JP2004108403A - 転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】現状の条件下で現在よりさらに長寿命化が可能である上、現状よりさらに過酷な条件下で早期に疲労寿命に到るのを防止して長寿命化することも可能な、新規な転がり軸受を提供する。
【解決手段】ポリαオレフィン系合成油またはジフェニルエーテル系合成油に、ウレア系増ちょう剤と、有機アンチモン化合物または有機モリブデン化合物と、ジンクスルホネートとを添加したグリースを封入した転がり軸受である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、特に高温、高速回転、高荷重等の過酷な条件下での使用が可能な転がり軸受に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車のエンジン周り等の、高温、高速回転、高荷重等の過酷な条件下で使用される転がり軸受は、近時、これまで以上の高速回転や荷重の増大等の、使用条件のより一層の過酷化に伴って、理論的に推定される寿命時間よりも極めて短時間で疲労寿命に到ることが問題となっている。
またこの原因は、転がり軸受に封入されるグリースの寿命ではなく、転がり軸受それ自体にあることが、最近の研究で明らかとなっている。
【0003】
つまり高速回転中に、転動体と内外輪の転走面との間ですべりを伴う過大な接線方向の力が生じ、それによって特に内外輪の転走面にはく離が発生して、早期に疲労寿命に到るのである。
そこで、転がり軸受に加わる接線方向の力を低減すべく、グリースの潤滑基油として、使用条件に適合し、高温、高速回転、高荷重等の条件下において最大の潤滑性能を発揮し得るものを選択する努力がなされているが、単に潤滑基油を選択するだけでは、もはや使用条件のさらなる過酷化に十分に対応できなくなりつつあるのが現状である。
【0004】
このため潤滑基油に添加する添加剤について、種々の検討が行われている。
例えば発明者のうち小宮と岡村は、特許文献1において、潤滑基油に、増ちょう剤として特定の分子構造を有するジウレア化合物を添加したグリースを用いると、転がり軸受を、高温高速の使用条件下で長期間安定に使用できることを示した。
また特許文献2では、潤滑基油としてのアルキルジフェニルエーテル油に、やはり増ちょう剤として特定の分子構造を有するジウレア化合物を添加した転がり軸受用のグリースが提案された。そしてその効果として特許文献2には、転送面などでのはく離の発生を抑制して、転がり軸受の長寿命化が可能である上、グリース自体の寿命をも向上できることが示された。
【0005】
また特許文献3においては、同じくアルキルジフェニルエーテル油に、増ちょう剤として特定の分子構造を有するジウレア化合物と、油溶性の錆止め添加剤としての有機スルホン酸塩と、水溶性の錆止め添加剤としての亜硝酸塩および非イオン界面活性剤とを添加した転がり軸受用のグリースが提案された。また有機スルホン酸塩としてはジンクスルホネートが例示された。
かかるグリースは、高温、高速回転、高荷重等の過酷な条件下において優れた潤滑性能を発揮し、転がり軸受の寿命を向上できる上、複数の錆止め添加剤を併用したことによって、塩水や海水が浸入した際の錆止め性にも優れるとされた。
【0006】
また特許文献4では、アルキルジフェニルエーテル油とポリαオレフィン油とを所定の重量比で配合した潤滑基油に、増ちょう剤としての芳香族ジウレア化合物または芳香族ウレア・ウレタン化合物と、不動態化酸化剤と、錆止め添加剤としての有機スルホン酸塩とを添加した転がり軸受用のグリースについて提案された。また有機スルホン酸塩としてはジンクスルホネートが例示された。
かかるグリースの効果は、特許文献3とほぼ同様である。
【0007】
さらに小宮と岡村は、特許文献5において、潤滑基油としてのポリαオレフィン系合成油および/またはジフェニルエーテル系合成油に、ウレア系増ちょう剤と、極圧添加剤としての有機アンチモン化合物および/または有機モリブデン化合物とを添加した転がり軸受用のグリースを提案した。またこの特許文献5には、上記のグリースにさらに、酸化防止剤としてジンクジチオカーバメートを添加してもよいことも記載した。
【0008】
