストロークが確保された状態までピストン22が移動する。
【0091】
S408では、圧縮された膨張行程にある気筒の点火時期を決定する。この時期は、逆転にうち勝って内燃機関1を正転させることができ、かつ有効ストローク量が最大限確保できる位置である。
【0092】
S409では、先行する膨張気筒に点火がされ、内燃機関1は逆転から正転に転じる。
【0093】
続いて、S410では、これに後続する圧縮行程にある気筒を特定し、ピストン22が上死点に至る前に燃料を噴射する。
【0094】
S411では、S410で燃料が噴射された気筒が上死点を越え、膨張行程となった時期に点火をする。
【0095】
上記S410及びS411は、後続気筒について続けて実施してこれらを連爆させて内燃機関1の始動を終了する。
【0096】
さらに、この実施の形態の始動装置の制御における各気筒の状態を、図9に示す。ここでは、内燃機関1が停止しているときに圧縮行程で停止している第4気筒、及び膨張行程にある第3気筒を検出する。この第4気筒に燃料噴射をし、かつ第3気筒に燃料噴射をする。次に第4気筒に点火をすることで、内燃機関1を逆転方向に回転させる(▲1▼の行程)。
【0097】
このとき、膨張行程の第3気筒を圧縮し、膨張行程の最初まで逆転したところで点火をする(▲2▼の行程)。この点火により内燃機関は逆転から正転に移行する。
【0098】
次に、圧縮行程にある第4気筒に燃料噴射し、膨張行程に到達したときに点火する(▲3▼の行程)。同様に、圧縮行程にある第2気筒に燃料噴射して、圧縮上死点付近で点火する(▲4▼の行程)。
【0099】
なお、▲1▼行程の燃焼気筒と▲3▼の行程の燃焼気筒はともに第4気筒であるので、▲3▼の行程での燃焼時に気筒内の残存酸素の不足が生じる懸念があるが、▲1▼の行程の燃焼時の逆転によって吸気弁開弁位置までピストンが移動するので、この時点である程度気筒内が掃気され、▲3▼の行程の燃焼に必要な酸素が燃焼室に補充されるので問題はない。
【0100】
本実施の形態では、以上のようにして、内燃機関1が始動する。
【0101】
なお、内燃機関の始動のために、▲2▼の行程の燃焼では、後続気筒を圧縮して圧縮上死点を越えさせることが必要であるが、この実施の形態では▲2▼の行程の燃焼を予め圧縮してから行うため、大きなトルクを得ることができるので有利である。
【0102】
また、少気筒の内燃機関では、後続気筒が圧縮上死点を越えるために多くの回転角が必要となるが、少気筒の場合は、回転角が大きければ圧縮時に気筒内の多くの空気が利用できるので、少気筒のデメリットを相殺することができる。
【0103】
さらに、内燃機関が逆転した後に正転して始動するので、始動時の振動が相殺され小さくなる利点があり、また、始動可能な領域が広いので燃費上も有利である。
(その他の実施の形態)
本発明の始動装置は、アイドリング時に内燃機関を一旦停止させ、再始動させるいわゆるエコランシステムに搭載することができる。エコランシステムとは、渋滞、信号待ち等、アイドリング状態で停車している時間が多い場合に、車輌の停止、発信に合わせて内燃機関の自動停止、自動再スタートを行うことで無駄なアイドリングをなくすものである。
【0104】
このシステムの基本的な構成は、ECUが、車速、内燃機関の回転数、変速機のギア位置、マニュアル車ではこれらに加えてクラッチペダルの踏み込みの有無、等の情報に基づいて、内燃機関の停止条件または始動条件が満たされているか否かを判定する。これらに加えて、運転者が内燃機関のスタートスイッチを操作して、内燃機関の始動をさせる場合もある。
【0105】
ECUは、上述した車速、内燃機関の回転数等から車輌が停止しているものと判断すると、イグニッション回路を切断する等の方法によって、内燃機関を停止させる。
【0106】
また、クラッチペダルを踏み込むか、またはスタートスイッチをonにしてギアをニュートラル位置にする等の所定の操作をして内燃機関を再始動させるものである。すなわち、ECUは、始動指令の有無を所定の操作に基づいて判断する。
【0107】
このような、頻繁に内燃機関の停止と再始動を繰り返す場合に本発明の始動装置を適用すれば、内燃機関の再始動時に作動するモータゼネレータ、またはスタータモータの起動電流を小さくすることで、これらの負担の軽減と装置の小型化を実現できる。
【0108】
さらに、スタータモータやモータゼネレータを作動させることなく、内燃機関の再始動が可能とすることができるので、これらのスタータ装置の寿命を延ばし、故障の可能性を低減させることができる。また、モータ電流が不要であるので、燃費上も有利である。
【0109】
一方、フリクションの大きい低温時等は、スタータ装置による通常のスタータを実行できるようにすることで、始動の確実性を担保する。実際には、本発明の始動装置が使用し易い条件下であっても、本発明の始動装置による始動を試み、一定時間以内に始動が不可能であった場合にはスタータモータが作動して、始動が完了するようにすることが好ましい。