かかるグリースにおいては、特許文献5に記載したように、極圧添加剤として添加した有機アンチモン化合物や有機モリブデン化合物が、転がり軸受の内外輪の転走面や、あるいは転動体の表面と反応して、接線方向の力の低減に寄与する化合物被膜を形成する。このため、特に高速回転下で、接線方向に大な力が発生するのを防止して、転がり軸受を長寿命化することが可能となる。
また小宮らは非特許文献1で、転がり軸受用ではなく摺動摩擦用途に用いるグリースにおいて、有機アンチモン化合物と、ジンクジチオカーバメートやジンクスルホネートとを併用すると、単独で使用した場合よりも摩擦係数を小さくし、かつ摩耗量を低減できることを明らかとした。
【0009】
また、その原因として小宮らは、摺動摩擦面に積層構造を有する表面膜が形成されること、かかる表面膜のうち、最表層のごく薄いアンチモンの酸化物膜と、その下の厚いアンチモンの硫化物膜とが摩擦係数低減の効果を示し、さらにその下の厚い亜鉛の硫化物膜が摩耗防止の効果を示すことを明らかとした。
【0010】
【特許文献1】
特開昭61−155496号公報(第2頁右上欄第18行〜同頁左下欄第10行)
【特許文献2】
特開平6−17079号公報(第0010欄〜第0013欄)
【特許文献3】
特開平5−98280号公報(第0004欄〜第0005欄、第0007欄、第0009欄)
【特許文献4】
特開平5−263091号公報(第0010欄〜第0011欄、第0023欄)
【特許文献5】
WO94/03565号公報(第1頁第26行〜第2頁第14行、第4頁第7行〜同頁第18行)
【非特許文献1】
「グリースの添加剤による表面膜生成と摩擦特性」、加藤典子、中田竜二、小宮広志、(社)日本ドライボロジー学会ドライボロジー会議予稿集(東京1998−5)408(第410頁右欄第3.3項、第4項)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記のうち特許文献1、2のようにジウレア系増ちょう剤の分子構造をさらに工夫したとしても、転がり軸受の寿命を延長する効果には限界がある。
また、特許文献3、4においてジンクスルホネートを添加しているのは、あくまでも錆止め添加剤としての効果を狙ったために過ぎない。これらの特許文献に記載のようにジンクスルホネートを単独で使用したとしても、転がり軸受の寿命を延長する効果は全く得られない。このことは、後述する実施例、比較例の結果から明らかである。
【0012】
また特許文献5に記載のジンクヂジオカーバメートは、単独では言うまでもなく、極圧添加剤としての有機アンチモン化合物および/または有機モリブデン化合物と併用したとしても、それによって転がり軸受の寿命を延長する機能は有していない。このことも、後述する実施例、比較例の結果から明らかである。
したがって、特許文献1〜5に記載のグリースでは、例えば現状の条件下で、転がり軸受を現在よりさらに長寿命化したり、あるいは現状よりさらに過酷な条件下で、転がり軸受が早期に疲労寿命に到るのを防止して長寿命化を図ったりすることなどは困難である。
【0013】
この発明の目的は、現状の条件下で現在よりさらに長寿命化が可能である上、現状よりさらに過酷な条件下で早期に疲労寿命に到るのを防止して長寿命化することも可能な、新規な転がり軸受を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1記載の発明は、ポリαオレフィン系合成油またはジフェニルエーテル系合成油を含む潤滑基油と、
ウレア系増ちょう剤と、
極圧添加剤としての、有機アンチモン化合物および有機モリブデン化合物のうちの少なくとも一方と、
ジンクスルホネートと、
を含有するグリースを封入したことを特徴とする転がり軸受である。
【0015】
この発明によれば、現状の条件下で現在よりさらに長寿命化が可能である上、現状よりさらに過酷な条件下で早期に疲労寿命に到るのを防止して長寿命化することも可能な転がり軸受を提供することができる。
請求項2記載の発明は、潤滑基油とウレア系増ちょう剤との合計100重量部に対する、ジンクスルホネートの添加量が0.1〜5重量部で、かつ極圧添加剤の添加量が0.1〜5重量部であることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受である。
【0016】
この発明によれば、ジンクスルホネートと、有機アンチモン化合物および/または有機モリブデン化合物とを併用したことによる前記の効果をより一層、良好に発揮させて、転がり軸受をさらに長寿命化することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明を説明する。
この発明の転がり軸受は、前記のように、
ポリαオレフィン系合成油またはジフェニルエーテル系合成油を含む潤滑基油と、
ウレア系増ちょう剤と、
極圧添加剤としての、有機アンチモン化合物および有機モリブデン化合物のうちの少なくとも一方と、
ジンクスルホネートと、
を含有するグリースを封入したことを特徴とするものである。
【0018】
発明者の分析では、上記のグリースを転がり軸受に封入して回転させると、軸受の内外輪の転走面および/または転動体の表面に、その具体的な構造などは不明であるが、前述した非特許文献1において摺動面に形成される、硫化物膜を含む積層構造の表面膜とは明らかに組成の異なる膜が形成される。
例えば有機アンチモン化合物とジンクスルホネートとの併用系では、アンチモンの酸化物と亜鉛の酸化物とを主体とする膜が形成され、有機モリブデン化合物とジンクスルホネートとの併用系では、炭素を主成分とする膜が形成される。
【0019】
しかもこれらの膜は、後述する実施例、比較例の結果より明らかなように、特に高温、高速回転、高荷重等の過酷な条件下において、転がり軸受に加わる接線方向の力を低減して、特に内外輪の転走面にはく離が発生するのを防止する効果に優れている。
したがって転がり軸受は、現状の条件下で現在よりさらに長寿命化が可能である上、現状よりさらに過酷な条件下で早期に疲労寿命に到るのを防止して長寿命化することも可能である。
【0020】
なお、前述したように非特許文献1には、有機アンチモン化合物と、ジンクジチオカーバメートまたはジンクスルホネートとを併用したグリースを、摺動摩擦面の潤滑に用いることが記載されている。
しかしこの非特許文献1には、かかるグリースを、転がり軸受に用いることについては一切、記載されていない。
また非特許文献1には、上記のうち有機アンチモン化合物とジンクスルホネートとを組み合わせたグリースを転がり軸受に用いると、それによって摺動摩擦面とは違ったメカニズムによって、内外輪の転走面などに、摺動摩擦面に形成される積層構造の表面膜とは全く異なった膜を形成できることや、かかる膜を形成するによって、前記のように転がり軸受に加わる接線方向の力を低減して、転走面などにはく離が発生するのを防止できることについても一切記載されていない。
【0021】
また、摺動摩擦面と転がり軸受とで、全く違ったメカニズムによって、全く異なった膜が形成されることは、膜の分析をした図1、2の結果や、あるいは摺動摩擦面と違って転がり軸受においては、有機アンチモン化合物とジンクジチオカーバメートとの組み合わせでは全く効果がなく、有機アンチモン化合物とジンクスルホネートとの組み合わせでのみ特異的に効果が得られるという、後述する実施例、比較例の結果などからも明らかである。
【0022】
したがって非特許文献1はこの発明を開示も示唆もするものではない。
〈極圧添加剤〉
極圧添加剤としては、前記のように有機アンチモン化合物および有機モリブデン化合物のうちの少なくとも一方を用いる。
このうち有機アンチモン化合物としては、例えば下記一般式(1):
【0023】
【化1】
Figure 2004108403
【0024】
(式中R、Rは同一または異なって水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)
で表されるアンチモンジチオカーバメートや、下記一般式(2):
【0025】
【化2】
Figure 2004108403
【0026】
(式中R、Rは同一または異なって水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)
で表されるアンチモンジチオホスフェート等を挙げることができる。
また、上記一般式(1)で表されるアンチモンジチオカーバメートの具体例としては、例えばアール・ティー・ヴァンダービルト社(R. T. Vanderbilt Company Inc.)製の商品名「VANLUBE 73」を挙げることができる。
【0027】
また、一般式(2)で表されるアンチモンジチオホスフェートの具体例としては、例えば同社製の商品名「VANLUVE 622」を挙げることができる。
また有機モリブデン化合物としては、例えは下記一般式(3):
【0028】