【0110】
上述の実施の形態は、4気筒の内燃機関について述べたが、勿論、本発明を3気筒や6気筒、その他の気筒数の内燃機関について適用することが可能である。
【0111】
【発明の効果】
本発明に係る始動装置によれば、始動に必要な駆動トルクを容易に得ることができるので、スタータ装置の負担が軽減される。また、少ない気筒数の内燃機関においても自己始動を可能とするものである。
【0112】
また、エコランシステムに適用することで、このシステムにおける内燃機関の再始動時のスタータ装置の負担を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る内燃機関の概略構成図である。
【図2】3気筒内燃機関の停止しやすい領域を示す図である。
【図3】4気筒内燃機関の停止しやすい領域を示す図である。
【図4】6気筒内燃機関の停止しやすい領域を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における始動制御の実行フローを示すフローチャート図である。
【図6】本発明の実施の形態2における始動制御の実行フローを示すフローチャート図である。
【図7】本発明の実施の形態3における始動制御の実行フローを示すフローチャート図である。
【図8】本発明の実施の形態4における始動制御の実行フローを示すフローチャート図である。
【図9】本発明の実施の形態4における始動時の各気筒の状態を示す図である。
【符号の説明】
1・・・・内燃機関
20・・・ECU
21・・・気筒
22・・・ピストン
23・・・クランクシャフト
24・・・燃焼室
25・・・点火栓
26・・・・吸気管
27・・・排気管
28・・・吸気弁
29・・・排気弁
30・・・・燃料噴射弁
42・・・水温センサ
43・・・車速センサ
44・・・シフト位置センサ
45・・・クラッチ位置センサ
46・・・ホール効果センサ
51・・・クランクポジションセンサ
52・・・フライホイール
53・・・スタータモータ
Claims (8)
- 気筒内に燃料を噴射し、火花点火で運転される内燃機関において、
内燃機関の停止時に気筒のピストン停止位置を検出し、内燃機関が自己始動不可能または自己始動しにくい位置にピストンがあることが検出されたときは、圧縮行程で停止している気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を逆転させて内燃機関が自己始動可能または自己始動し易い位置にピストンを移動させることを特徴とする内燃機関の始動制御装置。 - 圧縮行程に停止している前記気筒のピストンが圧縮上死点を越えることがない範囲でピストンを移動させる請求項1に記載の内燃機関の始動制御装置。
- 圧縮行程で停止している前記気筒のピストンの移動のための爆発力を制御する爆発力調整手段を備える請求項1または2に記載の内燃機関の始動制御装置。
- 前記爆発力調整手段は、燃料噴射後、さらに所定の燃料気化時間が経過した後に点火するものであり、内燃機関の停止位置、内燃機関の暖機状態、内燃機関の停止後の経過時間のうち、少なくとも一つに基づいて爆発力の調整をする請求項3に記載の内燃機関の始動制御装置。
- 圧縮行程で停止している前記気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を逆転させて内燃機関が自己始動可能な位置または自己始動し易い位置にピストンを移動させた後、膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火して、内燃機関を正転させて始動する請求項1から4のいずれかに記載の内燃機関の始動制御装置。
- 膨張行程にある前記気筒に燃料を噴射して点火し、内燃機関を始動させる際には、前記気筒の後続気筒は、圧縮行程で燃料を噴射して膨張行程で点火を行う請求項5に記載の内燃機関の始動制御装置。
- 圧縮行程で停止している前記気筒に先行する膨張行程または排気行程で停止している気筒に燃料を噴射し、圧縮行程で停止している前記気筒の燃料の噴射及び点火による内燃機関の逆転に伴って、前記先行する膨張行程または排気行程で停止していた気筒内の混合気を圧縮して、この圧縮によって回転速度が低下したときに点火し、内燃機関を正転させる請求項1に記載の内燃機関の始動制御装置。
- 圧縮行程で停止している前記気筒に先行する膨張行程または排気行程で停止している気筒の後続気筒は、圧縮行程で燃料を噴射して膨張行程で点火がされる請求項7に記載の内燃機関の始動制御装置。
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