【化3】
Figure 2004108403
【0029】
(式中R、Rは同―または異なって水素原子、アルキル基またはアリール基を示し、m、x、yは任意の数を示す。)
で表されるモリブデンジチオカーバメートや、下記一般式(4):
【0030】
【化4】
Figure 2004108403
【0031】
(式中R、Rは同一または異なって水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)
で表されるモリブデンジチオホスフェート等を挙げることができる。
このうち、一般式(3)で表されるモリブデンジチオカーバメートの具体例としては、例えばアール・ティー・ヴァンダービルト社(R. T. Vanderbilt Company Inc.)製の商品名「MOLYVAN A」を挙げることができる。
【0032】
また一般式(4)で表されるモリブデンジチオホスフェートの具体例としては、同社製の商品名「MOLYVAN L」を挙げることができる。
これらの化合物はそれぞれ単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
上記有機アンチモン化合物や有機モリブデン化合物の、極圧添加剤としての添加量は、前述したように、グリースの主体である潤滑基油とウレア系増ちょう剤との合計100重量部あたり0.1〜5重量部であるのが好ましい。
【0033】
極圧添加剤の添加量が上記の範囲未満では、先に述べたジンクスルホネートとの併用による効果、すなわち軸受の内外輪の転走面および/または転動体の表面に、接線方向の力を十分に低減しうる膜を形成して、転がり軸受を長寿命化する効果が不十分になるおそれがある。一方、上記の範囲を超えてもそれ以上の添加効果が得られないだけでなく、経済効果の点でも不利となるおそれがある。
【0034】
〈ジンクスルホネート〉
ジンクスルホネートとしては、一般式(5):
SOZn   (5)
(式中Rは有機基を示す。)
で表される種々のジンクスルホネートを挙げることができる。また、かかるジンクスルホネートの例としては、有機基Rの種類に応じて、例えば石油スルホン酸亜鉛、アルキルベンゼンスルホン酸亜鉛、アルキルナフタレンスルホン酸亜鉛等を挙げることができる。
【0035】
ジンクスルホネートの添加量は、これも前述したように、グリースの主体である潤滑基油とウレア系増ちょう剤との合計100重量部あたり0.1〜5重量部であるのが好ましい。
ジンクスルホネートの添加量が上記の範囲未満であるか、または上記の範囲を超えた場合には、このいずれにおいても、先に述べた極圧添加剤との併用による効果、すなわち軸受の内外輪の転走面および/または転動体の表面に、接線方向の力を十分に低減しうる膜を形成して、転がり軸受を長寿命化する効果が不十分になるおそれがある。
【0036】
〈潤滑基油〉
潤滑基油としては、少なくともポリαオレフィン系合成油またはジフェニルエーテル系合成油を含むものが使用できる。
ここでいう、少なくともポリαオレフィン系合成油またはジフェニルエーテル系合成油を含む潤滑基油としては、全量が上記両合成油のうちの何れか一方であるものの他、両合成油の混合物や、両合成油を主体としそれに鉱油や他の合成油を添加したものを使用することもできる。
【0037】
他の合成油としては、例えばボリブテン系合成油、ポリアルキレングリコ−ル系合成油、ポリオールエステル系合成油、ジエステル系合成油、シリコ−ン系合成油、ジフェニルエーテル系以外のポリフェニルエーテル系合成油等の、従来公知の合成油を挙げることができる。鉱油や他の合成油の添加量は、従来の、ポリαオレフィン系合成油またはジフェニルエーテル系合成油を主体としたグリースの場合と同程度でよい。具体的には、その他の潤滑基油の添加量は、潤滑基油の全量中に占める含有割合で表して30重量%以下程度が好ましい。
【0038】
ポリαオレフィン系合成油としては、種々のオレフィンを原料とする種々の重合度のものを使用でき、その中から、使用条件(特に使用温度)に適合した粘度を有するものを選択して使用できる。
またジフェニルエーテル系合成油としては、種々の分子量のものを使用でき、その中から、やはり使用条件(特に使用温度)に適合した粘度を有するものを選択して使用できる。
【0039】
〈ウレア系増ちょう剤〉
増ちょう剤としてはウレア系のものを使用する。その中でも特に、ジウレア系増ちょう剤が好ましい。
ジウレア系増ちょう剤は、下記一般式(6):
【0040】
【化5】
Figure 2004108403
【0041】
(式中R10はジイソシアネート残基を示し、R11、R12は同―または異なってアミン残基を示す。)で表される構造を有し、下記反応式に示すように、ジイソシアネート化合物(7)とアミン系化合物(8)(9)とを反応させることで合成される。
【0042】
【化6】
Figure 2004108403
【0043】
(上記式中のR10、R11、R12は前記と同じ基を示す。)
上記反応は潤滑基油中にて行うのが好ましく、これにより均一性の高い反応生成物が得られる。具体的には、ジイソシアネート化合物(7)とアミン系化合物(8)(9)とを別々に潤滑基油中に溶解して、それぞれジイソシアネート溶液とアミン溶液を作製し、そのいずれか一方をかく拌しつつ他方を徐々に添加して、ジイソシアネート化合物(7)とアミン系化合物(8)(9)とを反応させて、ジウレア化合物を生成させる。あるいは、アミン系化合物(8)(9)をそれぞれ別々に潤滑基油中に溶解して2種のアミン溶液を作製し、それをジイソシアネート溶液と混合して反応させてもよい。
【0044】
つぎに、反応液をかく拌しながら130〜210℃程度、好ましくは140〜190℃程度まで加熱、昇温し、その温度で15〜40分間程度保持した後、120℃以下、好ましくは室温まで徐冷し、さらにホモジナイザー、3段ロール等を用いて混練すれば、生成したジウレア化合物が潤滑基油中に均一に分散したグリースが得られる。
極圧添加剤その他の添加剤は、上記反応終了後に添加するのが望ましいが、ジイソシアネート化合物(7)とアミン系化合物(8)(9)との反応を阻害しない成分は、反応前のいずれかの溶液中に添加しておくこともできる。
【0045】
ジウレア系増ちょう剤の好適な例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと、アルキル部分の炭素数が8〜16であるアルキルフェニルアミン(p−ドデシルアニリン等)と、シクロへキシルアミンとの反応生成物や、上記4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと、ステアリルアミンと、オレイルアミンとの反応生成物等を挙げることができる。
中でも前者の、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと、アルキルフェニルアミンと、シクロへキシルアミンとの反応生成物は、前述した特許文献1に記載されているように、高温条件下で急激に軟化することがなく、かつ高速回転時に繊維状になって飛散するおそれがないので、高温、高速回転の使用条件下で長期間安定に使用できるものとして特に好適に使用できる。
【0046】
ウレア系増ちょう剤の添加量は特に限定されず、グリースの使用条件等に応じて適宜変更することができるが、通常は、潤滑基油100重量部に対して0.3〜30重量部程度とすればよい。
〈その他の添加剤〉
グリースには、さらに酸化防止剤、防錆剤、ポタシウムボーレート等の極圧剤など、従来公知の種々の添加剤を、従来と同程度の添加量で添加してもよい。
【0047】
〈転がり軸受〉
この発明の転がり軸受は、上記のグリースを封入することで製造される。転がり軸受の形式は特に限定されず、従来公知の種々の形式の転がり軸受に、この発明の構成を適用することができる。転がり軸受用グリースの封入量は、転がり軸受の形式や寸法等に応じて適宜変更することができるが、ほぼ従来と同程度でよい。
【0048】
【実施例】
以下にこの発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。
実施例1
(グリースの調製)
潤滑基油としてのポリαオレフィン(100℃における動粘度が8mm/s)850g中に、アミン成分としてのp−ドデシルアニリン128gとシクロへキシルアミン50gとを混合し、かく拌しつつ100℃に加熱してアミン溶液を作製した。
【0049】
またこれとは別に、上記と同じポリαオレフィン850g中に、イソシアネート成分としての4,4’−ジフェニルメ夕ンジイソシアネート122gを混合し、かく拌しつつ100℃に加熱してイソシアネート溶液を作製した。
そして、イソシアネート溶液をかく拌しつつアミン溶液を徐々に添加し、アミン成分とイソシアネート成分とを反応させて、ポリαオレフィン中にジウレア化合物を生成させた。
【0050】
つぎに、生成したジウレア化合物をポリαオレフィン中に均一に分散させるべく、反応液をかく拌しながら加熱して150℃まで昇温し、150℃で15〜40分間保持した後、室温まで徐冷した。
つぎにかく拌を続けながら、前記一般式(1)中のR,Rがともにアルキル基であるアンチモンジチオカーバメート〔前出のアール・ティー・ヴァンダービルト社(R. T. Vanderbilt Company Inc.)製の商品名「VANLUBE 73」〕40gと、ジンクジノニルナフタレンスルホネート40gとを添加し、さらに三段ロールを用いて処理して、グリースを調製した。
【0051】
(転がり軸受の製造)
上記で調製したグリースを、両シールド付きのラジアル玉軸受(呼び番号6303ZZ)中に2g封入して転がり軸受を製造した。
実施例2
潤滑基油として、ポリαオレフィンに代えて同量のアルキルジフェニルエーテル(100℃における動粘度が12mm/s)を使用したこと以外は実施例1と同様にしてグリースを調製し、転がり軸受を製造した。
【0052】
実施例3
「VANLUBE 73」に代えて、前記一般式(3)中のR,Rがともにアルキル基であるモリブデンジチオカーバメート〔前出のアール・ティー・ヴァンダービルト社(R. T. Vanderbilt Company Inc.)製の商品名「MOLYVAN A」〕40gを使用したこと以外は実施例2と同様にしてグリースを調製し、転がり軸受を製造した。
実施例4
「VANLUBE 73」の添加量を2g、ジンクジノニルナフタレンスルホネートの添加量を2gとしたこと以外は実施例2と同様にしてグリースを調製し、転がり軸受を製造した。
【0053】
実施例5
「VANLUBE 73」の添加量を100g、ジンクジノニルナフタレンスルホネートの添加量を100gとしたこと以外は実施例2と同様にしてグリースを調製し、転がり軸受を製造した。
実施例6
「MOLYVAN A」の添加量を2g、ジンクジノニルナフタレンスルホネートの添加量を2gとしたこと以外は実施例3と同様にしてグリースを調製し、転がり軸受を製造した。
【0054】
実施例7
「MOLYVAN A」の添加量を100g、ジンクジノニルナフタレンスルホネートの添加量を100gとしたこと以外は実施例3と同様にしてグリースを調製し、転がり軸受を製造した。
比較例1
ジンクジノニルナフタレンスルホネートを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてグリースを調製し、転がり軸受を製造した。
【0055】
比較例2
ジンクジノニルナフタレンスルホネートを添加しなかったこと以外は実施例5と同様にしてグリースを調製し、転がり軸受を製造した。
比較例3
ジンクジノニルナフタレンスルホネートを添加しなかったこと以外は実施例3と同様にしてグリースを調製し、転がり軸受を製造した。
【0056】
比較例4
「VANLUBE 73」を添加しなかったこと以外は実施例2と同様にしてグリースを調製し、転がり軸受を製造した。
比較例5
ジンクジノニルナフタレンスルホネートに代えて、式(10):
【0057】
【化7】
Figure 2004108403
【0058】
で表されるジンクジチオカーバメート40gを使用したこと以外は実施例2と同様にしてグリースを調製し、転がり軸受を製造した。
上記各実施例、比較例で調製したグリースの混和ちょう度を、JIS K2220「グリース」所載の混和ちょう度測定方法に準じて測定した。実施例の結果を表1、2、比較例の結果を表3、4に示す。
また、上記各実施例、比較例で製造した転がり軸受について、以下の各試験を行って、その特性を評価した。結果を同じく表1〜表4に示す。
【0059】
軸受寿命の測定
実施例、比較例の転がり軸受を、下記の高温、高速、高負荷条件下で1000時間運転して、軌道面にはく離が発生し、軸受が破損に到った時間を計測した。なお、計測は、各実施例、比較例毎に4個ずつのサンプルを用いて4回ずつ行った。また、1000時間以内にはく離が発生しなかった場合は、表中にはく離なしと記載した。
【0060】
運転条件
回転数:9000⇔18000rpmの急加減速条件
ラジアル荷重:250kg
温度:90℃
定格荷重C:13.5kN
なお下記表1〜表4中、各欄の符号は、以下の化合物に相当する。
【0061】
PAO:ポリαオレフィン
ADE:アルキルジフェニルエーテル
MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
PDA:p−ドデシルアニリン
CHA:シクロへキシルアミン
SbDTC:アンチモンジチオカーバメート
MoDTC:モリブデンジチオカーバメート
ZnSul:ジンクスルホネート
ZnDTC:ジンクジチオカーバメート
【0062】
【表1】
Figure 2004108403
【0063】
【表2】
Figure 2004108403
【0064】
【表3】
Figure 2004108403
【0065】
【表4】
Figure 2004108403
【0066】
上記表1〜表4の結果より、先の特許文献5に比べてより過酷な今回の運転条件(9000⇔18000rpmの急加減速条件)下では、有機アンチモン化合物、または有機モリブデン化合物を単独で用いた比較例1〜3の転がり軸受はいずれも、およそ500〜800時間の間に全て破損してしまった。そしてこのことから、有機アンチモン化合物、または有機モリブデン化合物を単独で用いた系では、転がり軸受の寿命を延長する効果に限界があることが判った。
【0067】
また、有機アンチモン化合物とジンクジチオカーバメートを併用した比較例5の転がり軸受も、同程度の時間で全て破損してしまった。そしてこのことから、上記の併用系は、転がり軸受の寿命を延長する効果を有しないことが判った。
さらにジンクスルホネートを単独で使用した比較例4の転がり軸受は、およそ200時間までに全て破損してしまった。そしてこのことから、ジンクスルホネート自体は、単独で使用した際に転がり軸受の寿命を延長する効果を全く有しないことが判った。
【0068】
これに対し、上記有機アンチモン化合物、または有機モリブデン化合物をジンクスルホネートと併用した実施例1〜7の転がり軸受はいずれも、1000時間の間に破損することはなかった。そしてこのことから、上記のようにそれ自体は転がり軸受の寿命を延長する効果を有しないジンクスルホネートを、有機アンチモン化合物、または有機モリブデン化合物と併用することによって、転がり軸受の寿命を、これまでよりも著しく延長できることが確認された。
【0069】
AES分析
実施例5、7の転がり軸受を、前記と同条件で100時間運転したのち分解して外輪の転走面を露出させた。
そしてこの転走面について、Arイオンスパッタを用いたAES分析を行って、表面から深さ方向の組成分布を測定した。実施例5の結果を図1、実施例7の結果を図2に示す。
【0070】
図1より、実施例5の転がり軸受においては、表面から深さ75nm付近までの範囲にアンチモン、酸素、亜鉛などが存在し、その分布も類似していた。また硫黄はごく僅かしか検出されなかった。そしてこのことから転走面に、アンチモンと亜鉛の酸化物を主体とする膜が形成されていることが確認された。
また図2より、実施例7の転がり軸受においては、表面から深さ100nm付近までの範囲に炭素が存在していたが、モリブデン、亜鉛、酸素および硫黄はごく僅かしか検出されなかった。そしてこのことから転走面には、炭素を主成分とする膜が形成されていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の、実施例5の転がり軸受のうち、外輪の転走面についてAES分析を行った結果を示すグラフである。
【図2】この発明の、実施例7の転がり軸受のうち、外輪の転走面についてAES分析を行った結果を示すグラフである。

Claims (2)

  1. ポリαオレフィン系合成油またはジフェニルエーテル系合成油を含む潤滑基油と、
    ウレア系増ちょう剤と、
    極圧添加剤としての、有機アンチモン化合物および有機モリブデン化合物のうちの少なくとも一方と、
    ジンクスルホネートと、
    を含有するグリースを封入したことを特徴とする転がり軸受。
  2. 潤滑基油とウレア系増ちょう剤との合計100重量部に対する、ジンクスルホネートの添加量が0.1〜5重量部で、かつ極圧添加剤の添加量が0.1〜5重量部であることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
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